「慢性閉塞性肺疾患」について(治療編その 1)

(No6
No64)
H23.5.2.薬剤科
5.2.薬剤科
「慢性閉塞性肺疾患」
慢性閉塞性肺疾患」について(
について(治療編
治療編その 1)
安定期の
安定期の管理は
管理は重症度に
重症度に応じて行
じて行われます。
われます。
慢性閉塞性肺疾患(
慢性閉塞性肺疾患(以下 COPD)
COPD)では、
では、重症度に
重症度に応じた治療方針
じた治療方針を
治療方針を立て、長期的に
長期的に疾
病を管理していく
管理していく事
していく事が重要です
重要です。
です。COPD 患者様では
患者様では喘息患者様
では喘息患者様とは
喘息患者様とは異
とは異なり常
なり常に気流閉塞
があり、
があり、かつその
かつその病態
その病態は
病態は進行性であるため
進行性であるため、
であるため、COPD に対する管理目標
する管理目標は
管理目標は下記のように
下記のように定
のように定
められています。
められています。これらの管理目標
これらの管理目標を
管理目標を達成するために
達成するために、
するために、病態の
病態の評価と
評価と経過観察、
経過観察、危険因
子の回避、
回避、安定期の
安定期の管理、
管理、増悪期の
増悪期の管理について
管理について計画
について計画を
計画を立てます。
ます。
COPD の管理目標
① 症状及
症状及び
び運動許容能の
運動許容能の改善
② QOL の改善
③ 増悪の
増悪の予防と
予防と治療
④ 疾患
疾患の
の進行抑制
⑤ 全身へ
併存症及び
び肺合併症の
全身へ併存症及
肺合併症の予防と
予防と治療
⑥ 生命予後の
生命予後の改善
COPD(
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
慢性閉塞性肺疾患)診断と
診断と治療のためのガイドライン
治療のためのガイドライン第
のためのガイドライン第 3 版
【安定期 COPD の管理】
管理】
安定期の
安定期の COPD の管理では
管理では、
では、気流閉塞の
閉塞の程度(
程度(FEV1 の低下)
低下)による病気
による病気の
病気の進行度だ
進行度だ
けではなく、
、症状の
けではなく
症状の程度を
程度を加味し
加味し、重症度を
重症度を総合的に
総合的に判断した
判断した上
した上で治療法を
治療法を段階的に
段階的に増強
していきます。
していきます。COPD の管理には
管理には、
には、下記の
下記の方法があり
方法があり、
があり、これらを組
れらを組み合わせて包括的
わせて包括的に
包括的に
実施する
実施する必要
する必要があります
必要があります。
があります。また、
また、全身併存症や
全身併存症や肺合併症についての
肺合併症についての管理
についての管理も
管理も重要になります
重要になります。
になります。
● 禁煙指導(
禁煙指導(後述)
後述)
● ワクチン接種
ワクチン接種
・ COPD 患者様では
患者様では、
では、感染症が
感染症が重症化しやすく
重症化しやすく、
しやすく、かつ COPD が増悪原因となる
増悪原因となる事
となる事か
ら、ワクチン接種
ワクチン接種が
接種が重要である
重要である。
である。
・ インフルエンザワクチンは、
インフルエンザワクチンは、COPD の増悪による
増悪による死亡率
による死亡率を
死亡率を50%
50%低下させる
低下させる事
させる事が
明らかにされており、
らかにされており、全ての COPD 患者様に
患者様に接種が
接種が勧められている。
められている。また、
また、家族
や介助者にも
介助者にも積極的
にも積極的な
積極的な接種が
接種が進められている。
められている。
・ 肺炎球菌ワクチンは
肺炎球菌ワクチンは、
ワクチンは、65 歳以上の
歳以上の COPD 患者様、
患者様、及び65歳未満
65歳未満で
歳未満で対標準 1 秒
量(%FEV
(%FEV1)が40%
40%未満の
