史跡日光山内保存管理計画

史跡 日光山内
保 存 管 理 計 画
平成1 1年3月
日
光
市
教
育
委
員
会
は じ め に
日光市は、仏僧勝道による日光開山以来、約1200年の歴史を有し、市内にはその貴重な歴史的文
化遺産が多数所在しております。また昭和9年には、「日光国立公園」として指定されるなど、男
体山、中禅寺湖、華厳の滝をはじめとする壮大な奥日光の自然美と二社一寺(二荒山神社、東照宮、
輪王寺)建造物に代表される人工美が調和した、我が国を代表する国際観光都市であります。
中でも、日光山内地区は古くから山岳信仰の聖地として発展し、二社一寺の華麗な建造物群と周
辺の文化的景観が一体となった宗教的霊地として、今日まで日光山の歴史を継承しており、平成10
年5月に、国指定史跡に指定されたところであります。
さらに、この史跡「日光山内」の区域は、平成10年6月に「日光の社寺」としてユネスコ(国連
教育科学文化機関)の世界遺産条約(世界の文化遺産及び自然遺産に関する条約)に基づく世界遺
産(文化遺産)に推薦され、平成11年12月に登録される予定です。これを契機に、これら世界に誇
る文化遺産を保護していくことに対する責務を改めて痛感しているところであります。
このたび、史跡「日光山内」の保護の充実を図るため、史跡の現状変更等の手続きや活用の考え
方を明確にした「史跡日光山内保存管理計画」を策定いたしました。
この策定にあたりましては、平成9年度から平成10年度にかけて「日光山内地区保存管理計画策
定委員会」を設置し、文化庁や栃木県教育委員会をはじめ、二社一寺や学識経験者の方々の貴重な
ご指導、ご助言をいただきました。ここに、皆様方のご尽力に対しまして、厚くお礼申し上げます。
今後は、この「保存管理計画」に基づいて、関係機関との連携をより一層深めながら「日光山内」
に関する保護事業を推進するとともに、この貴重な文化財を後世に伝えるため、努力してまいりた
いと考えております。
平成11年3月
日光市教育委員会教育長 本 間 政 和
凡 例
1 本書は、文化庁及び栃木県の指導を受け、平成9年度から10年度の2年間で策定した「史跡日
光山内」の保存管理計画書である。なお、策定に際し、平成10年度は、国庫補助対象事業として
実施した。
2 保存管理計画の策定は、「日光山内地区保存管理計画策定委員会」及び「世界遺産登録推進班」
を設置して実施した。事務局は、日光市教育委員会事務局社会教育課に置いた。
3 日光山内地区保存管理計画策定委員会は、平成9年度に4回、平成10年度に1回の計5回開催
した。また、世界遺産登録推進班は、平成9年度に7回、平成10年度に4回の計11回開催した。
4 本書の作成に当たっては、日光山内地区保存管理計画策定委員会での指導・助言、世界遺産登
録推進班での検討をもとに、日光市教育委員会が取りまとめを行ったものである。
5 写真・資料の一部については、東照宮及び日光市立図書館から提供を受けた。
6 図面については、縮尺1/2,500及び1/10,000の測量図を縮尺したものを用いた。
目 次
【序 論】
日光山内の史跡としての価値と保存・活用 ∼千葉大学名誉教授 大河直躬∼ ……………… 1
【本 編】
第1章 保存管理計画の策定 ………………………………………………………………………………… 3
1 保存管理計画策定の目的 ……………………………………………………………………………… 3
2 保存管理計画策定の経過 ……………………………………………………………………………… 3
⑴ 日光山内地区保存管理計画策定委員会の設置 ……………………………………………… 3
⑵ 保存管理計画の策定経過 …………………………………………………………………………… 4
第2章 史跡日光山内の概要 ………………………………………………………………………………… 6
1 位置及び地理的環境 …………………………………………………………………………………… 6
2 日光山内の歴史 …………………………………………………………………………………………… 8
⑴ 日光山の歴史 …………………………………………………………………………………………… 8
⑵ 建造物群の立地とその環境 ………………………………………………………………………… 9
⑶ 歴史的建造物の造営 ………………………………………………………………………………… 9
第3章 史跡日光山内の現況 ………………………………………………………………………………… 14
1 史跡指定 …………………………………………………………………………………………………… 14
2 指定地域の所有関係 …………………………………………………………………………………… 14
3 指定地の現状 ……………………………………………………………………………………………… 16
第4章 史跡日光山内の保存管理、整備活用計画等 …………………………………………………… 19
1 史跡の保存管理計画 …………………………………………………………………………………… 19
⑴ 基本方針 ………………………………………………………………………………………………… 19
⑵ 現状変更の取扱 ………………………………………………………………………………………… 19
① 保存管理のための地区区分 ……………………………………………………………………… 19
② 各地区の現況及び遺構等 ………………………………………………………………………… 20
③ 保存管理の目標 …………………………………………………………………………………… 22
④ 各地区の現状変更、発掘調査、整備活用、景観保全の基準 ………………………… 22
⑤ 現状変更の許可申請手続及び許可区分 ……………………………………………………… 24
⑥ 史跡日光山内保存管理基準表 ………………………………………………………………… 26
⑦ 史跡日光山内保存管理地区区分図 …………………………………………………………… 27
2 史跡の整備活用計画 …………………………………………………………………………………… 28
⑴ 基本方針 ………………………………………………………………………………………………… 28
⑵ 整備活用計画の骨子及び課題 ……………………………………………………………………… 28
⑶ 整備活用の推進 ………………………………………………………………………………………… 29
3 保存管理計画の見直し ………………………………………………………………………………… 30
【資料編】
1 史跡日光山内の位置図 ………………………………………………………………………………… 31
2 史跡指定に係る官報写し ……………………………………………………………………………… 32
3 日光山内地区保存管理計画策定委員会設置要綱 ……………………………………………… 33
4 世界遺産登録推進班設置要綱 ………………………………………………………………………… 35
5 史跡現状変更等許可申請について ………………………………………………………………… 36
6 史跡日光山内保存管理計画に係る用語の定義 …………………………………………………… 38
7 国立公園現状変更許可申請について ……………………………………………………………… 39
序 論
日光山内の史跡としての価値と保存・活用
千葉大学名誉教授 大 河 直 躬
1 史跡としての特徴と価値
日光市の山内地区は、史跡としての内容が非常に豊富である。地区内にある歴史的建造物のう
ちで、東照宮と大
院霊廟は、いうまでもなく日本の近世宗教建築を代表する建築作品である。
輪王寺と二荒山神社の諸建築も、現存するものは近世に建てられたとはいえ、8世紀以来この地
が日光の山岳信仰の中心地として栄えた歴史を受け継いでいる。東照宮がこの地に建てられた理
由も、そのような歴史的背景があったからである。これらの建物のうちで、国宝および重要文化
財に指定されているものは、103棟に達する。それらが杉その他の大樹の繁った比較的狭い地域
のなかに、自然的景観と渾然一体となって建っている。このように多数の貴重な歴史的建造物が
集中して存在する地区は、日本では日光山内だけであり、世界的にも例が稀である。
そのほか、山内には現在は失われた中世・近世の建造物の遺跡が多数残り、石垣と石段によっ
て構成された道路や広場とともに、独特の歴史的景観を造りあげている。東照宮の千人武者行列、
輪王寺の強飯式、二荒山神社の弥生祭等の古い歴史を持つ祭礼行事がそこで行われ、また重要な
美術品や古文書・典籍も多数所蔵されている。このように多様で多数の歴史的遺産が集中して存
在することが、日光山内の史跡としての顕著な特徴といえる。
史跡の中心となる東照宮と大
院霊廟は、それぞれ徳川幕府の初代将軍徳川家康と三代将軍徳
川家光の霊を祀るための建築である。いずれも墓地の前方に配置された多数の建物で構成されて
