回復期病棟における高次脳機能障害者へのグルー プ訓練の試み

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○那須識徳(作業療法士)
,加納真子,大嶽万里,中川和代,
林 美里
○吉崎ひかり(言語聴覚士),仁部一美,青山鮎美,高田博子
農協共済中伊豆リハビリテーションセンター
福岡青洲会病院 リハビリテーション部
回復期病棟における高次脳機能障害者へのグルー
プ訓練の試み −Patient Competency Rating Scale
(PCRS)を使用して−
【目的】高次脳機能障害を有する者が社会復帰を目指す際、自己の
障害認識の低下は阻害因子となりうる。我々は自己の障害認識を
深める目的でグループ訓練を行い若干の知見を得たので報告す
る。【対象】院内生活が概ね自立し、就労や社会復帰を目標とす
る入院患者9名(男性7例、女性2例 56.3±8.85歳)を対象とした。
【方法】対象を4-5名の小集団に分け、週1回1時間の訓練を行った。
内容は障害理解の講義とし全7回実施した。患者同士が意見交換
する機会を設け、患者1人に作業療法士(以下、OT)1名が同席し
た。グループ訓練は個別訓練場面で振り返り、生活上の課題と結
び付けた。介入前後に対象者と担当OTにPatient Competency Rating Scale(以下、PCRS)を実施した。自己評価得点と客観
的評価得点及びその差を算出した。統計学的検討はWilcoxon符
号付順位検定を用い、有意水準は5%未満とした。【結果】PCRS
では自己評価得点と客観的評価得点の差に有意差を認め、対象者
全員において差が減少した。
【考察】回復期リハビリテーションは
個別訓練が多く、治療場面で患者同士交流を図る場は少ない。今
回グループ訓練により、他患と体験や補完手段を共有する機会を
設定できた。患者は自己の気づきを表出することで、障害の知識
が整理され自己の障害認識の変容に繋がったのではないかと考え
る。今後はより客観的な検証とともに生活場面へ汎化できるよう
内容の改善を図っていきたい。
回復期リハビリテーション病棟における復職支援の
傾向と課題
【はじめに】当院の回復期リハビリテーション病棟における脳血
管障害患者の復職希望者は年々増加しているが、復職支援が円滑
に進まず、早期の復職が困難であるケースが度々認められた。そ
こで今回、当院回復期病棟に入院した脳血管患者の職場復帰の現
状と復職支援に対する問題点を把握し、支援体制の改善を目的に
本研究を行った。
【対象と方法】対象は、平成24年4月から平成27年3月までに当院
に入院し、高次脳機能障害によるST介入のあった脳血管障害患者
とし、入院患者の障害像、各種実施検査とその得点、家族及び職
場とのミーティングの有無・回数に着目して分析を行った。
【結果】患者自身の個人因子や社会的背景などによる復職への影響
が強く、検査得点や障害像からの特徴的な傾向は見い出せなかっ
た。しかし、スタッフ間での評価内容や支援方法が統一されてい
ないという問題点が挙げられた。
【今後の課題】評価内容やスタッフ間で共有する情報を統一化し、
復職支援の流れを明確にするマニュアルの作成をすることによ
り、必要な情報をスタッフ間で共有でき、円滑な支援と早期の職
場復帰が可能になるのではないかと考えた。今回の研究結果を生
かし、今後はより質の高い復職支援を提供していきたい。
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○安次嶺千弥子(言語聴覚士)
,安里優介,山里知也,下門久子,
宮里広美,我喜屋真希,又吉 達,濱崎直人,宮里好一
○林 美岐(看護師),川本 潔,竹村壮司,林 容子,川上寿一
医療法人タピック 沖縄リハビリテーションセンター病院
滋賀県立成人病センター
高次脳機能障害に対するチーム共同でのアプローチ
−ADL全介助からの挑戦−
高次脳機能障害患者に模擬便を使用した排泄訓練を
実施した一症例
【はじめに】今回、多彩な高次脳機能障害を呈した四肢麻痺症例に
対し、高次脳機能障害の側面からアプローチし、ADLの改善に繋
がった症例を経験した。チームでの取り組みを報告する。
【対象】
30代女性。交通事故で受傷され、びまん性脳損傷、急性硬膜下血
腫の診断で外科的に加療された。しかし、術創部の感染を発症し、
硬膜外膿瘍の診断で再度外科的加療をなされた後、入院となった。
【方法・結果】入院時、右上肢以外は中等度〜重度麻痺が残存し、
自発性が乏しく日常生活は食事以外は全介助であった。身体機能
は徐々に改善が見られたが、自発性の低下、集中力の低下、脱抑
制等により、スタッフへの依存度が高く、我慢が出来ない、手順
等を覚えることが困難等、高次脳機能障害による問題がADLの改
善を阻害していた。しかし症例と対話し、症例自身その問題点を
自覚していた。そこでチームでプログラムを立案し、高次脳機能
障害に対するプログラムの意義を理解してもらい、治療だけでな
く、生活の中でも取り入れた。症例の変化に合わせて取り組んだ
ことで、脱抑制症状が軽減し、同時処理力、遂行機能力が向上した。
ADL場面では整容動作、車いす駆動、起居動作は自立、更衣一部
介助、移乗、排泄動作は中等度介助へと繋げることが出来た。
【考
察・まとめ】身体機能や高次脳機能障害に症例自身が自覚してい
ることを利用して介入することで、ADLの介助量軽減に繋げるこ
とが出来た。
【はじめに】高次脳機能障害患者に模擬便を使用した排泄行動の
自立に向けた訓練を実施したところ、汚染部位の拭き取りができ
るようになった症例について報告する。
【症例】くも膜下出血後
に運動性失語・記憶障害・注意障害などの高次脳機能障害があ
り、尿失禁や便失禁の対応ができない50代女性。
【経過】くも膜下
出血にて入院、クリッピング術後脳血管攣縮あり水頭症にV−P
シャント術。リハビリ病棟に転院となる。失禁が続きリハビリパ
ンツ(以下リハパン)と尿取りパット(以下パット)を使用。便失
禁時に自ら交換する行動がみられず、大腿部に便が付着している
ことに気付き立ち尽くすこともあった。入院時FIM59。リハパン
やパット交換を介助していたが、家族から退院後の不安の訴えが
ありスタッフカンファレンスを実施。模擬便を使用した拭き取り
訓練を開始。模擬便は患者と共にセラピストが作成し、日常使用
している病棟トイレで患者の臀部や大腿内側、肛門周囲に模擬便
を付着させ拭き取りを誘導した。数日後には「にせうんちね」と
言いながら自ら物品を取りに行きスタッフに声をかけてトイレに
行けるようになり、約2ヶ月後には臀部や肛門部に付着させた模
擬便の拭き取りができた。退院時FIM92。
【考察】今回の症例では、
実際の排泄動作の場面から問題を抽出し、拭き取りができないこ
とに対する排泄訓練を繰り返したことで便失禁時の拭き取りがで
きるようになったと考える。
210
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○中野智康(言語聴覚士)
,和氣徹宜,齋藤 惠,平沢衣純,
西浦謙吾,土門 葵,神山布由子,鬼塚北斗,川内基裕
○木村貴子(作業療法士)1),白川雅之1),津田明子2),東 祐二2),
岸本裕之2),加藤史久2),寺本倫子3),藤坂幸広4),永岡靖子5)
高次脳機能障害者のFIMの認知項目と注意機能の関
連について
兵庫県総合リハビリテーションセンターにおける高
次脳機能障害者の復職支援の一例
〜支援拠点としての取り組みと多職種連携〜
一般社団法人巨樹の会 小金井リハビリテーション病院
1)兵庫県立リハビリテーション中央病院,2)自立生活訓練センター
3)職業能力開発施設,4)高次脳機能障害相談窓口
5)兵庫障害者職業センター
【はじめに】今回、入院時の注意機能の評価とFIMとの関連性を検
討することとした。
【対象】2014年4月から2015年4月に当院で高次脳機能障害の診断
を受けた患者のうち、入院時に標準注意検査法(以下CAT)を実施
した患者56名(平均年齢59.4歳)を対象とした。
【方法】入院時に実施したCATの全7項目それぞれの正答率、所要
時間と入退院時FIMの運動項目及び認知項目(以下FIM-c)のデー
タを入院カルテより後方視的に調査し、統計学的解析を行った。
CATの各項目とその他の評価項目はスピアマン順位相関係数検定
を用いて検討し、有意水準を5%未満とした。
【結果】入院時CAT7項目の評価結果のうち以下の5項目において正
答率または所要時間と退院時FIM-cに有意な相関を認めた。
『Digit
Span backward』正答率(r=0.52)、
『Visual Cancellation(3・か)』
所要時間(r=−0.52・−0.52)、
『Auditory Detection』正答率(r=0.54)、
『SDMT』正 答 率(r=0.65)、
『Position Stroop』正 答 率(r=0.67)及 び
所要時間(r=−0.51)。
【考察】入院時CATは、一部の項目で退院時FIM-cと相関を認めた
が入院時FIM-cとは相関を認めなかった。よって、入院時の上記
CAT 5項目の成績の低下がFIM-cの改善の妨げになる可能性が示
唆された。日常生活の自立に繋がる認知機能を改善させるために
は、早期に細分化された注意機能の評価を行い的確なアプローチ
を実施する事が重要であると考えられた。
【はじめに】当センターはH18年より兵庫県の高次脳機能障害支援
普及事業における支援拠点として活動を始め、センター内各施設
で高次脳機能障害に対する治療や支援の確立を目指し取り組んで
いる。今回は、医学的・社会的・職業的リハビリを実施し復職し
た症例を紹介する。
【症例紹介】30代男性。頭部外傷による高次
脳機能障害。記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障
害・病識低下あり。独歩可能もADLは全て見守り。長期目標は復
職。
【経過】医学的リハビリとして病院では、高次脳機能障害に対
する個別訓練を実施し、ADL確立と自己認識向上に向けた訓練を
重ねADLは概ね自立した。復職には、自己管理能力と移動能力拡
大、高次脳機能障害に対する自己認識と代償手段の確立、職場調
整の課題が残った。退院後は社会的リハビリとして障害者支援施
設へ入所し、高次脳機能障害に対する集団訓練や社会適応訓練を
重ね単独外出が可能となった。さらに職業的リハビリとして職業
能力開発施設や職業センターと連携して支援し発症から2年後に
復職を果たした。
【考察】症例の経過に合わせた医学的・社会的・
職業的リハビリを途切れなく実施し関連多職種が連携して長期的
に介入できたことが復職につながった要因であると考える。今後
も支援拠点としてセンター機能を活用し多職種が連携して専門的
な治療や支援を提供することが求められる。
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○池田裕一(理学療法士)
○直野 純(作業療法士),伊藤大貴,木村隆文
社会医療法人財団池友会 新行橋病院
総合大雄会病院 リハビリテーション科
大型脳動脈瘤により精神行動異常を呈した症例
〜ホルモン分泌・扁桃体機能に着目した一考察〜
統覚型視覚失認症例報告〜障害を受入れやすい環境
作りの重要性〜
【はじめに】今回、大型未破裂上下垂体動脈分岐部動脈瘤により、
低ナトリウム血症を主症状とした症例を担当した。精神行動異常・
記憶障害・情動障害が遷延した為、その経過を考察を踏まえ報告
する。
【症例紹介】40歳台女性。他院から低ナトリウム血症で、当院へ紹
介 入 院。Head CTに て22.0mm×16.5mm×neck7mmのIC-SHA
と診断。病前はADLは自立されており、
元看護師、
1児の母である。
【経過】入院3病日目にcliping術施行。術後翌日からリハビリ介
入。ICU時から言動異常はあるものの、せん妄スケールでは陰性、
MMSEは低値。一般病棟転出後も、意欲減退・怒りの表出・離院
行動や、急に病棟廊下に布団を投げる等の異常行動が続き、介入
自体に難渋しながらも、リハビリでも離床促進し、運動療法並び
に高次脳機能障害等の検査を行った。
【結果】入院38病日目にADL見守りレベルにて自宅退院となり、
現在は外来フォロー中である。行動異常は減少し、記憶も徐々に
回復傾向。
【考察】術後の血中コルチゾール増加による精神行動異常、また、
動脈瘤自体が視床下部-扁桃体を圧迫し、入院ストレスを基盤とし
た、扁桃体-視床下部経路の障害における、情動行動制御・自律神
経反応亢進がメカニズムとして示唆される。リハビリとしてアプ
ローチに難渋するが、ストレス軽減に対し、何がその個人に適切
か今後、熟考しながら実施していく必要性がある。
【症例紹介】70代右利き、男性、脳梗塞(両側内側後頭葉)、第43病
日病棟ADLの自立目的に当院回復期リハ病棟転入。中心視野と左
上部四半盲、左半側空間無視、相貌失認、地誌的障害、HDS-R25点、
BIT通常検査89点・行動検査20点、ADLは監視レベル【訓練経過】
OT訓練開始序盤、高次脳機能検査場面にて拒否的で攻撃的な態
度が見られ、ADL指導では地誌的、左側認知、相貌認知などのエ
ラーを指摘する度に「誰でも間違える」という内容の発言をする
場面が多く見られた。OT訓練全てにおいてエラーが生じると訓
練自体を拒否する可能性があるかもしれないと考え、残存視覚代
償訓練にてヒントや介助などをして課題を成功させるように導い
た。その後、拒否的な発言は減少し、仮にそのような発言をして
も促せば検査や指導を受け入れるようになり、残存視覚代償訓練
時のエラーの指摘も受入られるようになった。最終的には検査や
指導内容を受入れ、自身の行動を修正するようになり、視覚代償
訓練時には自己教示しながら課題を実施できるようになった。第
85病日、BIT通常検査125点、行動検査55点となり、病棟ADLは
入浴以外自立となった。【考察】症例は時間経過とともに障害を受
入れて行き、自らの行動を変える努力をしていったと考える。そ
れと並行してOTは症例の反応をみながら成功と失敗のバランス
を考慮した訓練・指導を導入し障害を受入れやすい環境を提供で
きたことが今回の結果に繋がったと考える。
211
P2-3
P2-4
○藤川康太(理学療法士)
,篠田 昭
○服部美香(看護師),猪川まゆみ,佐藤英人
洛和会音羽リハビリテーション病院 リハビリテーション部
鵜飼リハビリテーション病院
鶏歩に対して下肢空間認知に着目し歩容が改善した
事例
回復期リハビリ病棟におけるNPI-NHの活用について
【はじめに】高次脳機能障害が歩行に影響を及ぼすことを記して
いる報告は少ない。しかし、理学療法士が高次脳機能障害に対し
て関わる重要さに関しての報告は増えている。腓骨神経麻痺によ
り歩容が崩れた事例に対して空間認知への介入を行った結果を報
告する。
【症例紹介】80歳代男性。20XX年Y月に左中大脳動脈領
域の脳梗塞を発症。Y+2月に当院に転院となる。初期評価は独歩
見守りでMMTは左足関節背屈のみ1であった。観念失行や観念運
動失行、注意障害、記憶障害、構成障害等の様々な高次脳機能障
害を呈していた。【経過結果】当初は腓骨神経麻痺による鶏歩だ
と考え、前脛骨筋の筋力訓練等を行った。経過の中で鶏歩は残存
するも独歩自立となったが一般的な鶏歩と比較して下肢の引き上
げが過剰であることに気付いた。そのため、下肢空間認知に対し
て段差を用いて下肢をリーチする介入を始めた。そして病棟での
活動量増加に伴い身体機能に変化は無いも鶏歩が消失した。
【考
察】本事例の鶏歩は腓骨神経麻痺だけではなく、高次脳機能障害
が関与していたと考える。下肢空間認知の障害が鶏歩様の歩行を
助長していたと推察できる。段差での下肢リーチで空間把握の再
認識が進み下肢の過剰な引き上げが軽減したと考える。
【まとめ】
独歩自立に伴うADL拡大を目指すために早期より視点を変える
必要があったと考える。理学療法場面で身体機能以外に、高次脳
機能障害に対して介入する必要性を強く感じた。
【はじめに】高齢化社会に伴い回復期リハビリ病棟の患者に認知症
を併存している患者が多い。認知症の周辺症状(以下BPSD)に着
眼し、BPSDを定量的に評価するNeuropsychiatric InventoryNH
(以下NPI-NH )を用いて、評価と介入を行った症例を報告す
る。
【方法】NPI-NHの結果から環境・身体的・心理社会的要因を分
析し介入する。
【対象者】
( 1)A氏 80代 女性 左大腿骨転子部骨折 アルツハイ
マー型認知症(2)B氏 70代 男性 脳梗塞 脳血管認知症疑い
【結果】
(1)BPSDを認めた項目は興奮、うつ、不安、無関心、睡眠。
本人のニーズに合わせた対応、余暇時間の活用、家族への介入等
をした結果、NPI-NHの点数が減少。( 2)BPSDを認めた項目は
興奮、うつ、不安、易怒性、異常行動、睡眠、食行動。日中傾眠に
対するスケジュール設定、余暇時間に自主訓練の導入、頻回な立
ち上がりへの対応等を行ったが、点数減少に繋がらなかった。
【考察】NPI-NH活用することで、A氏は具体的な症状の悪化を把
握し的確な介入をすることで、NPI-NH点数が減少に繋がった。
B氏も評価・介入したが内服薬の調整不良の影響もあり点数の減
少はしなかったが、自宅退院を検討されている患者様の場合、ご
家族様にNPI-NHの評価結果を共有することで患者の現状把握を
促す事ができた。
P2-5
P2-6
○酒井里奈(理学療法士)
,竹中 裕,吉井秀仁
○正分祐衣(社会福祉士)1),藤野文崇2),山田寛之3),吉田 恵1)
山内ホスピタル リハビリテーション部
1)株式会社ソフトアップJ
2)地方独立行政法人 りんくう総合医療センター
3)社会医療法人ペガサス 馬場記念病院
大腿骨頸部骨折岐阜地域医師会連携パスを使用し、
当院回復期病棟へ転院された認知面低下症例の転帰
脳機能トレーニングソフト脳ぽちは認知症の関係が
みられるか
【目的】岐阜地域大腿骨頚部骨折医療連携推進協議会が作成した
「大腿骨頸部骨折岐阜地域医師会連携パス」
(以下:パス)を利用
して当院に入院された認知面が低下している患者について、転帰
先の傾向を明らかにすること。
【方法】平成21年〜27年3月までに当院に入院されたパス患者303
例を、認知面が低下していない192例(以下:A群)と、パス内に認
知面低下と記載があった111例(以下:B群)に分類した。転帰先
について、診療報酬上の在宅復帰率ならびに自宅退院率を調査し
た。在院日数について、急性期病院在院日数(手術から転院まで)
および、当院(回復期)在院日数を調査した。
【結果】在宅復帰率は、A群93.75%、B群77.5%であった。自宅
退院率は、A群92.2%、B群54.05%であった。手術から急性期
病院退院までの平均日数は、A群18.5±8.5日、B群23.6±11.3日
であった。転院または死亡された患者を除いた当院在院日数の平
均は、A群51±23.1日、B群52.4±22.9日であった。
【考察】B群であっても施設基準で定められた在宅復帰率70%以
上を達成できていた。一方、自宅退院率はその数値を下回ってお
り、また、急性期病院で転院までに時間を要する傾向があった。
認知面低下例については、術後あるいは転院後、早期から円滑に
退院先を決定するため、特に綿密に家族構成や介護力の評価を
行った上で地域資源を活用することが必要と考える。
【はじめに】近年、高齢化社会を迎え身体機能障害だけでなく認知
症予防、早期発見は非常に重要な課題となっている。我々は、認
知症に着目し脳機能トレーニングソフト脳ポチを開発した。今回、
脳ぽちが認知症患者の評価に用いられるHDS-Rと関係がみられ
るのかを検討したので報告する。
【方法】対象は当施設を利用している高齢者9人(年齢:75.4±2.3
歳,性別:男性5名,女性4名)とした。HDS−Rは理学療法士が個々
の利用者に質問紙を用いて点数化した。脳ぽちは、タッチパネル
上の点灯した数字を押す手と目の協調性課題、タッチパネル上の
点灯した2つの数字を足し算する計算課題、タッチパネル上の点
灯した数字を記憶する記憶課題の3つをそれぞれ1分間実施した。
統計はスピアマンの相関係数をもとに相関の有無を検討した。
【結果】手と目の協調とHDS-Rは相関を認めなかった(r=0.22)。
計算課題はHDS-Rと相関を認め(r=0.55)、記憶課題はHDS-Rと
相関を認めた(r=0.62)。
【考察】先行研究において音読や簡単な計算は認知機能や前頭葉
機能の改善に有効であると報告されている。今回の結果において
も計算課題と記憶課題において相関を認めたのは妥当な結果であ
ると考える。そして、日々のデイサービス利用時に利用者に脳ぽ
ちを利用して頂くことで認知症の症状の変化をリアルタイムに捉
えることができるものと考える。
212
P3-1
P3-2
○神田真理子(作業療法士)
○小野内陽子(作業療法士),赤坂佳美,小坂奈美佳
みどり野リハビリテーション病院
医療法人偕行会 偕行会リハビリテーション病院
ナイトレクリエーションに参加することで夜間時の
不穏行動が軽減し生活リズムの獲得につながった事
例報告
重度認知症の妻との在宅生活を再獲得できた一症例
−メディカルファミリーセラピーを用いて−
【はじめに】当院では、19時から21時までナイトレクリエーショ
ン(以下ナイトレク)を実施している。今回、昼夜逆転傾向にあり
夜間の不穏行動を認めた事例を担当した。ナイトレクへ参加を促
し、結果的に生活リズムの獲得につながったため、以下に報告す
る。本報告に際し、本人、家族より同意を得ている。
【事例紹介】
90歳代の女性。自宅にて転倒、右大腿骨転子部骨折を受傷し観血
的整復固定術を施行。既往に認知症あり。リハビリ目的にて当院
入院。入院時、日中は、腰痛の訴え及び全身の耐久性の低下によ
り離床が進まなかった。夜間は帰宅願望が強く、声出しや起き上
がりが頻回であった。
【経過】日中に活動を促すが、傾眠傾向であ
り積極的なリハビリの介入が困難であった。入院後数日は、夕食
後疲労の訴えもあり臥床しており、消灯時間に睡眠導入剤を服薬
していた。しかし夜間に帰宅願望が強くなり柵はずしなどの不穏
行動がみられていた。そこで、夜間の入眠を促すために、日中の
離床・活動時間の増加を目的とした関わりの1つとしてナイトレ
クへの参加を促した。その結果、夜間の不穏行動が軽減し、良眠
できるようになったことから日中の離床が進み、リハビリにも取
り組むことが可能になり、
生活リズムの獲得につながった。
【結語】
就寝前にも活動を行うことにより入眠を促すことができ、ナイト
レクを実施することで昼夜逆転を改善し生活リズムの獲得を促す
手段となると考えられる。
【はじめに】メディカルファミリーセラピー (以下MFT)とは、健康
問題を抱える家族に対して身体心理社会的アプローチを行う家族
療法の技法の1つである。今回、MFTを行ったことで重度認知症
の妻の生活管理が可能となり、在宅生活を再獲得できた症例を担
当したため報告する。
【症例紹介】80歳代の男性。脳梗塞発症。28病日目に当院入院。
入院10週目で記憶や注意配分低下を主体とする高次脳機能障害
が残存するが、FIMは114点でADLは自立。
【経過】家庭訪問を実施し、今後症例が妻と生活する為には、症例
が自身と妻の生活管理を行う必要があると考えた。「認知症の妻
の症状に対応し共に通所リハビリに行きつつ生活管理をできる」
ことを目標として1)認知症の病態を知る 2)妻の症状について
理解をする 3)妻の不穏に対処すると3段階に分けて介入した。
高次脳機能評価より、視覚的記憶が良好であったことから紙面で
の説明を行った。更に、ロールプレイングや自宅への外出訓練で
妻との生活イメージの構築を図った。結果、症例は入院14週で自
宅退院することができ、妻と共に通所リハビリを利用できた。
【考察】MFTの概念である1)統合 2)協同 3)寛容に沿って介入
したことで在宅生活に戻ることができたと考える。症例が自宅で
介護を行う必要があるケースは多いと想定される。今後も家族背
景に応じて介入・指導を行っていきたい。
P3-3
P3-4
○古館美由紀(看護師)
,鎌田弘子,佐藤祝子,藤原佳那子
○門脇達也(作業療法士),岩水章彦,花倉敏文,徳川珠生,
松本太蔵
BPSDへの意識向上の取り組み
当院の認知症治療病棟における身障リハと精神OT
の取り組み 〜こころと身体のリハビリテーション
を目指して〜
公益財団法人 総合花巻病院
養和病院 リハビリテーション課
【目的】
BPSDの知識を深め対応が出来る様意識の向上を図る。
【方
法】平成26年6月1日〜9月30日の期間にA回復期リハビリテー
ション病棟の職員36名対象に実態調査研究(質問紙調査法)を認知
症ケア専門士による研修会の前後に施行。記述統計及びエクセル
による単純集計を行なった。【結果】質問調査結果より、認知症患
者の対応で困る事は徘徊が60%暴力暴言が15%だった。
「患者が
興奮して困ったことは有るか」の問いに前期は「はい」が50%、後
期は「はい」が66%で原因は共に「帰宅願望」
「徘徊」が主だった。
「勉強会を受け認知症患者へ意識して関わることが出来たか」の
問いに「はい」が94%であった。
「BPSDを起こしていると察知す
ることが出来たか」の問いに「はい」が77%であった。
【考察】今
回の取り組みで「BPSDを理解出来た」と半数以上が回答した。理
解度に差があるとは考えられるが、実際業務の中で患者の行動を
抑制する行為や発言は減り、明らかなBPSDの症状も多くは見ら
れなかった。しかし少数意見として「眠剤を内服させる」
「抑制す
る」という回答もあった。これは安全を優先に考えた時にはやむ
を得ない場合もあると判断したのではないかと考える。今回の研
究ではBPSDへの意識向上は出来たがより良いケアの介入までは
至らなかった。その人の世界を壊すことなく穏やかな生活を送る
にはどうしたら良いかを日々考えながらケアしていく事が必要で
ある。
【はじめに】近年、精神科領域でも在院日数を縮小し地域生活への
移行が求められている。認知症治療病棟ではBPSD介入への重要
性に加え、高齢化による身体合併症への対応も必要とされている。
当院では身体合併症への対応や退院促進を目的に平成26年11月
より身障リハを配置。精神OTと連携して、こころと身体のリハ
ビリテーションを提供できる体制を整えた。現在までの取り組み
と課題について報告する。
【病棟紹介】認知症治療病棟入院料1 60床 平均在院日数208日 主
病名:アルツハイマー型認知症、認知症、前頭側頭型認知症、レビー
小体型認知症、血管性認知症ほか。身体合併症:誤嚥性肺炎、尿
路感染症、大腿骨頸部骨折、褥瘡、薬物性PD、ほか
【取り組みと課題】身障リハOT1名配置し、1)ADLの評価・改善2)
身体合併症、急性増悪後への介入3)BPSDへの関わり、を中心に
アプローチした。しかし、ADLにおいて摂食・嚥下の問題にはST
の介入が必要であるため、同年12月よりST1配置。また、ADLへ
のアプローチを充実するため精神OTも介入できる体制を整えた。
このことで、精神OTでも個別性を再検討する機会となり集団プ
ログラムの見直しにつながった。しかし、お互いの領域について
理解を深めることや病棟のケアとの連携をしていくことなど課題
は多い。少しずつであるがパーソンセンタードのサービスができ
るように今後も取り組んでいきたい。
213
P3-5
P4-1
○正分祐衣(理学療法士)1),藤野文崇2),山田寛之3),吉田 恵1)
○杉本貴美子(理学療法士)1),池田耕二2),古家真優1),吉冨滋洋1),
池田秀一1)
くも膜下出血による高度の記憶障害の患者が、脳ぽ
ちを実施し記憶障害が改善した症例の経験
高齢者の退院に向けた身体活動量把握の取り組み
1)株式会社ソフトアップJ
2)地方独立行政法人 りんくう総合医療センター
3)社会医療法人ペガサス 馬場記念病院
1)宝持会 池田病院 総合リハビリテーションセンター
2)大阪行岡医療大学 医療学部 理学療法学科
【はじめに】記憶障害を呈した利用者さんに対し脳機能トレーニ
ングソフト脳ぽちを用いた脳機能トレーニングを実施し記憶力が
改善した症例を経験したので報告する。
【症例】紹介対象は2013
年12月くも膜下出血発症した50代女性である。リハビリテーショ
ンは発症直後より2014年6月まで入院にて実施した。退院後の
ADLは記憶障害により監視が必要であった為、8月より当施設の
利用が開始となった。初回評価運動、感覚障害は認めず。基本
動作は自立レベルであるがADLは記憶障害のため監視が必要で
あった。FIMの認知項目は20/35点、脳ぽち課題の正答率は、記
憶課題が50%、計算課題が85%、目と手の協調課題が70%であっ
た。プログラム脳ぽちを用いたトレーニングはタッチパネル上の
光った数字を押す目と手の協調課題、タッチパネル上の光った数
字を記憶し消灯後にタッチパネル上の数字を押す記憶課題、タッ
チパネル上の2つの光った数字を記憶し計算する計算課題を実施
した。7か月後評価FIMの認知項目は29/35点となり、脳ぽち課題
の正答率は、記憶課題が95%、計算課題が98%、目と手の協調課
題が70%となった。【考察】認知症高齢者に対し計算や音読課題
が認知機能改善に有効であったとの報告は散見される。今回の利
用者おいても計算課題が記憶障害の改善に影響を与えたと考えら
れ、脳ぽちは記憶障害のリハビリテーションに有効である可能性
が示された。
【はじめに】退院にむけて高齢入院患者の身体活動量を把握する
ことは重要である。そこで、回復期リハ病棟において歩行が可能
であり、退院が近い高齢入院患者一日の身体活動量を測定したの
で報告する。
【方法】対象は、高齢患者5名(女性4名、男性1名、疾患名は圧迫骨折
3名、THA1名、TKA1名)とした。計測は身体活動量計(オムロン、
HJA401F、カロリスキャン)を使用し、計測時間は9〜17時とした。
調査項目は、a)リハビリ単位、b)リハビリ中歩数、c)一日の総歩数、d)
総消費カロリー、e)基礎データ、f)一日のスケジュール等とした。
【倫理的配慮】対象者には研究の趣旨を説明し、同意を得た。
【結果】各症例の項目a)〜 d)のみを提示すると、症例1(a)4単位、
b)349歩、c)846歩、d)1220kcal)、症例2(a)2単位、b)198歩、c)733
歩、d)925kcal)、症 例3(a)4単 位、b)136歩、c)885歩、d)909kcal)、
症例4(a)3単位、b)568歩、c)1163歩、d)889kcal)、症例5(a)4単位、
b)935歩、c)1561歩、d)1222kcal)となった。
【考察】先行研究では、回復期リハ病棟における入院中の平均歩数
は2500歩(9〜17時)程度であり、退院後に引きこもりにならない
ための目安は4000歩以上とされている。それらと比較すると本
結果は5症例ともにリハビリ中の歩数、総歩数、カロリーともに少
なく、退院にむけた身体活動量としては低いことが示唆された。
今後はさらに検討を加え、身体活動量の増加を加味した効果的な
プログラムを考案したい。
P4-2
P4-3
○野邉翔平(理学療法士)
,横山昌弘,椎野良隆,須藤美代子
○後藤由美(看護師),山本晶子,上斗米律子,山本なお子,
大井清文
一般財団法人竹田健康財団 竹田綜合病院 リハビリテーション部
公益財団法人 いわてリハビリテーションセンター
当院回復期リハビリテーション病棟における整形外
科患者の健康関連QOLに影響を及ぼす要因とその
傾向−EuroQolとFIMを用いた検討−
脳血管疾患患者の外泊チェック表改定後の使用状況
調査
【目的】運動器リハビリテーション(以下、リハ)においては、短
期間の介入でも患者の効用値が有意に改善すると言われる(矢
吹;2008)。リハを提供することで患者のQOLを向上させ、満足度
を高めることは重要と考える。当院回復期リハ病棟の整形外科患
者に対し、健康関連QOL(以下、HRQOL)に影響を及ぼす要因と傾
向について考察する。
【対象】2013年11月1日~2014年8月30日ま
でに当院回復期リハ病棟へ転入した整形外科患者150名中、調査
項目全てを満たし自宅退院した男性7例、女性47例の計54例とし
た(EQ-5Dスコア(以下、効用値)が転入時満点は除外)。
【方法】転
入時と退院時に、HRQOL評価尺度のEQ-5D、FIMを前方視的に
調査し前後において群間比較を行った。さらに転入時と退院時各
項目の相関をみた。Wilcoxon符号順位和検定、Speasonの相関係
数を用い、有意水準は5%未満とした。数値は平均値±SDとした。
【結果】年齢は75±12.5歳。転入時FIM98.3±15.2、効用値0.526
±0.214であり退院時FIM117.3±9.4、効用値0.690±0.174でどち
らも有意に改善していた。転入時FIM98.3±15.2と効用値0.526±
0.214(r=0.392)、退院時FIM117.3±9.4と効用値0.690±0.174(r
=0.468)でどちらも有意な相関がみられた。
【考察】リハの提供
により、効用値に有意な改善がみられたことは先行研究を支持す
る結果となった。今回FIMと効用値に相関がみられた。している
ADLの改善が患者満足度向上に影響していると示唆された。
【はじめに】当センターでは、入院中における試験外泊時の状況
把握のため、外泊チェック表を使用している。病棟で「している
ADL」と外泊時に「しているADL」を確認することと、患者・家族
の困ったことについての対応を記載しチームで共有できるよう、
2013年に外泊チェック表を改訂した。今回、外泊時に家族が記載
した内容を調査した結果、リハサービスの現状や今後の課題が明
確になったので報告する。
【方法】2014年4月〜5月に、初回外泊をした脳血管疾患患者の外
泊チェック表14件の記載状況を調査した。
【結果】初回外泊時のFIMの平均は、106.9であった。記載内容で、
病棟と外泊時でのADL状況が異なっていたのは入浴であり、病院
では自立だが自宅では介助であった。また高次脳機能障害を有
していたのが6名(42.8% )であり、ADLはほぼ自立されているが、
家事や買い物などIADLに支障をきたしていて、IADLに関する記
載が多くみられた。
【考察】病院と自宅でのADLに大きく相違がなかったのは、外泊時
には入浴以外のADLがほぼ自立であり、自宅環境を含めADLに関
する家族指導が行われていたことが挙げられた。一方高次脳機能
障害においてIADLに関する記載が多かった点については、入院
中からのチーム内でのIADLの関する検討が少なかったことがあ
り、自宅でのIADLを把握できる外泊チェック表の再検討が必要
と判断された。
214
P4-4
P4-5
○石井友香里(作業療法士)
,石垣賢和,藤田 愛,前田尚賜,
江口悠樹,大中美希
○佐藤亮太(作業療法士),菅野俊一郎,根來亜希,信太由宇子,
川村瑞穂,木村きこ,鈴木瑞穂,加藤未咲,冨山陽介
医療法人社団輝生会 船橋市立リハビリテーション病院
公益財団法人宮城厚生協会 坂総合病院
当院における自動車運転支援の現状と関わりについて
自主経路における実車評価を実施した一症例
【はじめに】当院では高次脳機能障害を有する患者の運転支援にお
いて個々の医師、セラピストによって関わりが異なっていた。そ
こで当院の自動車運転支援における現状を明らかにし、統一した
自動車運転支援の流れを作ることを目的に現状調査を行った為報
告する。
【対象】平成26年4月1日〜平成27年3月31日に当院回復
期リハビリテーション病棟より退院した高次脳機能障害を有する
脳血管疾患患者と頭部外傷患者のうち自動車運転の希望があり、
入院中に医師により運転可否判断がされたケース。
【方法】スタッ
フへのアンケート及びカルテから(1)運転再開の目的、(2)退院時
の支援方法、
(3)実施した神経心理学的検査について調査した。
【結
果】対象は30名(男性27名、女性3名、平均年齢53.7±12.2歳)で
あった。(1)復職16名、(2)a)退院時に医師が診断書を記載4名、b)
外来リハビリへ引継ぎ期間をおいて再評価、必要に応じて実車評
価依頼17名、c)退院直後に近隣病院へ実車評価依頼1名、d)その他
8名であった。(3)13種類あり統一されていなかった。
【考察】当院
では神経心理学的検査の結果を基に支援を行っているが、評価項
目や結果の解釈基準、近隣病院へ実車評価を依頼する目安や時期
が不明確となっていた。その為自動車運転再開に向け統一した基
準を設けたフローチャートを作成し運用を開始した。今後はドラ
イビングシュミレーターを導入すると共に実車評価可能な近隣病
院との連携を深めていきたい。
【はじめに】当院では医師の指示のもと、運転再開希望のある脳
卒中患者に対し自動車学校にて実車評価を実施している。実車
評価が一定のゴールデンスタンダードとは言われているが、実車
評価の方法については検討の余地があると思われる。今回、復職
を控えた患者に対し自主経路による実車評価を実施した経験に
ついて報告する。
【症例紹介】50代女性。訪問介護に従事。X年
Y月Z日発症の右視床出血。他院にて急性期加療を受け第12病日
で当院回復期病棟へ転院。屋外歩行自立となり35病日にて自宅
退院。復職のため運転再開希望あり。著名な麻痺や感覚障害な
し。MMSE30点、KOHS IQ124、か な ひ ろ いHit率74.5 %、TMT
A-part83秒、B-part94秒。【方法と結果】第68病日に医師の指示
のもと自動車学校にて実車評価を実施。構内では車両感覚に慣れ
ずクランクにて脱輪する場面あったが、徐々にスムーズな運転が
可能になった。路上では仕事上必要になる狭い道路の運転に加え、
職場や自宅付近までの経路などを自主経路にて運転してもらい評
価した。歩行者や対向車に配慮したスムーズな運転が可能であり、
特に危険な場面は無かった。その後、適正相談を経て発症から約
3ヵ月後に復職を果たした。
【考察】自主経路による運転では運転
計画などの戦略レベルの側面も評価も出来ると思われる。教官に
よるルート提示での運転に加えて自主経路での評価を行うことに
より、より実際に近い運転を評価できると推察する。
P5-1
P5-2
○室谷 恵(作業療法士)1,2),立山清美2),日垣一男2)
○増山達亮(作業療法士),脇本延明,堤由紀子
1)協和訪問看護ステーション
2)大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科
医療法人社団白美会 介護老人保健施設 白根ヴィラガーデン
満足度向上に繋がる訪問看護での入浴への介入方法
の検討
入浴動作獲得へのアプローチ
〜生活行為向上マネジメントを用いて〜
【はじめに】デイケア利用者の“入浴したい”という希望に対し在
宅に近い環境で練習行い動作獲得に至った経緯を以下に報告す
る。【症例】70歳代 男性 主疾患名:腰椎部癒着性くも膜炎 筋力:
下肢筋力低下、左足関節背屈随意運動困難 疼痛:腰部、左膝 座
位:端座位安定 立位:手すり把持にて安定 歩行:4点支持杖
歩行、伝い歩き可能【期間】H26年9月18日〜11月23日【経過・結
果】生活行為向上マネジメント(以下MTDLP)を使用し評価した。
入浴動作が困難である要因は#1下肢の筋力低下#2左下肢荷重時
膝痛出現#3耐久性低下#4浴槽への出入り動作の安全性低下#5家
人の介護知識不足である。入浴動作獲得に向けて練習追加し筋力
強化練習や物理療法、平行棒内で浴槽での動作を想定した床から
の立ち上がり練習を行った。また在宅に近い環境の個浴を使用し
浴槽内での長座位及び立ち上がり動作練習を行った。本人と家族
へは福祉用具の提案と動作確認がしやすいように個浴での動作表
を作成し提示した。その結果在宅で入浴動作獲得に至った。入浴
動作獲得後、MTDLPの実行度満足度共に向上みられた。
【考察】
MTDLPの各項目の利点を生かし生活行為を妨げている要因に対
し練習を段階的に行い、環境に合わせた動作練習や個浴を使用し
練習を行ったこと、それらの動作を撮影し家族指導に生かしたこ
とが動作獲得に繋がったと考えられる。また実行度・満足度に変
化があったことからQOLが向上したと示唆される。
【はじめに】在宅生活を送る高齢者は、加齢や障がいにより健康な
ときと同じように入浴することが困難となり、入浴に介助を要す
る場合がある。今回、訪問看護で入浴に介入し、満足度の向上を
認めたのでその介入方法について報告する。
【対象と方法】訪問看
護で入浴に介入のあった13名を対象とし、介入前後の入浴の満足
度をVisual Analog Scaleにて評価した。介入方法やその変化等
は担当スタッフに聴取し、分析した。なお、本研究は平成24年度
大阪府立大学総合リハビリテーション学類倫理委員会の承認を得
ている。
【結果と考察】13名の属性は、男性6名、女性7名、平均年
齢77.4±12.0歳であった。主な疾患は脳血管疾患9名、大腿骨頚
部骨折2名等であり、介護保険の介護度は要介護1が3名、要介護2
が5名、要介護3が2名、要介護4が3名、FIMの入浴に関わる項目の
平均は清拭4.6±1.8、更衣5.5±1.8、浴槽移乗4.9±1.2、移動5.2±
1.5であった。介入方法は、浴槽の跨ぎや洗体等の動作練習、手す
り設置や福祉用具や自助具の導入等の環境調整、ケアマネジャー
や看護師との連携、介助指導に分類され、10名はFIMや自立度に
改善を認めた。また満足度は3ヶ月間で57.23±22.87から66.38±
20.39に有意な向上を認めた。訪問看護の関わりは実際に自宅の
環境で利用者に合わせた個別の介入が可能である。具体的な困り
ごとをきっかけに目標を設定し、取り組むことが満足度の向上に
繋がると考えられる。
215
P5-3
P5-4
○畑 祐子(作業療法士)
,前川晋一,岡村雅雄,村上 淳
○山田絵里奈(作業療法士)1),西田健二1),岡田啓太2),梶原敏夫1)
愛仁会総合健康センター附属デイサービス
1)医療法人メディライフ 知多リハビリテーション病院 リハビリテーション部
2)医療法人メディライフ 西知多リハビリテーション病院 リハビリテーション部
滑車訓練による日常生活動作の効果
回復期リハ病棟における統一した病棟ADL介入の取
り組み〜更衣動作の獲得を目指して〜
【はじめに】当施設は機能訓練特化型デイサービスであり、パワー
リハビリテーションを主に提供している。今回、関節可動域拡大
と痛みの改善を目的として滑車訓練を導入したところ日常生活
動作(以下ADL)にも変化がみられたため報告をする。
【対象と方
法】フェイススケールでの肩関節の痛みがフェイス0〜2までの利
用者102名に滑車訓練を実施し、効果の確認を目的に90名にアン
ケートを行った。その90名は要支援者55名、要介護者35名、肩
関節に痛みフェイス1、2を有していたのは36名であった。訓練
方法は椅子坐位、足底接地の姿勢で負荷をかけず、肩関節挙上運
動を左右30回から50回を平成26年6月から8月の間に週1〜2回実
施した。【結果】滑車訓練後の変化があると応えたのは90名中42
名、痛みが軽減したと応えたのは36名中23名であり効果がみられ
た。その中でADL場面での変化は90名中22名いた。内容は着替
えがしやすくなった、高所の物が取りやすくなった、足先までの
洗体が出来るようになったとの答えが聞かれた。主に上肢のリー
チ範囲が広がったことによるADLの拡大がみられた。
【考察】当
施設での上肢マシン訓練は肩関節可動域約120度であるが滑車訓
練では利用者による個人差はあるが最大肩関節可動域までの運動
も可能である。その可動域での運動を繰り返すことでリーチ範囲
が広がり、かつ、負荷なしの運動を繰り返すことで痛みが軽減し、
ADLに一部の効果がみられたと考える。
【はじめに】回復期リハ病棟では、他職種によるチームアプローチ
にてADLの向上、在宅復帰を目指し集中的なリハビリテーション
を提供している。その中で、直接ADLへ介入する病棟ADL訓練の
重要性が指摘されている。今回、更衣動作に対して毎朝20分間の
統一した病棟ADL介入を実施し、手順や方法獲得の学習効果を検
討した。
【対象と方法】当院回復期リハ病棟に入院した脳血管疾
患患者で、入院時FIM更衣得点が5点未満であった55名を対象と
した。統一した病棟ADL介入を実施した26名を介入群、未実施の
29名を非介入群に分類し、入院時・退院時FIM更衣得点、介入期
間を比較検討した。統計処理にはMann-WhitneyのU検定を用い
て、統計的優位水準は5%未満とした。【結果】介入群では、FIM更
衣(上衣)得点の改善で有意に向上を認めた(P<0.05)
。FIM更衣
(下衣)得点の改善では、介入群と非介入群ともに有意な差は認め
なかった。介入群の入院時FIM更衣得点が有意に低かった(P<
0.05)が、退院時FIM更衣得点では差を認めなかった。介入期間
に有意な差は認めなかった。【考察】今回、時間や方法、環境を統
一した病棟ADL介入を実施することで、更衣動作における学習効
果が図れると考えられた。また、入院時のFIM更衣得点が低い患
者でも更衣動作の獲得や座位バランスなど機能面の向上、活動量
の増加が図れる可能性も示唆された。今後も、他職種と協業して
「しているADL」の更なる向上に繋げていきたい。
P5-5
P5-6
○保科慎吾(作業療法士)
,伊林克法
○澤村健一(理学療法士),河野聡子,岩本守代
医療法人立川メディカルセンター 悠遊健康村病院
宇部興産中央病院
清拭方法を変更し介入した結果、一般浴への移行に
繋がった一例
急性期病院に併設の回復期病棟における普段着更衣
導入と実態調査
【目的】当院の入浴動作のFIM利得は他のADLの利得と比較して低
かった。当院の研究で十分な下方リーチが可能になることによっ
て、浴槽内移乗のFIM利得が有意に増加した。この結果を踏まえ、
下方リーチの要素を加えた清拭方法で介入することで、その後の
変化を追跡したい。
【対象】発症より2カ月経過した60代男性。座
位・立位共に後方に崩れ、一部介助が必要だった。入浴は車椅子
浴で行っており、一般浴への移行は浴槽からの立ち上がり、また
ぎ動作において介助量が多く難しかった。
【介入方法】一ヶ月間
20分程度作業療法士と共に清拭を行った。1.非麻痺側下肢を拭く
時にはなるべく本人の力で下肢を上げて拭く。2.麻痺側下肢を拭
く時は足組みをして、十分に足底や外側面を拭く。3.体幹の前面・
背部もなるべく本人に行ってもらい、体幹の回旋・屈曲等が十分
に起こるよう援助をする。いずれの動作も両肩甲帯・頭頚部・体
幹が清拭する部位に向かえるよう促した。
【結果】
端座位が安定し、
援助なくとも一人での清拭が可能となった。また一般浴への移行
が可能となった。FIM合計が78点から85点となり、動作全般が見
守りレベルで可能となった。
【考察】入浴でまたぎ動作や浴槽内の
滑りやすい床環境からの立ち上がり動作は難しい。これらの動作
は体幹や下肢の屈曲位での分離した能力が必要と考えられる。端
座位の清拭を行うことで、体幹や下肢の分離が促され一般浴への
移行を効率化できたのではないかと考える。
【はじめに】更衣動作は関節可動域の拡大・拘縮予防・ADLへの
自立へもつながり、活動的な生活への動機づけとなる。また、回
復期ケア10項目宣言にも朝夕の更衣動作が推奨されているが、当
回復期病棟の患者は、急性期病棟と同じように病衣で過ごしてい
る。そこで、患者の普段着への更衣を導入するにあたって病棟職
員に更衣実施に対する意識調査を実施。手順を作成し、更衣実施
後、再度調査を行った。【対象及び方法】対象は回復期病棟に勤務
する職員40名に意識調査を行い、結果を元に手順を作成し、7週
間更衣を実施。再度、職員37名に調査を行った。
【結果】
「朝夕の
更衣は必要と思うか」という質問に対して、
「必要」が35名、92%
であり、導入後は36名、97%であった。朝夕の更衣導入にあたっ
て問題と考えた8項目の質問に対し複数回答で143件あった。導
入後は79件に減少した。7項目は減少しているが、
「リハビリ本
来の時間が不足する」のみ増加した。
【考察】更衣導入を必要とす
る職員は92%であり、導入に対しては問題ないと考えられる。導
入にあたって問題となることが79件残っている原因としては、手
順がリハビリの時間内や看護の手順変更なしで実施したものであ
り、手順や業務の改善の必要性がある。また「リハビリ本来の時
間が不足する」というリハスタッフの負担感の原因は、急性期病
院併設であり、生活リハビリという思考より急性期的思考の機能
訓練重視の傾向が関連している。
216
P6-1
P6-2
○永岡千佳子(理学療法士)
,松本 瞳,高橋夏美
○有本成美(理学療法士),久山咲奈,大原田恵理
一般財団法人 太田綜合病院付属太田西ノ内病院
社会医療法人鴻仁会 岡山中央奉還町病院
糖尿病を有する大腿骨骨折患者の歩行獲得とリハビ
リ開始までの期間、リハビリ実施期間の関係について
脳卒中片麻痺患者の病棟内歩行自立と各機能評価の
関係
【目的】糖尿病では骨折のリスクが高くその治癒は遷延すること
があり、筋力低下により歩行獲得に苦渋することがある。廃用で
の筋力低下の視点から、歩行獲得と早期のリハビリ介入や実施期
間の関係について検証したため報告する。
【対象・方法】2014年
4月1日〜2015年3月31日に地域包括ケア病棟を退院した192名の
内、65歳以上で大腿骨骨折により入院となった糖尿病を有する7
名(A群)、糖尿病を持たない23名(B群)を対象とした。それぞれの
リハビリ開始までの期間、実施期間、歩行練習開始までの期間に
対して差の検定を行った。
【結果】リハビリ開始までの期間、実施
期間、
歩行練習開始までの期間で有意差はみられなかった。
【考察】
今回の研究で有意差が認められなかった要因として、糖尿病の重
症度の分類をしていないことが影響していると考える。軽度の症
状が多く差が生じなかったと思われる。また、リハビリ開始まで
の平均日数は、A群1.86日、B群2.39日と早期に介入できている。
人は筋活動が全くない場合、1日に3〜6%、1週間で約10%筋力は
低下するが、最大筋力の20〜30%の筋活動により、筋力は維持さ
れると言われており、早期にリハビリ介入したことで筋力低下を
最小限に出来たと考える。また、年齢や疾病など条件を絞ったこ
とで対象者が少数となったことも有意差が認められなかった理由
の1つと思われる。しかしながら、糖尿病患者でも早期のリハビ
リ介入により、糖尿病を持たない患者と同様に歩行獲得は可能と
考える。
【目的】理学療法士は対象者の移動方法を選択するにあたり、監視
を要する状態から自立への移行時の判断は臨床において戸惑う経
験がある。本研究では脳卒中片麻痺患者の病棟内歩行自立度を判
断する際、TUG・麻痺側片脚立位・麻痺側荷重率を用いて各評価
の有効性を明らかにすることを目的とした。
【対象、方法】当院入
院中の脳卒中片麻痺患者21例(女性13名、男性8名、平均72.19歳)。
下肢BRS3以上、FIM歩行項目3点以上、退院時目標に歩行自立を
あげているものとした。各評価項目につきFIM歩行項目5点時と
6,7点時で比較検討した。またTUGと麻痺側片脚立位、TUGと麻
痺側荷重率の関係性を検討した。尚、本研究の目的と方法を説明
し同意が得られた者を対象とした。
【結果】各検査項目のT検定に
おいて有意差が認められた。また、TUGと麻痺側片脚立位では
相関を認めたが、TUGと麻痺側荷重率では相関は認められなかっ
た。
【考察】荷重率は下肢支持機能を含めた姿勢保持能力を表す
とされ、TUGは複合的な移動要素を多く含む評価である。この複
合的動作を遂行するには身体を支える下肢支持性向上が自立歩行
獲得に重要であると考える。また、麻痺側片脚立位は屋内歩行自
立を決定する要因として有用でないと示唆されたが、より難易度
の高い屋外歩行などの獲得には関連があると考えられる。【結論】
病棟内歩行自立判断にはTUGに加え、麻痺側荷重率を併用するこ
とで、さらに信頼性が高まることが示唆された。
P6-3
P6-4
○青木 遼(理学療法士)
,大木嘉那子,森田恵美子
○荒谷光太郎(理学療法士),鈴木 遼,戸澤賢一,齋藤風太,
玉熊若葉,齊藤成美,今井寛人,須藤真史,斎藤信一,岩田 学,
松本茂男
医療法人財団新生会 大宮共立病院
一般財団法人黎明郷 弘前脳卒中・リハビリテーションセンター
当院回復期リハビリテーション病棟におけるFBSと
FIMの関係および今後の取り組みについて
当回復期病棟のADL介入方法における現状と課題
〜アンケート調査を通じて〜
【目的】患者様のADL向上を促進するためには、リハビリスタッ
フ・看護師間で統一した介入をしていくことが重要である。今
回、当回復期病棟において、ADL介入方法について調査を行った
ので、現状と課題について報告する。
【対象と方法】当回復期病棟
に勤務しているスタッフ59名(PT・OT・ST28名、看護師・看護
助手31名)に対し、ADL(起居・移乗・排泄動作)の介入方法につ
いてのアンケート調査を行った。
【結果】アンケートの回収率は
94.9%。1.担当患者のADL能力については、起居・移乗・排泄と
もに83.9%のスタッフが把握していた。2.ADL介入方法がリハビ
リスタッフ・看護師間で統一できていると答えた割合は16.0%で
あった。介入方法を統一できていない理由として、スタッフ間で
の情報交換が不十分、担当以外のスタッフへの周知が困難である
などがあった。3.ADL向上に向けて今後取り組みが必要と考えて
いるスタッフの割合は76.7%であった。全体の37.5%からリハ
ビリスタッフ・看護師間でADL介入方法の統一に向け、情報共有
できるような機会を設けた方がいいという意見が挙がった。
【ま
とめ】担当患者のADL能力を把握しているスタッフは多かった
が、担当以外のリハビリスタッフ・看護師への周知およびADL介
入方法の統一が不十分である傾向にあることが分かった。今後、
リハビリスタッフ・看護師間で情報共有する機会を確保し、周知
できる取り組みが必要と考える。
【目的】回復期リハビリテーション病棟におけるFBS(Functional
Balance Scale)とFIM(Functional Independence Measure)との
関連について調査し、より自立度を高めるための取り組みを検討
した。
【対象・方法】H26年度入院患者のうち、リハビリテーショ
ンレベルで起立が可能な患者45名(男性12名・女性33名、平均年
齢83.5歳)とした。FBSは入退院時の2回測定し、FIMとの関連性
は相関係数を用いて検証した。
【結果】FBSとFIMの運動項目と
の間では、入退院時ともに相関関係が認められた。しかし、FBS
とFIMの全項目および利得との間では、入退院時ともに相関関係
は認められなかった。【考察】上記結果より、FIMの向上にはバラ
ンス能力が関与していると考えられるが、その他の要素も重要な
因子であることが予測される。また、利得に相関関係はなく、ば
らつきの大きさは個人差を示している可能性がある。FBSが向上
しているにも関わらずFIMが改善していない患者の多くは、認知
機能低下や高次脳機能障害により監視が外せない患者であった。
このことから、当院ではバランス能力以外に認知機能面もFIMに
大きな影響を与えていることが考えられる。
【今後の展望】認知
機能面の重要性も再認識することができたが、安定した動作の獲
得は理学療法士の役割の1つであると考える。当院ではリハビリ
以外の運動時間が少ない患者も多いため、集団起立の導入を開始
し、運動量の確保を目指している。
217
P6-5
P6-6
○猪原翔太(理学療法士)1),明石ゆりえ2),新原正之1),
早川万紀子1),花房義和1),松本憲二1),坂本知三郎1)
○坂本真一(理学療法士),山本紘靖,工藤考記,中田和典,
田中美枝子,増子裕介,笠間公栄
1)医療法人篤友会 関西リハビリテーション病院
2)医療法人篤友会 千里山病院
普門院診療所 リハビリテーション科