未満の COPD 患者様に
患者様に接種が
接種が勧められている。
められている。
1
● 薬物療法(
薬物療法(後述)
後述)
● 呼吸リハビリテーション
呼吸リハビリテーション(
患者様教育、運動療法、
運動療法、栄養管理)
栄養管理)(後述)
後述)
リハビリテーション(患者様教育、
● 酸素療法(
酸素療法(後述)
後述)
● 換気補助療法(
換気補助療法(非侵襲的
侵襲的陽圧換気療法<
陽圧換気療法<VPPV>
VPPV>、気管切開下侵襲的陽圧換気療法
<TPPV>
TPPV>)
・ 呼吸筋疲労と
呼吸筋疲労と睡眠呼吸障害の
睡眠呼吸障害の改善を
改善を目的として
目的として、
として、換気補助療法(
換気補助療法(人工呼吸療法)
人工呼吸療法)が
行われる。
われる。
・ 安定期 COPD の「在宅人工呼吸療法(
在宅人工呼吸療法(HMV)
HMV)」では
」では、
では、導入が
導入が容易で
容易で侵襲殿の
侵襲殿の低い
NPPV を第一選択とする
第一選択とする。
とする。
・ HMV の導入時
導入時には
には、
には、薬物療法、
薬物療法、呼吸リ
呼吸リハビリテーションなどによる管理
ハビリテーションなどによる管理が
管理が最大限
に行われている必要
われている必要がある
必要がある。
がある。
● 外科療法
・ 最大限の
最大限の内科的治療を
内科的治療を行っても、
っても、その効果
その効果が
効果が限界に
限界に達している場合
している場合には
場合には、
には、外科的治
療を考慮する
考慮する。
する。
・ 肺胞の
肺胞の破壊により
破壊により弾力性
により弾力性を
弾力性を失って膨張
って膨張した
膨張した肺
した肺の一部を
一部を切除し
切除し、縮小させる
縮小させる「
させる「肺容量
減量手術(
減量手術(LVRS)
LVRS)」が
」が主として行
として行われている。
われている。
NPPV:noninvasive intermittent positive pressure ventilation
TPPV:trachedstomy iintermittent positive
positive pressure ventilation
HMV:home mechanical ventilation
LVRS:lung volume reduction surgery
2
安定期 COPD の管理
外科療法
換気補助療法
酸素療法
吸入ステロイド
吸入ステロイド薬
ステロイド薬の追加(
追加(繰り返す増悪)
増悪)
管理法
長時間作用性抗コリン
長時間作用性抗コリン薬
コリン薬・β2 刺激薬の
刺激薬の併用(
併用(テオフィリンの追加
テオフィリンの追加)
追加)
長時間作用性抗コリン
長時間作用性抗コリン薬
コリン薬(または長時間作用性
または長時間作用性β
長時間作用性β2 刺激薬)
刺激薬)
呼吸リハビリテーション
呼吸リハビリテーション(
リハビリテーション(患者教育・
患者教育・運動療法・
運動療法・栄養管理)
栄養管理)
必要に
必要に応じて短時間作用性気管支拡張薬
じて短時間作用性気管支拡張薬
禁煙・インフルエンザワクチン・
禁煙・インフルエンザワクチン・全身併存
・インフルエンザワクチン・全身併存の
全身併存の管理
管理
目安
呼吸困難・
呼吸困難・運動能力低下・
運動能力低下・繰り返す増悪
症状の
症状の程度
FEV1 の低下
Ⅰ期
疾患の
疾患の
喫煙習慣
軽症
Ⅱ期
→
→
Ⅲ期
→
→
→
Ⅳ期
→
→
→
重症
進行
COPD(
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
慢性閉塞性肺疾患)診断と
診断と治療のためのガイドライン
治療のためのガイドライン第
のためのガイドライン第 3 版より引用
より引用
【軽 症】症状の
症状の軽減を
軽減を目的として
目的として、
として、運動などの
運動などの必要時
などの必要時に
必要時に短時間作用性
気管支拡張薬を
気管支拡張薬を使用する
使用する
