損害賠償額の認定について

損害賠償額の認定について
資料1-1
○問題の所在
集団的消費者被害事案では、例えば、①欠陥商品や食中毒による被害のように、損害
の内容及び額が被害者によって区々である場合や、②食品の不当表示や証券取引にお
ける有価証券報告書の虚偽記載の事案のように、損害(差額)を捉えるのに困難を生じる
場合がある。新たな制度設計を考えるに当たっては、こうした場合における損害賠償額の
認定の在り方について検討する必要があると考えられる。
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1.総論(不法行為制度の目的と機能)
・加藤一郎編『注釈民法(19) 債権(10)』(有斐閣・1965年)〔加藤一郎〕6~7頁:
「民事責任は、被害者に生じた損害の填補を目的とし、行為者個人に対する責任を問うものである。」
・幾代通(徳本伸一補訂)『不法行為法』(有斐閣・1997年)2頁:
「民事責任法(不法行為法)は、違法行為者の被害者個人に対する責任を問うものであり、そこでの責任は被害者自身によって追及さ
れ、被害者に生じた損害を填補させることを目的とする。」
・四宮和夫『不法行為(事務管理・不当利得・不法行為 中巻・下巻)《現代法律学全集10》』(青林書院・1985年)263~268頁:
「不法行為制度の目的が被害者の受けた損害の填補にあることについては異論がない。学説は、さらに進んで、不法行為制度を損害
の(公平妥当な)配分をめざす制度として捉える。」
「不法行為制度は加害者に損害賠償責任を課すので、これが制裁として機能し、将来における加害行為の抑制として作用する。」
「不法行為が権利の侵害である場合には、不法行為による損害賠償は権利保護をもつことを、否定しえないであろう。」
・平井宜雄『債権各論Ⅱ 不法行為』(弘文堂・2002年)4~6頁:
「現在における不法行為法の機能すなわち社会の要請に応じて充たさなければならない作用については、各種のものが挙げられ、その
うちのいずれに重点をおくべきかが論じられている。・・・(ア)不法行為法の機能は不法行為により被害者に生じた損害を填補するところ
にある、・・・(イ)不法行為法の機能は社会生活上一般に要求される注意義務に適った行動をすれば(すなわち過失がなければ)損害賠
償を免れさせそれによって損害の発生を未然に防止するところにある、・・・(ウ)不法行為法の機能は損害賠償によって加害者に制裁を
加えるところにある、・・・。
以上のように、不法行為法の機能については、各種の見解が考えられるけれども、・・・本書では(ア)を重視することはもちろんとして
(イ)ないし(ウ)の機能をもあわせて重視するという立場が採られている。」
・内田貴『民法Ⅱ 第2版 債権各論』(東京大学出版会・2007年)303~304頁:
「今日の不法行為制度の主たる目的ないし機能は、報復や制裁にはないというべきだろう。むしろ、被害者の救済(損害の填補)と将来
の不法行為の抑止に重要な現代的機能がある。」
・窪田充見『不法行為法』(有斐閣・2007年)20頁:
「多くの不法行為の事案においては、不法行為法が損害填補機能を目的としつつ、制裁機能や予防機能も間接的にせよ認められる。」
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2.「損害」の意義
<学説>
【差額説】
加害行為がなかったとしたならばあるべき利益状態と、加害がなされた現在の利益状態との差を損害と
する見解。
【問題点】
・損害概念が財産的損害には当てはまっても精神的損害に当てはまらないのではないか(吉村良一『不法行
為法』(有斐閣・2006年)90頁) 。
・生命・身体に対する侵害のような場合、はたして差額説によって損害をとらえそれに対する賠償額を適正
に算定することができるか(吉村良一『不法行為法』(有斐閣・2006年)90頁) 。
・被害者に不利益が発生したという事実状態の確定の問題と、これを金銭面でどのように評価するかという
問題の次元の違いが認識されていない(潮見佳男『不法行為法』(信山社・1999年)216頁)。
【損害事実説】
「損害」は法的評価の対象たるべき権利侵害の事実そのもの(人の死亡・負傷、物の滅失・毀損、名誉毀
損等)であると捉える立場。
【問題点】
・幼児や無職者などの逸失利益、慰謝料等被害者の個人的事情をどのように斟酌するかといった問題す
べてが、金銭的評価のレベルに割り当てられ、かつ、裁判官の裁量事項とされてしまう(潮見佳男『法律学の
森 不法行為法』(信山社・1999年)218頁 )。
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<判例①>
【最判昭和42年11月10日民集21巻9号2352頁】
「交通事故による傷害のため、労働力の喪失・減退を来たしたことを理由として、将来得べかりし利益喪失による損害を算定するにあたって、上告人
の援用する労働能力喪失率が有力な資料となることは否定できない。しかし、損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を填補することを目的とす
るものであるから、労働能力の喪失・減退にもかかわらず損害が発生しなかつた場合には、それを理由とする賠償請求ができないことはいうまでもな
い。原判決の確定した事実によれば、Aは本件交通事故により左太腿複雑骨折の傷害をうけたが、その後従来どおり会社に勤務し、従来の作業に従事
し、本件事故による労働能力の減少によって格別の収入減を生じていないというのであるから、労働能力減少による損害賠償を認めなかった原判決の
判断は正当であって、所論の判例に反するところもない。」
【最判昭和56年12月22日民集35巻9号1350頁】
「原審は、(1)被上告人は、昭和四七年三月一一日、本件交通事故によつて右手、右臀部に加療五日間を要する挫傷を受け、昭和五〇年一月一〇日ま
での約二年一〇か月にわたる通院治療の結果、身体障害等級一四級に該当する腰部挫傷後遺症を残して症状が固定し、右下肢に局部神経症状があるも
のの、上、下肢の機能障害及び運動障害はないとの診断を受けたこと、(2)右後遺症は多分に心因性のものであると考えられること、(3)被上告人は、
通産省工業技術院繊維高分子材料研究所に技官として勤務し、本件事故前はかなり力を要するプラスチツク成型加工業務に従事していたが、本件事故
後は腰部痛及び下肢のしびれ感があつて従前の仕事がやりづらいため、坐つたままでできる測定解析業務に従事するようになつたこと、(4)しかし、
本件事故後も給与面については格別不利益な取扱は受けていないこと、などの事実関係を確定したうえ、事故による労働能力の減少を理由とする損害
を認定するにあたつては、事故によつて生じた労働能力喪失そのものを損害と観念すべきものであり、被害者に労働能力の一部喪失の事実が認められ
る以上、たとえ収入に格別の減少がみられないとしても、その職業の種類、後遺症の部位程度等を総合的に勘案してその損害額を評価算定するのが相
当であるとの見解に基づいて、右事実関係及び労働省労働基準局長通牒(昭和三二年七月二日付基発五五一号)による労働能力喪失率表を参酌のうえ、
被上告人は、本件交通事故に基づく前記後遺症のため労働能力の二パーセントを喪失したものであり、その喪失期間は右事故後七年間と認めるのが相
当であるとして、被上告人の年収を基準とする右割合及び期間による三四万一二一六円の財産上の損害を認定している。
しかしながら、かりに交通事故の被害者が事故に起因する後遺症のために身体的機能の一部を喪失したこと自体を損害と観念することができるとし
