第 =D 回健康医科学研究助成論文集 平成 >@ 年度 PP7>=∼=B(=BB@7G) 〔優 秀 賞〕 低温および風雨による寒冷曝露時の熱放散反応に関する研究 山 根 基* 種 田 行 男** 大 西 範 和*** 松 本 孝 朗**** 北 川 薫**** ÁÂÂÁÃÄÅÆÇÂÆÈÉÊËÆÌÊËÆÍÌÉÊÆÇÊÆÄÎÁÍÏÌÆÍÁÅÇÊÅÁÅ ÇÂÆÎÏÌÊÆÉÊÆÃÇËÆÁÊÉÍÇÊÏÁÊÄ !"#$ %!&'& ( '")$)*+ ,-./ (&0&1'2*1344"2&10&$'+22"4"3$50$2'"'342"+$$6 '78+9$$'$4&'44$*&&10&$44$$*&'9$&9:26 "7(&0$0'3&0$''"1+'42$31&334'3+""$&$2$'0''3& 42"9$7,9&2&11*2':;4'(±,<3*==>±>1$&*&=>?=7@±A7B4 +*&=CC7B±?7B *:"13=>=7A±=7D%)92$"0$40&''"17(&':;4'$'" '"*0'3$=B:0$$3>A° E"$&$4"'F+&50'$+" $$(E!#)+&50'$+"(GH') (IJ#<)"+&50'$+"(GH')"$(DBH &)(IJ#<K/.J#)7<$*224"'&':;4'+$21'&$'7&2'''$":1&325 $'"4$+''*3421*$$IJ#<K/.J#40$"+&E!#"IJ#<(GDC7G>±GD7=>9'7>AC7?@ ±@7D="==A7>G±>L7>DIH=MN<B7B>) 7' 0$$+''*34212+$IJ#<K/.J# 40$"+&E!#"IJ#<(>L7@L±B7LL9'7=C7>@±B7C@"=G7A?±B7CC°EMN<B7B>)78+9$ 4&*$420$$+':'$9"$'0'42"50'$14""&$+'"33$6 4*4"'7:24&0$"4+''*3421*$$IJ#<K/.J#4"&E!# "IJ#<4"'(>B>7GL±=@7=G9'7DG7GL±D7B>"DA7G?±>B7C>IH=MN<B7B>) 7,&9$*+'$6 0$":122':;4'IJ#<K/.J#4":3+':;4'E!#"IJ#<4"'7<4$' &'$*+''*34212$*$IJ#<K/.J#4"&E!#"IJ#<4"'(−C>7DG± >B7?=9'7−=@7>?±G7G@"−DA7BL±C7D? OH=MN<B7B>) 7(&'$'2'"4&2&*&:"1&2'' '*34214$''+&&&'$50'"+""$42"9$4$0$$' ":1'&9$*&$*''"'&22'2(0$0&$29'4'$4"':4'3) 7 )1+$"'F42"50'$$+"&2''&$$*2$17 * 愛知みずほ大学人間科学部 <0$38,44'.4&%&E22*.4&O07 中京大学情報理工学部 ,4&23J3$(4&2*1E& 1-9$'1.4&O07 三重県立看護大学看護学部 Q4213#$'*R$34$2E22*3#$'*O07 **** 中京大学体育学部運動生理学研究室 S:$$13$T5$4'R&1'2*1"U4&4',4&2382&",0$,44'E& 1-9$'1.4& O07 ** *** (>G) 緒 言 大酸素摂取量の GB%以下の運動強度での歩行中 に核心温低下が生じたことを報告している。ま 近年、中高年者において生活の質(V!S)の た、(&0'"81+$">@)は低温および風雨環 向上を目指した余暇の過ごし方が注目されてお 境下 に お け る D 時間 の 歩行運動中 に 核心温 は り、その > つとして登山が広く愛好されている。 G?℃よりわずかに低下した程度であったが、数名 登山は自然を楽しみながら、身体活動量を高める の被験者において急激な歩行速度の低下および歩 ことができることから、中高年者の健康寿命の延 行中止により核心温が GA℃近くまで低下したこ 伸のために有用な余暇活動であると考えられる。 とを観察している。 しかしながら、登山中には天候や気温の急激な変 したがって、低体温症は、登山中の急激な天候 化が生じやすく、特に風雨が加わった低温環境下 悪化に加えて、長時間の運動などにより疲労が生 では多くの体熱が奪われて、低体温症となる危険 じ運動強度が著しく低下した状態、もしくは遭難 性がある 。