木造住宅建築業務基準 (職人憲法)

全建総連
木造住宅建築業務基準
(職人憲法)
2004年9月
全国建設労働組合総連合
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全建総連住宅建築業務基準(職人憲法)改訂素案
[前文]
住宅は人間の生命の安全と健康、尊厳を守り、やすらぎと秩序を保障するもの
です。そして子育ての場、大切な家族やともに暮らす人との信頼と愛情で結び
ついた場所です。私たちは家づくりに際して人間らしい住宅の実現、健康、快
適な生活環境の整備につとめます。住み手の側からの発信を大切にし、専門家
の立場から豊富な経験や知識を生かし、住み手主体の家づくりにつとめます。
私たちの仕事は国民の住生活を守り発展させる社会的性格をもっています。つ
ねに技術・技能、品位の向上に努め、良心的な施工習慣にしたがって最良の施
工につとめ、創造性を発揮し、自信と誇りを持ってのぞみます。
地球環境問題は極めて深刻となっています。山は荒れ、川や海は汚染され、化
学物質による環境と体内への汚染は広がっています。
健康・環境・資源・ゴミ問題を解決できる21世紀型の住宅建設が求められて
います。伝統工法による木造軸組構法住宅は日本の地域文化に根ざし、地球環
境保全にあった自然にかえる素材で出来ています。リサイクル、省エネ、耐久
性、美的特徴を持ち、高温多湿な日本の気候風土にあった住宅です。
昔から家づくりは、全国各地で地域に根をおろした建設業者・建築職人が担っ
てきました。もともと日本では地元で採れる自然素材を生かした家づくりがす
すめられてきました。
高度経済成長のもとで大量生産方式による工業化住宅のもたらした被害は甚大
です。本来住宅は人間が生きていくうえで最も基本的なものであり、利益だけ
を追求するために建設されるものではありません。住宅が住み手の健康を脅か
し健康破壊さえ招きかねない事態を迎えています。大量生産・大量消費・大量
廃棄の浪費型経済は終わらせなければなりません。木造軸組構法住宅への期待
と関心は確実に高まってきています。国や自治体は、良好な住宅と生活環境の
整備に不断の努力を傾けるべきです。わたしたちもそのために努力します。
欠陥住宅、欠陥建築が社会問題となることがあります。建て主に群がる悪徳業
者が横行していることが主な原因です。私たちはこのような不良業者が建設業
界全体のイメージを悪くし、建設業者・建築職人の社会的地位を低下させてい
ることに憤りを持っています。
長期間を必要とする住宅建築にはトラブル・クレームが発生する事もあります
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が、これにたいして私たちは迅速・誠実な処理を行い、原因を明らかにして再
発防止につとめます。
私たちの仕事は技術・技能が売り物です。そのために私たちは日ごろから技術・
技能の向上、後継者養成に努力します。
ウデの良い建築職人が育たなければ建築物の品質が低下します。業界全体が衰
退し事業そのものも存続しなくなります。さまざまな社会的環境の変化などを
背景に新しい法律の制定、法律改正がすすんでいます。私たちは法律、条令、
規則等を積極的に身に付け仕事に生かします。あわせて従来の構法や習慣を大
切にした家づくりにつとめます。
この「住宅建築業務基準」は上記の認識の上に立って、建築主との信頼関係を
より深めるために建築業務、建築相談から引渡しまでなどの最低基準を定めた
ものです。
1,一般事項
1―1 内容
この基準は組合員で住宅建築を請け負う者(以下業者という)とその雇
用する労働者(見習工含む)の一般的業務と責務を定める。合わせて組
合の業務についても定める。
1―2
組合の業務と責務
① 地球環境、地域環境をまもり、よりよい町づくりをめざすこと。
② 地域住民と信頼関係を確立すること。
③ 建築関係の法律、情報の共有を周知すること。
④ 技術・技能の研鑚・向上に努め、後継者を養成すること。