いる。現存する東照宮の主要部分は、1616年の家康の死の翌年に造営されたものを、徳川家光の
時代により大規模なものに造り直し、1636年に完成した。大
院霊廟は、祖父家康を厚く崇拝し
た家光の遺志に従って、東照宮の近くに造られ、1653年に完成した。
このように政治的支配者の霊を祀るために壮麗な建物を建てることは、日本では1599年に豊臣
秀吉の霊を祀るために京都で建てられた豊国廟から始まり、18世紀中期まで続く。これらには、
東照宮のように神社的祭祀を行うものと、大
院霊廟のように仏教的祭祀を行うものとがあった
が、建築として共通性が著しく、霊廟建築と呼ばれている。
霊廟建築の主要な特徴は、第一に、それまでの神社と寺院に存在した各種の建物から選び出さ
れた多数の建物により構成されていること。第二に、中心となる建物が本殿・石之間(相之間)・
拝殿を結合した「権現造」と呼ばれる形式を持つこと。第三に、建物の内外を漆塗・文様彩色・
彫刻・飾り金具等で豪華に装飾していることである。
東照宮は、霊廟建築のなかで建物の数が最も多く、装飾もきわだって豪華であるだけでなく、
次のような優れた建築的特徴がある。第一は、石段と石垣によって次第に高まってゆく敷地を利
用した巧妙な立体的な配置構成をもつこと。二番目は、各建物の建築様式と色彩を変化させ、中
心軸の後方にある陽明門と本殿で最高の表現に達するように計画されていること。三番目は、陽
明門・唐門・本殿等では、豪華な建築装飾を適用するだけではなく、建築部材を変形させるなど
の高度の建築技法を考案していることである。これらの表現は、同じ時代にヨーロッパ等で発展
したバロック建築との類似点も多く、バロック的建築表現の日本における最高の達成と評価でき
る。大
院霊廟は、東照宮の手法を踏襲しているが、表現は全体的に繊細で典雅なものに変化し
―1―
ている。
輪王寺と二荒山神社の建築は、東照宮の造営以前からこの地にあった建物を徳川幕府が建て替
えたもので、歴史的な面でも建築様式の面でも貴重なものが多い。神橋は宗教的意味をもつ橋で、
日本独特の構造を持つ木造橋梁の例としても貴重である。石垣と石段を利用した道路と広場の景
観も優れており、特に東照宮の表参道は、日本では最大規模の参道で、祭礼の空間として重要な
役目を果たしてきた。
2 保存のための課題
日光山内を史跡として保存するための課題は、史跡の内容が豊富であるだけに、多岐にわたる。
それらを大別すると、建造物自身の保存と、歴史的な遺構と景観および自然的景観の保存に分け
られる。後者には、石垣と石段のような構造物、現在はすでに失われた中世・近世の建物の礎石
等の遺構、杉の大樹等で構成される自然景観など多数のものが含まれる。日光山内は、日光国立
公園の特別保護地区等に指定されており、山内地区を囲んでいる自然景観の保全との密接な連携
も当然必要とされる。
建造物自身の保存では、霊廟に特徴的な建築装飾の美観を保持するために、江戸時代以来ほぼ
二十年ごとにその修理が行われている。その技術の維持と技能者の養成が特に重要な課題である。
また建造物を良好な状態で保存するための修理だけでなく、地震・火災・強風等の災害から守る
ことが大きな課題になる。日光山内の建造物と自然景観は過去にそれらによる大きな被害を経験
しており、周到な予防措置が必要である。
3 今後の活用について
東照宮・輪王寺・二荒山神社は、江戸時代には徳川幕府の手厚い保護を受け、将軍・朝廷から
の例幣使・大名等の参拝が行われ、また庶民の参詣客でも賑わった。明治維新によって幕府の庇
護を失った後は、それぞれが独立して宗教活動を行ない、観光の面においては、山内に明治天皇
の御用邸が設けられたことにより、外国人の避暑客が増え、やがて国際的に著名な観光地として
知られるようになった。さらに市内に精銅所が設けられたことで、山内に近接する地区の一般市
民の住居も増加した。
したがって現在の日光山内は、長い歴史的伝統を持つ宗教的活動の場所、国内・国外からの多
数の観光客を迎える場所、それらと密接な関係を持って生活している市民の活動場所という三つ
の機能をあわせ持っている。これらの相互の調和をはかりながら、それぞれのための良好な環境
たらしめることが課題である。たとえば、世界遺産に登録された後は、世界各地からの観光客の
大幅な増加が予想されるが、それらの人々と友好的に親しく接することによって、日光市民自身
が得る成果も大きいであろう。史跡の価値についての市民の十分な理解と積極的な参加は、今後
の山内地区の世界遺産としての保護と、世界的レベルの観光地として発展するために必要である。
また自然的景観と歴史的景観の保護や、国際的観光地としての高いレベルの維持は、山内地区
だけでは解決できない面を含んでいる。今後は、全市的なレベルでそのような課題に取り組むこ
とが期待される。
文化財としての史跡の保護は、たんに史跡を構成する個々のモノを良好な状態で保存するだけ
ではなくて、それらを現代の生活のなかに有意義なものとして位置づけてゆく努力が必要である。
それが本当の意味での文化財の保護である。日光山内の史跡としての保存は、今後そのような面
に留意してさらに充実をはかることが必要である。
―2―
本 編
第 1 章
保存管理計画の策定
1 保存管理計画策定の目的
史跡日光山内は、約1200年の歴史を持ち、現在も二社一寺(二荒山神社、東照宮、輪王寺)が
多くの歴史的建造物を維持しながら宗教活動を続けている地域であり、また日光国立公園の中に
位置している。
史跡を保護するためには、歴史的建造物群、土地利用、宗教活動等の状況との調整や、日光国
立公園の規制との調整を図った、史跡としての保存管理計画が必要となっている。
また、世界に誇る文化遺産としての環境整備を図るため、今後の史跡の整備活用、景観保全等
に努める必要がある。
2 保存管理計画策定の経過
⑴ 日光山内地区保存管理計画策定委員会の設置
日光山内地区の史跡としての保存管理計画の策定に関し、指導及び助言を得るため、関係機関
と各方面の学識経験者による「日光山内地区保存管理計画策定委員会」を設置した。
⃝日光山内地区保存管理計画策定委員会の構成
No.
役職名
1
会 長
2
副会長
3
所属名
職名
氏名
専門分野
名誉教授
大 河 直 躬
建造物
国立小山工業高等専門学校建築学科
(栃木県文化財保護審議会委員)
教 授
河 東 義 之
建造物
委 員
京 都 橘 女 子 大 学
文 学 部 歴 史 学 科
助 教 授
増 渕 徹
史 跡
4
委 員
東
京
大
学
名誉教授
井 手 久 登
修 景
5
委 員
白
鷗
大
学
学 長
小 山 宙 丸
宗 教
6
委 員
栃 木 県 立 博 物 館
(栃木県文化財保護審議会委員)
人文課長
千 田 孝 明
歴 史
7
委 員
日光市文化財保護
審
議
会
会 長
中 川 光 熹
歴 史
8
委 員
日 光 二 荒 山 神 社
宮 司
吉 田 健 彦
9
委 員
日
宮
宮 司
稲 葉 久 雄
10
委 員
日 光 山 輪 王 寺
門 跡
鈴 木 常 俊
11
助言者
文化庁文化財保護部
記
念
物
課
文化財調査官
磯 村 幸 男
12
助言者
栃木県教育委員会
事
務
局
文化財課長
長 島 重 夫
千
葉
光
大
東
照
学
―3―
⑵ 保存管理計画の策定経過
ア 日光山内地区保存管理計画策定委員会の設置及び開催
「史跡日光山内保存管理計画」を策定するに当たって、委員会の開催等の経過は、次のとおり
である。
平成9年11月1日
「日光山内地区保存管理計画策定委員会設置要綱」の制定
「日光山内地区保存管理計画策定委員会」の委員として10名を委嘱
11月18日
第1回日光山内地区保存管理計画策定委員会の開催
会 場:市中央公民館 出席者:委 員 9名
文 化 庁 1名
県文化課 3名
事 務 局 5名 計18名
議 題:⑴会長、副会長の選任について
⑵日光山内地区の国史跡指定の経過について
⑶保存管理計画策定のスケジュールについて
⑷その他
現地視察:大
院霊廟、慈眼堂、常行堂、法華堂、二荒山神社、滝尾
神社、神橋ほか
12月1日
第2回日光山内地区保存管理計画策定委員会の開催
会 場:市中央公民館 出席者:委 員 6名
文 化 庁 1名
県文化課 3名
事 務 局 6名 計16名
議 題:⑴保存管理計画(案)について
⑵その他
現地視察:東照宮、本宮神社、三重塔ほか
平成10年1月14日
第3回日光山内地区保存管理計画策定委員会の開催
会 場:市中央公民館 出席者:委 員 7名
文 化 庁 1名
県文化課 3名
事 務 局 5名 計16名
議 題:⑴保存管理方針(案)について
⑵現状変更の取扱以外に関する事項(案)について
⑶その他
3月17日
第4回日光山内地区保存管理計画策定委員会の開催
会 場:市中央公民館 出席者:委 員 7名
文 化 庁 1名
県文化課 3名
事 務 局 3名 計14名
議 題:⑴保存管理計画書の作成(案)について
⑵その他
―4―
10月12日
第5回日光山内地区保存管理計画策定委員会の開催
