敦 賀 港 客船誘致に向けた行動計画 平成 26 年度~30 年度 平成 26 年 3 月 敦賀みなと振興会 はじめに 欧米船社が遊休客船の有効利用を目的として始めた現代のクルーズは、半世紀近い歴史 を経て世界各地の海域に広がりを見せた。「クルーズのメッカ」といわれて久しい地中海や カリブ海に加えて、遅ればせながらその一角を占めるまでになった日本を含めたアジアで は、20 年ほど前から本格的なクルーズの旅が登場し、近年では欧米系に加えてアジア資本 の船社も誕生するなど、いよいよ活況を呈する状況に至っている。 なかでも近年、中国人乗船客を当て込んだカジュアル系のクルーズ船がアジア海域に急 増し、一気にマーケットを拡大する勢いを見せている。こうした中で、アジア各国では就 航船の大型化に伴う港湾施設の再整備と並行して、クルーズ船の誘致合戦が次第に熱を帯 びてきた。しかも、従来は太平洋側に偏りがちだった欧米船社の配船パターンが変化し、 敦賀港が面した日本海側にも数多くのクルーズ船が航行するようになっている。 そこで、敦賀みなと振興会では積極的に国内外のクルーズ船を誘致し、観光客の増加を 図るとともに、港周辺や市街地、近隣観光施設ににぎわいをもたらすべく「行動計画」を 策定する。向こう5年を視野に入れ、文字通り計画的に誘致に取り組むことで、継続性の ある施策を展開し、これまで以上に実りある本会の活動として推進したい。 -2- 【目 次】 はじめに 第1章 行動計画の策定に当たって 1 計画の趣旨と背景 2 計画の位置づけ 3 計画の期間 第2章 1 敦賀港を取り巻く環境 クルーズの種類と期待できる経済効果 2 国内外のクルーズ船社の動向と今後 3 日本海側を取り巻く客船誘致の現状と課題 4 客船誘致における他港連携の状況 第3章 1 計画の基本的な方針 基本的な考え方 2 目標数値について 3 主な推進戦略 第4章 1 誘致活動と寄港時の受け入れ 敦賀寄港の魅力と優位性 2 地元関係者の連携、協力体制の構築 3 寄港継続を目指したフォローアップ 第5章 1 向こう5年間の具体的な行動計画 関係者の役割分担 2 年ごとの主な取り組み 3 総括表 終わりに -3- 第 1 章 行動計画の策定に当たって 1. 計画の趣旨と背景 国内外のクルーズ客船を誘致する場合、港湾関係者だけでなく、関連する観光関 係者らもクルーズ業界の動向を着実に把握して計画的に対応していくことが重要で ある。加えて、国内諸港にとどまらず近隣アジア諸国でもクルーズ客船の誘致に名 乗りを上げている近年では、時宜を得た情報提供と計画的な誘致活動の可否が、数 年後の誘致実績を大きく左右するといっても過言ではない。よって、向こう5年間 を見据えた「行動計画」を策定し、港湾および観光関係者らの英知を結集して他港 との競争に対処することとする。 2. 計画の位置づけ 大陸との交通の要衝として港から発展していった歴史を有する敦賀の場合、国内 外から観光客を迎える玄関口として、陸路(高速道路や鉄道)だけでなく港の役割 をもう一度見直し、これを有効活用することが急務である。北陸新幹線の敦賀延伸 (平成 37 年度)を待つまでもなく、すでに港はある程度整備が進み、係船柱や防舷 材などの対応が図られれば、相応の大型クルーズ船の受け入れも可能である。背後 圏にある多彩な観光資源の魅力を適切な誘致活動でアピールすることにより、観光 や商工関係者、そして市民とともにクルーズ船を心から持てなすための行動計画と 位置付ける。 3. 計画の期間 本計画の期間は、平成 26 年度から平成 30 年度までの5年間とする。年度ごとに目 標や行動指針を設け、大きな世界情勢の変化などがある場合は、その都度、内容の精 査を行うことにより適正に対処する。 -4- 第2章 敦賀港を取り巻く環境 1. クルーズの種類と期待できる経済効果 旅の形態の一つであるクルーズは、 「カジュアル」 「プレミアム」 「ラグジュア リー」の3つのカテゴリーに大別される。それぞれに乗船客のし好や寄港地、 発着港での消費傾向も異なる。 そのなかで、特に注意すべきことが「寄港地か、発着港か」という点。