FESを利用した痙縮抑制から復職に必要な歩行能力
の獲得に至った症例
生活期リハビリを実施している高齢者の歩行能力と
ADL・IADLとの関連
【目的】本研究は生活期リハビリを実施し在宅生活を継続してい
る高齢者にとって重要な運動機能である歩行能力とADL、IADL
との関連を明らかにすることである。
【方法】対象は生活期リハ
ビリを実施している高齢者18名(男性4名、女性14名)。平均年齢
83±7.3歳、HDS-R24.2±3.9点。対象者には本研究の趣旨を説明
し同意を得て実施した。歩行能力の評価は10m歩行時間(快適・
最大)を計測し、ADLとIADLはそれぞれFIMと老研式活動能力指
標(TMIG)を行った。分析は各評価項目との関連を検討するため、
Spearmanの順位相関係数を算出した(p<0.05)。【成績】快適歩行
時間とFIM、TMIGではr=-0.813、r=-0.656で負の相関を認めた(p
<0.01)。最大歩行時間とFIM、TMIGではr=-0.745、r=-0.515と
負の相関を認めた(p<0.01)。【結論】結果より生活期リハビリを
実施している高齢者にとって、10m歩行時間はFIMやTMIGを反
映した指標であることが分かった。これより、生活期リハビリに
て10m歩行時間を指標に練習を進めていくことはFIMやTMIGの
反映にも繋がることが示唆された。また、最大歩行では快適歩行
ほどFIMやTMIGに強い相関を認めず、ばらつきが大きいことが
分かった。これは、最大歩行時間を短くできるがFIMやTMIGの
自立度は低い対象者もいることが要因の一つだと考えた。今後は
対象者を増やし経過を追って検討していくことで快適・最大歩行
と日常生活との関連について明らかにしていければと考える。
【はじめに】脳卒中片麻痺を呈し、屋外歩行では麻痺側足部の内反
底屈位によって転倒リスクが増大した症例を担当した。復職に必
要な屋外歩行動作を獲得するためにFESと運動療法を実施した結
果、痙縮軽減や屋外歩行の獲得に至った例を報告する。
【症例】40
代男性。入院時、
歩行動作はFIM1、
左下肢の運動麻痺II-2(上田法)、
筋緊張はMAS0であった。介入3ヶ月で短下肢装具とT-caneを使
用して院内歩行はFIM6、屋外歩行はFIM5まで向上。左下肢の運
動麻痺IV-2に向上したが、下腿三頭筋の筋緊張がMAS3に亢進し、
屋外歩行では麻痺側足部の内反底屈位から転倒リスクが生じてい
た。【方法】理学療法を4-5単位/日。機能的電気刺激装置「ウォー
クエイド」
(帝人ファーマ株式会社)を使用し、歩行訓練を30分程
度。1-2週目は3-4回/週、3-4週目は1-2回/週の頻度で1ヶ月間実
施した。ウォークエイド以外の訓練時間に運動療法を実施した。
【結果】ウォークエイド介入後、筋緊張はMAS1に改善を認め、そ
れに伴い内反底屈位も軽減した。内反底屈位の軽減により、転倒
リスクも軽減した。歩行動作では屋外歩行がFIM6になり、復職
に必要であった屋外歩行が獲得出来た。
【考察】FESの相反神経
抑制による痙縮抑制の効果がMASの改善に影響を及ぼした可能
性が考えられる。ウォークエイド以外の訓練時間に運動療法を実
施したことで、身体機能の向上と運動学習が促通された事が屋外
歩行の獲得に繋がったと考えられる。
P7-1
P7-2
○川井貴彦(理学療法士)1),中野華波1),下重孝嘉1),蛯名 亮1),
関根美保1),樫村孝憲1),高田雄一2)
○樋口敬典(理学療法士),廣田雄也,畑山裕之,逆井宏英,
小松徹也,安達祐翔,高松 恵,森山 拓,杉山大陸
当院における脳卒中患者の歩行能力に関する因子の
検討
Honda歩行アシスト使用での歩行能力向上への効
果−アシスト量調節による歩行速度及び歩数への影
響−
1)JA福島厚生連 白河厚生総合病院 リハビリテーション科
2)北海道文教大学 人間科学部 理学療法学科
赤羽リハビリテーション病院 リハビリテーション科
【はじめに】先行研究として、Honda歩行アシスト(以下歩行アシ
スト)は片麻痺者の歩行速度に向上を認める等の報告がある。し
かし、アシスト量を歩行訓練の度に調整することでの効果の報告
は少ない。今回、アシスト量調整に伴う歩行に及ぼす効果を検討
したので報告する。
【対象・方法】対象は片麻痺者7名(脳梗塞4
名、脳出血2名、脊髄腫瘍摘出後1名、年齢55±10.3歳)で、重度の
高次脳機能障害、認知機能低下、関節可動域制限を認める者は除
外した。方法は、歩行アシスト装着下にて歩行訓練を20分程度施
行。初回、5回目、10回目の歩行訓練後に10m歩行時間及び歩数
の計測を行なった。統計解析は、10m歩行時間及び歩数に対して
Wilcoxonの符号付順位和検定を用いて有意水準を5%未満とし
た。なお、本研究は当院倫理委員会の承認を得て行った。【結果】
10m歩行時間及び歩数に有意な改善を認めた( 10m歩行時間 初
回19.5秒、5回目15.3秒、10回目13.3秒、歩数 初回26.6歩、5回目
23.0歩、10回目21.4歩、p<0.05)。【考察】歩行時の左右均整が
とれるようなアシスト量に調整する事で効率のよい歩行を誘導
し、歩行パターンの学習へと繋がることが考えられた。また。股
関節の屈伸トルクを補助することで麻痺側遊脚期の膝関節屈曲角
度が増加しクリアランスを改善させて歩行速度の向上や歩数を減
少させる可能性が示唆された。今後、症例数を増やし継続的に効
果検証や介入効果を検討していく必要がある。
【はじめに】脳卒中患者を対象とし、初回理学療法評価で退院時の
歩行能力予測に関わる要因を検討したので報告する。
【対象・方法】当院に入院した脳卒中患者69名を対象に、年齢、性
別、Japan Coma Scale
(JCS)
、National Institute of Health Stroke
Scale
(NIHSS)
、下肢Brunnstrom stage
(Br-stage)
、改定 長谷川
式簡易知能評価スケール(HDS-R)
、Trunk Control Test
(TCT:
左右寝返り、起き上がり、端座位保持の4項目)を測定し、退院時
の歩行自立群と非自立群との関連を検討した。統計処理にはt検
定、Mann-whitneyのU検定、X2検定で有意差を認めた項目を独立
変数とし、歩行能力を従属変数とするロジスティック回帰分析を
行った。有意水準は5%とした。
【結果】t検定、Mann-whitneyのU検定、X2検定の結果、NIHSS、
下肢Br-stage、TCTの各項目の6項目に有意な差を認めた。次に
有意差を認めた6項目を独立変数、歩行能力を従属変数としたロ
ジスティック回帰分析を実施した結果、TCTの起き上がり動作
(p=0.001 オッズ比0.890)が優位な変数であった。
【考察】脳卒中患者の歩行自立を予測する理学療法評価として、起
き上がり動作の評価が有用である可能性が示唆された。
218
P7-3
P7-4
○古澤優守(理学療法士)
○知念貞幸(理学療法士)1,2),鈴木 暁1),福崎幸子2)
IMSグループ 埼玉みさと総合リハビリテーション病院
1)医療法人社団明芳会 横浜新都市脳神経外科病院 リハビリテーションセンター
2)医療法人社団明芳会 江田訪問看護ステーション
回復期リハ病院退院時と在宅場面で移動手段が異な
る症例
在宅脳卒中後遺症者の裸足と着靴での歩行の変化に
ついて
【はじめに】訪問リハにおいて、回復期リハ病院退院時の自立度設
定と異なる設定で生活している利用者を担当した。退院時・訪問
時で移動手段の乖離が生じた背景や今後の課題について考察し
た為、以下に報告する。
【症例紹介】脳出血後左片麻痺、高次脳機
能障害を呈した50代男性。回復期リハ病院退院後3日目より訪問
リハを開始。退院時の移動手段は車椅子と設定されていたが、在
宅では歩行(杖・装具)にて移動。約2ヶ月間転倒歴はなかった。
【 方 法 】Performance-Oriented Mobility Assessment
(POMA)、
10m歩行、Functional Independence Measure
(FIM)運動項目、
かなひろいテスト(無意味つづり・物語文)の評価を行い、退院
時と比較した。また回復期セラピスト、利用者に面接を実施し
た。対象者には本発表について説明し、同意を得た上で評価を実
施した。
【結果】POMA20点→20点、10m歩行27.1秒→23.4秒、
FIM60点→75点。注意検査では誤答数の増加が見られた。面接
では、回復期セラピストは機能評価から転倒リスクが高いと判断
し車椅子の使用を提案したが、利用者はリハ時に介助無く歩くこ
とが出来た為、自宅でも歩けると判断していた。
【考察】歩行や
FIM等の改善には、利用者の判断で歩行機会や活動範囲を増やし
たことが影響していると考えられる。より実生活に適した動作を
検討する際は、本人の意思等を加味した上での関わりが重要と考
える。
【はじめに】靴には足部機能や歩行を補助する役割があり、脳卒中
後遺症者に靴を履かせる事で歩容が改善する事を経験する。し
かし、在宅で生活している方の多くは、裸足や月形芯の入ってい
ない、柔らかい素材のルームシューズを履いて生活している事が
多い。本研究では、裸足と着靴で脳卒中後遺症者の歩行の変化に
ついて検証したので報告する。
【対象及び方法】自宅内歩行が自
立している脳卒中後遺症者6名(Brunnstrom Stage3が1名、4が5
名)
。裸足、着靴時の3m歩行時間を計測した。それを基に歩行率
を算出し比較した。また、デジタルカメラを用いて裸足、着靴時
の歩行の前額面、矢状面動画を撮影した。靴は月形芯が入ってお
り、前足部より踵部が1〜2cm高い屋内用のリハビリシューズを
使用した。【結果】3m歩行時間は裸足で10.3±4.1秒、着靴で9.15
±4.2秒と着靴で短縮が認められた。歩行率は裸足で75.2±22.5
(歩/分)
、着靴で81.9±24.03(歩/分)と着靴で増加が認められた。
着靴時の歩容の変化として、非麻痺側立脚時の上半身重心の正中
化が認められ、全対象者共に麻痺側の踵接地が出現した。【考察】
靴は歩行障害に対して有用な道具となる事が考えられた。靴を履
いて生活する事で、入院中に獲得された歩行能力の維持や向上に
繋がると考える。しかし、室内で靴を履くことに抵抗感を示す方
も少なくない。その為、入院中に靴を履いて生活する為の指導を
行う事が必要と考える。
P7-5
P8-1
○本郷伸治(理学療法士)1),上野真也1),上林美公1),北島悠史1),
安井翔一2),岩下孝博2),濱口貴博1)
○岡本 仁(作業療法士),佐近隆二,河原利枝,矢守 茂
1)医療法人社団菫会 名谷病院 リハビリテーション科
2)医療法人社団菫会 伊川谷病院
社会医療法人祥和会 脳神経センター大田記念病院
立ち上がり動作における介助者への負担軽減への取
り組み
当院SCUにおける作業療法士の増員に伴う効果につ
いて
【はじめに】当院SCUは作業療法士2名の配置だったが、在院日数
短縮化が進む中で早期に充実した作業療法(以下OT)実施のため、
2014年6月より3名に増員した。増員による効果判定を目的に
OT介入量とFIMの関係について検証した。
【対象と方法】対象は
「 2013年6月〜2014年2月(SCU作業療法士2名:A群)」、「 2014年
6月〜2015年2月(同3名:B群)」の各期間に、脳卒中(SAH除外)に
てSCUでOT実施し、入退院時にFIM、NIHSSを測定した患者とし
た(A群240名、B群330名) 。2群間において入院時NIHSS重症度
別(軽症例、中等度例、重症例)に、作業療法士増員が、OT実施量、
入退院時FIM下位項目利得の項目に及ぼす影響を検討した。検定
は独立したt検定とし、統計解析はSPSS for windows20.0で行っ
た。【結果】軽症例では、B群においてFIM(排尿・排便・移乗トイレ・
歩行)利得にて有意に高値(p<0.05)を認め、中等度例ではA群にお
いてFIM(食事・更衣・移乗トイレ)利得にて有意に高値(p<0.05)
を認めた。またB群は、平均在院日数、一般病棟の平均OT実施単
位数の減少を認めた。
【考察】SCU作業療法士増員はSCU実施単
位を保証し、軽症例のFIM改善に寄与したと考える。中等度例に
おいてA群でFIM利得が高値だった理由として、平均年齢、在院日
数、OT実施量の影響が推測される。SCU退室後のOT実施量も重
要であることが示唆され、特に中等度例はADL拡大の時期と重な
り、多くのOT介入が必要であると考える。
【はじめに】当院の回復期病棟で勤務している、看護師・看護助
手に対し、患者の介助方法について困っていることがないかアン
ケートをとった。結果は移乗動作についての回答が多く、そのな
かでも自由記載において立ち上がり動作時の介助負担が多いこと
がわかった。立ち上がり動作の誘導方法の違いが及ぼす影響につ
いて動作筋電図を用いて検討したので報告する。
【対象と方法】
20歳代、健常者の男性2名を対象とした。患者役と介助者役に分
け表面筋電図で動作中の筋活動を確認した。患者役には多裂筋・
腹直筋に電極を貼付した。介助者役には多裂筋・大殿筋上部線維
に電極を貼付した。立ち上がり動作は正常な立ち上がり動作と引
き込む立ち上がり動作をおこなった。
【結果と考察】引き込む立
ち上がり動作では、患者役の腹直筋の活動が増加し、多裂筋の活
動が欠如していた。介助者役は多裂筋の活動が増加していた。引
き込む立ち上がり動作は患者役の重心が後方に偏倚しやすく、ま
た多裂筋の活動が欠如したため、介助者役の持ち上げようとする
力がさらに必要となり多裂筋の活動が増加したと考えた。【おわ
りに】鈴木は腰背部筋への負荷は慢性腰痛症への関連性が高いこ
とを報告している。介助負担の多い動作のひとつとして立ち上が
り動作の誘導を適切におこない、患者と介助者双方の負担を減ら
すことが課題となり、介助方法への意識改善が重要になると考え
る。
219
P8-2
P8-3
○石田憲司(事務)
○山崎由香(介護福祉士・ヘルパー),平田 翼,岡本真由美
一般社団法人巨樹の会 下関リハビリテーション病院
社会医療法人近森会 近森リハビリテーション病院
総医療費8億2千万削減について
介護福祉士のショートサマリーにおける業務改善を
試みて〜介護福祉士の専門性を見出そう〜
【当院の状況】当院の平成26年度の平均在院日数64.8日、全国平
均76.6日より11.8日短い。発症から急性期病院を経て当院に入
院するまで平均21.8日、全国平均26.7日より4.9日の短い。
【調査期間】急性期における回復期対象者 日当円 77,817円(平
成27年1月〜3月)当院回復期リハ 日当円 42,300円(平成26
年度)
【結果】急性期削減額 急性期日当円 77,817円×短縮日数 4.9日×年間入院数 933人=総医療費削減金額 355,755,979円
回復期削減額 当院回復期日当円 42,300円×短縮日数 11.8日
×年間退院数 933人=総医療費削減金額 465,697,620円合計 急性期削減額 355,755,979円+回復期削減金額 465,697,620
円=総医療費削減金額 821,453,599円
【今後の課題】更なる発症から入院の短縮。急性期との顔が見え
る連携。院内クリティカルパスの作成。退院後の外来リハ、訪問
リハの強化。総医療費は約7億5千万行っているが更にリハビリ
査定の運動器、廃用、心臓リハ疾患が約1億1千万ある。
当院の介護福祉士は電子カルテに2週間に1度、ケア計画の評価と
見直し及び、短期目標をショートサマリーとして記載している。
スタッフからは、情報の整理や記載に時間がかかり負担が大きい
という声があがっていた。そこで、記載に時間がかかる要因を明
らかにし、ショートサマリーに費やす時間を減らすための取り組
みを行った。まず、現状把握としてフィッシュボーンを用いた要
因分析を行うと同時にショートサマリーをどのような内容で記載
しているかを確認した。フィッシュボーンの結果からは、
「ショー
トサマリー記載についての教育が不十分であること」や、「記載
内容が決まっていないこと」が大きな要因となっていることが明
らかとなった。また、ショートサマリーの内容は、看護師の記載
するショートサマリーと重複していることが明らかとなった。そ
こで、記載内容を「患者の病棟生活の変化した部分」
「患者・家族
のニーズと現状との相違点」
「次回の短期目標に対する具体的な
アプローチ」など、これまで以上に介護福祉士としての視点とア
プローチを強調したものに統一した。その結果、看護師の記載内
容との重複も減り、また記載する内容が明確となったことで時間
短縮もできた。今後は、より介護福祉士の働きかけが明確なショー
トサマリーとなるよう取り組んでいきたい。
P8-4
P8-5
○城間 縁(介護福祉士・ヘルパー)1),櫻井智香子1),渡名喜良明2)
○中野明子(臨床心理士)1),山本 愛1),山崎満希子3),
金城恵美子4),小西彩香2),山田美穂2),加藤 洋2),廣瀬昴彦5),
杉野正一5)
1)大浜第一病院 看護部
2)大浜第一病院 医局
1)藍野病院 臨床心理科,2)藍野病院 リハビリテーション部
3)藍野病院 栄養科,4)藍野病院 看護部,5)藍野病院 神経内科
介護福祉士の電子カルテの記録に対する意識調査
パーキンソン病リハビリ・教育入院の有用性
〜非運動症状に注目して〜
【はじめに】当院の回復期リハビリテーション病棟(以下、リハ病
棟)では介護福祉士の記録が義務づけされていない。そのため、
介護福祉士は電子カルテを用いた記録や口頭で申し送りを行うな
ど統一性がなかった。そこで、介護福祉士の電子カルテ記録はど
の程度必要とされているか調査を行った。
【対象】
介護福祉士9名、
看護師・PT・OT・ST・リハビリテーション科専門医・社会福祉
士の39名【方法】アンケート調査(留置調査法)
【結果】
「電子カル
テ記録は必要だと思うか」との問いに介護福祉士9名全員が必要
と回答した。しかし、
「記録を実践している」と回答したのは2名
で、
「どちらでもない」が7名であった。一方、リハ病棟スタッフ
は「介護福祉士の電子カルテ記録は必要だと思うか」
、
「記録を活
用されているか」の問いに全員が必要、活用されているとの回答
であった。さらに、「介護福祉士の記録に求める情報は何か( 5つ
選択)」の問いに夜間の状況35名、移乗・移動が34名、排泄32名、
入浴25名、食事17名の選択であった。
【考察】今回のアンケート
結果より、回復期リハ病棟スタッフ全員が介護福祉士の記録を活
用しており記録が求められていることが示唆された。しかし介護
福祉士は記録の必要性を感じているが、記録の基準や認識にばら
つきがあった。今後は、介護福祉士の電子カルテに関する共通理
解や記録時間の確保、他職種に活用される記載内容の統一が課題
である。
【はじめに】当院では2015年2月よりパーキンソン病リハビリ・教
育入院(以下、教育入院)を開始した。入院期間は約4週間であり、
多職種がチームとなり患者のサポート体制を整えている。今回、
非運動症状や患者満足度を指標として、教育入院の有用性につい
て検討したので報告する。
【方法】対象は2015年2月から4月まで
に教育入院したパーキンソン病患者8名( 71.3歳、Yhar 1〜3)。
対象者に非運動症状の評価として、
「やる気スコア」と「老年期う
つ病評価尺度(GDS)」を入院時と退院時に実施した。また、退院
時に患者の満足度を測るためのアンケートをおこなった。【結果】
1。やる気スコアは6名中5名、GDSでは5名中4名で得点減少がみ
られ、アパシーおよび抑うつ感の改善が認められた。2。アンケー
トは7名から回答を得た。リハビリに対する満足度は、満足3名、
やや満足3名、普通1名であり、不満、やや不満と回答される方は
いなかった。自由記述では「筋トレでADLが向上した」など肯定
的な感想を得た。また、
「スタッフや他患者との交流会があれば」
との意見もあった。
【まとめ】運動症状のみならず非運動症状の
改善が認められ、満足度も高いことより、教育入院の有用性が示
唆された。今後は教育入院によって改善した機能が退院後も持続
できるようなフォローの体制を構築していく。また、アンケート
の結果を踏まえ、患者とスタッフによる「茶話会」を実施予定であ
り合わせて報告する。
220
P9-1
P9-2
○大和田宏美(理学療法士)1),河野通裕2)
○松本 亮(理学療法士),角田信夫,岡坂政人
1)仙台青葉学院短期大学 リハビリテーション学科 理学療法学専攻
2)医療法人 河野医院
IMSグループ 行徳総合病院 リハビリテーションセンター
地域在住の呼吸器疾患患者における呼吸リハビリ
テーション導入の効果について
−LINQによる評価からー
胸腰椎圧迫骨折患者の早期疼痛改善を目的とした介
入により在院日数が減少した経験
【はじめに】2025年問題を見据え急性期病院では今後結果を伴う
早期退院が求められ、理学療法にはより専門性が求められる。当
院では、高齢者に多い胸腰椎圧迫骨折の腰背部筋−筋膜性疼痛に
よる離床遅延が在院日数削減において度々問題視される。さら
に、離床遅延は廃用症候群の予防からも早急に解決しなければな
らない課題である。そこで今回、多裂筋促通による腰背部筋の緊
張抑制効果の検証と胸腰椎圧迫骨折患者の在院日数が減少した経
験について報告する。
【対象・方法】健常人10人を対象に脊柱起
立筋の筋緊張の尺度としてFingerFloorDistance(以下FFD)の値を
用い、多裂筋促通前・後で測定した。多裂筋促通として、被験者
を背臥位とし、検者は被験者の両上前腸骨棘を把持して骨盤を左
右に動かし振動刺激を1分間加えた。得られた数値をt検定を用い
て検討した。胸腰椎圧迫骨折患者の在院日数を(a)多裂筋促通な
し群H26.4〜8月(b)多裂筋促通あり群H26.9〜10月でそれぞれ比
較した。【結果】多裂筋促通前後の比較3.0±0.6cm(p<0.01)。a群
6症例 平均在院日数25.7±10.2 日 b群 4症例 平均在院日数18.0
±9.6日。
【考察】多裂筋の促通は腰背部筋の緊張抑制効果がある
ことを示唆され、臨床場面では在院日数の減少に寄与した印象を
受けた。病態特性を加味し理学療法の専門性を発揮することが、
急性期病院として機能を特化させる可能性について改めて認識で
きた。
【目的】COPDは慢性疾患であり、患者の疾患や運動に対する理
解が必要不可欠である。しかし、地域在住のCOPD患者は、呼吸
リハビリテーション(呼吸リハ)に対する認知度も低く、疾患の理
解や運動等に関する必要な情報が得られていない。LINQは、呼
吸器情報のニーズに関する質問票で、病気の理解、薬物療法、自
己管理、運動療法、禁煙、栄養教育の6項目( 25点満点)からなる。
本研究の目的は、地域在住のCOPD患者を対象に、呼吸リハの介
入前後の効果について、LINQによる評価の有用性を検証するこ
とである。
【方法】対象者は、地域在住のCOPD患者7名で(平均年
齢77.4±8.8歳)認知機能に問題がなく通院が可能な患者とした。
呼吸リハ実施の頻度は、週1回、または2週間に1回の頻度で、呼吸
リハの継続期間は、平均12.1±6.0ヶ月であった。呼吸リハの介入
前後で、1)LINQ、2)LSA
(生活の広がり)
、3)慢性呼吸器疾患患
者に特異的なADL評価(NRADL)の3項目を評価した。
【結果と考
察】LINQでは、呼吸リハ介入前に比べ介入後の方が、COPD患者
の病気の理解や運動療法に対する理解(自己管理能力)が高まっ
た傾向が示されたが、改善されていない項目も認められた。LSA
の評価結果は、74.5±24.9点、NRADL評価の結果は、84.7±9.7点
であった。長期的な介入が必要なCOPDに対する呼吸リハの治療
計画や教育の実践において、LINQを通した評価が有用であるこ
とが示された。
P9-3
P9-4
○加藤順一(医師)1),水岡 崇2),深澤喜啓2),石谷典子2),
山本正志3),永瀬揚子3)
○福崎博之(理学療法士)
タブレットPC端末(トレースコーダー TM)による
知的障害児における運筆能力の評価
パーキンソン病患者への腹臥位療法の実践
〜呼吸障害予防への取り組み〜
1)兵庫県立リハビリテーション西播磨病院 内科
2)兵庫県立リハビリテーション西播磨病院 作業療法科
3)兵庫県立西はりま特別支援学校,
医療法人親仁会 みさき病院
【はじめに】パーキンソン病では、錐体外路系の障害を主体とし
多彩な臨床症状を呈するが、近年では呼吸機能障害も呈すること
が報告されている。異常姿勢などの症候に加え加齢により四肢、
頚部、体幹の抗重力の機能低下が病状進行に伴い著明となり二次
的合併症である関節拘縮、胸郭可動性低下、呼吸障害を引き起こ
し、増悪させる要因にもなっておりADLにも影響を与え悪化させ
ることが報告されている。また、パーキンソン病患者への腹臥位
療法が即時的に呼吸機能を改善させる効果があることが明らかと
なっている。今回、パーキンソン病患者に対し2週間の腹臥位療
法を実施し、胸郭可動性・呼吸機能が改善し継続的な呼吸管理の
プログラムとして有用であることが示唆されたためここに報告す
る。
【症例】80歳代女性。第12胸椎破裂骨折、既往にパーキンソ
ン病あり。
【理学療法プログラム】頚部・肩甲帯周囲筋のリラクゼー
ション、体幹・股関節伸群の筋力増強運動、起立板での下腿三頭
筋伸長、腹臥位療法。【結果】胸郭拡張差、バランス機能検査(FRT・
TUG)においては改善を認めたが10m歩行では改善は認められな
かった。呼吸機能検査では改善を認めた。【考察】腹臥位は体幹
の自重によって胸壁抵抗を高め、結果として体幹屈筋群(特に上
部体幹)の伸長、胸郭拡張性の増加、そして換気効率の増加を示
したものと考えた。よって腹臥位療法が継続的な呼吸機能管理と
しての効果の期待を提示した。
近年、上肢の協調運動機能評価において決められた線図をトレー
スすることで簡便かつ定量化できる機器(トレースコーダー TM)
が開発され、作業療法での上肢・手指機能の向上を図ることは、
主要な治療目標のひとつである。知的障害児における作業療法
で描画や書字の運筆遂行能力の向上は、学習場面での重要な課題
のひとつと考えられる。今回、特別支援学校に通う知的障害児童
30名( 6〜17歳)を対象に、トレースコーダー TMを用いて利き手
使用にて打点テスト・線引きテスト・トレーステスト(直線・サ
イン波・円)および指標追跡トレーステスト(直線・サイン波・
円)を実施した。特別な作業介入は行わず4ヶ月の期間をあけて
2回実施し、その前後で決められた線図からの実際に描いた距離
との乖離距離と面積を測定評価し、比較検討した。目標からの乖
離距離は、打点テスト( 5.8から4.0mm)
、線引きテスト( 9.1から
4.4mm)で有意に低値を示した。随時速度で実施するトレーステ
ストでは、乖離距離・面積ともに変化を認めなかったが、一定速
度で実施する指標追跡トレーステストでは、直線・円およびサイ
ン波において乖離距離および面積は有意に低値を示した。今回
の結果より、特別な作業介入をしない通常の学習場面においてト
レースコーダー TMを使用して知的障害児における運筆能力の評
価が可能であり、障害児(者)の上肢の協調運動機能評価に利用で
きるものと考えられる。
221
P9-5
P9-6
○櫻井靖一郎(理学療法士)
,小山内隆
○安達知広(理学療法士)
熱川温泉病院
医療法人社団甲友会 西宮協立脳神経外科病院
リハビリテーション科
水の特性を利用した歩行訓練により歩行速度の改善
がみられた一症例
当院脳卒中急性期病棟における重度障害および軽度
障害のリハビリテーション介入割合について
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟転院後、4wで歩行自
立となった右人工膝関節置換術(TKA)患者に対し、膝下水位での
歩行訓練(膝下歩行浴)を行い、歩行速度の改善がみられたため報
告する。
【症例紹介】年齢:70歳代 性別:女性 診断名:TKA術後2日よ
り理学療法開始。術後23日、当院回復期リハ病棟に入院。理学療
法実施し、介入4wにて棟内手放し歩行自立。
【介入4w評価】ROM:右膝関節屈曲95°伸展−5°、MMT大腿四頭
筋4/5 ハムストリングス2/5 下腿三頭筋5/5歩行:骨盤前傾位・
体幹過伸展位、体幹の回旋はほとんどみられない。右遊脚期に振
り出し時に体幹の左側屈(+)右立脚期後期では、踵離地が早い。
10m歩行:快適20秒24歩、努力14秒19歩。
【経過】
介入4wにて10m歩行時間は入院時と変化なし。そのため、
水による抵抗と水流を利用し、遊脚期のハムストリングスと大腿
四頭筋の同時収縮、立脚期のハムストリングス・下腿三頭筋の収
縮を促す事を目的に膝下歩行浴を考案し、歩行速度の向上を図っ
た。膝下歩行浴は週3回、1回20分実施。介入9wにて10m歩行:
快適13.2秒 努力7.2秒となった。
【考察】膝下歩行浴を行うことで、大腿四頭筋・ハムストリングス・
下腿三頭筋の筋力強化と膝関節の同時収縮を促すことができたた
め、歩行速度の向上につながったと考えられる。
【目的】近年、脳卒中ガイドラインにもあるように発症直後からの
リハビリテーション(以下、リハ)介入が推奨されている。当院も
SCU病床を有し約8割の患者に対して約2日前後にリハ介入を実
施している。今回、脳卒中急性期患者の障害度によりリハ介入単
位数の差があるか調査したので、若干の考察を加え報告する。
【 方 法 】平 成26年4月 よ り 平 成27年3月 ま で の1年 間 に 当 院SCU
に入室した脳卒中患者で初期NIHSS17点以上の患者(以下、重
症)103名、初期NIHSS7点以下の患者(以下、軽症)389名を比較し
た。
【結果】1日平均リハ単位数(実施単位数/実施日数);重症PT1.63、
OT1.65、ST1.51単位、計4.79単位、軽症PT1.69、OT1.79、ST1.95
単位、計5.43単位と僅かに差がみられた。リハ介入までの日数;
重症約2.5日、軽症約2日。在院日数;重症32日、軽症20日、mRS
入退院での比較(中央値);重症0.7改善・軽症1.2改善、自宅退院率;
重症約3%、軽症64%であった。
【考察】重症例では状態が不安定なためリハ介入も困難な場合が
ある。当院ではSCU専従PT1名以外に7名のセラピストが介入し
ている。今回の調査より重症例に対しても同様にリハ介入が出来
ていることがわかった。リハの効果としてはまだ不十分であるが
今後は重症の方にもより多くの介入が出来るように介入方法をさ
らに検討したい。
P10-1
P10-2
○三村 健(理学療法士)
○藤江純平(作業療法士)1),小林隆司2)
新潟訪問リハビリネットワーク
1)こころね訪問看護ステーション渡橋町
2)首都大学東京 健康福祉学部 作業療法学科
新潟県内訪問リハビリテーション実施施設便覧の発
行について
訪問作業療法における利用者の作業選択と満足度関
連因子の特性について
新潟県内で訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)に携わる
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(以下、POS)の有志によっ
て設立された新潟訪問リハビリネットワークでは、平成26年度事
業として、新潟県内の訪問リハ(訪問看護Ι5を含む)を行ってい
る病院・診療所、訪問看護ステーション、介護老人保健施設の一
覧を作成し、
『新潟県内訪問リハビリテーション実施施設便覧』
として発行した。県内のPOS、いずれかが所属する全ての施設に
関して、もれなく調査を行い、その結果を新潟県内の全ての居宅
介護支援事業所、地域包括支援センター、県および市町村、POS
所属施設に配布した。本便覧の最大の特徴は、介護支援専門員が
担当する利用者のケアプランに訪問リハを組み入れたいとき、ど
の事業所がその利用者の自宅を訪問のエリアとしているかが容易
に検索できる点にある。作成、配布後、多くの介護支援専門員か
ら「使い易い。」
「こういう一覧がほしかった。
」という声をいただ
いた。このような一覧は地域において訪問リハを必要としている
患者、利用者と、その介護支援専門員、さらには急性期・回復期
リハスタッフ等にとって非常に有効と考えられたので、作成の過
程、困難だった点、課題等をまとめて紹介する。
【はじめに】医療・福祉におけるサービスの質の向上のために実
施される調査として、顧客満足(CS)調査がある。本研究の目的は、
訪問作業療法におけるCSの向上のため、利用者の作業選択方法に
よるCSの特性を明らかにすることである。
【方法】研究の協力を得た訪問作業療法の利用者を対象に、CS
に 関 連 す る 満 足 度26項 目 と 作 業 選 択 方 法 に つ い て、無 記 名
自 記 式 ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 っ た。 作 業 選 択 方 法 の 回 答 か ら
Client-centered(CLC)群とTherapist-centered(THC)群の2群に分
類し、CS関連項目より総合満足度を規定する因子の解析にカテゴ
リカル回帰分析を行った(有意水準5%)。なお、吉備国際大学倫理
審査委員会の承認を得て実施した(承認番号12-31)。
【結果・考察】対象者472名のうち274名(有効回答率52.7%)から
回答があり、「はい(CLC群)」163名、「いいえ(THC群)」111名と
なった。解析結果より、調整済R2乗はCLC群0.588、THC群0.739
となり、どちらも適合度が高かった。総合満足度を規定する因子
について、CLC群では「内容説明(β=0.270)」
、
「他部門連携(β=
0.159)」、「改善自覚(β=0.117)」といった協業的因子と関連がみ
られた。THC群では「回数・時間帯(β=0.348)」、「利用継続(β
=0.301)」、
「礼儀・接遇(β=0.283)」、
「社会資源紹介(β=0.168)」、
「精神安定(β=0.166)」といった受身的因子と関連がみられた。
これら2群の特性を使い分けた訪問作業療法の提供によって、利
用者のCSを高めることが出来ると考える。
222
P10-3
P10-4
○馬田慎也(理学療法士)1),堀金未来江2),竹岡 亨2),松田淳子3),
稲岡秀陽2)
○平片一志(作業療法士),石田康子
1)医療法人同仁会(社団) 京都九条病院訪問リハビリテーション
2)医療法人同仁会(社団) 京都九条病院
3)医療法人同仁会(社団) 介護老人保健施設マムクオーレ
一般財団法人竹田健康財団 竹田綜合病院
竹田訪問看護ステーション
訪問リハビリテーション終了者と継続者の調査報告
訪問リハビリテーションにおける短期コースの紹介
【はじめに】今回、当事業所では目標と期間を共有し効果的に訪問
リハビリテーション(訪問リハ)を行う為に短期コースを作成した
ので紹介する。
【短期コースの概要】短期コースは目的別に4つのモデルコースが
あり、約3ヶ月で達成できる目標を設定する。主な対象は退院直
後の方や在宅で生活機能が低下した方、活動や生活範囲を拡大し
たい方である。説明用紙には目標達成までの段階的な取り組み内
容を例示し視覚的にイメージしやすいように工夫した。また、本
人用の用紙は利用者や家族と一緒に記入し、1ヵ月毎に目標の達
成度を0~10点の間で自己評価する。達成度や現状をもとに目標
の変更や訪問リハの終了を検討する。
【方法】H26.4.1〜 H27.3.31の新規利用者110名中、短期コース
を利用した23名を対象とした。利用前後の達成状況や社会参加
状況を調べた。
【結果】短期コースの利用者のうち、退院直後が11名、在宅からが
12名であった。対象者の転機として3ヶ月以内に達成終了は9名、
3ヶ月以上で達成終了は7名、継続利用に移行は5名、中止は2名で
あった。短期コースの終了者16名の達成度は利用前後でいずれ
も向上し、その内13名が社会参加につながった。
【考察】短期コースは期間や目標を視覚化し共有することで、達成
感を持って訪問リハを終了できることが示唆される。また、社会
参加促進の一助となると考える。
【目的】本研究の目的は、訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)
のゴールを達成して訪問リハを終了した者(以下終了者)と、ゴー
ルを達成しているが訪問リハを継続している者(以下継続者)を後
方視的に調査し、よりよい訪問リハサービスを提供するための一
助とすることである。
【方法】対象は、過去4年間に訪問リハを利
用された全利用者の内、終了者15名(年齢79.0±7.0歳)と、継続者
13名(年齢81.7±6.5歳)である。調査項目は、目標、目標達成に
要した期間、通所リハビリテーション、通所サービス利用による運
動機会(以下運動機会)の有無、functional independence measure
(以下FIM)
、mini mental state examination
(以下MMSE)
、同居家
族とした。統計解析には、対応のないt検定を用い、終了者と継
続者の比較を行った。有意水準は5%とした。
【結果】終了者は、
継続者と比較してFIM、MMSEが開始時、終了時ともに有意に低
値であったが、目標達成までの期間は有意に短かった。目標の内
容は活動レベル68%、参加レベル32%と日常生活動作を中心とし
た目標設定が目立った。継続者は、心身機能レベル19%、活動レ
ベル31%、参加レベル50%であった。また、運動機会は、継続者
で31%であったが、終了者は、全員に運動機会が設けられていた。
【結論】終了者の目標は活動レベルが多く、日常生活動作の改善に
主眼が置かれていた。また、終了者は活動機会が多い可能性が示
唆された。
P10-5
P10-6
○林 浩二(作業療法士)1),森田伸一2),長谷川清之1)
○山下大輔(作業療法士),松本太蔵
訪問リハビリテーションが要介護認定基準時間及ぼ
す影響について
精神科訪問看護基本療養費算定要件研修を受講して
〜身体と精神の両面をサポートできる作業療法士を
目指して〜
1)医療法人青仁会 鹿屋訪問看護ステーション
2)医療法人青仁会 池田病院
養和病院 リハビリテーション課
平成26年度の診療報酬改定で、要介護・要支援認定者であっても
「精神科訪問看護指示書」が交付されればその訪問看護は訪問看護
基本療養費(医療保険)で算定することとなった。それに伴う精
神科訪問看護基本療養費算定要件を満たす為の研修を受講した。
現在の精神科訪問看護に関連する動向としては、医療機関にか
かっている精神科の利用者の数は年々増加傾向にあり、まだまだ
長期入院の方が多いものの、新規入院であれば1年以内に退院す
る方が多い。また、全国で精神科訪問看護基本療養費を算定でき
る訪問看護事業所が年々増加していることからも、病院から地域
へシフトされていることが分かる。
筆者はこれまで回復期リハビリテーションと訪問リハビリテー
ションの領域で身体機能障害と高次脳機能障害へのアプローチを
中心に行ってきた。しかし、この研修により精神疾患のある方へ
自立支援での単独訪問リハビリテーション(訪問看護ステーショ
ンからの作業療法)が可能となった。
精神科の利用者も高齢化に伴い身体機能障害の合併や日常生活能
力の低下をきたしている方がおられるものの、現状として訪問リ
ハビリテーションの提供はほとんどなかった。そのため、精神と
身体の両面の知識を持ち合わせた作業療法士はその人がしたいと
思う生活行為の自立を支援するという役割を担うため、活躍でき
ると考える。
【目的】近年、訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)の重要性
も認識され需要も高まってきている。今回、訪問リハの利用が要
介護認定基準時間に及ぼす影響を、介護保険認定調査項目と要介
護認定基準時間について調査したのでここに報告する。
【方法】平成26年4月から12月までの新規利用者11名(平均年齢
80.6歳、平均介護度2.78)を対象に開始時と3か月後の要介護認
定基準時間を算出した。算出には要介護認定一次判定シミュレー
ションソフトを使用した。
【結果】調査期間内のBarthel Index(以下BI)に著明な変化は認め
ず、要介護度の変化もなかった。項目では第1群(身体機能・起居
動作)の得点が10名で上昇、
第2群(生活機能)の得点は6名上昇し、
要介護認定基準時間が平均8.2分短縮した。開始時と3ヶ月後の要
介護認定基準時間をt検定により検証した結果、有意差がみられた
(p<0.05)
。
【結論】先行研究では、要介護認定基準時間とBIには負の相関関係
があると報告されている。今回は要介護認定基準時間に着目し、
訪問リハの効果を検討した。項目の第1群、第2群の得点上昇によ
り要介護認定基準時間が短縮しており、介護負担を示す指標とし
て有効であると考えられる。今後の課題は、データの蓄積、訪問
リハ非利用群と比較する事が挙げられる。
223
P11-1
P11-2
○小枝允耶(理学療法士)1),吉川義之1),柿花宏信2),亀澤康明3),
備酒伸彦4),小枝美由紀5)
○長島史明(理学療法士)1),原 和彦2),久保田章仁2),中川尚子1),
光村実香3),梶原厚子4),前田浩利4),岸 太一5)
1)雅の里リハビリ訪問看護ステーション,2)神戸掖済会病院 リハビリテー
ション科,3)えびすリハビリ訪問看護ステーション西宮
4)神戸学院大学 総合リハビリテーション学部,5)兵庫県立大学 看護学部
1)あおぞら診療所新松戸,2)埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科
3)訪問看護ステーションあおぞら,4)医療法人財団はるたか会・NPO法人
あおぞらネット,5)東邦大学
【目的】転倒自己効力感は、転倒恐怖感と身体機能との間の仲介物
として行動変容に関わり、転倒恐怖感に関与している。また、転
倒自己効力感が低い状態での在宅復帰は、活動の抑制による機能
低下の恐れがあるため、在宅復帰後に介助者またはケアスタッフ
がいない場合では、獲得機能の再低下につながることが懸念され
る。そこで今回、転倒自己効力感の向上にかかわる要因について
運動・心理機能、活動性の面から検討した。
【方法】大腿骨近位部骨折による術後患者46名に対して、1,4,8
週間目の運動機能、心理機能、活動性を測定し、転倒自己効力感
に最も影響を与えている要因について、差の検定と重回帰分析を
行った。対象は、入院のみを8週間行った入院群と、入院4週間と
退院4週間の8週間の経過を追った退院群の2群に分けて調査を
行った。
【結果】退院群では、8週間目の転倒自己効力感尺度の点数が入院
群に比べて有意に改善した。また、8週間目の転倒自己効力感に
影響する要因としては、退院後の活動性である退院後LSA、FIM、
歩行能力、入院前LSAの順に影響が強く、退院後LSAではかなり
強い相関がみられた。
【考察】在宅で安全な生活の継続と活動性の拡大を失敗すること
なく行うことで、転倒自己効力感を高めることができる。そのた
め、安全に活動性を上げるために在宅サービスへのシームレスな
サービス導入が有効である可能性が考えられた。
【目的】本研究は訪問看護ステーション(以下St)における小児リ
ハビリテーション(以下リハ)の内容を明らかにして、現状分析お
よび課題抽出を行なうことを目的とした。
【方法】対象は理学療法士が在籍する全国のSt(層化抽出法:500
施設)とし、リハ責任者に無記名自記式調査票を郵送した。調査
項目は小児リハ実施状況、利用者特性、支援内容、専門職連携と
した。分析は各項目の基本統計量を算出、比較検討を行った。
【結果と考察】調査は202施設より回答を得た(回収率40.4%)。小
児リハは102施設が実施、うち小児利用者に対応するリハ専門職
が在籍しているのは92施設であった。利用者特性としては、コ
ミュニケーション困難な児が81施設( 88%)
、寝たきりの児が73
施設( 79.3%)
、乳幼児が69施設( 75%)
、人工呼吸器使用児が58
施設( 63%)であった。支援内容は、心身機能や身体構造に関わ
る項目が多く、活動や参加、環境因子に関わる項目は少なかった。
専門職連携については、リハ職は訪問看護師や病院医師との連携
が多く、その目的はリスク管理、支援方法検討、身体状況把握の
順に多かった。Stにおける小児リハは、医療職と連携しながら利
用者の状態を把握し、精神・運動機能に対する支援を中心に実施
している。小児の生活期の支援では、リハ職はさらに多職種との
連携をはかり、活動や参加につながる支援を実践する必要がある
と考えられた。
大腿骨頸部骨折患者の在宅での活動度が転倒自己効
力感に及ぼす影響について
小児在宅支援におけるリハビリテーションに関する
研究−訪問看護ステーションに対する全国調査−
P11-3
P11-4
○原田祐輔(作業療法士)
,森田千晶,下田信明,望月秀樹
○高坂慎吾(理学療法士),木村早弥夏,寺戸雄也
杏林大学 保健学部 作業療法学科
道南勤医協 函館稜北病院
地域在住脳血管疾患患者における自己実現の欲求の
充足に関する調査研究
訪問リハビリテーション利用者に対してMNAを用
いての栄養状態の報告
【はじめに】脳血管疾患(以下CVD)は慢性期になる程、多面的な評
価が必要であることが示唆されている。本研究は、訪問リハの効
果判定として「自己実現の欲求の充足(生きがい)」を用いることの
有効性を検証する前段階として、地域在住CVD患者の生きがい意
識を調査した。
【方法】平成26年12月〜平成27年5月の間にK県H市にて訪問リ
ハ を 利 用 し たCVD患 者17名:67.1 ± 10.3歳(男 性11名:66.9
± 12.1歳、女性6名:67.5 ± 7.3歳)を対象とした。質問紙には
Ikigai-9を用いた。また、SIASを測定し、生きがい意識と運動機
能の関連性について検討した。
【結果】Ikigai-9の総得点は男性27.2 ± 7.4点、女性30.2 ± 8.6点
であり、地域の健常中高年者を対象とした先行研究(今井、2012)
の平均値よりも低い傾向を示した。生きがい意識と運動機能に
ついては、Ikigai-9総得点と運動機能で有意な相関関係はなく、
Ikigai-9の全下位項目( 3項目)と運動機能においても有意な相関
関係はなかった。
【考察】CVD患者の生きがい意識は地域の健常中高年者に比べて
低いことが示唆された。また、生きがい意識を高めるためには、
訪問リハにおいて運動機能以外へのアプローチが有効であること
が考えられた。訪問リハの効果判定として自己実現の欲求の充足
を評価することが有効かどうか、今後検証を進めたい。
【はじめに】在宅では栄養管理は自身や家族が行うことがほとんど
であり、栄養状態に問題がある利用者が多い印象があった。訪問
リハビリテーション(以下、訪リハ)での栄養管理について何が出
来るのか考える為に簡易栄養状態評価(以下、MNA)を用いて栄
養状態別の特徴について以下に報告する。【対象と方法】2015年4
月中の訪リハ利用者の内、経口摂取が可能であった56人を対象と
した。MNAを低栄養状態指標に沿って分類し、特徴のあった項
目を分析した。握力測定は男性25kg未満、女性20kg未満を基準
とした。
【結果】栄養状態良好は12人、低栄養のおそれありは31
人、低栄養は13人であった。栄養状態良好の特徴として全員が認
知症無し、食事自力摂取可能、下腿周計十分であった。握力は平
均19kgで4/12人が十分。低栄養のおそれありは約50%が中等度
以上の認知症を有している。食事自力摂取は約35%が何らかの
問題がある。握力は平均15kgで約20%が十分。低栄養は約50%
が中等度以上の認知症を有している。食事自力摂取は約70%が何
らかの問題がある。下腿周計は約35%不十分であった。握力は
平均6kgで約半数が測定困難であった。下腿周計が不十分な22人
の内、握力が十分であった人は低栄養の1人のみであった。【おわ
りに】今回の研究では訪リハ利用者の内、約80%は低栄養の危険
があるという結果になった。また、認知症無し、食事自力摂取可能、
下腿周計十分が栄養状態良好で共通するポイントとなった。
224
P11-5
P11-6
○大越 満(作業療法士)
,野尻亜希,山口勝也,佐野栄仁,
前田亮一,溝口哲朗,長谷川賢,平原佐斗司
○鎌田聡史(作業療法士)
東京ふれあい医療生活協同組合 梶原診療所 在宅総合ケアセンター
株式会社シダー あおぞらの里 古賀訪問看護ステーション
当事業所の訪問リハビリテーションにおける「社会
参加支援」の状況について
当事業所における活動支援の取組みについて、今後
の展望と課題
【はじめに】平成27年4月の介護報酬改定において、訪問リハビリ
テーション(以下、訪問リハ)は、通所サービス等に移行した実績
が評価される「社会参加支援加算」が新設された。そこで、当事業
所の終了者数及び社会参加支援に資する訪問リハの提供状況を振
り返り、社会参加を支援できる訪問リハの実践について考察する
ことを目的とした。
【方法】当事業所が訪問リハを開設して初めて終了者が出た2012
年度からの3年間の終了者サマリーより、1)終了者数、2)終了者の
うち社会参加への移行数及び移行率を抽出した。尚、今回は介護
保険利用者のみとし、算定要件2つ(a:社会参加への移行状況、b:
訪問リハの回転)のうち、aのみを対象とした。
【結果】2012年度:1)終了者数28名、2)社会参加への移行数2名(移
行率7.1%)
、2013年度:1)49名、2)8名(16.3%)
、2014年度:1)67
名、2)13名( 19.4%)
。当事業所は、3年間を通して、算定要件の基
準である5%以上の移行率を達成していた。
【考察】当事業所は、有床診療所であり訪問診療に力を入れている
ため訪問リハの対象者は高齢者が多い。しかし、どのような利用
者においても目標をできる限り明確にし、社会参加の可能性を考
えた訪問リハを実践していきたい。
【はじめに】当事業所では平成24年度より「屋外レクリエーション
(以下、屋外レク)」として、外出機会の乏しい利用者に対して、
作業療法士等リハビリ専門職と看護師が、介護報酬算定外にて外
出等活動支援を行ってきた。昨年度の活動を終えて、事業所内で
改めてこの取組みの目的を議論し、平成27年度の方針と課題につ
いて検討した為内容とともに報告する。
【活動内容】年間3〜4回、月1回の頻度で開催。対象は利用者のう
ち外出・気分転換活動機会が少ない方。利用者の希望を聴取し、
いちご狩り等の屋外活動を企画。
【検討内容】屋外レク参加後に自主的な外出等へ繋がったケースが
少なかった為、事業所内の検討会では自主的かつ継続的な「活動」
「参加」に繋げることを目的にすべきとの意見が出たが、終末期や
難病等により、その時を楽しむ意味が大きいケースも存在し「一
時的な楽しみの機会」であっても良いとの意見も挙がった。また、
看護師とリハビリ専門職がこの活動を行う意義についても議論し
た。
【今後の展望と課題】自主的かつ継続的な「活動」
「参加」に繋げる
ことを目的とするケース、難病・終末期など「その時を楽しむ」こ
とを目的とするケース、など個別に目的を明確化して開催する方
針であり、対象者のニーズ聴取や課題分析の技術、加えて社会資
源などの幅広い情報と知識の習得が課題と考えられるため、事業
所一体となり課題解決に励んでいく。
P12-1
P12-2
○吉田健太郎(理学療法士)
,濱本龍哉,石川直人
○森戸崇行(社会福祉士)1),佐々みさき2),小林有紀2),佐藤 潤3),
友野さゆり4),稲村洋子5)
当院での回復期退院後の身体機能、生活状況確認に
対する取り組みの振り返り
〜入院中から退院後の生活を想定した問題把握〜
千葉県回復期リハビリテーション連携の会MSW部
会の取組み 1)千葉県千葉リハビリテーションセンター 地域連携部 相談室
2)東京湾岸リハビリテーション病院,3)白金整形外科病院
4)亀田メディカルセンター,5)船橋市立リハビリテーション病院
医療法人 新さっぽろ脳神経外科病院 リハビリテーション科
【はじめに】当院では、回復期リハビリテーション病棟より在宅へ
退院した患者に対して身体機能や生活状況の確認、介護保険サー
ビスの利用の確認を行い、在宅生活をフォローすることを目的と
した外来リハビリテーションチェック(以下外来リハチェック)
を行っている。今回は、退院後の生活を想定した問題把握の状況
を確認し、病院内外の連携のあり方を検討することとした。
【 対 象 と 方 法 】対 象 は 平 成25年4月 〜 平 成27年4月 に 外 来 リ ハ
チェックを終了した93例。方法は退院前に予測していた問題と
外来リハチェックでの内容を後方視的に調査した。
【結果】退院時に予測していなかった問題が外来リハチェックに
て確認された件数は25例。それらの要因として、
経過による身体・
精神機能変化への予測・指導が不十分10例、本人・家族・ケアマ
ネジャー等の説明・情報共有不十分9例、予測困難なもの(他の疾
患の悪化、転居等)は6例であった。
【考察】長期的な身体・精神機能変化の予測・指導では、本人・家
族に起こりうるリスクの説明と予防的な視点での指導と実施の確
認が必要であり、中でも家族に対しては退院前から介助方法、適
切な活動(量・質)の必要性を理解してもらうことが重要と思わ
れる。予測が困難なものに対しては、相談窓口や介護保険サービ
ス等の社会資源に関する情報を提供していくことが必要と考え
る。
【目的】医療ソーシャルワーカー (以下MSW)はさまざまな連携を
もって日々の業務にあたっている。近年、回復期リハビリテーショ
ン病棟を持つ病院の増加がみられ、急性期や生活期の医療機関や
介護・保健・福祉等との連携とともに、県内の回復期を担うリハ
ビリテーション病院同士の情報交換や質の向上を目指し、横のつ
ながりを作った。その後、千葉県回復期リハビリテーション連携
の会が発足したことにより、他の専門職種とともにその中で継続
している。今回これまでの取組みを振返り、報告することとした。
【対象】
「千葉県回復期リハビリテーション病棟に従事するソー
シャルワーカーの集い」と「千葉県回復リハビリテーション連携
の会のMSW部会」 における実績
【方法】MSW部会が実施した研修企画の教育講座と情報共有ツー
ルとして作成した「回復期リハビリテーション医療機関ガイド
ブック」等、これまでの取組みをまとめる。
【結果】教育講座はH26年9月までに15回実施し、研修で学ぶとと
もに、MSW同士が、悩みや問題点などの共感や意見交換の場と
なった。2年に1回更新をして第3版まで発行したガイドブックに
より、他の回復期リハ病院の情報を持って情報提供ができるよう
になった。
【考察】千葉県回復期リハビリテーション連携の会はお互いにふ
れあいながら、各病院の強みの理解をはじめ、活きた知識を得る
場となり、日々の相談援助業務につながる会となっている。
225
P12-3
P12-4
○村田元徳(理学療法士)
○岡野 滋(薬剤師),佐藤栄慈,佐藤淳子,小林篤史,森山俊男
医療法人三九会 三九朗病院 リハビリテーション部
栃木県医師会 塩原温泉病院 薬剤科
急性期病院との連携について
〜回復期リハビリテーション病棟からの転院例〜
脳卒中医療介護連携手帳と手帳を用いた薬剤情報の
提供について
【はじめに】当院は回復期リハビリテーション(以下回リハ)病棟
100床を有し、年間500例を超える患者様を受け入れている。回
復期リハ病棟で治療できない時には急性期病院で治療をお願いし
ている。急性期病院への転院例についてまとめ、地域連携を考察
する。
【方法】2013年4月から2014年3月末までに回リハ病棟へ入院した
520例である。退院先が急性期病院であった50例に対し、基本情
報、
転院理由(原因疾患)
、
ADL
(FIM)
を後方視的に調査した。デー
タ収集は当院データベースを用いた。