ヒトでは核心温が GA℃未満の場合 などの事故によって完全に運動を停止しなければ を低体温症といい、GG℃以下になると意識障害が ならない状態で発生する可能性が高いと考えられ 出現し始め、GB℃より低下すると死亡の危険性が る。特に安静状態では、外的な仕事による筋活動 高まる >G)。登山中における低体温症発生のメカニ で生じる代謝性の熱産生量増加がないことから熱 ズムを解明することは、その発症の予防策を考え 平衡状態を保つことができず、核心温低下が顕著 る際に非常に意義のあることである。しかしなが に生じる可能性が考えられ、低温および風雨の寒 ら、登山者における低体温症に関する研究では、 冷環境下においてヒトの安静状態における熱放散 一般的に冷水中への浸漬により検討されることが 反応について知見を得る必要性は高いと考えられ >=) >B>L=>) 、登山中に発生している自然の気象条 るが、それに関して検討した報告はほとんどな 件を想定して実験を行っている報告は少ない。 い。そこで本研究では、環境温、相対湿度および E0$?)は登山中の環境条件を想定した身体冷却 風雨の条件が設定可能な人工気象室を用いて、登 に関する情報として有効に利用できるものはほと 山中の悪天候を想定した低温環境および風雨の寒 んどないと述べている。このことは、低温環境に 冷曝露がヒトの安静状態における熱放散反応に及 風や雨を加えた気象条件を模擬するための特殊な ぼす影響について検討することを目的とした。 多く 実験装置を用意することが非常に困難であること 研 究 方 法 が原因であると考えられる。 水の熱伝導率は空気の =A 倍あるため G)、降雨 A.被験者 によって皮膚表面が濡れることで、乾燥条件に比 被験者は、健康な成人男性 ? 名とした。被験者 べてより大きな熱放散が生じると考えられる。更 には実験の実施前に、研究の目的、方法、危険 に皮膚表面に付着した水滴が蒸発することによっ 性、個人情報の保護について口頭で説明を行った ても熱放散は促進されると推察される。R*&>?) 後、参加合意に対して自筆による署名を得た。ま は、低温環境下において風雨が加わると蒸発性熱 た、本研究は中京大学生命システム工学部倫理審 放散量が増加し、衣服および空気による熱遮断性 査委員会に申請し、研究実施の承認を得て行っ が低下するため、著しく熱放散が増大する一方、 た。各被験者の身体的特徴は表 > に示した。本研 運動(酸素摂取量 =∼=7AWH)を負荷すること 究は、被験者が寒冷環境に馴化していないと考え によって代謝性の熱産生量増加が生じ、核心温に られる @ 月および >B 月の期間において実施した。 はほとんど影響を及ぼさないことを示唆してい B.形態計測 る。登山中の運動強度は、その地形にもよるが最 被験者は、寒冷曝露実験の前に身長、体重およ 大酸素摂取量の GB∼AA%程度であるといわれて び皮下脂肪厚を測定した。体表面積(.<)は身 いる =)。この強度で運動を実施している場合には 長および体重の値を用いて <U'"<U'L) 極度の低体温となる可能性は低いと考えられる。 の式により算出した。皮下脂肪厚は超音波皮下脂 I22$27=G)は低温および風雨環境下において最 肪計(,GBC,誠鋼社)を用いて、上腕背部、肩 (>D) 表 > .被験者の身体的特徴 (:2>7E&$4$'4'3':;4'7 E&$4$'4 .*1$ 8*&4 I*& * ,$34$= ' 32"&4 '' U"13] ,:;4 . U E < T Q \ => == => =B => =B => >CL7L >LB7L >?C7B >?G7? >?>7@ >CA7G >?D7> CD7D C>7B CL7B LB7C CD7> A@7G CD7A >7?D >7?@ >7LG >7@A >7?C >7CA >7?L >=7G ?7? >=7A >D7A ?7G L7? ?7G >D7D >B7L >D7B >C7G >B7= >>7C >B7= 甲骨下角部、腸骨上部、腹部、大腿前部、下腿部 [,< =>[> >?=7@[A7B CC7B[?7B >7?@[B7>B >B7B[G7B >=7A[=7D Rain (40mm/h) Ambient temp. (15℃) の C 部位を測定し、C 部位の平均値を平均皮下脂 肪 厚 と し た。