1 01 中期 フランス語における属詞の前置について 近 江 康 則 現代 フランス語 においては,その構造,特 に語順 は,かな り厳格であることはよく知 られて ( l ) r t bur gによれば, この ようなフラ ンス語の語順 は直接 的 d i r e c tある いる ところである。Wa ヨ n ・ 6 いは前進的 pr o g r e s s i fと,L e Bi do i sによれば,論理的 l o iqueと呼ばれる。 しか し何 らかの g 感情的理由,あるいは強調か ら主語や直接 目的語の位置 に変化が起 こることが ときどきある。 本稿で取 り扱 う属詞 に関 して も,現在では<主語 +動詞 +属詞 >の語順がほぼ確定 している といえるだろう。 しか し主語の倒者を直接 目的補語の動詞 に対する前劇 L こ比べ ると,属詞の場 令, この基本的な語順 に変化 を来す ことが遥かに多いように思 える。 Gr e v i s s eは,今 日,近代 フランス語の規範 と見 なされ,且つ文筆家 にとってその座右の書 として利用 されている,彼の名著である 『 良 き慣用』の中で ,1 7世紀以降の文学作品か ら例文 を引 きなが ら,硯代 フランス語 における属詞の位置 について次の ように述べ ている : Qua n do nve uts o ul i g ne rl ava l e urdel ' a t t ibut r ,o nl epl ac epar f o i sa va n tl eve r be,e n t 8t edel a Lpr o po s i t i o n,s ur t o ute npo 由i e: . . .Te l,at t ibut r ,S ePl a c es o uve nte nt e t edel a pr o po S i t , i o n: . " ( 5 ) L' i nve r s i o ndel ' at , t , ibut r , al i e uaus s ida m sde sl o c ut i o nsc o ns ac r 6 e s . . . この ような属詞の倒置は格変化 をしていた古 フランス語の時代 には もっと広範囲に且つ頻繁 に見受け られただろう。古 フランス語か ら現代 フランス語-の進化の中で,格変化 を失い,そ の機能 を徐 々に語順 によって表す ようになっていった中期の フランス語ではどうであっただろ うか。中期 フランス語の時代 に語順が確定 し始めるとはいえ,その初期の段階ではまだまだ古 フランス語の名残 として,古い用法が見受けられることは容易 に想像で きるO そこで本稿では,古 フランス語か ら近代 フランス語-の橋渡 しの時期 である中期 フランス語 における属詞の前置 について,その状況 を調査 し,検討 を試みることにする。 テクス トとして,1 5 世紀 中頃の作 品 『 新百物語』 または 『 ふ らんす デ カメロ ン』Le sCe nt Noz L U e l eSNouu l e l l e s,Edi t i o nc it r i quepa rFr ankl i nP.Swe e t s e r ,L ibr ir a ieDROZ,Ge n色 ve, 1 9 6 6を使用する。以下 <CNN>と省略す る。 便宜的に独立節あるいは主節 における場合 と従属節 における場合に分 けて検討 してみ よう。 Ⅰ.独立節 ・主節の場合 フランス語史の碩学であ り且つ権威である Br u no tは,古 くか ら属詞は現在の位置 に,す な わち動詞の後 に置かれたが,その倒置は頻繁であった し,今 日もなお不可能ではない とし,フ ランス語史上過渡期 に当たる中期 フランス語 における属詞の倒置 に出会 うことを次の ように述 1 02 天 理 大 学 学 報 ベ ている : L' a t t ibutat r r 由a nc i e nne me nte nv ie uxf r a n9 a l SS apl a c ea c t ue l l ede r r i台 r el eve r be . To ut e f o i Sl e Si nve r s i o ns6 t a i e ntf r 6 que nt e S ,e tO nS ltqu' a e l l e snes o ntpase nc o r ei mpo s s i bl e s .Bi e ne nt e ndu,e l l e ss er e nc o nt r e ntda m sl ap6 io r dei nt e m6 r d i a i r equeno us6 t u(6) di o ns . そ して Gr e vi s s eがすでに現代 フランス語 についていっているように,<CNN>の調査 にお e lは しば しば文頭 に置 かれ主語倒置 を引 き起 こ した いて も,当然の ことなが ら属詞形容詞 t り, また是認 された表現で属詞の倒置が起 こった りする : 1) ・ ・ ・ ; 些 f utl al e pn,c em' e s tadv iS ・( p1 5 6 8) 2)obi e nhe ur e uxs o ntl e spe r e squi …!( p. 5 5 6) 第 2例 については,L e Bi do i sが," Ce r t ine a sphr as e sdef o m ee r xc l ma a t i ve,a ya n tu ne f o r t eva le r a u 飽c t i veo ul y ique r ( " T ) と指摘するもので,感嘆文で時には動詞 を省略 して前置 さ れた属詞形容詞 を強調 「オー,なん と幸せ なことだろう,...である父たちは !」す る,い わゆる感情的表現で今 日で も見かけ られる文例である。 しか し次の ような属詞の前置 も認め られる : 3) ・ ・ ・ , 聖撃 e S tl as e nt ee tl a- yeadr e s 紀 deypar ve ir m ; ・ ・ ・( p・ 1 6 5 ) 4)pa rdi e u,bi e nas pr ee tt e r ibl r ee s te l l e,di s tf re r eAubr y;( p. 5 3 6) 5) -c e l l eo una t ur ea vo i tm i ss o ne nt e nt edel af ir a et r e S be l l e,me s c hi nee s t o i t ,f ia S n tl a eme s nag ec o m u n, . . .( p. 1 1 5 ) 6)Cebo nho mme,vo ya n ts abo nnef e mme. . . ,t aT uma rr ye tde S pl iB a a nte S t O i tqu' i l nepo vo i tpl us , . . .( p. 51 5 ) 7)I Ipo r t itl a ar o bec ou rt af as 8 0 nd ec o urt;ta, ag a i l l ar de s t o i tquel ' o nneP O I us… ( p. 5 30) vo i tpl 8) - Po udeg e nse St O i e nte s c o ndui zdel ' mo a re u us edi s 出buc i o n,u oi r es id i g nes e s t o i e ntd' i c e l l er e c e vo i r .( p. 1 0 5 ) e ,- , a l , -, ! 吐竺 I uyf utded i r eauc ur 6・・・( p・ 4 40,e t c ・ ) 9) 第 3例 は<属詞 ( me s me)+動 詞 ( e s t )+主語名詞 ( l aS e nt ee tl av T ・ a yeadr e S S edeypa r - a s pr ee tt er ibl r e)+動 詞 ( e s t )+主語代名詞 ( e l l e) >の語 ve ni r ) >で,第 4例 は<属詞 ( 順である。 e lの場合 と同様であ り,且つ me s me ( m蝕l e)は意味上,属詞 になる 第 3例 に関 しては,t 比較級形容詞が この語順 を取 ることがあるの と同 じであろうO また第 4例 も,属詞の強調 とし rdi e uに引 きず られて語順倒置 されているとも考 て倒置が行われているとも, また間投 詞 Pa ue t えられる。この 2例 は現代 フランス語 において も許容 される範囲内にある と思われる。Hug は<属詞 +動詞 +主語 >とい う語順 について,必ず しも今 日の習慣 に反するわけではないこと を次の ようにい う : 中期 フランス語における属詞の前置について 1 03 I le s ti nut i l ed' i ns i s t e rs urc e t t ec o ns t uc r t i o n,qul n ' e s tpasa bs o l ume ntc o nt r ir a ea no s コL 16 ha bi t ude s .No usdi s o nse nc o r e, gr ande舟ts as ur pT ・ i s e. しか し,第 5例 は<主語 ( c e l l e )+属詞 ( me s hi ne)+動詞 ( e B t O i t ) >の語順 で,第 6例 Cebo nho mme)+属詞 ( t a ntma r r ye tde s pl is a a nt )+動詞 ( e s t o i t ) >で,第 は<主語 ( 7例は主語が省略 された並置文で,<属 詞 ( t a nt ga i l l a r d)+動詞 ( e s bi t ) >の語順 であ る。 主語 ( c e l l e ) ]は+雑 第 5例は 「自然の思 し召 しによって大変美 しい娘がいたが,その娘 [ me s c hi ne =s e r va nt e) ]で+あった [ 動詞 ( e s t o i t ) ] 」 という内容 用の仕事 をする女中 [ 属詞 ( a nt… queという表現の組み合わせである。