NANYO事件

最 新 判決 情 報
2010 年
〔1 月 分 〕
〇NANYO 事 件
知 財 高 裁 H22.1.13
H21(行 ケ)10206 審 決 取 消 請 求 事 件 (滝 澤 孝 臣 裁 判 長 )
昨 年 3 月 に知 財 高 裁 で取 り消 された法 51 条 1 項 の不 正 使 用 取 消 審 判 の審 決 の
続 審 である。昨 年 3 月 の判 決 では、商 標 権 者 である被 告 商 標 が商 標 として使 用 されて
いたか否 かが争 点 であり、商 標 としての使 用 ではないと判 断 した審 決 が知 財 高 裁 で取
り消 された。そのため、続 審 では、本 題 である不 正 使 用 の要 件 について審 理 されたが、
両 商 標 の間 に類 似 性 がないことなどから出 所 混 同 のおそ れはないとして再 度 審 判 請
求 不 成 立 との審 決 が下 されたので、その審 決 の取 消 が求 められた事 案 である。
被 告 登 録 商 標 は右 掲 上 段 であり、被 告 使 用 商 標 は中 段 、原 告 商 標 は下 段 である
ので、原 告 登 録 商 標 を被 告 使 用 商 標 のように使 用 することが、原 告 商 標 と混 同 を生 ず
るものであるか否 かが争 点 である。
判 決 では、まず原 告 商 標 が周 知 性 を獲 得 したのは、「HASEKO」の文 字 部 分 がある
からであると認 定 し、さらに図 形 自 体 についても、原 告 商 標 が長 方 形 と二 等 辺 三 角 形
との組 み合 わせであるのに対 して、被 告 商 標 は 2 つの直 角 三 角 形 であり、これが全 体
としてあたかも並 行 四 辺 形 状 の印 象 を与 えるので、明 らかに相 違 して居 り出 所 混 同 の
おそれはないとして審 決 を支 持 した。
確 かに、広 い意 味 では両 商 標 の間 に共 通 性 があるともいえるが、両 者 の相 違 は明 らかであるいえるので、
出 所 混 同 のおそれがあるとまではいえないであろう。
〇ベロマーク事件
知 財 高 裁 H22.1.13
H21(行 ケ)10274 審 決 取 消 請 求 事 件 (滝 澤 孝 臣 裁 判 長 )
ロックバンド「アシッド・ブラック・チェリー」のマークとして知 られた本 件 登 録 商 標 (右 上 掲 )に対
して、ローリングスローンズのマークとして知 られる引 用 商 標 (右 掲 下 )と混 同 を生 ずるおそれがあ
ること理 由 に法 4-1-15 号 により異 議 が申 立 てられ、音 楽 関 係 の商 品 ・役 務 について登 録 を一 部
取 り消 す旨 の異 議 決 定 が下 された。商 標 権 者 である原 告 より、当 該 異 議 決 定 の取 消 が求 めら
れた事 案 である。
判 決 では、両 商 標 は、上 部 に 2 つの山 のように盛 り上 がった赤 色 系 の上 唇 、開 放 された口
から張 り出 した舌 、舌 の上 部 に白 色 の上 前 歯 、黒 色 の口 内 という共 通 性 があるが、原 告 登 録
商 標 は正 面 から見 た平 面 的 な図 形 であるのに対 して、引 用 商 標 は右 斜 めから見 た立 体 的 な
図 形 である点 で印 象 が異 なり、また称 呼 、観 念 上 の共 通 性 がなく、また引 用 商 標 が音 楽 関 係
者 の間 でローリングストーンズの商 品 ・役 務 を表 示 するものとして著 名 であるので、嗜 好 性 の
高 い音 楽 ファンの間 においては、本 件 商 標 がローリングストーンズと同 じグループの業 務 にかかる商 品 ・役 務
であると誤 信 するおそれはないとして、登 録 を一 部 取 消 とした異 議 決 定 を取 り消 した。
つまり、本 件 は 4-1-15 号 により登 録 を一 部 取 り消 した異 議 決 定 の取 消 請 求 であるので、引 用 商 標 の周 知
性 の判 断 時 は、出 願 時 と査 定 時 となるところ(4 条 3 項 )、ストーンズの引 用 商 標 は、本 件 商 標 の出 願 時 ・査