皮 下 脂 肪 厚 よ り 被 験 者 の 体 密 度 Subj. を R'4227>C)の 式 を 用 い て 求 め、体 密 度 を U$% 27D)の式により体脂肪率に変換した。 C.実験プロトコール Wind (3m/s) 被験者は G 条件の寒冷曝露実験を日を変えて無 2.15m 作為に実施した。被験者には実験開始 = 時間前か ら食事を避けるように指示した。対照条件として 室温 >A℃、相対湿度 AB%の環境条件への曝露、 風条件として同じ室温、相対湿度条件下で風速 G H' の風への曝露、風雨条件として同じ室温条件 1.5m 下で風速 G H' の風および雨量 DBH& の雨への 図 > .寒冷曝露実験の概略図 Q*7>7<*$422'$342"50'$7 曝露を行う実験を実施した。すべての条件とも実 験は、中京大学生命システム工学部内に設置され た人工気象室((U/6>=.DRX,エスペック社)内 で実施した。寒冷曝露実験中の概略図を図 > に示 風の吹き出し口を向いて直立姿勢を保った。 D.測定項目 した。風は人工気象室内の前方の壁に設置された 直腸温(($)は サ ー ミ ス タ プ ロ ー ブ(DB>O, >7BA= の排出口から吹き出し、雨は前方の壁の床 ,J 社)の先端を直腸内に約 >A4 挿入して測定 面から =7>A 上方に設置された G つのノズルか した。皮膚温および皮膚表面からの熱流量は、そ ら噴射する。すべての実験において、被験者は指 れぞれサーミスタプローブ(DB@O,,J 社) 、熱 定のショートパンツのみを着用した半裸体状態で 流素子((>,京都電子工業社)を前額、腹、前 あった。被験者は室温 >A℃、相対湿度 AB%の環 腕、手背、大腿、下腿、足背の ? 部位にテープで 境に設定された人工気象室に入室後、>B 分間で 貼 布 し て 連 続 的 に 記 録 し た。熱 流 素 子 は 縦 計測を行うすべてのセンサーを装着し、その後 A GB、横 >A、厚さ >7A の大きさであり、 分間ベースラインの測定を行った後、=B 分間各 センサーの内側面に両面テープを用いて皮膚表面 条件の環境下において曝露実験を実施した。実験 に密着させるように取り付けた。このセンサーは において雨を噴射する際には、ノズルの開放から 皮膚に接する面と空気に接する面との温度勾配に およそ AB∼CB 秒の遅れが発生するため、毎回曝 よって熱流量に比例した電圧を得ることができ 露開始の CB 秒前からノズル開放の操作を実施し る。 た。したがって、実験の際には曝露開始時間が 呼吸代謝測定装置(.T6GBB,,ミ ナ ト 医科学 >B 秒ほど前後することが認められた。実験中、 社)の TXRJ/T!<T を用いて呼気ガスを分析 被験者は人工気象室前方の壁から >7A 後方で、 し、酸素摂取量(Y!=)を連続的に測定した。 ・ (>A) 主観的な温冷感およびふるえの有無はベースラ 積率相関係数を用いて検討した。なお、統計処理 イン時、各環境条件に曝露後 >B 分、=B 分に被験 には ,R,,>A7BO3$I"+' を用い、有意水準の 者が自己申告したものを記録した。主観的な温冷 判定は A%未満とした。 感は−G の寒いから G の暑いまでの ? 段階のス 結 果 ケールを用いて評価した。 A.熱放散量 平均皮膚温((' )は、全身の表面積に占める 各部位の表面積の割合で重み付けした 8$"1" 熱放散量の各条件の経時的な変化を図 = に示し <U'>>)による次式により算出した。 た。熱放散量は風および風雨条件において、曝露 (' =B7B?×前 額+B7GA×腹+B7>D×前 腕+B7BA 開始後一時的に急激な増加を示した。風条件の ×手背+B7>@×大腿+B7>G×下腿+B7B?×足背 ピーク値は =CC7>D±=L7?BIH= となり対照条件の 熱放散量(IH )は各部位の熱流量を (' と同 約 >7A 倍に増加し、風雨条件のピーク値は A>A7BA 様の式に代入して求めた。代謝性産熱量(/) ±AB7>BIH= と な り 対照条件 の 約 G 倍 に 増加 し = ・ は、Y!= > W 当たり D7L= 42(呼吸交換比=B7L=) の代謝量となることを用いて >=) 次式より求めた。 ・ た。その後値は徐々に低下し、>A 分後には安定 し始め、=B 分後には対照条件は >DL7=G±@7=@IH /( 42H=)=D7L=×Y!