Title Author(s) Journal URL 上皮形成をなせる痔瘻の一例 岸本, 頼子 東京女子医科大学雑誌, 23(4):117-118, 1953 http://hdl.handle.net/10470/12295 Twinkle:Tokyo Women's Medical University - Information & Knowledge Database. http://ir.twmu.ac.jp/dspace/ 31 (離職蜘響歯磨鋤 上皮形成をなぜる痔痩の一例 :東京女子医科大学外科学教室 (主任 襯原仔教授) 岸 本 頼 子 キシ モト 司り コ (受付昭和28年8月19日置 一般に,痔痩ぱ急性肛門周囲炎,又は結核性膿瘍 入れ,一次的に閉鎖縫合した。術後の経過は良好 が破れて発生し,慢性の形に移行して容易に完全 にして,10日目に全治退院した。 治癒をしない。又,痩管の内壁ば肉芽組織でおほ 切除標潔 肉眼的にぱ,痩管の壁は上皮でおほ われ,ており,上皮形成をみないのが普通である われており,茶褐色で細かV・搬壁が走ってみるQ が,本教室に於て上皮形成をなせる完全痔痩の一 びらん,潰瘍などによる欠損部はないQ 組織学的lcみると,痩孔の内壁は大部分,重層 例を経験したので,こごに報告する。 症 扁平上皮でおほわれ,この扁平上皮は著明な乳頭 倒 層をもち,.乳頭下層の毛細血管は正常の表皮に比 患者:20才の女。 ぶれば少いが,かなりよく発達してみる。基底細 家族歴:特記すべき事項なし。 胞にはメラニン色素を含んでをり,各細胞と細胞 既往歴:8才の時小児結該に罹患し,まSc15才の時 の間には細胞間橋を認める。また,2A・3の皮脂 肋膜炎に罹った。 現病歴:生後10日目に会陰部に発赤腫脹を生じたので 腺がみられる。撮管の周囲には墨痕組織をみとめ 医師の診察を受けたが,診断不明,2!日目にその腫脹 す,細胞浸潤もみられない。樹,痩管の内面,即 が自然に破れ,排膿し,あとに痩孔をのこした。との ち,常時,便やガスの排出による刺戟を受けてみ 後は発赤,腫脹などの炎症の再発はみられなかった。 たであらうと思われる部分の細胞にはケラトピア 煙孔よりは,ガスや糞便がもれていたが,痙痛が全く リン野卑がみられ,角化脱落している像にも遭遇 ないままに放置していた。最近結婚するに及び,ガ■ する。したがって,舌の上皮の角化ほど甚だしく や糞便がもらないようにしてほしい≧て来院した。・ はないが,此の場合の津軽には角化現象がともな 現症 体格,栄養中等度。胸部にぱ特別の所見 っていると思われる。 考 なし。血液,尿,糞便ともに異常なし。 察 局所所見:肛門輪よ12時の:方向に約4cm隔 1900年に“(eiselが2例,1902年にはBart− った会陰部に,小豆大の屡孔があり,この即興よ holdyが1例,上皮形成せる完全痔痩の報告をし リゾンデを挿入すると直腸の内壁に通する。痩孔 ているが,氏等の意見では,直腸末端に存するモ の外ロに近き部分は,膣壁にまで膨大して接近 ルガニー疑洞は通常浅く,重層扁平上皮でおほわ し,外部よリゾンデの先端を触知しうる程度であ れているが,時にぱ一種の騎形となって深くなっ った。自然痛,圧痛ともになし。 てbることがある。その部に炎症が起ると,二次 手術所見;完全三三の診断のもとに根治手術を 的に皮膚に破れて痩孔を形成することがある。そ :施行した。まつ,外口の周囲に環状の皮膚切開を の場合,一管の上皮は重層扁平上皮でto IJ,その なし,外口を縫合閉鎖する。痩孔の周囲にはつよ 周囲に疲痕組織は少V、。叉,氏等の例では,痩管 い疲痕性硬結ぱなV・。痩孔の周囲に滑って,直腸 の中に果実の種や糞石を証明し,それが炎症の原 粘膜まで撰孔を分離し,結紮切断する。切断側よ 因をなしていると思われると述べている。本四に り埋没縫合をする。ストレプFyイシン0.5gを ついてみるに,痩管の大部分が重層扁平上皮でお 一 117 一 32 おわれており,炎症性変化はみとめられなく, ¶ 第三図 組織標本(ワンギーソン染色) 叉,異物の嵌入もみられなかった。然も,生後間 もなく発生したものである。以上の諸点より,本 例ぱ先天的に一種の崎形として深かったモルガニ ー氏洞が,何等かの原因により,生後間もなく炎 症を起し,皮膚に破れ出て,然る後,完全痔痩の まま上皮形成治癒をなしたものと考えられる。 結 語 ガスや糞便のもれるのを主訴とした上皮形成治 癒せる完全痔痩の根治手術施行の一例をのべた。 かうした症例は文献上には極めて少く,私のしら べ得たものではわっかに3例をみるにすぎなかっ た。これは手術時にみのがす傾向もあるのではな いかと考えられるが稀らしいと思われるので,こ こに報告する次第である。 稿を終るに臨み御指導賜わりし榊原教授に深謝する。 文 献 @ Paul Meisel: Ueber Analfisteln mit epitheli− aler Auskleidung. (Beitrtige zu Klin. Chir. 1900) @ Kurt−Bartholdy: Fistula ani congenita, (Archiv, ftir Klinische Chirurgie 1902) . :’:・ k, ll.;.”1 第四図 組織謡本 第一騒図工==デ∵τ驚霊艦 N”’A. .gSt ≦ン/ A x・x 第二図(摘出標本) 屡群雲、 鰭羅義謙…羅繹 蓄越 tctt t ., 窪懸,噸鍵 一 118 一 (ヘマトキシリンェォヂン染色)
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