半導体デバイスの静電気保護 Electrostatic Protection for

半導体デバイスの静電気保護
Electrostatic Protection for Semiconductor Devices
福 田 保 裕
Yasuhiro FUKUDA
概 要
半導体デバイスの急速な高速化、低消費電力化への開発において採用されてきた先端デバイス構
造は静電気に非常に脆弱な構造である。デバイスに組み込む静電気保護回路設計手法もこれらに
対応して新たな設計手法が創出、展開されだしているので、ここで紹介する。
説明し、今後の問題をまとめる。
1.はじめに
2.半導体デバイス ESD 損傷モデル
半 導 体 デ バ イ ス は 、 静 電 気 放 電 (ESD:
Electro-Static-Discharge)によって損傷及び誤動
半導体デバイスへ損傷を与える ESD モデルは、
作発生などの影響をうける。また、半導体デ
大きく 3 つに分類される。(表 1 参照) ①外部
バイスの集積度向上を実現させてきた微細加
の静電気帯電(導体)物体からデバイス端子へ
工の発展は、デバイス側の ESD 保護回路の設
の ESD によりデバイスが損傷、②デバイスが
置あるいは組立ラインの静電気対策の展開、
静電気帯電あるいは帯電物体にて電位誘導し、
強化にもかかわらず、半導体デバイスの各種
デバイス端子から外部導体へ ESD、デバイス
ESD 耐性を低下させ、ESD 障害発生を完全に
が損傷、③デバイス周囲の急激な電場変化に
防止できない状況を今日まで引きずっている。
より損傷するモデルである。さらに詳しく分
つまり半導体、電子機器業界においては、何
類、命名されている。例えば、②のデバイス
年おきに大きな ESD 障害を発生させる古くて
帯電モデル(CDM: Charged Device Model)にお
新しい問題として存在しているわけである。
いて、デバイス電位を上昇させる静電気帯電が、
近年、携帯電話開発などに代表されるように
パッケージ樹脂表面の摩擦静電気であれば
機器の高速化、低消費電力化、高信頼性化要
パッケージ帯電モデル(CPM: Charged Package
求に対応するため、次々と新規なデバイス構
Model)(*1) 、ベアーチップに対する静電気誘導
造を採用し、製品開発がなされている。しか
であればチップ帯電モデル(CCM:Charged Chip
し、これら新規構造は ESD に対し脆弱である
Model)(*2) と言う具合である。図 1 は、HBM 概
ことが確認され、ESD 保護回路設計手法が大
要及び等価回路図を示し、人体等価容量とし
きく変化している。ここでは半導体デバイス
ての 100pF の容量に蓄えられた電荷を、1.5k
の ESD 損傷モデル、先端デバイスの HBM 耐
の放電抵抗を介してデバイス端子へ放出する
性、新規 ESD 保護回路設計手法の検討などを
ことで適切な再現実験が出来るとされている。
図 2 は IEC/JEITA/ JEDEC 等公的規格 (*3) のお
ける HBM 試験、短絡負荷条件の規定放電電
流波形を示したものである。重要なことは、
放電経路にて構成される L(インダクタンス)
によって放電電流の立上り時間 tr を、2~10nsec
と遅くおさえられていることである。一方、
図 3 に示されるパッケージ帯電モデルのよう
なデバイス帯電・誘導による ESD 現象は、写
立上り時間( tr ) = 2~10nsec
真 1 に示される放電電流波形のように、立上
り時間 tr が 200psec 未満と非常に速いサージ
図2
短絡負荷 HBM 試験放電電流波形
電流がデバイス端子に流れ込んでくる現象で
デバイスに直接、間接に帯電した静電気の放
ある。
電現象は、非常に小さな放電経路しか構成さ
① 外部静電気帯電物体からの ESD 損傷
れず、結果として、L(インダクタンス)が非常
人体帯電モデル
に小さく、放電電流の立上り時間 tr も非常に
マシンモデル
速い現象となるわけである。半導体デバイス
② デバイス帯電・誘導による ESD 損傷
の取扱い、モジュール組立工程等において、