=×CBH.< =、風 条 件 は =B=7=B±>D7?AIH=、風 雨 条 件 は 熱産生と熱損失の平衡状態を表す⊿貯熱量(⊿ =AL7==±=?7=>IH= となった。曝露期間の =B 分間 ,)は、代謝性産熱量から熱放散量を減ずること の平均値を G 条件で比較した結果、風および風雨 により算出した。損失された熱量のほうが産生さ 条 件(==A7>G±>L7>D,GDC7G>±GD7=>IH=)は 対 れた熱量より多ければ体内温が低下する。人体の 照条件(>AC7?@±@7D=IH=)に比べて有意に高い 比熱が B7LG 42H *H℃であることを用いて >D)⊿貯 熱量より平均体温の低下度(⊿(:)を以下の式 A) Wind and/or rain starts 600 より推定した。 CON WIND WIND+RAIN 500 なお、 > 42H& は >7>CGI に変換して算出した。 E.統計処理 各測定値はすべて平均値±標準偏差で表示し た。直腸温、平均皮膚温、熱放散量、代謝性産熱 量および⊿貯熱量の曝露期間 =B 分間の平均値は、 各条件間の差を繰り返しのある一元配置分散分析 を用いて検定し、有意性が認められた場合にその 後の検定として ( 1 の多重比較を行った。平 均皮下脂肪厚と熱放散量の相関関係は、ピアソン Mean heat loss, W/m 2 ⊿(:=(⊿,×.<)H(B7LG×体重) 400 300 200 100 0 0 5 10 15 20 25 図 = .各条件における寒冷曝露中の熱放散量の変化 Q*7=7&2''"$*42"50'$"$&$4"6 '(±,<)7 表 = .各条件における寒冷曝露中の熱放散量、平均皮膚温、直腸温、代謝性産熱量、⊿貯熱量 (:2=7&2''' 0$$$420$$:24&0$"4"⊿&'$* "$*42"50'$"$&$4"'7 E" &2''IH= ' 0$$b /420$$b :24&0$"4IH d8'$* OH= = 30 Time, min E!# IJ#< IJ#<`/.J# .#!Y. ^N92_ >AC7?@[@7D= =C7>@[B7C@ G?7G=[B7=G DG7GL[D7B> e=@7>?[G7G@ ==A7>G[>L7>D =G7A?[B7CC G?7DB[B7=A DA7G?[>B7C> eDA7BL[C7D? GDC7G>[GD7=>: >L7@L[B7LL: NaB7BB> NaB7BB> G?7G>[B7== >B>7GL[=@7=G: eC>7DG[>B7?=: NcB7AL NaB7BB> NaB7BB> N<B7B>40$'E!#:N<B7B>40$'IJ#<7Y2'$'±,<7 (>C) 値を示し、更に風雨条件の値は風条件より有意に B.平均皮膚温と直腸温 平均皮膚温と直腸温の経時的な変化を図 G に示 した。平均皮膚温は風および風雨条件において、 熱放散量の変化と同様に曝露開始後一時的に急激 Mean skin temperature, ℃ 高くなった(表 =)。 30 に低下した。曝露開始後 = 分で風条件は >7?@℃、 B7C?℃、風雨条件は >?7?>±B7LB℃となった。曝露 期 間 の =B 分 の 平 均 値 は、風 お よ び 風 雨 条 件 (=G7A?±B7CC,>L7@L±B7LL℃)は対照条件(=C7>@ =)。 直腸温は G 条件ともに曝露開始時から =B 分ま でほとんど変化を示さなかった。曝露開始時の値 Wind and/or rain starts 10 5 CON WIND WIND+RAIN 38.5 38.0 37.5 37.0 36.5 36.0 ±B7C@℃)に比べて有意に低い値を示し、更に風 雨条件の値は風条件より有意に低くなった(表 15 0 Rectal temperature, ℃ 分で対照条件は =A7CD±B7?L℃、風条件は ==7AD± 20 39.0 風雨条件は D7L?℃低下した。その後 >B 分ですべ ての条件において低下の程度は緩やかになり、=B 25 0 5 10 15 Time, min 20 25 30 図 G .各条件における寒冷曝露中の平均皮膚温および直腸 温の変化 Q*7G7' 0$$"$420$$"$*42" 50'$"$&$4"'(±,<)7 は、対照条件で G?7=L±B7==℃、風条件で G?7GC± B7=A℃、風雨条件 で G?7=C±B7G>℃と な り、=B 分 露期間の =B 分間の平均値は、G 条件の間で有意 な差を示さなかった(表 =) 。 