カテ ゴリーに関わらず、寄港地の場合は上陸した後の乗船客らの観光的消費(主に 船社が販売するオプショナルツアー)が経済効果の大半を占める。お土産品購 入・各種入場料・交通費などがこれに次ぐ典型的なものだが、ここでは宿泊や 遠隔地への観光はあまり期待できない。 一方、発着港の場合は異なる特長がある。寄港地に比べると、発着港の場合 はオプショナルツアーによる経済効果が減少する。それとは反対に、クルーズ の乗下船の前後に別の経済効果が期待できる。一例をあげれば、乗船時間より も早めに現地入りして半日観光を楽しむ、あるいは下船後にもう1泊して近隣 観光などを楽しむ場合がある。これらは船社があらかじめ企画して販売するケ ースと、乗船客が独自にプランを立てる場合があるが、それぞれお土産品購入・ 各種入場料・交通費に加えて、宿泊が少なからず期待できる。 もちろん、乗船客の国籍(例えば日本人か外国人か、外国人の場合はアジア か欧米か-など) 、クルーズのカテゴリーによって経済効果は大きく左右される ことがある。ただ、一般的に欧米では発着港に対する誘致合戦に力が入る-と 評する船社関係者は少なくない。 敦賀港の場合は、将来に向けた誘致事業を展開する上で、受け入れ態勢や情 報提供システムの確立状況によって、寄港地か発着港かのセールス展開の方策 を徐々に変化させていく「したたかさ」を身に着けていく必要がある。 -5- 2. 国内外のクルーズ船社の動向と今後 ・日本船社の場合 現在、国内でクルーズ事業を展開するのは 郵船クルーズ(飛鳥Ⅱ) 商船三井客船(にっぽん丸) 日本クルーズ客船(ぱしふぃっくびいなす) の3社がある。船の規模、乗船客のし好など、それぞれ多少の違いとサービ ス面の特長を持っているが、共通していることは乗船客のほぼ 100%が日本人 という点である。 この3社は「ベストなシーズンにベストな寄港地へ」という類似したコン セプトの下で定期・定点型ではない不定期配船で営業展開している。夏場は 花火大会や祭り参観、春と秋の日本一周、冬場はクリスマス-などが典型的 な運航事例だが、近年では自然や歴史、文化にテーマを求めたクルーズも増 え始めた。 2013 年6月末出航のクルーズを最後に「ふじ丸」 (日本チャータークルーズ 運航)が現役を引退後、現段階では日本船社が新造船を含めた新たな船を就 航させる計画はない。よって、当面は残った3隻を全国の港湾がこぞって誘 致することになる。そうした状況の中で、いかにして他港との差別化を図り ながら敦賀港をアピールし、寄港実績を上げていくかが重要となる。 日本船社に限った場合、地元関係者が展開している誘致活動を深化させな がら、今後はこれまで以上に多彩な寄港地観光の魅力を企画提案するととも に、発着港としての交通の利便性訴求とともに、中京・阪神地区からの集客 力をアップさせる取り組みを並行して展開していく必要がある。 -6- ・外国船社の場合 言うまでもないが、敦賀港が誘致対象とする外国クルーズ船社は、日本寄 港の実績がある、またはアジア海域に配船実績があるという2つの場合が想 定される。行動計画に基づいて誘致活動を進める過程の後半では、これにア ジアまたは日本寄港に興味がある「第3のグループ」にアピールしていくこ とも必要になるが、ここでは前者について簡単に現状と今後をまとめる。 「日本に寄港実績がある外国船社」 日本に寄港実績がある外国船社は、その特長として以下にあげる4つに分 類することができる。 ①ワールドクルーズの途上で(主に春) ②夏のアラスカクルーズの前後(春または秋) ③太平洋周遊の途上 ④アジア海域での探検クルーズ これらの外国客船はいずれも日本船の規模を上回る中・大型船が主流だが、 近年は小型船による探検クルーズ(エクスペディションクルーズ)がアジア 海域に増え始め、新たな局面として注目されつつある。ただ、日本近海を一 定期間にわたって周遊するという事例は多くはなく、平成 25 年4月から7月 にかけて運航された日本発着クルーズ(米国プリンセスクルーズ)は全国の 港湾関係者も大いに注目した。 