第 7例は主 で,第 6例 ・第 7例は属詞形容詞 と t ue 以下に続 く文が ` q̀u' i lnepo vo i t 語が省略 されているが,第 6例 とともに考えるとき,q ' 'で,同 じような言い回 しである。t a ntを伴 った属詞形容詞が pl us ' '" 可uel ' o nnepo vo i tpl us t r e+形容詞 +de+不定法>の構 前置に作用 したのであろうか。第 8例は現代 フランス語の<g o i r eが影 文で,形容詞が前置 された例である。副詞ではあるが,等位接続詞的に使用 された v 響 しているのであろうかo また第 9例 は,現代に も残 っていて,そ して<CNN>において も " Fo r c ee s t( aqn.)dei nf . ' 'で,元来は非人称表現 " i le S tf o r c ede ' 'であ 何度か出て くる表現 ( 9 ) i le s tf o r c ede "で使 うことは希であるという。現代 フランス語 に古 るが,T r 6s o rによると " い構文が残 った一例である。第 9例の成句的表現 を除いて,このような語順は今 日では通常あ まり見受けられないだろう。 独立節 ・主節に関 して,<主語+属詞+動詞 >とい う語順はこの第 5例 ・第 6例のみである か ら,中期 フランス語においても例外はあるもののほぼ現代の語順が固まりかけていたといえ るだろう。 しか しなが ら,等位文においては現代 フランス語 とはかなり事情が異なるようである。種々 の等位接続詞の後での属詞の前置 を検討 してみ よう。 Et: 1 0) ・ ・ ・ , e tpa rc epo i ntd f ute tde mo ur a.( p・ 3 5 ) 1 1 ) ・ ・ ・ ; e ts iaul t r e me ntf a i s o i e,重臣竺 neS e r O yed' e s t r evo s t r eS e r it v e ur ・( p・ 4 9 4) ・ , e t 旦 些 空 n e f u s t e s o n c q u e s , ( p ・ 5 1 6 ) 1 2) -; e t聖空重 l uyf utdes e ul l e me ntve o i rl ede r ie r r e: …(p・1) 1 3) 代表的な等位接続詞である Etの後での属詞の倒置は上記 4例のみである。中期 フランス語 における Etの後での主語倒置の多 ざら、らすれば,極めて少ないように思えるO 3 例はともに i l(3人称単数男性 と非人称)の, いずれの例文 も主語の省略で,第1 0例 と第1 e r o yeは条件法現在形 1人称単数のすでに消滅 して しまった活用形であるか ら,主 第1 1 例の s eの,第1 2 例 は動詞の活用形 ( us f t e s )か らして主語人称代名 詞 2人称複数形 語人称代名詞 j vo usの省略である。なお,第1 2 例の ように否定文で属詞が前置 されているとき,現代 フラン ス語 と同様 に 2つの否定辞 によって動詞を挟むのはこの例だけである。 di g ne )に動詞 を介 して形容詞の 第1 1 例は第 8例 と同様の構文で,前置 された属詞形容詞 ( d' e s t r e vo s t r es e r it v e ur )が続いた例である。第1 3 例は過去分詞 pe r i Sが 8 m t r e動詞 補語 ( e+不定法 >が さ t r e動詞に後続 した例である。 この場 に前置 され,過去分詞の補語 となる<d 1 0 4 天 理 大 学 学 報 t r e+形容詞 +de+不定法 >構文の形容詞 と同 じ価値 を持つ と考 える こ とが 令 ,過去分詞 は <6 i ll uif utpe mi r sde …' 'となる ところである。Br uno t で きる。現代 フラ ンス語 に改めれば," は6 t r e動詞 とともに作 られる過去分 詞 について,それ を普通の属詞 と して扱 うことを次 の よ うに述べ ている : Lepar t i c i pec o ns t ui r ta ve ce s t r en' e s tpasa ut r e me ntt r it a 占qu' una t t ibuto r r di na ir e;i l ( l l ) n' yado nepasl i e udes ' yar r 8 t e r. Hug ue tも同様 にこの過去分詞 を属詞 と見 なす ことを次 の ように注付 け している : Onpe utr n ge a rda m sl am8 mec a t 6g o iel r e spr o po s i t i o nsda m sl e s que l le sl epar t i c i pe l nt r el es u j e te tl ' aux i l i ir a eG t T . e.Ons lte a ne fe tqu' auXVI es i 色 c l e, pas s 6e a ti nt e r c a6e b i e npl usquedeno bJ O rS u ,l epr at i c i pea v i a t n u e v l a e u r d i s t i n c t ee t p o u v i a t s o u v e n t a t r e ( 1 2 ) . . . c o ns i d6 r 6c o mmeunve it r a bl ea t t ibut r : 第11 例 も第 1 3 例 も文の均衡の観点か らして,主語が省略 されているので,動詞 を文頭 に置 く ことを避 け,属詞形容詞 ( あるいは過去分詞) とその補語 で動詞 を挟 む構文 になっている とい える。文体上の属詞の前置 といえるか も知れない。 なお,主節 におけるくさ t r e+形容 詞+de+ 不定法 >の ような構文での属詞形容詞の前置 は第 8例 ・第11 例 ・第 1 3 例 の 3例 だけである。 Car : 1 4) -,C αTme ndi ante s t o i t , -( p・ 3 6) 1 5 ) . . . ,c arbe l l e ,ge nt ee tbo nnee s t o i t .( p. 1 0 4) 1 6) ・ ・ ・ , C ari mpo s s i b l eS e r O i tquepai xf us te nnul l eas s e mb16 eo ue l l ef us t ・( p・ 4 9 0) 1 7 ) ・ -;c ardeho nne s t e spar e ns空重 ,些 ame r ve i l l e s ,J 聖些 d eXV a n so ue nv ir o n, ge nt e ,do ul c ee tt r e s bi e nadr e c 6 ee s t o i t ,( p. 5 5 7 ) Ca rの場合 も Etと同様 ,4例すべ て主語が省略 されている。4例 とも省略 された主語 は 3 人称単数男性 であ る。第1 6 例 は非人称表現 で,非人称 の主語 i lの省略であ り,現代 フラ ンス i ls e r ai ti mpo s s i bl eque …' 'となるべ きところである。第 1 4 例 ・第 1 5 例 の ように簡 語 な らば," 潔 な文の場合 のみな らず,第1 7 例 の ように,属詞が 6つ もあ り, しか もその属詞 には修飾語が 付加 されている もの もある。加 えて,最初の属詞 n6 eに,その補語 deho nne s t e spa re nsが 更 に前置 されているのである。 これは極 めて長い属詞群が動詞 に前置 され た珍 しい用例 であ る。 mal S : … donte l l en' e s t o i te nr ie nsc o nt e nt e,mat st r e s t r o ub1 6 ee tma r r yee ne s t o i t .( p. 1 8) 7 0 ) . . .m at st r e sj o ye uxe tpl i8 a n tho a mmee s t o i t , …( p. 1 1 5 ) 1 9 ) r e s c o nvo i t e uxe s t o i te tho mmedeg r a nddi l i y,T nai st 2 0) . . . ;e taus s in' e s t o i ts o nmar g堅 望, ・ ・ ・( p・ 2 8 9 ) 中期 フランス語における属詞の前置について 1 05 21 )Ma i st o ut e s f o i z ,quo yqu' i He n]f us t ,o nc que spu主 sav e c que ss o n ma r ynes e ai msde s ho no r 6 ee tr e pr o uc h6 ee nt r es e sa mysde pui sde mo ur a.( p. 3 2 3) t r o uva, 第2 1 例の a insは今 日では ma iSの意味である。ここで もやは り主語代名 詞 i lは省略 されて いる。第2 0 例 を除いて,属詞は等位接続 詞 e tを介 して 2つの形容詞 または過去分詞 ( 第1 8例 ・第2 1 例),あるいは 2つの形容詞 を持 った 1つの名詞 ( 第1 9例)か ら成 り立 っている。 第2 0 例は第1 9 例 とは少 し違い,ho m edeg r and d i l i ge nc eは e tを介 して動詞 に後置 され ている。 1つの名詞 ( ho mme) に等質の 2つの形容詞 Go ye uxe tpl iS a nt a )が係 っている第 1 9 例 の場合 とは異な り,第2 0例の ような場合 には,e tで繋がれた名詞 ( e tho mmedeg r nd a di l i ge nc e ) を動詞 に前置 し,<属 詞形 容詞 e t属詞名詞 >とす るのは無理 が あるだろ う。 