C.代謝性産熱量と⊿貯熱量(平均体温の低下 度) 代謝性産熱量の経時的な変化を図 D に示した。 Metabolic heat production, W/m ±B7=@℃、風雨条件で G?7G=±B7=B℃となった。曝 2 では、対照条件で G?7GD±B7=C℃、風条件で G?7DG せず、=B 分では風雨条件の値は対照および風条 件の約 =7A 倍に増加した。曝露期間の =B 分間の 160 140 120 100 80 60 40 20 0 代謝性産熱量は、風雨条件のみで曝露開始後より 増加し始め、対照および風条件ではほとんど変化 CON WIND WIND+RAIN Wind and/or rain starts 180 0 5 10 15 Time, min 20 25 30 図 D .各条件における寒冷曝露中の代謝性産熱量の変化 Q*7D7:24&0$"4"$*42"50'$"$ &$4"'(±,<)7 平均値 は、風雨条件(>B>7GL±=@7=GIH=)は 対 照 お よ び 風 条 件(DG7GL±D7B>,DA7G?±>B7C>IH 。 =)と比較して有意に高い値となった(表 =) た。曝露期間中すべての条件において減少傾向 を 示 し、曝 露 後 =B 分 で 対 照 条 件 は−?DD7CD± L=7C= OH 、風条件 は−>BC>7L>±>AA7LG OH 、風 = = 雨条件 は−>D>?7=C±=BA7D? OH= と な っ た。曝露 期間 の =B 分間 の 平均値 は、風 お よ び 風雨条件 (−=@7>?±G7G@,−DA7BL±C7D? OH )は対照条件 = (−C>7DG±>B7?= OH=)に比べて有意に低い値を 示し、更に風雨条件の値は風条件より有意に低く 5 10 15 20 25 30 0 Cumulative heat storage, kJ/m2 ⊿貯熱量の累積値の経時的な変化を図 A に示し Time, min 0 CON WIND WIND+RAIN −200 −400 −600 −800 −1000 −1200 −1400 −1600 Wind and/or rain starts −1800 図 A .各条件における寒冷曝露中の累積貯熱量の変化 Q*7A7E29&'$*"$*42"50'$"$&$ 4"'(±,<)7 Mean heat loss, W/m 2 (>?) 410 熱放散は伝導、対流、放射、蒸発によるが、本 390 研究では、低温環境下に風が加わることにより強 370 制対流が大きくなり、皮膚からの熱放散量が増加 350 したと考えられる。体表面には空気の動きのない 330 r = −0.790 * < 0.05 310 限界層がある。限界層の熱の移動は伝達によって 290 のみ行われるが、限界層を超えると熱は対流によ 270 り運び去られる。この限界層の厚さは風などの強 250 制対流で薄くなり、伝導や対流による熱放散は増 4 6 8 10 12 14 16 Mean skinfold thickness, mm 大するといわれている >=)。#'&"\**>A)はナ 図 C .平均皮下脂肪厚と風雨条件における熱放散量の相関 関係 Q*7C7/2'&0':+&2''"' 32" &4 ''"$*42"50'$+&+""$7 フタリンの昇華速度から対流熱伝達率を計測した 結果、対流熱伝達率は気流速度の平方根に比例す ることを報告している。本研究では風に雨の条件 を加えることにより、更に熱放散量が増加した。 なった(表 =)。⊿貯熱量から推定した平均体温 雨で皮膚表面が濡れることにより、皮膚表面にお の低下は =B 分間で、対照条件は >7G@±B7=>℃、 ける空気の熱遮断性が著しく低下していたかもし 風条件は >7@@±B7GL℃、風雨条件は =7CD±B7D>℃ れ な い。水 の 熱伝導率 は B7CB=IH=H℃で あ り、 となった。 空気の約 =A 倍と大きいことから G)、雨により皮 D.ふるえの有無および主観的温冷感 膚表面が濡れることで熱伝導による熱放散量が増 ふるえの有無については、対照条件では = 名の 加した可能性が推察される。R*&>?)