定 時 とも著 名 であったが、逆 に極 めて斬 新 な図 形 として独 創 性 が高 いので、ストーンズのファン層 である 50 代 、
60 代 の需 要 者 達 が、本 件 商 標 をストーンズの引 用 商 標 と見 間 違 えるおそれはない、つまり混 同 のおそれは
ないという結 論 で 15 号 該 当 性 が否 定 されたのである。
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その前 提 として、判 決 は商 標 自 体 の類 似 性 も否 定 的 に見 ているので、その上 にファン層 の認 識 として両 者
を間 違 えるはずはないという結 論 である。
需 要 者 層 を広 く捉 えた場 合 、離 隔 的 に観 察 した場 合 、口 から飛 び出 たベロの印 象 は強 いので、両 商 標 間
に混 同 の可 能 性 があるとも思 えるが、ロック音 楽 といってもジャンルは相 当 に違 うようであるし、そのような需
要 者 ファン層 にあっては、この程 度 の相 違 があればバンドを間 違 えるとは思 えないので、出 所 混 同 のおそれを
判 断 するにあたって、具 体 的 な需 要 者 層 を検 証 した判 決 として注 目 することができるであろう。
〇招福 巻 事件
大 高 判 H22.1.22
H20(ネ)2836 商 標 権 侵 害 差 止 等 請 求 控 訴 事 件 (塩 月 秀 平 裁 判 長 )
原 審 大 地 判 H20.10.2
H19(ワ)76606 商 標 権 侵 害 差 止 等 請 求 事 件 (田 中 俊 次 裁 判 長 )
判 決 直 後 、新 聞 等 で話 題 になった節 分 の恵 方 巻 きの登 録 商 標 「招 福 巻 」(右 掲 )に
関 する事 案 である。商 標 「招 福 巻 」は、旧 第 32 類 「加 工 食 料 品 ほか」を指 定 商 品 として
昭 和 63 年 3 月 に登 録 された商 標 である。平 成 20 年 の更 新 登 録 を経 て現 在 も有 効 に
存 続 している。
一 方 、その年 の干 支 によって決 まる方 向 (恵 方 )に向 かって巻 き寿 司 を丸 かぶりする
と幸 福 に恵 まれと伝 えられる節 分 の恵 方 巻 きの風 習 は古 くからあったようであるが、大
阪 地 方 の酢 商 組 合 、海 苔 問 屋 組 合 、厚 焼 組 合 などの海 苔 巻 きの関 係 団 体 が売 上 拡
大 のために「幸 福 巻 」と称 して恵 方 巻 の宣 伝 活 動 を行 なうようになり、昭 和 62 年 頃 には全 国 に広 がって行 った。
そのような中 で原 告 は昭 和 59 年 に「招 福 巻 」を出 願 して商 標 登 録 を受 けた。
その後 、大 手 スーパーのダイエーを初 めとする各 地 のスーパーマーケットにおいて平 成 17 年 頃 から「招 福
巻 」の 語 が 広 く使 用 されるように なった 。これに 対 し て商 標 権 者 である 原 告 が、「ジャ スコ」を運 営 する イオン
(株 )に対 して「十 二 単 の招 福 巻 」の使 用 差 止 めと損 害 賠 償 を求 めて大 阪 地 裁 に提 訴 したのである。
このように登 録 当 時 は識 別 性 がある商 標 として商 標 権 が認 められていたとしても、その後 に業 界 で広 く使 用
され商 品 の普 通 名 称 や慣 用 商 標 となった場 合 、法 26 条 の商 標 権 の効 力 が及 ばない範 囲 に該 当 するとして商
標 権 侵 害 とはならない。従 って、本 件 の争 点 は、法 26 条 の該 当 性 である。
大 阪 地 裁 では、多 数 のスーパーで販 売 されている「招 福 巻 」の使 用 例 を検 証 し、それらの使 用 例 の大 半 は
平 成 17 年 以 降 のものであり、他 では「招 福 巻 」以 外 の名 称 も使 用 されていること、平 成 10 年 及 び平 成 20 年
版 の広 辞 苑 にも「招 福 巻 」が掲 載 されていないことなどの事 実 により、「招 福 巻 」は商 品 の普 通 名 称 や慣 用 商
標 にはなっていなかったとして商 標 法 26 条 1 項に該 当 するとのジャスコ側 の反 論 を否 定 した。