ても、その後遺症の程度が比較的軽微であつて、しかも被害者が従事する職業の性質からみて現在又は将来における収入の減少も認められないという
場合においては、特段の事情のない限り、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害を認める余地はないというべきである。」
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<判例②>
【最判平成元年12月8日民集43巻11号1259頁】
「(二) 元売業者の違法な価格協定の実施により商品の購入者が被る損害は、当該価格協定のため余儀なくされた支出分として把握されるから、本件
のように、石油製品の最終消費者が石油元売業者に対し損害賠償を求めるには、当該価格協定が実施されなかったとすれば、現実の小売価格(以下
「現実購入価格」という。)よりも安い小売価格が形成されていたといえることが必要であり、このこともまた、被害者である最終消費者において主
張・立証すべきものと解される。もっとも、この価格協定が実施されなかったとすれば形成されていたであろう小売価格(以下「想定購入価格」とい
う。)は、現実には存在しなかった価格であり、これを直接に推計することに困難が伴うことは否定できないから、現実に存在した市場価格を手掛か
りとしてこれを推計する方法が許されてよい。そして、一般的には、価格協定の実施当時から消費者が商品を購入する時点までの間に当該商品の小売
価格形成の前提となる経済条件、市場構造その他の経済的要因等に変動がない限り、当該価格協定の実施直前の小売価格(以下「直前価格」とい
う。)をもって想定購入価格と推認するのが相当であるということができるが、協定の実施当時から消費者が商品を購入する時点までの間に小売価格
の形成に影響を及ぼす顕著な経済的要因等の変動があるときは、もはや、右のような事実上の推定を働かせる前提を欠くことになるから、直前価格の
みから想定購入価格を推認することは許されず、右直前価格のほか、当該商品の価格形成上の特性及び経済的変動の内容、程度その他の価格形成要因
を総合検討してこれを推計しなければならないものというべきである(前記第一小法廷判決参照)。更に、想定購入価格の立証責任が最終消費者にあ
ること前記のとおりである以上、直前価格がこれに相当すると主張する限り、その推認が妥当する前提要件たる事実、すなわち、協定の実施当時から
消費者が商品を購入する時点までの間に小売価格の形成に影響を及ぼす経済的要因等にさしたる変動がないとの事実関係は、やはり、最終消費者にお
いて立証すべきことになり、かつ、その立証ができないときは、右推認は許されないから、他に、前記総合検討による推計の基礎資料となる当該商品
の価格形成上の特性及び経済的変動の内容、程度その他の価格形成要因をも消費者において主張・立証すべきことになると解するのが相当である。」
「以上の各事実を合わせ考慮すれば、本件各協定の実施当時から被上告人らが白灯油を購入したと主張している時点までの間に、民生用灯油の元売段階
における経済条件、市場構造等にかなりの変動があったものといわなければならない(原審も、元売段階に顕著な価格変動要因があったことは否めな
いとして、これを認めている。)。そうすると、直前価格をもって想定購入価格と推認するに足りる前提要件を欠くものというべきであるから、直前
価格をもって想定購入価格と推認した原判決には、法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法が判決に影響することは明らかであり、したがって、
論旨は理由があり、この点について原判決は破棄を免れない。そして、原審は、白灯油の原価を基準としてその価格を推計する方法については、石油
製品がいわゆる連産品であって、石油製品全体の価格はあっても製品別の原価はなく、かつ製品別の原価を算定する方法はないと認定しているのであ
り、また各協定に影響を受けない元売会社の同種製品から想定購入価格を推計する方法については、当時わが国内において右協定の影響を受けない製
品価格の存在を認めることができないと認定しているから、このような推計方法もいずれも不可能であることが明らかであり、更に記録にあらわれた
本件訴訟の経過に照らすと、被上告人らは、本件訴訟において、直前価格を想定購入価格として損害の額の算定をすべきであって、その方法以外には、
損害の額の算定は不可能であると一貫して主張し、1(二)で説示した前記推計の基礎資料とするに足りる民生用灯油の価格形成上の特性及び経済的変
動の内容、程度等の価格形成要因(ことに各協定が行われなかった場合の想定元売価格の形成要因)についても、何ら立証されていないのであるから、
本件各協定が実施されなかったならば現実の小売価格よりも安い小売価格が形成されていたとは認められないというほかなく(なお、前記昭和六二年
七月二日第一小法廷判決参照)、結局、被上告人らの請求は、この点において理由がなく(原判決は前記三に説示した違法によっても破棄を免れない
が、この破棄理由によるまでもなく)、右請求を棄却した第一審判決は、結論として正当というべきである。」
【最判平成8年4月25日民集50巻5号1221頁】
交通事故の被害者が、リハビリをかねて自宅近くの海岸で貝とりをしていて心臓麻痺で死亡した事案につき、裁判所は次のように判示した。
「交通事故の被害者が事故に起因する傷害のために身体的機能の一部を喪失し、労働能力の一部を喪失した場合において、いわゆる逸失利益の算定に
当たっては、その後に被害者が死亡したとしても、右交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的
に予測されていたなどの特段の事情がない限り、右死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではないと解するのが相当である。
けだし、労働能力の一部喪失による損害は、交通事故の時に一定の内容のものとして発生しているのであるから、交通事故の後に生じた事由によっ
てその内容に消長を来すものではなく、その逸失利益の額は、交通事故当時における被害者の年齢、職業、健康状態等の個別要素と平均稼働年数、
平均余命等に関する統計資料から導かれる就労可能期間に基づいて算定すべきものであって、交通事故の後に被害者が死亡したことは、前記の特段の
事情のない限り、就労可能期間の認定に当たって考慮すべきものとはいえないからである。また、交通事故の被害者が事故後にたまたま別の原因で死
亡したことにより、賠償義務を負担する者がその義務の全部又は一部を免れ、他方被害者ないしその遺族が事故により生じた損害のてん補を受けるこ
とができなくなるというのでは、衡平の理念に反することになる。」
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3.集団的被害事案における実務上の工夫
(1) 一括請求
・ 損害項目を財産的,精神的両損害に個別化することなく,端的に損害の本質と実態を直視し,その賠償額を全体的に把握する,とい
うもの(淡路剛久「一括請求・一律請求・包括請求」新・実務民事訴訟講座6(日本評論社・1983年)257頁)
・ 逸失利益,治療費等の財産上の損害を慰謝料算定の一酌量事由として慰謝料の額に含ませて請求すること(潮見佳男『法律学の
森 不法行為法』(信山社・1999年)272頁)
(2) 一律請求
・ 具体的な賠償額を定型的あるいは定額的に把握すること(淡路剛久「一括請求・一律請求・包括請求」新・実務民事訴訟講座6(日本
評論社・1983年)257頁)
・ 共同原告が多数いる場合に,原告の足並みをそろえるために,慰謝料により統一額による賠償請求をすること(平野裕之『民法総合