会 場:市中央公民館 出席者:委 員 7名
県文化財課 2名
事 務 局 6名 計15名
議 題:⑴史跡日光山内保存管理計画(案)について
⑵その他
イ 世界遺産登録推進班による検討経過
国史跡指定並びに世界遺産登録の事務処理を総合的かつ計画的に推進するため、平成9年10月
に設置した「世界遺産登録推進班」においても、「史跡日光山内保存管理計画」の策定に関する
課題について協議した。
ウ 史跡等保存管理計画策定事業の概要
平成10年度に史跡等保存管理計画策定事業により史跡日光山内保存管理計画を策定した。
総事業費 1,500,000円
国庫補助 750,000円
(
県費補助 375,000円
市負担金 375,000円
)
―5―
―7―
2 日光山内の歴史
⑴ 日光山の歴史
日光が開山された奈良時代末期(8世紀末)から現在に至るまでの日光山の歴史について概
述する。
【奈良∼平安時代 8世紀初頭∼12世紀末】
日光山周辺は古来山岳信仰の舞台であり、仏教者の修行の場であった。ここに明確な宗教
活動が営まれるに至るのは、8世紀後半である。
僧勝道は、782年に男体山の登頂に成功し、その2年後に寺院を建立し日光山を開いた。こ
の後、日光山は日本古来の神の信仰と仏教信仰とが結びついた山岳信仰の聖地として発展す
ることになった。二荒山神社と輪王寺は、この伝統を受け継ぐものである。
12世紀中頃には、常行三昧堂などの堂社の創建が盛んに行われ、勢力も増大した。
【鎌倉∼室町∼桃山時代 12世紀末∼16世紀末】
12世紀末に鎌倉幕府が開設されると、関東の鎮護として源頼朝をはじめ歴代将軍の崇敬を
受け、多くの堂塔が修造されて、日光山の宗教活動は更に発展をとげた。現在の日光山には、
この頃からの経典、美術品などが多数保存されている。
この時期には、また、日光山の峰々を結んで修行を行う日光修験の形態が確立した。
南北朝から室町時代にかけては、日光山は関東の一大霊場としてその名を誇り、日光修験
も全盛を迎えた。しかし、戦国時代の末期には、諸勢力の対立に巻き込まれ、1590年には、
豊臣秀吉によって大部分の領地が没収されて、一時衰退した。
【江戸時代 17世紀∼19世紀中期】
江戸時代に入ると、日光山は、徳川家康の側近である天海の手により、再興に向かった。
特に1617年に徳川家康、次いで1651年に徳川家光が葬られると、日光山は徳川将軍家の祖
を祀る霊廟の地となり、幕府によって、手厚い保護を受けることとなった。
歴代の将軍の社参や朝廷からの例幣使の派遣なども行われ、日光山は、将軍家を頂点とす
る江戸時代の政治体制を支えるための役割も果たした。
徳川家康の霊廟「東照宮」は、当初、1617年に造営され、その後、1634∼1636年に大造替
が行われた。また、徳川家光の霊廟「大
院霊廟」は、1653年に造営された。その他、江戸
時代を通して、二荒山神社諸社殿、輪王寺の三仏堂、常行堂、法華堂、相輪橖などの造営を
はじめ、旧衆徒の寺跡再興、堂社廟塔の修造、造営が盛んに行われた。また、日光山に集ま
る3街道に植えられた日光杉並木は、東照宮を中心とする日光山の整備の過程で植林された
ものである。
また、日光山の年中行事も規定され、日光ならではの文化も発達し、繁栄した。
【明治時代以降 1868年∼】
1871年に明治政府が神仏分離を命じた結果、江戸時代までは一体として経営されてきた日
光山も二荒山神社、東照宮、輪王寺の二社一寺に分離され、これに伴い幾つか堂塔も移動し
た。また、この頃には、急激な近代化の波の中で、一時期、国内の文化資産を軽視する風潮
が生じ、日光の社寺も一時衰微した。
―8―
一方、1879年には、日光の社寺を保護するため「保晃会」
(ほこうかい)が組織され、社
寺の修理等を開始した。
政府が、1897年に「古社寺保存法」を制定して、文化遺産の保護に乗り出すと、日光には
「日光社寺修繕事務所」が政府及び二社一寺によって組織され、社寺の修理を担当するよう
になった。同法は、1929年に保護対象を拡大した「国宝保存法」に移行された。一方、1919
年には「史蹟名勝天然紀念物保存法」が新たに制定され、さらに両法律は1950年に「文化財
保護法」に統合された。現在、日光においては、これに基づいて文化資産の保護行政が進め
られている。
また、1931年には「国立公園法」が制定され、1934年に日光国立公園が指定された。その
後、1938年には特別地域が、また、1953年には特別保護地区が指定され、現在に至るまでそ
の保護が図られてきている。
⑵ 建造物群の立地とその環境
東照宮と大
院霊廟は、山の地形を利用して造営され、石垣や階段により境内を広くまた狭
く見せ、また、参道に曲折をつけて奥行きのゆとりや緊張を見せる工夫をしている。さらに、
大切な建造物になるにしたがってだんだん高い所に建てられ、建造物も巧みに配置され、尊厳
の風格を盛り上げている。これらの地割りや石垣等の造営は、日本の城郭建築で築き上げられ
た最高の建築技術で造営され、また、水道や排水設備が当時の最新の技術により整備された。
また、日光山内の山林地域は、8世紀末に始まる日光の山岳信仰の聖域とされ、老樹の杉林
を形成し、現在も、境内の杉が御神木とされている。これらの景観は、自然に対する原始的な
信仰が発生して以来の日本人の伝統的な自然感と深く結びついて、今日まで伝えられてきたも
のである。日光山内の山林地域は、日本独特の神道思想との関連において、自然と社殿が一体
となった文化的景観を形成する不可欠な資産となっている。
⑶ 歴史的建造物の造営
史跡日光山内には、二社一寺にかかわる歴史的建造物が多数所在する。以下に、二社一寺の
歴史的建造物の造営の歴史について概述する。
⃝ 二荒山神社
二荒山神社は、日光の山岳信仰の中心として崇拝されてきた神社である。
社伝によれば、嘉祥3年(850)には、現在の東照宮鐘楼付近に社殿が移転され、新宮と
呼ばれ、現在の本宮神社付近にも本宮の社殿が構えられ、滝尾の三社を合わせて、日光三社
と呼ばれた。中世には、日光の山岳信仰が隆盛となり、社殿も多数造営された。また、文明
8年(1476)には、山内に松や杉が植えられ、現在は老樹となり自然的景観を形成している。
元和5年(1619)には、東照宮の造営に伴い、徳川幕府によって、本殿が造営され、その
後、諸社殿が同様に造営された。また、造営以来、適切な修理や維持管理が行われ、今日に
至っている。
本殿など23件が重要文化財に指定されている。
⃝ 東 照 宮
東照宮は、徳川初代将軍家康の霊廟として、元和3年(1617)に創建されたのが始まりで、
現在の主要な社殿は、三代将軍家光によって、寛永13年(1636)に造営されたものである。
―9―
東照宮の建築では、本殿に拝殿を石之間で連結した「権現造」様式や彫刻、彩色等の建築
装飾等、近世的建築技術が確立されるとともに、建物の配置法と彩色や形態に優れた工夫が
行われている。これらは、当時の第一級の技術者によって造営された。
造営以来、修理に当たっては、従前の形式と技法を踏襲しながら行われた。しかし、度重
なる修理のうちに、その時代の流行や工法により技法を変更したり、文様、主題を改めるこ
とも起こり得たため、宝暦3年(1753)に装飾の形式、技法の変更を防ぐための「結構書」
が作成され、その後の修理における仕様、配色などの基準とした。その後、適切な修理や維
持管理が行われ、今日に至っている。
本殿、石之間及び拝殿、正面及び背面唐門、東西透塀、陽明門及び東西廻廊が国宝に、そ
のほか34件が重要文化財に指定されている。
⃝ 輪 王 寺
輪王寺は、8世紀末、日光開山の勝道が創建した四本竜寺に起源をもつ。寺伝では四本竜
寺の創建は、天平神護2年(766)で、以後名称は、満願寺(810)
、光明院(1240)
、輪王寺
(1655)と変遷した。
輪王寺は、日光山の中心となる寺院として発展し、鎌倉時代には、鎌倉幕府の尊崇を受け、
さらに、室町時代には、一時衰微したが、一般の崇拝は絶えることなく信仰を集めた。
その後、江戸時代初期に、東照宮の造営に伴い、輪王寺の堂宇も造営された。また、承応
2年(1653)には、徳川家光の霊廟である大
院霊廟が造営され、輪王寺は、その菩提寺と
なり、徳川幕府の尊崇を受けた。
大
院霊廟は、当時の第一級の技術者によって造営され、彫刻、彩色等の建築装飾の技法
が完成されるとともに、建物の配置法と彩色や形態に優れた工夫が行われている。
明治4年(1871)に神仏分離令が実施され、輪王寺と二荒山神社、東照宮に分離された。
これに伴い、本堂(三仏堂)と相輪橖が現在地へ移転した。
造営以来、修理に当たっては、貞享4年(1687)に作成された全体の配置図、各建物の平
面図、立面図や宝暦3年(1753)に作成された「結構書」などにより、以前の形式と技法を
踏襲しながら、適切な修理及び維持管理が行われ、今日に至っている。
大
院霊廟本殿、相之間、拝殿が国宝に、そのほか37件が重要文化財に指定されている。
― 10 ―
No.