【結果】入院から急性期病院転院までの期間は4週間で22名(44%)
であり、その後12週にわたり転院していた。原因は急変による転
院34例(肺炎・脳血管疾患・胆のう炎・静脈血栓症等)と予定し
た転院16例(胃ろう造設・頭蓋骨入れ・アキレス腱延長等)であっ
た。リハ算定病名別では、脳血管疾患が39例で運動器疾患が11例
であった。運動器疾患は全て急変による転院であった。転院後再
入院したのは20例で、転院前後のFIMは運動項目:40.7→42.1、
認知項目:19.6→18.6であった。自宅退院は16例であった。
【考察】急変は転院直後だけでなく、いつの時期でも発生している
ことがわかった。急変時には連携病院とともに治療を進める形が
必要である。当院と急性期病院との連携は、患者様が安心して治
療を受けることができる環境と言える。
調剤薬局から、情報提供の内容として、患者さんのアレルギー歴・
副作用歴、調剤上の工夫、病名、検査データ等を求められています。
アレルギー歴や副作用歴、調剤上の工夫等は、退院指導の一環と
して、情報を提供されることが多いと思いますが、検査データや
病名等については、大病院で実施検討されていますが、なかなか
中小の病院としては、取り組みにくい状況です。当院では、4月よ
り、脳卒中循環型クリティカルパスとして、脳卒中医療介護連携
手帳を運用してきました。この手帳は、医師、看護師、PT、OT、
ST等によって退院時における患者さんの状態が記入され、かかり
つけ医やケアマネージャーさん等への情報提供書となっていま
す。その後、かかりつけ医によって検査データや患者さんの状態
が追記され、ケアマネージャーさんに日常生活の状況が追記され、
患者さんの情報を共有するツールとして利用していきます。これ
らの情報は、かかりつけ薬剤師として服薬指導及び薬剤を管理す
る上で必要な情報であるため、医療連携手帳の追加資料として、
薬剤関連情報を提供する試みを始めたので報告します。
P12-5
P13-1
○石野泰央(理学療法士)1),熊谷範夫1),清水綾子1),小野安咲子1),
増田仁美2),澤井美佳2)
○本郷雄太(理学療法士)1),濱本龍哉1),児玉健宏2),小中弘樹1),
金子 郁1)
1)医療法人社団清明会 静岡リハビリテーション病院
2)静岡市保健福祉局福祉部 地域リハビリテーション推進センター
1)新さっぽろ脳神経外科病院 リハビリテーション科
2)新さっぽろ在宅リハビリテーションセンター
地域が求める医療・介護・福祉の連携 −地域リハ
ビリテーション広域支援センターと静岡市の合同事
業、多職種との勉強会を通して
当院外来装具対応の取り組みと地域連携について
当院は静岡圏域地域リハビリテーション広域支援センターとし
て、地域リハビリテーション推進事業を展開している。平成19年
からは静岡市地域リハビリテーション推進センターと合同事業を
進め、地域の関係職種より、医療から在宅へ支援が切り替わる際
の連携やリハビリテーション専門職同士の連携に関する意見が聞
かれていた。そこで、平成24年度から「PT・OT・ST合同勉強会」
と題し、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を対象に連携を中
心とした研修会を開催してきた。平成26年度は医療機関から退
院時に提供されるリハビリテーションサマリーに焦点を当て「地
域で活かせるリハサマリーの要点を考えよう!」をテーマに計2
回の研修会を開催した。1回目は各職種でリハサマリーに必要な
項目や要点を検討した。2回目はケアマネジャー、看護職、介護職
を招き情報を送る側と受け取る側の両者の考えや知識を共有し、
より良い退院支援と在宅生活に繋がるリハサマリーが作成される
事を目的に実施した。このような多施設や多職種が集まっての勉
強会は貴重な場であり、参加者からも好評であった。現在、医療・
介護・福祉の関係職種のみならず、地域全体での効果的な連携が
求められている。今回の取り組みを通して、リハビリテーション
専門職として多職種の役割と求められている事を理解し、情報を
共有していく事の重要性を再認識した。また、圏域における連携
についての課題も確認したので報告する。
【はじめに】当院では装具を作成した患者のフォローを行うため
に、外来装具対応を週1回行っている。修理・再作製に関わる中
で長期的な装具の対応が必要であること、生活期の中で装具は環
境や機能変化に適応されないことがあること、装具の面に関して
当院と地域間(札幌市厚別区)の連携が希薄であることが問題点で
あると考察した。そのため上記の問題点に対して、取り組みを行っ
たので活動内容を報告する。
【活動内容】札幌市厚別区の地域包括支援センターや区内に所属
するケアマネ−ジャー、生活期リハビリテーションスタッフを対
象とした。装具に関する基礎的な知識の提供、当院や地域に関わ
る装具使用患者の問題点について話し合った。装具に対する理解
を深めてもらい、問題点の共有を行った。耐用年数や不適合のポ
イントなどをまとめた簡易的なパンフレットや、各患者の装具の
情報を記載した装具ノートを作成した。患者・家族・ケアマネー
ジャーなどに配布。ノートやパンフレットで常時装具の状況が確
認でき、適宜当院に連絡を取れる状況をつくった。
【考察】装具使用者の適切なフォローアップを行うためには患者・
家族と共通の認識をもつことや地域連携が不可欠である。ケアマ
ネージャーや生活期リハビリスタッフと課題や目的を共有し、積
極的に連携をとる機会を設けることが重要である。
226
P13-2
P13-3
○千田菜実子(理学療法士)
,三島誠一,久保貴裕,増子美帆,
松本典子,加藤哲成,南 勝敏,宮野広太郎,堀本瑞穂,
黒谷彩子,清水翔太
○西本一始(理学療法士),宮武香織,早川万紀子,花房義和,
松本憲二,坂本知三郎
維持期脳卒中患者に対しロボットスーツHALを使
用した効果について−歩行時間を短縮できた要因に
ついての検討−
装具チームと業務改善の成果
医療法人篤友会 関西リハビリテーション病院
社会医療法人 高橋病院 リハビリテーション科
【目的】ロボットスーツHAL
( 以下、HAL)は歩行獲得を目的とし
たリハビリテーション支援機器であり、近年、脳卒中に起因する
片麻痺に対する使用経験が報告されている。当院でも2013年10
月にHALを導入し、脳卒中を主体とした脳脊髄障害患者に対する
リハビリテーションに使用してきた。今回は、外来リハビリ通院
中の維持期脳卒中片麻痺患者に対しHALを使用した効果を、歩幅
や歩行率に着目し検討した。
【対象・方法】歩行が可能な維持期脳卒中片麻痺患者5例( 61±7.7
歳の男女)に対し、運動療法とHALを併用した訓練を各々週1回
( 40分)ずつ実施した。HAL介入は20回1クールとし、介入前後
(HALを装着しない日に測定)での快適速度の10m歩行時間と歩
幅、歩行率を比較した。
【結果】全症例において、10m歩行時間の短縮(-3.4±1.0秒)と歩
幅の増加( 6.2±4.7cm)を認めた。歩行率は、増加した症例3名と
減少した症例2名に分かれた。減少した症例では、特に歩幅の増
加が大きく、かつ足関節底屈筋の歩行時の可動性が低下している
共通点があった。
【考察】HALを使用した訓練での10m歩行時間の短縮は、一律し
て歩幅の拡大によるものであるが、足関節底屈筋の歩行時の可動
性によっては歩行率に差が出ることが考えられた。今後、症例数
を増やし、症例の特徴に合わせて効果のある導入方法を検証して
いきたい。
【はじめに】当院では、平成26年7月より理学療法科で装具チーム
を発足させ、「装具」の視点から業務改善を推進している。主な
活動は、装具診察時のシート改編や立会い、データベースの作成、
作製前の報告会開催である。今回、それらの取り組みから若干の
成果がみられたため報告する。
【対象と方法】平成26年7月〜平成27年3月に脳血管疾患で当院に
て下肢装具を作製した48名を対象(整備後)とした。装具データ
ベースより入院期間、入院から装具作製までの期間、装具作製か
ら退院までの期間を抽出し、前年度同月間に作製した64名(整備
前)と比較した。
【結果】入院期間の平均は、群間は整備後8.4日短縮し、種類別でも
長下肢装具は14.3日、短下肢装具は1.3日短縮していた。入院か
ら装具作製までの平均期間は、群間では整備後0.1日、種類別で長
下肢装具は2.6日の短縮、短下肢装具は−4.9日であった。装具作
製後から退院までの平均期間は、群間は整備後14.6日の短縮、種
類別でも長下肢装具は17.5日、短下肢装具は6.2日短縮していた。
【考察】結果より、短下肢装具のみ作製までの期間に改善がみられ
なかったが、全体的に短縮傾向と分かった。短縮傾向の要因は、
作製前の報告会で必要性が整理され、新シートの利用で十分な情
報が共有出来た結果と考えている。今後、ADLや身体機能面につ
いても検証し、短期間でも質の高い治療が提供できる環境作りを
担っていきたい。
P13-4
P13-5
○前田慶子(介護福祉士・ヘルパー)
,大坂保子
○村上野志夫(理学療法士),相原一輝,井上あゆみ,高芝 潤
錦海リハビリテーション病院
社会医療法人近森会 近森リハビリテーション病院
片麻痺を呈する患者の服薬管理を支援する補助具の
作成
脳卒中片麻痺患者の短下肢装具処方における要因分析
【はじめに】脳卒中患者が在宅生活を獲得自立するためには内服
の自己管理が重要だが、片麻痺のため薬の持ち運び、薬袋の開封
動作の困難が服薬自己管理の阻害要因となることがある。そこで
内服管理を自立するための補助具を考案し、その有効性を検討し
た。
【対象】左片麻痺、右片麻痺の杖歩行女性患者各1名 【方法】服薬の動作状況と意見聴取から内服自己管理の阻害要因を
検討した。薬の準備段階では自室から適切な内服薬を選んで食堂
に持っていくこと、薬の開封動作では内容をこぼすこと無く、片
手で薬袋の開封することが問題であった。これらの問題に対して
運搬用の手提げ袋と、薬袋を自立させ片手動作でハサミで開封可
能とする補助具を作成した。これらの補助具について、入院中の
活用や服用状況、患者の感想を聞き取り評価した。
【結果、考察】薬の準備段階では運搬用の袋をレース素材の女性好
みにしたことで関心が向き同時に薬の認識が高まり、薬の持参忘
れの減少につながった。また袋を麻痺側の手に持てるようにした
ことで杖歩行の妨げにならず患側の認識強化にもつながった。開
封補助具使用時に薬袋がよれずにカット可能で開封動作が自立し
た。飲み忘れや錠剤の落下はなかった。ちょっとした心遣いで患
者の自立度を向上させ、服薬の介護負担の軽減にもつながる。今
後も類似患者に使用し服薬管理を支援可能な補助具と考えてい
る。
【目的】当院では下肢装具アルゴリズムや評価用装具を用いるな
ど、様々な要素を基にして装具選択を行っている。今回我々は、
下肢装具選択の予測に必要な要素として、長下肢と短下肢装具の
処方における入院時の身体機能能力の特徴について検討を行っ
た。【対象と方法】対象は、2013年6月1日〜2014年12月31日ま
でに当院に入院し、下肢装具を作製した脳卒中片麻痺患者162例
(年齢69.5±12.5歳、男性95人)とした。調査方法は電子カルテよ
り年齢、入院時の理学所見、入院時FIMなどについて後方視的に
調査した。検討は処方された装具が短下肢のものを短下肢群、長
下肢のものを長下肢群とし2群比較を行った。統計解析はMannWhitney、ロジスティック回帰分析を行い、有意水準は5%未満
とした。【結果】2群分類では短下肢群92例(56.5%)、長下肢群70
例(43.5% )であった。この2群について単回帰分析を行い、有意
であったものを独立変数とし短下肢装具の選択についてロジス
ティック回帰分析を行った。その結果、座位バランス(B=0.442、
0.270-0.723)、入院時FIMトイレ動作(B=0.403、0.194-0.836)、
入院時FIM合計(B=1.119、1.061-1.181)が採択された。【結語】
今回の結果から、下肢装具選択には座位での評価の重要性が示唆
された。また、短下肢装具の適応には初期のADLも重要であり、
できるだけ早期にADL向上できるかが短下肢装具処方における
因子と考えた。
227
P14-1
P14-2
○石原誓子(言語聴覚士)
,金城 唯,仲田聡子,崎原尚子,
湧上 聖
○山元由香里(看護師),小林政幸,神戸美里,江原真弓
医療法人緑水会 宜野湾記念病院
日高リハビリテーション病院 回復期病棟
当院における摂食・嚥下リハビリテーションの現状
と課題
脳幹出血で閉口障害のある患者の摂食嚥下動作確立
に向けた発声へのアプローチ
【目的】当院では、週2回嚥下造影検査(以下VF)を実施している。
今回VFを通して摂食・嚥下リハビリテーションの現状と課題を
後方視的に調査したので報告する。
【対象および方法】平成26年4月から平成27年3月の間にVFを行っ
た対象者43名の入院日からVFまでの期間・検査前後の栄養摂取
方法・嚥下機能を調査。
【結果】対象者の疾患別割合、脳血管疾患28名、肺炎・廃用疾患15
名。入院日から検査までの期間が平均20日。検査前後の栄養摂
取方法の変化、経口:前(18名42%)後(28名65%)
、経管:前(23
名53%)後( 10名23%)
、経口経管併用:前( 1名2%)後( 4名9%)、
経静脈栄養:前(1名2%)後(1名2%)
。
【考察】入院日から早期に検査を実施することが望ましいが、当
院では平均20日であった。平均20日を要した原因として1.患者
の体調次第で検査日が遅れる2.検査同意書を得る時間がかかる。
3.主治医から検査医への依頼が遅れる4.ST処方がない場合患者
の把握が困難である事が原因として挙げられる。上記の原因を改
善するマニュアルを作成し早期より安全な経口摂取可能にするた
め、医師・看護師・STの連携を密にしていく事が今後の課題で
ある。またVFにより嚥下機能を客観的に評価し、適切な食形態の
提供とリハビリテーション指導により、経口摂取移行率65%の改
善へとつながったと考えられる。
【はじめに】今回の症例は脳幹の広い範囲が障害されており、表情
筋の弛緩と咬筋の麻痺が強いため閉口が出来ない。声帯筋の麻痺、
軟口蓋の閉鎖不全もあり、発声・嚥下共に困難な状態だが、家族
より「食べさせたい」という希望が聞かれた。閉口が出来ない事
により口腔内の乾燥がしやすく、痰の付着も見られがちである。
口腔内環境の改善と発声練習をすることで、嚥下能力の基礎に繋
がるという文献がある。今回の症例に発声からのアプローチが有
効になると考えた。
【対象】A氏、60代、男性、失調(±)四肢麻痺重度、覚醒状態に波
がみられ指示の入りにくいことあり。
【方法】リハビリ以外に看護師と共に発声練習を毎日行った。また、
A氏に合わせた口腔ケアのパンフレットを作成し実施した。
【経過】発声練習と統一した口腔ケアを開始する前は発声みられ
ず。当初は、唇の動きはあるものの息が漏れる程度で発声には至
らず。練習開始後5日で口腔内の痰の付着なく口腔内環境の向上
あり。耐久性の低下みられ、発声練習が出来ない日もあった。練
習開始後20日経過して単音での発声みられた。以後、単語での発
声促したが単音以上の発声には繋がらなかった。
【考察】統一した口腔マッサージと発声練習を行うことで重度に
麻痺した嚥下関連筋群のトレーニングとなり、単音ではあるが嚥
下機能の基礎となる発声につながった。
P14-3
P14-4
○谷 知恵(言語聴覚士)
,山田麻和,笹原順哉,岡東美奈
○田中美穂(看護師),木村友里恵,胡 康子,林田正代,
占部奈緒美
長崎北病院 総合リハビリテーション部
特定医療法人茜会 昭和病院 回復期リハビリテーション病棟
回復期リハ病棟における他職種連携での口腔機能向
上への取り組み
おいしいの言葉が聞きたい
〜病棟での間接嚥下訓練の取り組み〜
【目的】当院回復期リハ病棟( 40床)では経管栄養対象者が2割前
後を占めており、嚥下機能に加え口腔機能の向上が課題となって
いる。しかし、口腔ケア(以下MC)は実質ST、Ns.が主で行って
おり、PT、OTの関わりが少ない現状にあった。そこで、STによ
る実技実習を含めた取り組みを行ったがので報告する。
【対象】
病棟専属のPT11名OT9名の計20名(経験年数4年目以下12名、5
年目以上8名)
【方法】ST主任( 16年目)による実際の患者への実
技実習を各自に40分実施。実施に当たりポイントや手順を記載
した資料を作成した。また効果判定として、MC実習前と1ヶ月後
にアンケートを実施した。
【結果】MC実習を受けた全員が良かっ
たと答え、1ヶ月後の日々のMC実施者は前12→後17/20名へと増
加し、MCへの意識の高まりを認めた。またNs.からも口腔内環境
が良くなったと肯定的意見をもらった。しかし、個々に合わせた
MCの応用や手順、その重要性についてより知りたいとの回答を
得たため、新たに講義も実施した。
【考察】MCではリスク管理や
個々に応じた方法の応用など、PT、OTの苦手意識が背景にあり、
実際の患者への実技は分かりやすかったと考えられる。重度障害
患者の機能向上と二次障害の予防に向けては、他職種での連携が
必要不可欠であり、今後PT、OTによるMC・歯磨きへの関わりが
より定着するよう取り組みを継続していきたい。
【はじめに】当回復期病棟では、脳血管疾患45%、運動器疾患55%
の患者が入院している。平均年齢は85歳と高齢者が多く、摂食嚥
下障害のリスクが高いと考えられる。そのため、看護師が積極的
にアプローチする必要があると考えた。そこで、嚥下評価を用い
た個別での間接訓練を行い、嚥下機能向上がみられた為、以下に
報告する。
【方法】期間:2015年1月〜4月。対象者:運動器疾患で嚥下障害
を合併する患者6名。方法:摂食嚥下ミーティング(看護師、言語
聴覚士に相談)を2回/月実施、嚥下評価を行い問題点を抽出し間
接訓練を実施した。
【結果】対象者6名のうち5名の藤島グレードにおける各嚥下ス
テージの評価が改善されると共に、退院後の生活を踏まえた食事
形態アップ・食事摂取量増加に繋がった。
【考察】看護師が食べるということに目を向けた援助を行う、今回、
早期より評価しアプローチすることで結果に結び付いたと考えら
れる。今後も加齢・疾患に伴い摂食・嚥下障害を有する高齢者は
増加すると予測される。そのため、看護師が積極的に間接訓練を
実施する必要性があると考える。
228
P14-5
P14-6
○山内竜太(言語聴覚士)
○依田まゆみ(管理栄養士・栄養士),山田麻和,山田純子,
岳下晶子,笹原順哉,青柳香織
医療法人清和会 平成とうや病院 リハビリテーション科
社会医療法人春回会 長崎北病院
食思向上に着目したお楽しみ経口摂取練習の効果に
ついて
急性期における食事ラウンドの取り組みについて
vol.2〜管理栄養士としての関わり〜
【はじめに】非経口摂取の患者が段階的に経口摂取へ移行する場
合、ゼリー等の「お楽しみ」経口摂取(以下お楽しみ食)から練習
する場合が多い。今回、重度嚥下障害を呈し誤嚥の危険性が高く、
非経口で入院した摂食嚥下訓練対象患者に対し、嗜好に沿ったお
楽しみ食を提供した。お楽しみ食がきっかけとなり3食経口摂取
可能となった症例を複数名経験した為、効果について検討した。
【対象・方法】2014年4月から2015年4月までの1年間で、脳血管
疾患および廃用症候群にて当院へ入院した非経口摂取の患者14
名のうち、他職種で検討した結果お楽しみ食の開始が可能であっ
た10名とした。お楽しみ食はコーヒーゼリー等味の異なるゼリー
( 4種類)、ミキサー食とし1日1回提供した。
【結果】お楽しみ食を
開始した患者10名のうち3食経口摂取へ移行出来た患者は6名(平
均年齢78.5±8.5歳)であった。
【考察】経口摂取は咀嚼運動や唾液
量増加、口腔内環境の改善の効果が期待できる。今回、患者本人
の嗜好に沿ったお楽しみ食を提供した結果、嚥下障害が重度にも
関わらず食思や訓練意欲が向上し機能回復との相乗効果を図れ
た。しかし、経口練習は肺炎リスクも高まる為、全患者への実施
は困難であり、対象患者の選定や開始時期については課題となっ
た。今回の経験を通し、患者の嗜好を尊重したお楽しみ食の提供
が重要と感じた為、今後も他職種と連携し十分なリスク管理を行
いながら積極的な提供を継続したい。
【はじめに】本学会にてvol.1で報告したように、RDも「食事ラウ
ンド」に参加し、栄養状態の早期改善を目指して実際の食事場面
に関わっている。この取り組みにおけるRDの役割と参加の意義
について報告する。
【対象と方法】対象は平成26年10月〜平成27年3月までに入院し
た脳卒中・神経疾患・肺炎後廃用患者137名。RDは、食形態・
身体計測値・食事摂取量・TPおよびAlb等の採血データを基に
GNRIによる栄養評価を実施し、低栄養患者を早期に把握して改
善策の検討を行った。
【結果】患者137名中56名(約41%)がGNRI≦92を示し、Alb≦3.0g/
dlの21名全員を含んでいた。疾患内訳は、脳卒中21名(38%)、神
経疾患26名(46%)、肺炎後廃用4名(7%)であり、神経疾患(パーキ
ンソン病)が最も低栄養患者が多かった。改善策として、栄養量
の検討やリハビリ時間を考慮した補助食品の摂取時間帯の提案を
行った。また、実際の食事場面をラウンドすることで、今まで気
付かなかった食事時の姿勢や食事動作も低栄養の一要因として影
響を与えることがわかった。
【考察】今回、
「食事ラウンド」に参加することで、カルテ上だけで
はつかめない低栄養に与える要因があることがわかった。栄養状
態の早期改善を図るためには、実際場面での評価と多職種との情
報共有を通した包括的な関わりが重要であり、
「食事ラウンド」
の有用性を実感できた。
P15-1
P15-2
○吉田由衣(理学療法士)
,森田 学,渡邊茂洋,佐藤 功,
斉藤幸子
○後藤智恵(管理栄養士・栄養士),隈本祐子
医療法人社団平成醫塾 苫小牧東病院
医療法人偕行会 偕行会リハビリテーション病院
診療技術部 栄養指導課
回復期リハビリテーション病棟におけるリハ栄養ア
セスメント導入への取り組み
できない栄養指導で終わらせない
【はじめに】当院は地域におけるリハビリテーション基幹病院と
して、回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ病棟と略す)104
床を中心に一般病棟、療養病棟、緩和ケア病棟を持つケアミック
ス病院である。特に回リハ病棟においては低栄養患者が多いと言
われている中、NST介入は重度の栄養障害や管理が難しいケース
への対応となり、軽度へのリハ栄養の取り組みがより必要と感じ
た。そのため、回リハ病棟における当院独自のリハ栄養アセスメ
ント導入に向けての取り組みを行ったのでここに報告する。
【方法】回リハ病棟でのリハカンファレンス毎に栄養アセスメン
ト項目を報告し、リハ栄養の観点からのアプローチができるよう
な評価項目の選定をリハ・栄養科を中心に検討した。項目はアル
ブミン、総タンパク、BMI、全エネルギー消費量、エネルギー消費
量、エネルギー摂取量、握力、上腕周径、下腿周径を基礎評価項目
とし、実施可能者のみ6分間歩行テストもしくは30秒立ち上がり
回数を記載することとした。これらの項目から重度、
中等度、軽度、
問題なしと判断できるようにした。また、この評価結果を電子カ
ルテ上へと反映し、いつでも閲覧できるようにすることとした。
【結果】現在、内容を電子カルテ上システムに組み込みを行ってい
る最中である。これらの運用についてリハ・栄養科を中心に連携
し、低栄養患者へのアセスメント・介入を行うことで低栄養患者
のADL向上を図っていきたいと考える。
【はじめに】食事療法は患者自身が実施する行動変容で実行に移
すことは容易ではない。今回、食事療法が守られなかった患者に
対し指導内容を工夫したことで意識改革に成功したため報告す
る。
【症例】50代男性、脳梗塞を発症。既往に2型糖尿病があり入
院時HbA1c8.5%。他院で栄養指導は実施されていたが食事療法
には無関心。入院時高次脳機能障害を認めた。【経過】糖尿病に
対し栄養指導の依頼あり。1日に必要なカロリーや摂取頻度が高
い食材のカロリーを理解しやすいよう問題形式にした。1週間分
の献立を立てられるよう主食・主菜・副菜に分け、組み合わせる
練習を行ったが高次脳機能障害によって理解が曖昧なため作業療
法士(以下OT)に指導方法を相談。当院の献立を書き写し参考にす
ることや、惣菜カードを組み合わせる練習を毎日実施。理解度を
リハビリ時にOTが再度評価した。買い物訓練にも同行したが脱
抑制により好物のみを選択してしまい注意点が守られていなかっ
た。そこで麺の日・弁当の日・スープの日など1週間の献立を固
定し、好物を中心として栄養バランスが整うよう一緒にパターン
化し記憶しやすいよう一覧表を作成した。【結果】HbA1cは7.3%
へ改善し、退院後は指導で使用していた媒体を活用し食品を購入
していることが聴取できた。
【考察】OTに高次脳機能障害のアプ
ローチ方法を相談し指導を工夫したことで食事療法の必要性を理
解し行動変容につながったと考えられる。
229
P15-3
P15-4
○中川恵理子(看護師)
,菅原弘子,南本牧江,富永正吾,夏目重厚,
清水淳也,藤本若菜,堀川早苗,口之町やよい,尾中亮太,
清水麻美,澤井梨恵,岩村優輝
○三島誠一(理学療法士)1),松田泰樹1),久保貴裕1),千田菜実子1),
守屋一憲1),志田 晃2)
脳梗塞に肥満とうつ病を併発した患者でサルコペニ
ア対策による減量療法が成功した一例
当院における大腿骨頸部骨折患者の栄養状態とその
影響について−全体像と個別事例の報告−
1)社会医療法人 高橋病院 リハビリテーション科
2)社会医療法人 高橋病院 呼吸器内科
医療法人榮昌会 吉田病院附属脳血管研究所
【はじめに】肥満やサルコペニア、うつ病は、回復期リハビリ遂行
上の阻害因子である。高齢肥満患者の減量療法はサルコペニアを
進行させる可能性あり、アルブミンやCRPのモニタリングと有酸
素運動を中心とした運動療法の併用が必須であるといわれてい
る。今回、我々は脳梗塞に肥満とうつ病を併発した患者で心理ケ
アとサルコペニア対策により減量療法が成功したので報告する。
【症例】脳梗塞の71歳女性。進行性脳卒中で、入院後に左片麻痺が
進行。14病日で、回復期リハ病棟へ転棟。転棟後よりリハビリ訓
練と並行して減量療法を開始。体重測定は看護ケアとして一緒に
測定・記入。90病日頃に、インフルエンザの罹患によりうつ病を
呈したが抗うつ剤と心理ケアで乗り切った。退院時には短下肢装
具で歩行可能になり、FIMは、入院時45から退院時106へ、体重は
75Kgから60.7Kg、BMIは31.6から25.6、健側の握力は19kgから
22Kgへと改善。入院中、経過中1400kcalの食事、アルブミン値
は4.3、CRP陰性が維持された。
【考察】当院の回復期リハ病棟で
は、サルコペニア対策チームにより、患者全員にBMI、アルブミン、
CRP、健側の握力などを経時的に実施している。片麻痺患者では、
サルコペニアの簡易評価、血液データのモニタリングが重要であ
り有酸素運動を意識した訓練計画が必要と考えている。うつ病は、
既往の疾患の影響や、脳卒中後うつ病、進行性脳卒中の心理的打
撃、ウイルス感染後のうつ病などが関与したと考えられた。
【対象・目的】高齢者では低栄養状態が多く、合併症や予後に影響
を与えるといわれている。また、大腿骨頸部骨折後の栄養状態も
予後への影響に深く関与するとの報告がある。今回、当院に紹介
入院された大腿骨頸部骨折後の患者について、栄養状態と移動形
態の変化について検討をした。
【方法】1年間に当院に転院してきた47名の大腿骨頸部骨折後の患
者を対象にそのカルテを調査した。栄養状態と受傷前の移動レベ
ル、退院時までの移動形態の変化について比較した。また入院期
間との関係も検討した。さらに、個別例についても調査をした。
統計処理はSPSS12.0J を用いた。
【結果】入院前の歩行形態とBMIの関係では、杖歩行群26.6±6.3と
独歩群20.8±3.7、歩行器群20.1±4.3で有意な差を認めた。しかし、
Albにおいては差を認めなかった。退院時の歩行形態が向上、維
持、または低下した群において、Albは入院中に大きな変化を認
めず、著しく低下した者は既往歴による影響と考えられた。また、
入院期間とAlbとの関係も一様ではなかった。一方で、個別事例
ではNST対象者が4名おり、その内、3名が死亡転帰となった。
【考察】入院時より栄養状態を示すAlbは比較的良好に推移してい
る者が多く、歩行形態の著しい低下は、既往歴による影響と考え
られた。そして、NST対象者の転帰を踏まえると、栄養状態は重
要な観察項目と考えられた。
P15-5
P16-1
○島崎俊二(作業療法士)
,大渡嵩世,山形繁広,門脇誠一
○知念亜矢子(看護師),山城美子,渡名喜良明,湧上尚美
医療法人社団甲友会 西宮協立リハビリテーション病院
おもと会 大浜第一病院 リハビリテーション病棟159
当院回復期リハビリテーション病棟での入院時栄養
評価について−MNA試用の結果をふまえて−
誤薬予防対策への取り組み
〜スタッフのアセスメント統一へ向けて〜
【はじめに】回復期リハ病棟協会栄養委員会の報告(2014)による
と、入院時69%の患者が低栄養とされている。当院では入院時の
栄養評価を主観的包括的アセスメント(SGA)で行っていたが、さ
らなるNSTの早急で積極的な介入が必要と考え、簡易栄養評価表
(mini nutritional assessment:以下MNA)を用いて入院時評価を
行った。【方法】対象は2014年10月-12月に当院回復期リハ病棟
に入院した73名(男性40名、女性33名、脳血管57名、運動器16名)。
年齢中央値79歳。入院時にMNAを用い3群に分類した。
【結果】
低栄養44名(60% )、低栄養のおそれあり27名(37% )、栄養状態良
好2名(3% )、97%の患者が低栄養・低栄養のおそれありに該当し
た。疾患別では、脳血管:低栄養33名(58% )低栄養のおそれあり
22名(39% )栄養状態良好2名(3% )、運動器:低栄養群11名(69% )
低栄養のおそれあり5名(31% )栄養状態良好0名(0% )。性別では
差違を認めなかった。
【考察】先行研究では低栄養・低栄養のお
それありの患者の割合は30〜50%とされている。回復期リハで
は、歩行・急性疾患の有無などの項目点が下がり、MNAでの評価
は感度が高く特異度が低いと考えられる。一方でSGAは評価者
の主観によって結果が左右されやすい。入院時栄養評価において
MNA単独でのスクリーニングは難しいが、対応が必要な症例の
選別や、活動量・食事量・体重・FIMの変化などと併せて多職種
が継時的に評価することで、より有効な介入が行える可能性があ
ると考えた。
【はじめに】当院では内服薬自己管理判断基準がマニュアル化さ
れている。しかし、基準に適合し入院前より自己管理している患
者や理解力・判断力のある患者による誤薬インシデントがみられ
ている。高次脳機能障害患者や認知力低下のある患者に関しては、
リハビリスタッフと相談し評価や管理方法を検討しているが、そ
れ以外の患者に関しては、病棟スタッフの各自の判断にて自己管
理を薬局へ依頼しているのが現状である。誤薬インシデントを防
止する為に、病棟スタッフの患者を評価する視点を統一化するこ
とが必要と感じ、前年度の誤薬インシデントデータを分析し、ア
セスメントシートやフローチャートを作成することで誤薬インシ
デントの減少へ繋げる為の活動を始めたので報告する。
【インシデントの内訳】前年度の内服に関するインシデント件数
は37件。その内、自己管理をしている患者25件。
【考察】理解力や判断力のある患者に関して、
「きちんと内服でき
ている」とスタッフの思い込みにより判断する危険性が高い。そ
の為、入院前より自己管理している患者でもアセスメントするこ
とが必要である。各スタッフが統一した評価の下で、継続した薬
剤指導を行うことでインシデントを防止し、患者や家族の自信に
も繋がると考える。
【まとめ】誤薬アセスメントやフローチャー
トを取り入れることで患者や家族に対して、自己管理における誤
薬防止のための統一した評価と指導をすることを目指す。
230
P16-2
P16-3
○伊東知也(理学療法士)
,坂本 敦,鈴木篤史,福嶋正志,
木暮伸二,長谷川純
○佐藤康則(理学療法士),渡部 萌,島貫 聡
公益社団法人群馬県医師会 群馬リハビリテーション病院
リハビリテーション部 理学療法室
一般財団法人 三友堂病院 三友堂リハビリテーションセンター
リハビリテーション技術部
当院におけるデータ班の一年間の活動について
各種マニュアルの手帳化と利用について
−アンケート調査より−
【はじめに】データの収集・管理・活用は重要である。しかし、当
院では臨床に追われ疎かになり易い業務の一つであった。そのた
め、平成26年度にデータの収集・管理を目的として理学療法室内
にデータ班を立ち上げた。また、データの処理方法と活用用法を
促す教育を行った。そこで、1年間の活動内容を報告する。
【データの収集管理】データ内容は簡便性と再現性を両立させる
為、実績のある一般的な検査項目を選択し入退院時のデータを収
集した。回収率は当初97%であったが、翌月には88%に低下した。
職員のデータに関する意識の低さが窺われたので未提出のリハ担
当者に班員が提出を促した。また職員間で記載方法が不定であっ
た為、提出用紙に注意点を記載した。データの整理・統合は班員
が各々時間をみつけて行っていたが、班員の負担感の増大により、
入力日を月2回1時間以内と定め班員全員が集まり一斉入力とし
た。
【データの処理と活用】班員の教育は興味ある分野や文献との比
較により当院の理学療法の効果について後方視的研究を行った。
班員以外の職員には、処理した研究の発表・収集したデータを
Excelにまとめ開示することにより意識向上を図った。意識の変
化は発表前後のアンケート調査で把握し、データの必要性を感
じる人は71%から82%(p=0.064)、利用意志のある人は61%から
77%(p=0.068)に向上している傾向がみられた。
【はじめに】当リハビリテーション技術部には10種のマニュアが
存在する。しかし、訓練中や病棟で動きが解らなくなった時や、
頻度の少ない仕事を行う時の確認は難しい。そういった場合に
使用できるよう、平成25年にポケットに入るサイズの手帳として
持ち歩くことで業務が円滑に行えると考え作成した。半年後アン
ケート調査を行い改善修正。さらに1年後アンケート調査を実施
したので報告する。
【対象・方法】対象はRH部職員アンケートは経験年数別、無記名
で施行。使用状況についてその頻度や改善要望などを含む6項目
について行う。
【結果】※スタッフ数は入れ替わりがあり変動
半年後
使用者 PT12名 OT8名 ST7名 未使用者 PT4名 OT6名 ST0名
1年後
使用者 PT16名 OT14名 ST6名 未使用者 PT2名 OT0名 ST0名
【考察】半年後は手帳を携帯する習慣がなく、写真サイズの手帳の
ために持ち運びの不便さもあり浸透はしなかった。そのため1年後、
さらに内容を更新、掲載希望の多いものを追加した。カレンダー
やインデックス、メモ帳も用意し、個々に取り入れて使用しても
らった。それにより2年目では活用頻度も大幅に増加したと考える。
P16-4
P16-5
○鎌田真紀(理学療法士)
,佐野知康
○堀口美生(理学療法士),中塚康太
世田谷記念病院 リハビリテーション科
公益社団法人地域医療振興協会 市立大村市民病院
当院セラピストが指導した自主練習の現状と退院後
の運動機能との関係
当院の地域包括ケア病棟開設後の現状と今後の課題
について
【はじめに】本研究は当院セラピストが指導した自主練習の定着
状況と指導内容の確認、運動機能との関係を調査し今後の自主練
習の指導方法へ役立てる目的に行った。
【方法】対象者は23名(退
院後1ヶ月以上で当院外来もしくはデイケアを現在利用し、かつ
退院時と現在の歩行が見守り以上)、運動機能評価は10m歩行と
Berg Balance Scale(以下:BBS)を退院時と現在の値を比較。ア
ンケート内容は1.自主練習指導の有無、2.頻度、3.実際の実施頻
度、4.実施時間、5.効果量をそれぞれ4〜5段階評価で聴取。また
指導内容や要望について自由記載を頂いた。
【結果】23名中10m
歩行は7名改善、10名低下、6名維持。BBSは9名改善、12名低下、
2名維持。全例が退院時に自主練習の指導を受け、23名中20名が
自主練習を実施。自主練習の頻度を指導された18名中8人が指導
された頻度を遵守したが、自主練習実施と運動機能の維持に関係
性は認めず。自由記載では絵や写真などが欲しいとの意見が多く
挙がった。【考察】 指導された頻度は約半数が遵守し高頻度で
15分未満の短時間の実施傾向となった。しかし、自主練習の実施
と運動機能の維持に関係性は認められなかった。運動機能維持は
自主練習のみで賄えないが、退院後の廃用予防を図る為に自主練
習の必要性を感じる。退院後も正しい自主練習を継続して頂く為、
図のある資料の配布、練習項目の優先順位、入院中の自主練習定
着が重要と考えた。
【目的】当院は平成26年9月に地域包括ケア病棟(56床)を開設した。
急性期および緊急時の受け入れと在宅復帰を目指す病棟として、
地域から信頼される病棟に向けた取り組みを進めていく必要があ
る。地域包括ケア病棟についての施設基準の認識、および今後の
退院支援の取り組みに対しての現状と課題の把握を目的としてア
ンケートを実施した。
【対象】地域包括病棟に従事するリハビリ
スタッフ・看護師・介護福祉士・看護助手40名【アンケート内容】
・施設基準に関する質問:10問解答 ・退院支援に関する課題項
目:優先順位をつけて3項目を選択【結果】
・施設基準項目 全体:
8.5点 病棟スタッフ:8.96点 リハビリスタッフ:6.88点 ・
退院支援項目 優先順位1位:情報共有 2位:離床拡大 3位:
トイレ・排泄動作の獲得。選択項目ではトイレ・排泄動作の獲得
が多い。
【考察】施設基準に関しては想定していたよりも、認識度
は高い結果となった。共通して看護配置加算などの加算項目にお
いて点数が低く、オリエンテーションの際に施設基準の教育・説
明の必要性を感じた。また、今回アンケートを実施したことで施
設基準における地域包括ケア病棟の役割を理解するきっかけと
なった。退院支援の項目においては早期から情報共有の場を作り、
リハビリ以外の時間に離床を促す必要性とトイレ動作の獲得が必
要との意見が多く、今後、在宅復帰を目標に病棟スタッフと連携
して取り組んで行きたいと考える。
231
P16-6
P17-1
○岩元秀年(作業療法士)
,北嶋優一,頼真依子,栗田祐哉,
岩井拓磨
○田中美穂(理学療法士)1),福元正伸2),松前まぐみ1),水本雄介1),
中勝彩香3),桑田知可子1),大門守雄1),藤江寛子3),中塚彩子1),
深津陽子1),菅美由紀1),原めぐみ1),阿部解子1),岡野生也1),
奥田志保1)
当院における訪問リハビリテーションの普及への取
り組み
住環境調整後の満足度および使用状況について
−アンケート調査と訪問調査より−
誠和会 牟田病院
1)兵庫県立リハビリテーション中央病院,2)福祉のまちづくり研究所
3)総合リハ訪問看護ステーション
【はじめに】近年、在宅医療への移行が急速に進められている中訪
問リハビリ(以下訪問リハ)の需要が高くなっている。しかし、当
院における訪問リハ利用者数は右肩下がりを続け、地域密着型の
医療を掲げる当院の方針と相反する状況であった。今回、他職種
に対する訪問リハの認識や理解を深めて頂く機会を増やし、訪問
利用者数の増加を図ったので結果を報告する。
【方法】訪問リハの認識と理解を深めるため回復期ミーティング
への参加、訪問リハビリ案内の掲示、パンフレットの作成、事業
所への訪問など啓蒙活動を実施。
【結果】平成26年3月時点での訪問リハ件数が月278件であったが、
平成27年3月で月372件となり、94件増加した。
【考察】今回の取り組みにより1年間で94件の増加に繋げることが
できた。これは、患者様や介護支援専門員に在宅生活を継続する
上での訪問リハビリの有用性を理解して頂くことができたことに
加え、より良い在宅医療を提供したいというリハスタッフの意識
改革が件数増加に繋がったと考えられる。これからも利用者・家
族が満足するような在宅生活の継続と社会参加に繋げるリハビリ
テーションを提供し、結果を残すことで、今後推進されていく地
域包括ケアシステムの枠組みの中で重要な役割を担っていきた
い。
【はじめに】当院では入院中に家屋調査を行うとともに必要に応
じ、住宅訪問にて改修や福祉用具導入の提案を実施している。今
回、入院中に住宅訪問を行った症例に対し、退院後にアンケート
調査および自宅への訪問調査を実施した。提案の満足度や使用状
況について検討した。
【対象と方法】平成25年度に当院にて住宅訪問を実施した71件に
対し、郵送にてアンケート調査を実施した。また、アンケートに
て訪問調査の承諾を得た17件に対し、提案内容と実際の改修・導
入状況の比較、改修箇所の使用状況を調査した。
【結果】改修案に対する満足度は「満足」68%、「やや満足」24%で
あった。訪問調査を実施した17件においては、身体機能の変化な
どにより改修および福祉用具が不要になった、もしくは改修を追
加したケースがあった。現状で使用可能ではあるが、より安全に
楽に活動したいといった要望もあった。
【考察】住宅訪問での改修や福祉用具の提示についての満足度は
高く、概ね使用されていたが、実際に訪問したことでより詳細な
状況を把握することができた。身体機能の向上、身体機能の低下、
介助者の負担増大など、身体機能の変化だけでなく、生活スタイ
ルの変化も生じていた。様々な予後を予測した上での改修案の提
示が必要とされるため、これらの情報を多職種にて共有し、提案
の選択肢を増やすなど、今後の課題に取り組んでいきたい。
P17-2
P17-3
○藪谷春菜(作業療法士)1),山口修司1),杉田智世1),宝本圭二1),
大石和也2)
○松崎 翼(作業療法士),廣田雄也,小松徹也,大庭紗季,
冨田直未,富田寛生
1)医療法人協和会 協和会病院
2)ひらかた聖徳園訪問看護ステーション
赤羽リハビリテーション病院
住環境整備を行った患者の自宅退院1ヵ月後におけ
る使用状況
当院におけるSimulation Roomの使用効果の検討
−Home Evaluationの情報を基に−
【はじめに】当院は自宅退院の方に対してHome Evaluation(以下
HE)を施行し、環境を整えた上で退院を進めている。当院には家
屋環境を想定したSimulation Room(以下SR)があり、動作確認
や改修案の検討、環境を想定した動作練習や家族指導を行ってい
る。今回はHEの情報を基にSRの使用効果を検討したので報告す
る。
【対象及び方法】対象は当院に入院中のHEを施行した15名(男
性9名、女性8名、平均年齢71.3±9.8歳、脳血管疾患7名、運動器疾
患7名、廃用症候群1名)。 方法はHE施行前のSRでの動作とHE時
自宅での動作を「できるADL」として同様のセラピストが評価を
行 っ た。Functional Independent Measure( 以 下FIM)を 用 い、
トイレ動作、入浴関連動作、移動、上がり框の昇降項目を評価し、
家屋とSRの環境比較を行った。 統計解析はHE前後の各FIM評価
項目に対してSpearmanの順位相関係数を用い有意水準は1%未
満とした。
【説明と同意】対象者へは書面にて本研究の目的と方
法を説明し、同意を得た者に対して行った。【結果】
FIMは全て
の項目に関してSRと自宅の動作に相関を示した(SR/自宅:トイ
レ動作6.2/6.2点、トイレ移乗6.3/6.1点、入浴関連動作5.3/5.1点、
移動6.1/6.0点、上がり框5.3/5.5点、p>0.01)。【考察】問題点が
早期から発見して手摺りや介護用品の検討、家族への介助指導を
進め早期退院に繋げられると考察した。今後対象者を増やし、継
続してSRの使用効果を検証していく。
【はじめに】当回復期リハビリテーション病棟(以下.当病棟)では
退院支援の1つとして家屋訪問の実施や住宅改修又は福祉用具(以
下.住環境整備)の提案をしている。しかし、これまで住環境整備
後の使用状況を十分に確認できていなかった。そこで今回、退院
1ヶ月後の使用状況について調査を実施した。
【対象・方法】対象は平成25年11月1日〜平成26年10月31日に住
環境整備を行って自宅退院をした患者60名、調査時期は退院日か
ら30±17日である。方法は担当療法士が当院で作成した調査用紙
をもとに本人・家族又はケアマネジャーに電話で聞き取り調査を
行った。なお本調査は事前に患者の同意を得ている。
【結果】実施した住環境整備は全部で306箇所であり、使用できて
いる箇所は266箇所、使用できていない箇所(変更・追加も含む)
は25箇所、その他15箇所であった。使用できていない理由は患者
の動作能力の変化、患者が認知症等で退院後の動作予測が困難で
あった等、様々であった。
【考察】当病棟では以前より住環境整備について症例検討会等を
行っていた為、概ね適切な提案ができていたと考える。しかし、
入院中の生活だけでは退院後の生活を十分に想定することが難し
く、提案が適切でない症例もあった。それぞれの症例を1つ1つ確
認することで今後の症例に活かすことができ、これらは調査を行
うことで見えてきたと考える。
232
P17-4
P17-5
○川西 彩(その他)
○家方保幸(その他)
パナソニック エイジフリーショップス株式会社
パナソニック エイジフリーショップス株式会社
住環境整備により車いすでの自立度向上を目指した
事例
チームアプローチによる在宅復帰後の住宅改修の可
能性
【はじめに】住宅の多くは車いすでの自立を考慮したスペースや間
取り、設備等の計画はされていないことも多く、車いす使用者の
在宅復帰、加えて自立生活は困難を極めている。今回車いすでの
『排泄』と『炊事』の自立に焦点をあてた住環境整備により、ADL・
QOLの向上を実現した事例を報告する。
【症例】68歳女性。身長151cm、体重52kg、要介護3、息子様との
二人暮らし。交通事故により、両下肢の複数箇所を骨折(第3腰椎
破裂骨折、
右大腿骨遠位端骨折他)
。現在入院中。ADLは両下肢(股
関節、膝関節、足関節)に重度の拘縮があり屋内移動は車いす自
走にて自立。入浴を除きその他は自立。在宅復帰を目指すにあた
り、特に本人のニーズが高い『排泄』
『炊事』の自立に焦点をあて、
車いすで自立できるように段差解消、間取りの工夫、車いす対応
商材の選定などをプランに取り入れシミュレーションを行い決定
した。
【考察・結論】排泄、洗面は問題なく自立にて行え、さらに炊事も
一人で行うことができた。現在、二人分の食事を毎日作っている。
入院時には無かった『炊事を担う』ことで生活にメリハリがつき
活力が出たことでご本人の意欲向上にも繋がっている。住環境整
備ではADLの向上は勿論、QOLの向上に繋がるポイントを見つけ
ることがより重要である。
【はじめに】築年数が20年を越える集合住宅の多くは、車いす生活
を余儀なくされた場合、日常生活範囲を大きく制限せざるを得な
い状況に陥ってしまう。住み慣れた地を離れ、住替えをしたり、
時には施設へ入所しなければならない状況を生むことがある。今
回、住宅改修により、本人の自立心の向上、身体状況の維持、家族
の介護負担軽減と、ライフスタイルの維持を実現した事例を報告
する。
【症例】82歳女性。脳血管疾患(左片麻痺)発症後、左大腿骨骨折、
現在入院中。要介護5。ADLは全てにおいて介助が必要。退院後
の移動手段は車いす。主介護者の夫との2人暮らし。退院に向け
た家屋調査実施時には、関係者及び家族の要望にて施設入所の方
向で検討していた。しかし、本人、夫の要望は『住み慣れた自宅で
可能な限り暮らしたい』であった。この要望を叶えるために、車
いす移動で寝室までの動線を確保、外出の負担軽減を行なうプラ
ンを関係者と打ち出した。
【考察・結論】結果、寝室までの移動が可能になり、夫の軽介助で
外出が可能になった。住み慣れた地での生活を実現し介護負担軽
減、ライフスタイルの維持を行なうことで、本人の自立心の向上、
QOLの向上を実現できた。また、関係者が協力して様々な角度
から提案すること(チームアプローチ)が住宅改修における在宅
復帰後の生活の可能性を大きく広げることができる。
P17-6
P18-1
○緒方淳美(理学療法士)
,村井直仁,岩北晃代
○坂本誠一(理学療法士),森田伸一,柿迫直樹
西日本病院 総合リハビリテーション室
医療法人青仁会 池田病院 リハビリセンター
住環境整備後の追跡調査〜訪問リハビリ利用の有無
で家屋調査後の環境使用頻度の比較〜
入院時訪問指導加算の有用性
【目的】当院では自宅退院予定の患者に対し、必要に応じて自宅・
施設への家屋調査を行っており、退院後の安全な生活を考慮した
環境設定・動作指導を行っている。今回、退院後訪問リハビリ利
用の有無で家屋調査後の環境使用頻度の違いを調査することを目
的とした。
【方法】入院中に家屋調査を実施し、平成25年12月〜
平成27年1月に当院を退院、当院の訪問リハビリを利用している
患者12名(以下A群)、利用していない患者12名(以下B群)を対象
にアンケート調査を実施。調査項目は、家屋調査時に改修を行っ
た場所と内容、提案通りに使用している頻度、使用してなければ
その理由を記載してもらった。
【結果】環境変更箇所の総数はA群
25件、B群35件、そのうち提案通り使用(A群84%/B群60%)、時々
使 用(A群0%/B群28.6%)、不 使 用(A群16%/B群11.4%)で あ っ た。
B群の時々使用箇所はトイレ手すり3件、浴室・玄関・アプローチ・
勝手口手すり各1件、居間の家具変更が1件であった。不使用箇所
はA群でPトイレ3件・浴室手すり1件、B群では浴槽手すり1件・
玄関手すり2件・アプローチ手すり1件であった。
【考察】環境変
更後、動線上の動作獲得において、A群は提案通りに使用できて
いるが、B群の約3割は時々使用と回答しており、A群と比較する
と動作定着が不完全であることが覗われる。これらより訪問リハ
ビリの導入は、環境変更後の動作定着に有用であると考えられる。
【はじめに】平成26年度8月より当院回復期リハビリテーション病
棟は、入院時訪問指導加算の導入に伴い脳血管障害患者12名に対
し実施した。そこで、入院時訪問指導の有用性について検討した
ので報告する。
【方法】入院時訪問指導実施群(脳血管障害患者12
名:自宅退院10名、施設退院2名)と、導入以前の入院時訪問指導
非実施群(脳血管障害患者24名:自宅退院13名、施設退院11名)
の平均在院日数、入院時FIM、退院時FIM、FIM利得をそれぞれ比
較検討した。
【結果】入院時訪問指導実施群では、自宅退院者の平
均在院日数は46.6日、入院時FIM96.7点、退院時FIM107点、FIM
利得10.3点であったのに対し、非実施群の平均在院日数は79.5
日、入院時FIM67.2点、退院時FIM96点、FIM利得28.8点であった。
また実施群の施設退院者の平均在院日数は74.5日、入院時FIM18
点、退院時FIM22点、FIM利得7点であったのに対し、非実施群の
平均在院日数は105.5日、入院時FIM39.5点、退院時FIM56.3点、
FIM利得16.7点であった。入院時訪問指導実施群では自宅退院、
施設退院のいずれにおいても非実施群と比較すると平均在院日数
において有意差(p<0.05)がみられた。
【考察】今回の結果から、
入院時訪問指導により退院後の生活をイメージしたリハビリテー
ションが早期に実施された。また、入院前生活や家族の希望、介
護力がより明確になった事で円滑な退院に繋がったと考えられ、
入院時訪問指導の有用性が示唆された。
233
P18-2
P18-3
○菅原 睦(理学療法士)
○川村勝弥(作業療法士)1),屋嘉宗浩1),又吉 達2),宮里好一3)
社会医療法人財団白十字会 燿光リハビリテーション病院
1)医療法人タピック 宮里病院 リハビリテーション部 老人リハ課
2)医療法人タピック 沖縄リハビリテーションセンター病院 リハビリテーション科
3)医療法人タピック 宮里病院
末期癌に加え重度高次脳機能障害を伴う脳梗塞を発
症した症例の遠隔地への在宅復帰支援の経験
当院回復期リハビリテーション病棟から退院した患
者の家族状況についての考察
【はじめに】今回、末期がんに加え重度高次脳機能障害を伴う脳梗
塞を発症した症例を担当した。症例は独居であったため、愛知県
在住の姪が受け入れることとなった。遠隔地への退院に加え、癌
の影響を考慮し、早期退院を目指した在宅復帰支援を経験したの
で報告する。
【症例】70代後半の女性。診断名は右中大脳動脈の脳梗塞。既往
に大膜腹膜原発漿液性乳頭状腺癌、腹膜播腫、転移性卵巣癌あり。
家族はおらず独居。Key personは愛知県在住の姪。
【経過】入院時、左上下肢ともに弛緩性麻痺。高次脳機能障害とし
ては、左半側空間無視、構成障害、左半側身体失認、全失語あり。
コミュニケーション、基本動作にも介助が必要な状態であった。
入院早期から姪に情報収集を開始し、今後の方向性を明確にした。
退院先が遠隔地となるため何度も連絡をとり、住宅環境や可能な
介助量の確認を行った。入院から約2ヶ月半で基本動作の介助量
も軽減し、ADLにおいても環境を整えることで概ね見守りで行え
るようになった。遠隔地への移動手段を検討し、退院前には姪に
介助指導を行うことで姪宅への退院が可能となった。
【おわりに】今回、症例と姪の希望として遠隔地である姪宅への退
院を望まれており、癌の影響から可能な限り入院期間を短縮する
必要があった。早期に情報収集を行い、遠隔地の姪と退院イメー
ジを共有することで姪宅への円滑な退院が図れたのではないかと
考える。
【はじめに】当院は沖縄県北部に位置し少子高齢化が進んでいる
地域にあり、在宅復帰において家族の支援体制が問題になること
が多い。そこで平成26年度当院を退院された患者及び家族状況
について調査した。
【対象と方法】平成26年4月1日〜平成27年3
月31日、当院回復期リハ病棟において退院した95名。自宅群と
非自宅群に分け、介助する体制をそれぞれ独居0名、同居者1名、2
名、3名以上に分類。年齢、性別、疾患別、入退院時のFIMについ
て調査した。【結果】自宅群48名。平均年齢77.9歳。男性23名、
女性25名。疾患別は整形25名、脳血管11名、廃用12名。独居は9
名で、同居者1名は20名、2名は13名、3名以上は6名であった。退
院時FIM平均101点(運動項目74点、認知項目27点)。非自宅群47
名。平均年齢83.3歳。男性16名、女性31名。疾患別は整形26名、
脳血管11名、廃用10名。独居で20名、同居者1名は16名、2名は9
名、3名以上は2名であった。退院時FIM平均63点(運動項目44点、
認知項目19点)。【考察】須田らはFIMが高く、同居人数が多い方
が在宅復帰率が高いと報告している。当院の結果と比較するとF
IMが高いという結果は同じであったが、同居者1名の退院者数
の割合が多かった。その同居者の内訳として息子、配偶者が多く
見られた。サービス付き高齢者向け住宅などの整備が少ない地域
でもあり、また自宅で息子が親の介護をするという傾向が強いこ
とが要因の一つと考える。
P18-4
P18-5
○田岡久嗣(理学療法士)
,立花恭子,西村千穂,後藤健一,
丸岡 満
○田尻恭子(理学療法士),西岡富美子,森あゆみ
天理よろづ相談所病院 白川分院
医療法人洗心会 荒尾中央病院 リハビリテーション科
重度認知障害を呈した患者が、夫ひとり介助で在宅
介護生活が成立している要因について
〜郵送形式アンケートによる追跡調査より〜
介護者が訪問リハビリに望むこと