今後は、さまざまな外国船社が日本寄港を増やしていく傾向にあるため、 乗船客のニーズを先取りした観光プランを検討するとともに、並行して地元 関係者の受け入れネットワークを強化。寄港の打診があった際に速やかに対 処できる体制づくりが急務となる。 -7- 「アジア海域に配船実績がある外国船社」 アジア海域に配船実績がある外国船社の先駆けは、シンガポールを拠点に 創業したスタークルーズだった。同社は一時期、日本発着を運航したことも あるが、国内マーケットの成長が追い付かずに、日本から早々に撤退。 その後、2006 年夏のシーズンからアジア定期配船を始めたイタリア・コス タクルーズを皮切りに、米国ロイヤルカリビアンインターナショナルが参入。 春から秋にかけて、中国・上海などを拠点に数多くの日本寄港クルーズを運 航していた。ただ、平成 24 年夏に日中間に政治問題が浮上したため、現在は 中国からの日本寄港はほとんどが中断された状態にある。 一方、これら船社以外にアジア海域に配船している各社は、前述の①~④ の事例がある。ただ、集中して配船する例は東南アジア周辺に限られる場合 が多く、日本を含めた北アジアは「年に数回程度」というのが一般的。その ため、これを新たに敦賀港に取り込むことは容易ではない。 しかし、近年は新たな寄港地を船社サイドが開拓しているという恵まれた 環境も見え始めている。新年度以降、そうした船社に的確にアプローチする とともに、地元関係者が一丸となって船社にさまざまな情報提供と企画提案 を行うことが重要である。 -8- 3. 日本海側を取り巻く客船誘致の現状と課題 ・日本船社の場合 既存3社(郵船クルーズ、商船三井客船、日本クルーズ客船)の配船実態 を見ると、一部のチャーターを除いて日本海側に配船される時期は4月から 10 月までというケースが大半となっている。この時期をねらって日本海側に 面した各港が誘致合戦を繰り広げるため、太平洋側などの港と異なり競争率 は必然的に高くなる。敦賀港の場合は寄港地と発着港の両面でアピールでき る一方、金沢(石川県)や舞鶴(京都府)といった人気観光地を抱える競争 相手が近いことから、誘致実績では苦戦を強いられる状況にある。 今後は、敦賀港として乗船客に提供できる多種多様な寄港地観光、地元市 民らとの交流プログラムなどにさらに磨きをかけるとともに、こうした近隣 港との誘致競争に勝ち抜いていく地元ネットワークの強化が大きな課題とな るものと想定される。 これらが着実に構築され、かつ実行に移すことができれば、 「人道の港」と しての敦賀港のキャッチフレーズに厚みができ、1年に同じ船が複数回寄港 しても新たな魅力ある寄港地観光などを提供できる「懐の深い港」に成長で きるであろう。 -9- ・外国船社の場合 これまで日本近海でクルーズを提供してきた外国船社の配船スケジュール を分析する限り、その配船期間は日本船社の場合と大差はない。しかし、前 述のとおり日本海側に配船する(または配船を希望する)船社は増加傾向に あり、特に近年は九州から北海道にかけて、途中で韓国やロシア寄港を交え ながら北上または南下する事例が目立ってきた。 こうした状況の中で敦賀寄港を実現するには、外国人乗船客が求める寄港 地観光のプランを2-3年前からタイムリーに企画提案することがまず求め られる。欧米人とアジア人では、寄港地観光に対する嗜好は異なるが、日本 独特の文化や歴史、自然景観、食、そして買い物などは、いずれも訴求力が 高いテーマである。 これと並行して、日本近海の周遊型クルーズの中間点(一部の乗船客乗り 換えを含む)の港となるべく、京浜・中京・阪神との交通アクセスの良さを これまで以上にアピールしながら、都市圏だけではなく地元から乗船するマ ーケットを開拓することが重要である。 同様に、外国船社の誘致を目指す近隣港の取り組みを精査しながら、敦賀 港らしい魅力と独自性をアピールできる寄港地観光プランの検討が急務と言 える。 - 10 - 4. 客船誘致における他港連携の状況 全国の港湾管理者は、10 年ほど前から国内外のクルーズ客船誘致に本格的に取り組 み始めた。当時は、東の横浜・西の神戸が代表格のように言われたが、欧米船社によ る中国発着のアジア周遊クルーズが急増すると、地の利がある九州各港の寄港実績が 拡大。