保険分野の競争条件が 公平かどうかが焦点に

保険分野の競争条件が
公平かどうかが焦点に
経済活動のインフラとしての役割
ことが多い。金融サービスが他の
通商交渉では特別な扱いを受ける
ス貿易の一部ではあるが、
融サービス分野は、サービ
ービスに係る約束に関する了解﹂
︵GATS︶に お い て、﹁金 融 サ
本はWTOサービス貿易一般協定
ものになると見込まれている。日
が直接的に受ける影響は限定的な
って日本国内の金融サービス分野
心になると考えられる。
けることを通じた間接的影響が中
資先企業などの取引先が影響を受
る。国内金融機関への影響は、融
う面で は 限 定 的 に な る と み ら れ
ービス分野への直接的な影響とい
金
を果たしているため、同分野の自
︵金融了解︶を約束している。金
みられている。現在行われている
た金融サービス章が設けられると
易一般を扱う章とは別に、独立し
TPPにおいても、サービス貿
P交 渉 参 加 国 で は 日 本 の 他 に 米
る︶かどうかは任意であり、TP
を約束する︵義務として受け入れ
ルールを定めたものである。これ
して高水準の自由化とそれに伴う
融了解は、金融サービス分野に関
ことも想定される。
本国内に小さくない影響を与える
分野に関しては、交渉の行方が日
注意を要する点もある。特に保険
分野にも影響を及ぼす場合など、
れているルールが、金融サービス
ただし、他の交渉分野で議論さ
由化やルール策定が経済全体に与
交渉でも、金融サービスに関する
国、豪州、ニュージーランドが約
保などを求めていくことになる。
ルールの適用や規制の透明性の確
撤廃といった市場の開放、適切な
国銀行支店の業務制限等の緩和・
等に対し、外資出資比率制限や外
レーシアやベトナムなどの新興国
め﹂の分野である。交渉では、マ
は、交渉において、いわゆる﹁攻
日本にとって金融サービス分野
求められる余地は考えにくい﹂と
加により、日本が﹁追加的約束を
め、内閣官房他資料ではTPP参
容になるとみられている。そのた
ており、TPPの規定もほぼ同内
ービスに関する附属書︶で規定し
を金融サービス章︵または金融サ
では、金融了解を基本とした内容
や米国のFTA︵自由貿易協定︶
日本のEPA︵経済連携協定︶
すべてのサービスであって締約国
ビ ス﹂は、﹁金 融 の 性 質 を 有 す る
は、協定の対象となる﹁金融サー
例 え ば、日 チ リEPAな ど で
容になるとみられている。
TAにおける規定とほぼ同様の内
規定は、日本のEPAや米国のF
TPPの金融サービスに関する
える影響が大きいためだ。
作業部会がサービス貿易に関する
束している。
他 方、﹁守 り﹂に つ い て は、日
の他の金融サービス﹂で構成され
ス並びにすべての銀行サービスそ
束しているため、TPP参加によ
等の透明性確保などの義務を負っ
的 制 限 等 を 課 さ な い︶、関 連 法 令
セス︵拠点数・資産総額などの量
金融機関が受ける影響は、金融サ
したがって、TPP参加により
てリスト︵留保表︶に記載するこ
場合には、それらの分野を特定し
︵の一部︶を負うことができない
べての保険及び保険関連のサービ
ものをいう。金融サービスは、す
関︶において高水準の自由化を約
ると定義されている。そして、こ
経営幹部及び
取締役会
金融機関の経営幹部及び取締役会の構成員に対する国籍要
件や居住要件を課すことを制限することについて定める。
歯止め規定
協定発効後に各国が自国の規制を自由化した場合、将来に
亘って自由化水準を後戻りさせないことを定める。
透明性
金融サービスに関する規則の透明性について定める。
自主規制団体
自主規制団体(金融分野における自主規制の制定等を行う
機関のこと。日本では日本証券業協会等が該当)が内国民
待遇を与えるべきことを定める。
支払及び
清算の制度
公的機関による支払及び清算の制度へのアクセスについ
て、内国民待遇(外国人・自国民間の無差別待遇)を与え
るべきことを定める。
保険制度は、外国銀行の支店が扱
の 金 融 サ ー ビ ス﹂に つ き、﹁預 金
PAで は、﹁銀 行 サ ー ビ ス そ の 他
い。日本の場合、例えば日チリE
することを求める場合と変わらな
貿易において、関税撤廃の例外と
は交渉次第である。これは、物品
定上の義務を免れられるかどうか
ある分野を留保表に記載し、協
用される見込みである。
り、TPPにおいても同方式が採
の自由化につながるといわれてお
が、透明性が高く、より高い水準
ネ ガ テ ィ ブ・リ ス ト 方 式 の ほ う
務の例外となる分野が明示される
両方式を比べると、協定上の義
採用しているものもある。
法︵ポジティブ・リスト方式︶を
ついては義務を負わないという方
表︶に記載し、それ以外の分野に
約束する分野のみをリスト︵約束
では、協定上の義務を負うことを
日本のEPAのサービス貿易章
︵ネガティブ・リスト方式︶。
とで、協定上の義務を免れられる
と
は
?
ている︵ 図表1︶。
本 は す で にWTO︵世 界 貿 易 機
の金融サービス提供者が提供する
規定
サさ
ーれ
ビる
ス
説明している。
想定
金融
部会とは別に設置されている。
(資料)内閣官房他「TPP協定交渉の分野別状況」
(2
0
1
1年1
0月)
(一部修正)
こで定義された広範な金融サービ
原則的に撤廃すべき数量制限、形態制限及び外資制限を明
示することについて定める。
また、これらの義務の例外に関
数量・形態規制
する規定も設けられている。日チ
外国人と他国の外国人の間の無差別待遇について定める。
スにつき、内国民待遇︵自国の金
最恵国待遇
融機関より不利でない待遇を相手
外国人と自国民に対し、同等(無差別)の待遇を与えるこ
とについて定める。
リEPAなどでは、協定上の義務
内国民待遇
国 金 融 機 関 に 与 え る︶、市 場 ア ク
規定内容
菅原 淳一
政策調査部
みずほ総合研究所
50
2013・10月1日号
2013・10月1日号
51
日本のEPA・米国のFTAにおける金融サービス規定
図表1
TPP参加が金融サービス分野へ与える影響
第2回