POLYGONALmeister(ポリゴナルマイスター)を使ってみた

STL 修正ソフト
「POLYGONALmeister(ポリゴナルマイスター)を使ってみた」
*本使用レポートは、ベータ版のソフトを使用しています。製品版とは UI や機能が異なっ
ている可能性がありますのでご了承ください。
一般的には、3D CAD で作成される形状の典型である機械部品のようなジオメトリでエ
ラーが起こることは稀ですが、それでも複雑にフィーチャーが入り組んだ形状等、多少無
理をして作成したジオメトリでは、変換時にエラーが起こることがあります。また、工業
製品でもスキャンしたモデルなどでは確実に STL の穴埋めやスムージングなどが求められ
ます。
筆者も実はこの修正で苦労することも多く、定番的に使用しているソフトもあるものの
常に使いやすいソフトを探しています。今回は、POLYGONALmeister(以下 PM)を使う
機会を得ましたので、早速使い勝手を確認してみました。
操作の流れとポイントを確認
PM は、STL の修正に特化したメニューのみをアイコンベースでまとめていて、多くの
ソフトのように、メニューからさらにサブメニューがカスケードすることもなく、本当に
目の前に見えているメニューだけで操作ができる、という点がわかりやすいポイントとい
えます。
目に見えるコマンドだけで完結できるわかりやすい UI
それでは、肝である修正の機能を見ていきたいと思います。読み込みボタンを押して少
しばかりエラーのあるファイルを読み込んでみました。今回は、スキャンデータではなく、
スキャンよりもはるかに確認や修正の機会の多い、3D CAD から作成した STL で確認して
みます。
読み込んだ STL ファイル
さて、インストール時の設定では STL のエッジが表示されていません。基本的には、ポ
リゴンを見ながらのほうが作業がしやすいと思いますので、
「ワイヤ」にチェックをいれて、
ここから先はポリゴンのパッチを表示しながら作業を行います。なお、ポイントにチェッ
クを入れると頂点も表示されますが、基本的には表示がうるさくなりますので、何か表示
する意味がなければ、ポイントの表示はいらないでしょう。
3D CAD で作成した比較的シンプルなモデルです。板の部分と小さな人形や文字は別々
のシェルになっています。
これにエラーがあるかどうかのチェックは「クリーニング」で行います。
ポリゴンを表示しクリーニングをクリック
クリーングのメニューを表示して検査をクリックすると、エラーの有無やその種類と数
が表示されています。デフォルトでは、上5つの項目のみにチェックが入っていますが、
ここではこのまま検査を進めました。
問題のある箇所が赤くハイライトされ、またそれぞれのエラーの数が表示されます。エ
ラーの種類を特定したい場合は、特定したいエラー項目以外のチェックを外します。
エラーが表示される
このまま「修正」ボタンをクリックすると、修正後はエラーが完全に修復されたようで
す。基本的にデフォルトのチェック項目のみで作業をすすめる場合には、良くも悪くもほ
とんど知識のないままにクリックをしていっても、よく見かけるエラーであれば修復が可
能なようです。
エラーが修復される
なお、下の4つにチェックを入れるとさらに該当する項目がチェックされます。ただし、
チェックだけならともかく、修正は注意が必要なようです。
手前の人形以外はすべてエラーの状態
例えば「小さなシェル」の詳細オプションを変更して修正を行うと青い表示の人形以外
はすべてがなくなってしまいます。これはゴミ取り用のオプションで適切に使えばとても
便利ですが、自分が何をやっているのかをきちんと把握していなければ、元々デフォルト
でチェックの入っていない項目については、触らないほうがよいかもしれません。
STL への書き出しはまめに
修正が終わったら、これをあらたに STL に書き出すことになります。うっかり、ソフト
を閉じてしまうと、修正の結果がなくなってしまいますので注意しましょう。
さらに、もう一つ注意したいのは、Undo/Redo です。修正をやり過ぎて形状が壊れたと
か、望む形状から外れてしまった時に、直前には戻れますが、それより過去には戻れませ
ん。特に大容量ポリゴンの場合には、そもそもオペレーションに長い時間がかかります。
とりあえず、完全に狙った結果になっていない途中経過のような状態でも、その段階でベ
ストな修正結果が得られていれば、その状態で一度、その STL を書き出ししましょう。特
にメッシュ数が非常に多くて、修正に時間がかかった形状が、結果的にその次の操作で形
状が壊れると、時間的、精神的にダメージが大きいです。
ラッピングの機能
一般に有償版の高価なものにのみ備えられていることが多い機能ですが、PM にはβコマ
ンドとして用意されています。複数のメッシュのボディーがある場合に、外側からラップ
させることで一つのボディーにするこができます。
実は先ほどのモデルは、板や文字人形が別々のメッシュのボディーでそれらが重なって
いる状態になっています。元々別に作っていたのですが、ブーリアンをかけることなくエ
クスポートしているので、そのような状態になっています。
これにラッピングをするとどうなるでしょうか。
ラッピングをかけた様子
実は、ただたんにラッピングをかけるのは、必ずしも望んだ結果にはならないようです。
状況にもよりますが、PM でのラッピングはかなりジオメトリを変えてしまうことがあるよ
うです。今回では、腕の形が変わってしまった他、正の字の上の横棒がなくなってしまい
ました。全体にメッシュも細かくなっています。
今回はデフォルトのエッジ長を使用しましたが、エッジ長を短くすれば解消できるでし
ょう。最適な結果を得るには何回かトライすることが必要と思います。
あるいは下記のように、間にリメッシュなどのステップを挟んでから、ラッピングをか
けると、より望ましい結果になるようです。
リメッシュ
ラッピングした結果
穴埋め
大きな穴があいている場合などに使用することができるラッピングの機能も用意されてい
る。すべての穴に対して使用することも、あるいは狙った任意の穴にのみ適用することが
できます。
フラットに穴埋めをするのか、それとも周囲との滑らかさを考えての穴埋めをすることも
できるが、基本的には自動で行われる反面細かい制御は難しいようです。また、印象とし
ては、この機能はもちろん通常の CAD や CG からのエクスポート時に発生したエラーとし
ての穴埋めにも使うことができますが、一般にそれらのエラーはクリーニング機能で間に
合います。
スキャンしたデータへの対処としては、このように任意の穴を埋めていくことが比較的
容易にできるので便利ですが、そこでできた穴埋めの形状が、本来の形と同じである保証
はないので、最終的にはあらためて 3D CG 等の別ソフトに戻してさらに細かい修正が必要
である可能性もあります。
また、合わせてスムージングの機能も確認してみました。これもメリットが感じられる
のは、やはりスキャンデータのクリーニングで、最初から 3D CAD や 3D CG を使用してい
る場合には、あまりメリットを感じないかもしれません。
その他
その他、いくつかの形状のパターンにおいて、細分化、簡略化、リメッシュ等を試して
みましたが、当初の設定のままコマンドを実行すると、それぞれの操作は問題がないもの
の、形状全体にわたってジオメトリに影響が波及し、極端な場合には、大きく形状が変わ
ってしまう場合があります。初期設定でうまくいかない場合は、パラメタを適切に設定し
なおして実行しましょう。
このソフトに限ったことではなく、この手の処理一般に言えることですが、大容量のポ
リゴンモデルを扱うことが想定される場合には、マシンのスペックは出来る限り高いほう
がよいでしょう。特にメモリなどの差で、一般的には処理速度にかなりの違いが出ること
が考えられます。