ビジネスモデル 3.0 タスクホース計画 Business Model 3.0 Task Force

一般社団法人 電子情報通信学会
THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,
INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS
信学技報
IEICE Technical Report
SWIM2015-6()2015-05)
ビジネスモデル 3.0 タスクホース計画
-アイデアから実動まで-
片岡 信弘*1 堀米 明*2 小松 昭英*3
五月女健治*4 増井 久之*5
須栗裕樹*6 荒川弘熙*7 松本正雄*8 木村礼壮*9
*1
元東海大
*6
E-mail:
*1
宮城大
*2
*7
[email protected]
*5
[email protected]
*4
APSOM
チーム荒川
[email protected]
*4
*7
*3
フィジオ
*2
*8
*9
ICEIS
電気学会
ドリーム IT 研
[email protected] *3 [email protected]
[email protected]
*8
*5
法政大
*9
[email protected]
*6
[email protected]
[email protected]
あらまし ビジネスモデルのアイデアに基づき,ビジネスモデルの設計とその評価によりビジネスモデルのブラ
ッシュアップを行った後,このビジネスモデルを実現するビジネスアーキテクチャを設計し,これによる情報シス
テムの実動化の一連の手順を確立することを目指して,ビジネスモデル 3.0 のタスクホースを SWIM 研究会の中に
立ち上げた.これにより,アィデアを迅速にビジネスモデルに仕上げるとともに,ビジネスモデルを支える情報シ
ステムの俊敏な実動を目指す.当タスクホースの目指すものとその計画について報告する.
キーワード インタプライズ,ビジネスアイデア,ビジネスモデル,ビジネスモデル設計,ビジネスモデル評価,
ビジネスアーキテクチャ,ビジネスアーキテクチャ設計,ビジネスアーキテクチャ評価,情報システム実動化
Business Model 3.0 Task Force Plan
- Ideas to Information System Nobuhiro KATAOKA*1
Akira HORIMAI*2
Shoei KOMATSU *3
Kenji SAOTOME *4 Hisayuki MASUI *5 Hiroki SUGURI *6
Hiroki ARAKAWA*7 Masao J. MATSUMOTO*8 Reiso KIMURA*9
*1
Tokai Univ. *2Figeo
*6
Miyagi Univ.
*7
*3
APSOM
Team Arakawa
*8
*4
Hosei Univ.
ICEIS
*5
IEEJ
*9
Dream IT Research
Abstract We started the taskforce " Business Model 3.0 " in SWIM SIG. In this taskforce, idea of business is a start point.
We design business model from idea and do the evaluation. Furthermore, from business model, we design the business
architecture and do the evaluation. Next, we let information system in work and evaluate it. It is our aim to establish these
serial procedures. This article is explanation of object and plan of the taskforce.
Keyword Interprise,Business Idea, Business Model, Business Model Design, Business Model Evaluation,
Business Architecture, Business Architecture Design, Business Architecture Evaluation, Information system.
1. は じ め に
ビ ジ ネ ス モ デ ル を ICT に よ り 武 装 化 す る と の 観
点 か ら ,ビ ジ ネ ス モ デ ル の 仕 組 み を 外 面 化 し 科 学
することを目的とし「ビジネスモデルを科学す
る 」プ ロ ジ ェ ク ト を 電 子 情 報 通 信 学 会 ソ フ ト ウ ェ
ア・イ ン タ プ ラ イ ズ・モ デ リ ン グ(SWIM)研 究 会 の
も と で 2012 年 11 月 か ら 2 年 間 行 い ,ビ ジ ネ ス モ
デ ル の 解 明 を 行 っ て き た [1] .
今 回 ,新 た に ,ビ ジ ネ ス モ デ ル の ア イ デ ア に 基
づ き ,ビ ジ ネ ス モ デ ル の 設 計 と そ の 評 価 に よ り ビ
ジ ネ ス モ デ ル の ブ ラ ッ シ ュ ア ッ プ を 行 っ た 後 ,こ
のビジネスモデルを実現するビジネスアーキテ
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by IEICE
ク チ ャ を 設 計 し ,こ れ によ る 情 報 シ ス テ ム の 実 動
化 の 一 連 の 手 順 を 確 立 す る こ と を 目 指 し て ,ビ ジ
ネ ス モ デ ル 3.0 の タ ス ク ホ ー ス を SWIM 研 究 会 の
中に立ち上げた.
こ れ に よ り ,ア イ デ ア を 迅 速 に ビ ジ ネ ス モ デ ル
に 仕 上 げ る と と も に ,ビ ジ ネ ス モ デ ル を 支 え る 情
報システムの俊敏な実動を目指す.