な ma i se s t o i tho m e…"となっている。 お,ヴァリアン トによれば " me re u rもあ るが,ほ とん どすべ て g t r e 以上 に検討 して きた ように,繋合動詞 は,一部 に de であ り,そ して主語が省略 され属詞が前置 されることがある中期 フランス語的な表現の場合, 慕ll・1 2 例 Ge ,vo us ) を除いて,非人称 も含め他 はすべて 3人称であることが分かる。等位 t(4例),c a r( 4例),mai s(4例)であ り,他の等位接続詞 では,属 接続詞 に関 しては,e 詞の前置は見当た らなかった。 Ⅰ.従 属 節 中期 フランス語では,従属節 において も属詞の前置は認め られ る。む しろ従属節 の方が遥 かに多 く見 られる。現代 フランス語では希なことであろう。従属節 を名詞節,副詞節,形容詞 節 に分けて検討 してみ よう。 1.名詞節 :補足節 と間接疑問節 に,更に補足節 を主語が表現 されている場合 と省略 されて いる場合 に分 けて考察 して行 こう。 A.補足節 a)主語のあるとき : 2 2)Mo ns e i g ne url' of nc i l,vo a yantas e sye lxque坦 e u s t o i tno s t r ec ur equ' o nl uybapt i s o i t ". .( p. 5 3 0) 2 3)L' o s t e, -,l e rr u e S po ndi tg r ac i e uB e me ntque些 5 4 8) n' e s t o i te l l equ' i l zc ui do i e nt .( p. 2 4) ・ ・ ・di s antque ,t n tquec a e s ta ne lyf us t , 睡 竺i lnes e r o i t , -( p・ 8 6) , . . .( p. 2 5 ) -o rm' av e zvo usva inc ue tbi e nmo ns t r 6 ques agee tt r e s bo nnevo use s t e s 4 6 6) 第2 2 例 ・第2 3 例 を見 て解 るように,名詞節 において も t e lは動詞 に前置 されるようである。 いかに t elは文頭 におかれて先行文の内容 を要約 し主語は倒置 されるとはいえ,現代 フラ ンス 語ではあま り用い られない用法であろうo 1 06 天 理 大 学 学 報 また,第2 4 例 ・第2 5 例 を検討 してみると,属詞が前置 される場合,肯定であろうが否定であ ろうが主語は人称代名詞で,<属詞+主語 +動詞 >という今 日では珍 しい語順である。この語 順 について,Hug ue tは Ra be l a i sの文章 に言及 して,多 くの場合 この構文の とき主語は人称 5 世紀にこの語順 に出会 うことを次のように述べている : 代名詞であ り,そ して1 Lapl upa r tdut e mps ,o nner e nc o nt r ec e t t ec o ns t uc r t i o nqu equa n dl es u j e te s tunpr oり一, . .Ce t t ec o ns t uc r t i o ns er e nc o nt r eauE ves i も c l e. no m pe r s o nne l. これ も今 日ではあまり見受けられない語順であろう。なお<CNN>では,補足節 での<主 請 +属詞+動詞>という語順 は認め られなかった。 b)主語省略時 : 2 6) ・ ・ ・l ema r y,pe ns a nte ns o yme S me S , -que壁些 s e r o i tdel ' e nr e t i r e r , -( p・ 41 9) ,me s me me ntquene c e s s a i r el uye s t o i ta inS if a i r e・( p・ 4 3 9 ) 27) -s ep ens a-・ 2 8)Etl ' aut r ed i 白 tq uet r e S di f nc i l es e r o i t , -( p1 5 0 3) ・ ・ ・ ;e tf a i nda ntquet r e s j o ye uxr us t ,l uyd i s tc e spa r o l l e s : -( p・ 5 61 ) 2 9) 3 0) ・ ・ ・ ,e tv o uss e mbl e r o i t ,e tabo nnec a us e,quel j* e tg o uve me r ,( p. 1 4 3) s e r o i ed' e nt r ev o uspr e s i de r 31 )Sis ' e npe ns al ema i s t r ed' o s t e lque-,e tque垣聖 聖 S e r O i e ntpo urdi ma nc he, ( p. 5 8 1 ) 第2 6・2 7・2 8・2 9 例 においては,主語 になる非人称的な代名詞 c eまたは非人称の主語代名 lの省略である。第2 6 例 は独立節 における第1 3 例 と同様である。第2 7 例 は不定法 に前置 さ 詞i れる前置詞 d eが さらに省略 されている。 この場合の属詞の前置 に関 して,Goug e nhe i m は1 6 世紀のフランス語 について,独立文における例 を挙げなが ら特 に不定法の属詞 とともにこの構 文が用い られることを次のように述べている : Ce t t ec o ns t uc r t i o ne s te mpl o ye ee npar t i c ul i e ra ve cl ' a t t ibutdel r ' i nf ini t i f :Fac i l eme s e T ・ apT ・ e U e O i T ・ ,PT ・ o gno s t i c que T ・e t j u ge T ・ duT , e S t e( Ra be l a i s ,I V,3 5) .Da msc ec as , l ef r an9 a i s ( 1 4 ) I lmes e r af ac i l edepr 6 vo i r "' , mo de nee r mpl o i el ac o ns t uc r t i o ni mpe r 8 0 nne l l e:《 第2 7 例の場合,不定法 ( a i ns if a i r e)の属詞 ( ne c e s s a i r e)が動詞 ( eS t O i t )に前置 された ug e 血e i m の説明か らする と,不定法が主語 と考 えられ<属詞+動詞 + ( 不 ものである。Go 定法)主語 >の語順 と見 なす ことがで きる。 しか も<CNN>でのこの場合,従属節 において 現れたものであ り,中期 フランス語の特徴 を示す もの といえるだろう。因みに,第2 7 例 を現代 フランス語に改めれば,当然 " . . . i ll u主6 t a i tne c e s s a i r ed' a i ns if ir a e ' 'と,非人称構文になろ う。 第3 0 例では,第1 1 例( s e r o ye)と同様 に,動詞の活用か らして条件法現在 1人称単数形 S e r O i e であるか ら主語人称代名詞 j eの省略で,第31 例では,その文脈か ら理解で きるが,主語人称 代名詞 3人称複数 e l l e S( de ux pe r dr i z[ 現代 フランス語 pe r d r i x] )の省略であ り,それぞれ 1 0 7 中期 フランス語における属詞の前置について 現代 フランス語 に改めれば," j es e r isi a ndi g ne,e l l e ss e r ie a ntbo nne s " となるところであ る。いずれ も動詞の活用や文脈 により主語が明白なのでそれが省略 されてお り,その場合 に, ueの直後 に動詞が続 くの を避 けて,属詞 を前置 させ た ものである と考 えることがで 接続詞 q きるだろう。 B.間接疑問節 3 2)Etr utg r n dpi a e c ee ns o nc o ur a g e,as a vo i rs i旦竺 eS t O i tqu' i lpar l aS tO uS imi e ul x l uyval o i tl et a i r e .( p. 2 4 3 ) . . . ,e tnes a ve zc o T nbi e nne te te nt i e rmo nc ue urve ul te s t r ee tde mo ur e r !( p. 4 44) 3 3) 3 4) . ・ ・i lnes a vo i ts ac o nt e na nc eneqz L e革む塑型 i ll uye s t o i t ・( p・ 45 6) 第3 2 例 は,独立節の第1 6 例 と同 じく非人称表現で主語代 名詞 i lの省略であ り,属詞の前置 の構文で,間接疑問節 「 声 を掛 けてよい ものか,黙 っていた方が よい ものか‥ . 」である。 直接疑問文 ならば答えに Ouiか No nで答える,疑問詞 を使わない完全疑問文で,直接疑問文 6 t it a i lb onque…? "となるところだろう。 に改めれば " 3 例 は名詞 ( mo mc ue ur) ,第3 4 例 は非人称 の i lが主語である。第3 3 例 は疑問副詞 とも感 第3 o mbi e nを用いた,また第3 4例 は,現代 フランス語では c equeに当た 嘆副詞 とも取れるが,c る queを用いた間接疑問節で,いずれ も 「 属詞 +主語+動詞」 とい う珍 しい語順 である。現 代 フランス語ではあまり見受け られないだろう。 いずれに して も,<CNN>では,間接疑問節 での属詞の前置 はこの 3例 だけであ る。属詞 の前置 は属詞形容詞 を目だ立たせ る効果 を狙 った ものであろうが, もうすでにこの時代 には, 間接疑問節での属詞はよほどのことがない限 り前置 されない といえるだろう。 