⑤ 組合員の賃金労働条件を維持改善する取り組みをすすめること。
⑥ さまざまな要求・要望を実現するために国や自治体、関係団体に働き
かけること。
1―3
業者の業務と責務
① 建築主との工事請負契約を守って誠実にその工事を完成させること。
② 軸組工法施工基準に該当する工事部分はこれに従って施工すること。
③ 労働者(職人)の雇用の安定、労働条件の向上を図り、すすんで次の
事項を行うこと。
ア,労働者(職人)の雇用は直傭制とすること。
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イ,各現場に雇用管理の責任者を配置すること。
ウ,労働安全、衛生の徹底に努めること。作業内容により、労働
安全衛生法による作業主任者、技能講習修了者、特別講習修
了者を配置すること。
エ,各種の社会保険を適用すること。
オ,建設業退職金共済制度、中小企業退職金共済制度などの退職
金制度を適用すること。
カ,組合が定めた賃金水準を尊重し、職人の技能、能力に適応し
た賃金の支払いに努めること。
キ,組合が行う技術技能講習会、組合との連携による職業訓練の
実施により、労働者(職人)の技術技能の習得、向上に努め
ること。
ク,組合の内容・業務を説明し組合加入をすすめること。
1―4 労働者(職人)の責務
① 組合に加入すること。
② 常に技術技能の向上、モラル、意識の向上に努めること。組合の実施
する職業訓練、技術技能講習に積極的に参加すること。
③ 作業能率を高めるために常に創意工夫に努めること。
④ 建築主等の前では不快感を与える言動、服装を慎むこと。仕事中のラ
ジオ、携帯電話等の使用はひかえること。
⑤ 施工管理者(現場責任者)の指示に従い、安全確実に作業を行うこと。
1―5 労働時間と休日
① 就業時間は実働8時間とする。ただし、夏期と冬期の就業時間を増減
する事ができる。原則として夜間作業は行わない。
② 原則として土曜日・日曜日は休日とする。
1―6 工事中の行事、その他
① 地鎮祭、上棟式等の建築にともなう諸行事はよく説明し建築主の希望
によって実施する。
② 茶菓子等の接待については、要求しないこと。
2,営業活動
2―1 宣伝活動
① 業者は宣伝活動にあたっては、客観的かつ真実に即した方法でのみ行
い、自らの専門領域のみとすること。個人に属する事実、データ、ま
たは情報は事前の同意なしに明かさないこと。
② 消費者からの相談にあたっては、工法や工程、問題点などすすんで明
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らかにすること。
③ 地域のイベントなどでは業務の経験を生かし、積極的に参加し地域の
信頼を得るように努めること。
④ 広告物、インターネット、建築現場公開等、積極的な宣伝活動、情報
公開を行うこと。
2―2 信用の獲得
① 常に伝統的構法や新しい技術、技能を吸収し、最良の施工に努めるこ
と。
② 業者は相互の信頼関係のもとに専門工事業者を統括し、資材業者と連
携を密にして工事を行うこと。
③ 工事請負契約に定める事項(工事範囲、請負金額、工事期間等)の完
全な履行に努めること。
④ 可能な限り詳細でわかりやすい積算を行い、施工についてはその積算
以上の出来映えをめざすこと。
⑤ 業務経歴、作品集等、業務の施工能力を評価できる図書を整理保管し
消費者が縦覧できるようにしておくこと。
3,建築相談
3―1 希望条件の把握
① 顧客の希望条件を確実に理解するため、直接面談して説明を受けるこ
と。顧客、業者相互の考えを交換し理解を深めること。この場合、写
真、図面等を用いて次の事項を具体的に把握する。
ア,工事の種別(新築、増築、改築、その他)イ,工事場所、
ウ,敷地の位置、形状、面積、エ,工事の規模(面積) オ,
構造、カ,部屋数、キ,外観、ク,工事施工時期、ヶ,工事範
囲、コ,支給材料、サ,予算、シ,資金計画
② 顧客の生活様式、新築後の家族構成および現在使用し、転用する家具
等についても説明をうけておくこと。
