■市民協同発電所【 地球温暖化めざし あなたも電力生産者に ! 】 = 出資し太陽光発電など設置、売却収益を還元 = 産経新聞 (H22.08.04) 太陽光など自然エネルギーを利用した市民共同発電所が注目を集めている。市民の出資 をもとに、建物の屋根や屋上などを借りて発電施設を設置、売電収益を出資者に還元する 仕組み。大阪や豊中、東大阪、枚方などの各市で、市民団体やNPOが取り組んでおり、 地球温暖化防止策の一つとしても効果が期待されている。 大阪市東淀川区の介護老人福祉施設「さわやか苑」。3階建ての建物の屋上には、太陽光 発電パネル80枚がずらりと並ぶ。 市民団体「ECOまちネットワーク・よどがわ」が 昨年12月から稼動を始めた大阪市内初の市民共同発電所の施設だ。約920万円の設置 費用の約6割は国や市などの補助金、残りを会員の出資金や市民の寄付金などでまかなう。 年間の計画発電量は1万 キロワットアワー。発電した電力は設置場所を提供しているさわやか苑 に売却、収益を出資した市民に最長20年間で還元する。 また、太陽光発電によって、 温室効果ガスの二酸化炭素を年間 7.4トン削減できるという。 市民共同発電所の設置は当初、地元の大阪経済大 地域活性化支援センター長の柏原さん らが、学生の「学びの場」として学内で計画。しかし、設備の設置場所が見つからなかっ た。 このため、環境問題やまちづくりにかかわる地域の団体や個人に呼びかけて、平成 18年にネットワークを設立。地元の住民らを巻き込むことで、さわやか苑の協力が実現 したという。 さわやか苑施設長の塚本さんは「買い取っている電力は施設の10分の1程度ですが、 施設の玄関に、毎日の発電量を示す表示板があり、職員の節電への意識も高まりました」。 柏原さんは、「さまざまな課題もあるが、活動を通じて一般の市民が太陽光などの再生可 能エネルギーを使った電力の生産者になれることをより多くの人に知ってもらえれば」と 話している。 ■ ―排水中の抗うつ剤、エビの行動に影響― 「Aquatic Toxicology」誌オンライン版、2010 年 6 月 4 日、公開。 世界各地の下水道などに垂れ流される抗うつ剤の残留物の影響で、エビの行動が変化し、 捕食されやすくなっているという最新の研究が発表された。抗うつ剤プロザックを飲んだ エビは“ハッピー”にはならないようだ。 研究では自然の状態を再現するために、一般的な下水処理後の排水に含まれる濃度の抗 うつ剤フルオキセチンの水溶液に、河口などの入江に生息するヨコエビを入れた。フルオ キセチンは、代表的な抗うつ剤製品であるプロザックやサラフェムの主成分だ。 エビは安全で薄暗い物陰にいることを好むのが常だが、フルオキセチンの影響を受けた エビは、水中の明るい場所に向かって泳いていく確率が通常の 5 倍であることが実験でわ かった。イギリスにあるポーツマス大学の生物学者で研究の共著者アレックス・フォード 氏は、 「こうした行動の変化によって、エビは魚や鳥などの捕食者にかなり襲われやすくな る」と説明する。フルオキセチンの作用によってエビの神経は、心的状態や睡眠のパター ンを変化させることで知られる脳内化学物質セロトニンの影響を受けやすくなるという。 抗うつ剤の使用量は近年急増しつつある。 「Archives of General Psychiatry」誌に 2009 年に掲載された論文によると、 2005 年に抗うつ剤を使用したアメリカ人は約 2700 万人で、 アメリカの全人口の 10%を超えるという。抗うつ剤の使用が拡大することで、エビ以外の 生物へも大量のフルオキセチンが影響を与えるのではと研究チームは懸念する。 「今回の実験は、どこにでもいて食物連鎖の中でも重要な位置を占めるエビに焦点を当て て行ったが、セロトニンは魚などエビ以外の生物の行動の変化にも関係がある」とフォー ド氏は指摘する。同氏は、抗炎症剤や鎮痛剤など他の多くの一般的な処方薬も水生生物に 被害を及ぼす可能性があると警告する。 しかし、人間が服用する薬の弊害から水生生物を守る方法もあると同氏は主張する。例 えば、責任ある薬の廃棄について社会の認識を高めたり、下水処理で薬を分解する技術を 改良したりするなど、問題解決に向けでできることはたくさんあるという。 淀 ■ = 川 物 語 官民一体で昔の姿を( 外来魚・水生植物駆除 )= 毎日新聞(H22.08.05) 淀川の生物多様性を回復させようと、府環境農林水産総合研究所「水生生物センター」 (寝 屋川市)が05年度から、外来生物の駆除を進めている。09年度からは国の緊急雇用創 出基金事業で雇用した元失業者らと共に活動している。 センターによると、ブルーギルなどの外来魚は、淀川の本流では93年わずか1%未満 だったのが、04年には約30%に。本流の脇にある池状の水域「わんど」でも93年に は約2%だったのが04年には約40%に増えていた。