商 標 の類 似 性 については、ジャスコ商 標 「十 二 単 の招 福 巻 」のうち、「十 二 単 の」の部 分 は、12 種 類 の具 材
を使 用 した巻 き寿 司 を意 味 しているため識 別 性 を欠 くので要 部 は「招 福 巻 」にあるとして原 告 商 標 に類 似 する
と判 断 し、使 用 の差 止 めと約 51 万 円 の損 害 賠 償 の支 払 いを命 ずる判 決 をした。
しかし、大 阪 高 裁 では、平 成 17 年 頃 には「招 福 巻 」は商 品 の普 通 名 称 になっていたと認 定 し、大 阪 地 裁 の
判 決 を取 り消 した。事 実 認 定 は大 阪 地 裁 とほぼ同 じであるが、さらに大 阪 高 裁 では、「招 福 」の語 が平 成 11
年 版 「新 辞 林 」や平 成 18 年 版 「大 辞 林 」に掲 載 されているように、「福 を招 く」を名 詞 化 した馴 染 みやすい語 で
あるため、恵 方 巻 の風 習 とも相 まって、一 般 人 は「招 福 巻 」の語 を節 分 等 の行 事 において供 される巻 き寿 司 を
意 味 すると理 解 し、一 方 、「招 福 巻 」が商 標 登 録 されていることを知 らない需 要 者 は、特 定 の業 者 が提 供 する
商 品 ではなく、一 般 にそのような意 味 づけを持 つ寿 司 が出 回 っていると理 解 してしまう商 品 名 であると一 般 論
的 に判 断 した。
そして、原 審 の認 定 のように、平 成 17 年 以 降 は、極 めて多 数 のスーパー等 で「招 福 巻 」が使 用 されるように
なったので、「招 福 巻 」と表 示 される巻 き寿 司 が特 定 のメーカーの商 品 であると認 識 する需 要 者 はいなくなるに
至 っていたと判 断 した。
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登 録 商 標 であってもあまりに商 標 名 が良 すぎると同 業 者 も使 用 したくなるし、また新 商 品 の場 合 、それが登
録 商 標 であることを知 らないで商 品 の普 通 名 称 であると誤 解 する需 要 者 も多 数 いるであろう。そのため、商 標
権 者 は登 録 商 標 の普 通 名 称 化 を阻 止 するため、辞 書 の出 版 社 に注 意 を申 し入 れたり、無 断 使 用 者 に対 して
警 告 するなどの努 力 を怠らないことが必 要 である。
現 に、「招 福 巻 」の権 利 者 もそのような警 告 状 を送 付 していたようであるが、その時 期 は平 成 19 年 からであ
ると認 定 されているので、かなり遅 かったようである。もっと早 い時 期 から管 理 を怠 らず、あるいは広 く使 用 許 諾
をするなどして登 録 商 標 であることを周 知 させるという方 法 もあるし、場 合 によって多 額 の使 用 料 を受 け取 るこ
とも可 能 であったかも知 れない。
最 近 の似 たよう例 では、著 名 な雑 誌 「東 京 ウォーカー」に関 連 した「ガールズウォーカー」など一 連 の事 件 が
ある(当 サイト 2009 年 4 月 判 決 参 照 )。
以 上 のように、本 判 決 には概 ね賛 成 するが、大 阪 地 裁 も大 阪 高 裁 もジャスコ商 標 「十 二 単 の招 福 巻 」が登
録 商 標 「招 福 巻 」に類 似 すると判 断 した点 については異 を唱 えたい。
判 決 では、「十 二 単 の」の部 分 が、ジャスコの説 明 書 きから 12 種 類 の具 材 が入 ったことを示 しているので識
別 性 を欠 くと認 定 しているが、果 たしてそうであろうか。ある語 が記 述 的 であり識 別 性 を欠 くというためには、当
該 語 が当 業 界 において記 述 的 な意 味 で普 通 に広 く使 用 されていることが必 要 である。
そうすると、12 種 類 の具 材 が入 った巻 き寿 司 を意 味 するために、「十 二 単 」の語 が当 業 界 において普 通 に
使 用 されているという事 実 があるのであれば、判 決 の認 定 するとおりかも知 れないが、そのような事 実 認 定 を