こ の 報 告 で は ,当 タ ス ク ホ ー ス の 目 指 す も の と ,
タスクホースの計画について説明する.このタス
ク ホ ー ス は , SWIM 研 究 会 の 有 志 の 活 動 と し て 行
う も の で あ り ,SWIM 研 究 会 の 基 本 テ ー マ で あ る
インタプライズモデル形成技術の一部を試行す
るもので もある.
な お ,ビ ジ ネ ス モ デ ル 3.0 と は ,Web 1.0 が「 見
る 」 だ け で あ っ た 世 界 が , Web 2.0 で 「 使 う 」 世
界 が 実 現 し ,Web 3.0 で「 作 る ,自 由 に 加 工 す る 」
世界が実現したことや,情報システムでは,第 1
世代がデータ処理システム であり,第 2 世代が,
経 営 情 報 シ ス テ ム で あ り ,第 3 世 代 が ビ ジ ネ ス 運
用 シ ス テ ム と 進 化 し た こ と な ど を 踏 ま え ,こ れ に
対応するビジネスモデルとの思いを込めた名称
である.
これらを受けて当タスクホースの目的を下記と設定した.
・アィデアをビジネスに繋ぐ確実な手順立案
・これにより,ビジネスの成功の確率を高める
当 然 な が ら ベ ン チ ャ 企 業 に 関 す る 課 題 [2]は 多 数 存
在するので,図 1 にこれを整理 している.ベンチャ企
業に関する課題は,資金調達,社会風土,人的資本,
社会関係資本,など多数ものものが存在するが,当タ
スクホースでは,これらのものは,検討の対象とはし
ない.
また,課題は,起業時,離陸時,安定期により大き
く異なるが当タスクホースでは,起業時に焦点を当て
ている.
アイデアを確実に
ビジネスモデルに
出来ない
ビジネスモデル
をビジネスに仕
上げられない
ビジネスモデルを支え
る情報システムの俊
足な実動が出来ない
当タスクホースのテーマ
資金の調達の課題
ベンチャキャピタルの不足
人的資本
起業家の能力,教育
や過去の経験
2. タ ス ク ホ ー ス の 目 的
2.1 基 本 的 な ス ト リ ー
社会風土
失敗に対して再チャレンジを許す風土
異質なものを取り込む風土
社会関係資本
起業家の友人や知り合いとの交
際を通じて得られる情報や知識
課題は,起業時,離陸時,安定期により大きく異なるが当 タスク
ホース では,起業時に焦点を当てている.
アイデアに基づきビジネスモデルを設計し,設計結
図 1 ベンチャ企業の課題
果を評価し,評価結果に基づきビジネスモデルのブラ
ッシュアップを行うサイクルを回し,望ましいビジネ
2.3
スモデルを作成する.次にビジネスモデルを実行する
タスクホース全体像
タスクホースの全体図を図 2 に示す.ここでは,図
ためのビジネスアーキテクチャを設計し, 設計結果を
評価し,ビジネスアーキテクチャをブラッシュアップ
の各番号に従って説明を行う.
を行うサイクルを回し,望ましいビジネスアーキテク
①アイデアからビジネスモデル設計方式
アイデアにビジネスの価値,戦略等を追加し,ビジ
チャを作り上げる.更にビジネスアーキテクチャに基
づき情報システムの実動化を行い情報システムの評価
ネスモデルを設計する方式を確立する.
を行い,必要に応じて情報システムをブラッシュアッ
②ビジネスモデルをする評価方式
ビジネスモデル評価方式を確立し,評価し,再設計
プする.このような一連の手順を確立することが目的
を行うサイクルを回す
である.
③ビジネスアーキテクチャの設計方法
特にアイデアからビジネスモデルの上流が従来は 特
ビジネスモデルに外部ビジネスルールの追加や場
に手薄であったと考えられる.
2.2
合によっては,アーキテクチャのレファレンスモデル
何が問題か
の参照などを行い ,ビジネスアーキテクチャの設計方
従来から課題とされてきたのは,下記のような項目
である.
式を確立する.これは,情報システムのブループリン
・アィデアがビジネスに結びつかない
トになるものである.
・多くのベンチャが失敗をする
④ビジネスアーキテクチャの評価方式
アーキテクチャ評価方式を確立し ,評価,再設計を
原因要素には下記のものが考えられる.
・アィデアをビジネスに繋ぐ確実な手順が無い
行うサイクルを回す.