〜介護者への意識調査を行って〜
【はじめに】症例は右内頚動脈閉塞により、
軽度の左半身不全麻痺、
重度認知障害、注意障害などを呈し、不穏、意欲の低下、食欲の減
退なども重なり常時介助を要する状況であった。約6か月間のリ
ハビリ施行後、見守り下での伝い歩き・トイレ動作が可能なレベ
ルまで改善された。患者、夫の希望により自宅退院の帰結となっ
たが、夫一人での介護(二人暮らし)では介護破綻が危惧された
(要介護4)。そこで退院後3ケ月間( 1ケ月毎)郵送形式でのアン
ケートにて生活状況を調査したところ介護生活は成立していた。
本研究では本症例の在宅介護生活が成立している要因について考
察した。
【アンケート項目】患者要因として「健康状態」
「ADL状況」
「転倒の
有無」、介護者要因として「介護負担の程度」
、その他の要因とし
て「介護保険サービス利用状況」などの項目について調査した。
【アンケート結果】不穏はなく精神的に安定され、排泄動作は移動
を含め終日自立し、健康上の問題、転倒もなく、週2回の通所サー
ビスを利用されていた。夫の主観的な介護負担は大きいものでは
なく、介護破綻を来すことなく在宅生活を送られていた。
【考察】在宅介護生活が成立している主な患者要因として、精神的
な安定、排泄自立などが挙げられる。その結果、夫は大きな介護
負担を実感せず、不自由さを感じつつも互いがある程度マイペー
スに生活を送れているものと考えた。
【緒言】訪問系サービスである訪問リハビリテーション(以下、訪
問リハ)では、利用者のみではなく介護者との接点も多い。今回介
護者に焦点をあて、当事業所ではアンケート調査を実施。訪問リ
ハにできる介護者に対する援助の在り方を検討した。【対象と方
法】対象は平成27年3月の時点で当事業所を利用している者の介
護者19名とした。方法はアンケート調査にて訪問リハを受けて
みてどうだったか、訪問リハビリに望むことはなにかなどの項目
を複数選択方式にて回答を得た。
【結果】
「訪問リハを受けてみて
どうだったか」の質問にて、気持ちが楽になった・介護方法の知
識が増えた・相談相手が出来たという答えが各43%であった。
「訪
問リハに望むことはなにか」の質問にて、相談相手・利用者の運
動機能の向上・利用者の基本動作の指導という答えが各50%で
あった。
【結語】今回の調査で訪問リハを利用することにより介
護者への精神面のケアに繋がっていることがわかった。また、訪
問リハに期待することについて、利用者の身体機能面の向上だけ
ではなく、介護者への精神面のケアに対する答えが多く見られた。
今後さらにより良い訪問サービスの提供するためには、リハビリ
の質を高めていき利用者と介護者両方に寄り添った支援を行って
いく必要がある。また在宅の場での主役は利用者と介護者である
ため、訪問リハスタッフとして利用者・介護者に喜ばれ望まれる
存在を目指していきたい。
234
P18-6
P19-1
○佐々木聡子(その他)
○小田桐夕貴(作業療法士),渡邊有紀子,今井寛人,下山祥穂,
住吉佳奈子,算用子暁美,斎藤信一,岩田 学,松本茂男
パナソニック エイジフリーショップス株式会社
一般社団法人黎明郷 弘前脳卒中・リハビリテーションセンター
できることから始める、地域包括ケアシステム
当院の転倒・転落予防策に対する取り組み
〜症例検討会を通して〜
【はじめに】日本は、諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行
している。そこで急がれるのが地域包括ケアシステムの構築であ
る。しかし、それは地域の自主性、主体性に一任されている部分
が多く滞っているのが現実である。今回、地域包括ケアシステム
構築に向けて可能性を見出せた事例を報告する。
【事例】F氏、支
援相談員、ケアマネジャーを経て、自宅でカフェレストラン(以
下、レストラン)を経営。自分の生活を支えてくれた地域、地域
の人々に向けての恩返しという気持ちから始めた。その隣にはレ
ストランで提供する食材を作る畑をしている。今回、畑の中に誰
もが入って季節を感じてもらえるように小路を作り、新しい畑の
形を演出した。天然の石材を使用した仕上げにし、自然との調和
を図った。誰でも利用できるということをポイントとし、道路か
らのアプローチ、
畑の中の小路はバリアフリーとしている。
【結果・
考察】レストランをオープンして1年、様々な疾患の方、家族の方
がこの畑を訪れ話の輪ができた。地域の人々のために役立てるた
めに整備したいという想いを、畑=コミュニティスペースという
形に整備することで、地域形成の大きな基盤となる可能性を見出
せた。地域自治体単位で何かを考えるには様々な障壁により時間
がかかる。できることから始め、地域に向けて発信し、地域包括
ケアの構築の足がかりになればと思っている。
【目的】当院では入院患者が転倒・転落した際、担当看護師・リハ
スタッフで状況を確認し、問題点と対策を話し合う。昨年度、転倒・
転落に対し意識調査を当院看護師・リハスタッフに行った結果、
転倒・転落予防策の内容の不十分さと予防策の見直しの不十分さ
が挙げられた。今回はリハスタッフの転倒・転落予防策の質の向
上にむけ症例検討会(以下検討会)を実施したため、その結果を報
告する。【対象と方法】当病棟リハスタッフ27名を3グループに分
け転倒予防策についての検討会を実施した。検討会では実際に病
棟で発生した転倒事例における問題点とその対策について話し合
い、代表者が検討内容を発表した。その後、予防策を立てる上で
重要な視点について話し合った。検討会実施後、参加者にアンケー
トを行い、転倒・転落予防策の質の向上に向けての課題について
検討した。
【結果】実際に転倒した事例を検討したことで、具体的
な対策を立てやすいとの感想が聞かれた。また経験年数の少ない
スタッフからは、普段行っていた予防策の不十分さを認識できた
との感想が多く、他スタッフの考え方を知ることが出来たとの声
も聞かれた。
【まとめ】検討会を行ったことで、予防策を立てる上
での視点をスタッフ間で共有できたと考える。今後は検討会の頻
度を増やし、看護師など他職種が一緒に参加する勉強会を行うこ
とで患者に対する転倒・転落予防策の妥当性を更に高めることに
繋がっていくと考える。
P19-2
P19-3
○松井俊輔(理学療法士)1),森下奈由子2)
○永井優斗(理学療法士)
1)松藤会 入江病院 リハビリテーション科
2)松藤会 入江病院
医療社団法人永研会 永研会クリニック
回復期リハビリテーション病棟における転倒の現状
と取り組み
外来リハビリテーションにおける転倒リスクの検討
【目的】当院では運動器リハビリテーション1 の施設基準を取得
し、外来リハビリテーションを実施している。今回、外来診療で
運動器リハビリテーションを利用している高齢者を対象として、
どのような転倒リスク因子があるかを検討した。
【方法】当院に運動器疾患で外来リハビリテーションに通院してい
る、脳血管障害・中枢神経系障害などを合併していない65歳以上
の高齢者30名を対象とした。直近6ヶ月での転倒歴の有無、年齢、
片脚立位保持時間、スタビライザー上での立位保持時間、運動器
疾患罹患部位数の関係性を比較検討した。
【成績】直近6ヶ月の転倒の有無と年齢・片脚立位保持時間・スタ
ビライザー上での立位保持時間・運動器疾患羅患部位数にはそれ
ぞれ相関が認められた(p<0.05)。
【結論】多くの先行研究通り、加齢やバランス能力の低下は転倒リ
スク増大因子となりうることがわかった。また、運動器外来リハ
ビリテーション利用者においては運動器疾患羅患部位数も転倒リ
スクの因子となるえることがわかった。これより、障害部位の増
加は転倒リスクを増加し、さらに転倒によって障害を増加させる
という悪循環を作る因子となりうると考察できる。
この結果を運動器疾患にて外来リハビリテーションを利用してい
る患者に特化した転倒リスクの指標を作成するための足がかりと
して発展させていきたい。
【目的】患者のADLが向上していく過程で、転倒が多数発生してい
る。原因としては患者本人の問題、人的・物的環境の問題が考え
られる。今回は発生している転倒の時間帯、場所、行動意図、失
敗動作などを調査し現状把握する事、また調査結果を転倒対策に
生かしていく事を目的とした。
【方法】調査期間は平成25年4月か
ら平成26年8月に転倒した全入院患者を対象とした。転倒発生事
例をヒヤリハット・事故報告書を元に後方視的に調査。項目は時
間と場所の発生件数、
動作別失敗件数、
行動意図の割合とした。
【結
果】全転倒発生件数135件。転倒が多い時間帯は1時間当たりの発
生件数は4時、13時、18時の3ピークが特徴的、場所はベッドサイ
ド70%>トイレ9%>廊下7%の順で、失敗動作は移乗36%>歩
行20%>立位16%の順で多い。患者の行動意図について最も多
い尿意は、転倒患者の65%(意識的に聴取開始後は約93%)で認
められた。
【考察と対策】早朝・昼食後・夕食後の見守りの届きに
くいベッドサイドで尿意により自発的に行動を起こした患者が移
乗を試みて、転倒する事が多いと考えられる。対策として1.調査
結果を現場スタッフに情報提供、2.人的環境整備:PT・OT昼食
後ADL介入や遅出CW導入、病棟スタッフの休憩時間調整、3.ベッ
ドサイドの物的生活環境整備、4.ADL札の活用、5.転倒対策カン
ファレンス、6.転倒リスクマップで視える化、7.転倒転落対策シー
トの見直しを行っている。
235
P19-4
P19-5
○小保内大貴(作業療法士)
,舘越睦夫
○篠原有里沙(理学療法士),戎 智史,松枝義昭,山根健一,
上妻みなみ,新藤めぐみ,小林優真,岩本直也,小舟裕也,
横山和貴,平岡 由
当デイケア利用者の転倒調査分析
当院リハビリテーション科における転倒事例の分析
と今後の取り組みについて
総合リハビリ美保野病院 デイケアセンターおらんど
医療法人社団菫会 名谷病院 リハビリテーション科
【はじめに】当デイケア利用者の時間当たりの転倒について調査
した。その結果転倒は8時、11時に集中しており特徴が見られた
ため報告する。【対象・方法】平成27年2月から4月の3か月間の
利用者が転倒した状況をアンケート調査した。転倒時の時間・場
所・動作内容・介助者の有無・杖・装具等の有無を分析した。【結
果】転倒者30/237名、転倒件数は33件であった。時間当たりの転
倒として8時は4件で全体の12%であった。動作内容はリーチ2件、
移乗1件、立位1件でこの内介助が必要で介助者無しで転倒が3件
であった。11時は8件で全体の24%であった。動作内容は歩行4
件、移乗2件、立ち上がり1件、座位1件でこの内介助が必要で介
助者無しで転倒が2件で8時台より少なかったが装具・杖等道具
不使用による転倒が4件と多かった。また歩行時の転倒は4/13件
で全体の31%と集中していた。
【まとめ】8時に介助者無しで転倒
が多いのは介助者が家事や外出の準備が必要で利用者を見守るこ
とができないためと考える。11時の転倒は歩行中に多く、日中の
活動性があがる時間であるためと考えられる。また杖・装具等の
不使用によるものが多いのは道具不使用の際の危険予知の低下や
過信、装具装着の不快感などが推察される。今回の調査から転倒
する時間帯によって特徴があることが分かった。介助が手薄にな
る際にはヘルパーの導入を検討することや杖・装具の必要性を本
人・家族に十分説明することが転倒リスクの軽減につながると考
える。
【はじめに】当院ではリハビリテーション実施中の転倒事例におい
て具体的な対応が十分に行えていない現状にある。現状を調査し
傾向がみられたため対策を検討し、ここに報告する。
【方法】平成
24年4月から平成26年12月までに当院リハビリテーション科で
起きた転倒事例を「インシデント・医療事故報告」に基づき調査、
考察した。分析内容はセラピストの経験年数、転倒・ヒヤリハッ
トの分別、事故原因因子(複数回答可能)とした。【結果】転倒事例
は43件であった。分析結果は経験年数が短いセラピストに多く、
転倒31件に対しヒヤリハット11件であった。また事故原因因子
として注意不足21件と多くみられた。
【考察】ハインリッヒの法
則に反し、当院では転倒がヒヤリハットの数を上回っている傾向
がみられた。その点に関して経験不足により、注意不足やヒヤリ
ハットに対する認識の低さに繋がったと思われる。杉山は、危険
予知トレーニング(以下KYT)によって事故を引き起こす危険に
対する感受性をたかめ、さらに物事への集中力、問題解決能力、
実践への意欲が高まったと報告している。そこで当院でも、KYT
を実施し危険に対する認識を高めヒヤリハットの報告件数を増加
させることで重大な事故を未然に防ぐ必要性があると考える。
【終
わりに】当院では、転倒事例において具体的な対策を行えていな
かったため、今後KYTを行うことによって重大事故の防止に努め
ていきたい。
P20-1
P20-2
○岡嶌悠二(理学療法士)
,中村広大,齋藤 浩,渡邊 彰
○松本小百合(作業療法士)1),前田亮介1),飛永浩一朗1),
井手 睦2)
西部総合病院 リハビリテーション部
1)聖マリアヘルスケアセンター リハビリテーション室
2)聖マリアヘルスケアセンター リハビリテーション科
当院回復期リハビリテーション病棟における疾患別
の自宅復帰とFIMとの関連
回復期リハビリテーション病棟における脳卒中片麻
痺患者のトイレ動作自立に影響する要因の検討
【 は じ め に 】回 復 期 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン(以 下: 回 復 期 リ ハ)
病 棟 は 自 宅 復 帰 す る こ と が 大 き な 目 的 の 一 つ で あ る。 今 回、
FIM(Functional Independent Measure)を用いて回復期リハ病
棟患者のADL能力の改善度を明らかにすることで、自宅復帰の要
因について検討した。
【対象と方法】対象はH26.7.1〜 H27.3.31
までに回復期病棟を入退院した患者90名(男性26名、女性64名、
平均年齢80.2歳)。内訳は脳血管疾患患者(以下:脳血管)23名、運
動器疾患患者(以下:運動器)67名である。なお、再発や急変によ
り転棟・転院した者は除外した。そのうち、自宅に退院した者を
自宅群(脳血管16名、運動器53名)、施設へ入所した者を非自宅群
(脳血管7名、運動器14名)に分けた。検討項目は入院時FIMと退院
時FIMの各項目について比較した。
【結果】自宅退院した患者のう
ち、退院時FIMにおいて脳血管と運動器ではほとんど差は認めら
れなかった。また、自宅群と非自宅群を比較すると脳血管、運動
器ともにトイレ動作、移乗(トイレ)、問題解決、記憶に関して退院
時FIMの点数に有意差が認められた。
【考察】自宅退院した患者の
うち、退院時FIMにおいて脳血管と運動器であまり差がみられな
かった。これは、疾患により退院時FIMに差がないことがわかる。
そして、自宅群は脳血管、運動器ともにトイレ動作、移乗(トイレ)
の動作で非自宅群より退院時FIMの点数が高いことから、排泄に
関する動作の獲得が自宅復帰の要因であると考える。
【目的】車いすを利用する脳卒中片麻痺患者を対象に、トイレ動作
ならびに入退室も含めた関連動作の自立に影響する要因を明らか
にすることを目的とした。
【対象】平成27年1月から4月までに当院回復期リハビリテーショ
ン病棟に入院した脳卒中片麻痺患者12名(男性6名・女性6名、平
均年齢69.9±9.6歳)
。FIMのトイレ動作の得点より修正自立群6
名と監視群6名の2群に分類し検討した。
【方法】トイレ動作のみを(排泄、後始末、手洗いを除く)、(1)入
室から立ち上がり、(2)下衣脱衣から着座、(3)立ち上がりから着
衣、(4)方向転換から着座、(5)着座から退室に分け各所要時間を測
定した。2群間の比較検討項目において、バランス指標としての
BBS、注意機能指標としてのTMTを用いた。統計処理にはMannWhitney検定、Spearmanの順位相関係数を用いた。また、ROC
曲線を用い2群間のカットオフ値を算出した。
【結果】修正自立群が監視群に比べ有意にトイレ動作の(1)、(5)で
の所要時間が短く、BBSの得点は高かった。また、BBSとTMT-A
に負の相関が認められた(r=-0.74)
。トイレ動作所要時間のカッ
トオフ値は71.97秒であった。
【考察】トイレ動作所用時間は約72秒が一つの目安となり、車いす
利用においてトイレ内での移動およびそれに付随するバランス能
力や選択的注意の要因が自立に至る一要因となる可能性が示唆さ
れた。
236
P20-3
P20-4
トイレ動作獲得へ向けての取り組み
当院の回復期病棟における脳卒中患者の夜間トイレ
自立に関するアンケート調査
○杉山厳勇(作業療法士)1),森本信三1),小谷澄也1),竝木貴志1),
丸田操代2),小口 健3),松本大輔4),石垣智也5)
○仲地 翔(作業療法士)
,久貝明人,兼城賢也,崎原尚子,
湧上 聖
1)白浜はまゆう病院 南紀白浜温泉リハビリテーションセンター
2)白浜はまゆう病院,3)白浜はまゆう病院
4)畿央大学健康科学部 理学療法学科,5)医療法人社団松下会 東生駒病院
医療法人緑水会 宜野湾記念病院
【はじめに】トイレ動作に対し介助依存傾向であった事例に対し、
成功体験、家族、他職種との連携を行い、トイレ動作自立となっ
た事例について報告する。
【事例】90代女性、左大腿骨転子部骨折、左変形性股関節症(観血
的整後固定術)。全身性の筋力低下、独居で食事、入浴は2人の娘
が交代で準備や介助を行っていた。
【経過】介入当初トイレ動作では動作緩慢であるが促しによって
下衣を下すことが可能であった。しかし、その他の動作では「で
きないから手伝って。
」と介助を求める発言が多く聞かれた。そ
れに対し、トイレ動作を各工程に分けた訓練や家族、他職種との
連携を行うことでトイレ動作自立することが出来た。
【考察】今回、段階付けを行い一回のリハビリ介入で一部の動作に
限定して取り組むことで、課題が明確になっていった。その中で、
一つ一つの動作が確実に行え成功体験を積み重ねることで自信回
復や意欲の向上が自立へとつながったと考える。また、介入当初
は出来ることでも家族が介助してしまうという事実があった。実
際に、家族に事例の動作を見て頂くことで共通認識を持つことが
でき、対応を統一することで自立へつながることができたと考え
る。そのことから、今回、他職種、家族などとの情報共有の大切
さを改めて感じることができた。
【目的】回復期病棟では在宅復帰を考える上でトイレ動作の自立
が重要である。しかし、自立の判断はセラピスト、看護師によっ
て異なり、特に夜間トイレでは相違点がある。そこで職員にアン
ケートを実施、個人が自立の判断でどのような点に着目している
のかを調査した。
【 方 法 】当 院 回 復 期 病 棟 に 所 属 す る セ ラ ピ ス ト38名(PT、OT、
ST)
、看護部27名(看護師、看護補助)を対象とした。日中と夜間
トイレ自立判断の重要度を、身体機能面や環境面などの項目で回
答するアンケート を実施。
【結果】回収率はセラピスト84.2%、看護部87.0%であった。高次
脳機能障害の重要度でセラピストは見当識(日中4名>夜間1名)、
看護部は失行(日中4名>夜間1名)が日中と夜間のトイレ自立で
優位に差があった(p<0.05)
。患者要因では服薬状況で看護部
は日中と夜間のトイレ自立で優位に差があった(日中1名<夜間
6名:p<0.05)
。患者要因では介助依存や覚醒度により動作に日
差がでる、高次脳機能障害では患者行動が予測し難いという回答
があった。
【考察】個人のトイレ自立に対する判断性に違いはあまり見られ
なかった。患者要因と高次脳機能障害で自立の判断基準が個人に
より分れる可能性が示唆された。今後は、当院の患者データをも
とに今回検討できなかった他の要因も検証し、退院支援に繋げた
いと考える。
P20-5
P21-1
○長田智海(看護師)
,岡崎有加,入口和代,伊藤元貴,三村和礼,
谷 江里,泊津義代,大瀬良さつき
○小野晃平(作業療法士),八塩ゆり子,小山智生,伊藤香織
医療法人共和会 小倉リハビリテーション病院
大森赤十字病院 リハビリテーション科
排尿に関するケアプランの見直し
離床介入に難渋したが、本人の想い、発言に焦点を
あて自立度が拡大した症例
【目的】評価に基づいた排尿ケアの立案・実践に向けて、現状の排
尿に関するケアプランを見直すことで、プラン立案における問題
点を整理した。
【対象・方法】平成26年1月〜8月に当病棟に入院した患者109名。
排尿に関する入院時ケアプランを調査し、問題点の内容、原因表
記、具体的方法との整合性等を分析。プランがなかったものは、
診療録より、排泄動作能力、尿失禁の有無、排泄手段、尿意の有無
等を調査した。
【結果】立案されたプランは109名中32名( 29.4%)で、その内容
は、動作能力10件(30.3%)
、尿路感染5件(15.2%)
、排尿困難5件
( 15.2%)、失禁・頻尿4件( 12.5%)
、問題点の表現が曖昧なもの
が9件( 27.3%)の33件挙げられた。原因記載があるものは33件
中11件(45.8% )で、それらの具体的方法は39種類あった。一方、
プランが挙げられていない77名( 70.6%)中、排泄動作が非自立
のものは35名(45.5% )で、その内、動作能力や排泄管理などへの
プランが必要と考えられたものは12名であった。
【考察】問題点の表現が曖昧・原因が明確にされていない・プラ
ンが必要と思われるケースに立案できていないことから、分析力
が弱く、問題点を見出す力も不足していると考えられた。特に動
作能力では、予後予測が必要で看介護とセラピストが積極的に情
報・目標の共有を行う必要があると考えられた。
【はじめに】今回食道癌術後誤嚥性肺炎となり、気管切開を施行し、
ベッド上生活となり抑うつ症状を呈した症例を担当した。行動範
囲の拡大に向けた取り組みについて報告する。
【症例紹介】70歳代男性。食道癌術後自宅にて嘔吐し当院入院。
胃管挿入、人工呼吸器管理となりPTが先行して介入開始した。
OT介入時は粗大筋力低下および、呼吸機能低下、発動性低下認め、
起居動作に中等度介助を要した。
【経過】ルートなどの物理的な環境、長期治療による身体的苦痛に
よりベッド上生活となり、離床を促すが拒否が強い状況であった。
そこでOTではラポールの構築を優先し、本人の訴えを傾聴、本人
主体のOTアプローチを実施し、離床したいという意思を示した
時に車いす移乗、歩行訓練を行った。またベッド上、端座位、車
いす、自室内というように活動範囲の拡大を目標に段階的に提示、
本人と共有を図った。その後NSと共に徐々に離床する機会が増
大し、リハビリテーション時間以外でも病棟生活場面で離床拡大
を図れた。活動範囲は徐々に広がり、トイレ歩行が自立となった。
【おわりに】本人の発言に対して傾聴し、本人と一緒に短期目標を
共有、希望に沿った介入を行うことにより、日中トイレまでの歩
行が自立となった。他職種への発信、目標を明確にしたアプロー
チが効果的であったと示唆された。
237
P21-2
P21-3
○鉄川恭子(理学療法士)
,小川弘孝
○丸山隆則(理学療法士),手塚康貴,塩谷求美,池岡 舞,
三浦早苗,村田寛子,納谷貴之,前田裕理子,米屋真須美
社会医療法人財団白十字会 燿光リハビリテーション病院
リハビリテーション部
社会医療法人生長会 府中病院
自宅へ帰りたいというデマンド達成へ向け自主訓
練・家族指導を実施し外泊が叶った肺癌術後脊髄梗
塞の一症例
自宅復帰が可能な身体機能だが、施設退院となった
事例〜環境・個人因子が与える影響について〜
【はじめに】今回、肺癌術後に脊髄梗塞となり対麻痺を呈した症例
を担当した。対麻痺に対する治療を優先し、リハビリ目的で当院
へ転院となった。症例は肺癌治療のため転院が決まっており、当
院でのリハビリ後も帰宅が困難な状況であった。帰りたいという
デマンド達成へ向け外泊による一時帰宅を目指しアプローチした
結果を報告する。
【症例紹介】50歳代女性。右肺癌術後に脊髄梗
塞(Th5/6)発症。内縁の夫と2人暮らし。発症58病日目に当院転
院。入院時改良フランケル分類:左C2・右C1。癌の治療のため2ヶ
月間自宅へ帰っておらず、入院当初より自宅へ帰りたいという思
いが強かった。【経過・アプローチ】自宅はアパートの2階でエレ
ベーターなし。ベッドがないため床上動作が必要。外泊へ向け
て自主訓練の指導を行い、リハビリ以外の時間での運動量増加を
図った。自力で困難な動作は家族指導を実施。その結果麻痺の改
善みられ、121病日目よりロフストランド杖使用見守りにて50m
連続歩行可能となる。屋外平地歩行は腋窩軽介助、階段昇降は手
すり使用軽介助レベルまで向上。床上動作は夫の介助にて可能。
当日は家族の介助のもと外泊が行え、転倒なく過ごせた。【考察】
症例の帰りたいというデマンドを達成するため、短期間での能力
向上が必要であった。自主訓練によるリハビリ以外の時間の活用、
家族への指導を行ったことで転院前の外泊が行えたと考える。
【はじめに】自宅退院可能なレベルの身体機能であったが、施設へ
の退院となった症例について報告する。
【症例紹介】発表に同意
を得たA氏55歳男性。認知症の母親と2人暮らし。Z年Y月Z-25日
左視床出血を発症し、Z日に回復期リハ病棟に入院。入院時運動
麻痺HG4、下肢感覚重度鈍麻、意識・注意障害、失語症、構音障害、
空間失認があり、FIMは33点であった。
【経過】入院当初から様々
な合併症の影響で積極的なリハが実施出来なかったが、T字杖歩
行軽介助に改善した。自宅環境調整とそれに合わせた動作練習を
実施しA氏も自宅退院を強く希望した。しかしZ+126日目にトイ
レに近い部屋に移動し、トイレ歩行自立のための病棟練習を提案
するも拒否があった為、できるADLは歩行自立も、しているADL
は歩行未獲得であった。また、A氏は屋外自立を目標としており、
現状とかけ離れていることより、実生活のイメージが付かず不安
を解消することができなかった為、Z+177日に老人保健施設に退
院となった。
【考察】自宅訪問練習を通した生活環境下での成功
体験を多く経験することで、不安の軽減を促したが、結果的に解
消することは困難であった。失語症や個人因子の影響で、予後を
考慮した目標設定に治療者・患者間での相違があった事から、十
分なコミュニケーションが成立していなかった可能性が考えられ
る。目標共有はリハビリテーションを実施する上で重要事項と言
われており、今後更に工夫する必要がある。
P21-4
P21-5
○井上寛子(臨床心理士)
,平田好文
○楠木千尋(作業療法士)1,2,3),高原美鈴2,3),與古田孝夫2,3)
熊本託麻台リハビリテーション病院
1)医療法人宇富屋 玉木病院
2)琉球大学大学院 保健学研究科
3)琉球大学大学院 保健学科 精神看護学
障害に対する葛藤と歩行への不安を持った30代患
者へ、臨床心理士としてどのように関わったか
問題解決技能訓練と体験学習アプローチにより生活
活動能力の奏効した統合失調症患者の一例
【はじめに】当院は回復期リハビリテーションを中心とした病院で
ある。回復期は、予期せぬ発症から急性期を瞬く間に過ぎ、障害
を受け入れながら生活に戻る段階であり、様々な心理的問題がみ
られる。今回、脳出血後、障害に対する葛藤と歩行への不安を持っ
た30代女性の患者へアプローチを行った。その結果、障害に対す
る受容が進み、歩行への不安も減少し、改善につながった。臨床
心理士として行った具体的な介入について報告する。
【症例】30
歳代女性。左被殻出血を発症し、右上下肢麻痺および失語症、構
音障害あり。STより気分の落ち込みが認められるとの報告があ
り、主治医より依頼を受けカウンセリングを開始した。
【経過】初
回より「病気の受容って私には難しくて・・」と泣きながら話を
された。また、
「歩くのが怖くて身体が固まる」とのことであった。
そこで、障害受容に対しては、障害を受け止める気持ちの準備と
教育的ガイダンス、その後のフォローを行った。また、歩行に対
しては、不安がいかにして下がるかの学習と練習を行った。その
結果、歩行の不安は軽減し、障害に対する考え方も「今の状態は認
めて頑張ろうと思う」と変化が認められた。
【まとめ】障害や障害
にまつわることへの不安や葛藤は当然のものと思われる。その考
えを、そっと受容や安心につなげていくアプローチの効果があっ
たと考える。今回の関わり方を振り返り、具体的なアプローチの
方法について考察し報告する。
【はじめに】当院では“結いの会”と称して、患者の主体性・自主性
を醸成し、地域生活を視野に入れた生活技能訓練を実施している。
本訓練での患者みずからが主体的・自主的に計画・立案し、準備・
実行する問題解決技能訓練・体験学習アプローチを通して生活行
動範囲の拡大の得られた一例を紹介する。
【症例紹介】症例は、当
院に7年間にわたり入院している統合失調症の40代女性である。
入院当初は自閉傾向にあり、外泊や初めて行うことに対しては消
極的であり、自信のなさを訴えていた。【経過】訓練開始当初、活
動には消極的で表情は硬く、幻聴など精神症状の不安定さを呈し
た。当初はベッドサイドでの声かけから始め、徐々に生活行動範
囲の拡大を図った。本人が興味・関心がもてる活動を計画・実行
していくなかで、次第にやりたいことをみずから提案するように
なり、さらにグループのリーダー的存在としてメンバーのサポー
トも行うなど、活動の幅も広がった。現在では3年半ぶりに外泊
を行い、本活動で調理した料理を家族に振る舞うなど、家族を含
めた他者との関わりにも積極性が増している。
【考察】本症例は、
地域社会との関わりや外泊などの新たな挑戦に対し消極的であっ
た。活動の中で“小さな成功体験”を積み重ねることで、次第に自
己効力感が高まり、地域社会や外泊にも目が向くようになり、生
活行動範囲の拡大に繋がった。今後の退院に向けた支援の足がか
りとなったと考える。
238
P21-6
P22-1
○斉野千麻(理学療法士)
,中村裕樹,八反丸健二,俵積田和美
○兼八勇治(理学療法士)
生活支援のための動画作成の試みについて
左橋梗塞(Branch Atheromatous Disease:BAD)
を呈し、自宅復帰を目指した症例
〜体幹と移動手段に着目して〜
医療法人慈圭会 八反丸リハビリテーション病院
医療法人健康会 嶋田病院 リハビリテーション部 理学療法科
【はじめに】日常生活動作の獲得には指導される側とする側の両
者ともに苦慮し、習熟には多くの時間を要すため、患者本人のみ
ならず家族にも介助指導が必要な場合が多々ある。そこで今回、
生活動作の指導状況をヒヤリングし、得られた結果を反映した動
画作成を試みたので報告する。
【方法】2013年11月に、当院病棟
スタッフへアンケート形式にて1)入退院時での日常生活の指導内
容、2)その際指導時の困った点を自由記載方式で行った。動画を
作成後、病棟スタッフと患者家族へ視聴を行い、再度ヒヤリング
形式で感想を聴取し、KJ法にて分類した。
【結果・考察】指導内容
は、1)内服、2)食事・口腔ケア、3)基本的動作、4)ADL動作、5)そ
の他であった。指導時に困った点では、
1)患者・家族の理解不足、2)
来院時間・頻度、3)資料作成に時間がかかる、4)説明・表現不足
であった。これらの結果より、指導頻度や動画作成が可能なもの
を吟味し、1)移乗、2)更衣、3)階段昇降、4)ポジショニングの支援
動画を作成した。視聴後の課題として、
1)動画技術、
2)動作内容、3)
その他に分類し、再検討した。1)ではテロップの改善、2)では重
症度別での対応が必要という意見に対し、優先的に対応を行った。
【まとめ】支援動画の利点としては、映像で分かりやすい、集約さ
れている等があげられ、家族へも伝わりやすい内容となった。今
後、課題をもとに動画のバリエーション展開し、必要とされる生
活支援へと繋げたい。
【はじめに】体幹機能はバランスや日常生活動作における四肢の
運動に重要な役割を果たしている。本症例は橋梗塞による影響で
体幹機能が低下し姿勢制御が困難となったと考え、体幹機能に着
目しhopeである「身の回りことは自分で歩いてしたい」とのこと
から移動手段の為の歩行獲得を目指しリハビリを介入した。
【対象と方法】70代女性。息子氏と2人暮らし。病前の生活は自立
し家事動作全般を行い、買い物や趣味の畑には自転車で移動して
いた。体幹機能の評価としてTrunk Control Test(以下、TCT)、
SIAS体幹項目とFIM運動項目を経過として評価した。初期評価の
段階でTCTは36点、SIAS体幹項目2点、FIM運動項目32点で主な
移動手段は車椅子。麻痺は上田式12段階gradeにて上肢・手指は
5レベル、下肢は6レベル。リハビリで体幹には座位や立位での運
動、床上動作などを行い、歩行には朝・夕食前後にリハビリスタッ
フが歩行量向上を目的に介入した。
【結果】TCTは87点、SIAS体幹項目5点と点数改善し移動手段が
車椅子から杖歩行へと移行した。最終では屋内四点杖歩行自立と
なりFIM運動項目78点となった。退院後は料理を息子氏と協力し、
自室の掃除は自己にて行っている。
【考察】TCTやSIAS体幹項目の点数が改善したことから体幹機能
が改善したと考えられ、歩行の安定性が向上した。さらに、朝・
夕食前後に介入したことで日常生活内の歩行での移動方法を獲得
することが出来たと考えられる。
P22-2
P22-3
回復期リハビリテーション病棟退院した脳血管障害
者の退院後の役割の変化
高位頸髄損傷者の食事動作の獲得から余暇活動への
繋がり〜自宅退院に向けて環境設定と反復練習を通
したアプローチ〜
○前沢孝之(理学療法士)1),浅川育世2),小貫葉子1),齋藤由香1),
長枝里香1),佐野 岳1,3),橋爪佑子1),上岡裕美子2)
○神保和正(作業療法士),高浜功丞,小倉由紀,神代裕里恵,
上野真由,富岡久美,飯塚正之
1)茨城県立医療大学付属病院 リハビリテーション部 理学療法科
2)茨城県立医療大学 保健医療学部 理学療法学科
3)茨城県立医療大学大学院 保健医療科学研究科
千葉県千葉リハビリテーションセンター
【はじめに】高位頸髄損傷者に対するADL介入では難渋するケー
スが多く見られ、余暇活動の導入にも苦慮することが多い。今
回、ADL全介助レベルの高位頸髄損傷者に対して食事動作に介
入したことで自力摂食に繋がり、更にそれにより余暇活動に結び
付いた事例を経験したので報告する。
【事例】60歳代後半、男性。
転落により頸髄損傷(損傷高位C4)の四肢麻痺となった。ASIA
Impairement Scaleは「C」。不全損傷で両上下肢、体幹の筋力低
下、両上肢の関節可動域制限著明。ADL面は全介助で耐久性の低
下により臥床傾向。一方で、食事動作の獲得や興味があったパソ
コンやタブレット操作、絵画に意欲的な発言が聞かれた。【経過】
入院初期から食事動作訓練を行い、ポータブルスプリングバラン
サーや補高台などを導入して食事場面に介入した。上肢機能の向
上に合わせた環境設定を進めると共に余暇活動への介入も実施し
た。
【考察】食事動作の獲得においては身体機能の変化、ホープに
合わせた環境設定と実際場面での反復練習が効果的だったと推察
される。特に病棟スタッフとの連携により同じ環境で食事動作の
反復練習を行ったことが重要であった。また、余暇活動は食事動
作での環境設定を参考にしたことで動作の獲得に至ったと考えら
れる。今回の介入で獲得した食事動作、余暇活動は退院後も継続
して実施しており、入院中の適切な介入が自宅での意味のある活
動に繋がったと考えられる。
【はじめに】いきいきとした生活の継続の為“患者が家庭内で役割
を持つこと”は重要だが、実態は明らかになっておらず、本研究で
は回復期リハビリテーション病棟を退院した患者が役割と思って
いる項目と実施している項目の現状を明らかにする事を目的とし
た。
【方法】ICF Core Setsの活動と参加の項目を基に役割に関す
るアンケートを作成し、自宅退院する脳血管障害者に対して入院
前の役割、退院1か月後に退院後の役割についてそれぞれ実施し
た。分析対象者は返信の得られた10名とし、役割と思っている項
目、実施している項目数の変化について調査した。入院前と退院
後の項目数の平均の差についてはWilcoxonの符号順位検定を用
い、増加、低下した項目については個別に検討した。統計処理に
はSPSSを用い有意水準は5%とした。
【結果】対象者の年齢は64.0
±10.9歳、男性8名、女性2名であった。役割と思っている項目は
一部増加は見られたが、項目数の平均の差には有意差は見られな
かった。実施している項目は“老人クラブ、冠婚葬祭”“遊び、娯楽、
スポーツ”などで低下が見られ、項目数の平均の差で有意な低下
を認めた。【考察と結論】入院前に自ら役割であった事柄は変わ
らず自分の役割であると捉えている傾向にあるが、機能障害によ
り役割実施への制約は顕著であり、それらはICFのコミュニティ
ライフ・社会生活・市民生活といった領域に多くみられることが
明らかとなった。
239
P22-4
P22-5
○増崎 力(作業療法士)
,長田光弘,阿部 司,砂川尚也,
泊津義代,大野素子
○江原まどか(理学療法士),古川郁美,猪野嘉一
医療法人共和会 小倉リハビリテーション病院
医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院
障害者施設等一般病棟の意義に関する一考察
−回復期リハ後に入棟した患者の振り返りより−
シーティングでの食事姿勢の介入により食事時間・
QOLの改善がみられた症例
【目的】障害者施設等一般病棟(以下、障害者病棟)では、難病や重
度障害がありながらも長期のリハを経て活動・参加水準が改善し、
在宅復帰や就労につながる症例をしばしば経験する。本研究の目
的は、回復期リハ終了後に障害者病棟に入棟した患者の経過等を
整理し、障害者病棟の意義を再考することである。
【結果】当院の障害者病棟は40床で、過去3年間の退院患者数は
381名であった。入院経路は急性期病院が最も多かった。また33
名は回復期リハ病棟からの入院であった(平均62.2歳、平均入院期
間196.7日、日常生活自立度B・Cランクが約7割、在宅復帰が約7
割弱)。33名の内、制度上の障害者病棟の対象患者(以下、対象患
者)は15名(平均61.8歳、平均入院期間230.5日、自立度B・Cラン
クが約7割、在宅復帰が約7割弱)で、僅かではあるが就労等も実現
した。発表時には患者属性や症例の経過等を加えて報告する。
【考察】現行の医療制度において、年齢や疾病等から障害者病棟以
外では必要かつ十分なリハを受けられない症例が存在する。医学
的管理のもと集中的に多職種によるチームで、活動・参加水準に
もアプローチできたことは障害者病棟の大きな意義と考える。地
域包括ケアシステムでは、活動と参加がキーワードのひとつであ
り、当該病棟の必要性は今後も高まると考える。
【はじめに】食事は単に栄養を摂るためのものではなく、人生の大
きな楽しみの一つであり、QOLの改善に大きく影響している。食
事場面において座位姿勢の崩れを呈した症例に対してシーティン
グを実施し、食事時間、QOLの改善がみられた為報告する。
【症例】70代女性、多系統萎縮症、BI70点、Hoffer分類(JSSC改訂
版)1、食事姿勢は骨盤後傾位、頭頸部・体幹の右側方への傾きが
観察され、
「食べる事がきつい、食べこぼしてしまうから困る」と
訴えがあった。BIの食事項目は自立であったが、食事開始5分か
ら腰背部痛が出現し、疲労感と食べこぼしが多く見られ、終了ま
では約25分を要した。介入としては、モジュラー型車椅子にて、
側方への傾きに対して腋窩から背シートで支持し、バックサポー
トにて骨盤およびTh10〜12ラインの支持にて体幹の伸展・正中
位保持を行ったことで体幹の安定性が得られた。それにより頭頸
部・上肢のコントロールが向上し、食事時間は約17分となった。
また疲労感がなくなり、腰背部痛も消失した。介入後は「食べる
ことが楽になり、楽しみになった」
「あまりこぼさなくなったから
嬉しい」といった発言がみられた。
【まとめ】シーティングによる食事姿勢への介入において食事時間
の短縮、疲労感や痛みの改善が心理的に良い変化をもたらし、本
症例のQOLの改善につなげられたのではないかと考える。
P22-6
P23-1
○藤原未来(作業療法士)
○池田喜久子(医師)
甲州リハビリテーション病院 訪問リハビリテーション 昭和事業所
千葉徳洲会病院 リハビリテーション科
買い物と通院の再獲得
〜近所の方の協力を得て〜
独居生活者が独居に戻れる条件とは
【はじめに】今年度の介護報酬改定の中で「活動・参加に焦点を当
てたリハビリテーション」が強化された。訪問リハビリテーショ
ン(以下訪問リハ)では、週1・2回の関わりの中で参加につなげ
ていくには限界がある。今回、地域の方の協力を得て買い物・通
院の目的が達成した利用者について報告する。
【症例】H氏80代女性。独居。既往歴に狭心症と喘息性気管支喘
息があり、今回脳梗塞により軽度の麻痺を呈し、退院時段差昇降
時等にふらつきが見られ、慣れた環境以外での動作に課題が残り
訪問リハの利用となる。本人の希望は買い物や通院に一人で行く
ことであった。
【経過】外出に必要な動作訓練から始め、屋外歩行、実際の買い物
訓練の手順で関わっていった。しかし、自立に向けて狭心症や喘
息・転倒のリスクから緊急時の対応について課題が生じた。そこ
で関係が良好である近所のA氏に着目した。ケアマネジャーや家
族に1人で外出する際のリスクを説明し、A氏に協力を得て良い
か相談し、了承を得ることが出来た。協力は電話での帰宅の確認
あるいは一緒に買い物に行ってもらうこととした。A氏に訪問リ
ハに参加してもらい状況と緊急時の対応を説明し、協力が得られ
た。これにより買い物や通院が可能となった。
【まとめ】今回本人の目標を達成するために訪問リハだけではフォ
ローできないことに関して他のサービスに頼らず互助を活用し、
独居を継続することが出来た。
【はじめに】回復期リハビリ病棟に入院する患者のなかで、独居生
活者が増加している。十分に時間をかけてリハビリを施行し、退
院調整をするなかで、障害が重度で、ADLに常時介助を要する状
態では、独居困難であるが、ADLがほぼ自立しても独居できない
方々がいる。独居に戻れる条件として、過去3年の退院患者を分
析し、今後、地域包括ケアシステムのなかで、どのような退院調
整が望ましいかを考察した。
【対象と方法】当院回復期リハビリ病棟に、H24.1/1〜 H26.12/31
の3年間に退院した患者492例のうち、A群(独居で、独居生活に戻
れた36例)、B群(独居で、施設入所となった50例)、C群(独居で、家
族宅に退院となった6例)に分け、入院日数、障害、FIM、看護必要
度、介護度、経済状況などを、カルテをもとに後方視的に検討した。
【結果】独居生活者は、92名、18.7%。平均入院日数は、A群80.6
日−B群111.6日−C群78.7日、FIM入院時平均A、B、C順で84.5−
55.6−77、FIM退院時平均106.9−82.2−97.2、看護必要度B入院
時平均4.74−7.68−4.83、退院時平均1.22−4.1−1.67、要介護度
の平均1.95−2.9−1.83であり、予想通りA、B群で有意差があり、
FIM退院時平均100以上、看護必要度B退院時1〜2以下であれば、
独居できる可能性が高い。
【考察】FIMが高くても施設入所となった例、FIMが低くても独居
となった例を検討し、退院後の介護サービスの在り方、回復期病
棟で行うべき退院調整を考察した。
240
P23-2
P23-3
○上田実穂(看護師)
,鎌倉加奈
○嘉手納泉也(社会福祉士),又吉智子,當銘由香,松田聡子,
玉城静佳
医療法人松田会 近森オルソリハビリテーション病院
医療法人おもと会 大浜第一病院 地域医療連携室 医療福祉課
回復期リハビリテーション病棟における退院調整へ
の取り組み
専従社会福祉士を回復期リハビリテーション病棟に
配置しての効果
【目的】回復期リハビリテーション病棟においては効率的な退院
調整が重要であるが、当院では看護師による退院調整のための統
一されたツールを持っていなかった。そこで退院調整過程を可視
化したシートを作成し、看護カンファレンスを実施することによ
り、入院期間の短縮につなげる事が可能かどうかを検討した。【研
究方法】回復期病棟に勤務した看護師31名のアンケート調査をも
とに退院調整シートを作成し、有効性を検討した。
【対象者】シー
ト未使用群 2013年1月1日〜年12月31日 87名 シート使用群 2014年6月1日〜2014年11月30日 42名 の回復期病棟入院患
者【結果】1.カンファレンス実施率 85.7% 2.1回目平均実施時
期 入院33.7日後 3.平均在院日数 未使用群 68.0日 使用群 64.1日【考察】退院調整シートの導入によりカンファレンスが実
施されたにも関わらず、在院日数の短縮につながらなかった要因
として、他職種のカンファレンスより遅れて実施される傾向にあ
り、有効なカンファレンスになっていなかった可能性がある。【結
語】退院調整シートを導入した事により85.7%の患者でカンファ
レンスが行われ、ある程度の統一した退院調整が行えるように
なったが、
在院日数の短縮にはつながらなかった。今後はカンファ
レンス自体の内容や実施時期を見なおすことでより効果的な退院
調整が可能となるようにシートの改訂も検討していく。
【目的】当院は沖縄県那覇市の都市部にある病床212床(回復期リ
ハ病棟41床)の急性期病院である。厚生労働省は平成26年度診療
報酬改定で体制強化加算・専従社会福祉士の配置を新設し、当院
は平成26年4月から算定を開始した。この1年の成果を可視化し
検証することを目的に分析を行った。
【方法】専従配置した前後の平成26年4月〜平成27年3月と平成25
年4月〜平成26年3月の実績データを比較する。項目は、在宅復帰
率、平均在院日数、退院前の家屋訪問や退院前カンファレンスの
実施、ADL改善率、看護必要度及び日常生活機能、入院患者数、病
床稼働率、収入、チーム協働、院外連携などを比較にあげる。
【結果】在宅復帰率、家屋訪問数、病床稼働率、入院患者数に増加
がみられた。平均在院日数やADL改善率には大きな変化はなかっ
た。
【結論】専従配置の効果が認められた。今回は数値の比較にとど
まり、病棟全体としての評価になるが、専従社会福祉士の配置に
よる、患者・家族の満足度、個別の援助内容、医療チームの機能
の変化の確認には至っていない。次回の課題とする。
P23-4
P23-5
○角田めぐみ(看護師)
,宮崎吉昭,奥 壽郎
○笹谷瑠美(社会福祉士)1),黒川誠子1),福井潤子1),長澤充城子1),
数野理恵2),齋藤 薫1)
デイサービスセンターにおける目標設定型ケアシス
テム
通所生活訓練を利用し、介護保険サービス、企業と
の連携により復職を達成した一例
〜社会福祉士が果たした役割を通して〜
株式会社はーと&はあとライフサポート
1)川崎市社会福祉事業団 れいんぼう川崎
2)川崎市社会福祉事業団 北部リハビリテーションセンター
【はじめに】2000年に施行された介護保険法の目的は、高齢者の
自立支援にある。数回の改正を重ねているが、昨今では通所系と
りわけデイサービスの成果が求められている。
【当デイサービスセンター(以下、センター)の紹介】大阪府茨木
市にある定員33名、スタッフは看護師,介護福祉士,管理栄養士,
歯科衛生士(非常勤)
,理学療法士(非常勤)である。
【目標設定型ケアシステム】センターでは高齢者の通所ケアの目
的を、利用者個々のADL・QOLの向、および介護者の介護負担の
軽減としている。これを実現させるべく今年度より、通所開始か
ら6ヶ月を1クールとし、利用開始1ヵ月で利用者及び「家族に対
して、通所ニーズの把握を目的にアンケート調査と高齢者総合機
能評価(以下CGA)などを実施し、利用者の同意を得た6ヶ月の目
標を立案する。その後、各医療・福祉専門スタッフそれぞれで、
この目標を思考した目標およびケア計画を設定・立案する。そし
て、4カ月の通所ケアを実施する。その間も各専門スタッフは、目
標およびケア計画の変更などを検討する。6ヶ月後に目標の達成
状態を確認する。さらに、2クール目のニーズの把握とCGAなど
を実施し、目標設定型ケアシステムを開始する。研究大会ではこ
のシステムの詳細を報告する。
【はじめに】復職への強い希望はあるが、通勤や事務作業の限定的
な自立も困難と思われた症例がケース担当を主軸とした事業所内
での多職種間連携と段階に応じた地域や企業との連携により復職
を達成したので報告する。【症例紹介】44歳 男性 脳梗塞(右内
頸動脈閉塞)。知的に正常下限。注意障害、左半側空間無視あり、
電動車椅子操作はリスクが高い状態。易疲労あり、疲労時の注意
転導著明。遂行機能低下。屋内T字杖レベル。
【経過】1電動車椅
子操作評価と通勤自立、2耐久性の向上、3できる作業と代償方法
の見極め、4体験を通した自己の特性理解、5復職に向けた手続き
の5点を軸に進捗状況を随時確認し支援した。支援全体の流れを
自立訓練事業のケース担当である社会福祉士が把握し、段階に応
じて適宜、本人、家族、リハ専門職や介護保険サービスと話し合
い各々の役割を調整した。復職に向けた手続きにおいては本人が
できることと必要な条件を自分自身で具体的に説明できるように
支援した。
【結果】勤務地や業務内容を調整し、復職を達成するこ
とができた。【考察】自立訓練事業のケース担当である社会福祉士
が、復職に向けての全体像や流れを俯瞰し、必要な時期に必要な
支援、介入、連携を行えるよう『司令塔』として機能したこと、本
人の強い復職へのモチベーションを支え、特性の理解を促し、強
みを生かせるサポートを行ったことが、復職の達成において重要
であったと考える。
241
P24-1
P24-2
○小林宗太郎(作業療法士)
,小室容子,靏巻俊
○田淵晃人(作業療法士)
医療法人社団三喜会 鶴巻温泉病院 リハビリテーション部
特定医療法人北九州病院 北九州八幡東病院
回復期リハビリテーション病棟での自動車運転再開
支援システムの構築と運用の取り組み
一人暮らしに向けて、内服自己管理を目指した取り
組み
【はじめに】自動車運転再開支援システムを構築し、運用するにあ
たり、各施設で使用している評価項目や判断基準等が統一されて
いないため難渋した。また、
システムの中核をなすドライブシミュ
レーター(DS)導入に伴う注意点等の報告は少ない。当院での自
動車運転再開システム構築の取り組みに関する本報告が、少しで
も他施設の参考になれば幸いである。
【取り組み】当院回復期リハビリテーション病棟にて、自動車運転
再開支援を行うため、システムの構築と運用に取り組んだ。平成
26年7月、作業療法士3名によるDSプロジェクトチームを立ち上
げ、既に自動車運転再開支援を実施している他病院への見学や評
価項目の選定、実施要綱等を作成した。同時に、DSプロジェクト
チームが主となり、自動車運転再開支援に関する講習会の参加と
当院リハビリテーションスタッフに対する勉強会を開催した。同
年10月、DS搬入に伴い試験運用を開始し、DSプロジェクトチー
ムを6名に増員した。試験運用の際に、気分不快の訴えが患者か
ら多く聞かれたため、見通しが良い窓際に設置場所を変更する等、
設置環境の整備に取り組んだ。そして同年12月、本格運用を開始
した。
【今後の展望】効果的な支援が行えているか検証する為、自動車運
転再開支援に関する各種データをまとめ公表する予定である。ま
た近隣の自動車教習所や自動車改造業者、免許センター等との連
携を検討する。
【はじめに】脳梗塞を発症、記憶、注意障害を呈した症例に対して、
独居生活に向けて、内服自己管理(以下、内服管理)を中心に練習・
指導、環境調整を実施。取り組みに関して、経過をまとめたので
報告する。【症例】80歳代女性。脳梗塞発症、麻痺はないが、バラ
ンス能力低下で、ADLは軽介助〜見守りレベル。記憶障害、注意
障害を呈した。
【経過】リハ開始時はADL自立を目指し、バランス
能力向上を中心にアプローチを実施。開始2週目で自立レベルと
なった。3週目に調理訓練を実施。食材購入、刃物と火、加熱した
調理器具や食物の取り扱いに注意を払いながら実施できた。5週
目より1日内服管理を実施。投薬カレンダーを選択。セッティン
グは看護師が実施。開始時は、飲み忘れが多く、看護師から頻回
に促された。内服管理を意識化するため、指導や環境調整を実施
した。その後、順調に遂行できていたが、飲み間違いが発生。再
度、カレンダーの設置変更や服薬を朝・夕食後のみに簡素化、掲
示物貼付など環境調整を検討した。現在は、飲み忘れ等はない。
【考
察】症例は、内服管理で生じた問題の主な原因の一つは、記憶障害、
注意障害もあるが、認識・経験不足であると考えた。自己管理を
繰り返し練習することで作業習得を目指し、習慣化を試みた。練
習する中で、環境調整も実施し、家族の協力を求めた。実際の生
活の中で内服管理という作業を繰り返し行ったことで、習得でき
たと考える。
P24-3
P24-4
○松山友美(理学療法士)
,田中 望,火谷尚弘
○成瀬信平(作業療法士),馬場隆俊,安東勇士,藤江健太
「絶対、仕事はしたいんです」〜通勤、デパートへの
外出を目指した回復期病棟での外出練習〜
回復期リハビリテーション病棟における外出への参
加要因
〜社会的背景、ADL、精神機能との関連〜
医療法人財団善常会 善常会リハビリテーション病院
特定医療法人社団順心会 順心リハビリテーション病院
リハビリテーション部
【はじめに】回復期病棟にて復職を希望する脊髄炎患者に対し外出
練習を行い、アンケート調査から退院後の屋外活動の範囲や頻度
を調査し、
外出練習の妥当性について調査した。
【症例紹介と経過】
脊髄炎発症後の50歳代の女性。本人のneedは退院3ヵ月後の事務
職への復職であったが、心配性な性格であり、公共交通機関を利
用しての通勤に不安を訴えていた。当院入院101日目、両下肢筋
力は4〜5、体幹前傾時の腰痛があったが、両手杖、下肢装具にて
病棟内ADLは自立していた。入院102日目から公共交通機関を利
用しての外出練習を5回行った。外出練習にて、発症前に利用し
たデパート内のトイレの手すりの有無、エレベーターの位置を確
認した。入院155日目で会社への通勤練習を実施する事ができ、
176日目で自宅へ退院した。
【アンケート調査】退院後50日目にア
ンケートを用いて、半構造化インタビューを実施した。
【結果】屋
外活動の範囲は通院や区役所に加え、入院中に外出練習を実施し
たデパートに、外出が出来ていた。頻度は、通院を含め1〜2回/
週であった。今後復職時に通勤するにあたって不安に思うことは
勤務時間や仕事内容であり、通勤に関する不安の訴えはなかった。
【考察】当院で実施した外出練習の場所以外も外出できるよう退
院後のフォローが必要であった。また、当院では1回/2週の外出
頻度であったため、退院後の屋外活動に合わせて外出練習の頻度
も調整する必要があった。
【はじめに】当院では円滑な在宅復帰のため、希望した患者に近隣
商業施設を利用した、買物を伴う外出訓練を実施している。また
購入した食材で調理訓練も実施している。今回、外出訓練を実施
した患者の参加要因について調査したので報告する。【対象と方
法】対象は2014年4月1日から3月31日までの1年間に当院に入院
し、外出訓練に参加した患者82名(以下、外出群)とした。また、
同年5〜6月に入院した全ての患者で、外出訓練に参加しなかった
84名をコントロール群(以下、非外出群)とした。調査項目は、社
会的背景(年齢、性別、家族構成)、転帰、入院時と退院時のADLと
してFIM得点(運動項目、認知項目、総計、小項目)、精神機能面(退
院時MMSE)である。方法は調査項目での外出群と非外出群の差