3―2 業務の説明
① 業者は、すでに建設した住宅、現在建設中の住宅などについて実物、
業務経歴を顧客に説明し、施工能力について理解を得ること。
② 自ら施工した住宅を現地に案内する場合には、事前に入居者の了解を
得て行うこと
4,建築主の希望内容の把握
4―1 現地調査及び行政窓口調査
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① 建築主と同行して次の事項を確かめること。
ア,敷地の境界、イ,敷地の高低、ウ,隣地の状況、エ,水はけ、
オ,風向き、カ,道路(種類と幅員)
、キ,日照、ク,上下水道・電
気・ガス等、ヶ,所有地、借地の別、コ,方位、
② 敷地についての規制等の調査
ア,地目及び現況
イ,敷地に関する都市計画規制等の内容
ウ,
(宅地造成した土地の場合)宅地造成の時期、土壌、地盤の状況
エ,(接道が私道の場合)その指定の内容
4―2 建築主の意向の確認
① 業者は、建築主より説明を受けた希望条件その他をもとにして、その
内容を整理して書面により確かめること。この場合違反建築となる事
項については、その旨を説明すること。
② ①に基づいて平面図・立面図及びパース等を書き、その内容を建築主
に説明するとともに、その図面を基にして、さらに建築主の意向を整
理して、所要の修正を行うこと。平面図には主な家具の配置も記載す
る。
③ 建築主の承認を受けた図面等には、その旨を記録するとともに、その
年月日も記入すること
4―3 概算
業者は建築主に対して、その要望にそった工事内容、程度を建築主の予
定する工事費と関係づけて概算を打合せること。設計と設計監理にかか
わる費用についても説明しておくこと。この場合、建築主の求めに応じ
て同様な工事内容の建築物の紹介を行うなど、相互の理解を深めること。
5,業者と設計者の協力体制
① 現代の専門分化された技術に備えて、業者は設計者との適切な協力関
係を確立する事。
② 業者は設計者の業務の範囲とその責任を明確にして、相互の立場を尊
重した信頼関係を維持する事。
③ 設計者が工事監理を行う場合は、建築主に工事監理と施工管理(また
は工事管理)との違いを説明し、その責任範囲を明確にする事。
④ 設計施工一括の場合でも、設計段階と工事段階を明確にして、設計者
としての業務委任と工事請負の契約のそれぞれの区分を建築主に説
明する事。
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6,設計
6―1 設計の準備
① 業者は、建築物の敷地に係る制限についての法令または条例等に関す
る事項および上下水道・電気・ガス等の幹線系統を再確認すること。
② 業者は、地質調査を行い、必要に応じて実測をするなどにより敷地の
確認を行う。敷地境界を確認する場合には、建築主(借地のときは地
主)と隣地の所有者の立会いを求めること。確認内容について書面を
取り交わすこと。
③ 借地のときは、地主の承諾を得ていることを確認すること。
6―2 設計
① 工事に用いる設計は、次のとおりとする。
ア,配置図、イ,平面図(基礎、筋かい、金物も示す。設備図を含
む)、ウ,立面図、エ,矩計図、オ,工事概要(内部仕上表、外部仕
上表)、カ,必要に応じて詳細図等、キ,実測図
② 設計には、建築主が指示した要求内容を記載し、または特記仕様書等
によって工事内容とするべきところを明示すること。
③ 設計において詳細図等を作成しない場合には、工事の程度または内容
を決めるために必要となる木材の種類及び等級、内装及び外装の大要、
屋根材料、建築設備、建具および外構等に関し、工事の概要を知るこ
とができるような例示その他適当な方法による表示をすること。
6―3 設計の承認
業者は設計をとりまとめて建築主に説明し、承認を受けること。この場
合、承認を受けた図書にその年月日を記入すること。
7,積算・見積り
7―1 積算と見積りの実施
① 業者は、設計に基づき工事種別ごとに数量を概算し、積算を行うこと。