は雨によっ 被験者が曝露後 >B 分、風条件では > 名が曝露後 て皮膚表面が濡れることにより蒸発性熱放散量の >B 分、G 名が =B 分、風雨条件では被験者全員の 増加が生じることを検討している。しかしなが ? 名が曝露後 >B 分と =B 分でふるえありと申告し ら、R*&>?)の実験では、実験中断続的に雨に曝 た。曝露後 =B 分における全身の主観的温冷感の 露させていたが、本研究では継続的に雨に曝露さ カテゴリースケールは、対照条件で−=7>±>7=、 せていたため、周囲の水蒸気圧が常に高い状態に 風 条 件 で−=7G±>7>、風 雨 条 件 で−=7?±B7L と あり皮膚表面の水の蒸発による熱放散の影響は小 なった。 さかった可能性も考えられる。 E.平均皮下脂肪厚と熱放散量(風雨条件)の 熱流量から求めた熱放散量は、風雨に曝露され た直後 >∼= 分で特に急激な増加を示した。この 相関関係 平均皮下脂肪厚と風雨条件における熱放散量の 変化と同期して平均皮膚温の急激な低下が観察さ 相関図を図 C に示した。相関係数 $ は−B7?@B と れた。この反応は、Y4''27==)の冷水浴を なり、平均皮下脂肪厚と熱放散量は有意な負の相 用いた研究においても観察されており、急激な環 関関係にあることが示された。 境の変化により身体の外層部に貯められていた熱 考 察 本 研 究 は、健 康 な 成 人 男 性 に お い て 低 温 (>A℃)環境条件に風(風速 G H')および雨(雨 量 DBH&)が加わることが安静時、半裸体状態 が放散したためであると推察される。皮膚温が低 下するに従って環境温と平均皮膚温の差が小さく なり熱放散量は減少し、約 >A 分後には定常状態 となった。 本研究 で は、す べ て の 条件 で 直腸温 は =B 分 における熱放散反応に及ぼす影響について検討し 間の寒冷曝露中ほとんど変化を示さなかった。 た。その結果、=B 分間の寒冷曝露期間中皮膚表 E'2227C)は水温 =B℃の冷水浴によって > 面から放散される熱放散量は対照条件に対して風 時間当たり約 B7CA℃の直腸温の低下が生じ、水中 および風雨条件では明らかに増加した。このこと に浸漬後 >=B 分で GC7B℃以下になることを報告し は低温環境下に風雨が加わることにより身体から て い る。( ''"\':$4&=B)は 水温 L℃の 冷 の熱放散が増大することを示唆している。 水浴を CB 分間行った結果、核心温が GD℃以下に (>L) 低下したことを示した。寒冷環境に対する初期の するためには、寒冷環境に対する生理学的な生体 生体反応としては、末梢血管の収縮作用による皮 反応だけでなく、物理的断熱因子である皮下脂肪 下組織の熱遮断性増大と血管の対向流熱交換によ の影響も大きいと考えられる >L==)。皮下脂肪層は 。本研究では、 血管が少なく、また熱伝達率は筋組織の約 >H= で 対照および風条件において、主にこれらの血管運 あり、優れた断熱体である。本研究では、平均皮 動により核心温が維持されていたと考えられる。 下脂肪厚と熱放散量の関係を観察したところ、有 風雨条件では曝露開始後 >B 分で平均皮膚温は約 意な負の相関関係が認められ、皮下脂肪の熱遮断 >L7A℃まで低下していた。冷水浴を用いた研究 ==) 性によって深部から外層部への熱の移動が抑制さ の結果を基に推察すると、平均皮膚温がこの程度 れていた可能性が推察される。しかしながら、本 まで低下した際には、極度に皮膚の血管が収縮し 研究では被験者数が ? 名と非常に少なく、皮下脂 ていたと考えられる。 肪厚 の 多 い 群(>=7G∼>D7A)G 名 と 少 な い 群 る対向流性熱放散低下がある >@=G) 血管運動による調節が、寒冷による熱放散の増 (?7G∼L7?)D 名に分かれてしまい、その中間 大に対処できなくなると、生体はふるえによって である皮下脂肪厚が >B 前後の被験者がいな 熱産生を増大させて核心温を維持しようとする。 かったために、その関係を明確にすることはでき 本研究において、風雨条件では代謝性産熱量が対 なかった。 照および風条件に比べて明らかな増加を示した。 主観的温冷感は、ほとんどの被験者において G ふるえの有無に関する被験者の自己申告では、風 条件ともに曝露後−G の「寒い」のスケールを申 雨条件ではすべての被験者において風雨への曝露 告していた。