6 不法行為法』(信山社・2007年)307頁)
・ 多数の被害者の請求額に差を設けない請求方式(潮見佳男『法律学の森 不法行為法』(信山社,1999年)272頁)
(3) 包括一律請求
・ 加害行為によって生じた全人間的破壊による損害を個別的損害項目に解体することなく総体として包括的に捉えること(潮見佳男
『基本講義 債権各論Ⅱ 不法行為法』(新世社・2005年)56頁)
・ 慰謝料名目で財産的損害を別個に賠償しない旨を明示して包括的に賠償を請求すること(平野裕之『民法総合6 不法行為法』(信
山社・2007年)307頁)
※次頁に掲げた裁判例は代表的なものを掲げるにとどまる。他の包括一律請求に関する裁判例は別紙(参考資料1)参照
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<裁判例>
・イタイタイ病、水俣病、大気汚染等の公害事件 、カネミ油症事件、スモン訴訟等の大量薬害事件等、大阪空港騒音等で認められている。
【最大判昭和56年12月16日・大阪空港訴訟民集35巻10号1369頁】
「確かに、被上告人らの本件損害賠償請求は、本件空港に離着陸する航空機の騒音等により被上告人らを含む周辺地域の住民が被つている被害を一体
的にとらえ、これを一個の権利侵害として、被上告人らがそれら住民の全体を代表するといつたような立場においてこれに対する救済を求めるもので
はなく、被上告人各自の被つている被害につき、それぞれの固有の権利として損害賠償の請求をしているのであるから、各被上告人についてそれぞれ
被害の発生とその内容が確定されなければならないことは当然である。しかしながら、被上告人らが請求し、主張するところは、被上告人らはそれぞ
れさまざまな被害を受けているけれども、本件においては各自が受けた具体的被害の全部について賠償を求めるのではなく、それらの被害の中には本
件航空機の騒音等によつて被上告人ら全員が最小限度この程度まではひとしく被つていると認められるものがあり、このような被害を被上告人らに共
通する損害として、各自につきその限度で慰藉料という形でその賠償を求める、というのであり、それは、結局、被上告人らの身体に対する侵害、睡
眠妨害、静穏な日常生活の営みに対する妨害等の被害及びこれに伴う精神的苦痛を一定の限度で被上告人らに共通するものとしてとらえ、その賠償を
請求するものと理解することができる。もとより右のような被害といえども、被上告人ら各自の生活条件、身体的条件等の相違に応じてその内容及び
程度を異にしうるものではあるが、他方、そこには、全員について同一に存在が認められるものや、また、例えば生活妨害の場合についていえば、そ
の具体的内容において若干の差異はあつても、静穏な日常生活の亭受が妨げられるという点においては同様であつて、これに伴う精神的苦痛の性質及
び程度において差異がないと認められるものも存在しうるのであり、このような観点から同一と認められる性質・程度の被害を被上告人全員に共通す
る損害としてとらえて、各自につき一律にその賠償を求めることも許されないではないというべきである。」
・損害を慰謝料として認めている場合が多いが、他方で費目に分けずに包括請求として認定している場合もある。
【福岡地判昭和53年11月14日・スモン訴訟】
「原告患者らがスモン発病以来少なくとも7年余りをすでに経過し、その間の入通院による治療費、交通費、付添看護料その他の諸雑費、さらには車椅
子、補装具、住居の改善費などの支出を余儀なくされ、また、その間十分に稼動できず、あるいは職を失ったため、発病から現在まで、更には将来に
向って、その得べかりし利益の損害を被っていることは、十分に想像できるところであるが、これら多項目の損害を個々に立証していくことは非常に
煩琑であり、特にそれが長期間に及ぶときは事実上困難でさえある。そこで、このような場合には、これらの諸損害と精神的、肉体的苦痛に対する慰
謝料とを併せ包括したものとして、一定の損害額を主張し請求することも、特に将来別訴の提起等によって不都合を生じるおそれなどない限り、許さ
れる」とし、障害の程度(重症度)、発症時の年齢、治療期間、職業関係、家族構成を考慮すべき事項とし、口頭弁論終結時をその基準時として、25ランクの損害
額を認めた。
・原告は一部請求として請求するが、裁判所は全部請求であるとして認定している場合が多い。
【大阪地判平成3年3月29日・西淀川公害事件】
「原告らは、全損害の内から公健法等の行政上の給付金額を除いた損害の更に内金として請求する旨主張するけれども、損害の全額を何ら明示してい
ないのであるから、内金として請求するとはいっても、講学上のいわゆる一部請求とはいえず、本件における審判の対象は、原告らの本件口頭弁論終
結時までの間に発生した損害賠償請求権全部の存否であり、請求額は、判決による認容額の上限を画するに過ぎないものというべきである。従って、
原告らは、後に別訴によって残額の請求をすることは許されないこととなる」
「被告らは、損害賠償請求訴訟における損害の主張は、被告の侵害行為の結果を具体的に金銭に評価算定した上その主張をなすべきであり、損害につ
いての個々の費目、すなわち、治療費、逸失利益、慰謝料といった費目について個別的に算定すべきであって、包括請求は許されない旨主張する。
なるほど、右の如き請求は、個別積算による損害額算定の方式からすると、その算定の根拠が曖昧で、恣意的になる危険もあるといえる。しかし、
従来の個別積算による損害額算定の方式も、損害額算定の一つの法技術に過ぎず、唯一絶対のものというほどのものでもない。一見客観的かつ合理的
であるかに見えて、これも現に慰謝料の補完作用が行われていることを考慮すると、結局個別積算で満たされない損害を補って、総額としての損害額
の社会的妥当性を図っているものと解される。
原告らの請求が全部請求であり、後日、別訴により残額の請求をすることが許されないことは前示のとおりであり、かつ、本件疾病のごとく発症以
来長期間継続する症状の経過は必ずしも一様ではなく、被害は物心各種多方面にわたっており、これらすべての被害を個別に細分しないで、固有の意
味の精神的損害に対する慰謝料、休業損害、逸失利益等の財産的損害を含めたものを包括し、これを包括慰謝料として、その限度に応じ社会観念上妥
当な範囲内で損害額をある程度区分定額化して算出することも充分合理的で、法律上許されるものと解され、このような意味で包括請求もこれを否定
すべき理由はない。特に本件のごとく類似被害の多発している事案においては、右のごとき請求をなす必要があるのみか、むしろ、このような方法で
の損害額の算定には、公平で、実体にも即しており、より合理性が認められるものといえる。」
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4.関連する規定
○損害額の認定
・民事訴訟法第248条
損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判
所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
趣旨
損害賠償請求訴訟においては、損害の発生および損害額についての立証責任が原告にあるため、原告が損害の発生につい
て立証しても、損害額に関する立証が効を奏しない場合には、請求が棄却されることになる。そこで、損害が生じたことは認めら
れるが、その性質上、損害額を算定する根拠につき、個別的、具体的な立証が困難であるため、損害額の立証が客観的に極め
て困難な場合には、損害額について厳格な立証を要求すると、原告にとって不当に不利益になることがあるので、裁判所が、口
頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができることとした(法務省民事局参事官室編
『一問一答新民事訴訟法』(商事法務研究会・1996年)287頁~288頁)。
具体的には慰謝料、幼児の逸失利益等である。
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<学説>
【証明度軽減説】
損害の有無とともに損害額についても証明の対象であるという理解を前提にして、248条は、損害額に関する証明度を軽減したもの
とする。
対象:幼児の逸失利益
【裁量評価(自由裁量)説】
損害額の認定は、裁判所による法的評価としての性質を有するという理解を前提にして、248条は、評価の方法が確立されていな
い損害について、裁判所の裁量的評価を許容したものであるとする。
対象:慰謝料、幼児の逸失利益、焼失家財道具(損害保険に依拠して算定)
【折衷説】
248条は、証明軽減説及び裁判所の裁量評価の双方を認めているとする(例えば、損害額について一定程度の心証が形成されな
い場合でも、なお裁判所の自由な判断によって相当な損害額の認定を許すものであり、証明度軽減と裁判所の裁量判断の双方を認
めた規定であるとするなど)。
対象:幼児の逸失利益、焼失家財道具
・畑郁夫「新民事訴訟法248条について」『改革期の民事手続法 : 原井龍一郎先生古稀祝賀』(法律文化社・2002年)505
頁は、「どちらかというと、立証責任軽減説が穏当であると思われる。確かに、事実問題か評価問題かという形の
議論は、裁判過程の色々な場面でぶつかる難問である。元来、裁判過程自体がすべて価値関係的な営為であり、
両者は果たしてそれほど区別明確な問題であるのかがまず問われなければならず、結局は、認識論にもかかわる
のであろうが、差額説的発想を基本とする実務感覚からすると、通常の財産損害の損害額の算定作業においては
各損害項目ごとの積み上げ方式を行っているのであって、その場合、損害と損害額はそれほど区別して認識しな
ければならないものでもなく、金銭的評価も事実認定作業と同時に認定することが多い、そのようなことから、今、
損害と損害額との要件的性格を全く別のものとすることにはやや違和感がある。」としている。
・春日偉知郎「『相当な損害額』の認定」ジュリ1098号74頁は、「損害額の問題は金銭的評価という裁量的性格の
ものであるから、事実の存否をめぐる証明責任になじまず、したがってまた、証明度の問題でもないという認識が定
着してきている」としている。
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<裁判例①>
【大阪高裁平成19年10月30日判決、判例タイムズ1265号190頁(上告・上告受理申立)】
地方公共団体発注のごみ焼却施設建設工事の入札において、入札業者間に談合が存在したと認定された事例において、損害額の認定につき、裁判所は次の
ように判断した。
「本件工事における想定落札価格は、入札当時の経済情勢、入札参加者数・事業規模・価格競争力・受注意欲等、当該工事の規模・種類・特殊性、地域
の特性等の種々の価格形成要因が複雑に絡み合って決定されるため、証拠に基づいて具体的に想定落札価格を認定することは極めて困難である。そう
すると、本件では、控訴人の談合行為によって、神戸市に損害が生じている点は認められるものの、損害の性質上その額を立証することが極めて困難
であるときに該当するといえるから、民訴法248条を適用して相当な損害額を認定すべきである。
そこで、本件における損害額について検討すると、証拠(甲11ないし13)によれば、公正取引委員会から依頼を受けた独占禁止法研究会が平成15年
10月に公表した独占禁止法研究会報告書(甲12)には、最近5年間の主要なカルテルについて、公正取引委員会による審査開始後の下落率を調査した結
果、平均下落率が20.97%であったこと、指名競争入札から談合が困難な制限付き一般競争入札に移行した長野県及び宮城県において、入札制度改革前
後の平均落札率を調査したところ、長野県の下落率が20.9%、宮城県の下落率が15.5%であったため、談合が困難になると15ないし20%程度落札率が
下がると推定されると記載されていること、神戸市が、公募型指名競争入札の拡大と指名業者の事後公表等の入札制度の改革を行ったところ、改革後
の平均落札率が82.64%になったこと、公正取引委員会による調査(甲13)によると、平成8年から平成15年3月までの間に排除勧告若しくは課徴金納付
命令を行った事件における公正取引委員会の審査開始後の落札価格の下落率を算出したところ、過去の入札談合・カルテル事件の平均は16.5%の下落
率、入札談合事件に限っては18.6%の下落率であり、調査対象の約9割の事件で8%以上の下落率であったことが認められる。
しかしながら、上記データの対象となった工事等と本件工事とでは、工事の規模・種類・内容、入札参加者の数・事業規模・価格競争力・受注意欲
等、社会経済情勢、地域の特性等の価格形成要因の類似性が保たれているかどうかは分からず、かえって証拠(甲12、13)によれば、本件工事と工事
の規模・種類・内容について類似性を欠く事例が多数存在していることが認められること、上記2(①)ウ認定のとおり、平成6年4月1日から平成10年9
月17日までの間に、地方公共団体が指名競争入札等の方法により発注したストーカー炉の建設工事の落札率が、控訴人ら5社のうちいずれかが受注した
工事の落札率の平均値は約96.6%であるのに対し、被控訴人ら5社以外の者が受注した工事の落札率の平均値は約89.8%であり、その差が6.8%である
こと、平成10年9月17日から平成16年7月31日までの間の地方公共団体が指名競争入札等の方法により発注したストーカー炉の建設工事の落札率の平均
値が91.9%、そのうちの控訴人ら5社が受注した工事の落札率の平均値が90.1%であり(甲ア25)、平成6年4月1日から平成10年9月17日までの間の控訴
人ら5社が受注した工事の落札率の平均値から6.5%低下したにとどまることからすると、甲11ないし13の各データをそのままあてはめて本件の談合に
よる損害額を算定することはできない。
上記の諸事情を総合考慮すると、本件における損害額は、本件落札価格に基づく契約金額の6%に相当する額に相当する額と認めるのが相当であ
る。」
【東京高裁平成21年2月26日判決、金融・商事判例1313号26頁(上告・上告受理申立)】
「1審被告西武鉄道の昭和59年4月12日以降に提出された有価証券報告書等の虚偽記載がされたため、平成16年10月13日に虚偽記載が公表されて一般に明
らかとなり、西武鉄道株式が東京証券取引所によって監理ポストに割り当てられ、同年11月16日には同年12月17日に上場廃止するとの決定がなされ、
そのことにより西武鉄道株式の株価が一定の割合で下落することになったことは認めざるを得ない。その下落額について、・・・各処分1審原告らが選
択した現実の売却時点の価格との差額とすることは相当でなく、他にこれを客観的に把握するに足りる証拠は無いが、上記の虚偽記載公表以降の現実
の株価の変動、推移や平成18年1月から2月にかけて行われた西武鉄道を含むグループ企業の再編において西武鉄道株式は1株919円と評価されて譲渡さ
れ、1審被告西武鉄道は、会社分割に反対する株主からの株式買取請求に対しても1株919円の買取に応じたこと、もともと虚偽記載の内容は、コクドの
保有株式数を過小にしたものであり、しかも、コクドが第1の大株主であることになんら変わりはなく、1審被告西武の財政状況や企業価値そのものに