② 専門工事業者に行わせる工事の積算はあらかじめ定めた施工単価に
数量を乗じて行うことを標準とすること。
③ 業者は、専門工事業者に行わせる工事の積算を②によらない場合は、
専門工事業者より所要の見積りを徴し、それに基づいて積算すること。
④ 積算および見積りは適正を期すとともに、すみやかに作成し提出する
こと。
⑤ 工事期間、工事時期について十分考慮し、見積もること。
7―2 分離発注工事および特命建材の積算
① 業者は、分離発注工事がある場合には、建築主と協議してその工事範
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囲を明確にしておくこと。明確にされた範囲を書面にしておくこと。
② 建築主からの支給建材および特命建材の指定がある場合には、その支
給方法等の条件についてあらかじめ打合せること。
③ 分離発注工事並びに支給建材および特命建材等がある場合には、その
範囲を明確にして後、積算および見積りを行うとともに必要経費につ
いては適正に計上すること。
7―3 積算および見積りの方法並びに形式
業者が提出する見積書の形式は内訳明細方式で行うこと。
8,契約
8―1 工事請負契約の締結
① 業者は、建築主と十分協議のうえ書面による工事請負契約を締結する
こと。契約書は建築主に本書、業者はその写しを保管すること。
(注)契約の内容を明かす契約事項として、契約事項、契約約款、図
面および仕様書等がある。
② 契約書に次の事項を記載し、各当事者の合意の上、契約年月日、当事
者の住所・氏名を記載して押印の上、建築主には本書、業者はその写
しを保管すること。
ア,工事名、イ,工事の場所、ウ,工期、エ,検査および引き渡し
の時期、オ,請負代金額、カ,工事変更に伴なう請負代金の変更、
キ,支払方法。
③ ②の条項のほか次の諸事項について打合せの上合意が得られれば契
約におりこむこと。
ア,各当事者の履行の遅滞・不履行の場合の遅延利息、違約金、その
他の損害金
イ,第三者の損害金の負担
ウ,火災等による自己物件の保全
エ,工事監理者および現場代理人
オ,紛争の解決方法
8―2
工事請負契約書の書式
工事請負契約書のひな型には、次のものがあり、各当事者で必要に応じ
て協議の上、条項の削除ならびに追加を行うこと。
・全建総連作成の「工事請負契約約款」
・住宅金融公庫作成の「工事請負契約約款」
・日本法令の「工事請負契約約款」
8
・四会連合協定の「工事請負契約約款」
・住宅リフォーム推進協議会作成の「工事請負契約約款」
(リフォー
ム工事用)
9,建築手続き
9―1 開発許可等
① 業者は、開発許可の手続きが必要な敷地に住宅を建築する場合、手続
きを完了していることを確認するか、または建築主に代わって申請を
行うこと。
② 業者は、私道の指定を要する道に接する敷地に住宅を建築する場合に
は、手続きが完了していることを確認するか、または建築主に代わっ
て特定行政庁に対し道路の位置指定申請を行うこと。
③ 建物を壊した跡地に住宅を建築する場合には、業者は除却に先立って、
都道府県知事に除却工事届を提出すること。
9―2 確認申請手続き等の実施
① 業者または設計者は、建築主に代わって建築に先立って確認申請書を
提出して建築主事の確認を受けること。この場合、併せて建築工事届
を行うこと。確認申請の提出者はそれにかかわる資格を有する者とす
ること。
② 確認申請の手続きを、建築主に代わって行う場合には、予め建築主よ
り手続きについての委任を受けておくこと。申請における委託手数料
及び申請手数料は建築主の負担とすること。
③ 確認の手続きは、工事に支障のないように遅滞なく行うこと。
④ 業者は、上下水道(浄化槽を含む)ガス電気等の設備の設置につき、
その工事業者に所定の手続きを行わせること。
9―3 確認通知書の保管
確認通知書は確認に関する設計図書とともに工事期間中(完成引き渡し
まで)は業者が保管すること。
10,専門工事業者等の決定
10―1 専門工事業者の決定等