行 なった様 子 はなく、両 裁 判 所 ともわずかにジャスコの説 明 書 きだけから「十 二 単 の」の語 を識 別 性 を欠 くと判
断 したのである。
ジャスコのチラシ例 をみると、「十 二 単 の招 福 巻 」には「色 とりどりの具 材 を巻 いた、12 品 目 の恵 方 巻 です。」
との説 明 があり、「彩 り海 鮮 十 種 の至 福 巻 」と並 べて掲 載 されている。商 標 というものは、造 語 商 標 以 外 、通 常
は何 らかのメッセージを持 っているものであり、それが業 界 で普 通 に用 いられる語 であるか、自 他 商 品 の識 別
に機 能 するかどうかが、商 標 登 録 されるか否 かの境 になっている。
従 って、「十 二 単 の招 福 巻 」は、暗 示 的 (サジェスティブ)にとどまるのであり、全 体 として十 分 に商 標 登 録 さ
れるべき識 別 性 を有 するので、登 録 商 標 「招 福 巻 」とは非 類 似 の商 標 と判 断 されて然 るべきであろう。そうする
と、原 告 には、非 類 似 の商 標 と判 断 されるようなジャスコの「十 二 単 の招 福 巻 」をターゲットすることに危 険 があ
ったのであり、単 なる「招 福 巻 」に対 して訴 訟 を提 起 すべきであったと思 われる。
ただし今 回 のジャスコの使 用 態 様 では、「十 二 単 の」が「招 福 巻 」の半 分 ほどの大 きさで小 さく書 かれている
ので、大 きく書 かれた「招 福 巻 」が要 部 であるとして類 似 と判 断 される余 地 がある。
〇GABOR(ガボール)事 件
知 財 高 裁 H22.1.26
H20(行 ケ)10303 審 決 取 消 請 求 事 件 (塚 原 朋 一 裁 判 長 )
第 14 類 ほかを指 定 商 品 とする登 録 商 標 「GABOR」のうち、第 14 類 「見 飾 品 」について法 4-1-10 号 に該 当
することを理 由 に無 効 審 判 が請 求 され、不 成 立 との審 決 を受 けたので、その取 消 が求 められた事 案 である。
争 点 は、請 求 人 側 による周 知 性 承 継 の有 無 である。
「GABOR(ガボール)」は、1999 年に 45 歳 の若 さで早 世 したシルバーアクセサリーのカリスマ的 存 在 である
米 国 のジュエリーデザイナー故 ガボール・ナギーに由 来 するブランドである。同 氏 はガボールブランド製 品 の製
造 販 売 のために 1994 年 に「ガボラトリー・インク」を設 立 し、ガボールブランドにかかる事 業 及 び諸 権 利 を譲 渡
した。日 本 における商 標 権 者 すなわち被 告 は、同 氏 の妻 「マリア・ナギー」であり、2004 年 8 月 に本 件 商 標 を
登 録 出 願 して登 録 し、ガボラトリー・インクを通 じて日 本 における販 売 を行 なっている。
判 決 では、平 成 11 年 (1999 年 )頃 までには、「GABOR」は日 本 においてガボール・ナギーないしはその妻 で
あるマリア・ナギーが代 表 者 を務 めるガボラトリー・インクの商 品 を示 すものとして周 知 されていたと認 定 されて
いる。
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一 方 、ガボラトリー・インクに勤 めていた B は、退 社 後 、2001 年 に「ガボラトリー・インターナショナル・インク」
(以 下 インターナショナル社 )を設 立 した。同 社 は、2005 年 に解 散 したが、同 社 からガボールブランドにかかる
諸 権 利 を承 継 したと称 する原 告 が真 の承 継 人 であることを理 由 に、本 件 商 標 「GABOR」に対 して無 効 審 判 を
請 求 したのである。周 知 商 標 の主 体 は、インターナショナル社 ないしは原 告 であるとの主 張 であり、裁 判 では
前 提 となるインターナショナル社 が真 の承 継 人 であるか否 かが争 われた。
しかし、判 決 では、原 告 側 から証 拠 として提 出 されたガボール・ナギーの遺 言 書 、事 業 譲 渡 契 約 書 、対 価