2.副詞節 :この従属節で主語が表現 された ものは僅か 1例 しか見当た らなかった。 3 5)I le nf is tC antqz L el ame mo i r ej ama i se s t inc a t enes e r ao udi tpal S ・( p・ 8 7 ) t ant…queの節での属詞の前置である。主語が表現 されたこの唯一の例 では,主語が人称 代名詞ではな く普通名詞で,<主語 +属詞+動詞 >とい う語順である。主語 は明確であれば省 略 されることが起 こるか ら,主語が表現 されてこの語順 になるのは当時で もそれほど多 くはな ue tによれば,条件節での例文 を示 しなが ら,Rabe l a i s いのではないだろうか。 しか し,Hug においてはこの語順 は特 に主語が関係代名詞の ときに出会 うが,名詞の ときもあるとい う : Che zRa be l is a ,c e t t et o rnur u es er e nc o nt r es ur t o utquandl es u j e te s tunpr o no mr e ( 1 ‡ ) 1 a t i f ,ma iSo nl avo i taus S ia ve cunB ubs t a nt i f : … 上記の 1例 を除 き,他 はすべ て主語が省略 されていた。それ らの例文 を見て行 こう。時,秦 件,原 因 ・理由,譲歩,比較な どの様 々な節で属詞の前置が起 こっていた。 3 6)Qz L and pr es t eSf ur e nte ts urpi e zmi s e s ,e tl e urpo udeme s nagem i Sapo i nt ,l a 1 0 8 天 理 大 学 学 報 bo nneme r es ide ma n deas af il l es ' e l l en' ar ie no ye nc e s tnuy t .( p. 9 9) 6, . ・ .quand里 些! 些 e ns e r o i t ・( pl 1 61 ) 3 7 )Etf utl ec o mpa ig no nde l i v r 3 8) ・ ・ ・ s il o s tquec ha us s e zf ur e nt , ・ . ・( p・ 5 2 8) 3 9)Ma isl et e mpsnel uydur ag ue r e squ es a o ule tt a nn6e nf ut .( p. 5 5 8) 「 時」 を表す節であるが,第3 9 例の q ueは j us qu' ac equeの意味であろう。 4 0)Tantf is te tdi l i ge nt aqu' e nPe us r s e. . .g ai ne ts a ufs et r o uva, . . .( p. 1 0 9) 41 ) ・ ・ ・ ;e tn' a yaultr er e g r e tques ibo nnevo usa ye s t 6,C r vo a usnel eval e zpas t( p・ 2 4 4) 4 2) -, i lve no i tal ' o s t e le tat e l l ehe ur eque±竺 l uys e mbl o i t ・( p・ 4 4 0) 4 3)I Is eme e tal ' o uv r ag ee tf a i tme ve r i l l ed' a me r s ,e te s po i rpl usque垣 nel uyf ut ・ ( p. 1 2 2) 4 4)Lebo npr e s i de nt , pl usj o ye uxe nc ue urqu' o nc que s些 nef ut ,s emo nt r at r e s de s pl a i s ant ; …( p. 31 3) 4 5) Etnes a vo i e ntj uge r, . . .s ic ' e s t o i to so uc o me,c o mmea ul t r e sc o ne r ss o nt , . . .( p. 4 3 0) 4 6) -・e tt o utai , z siquede s c e ndue s t o i t ,S ' e nva・ ・ ・( p・ 1 1 1 ) 「 程度,比較,同様」,その他 ,a ut r e … que,t e l… queなどの後での,属詞の前置であ る。第4 4 例 において第3 5 例 と同様 に,現代 フラ ンス語で は 2番 目になる否定辞 o nc que s( j a- ma i s )は属詞 とともに前置 され,次 に neと動詞が きている。「同様」 を示す表現 の 中で も NN>では 「 今述べたように ( な) ・いわれるように ( な) 」 を意味する次 の ような表現 は<C 属詞前置の一つの決 まった言い回 しになっているようで,多数見受けられる : c o , nme些 e s t( p・ 3 6,e t c ・ ) , ai ns ique些 e s t , ・ ・ ・( p・ 4 4 6,e t c ・ ) , ・ ・ ・( p・ 2 8 5 ) ・ ・ .no s t r edi e tc l e r ce s t o i tai ns ie ngr a c equ e些 e s t 但 し,c o mmeや q l l eと di te s tの間に他の語が割 り込 む と通常の語順 になるようである : c o mmede s s use s tdi t( p. 3 0 2,e t c, )従 って,c o mmeや queの後 に母音で始 まる e s tが来る のを避 けるために倒置が起 こっているように思われる。 また,次の ような属詞の前置 もある : 4 7)Etv o use s t e sa us s il ep r e s t r e,c arnul ,s i担 n' e s t ,nepe uto y rc o nf e s s i o n. ( p. 4 6 6) 4 8)Ets ibi e nr ude se tno ns a c ha nse s t o i e nt ,l e urc ur dnel ' e s t o i tpasuneo nc e ma i ns ; …( p. 5 1 2) 4 9) . . . ,quo yque ma la dee tve i l l ef us t , . . .( p. 4 5 8 ) . ・ ・ , quo yqu ec o quar df us te te s t o i t , ・ ・ ・( p・ 4 6 2) 5 0) -, i lnes epe utt e ni rder ir e,c o mbi e nquec o ur r o us s 6de us te s t r e・( p・ 4 4 6) 51 ) 5 2) ". j a s o i tquead ve nue ss o i e nte spa r t i e sdeFr anc e,d' le A ma igne , ‥ .( p. 2 2) 中期 フランス語 における属詞の前置 について 1 09 as o i tc equet r e s pl is a antr us t . . . ,t o ut e s oi f zl es ag ec le r cj ama isl ' a ppe r c e ut , . . . 5 3)Etj ( p. 5 7 0) ・ ・ ・ , depaourquet r o mp6 l e ]nef e us t ・( pp・ 5 0 7 5 0 8) 5 4) 条件 ( 第4 7 例 ・第4 8 例)や譲歩 ( 第4 9-5 3 例) また懸念 を表す接続詞節 depa o urque ( 第 5 4例)の後での属詞の前置であるが,主語が表現 されているときは通常近代的語順 になるよう ・ ・ ・ j as o i tqueal o r si lf us t巴 堅, ・ ・ ・( p・ 8 7 ) ,e t c ・ である‥ 以上のような副詞節 においても,独立節 ・主節で見て きた ような<e t r e+形容詞+前置詞+ 不定法 >または同様の非人称表現での属詞の前置が見 られる : 5 5 ) -ワd eC antpr と sl at e no i tqu ec o nt r inc a t ee s t o i t , -,d o nne rl ' o r e i l l eas ado ul c er e . ‥( p. 4 5 5) que s t e; 5 6) ・ ・ ・ pourc equ' i ls es e nt o i ts ie s pr inse tal umeduf e ud' amo ur se tque些些垂担 l uy e s t o i tdes e r irs v ada me . . .( p. 4 3 9) ss ia hurt6 e te nc l i nac r o i r e・ ・ ・quei mpos s i bl em' e s td' es t r ej a5 7 ) . ・ ・t o ut e s oi f zj es ui ma i spl a i s amme nta ve c que SVO uS .( p. 4 4 4) 5 8)-リC are l l e s( mo a ur e t t es ) e s t o i e nts ipar f o nde nr a c i n6es・ . ・quei mp o s s i bl ee s t o i tl e s e, …( pp. 4 4 0 T 4 41 ) de s r o mpr enede s j o i ndr 第5 5 例 を除 きこれ まで に出て きた非人称構文 であ る。第5 5 例 は 3人称女性単数の主語 e l l e の省略であ り,現代 フランス語 なら " . . .q u' e l l e6 t a i tc o nt r a i nt e A( de)do nne r . ‥' 'となると ころである。