を比較した。【結果】社会的背景は年齢、性別で有意差があり、外
出群の年齢が低く、女性が多い。転帰は外出群で自宅復帰の比率
が有意に高かった。またADLは入院時の階段以外の項目で外出群
のFIM得点が有意に高かった。精神機能面は外出群のMMSEが有
意に高かった。【考察】外出訓練を希望する患者は自宅復帰の女性
が多く、買物、調理というIADLへの関心の高さが示唆された。一
方で家族構成に差がなかったことから、独居であることが外出訓
練の動機にはならないようである。また外出群のFIM得点が高い
ことからADLを高めることで非外出群も外出訓練への参加の動
機づけになる事も推測される。
242
P24-5
P24-6
○岸 香里(作業療法士)
,坂千佳子
○大場俊宏(作業療法士)1),光本貴雅2),伊賀洋文3)
活動・参加に着目した関わり
−趣味であった花の世話に一歩近づく−
セルフケアの目標達成後、家庭での役割を取り戻す
ために取り組んだ一症例の経過について
〜 ADLからAPDLへの拡大を図って〜
1)医療法人誠和会 倉敷紀念病院 リハビリテーション科
2)医療法人誠和会 倉敷紀念病院 通所リハビリせいわ
3)医療法人誠和会 在宅センター せいわ介護サービスセンター
JA愛知厚生連 海南病院
【はじめに】退院直後の「生活混乱期」は、訪問リハビリによる早
期介入が生活安定化に有用である。今回、脳出血によりADL全般
で介助を要する利用者に対し、通所リハビリと連携し、生活リズ
ムの安定と活動・参加への展開を図れたので報告する。
【事例紹介】60歳代男性、脳幹部海綿状血管腫からの出血を過去4
回発症後、ADL自立していた。今回再度、出血発症。開頭血腫除
去術を施行、約6か月間回復期リハ病院へ入院し自宅退院後、訪問
リハビリ導入となった。
【経過と結果】当初、生活することで精一杯な状況で、身体機能改
善とセルフケア向上のニーズが強かった。約3か月経過した時点
で在宅生活に慣れたが、
「目が見えにくい」
「手が使いにくい」等
を理由に活動性は低く、作業の提案にも乗り気でなかった。しか
し会話等を通し、入院前の習慣であった花や庭の手入れをまたし
たいという希望が分かった。通所リハビリと訪問リハビリ双方で
ADLおよび活動へのアプローチを行い、絵手紙や会話で本人の具
体的な目標等をともに模索し、プランターへの水やりが習慣とな
るまでに至った。育てる花を買いに行く等、家族と外出する機会
も増えた。
【まとめ】ADL訓練と環境整備、本人への問いかけを同時に進め
ながら、通所リハビリと連携して活動・参加にもアプローチした。
継続的に取り組める事柄と方法を具体的に示し実践していくこと
で、本人・家族ともに生活の質が向上した。
【背景】回復期リハビリテーション病棟を退院後に、自宅で生活す
る重度片麻痺のクライアント(以下、CL)に対し、通所リハビリ
テーション(以下、通リハ)にて自宅訪問を重ねた。それにより環
境調整やトイレ動作練習を実施し、自宅でのトイレ動作が自立に
至った(第49回日本作業療法学会にて報告)
。
【序論】通リハで約2
年間に渡り、CLを担当する機会を得た。セルフケアへの支援後に、
その後の在宅生活行為やQOLの向上を目指した。家族や介護支
援専門員・理学療法士と協働し、CLの希望でもあった主訴である
家庭での役割を取り戻すための作業(食器洗いや冷蔵庫からの物
の出し入れ)や環境(家族や自宅)に対して支援を行った。その経
過を報告する。尚、本報告に対して本人からの同意を得ている。
【結
果】支援により、CLが病前に行っていた家庭での作業の一部を退
院後に初めて実施する事が出来た。夫の協力の下で台所に手すり
などを設置し、自宅内の敷居の段差を解消した。環境調整を行い、
一階であればどこにでも車椅子自己駆動で移動が可能となった。
また、冷蔵庫からの物の出し入れが自力で可能となり、食器洗い
は自力では困難であったため、食洗機を購入し、解決に至った。
【結
論・考察】長期間の支援の中で、ハンディキャップがあっても在
宅生活を継続していくために、家庭での役割を取り戻していく作
業に取り組むことは重要である。また、人と作業と環境は常に相
互に関係する。
P25-1
P25-2
○平井雅子(看護師)
,田中淑子,梅尾さやか
○大地将之(作業療法士),矢野宏行,花田友美
独立行政法人 地域医療機能推進機構 湯布院病院
倉敷中央訪問看護ステーション リバーサイドサテライト
子宮頸がん末期の患者に対して行ったリハ的関わり
の効果
他者のための活動が活動性向上に繋がった事例
〜その人にあった活動を〜
【はじめに】当院では今年、緩和ケア病棟を新設した。回復期リハ
病棟を主体に行ってきたため、看護もリハビリテーション(以下リ
ハ)的関わりを以前から行っていた。緩和ケア病棟でリハ的関わ
りがどれほどの効果があるのか1事例を経験したので報告する。
【目的】子宮頸癌末期の患者に行った個別性を考慮したリハ的な関
わりの効果について検討する。
【対象】T氏 80歳 女性 独居
2013年6月子宮頸がん発見IV期緩和病棟を希望され当院に転院。
入院時、余命は3か月〜6か月、認知面の低下あり、食事以外介助
を要す状態。
【方法】本人が好きな1)会話 2)調理 3)集団作業の
3点を生かしリハ的な関わりを行い、バーサルと長谷川スケール
で比較する。【結果】バーサル:入院時20点→5月21日55点 長
谷川スケール:入院時6点→5月21日11点【考察】子宮頸癌末期の
患者に好みに合わせた活動を病棟内で行った結果、活動性と認知
面が向上した。治療をしていた前病院では身体的・精神的な侵襲
が強く、廃用性の変化が起こっていたと思われる。元来好きだっ
た調理や花を他患と一緒に植えたりすることは楽しい時間であ
り、
効果をもたらしたと考える。
【結論】癌末期の患者であっても、
活動性や認知面を向上させることができれば、在宅復帰など患者
さんがその人らしい終末期を送れる時間を作ることができる。今
後も患者一人ひとりと向き合い生活の中で患者本人が楽しんで行
えるリハを導入していきたい。
【はじめに】今回、自己のための活動を拒否していた事例に対し、
他者のための活動を促すことが活動性向上に繋がった事例を経験
したため報告する。
【事例】80歳代女性、独居。腰椎圧迫骨折後。
自宅退院後、活動性低下し訪問リハが開始。開始時ADLは、入浴
は見守り、その他自立。術後家事や買い物は娘が行い、必要では
なかった。趣味は編み物。事例の希望は家事の再獲得と屋外歩行
獲得で、訪問リハで屋外歩行距離は延長したが、活動性向上には
難渋していた。
【経過】事例に対して家事や買い物の訓練を促すが、
娘が行っているからと拒否。そこで動機付けとしてOTRのため
に、編み物の本を買いに行く、献立を考える活動を促す。この動
機付けでは拒否していた訓練も可能であった。また、この時期に
1人で散歩する行動変容が現れ、自己効力感向上を示す発言があ
り、公園の散歩が習慣化した。【考察】事例では、他者のための活
動が動機付けとして有効であり、活動に意欲的に取り組むに至っ
た。先行研究では「意味のある作業は能力を発揮し、前向きな作
業参加と役割を引き出す連鎖を生み出す」とある。事例は過去に
ボランティア活動を行っており、他者のための活動は意味のある
作業であったと考える。さらに、前向きに参加できる活動を達成
できたことが自己効力感を高めたと考える。意味のある作業は個
人によって異なるため、病前の活動や発言から意味のある作業を
見つけることの重要性を感じた。
243
P25-3
P25-4
○永和香菜子(作業療法士)
○宮城優子(作業療法士),又吉 達,濱崎直人,宮里好一,
島袋雄樹,秋月恵美
えだクリニック 整形外科・リハビリテーション科
沖縄リハビリテーションセンター病院
意味のある作業(畑作業)を通して、自分らしい生活
を再獲得した事例
母として家庭復帰を果たしたい
〜外来リハビリテーションでの取り組み〜
【はじめに】今回、日中臥床傾向であった事例に対し、意味のある
作業に焦点を当て介入したことにより、自分らしい生活の再獲得
に至ったので報告する。
【事例】A氏、80代男性。肺癌術後廃用
症候群。要介護1。妻・娘家族と同居。FIM:112/126点。畑作
業がしたいとの思いがあるが、転倒を毎日繰り返しておりセルフ
ケア以外ほぼ臥床して過ごしている。
【経過・結果】術後1年2か
月から、転倒予防のため訪問リハ開始。A氏は畑作業を強く希望
していた反面、諦めの気持ちもあるようだった。そこで「 1人で畑
まで歩いて行き、作業ができる」という長期目標をA氏と共有し、
畑までの距離や環境に合わせて具体的な短期目標を段階的に設定
した。目標が明確になると、A氏は自主運動が継続的に可能とな
り、歩行能力が向上した。また畑作業の模擬的な練習を実施後、
娘と車で畑に行き作業をすることが可能となった。介入3か月後
には、1人で畑まで歩いて行き3時間の畑作業が可能となり、生活
リズムが改善した。FIMは123点と向上した。
【考察】A氏は廃用
症候群により畑作業はおろか、ADLにも支障をきたし受動的な生
活を送っていたが、畑作業というA氏にとって意味のある作業に
焦点を当て目標を共有したことがきっかけとなり、次第に主体的
な生活を送れるようになった。そして、ADL能力や生活リズムの
改善、畑作業の実現が達成され、A氏らしい生活を送ることが可
能となったと考える。
【はじめに】回復期病棟入院中、あらゆる訓練に受動的でIADL訓
練に拒否的だった症例に対し、外来リハビリテーションを継続し
た結果、ADL・IADLが自立した症例を報告する。
【症例紹介】40歳代女性、右視床・被殻出血の重度左片麻痺。退院
時ADLは入浴一部介助、移動車椅子、歩行は長下肢装具一部介助
であった。退院後は夫の実家で義父母と同居生活し、家事全般に
援助を受けていた。
【経過】外来開始時、まずはADL動作の安定と歩行獲得を目的に機
能訓練を実施し、改善と共に精神面の安定が得られた。3ヶ月後、
入浴が自立。1年後、金属支柱付短下肢装具へと変更。徐々に家
事への意欲や元のアパートへ戻り、母として家庭復帰を果たした
いという想いが芽生えた。さらに買い物やお洒落などへの自発的
行動や笑顔、発言が増えた。1年半後、プラスチック短下肢装具を
作製し、移動が安定してきた事で家事方法の検討や助言を積極的
に受け入れた。2年後にはアパートへ戻り料理・買い物・バス利
用が自立となった。
【考察とまとめ】外来リハビリでADLが自立した事で家事への興
味が向き、母として家庭での役割を果たすきっかけとなった。心
の変化を見極め、訓練の展開や助言をしていく事でIADL自立へ
と繋がったと考えられる。また退院時自立が難しい状況であって
も訓練を継続していく事が希望を繋ぎ、自立へ導く為に重要であ
ると考える。
P25-5
P25-6
○井川祐樹(理学療法士)1),山下孔明1),坂下文美1),浦底まゆみ1),
志村一展1),寺田耕作1),濱田直人2),古薗睦子3)
○下山祥穂(作業療法士),今井寛人,小野実紀,住吉佳奈子,
三浦 藍,増田由貴,斎藤信一,算用子暁美,岩田 学
1)いちき串木野市医師会立 脳神経外科センター,2)リハビリ特化型
デイサービス ムーブメント星ヶ峯,3)いちき在宅介護支援センター
一般財団法人黎明郷 弘前脳卒中・リハビリテーションセンター
回復期入棟時から趣味活動介入を行った右片麻痺患
者の1事例〜生活期での活動能力諸段階変化と回復
期リハビリの重要性〜
生活行為向上マネジメントを使用して復職にむけて
介入した一症例
【はじめに】生活行為向上マネジメントを活用して復職にむけた
段階的な目標を設定し、介入したことが満足度向上につながり復
職に至った症例を担当したため以下に報告する。
【症例紹介】70
歳代女性。左視床に脳梗塞を発症し当院へ入院。右上肢・手指は
Br.Stage5であったが、感覚鈍麻(表在8/10、深部5/10)と異常知
覚があり、巧緻動作は努力を要していた。ADLは車椅子を使用し
入浴以外は自立。病前は機織(裂き織)の講師をしていたが復職
には消極的な発言が聞かれた。【生活行為向上マネジメントによ
る介入】ご本人から「機織ができるようになる」という目標があげ
られたが、自己評価は実行度・満足度共に1/10と低かった。目標
についてはアセスメントシートを用いて症例と利点・問題点・予
後予測を共有し、復職に必要な「模造紙に絵を描く、書字を行う」
ことを達成可能なニードとした。作業療法ではADL訓練と並行し
て書字訓練を行い、自室でも書字や塗り絵などを行うよう指導し
た。
【経過】感覚障害の改善・巧緻性の向上に伴い、書字能力も向
上し模造紙に絵を描く作業は、意欲的に取り組み完成度も高かっ
た。
【結果・まとめ】退院時は「機織ができるようになる」に対す
る自己評価の実行度は1/10だったが、満足度は8/10となり、機織
の講師を継続できそうだとの発言が聞かれた。復職に必要な目標
を段階的に設定して介入したことが、復職への具体的な成果とな
り満足度につながったと考える。
【はじめに】今回、回復期入棟時から在宅生活の予後予測を行い、
本人の目標「魚釣りをしたい」に沿った介入を行った。退院後も
訪問リハビリで趣味活動に対し介入することで、Lawtonが示す
活動能力諸段階における生活変化が見られた。急性期から生活
期まで関わった1事例を通して回復期リハの重要性を再確認した
為、以下に報告する。
【事例】70歳代男性。診断名:左被殻出血。障害名:右片麻痺。趣味
活動:海釣り。利き手:右。
【経過】a. 回復期入棟時BRS:上肢2‐手指1‐下肢4在宅生活の予後
予測として、屋内生活自立・本人の目標である趣味活動獲得を目
指し介入。また、多職種連携を行い、趣味活動獲得の必要性を重
視した。b. 訪問リハ時BRS:上肢4‐手指5‐下肢5ケアプランの目標
を趣味活動の獲得として、訪問リハ2回/週介入。約2か月経過し
た時点で近くの港まで歩行し、麻痺側上肢も釣りの仕掛け作りや
餌づけなど補助手として使用可能となった。Lawton活動能力諸
段階においても手段的自立から状況対応へ移行した。
【考察】回復期リハビリにおいて機能面やADL獲得を踏まえた上
で、在宅生活における目標を目指した介入により、退院後に趣味
活動へ繋げる事ができ、Lawton活動能力諸段階のより高次で複
雑な活動へ変化していった。在宅生活に向けて、本人らしい生活
を見据えて回復期入棟時から自助への促しを意識した介入を行っ
ていく事が重要と考えられた。
244
P26-1
P26-2
○岡村敬祐(その他)1),牧野ひかる1),山本紗織1),吉良晋太郎1),
鈴木 真2),吉川法生2)
○奥 壽郎(理学療法士)1),角田めぐみ2),宮崎吉昭2),山野 薫1)
1)デイサービスリハステージ上新庄
2)株式会社リハステージ
1)宝塚医療大学 保健医療学部 理学療法学科
2)感動体験サロンデイサービスはーと&はあと
通所介護事業所における運動機能向上プログラムの
効果と自己効力感との関係について
デイサービスにおける高齢者総合機能評価の実施
【目的】当社通所介護事業所の利用者における身体機能の変化を
明らかにするとともに、自己効力感への影響を調査したので報告
する。
【方法】当社通所介護利用者を対象とし、
身体機能評価項目は体重、
BMI、3m歩行速度(普通・最大)
、握力、30秒椅子立ち上がりテス
ト(CS-30)
、膝伸展筋力(HHD)
、体前屈、開眼片脚立位保持時間、
Functional reach test
(FRT)
、最大ステップ長、Timed up and
go test
(TUG)、タンデム立位保持時間とした。自己効力感(SE)
は一般性自己効力感尺度を使用し、それぞれ利用開始時と利用か
ら半年後の数値を比較、有意差(p<0.05)を認めた項目の変化量
と自己効力感の変化量の相関関係を調査した。
【結果】利用開始時と半年後で有意差を認めた項目は握力左右、
CS-30、HHD左右、体前屈、FRT、TUGであった。これらとSEの
変化量の相関関係を調べたが有意な相関関係はみられなかった。
【考察】単に機能訓練に特化するのではなく、機能訓練で向上した
能力を利用者へ十分にフィードバックを行い、また利用者の活動
と参加に繋げられるような介入を考えなければならない。当事業
所では老研式活動能力指標を使用しているが、今回データー量が
不十分であったため関係性を調査するには至らなかった。今後は
ADLと自己効力感との関係性を明らかにしていく必要がある。
【はじめに】平成12年に施行された介護保険法の目的は、高齢者
の自立支援にある。通所系、訪問系、入所系のサービスが基本で
成果が求められている。通所系サービスであるデイサービスに
おいても、利用者のニーズに応じたサービスを提供し自立支援
につなげる必要がある。当デイサービスではこの目的を達成す
る一助とすべく、平成27年1月より高齢者総合機能評価(CGA:
comprehensive geriatric assessment)を導入した。今回平成27
年1月~3月での、当センターのCGAを報告する。
【当センターのCGA】一般的身体機能評価に加えて、身体的評価
としてBarthel index、老研式活動能力指標、精神的評価として改
訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、Vitality Index、社
会的評価としてZaritの介護度負担度、MNA:Mini Nutritional
Assessmentを選択しCGAとした。今回のCGAは、宝塚医療大学、
感動体験サロンデイサービスはーと&はあとの倫理委員会の承認
を得て実施となった。
【対象】デイサービス利用者20名、男性4名・女性16名、平均年齢
83.5歳を対象とした。介護認定内訳では要支援1が1名、2が5名、
要介護1が4名、2が6名、3が2名、5が2名であった。
【結論】今報告では利用者20名のデータを分析し、デイサービスに
おけるCGAの活用について考察を加えることとする。
P26-3
P26-4
○帆足沙由美(理学療法士)1),中島貴史2),坂井美里2),植崎千里1),
岩根好美2),田邊清和2)
○高橋径子(作業療法士),内田智子,工藤あずさ,鳥羽瀬温美
1)社会医療法人青洲会 福岡青洲会病院 通所リハビリテーションセンターRink
2)社会医療法人青洲会 福岡青洲会病院 先進リハビリテーション実践センターHOPE
医療法人潤心会 熊本セントラル病院 リハビリテーション科
3-4時間専門通所リハビリの立ち上げ1年後の現状
と課題
利用者の主体的活動に向けた通所リハビリでのOT
の取り組み
【はじめに】当通所リハビリテーション事業所では作業療法士(以
下OT)を増員し、機能訓練重視の個別リハビリテーション(以下
リハビリ)から主体的活動のリハビリへの転換に向けた取り組み
を行ったので報告する。
【OT取り組み前】オープン空間のリハビ
リフロアにベッドとソファが点在して置かれ、利用者はリハビリ
フロアの運動機器、物療機器の周りに競い合うように座り、ひた
すら空くのを待っていた。職員は待っている利用者に順に声をか
け、機能訓練をしていた。【問題点】1.リハビリフロアにベッド、
物療機器しかない、2. 人が集える場がない、3.利用者、職員共に
「通所リハビリ=リハビリ=機能訓練」という意識が強い【取り組
み内容】第1段階:集える場(セミクローズドのOT室)作り、第2
段階:集う人と人との関係作り、第3段階:集う人への活動提供【結
果】利用者がOTを認識し自然とOT室に集まり始め、徐々にOT室
が溢れ返り、利用者が主体的に活動に取り組むようになった。【考
察】今回、OTが「場」と「人」という環境に対し取り組んだことで、
利用者がOT室を集いの場と認識し、その中でまずOTを介した関
わりから利用者同士に交流が生まれ、同じ場と時間を共有できる
ようになったのではないかと考える。さらにOTが活動を介して
利用者同士が交流できるように関わり方を変化させたことで互い
の活動が刺激となり、利用者自身の行動に変化が出てきたのでは
ないかと考える。
【はじめに】当法人では、介護事業所の役割の分科化のため、H25
年12月に食事・入浴なしの3-4時間専門型通所リハビリ(以下、当
事業所)を開設した。開設半年後の反響にて、地域ニーズがあるこ
とが判明した。開設約1年半後の現状と、27年度介護報酬改定で
示された活動・参加の促進に対するケアマネ(以下、CM)の意見を
含め、今後の課題について分析したため以下に報告する。
【方法】開設後6か月の時点で、当事業所利用者の担当CMに対し、
地域における短時間通所のニーズの有無(5段階選択肢型)、当事業
所を選んだ理由・要望等(自由回答型)のアンケートを実施。また、
H27年5月に社会参加・活動の促進に対する意見をアンケート(自
由回答型)にて調査した。開設6か月後、12か月後の当事業所利用
者に対し、サービスに対する満足度アンケート(5段階選択肢型)を
実施。登録人数や男女比に関しては追跡調査を実施した。
【結果】利用延べ人数は、H25年12月開設時232人からH27年4月
末時点658人と増加。登録人数は25名から101名に増加。男女比
6:4。利用者満足度は67%から78%へ上昇。CMからのアンケー
トより、社会参加・活動の促進については肯定的な意見が得られ
た。
【まとめ】地域の当事業所に対するニーズが高いことがわかった。
地域からの信頼も高くなってきている状況で、地域への活動・参
加を促す取り組みも求められている。今後の課題として、社会参
加支援体制を構築する必要がある。
245
P26-5
P26-6
○郡 敏宏(理学療法士)
○森川麻衣(作業療法士),廣瀬聖一郎,木村嘉子,島村耕介
社会参加を促すために〜新聞作成とブログ作成〜
当院通所リハビリテーショにおけるサービスの再考
−興味・関心チェックシートを用いてスタッフの視
点を考える−
医療法人社団三友会 健幸くらぶ万智
西横浜国際総合病院
【はじめに】要介護状態になると、自信喪失や身体能力低下等によ
り社会参加をあきらめる方が多い。今回職業経験を活かし、社会
参加を促した一症例を報告する。
【対象】対象は50歳代男性。診
断名はパーキンソン病。病前の職業はシステムエンジニアとして、
パソコンの不具合に関する企業からの問い合わせに対応されてい
たが、現在は休職中。認知面の低下はなく、ADL面では食事動作
は自立。更衣、入浴やトイレ動作は見守り〜一部介助が必要。移
動は車いすを使用。【方法】パソコンの知識が豊富な本症例の職
業経験を活かし、まずパソコンで新聞作成を行い、作成した新聞
はデイケアで誰でも閲覧可能とし、本症例のご家族や関係者にも
配布した。新聞作成が軌道に乗った後ブログ作成を行った。ブロ
グはまだ試行的なため、現在、職員やご家族等の限られた方しか
閲覧できないが、今後誰でも閲覧可能にする予定。
【結果】新聞を
閲覧した方から新聞の内容に対する質問が本症例に対してあるな
ど、本症例に対する周囲からの声掛けが増加した。ブログの掲載
内容に対するコメントがあり、本症例もコメントが返ってくるの
を楽しみにされている。
【考察】本症例の職業経験を活かした社
会参加を行うことができた。身近なところからの社会参加である
が、これをきっかけに社会参加の範囲を広げ、将来的には同じよ
うな境遇の方々と連絡を取り、意見交換を行う等の社会参加へと
繋げることができると考える。
【はじめに】昨今、生活期リハビリテーション(以下リハ)では活動
と参加に焦点を当てた生活行為の支援が求められている。しかし、
当院通所リハでは、従前より利用者の希望に沿い、機能回復を主
体としたサービスを提供してきた。今回、利用者の希望を再調査
し、スタッフの視点と関わりについて再考したので報告する。
【対象・方法】当院通所リハ利用者60名(平均年齢:75.0±8.1歳、
男性:23名、女性:27名)を対象にチェックシート(リハ計画書等
の様式1:興味・関心チェックシート)を用いて聞き取り調査を行っ
た。シートの「している」
「してみたい」
「興味がある」の3項目につ
いて検討した。
【結果】46項目の内、「している」
「してみたい」は100%、「興味が
ある」は82.6%と高い回答率が得られた。3群間の比較では46項
目中29項目に差が見られた(X2検定)。その中で「している」と回答
したものは、セルフケアおよび屋内でのIADLに関連する項目で
あった。反面、
「してみたい」
「興味がある」にも関わらず、してい
ないものは、外出を伴った参加に関連する項目であった。
【考察】結果から、利用者の希望を顕在化することなく機能訓練を
主体としたサービスを提供してきたと考えられた。今後は、利用
者の希望に応えるべく、多様な視点を持ち工夫を重ねる必要があ
る。特に、外出が大きな課題でありアプローチが重要と考えた。
P27-1
P27-2
○上原範子(理学療法士)
,鈴木 暁
○中神佳子(作業療法士),末武達雄
医療法人社団明芳会 横浜新都市脳神経外科病院
リハビリテーションセンター
社会医療法人財団白十字会 燿光リハビリテーション病院
リハビリテーション部
くも膜下出血後に嘔吐を繰り返す症例の早期離床を
目指して〜患者・介助者との情報共有から〜
終末期にて症例と家族のデマンドに焦点を当てて自
宅退院を目指すことに難渋した一症例
【はじめに】くも膜下出血後に生じる水頭症は、早期離床の妨げに
なることも少なくない。今回くも膜下出血後の水頭症により頭痛
と嘔吐症状を呈し、離床が困難であった症例を担当した。シャン
ト術を施行後頭痛は軽減したが、嘔吐は改善されずに離床を困難
にしていた。長期臥床による機能低下と症状から介入方法を検討。
患者・介助者と情報を共有することで離床が図れたため報告する。
【症例紹介】30代女性。麻痺なし。常に閉眼し、外界の情報を遮断
しているように見えた。開眼した際には常に一点を見つめ、体動
後には眼振を認めていた。起居動作や移乗、車椅子での移動時に
嘔吐が誘発される傾向にあった。
【仮説ならびに共有情報】長期臥
床による姿勢制御機構の破綻により、遠心力が加わった際に制御
困難。眼振が加わる事で回転性めまいと同様の症状を呈し、嘔吐
が生じていると考えた。そのため起床時はギャッチアップより開
始。起居動作や移乗時にはベッド柵等把持した状態で動作を行い、
出来るだけ遠心力で身体が振られないよう指導した。加えて介助
者へは患者のペースで動き、必要最小限の介助量で関わるよう指
導した。
【経過】上記介入方法により嘔吐症状が軽減。自らのペー
スで離床可能となり、車椅子乗車時間の延長・自駆動が可能となっ
た。
【考察】経過と症状より動作の特性を捉え、患者・介助者と情
報を共有。そうすることで嘔吐症状の軽減が図られ、早期離床へ
繋がったと考える。
【はじめに】今回、胃腫瘍にて手術目的で入院となった患者を担当
した。経過の中で手術適応外となり、終末期の適応となった。本
人と家族のデマンド双方を尊重し自宅退院を目指しアプローチし
た結果を報告する。
【症例紹介】80代女性。診断名は胃腫瘍、手術目的で入院。倦怠
感が強くC1レベルの状態。既往にアルツハイマー型認知症あり。
キーパーソンは娘。旦那と二人で生活している。
【経過】自宅で寝たきり状態が続き耐久性の低下あり。リハビリ
が入院2日目より開始された。その後、感染症による熱発のため
バイタル、意識状態の変動が見られる。長期臥床による廃用と腫
瘍の増悪により手術の適応でなくなった為、方針を在宅療養へ変
更。症例のデマンドは「お父さんと一緒にいたい」
、家族のデマン
ドは「残された時間は家族で過ごしたい」であり、双方の希望を達
成する為、福祉用具選定、介助指導等を実施した。
【結果】症例は寝たきりの状態であったが、各種サービスを受けな
がら自宅退院に至った。
【考察】C2レベルの患者を自宅退院させるためにOTとして、症例
に合った福祉用具の選定、サービスの検討を行った。また、家族
と話し合いを重ね、自宅で看ていく上で不安に感じることを具体
化し解決策を提案した。各職種がアプローチを行うことで自宅退
院が可能になったのではないかと考える。
246
P27-3
P27-4
○佐藤友昭(理学療法士)
,林田嘉成,阿部悠香,篠崎 駿,
石塚さよ,松本純子,高野 綾,坪井文子,伊元勝美
○山浦高志(作業療法士),西野江莉夏
神谷病院 回復期リハビリテーション病棟
社会医療法人社団森山医会 森山リハビリテーション病院
リハビリテーション科
回復期リハビリ病棟における各専門職の視点を活か
したレクリエーションの導入
当院における身体拘束使用率軽減への挑戦
【はじめに】回復期リハビリ病棟は患者の身体機能のみならず精
神心理面、また活動・参加の側面から回復を支援する病棟である。
その中で、病棟内レクリエーションを実施する施設は多く、特徴
や取り組みについての報告も散見する。当院は昨年4月の病棟開
設と同時にレクリエーションを開始した。その際、病棟に関わる
各専門職それぞれが担当になり専門的見地を生かした企画運営を
行うことにした。今回、その取り組みについて報告する。
【運営
方法】レクリエーションは週一回、1時間として基本的に患者全員
が対象と成り得る内容とし、企画運営を週毎に看護師・介護士・
社会福祉士・セラピストの各職種が実施する。
【視点と内容】看
護師は精神心理面や疾病管理の視点から、
「座談会」や「入院中の
ストレス対処法」などを実施、介護士は遊びリテーションの視点
で、
「カレンダー制作」
や「風船バレー」
などを実施している。また、
社会福祉士は社会との関わりを意識し外部よりボランティアを招
聘し、セラピストは身体機能向上に特化し、手足や口などの体操
を実施している。【今後の方向】全人間的復権の回復を支援する
ために各専門職の視点を持ったレクリエーションを企画・運営し
一年が経過した。今後、患者アンケートによる評価や希望するレ
クリエーション等を聴取し随時見直しを行う。また、全員参加型
に加えて個々の希望・状態に合わせた個別型の導入について検討
していく。
【はじめに】身体拘束は人権問題だけではなく患者のQOLや身体
機能低下への影響が危惧されている。当院回復期病棟では安全確
保のために身体拘束を行うことがあるが解除するための具体的な
方法は確立されていない。そのため拘束解除に取り組みにくく、
意識は低下し難渋すると考えた。そこで当院回復期に所属するス
タッフにアンケート調査と身体拘束解除評価用紙の作成を行い身
体拘束の使用率軽減に取り組んだ。【方法】当院の回復期病棟に所
属する看護師、理学療法士・作業療法士を対象に身体拘束解除に
対する意識調査アンケートを行った。また評価用紙を作成し身体
拘束の使用率の変化について約2カ月の変化を検討した。対象は
車椅子腰ベルトを使用している患者とし、比較する使用率は取り
組みの前後で調査を行った日の使用率とした。【結果】アンケート
の結果では車椅子安全帯解除の為に取り組みを行っているが、使
用率は79%で抵抗を感じるとの回答が半数以上であった。今回
の取り組みで腰ベルトの使用率は34%へと軽減した。【考察】ア
ンケートでは各スタッフ個人の判断で取り組んでおり腰ベルト解
除に難渋していたと考えられた。そこで評価用紙を導入すること
で問題点が明確となり、共通認識のもとに対策も立てやすくなっ
た。結果、腰ベルト使用率は低下したと考える。今後さらに不必
要な身体拘束の解除に向けて共通認識を深めるために挑戦し続け
ていく事が重要であると考える。
P27-5
P27-6
○小濱紋乃(介護福祉士・ヘルパー)
,安村勝也,波平 功,
西平伸也,安慶名誠,又吉 達,濱崎直人,宮里好一
○天神麻衣(理学療法士)1),玉村悠介1),松浦道子1),勝田有梨1),
錦見俊雄2)
沖縄リハビリテーションセンター病院
1)社会医療法人若弘会 わかくさ竜間リハビリテーション病院 療法部 療法課
2)社会医療法人若弘会 わかくさ竜間リハビリテーション病院 診療部
回復期病棟で介護職としての関わり
〜介護記録を実践して得たもの〜
チーム医療強化に向けた当院回復期病棟の取り組み
【はじめに】これまでの一般病棟から平成25年度の回復期病棟の
立ち上げの際、介護職としての役割を検討した。その際、1.患者
に関する情報共有の促進 2.介護職としてのやりがいの構築と考
え、介護記録(以下、記録とする)を導入した結果を報告する。【方
法・目的】1)日々の患者の現状を記録開始。2)記録の目的と内容
を深める為の勉強会を開催。 3)記録導入後、アンケート調査を
介護職5名に対して実施。
(回収率100%)
【結果】開始当初は、模
索しながら記入していたがその日の出来事、体調、会話内容など
を記入できるようになった。勉強会を行うことで、記録に対して
統一した見解となり、患者の要望に対して各自の対応策や、患者
の反応の記入も徐々に増加していった。アンケートでは、記録を
負担に感じる者もいたが、介護職全体で記録をすることで、患者
の情報共有ができ、ケアや声掛けで実際に活用していると回答し
ていた。さらに、
「表情の変化」
、
「患者の回復」などを感じるこ
とでやりがいに繋がったと言った前向きな意見もあった。【考察】
回復期病棟の一員として、患者一人一人、その人らしい生活を視
る必要がある。磯部は、
「自立支援を念頭に置いたケアの実践が
必要になってくる。」と述べている。今後も記録の質を向上させ、
介護計画の立案、ケアを実践することで個々の知識や技能が向上
し、さらなるやりがいを見出せるのではないかと考える。
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟は、各々の専門職が
高い専門性をもって、医療を提供する「チーム医療」が重要であ
る。しかし、新入職員数の増加に伴い、チーム医療の理解が乏し
いスタッフが増えてきている。そこでチーム医療の強化に向けた
取り組みを実施した。
【対象・方法】対象は平成26年4月1日〜平
成27年3月20日に当院回復期リハビリテーション病棟に所属した
Ns、PT、OT、ST、MSW、CW、歯科衛生士、栄養士、薬剤師とし
た。チーム医療強化に向けたテーマを複数設定し、グループディ
スカッションを行った。グループ編成は、自職種の役割を他職種
に発信し、各職種の役割を理解しやすくなるよう経験年数や職種
に偏りが出ないように振り分け、1年間定期的に実施した。また、
PTによる移乗方法の実技指導やSTによる高次脳機能障害につい
ての講義など、専門職外の知識・技術向上も図った。
【結果】 対
象職種全員がグループディスカッションに参加でき、アンケート
(回収率100%)より84%のスタッフが自職種や他職種の役割が以
前に比べ明確になったと回答があった。また、訪問時の動画や歩
行動画をカンファレンスで使用し、情報共有に向けた取り組みも
開始できた。【考察・まとめ】他職種とのグループディスカッショ
ンはチーム医療の重要性を深める手段として有効であり、連携や
情報・目標共有が円滑になった。今後もチーム医療強化に向けた
取り組みの継続が必要である。
247
P27-7
P28-1
○大越 満(作業療法士)
,野尻亜希,前田亮一,佐野栄仁,
溝口哲朗,長谷川賢,山口勝也,高橋要子,町田正子
○岩田蘭子(作業療法士),三上直剛,山崎礼二,熊木 励,
麓 文太
東京ふれあい医療生活協同組合 梶原診療所 在宅総合ケアセンター
医療法人社団 函館脳神経外科病院
生活行為が向上したパーキンソン病の一事例
〜リハビリテーションの視点で行う“複合型サービ
ス”としての素早い連携〜
集団を介した作業療法による気分・感情等の効果検証
【はじめに】内部の事業所および近隣の事業所が素早く連携をし
たことが功を奏し生活行為が向上した事例について報告する。
【事例】76歳女性。娘と二人暮らし。要介護4。約10年前にパーキ
ンソン病と診断された。X年1月麻痺性イレウスにて救急搬送。X
年3月リハ病院に転院。X年6月午前自宅に退院。当日午後サービ
ス担当者会議が実施された(本人・長男・ケアマネジャー・デイ
管理者・訪問リハOT)
。通所介護週4日、訪問リハ週1日。
【訪問リハ開始時】ADL:Barthel Index
(BI)70/100。生活行為
の目標:1)車椅子を足漕ぎで移動する。2)下肢装具を一人で装着
する。3)台所で立つ。1)〜3)が達成後、4)トイレと台所へ伝い歩
きで移動する。5)見守りで歩いて買い物に行く。介入内容:自主
トレの練習、生活行為の練習、歩行器を使った屋外歩行。
【訪問リハ開始4ヶ月後】ADL:BI 90/100。屋外歩行は安定した。
階段昇降が可能になり、BIの減点は入浴のみとなった。介護度は
要介護2に向上した。自宅で入浴をするため、筆者はヘルパー向
けに入浴方法の資料を作成し、ヘルパーの訪問時に動作及び環境
について共有した。訪問リハを終了したうえで訪問介護による自
宅での介助入浴を行うこととなった。
【考察】多事業所が素早く連携をすることは利用者には有益である
と思われる。連携をしやすくするためのリハも含んだ複合型サー
ビスが制度として望まれる。
【目的】脳卒中の発症早期には心身状態や環境の変化などにより
心理面に問題を抱えることが多い状態である。当作業療法課で
は入院患者を対象とした「集団を介する作業療法」
(以下集団OT)
を実施している。集団OTでの関わりが気分や感情の変化にどの
ように影響しているのかを検証し報告する。また、集団OTの活
動内容による感情の変化に特徴が見られるか検証し、今後の集団
OTの活動内容の一助を得る。
【方法】平成25年6月〜7月、平成27
年4月〜5月の期間に実施した集団OTで同意の得られた参加者33
名を対象。感情的な変動を見る気分プロフィールアンケートであ
るPOMS(短縮版)を用いて集団OTの実施前後での気分や感情の
変化を測定した。
【全体の結果】
「活気」以外の全ての項目で実施
前後の得点に有意差が認められた。
【活動内容別の結果】活動内
容を創作活動と運動に分類した結果、運動において「緊張」
「怒り」
の項目で有意差が認められた。運動要素の含まれた集団OTでよ
り感情の変化が得られる結果となった。
【考察】集団OT中、参加
者からは個別訓練では見られない楽しんでいる表情や自発的な姿
勢が見られるようになった。POMSの結果からも、脳卒中発症早
期の対象者に対して、集団を利用した作業療法は否定的な感情を
抑制し一部の感情の変化に影響を与えることがわかった。また、
身体活動を行うことでストレスの発散に繋がり他者との場の共有
や交流により緊張が緩和される効果が示唆された。
P28-2
P28-3
○宮城安成(介護福祉士・ヘルパー)1),上原健久1),宮里サヨ子1),
饒平名千秋1),山城 忍1),遠藤千恵子1),知念一朗2),大城史子2),
濱崎直人2),宮里好一2)
○秋山泰蔵(理学療法士)1,2),菅谷公美子1),飯田裕章1),
塚田優子1,2),伊藤 綾1),小室明子1),大田仁史1)
1)医療法人タピック 沖縄百歳堂デイケアセンター
2)医療法人タピック 沖縄リハビリテーションセンター病院
1)茨城県立健康プラザ
2)医療法人社団筑波記念会
選ぶ大事さ 選べる楽しさ〜選択的活動が利用者様
に与えたもの〜
茨城県「シルバーリハビリ体操指導士養成事業」に
おけるリハビリ専門職の関わり
−ボランティアに対する講義経験の報告−
【はじめに】近年「沖縄百歳堂デイケアセンター」では利用者増加
に伴い全員で行う合同レクリエーションによる対応が困難になっ
ていた。そこで全利用者にアンケートを実施し体操・脳機能向上・
手工芸・カラオケの4つのグループに分かれ、自ら選択し参加出
来る活動へ変更した。変更前後で利用者の行動に変化が見られた
ので代表的事例を通して報告する。
【症例】70歳代、男性、要介護
3、心原性脳梗塞、右片麻痺、ADLは車椅子レベル、FIM68(認知
項目16)、運動性失語症となり本人からの積極的な声かけはない (ジェスチャー等での意思疎通は可)。
【経過】変更前は受動的に参
加し消極的、自分から交流する事が少なかった。活動変更当初は
発語や会話の訓練を目的に脳機能向上に参加していたが回数を重
ねるうちに、自発的に目標を設定しカラオケや手工芸にも参加す
るようになり活動の場が広がった。
【結果】活動を自由に選択す
る事で目的意識が芽生え自ら選択し参加する様になった。他者と
の交流を積極的に行う様になった。
【考察】何を行うか「選ぶ」事
によって主体的・自発的になった。目標を達成する事で自信にな
り、積極的に参加するようになったと考えられる。
【まとめ】活動
を変更して、利用者の自主性や積極性を引き出す事が出来た。今
後は他職種と連携し利用者の声を聴き、百歳堂のみならず地域へ
と活動を広げ、利用者に寄り添った自立支援を目指していきたい。
248
【はじめに】茨城県では、住民参加型の介護予防事業として「シル
バーリハビリ体操指導士養成事業」を行っている。平成17年に茨
城県立健康プラザ(以下、健康プラザ)にて事業が開始された。県
内44市町村すべてに、ボランティアであるシルバーリハビリ体操
指導士により組織された指導士会があり、その中に研修委員が置
かれている。今回、研修委員に対する研修会にて、リハビリ専門
職が講義を行う機会を得たので、その経験を報告する。
【研修委
員研修会】平成21年8月より、体操指導技術の向上を図る学習体
制の整備のため、各指導士会において学習会を管理・運営する研
修委員を選出している。研修委員に対し、年に1回の集合研修を
実施している。内容は、体操実技や他市町村についての情報交換
を通して学習会の在り方について考えるグループワーク等を行っ
ている。
【本年度の研修委員研修会の概要】研修会は4月3・6日の
2回に分けて行い、合計224名の参加であった。体操実技の講義に
おいて、理学療法士が、シルバーリハビリ体操と日常生活の動作
について関連性の説明を行った。終了後のアンケートでは「体操
を日常の生活に結びつけることは、とても大切だと思う」等の意
見がみられた。
【考察】今回、リハビリ専門職としてボランティア
の活動支援に関わる貴重な機会を得た。介護予防事業におけるボ
ランティアの学習支援にリハ専門職が関わることの有効性が示唆
された。
P28-4
P28-5
○飯田裕章(作業療法士)1),菅谷公美子1),秋山泰蔵1,2),
塚田優子1,2),伊藤 綾1),小室明子1),大田仁史1)
○菅原智裕(理学療法士),金子亮太郎,渡邉好孝
シルバーリハビリ体操指導士2級養成講習会におけ
る主観的経験に基づく意識の変化
3中学校区における体力測定・基本チェックリスト
の地域差の検討と介護予防自主グループとの関連性
の検証
1)茨城県立健康プラザ
2)医療法人社団筑波記念会
医療法人松田会 松田病院 リハビリテーション部
【目的】当院では仙台市泉区の3中学校区で地域高齢者を対象とし
た介護予防教室「いきいき元気アップ教室」の際に体力測定と厚
生労働省作成の基本チェックリストを用いている。結果より地域
差と3地域での介護予防自主グループ(自主グループ)の関連を検
証し、高齢化社会における地域での理学療法士の役割と機能を検
討することを目的とした。
【方法】平成26年度いきいき元気アップ教室での体力測定は握力・
Timed Up and Go Test・5m最大歩行テスト・開眼片脚立ちと
した。それらと基本チェックリストの結果における地区比較のた
め、Shapiro-Wilk検定によって正規性が得られた項目には二元配
置分散分析を、正規性の得られなかった項目にはKruskal Wallis
検定を行った。その後、市が提示している地域情報ファイル等か
ら得た各地域の情報を参照し、自主グループの有無と結果との検
証を行った。
【成績】運動自主グループは2地域には各1ヶ所あり、1地域には存
在しなかったが、測定項目に関してはいずれの結果でも有意な地
域差は認められなかった。
【結論】本研究では自主グループの有無にかかわらず測定項目の
結果に優位な地域差は認められなかったが、今後、地域高齢者の
健康を増進するためにはより一層の自主グループが必要であり、
来たる地域包括ケア社会で理学療法士が介護予防を通して健康を
啓発し、専門的な評価を行う必要性が示唆された。
【はじめに】茨城県は、住民参加型の介護予防事業として「シル
バーリハビリ体操指導士(以下指導士)養成講習会」を行ってい
る。指導士は1級・2級・3級で構成されており、2級指導士はボラ
ンティアとして活動する各地域の体操教室のリーダーとしての役
割を担っている。そのため2級養成講習会では、体操実技の指導
方法だけではなく、障害者の心理や体操教室の運営方法について
学習するカリキュラムとなっている。
【目的および方法】2級養成講習会の受講生を対象にアンケート調
査を実施し、講習会を受講したことによる主観的経験の経過をも
とに、地域でのボラティア活動への効果及び今後の課題について
整理することを目的とした。アンケートの内容は、体操の指導方
法と体操教室の運営についての重要度・遂行度・満足度を主観的
に4段階で評価する形式とした。実施時期は、講習会の開始時・
修了時・修了1ヶ月後とした。
【おわりに】2級講習会における体操指導を想定したロールプレイ
において、受講生自身が目標を設定し課題を見つけるための自己
チェックシートを導入した際には、回を重ねる毎に目標達成の満
足度が上がることが報告されている。今回は、講習会受講前後の
変化に加え、講習会を修了してから1ヶ月経過した時点での調査
を実施することにより、実際のボランティア活動への効果を検証
し、若干の考察を加えて報告する。
P29-1
P29-2
○松岡藍子(言語聴覚士)1),宮原るり子2),宮北康二2),大野 誠2),
高橋雅道2),小川隆弘2),三木俊一郎2),葛岡 桜2),渡辺典子1),
朴 文華1),櫻井卓郎1),成田善孝2),川井 章1)
○有澤志保(言語聴覚士)1),横畠史佳1),矢野和美1),石川裕治2)
1)国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍・リハビリテーション科
2)国立がん研究センター中央病院 脳脊髄腫瘍科
1)医療法人近森会 近森リハビリテーション病院 言語療法科
2)高知リハビリテーション学院 言語療法学科
脳腫瘍患者に対する当院の覚醒下手術の取り組み
失語症言語聴覚療法の工夫
−数字検査を用いた評価・訓練−
脳腫瘍などによって脳の一部が障害されると、運動麻痺・感覚障
害・人格変化・認知機能低下・言語障害・高次脳機能障害等様々
な障害が生じ、ADL・QOLに大きな影響を及ぼす。静脈麻酔薬プ
ロポフォールが1995年に発売されて以降、神経膠腫摘出に際して
覚醒下での術中脳機能マッピングが取り入れられるようになり、
脳腫瘍患者の機能維持のための覚醒下手術が諸施設に広まった。
今回、当院における言語聴覚士(以下ST)の覚醒下手術への取り組
みを紹介する。当院では従来、臨床心理士が脳脊髄腫瘍科医師と
共に2007年から覚醒下手術を行ってきた。2011年4月にSTが常
勤となった後は、手術前から理学療法士・作業療法士を含めたリ
ハビリテーション(以下リハ)科介入によって、脳腫瘍患者により
充実した周術期リハを提供できる体制となった。この中で、ST
は術前から言語機能を中心とした評価を行うと共に、患者とのラ
ポール形成、術中の課題作成・課題練習等行い、患者が出来る限
りリラックスした状態で手術に臨めるような働きかけを行ってい
る。術中言語野マッピングや腫瘍摘出の際には、術前作成した課
題や自由会話にて言語機能評価を行っている。術前から介入する
ことで、術後評価時はラポール形成済にてスムーズな介入が出来、
かつ術後出現した神経症状を見逃さずに迅速的確なリハを提供出
来る。今後の課題や展望を含めSTの立場から報告する。
【目的】数字検査は1〜10の数字を用い、聴理解・復唱・音読・書
字能力を調べる検査であり、標準失語症検査(以下、SLTA)の成
績と比較し、失語症の評価・訓練に活用している。今回、数字検
査を用い、重度感覚性失語症患者に対し行った訓練について若干
の考察を加え報告する。
【症例】症例は90歳代男性、心原性脳塞栓
症にて発症。ADLは歩行器歩行自立、RCPMは13/36点、KOHS
は例題より困難であった。言語面は理解面で単語レベルより低下
し、表出面は喚語困難、音韻性錯語・意味性錯語を認め、内容の
推測が必要な程度まで低下していた。
【方法】SLTA、数字検査の
成績を比較し、訓練目標および内容等の検討を行った。特に復唱
の成績で、SLTAでは0/10の正答であったが、数字検査は復唱の項
目で14/20正答と差があったため、復唱を中心に取り入れた。【結
果】再評価の結果、復唱に関してはSLTAでは5/10、数字検査では
16/20と向上を認めた。入院時は「わからん」と困難であったが、
再評価時では音は誤っているもののモーラ数は正答した課題や音
韻性錯語など誤り方に変化が見られた。その他、理解面や表出面
に関しても同様に向上を認めた。
【考察】重度感覚性失語は全モ
ダリティにて障害を呈するといわれ、本症例もSLTA上の全モダ
リティにて低下を示した。しかし、数字の操作能力に関しては言
語記号の操作能力に比べ、正答率に差を認める症例があり、能力
や予後を推察する情報となりうることがある。
249
P29-3
P29-4
○半田理瑛(言語聴覚士)
,小松山裕美
○呉 雅美(医師),宮本健太,安田拓斗,篠田 昭,原田奈つき,
高山麻有,中田沙希,大木健太郎
医療法人友愛会 盛岡友愛病院 リハビリテーション科
音羽リハビリテーション病院
ガムを用いた舌トレーニングによる口腔機能の改善
について 〜退院後の自主訓練方法としての有効性
の検討〜
視覚障害と聴覚障害をともなった患者への介入例
【はじめに】今回、脳梗塞発症し構音障害、嚥下障害を呈した症例
を担当した。退院後外来リハと並行しガムを用いた自主訓練実施
により、口腔機能が変化した経過を以下に報告する。
【症例】80歳代男性。脳梗塞発症しリハビリ実施。退院後ST外来
リハのみ継続。外来リハ開始時:顔面麻痺、舌下神経麻痺呈し
AMSD前舌拳上・奥舌拳上ともに評価点2。単音節反復1秒間で/
ta/4,6回/ka/5,3回で、
耐久性低下あり。談話時舌尖音の歪み著明。
MWST3点、水分誤嚥のリスクあり。
【方法】週2回外来リハ実施。実施期間3週間。自宅での自主訓練
としてガムを用いて1.舌と上前歯裏に挟み5秒間保持2.保持した
状態で唾液嚥下3.1の部位に張り付けたガムを舌尖でタッピング
の3点を各10回、1日2回実施して頂く。
【結果】AMSD前舌拳上・奥舌拳上ともに評価点3、単音節反復1
秒間で/ta/6,2回と舌尖機能の改善がみられた。家族へのVAS(伝
達度)は開始時の60点から80点となり、電話での伝達度も向上。
MWST4点ムセなく追加嚥下1回可能となった。
【考察】ガム使用にて口腔内でのタッピング位置が視覚的・味覚
的にフィードバック可能となり、また味覚が刺激される為自主訓
練継続が容易になったと考える。今回、舌の可動域は向上したが
発話の異常度は残存した。自主訓練と並行して話速度や構音方法
指導などを実施していく必要があると考える。
視覚と聴覚の重複障害者は、コミュニケーション手段が限定され
介入に難渋する。今回我々は介入により良好な結果を得た例を経
験したので報告する。
患者は91歳の男性。デイサービスを利用しながらの独居であった。
右眼は緑内障、左眼は老人性黄斑変性症、そして感音性難聴の既往
がある。顔判断ができず、周囲の雑音が強いと単語レベルの会話
がやっとであった。圧迫骨折で入院。入院時FIMは56点(運動40
認知16)ベッドサイドでの対座法簡易検査では右光覚、左眼は指数
弁で周辺視野は保たれていた。入院生活に慣れないための不安か
ら疼痛増強しやすいと思われた。環境調整をおこなった。物の位
置を勝手に変えず、復元性を重視した。行動を促すときは予め説
明する。場合によっては、手で誘導し確認してもらうなどの環境
の情報入力に心がけた。骨折部の疼痛の強さと慣れない環境、コ
ミュニケーションの困難さから、入院当初は臥床がちで心配顔で
あり、コミュニケーション困難であった。入院後1−2週間にて歩
行器歩行を獲得後、本人から積極的な発言がみられ歩行、ADL介
助量軽減のリハビリテーションが順調に進んだ。
黄斑変性症は、視力障害が重篤であっても周辺視野が保たれてお
り本例のように高いADLを維持回復することが可能である。視覚
障害を理解した環境設定や介入継続を回復期にてチームアプロー
チで行い、患者が本来の前向きな性質を発揮でき結果に結びつい
たと考えた。
P29-5
P29-6
○近藤奈央(作業療法士)
,渡邉 誠,奥山夕子,佐々木祥,
石橋美奈,岩田大輝,原田恵里子,園田 茂
○小林茉枝(作業療法士),渡邊宏樹
重度運動麻痺を有する脳卒中患者の言語機能障害と
運動麻痺機能改善との関係
筋萎縮性側索硬化症患者へのコミュニケーション機
器(視線入力装置)の導入
−訪問リハビリでの関わり−
藤田保健衛生大学 七栗サナトリウム
湘南藤沢徳洲会病院
【はじめに】脳卒中では後遺症として運動麻痺とともに認知機能
障害を有することが多い。その中で言語機能障害の頻度は高く、
リハビリテーションの阻害因子となりがちである。今回、言語障
害と運動麻痺改善との関係を検討したので報告する。
【対象】2004年9月1日から2015年9月30日に当院リハ病棟に入退
院したテント上一側性病変を有する初発脳卒中患者で、重篤な併
存症、再発等のアクシデント例を除外した2129名中、入院期間が
42日以上、中等度以上の半側空間無視を除外した1489名を対象
とした。
【方法】対象から入院時SIAS上肢近位(以下、K-m)
、及び上肢遠位
(以下、F-f)の0点、1点の症例を抽出し層別化した。各層を入院時
SIAS言語機能得点で全失語、運動性、感覚性、失語症なしの4群に
群分けし、各群の2週毎と退院時のK-m・F-f得点を比較検討した。
【結果および考察】K-mが0点層の6週時K-m得点は、全失語、感
覚性失語群が他の2群より有意に低かった。K-mの1点層の6週時
K-m得点は有意差がないが感覚性失語、全失語群が他2群より低
い傾向を示した。F-fの0,1点層の6週時F-f得点は有意差がないが、
失語症なし群が他3群より高い傾向を示した。近位の運動は、言
語理解が良好な運動性失語であれば、運動麻痺改善の阻害因子と
ならないが、遠位の運動となると言語障害そのものが運動麻痺改
善の阻害となる可能性が示唆された。
【はじめに】訪問リハビリで関わった筋萎縮性側索硬化症(以下
ALS)の患者にコミュニケーション機器(視線入力装置)の導入に
携わる機会があった。以下に視線入力装置の導入に関する問題点
や今後の課題について報告する。
【症例紹介】60歳代男性。2009年12月にALSと確定診断。2014年
3月から訪問リハビリとして介入。人工呼吸器使用。運動機能は
眼球運動可能、顔面運動可能、左手指屈曲可能でその他随意運動
困難。ADLはベッド上全介助。コミュニケーション手段は透明文
字盤、口語、相槌であった。なお、症例に本発表に関しての趣旨・
方法を説明、同意を得た。
【経過】前任者の引き継ぎで視線入力装置導入段階での介入開始と
なったが6か月程でメール交換(画像添付も可能)
、インターネッ
ト閲覧が可能となった。
【まとめ】機器を導入したことで家族以外とコミュニケーション
をとる機会が得られ、インターネット利用により自分の知りたい
情報を取得できるようになった。このことからQOLの向上が見
られたと考えられる。コミュニケーション機器の導入は、症例経
験が少ない場合、適切な機器・時期での導入は難しい。加えて機
器自体が高額なだけに慎重になり対応が遅れてしまうことが多
い。コミュニケーション機器は様々あるが導入に至るまで患者様
のニーズを明確にし、どの機器を導入するか検討することがOT
にとって需要な役目であると感じる症例であった。
250
P30-1
P30-2
○吉嶺綾乃(作業療法士)
,仲本裕香里
○木村 剛(理学療法士),久津輪真一,大迫卓朗,山口美香,
柳橋宏樹
大浜第一病院 リハビリテーション科
医療法人浩然会 指宿浩然会病院 リハビリテーション部 理学療法科
目標を共有することでモチベーションは上がる!!