20 万 ドルの領 収 書 の成 立 が、前 後 の事 実 関 係 や筆 跡 鑑 定 の手 法 などからいずれも信 用 できないと判 断 され、
一 方 、被 告 側 のガボラトリー・インクは、ガボール・ナギーの死 後 も継 続 して事 業 を継 続 していたので、ガボール
ブランドの事 業 及び諸 権 利 を有 するのはガボラトリー・インクであると認 定 され、原 告 の請 求 が棄 却 された。
〇ガボール図形 事 件
① 知 財 高 裁 H22.1.26
H20(行 ケ)10409 審 決 取 消 請 求 事 件 (塚 原 朋 一 裁 判 長 )
② 知 財 高 裁 H22.1.26
H20(行 ケ)10091 審 決 取 消 請 求 事 件 (塚 原 朋 一 裁 判 長 )
上 記 ガボール事 件 と同 趣 旨 の判 決 である。
対 象 となった登 録 商 標 は、ガボールブランドとして「GABOR」の文 字 と共 に使 用 されている2件 の図 形 商 標
であり、①事 件 では「王 冠 付 き G マーク」(左 下 )であり、②事 件 では「G マーク」(右 下 )である。
〇ブティック 9事件
知 財 高 裁 H22.1.27
H21(行 ケ)10270 審 決 取 消 請 求 事 件 (滝 澤 孝 臣 裁 判 長 )
第 14, 18, 25 類を指 定 商 品 とする出 願 商 標 「BOUTIQUE 9」(標 準 文 字 )が、識 別 性 を欠 くとして法 3-1-6
号 により拒 絶 されたので、その審 決 の取 消 が求 められた事 案 である。
判 決 においても、「BOUTIQUE」の語 は「高 級 既 製 服 の店 」を意 味 する普 通 名 詞 であり、数 字 の「9」も極 めて
簡 単 で、かつ、ありふれた標 章 であるので、1 文 字 分 のスペースを介 してこれらが組 み合 わさったに過 ぎない本
願 商 標 は一 連 一 体 の造 語 商 標 と理 解 することは困 難 であり、自 他 商 品 の識 別 機 能 を欠 くとして審 決 が支 持 さ
れた。
しかし、本 国 のアメリカでも標 準 文 字 で商 標 登 録 されているように、「ブティックナイン」という称 呼 に着 目 した
場 合 、本 願 商 標 「BOUTIQUE 9」は、ブティックの名 称 としても、またブランドとしてもユニークであり、現 実 の取
引 社 会 では商 標 として識 別 機 能 を発 揮 するように思 えるが、如 何 であろうか。
ネットでみる限 り、「BOUTIQUE 9」は普 通 の書 体 で使 用 さ れていることの方 が多 いようであるが、原 告 は
文 字 態 様 の異 なる使 用 証 拠 も提 出 したところ、販 売 実 績 は「婦 人 服 」についてのみのわずか 2 年 間 であり、
総 合 しても 2094 足 であるので、この程 度 の出 荷 数 をもって自 他 商 品 の識 別 標 識 としての機 能 があるとはい
い難 いと判 断 されている。
従 って、使 用 ロゴで再 出 願 した場 合 、登 録 の可 能 性 もあるように思 われる事 案 である。
〇社労 士 業務 支 援サービス虚偽 記載 事 件
大 地 判 H22.1.28 H20(ワ)10879 損 害 賠 償 請 求 事 件 (山 田 陽 三 裁 判 長 )
社 会 保 険 労 務 士 の業 務 支 援 サービスとソフトウエアの販 売 に関 し、被 告 が、原 告 商 品 及 びサービスの費 用
と機 能 を比 較 した表 を作 成 し、説 明 会 において顧 客 に配 布 した件 で、比 較 表 中 の 12 の機 能 のうち、1 項 目 に
いて虚 偽 の記 載 があったため、原 告 の営 業 上 の信 用 を害 するものとして、不 競 法 2-1-14 号 により損 害 賠 償
が認 められた事 案 である。
なお算 定 された損 害 額 は 10 万 円 であり、一 方 訴 訟 費 用 は、100 分 の 1 が被 告 負 担 、100 分 の 99 が原 告
負 担 とされた珍 しいケースである。
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