すでに見て きたように,非人称構文の形式主語省略時 に不定法 に前置 される前置 詞 deも省略 して不定法 を主語 と見な し,その属詞が前置 された もの ( 第5 8 例) と考 えること 5 例 の ように省略 された主語が女性の人称代名詞で,前置 された属詞が当然省 がで きたが,第5 略主語 に一致 して女性形 になっている とき,不定法の前の前置詞が省略 されるのは大変珍 しく 特殊 な例である。前置 された属詞が不定法のそれならば,女性形 にならないか らである。従 っ て,第5 8 例 は<属詞 +動詞+ ( 不定法)主語 >と見 なす ことがで きたが,第5 5 例はそ う考 える ことはで きず主語 は省略 され,<属詞 +動詞>で,属詞の補語である不定法がそれに続いた構 文である。 NN>にお い て 「(∼に)で きれ ば,で きる限 り」 また 「(-に) よ く思 わ れ れ 次 に,<C ば」の意味 に類する次の ような慣用的な表現では,基本的に主語が省略 されたとき属詞形容詞 は前置 される : s ipossi bl em' es t o i t , -( p・ 1 7 7 ) 6, ・ ・ ・( p・ 2 3 3) s ipo s s i bl ee us t6 t -t antquepo s s i bl el uys e r o i t -( p・ 4 7 7 ) ・ ・ ・ ,e tl epl us t o s tquepossi bl el uyr uts ' it r o uva・( p・ 51 3) ・ ・ ・ ,s i旦竺 V O uSS e mbl e, -( p・ 1 2 9) 最後の " s i旦竺 VO uSS e mbl e ' '「もしよろ しければ」 という引用例 は現代 フランス語で成句 と して残 っている。従 って, これは古い表現の名残であろう。 11 0 天 理 大 学 学 報 しか し主語が表現 された ときは現代 フランス語のように属詞形容詞は後置 される ようであ る: . , .a umi e ul xqu' i ll uyf utpo s s i bl e( p. 4 4 4. ) i bl e( p. 3 0 6) . . .S ' i le S tposs S ' i lvouspl ai s te ts e mbl ebon ( p. 2 21) e t c . また,僅かではあるが,主語が省略 されても現代 フランス語 と同様 に,属詞形容詞が後置 さ れる場合 も見受けられる : tquenu ll e mentm' eS tpos s i bl e, ・ . ・( p. 1 9 2) -,e Simes e mbl e旦聖 , -I( p・ 1 71 ) et . C . 時に que)によ 3.形容詞節 :いわゆる関係節であるが,大部分は主語の関係代名詞 qui( 5世紀のフランス語で関係代名詞 queが主語の機能 って導かれる節での属詞の前置である。1 を果たすことに関 しては,Ri c kar dは次のように述べている : t t l ) Quee s tpar f o i ss ubs t i t u6 aquiaunominatif,d' a bor da us i ngu li e r ,e ns ui t eaupl ur ie l . 従 って,主語 として働 く queも含めて主語になる関係代名詞 q ui以外の関係代名詞節の場 合 をまず検討 してみよう。 この場合の属詞の前置は僅か 8例 しか認められず,主語が表現 され た場合が 2例で,その他は主語が省略 された場合であった : 5 9) ・ ・ ・ ; do ntmer c y6 ee l l ef uthaul t e me nt ・( p. 1 0 6) 6 0) -u n gj ourt r e S des i r 60 uque ll edol or euxmar y, ・ . ・c ont r intf a utd' a bando nne rl e [ mes nai ge] …( p. 43 4) 61) . ・ ・ , do nts it r e S e S b a hys et r ouvaqu' i lnes avo i ts ac ont e nn a c enequeadve nui ll uy es t o i t .( p. 45 6) …i lyavo i tu n et r es be l l ej e unec hambr ie r es e r vant ,del aqu e l l et r es amo ur e ux 6 2) e S t O i t .( p. 5 0 2) 6 3) I . ・[ m our A s ] ,quis emes esve r t uzo u mi euxl uypl ai s te tb i9 9l uys e mbl e, -( p・ 1 91) 6 4) . . .part o uto ub one tm ie ul xl uys e mbl o i t .( p. 2 41 ) 65) -e tl al ai s s aal t ero u旦竺 l uys e mbl at o utl ebe aupas ・( 2 09) 6 6)"・c hac n r u e t o ur nao u垣 l uis e mbl a.( pl 3 9 5) 第5 9・6 0例は主語が表現 された場合である。第5 9 例は主語が人称代名詞,第6 0例 は名詞 ( l e dol or eux mar y)である。前者は<属詞+主語代名詞+動詞 >,後者は<主語名詞+属詞+動 詞 >の語順であ り,更 に後者 には<de+不定法 >が続いている。第6 0例の ように<de+不定 法 >が後続する場合,これまではすべて主語が省略 されたときであったが,このように主語が 表現 されているときは極めて珍 しい。主語 と属詞の間に他の語句が割 り込んでいることもその 1 1 1 中期 フランス語における属詞の前置について 理由に挙げることがで きようか。この構文で,主語の直後 に<属詞+動詞>が続 く例はない。 第61 例 ∼第6 6 例は主語が省略 されたときの属詞の前置である。第61 例は," s i . . .que "表現中 の" s i "の後での属詞の前置であるO関係代名詞 " do nt "の直後 に動詞を置 くのを避けているよ うに思える。第6 2 例のように簡潔 に後続文が終わる場合は属詞の前置は最 も多いが, しか し< CNN>では主語が表現 されていれば属詞は動詞 に後置 され今 日的語順 になっている : …u n ef e mmebe l l ee te ng r n a dpo i nt ,del a ql l e l l el ec ur e 'du V i l l a gee s t o i tt nt a amo l . r e uXq uel ' o npo ur r o i tpl us ; -( p・ 4 3 9) a, nai s t r e s s ef uta mo re u uS e, ・ ・ ・( p・ 6) e t c ・ ・ ・ ・ungc l e r cdequis すでに第 6例 ・第 7例で見たように," t nt a " は属詞前置の一つの要因 と考 えられるが,独 立節 とは異な り関係節では主語が表現 されたら,属詞は後置 されるようである。 また,第 6例 では主語 と前置属詞の間に他の語句 ( 現在分詞節)が割 り込んでいるが,上記の例では,その ような他の語 ( 句)はないか らとも考えられるだろう。 3・6 4・6 5i6 6 例はある種の成句的表現 " S e mbl e rbo n' 'を用いた構文 第6 「 ∼の気 に入った ところに」であ り,非人称主語 i lの省略で,その属詞形容 詞 b o nが動詞 に前置 されたもので ある。 次 に関係代名詞が主語の場合 を検討 してみ よう。<CNN>では,この場合の属詞の前置が 3-6 6 例 と同様 に," S e mbl e rb on"や,その他の慣用的になっている 最 も多 く認め られる。第6 と思われる表現が見 られる : 67 ) ・ . Ie tl es ur pl usque垂些 l e urs e mbl a.( p. 3 3) uSS e m6 8)Ets ui sc e l uyaquivo uspo ve zo r do nne re tc o mme nde rt o utc eque旦竺 VO bl e, …( p. 1 6 6) -;e ti le nr es po ndi tc eque旦竺 I uys e mbl a・( p・ 1 7 4) 6 9) , qui空重e s t ,i lmef aul tpa le rl ac o t t es i mpl edes a t i n!( p. 1 8 9) 7 0) -;e te nc o r e s 7 1 ) ・ ・ ・i ls er e po s o i tt o ute s ba hydec eque垂 竺聖 I uye s t o i t , . "( p. 1 3 6) 7 2) ・ ・ ・e l l ema ines af il l eal ' e i t m epo url ac aus eqz L e些些 e s t ・( p・ 1 0 2) s t , ・ -( p・ 1 4 4) 7 3)Mada mel ' a bbe s s e,o ya n tc eque些 e 7 4) -,parl ama ni e r eqz L e些 e s t ・( p・ 37 2) 第7 0 例 を除いてすべて関係代名詞は queである。Queが当時主語 として用い られていたこ c kar dの引用で見たが,古 フランス語か らのその歴史的経過 について とについてはすでに Ri <CNN>の第7 2例 を引用 している Bu rno tの見解 に言及 しておこう : Ena. f .l ef 苔 mi ni ns u j e t6 t ai tque.L e quis u j e tmas c ul i nS ' e t e ndi ta us 8 1pe uaPe uau : es .I lat o t le a me ntdi s par u. f i mi ni n.Que, f 6 i ni m n,s et r o uvee nc o r eauXVl t e sc equevo uspl ir a a.I las ur v 6 c upe nda n tl e Ena. f .i lya v itu a n ne ut r es l 心e tque:di . . .D' o 血( n o se xpr e s s i o nsmo de mes : Adu i e nT Z equePO ur r a;C equebo nT ne mo ye nf ran9alS: 1 7 ) s e T nbl e;v ai l l equeu ai l l e . 