古絵図等の名称
作成年代・時代
作 成 者 名
備 考
1
日光山古図
寛永初年頃
(1624年頃)
不 明
東照宮資料提供
― 11 ―
No.
古絵図等の名称
作成年代・時代
作 成 者 名
備 考
2
日光山総絵図
江戸時代
不 明
日光市教育委員会所蔵
― 12 ―
No.
古絵図等の名称
作成年代・時代
作 成 者 名
備 考
3
日光山全図
明治時代
不 明
日光市立図書館所蔵
― 13 ―
第 3 章
史跡日光山内の現況
1 史跡指定
⑴ 名 称 史跡日光山内
⑵ 指定年月日 平成10年5月14日(文部省告示第89号)
⑶ 指 定 面 積 実測面積 508,314.93㎡
公簿面積 487,126.25㎡(36筆。指定地域内に介在する道路及び水路の
面積は含まない。
)
⑷ 土地所有者 6名(共有地を含む。)
2 指定地域の所有関係
史跡日光山内の指定地域の所有関係は、次のとおりである。
No.
1
所 有 者 氏 名
二 荒 山 神 社
小
2
東
照
輪
境 内 地
〃 2302-1
宅
地
6,714.04
〃 2307-0
境 内 地
33,464.97
〃 2308-0
境 内 地
80,546.80
〃 2311-0
境 内 地
10,224.58
〃 2313-1
境 内 地
※
9,496.28
〃 2317-0
境 内 地
※
6,209.58
〃 2384-0
境 内 地
※
5,343.55
日光市上鉢石町
1112-1
原
野
115.00
〃 1113-1
原
野
208.00
〃 1113-2
原
野
102.00
11筆
※
10,513.20
162,938.00
日 光 市 山 内
2301
境 内 地
48,757.47
〃 2301-2
境 内 地
76,823.19
〃 2324
宅
地
1,011.57
〃 2378-1
境 内 地
1,605.09
〃 2378-2
境 内 地
586.44
〃 2379
境 内 地
7,049.24
宮
寺
公簿面積(㎡)
2270-1
計
王
地 目
日 光 市 山 内
計
小
3
所有する土地の所在
135,833.00
6筆
日 光 市 山 内
2281-4
― 14 ―
宅
地
184.32
No.
所 有 者 氏 名
輪
3
王
小
4
公簿面積(㎡)
日 光 市 山 内
2300
境 内 地
25,511.23
〃 2303
境 内 地
※
1,621.19
〃 2304-1
境 内 地
※
4,504.37
〃 2305
境 内 地
4,482.64
〃 2306
境 内 地
22,298.41
〃 2309
境 内 地
451.83
〃 2312
境 内 地
3,233.38
〃 2318
境 内 地
3,136.82
〃 2338
境 内 地
1,289.78
〃 2383-1
境 内 地
日光市安川町
2271
境 内 地
702.87
〃 2272
境 内 地
64,615.89
寺
13筆
※
986.22
133,018.95
二 荒 山 神 社
日 光 市 山 内
2281-1
境 内 地
20,171.99
東
照
宮
〃 2281-3
宅
地
29,804.95
輪
王
寺
〃 2302-2
宅
地
3,395.03
計
照
尊
小
光
日 光 市 山 内
2306-2
芝
地
218.00
〃 2306-3
公衆用道路
211.00
院
小
合
市
53,371.97
3筆
計
日
6
地 目
計
小
5
所有する土地の所在
429.00
2筆
日 光 市 山 内
2281-2
宅
地
1,535.33
計
1筆
1,535.33
計
36筆
487,126.25
(所有区分別の内訳)
市
町
村
1筆
1,535.33
社
寺
有
35筆
485,590.92
備考 「公簿面積」欄中、※を記したものは、筆の一部を指定するための実測面積である。
― 15 ―
3 指定地の現状
史跡日光山内の指定地の現状は、次のとおりである。
⑴ 国指定文化財
国宝・重要文化財に指定された建造物103棟のほか、天然記念物「金剛桜」
、特別史跡及び特
別天然記念物「日光杉並木街道附並木寄進碑」のうち附並木寄進碑(1基)が所在する。その
他、国宝・重要文化財に指定された美術工芸品が所在する。
⑵ 栃木県指定文化財
栃木県指定有形文化財〔建造物〕
「観音堂」、
「行者堂」が所在する。その他、有形文化財に
指定された美術工芸品が所在する。
⑶ 日光市指定文化財
日光市指定無形民俗文化財「日光弥生祭家体献備行事」が所在する。
⑷ 他の法令による規制
史跡日光山内の指定地は、次のとおり他の法令による規制がある。各規制の概要は、別表の
とおりである。
① 自然公園法(日光国立公園 特別保護地区、第2種特別地域、第3種特別地域)
② 河川法(河川区域・河川保全区域)
③ 砂防法(砂防指定地)
― 16 ―
史跡日光山内の砂防法・河川法・自然公園法区域図
二
荒
山
神
社
東照宮
大
院
霊
廟
上
新
道
下
新
道
輪王寺
凡 例
神橋
史 跡 指 定 区 域
砂防法(砂防指定地)
河川区域・
河川法
河川保全区域
(
)
自然公園法(日光国立公園)
特別保護地区
第2種特別地域
第3種特別地域
0
200
普 通 地 域
― 17 ―
400
600
1,000m
― 18 ―
砂防指定地
(河川保全区域)
河川区域
砂防指定地
管理規則
(栃木県)
(砂防法)
河 川 法
自然公園法
国立公園
(特別保護地区・
第2種特別地域・
第3種特別地域・
普通地域)
根拠法令
制 度 名
届 出
許 可
許可・届出等
砂防指定地を管理するた
許 可
め、諸行為が規制される。
河川区域を管理するため、
許 可
諸行為が規制される。
優れた自然の風景地を保
護するため、諸行為につ
いて制限される。
原 則
高さ制限13m以下。
建築面積2,000裃以下。
その他工法上の諸制約
がある。
建ぺい率20%以下。
罰 金
工作物の新築、改築、除去を行う場合、許可が必要となる。 罰 金
工作物の新築、改築、除去を行う場合、許可が必要となる。 懲役または罰金
高さ制限25m以下で指導。
普 通 地 域 建ぺい率30%以下で指導。
その他工法上の諸指導項目がある。
第3種特別地域
第2種特別地域
罰則規定
建ぺい率は敷地面積に
応じて、10%、15%、
懲役または罰金
20%以下。
特別保護地区 建築物の態様、
目的のいかんにかかわらず許可しない。
建 築 行 為 等 へ の 制 限
他の法令による規制の概要
第 4 章
史跡日光山内の保存管理、整備活用計画等
1 史跡の保存管理計画
⑴ 基本方針
日光山内地区は、約1200年の歴史を持ち、現在も二社一寺が宗教活動を続けている地域であ
り、国宝・重要文化財指定建造物の状況、土地利用の状況並びにそれぞれの目的に応じて、史
跡としての保存管理の方針を関係者の間で了解するために「保存管理計画」を定めるものとす
る。
⑵ 現状変更の取扱
ア 保存管理は、文化財保護法に基づいて行うこととする。
イ 保存管理の対象は、史跡指定地内(地下遺構、露出遺構(石垣、敷地割等)を含む)とす
る。
ウ 史跡としての歴史的景観の保全に努める。
エ 史跡指定地内で考えられる現状変更
(ア) 建築物の新築・増築・改築
(イ) 工作物(道路、石垣、水路、防災設備、説明板等)の設置・改修・撤去
(ウ) 土地の形状変更
(エ) 木竹の伐採
(オ) 歴史的建造物の保存修理
文化財保護法第80条(抜粋)
史跡に関しその現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、
文化庁長官の許可を受けなければならない。ただし、現状変更については維持の措置又は
非常災害のために必要な応急措置を執る場合、保存に影響を及ぼす行為については影響の
軽微である場合は、この限りでない。
① 保存管理のための地区区分
史跡指定地を、その保存、整備、活用を図るため、次のA∼E地区に区分する。
地 区 区 分
A
地
区
B
地
区
C
地
区
D
E
地
地
区
区
地 区 の 概 要
国宝・重要文化財指定建造物並びに社叢の所在する歴史的に重要
な地区