デバイス帯電モデル
静 電 気 管 理 対 象 の 代 表 的 ESD 損 傷 で あ る
電場誘導デバイス帯電モデル
HBM、CDM のデバイス内部保護について述
パッケージ帯電モデル
べる。
ボード帯電モデル
チップ帯電モデル
帯電体誘導モデル
③ 周囲の電場変化による ESD 損傷
電場誘導モデル
表 1 半導体デバイスの ESD 損傷モデル
図3
パッケージ帯電モデル:CPM
放電電流
静電気放電現象
立上り時間( tr ) < 200psec
図1
人体帯電モデル:HBM と等価回路
写真1
短絡負荷 CPM 試験放電電流波形
した HBM サージ電流を内部回路に挿入させ
3.HBM 保護回路
ずに保護できた。(図5参照)
従来より半導体デバイス組立工程における
静電気管理の中心的対象となってきたのは
HBM による ESD 損傷である。例えば、IEC
61340 シリーズ規格 (*4) において ESDS(静電気
敏感性デバイス)を取り扱う EPA(静電気保護
区域)の中では、静電気管理手法としてリスト
破壊現象とし
ては、保護抵抗、保護トランジスタ、出力ト
ランジスタ等の溶断、接合破壊となる場合が
多く、破壊箇所によって平均破壊電力と放電
時定数との関係が異なり、断熱破壊、熱拡散
型破壊、熱平衡破壊に分類され、各素子のこ
れらの関係を用いて最適保護設計していた。
スラップ、導電靴等人体接地が規定されてい
スナップバック
る。逆に言えば、デバイスの HBM 耐性は、
(GGトランジスタ)
ブレークダウン
(逆方向ダイオード)
工程において管理されている静電気帯電値よ
りマージンを持った耐性値になるように設計
されていなければならない。そこで、従来よ
図5
ESD 保護トランジスタ動作
4.CDM/CPM 保護回路
現在、半導体デバイス組立工程における
ESD 損傷の多くがこのデバイス帯電、誘導に
よるデバイス帯電モデル(CDM)あるいはそれ
1:接地可能車輪 2:接地可能表面 3:リストストラップ検査器 4:履物検
に類するパッケージ帯電(CPM)現象と推定さ
査器 5: 履物検 査台 6:リストバンド及びコード 7:EPA グランドコード
れている。これらの現象は、写真 1 にも示さ
8:EPA グランド 9:アース接続点(EBP)
れるように非常に立上りが早い( tr < 0.2nsec)
保護履物 12:イオナイザー 13:作業表面
椅子
15: 床
16: 衣 服
10:トロリー接地可能点 11:ESD
14:接地可能脚とパッド付
17: 接 地 表 面 棚
18: 接 地 可 能 棚
19:EPA 標識 20:機器
図 4 半導体デバイス取り扱い工程 EPA(静電気
放電保護区域)
り HBM 耐性を確保するための保護回路設計
放電電流サージの流入によって、保護回路の
ブレークダウン等の動作が間に合わず、内部
回路における MOS トランジスタゲート酸化
膜等が電界的破壊である絶縁破壊を発生させ
ることが多い。図6は GG(Gate-Grounded)
が半導体デバイスに挿入されて来た。HBM は、
図2に示されるように、放電電流の立上り時
間 tr が比較的遅いため、端子と内部回路との
間にダイオ ードや GG(Gate-Grounded)NMOS
等オフトランジスタを保護素子、保護回路と
して挿入すれば、これらの素子のブレークダ
ウン、スナップバック動作を利用して、流入
図6GG-NMOS 保護トランジスタ保護回路
NMOS 保護トランジスタを用いた入力保護回
Co コバルトの例)をゲートポリシリコン層、拡
路で、CPM 耐性が非常に低いことが確認され
散層に貼り付け、高融点金属のシリサイド層
たものである。破壊箇所は写真2に示される
を形成した構造である。このときゲート領域、
ように入力ゲート酸化膜破壊である。問題点
拡散層領域のみにシリサイド層が形成される
は保護トランジスタの GND ラインと入力ゲー
ためサリサイド構造と呼ばれる。サリサイド
トの GND ラインが分離されていることであ
構造トランジスタは、HBM サージ電流がドレ
る。図7のように入力トランジスタゲートと
イン領域に流入したときにブレークダウン実