【中等症】
中等症】症状に
症状に軽減に
軽減に加え、QOL の軽減や
軽減や運動耐容能の
運動耐容能の改善が
改善が重要な
重要な
治療目標となり
治療目標となり、
となり、長時間作用性気管支拡張薬の
長時間作用性気管支拡張薬の定期的な
定期的な使用
や呼吸リハビリテーションの
呼吸リハビリテーションの併用
リハビリテーションの併用が
併用が推奨される
推奨される
【重 症】複数の
複数の長時間作用性気管支拡張薬の
長時間作用性気管支拡張薬の併用を
併用を行う
3
禁煙は
禁煙は治療の
治療の第一歩としてきわめて
第一歩としてきわめて重要
としてきわめて重要です
重要です。
です。
禁煙は
禁煙は COPD の発症リスクを
発症リスクを減少
リスクを減少させ
減少させ、
させ、進行を
進行を抑制する
抑制する最
する最も効果的で
効果的で経済的な
経済的な方法
であり、
であり、禁煙により
禁煙により呼吸機能
呼吸機能の
の
低下を
低下
を
抑制し
抑制
し
、
死亡率を
死亡率
を
減少させます
減少
させます。
。
このため、CO
このため
、CO
により呼吸機能
させます
PDの
PDの発症を
発症を予防し
予防し、進行を
進行を遅らせるためには、
らせるためには、タバコ煙
タバコ煙の暴露からの
暴露からの回避
からの回避が
回避が最も重要
であり、
であり、COPD 患者様を
患者様を含め、全ての喫煙者
ての喫煙者に
喫煙者に禁煙指導を
禁煙指導を行うべきであると考
うべきであると考えられて
います。
います。
【禁煙指導】
禁煙指導】
喫煙習慣の
「ニコチン
喫煙習慣の本質は
本質は、
「ニコチン依存症
ニコチン依存症」
依存症」という薬物依存
という薬物依存であり
薬物依存であり、
であり、禁煙治療を
禁煙治療を行う際には、
には、
患者様のニコチン
患者様のニコチン依存
のニコチン依存の
依存の程度を
程度を判定する
判定する事
する事が大切です
大切です。
です。ニコチン依存症
ニコチン依存症は
依存症は「タバコ依存症
タバコ依存症
スクリーニング(TDS)
クリーニング(TDS)」や
」や「フェガストロームニコチン依存度
フェガストロームニコチン依存度テスト
依存度テスト(FTND)
テスト(FTND)」な
」な
どにより判定
どにより判定されます
判定されます。
されます。ニコチン依存度
ニコチン依存度と
依存度と禁煙成功の
禁煙成功の是非は
是非は合致するものではありません
合致するものではありません
が、ニコチン依存度
ニコチン依存度を
依存度を参考にして
参考にして、
にして、その人
その人に適する禁煙治療法
する禁煙治療法を
禁煙治療法を選択する
選択する事
する事が出来ます
出来ます。
ます。
TDS:The Tobacco Dependence Screener
FTND:
FTND:The Fagerstrom Test for Nicotine Dependence
《禁煙指導の
禁煙指導の進め方》
医師が
医師が 3 分間の
分間の短い禁煙アド
禁煙アド
バイスをするだけでも禁煙率
バイスをするだけでも禁煙率が
禁煙率が
上昇す
上昇することがわかっており、
ることがわかっており、
日常の
日常の診療や
診療や健診の
健診の場で、禁煙
指導が
指導が日常的に
常的に実施される
実施される意義
される意義
は大きいといわれています。
きいといわれています。医
師による個人
による個人の
個人の状況に
状況に応じた的
じた的
確なアドバイスと、
なアドバイスと、ニコチン依
ニコチン依
存に対する「
する「薬物療法」
薬物療法」、心理的
、心理的
依存に
依存に対する「
する「行動療法」
行動療法」の併
用により、
により、禁煙成功率は
禁煙成功率は確実に
確実に
上がると考
がると考えられます。
えられます。
5Aアプローチ
日常の
日常の外来診療などで
外来診療などで短時間
などで短時間に
短時間に実施できる
実施できる禁煙指導
できる禁煙指導の
禁煙指導の方法
として、