〜生活行為向上マネジメントを実施し、行動変容で
きた症例〜
すべてのスタッフの戦力化に向けての取り組み〜当
院独自の回復期病棟リハビリパスを活用して〜
【はじめに】急性期医療において、
疾病の治癒を促進するとともに、
患者様の今後の生活を早期からイメージすることが重要である。
今回、荷重制限により歩行が困難で車椅子生活を余儀なくされた
症例に生活行為向上マネジメント(以下;MTDLP)にて目標を共有
したことで、症例、医療従事者のモチベーションが向上し、日常
生活活動(以下;ADL)が拡大した症例について報告する。【症例
紹介】交通外傷で両下肢を骨折、長期間非荷重制限があった50代
男性。既往に糖尿病、糖尿病性腎症、脳梗塞、人工透析あり。荷
重制限下で離床開始するも廃用や意欲低下が著明で、できること
も介助を求めていた。症例は、
「いずれ歩けるから今は何もしない、
歩いて家に帰る」と希望し、目標と行動が伴っていなかった。
【経
過】作業療法士はMTDLPで、
症例の望む目標への道筋を細分化し、
取り掛かりとしてトイレでの排泄を小目標とした。目標の細分化
と明確化により、離床の重要性を症例が見出すことができ、成功
体験を得る事で表情や言動、意欲に変化が見られた。自発的に活
動することで、医療従事者に介助を求める事が少なくなり、病棟
での生活範囲が拡大し、症例の行動変容が医療従事者のモチベー
ションを高め、病棟ADLが拡大することに奏功した。
【考察】モチ
ベーションは、目標の魅力×達成の可能性で高まると言われてい
る。MTDLPにて目標を共有し、活動の意義を明確にしたことが
行動変容に結びついたと考える。
【はじめに】当院では、回復期病棟への入棟直後から、自宅復帰を
目標とし全スタッフで個別的で質の高いリハビリテーションを提
供できるよう、独自のパスを作成し改良を加えてきた。現在それ
に従ってリハを進めることにより、一定以上の質の確保が可能と
なるなど、成果が見られたため報告する。
【取り組み】回復期病棟でリハビリを進める際に、パスを必ず使用
することとした。内容は、時系列で1)病前のADLや退院時のADL
目標等の基本情報、2)移乗動作等の主なADL、3)主治医への報告・
相談と主治医の指示、4)全スタッフで取り組む一ヶ月間のADL目
標とその達成状況、5)各種カンファレンスの記録となっている。
【まとめと考察】当院回復期病棟で、独自に作成したパスを作成・
活用した理由は、1)高齢の脳卒中や廃用の患者が多く、バリアン
スが生じやすい状況であり、2)リハビリテーションの内容や退院
までのマネージメントが、コメディカルのチームリーダーの力量
や経験年数等によりばらつきがみられ、一定の質を保つことが困
難であったからである。この改善を図るため、独自のパスを作成
し改良を加えながら使用した。これにより誰がチームリーダーと
なっても、最低限患者様に必要なリハビリテーションと、退院に
至るまでのマネージメントが提供可能となった。今後も更なる改
善を図っていきたい。
P30-3
P30-4
○喜多一馬(理学療法士)
,上原貴廣
○田中和宏(理学療法士),河村達也,芦田洋介,田辺 誠
フレーミング効果が患者のやる気へ及ぼす影響
当院回復期リハビリテーション病棟におけるFIMを
用いた自宅復帰因子の検討
−大腿骨頚部骨折に着目して−
北大阪警察病院 リハビリテーション技術科
医療法人社団松本会 松本病院
【はじめに】リハビリテーションスタッフは、患者の自主トレーニ
ングや運動療法をより効果的に行わせるため、患者のやる気を引
き出すことが必要である。患者のやる気は周囲の声掛けに影響
を受けることが報告されていることから、情報の表現方法が人の
意思決定を変化させるフレーミングと呼ばれる技術を、リハビリ
テーション場面で用いることで患者のやる気を引き出せる可能性
がある。今回、フレーミング効果が患者のやる気に及ぼす影響に
ついて調査したため報告する。
【方法】対象は当院入院中でアン
ケートに回答が出来る患者37名。アンケートはトイレ練習場面、
歩行練習場面、痛みを伴うリハビリ場面、の各場面にポジティブ
表現とネガティブ表現を設定したものを提示し、それぞれの声掛
けを受けた際に、やる気が出る、どちらともいえない、やる気を
失う、のいずれに該当するかを回答させた。
【結果】ポジティブ
表現では全場面において86%以上がやる気が出る、を選択した。 一方、ネガティブ表現では全場面において49%以下がやる気が出
る、を選択した。
【考察】結果より、患者のやる気を促すにはポジ
ティブ表現を用いた声掛けが効果的であることが示唆された。こ
れはポジティブ表現がポジティブな結果の達成を目指す場面で有
効であるとされ、患者においても歩行獲得や疼痛軽減などのポジ
ティブな結果の達成を想定した場面に対する質問であったため同
様の作用が得られたと考えられる。
251
【目的】大腿骨頚部骨折は代表的な疾患であるが、認知機能の低下
などで身体機能の改善が得られず、自宅復帰に難渋することも多
い。そこで今回Functional Independence Measures(以下FIM)
に着目し、自宅復帰に影響する要因を検討した。
【方法】2014年4月から2015年3月までに当院に転入した大腿骨頚
部骨折患者116名(男性28名、女性88名、平均年齢79.0±12.0歳)
を対象とした。方法は転帰先を自宅(以下自宅群)と施設(以下施
設群)とし、自宅群と施設群の入院時、入院1ヶ月後、退院時FIM
の合計点と各項目を分散分析にて比較した。また自宅群および施
設群を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った。有意水
準は5%未満とした。
【結果】自宅群と施設群の入院時FIMの比較は有意差を認めなかっ
たが、入院1ヶ月後FIMの比較では整容、清拭、更衣、トイレ動作、
排便管理、理解、社会的交流、問題解決、記憶、合計点において施
設群に比べ自宅群が有意に高値であった。退院時FIMの比較にお
いても入院1ヶ月FIMと同様の結果を得た。ロジスティック回帰
分析では退院時FIMでトイレ動作・更衣に有意なオッズ比を認め
た。
【考察】オッズ比は有意差を認めないが、FIMに有意差を認めるこ
とから病棟スタッフと連携し、日常生活活動動作の早期獲得と認
知機能の向上を図ることが自宅復帰に重要であると再認識した。
P30-5
P30-6
○道川圭介(理学療法士)
○浜田絵美(理学療法士)1),池田耕二2),山本秀美1),古家真優1),
須々木星衣子3),中瀬美穂4),池田秀一5)
介護負担とその要因に着目しチームアプローチを行
なったことで介護負担軽減をはかれた症例
慢性心不全患者1症例に対する生活管理という訪問
リハビリの役割−入退院をくり返さないために−
1)宝持会池田病院 訪問リハビリテーション事業所,2)大阪行岡医療大学
医療学部理学療法学科,3)宝持会ケアプランセンター,4)宝持会リハ・訪問
看護ステーション,5)宝持会池田病院 総合リハビリテーションセンター
医療法人社団双泉会 双泉会クリニックすみだ
【はじめに】利用者の在宅生活を考える上で介護者の存在は重要
であり、介護負担について把握することは重要である。今回、介
護負担とその要因に着目しチームアプローチを行なったことで介
護負担軽減をはかれた症例を経験したので報告する。
【症例】75歳、女性。大腸麻痺を発症し入院、約1年の入院後に自
宅退院となり訪問リハビリが開始となった。様々な問題により同
居する夫の介護負担感に増大がみられ、介護者のQOLも低下がみ
られる状態であった。
【経過】サービス担当者会議において介護負担軽減、活動量向上に
向けた目標を共有し、他職種や御家族に向けて環境整備や介助方
法の助言を行い実践してもらった。その後、社会的交流の機会を
増やすこと、夫が自由に使える時間を増やすことなど目的として
通所介護の利用を提案、検討を行い利用開始となり、そのことに
より介護負担感、QOLともに改善がみられた。継続してアプロー
チを行ないながら通所介護の利用回数を徐々に増やし、12ヶ月後
の評価においても介護負担感、QOLともに概ね維持されている状
態であった。
【まとめ】介護負担の程度を把握、ICFを用いて問題点を整理、分
析し、チームでそれを共有しアプローチを行ったことで効果的に
介護負担を軽減することができたと考える。介護負担に対して評
価、アプローチを行う際には、身体的な介護負担だけではなく環
境面等も含めて多面的に行っていく必要がある。
【目的】慢性心不全患者1症例に対し、生活管理という視点から訪
問リハビリを実践したので報告する。
【症例】症例は82歳女性、診断名は慢性心不全であった。現病歴は
慢性心不全が悪化したため入院となり、退院後、訪問リハビリが
開始となった。退院時の移動は屋内手すり、T字杖歩行であった
が、無駄な動きが多く息切れが認められていた。
【経過】心不全の悪化兆候を評価するために、食事、睡眠、排泄の
生活リズムを把握し、安静時、運動時のバイタル、体重、下腿周径
を経時的に記録した。介入直後は、生活リズムが乱れており、食
生活は塩分、水分の過剰摂取が目立ち、排尿回数も少なかった。
睡眠は浅く夜中に間食やテレビを見るようになり、起床時間と食
事時間は不規則であった。また、内服忘れも多々みられた。運動
時に喘鳴、頻脈、不整脈が認められ、体重は退院後2週間で2.4kg
増加した。訪問リハビリでは、疲労の軽減を目的に両手支持によ
る歩行を推奨し、家屋調整ではトイレまでの導線を確保した。生
活指導では間食を減らし、食事時間を規則正しくした。また、主
治医、ケアマネージャー、訪問看護、デイケアとも情報共有を密
に行った。その結果、間食は軽減し体重は減少、喘鳴も軽減した。
また情報共有により早期受診につながった。
【考察】慢性心不全患者の生活管理に視点をおき訪問リハビリを
実施したことで病状の悪化を予防しながら生活を維持することが
できた。
P31-1
P31-2
回復期リハ病棟で行う「ナイトレク」が睡眠・覚醒
に及ぼす効果
「昔の映画がみたい」〜医療療養病棟での「映画会」
の取り組みから〜
○多田眞理子(作業療法士),谷川みのり,飯田玲佳,清水香代,
吉田 希,田中健登,藤原今日子,宿谷直輝,八田道晴,
前川遼太,石黒 望
○示野裕嗣(介護福祉士・ヘルパー)1),中林美奈子2),桃井大貴1),
中村真実1),水落朋子1),宮原百合子1)
1)富山県高志リハビリテーション病院 看護部
2)富山大学 医学部 看護学科 地域看護学
医療法人恒仁会 近江温泉病院 総合リハビリテーションセンター
【はじめに】当院医療療養病棟は、病棟・リハビリスタッフ間で患
者さんに「豊かな生活を提供する」ことを目標にさまざまな取り
組みを実施し、その一つとして「映画会」を開催している。しか
し、本当に「豊かな生活」に繋がっているか曖昧であっため、今後
継続するにあたり、過去のアンケートから主観的満足度を調査(1)
し、任意の1回の上映の様子を観察評価(2)したので報告する。【調
査概要】(1)アンケート:昨年計9回の上映毎に、参加者に対し映
画会への満足度とコメントを聞き取った内容を振りかえった。(2)
観察評価:参加を希望された10名について、土屋ら1)の改変した
Lawtonの感情評価で上映中と日常の表情を点数化し比較した。
【調査結果】(1)約7割りが「良かった」と回答した。コメントでは、
内容や環境面について「時代劇が良かった」
「音が聴き取りにく
かった」等の意見があった。(2)日常と比較した結果、映画上映中
は高値を示した。
「歌を口ずさむ」
「拍手をする」なども観察され、
概ね関心の高さが伺えた。
【おわりに】殆どの対象者が「映画会」
に主観的に満足し、
「豊かな生活」の提供の一助となっているこ
とがわかった。しかし、内容や環境については検討の余地がある
ことがわかり、これらの点も踏まえつつ映画会を継続していきた
い。1)土屋景子、井上桂子:痴呆高齢者に対する主観的満足度の
評価方法の検討、川崎医療福祉学会誌Vol.12 No.2 2002
【目的】高齢入院患者の睡眠障害に対応するために、夜に行うアク
ティビティケア(以下ナイトレクリエーション:ナイトレクと略
す)を新規に試み、その効果を参加者の睡眠・覚醒パターンの変
化の面から評価した。
【方法】当院回復期リハ病棟に入院していた患者23名を対象に、睡
眠日誌から介入前・介入中の睡眠・覚醒パターンを把握した。睡
眠・覚醒パターンの指標は( 1)早期入眠(19時に寝ている状態)回
数( 2)夜間中途覚醒 (1時〜4時の間に起きている状態) 回数( 3)
早期覚醒(5時に起きている状態)回数( 4)1日あたりの総睡眠時間
の4つとした。ナイトレクは興味や関心を考慮して運動・音楽・
趣味プログラムを立案した。平日のみ日替わりで実施した。介入
前と介入中の睡眠・覚醒パターンを記録し各睡眠指標の変化を
paired-t検定により比較した。
【倫理的配慮】A病院の看護局倫理委員会の承認を得た。対象者、
家族には、同意書への記入にて了承を得た。
【結果】1.睡眠指標を比較したところ、介入前に比べて介入中では、
総睡眠時間で有意義な増加が認められた(P<0.05)。
2。paired-t検定においては有意義な結果は得られなかったが、夜
間中途覚醒や早期覚醒では、介入前よりも減少がみられた。
【まとめ】ナイトレクへの参加が回復期リハ病棟に入院する患者
の睡眠・覚醒パターンに望ましい影響を及ぼす可能性が示唆され
た。
252
P31-3
P31-4
○松本泰一(理学療法士)1),大井慶太1),小粥崇司1),友田淳雄1),
岡田壮市1,2),鉦谷知也1),竹島伸生2)
○塚田優子(その他)1,2),菅谷公美子1),飯田裕章1),秋山泰蔵1,2),
伊藤 綾1),小室明子1),大田仁史1)
1)医療法人珪山会 鵜飼病院 リハビリテーション科
2)鹿屋体育大学
1)茨城県立健康プラザ
2)医療法人社団筑波記念会
虚弱高齢者におけるTUGに影響する要因
シルバーリハビリ体操指導士3級養成講習会
〜応募者の動機と背景について〜
【目的】高齢者の転倒リスク評価は筋力に加えてバランス評価も
重視されているが、中でもTimed “Up and Go” test(以下、TUG)
は動的バランス指標として使用されている。今回、通所リハビリ
テーションを利用する虚弱高齢者を対象に機能評価を試み、TUG
に影響する要因について検討したので報告する。
【対象と方法】対
象は歩行が自立している24名(男4名、女20名、平均年齢78±6歳)。
機能評価はTUG、10m歩行、5回立ち上がり時間(以下、SS)、健側
および患側の片脚支持時間(以下、SL)とした。統計処理は、変数
間の関係を積率相関から検討し、TUGを従属変数、他の項目を独
立変数とする重回帰分析(変数増加法)を行った。
【結果】性、年
齢、身長、体重、BMIを制御変数として、他の項目間の偏相関係数
を求めたところ、TUGは10m歩行(r=0.87)
、速度(r=-0.82)
、ス
トライド長(身長比)
(r=-0.79)
、歩数(r=0.80)
、SL健側(r=-0.47)、
SL患側(r=-0.47)との有意な相関が認められた。一方、SSとの相
関は認められなかった。重回帰分析の結果から、ストライド長(身
。
【まとめ】TUGは他の指標と
長比)のみが選択された(r2=0.62)
も有意な相関が認められたが、重回帰分析からストライド長のみ
が予測変数として選ばれた。虚弱高齢者に対するリハビリテー
ションではバランス能力の向上も必要であるが、とりわけTUGの
改善にはストライド長の変化が影響するとみられ、動作の質的評
価が必要と思われた。
【はじめに】茨城県では,平成17年度から住民参加型の介護予防事
業として,シルバーリハビリ体操指導士(以下,指導士)養成事業
を茨城県立健康プラザで実施している。指導士は,1級・2級・3
級で構成され,指導士になるため最初に受講する講習会は,3級養
成講習会である。3級養成講習会は,全6日間の日程で,108の解
剖運動学の専門用語と92種類の体操を身につける。受講者の条
件は、茨城県に在住するおおむね60歳以上の人で,受講後に地域
でシルバーリハビリ体操のボランティア活動ができる常勤の職に
ついていない人となっている。
【目的・方法】受講する住民の特徴を検討した。3級養成講習会の
初日に実施している「経歴等調査票」のアンケートをもとに,シル
バーリハビリ体操指導士への応募動機,ボランティア活動の経験
の有無,福祉関係の資格の有無等を調べた。対象者は、平成26年
度3級養成講習会を受講した全指導士754人とした。
【おわりに】意欲のある住民・活動家とはどのような人か,その経
歴や背景を知ることで,指導士としての今後の活動に影響がある
かを考える基礎資料としたい。
P31-5
P32-1
○菅谷公美子(理学療法士)1),飯田裕章1),秋山泰蔵1,2),
塚田優子1,2),伊藤 綾1),小室明子1),大田仁史1)
○井上里英子(理学療法士),藤原正盛,夏目重厚,清水淳也,
堀川早苗
1)茨城県立健康プラザ
2)医療法人社団筑波記念会
吉田病院 附属脳血管研究所 リハビリテーション部
茨城県におけるシルバーリハビリ体操指導士養成事
業と体操普及事業の現状について
当院における療法士教育への取り組み
【目的】近年、療法士の急激な増加に伴い、若手療法士に対する人
材育成が課題となっている。対象者の多様なニーズに対応するた
め、主体性をもった人材の育成が必要であると考える。現在当院
で行っている人材育成についての取り組みを報告する。
【方法】当院はクリニカルラダー制度を導入している。ラダーは4
段階、各段階には到達目標を設定し、その評価は年度末に自己評価、
他者評価を実施している。並行して個人の年度内の目標の振り返
りと次年度の目標設定をチャレンジシートを用い行っている。
【結果】ラダーを導入することにより自己の良い点、修正すべき点
が明確となった。チャレンジシートでは個々の目標の具体的な内
容まで列挙したことから目標の達成、未達成が明確であった。未
達成の際には、その原因と今後の対応について検討を行った。次
年度の目標に関しては前年度の業務内容、目標の達成度などを参
考に設定を行った。
【考察】ラダーを用い評価を可視化することで自己の強み、弱みに
ついて把握することができ、より向上すべき点と改善すべき点が
明らかとなった。チャレンジシートでは自ら立てた目標に向け
て取り組み、修正し、結果を提示するといった一連の過程を経験
することで、主体性の一助となる人材の育成が可能になるのでは
ないかと考えた。当院において、クリニカルラダー制度、チャレ
ンジシートを用いた評価は療法士個々を育成していく上で有効な
ツールの一つであると考える。
【目的】茨城県では、平成17年度から住民参加型の介護予防事業と
して、シルバーリハビリ体操指導士(以下:指導士)養成事業を茨
城県立健康プラザ(以下:プラザ)で実施している。平成26年度
末までに指導士数は6,685名になり、指導士が行う体操教室数は
1,681箇所に増加した。今回、現状について紹介する。
【現状】指導士の内訳は、主として3級の養成に当たる1級指導士
137名、普及活動のリーダーの2級指導士2,173名、実践者の3級指
導士4,375名である。平成26年度は、地域にて指導士が実施する
体操教室数は1,681箇所、教室延開催数は35,012回であった。茨
城県全市町村にある体操指導士会では、定例会や学習会などを開
催し指導技術を磨いている。最近では,行政と連携して開催する
教室が増加し、シルバーリハビリ体操が各市町村の高齢者保健福
祉計画に組み入れられるようになっている。プラザでは、各指導
士会への研修等を実施し、新しい情報の伝達や市町村同士の交流
を深める機会を提供するなどフォローアップをしている。
【考察・結論】茨城県のシルバーリハビリ体操指導士養成事業は、
自助・互助・共助での介護予防と「住民が住民を育てる」事業と
して、団塊の世代が75歳以上になる超高齢社会に対応できる介護
予防事業システムであり、平成29年度までにシルバーリハビリ体
操指導士1万人の養成を目標としている。プラザでは、指導士の
活動がさらに活発化するよう支援を強化する必要がある。
253
P32-2
P32-3
○大塚 渉(理学療法士)1),緒方 孝2),泉 清徳2),井手 睦3)
○板倉大輔(理学療法士),阿部紀之,高橋由衣,佐藤春奈,
粕谷有実,鈴木 元,柴本千織,斉藤久美子,武内美佳,
伊藤拓己1),竹内正人2)
リハビリ専門職によるADL評価の標準化
〜 FIM評価の個人差の調査〜
地域貢献を目的とした”高校生向け”のリハビリテー
ション体験イベント −第1報−
1)社会医療法人雪の聖母会 聖マリアヘルスケアセンター リハビリテーション室
2)社会医療法人雪の聖母会 聖マリア病院 リハビリテーション室
3)社会医療法人雪の聖母会 聖マリアヘルスケアセンター
1)社会医療法人社団さつき会 袖ケ浦さつき台病院 身体リハビリテーション課
2)社会医療法人社団さつき会 総合広域リハケアセンター
【はじめに】機能的自立度評価法(以下FIM)は、信頼性は高いが採
点基準が細かいため評価者の力量により採点が異なる場合がある
と言われている。当院の地域では、地域連携パスにも取り入れら
れており、採点能力の標準化は必須である。そこで今回、当法人
にて採点能力を調査した。
【対象】法人内の理学療法士(以下PT)
と作業療法士(以下OT)の内、急性期病棟所属34名(PT:17名・
OT:17名、平均経験年数4.1±2.7年)回復期リハビリテーション
(以下回復期リハ) 病棟所属24名(PT:13名・OT:11名、平均経
験年数4.0±3.2年)を対象とした。
【方法】架空症例のADLを文章
化した演習問題をテスト形式で採点を依頼した。統計処理には
Spearmanの順位相関係数とMann‐Whitney検定を用い、統計学
的有意水準は危険率5%未満とした。本研究は当院倫理委員会の
規定に従い行った。
【結果】正解数は急性期病棟所属8.6±2.7問、
回復期リハ病棟所属8.5±3.1問、PT9.0±2.7問、OT8.0±2.9問で
あった。経験年数と正解率には正の相関を認めた(r=0.603、p
<0.01)。急性期病棟所属と回復期リハ病棟所属、PTとOTの正解
数に有意差は認められなかった。
【考察】所属や職種に有意差は認
めなかったが、経験年数と正解数に正の相関を認めた事から、経
験が浅いスタッフの採点能力を向上させて標準化を図る必要性が
示唆された。FIMは採点基準が細かいため定期的な勉強会や研修
会などの開催が望ましいと言える。
【目的】当法人の理念の1つにある、地域貢献の一環として近隣の
高校生に対しインターンシップを受入れ、その内容と今後の展開
について以下に報告する。
【方法、内容】対象は千葉県の高校に対
し書面にて案内を行い、参加希望のあった高校生20名とした。イ
ンターンシップの内容は当院の紹介、PT・OT・ST(以下、リハ専
門職)の仕事内容・体験、病棟見学を実施し、終了時にアンケート
調査を実施した。アンケート内容は1)当院の理解度、2)リハ専門
職の理解度をインターン実施前後で100%中何%であるかを主観
的に記載し、自由記載も設けた。3年生に関しては後日電話にて
進学先の聞き取り調査を行った。
【倫理的配慮】全ての対象者に
対し本内容の趣旨を説明し、同意を得た。またアンケートや撮影
した写真に関しては、研究やその他の院内教育以外では使用しな
いことを説明し、個人情報の保護に十分配慮した。
【結果】アンケー
ト集計した結果、1)は実施前24.4%、実施後86.1%、2)は実施前
28.3%、実施後79.4%であった。自由記載では「今後勉強するの
が楽しみになった」
「夢の実現の参考になった」
「やりがいがあっ
ていい仕事だなと思った」などの内容であった。3年生は6名中5
名がリハ養成校へ進学した。
【考察】インターンシップ実施前後で、
病院で働くリハ専門職の存在をより身近に感じてもらうことがで
きた。近隣地域との関係を持つ上で効果的な活動であると考える。
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P32-5
○瀬底正仁(理学療法士)
,鈴木綾香,島村耕介
○山口誉之(介護支援専門員),鮫ヶ井保典,日馬勝夫,北村栄治,
殿村陽子,島村耕介
西横浜国際総合病院
西横浜国際総合病院 ケアフレンズ横浜
当院リハビリテーション部新採用者研修の取組み
当院送迎事業における教育の取り組み
【はじめに】当院リハビリテーション部では、管理者の経験則に委
ねた人材育成を行ってきたが、新採用者の増加や就業後の効果的
な学習の継続などのため、研修の見直しが求められた。今回は、
新採用者研修プログラムを再考し実施した。概要と課題について
報告する。
【研修の概要】研修の目的は、業務にあたっての必要事項の理解と
最低限のスキル獲得、リアリティギャップの解消、自己評価に基
づいた目標設定、臨床教育の風土づくりとした。対象は、8名(理
学療法士5・作業療法士2・言語聴覚士1、内既卒者4名)であった。
研修内容は、1.オリエンテーション(研修の全体像、組織概要、On
the Job Training:以下OJT) 2.座学による部門ポリシー・ルー
ルの理解・教育研修の構え・専門職としての立脚の確認 3.体験
型学習(基本動作・移乗・歩行の介助、シーティングなど) 4.グ
ループワーク 5.OJTで構成した。期間は、病院全体の集合研修
5日間の後、7日間の集合研修、配属先での30日程度のOJTとした。
特に初期は情意領域に重きを置き、その上で認知・精神運動領域
へと展開した。
【まとめと課題】上記プロセスにより部門における人材育成をは
じめとして、部門運営上の課題も顕在化した。今後は、新採用だ
けでなく、部門全体の中・長期研修計画を立案・修正し、体系化
を図りたい。
【はじめに】当院は、188床の急性期病院であり、地域における様々
な医療・介護サービスを提供している。対象者は高齢化・重度化、
立地条件などから病院へのアクセス支援が必要であり、当事業で
はその送迎を担っている。その際、特有の配慮が求められ、ドラ
イバーの教育・管理が重要と考えられる。安全・快適な送迎の強
化を目的として、その基準や内容を再考したので報告する。
【事業内容および課題】介護保険における通院等乗降介助の他、人
工透析センター、通所リハビリテーション、検査のための施設間
送迎、介護タクシーなどの幅広い業務を14名(内8名専任)のスタッ
フで担っている。教育・管理は、業務指針以外、管理者の経験
則に重きをおいてきたが、ナレッジマネジメントが課題であり、
SECIモデルで取り組んだ。
【現状】教育プログラムは、認知・情意・精神運動の領域より構成し、
病院全体研修(5日間)の後、事業全体のオリエンテーション(400
分)、3段階の教習(600分)、チェックリストを用いての検定および
フィードバック、フォローアップの手順で取り組んだ。
【まとめ】運行理念や知識、技術が表出化されたことでスタッフ全
体での指導体系が築かれつつあると考えられる。既に上記プログ
ラムで4名のスタッフを育成したが、効果は検証中である。継続
して取り組み、精度を増し、一層安全・快適な送迎サービスの提
供に努めたい。
254
P32-6
P33-1
○小澤多賀子(健康運動指導士)1,2),田中喜代次3),小室明子1),
大田仁史1)
○山崎吉之(理学療法士)
介護予防の高齢ボランティア「シルバーリハビリ体
操指導士」の地域資源としての有益性
右片麻痺と重度失語症を呈した症例に対する普通高
校への就学支援を経験して
〜共生社会の実現に向けて〜
1)茨城県立健康プラザ
2)株式会社THF
3)筑波大学 体育系
宇和島徳洲会病院 リハビリテーション科
【はじめに】当院回復期病棟にて、本人希望の下、普通高校就学が
可能となった左脳動静脈奇形再々出血による右片麻痺、重度失語
症の男子生徒を経験した。障害児の普通学校就学についての先行
研究では、設備面やいじめ、単位取得困難などから不登校や転校
を余儀なくされるケースが多く、心身共に過酷な状況であること
が報告されている。本症例においてもこれらの問題を回避する為、
就学前後の学校訪問を実施した。今回、その結果と今後の課題に
ついて報告する。【症例紹介及び経過】15歳男子。H26年9月〜H
27年1月回復期リハ施行。会話YES-NO中心。時に単語表出可。
読み書き困難。利き手交換、装具装着歩行にてADL自立まで改善。
就学前訪問後、手すり設置や特別支援員配置などの合理的配慮が
実施。就学後訪問では、当初の予想よりも単位取得への配慮や生
徒の理解と協力を得ていることが分かった。【今後の課題】コミュ
ニケーション能力向上、学校との連携をより深める。【考察】今後、
本症例においてはカンファレンスや勉強会を定期的に開催し、学
校との連携を図り、具体的な問題点の共有や改善策提案を継続し
たい。また、来年度の障害者差別解消法施行など、法整備は徐々
に進んでいるが、障害児が積極的に参加貢献できる共生社会実現
にはまだ大きな壁がある。障害児が学校生活を経て、よりよい社
会生活が営めるよう、医療従事者として共生社会の実現に貢献し
ていきたい。
【目的】茨城県では平成17年度からシルバーリハビリ体操指導士
養成事業を開始し、高齢のボランティアによる主体的な体操普及
を通して、住民が住民の介護予防を支える地域づくりを展開して
いる。本研究の目的は指導士養成事業の推進を図るために、指導
士の地域資源としての有益性について、体操教室参加者、地域、
指導士自身の視点から検討することとした。
【方法】研究方法は、1)体操教室へ参加する地域在住高齢者を対象
に質問紙調査をおこない、体操の効果を確認する、2)指導士によ
る体操普及活動と地域における軽度の要介護認定状況との関連性
を検討する、3)指導士の健康体力水準を活力年齢から評価するこ
ととした。
【結果】1)指導士による体操普及は地域住民が取り組みやすく、生
活機能の保持に有効で、長期にわたり安全に継続でき、介護予防
効果が期待できる、2)積極的な体操普及活動は、特に軽度要介護
認定者の増加を抑制しうる、3)指導士の健康体力水準は高く、地
域社会での安定的活躍が期待できることが明らかになった。
【考察】指導士による活動は、体操教室参加者、地域、そして指導
士自身の介護予防へ効果があり、介護予防の地域資源として希求
される高齢ボランティアの有益性を確認することができた。
P33-2
P33-3
○藤田聡行(理学療法士)1),石橋尚基1),森佳寿代1),小池靖子1),
若杉葉子2),戸原 玄2)
○岡持利亘(理学療法士)
千葉県八千代市における摂食嚥下障害支援体制の構
築と地域連携について
地域包括ケアシステム構築に向けた地域リハビリ
テーション支援体制づくりー埼玉県地域リハ支援体
制整備事業の取り組みー
1)医療法人社団心和会 新八千代病院 リハビリテーション科
2)東京医科歯科大学 高齢者歯科学分野
医療法人真正会 霞ヶ関南病院
【はじめに】埼玉県では、地域包括ケアシステムの構築に向けた支
援体制整備を平成25年より開始した。各保健医療圏域で、地域包
括支援センターや市町村等の事業にリハビリテーション専門職
(以下、リハ職)が協力している。
【事業の概要】平成25年9月、埼
玉県地域リハ推進協議会を設置。協議会は、医師会・歯科医師会・
理学療法士会・作業療法士会・言語聴覚士会・市町村保健師協議
会・介護支援専門員協会・地域包括支援センター・相談支援専門
員協会・県(福祉部・保健医療部・総合リハセンター)で構成され、
リハ資源調査、ネットワークづくり、リハ職を派遣するシステム
構築を進めた。平成26年度、当事業が県予算化され、地域リハビ
リテーション・ケア サポートセンターを県内5ヶ所指定し、各
市町村の協力医療機関等と協働で事業を開始した。【事業の結果
と今後】平成26年度、介護予防ボランティア養成講座65件、介護
予防教室175件、地域ケア会議43件、その他の会義や研修会講師
等61件で、計344件に545名のリハ職が参加。5圏域での当事業の
説明・交流会に489名の関係者が参加。各市町村でリハ職を派遣
する協力医療機関等106施設を県が指定。派遣するリハ職の研修
会を2回開催、合計548名が参加。平成27年度、さらに多くの市町
村からの派遣依頼を受け、地域ケア会義や介護予防事業への協力
体制が進んでいる。今後は、派遣するリハ職の実務能力向上も必
要と実感している。
摂食嚥下障害は、栄養管理だけでなくQOLにも大きく関わるた
め、長期的なフォローアップの必要なケースが多くみられるが、
地域での摂食嚥下障害に対する医療資源は十分とは言えないのが
現状である。
千葉県八千代市では歯科医師が訪問による摂食嚥下障害の診療を
行っており、かかりつけ医、訪問看護師、訪問リハビリ、リハビリ
病院等との診療ネットワークを構築している。摂食嚥下障害を診
療する歯科医師は、八千代市歯科医師会の主催する「摂食嚥下協
力医育成セミナー」を修了した者が従事している。セミナーのプ
ログラム構成は、講義形式の講座に加え嚥下内視鏡(VE)の操作
法、食事介助法等の演習講座、リハビリ病院での実地研修となっ
ている。嚥下造影検査(VF)を行う場合や特別な医療機器の必要
な治療・訓練を行う場合には、リハビリ病院に外来受診し実施す
る体制となっている。月1回大学病院の摂食嚥下障害専門の歯科
医師を交えて症例検討会を行い、専門家の助言を受けている。
地域での診療ネットワークを構築するにあたり、H20年7月から
摂食嚥下障害の啓発を目的とした医療・介護職対象の講習会を
計4回、歯科医師対象の講演会を計4回開催した。一般市民向けに
も「摂食嚥下って何だろう?」というテーマで講演会を開催した。
H22年9月からは「八千代市摂食嚥下リハビリテーション研究会」
が発足し、勉強会を重ねる中で関連職種が顔の見える関係となっ
た。
255
P33-4
P33-5
○榎本雪絵(理学療法士)1),中村真理2),新井尚子2),萩原直美2)
○横堀将人(理学療法士),蓼沼夏生,干場竜志
1)杏林大学 保健学部 理学療法学科
2)八王子市地域包括支援センター子安
杉並リハビリテーション病院
自主運営化した健康教室のその後の実施状況と参加
者状況
地域包括ケアシステムに繋げる、当院リハビリテー
ション科の取り組み〜健康教室を通して〜
【目的】回復期病院として地域完結型医療の一翼を担うべく、地域
包括支援センターと連携を強化し、地域住民が健康的な生活を送
れることを目的とした。【方法・経過】2014年4月上旬にリハビリ
テーション科で健康教室チームを編成。同年6月上旬、近隣の地
域包括支援センターへ協力を要請、打ち合わせを行い方向性が一
致したので、同年7月上旬より健康教室を共同開催することが決
定した。開催に当ってアンケート集計、内容の見直し、質の向上
を図った。
【実績】主催者:地域包括支援センター、当院スタッフ
開催場所:公民館や集会所など開催回数:15回対象者:杉並区
民40〜80歳代の男女参加者:165名活動内容:ミニ測定会、腰痛
予防、嚥下体操、当院独自の健康体操の考案・実施、テーマに沿っ
た講義など。アンケート内容:年代、内容、参加理由、要望など【ま
とめ】回復期病院としての健康増進や予防に関する専門的な知識
と、地域包括支援センターが持っていた健康教室の場が繋がり、
共同して地域住民のニーズに応えられた。さらに地域住民が健康
に対し高い意欲を持っている事がわかった。今後は健康教室参加
前後での身体の変化を示していくこと、また複数回の参加者にお
いては生活の変化を追っていくことで、内容を見直し、質の向上
を図る必要がある。将来的には、参加者から健康教室を主体的に
運営できる方を見つけ出しサポートしていくことで、地域完結型
の医療に貢献していきたい。
【はじめに】地域包括ケアシステムが推進され、地域住民の一次、
二次予防を担う地域づくりが各地で実践されている。この地域づ
くりにおいては、地域住民の自主的な活動を促進・活性化するこ
と、さらにその活動を継続させることが重要と思われる。前回、
地域住民が自主運営可能になるまでの1年間の健康教室実践内容
を報告した。今回は自主運営化した健康教室の実施状況とフォ
ローアップ、参加者状況について報告する。
【教室の概要とフォローアップ】自主運営化後、月2回の開催頻度
は変更なく健康教室開催を継続できていた。血圧測定などは自己
管理とし、「みんなの体操」および参加者と共に作成したDVDを
リーダーが用いて、自主運営後も同様のプログラムを実施できて
いた。自主運営化3および9カ月後にフォローアップとして生活
状況の確認やDVDの修正などを行った。また、体力測定を自主運
営化6か月後に実施した。
【参加者状況】介護認定を受けてデイサービス利用に変更した者や
体調不良などにより参加困難になった者もいるが、新入会者もお
り、12-14名が継続して参加していた。自主運営開始時と6か月後
の体力測定の実施が可能であった9名においては、Timed-up&gotestなどすべての項目で有意差を認めず、一方で5m至適歩行速度
では改善傾向を示し(wilcoxonの符号付順位検定、p<.05)
、身体
機能が維持できていると思われた。
P33-6
P34-1
○清水涼子(理学療法士)
,細田 誠,大木はるみ
○角田美奈(言語聴覚士),萩原由香,馬場 恵,保坂敏男
十和田市立中央病院
社会医療法人加納岩 山梨リハビリテーション病院
歯科標榜のない病院歯科衛生士による地域での口腔
ケア普及の取り組み〜いきいきと暮らせる地域づく
りに向けて〜
当院回復期リハビリテーション病棟における訓練拒
否への対応 −第1報 言語訓練拒否の状況−
【はじめに】当院では平成24年4月より厚生労働省委託在宅医療連
携拠点事業を開始し、2025年に向けて地域での口腔ケア・嚥下
リハの普及を含めた在宅医療推進を目指した。地域リハビリ広域
支援センター・がん診療連携拠点病院などを担う基幹病院であり
ながら、歯科標榜のない病院における歯科衛生士の口腔ケアの普
及の取り組みを報告する。
【事業目的】患者の高齢化に伴う誤嚥
性肺炎への予防や、QOLの視点からの口腔機能向上のため口腔ケ
アが必要不可欠となっている。医療資源が少ない地方にある当院
には歯科がなく、これまでは十分な歯科領域のケアができていな
かったため地域の歯科医師会協力の下、平成24年度より歯科衛生
士2名を採用して口腔ケア普及の取り組みを行うこととした。
【事
業内容】歯科衛生士が全病棟での専門的な口腔ケアや指導、歯科
治療にかかわる評価などを行った。入院中から在宅移行後も継続
した口腔ケアができるよう患者、家族へ説明指導、地域の歯科医
師との連携調整を実施した。また地域の医療従事者合同の多職種
連携会議・研修会(口腔ケア・嚥下リハ、在宅リハ)の開催や地域
の施設への口腔ケア実技指導の出前講座などを行った。
【まとめ】
歯科衛生士のこうした取り組みにより院内での口腔ケアの認識が
深まった。また地域の医療従事者が相互の専門性を理解し顔の見
える関係性を築き、地域全体の口腔ケアを含めた在宅医療に関す
る知識の向上が図られたと考えられる。
256
【はじめに】今回、言語訓練への拒否の実態、言語聴覚士(以下ST)
の対応、経過について調査を行ったので報告する。
【対象と方法】平成26年4月から27年3月に当院回復期リハビリ
テーション病棟に入院し、言語訓練を行った患者191名。言語訓
練への拒否の有無、拒否の内容、STの対応、経過について調査を
行った。
【結果】拒否がみられたのは38名(男性24名、女性14名、平均年齢
72.6歳)であった。そのうち、ST以外の訓練にも拒否がみられた
ケースは20名であった。言語障害の種類は、失語症6名、運動障
害性構音障害6名、高次脳機能障害に伴うコミュニケーション障
害(以下Com障害)26名であった。拒否の対象は「訓練全体」が21
名、
「検査」が2名、
「課題」が10名であった。STの対応は、検査の
非実施、訓練内容の変更、他職種への相談、言語訓練の終了、訓練
時間の変更・分割・短縮であった。経過では、拒否に「変化あり」
が17名、「変化なし」が21名であった。
【考察】言語訓練対象者の約2割に拒否がみられ、言語障害の種類
では、高次脳機能障害に伴うCom障害が最も多く、自分の状況を
認識していないことも拒否の要因の一つと考えられた。経過では、
言語訓練終了となった患者がいた一方で、半数近くの患者で変化
がみられ、言語訓練の受け入れが可能となった。STが訓練内容を
工夫したり、他職種と相談しながら対応することが重要と思われ
た。
P34-2
P34-3
○萩原由香(言語聴覚士)
,角田美奈,馬場 恵,保坂敏男
○古屋佳美(歯科衛生士),佐野千春,櫻井美紀,角田美奈,
保坂敏男,佐藤吉沖
社会医療法人加納岩 山梨リハビリテーション病院
社会医療法人加納岩 山梨リハビリテーション病院
当院回復期リハビリテーション病棟における訓練拒
否への対応 −第2報 言語聴覚士の対応−
当院回復期リハビリテーション病棟における訓練拒
否への対応 −第3報 歯科衛生士の対応−
【はじめに】言語障害があり、コミュニケーションに支障を来たし
ているにもかかわらず、言語訓練に対し、拒否がみられる場合が
ある。入院時、拒否がみられた症例に対する対応、経過について
報告する。【症例】60歳代男性。右利き。X年9月、脳出血(左被
殻)を発症。急性期病院にて加療後、当院入院。右片麻痺、構音
障害、失語症、高次脳機能障害、摂食・嚥下障害。
【経過】
(入院時
評価)声量低下、歪音のため、発話は聞き取りにくく、頻回の聞き
返しが必要であった。初回検査時より、質問に対して「わからん」
と返答し、検査を拒否する様子がみられた。言語聴覚士(以下ST)
は訓練回数を2回に分け、訓練内容を会話中心に変更したり、拒否
がみられた際は訓練を中止したりしながら関わった。約3週間後、
歩行訓練開始となった頃より、笑顔がみられるようになり、発話
が増えた。1ヵ月後、話しにくさを訴え、訓練に意欲的となり、訓
練課題を行うことが可能となった。その後、他患と病棟内で積極
的に話す様子がみられた。さらに、訓練に行こうとしない他患を
励ます様子がみられるようになり、5ヶ月後自宅に退院となった。
(退院時評価)声量低下、歪音は残存していたが、発話でのやりと
りが可能となった。
【まとめ】入院時は言語訓練に対し、拒否がみ
られたが、STは訓練時間や内容に工夫しながら訓練を継続した。
その結果、言語障害に改善がみられ、また他患とのやりとりも増
加した。
【はじめに】当院では歯科衛生士(以下DH)が歯科医、主治医の指
示の下、摂食嚥下障害のある患者の口腔ケアを行っている。口腔
ケアに拒否がみられた症例への対応、経過について報告する。【症
例1】80歳代女性。脳出血。発症から1.5ヵ月後、当院入院。右片
麻痺、失語症、摂食・嚥下障害(経鼻経管栄養)
。口腔ケアの際、
口唇を強く閉鎖する、顔を背ける、DHの手を払いのける様子が
みられた。DHは脱感作と、声かけを行いながら歯ブラシを口腔
内に入れ、舌や歯に触れることを継続した。次第に、促しにより
開口がみられるようになり、舌ストレッチや舌苔の除去が可能と
なった。
【症例2】70歳代女性。脳出血。発症から1ヵ月後、当院
入院。右片麻痺、高次脳機能障害、摂食・嚥下障害(経鼻経管栄養)。
口腔ケアの際、多弁で落ち着きがなく、DHの手を払いのける様子
がみられ、口腔内に少し触れただけで、強い催吐反射がみられた。
DHは常に安心させるような声かけを行いながら反射の弱い部分
のケアから始め、少しずつケアの範囲を拡大した。また、車椅子
乗車にて洗面台の前で行うようにした。催吐反射は残存していた
ものの、次第に含嗽が可能となり、痰や溜まった唾液を吐き出す
ことが可能となった。
【まとめ】口腔ケアに拒否がみられる患者
に対して、DHが患者に合わせて工夫しながら口腔ケアを継続す
ることで、拒否が減り、口腔ケアの受け入れが可能となったと思
われた。
P34-4
P34-5
○牧野泰典(その他)
,田中雅也,笠井奈津美,占部奈緒美
○田中なつき(作業療法士)1),宿利原美菜2),岡本拓朗2)
特定医療法人茜会 昭和病院 回復期リハビリテーション病棟
1)社会医療法人青洲会 福岡青洲会病院
2)社会医療法人青洲会 介護老人保健施設 青洲の里
アロマテラピーとハンドマッサージ併用による良眠
効果の検証
〜良眠によるリハビリの促進を目的として〜
アロマテラピーは認知症の夜間不眠を改善する手段
となりうる
【目的】本研究は、アロマテラピーとハンドマッサージにより対象
者に良眠を促す。そしてそれに伴うリハビリの促進とADLの向上
がどの程度、相関関係があるのかを知ることを目的とする。
【方法】2015年に入院した患者3名を対象に就寝前の19時〜19時
半にかけて、
アロマテラピーとハンドマッサージを施術してゆく。 使用するアロマは、良眠効果があるとされるラベンダーを使用、
ハンドマッサージはアロマオイルを用いて、肘から指先にかけて
行い施術後は不快感を残さぬように、清拭タオルで手に付いてい
るオイルを拭きとる。 患者には施術後、就寝してもらい夜間帯
の睡眠状態を観察し記録する。
【結果】対象の患者3人とも夜間の良眠が確認された。また危険行
動もしくは不穏や妄言が減少した。介入前はオムツを自分で外し、
失禁を繰り返していた患者も、介入後は失禁が減少した。日中の
リハビリにもリハビリスタッフより患者本人の意欲の向上がみら
れるとの意見があった。家族の声としては、表情が豊かになった、
笑顔が以前よりも見られるなどがある。
【考察】ハンドマッサージとアロマテラピーによって脳内でメラ
トニンの生成が行われ、精神が安定した事により、対象者は良眠
出来ていたと考えられる。今後はアロマの種類による効果の違い
を把握することで、より効果を上げていけると考える。
257
【はじめに】夜間不眠を合併した認知症者への介護者負担は大き
な問題である。アロマテラピーは夜間不眠に効果的と報告されて
いるが、認知症の不眠に関する具体的なデータは示されていない。
そこで今回、夜間不眠を有する認知症へのアロマテラピーの効果
を検証した。
【対象と方法】認知症で夜間不眠の入居者5名(男性1名、女性5名、
平均年齢 89.4 ± 5.85歳)を対象とした。方法はコントロール
期間(C期)、アロマテラピー実施期間(A期)、ウォッシュアウト
期間(W期)を各4週間設け、各期間の1週目と4週目にFitbit(ワイ
ヤレス型睡眠測定機器)にて体動時間を測定し、それを不眠の指
標とした。また同時に認知面に関する2種類の評価を上記期間中
に行った。尚、A期では朝と夜で異なる種類の精油を用い芳香浴
を行った。
【結果】C期とA期では5例中4例に不眠の改善がみられた。またC
期とW期との比較では、全例において改善がみられ、統計学的な
有意差を認めた(P = 0.0295)
。しかしながら、認知面に関してC
期、A期、W期間で改善はみられなかった。
【考察とまとめ】アロマテラピーによって認知症者にも不眠の改善
がみられ、アロマテラピー実施終了後、W期でも効果が持続した。
これは精油成分中に含まれる鎮静作用が昼夜リズムを整え、効果
持続に繋がったと考えられる。今後在宅生活での介護負担を減ら
す方法の一つとして提案していきたい。
P34-6
P35-1
○中薗貴志(理学療法士)
○中江暁也(作業療法士)1),藤井弘通2)
看介護職員の腰痛予防プログラム
退院後訪問は活動範囲の予測に有効であるかの研究
〜 Life-Space Assessment(LSA)を用いた実数値と
予測値の比較〜
社会医療法人青洲会 青洲会クリニック
1)一般社団法人巨樹の会 下関リハビリテーション病院
2)小倉リハビリテーション学院
法人内の看介護職を対象に腰痛予防プログラムを実施し、腰痛予
防が可能な職場作りを目指した。期間は平成26年4月〜9月。対
象28名、前後比較16名。腰痛発生機序、姿勢指導、移乗介助動作
指導実施。運動プログラム配布し運動習慣定着を図った。評価は
初期、最終二回。筋力評価(起立テスト)
、QOL評価(SF-36)
、痛
みとモチベーションをVAS測定。結果の分析は統計ソフトSPSS
for windowsを用いた。前後有意差(wilcoxonの順位符号付き和
検定)が認められたもの(p<0.05)は起立テストとSF-36の下位
尺度「活力(VT)」
。相関分析(spearmanの相関分析)において
相関が認められたもの(r>0.5)は「痛みの程度(VAS)初期」と
SF-36下位尺度「全体的健康感(GH)初期、最終」との間に負の相
関、「活力(VT)」と「起立テスト(最終)」
「体の痛み(BP)最終」
の間に正の相関。起立テストの結果とQOL評価の一部である「活
力(VT)」の向上が認められた。また相関分析にて、痛みが強い
ほど全体的健康感、日常役割機能が妨げられていること、
「活力
(VT)」が高い者ほど起立テストの結果が良く、体の痛みが少な
いということがわかった。今回この「活力」を向上させることが
出来たことは一つの成果として捉えられるものである。今後、よ
り簡便で効果的な運動プログラム作成と説明動画作成、効果を実
感してもらうための自己評価方法検討、実際の業務場面での動作
指導が必要であることが確認出来た。
【目的】退院後自宅生活での活動範囲は予測を超えて活動する事
例や予測よりも活動しない事例が存在する。そこで活動範囲の予
測値を超える誤差がどの程度生じているのかをLSAを用いて明ら
かにした。また実際に退院後訪問する事で、入院中のリハビリが
有効であったかの検証ができるのではないかと考えた。今回退院
後訪問を実施する前と実施した後で、LSAの予測値と実数値がど
のように変化したのかを統計比較し退院後訪問の有効性について
検証した。
【方法】
(方法1)実数値:当院を退院し平成27年5月に
外来・訪問リハビリを利用している83名のLSAを測定。予測値:
対象83名の元入院リハビリ担当がLSA予測値を記載。実数値と
予測値の差を利用月数・担当経験年数・情報の有無で統計比較し
た。
(方法2)さらに退院後訪問を実施した群と実施しなかった群
でLSA実数値と予測値の差を統計比較した。【結果】全ての項目で
有意差を認めた。
(p<0.05)利用月数が長い程実数値と予測値の
差が大きい。経験年数が低い程予測値は低い。退院後訪問を実施
すれば実数値と予測値の差は小さい。
【考察】退院後訪問を実施
することで実際の生活を見ることができ、予測していた生活が送
れているのかの確認が出来る。さらにその後治療回顧の時間をと
り、実際の入院中のリハビリの経過やゴール設定に不備がなかっ
たかの確認を行う事で、さらにリハビリスタッフの経験値になる
のではないかと考えた。
P35-2
P35-3
○吉川 歩(作業療法士)
,井浦由基,前田香苗,小松弘典,
曽我知保,横山大輔,佐藤健三
○佐瀬正廣(理学療法士),武田真也,岩下崇博
訪問リハビリテーションちかもり
医療法人社団永研会 永研会クリニック リハビリテーション科
訪問リハビリテーションにおける社会参加支援の一
考察 〜重度高齢障害者の一事例通じて〜
訪問リハビリテーションにおける目標の設定と訓練
内容の傾向
【はじめに】今回、重度高齢障害者の訪問リハビリテーション(以
下、訪問リハ)において活動範囲の拡大に繋がった事例を基に、
訪問リハの社会参加に対する支援・役割について考察する。