ソース間に直接 GGNMOS 保護トランジスタを挿入
効接合断面積が極端に小さくなりブレークダ
することが対策のひとつとなる。結果、CPM
耐性は大幅に改善された。
入 力ゲート酸化
写真 3 サリサイド構造トランジスタ断面図
写真2
CPM 試験による破壊箇所
ウン発生箇所にシリサイド層を通して HBM
サージ電流が集まり、スナップバック動作前
に接合破壊に至る。結局、トランジスタ寸法
を増加させても耐性は向上せず、ブレークダ
ウン 動作 をさ せる とす ぐに 破壊 され 、HBM
サージをスナップバック動作にて通過させる
保護回路設計ができなくなる。とくに特性の
図7
CPM 耐性改良対策
関係から、通常、出力トランジスタを ESD 保
護素子としても利用する出力回路における
5. 先端半導体デバイス ESD 耐性
HBM-ESD 保護手法が困難となる。そこで、
ドレイン領域の高融点シリサイド層を除去す
5.1 サリサイド構造デバイスと HBM 耐性
ることによって、ブレークダウン実効接合断
先端半導体デバイスは、性能向上要求に新
面積を確保、スナップバック動作が可能にな
たな構造を作り出すことによって対応してき
るようにした構造がサリサイドブロック構造
た。結として、単純な微細化による ESD 耐性
と呼ばれるものである。この構造トランジス
低下ではなく、各種 ESD 耐性に特有な脆弱さ
タを ESD 保護として使用することによって
をもたらすことになった。写真3に示される
HBM 耐性を確保することが検討、多く使用さ
サリサイド構造トランジスタは、動作速度を
れた。しかしながら、このサリサイドブロッ
向上するための構造として普及したものであ
ク構造トランジスタは、素子自身の HBM 耐
る。ゲートポリシリコン抵抗削減、ソース、
性は向上、耐性の寸法依存も確保できるが、
ドレイン領域のコンタクト、ゲート間拡散抵
通常のサリサイド構造トランジスタに比較し、
抗を削減するため、高融点金属(写真3では
ESD サージを通過させる応答は構造上、遅く
なる。結果として保護されるべき内部回路の
ところ、電源ブロック間信号インターフェイ
ESD 保護能力を落としたことになった。と言っ
スインバータにおけるゲート酸化膜が HBM
て、内部もすべてサリサイドブロックを装着
電圧 500~1000V にて破壊した。電源ブロック
した構造にすれば ESD 保護は従来通りの考え
(A) の 電 源 間 保 護 PC(Power Clamp) 及 び
方でよいことになるが、それではサリサイド
GND(A)- GND(B)間保護として、サリサイド
構造トランジスタを採用しないのと同じで、
ブロック構造トランジスタを用いた
高速性能実現を放棄することになる。かつて
GGNMOS-PC を採用している。この HBM 低
ホットキャリア対策として登場した LDD 構
耐性は、電源(A)端子-GND(A)端子間、GND(A)
造トランジスタが、非常に低 HBM 耐性であっ
端子-GND(B)端子間に挿入されているサリサ
たとき、HBM 耐性の強い保護素子を開発し、
イドブロック構造 GGNMOS-PC が HBM サー
それを入力、出力、電源間に ESD 保護回路と
ジに対する応答の遅いことにより、電源ブロッ
して装着すればよいというような ESD 保護設
ク間信号インターフェイストランジスタゲー
計手法では対応できなくなったわけである。
ト酸化膜破壊が生じたものと推定される。こ
(*5 )
結局、HBM サージが流入したときの各素
の種の ESD 耐性対策は特性劣化とのトレード
子、内部回路の印加電圧、通過電流を見積り、
オフとなる場合が多いため、HBM 印加時にお
HBM サージの通過路を設計する ESD 保護設
ける各素子、内部回路における動作を見積る
計手法が必要となる。
ことが重要となる。ブレークダウン、スナッ
5.2 ESD パラメータを用いた保護設計手法
プバック動作を ESD 保護動作として活用して
サリサイド構造トランジスタを用い、分離
ゆく ESD 保護設計の場合は、各素子の HBM
電源方式設計による図8に示されデバイスに
サージが流入したときのブレークダウン、ス