宗教活動上必要な社務所、本坊、附属建物及びこれらに付随する
林地、空地等の所在する地区
文化財公開施設、文化財修復のための施設、駐車場、便益施設、住
居等が所在する地区
山内の自然的環境をなす山林地区
山内の市道を中心とする道路
― 19 ―
② 各地区の現況及び遺構等
各地区に所在する主な建造物、その他遺構等は、次のとおりである。
・国宝(計9棟)東照宮本殿・石之間及び拝殿、正面及び背面唐門
(2棟)、東西透塀(2棟)
、陽明門、東西廻廊(2棟)、大
院霊
廟本殿・相之間・拝殿
・重要文化財(計92棟)二荒山神社本殿、唐門、掖門及び透塀(2
棟)、拝殿、鳥居、神橋、別宮滝尾神社本殿、同唐門、同拝殿、同
楼門、同鳥居(3棟)、別宮本宮神社本殿、同唐門及び透塀(2
棟)、同拝殿、同鳥居、神輿舎、大国殿、末社朋友神社本殿、末社
日枝神社本殿、東照宮上社務所、神楽殿、神輿舎、鐘楼、鼓楼、本
地堂、経蔵、上神庫、中神庫、下神庫、水屋、神廐、表門、五重
塔、石鳥居、坂下門、奥社宝塔、同唐門、同石玉垣、同拝殿、同
建造物
銅神庫、同鳥居、同石栅、仮殿本殿・同相之間・同拝殿、同唐門、
同掖門及び透塀(2棟)
、同鳥居、同鐘楼、御旅所本殿、同拝殿、
同神饌所、輪王寺本堂(三仏堂)
、相輪橖、本坊表門、開山堂、常
行堂、法華堂、常行堂法華堂渡廊、慈眼堂廟塔、同拝殿、同経蔵、
同鐘楼、同阿弥陀堂、児玉堂、護法天堂、観音堂、三重塔、大
院霊廟唐門、同瑞垣、同掖門、同御供所、同御供所渡廊、同夜叉
A地区
門、同夜叉門左右廻廊(2棟)
、同鐘楼、同鼓楼、同二天門、同西
浄、同水屋、同宝庫、同仁王門、同皇嘉門、同銅包宝蔵、同奥院
宝塔、同奥院鋳抜門、同奥院拝殿、同別当所竜光院
・栃木県指定有形文化財〔建造物〕輪王寺観音堂(香車堂)
・深沙王堂、滝尾稲荷神社、二荒山神社楼門
・建造物と一体として文化的景観を形成している林地
・表参道、上新道、下新道 (両側の石垣を含む)
・東照宮石鳥居下石段、千人枡形、日光杉並木寄進碑、太郎杉、下
乗石、紫雲石、仏岩、勝道上人の墓、陰陽石、三本杉、酒の泉、子
その他
遺構等
種石、笈掛石、延命坂
・過去に存在した建物等の遺構
〔中世以前〕古鐘楼跡、本宮遺跡、※滝尾神社遺跡、二荒山神社
境内遺跡、二荒山神社経塚、多宝鉄塔跡、常行堂跡、法華堂跡
〔近世以降〕相輪橖跡、本地堂跡、根本堂跡、三拾番神堂跡、番
所跡、光明院跡、久善坊跡、円音坊跡、
蔵坊跡、千手堂跡
・二荒山神社社務所、東照宮社務所、日光東照宮美術館、輪王寺本
坊、護摩堂
B地区
建造物
・重要文化財(計2棟)東照宮旧奥社唐門、同鳥居〔移築修復され
たもの〕
・附属建物(二荒山神社神門、東照宮武徳殿、輪王寺鐘楼ほか)
― 20 ―
・建造物に付随して文化的景観を形成している林地
・教旻僧都の墓、新宮馬場
B地区
その他
遺構等
・浩養園、保晃会之碑、保晃会紀功碑、二荒霊泉、山内配水池
・過去に存在した建物等の遺構
〔中世以前〕※浩養園遺跡
〔近世以降〕御殿跡、三仏堂跡、大楽院跡、座禅院跡
・文化財公開施設(東照宮宝物館、輪王寺宝物殿)
建造物
・㈶日光社寺文化財保存会(事務所、工作所、倉庫等)
・二荒山神社職舎、輪王寺紫雲閣、御物見、御霊殿、信徒寺務所、観
光売店
C地区
・逍遙園
その他
遺構等
・過去に存在した建物等の遺構
〔近世以降〕輪王寺本坊跡、安養院跡
建造物
D地区
・栃木県指定有形文化財〔建造物〕輪王寺行者堂
・北野神社、稲荷社
・白糸の滝、影向石
その他
遺構等
・過去に存在した建物等の遺構
〔近世以降〕別所跡、相輪橖跡、不動堂跡、番所跡、常行堂跡、法
華堂跡
・西参道、長坂、中山通、賄坂
・国道120号(一部区間)
・市道2127号線(一部区間を除く)
、2128号線、2129号線(一部区間
E地区
その他
遺構等
を除く)、2134号線(一部区間を除く)、2135号線、2136号線(一
部区間を除く)
、2147号線
・過去に存在した建物等の遺構
〔近世以降〕番所跡
備 考 ⑴下線部のうち、本地堂及び経蔵については㈶日光社寺文化財保存会の管理、輪王寺
本坊の土地及び建物については二社一寺の共有。
⑵「過去に存在した建物等の遺構」において、※を記したものは、発掘調査により確
認。(他は、文献等により確認。
)
― 21 ―
③ 保存管理の目標
各地区ごとの保存管理の目標は、次のとおりとする。
地 区 区 分
A
B
地
地
区
区
C
地
区
D
地
区
E
地
区
保 存 管 理 の 目 標
原則として、現状保存を図る。
宗教活動上の必要性と史跡としての意義との調整をとりつつ、保
存を図る。
史跡の保存と活用との調整や居住者の生活上の必要性と史跡とし
ての意義との調整をとりつつ、保存を図る。
山内の自然的環境をなす地区として、原則として、現状保存を図
る。
原則として、史跡としての意義を踏まえ、適切に管理する。
④ 各地区の現状変更、発掘調査、整備活用、景観保全の基準
各地区ごとに、現状変更、発掘調査、整備活用、景観保全の基準を次のとおり定め、保存
管理を図ることとする。
A
地
区
国宝・重要文化財指定建造物並びに社叢の所在する歴史的に重要な
地区
【現状変更】
① A地区内での現状変更は、原則として認めない。
② ただし、社寺の管理・運営、公益上必要と認められる整備、史跡の保存活用及び
調査研究の場合は、史跡の保存に影響を及ぼさない範囲で認める。
【発掘調査】
① 現状変更に伴い必要と認められる発掘調査を実施する。
② また、必要と認められる学術調査のための発掘調査を実施する。
【整備活用】
① 原則として、現状の保存を図る。
【景観保全】
① 史跡としての景観保全を図る。
B
地
区
宗教活動上必要な社務所、本坊、附属建物及びこれらに付随する林
地、空地等の所在する地区
【現状変更】
① B地区内での現状変更は、原則として、社寺の管理・運営、公益上必要と認めら
れる整備以外は認めない。
② ただし、史跡の保存活用及び調査研究の場合は、史跡の保存に影響を及ぼさない
範囲で認める。
③ また、土地の形状変更及び木竹の伐採の場合は、境内地や参道の保全・修復で、
史跡の保存に影響を及ぼさない範囲で認める。
【発掘調査】
① 現状変更に伴い必要と認められる発掘調査を実施する。
② また、必要と認められる学術調査のための発掘調査を実施する。
【整備活用】
① 原則として、社寺の管理・運営を考慮しながら保存を図る。
【景観保全】
① 史跡としての景観保全を図る。
― 22 ―
C
地
区
文化財公開施設、文化財修復のための施設、駐車場、便益施設、住
居等が所在する地区
【現状変更】
① C地区内での現状変更は、史跡の保存に影響を及ぼさない範囲で、原則として認
める。
② ただし、建築物の新築・増築及び工作物の設置の場合は、社寺の管理・運営、公
益上必要と認められる整備以外は、原則として認めない。
【発掘調査】
① 現状変更に伴い必要と認められる発掘調査を実施する。
② また、必要と認められる学術調査のための発掘調査を実施する。
【整備活用】
① 原則として、史跡の保存と活用等を考慮しながら保存を図る。
【景観保全】
① 史跡としての景観保全を図る。
D
地
区
山内の自然的環境をなす山林地区
【現状変更】
① D地区内での現状変更は、原則として認めない。
② ただし、社寺の管理・運営、公益上必要と認められる整備、木竹の伐採の場合は、
史跡の保存に影響を及ぼさない範囲で認める。
【発掘調査】
① 必要に応じて、発掘調査を実施する。
【整備活用】
① 原則として、現状の保存を図る。
② 適切な維持更新を図る。
【景観保全】
① 史跡としての意義を踏まえながら、自然的環境の保全を図る。
E
地
区
山内の市道を中心とする道路
【現状変更】
① E地区内での現状変更は、原則として認めない。
② ただし、道路の改良、石垣の保全・修復等の場合は、史跡の保存に影響を及ぼさ
ない範囲で認める。
【発掘調査】
① 現状変更に伴い必要と認められる発掘調査を実施する。
② また、必要と認められる学術調査のための発掘調査を実施する。
【整備活用】
① 原則として、現状の保存を図る。
② 参道等の整備を図る。
【景観保全】
① 史跡としての景観保全を図る。