11 2 天 理 大 学 学 報 Br u no tのい うように, また上記用例で も分かるように,que≡qui ,c eque≡c equiであ り,それが中期 フランス語 に生 き残 り,現代 フランス語で も,Fa it e sc eque旦竺 VO uSS e ml e r a (-c equivo uss e mbl e r abo n) という. また,第7 0 例の ような q ui圭 垂e s t(もっと悪いこと に)は成句 として現代 に残 っている。 Bmno tと同様 に Hug ue tも古 フランス語の名残 として近代 フランス語 に残 っている第6 9 例 や第7 0 例の ような例文 を挙げなが ら,主語の関係代名詞の後での属詞の前置は中期 フランス語 において しば しば見受けられることを次の ように述べている : Ce t t ec o ns t uc r t i o ne s tdec e l l e squio ntl is a s ede st r ac e sda nsl al ang uemo de ne,dams r S t , e t C .Onl at r o uvebi e npl uss o uve ntc he z l e se xpr e s s i o nsc equeb o al uis e T nbl e, qulP I Se ( 1 A ) l e saut e ur sduE ves i も c l equec he zRabe l is a . 実際 ,<CNN>において も主語の関係代名詞 q uiの後での属詞の前置が他 に比べ て遥か に 頻繁 に見 られた。属詞が一つの場合 と複数ある場合 に分 けて,その仝用例 を以下 に挙げ検討 し て行 こう。 A.属詞が一つの場合 : 7 5) -lu n ganc i e nc o r de l i e rquib e s t o i t , ・ ・ ・( p・ 3 4) …l ado l e nt eas s e mb1 6 e, quidel ye s s epi e 9 a垣 匹 e S t O i t , ・ ・ ・( p・ 3 4) 7 6) 7 7 L l apo ul dr e,quic o r r o s i vee s t o i t ,l uygas t ae tme ng e al ' o i l , ・ ・ ・( p・ 3 5) 7 8) ・ ・ ・c e l l equi-c o ng ne uees t o i tdepl us e ur sg e ns , ・ ・ ・( p・ 3 7 ) 7 9)Ett antf iB tpa rs o ne ng in,quipo i nt聖竺堅竺 n' e s t o i t ,q u' i ladv is au n emani e r e・ ・ ・ ( p. 43) 8 0) ・ -i l-a pr 由c ebe lpas s e t e mps , quiauc une me nt垣竺空室 !l uye s t o i t ,ar ie r r es ' e ndo r mi t .( p. 7 6) 81). . .u n gc l e r cha bi l ee tdi l i ge nte tbi e ne s c ipva r nt ,quit r e s be auf il ze s t o i t , . . .( p. 91) 8 2) ・ ・ ・s apl uspr iV6 evo i s i ne・ ・ . ,quia us s i里 垂車重 e nr ut -( p・ 1 0 4) 8 3)-ma dame, quide mo ur 6 ee s t , ・ ・ ・( p・ 1 1 0) …elletenoitlachandelledevantl' ci ldemo ns e i g ne urqui竺些 e s t o i t ; ・ ・ ・( p・ 1 1 3) 8 4) 8 5)Etmo ns e i g ne ur ,qui垂竺竺S eVO i t ,r e s po ndi t ・ ・ ・( p・ 1 1 9 ) 8 6)El l e, qui垂些竺e S t O i te te nbo npo i nt , ・ ・ ・( p・ 1 27 ) 8 7 ) . . . ;e tl abe l l ef il l e. . .t i r el ' n des u e sho us e au x,quibi e ne s t r o i ze s t o i e nt .( p. 1 5 7 ) , ・ ・ .( 1 8 2) 8 8) -u n et r e s be l l eda mO i s e l l equi聖車重 e s t o i t 8 9)Eti l , quig r ac i e uxes t o i t ,l ame r c yabea uc o pdec eme s s ige, a -( p1 2 6 9) ・ -,e tc e lⅩquima u n de zyf ur e ntc o mpar ur e nt ; -( p・ 3 21) 9 0) 91)So nvo i s i n, qui塑 型卓es t o i te ta vo i tunet r e s be l l ef e mme, ・ ・ ・( p・ 3 31) 9 2) - c ebo nc ur d,quit o utpres tes t o i tde vantl ' aul t i e r ・ . ・( p・ 3 3 8 ) 9 3)Etdec e s t eadve nt ur et o usc e ul xqui里聖 聖 e St O i e ntc o mme nc e r e ntar i re- ( p・ 3 9 5) S t 6, … 9 4)Etdepl use npl usf o r tt i r o i ts o nma is t r el el a告 ,quig r anddo l e url uye us te 中期 フランス語 における属詞の前置 について 11 3 ( pp. 45 6 -45 7) 95) . . .ave cB O nC ur d,quiS o nt r eS gr andanyes t o i t , . . .( p. 4 6 4) …, S ' adv is adet i r e rve r sc ema is t r equiS it r es s agees t o i t .( p. 46 8) 9 6) l e,quie nc o r esr appa iS 6en' e s t o i t ,l uyr es po ndi t : . ・ .( p・ 5 43) 97)Etel 名詞 が前置 された属詞 になっているのは第8 0・81・9 4・9 5 例 の 4例 である。 これ までに見 て きたの と同様 に前置 された属詞形容詞が否定 になる ときはその否定辞 は前置形容詞 とともに置 かれ る ( 第7 9例)。第87 例 と同 じ話 の箇所 で主語 が人称代 名 詞 の と き通常 の語順 にな って い . :i le B t O i tt r opes t r o i c t ; … ( p. 1 5 8) また,受動態の過去分詞が前置 される場合,動作主 る :. . 補語が更 に過去分詞 に前置 され る とき ( 第7 6例) と 8 t r e動詞の後 に置かれ る とき ( 第7 8例) とがある。 引 き続 き用例 を見 てい こう : 9 8) . . .pl us e ur sj o ur s. "quit n tdo a nne zl ' unal ' aul t r ee s t o i e ntque. . .( p. 9 2) 9 9)Etc o mmel es e r it v eurr e ga rdas ts adame,quit n tbe a l l ee s t o i tqueme r ve i l l es , ( p. 3 2 0) 1 0 0)… ungg e nt i l ho mme,",quit antamour e uxes t o i tdel af emmed' n c u he val i e rs o n vo i s i n,qu' i ln' avo i tbonj o urmebo nnehe ur e… ( p. 4 3 4) 1 01 ) -ungge nt i lc he val i e r-qui型 空重eSt O i taunebe l l ee tge nt edame.( p. 3 8) t o i taumar y, -( p. 37 8) 1 0 2) ・ . ・ungs i e nvo i s i nqui里些些 es r e s j o i e u xf ur e ntdes ade l i vr anc e: ・ ・ ・( p・ 42 4) 1 0 3) -pl uB e ur Sdes ac o 卯O i s s anc equit 1 0 4)L' aut r eapr 占8v int ,-, quibi enJ 竺堅竺 f utd' avo i rga ig n6l apl ac e, ・ ・ ・( p・ 4 61) 1 0 5) -B ansf ai r ef o i s ond' ar m esquil o ng ue ss e r o i e ntar ac o mpt e r・( p・ 1 97) 1 0 6) -i ln' ye us tpl us e rsdev u is esqui担! 些聖竺S e r O i e ntar ac o mpt e r ‥ ".