【症
例紹介】60歳代男性、脳出血、左片麻痺、高次脳機能障害、脳卒中
後うつあり。ADL全介助。要介護4、通所介護、訪問リハを利用。
退院1ヶ月後のLSAは14点で活動範囲は寝室と週5回の通所介護
利用での外出。
【経過】回復期退院翌日より訪問リハ介入。在宅生
活の安定化と平行し、3つの課題に向け支援。1.運動機会や対人
交流の場:立位・歩行機会、趣味活動が出来ることが特色の通所
介護を紹介。2.気軽に妻氏と外出できる方法:物的環境調整と家
族介助指導、ボランティア団体や公共交通の利用方法について情
報提供を実施。3.社会参加のきっかけ:障害者スポーツ教室への
参加支援を実施。
【結果】退院1年後のLSAは22.5点。近隣は車い
す介助で、遠方は介護タクシーや有償ボランティアを利用しての
外出が可能となり県外へ1泊2日旅行にも行くことが出来た。ま
た、障害者スポーツ教室への入会にも至った。
【考察】訪問リハに
おける社会参加支援は、利用者の可能性を見出し、主体性を引き
出す関わりやきっかけ作りを行う事が重要と思われる。また、多
様な社会資源の情報収集と連携、実際場面での支援が大切であり、
本事例の楽しみ・やりがいのある生活再建の一助になったのでは
ないかと考える。
【目的】当院の訪問リハビリテーションが利用者様の「地域社会へ
の参加」を促す事が行われているか把握するため、目標を参加レ
ベルでの設定に出来ているのか、またプログラムに関して具体的
な参加レベルでの介入が行われているかを調査した。
【方法】当
院の訪問リハビリ利用者様117名(男性40名、女性77名、平均年
齢80歳)を対象に平成27年3月分のリハビリテーション報告書か
ら目標、プログラム、介護度、日常生活自立度を抽出し分類した。
【結果】主目標は参加レベル71%が最も多く、副目標は活動レベル
89%が最も多かった。プログラムはストレッチ・関節可動域訓
練89%、筋力強化訓練81%、歩行練習83%と心身機能・構造や活
動レベルのものが多かった。【考察】目標は参加・活動レベルで
の目標設定が多かった事から当院では社会参加を促すための目標
設定が行われていると考察した。しかしプログラムは活動レベル
に対する具体的な介入は行われているが、参加レベルでは極めて
少なかった。これは参加レベルの目標が特定の場所への買い物等
の場合、自宅を拠点に行う訪問リハビリテーションの制度上、具
体的な介入が難しいため、活動レベルの介入の割合が多くなった
と考えられる。今後は、活動レベルの介入のみで地域社会への参
加を促すような「見せかけの社会参加」ではなく、カンファレンス
等を行い、直接参加レベルに介入出来るような検討が必要である
と考える。
258
P35-4
P35-5
○菊地裕美(理学療法士)1),原嶋 創2),村上 幹3),加藤愛恵1),
伊藤慎也4),山際正博1),田口孝行5)
○藤井るみ(理学療法士),稲葉典子
在宅要介護高齢者における災害時避難の認識・想定
状況・不安要因の特徴−移動手段別の分析−
セラピストと訪問看護師の協働により在宅での臨死
期を含めた終末期を支援した一症例
1)介護老人保健施設 一心館,2)介護老人保健施設 プルミエール
3)介護老人保健施設 あげお愛友の里
4)介護老人保健施設 エルサ上尾,5)埼玉県立大学
医療法人社団甲友会 西宮協立訪問看護センター
【はじめに】昨今、在宅における終末期症例に対して、訪問看護事
業所からの訪問看護とリハビリテーション(以下訪問リハ)が協
働することが一般的になってきた。今回、臨死期を含めたがん終
末期症例を通して、看護職とセラピストの介入視点の相違から双
方の役割について考察したので報告する。【症例】60代男性、肝癌
末期、妻と二人暮らし。がん進行による腰痛増強で訪問リハの介
入を自ら希望された。
【経過】訪問リハ介入時には本人の希望に
沿って訪問リハを実施した。5日後に黄疸が増強し訪問看護が介
入した時点でせん妄症状がみられた。さらに肝性脳症の症状が増
強し、翌日の訪問リハを一旦中止とした。翌日の朝、妻より呼吸
停止の報を受けた。
【考察】訪問リハ介入時には本人の希望や妻
の思いを確認しながらリハ内容を検討することができた。その後
1週間で転帰となった間に、本人の症状変化が急激で妻への支援
の必要性をセラピストは認識していた。看護師はせん妄状況から
呼吸変調と身体可動性の低下を予測し、その時点からの訪問リハ
再開を判断した。日内の呼吸停止もあり得ることを妻に伝えた翌
日永眠され、担当したPTと看護師で死後の処置を実施した。PT
が顔面のマッサージを実施したところ浮腫の軽減と閉口の効果が
みられ、
「気持ちよさそう」という妻の発言があったことから、臨
死期においても家族の悲嘆へのケアをPTが担えることが示唆さ
れた。
【目的】本研究では移動手段別に災害時避難の認識,想定状況,不
安要因の特徴を明らかにすることを目的とした。
【対象と方法】
通所・訪問リハビリ利用者175名を対象とし、災害時避難の認識,
想定状況,不安要因に関する調査を実施した。回答者のうち災害
時避難に“不安がある”・“あきらめている”と回答した158名を分
析対象者とした。【結果と考察】車いす利用者は、8割が避難経路
や避難動作方法に不安を有したにも関わらず、避難方法の認識が
低く、避難方法も未想定であり、起居動作と移動動作が不安場面
に挙がった。一方、歩行移動(歩行器・一本杖・歩行補助具なし)
者は避難方法の認識は高いが、具体的な避難方法は、多数が未想
定であった。歩行器使用者は、7割以上が避難動作方法や転倒に
不安を有し、ドアの開閉動作と段差・階段動作が不安場面に挙がっ
た。一本杖使用者・歩行補助具なし者は、8割以上が転倒や迅速
な動作方法に不安を有し、段差・階段動作と靴の着脱動作が不安
場面に挙がった。車いす利用者は、まず避難経路を確立し、避難
動作イメージを構築させることが重要である。歩行器使用者は不
安場面の重点的な練習や環境整備だけでなく、避難動作方法とし
ていざり動作等の別の移動手段の検討も必要と考えた。一本杖使
用者・歩行補助具なし者は、平常時から自宅の外までの避難方法
を想定し、避難訓練として一連の動作を実践的に繰り返し実施す
る必要があると考えた。
P35-6
P36-1
○今村友美(作業療法士)1),内田智子1),亀田由美2)
○依田康宏(作業療法士),佐藤美智子,土屋 匡,横沢恵利花,
白倉隼人,山浦さやか,鈴木章子,嶋津 諭,若林徳則,
日向康子,菊池啓恵,小野沢陽,関口 剛
悪性髄膜腫と診断された症例と家族への介入
長時間型通所リハビリテーションの現状と課題
〜短時間型通所リハビリテーションと比較して〜
1)医療法人潤心会 熊本セントラル病院 リハビリテーション科
2)医療法人潤心会 熊本セントラル病院 訪問リハビリテーション事業所
小諸厚生総合病院 老人保健施設こまくさ リハビリテーション科
【はじめに】当施設では地域の多様なニーズに対応するため、既存
の長時間型デイケア( 6〜8時間デイケア、以下長時間デイ)に加
え、2013年より1〜2時間の短時間型デイケア(以下短時間デイ)
を開設した。2年が経過し、短時間デイは軌道に乗り件数を増や
している。今回、従来の長時間デイと短時間デイでの新規利用開
始者の傾向とサービスを施行した経過を調査したので報告する。
【対象・方法】2013年4月から2015年3月までの新規利用開始者の
うち、3か月以上継続利用されている長時間デイ79名、短時間デ
イ43名を対象とした。対象者の年齢、利用目的、家族構成、介護度、
Barthel index、移動手段などを診療録、居宅サービス計画書より
集計し、データベースを作成、長時間デイと短時間デイを比較・
対照し、分析した。
【結果】利用開始時介護度では短時間デイでは約6割が要支援群の
対象者であったが、長時間デイでは要支援、要介護1〜3がそれぞ
れ2割を占めていた。居宅サービス計画書の利用目標では短時間
デイで機能・筋力関連の項目が特筆して多いが、長時間デイでは
歩行関連やADL関連の項目も多い状況であった。
【考察】比較により各サービス新規利用者間では介護度や身体機
能などで大きな違いが見られた。長時間デイでは機能訓練だけで
なく、より生活に即した歩行・ADL関連へのアプローチが必要だ
と考えられる。
【はじめに】今回、訪問リハビリテーションにて作業療法士(以下、
OT)が介入した直後に、
悪性髄膜腫と診断された症例を担当した。
OTが症例と息子を一つのユニットとして考え介入していく中で、
親子が互いの気持ちを知り、同じ場と意味のある時間を共有する
ようになったので報告する。
【症例紹介】90歳代女性。長男家族
と4人暮らし。主介護者は長男。介護度:要介護1→3。利用まで
の経過: X年9月、急激な心身機能・活動量の低下にて、利用して
いたデイサービスを休みがちとなり、X年12月より訪問リハ開始。
直後に悪性髄膜腫の診断をされるも、本人未告知。X+1年3月、
本人へ告知。
【作業療法初期方針】1.症例・家族との信頼関係の構
築。2.不安に対する症例・家族の精神的サポート。3.症例・家族
のQOL向上。【結果】療養者の生活を送るうえで家族の存在は不
可欠であり、家族を支える事が療養者を支える事に繋がると言わ
れている。今回、症例と息子を一つのユニットとして考え介入し
ていく中で、症例の家族に迷惑をかけたくない気持ち、息子の症
例への想いが聞かれるも、互いに通じ合えていない事を感じた。
そこで、OTが生活歴から引き出したパッチワークやお菓子作り
を、親子に話題や活動として提供した。すると、その時代の想い
を症例が語ると息子は聞き入り、症例が笑うと息子も笑顔になり、
親子が互いの気持ちを知り、同じ場と意味のある時間を共有する
ようになった。
259
P36-2
P36-3
○三浦由希江(作業療法士)
,岩崎祐介,板倉清乃,中田大輔
○金浜悦子(言語聴覚士)1),関麻友子1),中西俊二3),千葉桂子2)
道南勤医協 函館稜北病院 通所リハビリ
1)NPO法人 失語症サロン いーたいむ
2)
(株)ハナミズキ 訪問看護ステーションつぼみ
3)無所属
短時間リハビリへ移行して
北海道における失語症社会啓発事業の報告
【はじめに】 当事業所は介護保険の改定に伴い、地域での通所リ
ハビリテーションのあり方を検討しH27年3月に10年以上継続し
ていた6〜8時間の営業を終了、同年4月より午前・午後2部制の3
〜4時間の短時間リハビリ開始。
【現状】
約3時間の利用時間は
個別リハビリとケアスタッフによる集団プログラムを提供。集団
プログラムはケアスタッフを3チームに分け、運動、脳トレーニ
ング、ADL訓練を実施。運動チームは、集団体操と自主トレーニ
ングの補助。脳トレーニングチームは発声、レクレーション、プ
リント、創作活動を小集団または個別にて実施。ADLチームは更
衣・トイレ動作などのADL訓練や家事動作、屋外歩行訓練を個別
対応で実施。【利用者変化】
レスパイト機能を中心とした6〜8
時間のサービスでは、機能・能力の維持が中心の関わりであった。
移行後は、機能・能力の向上に積極に取り組む利用者が増えてき
ている。
【今後の課題】
活動・参加へとつなげていくため、出来
るようになったADL・家事動作を在宅生活に導入していくには、
利用者の様子を直接、家族や連携先に伝えていく、利用者の生活
状況、家族の想いを確認していくことが必要である。また地域へ
とつながる方法を検討していく必要がある。利用者の個別性のあ
るニーズに応えていくためには効果的なサービス提供が求められ
る。多職種協働を図るためにも当事業所のサービスのあり方を画
一していく必要がある。
【はじめに】昨今、医療制度改定により入院期間の短縮化が勧めら
れている。退院後のサービス現場において失語症に対応するため
の専門的な知識や対応するスタッフの配置は十分とは言えない。
今回、道内各地域においての失語症の社会啓発の方法を探るため
の足がかりとして、北海道から失語症者に対する支援体制整備事
業の業務委託を受け、業務を遂行したため報告する。
【事業内容】1.
「失語症の理解とケアの実践講座」の開催 NPO法
人和音が開発した失語症会話パートナー養成講座の短縮版を、道
内主要地域4市で開催した。講座の案内は介護保険関連事業所や
障害福祉施設、病院等に行った。合わせて276名が受講した。
2.失語症デリバリー講座の開催 言語聴覚士が在籍していない福
祉関連施設を中心に、失語症についての正しい知識の普及講座を
出張形式で開催した。
3.失語症啓発パンフレットの作成と配布 より多くの人に、失語
症を理解してもらうためのパンフレットを作成し関係機関等に配
布した。
【まとめと考察】今回の事業は、多くの受講者が失語症に対する知
識やコミュニケーション方法について理解を深める機会となっ
た。今後は今回の事業をできるだけ継続し、どのように受講者の
日常生活に生かされているのかを追跡する必要性がある。当日は
開催概要とアンケート結果にさらに考察を加え報告する。
P36-4
P36-5
高齢者の下肢浮腫と下肢冷感の実態
−車いす使用高齢者と独歩高齢者との比較−
地域社会における当院の役割を考える〜3団体共催 「認知症」を題材とした講演会を通じて〜
○高山成子(看護師)1),竹村亜衣2),渡辺一美3),小林佐知子1)
○尾形 直(事務),金子裕利,本田 馨
1)石川県立看護大学 老年看護学講座
2)金沢大学付属病院
3)独立行政法人 地域医療機能推進機構 金沢病院
1)西横浜国際総合病院 地域医療連携室
2)汲沢地域ケアプラザ
3)汲沢地区社会福祉協議会
【はじめに】当院は横浜市南西部にある188床の急性期病院であ
り、様々な医療・介護サービスを提供している。その中、当院、
地域包括支援センター、地区社会福祉協議会の3団体にて「認知
症」を題材にした講演会を共催したので、その取り組みと課題に
ついて報告する。
【取り組み】以前は各々の団体が個別に講演会を開催していたが、
平成26年度は相互補完関係の構築を目的として、認知症に関する
3回シリーズの講演会を共催した。参加対象は一般の方も参加可
能としたが、特に地域住民を対象とした。1回目(参加者124名)
は脳外科医による脳の仕組み、病気の概要等の講演を行った。2
回目(参加者32人)は「認知症サポーター養成講座」と認知症予防
についての講演を行った。3回目は、
「認知症になっても安心して
暮らす事ができる地域に!」のテーマで講演を行った後に、地域
の方(住民代表、当事者、民生委員及びサービス提供者)が集まり、
「みんなでつくろう!認知症を支える地域」というテーマでパネ
ルディスカッション(パネラー6人、参加者77人)を行った。
【成果と課題】共催により当院の地域における役割を再確認でき
たと共に、早期発見から福祉サービスへの橋渡し、地域での見守
り等、認知症や関係する地域問題を考える機会が作れた。今後も
3団体で地域ニーズを踏まえ、継続的な取り組みとして維持発展
させたい。
【はじめに】高齢者施設では寝たきりや昼夜逆転の予防対策として
1日の大半を車いす座位で過ごす場面が多い。座位は臥床に比べ、
多くの利点がある一方で、下肢浮腫を生じやすい。今回、車いす
を使用する高齢者と使用しない独歩の高齢者の、下肢浮腫と下肢
冷感の実態を明らかとし、比較することを目的とした。
【対象】デ
イケアを利用する車いす使用高齢者(車いす群)4名、独歩高齢者(独
歩群)7名で、2014年9月に実施した。
【方法】カルテから年齢、性
別,既往歴などについて情報収集を行い、活動量を把握するため、
行動記録を作成した。測定時間は、9:00、13:00、15:00の3回と
し皮膚表面温度は、サーモ・ピッパーにて測定し、下肢周径では
メジャーで実測値と変化率({測定値−前回測定値}/前回測定値
×100)を求めた。【結果】下肢の周径において1回目から3回目にか
けての変加率は、車いす群は右足+4.71%、左足+2.64%、独歩
群は右足+1.30%、左足+2.27%と両群ともに増加した。皮膚表
面温度において、車いす群は独歩群に比べ、左右の下肢ともにデ
イケア到着時(1回目)の皮膚表面温度が0.5〜1度低かった。
【考察】
車いす群のほうが独歩群に比べ下肢浮腫が顕著であったが、独歩
群でも下肢浮腫が認められた。車いすを使用する高齢者の下肢浮
腫ケアは特に重要であり、独歩高齢者においても「独歩している
から」と安心せず、下肢浮腫軽減のためのケアが必要であること
が示された。
260
P37-1
P37-2
○伊藤智也(理学療法士)
,今井卓馬,渡邊依子,樫村友賀里,
大黒なか子,石川繭美,角田 浩
○藤澤欽崇(看護師),久田友昭,藤山二郎,濱崎直人,宮里好一
公益社団法人地域医療振興協会 公立黒川病院
医療法人タピック 沖縄リハビリテーションセンター病院
脳梗塞による高次脳機能障害を背景とし、回復期リ
ハ病棟で徘徊を繰り返した症例
表皮剥離のないホールを目指して
【はじめに】徘徊は、
高次脳機能障害患者の重大な問題である。【目
的と方法】徘徊を抑制するためにチームアプローチの有用性を確
認することを目的に、リハビリ介入・環境設定・多職種連携によ
る効果を検討した。
【症例】80代男性。脳梗塞により左半側空間
無視、同名半盲、注意障害。Br.Stageは上肢・手指・下肢とも6、
ふらつきがあり歩行軽介助、FIMは46点。病識低下、帰宅願望が
強く、徘徊と暴力行為のため昼夜介助を要した。また動作性急で
障害物を避けることができず転倒を繰り返した。
【介入】リハビリ
介入:生活歴の聴取から、趣味活動である園芸の指導者としての役
割を提供。また、屋外より病院を客観的に確認することで病識の
向上を図った。多職種連携:医師・病棟スタッフ・医療安全管理
者らと定期及び転倒時のカンファレンスにより徘徊の原因を探求
し対応の統一化、生活リズムの定着化を図った。環境設定:転倒時
の外傷予防の為ヘッドギアを装着、自室床全面に緩衝マット、床
頭台と出入口にスポンジを設置。
【結果】入棟90日頃より現状を
客観視した発言があり、リハビリの必要性も自覚するようになっ
た。次第に徘徊が減少し、
FIMは91点となり自宅退院となった。
【考
察】徘徊を繰り返す症例では、生活歴や生活リズムを考慮した介
入とチームが一丸となって患者の徘徊原因の把握に努め対応を統
一化することが重要と考えられ、合わせて転倒時の外傷を防ぐ環
境設定を行うことが有用と考えられた。
【はじめに】当ホールにおいて5ヶ月間で、同一患者を含み皮膚剥
離が27件発生した。皮膚剥離は患者の疼痛や、感染・壊疽などの
リスクがあり、キャストに対する血液感染要因ともなりうる。入
院時より皮膚剥離リスクの高い患者抽出のための評価を統一して
行うため、スクリーニングシート(以下シート)を作成し、その精
度を測定したため報告する。【方法】指標は、患者側要因として発
生に大きく関与していると思われる、
「年齢」
「血清アルブミン」
「うっ血班の有無」
「ステロイド服用」
「対麻痺」
「肝機能」
「麻痺の
有無」とした。各項目の点数は発生頻度から割り振り、16点満点
とした。作成後2ヶ月間の入院患者すべてにスクリーニングを行
なった。5点以上を皮膚剥離リスク者とし、シートの精度を測定
した。
【結果】入院患者44名。うち13名がリスクを有し、入院中
に皮膚剥離が発生した患者は5名で、救急搬送が2名、前院からの
持込2名、発生なし4名であった。リスク対象者以外の31名から
の発生は見られなかった。
【考察】入院時からの全身状態観察と
リスク管理は必須な技術である。作成したシートにて入院した約
30%の患者が皮膚剥離リスクを持つと判断され、その半数に発生
があったことから作成したシートで完全ではないがリスク抽出評
価が統一して行なえ、早期からの対策に有効と考える。今後はシー
トの精度をあげ、シートを参考に予防策を早期に立案し、皮膚剥
離発生防止に努めたい。
P37-3
P37-4
○城間江利佳(看護師)
,小波本奈々,宮良富子,米澤真佐江,
崎原尚子,湧上 聖
○我謝千賀子(看護師),平安名絹子
医療法人緑水会 宜野湾記念病院
医療法人アガペ会
体動センサー解除に向けての取り組み
本当に適したセンサー?
【はじめに】当回復期リハビリ病棟では、入院時3人に1人の患者
が転倒予防のため体動センサー (以下、センサー )を装着してい
る。センサー解除の判断はスタッフの主観的なものであり、積極
的に行われにくい現状であった。センサー解除を評価するために
チェック表を作成し、使用した結果を報告する。
【方法】平成26年6月から平成27年5月の1年間に、センサーを装
着している患者のコールが鳴った時、ナースコールを押したの
か、起き上がりでセンサーが反応したのか等を、病棟スタッフが
チェック表に記載した。そのチェック表を基にセンサーを解除す
るか看護師が週1回評価を行い、チェック表使用前後1年間でセン
サー解除率に差があるかを比較検討した。
【結果】チェック表使用者58人中、38人がセンサー解除となっ
た。チェック表導入前センサー解除率31.1%に対し、導入後では
65.5%と上昇した。
【考察】チェック表を導入したことにより、患者の行動パターンが
スタッフ間で共有化され、客観的な評価を行うことができた。セ
ンサー解除率を上昇させることができたが、センサー解除後も更
なる身体機能の向上に伴い移動手段が変われば再び転倒リスクが
上がることがある。患者のADLは日々変化するため、患者の身体
能力を見極め、抑制解除に取り組む必要がある。
【はじめに】当病棟では、効果的な安全確保に向け2011年から独
自の転々スコア表で、セラピストと一緒に取り組んでいる。しか
し、
「不必要なセンサーの使用?」
「患者に適したセンサー?」と、
検討内容に疑問視する声が聞かれるようになった。そこで、転倒
転落防止の評価の流れについて見直し、看護の役割について考え
てみた。
【経過】課題として「評価の偏り」
「夜勤の状況が反映されていな
い」
「経験値によりセンサーの選定に差がある」
「話し合う時間が
ない」とあった。評価の場は、回数を重ねる度に、活発な評価の
場と変化した。センサー選定の基準を設けるためには、患者の状
態と転々スコア表の見直しが必要である。しかし、転々スコア表
の見直しには、まだまだ修正が必要であり今回の導入には至らな
かった。
【考察】ヴァージニア・ヘンダーソンは、
「《元来看護とは,患者が
日常生活を営んだり医師の指示した治療法を実施したりするうえ
に欠除している知識,意識,力を補足することによって,患者を
助けることである。
》」と述べている。評価の場が、確認と学習の
場となり、看護介護の役割意識を高め、段々と自立していく患者
に成果を感じ自信につながったと考える。今後も安全確保ができ
るように、転々スコア表とセンサー選定方法を見直し、統一した
評価ができるよう取り組んで行きたい。
261
P37-5
P38-1
○吉岡志穂(看護師)
,片寄加代子
○桃原織穂(言語聴覚士),濱崎直人,宮里好一,渡邉弘人,
長濱一史,又吉 達,比嘉 淳
錦海リハビリテーション病院
医療法人タッピック 沖縄リハビリテーションセンター病院
頭部外傷後高次脳機能障害を有する高齢患者に対し
て多職種協働で行動抑制を廃止しながら在宅復帰へ
つなげた一例
嚥下訓練食に対する拒否感のため食思不振となり、
経口摂取につなげることが出来なかった一例
【はじめに】前医でベッド転落歴あり、体幹抑制されていた頭部外
傷後の高次脳機能障害のある高齢患者の事例を経験した。本事例
では行動抑制をせず環境調整等行う事で、患者の単独行動による
転倒が無かった。本研究の目的はそれらの対応の有効性を検討す
る事である。
【事例】90歳女性、受傷前日常生活活動(以下ADL)
自立、独自での公共交通機関利用が可能だった。交通事故にて急
性期病院へ救急搬送され、外傷性くも膜下出血、脳挫傷と診断。
保存的に加療後、52病日目に当院へ入院。入院時JCSI-3、FIM44
点(運動30認知14)
、高次脳機能障害、昼夜逆転、不穏等問題行動
あり職員の付き添い、ADL全般に介助を要した。経過当院入院時
から体幹抑制は中止し、多職種で行動抑制せず安全に動ける環境
調整等実施。嫌がる処置は避け好む余暇活動を行い、また前医で
服薬していた睡眠薬、向精神病薬を調整し情動安定。家屋訪問で
必要な動作を確認後、訓練と入院生活に取り入れた。身体機能は
改善し、当院入院から129日目となる退院時FIM102点(運動75認
知27)へ向上。室内動作自立し、家人は施設退院希望だったが、
身体面、精神面共に在宅生活が可能な状態まで回復し自宅退院と
なった。
【考察・結論】多職種で情報共有し、行動抑制を可能な限
り廃止し、能力に応じ安全に動ける環境を速やかに提供する支援
は転倒防止しつつ行動拡大させる事となり、能力向上に有効と示
唆された。
【はじめに】脳梗塞後に嚥下が可能となったにもかかわらず、胃瘻
造設に至った症例を経験したので報告する。
【対象】症例は70代女性。両側後頭葉脳梗塞発症56日目に当院入
院。入院時のADLは一部介助レベル。失語、注意障害あるが、あ
る程度の意思疎通は可能。経鼻経管栄養で管理中。
【経過及び結果】嚥下機能の評価では反復唾液テストは2回/30
秒、改定水飲みテストは3点、フードテストは3点。口腔残留は疑
われたが、ある程度の嚥下機能は保たれていると判断し、少量の
軟飯とミキサー食小鉢一品より直接的嚥下訓練開始。当初、順調
に食形態は向上し、摂取量も増加。しかし、元来から好き嫌いの
激しい嗜好があり、入院21日目より、治療食への拒否高まり摂取
量が低下。同時期に嘔気や腹部膨満感の訴えが徐々に増加してき
たが、便秘や下痢等の腹部症状なし。ヨーグルトや梅味みその提
供など本人の好む食物を提供したが、一時的で効果なし。食形態
はソフト食まで摂取可能となったが、経口摂取では十分量の栄養
を摂取できないため、入院6ヵ月目に胃瘻造設。
【考察】塩浦らは「嚥下訓練食という限られた形態の中で食べる楽
しみを感じながら嚥下訓練ができるような援助が必要だ」と述べ
ている。
「全量摂取」に目が行ってしまい、食事に対する楽しさや
満足感を見落としていた。食事の外観や嗜好への配慮を十分に行
えば、食思向上につながったのではないかと考える。
P38-2
P38-3
○山田純子(言語聴覚士)
,山田麻和,中里友香梨,笹原順哉,
依田まゆみ,岳下晶子,青柳香織
○山本恵仙(言語聴覚士),塚本恵子,伊東孝広,大田黒八重,
松下利恵,岡本美紀,宮瀬秀一,大隈秀信,平田好文
社会医療法人春回会 長崎北病院
熊本託麻台リハビリテーション病院
急性期における食事ラウンドの取り組みについて
vol.1〜リハビリの立場から早期介入を行う意義〜
継時的食機能評価を活用して〜安全な食生活の獲得
を目指して〜
【はじめに】当院急性期病棟では、回復期/維持期病棟への転床や
早期退院により在棟日数が短く、多職種による食事場面への関わ
りが少なかった。しかし、平成26年度より多職種で実際の食事場
面に関わる「食事ラウンド」を開始したので、その取り組みについ
て報告する。
【内容】1)参加者:DDS、PT、OT、ST、Ns、RD。2)開催日:週1回、
昼食時間。3)対象:平成26年10月〜平成27年3月までに入院し、
経口摂取が可能な脳卒中、神経変性疾患、廃用症候群患者137名
中、実際にラウンドした64名。4)リハビリの関わり:食形態、食
事動作、姿勢、嚥下の4項目について評価を行い、環境調整など改
善策を図り担当スタッフへフィードバックを行った。
【 結 果 】上 記4項 目 に お い て、姿 勢27名(42 % )、食 事 動 作16名
(25% )、嚥下11名(17% )、食形態6名(10% )の順で多く関わって
いた。特に姿勢では、背上げから車椅子への変更や姿勢の崩れに
対するシーティングなどの関わりを多く認めた。
【考察】今回、リハビリの視点から改善点を図ることで急性期か
ら安全かつ安楽な食事の獲得へ繋がることがわかった。加えて、
RDの栄養データやNsからの生活状況の情報など、それぞれが専
門性を持った視点から情報交換を行うことで、低栄養などの要因
を多角的に捉えることが出来ると実感できた。これらを踏まえ、
急性期における多職種での食事ラウンドの取り組みは有意義であ
ると考えられた。
【はじめに】今回、嚥下障害を呈した患者に対して、入院中及び退
院後も含めた安全な食生活の獲得を目指していくための活動実績
について考察を加え述べる。【背景と活動内容】早期に経口摂取の
獲得を目指すため、食事内容、認知機能、運動機能、口腔嚥下機能、
ADLが評価できるように平成26年4月に継時的食機能評価表を作
成し入院時から多職種にて合同評価を開始した。
【対象及び方法】
平成25年度686名、平成26年度1,098名のST処方のある患者によ
る嚥下障害患者の割合、VF検査の実施数と初回のVF検査までの
日数、経口移行率を比較した。【結果】嚥下障害患者の割合は、平
成25年度では83.6%、平成26年度では82.7%であった。VF検査
の実施数では、25年度は75件であったが、26年度では、162件と
件数が増加、初回VF検査までの日数も平均26.3日から10日へと
短縮した。また、25年の経口移行率は52%であったが26年度に
は63%と向上した。【考察】嚥下障害患者を対象とした継時的食
機能評価表を作成したことが適切な時期に再評価を行うことにつ
ながり、VF検査の実施回数増加や経口移行率の向上に至った。ま
た、合同評価を行うことで経口摂取獲得へ向けて目標統一となり
嚥下障害患者に好影響を与えたことが示唆された。加えて、在宅
支援の取り組みとして多職種協働による患者、家族指導のための
「安全に食事をしていただくためのサポートガイドブック」の作
成に至り運用を開始している。
262
P38-4
P38-5
○佐藤 駿(作業療法士)
,江畠圭亮,木村暢夫,佐藤友美,
米倉正博,大隈和喜
○白木里実(言語聴覚士)1),栄 諭子1),木村純平2),小橋紀之3)
生活行為拡大により3食経口摂取の目標が達成でき
た1症例
脳梗塞発症後に嚥下障害を呈した長期統合失調症患
者の嚥下機能の経過
1)適寿リハビリテーション病院 リハビリテーション部 言語聴覚科
2)耳鼻咽喉科木村医院
3)適寿リハビリテーション病院
独立行政法人 地域医療機能推進機構 湯布院病院
リハビリテーション科
【はじめに】感染症から全身状態の低下を招き、経口摂取が困難と
なった症例に対して食べることをチームで支援した。一日の生活
行為を包括的に捉え、介入した経過を中心に報告する。
【症例紹
介】80才代男性。X年脳幹出血発症後、要介護4となり施設で生活
していた。X+6年インフルエンザ感染後、経口摂取困難で経管栄
養となり、嚥下機能の改善目的に当院へ入院した。
【評価】本人と
家族より口から食べ続けたいとの希望が聞かれその可能性を評価
した。1)易疲労性、覚醒レベルの低下2)前頭葉の萎縮による発
動性の低下3)口腔期、咽頭期を主とした嚥下機能の低下が課題で
あった。上記課題は改善可能とチームで判断し、目標を介助下の
3食経口摂取とした。
【経過・結果】1.2)に対し、歩行での排泄・
整容訓練にてADL能力を高め体力の獲得を図った。本人が関心を
示すお茶会や体操への参加を活用し生活リズムを整えた。更に、
食前の口腔ケアを行い、食への認識を高めた。3)に対し、嚥下状
況を確認しつつ、ティルト機能付き車椅子のセッティングを行っ
た。Ns、CWに介助方法と適切な食事環境を伝え、3食経口摂取可
能となった。8週目に退院先施設を訪問し、食事の環境調整と継
続に向けて具体的な生活スタイル、介助方法、口腔ケアを指導し
た。
【考察】活動量を増やすことと適切な物的、口腔環境の調整な
ど間接的なOTの支援が3食経口摂取に繋がり、入所施設でも安全
に美味しく食べ続けることが出来た。
【はじめに】脳梗塞を呈し嚥下障害に至った長期統合失調症患者
のリハビリをする機会を得たので報告する。
【症例】50代、女性。約32年前に統合失調症発症。2014年12月27
日、転倒し呂律困難、右半身脱力あり。第1病日、熱発ありインフ
ルエンザA型と誤嚥性肺炎を合併。その後も右半身脱力改善せず
MRIにて両側小脳半球、橋、右側頭葉深部白質に散在性の脳梗塞
を認める。
【経過】第33病日、M-Tubeを挿入した状態で当院入院。第38病日、
1回目VE受診。咽頭の遅発性ジスキネジアなし。被裂部浮腫あり。
咽喉頭知覚低下あり。喉頭内侵入あり。精神症状安定しており
非定型抗精神病薬を減量。第52病日、2回目VE受診。被裂部浮腫
軽減。喉頭蓋谷、梨状窩に少量残留も複数回嚥下にてクリア。第
66病日M-Tube抜管しペースト食をST全介助で3食経口摂取開始。
現在、全粥・軟菜キザミあんかけ食・トロミつき水分を3食自己
摂取中。
【考察】抗精神病薬の中でも非定型抗精神病薬では摂食嚥下障害
発症が少ないとされているが嚥下障害を呈した症例も報告されて
いる。また統合失調症患者は、ADLの低下が嚥下障害発症や重症
化の一因であるとも報告されている。本症例は長期間内服してい
た非定型抗精神病薬の減量を入院当初に行ったこと、また脳梗塞
発症後の回復期に適切な直接・間接訓練を並行して行った結果、
嚥下機能が改善し経口摂取に至ることができたと考える。
P38-6
P38-7
○阿部真也(言語聴覚士)1),大江康子2),北山 藍1),武田有希1),
小俣千尋1),藤原綾香1),大田麻由1),阿部由香利1),笠原美穂1),
宮崎泰広3),高橋秀寿4),木川浩志1)
○上垣麻衣(言語聴覚士),野口美穂,桑山浩明,石野真輔,
小川美歌,桐谷奈央子
食器が食事に及ぼす影響〜回復期リハビリテーショ
ン病棟における検討〜
回復期リハにて経験した甲状腺ミオパチーによる摂
食嚥下障害の一例
医療法人医道会 十条武田リハビリテーション病院
1)飯能靖和病院 リハビリテーションセンター,2)東京都リハビリ
テーション病院 リハビリテーション科,3)川崎医療福祉大学 感覚
矯正学科,4)埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーション科
68歳男性。2週間前より咳嗽と排痰困難を自覚していたが呼吸苦
を自覚し救急受診した。誤嚥性肺炎のため入院。頻脈・発汗・体
重減少から採血にて甲状腺機能亢進症と診断された。筋電図検査
にて甲状腺ミオパチーと判明した。前医で嚥下間接訓練が開始さ
れ肺炎が軽快後、35日目に嚥下造影検査(VF)が施行された。結果、
嚥下運動の惹起不全・喉頭挙上不全・咽頭収縮不全・喉頭挙上障
害・著明な咽頭残留を認めた。食道入口部開大不全のためバルー
ン法および、頸部筋力強化訓練を実施しつつ、1日3回のOE法に
よる栄養の状況で、前医入院日より56日目肺炎後の廃用症候群に
て当院回復期リハに転院となった。当院入院時、発話明瞭度1、バ
ルーン法(2cc×5回)の後に軽度とろみ水を左右横向き・顎引き嚥
下で摂取すると、酸素飽和度の低下がないが咽頭残留と湿声を認
め、複数回嚥下と随意咳にてクリアされた。嚥下グレード2。歩
行は下肢筋力4・独歩50mが自立も、100mの歩行で脈拍が150/
分まで上昇し体力の低下が顕著であった。頸部の可動域低下も顕
著であり、理学療法による体力の向上・頸部のリラクゼーション
に加え、言語療法にて間接直接嚥下訓練を継続した。咽喉頭の感
覚低下に対してアマンタジンおよび半夏厚朴湯の薬剤を追加投与
した。VFによる評価を行いつつ、前医入院より95日時点で嚥下
グレード5、粥・7分菜を一食食べている。文献的考察を加え甲状
腺ミオパチーによる嚥下障害例について報告する。
【目的】近年、病院食は個々の患者の満足度の高い食事を提供する
ことが求められている。当院でも入院患者に年1回嗜好調査を行
うなど、満足度の高い食事の提供に努めている。今回我々はその
一環として食器の変更を行い、食器の変更が患者の食事に対する
満足度に及ぼす影響を検討した。
【対象】対象は当院回復期リハビリテーション病棟に入院中で、食
器の変更を行った平成26年10月1日の前後1週間に食形態やカロ
リー調整などの食事の変更のなかった10名とした。疾患は脳梗
塞4名、
脳出血4名、
頭部外傷2名、
年齢は52〜86(67.7±10.6)歳で、
男性5名、女性5名であった。
【方法】食器の変更前後の食事摂取量の比較と食器の変更1週間後
に食器に対するアンケート調査を行った。アンケートの内容は、
食器に対する意識調査、食器の変更による食事の見た目、食欲、
食べやすさとした。
【結果】食器の変更前後の食事摂取量は、7名が前後とも全量摂取と
変化は認めなかったが、3名では摂取量の増加を認めた。アンケー
トの結果では食器に対する意識は高くなかったが、食器の変更に
よる食事の見た目や食欲の項目で全対象者が高い評価であった。
【考察】回復期リハビリテーション病棟において、食器の変更が食
事の見た目や食欲に変化を与えており、食器が患者の病院食に対
する満足度に影響を及ぼす可能性を示唆した。
263
P39-1
P39-2
○麻生雄太郎(作業療法士)1),阪上洋子1),谷村公章2),引野 亘2)
○秋山泰蔵(理学療法士)1,2),菅谷公美子1),飯田裕章1),
塚田優子1,2),伊藤 綾1),小室明子1),武田直子1),大田仁史1)
1)社会福祉法人 ヒューマンライツ福祉協会
2)合同会社 NAL
1)茨城県立健康プラザ
2)医療法人社団筑波記念会
テーブル式半水耕栽培システムを使用した施設での
プログラム
茨城県「シルバーリハビリ体操指導士養成事業」に
おけるシステムの特徴
−住民ボランティア組織の分析−
【 1.はじめに】園芸療法とは、手間を掛けることで人や植物に対
して良い結果が得られる活動である。今回、手間を掛けないテー
ブル式半水耕栽培システム(以下、水耕栽培)を利用したプログラ
ムが対象者に与えた影響について報告する。
【 2.目的】施設入所
の高齢者に水耕栽培を導入し、活動への参加や役割の創出など社
会的機能の賦活、生きがいを持ち主体的に生活を送ることを目的
とする。
【 3.内容】これまではプランターにて園芸療法を行って
いたが、
失敗も多かった。今回は水耕栽培を利用することでスタッ
フの負担を減らし、かつ失敗が少なく短期間で成功体験を多く感
じられるように設定した。
【 4.結果】活動初期は「呼ばれるなら
行くけど…」という消極的な発言であったが、
「次はいつやるの?」
という積極的な発言となった。参加率は30.2%から44.5%へ向上
した。【 5.考察】本プランは失敗が少なく、職員の負担を軽減で
きる。これらはプログラムを継続させるための大きな要素となる。
今回は手間を掛けることで効果を高めていくのではなく、手間を
省いても活動に対する思い入れを持てるような関わりを行うこと
で、手間を掛けることと同様の効果を狙っている。失敗が少なく
成功体験の多い活動は、失敗体験による心理的不安を解消し、能
動的な活動となり、それは毎日の表情や他者との関わりに現れて
いる。成功体験の積み重ねは「自分で出来る」
という自信に繋がっ
ているのではないだろうか。
【はじめに】茨城県における介護予防事業の取り組みとして平成
17年より、「シルバーリハビリ体操指導士養成事業」が行われて
いる。この取り組みはシステム化されており、ボランティアは組
織化されている。今回、茨城県での介護予防事業の特徴について
報告する。
【現状】茨城県の計画としてシルバーリハビリ体操養
成事業は、茨城県の高齢者対策事業に位置付けられている。シル
バーリハビリ体操指導士(以下、指導士)の養成事業は、希望者を
公募・養成・活動の支援・褒賞というプロセスで行われている。
養成事業には、医師、保健師、リハビリ専門職、トレーナーが専門
職として携わっている。リハビリ専門職は主に学習支援に携わっ
ている。指導士は、指導士会として茨城県内全市町村に組織され
ており、平成26年度までの指導士養成数6685名のうち、指導士会
に所属している数は3750名であった。指導士会の加入率は50%
以上であった。指導士会は、運営に関わる会長や学習会等に携わ
る研修委員等で構成されている。代表者や研修委員に対する集合
研修が開催されており、他の市町村と交流する機会や全市町村に
対して共通の情報を提供する場が設けられている。
【考察】本事
業の特徴としてボランティアが組織化されている。組織化という
ハード面の整備により、情報交換や、情報の提供を効率的かつ正
確に行うことができ、価値観を共有しやすいシステムになってい
ると考えられる。
P39-3
P39-4
○伊藤 綾(理学療法士)1),菅谷公美子1),飯田裕章1),
秋山泰蔵1,2),塚田優子1,2),小室明子1),大田仁史1)
○嶋田圭佑(理学療法士)1),福田恵介1),相馬健亮1),西田宗幹2),
星合直子1),麻野 舞1)
1)茨城県立健康プラザ
2)医療法人社団筑波記念会
1)医療法人鴻池会 介護老人保健施設 鴻池荘 サテライト蜻蛉
2)医療法人鴻池会 秋津鴻池病院
シルバーリハビリ体操指導士養成事業における医療
専門職団体との連携について
要支援者における転倒の関連要因と今後の取り組み
の検討
【はじめに】茨城県では、平成17年度から介護予防事業としてシル
バーリハビリ体操指導士(以下、指導士)の養成を行っている。さ
らに、平成19年度から3級指導士の養成を行える1級指導士の養成
を行い、1級指導士による各市町村での3級養成講習会開催が可能
となった。そのため各市町村からは地域での3級養成の要望が高
まっている。その要望に応え、
シルバーリハビリ体操(以下、体操)
の普及促進を図るため、平成22年度より茨城県理学療法士会及び
茨城県看護協会と連携し、
「介護予防体操相談支援者(以下、支援
者)」を設置した。支援者は、指導士養成講習会の講師や、地域
での研修会等の支援をはじめ、医療及び介護の現場で活躍する専
門職への体操普及も行っている。
【目的および対象・方法】介護報酬の改定や、予防給付の見直しが
され、介護予防の重要性が増している。医療専門職が介護予防事
業に携わる機会は、今後さらに増加し適切な対応が求められる。
今回は、理学療法士の支援者に対し、健康プラザとの連携体制の
強化や、この事業と連携することにより介護予防に対する意識変
化の有無などについてインタビュー調査を実施した。
【おわりに】今後も普及事業を円滑に進められるよう、また、今後
どのような場で専門職としての力が発揮出来るのかについて、若
干の考察を加え報告する。
【はじめに】要支援者の転倒の有無と傾向を調査し、通所リハビリ
テーションにおけるプログラムを再考した為報告する。
【対象・方法】対象は要支援者で調査・測定項目を抽出できた48
名。 項 目 は 年 齢、介 護 度、屋 内 外 移 動 形 態、体 重、Hand Held
Dynamometorを用い左右膝伸展筋力・体重比(体重比)、握力、片
脚立位時間、座位体前屈、Timed Up and Go Test(TUG)、3分間
歩行距離、ころばない自信、Life Space Assesment(LSA)、測定後
3カ月以内の転倒の有無・場所。転倒を認めた群(転倒群)と認め
なかった群(非転倒群)に分け、統計はt検定・Mann-WhitneyのU
検定にて比較し有意水準は5%とした。
【結果】転倒群は9名、場所は屋内7名、屋外3名であった。項目
は 右 体 重 比 は 転 倒 群0.2±0.1kgf/kg、非 転 倒 群0.3±0.1kgf/kg(p
<.01)、右 膝 伸 展 筋 力 は 転 倒 群12.3±3.7kgf、非 転 倒 群18.7±
7.8kgf、右 握 力 は 転 倒 群12.7±8.2kg、非 転 倒 群18.1±5.8kg (p
<.05)、その他は有意差はなかった。
【考察】利用者に画一的集団体操を中心に行っていたが、転倒群で
下肢筋力・握力の低下を認め、先行報告と同様の傾向であった。
今後、個別の負荷設定が行える集団体操を実施し下肢筋力増強・
体力向上を図る必要性が考えられた。
264
P39-5
P40-1
○肥後雄大朗(理学療法士)
,小森博人,内村智美,永野幸四郎
○角田信夫(理学療法士),岡坂政人
社会医療法人鹿児島愛心会 大隅鹿屋病院 リハビリテーション科
IMS(イムス)グループ行徳総合病院 リハビリテーションセンター
転倒予防体操の効果〜 PT1人職場勤務での取り組み
として〜
リハビリテーション研究発表会を通じた職種間交流
の促進
【目的】当施設の要支援利用者に対して転倒予防体操を導入し、12
週間の身体機能の変化について検討した。
【説明と同意】対象者
に研究の趣旨と内容について説明し、同意を得たうえで行った。
【対象及び方法】要支援者26名中、転倒予防体操への参加・協力が
得られた15名(要支援1:2名、要支援2:13名、性別:全て女性、
平均年齢:87.1±4.7歳)を対象とし、平成26年12月〜平成27年3
月までの間要支援1は週1回・要支援2は週2回の合計27.3±8.3回/
人実施した。評価方法としては開眼片脚立位(以下OLS)・10m歩
行速度・ファンクショナルリーチテスト(以下FRT)を用いた。統
計処理はt検定にて行った。
【実施内容】体幹の側屈・回旋・伸展・
前屈と起こし、しこ踏み、下肢の閉じ開き、起立、足踏み、座位バ
ランス、深呼吸の10項目を実施した。
【結果】平成26年12月介入
時のOLS(右)4.5±3.8秒、
(左)4.7±6.1秒、10m歩行速度15.4±5.6
秒、FRT12.8±7.8cmであった。平成27年3月介入時のOLS(右)
4.5±3.2秒、(左) 4.8±5.2秒、10m 歩 行 速 度13.3±3.8秒、FRT9.6
±6.8cmであった。OLSの改善例が11例( 73%)
、FRTの改善例
が4例(27%)
、10m歩行速度の改善例が11例(73%)みられ有意差
(p<0.05)を認めた。
【考察】今回の結果より、転倒予防体操を導
入して10m歩行速度が有意に改善しており前述の運動内容にて
も高齢要支援者の運動機能向上につながる可能性があると思われ
る。
【はじめに】前大会での情報共有についての報告を踏まえ、他職種
が求めるリハビリテーション像を模索することを目的に第1回リ
ハビリテーション研究発表会を実施した。地域包括ケアを念頭に
置き他職種を聴講に招き、得られた意見から職種間交流の促進に
関する一考察を以下に報告する。
【研究会概要】開催日時:2014年12月平日15:00〜17:30、発表演
題数:口述13題、ポスター2題
【アンケート内容】所属部署・経験年数・リハ専門性の理解度(:
5段階評価)
・本会の業務役立ち度(:5段階評価)
・チーム医療連
携強化を目的にリハ科に求めること(自由記載)
、自部署で取り組
めること(自由記載)
【アンケート集計結果】参加者:45名、アンケート回収率88.8%、
参加職種:医師、看護師、MSW、医事課・総務課、PT・OT・ST、
経験年数:1年7名、2〜5年14名、6〜9年8名、10年以上11名(平
均6.4年)、専門性理解度平均3.74、業務役立ち度平均3.73。
【考察】本会が治療に関わる演題が多く理解度や役立ち度は高くは
ないものとなった。他職種に向け平易な表現を心掛けているもの
の伝わりにくさを残した。一方で「勉強会を一緒に行いたい」な
どの意見があり本会の目的は一部を果たした。今後は他職種の発
表、他院や地域の従事者との発表会なども行っていく予定である。
P40-2
P40-3
○篠田 昭(作業療法士)
,藤川康太
○前川陽平(理学療法士),今 恒人
洛和会音羽リハビリテーション病院 リハビリテーション部
かなえるリハビリ訪問看護ステーション
重度失行症より日常生活動作の遂行が困難に陥った
事例に対してエラーレス学習を病棟生活に定着させ
た症例報告
進行性難病に対して多職種連携での専門職としての
関わりを経験した一症例
【はじめに】重度失行症により、日常生活動作が破綻した事例に対
して病棟生活と連携することでエラーレス学習の頻度を向上させ
るにつながった。エラーレス学習が運動の軌跡をつくり、運動学
習が進んだことで一部のADL動作が遂行可能になった。高次脳機
能障害に対しての訓練に連携が有用であったことを報告する。
【症
例紹介】80歳代前半の男性であり、左中大脳動脈領域の脳梗塞発
症二ヶ月後に当院転院となる。入院時評価として失行・失認・注
意障害・記憶障害・失語症などの多彩な高次脳機能障害を呈して
いた。
【経過】高次脳機能評価は日常生活動作の分析より、トイレ
動作では下衣操作・清拭動作・パット操作、整容動作では手に水
を溜めての洗顔・髭剃り、食事動作では箸やスプーン操作・開口
の程度に困難さがみられた。作業療法場面では積極的介入して運
動の軌跡が残るように正しい運動を反復して行った。また病棟で
は運動の軌跡を追えるように手順を伝え、看護師や介護士とカン
ファレンスで情報共有や手順確認を行った。
【考察】日に一回の作
業療法場面の学習だけでなく、日常生活の多くを学習機会とする
ことで学習頻度の増加とエラーの回数の軽減が出来たと考える。
カンファレンスを密に行うことで介助方法・誘導方法の変化を伝
達できた。エラーレス学習が進み、ベッド上臥位で過ごしていた
生活からデイルームに出ることやトイレに行くことができ、ふた
たび自分らしい生活を構築する手助けが出来た。
【はじめに】活動と参加を支援するため、多職種との関わりによっ
てQOL向上した症例を紹介する。【症例紹介】70歳代男性。多発
性筋炎。要支援1。妻と二人暮らし。寺での講義活動の継続と生
活における妻の介助負担軽減を希望。
【介入前ADL】椅子、便座、
浴槽の立ち上がり困難。屋内歩行はT字杖で可能だが不安定。玄
関前の階段動作および傾斜の歩行移動が中等度介助を要し外出困
難となっていた。【身体機能・環境評価】体幹・下肢を中心に筋
力強化練習、屋内ADL練習、簡単な自主トレーニングの提案を行
い、訪問時には過負荷による疲労や痛みの有無を確認。
【多職種
の関わり】福祉用具担当に機能面を伝え、住環境整備を実施。入
浴介助ヘルパー、訪問介護(生活支援)には介助方法の申し送り
を行った。
【結果】5ヶ月後に立ち上がりが物的介助で自立、屋内
歩行は両手T字杖で自立。便座、浴槽からの立ち上がりに軽介助、
玄関前の階段、傾斜は軽介助〜見守りとなる。ADL向上に伴い書
斎で作業活動の再開、ベランダで体操や自主トレーニング、屋外
散歩など体力も維持され講義活動も継続可能となった。
【まとめ】
訪問リハでは機能面だけでなく活動と参加に向けたアプローチが
重要であり、QOLの向上に繋がると考える。そのため進行性の難
病で大きな機能向上が見込めない症例では機能面の維持・改善を
図りながら、多職種と連携して福祉用具の提案やサービスの導入
など適切な環境整備が重要だと考える。
265
P40-4
P40-5
○北條徳則(理学療法士)
,中澤幹夫,引地美幸,小林裕子,
漆畑三紀,冨永晴朗,小坂優季
○辻 倫加(作業療法士),佐々木智弘,広瀬亜子,堀 翔平,
伊藤華織,高橋雅俊,山中克憲,久保田和宏
医療法人社団幸隆会 多摩丘陵病院 診療技術部 理学療法科
医療法人社団 北樹会病院
当院地域包括ケア病棟における退院に向けた多職種
連携〜60日以内の在宅復帰に向けた多重チェック
体制による取り組み〜
スムーズな在宅復帰への取り組みについての検討
〜当院リハスタッフ間の連携について〜
【はじめに】当院は2014年12月に地域包括ケア病棟を開設した。
病棟専従は理学療法士1名が担当している。算定要件の60日以内
