持 続 可 能 な 未 来 へ の 志 向 性 を も っ た ESDへ の 挑 戦 横浜市立永田台小学校長 住田昌治 ○はじめに 持 続 可 能 性 の 問 題 は 、身 近 で は な く 何 か 遠 く に あ る 問 題 だ と 思 っ て い ま し た 。 学校ではなく、環境や経済、社会や政治の世界の問題だと思っていました。 しかし、私たちは、今さえ良ければ、また、自分さえ良ければいいと思って いるわけではありません。子や孫の時代も良くなければならないわけです。地 球上のどこに住んでいる人も良くなって欲しいわけです。人だけでなく、動物 の植物も、地球そのものが良くなって欲しいわけです。自然の中で活かされて いる人間ですから、自然も今と同じか今よりちょっといい姿にしていきたいわ けです。 そして、その未来社会の担い手になるのが子どもたちであり、その子どもた ち を 育 て る の が 教 育 で す 。 な ぜ 、 ESD= 持 続 可 能 な 開 発 の た め の 教 育 と 言 わ れ るようになったのかが分かります。人をつくり、命を育むために、持続不可能 性を断ち切り持続可能な社会を実現するのがESDです。その視点での再方向 付 け を 示 し て い る の が ユ ネ ス コ の 国 際 実 施 計 画 で あ り 、 ユ ネ ス コ ス ク ー ル が ES Dの 推 進 拠 点 と な っ て い ま す 。 ESDに チ ャ レ ン ジ し 、 持 続 可 能 な 未 来 の 担 い 手 を 育む教育の実践を進めます。 ○実践の背景 本校は、団地に囲まれ、自然は少ない環境だが、中庭ビオトープや小さな田んぼ、屋上 花壇やビオトープ、花壇やプランター、校庭の芝生化(児童の手植え)などで子どもの身近 で緑化・栽培活動を行っている。2010年11月ユネスコスクールに神 奈 川 県 小 中 学 区 で は 初 の 認証を受けて加盟し、ESDの推進を掲げて取り組んでいる。これまでの実践から、環境教育を 切り口に取り組んでいても、人権教育、国際理解教育、平和教育、食育、開発問題、飢餓 や貧困問題・・・とつながり合いながら、学びは拡がっていくことが分かってきた。しか し、そのためには、教師の気づきとつながりを意識した柔軟な見方と対応が不可欠であり、 何よりも、教師自身が本気で向かっていく姿勢が望まれる。 「どんな力を付けさせたいのか」 「ど んな変容を期待するのか」 「将来にわたって行動やライフスタイルを変えていくことができるの か」そして、そのために、今何を考えさせる必要があるのか。十分に時間をかけて準備しなけ ればならない。 昨年に引き続き、学習のきっかけ、方向付けをするに当たって、若尾さんの「命の授業」を 教育課程に位置づけ、全学年が年間を通して関わってもらい、命のつながりをベースにした教育 活動を展開する。さらに、私が試案として作成した「学校E S D 指 標 」を基にして、実践を重 ね、その検証と修正を行い、実効性のあるプランとして全国に提示したい。 ○活動内容・方法 学校ESD指標 別紙 学校として取り組むことに意味がある=教育課程に明確に位置付ける。 ・ホールスクールアプローチ ・インフージョンアプローチ 1年 「まほうのたねだいさくせん たくさんのひととかかわって」 花 の 栽 培 ~山王台幼稚園との交流~ 2年 「津谷小のヒマワリを育てて 永田台のことを知らせよう」 ~被災地気仙沼津谷小学校との交流~ 3年 「ここはふるさと 永田台」 ~じまんのまち~ ~韓国シンヨンサン小学校との交流~ 4年 「私たちの命はどのように守られているのだろうか 地域と共に生きる 防災教育」 ~~ 多摩第一小学校との交流~ 5年 「田んぼがつなぐ人 支えあう人」~米・田んぼを通して~認知症キッズサポーター ~パキスタンとの交流~ 6年 「なりたい自分になるために」 自尊感情を高める ~彦根市城西小学校との交流~ 個別級「生ゴミワーストワン脱出大作戦」 ~ 南 区 役 所 ・ 市 役 所 と の 協 働 ~ 被 災 地 気仙沼馬籠小学校との交流~ そ し て 、 本 校 で は ESDの 基 盤 ( 育 む 力 ) を 「 関 わ り 方 」 と 捉 え 、「 関 わ り 方 」 を 身 に 付 け る た め に 重 点 的 に 次 の 5点 へ の 取 組 を 徹 底 し ま す 。 