これらのスケジュールが3-4泊から次第に長くなると、関西から首都圏、北 海道、日本海側へも寄港地が広がりを見せるようになった。 これを受けて、全国の港湾管理者の中で「近隣港の連携」あるいは「より広いエリ アの連携」を試みる事例が出てくる。 瀬戸内海を囲む港湾管理者で組織する「クルーズせとうち」 (平成 20 年設立、神戸、 宇野、広島、高松、北九州) 、北海道の太平洋側に面した港が立ち上げた「北海道太平 洋側4港湾連携クルーズ誘致連絡会」 (平成 23 年設立、函館、室蘭、苫小牧、釧路)、 日本海側で客船誘致に力を入れる港が協力して組織した「環日本海クルーズ推進協議 会」(平成 24 年設立、小樽・伏木富山・舞鶴・秋田/船川/能代、境港)などが代表的 なものである。 これらの連携組織は、メンバーが集まって年に数回の打ち合わせ会議を行うほか、 東京などの都市部で船社や旅行業者を招いた誘致セミナーを毎年実施。単独の港では 限界がある誘致活動の継続性、アピールできる寄港地観光のさらなる多様化に取り組 んできた。現時点では、船社関係者からの評判は悪くはない。 ただ、課題がないわけではない。複数港が連携することで誘致パワーの絶対値は確 かに強くなる。その継続性も、より長くなることが期待できる。その一方、メンバー 各港の魅力を深く訴求することは自ずと制約を受けることになる。また船社の声とし て「連携する港側のメリットは理解できるが、船社には何か利点はあるのか。連携し た各港に寄港すると、従来にはないインセンティブが与えられるのか」といった疑問 を呈するケースもある。 現時点では特定港と連携していない敦賀港だが、少しの間、連携組織の活動状況と 成果のほどを見極めてから参画するかどうかを判断しても遅くはないだろう。 - 11 - 第3章 計画の基本的な方針 1. 基本的な考え方 国内外のクルーズ客船誘致を進めていく上で、敦賀港が目指すものは港湾施設の 利用促進に加えて「港周辺のにぎわいづくり」であり、客船で来訪する観光客によ る市街地の活性化、周辺観光地の利用者増加、そして来訪者がもたらす経済効果の 獲得である。 そのためには、港湾関係者と観光・商工事業者のさらなる連携関係の強化はもち ろん、地元市民らで組織するNPO団体などの協力が不可欠である。こうしたネッ トワークが築かれて初めて、誘致活動は厚みのある懐の深いものとなり、さらに寄 港時の「もてなし」でも乗船客らのニーズを先取りした対応ができるようになる。 行動計画の策定に当たり、この点をあらためて関係者の間で共有・深化するとと もに、共通の目標に向かって着実に歩を進めるべく、以下の考え方をあらためて列 挙する。 ※港湾・観光・商工事業者のさらなる連携関係の強化 地元市民らで組織するNPO団体の協力 強固な誘致・受け入れネットワークをつくる ↓ ※クルーズ客船誘致によって… ・港周辺のにぎわいづくり ・市街地の活性化 ・周辺観光地の利用者増加 ・来訪者がもたらす経済効果の獲得 …を目指す - 12 - 2. 目標数値について 新年度から本格的な誘致活動を展開するに当たり、最終的な目標数値と中間点の 努力目標を設定する。国内の他の先進港事例でも明らかなように、誘致活動の成果 は通常、2-3年後に現れる場合が一般的である。よって、平成 28 年を中間点、平 成 30 年を最終目標点として以下のように努力目標を掲げる。 ・中間目標(平成 28 年) :内航8回、外航2回(計 10 回) ↓ ・最終目標(平成 30 年) :内航 15 回、外航5回(計 20 回) ※ご参考(平成 25 年) 敦賀港:内航 4 回 金沢港:外航 11 回、内航 7 回 京都舞鶴港:外航 4 回、内航 3 回 境 港:外航 12 回、内航 3 回 - 13 - 3. 主な推進戦略 客船誘致を展開する場合、船社は港湾施設のスペックだけでなく、背後の観光情報 や季節のイベント、交通機関や道路情報のほか、敦賀港に寄港しなければ楽しめない、 または味わうことができない「独自の魅力」を求めてくる。