( p. 37 7) ・ ・ ・ , part r opbo nnef as s onquit r o pl o ng ues e i tades m c ipr r e, ・ ・ ・( p・ 47 4) 1 07) 第9 8-1 0例 は t ant … queの構文 で t antの付 いた属詞が前置 され,第1 00例以下は前置 さ れた属詞 の補語が動詞の後 に続 き,現代 な らば<動詞 +属詞 +前置詞 +名詞 あるいは不定法 > とい ういわゆる慣用 的な構文で,その補語は第1 0 0-1 0 3 例 においてはく前置詞 +名詞 >で,第 1 0 4-1 07 例 は<前置詞 +不定法 >である.第1 05-1 07 例 は同 じ慣用表現 " 8 t r el o ng A i nf . " で, 3例 とも形容詞 l o ngが前置 されている。 以上の ような場合 にも, また主語が関係代名詞でな く名詞の場合 に も,勿論,近代 的な語順 は見受 け られる : . . .l agr os s er iv ie r eduRos ne,qule ne e lendr o i tes tt antr o i ddequemer ve i l l es .( p. 31 3) …;e tel l e, quif utt anteS ba hi eques ic o me sl uyveni s s e nt , … ( p. 20 9) utamour e uxd' unedamo i B e l l e, …( p. 8,p. 2 4 6) ungge nt i ls e i g ne urquif …, c e s t eb o T medamef utmar i6 eaungaul t r ec heva li e r .( p. 42 4) e t c. 6 t r eamo ur euxde ' 'の場 t n tの場合 は特 に通常 の語順 と前置 との差異 は認め られないが," a 11 4 天 理 大 学 学 報 0 0 例の t n tが付 いた ときのみ属詞形容詞 amo a u代uXが前置 され,その他 はすべ て後 合,第 1 置 され通常の語順 であった。 また," e t r e mar i6a " も主語が関係代名詞 でな く名詞の ときは m i 6は後置 され,現代 フランス語の語順 になるo B.属詞が複数ある場合 : 1 0 8) -I ,l e sr inse a tl e sc ui s s e s・ ・ ・ quibl a nc he se tg r O S S e Se S t O i e nt , ・ ・ ・( p・ 2 6) …u m gr iC hee tpui s s n tho a m equimar c ha nte tbo ur g e o i se s t o i t , . . .( p. 31 ) 1 0 9 ) 1 1 0)Mo nS e i g ne ur , quit r e s c o ur t o i se tg r ac i e uxe s t o i t , . . .( p. 3 9) 1 1 1 ) . . . vo s t r eme s c he f , quit r e s pr o c ha ine tg r e fe s t o i t , … ( p. 4 0) 1 1 2) . . . no s t r emus ni e r e, quit r e s l yee tj o ye us ee nr ut .( p. 4 0) l e rc ,f re ze tv iv e u x ,f utt nt a o s tpi c qu6des ama i8 t r eSBe,( qui堕 1 1 3)Ceg e nt i lc 3 i E J E 担 , )ge nt ee tg r ac i e us ee s t o i t 1 1 1 4) … no nna inB , quit r eB de vo t e se tc ha it r a bl e ss o nt , … ( p, 1 0 5 ) 1 1 5) …s o nbe te tt r e B Pui S S antbo ur do n, qulg r o se tl o ngestoit ・( p1 1 0 8) 1 1 6) . . . , 1 ec he val i e r , quit r e s de vo te tc r a i g nantDi e ue s t o i t ""( p. 1 0 9 ) 1 1 7)Jenes c a yque lho nne ur ,di tmo ns e i g ne ur,quit r e s e s c hat l f 6e te s pr inse s t o i t ;vo us pas s e r e zparl a.( p. 1 1 8) 1 1 8)Enl adi c t ec o nt 6nag ue r e sa vo i tungj e unef il zo r phe ni n,quibi e nr ic hee tpui s - 星 空些 de mo ur a… ( p・ 1 31 ) 1 1 9) -1 ' a bbe s s e, quibe l l ee tj e n ee u te nbo npo i nte s t o i t , ・ ・ ・( p・ 1 3 9) 1 2 0) . . . ,mada mel apr ie ur e , quibo nnee ts ag ee s t oi t ,pr intl apar o l e. . .( p. 1 41 ) l e, quide s j aa nc i e ne tc har g ed' anse s t o i t .( p. 21 5 ) 1 21 ) . "1 es e i g T l e urdel adi c t ev il 1 2 2)Pe nda n tc et e mps ,s ada m er utma i6 r eaunga nc i e nc he va l i e r , quig r ac i e uxe ts ac ha ntho mmee S t O i t , . . .( p. 2 4 6) 1 2 3) . "c e s t ebo nnedamo i s e l l e,quig r ac i e us e,be l l el e ta mo ur e us e ]abo ne s c i e nt e s t o i t , . . .( p. 2 5 6) 1 2 4)Ce s t ef e m e, quibe l l e,ge nt ee tg r ac i e us ee s t o i t -( p1 3 2 7) 1 2 5)Ce B t ebo nnedame, quir ic he,be l l ee tbo nnee s t o i t , . . .( p. 4 2 3) 1 2 6) …, Fo r t unel evo lt u ,quie r me myee tde s pl ai s ant ee s t o i tdel e urbo nnec he vanc e, … ( p. 41 8) …j ee l e us s eho mmes agee tdehaul t eauc t o it r 6 ,quic o uve r te ts ubt i lr us ta 1 2 7 ) g ar de rno s t r es e c r e t .( p. 5 7 3) 2つ または 3つの属詞が ,e tで繋がれて前置 され るこ とは,上記 の引用例 か ら して も多 い 2 611 2 7 例 においては,今 まで見 て きたの と同様 に<前置詞 +名詞あ ことが分かるだろ うQ第 1 21 例 では,前置詞 に導 かれ る補語 も属詞 とと るいは不定法 >が動詞 に後置 されているが,第 1 c har ged' ans ) O また,例 えば第 1 21 例 ( de s j aanc i e n)の ように,通常 もに前置 されている ( の副詞 ならば係 る形容詞 に前置 されるのが普通 であるが,第 1 2 3 例 では前置 された属詞形容詞 amo ur e us eに係 る副詞句 a bo ne s c i e ntがそれに続 き,そ して動詞が来ている。受動態 にお いて動作主補語が,前置 された属詞の前や後 に,あるいは動詞の後 に置かれた りするの と同 じ 中期フランス語における属詞の前置について 11 5 であろう。 次のような興味ある例 も認め られ,これらは現代 フランス語では味わえない中期 フランス語 の文体の多様性 を提示 しているように思われる : 1 2 8) …deva n te ul zde bat ans , quinonac c ous t um6 esma ispl iS a nt a eses t o i e nt .( p. 37) quibe aul xes t o i e nte tbe auc o pl o ngs. ( p. 2 37) 1 2 9) . . .l esc heve ul xdes adame, 1 3 0)To ut es f o i zc e l uy-, quic he va li e re thommedegr n daut a o it r 6es t o i t , … ( p. 2 07) 1 31 )L' aut r eapr 由v int , quic heva li e res t o i t_ P t _ 中o 甲甲eqe _ gr n d_ a _ I ? 吋 , - ( p・ 4 61 ) 1 32)Labo nnedamo i s e l l e- mendal ' unedes esvo i s i nesqui竺堕 es t o i t ,mai s些 , . . .( p. 2 6 3) f emmee tenbo npo i nt 1 33)ce s t ebo nnedame,qui , -etdegr n Sa a n ysc o nt nue i l l eme nt堅塁 聖垂 es t o i te tas l S qi l _ I . Y. Q. 