おいて、GND(B)を ESD コモンとして電源(A)
ナップバック動作パラメータ (ESD パラメー
端子に HBM 電圧を印加する試験を実施した
タ)を抽出し、保護回路網における ESD 動作
サリサイドブロック構造
の予測手法を構築する必要がある。 (* ) 結果、
電源(A)
電源(B)
GGNMOS-PC
各部位の印加過渡電圧変化を確認し、対策案
を検討、ESD 保護回路と製品性能との最適化
が 実 現 で き る の で あ る 。 HBM-TDR(Time
Domain
Reflection)-TLP(Transmission
Pulse)測定方法
(*6)
Line
により各素子の HBM パラ
メータ抽出、Mixed-Mode シミュレーション
によって、図 8 の破壊されたゲート酸化膜に
HBM 印加時にかかる電圧を予測したものが、
ゲート酸 化
ESDサージ
膜破壊
Vg
応答遅い
図9である。該当ゲート酸化膜の真性破壊電
圧が 14V であることを考慮すると、HBM 印
加 500~1000V にて破壊する試験結果を表現で
GND(A)
GND(B)
きているものと考えられる。この手法を用い
ればこの HBM 低耐性改良対策を検証できる。
この手法よって HBM 耐性向上は見積れるた
図8
分離電源方式設計を用いた
サリサイド構造デバイス HBM 破壊
め、特性シミュレーションを同時に実施し、
最適化対策を抽出、検証できることにな
:Vg
シリサイド金属層+シリコン層
SOI 層 (動作素子領域)
ゲート酸化膜破壊電
ゲート金属
埋込酸化膜(BOX 膜)
Si 支持基板
写真4FD(完全空乏型)-SOI 構造デバイス断面
図9
ゲート酸化膜印加電圧
このように、HBM-TDR-TLP 測定による HBM
パラメータ抽出、Mixed-Mode シミュレーショ
ンによる ESD 対策最適化手法は、ESD 保護素
子、被保護内部素子のブレークダウン、スナッ
プバック特性を最大限利用することによって
写真5
SOI 層溶断現象
ESD 保護回路設計する上で必須の手法となる
高耐圧トランジスタの場合は、耐圧を上昇さ
ものと思われる。
せた PN 接合に HBM サージが流入すれば、
5.3 SOI 構造、高耐圧デバイスと HBM 耐性
サージ電流は外部回路にて決まる過渡電流が
写真4は、高速、低消費を実現するトラン
ブレーク ダウン 電流とし て流れ るため 、PN
ジ ス タ と し て 用 い ら れ る FD-SOI(Fully
接合で消費される電力が上昇するので、破壊
Depleted Silicon on Insulator)構造デバイス断面
耐性は低下する。従って、通常トランジスタ
である。Si 支持基板と SOI 動作領域は埋込酸
耐圧と ESD 耐性は負の相関をもつことになる。
化膜にて分離、素子間も酸化膜にて完全分離
すでにブレークダウンするとその時点で破壊
されているため、寄生容量は非常に小さい。
するとい状態となっている高耐圧トランジス
SOI 層は非常に薄く、完全に空乏化している
タがかなり多い。(参照 図10)
ため、高速動作、低電圧動作、低消費動作が
可能となる。非常に薄い SOI 層に HBM サー
ジなどが流入、ブレークダウンを起こすと、
1000
HBM 耐 圧
周囲は酸化膜に覆われているため、発熱した
熱は殆ど逃げず、すぐに融点に達し、ポリシ
100
リコン抵抗の溶断のような現象で容易に破壊
してしまう。(写真5参照)しかし、SOI 層を
厚くすると
FD-SOI 構造デバイスの特徴が維
持できなくなり、低電圧動作、低消費動作が
10
物理 的 に 得ら れ な くな っ てし ま う 。FD-SOI
性能を実現するならば、ESD に対する脆弱性
を克服する ESD 保護設計手法が必要となる。
図10
1
10
100 DC耐圧値(V)
高耐圧トランジスタの
DC 耐圧と HBM 耐圧との関係
5.4 PC-ESD 保護回路網手法
ウンさせないためには、Va 電位が Tr1 の BVsd
ブレークダウン、スナップバック動作を ESD
より上昇しないように PC が動作しなければ