① 業者は、工事の工程に従いあらかじめその工事に必要な専門工事業者
及び建材業者を定めること。その際できるだけ組合に加入している者
より定めること。
② 業者は、専門工事業者及び建材業者に対して、工程計画に定めた時期
を通知すること。
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③ 業者は、専門工事業者または建材業者に対し、工事の依頼をしまたは
材料の購入を行う場合には注文書を交付し、それに基づき請書を提出
させること。
11,工事現場の安全・衛生と災害防止
11―1 保険契約の締結
① 業者は、労働者災害補償保険(労災保険)を成立させること。
② 業者は、工事中の物件に対する火災保険や工事にともなう第三者や他
の建物等への損害を及ぼす際の賠償保険に加入すること。
11―2 安全・衛生と災害の防止
① 業者は、労働者(職人)の労働安全や、現場における転落防止事故を
防ぐため、安全な作業床及び転落防止ネットの設置できる足場工法で
作業を行うこと。足場先行工法が望ましい。
② 業者は、現場の状況により仮囲いを設置し近隣住民に迷惑をかけない
こと。
③ 業者は、現場に可能な限り仮設事務所、仮設便所を設置し、労働者(職
人)の良好な職場環境を形成するように配慮すること。携帯電話等(緊
急連絡用)の設置に努めること。喫煙所を設置し喫煙マナーを遵守す
ること。
④ 業者は、現場ごとに現場責任者をおくこと。現場責任者は必要に応じ
て、職人(各職を含む。以下同じ)に安全な作業を行うよう指示する
こと。見習工については、法規に従い特に注意をすること。
⑤ 現場責任者は、次の時点ではその安全性について点検、確認し、その
結果を日誌に記載すること。
ア,仮囲いの設置
イ,仮設足場の設置
ウ,仮設電力の設置
エ,仮設水道の設置
オ,資材の搬入、保管
⑥ 現場責任者は、次の作業を行うときには、労働者(職人)が必要な資
格・免許等を所持しているかの確認と適切な保護具の使用方法を指導
すること。
ア,建方または解体
イ,仮設足場の設置・解体
ウ,資材の搬入
エ,特殊機械の作動時
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⑦ 現場の整理整頓に努めること。この場合、次の事項は現場責任者が点
検確認のうえ日誌に記載すること。
ア,仮設電力の安全
イ,たばこの吸殻のあとしまつ
ウ,現場内外の清掃
エ,現場の廃棄物等分別・整理
オ,道路上・隣地等への資材散乱防止
⑧ 労働者(職人)は、作業上の安全のための措置、その他について、現
場責任者の指示を守ること。
12,施工準備
12―1 近隣との調和
① 業者は、建築主と同行して現場における着工前に近隣にあいさつに行
き、このとき次の事項を説明すること。
ア,建物の規模・高さ
イ,工期・建方の時期、騒音の程度
ウ,苦情の連絡先
エ,駐車場の有無
② 着工後の苦情は現場では現場責任者が受け、業者に報告するとともに、
その対策を講ずること。その経過は日誌に記録すると共に、業者に報
告すること。
③ やむをえず夜間作業を行うときは、前もって近隣に現場責任者があい
さつすること。
12―2工事用電気・水道等の確保
工事請負契約の成立後、すみやかに工事用仮設申請をし、近隣に迷惑を
かけぬようにすること。
13,施工
13―1施工計画の策定とその徹底
① 業者は施工に先立ち、施工計画を策定し、着工日・工程及び資材・建
設機械等の搬入の日程について指示し、現場責任者に対して工程が予
定通り進行するよう指導すること。
② 業者は、施工計画・工程表の作成にあたっては、専門工事業者の状況、
使用資材の供給条件を十分考えて作成すること。この際、建築主の支
給資材または指定資材がある場合には、その取扱についても十分考慮
すること。
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③ 業者は、その作成された工程表を現場責任者、建築主、専門工事業者