これに速やかに対応して いくとともに、より踏み込んだ、一歩先を行く企画提案型の誘致活動を展開すること が将来の寄港実績アップにつながる。こうした考え方に基づき、地元関係者が向こう 5年間に推進していくべき主な戦略をまとめる。 ①地元の誘致受入ネットワークを構築 誘致活動で連携の根幹をなす港湾と観光部署の連携をベースに、地元の商工 関係者や街づくり、町おこしを推進しているNPO法人などとのネットワーク づくりに着手する。 ②地元関係者を対象とした啓蒙セミナーなど クルーズ業界の基礎知識や誘致活動の基本、寄港時の対応などを関係者がき ちんと理解し、乗船客と船社の双方に喜んで寄港してもらえるよう、地元向け の啓蒙セミナーまたは他港の受入事例などを学ぶ研修会を1年に2回程度開催 する。これを毎年春と秋などに継続実施することによって、誘致活動だけでな く受け入れ態勢も徐々にレベルアップを図ることができる。 ③船社などを招いたモニターツアー 近年はインターネットが普及し、観光を含めた各種寄港地情報が入手しやす い環境になった。しかし、実際に現地に足を運び、関係者と意見交換すること が重要であることに変わりはない。年1回のペースで船社や関係者を敦賀港に 招聘し、観光素材やツアー造成時の課題などについて率直に意見交換する場を 設ける。 ④誘致セミナー、海外コンベンションの参加 誘致活動を展開する地元関係者のネットワークが構築され、クルーズに対す る理解が進んできた段階で、船社や旅行業者が集中する東京(または大阪など) で「敦賀港・客船誘致セミナー」(仮称)を開催する。定例化することによって 情報提供と意見交換の場が常態化し、敦賀港ファンの醸成にもつながる。 さらに、予算措置ができた時点で米国マイアミやシンガポール、上海などで 定期的に開かれる「クルーズコンベンション」 (国際会議と商談会)に参加する。 毎年出向く必要はないが、3年に1度くらいの参加ペースが確保できるよう努 力する。 - 14 - 第4章 誘致活動と寄港時の受け入れ 1.敦賀寄港の魅力と優位性 新年度からクルーズ客船の誘致に向けて本格的に活動するに当たって、まず、地 元の敦賀(港) 、あるいは近隣の観光地を含めて「クルーズの旅」という観点で敦賀 港の置かれた現状を、以下に整理する。 クルーズ船社に対して敦賀寄港をアピールする際、その魅力ある側面と近隣諸港 と比較した場合の優位性は、下記の項目が特筆できる。 ★観光面での魅力(主に乗船客向け) ・福井県のほぼ中央に位置し、嶺北および嶺南へのアクセスに優れる ・著名な観光地(気比の松原、三方五湖、越前海岸、琵琶湖など)に近い ・港から繁華街までは比較的近距離にある ・地方都市でありながら、長い商店街がある ・乗船客にも魅力的な花火大会や祭りなどのイベントがある ・四季折々の自然、郷土色あふれる「食」が豊富 ・NPOなどの協力で地元市民との交流ができる(遊敦塾など) ・ 「人道の港」という立派なストーリーがある ★港としての優位性(主に船社向け) ・天然の良港であり、静穏度が高い ・外海から入って来る時の景観が素晴らしい ・橋や空港といった船の高さを制約する要因がない ・中京および阪神圏からのアクセスが良い(集客面でも優位) - 15 - 2.地元関係者の連携、協力体制の構築 これまで何度か触れてきたように、実りある客船誘致活動を展開していくために は、港湾をはじめ観光や地元の商工関係者、市民らで組織するNPOなどの連携と 協力が不可欠である。敦賀港ではすでに「敦賀みなと振興会」を立ち上げ、誘致に 向けた核となる組織は出来上がっている。 新年度以降は、 「敦賀みなと振興会」が中心となって「行動計画」の趣旨に沿った 地元関係者らの連携、協力体制を確立、推進そして深化させていくことが求められ る。その活動をスタートするに当たり、以下のような実行組織の立ち上げ、または 「敦賀市観光推進ネットワーク」など既存組織の活用を早急に検討する。 ①敦賀港クルーズ客船誘致受入協議会(仮称) 想定会員:港湾管理者、地元自治体、観光協会、商工関係者 地元市民と乗船客の交流・体験プログラムを提供できるNPO ※幹部クラスではなく現場で実際に対応する方々が望ましい 主な活動: 「行動計画」に基づいた具体的な誘致活動全般 (船社および旅行業者に対する企画提案型のセールス… など) ②敦賀みなと賑わいサポータークラブ(仮称) 想定会員:地元市民、県民など (客船ファン、交流やもてなしが好きな人… など) 主な活動:歓送迎イベントをはじめ岸壁周辺で行われる関連行事への協力 接岸中のおもてなし、出港時の見送り…など ※顔写真入りの会員証を発行し、SOLASエリアへの入場 を認める措置を講じる必要あり ⇓ 将来に向けた潜在的な乗船客の掘り起しにも… - 16 - 3. 寄港継続を目指したフォローアップ 今回策定する「行動計画」に基づいて積極的な誘致活動を展開した結果、敦賀港に 寄港する国内外のクルーズ客船が増えてきた場合、これを継続させる戦略を並行して 実施していくことが目標数値の達成に向けた近道であると考える。 その場合、第3章に示した「誘致推進戦略」を地道に着実に実行することが求めら れることは言うまでもない。実際の寄港後、敦賀港が取るべき具体的な施策について 以下に具体的にまとめる。 ①国内外の船社を招いた「体験型」モニターツアー 実際に敦賀港への寄港が実現した船社にとって、2回目以降の寄港を獲得す るには、具体的な敦賀寄港に関する魅力を実際に体験してもらうことが必要と なる。そのためには、1年に1回以上の敦賀訪問を促し、積極的に敦賀港がア ピールする魅力を体感してもらうことが重要と言える。 敦賀港を起点に、嶺北や嶺南にある観光素材を実際に訪問し、乗船客が参加 するであろう寄港地ツアーを模擬体験してもらうことで、内在する問題点や課 題を洗い出し、以後に催行する寄港地観光の魅力アップを目指す。 時間的に可能であれば、1泊2日などで来訪の機会を創出し、体験とその後 の意見交換会をセットで盛り込み、関係者へのフィードバックを図る。 ②都市圏で行う敦賀港客船誘致セミナー 敦賀港への寄港継続を実現するために、1年に1回などのペースで首都圏や 阪神圏で「客船誘致セミナー」を開催する。船社やチャータークルーズに強み を持つ旅行業者(または企業や団体といったオーガナイザー)を招き、最新の 観光情報を提供することにより、さらなる敦賀寄港の獲得を目指す。 - 17 - 第5章 向こう5年間の具体的な行動計画 1. 関係者の役割分担 ①港湾関係者 岸壁、ターミナルといった客船寄港に必要なハード整備だけでなく、航路幅 や水深、回頭水域などについても安全確保に努める。併せて、船舶代理店と協 力してCIQ(税関・入国管理・検疫)や警察、消防など関係機関と相互に連 携しながら着実に受入対応していくことで、船社に安心感を持って寄港しても らえるよう努力する。 ②観光関係者 寄港時の観光インフォメーション機能を拡充させるとともに、船社ごとに異 なる乗船客ニーズの把握に努め、タイムリーで前広な最新観光情報の提供、新 たな寄港地観光ツアーの企画提案を常態化する。さらに和英など、観光パンフ レットや各種案内表示の多言語化を促進する。また、必要に応じて国際交流協 会などと連携し、多言語化対応のサポート体制を構築する。 ③商工関係者 経済効果を高めるためにも、乗船客が支出しやすい(したくなる)仕掛けづ くりが必要。パフォーマンス効果が見込まれる岸壁周辺での試食試飲など、興 味と関心を持たせることによって市中での消費拡大が期待できる。ワンコイン (500 円) 、1000 円均一、10 ドル均一 … などの取り組みも有効。 ④NPO、市民ほか 日本船で来訪する乗船客は、寄港地観光への参加率が頭打ちとなる中で、地 元との「ふれあい」を求めるケースが増えている。自然散策、そば打ちや紙漉 き、陶芸などの「ものづくり体験」 、ボランティアガイドと行く町歩き … とい った多彩なプログラムを四季折々に用意する。可能な範囲で入出港時の歓送迎 イベントにも、これら関係者の参画を呼び掛ける。 - 18 - 2. 