その後も増加傾向は変わらないと みられ、ある「わんど」では今年6月に地引き網を引くと「80~90%が外来魚だった」 というデータもある。 サトイモ科のボタンウキクサなど外来水生植物のここ十数年で急増している。外来水生 生物は釣り人が国外から持ち込んだり、観賞用植物として国外から入った植物が捨てられ るなどした結果、近年急速に増えているらしい。 センターは調査結果を受け、05年度から対策をスタート。06~08 年度に一部のわん どで地引き網などで外来魚駆除をしてその効果を調べたところ、06年には外来魚と在来 魚の比率が8対2だったところが、08 年には5対5まで回復した。 センターは09年度から枚方市の樟葉ワンド群などで本格的に駆除を開始。かって国の 天然記念物「イタセンパラ」の全国有数の生息地だった大阪市旭区の城北ワンド群では昨 年12月から、センターが元失業者らに「淀川城北ワンド群外来水生生物駆除作戦」を始 めた。20~50代の男女延べ18人が網などを使い駆除を進め、昨年度は外来水生植物 約230トン、外来魚約3000匹を駆除した。調査員の田中さん(54)は「やりがいの ある仕事。昔の淀川の姿を取り戻したい」と誇らしげに話す。 09年度からはセンターが事務局となり、府内の大学、市民、淀川沿いの大手企業が一 体となり、守口市の庭窪ワンド群などで外来水生植物駆除の開始も始まった。センターで は、「とにかく外来水生生物の数を減らさないとどうしようもない。市民や周辺企業に協力 を依頼し、淀川全域で駆除活動ができるようにしたい」と語る。 < リンク資料 > 水生生物センター 大阪の「わんど」(淀川河川事務所) ■豊かな日本の水辺を守れ 「 生物が共生できる景観を 」 = ブライアン・ウイリアムズ(画家) = 毎日新聞(H22.08.10) 琵琶湖と出会い、日本の自然を描き始めて38年。私は、日本人が失いかけている水辺 の景観の大切さを絵画で訴えている。人と生物が共存できる、新たな自然の風景画がある ことを提案したいからだ。 大学時代、ベトナム反戦運動に参加し、社会の矛盾と直面して心と体を壊した。日本食 に興味を持って来日したのは22歳の時。勧められるままに比叡山に登ると、突然眼下に 青い湖が広がり、息をのんだ。取り囲むように広がる田んぼと山々。暮らしがとけ込んだ 湖に、人と自然が共生する風景を描きたくなった。棚田の緩やかな曲線。淵になり瀬にな り流れる清流。生物をはぐくみ、無数の鳥たちがさえずる湖岸にヨシ群落。安全性と利便 性を追求した結果、日本の豊かな景観は時代とともに消えようとしている。琵琶湖のそば に点在する内湖は干拓され、70年代に始まった琵琶湖総合開発で湖畔には立派な道路が 造られ、ヨシ群落は激減した。決壊を防ぐため、多くの川の護岸はコンクリートで固めら れた。里山の集落から若者は去り、棚田は荒れた。琵琶湖の固有種を復元させようと行政 が投入した人口産卵床や消波ブロック湖畔の景観を壊し、稚魚を狙うブラックバスなどの 格好のエサ場になった。 湖のほとりで変わりゆく景色を見つめながら、私は鉛筆をとり、過去と未来に思いをは せる。30年代の記憶と今を重ね合わせ、わずかに残るヨシ群落のかけらを頭の中で復元 させる。 ピカソは言った。 「芸術とは、真実に気づかせてくれる嘘である」と。時を 越え、目の前の風景を同じキャンパスに描いていくと、新たな原風景が見えてくるのだ。 諫早湾の干拓地や長良川河口堰など、環境破壊の代名詞とされた場所にも足を運んだ。雲 仙岳を背にアサリをとる女性、河口に残るわずかなヨシ原。そんな景色と出会うのは年々 難しくなっている。 それでも滋賀県では今、土木技術者たちが頑張っている。「流域治水」。水田やため池の 保水力や洪水の勢いを和らげる湖畔林の役割を防災計画に活かそうという考えだ。大きな 河川だけではなく中小河川や水路があふれた場合も想定した浸水マップを作るなど、命を 守る仕組み作りが進んでいる。 川と共に生きてきた先人の知恵には、人間だけでなく、水辺の生き物も豊かに暮らせる 視点があった。国の治水・ダム政策が揺らいでいるが、こうした事業を国家プロジェクト としてはどうか。日本人ならできるはずだ。絵かきの「嘘」が現実になる時代が来ること を願っている。 「 日本最大の湖・琵琶湖 」 総面積約670平方キロ。琵琶湖大橋を境に北湖と南湖に分かれる。 70~90年代に約1兆9000億円をかけ実施された琵琶湖総合開発では、 治水対策や水質改善のための湖岸道路や堤防、下水道などの整備が進んだ。 湖周辺の浸水面積が縮小した一方で、渇水の頻発や湖畔の自然環境の悪化など も指摘される。湖には約120本の川が流れ込む一方、出口は瀬田川だけ。 国が操作する瀬田川洗堰(大津市)によりダムの役割も果たす。 琵琶湖の治水は下流の京都、大阪を含め府県を越えた課題となっている。
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