「あいさつをする。話を聞く。時間を守る。学校をきれいにする。ケアリン グ ( 思 い や り の 心 )。」 ○期待される成果 ESD と 環 境 教 育 や 総 合 学 習 は ど う 違 う の か と い う 質 問 が よ く あ り ま す 。 ESD チャレンジは、環境教育の中でやっている時期もありますし、教科や総合を中 心にやっている時期もあります。日常生活の中に見いだすこともあります。い ずれにしても持続可能な未来に向かっていることを意識して取り組んでいくこ と が 大 切 で す 。 そ う す る と 、 今 、 自 分 の 学 校 は ESD指 標 ( 住 田 試 案 ) の ど こ の 辺りで、今後どういうことに取り組んでいけばいいのか見えてきます。持続可 能 性 を 意 識 し た だ け で 、 一 気 に ESD指 標 の 7 ま で 進 ん で し ま う 実 践 を し て い る 学校もあるでしょう。 前 記 の ユ ネ ス コ の ES Dの バ イ ブ ル と も い え る 国 際 実 施 計 画 に は 、「 ESDは 何 も 新 し い こ と で は な く 、 既 存 の 教 育 の Re-orientation=再 方 向 付 け で あ る 」 こ と が強調されています。つまり、持続可能な未来への方向付けです。では「持続 可能な未来」への方向付けはどうすればよいのでしょうか。それは、それぞれ の地域と学校が行うことです。その時に持続可能性のコアを決め、それが学校 全体に染み込んでいくようにします。学校全体で何をいつも考えながら教育活 動をやっていくか決めて取り組むということです。新しいことを持ち込むので はありませんが、新しい視点を持ち込み、チャレンジをするということです。 ESDはチャレンジです。本校では、命をコアにして、年間を通して学校全体 で E S D チ ャ レ ン ジ を し ま す 。 持 続 可 能 な 社 会 は 、「 命 を 育 み 、 命 を 輝 か せ る こ とのできる社会」だと考えているからです。この意識をもたずして、型通りに や れ ば い い と す れ ば 、 あ ま り に も 浅 薄 な ESDに な っ て し ま う で し ょ う 。 ESDチ ャ レ ン ジ で ど の よ う な 成 果 や 効 果 が あ っ た の か 、 ESDの 魅 力 と し て 、 学 校 、 子 ど も、保護者、地域の姿で示していきます。持続不可能性が持続可能性になるよ う に 、 一 人 一 人 が 考 え ( い つ で も 常 に )、 行 動 を 起 こ し 、 行 動 し 続 け る 意 志 を 育 み 、 自 分 が つ く り た い 未 来 を 描 く 姿 を 実 現 し 、 学 校 ESDの 有 る べ き 姿 を 示 し ます。 そして、命のつながりへの気づきは、現在の複雑化している課題にも立ち向かえる「つながりに 対する気づき」を培い、課 題 解 決 に 向 け た エ ネ ル ギ ー を 醸 成 し ま す 。ま た 、今 年 も 、 思 い や メ ッ セ ー ジ の 伝 達 の 場 と し て 設 定 す る エ コ プ ロ ダ ク ツ 2013展 ( 12月 東 京 ビ ッ グ サ イ ト 3日 間 開 催 ) へ の 唯 一 の 小 学 校 全 校 出 展 で 、 全 国 に 向 け 、 社 会 に 向け伝える場を作ります。多くの来場者からの感想や評価によって、子どもた ちは自信をつけ、日々堂々とした姿を見せ、そして、次への意欲・本気度がア ップすることが期待できます。 突き抜ける学びで自尊感情を高める 気付き(知る) →考える(調べる・話し合う)試行錯誤・醸成 批判的思考力を養う大事な段階 →行動する(心を育て、行動まで) →価値の実感(行動へのフィードバック→自信) 自尊感情の高まり・自己肯定感が持続可能な社会の担い手としての自覚へ ESDが希求する姿 「価値・行動・ライフスタイルの変容」
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