対する影響は少なかったものと考えられること等を総合勘案すると民事訴訟法248条を適用して1株につき160円(平成16年10月13日の虚偽記載公表直前
の株価1081円の約15%相当額)と認定するのが相当である。」
10
<裁判例②>拡大適用を認めた裁判例(三木浩一「民事訴訟法二四八条の意義と機能」426頁~429頁による。)
①割合的心証型
【神戸地判平成14年7月18日交通事故民事裁判例集35巻4号1008頁】
「被告らは、本件事故による被告車の損害額として九五万五五〇〇円を主張し、証拠として部品及び工賃明細書(乙六)を提出する。しかしながら、甲
一三のカタログに照らし、乙六に記載されている金額は不当に高額であるおそれが大きいし、乙六自体も誰が作成したのか作成者も不明であって、そ
の信用性は低いといわなければならない。よって、民訴法二四八条に従い、被告車の損害額を八五万円と認定する。」
②財産負担考慮型
【東京地判平成10年10月16日判タ1016号241頁】
「原告建物の日照その他の生活環境が劣化したことによる原告建物の財産的価値の低下については、本来、不動産鑑定士による鑑定を要する問題であ
るが、被告ら建物の違法建築の有無及び程度について、鑑定等に既に多額の費用を出捐している原告に対し、さらに鑑定の申出を慫慂することは、そ
の費用及び予想される財産的価値の下落額を考えると、相当性に乏しかったので、あえて鑑定申出を慫慂することはせず、民訴法二四八条の趣旨にも
照らし、証拠上既に得られた原告建物の敷地面積、種類・構造、床面積等、地理的条件、その他弁論の全趣旨を含む一切の事情を考慮し、五〇万円程
度下落したものと認定することとする。」
③真実擬制応用型
【東京高判平成14年1月31日判時1815号123頁】
「被控訴人Aは、A商品6に関する伝票帳簿類を提出しておらず、当裁判所の文書提出命令に従っていないものというべきである。しかしながら、被控訴
人AがA商品6を二〇〇〇個製造販売したとする控訴人の主張は、本件全証拠からうかがわれる控訴人エアソフトガンのカスタムパーツの流通状況、被
控訴人Aの営業内容を考えると著しく不自然であり、控訴人の上記主張を全面的に真実であるとすることに躊躇せざるを得ない。当裁判所は、弁論の趣
旨から認定される被控訴人Aの営業状況、同業者である被控訴人B、同Cとの営業規模の比較、その他諸事情を考慮し、民事訴訟法二四八条の法意の下に
同法二二四条を一項を適用して、被控訴人の主張は、本件で問題となる三年間(平成六年九月二二日から平成九年九月二一日まで)に一〇〇〇個販売
したという限度で真実であると認めることとする。」
④平均的損害算出型
【東京地判平成14年3月25日判タ1117号289頁・飲食店でのパーティーの解約にともなう営業保証料の支払い】
「前記(1)アからも明らかなとおり、本件予約の解約は、開催日から二か月前の解約であり、開催予定日に他の客からの予約が入る可能性が高いこと、
本件予約の解約により被控訴人は本件パーティーにかかる材料費、人件費等の支出をしなくて済んだことが認められる。
他方、前記(1)アないしウによれば、被控訴人は本件予約の解約がなければ営業利益を獲得することができたこと、本件パーティーの開催日は仏滅
であり結婚式二次会などが行われにくい日であること、本件予約の解約は控訴人自身三万六〇〇〇円程度の営業保証料の支出はやむを得ないと考えて
いること(弁論の全趣旨)が認められる。
以上の控訴人、被控訴人にそれぞれ有利な事情に、そもそも本件では証拠を検討するも、旅行業界における標準約款のようなものが見当たらず、本
件予約と同種の消費者契約の解約に伴い事業者に生ずべき平均的な損害額を算定する証拠資料に乏しいこと等を総合考慮すると、本件予約の解約に伴
う『平均的な損害』を算定するに当たっては、民訴法二四八条の趣旨に従って、一人当たりの料金四五〇〇円の三割に予定人数の平均である三五名を
乗じた四万七二五〇円(中略)と認めるのが相当であり、この判断を覆すに足りる証拠はない。」
11
○損害額の集合的認定に民事訴訟法248条を適用することができるか。
三木浩一「民事訴訟法二四八条の意義と機能」『民事紛争と手続理論の現在 : 井上治典先生追悼論文集』(法律文化社・2008年)431頁
「このように多数当事者の損害額を集合的に認定することの可否ついては見解が分かれるが、将来的な課題として、損害額の集合的認定に二四八条を適用するこ
とができるかどうかを検討しておく必要がある。特に問題となるのは、原告一人一人を個別に見た場合には、伝統的な個別積算方式で損害額を立証することが極め
て困難とまではいえないが、原告の数が多数に上ることのゆえに全員の損害額を個別積算方式で立証することが極めて困難であるときに、これが二四八条の要件
を満たしているといえるかどうかである。証明度軽減説の立場からは、これを肯定することは難しい。証明度軽減説は、あくまでも通常の事実の証明の範疇で二四八
条を捉えるところ、多数当事者の事件といえども個別訴訟の集合にすぎず、『損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるとき』という要件も、原告各自
ごとに考えるべきことになると思われるからである。これに対し、裁量評価説の場合は、損害額の認定はその本質において裁判官の裁量評価であると考えるので、
原告の数が多数に上るということ自体を『損害の性質』と位置づける余地があり、そのことゆえに損害額を立証することが極めて困難であるときは、二四八条を適用
することも許されると解される。
ただし、裁量評価といえども相当かつ合理的なものでなければならないから、これまで多数当事者訴訟において模索されてきた種々の方法を踏まえて、被告にとっ
てもある程度納得のいく裁量評価の方法による必要がある。たとえば、包括請求においては、遅延損害金の起算日を不法行為時や各費目の損害の発生時に求め
るべきではなく、口頭弁論終結時を基準とするという一部の公害訴訟等で用いられた方法が妥当であろう。また一律請求については、その基本思想は比較的抵抗
なく実務において受容されているとの評価もあり、事件の種類によっては積極的な活用が望まれるが、相当かつ合理的な算定の見地から、原告らの損害になるべく
きめ細かく等級を設け、あるいはグループ化を図るべきである。各等級における損害額の算定に際しては、被告の防御権を保障するため控えめな金額が望ましく、
各等級中の低い方に一律化すべきである。したがって多くの場合には結果的に一律一部請求となろう。」
<参考判例>
【最高裁昭和39年6月24日判決民集18巻5号874頁】
年少者死亡の場合における右消極的損害の賠償請求については、一般の場合に比し不正確さが伴うにしても、裁判所は、被害者側が提出するあらゆる証
拠資料に基づき、経験則とその良識を十分に活用して、できうるかぎり蓋然性のある額を算出するよう努め、ことに右蓋然性に疑がもたれるときは、被害者側
にとつて控え目な算定方法(たとえば、収入額につき疑があるときはその額を少な目に、支出額につき疑があるときはその額を多めに計算し、また遠い将来の
収支の額に懸念があるときは算出の基礎たる期間を短縮する等の方法)を採用することにすれば、慰藉料制度に依存する場合に比較してより客観性のある額
を算出することができ、被害者側の救済に資する反面、不法行為者に過当な責任を負わせることともならず、損失の公平な分担を窮極の目的とする損害賠償
制度の理念にも副う。
潮見佳男『債権各論Ⅱ 不法行為法』(新世社・2005年)58頁
「結局、このように見れば、通説・判例は、損害項目の選択および金銭評価の面で具体的被害者を基準とした具体的損害計算を原則とすると言いながらも、実際の
ところは、多くの場面で、平均値を用いた『控えめな算定』という名のもとでの経験則を通じての損害(額)の認定、したがって『抽象的損害計算』をおこなっているもの