本実験で用いた ? 段階のカテゴリー 開始後 >B 分でふるえを感じたという申告があっ スケールではその分類が詳細ではなく、各寒冷曝 た。風雨条件ではふるえによる代謝性産熱量の増 露条件における主観的温冷感の違いを明らかにす 加と血管運動による熱遮断性の増大の両作用によ ることは難しかったかもしれない。 り、核 心 温 が 維 持 さ れ て い た と 推 察 さ れ る。 冷水浴などによる寒冷曝露に対するヒトの熱放 T123'27 の報告によると、ふるえによる最 散反応を観察している多くの先行研究 GC@>L==)で 大の熱産生量は温暖安静時の代謝量の約 D7@ 倍で は、曝露時間を > 時間前後から = 時間程度まで実 あることが示唆されている。したがって、本研究 施している場合がほとんどである。水温 =B℃の では対照条件の約 =7> 倍であったことから、更に 冷水浴を行った先行研究 =B)では、曝露開始後 =B 熱放散が増大したとしても、ふるえによる熱産生 分までは核心温の低下は非常に緩やかであった 量を増加させ核心温を維持させることが可能であ が、=B 分以降 >BB 分まで > 時間当たり約 =℃の低 ると考えられる。また、本研究で用いた低温およ 下が生じたことを報告している。本研究では、曝 び風雨の寒冷曝露環境下では、 = T(' 以上の身 露時間はわずか =B 分間であった。このことが低 体活動を実施することで、ふるえを生じさせず、 温環境下に風雨が加わった条件において、核心温 核心温を保つことが可能であると推察される。 が維持された原因となったかもしれない。長時間 本研究では、代謝性産熱量から熱放散量を減ず の寒冷曝露により生体の耐寒反応に疲労が生じ、 ることにより⊿貯熱量を算出した。すべての条件 ふるえによる熱産生や外層部の熱遮断性が低下す で累積した⊿貯熱量は曝露開始 =B 分後に大きく る可能性も考えられる C>@=G)。また本研究では、低 減少しており、特に風雨条件では約−>D>? OH= 温環境を室温 >A℃として実験を実施したが、更 まで減少していた。このことは風雨条件では多量 に低い環境温では核心温の低下が観察された可能 の熱が身体から損失していたこととなり、⊿貯熱 性も考えられる。しかしながら、本研究での低温 量から体内温の低下度を推定すると、約 =7CD℃と および風雨の寒冷曝露条件では全員の被験者がふ なった。しかしながら、本研究においては身体の るえを生じていたこと、また主観的に極度の寒さ 深部での核心温の低下は観察されず、貯熱量の減 を感じていたことなどから、これ以上の厳しい寒 少が身体の深部からではなく、主に外層部から熱 冷環境条件での実験実施は倫理的な観点から不可 を奪ったことによると推察される。核心温を維持 能であると考えられる。 @) (>@) 本研究の被験者は成人男性を用いたが、被験者 の性別、年齢、身体組成および体力状況によって も寒冷曝露に対する生体反応は異なると考えられ る。特に高齢者は体温調節能力の低下が生じてお り、寒冷曝露に対するふるえによる熱産生、血管 収縮の程度が弱いため核心温が著しく低下する可 能性がある >=)。近年、中高年者の登山者が急増し =).'2R#/221((=BBG)FR&1'2*1344"2&16 0&$&'F3$*'$17U$O"fh (C)ADL6AAB7 G)U2$EU*'S(:2O(>@??)FT50$2 '"134949&$'3$43343$&& :"1+$7O.002R&1'2ij(>)@G6>BB7 D)U$% O\$"Q."$'O()1'.(>@CG)F<6 '$421''3:"140'F$9''3' ていることを考えると、今後は中高年者を対象と k9''0'7.#.4",4llm>>G6 して低温および風雨による寒冷曝露時の熱放散反 >DB7 応について検討する必要があると考えられる。そ A)U$.E(>@GA)F842$$17Ⅱ 7(&9$* の際には、本研究と同様な寒冷曝露条件では実施 0$$3&'''3&:"17O#$n=C>6=LB7 不可能であると考えられ、実験で用いる環境条件 C)E'22OI*.O,+ #R"23)U(>@@L)F についても今後更に検討を加えながら研究を進め 8&$$*2$1$'0''"$*'$242"6 ていく必要がある。 