に自宅退院に至らなかった症例を期に、職種間で情報共有を密に
する仕組みを試行錯誤してきた。多職種の方針や進捗状況を確認
し、修正する機会を定期的に設けている現状と課題を報告する。
【方法】(1)入棟後1週間:リハビリテーション(以下、リハ)報告書
提出;目標と到達見込時期を主治医へ報告(2)3週間後:病棟ADL
設定目的のカンファレンス実施(看護師・リハ);方針の相違が生
じやすい移動・排泄等の項目について協議し共有する(3)1か月後:
進捗状況確認会議実施(看護師長・リハ・MSW・栄養士);30日
を経過した症例の進捗状況から職種間の今後の動きを確認し合う 【結果】(1)退院後の生活を想定した病棟ADLの設定を職種間で早
期に共有できた(2)6ヵ月間の平均在宅復帰率89%を維持【考察】
職種間の情報共有を定期的に設けることで、職種毎の方針を早期
に意識でき、相違しやすい職種間の方針も修正できている。退院
に向けた退院前訪問指導や在宅設定、地域スタッフとの連携が適
切な時期に余裕をもって実施するためにも今回の試みは有効であ
ると考える。【課題】当院は2000年より回復期リハ病棟を有して
いる。自宅退院方針は同じでも算定期限の違いから働き方や役割
も異なり混乱する職員も少なくないため、周知に向けた勉強会の
実施が必要である。
【はじめに】当院では、回復期リハビリテーションスタッフ(以下
回復期スタッフ)が、円滑な在宅生活への移行を目指し、入院早
期と退院前に訪問調査を実施している。しかし、必ずしも当院で
の取り組みが適切であるとは言えない。今回、この実態を把握す
るため回復期及び地域リハビリテーションスタッフ(以下地域ス
タッフ)にアンケート調査を行った。
【方法】I環境やサービスの
設定とII連携(情報交換、退院後の状況把握やフィードバック(以
下FB))について5つの設問(各4択)からなるアンケートを実施
し回復期・地域スタッフ間での比較を行った。【結果】Iでは回復
期・地域スタッフとも、物理的な環境設定などハード面に対して
はできているとの回答が多かったが、介助方法の指導などソフト
面での支援が不足しているとの結果が得られた。IIでは回復期・
地域スタッフ間の情報交換が不足しているとの結果であった。回
復期スタッフからの退院後の状況把握は不十分との回答が多かっ
たのに対して、地域スタッフからのFBはできているとの回答が多
く両者に相違が見られた。【考察】回復期スタッフから地域スタッ
フへFBを求める場面が少なく、退院後、円滑に在宅生活へ移行す
るための情報交換が不十分であり、これが現在の課題であると考
えられた。退院後の生活状況の把握に対する重要性の認識が乏し
いことが示唆されたため、今後は情報交換の機会や方法を検討し
ていく必要性が考えられる。
P40-6
P41-1
○谷 有人(作業療法士)
,石原佳子,山上真弘,松岡丈司
○日高隆之(理学療法士),佐藤周平,木村暢夫,大隈和喜
医療法人誠和会 倉敷紀念病院
地域医療機能推進機構 湯布院病院 リハビリテーション科
病棟スタッフに対するポジショニング改善へ向けた
取り組み〜病棟スタッフとリハビリスタッフとの協
働に向けた検討〜
当院「地域包括ケア病棟」の対象患者とリハビリテー
ションを主とした治療効果について
【研究背景】適切なポジショニングの実施は、寝たきり患者やそ
の家族のQOLを高めるために重要である。本研究は、リハビリ
スタッフと病棟スタッフとの効果的な連携により、より良いポジ
ショニングを実行する取り組みであり、その経過を報告する。【方
法】当院特殊疾患病棟スタッフに対し、
「リハビリスタッフの病
棟に対する関わり方のアンケート調査」を実施した結果、
ポジショ
ニングや拘縮予防に関する不満度が高かった。これに対し、ポジ
ショニング勉強会の実施、ポジショニングカンファレンスの定期
的な実施、ポジショニング例の提示方法再検討、の取り組みを実
行した。4か月後、
各取り組み実行の結果を分析、
2回目のアンケー
ト調査を行い各取り組みの結果と合わせて考察した。
【結果】ポ
ジショニング勉強会の実施と、ポジショニングカンファレンスの
実施、では注意点が徐々に理解され、ポジショニング実施の際に
効果があった。ポジショニング例の提示方法は、病棟スタッフと
検討し正しいポジショニング例を手本として提示する方法に決定
した。2回目アンケート結果では、拘縮予防、ポジショニングに関
する項目の不満が、1回目では20%から50%であったが20%未満
に減少した。
【考察】各取り組みの結果から、病棟スタッフのポジ
ショニングに対する意識の変化と知識量の増加の可能性が示唆さ
れ、またポジショニングに対して受け身的な姿勢で取り組んでい
たことがわかった。
【目的】当院は半世紀にわたり脳卒中や整形外科手術後患者を対
象としたリハビリテーション(以下、リハ)を行ってきた。現在、
地域の高齢化に伴って「地域包括ケア病棟」111床を創設し、在宅
でADLの低下した患者や急性期病院から在宅に復帰する患者を
支援している。当院「地域包括ケア病棟」の利用対象者とリハ効
果、転帰について検討、考察したので報告する。
【方法】対象は平
成26年6月1日から12月31日まで「地域包括ケア病棟」に入院した
239名のうちリハ処方のあった160名(男性70名、女性90名、平均
年齢74.4±12.4歳)とした。対象者の疾患別内訳、リハ提供単位
数、ADL状況、退院先について後方視的に調査した。
【結果】リハ
対象者の疾患別内訳は、運動器91名(57%)、脳血管66名(41%)、
呼吸器2名、循環器1名であった。リハの1日平均提供単位数は平
均2.3単位で、運動器2.7単位、脳血管2.3単位であった。入院時と
退院時のFIM総合得点の比較では、運動器、脳血管とも有意な改
善を認めた(p<0.01)。退院先は自宅が142名(89%)と最も多く、
他は医療機関への転院が7名、介護老人保健施設入所が3名、介護
老人福祉施設入所が3名、その他5名であった。
【考察】
「地域包括
ケア病棟」のほとんどを運動器、脳血管で占めていた。治療介入
により高い在宅復帰率とFIM総合得点の改善が得られた。当院で
は在宅、社会復帰など本病棟構想の目的が充分に果たされている
と考える。
266
P41-2
P41-3
○御書孝彰(理学療法士)
,石川太一,櫻本裕也
○加藤玲梨(介護福祉士・ヘルパー),平田 索,山田智子,
高橋みどり
地域包括ケア病床立ち上げの取り組みについて
回復期リハビリテーション病院で働く介護福祉士の
現状と課題〜多職種と共に自立支援を行う専門職に
なるために〜
摂津医誠会病院 リハビリテーション科
医療法人五星会 新横浜リハビリテーション病院
【はじめに】当院では地域包括ケア病床(以下、病床)を去年より
立ち上げ、患者の治療、家族の支援満足度を高めるために、まず
は病床のシステムを整えた。病床ではリハビリテーションを提供
している患者について1日平均2単位以上(1単位20分)を提供する
ことが定められている。しかし開始当初、患者の状況に応じたリ
ハビリ介入の調整が難しかった。
【目的】患者に適切なリハビリ介入を提供し、施設基準を満たす。
【経過】以下の問題点が挙げられた。 ・担当職員の休日数によ
る適切なリハビリ介入日数の調整。 ・入退院による提供単位数
の変動。 ・複数職員の介入により日々の提供単位の把握。 ・
入床基準の設定。 問題点に以下の対策をした。 ・エクセルで
単位表を作成し提供単位を把握。 ・病床の担当職員を限定。 ・
入退院の事前準備のための他部署との会議に参加。 ・月始の提
供単位の設定と月途中の再設定の実施。
【結果】
適切なリハビリ介入が可能となった。
【考察】 開始当初は月平均2.3単位のリハビリ介入となった。単
位表の作成、担当職員の限定、会議の参加、月途中での提供単位
の再設定、これらを行うことにより患者に応じたの提供単位が適
切になった。今後、より患者の治療、家族の支援満足度を高める
ために、病床のシステムを円滑にするほか、周辺地域との連携を
より深めていく必要があると考える。 【はじめに】当院の介護福祉士は、多職種と同じ立ち位置で自立支
援を行う専門職になれておらず、介護福祉士自身も仕事に対して
受け身であり、専門性や役割を見出せていないと感じた。回復期
リハビリテーション病院での介護福祉士の専門性や役割を明らか
にしたいと考え、A病院に勤務する介護福祉士18名にアンケート
調査を実施した。研究にあたり、A病院の倫理委員会の承認を得
た。
【結果・考察】10のアンケート項目に対し、49のカテゴリーが抽
出された。回復期リハビリテーション病院での介護福祉士の役割
として、退院後をイメージしADL向上に繋げる関わりを目指すこ
とであると考えた。現状として、多職種との連携や情報共有が出
来ていないことが分かり、チーム外だと考えている人や仕事に対
しての不満も挙がった。専門性を活かしたケアについて、行いた
いが業務に追われて出来ない現状の中、不満から満足へ近づける
為には、介護福祉士独自の個々の援助技術を向上させた上で介護
計画の策定を視野に入れていく必要がある。
P41-4
P41-5
○松本美穂子(作業療法士)
,弘部重信,川上寿一
○森 信恵(看護師),川野友子,成瀬真弓
滋賀県立成人病センター リハビリテーション科
医療法人畏敬会 井野辺病院
在宅復帰に向けてがん患者に対する回復期リハビリ
テーション病棟の役割
音楽療法士を病棟配属にして行った院内デイの取り
くみ
【はじめに】当院は、都道府県がん診療連携拠点病院で回復期リハ
ビリテーション(以下リハ)病棟40床も有している。今回、当院
回復期リハ病棟に入院したがん患者を調査し、がん患者への回復
期リハ病棟の役割を検討する。
【対象】2009年〜2013年度に当院
回復期リハ病棟へ入院したがん患者35名。
【方法】診療録より診
断名、
リハおよび看護内容等を後方視的に調査。
【結果】診断名は、
脳腫瘍14名、大腿骨頸部骨折9名、転移性脊髄腫瘍・骨転移3名、
廃用症候群3名、その他6名。リハおよび看護内容は、病状進行を
考慮した身体・認知機能やADL能力を評価し、痛くない動作・息
苦しさがない動作・省エネ動作・長期間出来る動作等の指導。退
院時期を設定し必要最低限の環境調整と福祉用具の適応・介助手
段の検討。退院後に必要な医療的管理の手技指導と物品の準備。
退院について患者や家族の思いを受け止め、今までやっていたこ
と・これからやりたいこと等の実現に向けた検討。
【考察】がん
患者の回復期リハ病棟での第一目標は、“良いタイミングで、より
良い状態で自宅退院すること”であり、“機能回復”や“ADL改善”
は二次的な目標となり、タイムリーな時期に退院支援を行うこと
である。また、リハ医を中心としたチームで『家に帰りたい!』思
い・希望等の実現に向けて退院時期を見極め、その時期に応じた
在宅生活の準備を行い、その思いや希望を病院から在宅スタッフ
へ引き継ぐ役割もある。
【はじめに】A病院は112床のリハビリテーション専門病院で、60
床の回復期リハビリ病棟を持っている。回復期病棟入院患者の平
均年齢は76歳であり、その内の約36.5%が高次脳機能障害や認知
症を併発している。平成26年度より、音楽療法士(以下MT)が看
護部所属として勤務することになった。一年間取り組みを行い、
音楽療法士による院内デイの定着が図れ、参加中の患者に変化が
見られた。
【目的】音楽療法士による院内デイを定着させ、患者の昼間の離床
を図る。
【方法】院内デイの様子を参加観察し、患者の変化をみる。
【結果】MTがナースセンター前に居る患者や、不穏のある患者の
部屋に個別に訪問し、ゆっくり話したり、歌を聞かせたり、一緒
に歌ったりした。音楽療法に慣れた頃より患者を食堂へ誘い、集
団での院内デイへ移行した。初めは時間設定し、3〜4人から院内
デイを行った。キーボードに合わせ唱歌を歌ったり、楽器を鳴ら
したり、歌詞を音読したりした。現在、一日の参加人数は延べ平
均8,6名であり、毎日実施できている。入院時こちらの指示が入
らずADL全介助だった患者が、スタッフや他の患者と穏やかに話
し、ADLも見守りから軽介助レベルまで改善が見られた。MMSE
(カットオフ9/30点)、HDS-R( 11点)やFIMの認知項目( 16点)の
点数的には改善はなかった。
267
P41-6
P42-1
○辻本拓磨(作業療法士)
,見吉一輝,久松清隆,上林真由美,
岡本悠吾,森 駿太,小林朋奈,島村 暁
○松本陽紀(作業療法士),弓田顕弘,佐藤智美
当院における車椅子・シーティング班の取り組み
車椅子ブレーキ掛け忘れ時に作動する注意喚起装置
の試作(第一報)〜シートマッサージャーによる振
動刺激を用いて〜
京都武田病院 総合リハビリテーション科
社会医療法人将道会 総合南東北病院 リハビリテーション科
【はじめに】半側空間無視を有する片麻痺患者に対し、車椅子ブ
レーキの掛け忘れをブザーやランプで注意喚起する装置は幾つ
か報告されている。しかし、ブザーは周囲への配慮を要し、ラン
プは眼科疾患を有した高齢者には見えづらい。そこで我々は、振
動刺激のみで注意喚起する装置を作成し、安全性・再現性の確
認、及び振動刺激が適切に知覚されるかを検証した。
【方法】装置
は、TWINBIRD社製シートマッサージャー EM2535を車椅子座
面シートとして用い、ブレーキを1側掛け忘れると通電するよう
なスイッチ回路を組み込んだ。安全性・再現性確認として、1000
回以上の反復作動、10分間の長時間作動実験を実施。知覚検証実
験では、健常成人26名(男性13名、女性13名、年齢平均25.4±標
準偏差4.2歳)に対し、BMIを算出の上、薄手厚手の2種類の下衣
素材における知覚所要時間を計測した。性別・下衣素材別をt検
定、BMI区分別(JASSO)を分散分析で検証した。時間計測には
SONY DCR-SR65での撮影及びWindows Liveムービーメーカー
のタイマー機能を用いた。
【結果】反復作動・長時間作動後も、作
動ミスや発熱等の不具合は生じなかった。知覚所要時間に関して
は、性別・下衣素材別・BMI区分別において有意な差は認めなかっ
た。
【考察】装置は安全に作動し、健常若年層において下衣素材や
肥満度に関わらず適切に振動刺激を提供できた。第二報では、65
歳以上高齢者、片麻痺患者での検証を報告していく。
【はじめに】PT・OT・ST等の療法士が車椅子に関わる機会は多く、
車椅子・シーティングにおけるその役割は大きい。しかし、当院
では車椅子・シーティングの正しい知識・技術を習得し、病棟生
活や在宅生活を見据えて車椅子・シーティングを積極的に実践し
ているセラピストは少ないのが現状であった。その状況を刷新す
べく2年前より車椅子・シーティング班を立ち上げた。これまで
の取り組みをまとめ紹介する。
【活動目標】セラピストの技術・知識の向上及び実践への汎化
【活動の概要】初年度は、活動目標を知識・技術の向上に絞り、班
内での役割分担、物品の修繕、整理、物品購入時の選定や班員に
よる勉強会、リハスタッフに向けた外部業者との合同勉強会を開
催した。 2年目には、評価表の作成、車椅子・シーティング検討
会の実施、車椅子・シーティングケーススタディの実施、リハス
タッフのシーティングコンサルタント養成研修への参加とその伝
達講習を通して啓蒙活動を行い、相談窓口としての役割を担える
ように活動を展開した。
【今後の課題と展望】勉強会や車椅子・シーティング検討会を実
施することで、車椅子・シーティングの必要性や相談窓口として
の成果はあった。今後は、入院から定期的に車椅子・シーティン
グが実践されるシステム化や効果判定、他職種への車椅子・シー
ティング意識の刷新を目指していきたいと考えている。
P42-2
P42-3
航空関係者向け車椅子セミナーの開催で見えてきた
こと
当院における装具検討会の取り組み
第3報:gait judge system導入
○剣持 悟(その他)1),児玉真一2),高柳友子3),大槻正伸4),
木ノ下宏5),黒沢直子5)
○岩崎 亮(理学療法士)1),中村 悟2),林健太郎1),辻智香子1),
上田大稀1),柴田育美1),森田郁子1)
1)一般社団法人日本リハビリテーション工学協会,2)横浜市総合
リハビリテーションセンター,3)日本身体障害者補助犬学会
4)全日本空輸株式会社,5)日本航空株式会社
1)恵心会 京都武田病院 総合リハビリテーション科
2)恵心会 京都武田病院 整形外科
電動車椅子使用者が航空機を利用する場合、航空法上バッテリー
の安全が担保されていなければ搭載することはできない。バッテ
リーの種類を確認し、その種類に応じた搭載手段を選択するとと
もに、
不具合がないか目視確認を行う必要がある。使用機材によっ
ては貨物室のドアサイズの制限で搭載できない場合もあり、また、
搭載のための手続きに時間を要するため出発間際に搭乗手続きを
行った場合には、車椅子の搭載が間に合わないというリスクもあ
る。スムーズに航空機を利用するためには、事前に車いすのサイ
ズや重さ、バッテリーの種類を告げた上で、搭載・搭乗可能か確
認する必要がある。また、早めに空港で手続きを行い、時間に余
裕を持って行動する必要がある。受け入れ側は、車いすの操作や
取り扱いに習熟して、お客様に安心して空港および航空機を利用
してもらいたいという思いがある。限られたスペース、時間の中
で、誤作動、破損、紛失の防止や、航空機への運搬・搭載、しっか
りとした固定が必要になる。重量のある電動車椅子の場合は作業
者の安全にも配慮しなければならない。今回、日本航空・全日本
空輸主催、日本身体障害者補助犬学会共催で、羽田空港にて航空
関係者向けの車椅子取り扱いセミナーを実施し、アンケートを回
収した。2020年に向けて、今後どうあるべきか考える契機となっ
たので報告する。
【はじめに】当院では2013年10月より理学療法士(以下PT)による
装具検討会(以下、検討会)を実施している。前回の第2報では検討
会の実施により作製までの日数が短縮したことを報告した。これ
まではビデオカメラ1台を使用していたが、2014年10月より簡易
歩行分析システムである川村義肢社製のgait judge system(以下
GJ)を導入したので、その効果について報告する。
【対象および方法】経験年数2年〜15年のPT19名を対象とした。
導入後10例の検討会終了時に対象者へアンケートを配布し、導入
前41例と比較した主観的評価を評価項目とした。
【結果】GJ導入に対して5点満点で4点以上と評価したのは19名中
15名、78%であった。「問題点が分かり易い」
「客観的」との肯定
的意見が多かったが、一部では「不慣れのため評価できない」との
否定的意見があった。
【考察】今までの検討会では肉眼による歩行解析が可能な経験者
の意見が尊重されやすく、議論の活性化が図れていなかった。GJ
は三次元動作解析システムと比較して簡便に歩行周期中の足関節
に関するデータが得られ、膝関節の状態を推測することにより装
具選定に有益だと考える。アンケート結果は概ね満足と評価され
たが否定的意見は使用経験の少なさを示唆していた。今後、GJに
よる解析結果を肉眼による歩行解析にフィードバックすることに
より経験の少ないPTでも適切な装具を選定できると考える。
268
P42-4
P42-5
○松田靖史(その他)
,望月康平,川村 慶,平岡 諒,井上友希
○起定加代子(介護福祉士・ヘルパー),尾崎綾子,僧根早苗,
根釜加寿美,立田広子,岡本ひろみ
川村義肢株式会社 技術推進部 K−Tech
一般財団法人神戸在宅ケア研究所 神戸リハビリテーション病院
歩かない義足の新しい移動法 Wheel Foot
安全で使いやすい杖立ての考案と設置方法の検討
【はじめに】人の移動は下肢を上下と前後に振り子運動する歩行
であるが、運動効率からみると二足歩行より車輪移動がより抵抗
が小さくエネルギー効率も良く市街地の移動には向いている。
【背
景と目的】車輪は回転運動であり上下の位置エネルギーの損失が
無くスムースな連続移動である。初速を得た以降は体重などの慣
性を活かして効率の良い移動が可能であり、小さな転がり抵抗だ
けの車輪は二足歩行よりエネルギー効率も良く、市街地の移動に
は向いている。有為な移動手段の獲得を目指し義足に小径車輪を
用いた車輪足部を開発した。
【車輪足部の製作】ピラミッド構造の
接続部を持つモジュール式義足に使用できる車輪足部を4種類試
作した。・直径76mm硬質ウレタン製車輪を持つ直列2輪式・前車
幅70mm、車軸長さ240mm前並列2輪+後1輪の3輪式・市販イン
ラインスケート部品を用いた直列4輪式・キャスタートレール操
舵機構を持つ前後2輪式【試走と結果】模擬義足を使い健常者4名
による試用と、日常から義足に慣れた4名による試用を行った。・
整地の移動は小さな転がり抵抗により快適である。
・走行時に断
端+ソケットに荷重するため義足初心者が困難である義足に体重
依存するリハビリテーションに有効である。
【まとめ】使用者の
簡単な姿勢変化で操舵操作ができる高効率に移動可能な車輪付き
義足足部を試作した。整備された市街地では気持ちの良い移動が
可能である。
【目的】回復期リハビリテーション病棟において、杖使用患者は常
時3割程度であるが、機能回復に伴い杖を使用するケースが増え、
安全に杖歩行ができる環境整備が必要である。しかし、病棟に設
置させている杖立ては劣化し、安全に機能的に使用できる状況で
はなかった。そこで、介護ケア係で新しい杖立を考案し、設置方
法を検討する過程において、患者の立場に立つ視点の重要性につ
いて示唆が得られたので報告する。【方法】1.現状把握・杖使用患
者への調査 2.杖立てに求める条件の検討 3.試作・モニタリン
グ 4.改善・完成 5.完成品についての調査 6.制作・管理方法
の統一【結果】調査結果から、杖立てに求められる条件として耐久
性・
「上から差し込む」のではなく安全に出し入れしやすい形状・
安全な固定方法と設置位置・認識しやすい色と形・低コストがあ
げられた。この結果から、「平行に差し込む」タイプの杖立ての
形状を考案した。そして、開口部に掛かる圧力や衝撃に耐えられ
る素材を選択、耐久性を確認しながら、使用に適した設置方法を
確立することができた。
【考察】着脱方法が簡単でどこにでも取
り付けることが出来る杖立てを考案したことで、高さや角度、位
置の選択が可能となり、杖立てを入れるために患者が無理な姿勢
をとることがなくなった。患者の立場に立ち、様々なアプローチ
を試みながら、杖立てに患者が合わせるのではなく、患者の状態
に合った杖立ての設置が可能となった。
P43-1
P43-2
○本城和成(理学療法士)1),吉田保奈美1),中谷 努1),清水英樹2)
○鈴木琢也(理学療法士),服部亜希子,小口和代,宗像沙千子
1)医療法人白山会 白山リハビリテーション病院
2)名古屋大学 大学院医学系研究科(リハビリテーション療法学専攻)
医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 リハビリテーション科
PTによる入院患者の退院後を想定した動作指導は
退院後の生活に役立っているか〜より良い退院支援
に生かす為のアンケート調査〜
当院回復期リハビリテーション病棟における独居患
者の退院状況
【目的】当院回復期リハビリテーション病棟(以下、リハ病棟)を
退院した、発症前に独居生活を行っていた患者の退院状況につい
て調査し、その要因について検討した。
【対象】2014年4月から
2015年3月にリハ病棟を退院した226名のうち、発症前より独居
生活を送っていた患者30名(男性12名/女性18名/平均年齢68歳
/独居率13%)を対象とした。
【方法】退院後に独居生活が可能で
あった患者を独居群、独居困難であった患者を非独居群に分類し、
退院時のFIM運動項目・認知項目と患者の生活背景について調査
した。
【結果】独居群は19名( 63%)で、FIM運動項目合計の最小
は69点、認知項目合計の最小は22点だった。各項目の最小は、理
解/表出/社会的交流/問題解決/記憶(点)で、6/6/3/1/4だった。非
独居群は11名で、運動項目合計が69点以上だったが独居出来な
かった患者は4名だった。4名の転帰先は介護付き施設への入所
や両親との同居などで、認知項目合計は27〜35点だった。【考察】
FIM運動項目が70点を超えるとセルフケアが自立し、介護者が不
要となる傾向があると報告されており、今回の結果も独居群FIM
運動項目合計点の最小はほぼ同等であった。認知項目において合
計点数が低値でも、コミュニケーション能力が保たれていれば、
サポート次第で独居可能であることが示唆された。一方、認知機
能が保たれていることで、あえて独居に戻らないという選択をし
た患者もいたのではないかと推測された。
【目的】当院では退院支援への取り組みとして、入院中に家族から
の情報収集や家屋訪問、外泊訓練を実施しているが、この退院支
援が患者の退院後の生活にどの程度役立っているかは明確ではな
い。本研究は、入院中の理学療法士の指導内容が退院後にどの程
度有効かを明らかにすることを目的とした。
【対象と方法】対象は当院から自宅へ退院した患者またはその家
族25名で、玄関アプローチでの介助量に関して、郵送によるアン
ケート調査を行った。また、回答を得た患者を入院中に担当して
いた理学療法士から指導内容についての情報を得た。患者へのア
ンケート内容は、入院中と自宅へ退院してからの介助量を1.介助、
2.見守り、3.自立の3段階で尋ねるもので、入院中と退院後の介助
量に不一致が生じた者については担当療法士からの情報を参考に
してその要因について検討した。
【結果】有効回答数は19通(回収率は76.0%)であった。スピアマ
ンの順位相関係数を用いて入院中と退院後の介助量の一致度を求
めたところ、玄関アプローチ(rs=0.57,p<0.05)と玄関上がり
框(rs=0.83,p<0.01)の両者に有意な一致が見られた。しかし、
19名中4名には介助頻度の増減や体調の変化による不一致が見ら
れた。
【考察】今までの退院支援への取り組みは概ね適切であったと考
えられ、今後の継続が望まれる。しかし、予測できる問題に対す
る対応策の提示も必要と思われる。
269
P43-3
P43-4
○沼田 歩(作業療法士)
○神崎正成(作業療法士)
一般財団法人 太田綜合病院付属 太田熱海病院
IMSグループ 明理会 行徳総合病院 リハビリテーションセンター
大切な作業の再開が自宅退院の実現に繋がった事例
−なんだ、昔と同じ父ちゃんだ−
急性期病院でやりたい事に焦点を当てたリハビリ
テーションの提供を目指した取り組み
【はじめに】今回廃用症候群を呈した事例を担当した。事例は自宅
に帰りたいと強く望んだが、家族は施設入所を希望していた。作
業療法士は、事例を象徴していた野菜作りという作業に着目し介
入し、同時に家族に対しても事例を再び作業的存在として認識で
きるよう促した。結果、家族が事例を再び「昔と同じ父ちゃんだ」
と受け入れ自宅退院が実現した。
【事例】80代男性、廃用症候群、
既往に多発脳梗塞。車イスADLはほぼ全介助。妻との二人暮らし
で子供は皆独立し遠方に在住。本人は自宅退院を希望するも、家
族にその意向は無く施設を申込み済み。
【経過】面接で事例は、定
年退職後の生きがいは野菜作りだったと語り、しばらく遠ざかっ
ているその作業の再開を強く望んだ。一方家族は、元気な頃の父
親とのギャップに戸惑い「少しでも元気になれば」と漠然と語っ
た。そこでADOC
(作業選択意思決定支援ソフト)を導入した。大
切な作業を選択する過程で、父親としての事例を想起し、作業へ
の想いを語れるよう促し、ADLの自立度向上に加え、野菜作りの
再開が共通目標とした。
【結果】事例はイキイキと率先して作業
に取り組み、収穫したトマトを自慢げに家族に振る舞った。その
様子に家族は驚きながらも「なんだ、昔と変わらない父ちゃんだ」
と笑った。父親の作業をそばでみてきた娘は「父ちゃんが帰りた
いって言うなら」と同居を決め、入院から半年、一度は諦めてい
た自宅退院が実現した。
【はじめに】昨今の医療改訂及び地域包括ケアシステムに示される
様に、急性期病院は専門性の強化による入院患者の早期退院が求
められる。急性期から回復期へのシームレスな移行、地域社会へ
の直接退院を考える上では、ADL・QOLの向上を目的とし、作業
を意識した急性期作業療法の役割は重要である。しかし、在院日
数削減を求められるなか、急性期病院では全身状態の管理や身体
機能に重点を置くことが余儀なくされる。急性期作業療法の意義
を模索する上で、今回Aid for Decision-making in Occupation
Choice
( 以下ADOC)を用いてやりたい事・作業に焦点を当て調
査を行ったところ興味深い結果が得られたため報告する。【方法】
意思疎通が可能な18歳以上の入院患者10名に対しADOCを用い
た面接を行った。
【結果】重要としている作業は、身の回りの事
5/10名、移動4/10名、家庭生活3/10名、社会生活6/10名、余暇活
動9/10名という結果であった。
【考察】本調査において急性期で
あっても患者個人の作業に対する思いの強さが示された。作業療
法士は対象者が文化や自らの価値の中で重要と考える作業を通じ
て、対象者の意欲に働きかけることができる。意欲の向上は大脳
の興奮を高め学習効率の向上、筋出力の向上等の効果が期待でき
急性期には極めて重要である。又、ADOCで得られる情報は回復
期病院や地域社会への早期復帰に繋げるリハビリテーションの展
開として極めて有用な情報であると考えている。
P43-5
P43-6
○船谷俊彰(作業療法士)
,松田文一
○黒田清綱(その他)
パナソニック エイジフリーショップス株式会社
パナソニック エイジフリーショップス株式会社
認知症(レビー小体型)高齢者に対する住環境整備
の工夫
住環境整備における、他職種、多方面からのプラン
ニングの重要性
【はじめに】認知症(レビー小体型)高齢者の住環境整備において
配慮すべき点は、症状の特性を理解した上で環境の変化を少なく
し安全性を確保しなければならないことである。今回、排泄時の
介護負担軽減を目的に住宅改修を行なった事例を報告する。
【事例】73歳男性、165cm、65kg、レビー小体型認知症( 1年前か
ら進行している)
、要介護4、屋内移動:見守り、排泄、入浴:一部
介助、食事:自立、主たる介護者との二人暮らし。問題点は、夜
間トイレの回数( 4〜5回)が多く、転倒のリスクが考えられるた
め妻の見守りが必要など介助量が多い。具体的には、1.廊下につ
かまるところがない。2.敷居等段差、扉が開き戸であるためドア
の開閉時に転倒のリスクがある。3。便器への着座が行い難いで
あった。プランは、手すりの評価を行なった上で、廊下に手すり
を設置、段差の解消、開き戸から引き戸に変更、トイレに手すり
の設置を行なった。
【結果・考察】改修後、夜間トイレが自立になった。
(妻の見守り
の必要なし)1年後のモニタリングでも変化なく自立できていた。
レビー小体型認知症は、パーキンソニズム、視覚認知障害、視空
間認知障害が出現すると言われている。今回手すりの評価を行い
安全性が確保されることから改修を行なった。症状を理解し慎重
な対応が重要である。
【はじめに】在宅復帰に向けた住環境整備をする上で、主たる介護
者が夫婦どちらか一方である場合が少なくない。介護負担を軽減
する住環境整備にとどまらず、他職種と連携しプランニングの結
果、介護者の生活スタイルも尊重され、生活環境の維持が実現で
きた事例を紹介する。
【症例】56歳男性、170cm、55kg、脳梗塞(右麻痺)を発症し、入院中。
ADLは室内外共に介助用車椅子での移動。排泄は全介助、入浴は
週2回の訪問入浴を予定。入院前は夫婦共に、2階フロア中心の生
活であったが、退院後は、夫婦共に1階での生活を余儀なくされる
ため、1階の環境整備、特に、トイレまでの動線確保が課題であっ
た。動線には、多くの障害があり、検討の結果、トイレ自体の位
置を見直すプランとなった。
【考察・結論】トイレを1階寝室内に新設することで、介助で排泄
が可能になった。建築士という立場から、ご本人のADLを維持で
きるよう住環境整備を行うだけでなく、多職種と連携することで、
呼出ボタン、外出用スロープ等、出来る限り、現在の2階での生活
基盤を崩さぬような住環境プランを提案できた。結果、介護負担
の軽減のみならず、介助者自身のライフスタイルの維持に貢献で
き、2階で生活できるという介護者の新たな目標を生むことがで
きた。この新たな目標を生み出すために、他職種、多方面からの
プランニングは重要である。
270
P44-1
P44-2
○後藤貴恵(作業療法士)
,中山友里
○高橋和久(理学療法士),佐藤志穂美
総合リハビリテーションセンター みどり病院
医療法人尚豊会 みたき総合病院
多職種協働で光るOTに〜回復期OTの『症例紹介
会』におけるアンケート調査からみえてきたもの〜
エゴグラムを使用した年間個人目標の立案について
【はじめに】回復期リハ病棟におけるチームアプローチの必要性は
疑う余地はないが、日々の多忙な業務の中で、質の高い連携を実
現させるのは容易ではない。何故なら多職種協働は個々人の専門
性の高さが前提となるからである。回復期リハ病棟の誕生を機に
リハビリスタッフの量的拡大が進み、若手のスタッフが大半を占
める病院・施設も多い。当院回復期OTの実情も同様である。そ
こでOTとしての専門性の向上を目的に、定期的な症例紹介会と
いう取り組みを1年間実施し、その結果をアンケート調査を用い
報告する。
【対象・方法】対象は症例紹介会を1年間実施した22〜
35才のOT10名。方法は選択式、記述式の無記名質問紙法。内容
は症例紹介会の時間・頻度・件数・満足度・治療業務への変化の
有無とした。【結果・考察】アンケート結果から、症例紹介が治療
業務に変化を与えたことが分かった。経験5年目以下のOTでは、
様々な意見を聞くことで患者との関わり方や治療の進め方の参考
となり、
OTとしての視野が広がったとの意見が多数あった。また、
経験5年以上のOTでは他のOTと情報共有をすることで的確なア
ドバイスが行えたとの意見があり、新人教育として有用であった
と考える。さらに他職種とのコミュニケーションのきっかけとな
ることもあり、チームアプローチにも有益であったと考えられる。
しかし、意見を述べるスタッフが一部に限られる等、内容や進行
には今後の課題が残った。
【緒言】エゴグラムは、自己理解(性格特性や行動パターン)と自
己成長を目的とし、医療機関での心理療法、企業研修、学校教育
などに活用されている。リハビリ科にて、エゴグラム結果を基盤
とした年間個人目標を立案する研修を実施し、本研修に対する満
足度と、リハビリ科職員全体の特徴について検討した。
【対象と方法】リハビリ科職員21名に対して、約1時間のグループ
ワークを実施した。内容は、エゴグラム(新版TEGII)の実施と分
析・対策の説明とした。研修終了後にアンケート調査(4段階評価)
を実施した。
【結果】アンケート調査は、1.自分自身を把握できたか、2.年間個
人目標は立てやすかったか、3.今後の自分の参考になったかの
質問に対し、すごく良かった、良かったのポジティブな回答が
100%であった。また、リハビリ科職員全体の特徴は、Critical
Parent(CP)が低く、Adapted Child(AC)が高い傾向であった。
【結論】本研修の満足度は高く、自己理解を基盤とした年間個人目
標を考える良い機会が提供できたと思われる。リハビリ科職員全
体の特徴は、
(CP)協調性は高い反面、遠慮しがちであることと、
(AC)他人を批判しない反面、ルーズである傾向が示された。今
後は、リハビリ科全体の特徴を配慮しながら、立案した年間個人
目標の継続したサポートが課題である。
P44-3
P44-4
○大沢竜太朗(理学療法士)
,鈴木秀利,長瀬明弘
○鈴木綾香(作業療法士),瀬底正仁,島村耕介
財団医療法人謙昌会 総合リハビリ美保野病院
リハビリテーション科
西横浜国際総合病院
当院回復期第3病棟における新人PTOT教育の取り
組みと課題について
当院における臨床教育の風土づくりへの取り組み新
採用者研修への参加意識からの一考
【はじめに】今までの当院回復期第3病棟の新人教育は、統一され
た目標が無く指導者となるセラピストの若年化により指導技量の
差が問題となり指導内容に偏りが生じていた。今回、教育体制を
再構築し、統一した目標を取り入れたのでその現状と成果、今後
の課題について報告する。
【取り組み】平成26年度入社の新人セ
ラピストのうち回復期病棟に配属された4名(PT2名、OT2名)に
対し、経験年数3〜4年目のセラピスト4名が新人指導を行った。
当院回復期第3病棟新人教育の基本的構造として1.PT、OT共通
の取り組みとした。2.月ごとの目標を立て1年間を通して指導を
行った。3.指導内容をチェックシートにまとめ指導内容に不足が
ないようにした。4.月に一度、各指導者と病棟リーダーとで会議
を行った。1年間の指導の後、新人・指導者にアンケートを実施
した。
【成果と課題】1年を通して関わることについては新人・指
導者共に良いという結果になった。しかし課題として、新人と指
導者で目標を共有できなかったことが挙げられた。またチェック
シートの記載方法や目標設定、指導に充てる時間不足が挙げられ
た。
【まとめ】教育体制は試行的であり、指導者の業務負担も見受
けられた。今年度はチェックシートや記載方法、目標設定の更新
を行い、時間・内容を把握するために指導記録をつけながら新人
指導を行っている。継続しながら時間や内容・目標を再検討し、
新人指導の展開に繋げていきたい。
【はじめに】当院リハビリテーション部の新採用者研修は、On the
Job Trainingを主体としたものであり、それには職場全員の参加
が必要と言われている。今回、新採用者研修プログラムを通して
臨床教育の風土づくりを試みた。スタッフの参加意識を調査した
ので課題とともに報告する。
【取り組みと調査方法】担当者主体で、教育計画の立案、周知と参
加の呼びかけ、マニュアル作成、シミュレーションした後、研修
を実施した。初期研修終了後に、新採用者(8名)と既存スタッフ(39
名)を対象として研修の理解度・期間・内容・目的について17項
目のアンケートを実施し、スタッフの役割ごとに比較した。
【結果】有効回答率100%。研修の理解度は、良い:38%、どちら
かといえば良い:63%と良好な結果が得られた(新採用者のみ)。
内容について、新採用者・プリセプターは全項目に対し、75%以
上良い・どちらかと言えば良いと回答。しかし、SVや直接的な役
割なしの者は、未参加のためわからないとの理由で50〜80%が未
回答であった。研修目的についても同様の結果であった。
【考察】今回の研修は一部スタッフで企画・運営した。直接関わ
りのないスタッフは、研修内容の把握が曖昧であり、参加意識も
低くなった。全員参画で実施できなかったことが課題と考えられ
る。今後、より多くのスタッフに役割を分担し、周知・参加を確
実に進めていくことが必要である。
271
P44-5
P44-6
○井出 大(理学療法士)1,2),山本 徹1),星本 諭1),
木野田典保1),齋藤健一3),池田幸子4),西村亜紀子5),大澤吉隆5)
○田村邦彦(理学療法士)1),葉山靖明2),櫛田美知子3),三谷 健1),
池上舞子4)
1)医療法人社団永生会 地域リハ支援事業推進室,2)医療法人社団永生会
南多摩病院 リハビリテーション科,3)八王子市地域包括支援センター高尾,
4)八王子市地域包括支援センター堀之内,5)八王子市福祉部介護保健課
1)医療法人社団土合会 渡辺病院,2)株式会社ケアプラネッツ
3)八王子市地域包括支援センター高尾,4)老人保健施設 シオン
地域リハビリテーション支援センターと八王子市と
の協働で3年間実施したケアマネジャー研修の取り
組み
実践から学ぶ研修を開催して
〜実践型研修の有用性に関する検討〜
われわれは、昨年より、当事者と医療従事者や介護職が共に参加
する実践研修を、当事者と共に旅行を実践しながらその場で知識
や技術の研鑽をする目的にて開催した。その内容を報告し、開催
後収集したアンケート結果を踏まえ、この研修の有用性について、
若干の考察を交え報告する。この研修は、リフトバスに乗車し移
動しながら、バス乗車中に、当事者の経験を聞き、その経験に基
づき、情報交換や意見交換を行い、日帰りで旅行を行う実践研修
である。さらに、旅行という活動を通じ、様々な経験を得る研修
でもある。加えて、参加や活動の体験として、当事者が参加でき
る場としての側面も有している。今回は、当事者4名、当事者付
き添い2名、医療従事者や介護職8名の参加にて、「第一回実践か
ら学ぶ研修」と題して開催した。アンケート結果より様々な反響
が得られた。今回、新しい取り組みのため、参加前はイメージも
つけにくく、どのような研修になるか検討もつかない方が多くい
らっしゃった。しかし、参加を通じ、
「実体験の素晴らしさを感
じた」
、
「医療従事者や介護職にとって、机上の空論でなく、実体
験の有用性を感じた」という感想が得られた。今回参加した、当
事者の大きな変化も伴い、参加者の中に、この研修の有用性を感
じて頂けた感がある。今後も継続し行う中で、研修としての質の
向上を目指しながら、
「旅行」の有効性を存分に引出し、机上でな
い実体験研修を進めていきたい。
【はじめに】当法人は平成15年から東京都より南多摩地域リハビ
リテーション支援センターに指定され様々な事業を行ってきた。
平成24年から26年まで市内在勤ケアマネジャーを対象に八王子
市、地域包括支援センターと協働し、リハビリテーションの適切
な活用に関する研修を実施した。今回、この3年間の取り組みを
報告する。
【研修会概要】研修内容は東京都リハビリテーション協議会研修テ
キスト検討部会により作成された「典型事例から学ぶ」脳卒中編、
廃用症候群編、摂食嚥下障害編に準拠し、平成24年度は脳卒中、
25年度廃用症候群、26年度摂食嚥下障害をテーマに各年度2回開
催した。研修会は講義、演習、講評から構成され、各年度とも6月
より準備作業部会を開始し、12月以降に研修会を開催した。案内
送付は八王子市福祉部介護保険課が実施し、研修会終了後には各
回とも同一の満足度に関するアンケート調査を実施し分析した。
【結果とまとめ】参加者数は平成24年度が258名、平成25年度が
160名、平成26年度は176名であり、3年間で合計延べ人数は594
名であった。またアンケート調査結果から研修会の満足度につい
ては平成24年度91%、平成25年度91.5%、平成26年度96.5%と
各年度ともに良好な結果が得られていた。
P45-1
P45-2
○出口翔子(介護福祉士・ヘルパー)
,三輪繭子,坂野 恵,
山本幸代,吉田和雄
○安西 望(看護師),前泊まどか
医療法人知邑舎 岩倉病院 回復期リハビリテーション病棟
医療法人おもと会 大浜第二病院
居室環境チェックリストを用いての転倒予防と職員
の意識調査
転倒転落アセスメントスコアシートの妥当性について
【はじめに】当院では居室での転倒件数が多い。過去3年のヒヤリ
ハットから人的・物的環境設定ミスが増加し、所在の把握が必要
な患者を居室で一人にした職員の判断ミスが多い事が転倒減少し
ない要因と捉えた。
【目的】職員が訪室する機会を増やし、居室環
境に対する意識不足改善。環境設定ミスによる転倒を無くす。居
室環境を一定に保つ。
【方法】H27.1〜開始。物的・人的環境を
踏まえた9項目のチェックリスト作成。運動FIM60点以下・認知
FIM25点以下を対象に、居室環境を9時・20時にチェックリスト
を用い確認する。月毎に職員へアンケートを実施し居室環境に対
する意識調査を行う。
【結果】対策前1、2月25件中居室での転倒
は20件。対策後3、4月は48%減少した。アンケート結果職員全体
の75%が以前よりも居室環境に意識が向いていると答え、対象者
以外の居室にも意識を向けていると34%が回答した。
【考察】居
室環境による転倒件数は減少傾向にあるが、対象者の転倒を防ぎ
きれなかった。環境設定ミスによる転倒もあり、今後も環境・患
者に対する意識向上は必要と考える。対象者以外の環境意識は未
だ低く、職務状況や患者の居室移動により意識が薄れる事もある。
どの様に意識向上・維持を行うか、入院患者全体へ目を向け意識
の低い職員へのアプローチ方法が課題と考えられた。
【まとめ】
定期的にチェックリストを評価・改善し、職員の意識向上する方
法を模索してこれからも取り組んでいきたい。
【はじめに】A病院回復期リハビリテーション病棟は、高次脳機能
障害を伴う脳血管疾患の患者が50%以上を占め、認知症を有する
患者も多い。平成25年度の転倒は83件、インシデント・アクシデ
ント報告総数の22%を占めていた。転倒の減少へ向け転倒転落ア
セスメントスコアシート(以下スコアシート)の妥当性を検証し
た。
【方法】平成26年4月〜8月に入院していた全患者151名の危険度
別の転倒転落発生率を算出した。
【結果】入院患者の危険度は、1が7名、2が46名、3が98名。転倒は
23件で、危険度1が1名、2が8名、3が14名で、危険度別の発生率は、
危険度1、3の14%に対し、2は17%であった。
【考察】発生件数は危険度3で最も多いが、危険リスクは危険度2の
患者で最も高い事から、現在使用しているスコアシートは、妥当
とはいえない。回復期リハビリテーション病棟に入院する患者は、
90〜180日間の入院期間中でADLが回復していく。そのため、
患者の回復過程に合わせた危険予測と対策が必要である。
【おわりに】今後はスコアシートの改定と、評価時期の検討をし、
転倒事故防止を推進したい。
272
P45-3
P45-4
○村上浩美(看護師)
,久保行雄,網代淑美
○大島栞奈(介護福祉士・ヘルパー)1),服部宏香1),隠明寺容子1),
阿部紗千恵1),行本結衣1),川上ゆかり1),樋野稔夫1),寺中亜耶1),
井上 優2),平川宏之3)
回復期リハビリテーション病棟における転倒アセス
メントシート検討後の転倒・転落の現状
Square Stepping Exercise の実施頻度が通所リハ
ビリテーション利用者の身体機能に与える影響
藤聖会 八尾総合病院
1)社会医療法人全仁会 倉敷平成病院 通所リハビリテーション
2)社会医療法人全仁会 倉敷平成病院 リハビリテーション科
3)社会医療法人全仁会 倉敷平成病院 整形外科
当病棟では平成24年の時点で、年間100件以上の転倒・転落事故
が発生している。入院もしくは転科時に病棟独自の「転倒アセス
メントシート」を用いて転倒危険度評価を行い、低リスク1・中リ
スク2・高リスク3の3段階に分類し、周知・対応を行っている。
主にPT・OTが行っていた評価をNSも行うようになった。以後、
全体の転倒件数は半数程度まで減少した。しかし、低リスクと評
価された患者の転倒インシデントが度々報告されている。そこで、
平成25年2月から26年10月までの転倒・転落インシデントレポー
トを振返り、その要因から、転倒アセスメントシートの見直しを
した。その結果、全体の転倒件数ではリスク1:24件(15%)、リス
ク2:73件(46%)、リスク3:62件(39% )であり、リスク2がリス
ク3を上回っていた。このことから、リスク評価が高い事が必ず
しも転倒には結びついておらず、またリスクが低い場合でも転倒
する可能性があることが明らかになった。これはリスクが高い患
者には危険や予防に対する意識が高くなり予防対策を確実に実施
している。リスクが低い場合は、危険や予防に対する意識が低く
なりやすく、対策が十分に取られていない場合が示唆される。 故
に、高リスク者への対策・対応を継続すると共に、現アセスメン
トシートでは十分に把握する事ができない隠れたリスクに対して
も目を向ける必要があると言える。
【目的】Square Stepping Exercise(SSE)の実施頻度が要支援・要
介護認定者である通所リハビリテーション(通所リハ)利用者の身
体機能に与える影響を検証する。
【対象・方法】通所リハ48名を対象とし、利用頻度を基に週1回
SSE実施群13名と、週2回SSE実施群10名に分類した。2群とも
通常のプログラムを6週間実施した後、SSEを含むプログラムを
90分間、3ヶ月実施した。測定項目は30秒椅子立ち上がりテスト
(CS-30)、Timed Up and Go test(TUG)、Ten Step Test(TST)とし、
各々通常プログラム開始前とSSE実施前後の全3回評価を行った。
【結果】週1回SSE実施群は、全測定項目において、通常プログラム
前後で有意な差は認めず、SSE実施前後で有意な改善を認めた。
週2回SSE実施群は、通常プログラム前後で有意な差は認めず、
SSE実施前後ではCS-30において有意な改善を認め、その他の項
目では改善傾向を認めた。2群間の比較ではSSE実施前のCS-30
において、週2回SSE実施群が週1回SSE実施群より有意に高値を
示した。
【考察】SSEは週1回の実施でも利用者の身体機能を改善し、転倒
予防に有効である可能性が示唆された。週2回の実施では、改善
傾向に留まったが、継続することにより機能向上に繋がると示唆
される。
P45-5
通所事業に参加している地域在住高齢者の転倒因子
の検討 ○近藤康子(理学療法士)1),堀秀 昭2),藤本 昭2),永野克人2),
伊藤実佳子3),三浦綾香3),梨木真寿美4),辻村 心1),伊藤 冷1),
三浦豊章5)
1)福井総合病院 リハビリテーション課 理学療法室
2)福井医療短期大学 理学療法学専攻
3)福井総合病院 リハビリテーション課 作業療法室
4)福井総合クリニック リハビリテーション課 理学療法室
5)福井総合病院 リハビリテーション課
【目的】当通所施設を利用する地域在住高齢者に対し、身体機能と
転倒歴との関係性を調査する。
【対象と方法】対象は地域在住高齢者66名(平均年齢85.3±7.5歳)
であり、過去3年間の転倒歴から,転倒を経験した転倒群32名(平
均 年 齢86.3±6.9歳)と 非 転 倒 群34名(平 均 年 齢84.4±7.9歳)に 分
類し、身体機能評価として握力、片脚立位(開眼/閉眼)、5m歩行、
TUG、感覚検査(上肢/下肢振動覚)を実施し、両群を比較した。振
動覚検査値はC64定量音叉を用いた振動覚閾値を使用した。両群
の比較には対応のない t 検定を使用し、統計学的有意水準は5%
未満とした。
【結果】両群に有意な違いが認められた項目は下肢振動覚閾値、閉
眼片脚立位時間、5m歩行、TUGであった。握力、開眼片脚立位時
間、上肢振動覚閾値に有意な差は認められなかった。
【考察】地域在住高齢者において過去の転倒歴に関与する運動機
能は、閉眼片脚立位時間、5m歩行、TUG、下肢振動覚が抽出され、
過去の結果と同様であった。下肢振動覚閾値は加齢と共に低下す
ることが報告されているが、年齢差のない両群間において下肢振
動覚閾値に有意な違いが認められたことから、振動覚の低下が転
倒要因の一つになることが考えられた。また、転倒群の神経的加
齢が進んでいることも示唆された。
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