・確実なビジネス計画ができないまま起業する
⑤情報システムの実動
設 計 さ れ た , ビ ジ ネ ス ア ー キ テ ク チ ャ か ら GeneXus
・ビジネスを支援する 情報システムを即実動できない
2
3.3
等 世 の 中 多 数 あ る 高 速 化 手 法 [3] を 利 用 し て 情 報 シ ス
ビ ジ ネ ス ア ー キ テ ク チ ャ (BA)設 計 方 式
TOG AF (The Ope n Group Archite cture Fram e work)[6]で は
テムの実動化を行う.
BA は 下 記 で 構 成 さ れ て い る と し て い る .
⑥実動化された情報システム評価方式
① 動 機 (Motivation)
情報システムの評価方式を確立し,必要に応じて,
再実動を行うサイクルを回す.
推進要素,目標,目的,評価基準
② 組 織 (Organization)
ビジネスモデルから情報システムのクイックパス
も考慮する.
組織,ロケーション,アクターと役割
③ 機 能 (Function)
ビジネスの
アイデア
ビジネスサービス, ビジネスプロセス,機能
再設計
①
ビジネスモデル
設計方式
ビジネス
価値
ビジネス
戦略
③
外的ビジネ
スルール
ビジネスアーキテ
クチャ設計方式
レファレンス
モデル
②
ビジネス
モデル
ビジネスモデル
評価方式
再設計
ビジネス
アーキテクチャ
再設計
⑤
ISの実動化方式
高速開発等
TOGAF の 定 義 で は ,BA の 中 に ビ ジ ネ ス モ デ ル も 含
情報システム
んだ定義となっている.当タスクホースでは,ビジネ
ス モ デ ル の 下 に こ れ を 実 現 す る 仕 組 と し て BA を 捉 え
④
て い る . そ こ で , TOGAF の 定 義 を 参 考 に し つ つ , BA
アーキテクチャ
評価方式
を下記のように捉える こととする.
動 機 の 中 の 「 推 進 要 素 」,「 目 標 」,「 目 的 」 は ビ ジ ネ
⑥
ス モ デ ル に 取 り 込 む の で BA に は 取 り 込 ま な い .
「評価
情報システム
評価方式
基 準 」 は ビ ジ ネ ス モ デ ル 評 価 基 準 に 取 り こ む の で BA
図 2 タスクホース全体図
には取り込まない .また,組織
ロケーションは,物
理 的 な 物 な の で ,当 タ ス ク ホ ー ス で 取 り 扱 わ な い .
「ア
2.4
ストリー確認のための事例選択
ク タ ー と 役 割 」,「 ビ ジ ネ ス サ ー ビ ス 」,「 ビ ジ ネ ス プ ロ
セス」
「 機 能 」を BA に 取 り 込 む .更 に ,ビ ジ ネ ス プ ロ
標準的な方式の確立は,難しい面があるので,幾つ
かの事例で,一連のストリーを確認することがまずは
セスを構成するものとして ,下記のものを取り込む
必要と考えられる.
・外的ルールとしての法律や業界ルール
どのような事例とするかは,今後検討して行くこと
・内的ルールとしての業務規則
とする.
・業務手順してのワークフロー
BA の 表 記 に は , The Open Group の ArchiMate[7]を
3.目 標 達 成 の た め の 手 順
基 本 と し ,ビ ジ ネ ス プ ロ セ ス の 詳 細 な 記 述 は BPMN を
次に項目毎に目標達成の手順を説明する.
3.1
利用する.
ビ ジ ネ ス モ デ ル を 設 計 方 式 [4]
ビ ジ ネ ス モ デ ル は ,い わ ば ,ビ ジ ネ ス シ ナ リ で あ り ,
これの設計は下記の項目が考えられる.
①ビジネスに対する思い
・誰のためビジネス
・何のためのビジネス
②ビジネスで実現する価値
・顧客に対する価値
・ビジネスを行う側の価値
③ビジネスの戦略
・顧客とのリレーションシップ
・顧客とのチャネル,顧客セグメント
3.2
ビ ジ ネ ス モ デ ル の 評 価 方 式 [5]
2015/4/22
図 3
ビ ジ ネ ス 作 成 し た ビ ジ ネ ス の シ ナ リ オ が ,旨 く 行 け そ
ArchiMate に よ る Sk ype 記 述 例
ArchiMate に よ る Sk ype 記 述 例 を 図 3 に 示 す . 以 下
うかの評価を行う
評価項目は,下記の項目が考えられる.
に 示 す よ う に , 全 体 的 な BA の 記 述 が 可 能 で あ る .