― 23 ―
⑤ 現状変更の許可申請手続及び許可区分
ア 許可申請手続
市教育委員会に事前協議後、現状変更許可申請書を(3部)作成し、市教育委員会を経て、
県教育委員会又は県教育委員会を経て文化庁の許可を得る。
ただし、維持の措置、非常災害のために必要な応急措置を執る場合などについては、申請
手続を要しない。(法第80条ただし書)
なお、事前協議に当たっては、日光市において、自然公園法等の関係機関との連携を図る
こととする。
イ 許可区分
(ア) 原則としては、文化庁。(法第80条)
(イ) なお、文化庁により、次のとおり許可区分(権限委任)が定められている。
(ⅰ) 国立公園の特別保護地区内においては、文化庁。
(ⅱ) 上記以外においては、権限委任された事項については県教育委員会。
(ウ) ただし、文化庁と協議のうえ、更なる権限委任を検討していくものとする。
― 24 ―
⃝ 現状変更に関する手続きの流れ
〔文化財保護法〕
漓事 前 協 議
滷申請書提出
蘆現状変更の
許可・不許
可通知
申 澀現状変更の
許可・不許
可通知
請
漓事 前 協 議
者 滷申請書提出
蘆現状変更の
許可・不許
可通知
澀現状変更の
許可・不許
可通知
日社
澆意見書を添
えて申請書
会 を進達
光 教 蘆県へ権限委
任された軽
微な現状変
育 更の許可
市 課 澁現状変更の
許可・不許
文
栃文
潺意見書を添
えて申請書
を進達
化
国化
木 財
潸現状変更の
庁
県 課 許可・不許
可通知
可通知
連
携
連
携
〔自然公園法〕
日観
澆意見書を添
えて申請書
光 を進達
光 商 蘆県へ権限委
任された軽
微な現状変
工 更の許可
市 課 澁現状変更の
許可・不許
栃今
市
林
木務
事
務
県所
自
潺意見書を添
えて申請書
然 を進達
国
環
境
課 潸現状変更の
許可・不許
可通知
可通知
― 25 ―
北野
関性
東
地生
区物
国事
立
公務
園所
環
境
庁
― 26 ―
概
地
区
地
区
D
区
E
地
区
随する林地、空地等の所在す 施設、住居等の所在する地区
る地区
⃝史跡としての景観保全を図る。
⃝原則として、現状の保存を ⃝原則として、社寺の管理・
運営を考慮しながら保存を
図る。
図る。
⃝史跡としての意義を踏まえ ⃝史跡としての景観保全を図
る。
ながら、自然環境の保全を
図る。
⃝原則として、現状の保存を
図る。
⃝参道等の整備を図る。
⃝原則として、史跡の保存と ⃝原則として、現状の保存を
図る。
活用等を考慮しながら保存
⃝適切な維持更新を図る。
を図る。
⃝現状変更に伴い必要と認められる発掘調査を実施する。
⃝また、必要と認められる学術調査のための発掘調査を実施する。
⃝現状変更に伴い必要と認め
られる発掘調査を実施する。
⃝また、必要と認められる学
術調査のための発掘調査を
実施する。
ただし、道路の改良、
石垣の保全・修復等の場
合は、史跡の保存に影響
を及ぼさない範囲で認め
る。
⃝原則として、認めない。
⃝原則として、認めない。
⃝必要に応じて、発掘調査を
実施する。
⃝原則として、社寺の管理・ ⃝史跡の保存に影響を及ぼさ ⃝原則として、認めない。
運営、公益上必要と認めら
ない範囲で、原則として認
れる整備以外は認めない。
ただし、社寺の管理・
める。
運営、公益上必要と認め
ただし、史跡の保存活
られる整備、木竹の伐採
ただし、建造物の新・
用及び調査研究の場合は、
の場合は、史跡の保存に
増築、工作物の設置の場
史跡の保存に影響を及ぼ
影響を及ぼさない範囲で
合は、社寺の管理・運営、
さない範囲で認める。
認める。
公益上必要と認められる
また、土地の形状変更
整備以外は、原則として
及び木竹の伐採の場合は、
認めない。
境内地や参道等の保全・
修復で、史跡の保存に影
響を及ぼさない範囲で認
める。
文化庁 (国立公園の特別保護地区外の区域に係るもので委任された事項は、県教育委員会)
全
備
査
地
現状変更許可区分
保
C
市教育委員会に事前協議(関係機関調整)後、現状変更許可申請書を作成(3部)し、市教育委員会を経て県教育委員会又は文化庁の許可を得る。
(維持の措置、非常災害のために必要な応急措置を執る場合などについては除く。)
観
景
整
区
現状変更許可申請手続
跡
史
調
木 竹 の 伐 採
掘
地
原則として、現状保存を図る。 宗教活動上の必要性と史跡と 史跡の保存と活用との調整や 山内の自然的環境をなす地域 原則として、史跡としての意
しての意義との調整をとりつ 居住者の生活上の必要性と史 として、原則として、現状保 義を踏まえ、適切に管理する。
つ、保存を図る。
跡としての意義との調整をと 存を図る。
りつつ、保存を図る。
に重要な地区
建 築 物 の 新 増 改 築 ⃝原則として、認めない。
現
ただし、社寺の管理・
状
運営、公益上必要と認め
られる整備、史跡の保存
変 工作物の設置撤去
活用及び調査研究の場合
は、史跡の保存に影響を
更
及ぼさない範囲で認める
の 土地の形状変更
取
扱
発
B
国宝・重要文化財指定建造物 宗教活動上必要な社務所、本 文化財公開施設、文化財修復 山内の自然的環境をなす山林 山内の市道を中心とする道路
A
要 並びに社叢の所在する歴史的 坊、附属建物及びこれらに付 のための施設、駐車場、便益 地区
名
保存管理の目標
の
地
区
区
地
⑥ 史跡日光山内保存管理基準表
2 史跡の整備活用計画
⑴ 基本方針
史跡を保存管理することはもちろんであるが、文化財の活用を推進することも管理計画の重
要な役割である。このためには、環境整備を図るとともに、より積極的な整備の検討やソフト
面の充実といった方法があると考えられるところであり、世界に誇る文化遺産として整備、充
実に努めるものとする。
⑵ 整備活用計画の骨子及び課題
① 整備活用計画の策定方法
整備活用計画を策定するに当たっては、必要に応じて、学識経験者を加えた関係機関の組
織により、整備を行う箇所を選定のうえ、その具体的な方策を検討するものとする。
なお、史跡指定地は、そのほとんどが現在も二社一寺が宗教活動を続けている地域である
こと、また、日光国立公園(特別保護地区、特別地域)の指定を受けていることも留意しな
がら検討するものとする。
② 総合的な学術調査の実施
整備活用計画を策定するに当たっては、文献史学、歴史地理学、建築史学、造園史学、美
術史学、宗教学、自然科学、考古学的な方法による資料分析などを取り入れた総合的な学術
調査が必要である。
このためには、学術調査を実施するための調査機関の設置、専門職員の確保等調査体制の
充実に努める必要がある。
③ 宝物館等の充実・連携
山内地区には、東照宮宝物館・美術館、輪王寺宝物殿があるが、これらに、史跡に係る歴
史と文化及び史跡の保存の進め方を学習するビジターセンターとしての役割を加えることが
適当と考える。
また、これらの宝物館等や観光案内業者等の連携を図り、来訪者に更なる文化財の理解を
図るよう努めるものとする。
④ 説明板等の設置・統一化
山内地区には、文化財、宝物館等に対する説明板、標柱、制札等が設置され、来訪者への
便宜を図っているが、設置者が異なるために規格等がまちまちとなっている。このため、説
明板、標柱、制札等の構造や規格等は、更新する際に極力統一するように努め景観に配慮す
ることが必要である。また、外国人への便宜を図るため、外国語の表示も検討することが必
要と考える。
⑤ 環境の整備
史跡としての景観にそぐわない便益施設等が見られる場合には、その利用状況等に応じて、
改善、整備するよう努めるものとする。また、史跡が破損を受け、保存上問題がある場合に
は、これらの改善、補修を図るものとする。
⑥ 山林地域の維持更新
山内地区の山林は、杉等の老樹が建造物と一体となって歴史的・自然的景観を形成してい
る。景観としての山林の植生を維持するためには、人為を加えた維持更新が必要であり、必
要に応じ、杉等による補植に努めるものとする。
― 28 ―
また、長期的な視野に立ち、建造物群と一体となって形成される山内地区の山林のあるべ
き姿について、歴史性や植物学的見地を踏まえた調査、研究を進めるものとする。