年ごとの主な取り組み ・平成 26 年度(地元啓蒙Ⅰ期、船社セールスⅠ期) ①国内外のクルーズ客船寄港に備えた地元関係者の啓蒙活動 協議会などの立ち上げ、客船受入実務セミナー など ②定期的なポートセールスとモニターツアー 内外船社、旅行業者へ企画提案型の訪問を展開(年数回) 地元視察を中心としたモニターツアーの実施 など ・平成 27 年度(地元啓蒙Ⅱ期、船社セールスⅡ期) ①国内外のクルーズ客船寄港に備えた地元関係者の啓蒙活動 協議会や受入実務セミナーの定期開催 など ②ポートセールスとモニターツアー 内外船社、旅行業者へ企画提案型の訪問を展開(年数回) 地元視察を中心としたモニターツアーの実施 など ・平成 28 年度(市場創出Ⅰ期、国内・海外セールスⅠ期 =中間目標) ①敦賀港からの乗船マーケットの創出 市民クルーズの実施、中京・阪神圏と連携した集客展開 など ②都市圏での誘致セミナーとモニターツアー 船社、旅行業者らを対象とした誘致セミナー モニターツアーの実施、海外コンベンションへの参加 など ・平成 29 年度(市場創出Ⅱ期、国内・海外セールスⅡ期) ①敦賀港からの乗船マーケットの創出 市民クルーズ、中京・阪神圏と連携した集客の頻度を高める など ②都市圏での誘致セミナーとモニターツアー 船社、旅行業者らを対象とした誘致セミナー モニターツアーの実施、海外コンベンションへの積極参加 など ・平成 30 年度(総仕上げ =最終目標) ①地元関係者の啓蒙活動と乗船マーケットの創出 協議会や受入セミナー、市民クルーズ、中京・阪神圏と連携した集客 ②ポートセールスと誘致セミナー、モニターツアー 企画提案型の訪問、都市圏での誘致セミナー モニターツアー、海外コンベンション参加 など定着化 - 19 - 3. 総括表(タイムスケジュール) 本計画の対象期間である平成26年度から平成30年度まで5年間の主な活動、取り組みについて、タイムスケジュールの形で以下にまとめる。 世界情勢の変化など著しい動きがあれば、その都度、内容を精査して適正に対処する。 H26年度 H27年度 H28年度 H29年度 H30年度 各種協議会の立ち上げ 各種協議会の定期開催 各種協議会の定期開催 各種協議会の定期開催 各種協議会の定期開催 客船受入実務セミナー 客船受入実務セミナー 客船受入実務セミナー 客船受入実務セミナー 客船受入実務セミナー 船社・旅行業者の訪問 船社・旅行業者の訪問 市民クルーズ・近隣集客 市民クルーズ 市民クルーズ・近隣集客 モニターツアーの実施 モニターツアーの実施 船社・旅行業者の訪問 中京・阪神圏からの集客 中京・阪神圏からの集客 モニターツアーの実施 都市圏での誘致セミナー 都市圏での誘致セミナー 海外コンベンションの参加 モニターツアーの実施 モニターツアーの実施 海外コンベンションの参加 海外コンベンションの参加 ※新たな5カ年計画策定 中間目標の確認 最終目標の確認 内航8回・外航2回(計10回) 内航15回・外航5回(計20回) 地元啓蒙Ⅰ期 ⇒ 地元啓蒙Ⅱ期 ⇒ 市場創出Ⅰ期 ⇒ 市場創出Ⅱ期 ⇒ 船社セールスⅠ期 ⇒ 船社セールスⅡ期 ⇒ 海外セールスⅠ期 ⇒ 海外セールスⅡ期 ⇒ 総仕上げ ※上記の取り組みのほか、他港の誘致・受入に関する動向を学び、情報収集や率直な意見交換をする目的で 全国クルーズ活性化会議、全国クルーズ客船誘致連絡会などに積極的に参加する。 終わりに この 10 年ほどで日本の港湾関係者が国内外のクルーズ客船誘致に傾ける情熱は大きく様 変わりした。かつては物流一辺倒だった一部の港湾管理者さえ、 「これからは港のにぎわい創出が重要で、人とモノが集まる港を目指す」 と公言している。 そうした状況の中で敦賀港ではこの「行動計画」を策定し、地道に一歩ずつ着実な誘致 施策を展開する道を選択した。港湾関係者はもとより、観光事業者や商工関係者、地元市 民やNPO団体など、地域をあげて国内外のクルーズ客船誘致と寄港時の「もてなし」 、魅 力的な寄港地観光の造成に向けてについて知恵を絞り、他の港では到底成し遂げられない 取り組みを今後5年をかけて展開していく。 この「行動計画」にそって前述の関係者が連携・協力していくことをここに切に希望し てやまない。 - 21 - (行動計画策定業務委託先・日本海事新聞社)
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