・ビジネスのコンセプト
・ ア ク タ ー (ビ ジ ネ ス 実 施 者 , ビ ジ ネ ス の 利 用 者 )(図 の
・ビジネス環境
一段目)
・技術的競争力
・ 提 供 さ れ る ビ ジ ネ ス サ ー ビ ス (図 の 2 段 目 )
・収益性
等
3
・サービスを提供するインタフェース
(図 の 1 段 目 )
・ 大 ま か な ビ ジ ネ ス プ ロ セ ス (図 の 3 段 目 )
・サービス実施のためのアプリケーション機
能 (図 の 4 段 目 )
3.4
ビジネスアーキテクチャ評価方式
BA の 評 価 は ,ビ ジ ネ ス モ デ ル を 支 え る BA
となっているかかの観点より行う.詳細につ
いては今後検討する.
3.5
表 2 参加メンバ毎の役割
情報システム実動化 方式
情 報 シ ス テ ム の 実 動 化 は , GeneXus 等 世 の 中 多 数 あ
6.タ ス ク ホ ー ス 参 加 者 (2015/4/27 時 点 , 申 込 み 順 )
る高速化手法を利用して行うが,なにを利用するかは
今後検討する.
片 岡 信 弘 ( 元 東 海 大 学 )(幹 事 )
3.6
堀 米 明 (フ ィ ジ オ ) (幹 事 )
実動化された情報システムの評価方式
小 松 昭 英 ( も の づ く り APS 推 進 機 構 )
情報システムの 評価は,ビジネス支えるシステムで
あるかの観点である.
五 月 女 健 治 (法 政 大 学 )
評価項目につてついては,下記のような項目である.
増 井 久 之 (電 気 学 会 )
・ビジネス価値に貢献出来ているか
須栗 裕樹(宮城大 学)
・ビジネス戦略に貢献出来ているか
荒川 弘熙(チーム 荒川)
松 本 正 雄 (ICEIS)
木 村 礼 壮 ( ド リ ー ム IT 研 究 所 )
4. タ ス ク ホ ー ス の ス ケジ ュ ー ル
久 保 田 雅 彦 (MIND 社 )
タスクホースの大まかなスケジュールを表 1 に示す.
なおタスクホースで引き続き参加 メンバを募集して
タスクホースの進展に伴い変更して行く.また,当初
お り ま す . 参 加 希 望 の 方 は 幹 事 (片 岡 , 堀 米 )ま で ご 連
は,当タスクホースに直接関係が ある文献の調査から
絡ください.
開始する.
参
考
文
献
[1]野 地 保 , 片 岡 信 弘 , 堀 米 明 , 黒 瀬 晋 , ビ ジ
ネスモデルを科学する-プロジェクト報告
008- , 信 学 技 報 , SWIM2014-24(2014-11),
pp59-64
[2] 松 田 尚 子 , 松 尾 豊 , 企 業 家 の 成 功 要 因 に
関 す る 実 証 分 析 , 経 済 産 業 研 究 所 RIEIT
Discussion Paper Series13-J-64(2013)
[3] ICT 経 営 パ ー ト ナ ー ズ 協 会 (著 ),関 隆 明
(監 修 ), 超 高 速 開 発 が 企 業 シ ス テ ム に 革 命 を 起 こ す ,
日 経 BP 社 (2014)
[4] 松 本 正 雄 , 高 尾 み ど り , イ ン タ プ ラ ズ モ デ ル 化
方 法 の 目 溢 と 対 案 IMDM-PA1, - 目 次 的 ビ ジ ネ ス モ デ
ル か ら ア ー キ テ ク チ ャ ア 要 旨 へ - , 信 学 技 報 ,
SW IM20 14-33(2 015-02), pp 37-42
表 1 タスクホーススケジュール
5.参 加 メ ン バ 毎 の 役 割 分 担
参加メンバ毎の役割を表 2 に示す.ビジネススクー
ルの参加大学院生には,ビジネスモデル設計方式,設
計トライアル,ビジネスモデルの評価を中心に担当を
[5]阿 部 仁 志 ,石 田 文 章 ,佐 久 間 啓 ,奥 康 成 第 二 世 代 の
ビ ジ ネ ス モ デ ル 設 計 ,科 学 技 術 と 経 済 の 会 ,2005 年 次
大 会 講 演 集 pp819-822
[6] TOGAF Version 9.1 : https://www.opengroup.org/togaf/
[7] http://archi.cetis.ac.uk/
お願いする.また,企業のメンバには,ビジネスモデ
ルの評価,アーキテクチャの評価,情報システムの評
価などを中心にお願いする計画となっている.
4