枯損木については、景観保持及び建造物、来訪者への被害を防止するため、伐採等の措置
を実施することが必要と考える。
さらに、参道沿い等の山林で、樹根が地表に現れている箇所があるため、これらに対し盛
土や崩落防止工事に努めるものとし、危険木については、被害防止の措置等を講じるものと
する。
⑦ 道路・水路・下水道等の整備計画との調整
山内地区の道路・水路・下水道等の整備に当たっては、史跡の価値及びその景観に配慮し
た計画となるよう調整に努めるものとする。
⑧ 車両乗り入れ規制の検討
山内地区には、来訪者用の駐車場が整備され、参道の一部を除き、車両の乗り入れが可能
となっている。このため、観光シーズン等には、駐車場に入りきれない車両が道路に駐車し、
景観を損ねている場合が見られる。
山内地区の道路のうち、場所によっては乗り入れ規制が可能となる道路があると考えられ
るが、車両乗り入れ規制には、まだ時間と協議を要する。そのため、関係者の理解を得なが
ら公共駐車場を設けるなどの条件整備について検討し、周辺の整備に努力するものとする。
⑶ 整備活用の推進
① 整備活用計画の実施
整備活用を実施するに当たっては、整備活用の実施体制や整備活用のための財源確保につ
いて検討するものとする。
② 関連遺跡とのネットワーク化
史跡指定地外においても、史跡に関連する遺跡が存在する。これらを連携させた活用策を
検討し、ネットワーク化に努めるものとする。
③ 関連遺跡の環境保全
関連遺跡については、地域住民の理解と協力を得ながら、良好な環境保全に努めるものと
する。なお、山内地区と一体をなす石垣群については、中世からの地割りを残すものであり、
これらの地域の保全のための方策を検討しながら、特に保全に努めていくものとする。
④ 普及・啓発の推進
文化財の保護の推進には、地域住民や周辺地域に住む人々及び史跡を訪れる人々の理解と
協力、さらにはそれらの人々の支援が不可欠である。このため、各種広報媒体等を使いなが
ら、保存管理計画の周知を図り、理解を求めていくものとする。
⑤ パトロールの実施
文化財の毀損や無断現状変更等を防止するため、県文化財保護指導委員による文化財パト
ロールを実施するとともに、社寺による巡回パトロールを実施することが必要と考える。
⑥ 周辺地域の土地利用との調整
史跡の周辺地域を、史跡の「緩衝地帯」として保護することは重要なことである。このた
め、自然公園法、都市計画法、日光市街並景観条例等の法令に基づく許認可等を所管する関
係機関との連携を密にしながら保護を図るとともに、条例等による、新たな周辺地域の修景
― 29 ―
的な保護のための支援策を検討するものとする。
また、自治体等が土地利用について計画を策定する場合は、関係機関の協力を得ながら、
より積極的な史跡保護を目的とした内容となるような指導等が行える方策を検討するものと
する。
3 保存管理計画の見直し
社会的環境の変化等により、保存管理計画の見直しの必要が認められるときは、学識経験者を
加えた関係機関の組織により見直しを検討するものとする。
― 30 ―
資 料 編
【資料編】 1 史跡日光山内の位置図
二
荒
山
神
社
律院
東照宮
大
院
霊
廟
稲
荷
川
橋
上
新
道
下
新
道
輪王寺
日光橋
神橋
総合会館
田母沢橋
旧日光田母沢御用邸
観音寺
含満橋
日光市役所
東大植物園
凡 例
指定区域
0
200
― 31 ―
400
600
1,000m
【資料編】 2 史跡指定に係る官報写し
― 32 ―
【資料編】 3 日光山内地区保存管理計画策定委員会設置要綱
⃝ 日光山内地区保存管理計画策定委員会設置要綱
(設 置)
第1条 日光山内地区の史跡としての保存管理計画の策定に関し指導及び助言を得るため、日光
山内地区保存管理計画策定委員会(以下「委員会」という。
)を設置する。
(組 織)
第2条 委員会は、別紙名簿の委員で構成する。
2 委員は、次に掲げる者のうちから日光市教育委員会が委嘱する。
⑴ 史跡の保存、整備等に関し学識経験を有する者
⑵ 栃木県及び日光市の文化財保護審議会の委員
⑶ 日光二荒山神社、日光東照宮及び日光山輪王寺の代表者
(任 期)
第3条 委員の任期は、保存管理計画策定事業が完了する日までとする。
(会長及び副会長)
第4条 委員会に会長及び副会長を置き、委員の互選によって定める。
2 会長は、会務を総理し、委員会を代表する。
3 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるとき、又は欠けたときは、その職務を代理する。
(会 議)
第5条 委員会の会議は、会長が招集し、会長が議事を運営する。
2 委員会は、必要に応じ、委員以外の者を臨時に出席させることができる。
(庶 務)
第6条 委員会の庶務は、日光市教育委員会事務局社会教育課において処理する。
(委 任)
第7条 この要綱に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は、会長が別に定める。
付 則
この要綱は、平成9年11月1日から施行する。
― 33 ―
⃝ 日光山内地区保存管理計画策定委員会名簿
No.
1
所属名
千
葉
大
学
職名
氏名
専門分野
備考
名誉教授
大 河 直 躬
建造物
会 長
副会長
2
国立小山工業高等専門学校建築学科
(栃木県文化財保護審議会委員)
教 授
河 東 義 之
建造物
3
京 都 橘 女 子 大 学
文 学 部 歴 史 学 科
助 教 授
増 渕 徹
史 跡
4
東
京
大
学
名誉教授
井 手 久 登
修 景
5
白
鷗
大
学
学 長
小 山 宙 丸
宗 教
6
栃 木 県 立 博 物 館
(栃木県文化財保護審議会委員)
人文課長
千 田 孝 明
歴 史
7
日光市文化財保護
審
議
会
会 長
中 川 光 熹
歴 史
8
日 光 二 荒 山 神 社
宮 司
吉 田 健 彦
9
日
宮
宮 司
稲 葉 久 雄
10
日 光 山 輪 王 寺
門 跡
鈴 木 常 俊
光
東
照
〔助言者〕
文 化 庁 文 化 財 保 護 部 記 念 物 課 文化財調査官 磯 村 幸 男
栃 木 県 教 育 委 員 会 事 務 局 文 化 財 課 長 長 島 重 夫
〔事務局〕
日光市教育委員会 教 育 長 本 間 政 和
日光市教育委員会事務局社会教育課 課 長 太 田 邦 男
同 文化係長 小 野 昌 紀
同 主 任 和 気 一 夫
同 主 事 佐 藤 育 宏
― 34 ―
【資料編】 4 世界遺産登録推進班設置要綱
⃝ 世界遺産登録推進班設置要綱
(目 的)
第1条 日光山内地区についての国史跡指定並びに世界遺産登録の事務処理を総合的かつ計画的
に推進するため、世界遺産登録推進班(以下「推進班」という。
)を設ける。
(業 務)
第2条 推進班は、前条の目的を達成するため、次の各号に掲げる事務(以下「担当事務」とい
う。)を行う。
⑴ 国史跡指定に関する事務
⑵ 世界遺産登録に関する事務
⑶ その他目的の達成のために必要となる事務
(組 織)
第3条 推進班は、班長及び班員をもって構成する。
2 班長は、日光市助役の職にあるものをもって充てる。
3 班員は、栃木県、二荒山神社、東照宮、輪王寺、日光社寺文化財保存会及び日光市(以下
「関係機関」という。)の職員をもって充てる。
(事務所)
第4条 推進班の事務所は、日光市役所内に設置する。
(勤務体制)
第5条 日光市の班員は、事務所において事務処理に当たるものとし、その他の班員は、関係機
関の職場で事務処理に当たり、必要に応じて事務所に出向くものとする。
(経 費)
第6条 担当事務に要する経費は、日光市の負担とする。ただし、栃木県及び二社一寺からの支
援を検討する。
2 関係機関の班員に係る経費は、関係機関の負担とする。
(委 任)
第7条 この要綱に定めるもののほか、推進班の運営に関し必要な事項は、別に定める。
付 則
この要綱は、平成9年10月1日から施行する。
― 35 ―
【資料編】 5 史跡現状変更等許可申請について
平成 年 月 日
文化庁長官 様
住所
氏名 印
史 跡 日 光 山 内 現 状 変 更 等 許 可 申 請 書
