応力制御 - 日本大学理工学部

平成 28 年度
日本大学理工学部
学術講演会予稿集
B-42
ストリングを用いた鋼構造建築物の応力・変形制御に関する基礎的研究
格子張弦梁構造の構造特性について
A Basic Study on the Controllability of Stress and Deformation in Steel Structures with String
Structural Characteristics of Lattice Beam String Structure
○笠原 隆1, 石鍋 雄一郎2, 中島 肇2
*Takashi Kasahara1, Yuichiro Ishinabe2, Hajime Nakajima2
Abstract: Currently, active control of stress and deformation by string elements applied to continuum and lattice shell on
space structure is not common.The goal of this research is to propose new structural arrangement to obtain the
controllability of stress and deformation by string elements.In this study, structural characteristics of lattice beam applied
to beam string structure is examined.
は中央梁での強軸モーメントが約9割低減されており,
ストリングの有効性を確認した.D-15では,ストリング
無しでのモーメントが小さい為,ストリング有無による
モーメント減少率は小さい.
1.はじめに
連続体やラチスシェル等の空間構造へストリング
を用いた応力・変形制御の実例は少ないのが現状で
ある[1].本研究では,連続体等へ適用させる前段とし
て,格子梁に張弦梁構造を適用した構造形式(本論で
は,格子張弦梁構造と呼ぶ)の構造特性を把握する.
2.解析概要
検討モデルは,格子張弦梁構造に対してストリン
グの有無,応力・変形制御を目的としたストリングへ
の張力導入の有無および上弦面に対して平面モデル
(flat)とライズを有する曲面モデル(rise)を設定す
る.検討規模は,15m×15m,30m×30mを対象とし,格
子梁を平行に配置したOrthogonalと斜めに配置した
Diagonalの2種類を設定した.また,束の長さは変化
させず,デプス/スパン比を1.0,ライズ/スパン比を0
と0.05としたモデルも設定した.本研究では,全ての
モデルにおいて,ストリング上部に位置する梁を応
力比較対象とし,中央梁と呼ぶ.また,最外周部にお
ける梁を外周梁と呼ぶ.境界条件は,単純支持とし
て全ての境界において鉛直方向を拘束した.対称条
件として水平方向は,四隅を一方向拘束のローラー,
その他の節点をX,Y方向に自由に移動可能なローラー
とした.fratをO-15,D-15,O-30,D-30の4種,riseを
RO-15,RD-15,RO-30,RD-30の4種の計8種類を検討対
象モデルとした(Fig.1).
梁,ストリング等の部材は実際の建築物[2]を参考に
して設計し,それぞれの部材の応力度比は0.80以下
とした(Table.1).荷重は,格子梁の支配面積に応じ
た節点集中荷重として載荷した.
3.解析結果
3-1. flat modelの検討
全てのモデルにおいて,ストリングがない場合に
対して,ストリングが有る場合は,中央梁の曲げモー
メントおよび変位が減少した(Fig.2).特に,O-15で
:梁
: ストラット
:X 方向ローラー
: 節点支配面積
:X,Y 方向ローラー
Orthogonal
: モデル名
Diagonal
7.5m
a´
外周梁
δ
(
15m×15m
: ストリング
:Y 方向ローラー
5m
梁伏図
М
a
δ
a´
М
Y
5m
5m
a´
a
X
) 梁伏図
δ
δ
М
30m×30m
(
a´
a
М
a
)
118
flat model
D-15
d
O-30
d: デプス
L
RO-15
D-30
f=L/10
中央梁
RD-15
h
f
RO-30
L: スパン
Figure1.
2:日大理工・教員・建築
中央梁
L
O-15
L: スパン
rise model
断面図
a´-a
ストリング
1:日大理工・院(前)・建築
3-2. rise modelの検討
30m×30mで顕著な構造特性が確認できたため,RO-30
f: サグ
h: ライズ
f=h=L/20
Beam and String Arrangement
and Boundary Conditions
d
RD-30
平成 28 年度
日本大学理工学部
とRD-30の構造特性について検討する.
初めにRO-30の検討結果を示す(Fig3).ストリングが
無い時には,ライズを有することにより,モデル全体
が外方向に変位し,外周梁に弱軸曲げモーメントMyが
発生した.しかし,ストリングをが有ると,弱軸モーメ
ントは減少し,同時に中央梁の強軸モーメントMxも制
御できている.さらに,ストリングへの張力導入によ
る,応力制御を行うと,外周梁の弱軸モーメントも制
御可能になることが確認された.
次に,RD-30の軸力に着目する(Fig.4).ストリングが
無い時では,外周梁に大きな引張力が生じる.ストリ
ングが有ると,外周梁の引張力は多少減少する.張力
導入により中央梁の応力制御を行うと,曲げモーメン
トは半減するが,外周梁の軸力が圧縮側へ変化し,ス
トリングの導入張力も過大になった.これは,ライズ
を有することにより,曲げ抵抗系から軸力抵抗系へ変
化したためだと考えられる.
学術講演会予稿集
5.参考文献
[1]工藤,岡田,宮里他:ハイブリッド平板構造の応力制御に
関する基礎的研究(その1)(その2),日本建築学会大会学
術講演梗概集,p.911~p.914,2012.9
[2]金箱温春:構造計画の原理と実践,p.40,2010.4
Table1. Structures Summary
15m×15m (D,RD-15,O,RD-15)
30m×30m (D,RD-30,O,RD-30)
デプス / スパン比 :1/10
15m:H-194×150×6×9 (SS400)
30m:H-340×250×9×14(SS400)
15m:φ20(1×37,ST1570)
30m:φ28(1×37,ST1570)
P-Φ48.6×3.2(STK400)
規模
形状
デプス
梁
使用部材
ストリング
( 構造用スパイラルロープ)
ストラット
荷重条件
固定荷重 DL
剛性比α
O-15
D-15
O-30
D-30
6.36×10-4
3.18×10-4
6.54×10-4
3.27×10-4
O-15
4.まとめと今後の検討
格子張弦梁構造およびライズを有する格子張弦梁構
造の構造特性を示した.ライズの有無により,構造特
性が大きく変化する事を確認した.ライズを有するタ
イプでは,軸力抵抗系となることから,中央梁の強軸
曲げモーメントに着目した応力制御方法の見直しや,
外周梁の発生軸力の検討が今後の課題となる.
1200N/m2
D-15
O-30
1.00
1.00
0.80
0.80
0.60
0.60
0.40
0.40
0.20
0.20
0.00
ストリング有無による
曲げモーメント減少率
0.00
D-30
ストリング有無による
変位減少率
Figure2. Referenced Bending Moment and Displacement
ストリング無
ストリング有 (PS 無 )
My(max)
:13(kN・m)
My(max)
:41(kN・m)
中央梁 Mx:377(kN・m)
ストリング 無
ストリング有 ( 応力制御 )
My(max)
:2.4(kN・m)
中央梁 Mx:67(kN・m)
中央梁 Mx:15(kN・m)
ストリング N :166(kN)
ストリング N :194(kN)
Figure3. Weak Axis Bending Moment for RO-30
: 引張力
ストリング無
N(max)
:512(kN)
中央梁 Mx:112(kN・m)
ストリング 無
ストリング有 (PS 無 )
ストリング有 ( 応力制御 )
N(max)
:-634(kN)
N(max)
:457(kN)
中央梁 Mx:109(kN・m)
ストリング N :63(kN)
Figure4. Circumference of Axial Force for RD-30
119
中央梁 Mx:60(kN・m)
ストリング N :1086(kN)
: 圧縮力