と言えます。
なお、特別法の中では、被害者に具体的な損失として生じたか否かに関係なく、抽象的損害計算のもとで『損害』を算定することが認められている場合があります。
たとえば、特許法102条3項や著作権法114条3項では、無断で他人の特許権や著作権を利用した者に対して、特許権者・著作権者が実施料・使用料に相当する額
を損害賠償できることが規定されています。」
12
数量的に可分な債権について、まずその一部を請求し、続けて再訴して残部を訴求することが許されるか。
否定説
一部請求後の残額請求は許さないとする説。
(理由)被告の応訴の煩、裁判所の重複審理
裁判所の判断を見るべく一部請求をしたいという原告の利益は、訴訟継続中に裁判所の判断も推測することができるので
手続継続中に請求の拡張で対応すべき。
←いわゆる後発後遺症の問題は別意に解し、残部があることを原告が意識している場合に限定して一部請求を論じるという立場もある。
←弁済期が異なる等、特定標識ある場合には、再訴を許す考えもある。
明示説(判例)
一個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合には、訴訟物は、その債権の一部の存否のみ
であって全部の存否ではなく、従って、その一部の請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばないとする説。
←数量的一部請求においては明示を厳格に要求するのに対し、費目や期間によって範囲が特定される請求(特定一部請求)は、
請求に係る費目・期間のみを主張することで、明示としては足りる場合があるとの指摘あり。
←この説でも、信義則を根拠に残部請求を制限することがある。(最高裁平成10年6月12日判決・民集52巻4号1147頁)
勝訴判決肯定説
一部であることを明示していない場合は再訴を許さず、明示していた場合であっても原告が一部で勝訴した場合は再訴可能であり、
負ければ再訴はできないという説(既判力で説明するもの、信義則で説明するものがある。)。
(理由)訴額が段階的に定められているので、一部請求をして勝訴した場合残部を請求するという戦術をとることに合理性がある。
一部の請求についての敗訴も全体について債務不存在という判断があって初めて出てくるので、再訴を許す必要はない。
一部請求をした原告にとっては、残部については当然には主張立証する必要がなかったものである。
肯定説
一部請求は一般的全面的に許されるとする説(一部であることを明示しているか、黙示であるかを問わない。)。
(理由) 実体法上債権を分割して行使するのは、債権者の自由である。
13
・特許法第102条第1項
特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が
受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数
量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売すること
ができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、特許権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた額を超えない
限度において、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当
する数量を特許権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じ
た額を控除するものとする。
趣旨
本条は民法709条の特別規定である。周知のように民法709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を
侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責を負う。」と規定しているが、この場合の損害の額の立証責任はいうまでもなく請
求する者の側にある。ところが特許権侵害の場合にあってはその立証は容易なことではないために十分な賠償を受けることができな
かったという事例も少ない。このような事情にかんがみ、本条は、特許権侵害があった場合の侵害により生じた損害(逸失利益)の額の
算定方式を定めるものである。(特許庁編『工業所有権法逐条解説〔第16版〕』(発明協会・2001年)264頁)
・特許法第102条第2項
特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受
けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許
権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。
趣旨
特許権者の損害のうち逸失利益に関するものについての推定規定。
特許権侵害に関し、特許権者が侵害行為による損害額を一般原則により立証することが困難であることから、損害額の立証を容易
にするために設けられた。いわゆる法律上の事実推定を認めた規定と解されている。
本項により推定される損害とは、侵害者の受けた利益の額との同質性という観点から、消極的損害(逸失利益)のうちの販売利益の
減少による損害であると解されている。(牧野利秋・飯村敏明『新・裁判実務大系 知的財産関係訴訟法』(青林書院・2001年)307頁)
14
・特許法第102条第3項
特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実
施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
趣旨
特許権侵害の際に特許権者が請求し得る最低限度の損害額を法定したもの。
許諾例や一般の実施料相場に依拠して実施料を定めるならば、他人の特許権を侵害しても当初から実施許諾を得ていたのと同程度
の損害金の支払いしか求められないことになり、侵害行為が発見されない可能性があることや、権利が無効となった場合にはライセン
ス料を支払わないで済むこと等も考慮すると、侵害した方が得ということになってしまうとの批判や、ライセンスの実態においては、自
社の営業政策上の重要な技術であることからライセンスを認めない場合や、競業関係にあるなどの相手策企業との関係、ライセンス
の時期、発明の実施によって得られる利益の額等の様々な事情によって実施料が異なるのが実情であるのに、このような事情がほと
んど反映されていなかったことから、「通常」という文言を削除した。これにより、通常の実施料相場に捉われることなく事案に応じた客
観的に相当な実施料相当額を請求することとなったとされている(牧野利秋・飯村敏明『新・裁判実務大系 知的財産関係訴訟法』(青
林書院・2001年)320~321頁)。
・特許法第105条の3
特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するため
に必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結
果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
趣旨
<民事訴訟法二四八条との関係>民事訴訟法二四八条には「損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を
立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定すること