文化財保護法第80条第1項の規定より、史跡日光山内における現状変更等の許可を受けたく、
次のとおり申請します。
記
1 史跡名勝天然記念物の別及び名称
史跡 日光山内
2 指定年月日
平成10年5月14日
3 史跡の所在地
栃木県日光市山内
4 所有者の氏名又は名称及び住所
5 権原に基づく占有者の氏名又は名称及び住所
6 管理団体の名称及び事務所の所在地
日 光 市
栃木県日光市中鉢石町 999番地
7 許可申請者の氏名及び住所又は名称及び代表者の氏名並びに事務所の所在地
8 史跡の現状変更又は保存に影響を及ぼす行為(以下「現状変更等」という。)を必要とす
る理由
9 現状変更等の内容及び実施の方法
10 現状変更等により生ずべき物件の滅失若しくはき損又は景観の変化その他現状変更等によ
り及ぼされるべき史跡への影響に関する事項
11 現状変更等の着手及び終了の予定時期
12 現状変更等に係る地域の地番
13 現状変更等に係る工事その他の行為の施行者の氏名及び住所又は名称及び代表者の氏名並
びに事務所の所在地
14 その他参考となるべき事項
― 36 ―
(許可申請書の添付書類等)
1 許可申請書には、次に掲げる書類、図面及び写真を添付しなければならない。
⑴ 現状変更等の設計仕様書及び設計図
⑵ 現状変更等に係る地域及びこれに関連する地域の地番及び地ぼうを表示した実測図
⑶ 現状変更等に係る地域のキャビネ型写真
⑷ 現状変更等を必要とする理由を証するに足りる資料があるときは、その資料
⑸ 許可申請者が所有者以外の者であるときは、所有者の承諾書
⑹ 許可申請者が権原に基づく占有者以外の者であるときは、その占有者の承諾書
⑺ 管理団体がある場合において、許可申請者が管理団体以外の者であるときは、管理団体の
意見書
⑻ 管理責任者がある場合において、許可申請者が管理責任者以外の者であるときは、管理責
任者の意見書
⑼ 埋蔵文化財の発掘調査の場合において、許可申請者が発掘担当者以外の者であるときは、
発掘担当者の発掘担当承諾書
2 実測図及び写真には、現状変更等をしようとする箇所を表示しなければならない。
3 埋蔵文化財の調査のための土地の発掘を内容とする現状変更等の場合における許可申請書には、
上記1に掲げる事項の外、次に掲げる事項を記載するものとする。
⑴ 発掘担当者の氏名及び住所並びに経歴
⑵ 出土品の処理に関する希望
(着手及び終了の報告)
文化財保護法第80条第1項の規定による許可を受けた者は、当該許可に係る現状変更等に着手
し、及びこれを終了したときは、遅滞なくその旨を文化庁長官に報告するものとする。終了の報
告には、その結果を示す写真又は見取図を添付するものとする。
(維持の措置の範囲)
文化財保護法第80条第1項ただし書の規定による現状変更等の許可を受けることを要しない維
持の措置の範囲は、次に掲げる場合とする。
⑴ 史跡がき損し、又は衰亡している場合において、その価値に影響を及ぼすことなく当該史
跡をその指定当時の原状(指定後において現状変更等の許可を受けたものについては、当該
現状変更等の後の原状)に復するとき。
⑵ 史跡がき損し、又は衰亡している場合において、当該き損又は衰亡の拡大を防止するため
応急の措置をするとき。
⑶ 史跡の一部がき損し、又は衰亡し、かつ、当該部分の復旧が明らかに不可能である場合に
おいて、当該部分を除去するとき。
― 37 ―
【資料編】 6 史跡日光山内保存管理計画に係る用語の定義
現状変更の取扱を明確にするため、各用語の定義を次のとおり定める。
⑴ 維持の措置
建築物、工作物、木竹等の通常の維持管理の範囲内のものをいう。
⑵ 建築物
土地に定着し、屋根及び柱若しくは壁を有するものをいう。なお、建築物に設ける電気、ガ
ス、給排水施設等建物本体と一体をなすものを含む。
⑶ 工作物
道路、石垣、水路、防災設備、説明板等人為的に築造される施設をいう。
⑷ 新築・設置
建築物又は工作物を土地(水面下の土地及び地下を含む。
)に新たに定着させる行為をいう。
⑸ 増築・改築・撤去
既に土地に定着している建築物又は工作物の規模、構造、形態等を変える行為をいう。その
うち、改築とは、既存の建築物又は工作物の規模を超えない範囲内のものをいう。
⑹ 土地の形状変更
指定当時の土地の形状を変える行為をいう。
⑺ 木竹の伐採
幹を切ること及び枝を切断して除去すること。なお、木竹とは、木本類、竹類の総称であり、
花弁類、草葉類は含まれない。
⑻ 社寺の管理・運営
自然公園法の特別保護地区で認められている特認事項と同一のものをいう。
⑼ 公益上必要と認められる整備
道路、水路等公益上必要な整備をいう。
⑽ 史跡の保存活用
史跡を保存するための柵等の設置、史跡を公開活用するための標識、説明板等の設置をいう。
⑾ 調査研究
文化財保護のための学術的な調査、研究をいう。
⑿ 史跡の保存に影響を及ぼさない範囲
現状変更に当たって、景観保全や地下遺構の保護のための発掘調査を行うことなどにより、
史跡として指定された価値を損なわないことをいう。
⒀ 発掘調査
現状変更又は埋蔵文化財保護のための調査をいう。
― 38 ―
【資料編】 7 国立公園現状変更許可申請について
〔記載例〕工作物の新築
特 別 地 域 内 工 作 物 の 新 築 許 可 申 請 書
自然公園法第17条第3項の規定により、日光国立公園の特別地域内における工作物の新築の許可
を受けたく、次のとおり申請します。
平成 年 月 日
申請者の住所及び氏名 印
(
法人にあたっては、主たる事務所の所在地
及び名称並びに代表者の氏名
環境庁長官(栃木県知事) 様
目
的
場
所
行 為 地 及 び そ の 付 近
の
状
況
工
作
物
の
種
類
施
敷
地
面
積
行
規
模
構
造
方
主
要
材
料
外部の仕上げ及び色彩
法
関 連 行 為 の 概 要
施 行 後 の 周 辺 の 取 扱
予定日
備
着
手
年 月 日
完
了
年 月 日
考
― 39 ―
)
(添付書類)
⑴ 地形図(縮尺1/50,000以上)
⑵ 案内図、配置図(縮尺1/50,000以上)
⑶ 平面図、立面図、断面図、意匠配色図、矩計図(縮尺1/1,000以上)
⑷ 修景植栽図、付帯施設の設計図(配置図と兼ねてもよい。
)
(縮尺1/1,000以上)
⑸ 現況天然色写真(配置図に撮影方向を入れる。
)
⑹ 敷地面積求積図
⑺ 造成計画図(造成を伴う場合)、平面図及び縦横断図
⑻ 土地賃貸借契約等の写し(借地の場合)
(記載上の注意)
⑴ 「目的」欄には、当該工作物を設ける目的及びその必要性を具体的に記入すること。
⑵ 「場所」欄には、都道府県、市郡、町村、大字、小字、地番(地先)等を記入すること。
⑶ 「行為地及びその付近の状況」欄には、地形、植生等の状況を示す上で必要な事項を記入す
ること。なお、必要に応じてその詳細を、添付図面に表示すること。
⑷ 「工作物の種類」欄には、建築物(保養所)など具体的に記入すること。
⑸ 「敷地面積」欄には、目的とする建築物に要する用地の面積(実測面積)を記入すること。
⑹ 「規模」欄には、棟数、各棟の建築面積及び水平投影面積、階数、延べ床面積、建ぺい率、
最高部の高さを記入すること。
⑺ 「構造」欄には、木造、鉄筋コンクリート造、ブロック造等の種別、屋根の形状を記入する
こと。
⑻ 「主要材料」欄には、屋根、外壁、基礎等の主要構造部の材料を記入すること。
⑼ 「外部の仕上げ及び色彩」欄には、トタン葺、瓦葺、モルタルリシン吹付、板張りクレオソ
ート塗等外部の仕上げとその色彩
⑽ 「関連行為の概要」欄には、支障木の伐採、支障となる動植物の除去、敷地造成、残土処理、
工事用仮工作物等当該行為に伴う行為の種類及びその施行方法を記入すること。なお、詳細に
ついては、添付図面に表示すること。
⑾ 「施行後の周囲の取扱」欄には、跡地の整理、修景のための植栽等風致景観の保護のために
行う措置を表示すること。
⑿ 「備考」欄には、他の法令の規定により、当該行為が行政庁の許可、認可その他の処分又は
届出を必要とするものであるときは、その手続の進捗状況を記入すること。
⒀ 用紙の大きさは、日本工業規格A4とすること。
― 40 ―