保護の動作として活用してゆくサリサイドブ
ならない。図12は CC タイマ PC (*7) と呼ばれ
ロック構造トランジスタが、出力トランジス
ている PC を採用した保護回路を示す。
タとして利用できず、SOI 構造トランジスタ、
高耐圧トランジスタのようなブレークダウン
HBMサージ
VDD
すると構造上すぐに破壊してしまう素子を、
Tr2
出力トランジスタなどに用いなくてはならな
C1
い場合はどうすればよいのか。今後、ブレー
Va
クダウンすると破壊し、ブレークダウン、ス
ナップバック動作を ESD 保護の動作として活
Rp
CCタイマーPC
LTr
出力端子
用することが、構造上不可能な素子、デバイ
Rg
C2
Tr1
スはどんどん出てくるものと思われる。ESD
VSS
保護設計手法としての発想の転換が必要であ
る。近年、先端デバイス、高耐圧デバイスにて
図12
検討、展開されだしている RC タイマ、CC タ
出力端子に流入した HBM サージは、Tr2(順方
イマ、GC(Gate Control) NMOS、トリガリング
向動作)を介して流れ、VDD ライン電位を上
SCR 等を PC 用いた ESD 保護回路網設計思想
昇させる。C1/C2 の容量分圧にて LTr(Large Tr)
である。簡単に言えば、ブレークダウンした
のゲート電位を上昇させ、ON 状態となった
ら破壊する素子にはブレークダウンさせない
LTr チャネルを HBM サージは VDD ラインか
ように ESD サージを違う経路で流してしまう
ら VSS ラインへ流れる。従って、Va 電位の
ESD 保護経路設計手法である。
上昇は抑えられ、出力トランジスタ Tr1 は、
HBMサージ
VDD
CC タイマ PC 搭載 ESD 保護回路網
ブレークダウンせずに HBM サージは、出力
端子 Tr2RpLTrVSS という経路で流れ
Tr2
ることになります。C1/C2 比、LTr 寸法など
R
によっても変わりますが、HBM サージ電流量
PC
Va
が多くなると LTr 自身がブレークダウン、ス
ナップバックします。しかしながら、チャネ
出力端子
Tr1
ル電流がかなり大きく流れている状態でのス
VSS
ナップバック現象開始電圧 BVon は GGNMOS
の BVsd 値よりもかなり低くなるので、Va は
図11
PC を用いた出力 ESD 保護回路網
Tr1のブレークダウン電圧まで上昇しないよ
図11は PC を用いた出力 ESD 保護回路網手
うに設計できるのである。但し、図12にお
法を示したもので、出力端子に流入する
いて出力端子から PC までの電源配線抵抗が
HBM-ESD サージが Tr1 が入力端子に流入す
大きいと Va は上昇し、Tr1がブレークダウン、
る ESD サージにてブレークダウンを起こすま
ESD 保護されない状態になるので、注意が必
えに Tr2(順方向動作)RPC Vss という経
要である。図13は HBM2kV 印加時において
路で ESD サージを通過ように設計するものあ
出力端子電圧 Va と上記配線抵抗(Rp)との関係
る。ここで保護されるべき Tr1 をブレークダ
を示したものである。
トランジスタ、内部回路等がブレークダウン
Va (V)
しないように ESD サージを通過させる道とし
て動作させる重要な ESD 保護回路ユニットと
なっている。ここで紹介した以外にも、トリ
Rp=100
ガリング SCR (*9) を用いた PC なども多く研究
され、使用されている。
Rp=50
10
6. 今後の課題
Rp=1
今後、CDM 耐性低下となってくることが
構造上予測される。また、ESD による信頼性
劣化問題も出てきそうな状況である。CDM モ
CC タイマ-PC 保護回路における
デリング、CDM-ESD パラメータ抽出方法、
HBM 印加(2kV)時 Va 電位と Rp との関係
信頼性シミュレーションなど早急に整備され
さらに図14は、PC として GCNMOS(Gate
なければならない。これらの検討から、さら
Control Ntype Metal Oxide Semiconductor)-PC