として、「5
「5Aアプローチ」
アプローチ」という指導手順
という指導手順が
指導手順が世界各国で
世界各国で採用
されています。
されています。
Ask
受診の
受診の度に毎回必ず
毎回必ず患者様の
患者様の喫煙状況を
喫煙状況を尋ねる
Advise
全ての喫煙者
ての喫煙者に
喫煙者に禁煙するよう
禁煙するよう助言
するよう助言する
助言する
Assess
患者様の
患者様の禁煙する
禁煙する意志
する意志を
意志を評価する
評価する
Assist
患者様の
患者様の禁煙を
禁煙を助ける
Arrange フォローアップを手配
フォローアップを手配する
手配する
4
《禁煙治療
禁煙治療》
治療》
禁煙治療では
禁煙治療では、
では、行動療法と
行動療法と薬物療法を
薬物療法を組み合わせた方法
わせた方法が
方法が良く行われています。
われています。
1)行動療法 〔喫煙欲求をコントロールする
喫煙欲求をコントロールする方法
をコントロールする方法〕
方法〕
行動パターン
行動パターン変更法
パターン変更法
環境改善法
代償行動法
喫煙と
喫煙と結びついている行動
びついている行動パターンを
行動パターンを変更
パターンを変更し
変更し、吸いたい気持
いたい気持ちをコントロ
気持ちをコントロ
ールする方法
ールする方法
喫煙のきっかけとなる
のきっかけとなる環境
環境を
改善し
いたい気持
気持ちをコントロールす
喫煙
のきっかけとなる
環境
を改善
し、吸いたい
気持
ちをコントロールす
る方法
喫煙の
喫煙の代わりに他
わりに他の行動を
行動を実行し
実行し、吸いたい気持
いたい気持ちをコントロールする
気持ちをコントロールする
方法
2)薬物療法 〔禁煙補助薬の
禁煙補助薬の使用〕
使用〕
・ニコチン製剤
・ニコチン製剤を
製剤を用いるニコチン代替療法
いるニコチン代替療法は
代替療法は、金演じに
金演じに出現
じに出現するニコチン
出現するニコチン
離脱症状に
離脱症状に対してニコチンを薬剤
してニコチンを薬剤の
薬剤の形で補給し
補給し、その症状
その症状を
症状を緩和しなが
緩和しなが
らまず心理的依存
らまず心理的依存から
心理的依存から抜
から抜け出し、次にニコチン補給量
にニコチン補給量を
補給量を調節しながらニ
調節しながらニ
ニコチン製剤
コチン依存
コチン依存から
依存から離脱
から離脱するという
離脱するという方法
するという方法。
方法。
ニコチン製剤
・現在、
現在、日本で
日本で使用可能なニコチン
使用可能なニコチン製剤
なニコチン製剤には
製剤には、
には、ニコチンガム製剤
ニコチンガム製剤(
製剤(一般用
医薬品のみ
医薬品のみ)
のみ)と、ニコチンパッチ製剤
ニコチンパッチ製剤(
製剤(医療用医薬品と
医療用医薬品と一般用医薬品)
一般用医薬品)
がある。
がある。
・バレニクリン製剤
製剤はニコチンを
はニコチンを含
まず、
ニコチン依存形成
依存形成に
・バレニクリン
製剤
はニコチンを
含まず
、ニコチン
依存形成
に最も深く関
連すると考
すると考えられている脳内
えられている脳内の
脳内のα4β2 ニコチン受容体
ニコチン受容体に
受容体に高い結合親和性
バレニクリン製剤
バレニクリン製剤
を持つ部分作動薬である
部分作動薬である。
。
である
・経口薬であり
経口薬であり、
であり、禁煙に
禁煙に伴う離脱症状やタバコへの
離脱症状やタバコへの切望感
やタバコへの切望感を
切望感を軽減すると
軽減すると共
すると共
に、服用中に
服用中に再喫煙した
再喫煙した場合
した場合に
場合に喫煙から
喫煙から得
から得られる満足感
られる満足感を
満足感を抑制する
抑制する。
する。
参考資料:
参考資料:SAFESAFE-DI ガイドラインシリーズ
ガイドラインシリーズ COPD―
COPD―慢性閉塞性肺疾患―
慢性閉塞性肺疾患― 2009.11
2009.11
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