および工事監理者にそれぞれ手渡すこと。
④ 業者は、工程に変更が生じたときは、実情に応じて工程表を作り直す
こと。
14,変更工事
14―1 変更工事の事前協議
① 工事の中途で変更工事の必要が生じたときは、業者は建築主に対し
て設計変更の場合に生じる費用の増減、工期の変更等の説明をする
こと。
② 変更工事は設計図書の変更を行ったものを積算し、その結果を建築
主に提示して、実施について建築主の同意を得て着手すること。
③ 設計施工分離で行われる工事の場合、業者は工事監理者と協議し、
①∼②の手続きによって変更工事を実施すること。
14―2 契約の変更
業者は、変更工事を実施する場合、設計・請負代金・工期の変更等を
明らかにした変更契約を締結することを原則とするが、契約書による
変更契約を締結しない場合には、書面により建築主との合意内容を明
らかにしておくこと。
15,環境、建設廃材の再資源化
15―1 地球環境を配慮し循環型社会形成のために努めること。
15―2 建築に使う素材は自然素材の活用をめざすこと。
15―3 全ての建設資材の再資源化に努めること。
16,工事完了と引渡し
16―1 完成の確認
① 業者は工事完成後、引渡しに先立ち、工事現場の跡片付け、清掃を
行うこと。
② 業者は次の事項について点検すること。
ア,建具の開閉、イ,施錠、ウ,通水、エ,電気の点検、オ、設備
機器の作動
③ 業者は建築主の立ち会いを求めて工事完了についての確認を行う
こと。
④ この場合、業者は建築主に使用上注意しなければならない箇所、そ
の他建築主が住宅管理上行うべきことについて説明すること。
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⑤ 手直し工事が必要とされる場合には、これを早急に行い、その手直
し工事が完成した段階で、建築主の承認を受けること。
16―2 工事完了届の提出
業者は、住宅の引渡しにあたっては建築主に代わって完了検査申請書
を提出すること。
16―3 引渡し
① 業者は、建築主により(手直し工事を含む)の完成の確認を受けた
上、工事請負契約に定めたところに従って、引渡しを行うこと。
② 引渡に際しては、次のものを建築主に手渡し、建築主より受領書を
受け取ること。
ア,確認通知証
イ,検査済証
ウ,引渡し証明書
エ,鍵
オ,竣工図書
カ,設備機器等の取り扱い説明書・保証書等
キ,建物本体の保証書
16―4 工事請負代金等の受領
① 引渡に際しては、工事請負代金(前渡金、内渡金のあるときは残
額)の支払いを受けること。ただし、手直し工事を残す場合には、
その金額を留保する場合がある。
② 業者は、契約変更の場合を除き、原則として増額要求をしてはな
らないこと。
17,専門工事業者への支払い
17―1 専門工事業者等にたいする支払い
① 業者が専門工事業者に対して行う代金支払いは、業者間の請負契
約に基づき支払うこと。
② 支払いは、各職の請求書の提出を得て後支払うこと。
18,竣工図書等の保存
18―1 竣工図書
業者は、竣工図書等を10年以上保存する事。
18―2 専門工事業者等のリスト
業者は、当該工事に関係した専門工事業者および資材業者のリスト
を整理し保存すること。
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19,瑕疵(かし)担保と保守
19―1 瑕疵担保
業者は、施工瑕疵がある場合には発見後すみやかに修繕する事。た
だし、やむをえない場合は損害賠償をもってこれにかえることがで
きる。
※品確法による瑕疵担保責任は住宅の基本構造部分に10年の保証
が義務付けられている。
19―2 保守
業者は自ら施工した建物の修繕、補修、取り替え等について積極的
に相談に応じること。アフターサービスはもとより、その後の保守
についても十分な配慮を行うこと。
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