なる ESD 保護設計手法を構築してゆくことが
図13
を搭載した ESD 保護回路網
(*8)
を示している。
求められている。
参考文献
HBMサージ
VDD
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Tr2 Rp
方法・パッケージ帯電法の提案” , 電子通信学会
Vd
C
Va
Vg
出力端子
Tr1
LTr
R
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会),R83-33,1983.10
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VSS
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図14GCNMOS-PC 搭載搭載 ESD 保護回路網
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この場合、CR タイマにインバータを介して
(HBM)-Component testing.”,2005
LTr のゲートへ接続しているものである。こ
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devices from electrostatic phenomena- General
2
が同電位となり Id=A(Vd-Vt) のチャネル電流
requirements”,1998
として HBM サージを逃がすことになる。LTr
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自体はつねに非飽和領域と飽和領域の中点で
Breakdown Leakage of off-State nMOSFETs
動作する。
Induced by HBM ESD Event Using Drain
このように従来は、単に電源-GND 間の内
部回路保護として使用されてきた PC が、現
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Vol E77-A No1, pp 166-173, 1994.11
在の先端デバイスでは、入出力端子に ESD 印
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加されたときに出力トランジスタや入力保護
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防止回路”
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Methodology”, 1993 EOS/ESD Symp. Proc.,
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9) Bart Keppens :”ESD Protection Solutions for
High Voltage Technologies”, 2004 EOS/ESD
Symp. Proc., 5B.5, 2004.9
(ふくだ
やすひろ/沖エンジニアリング)
福田保裕
1977 年 3 月名古屋工業大学電気工学科卒業、1977
年 4 月沖電気工業株式会社へ入社、以来、半導
体デバイス静電気障害の研究に従事、1983 年半導
体テデバイスの静電気破壊現象としてのパッケー
ジ帯電モデルを発表、1986 年パッケージ帯電モ
デルによる自動試験装置を開発、1990 年 LDD ト
ランジスタへの ESD キャリア注入現象解明、1999
年より完全空乏化 SOI デバイス開発業務に従事、
2004 年 よ り TDR-TLP 測 定 手 法 、 Mixed
-Mode-Simulation 手法を用い、抽出される ESD
パラメータによる ESD 保護設計手法を展開。
IEC TC101(静電気)WG6(ESD Simulation)国内委
員会主査、ESD Industry Council コアメンバー、
静電気学会会員。