ができる。」との規定が設けられており、損害額の立証が極めて困難である場合については、損害額の立証に関する証明度を軽減し、
救済を図ることとしている。
しかし、民事訴訟法二四八条は、「損害の性質上・・・極めて困難である」との要件について、一定の仮説を立てなければ損害額の立
証が不可能な場合(慰謝料、死亡幼児の将来利得等)を想定したものといわれているため、一義的に「損害の性質上・・・極めて困難で
ある」とは断じ難い特許権侵害による損害について適用可能かどうかは議論の分かれるところである。
これに対し、本条は、損害を立証するために必要な事実の立証が「当該事実の性質上」極めて困難である場合に適用があり、損害の
立証が「損害の性質上」極めて困難とはいえない場合であっても、証明度を軽減することができる(特許庁編『工業所有権法逐条解説
〔第16版〕』(発明協会・2001年)277頁)。
15
・不正競争防止法第5条第1項
第二条第一項第一号から第九号まで又は第十五号に掲げる不正競争(同項第四号から第九号までに掲げるものにあっては、
技術上の秘密(秘密として管理されている生産方法その他の事業活動に有用な技術上の情報であって公然と知られていない
ものをいう。)に関するものに限る。)によって営業上の利益を侵害された者(以下この項において「被侵害者」とい
う。)が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場
合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡
数量」という。)に、被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて
得た額を、被侵害者の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、被侵害者が受けた損
害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を被侵害者が販売することができないとする
事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
趣旨
侵害品が販売されると、被侵害品の販売が現象し営業上の利益が損なわれるといった損害は、侵害行為により被侵害者が喪
失した販売数量に基づき算定されるが、この損害は、侵害者の営業努力や代替品の存在等、種々の事情によって影響を受け
るため、被侵害者はその因果関係の立証が非常に困難である。そこで、被侵害者の立証の負担を軽減するために、一定の不
正競争行為類型については侵害者が譲渡した物の数量に、被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の
単位数量に、被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じた額を被侵
害者の損害の額とすることができるとする算定方式を導入した。(経済産業省経済産業政策局知的財産政策室編『一問一答
不正競争防止法〔平成17年改正版〕』(商事法務・2005年)81頁)
・不正競争防止法第5条第2項
不正競争によって営業上の利益を侵害された者が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害に
より自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益
の額は、その営業上の利益を侵害された者が受けた損害の額と推定する。
趣旨
2項関係は、産業構造審議会知的財産政策部会中間答申「不正競争防止法の見直しの方向」において、誤認惹起行為、信用毀損
行為については、利益の額を被害者の損害の額とみなしうる場合が必ずしも多くないと考えられ、係る行為に推定規定の適用を認め
ることは相当でないとされているが、立法に当たっては推定規定にとどまるものであることを考慮して、全ての類型を対象とし、具体的
な運用の可否については具体的事案における裁判所の判断に委ねることとした(経済産業省知的財産政策室『逐条解説不正競争防
止法』104頁以下)。
16
・金融商品取引法第19条
前条の規定により賠償の責めに任ずべき額は、請求権者が当該有価証券の取得について支払った額から次の各号の一に掲
げる額を控除した額とする。
一
前条の規定により損害賠償を請求する時における市場価額(市場価額がないときは、その時における処分推定価額)
二
前号の時前に当該有価証券を処分した場合においては、その処分価額
2
前条の規定により賠償の責めに任ずべき者は、当該請求権者が受けた損害の額の全部又は一部が、有価証券届出書又は
目論見書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必
要な重要な事実の記載が欠けていたことによって生ずべき当該有価証券の値下り以外の事情により生じたことを証明した場
合においては、その全部又は一部については、賠償の責めに任じない。
趣旨
証券市場が適正な価格に修正する機能を持つことを前提に、発行者と取得者の関係において、不実記載と不適正に配分さ
れた資金との因果関係を法が推定することにより、資金配分の適正化を事後的に迅速かつ円滑に達成することを図っている
もの(神田秀樹『注解証券取引法』(有斐閣・1997年)123頁)。
・金融商品取引法第21条の2第2項
前項本文の場合において、当該書類の虚偽記載等の事実の公表がされたときは、当該虚偽記載等の事実の公表がされた日
(以下この項において「公表日」という。)前一年以内に当該有価証券を取得し、当該公表日において引き続き当該有価証
券を所有する者は、当該公表日前一月間の当該有価証券の市場価額(市場価額がないときは、処分推定価額。以下この項に
おいて同じ。)の平均額から当該公表日後一月間の当該有価証券の市場価額の平均額を控除した額を、当該書類の虚偽記載
等により生じた損害の額とすることができる。
趣旨
証券の価格は、様々な事象を織り込みつつ変動するものであるため、不実開示と損害の因果関係を捉えることが極めて困難である。
また、証券取引において「損害」(事実状態)と「損害額」(金銭的評価)の区別が明確でなく、因果関係の問題と損害額算定の問題が
渾然一体となっている。そのため、損害額および因果関係が推定されなければ、損害賠償規定が設けられていても役に立たないとし
て、類型的に生ずると認める損害であって、類型的に因果関係があると認められるものにつき、損害額及び因果関係を推定するもの
として導入された。(三井秀則『課徴金制度と民事賠償責任』(金融財政事情研究会・2005年)152~165頁)
17
○手続規定
・特許法第105条
裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害行為に
ついて立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、そ
の書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。
2
裁判所は、前項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所
持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。
3
裁判所は、前項の場合において、第一項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかについて前項後段の書類を開示
してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等(当事者(法人である場合にあつては、その代表者)又は当
事者の代理人(訴訟代理人及び補佐人を除く。)、使用人その他の従業者をいう。以下同じ。)、訴訟代理人又は補佐人に対
し、当該書類を開示することができる。
趣旨
(一項)特許侵害行為の立証の困難性に鑑み、書類の提出の対象として「損害の計算に必要な書類」に加え「侵害行為について立証
するために必要な書類」を追加規定し、侵害行為の立証に際しても、裁判所は必要な書類の提出を命じることができることができるよう
にした。
(二項)文書の所持者が営業秘密であること等を理由として提出を拒むときには、裁判官のみが文書を見て(インカメラ方式)、提出書
類を拒む「正当な理由」があるか否かの判断ができるようにした。
(三項)物の発明に係る特許侵害に関して、相手方の行為について立証するために、対象となる物件の提出義務について、「正当な理
由」の有無の観点から裁判所が判断できるようにした。
(特許庁総務部総務課工業所有権制度改正審議室編『平成11年改正 工業所有権法の解説』45~47頁)
・特許法第105条の2
特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当事者の申立てにより、裁判所が当該侵害の行為による損害の計算を
するため必要な事項について鑑定を命じたときは、当事者は、鑑定人に対し、当該鑑定をするため必要な事項について説明
しなければならない。
趣旨
特許侵害訴訟において、当事者の協力義務の下に、損害の計算を行えるような計算鑑定人の制度を設け、当事者の立証負担を軽
減するもの。(特許庁総務部総務課工業所有権制度改正審議室編『平成11年改正 工業所有権法の解説』49~50頁)
18
5. 利益の吐出し型損害賠償について
<学説>
フリーライド型の不法行為などでは、加害者の取得した利益を手がかりに損害の金
銭的評価を考えることができる。(窪田充見「人格権侵害と損害賠償」民商法116(4・5)(1997年)554~583頁参照)
<裁判例>
【東京高判平成13年7月5日判例時報1760号93頁・パブリシティ侵害事案における損害の算定】
「・・・近時においては、国民の人格権に対する重要性の認識やその社会的、経済的価値に対する認識が高くなってきており、人格権の構成要
素である名誉権、肖像権、その肖像、氏名、芸名及び人格的イメージの商業的利用価値及びプライバシーの権利の保護やそれらの侵害に対す
る補償についての要求も高くなっている。これらの法的状況と過去と現在の相対的な金銭価値感の変動を考慮すると、とかく軽く評価してき
た過去の名誉毀損等による損害賠償等事件の裁判例の慰謝料額に拘束されたり、これとの均衡に拘ることは、必ずしも正義と公平の理念に適
うものとはいえない。
本件記事等によるその慰謝料額の算定においては、名誉毀損及び名誉感情の侵害となる本件記事等の内容が被控訴人に与えた精神的苦痛に
とどまらず、本件記事等の公表によって生じ得る被控訴人の芸能活動及びコマーシャル宣伝への出演機会に対する悪影響になる無形の財産的
損害、本件記事等の内容が真実と認めるに足る証拠もなく、取材等も的確でなく、その記事内容が真実であると信ずるに足る相当な事由もな
いうえ、その表現も被控訴人の人格に対する配慮が見られず、購読意欲を煽り本件週刊誌の売上を上げて利益を図る意図があることが推認さ
れるようなものであること、控訴人が本件記事等を載せた本件週刊誌で相当な利益を揚げていると推認され、多少の損害賠償金の支払では本
件のような違法行為の自制が期待されないこと、そして、わが国においては民事私法の実定法上の規定もないのに、過去の判例により国民の
知る権利に対応するため報道するマスメディアに緩やかな免責法理が認められてきており、本件記事のような類の虚偽報道や誤報記事による
被害者に対する補償措置を多少強化しても国民の知る権利を脅かす危険性は少ないと見られること、本件記事等は従来の緩やかな免責法理に
照らして判断しても違法性を阻却することができず、結果として違法性が高いこと、被控訴人が本件記事等に反駁、反論の措置として本件記
事等と同程度の伝播効果のある週刊誌や一般新聞紙による名誉回復広告等を掲載してもらおうとすると数百万円以上の費用が掛かることが推
認されることなどの事情を総合して勘案すると、本件記事等の公表によってもたらされた被控訴人の精神的苦痛等を償うに足りる慰謝料額は
一〇〇〇万円を下回るものではないというべきである。」
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○検討の視点
1.包括一律請求の考え方を応用することについて
(1)この考え方は、主として、公害事件や薬害事件等の人身損害の事案において、原告の立証負担の軽減等の観点から認め
られるようになったものと考えられる。これを消費者被害のような財産的損害事件に関して適用することができるか。
(注)重篤な人身損害の場合は、「全人格的破壊」のような共通項で括ることが可能と考えられる。また、損害の多くは逸失利益
であることも、共通の認定を容易にしているのではないかとも考えられる。
他方、消費者被害事案であっても、事案によっては、損害の内容の共通性を認めやすいこともあると考えられる。
(2)包括一律請求の考え方に基づき損害賠償額を認定した事案では、前提として、原告がその旨の請求をするとともに主張・立
証をしている。オプト・アウト型の制度を想定した場合、個々の被害者が当事者として請求等をしているわけではないにもかかわ
らず、包括・一律に損害賠償額を認定することができるか。
(3)「控え目」な損害額を一律に算定することを「一部請求」として位置付けるためには、一部であることの明示が必要となるので
はないか。オプト・アウト型の制度を想定した場合、そのようなことが可能か。
(4)仮に包括一律請求の考え方を応用したとしても、オプト・アウト方式の場合、被害者の数やそれぞれの被害の状況が不明で
あるため、合理的な損害額の総額の算出が困難であるケースがあるのではないか。
2.民訴法第248条の規定を活用することの可否
(1)同条は、「損害が生じたことが認められる場合」に適用される規定であることを踏まえ、食品の不当表示や石油の闇カルテ
ルの事案のように、そもそも損害(差額)の把握が容易でない事案において、どこまで活用することができるか。
(2)また、オプト・アウト型の制度を想定した場合、背景にいる個々の被害者についても「損害が生じた」ことが認められなければ
適用できないのではないか。
(3)集団的消費者被害事案で、原告が多数であること自体から、「損害の性質上その額を立証することが極めて困難である」と
いえるか。
3.特許法第102条第2項のように、侵害者の得た利益の額をもって損害額を推定する考え方を応用すること
について
(1)特許法第102条第2項は逸失利益に関するものと考えられているが、積極損害についても同じ理論が適用できるか。「侵害
者の利益」を被害者の損害と推定するためには、それなりの経験則に基づかなければならないと考えられるが、そのような事案
がどの程度あるといえるか。
(注)例えば、知的財産の分野でも、著作権法上、著作権については損害に関する推定規定が設けられているが、著作者人格
権については設けられていない。
(2)「侵害者の利益」といった場合、経費や侵害者の貢献等についても考慮すべきではないか。
(注)なお、経費等を一定程度控除することとすれば、損害より利益が少なくなることが多いと思われる。
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