申e白 esamys ・ ・ ・( p. 42 3) 1 3 4)EnPr o venc eavo i tnag uer esungpr es i de ntdehaul t eetbi e ne re u us er e nomm6, quit r es g r n dc a l e r ce tpr udente s t o i t ,Va il l n tauxar a m es ,di s c r e tenc o ns e i l ; …(p. 31 0) 第1 2 8例は " no n… mai s…' 'という表現で繋がれた 2つの属詞が前置 され,第1 2 9 例では,今 まで ( 第1 0 8-1 2 7 例)のように 2つの属詞 を e tで繋 いでそれを前置するのではな く,最初の 属詞だけを前置 Le t以下の属詞は後置するという珍 しい構文である。属詞 になる 2つの形容 tとともに後置 されるのはこの 1例だけである。 詞が,一方が前置 され他方が e 同様のことが 2つの属詞が名詞や分詞などの場合にも起 こる。第1 3 0 例 と第1 31 例を比べてみ ると,前者ではこれまで と同様 2つの属詞名詞が前置 「これは騎士で大 した権勢のある御仁 ( であ り) 」 されているが,後者は前部 「 騎士 ( で) 」は前置 され,後部 「 大いにその名 を博 し た人物 ( であった) 」が後置 されるという特殊 な例である。第1 32 例は e tの代 わ りに mai sで 31 例 と構文の本質は同 じといえる。 また,第1 3 3例では,前部の過去 繋がれているだけで,第1 pr es s 6e)が前置 され, しか もその動作主補語 ( de gr n s amys a )が更に分詞に前置 さ 分詞 ( 3 4例では,属詞が 4つあ れているが,後部の過去分詞 とその補語 は後置 されている。 第1 t r e s gr nd a り,最初の属詞が名詞で,その他の 3つは形容詞であるO最初の属詞になる名詞 ( pmde nt )が e tで繋がれて前置 され,あ との 2つの属 c l e r ° ) と 2番 目の属詞 となる形容詞 ( 詞 になる形容詞 ( Va il l nt a ,di s c r e t )はそれぞれ前置詞に導かれる補語 ( aux ar m es ,e nc o nl )を従えて後置 されるとい うより特殊 な構文である。 s e i む す び 古 フランス語か ら中期 フランス語への移行の最大の変化は格変化の消滅であろ う。古 フラン ス語が格変化によって表 していた機能を,中期 フランス語では語順 によって表す ようにな り, 近代 フランス語へ と受け継がれて行 く。 しか し古 フランス語か ら近代 フランス語への過渡期に 当たる中期 フランス語 にな り,突然古い語順すべてが消え近代的語順 になったわけではな く, 徐々に現代 フランス語のようになっていったのである。従って,本調査 においても,多 くは近 代的語順<主語+動詞+属詞>,あるいは何 らかの理由,例 えば強調や感情的な理由によって <属詞+動詞+主語 >の語順 になるとはいえ,まだまだ古い語法が認められた。 11 6 天 理 大 学 学 報 中期 フラ ンス語 で は主語 が明確 な とき省略 され,同様 に<CNN>におい て も主語省 略 が多 数認 め られ,物語 であ るか ら当然 3人称 の主語 の省略が多 く,その時の属詞 の前置が圧倒 的 に 多 い。関係代 名詞 主語 の場合 は別 に して,主語 が表現 され てい る と きは概 ね現代 的語順 であ る。 また,属詞 の前置 は独立節 よ りもむ しろ従属節の方が遥 か に多用 され,関係節 に群 を抜 い て多 く,次 に副詞節 に多 く見 られた。従 って,主語が省 略 された ときの<属詞 +動詞 > と関係 代名詞主語の ときの <qui +属詞 +動詞 >の語順 が最 も頻繁 に見受 け られた。 主語が関係代 名詞 である場合 を除いて,<主語 +属詞 +動詞 >とい う語順 は,独立節 ( 第5 ・6例 ) と従属節 ( 第3 5・60 例 ) において各 2例 あ った。 この語順 の場合,必ず主語 と属詞 の 間 に他 の語 ( 句 )が割 り込 んでいる。 また,省 略 され る ことの多い人称代 名詞が主語 になるこ とはな く,指示代 名詞 が 1つで,他 の 3つ は普通名詞 であ った。 <属 詞 +主語 +動 詞 >は主節 ・独 立節 で は見 当 た らず,名 詞節 で 4例 ( 第2 4・2 5・3 3・3 4 例) あ った。 なお ,Hug ue tによれば, この場合 に主語 は多 く人称代名 詞 とい うこ とであ った 3 例 で は主語 は名詞 であ った。 が,第3 <属詞 +動詞 +主語 >の語順 はす でに述べ て きてい る ように当然今 日で も見受 け られ るが, 特 に<CNN>で注意 を引 くの は現代 フラ ンス語 な らば非 人称 構文 になる ところ をこの語順 で 表現す る場合 があ る とい うこ とであ る ( 第2 7・5 8 例 )。 最後 に,非人称構文 につ いて,非 人称 の主語 i l ,c eが省 略 されてい る とき,属詞 は前置 され l 得 る とい う結果 を今 回の考察 によって引 き出す こ とが で きる。例 えば,現代 フラ ンス語 の <i que+節 ]>の ような構文 で ,<i mpos s i bl ees tde+不定法 [ que l uies ti mpos s i bl ede+不定法 [ +節 ]>となる場合が多 々あ るO また<e t r e+形容 詞+de+不定法 > も同様 で,<形容 詞 +動 詞 +de+不定 法 > となる場 合 が あ る。 この場合 ,主語 が 表 され てい る と きの属 詞 の前 置 は な いO 振 り返 ってみれば,現代 フラ ンス語 の語順 ではない表現 が今 日に も多 々残 ってい るが,歴 史 的 な検証 によって, 中期 フラ ンス語 においては ご く普通 であ った これ らの属詞 の前置 か ら,本 文 中で も検討 して きた ような今 日では成句 ( 的) になっている表現 を説 明す る こ とがで きるの は興味深 い。 注 (1)Wa r t bur g,W.Yo n,ん ol ut i one tSt r uc t ur edel al an gueF r anai s e,A.Fr a nc keS.A, , 1 9 6 7 ,p. 2 5 7 (2)LeBi do i s ,G.&R.Synt axeduFr anai sT nO de r n e, t o meI I .Pi c a r d, 1 9 6 8,§8 41 (3)拙稿参照 「 天理大学学報 第31 巻第 1号,中期 フランス語における主語の倒置について」 (4)拙稿参照 「 天理大学学報 第3 4巻第 1号,中期 フランス語 における直接 目的補語の前置につい て」 (5)Gr e i s v s e , M. , LeBonUs a ge ,Ha t i e r ,1 9 6 4, §2 1 0 , ms t oi r edel al aT Z guef. anai s ede so r i gi n esdno sj our s,To meI .A m a n dCo l i n, (6)Br uno t ,F. 1 9 6 6 ,p. 5 (7)LeBi do i s ,o p.c i t . ,§8 7 9 ,El udes url as ynt ax edeRab e l ai sc o' n par e ' eac e l l ede saut r e spr o s at e ur sde (8)Hug ue t ,Ed. 1 450a 1 550,S l a t k i neRe pr int s ,1 9 6 7 ,p p. 4 0 5 4 0 6 0 中期 フランス語 における属詞 の前置 について 11 7 (9)Tr d s o T ・ del al an guefT ・ ang ai s e,t o me8,Ce nt r eNat i o na ldel aRec he r c heSc i e nt i f i que,1 980 ( 1 0 )拙稿参照 「 天理大学学報,第31 巻第 1号,中期 フランス語における主語の倒置について」 ( l l )Br uno t , o p, c i t . ,p. 5 0 0 ( 1 2)Hugue t , o p. c i t . ,p. 4 0 8 .Re mar que ( 1 3)Hug ue t , o p. c i t "p. 4 0 7 ( 1 4)Go uge nhe i m, G. ,GT ・ ammai r edel al an gu ef l anC ai s ede1 6 es i i c l e,Pi c ar d,1 9 6 4,p. 2 5 3 ue t , o p. c i t "pAO 7 ( 1 5)Hug ( 1 6)Ri c kar d,P. ,Chr e s t o mat hi edel al an guef・ ane ai s eauqui nz i さ T T Z eS i ∼ C e.Cambr l idgeUni ve r S i t yPr es s ,1 97 6,p. 25 ,L nPe ns g ee tl aLan gue,3e6 di t i o n,Mas 8 0 n,1 9 6 5 ,p. 1 7 9 ( 1 7 )Br no u t ,F. ( 1 8)Hug ue t , o p. c i t "p. 4 0 8 ( 1 9)テクス トにした Dr oz版 ( p. 91 )で は ( quit r es be l l e)の部分が抜けているO従って,この箇所 nt e uT ・ SP, ang ai sduXVI es i i c l e,Bi bl i o t h色 quedel aP1 6 i ade,Edi t i o nsGal l i ma r d,1 9 65 ,p. は Co 61を参照 した。
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