総 括 本研究は、登山中の悪天候の条件を想定し、健 康な成人男性において低温および風雨による寒冷 +$$''7O.002R&1'2og (>)=BD6=B@7 ?)E0$)T(>@LC)F.44"2&10&$F&"3$ $34'7JFE0$)TS5R,4&:T27 "'8'''"&$2'$'')$*$U'27 L)<U'<<U'TQ(>@>A)F(&'$3& '$34$37.$4&J$"lgLCL6LL>7 条件を =B 分間曝露することが安静時における熱 @)T123'<.( ''RXXI'\\':$4&\\ 放散反応に及ぼす影響について検討した。その結 (=BB>)F'$"0$"430 '&9$*6 果、風雨により身体からの熱放散は増大したが、 '1&'7T$O.002R&1'2oi>BB6>BC7 それに伴う核心温の低下は観察されなかった。こ >B)\2"Q,8$91\/(0O(>@@>)FE$46$'4 のことは寒冷曝露に対するふるえによる代謝性の 4220'F4220'''32''4"+&$'4 熱産生量増加や末梢の血管収縮および皮下脂肪な どによる身体外層部の熱遮断性が影響していたと 推察された。今後は更に寒冷曝露および被験者な どの条件を変えて詳細に検討することで、より安 全な登山活動実施のための基礎データを得る必要 がある。 3$'94'7O/#9",$9hh>G@6>D@7 >>)8$"1O<<U'TQ(>@GL)F(&4&43'$* $""4947O#$lgDC>6D?A7 >=)入来正躬(=BBG):体温生理学テキスト.初版,文光 堂,東京. >G)入来正躬,田中正敏(>@LC):偶発性低体温症の現況. 日生気誌,jf,AG6A@7 謝 辞 本研究を進めるにあたり、実験の補助をしていただきま >D) ;94JUU2*&O(>@L@)F(&4$'"51*06 0$'F&$'"5$20$''$42": 4'934$7T$O.002R&1'2goAAC6AC=7 した中京大学生命システム工学部の河合亮作氏、中島由貴 >A)#'&\**.R(>@?B)F<$49234946 氏、また実験の被験者としてご協力いただきました中京大 9&$'3$4334:10&&2':27O 学生命システム工学部の学生の皆様に厚く御礼申し上げま .002R&1'2jn(C)LGB6LGL7 >C)R'42S/\$''J,28,Q$ 2((>@AC)F す。 本研究に対して助成を賜りました財団法人明治安田厚生 事業団に深謝いたします。 参 考 文 献 >).'2R#E0:22J(S:$OR4S$<R E$$2':+&&4 ''3' 32"'":"1 "'1LL'2"$'78U2jo>CA6>?C7 >?)R*&S\ET(>@C?)FE2"'$''"'42$5$4' +&'042$3$444"2&10&$7U$"O jGGG6GG?7 /221((=BBC)FR&1'2*42":24'04'3 >L),$*S8\\)\2"/Q(>@LA)F:24" 9$10$2*"5$4'+&0$42$$3$4&22 9'$'29$'0''44$$*$' +2 *7,0$'"fg(?)C>@6CD?7 42"+$7O.002R&1'2go(G)@CD6@??7 (=B) >@)(&0'/S81+$"O,(>@@C)FI642"50'$ "&10&$F&$2":24$'0''0$6 2*"5$4'$7O.002R&1'2ol(G)>>=L6>>G?7 =B)( ''R\':$4&\\(>@@@)FR$"43'&9$* &0$"43$4$"' 0$$'7T$ O.002R&1'2hn(G) ==>6==@7 =>)(0O\2"Q,(>@@L)FJ$'42"+$F 334'0$3$4"'317JF8$$'I22' E,'&I<27"'!53$"5: 3'0$'"6 47!53$"-9$'1!53$"7 ==)Y4''.Q$$\/<I(>@L=)F,0$342 '&22'2$'*"5$4'*42"+$7 O.002R&1'2gj(C)>AA?6>ACD7 =G)I22$ ., 22$" ET ,$" . \$&33 RS 4"2"J.(>@@?)FR&1'2*42$'0''42" '$''"$*0$2*"$2+6"&*&6'1 +2 *7.OR&1'2jhj/=B=A6/=BGG7
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