留学生レポート オーストラリア/メルボルン大学 麻柄彩子(商学部 4 年) メルボルンでの留学生活を終えて ~多文化、カフェ、音楽、笑顔…~ 私は、2014 年 2 月から 11 月までオーストラリアのメルボルン大学へ 2 学期間留学をさ せて頂きました。本学の派遣留学制度を支援して下さる方々への感謝の気持ちを込めて、 また今後派遣留学制度を利用とする後輩への鼓舞の意味を込めて、私のメルボルンでの留 学生活についてご報告します。 *メルボルンについて オーストラリア、メルボルン。日本ではあま り有名ではない都市ですが、『世界で最も住み 良い街ランキング』で No.1 に選ばれるほど素敵 な街です。特徴はなんといってもその多様な文 化。人口のうち 4 分の 1 は海外生まれで、彼ら の出身国は 180 か国以上。233 以上の言語が話 されており、116 以上の宗教が信じられていま す。1850 年代に金鉱が発見されて以来人口は急 増し、イギリス、中国、ドイツ、アメリカから 人々が集まってきました。第二次世界大戦後に はイタリアやギリシャ、バルカン諸国、レバノン、トルコなど東欧や中近東から移民が訪 れました。20 世紀後半までは「白豪主義」と呼ばれる、非白人の排除政策が取られてい ましたが、1970 年代以降イギリスとの関係が薄れると、オーストラリアの外交政策は一 転、アジア太平洋諸国の一員として協調を取るようになり、多文化主義を国策として掲げ るようになります。 メルボルンはオーストラリア第二の都市ですが、CBD(Central Business District)と呼ば れる中心街は徒歩で歩き回れるほどコンパクト。シドニーよりも高層ビルが少なく、歴史 的な英国建築の建物が多く、さらに街中に大きな公園や庭園があるため、落ち着いた雰囲 気を持っています。東京と比べると、メルボルンの人口は約 3 分の 1、面積は 4 倍。いか にゆったりとした街か理解に容易いかと思います。また、メルボルンはカフェの街として も有名です。街を歩けばどの通りにも個人経営の可愛らしい喫茶店が目に入ります。(コ ーヒー好きの筆者が毎日カフェに通い詰めたのは言うまでもありません。) 日本の田舎の小さな町で、外国とは無縁の環境で生まれ育った私にとって、このメルボ ルンの多文化な環境が刺激に満ちていたことは言うまでもありません。はじめは英語への 自信の無さなどから劣等感に苛まれていましたが、人々がそれぞれ違うバックグラウンド を持ちそれを大切にしていること、また多様性に対してとても寛容で、むしろ好奇心を持 って違いを知ることを楽しんでいることに気づくと、その環境に慣れ、私自身とても楽し むことができました。(詳しくは「生活面」にてお話します) *メルボルン大学について メルボルン大学について メルボルン大学は、世界的な大学ランキング(Times Higher Education World University Rankings 2012-2013)で 34 位、オーストラリアの大学では 1 位に選ばれる優秀校。伝統を 感じるレンガ造りの建物や広い芝生の広場、ハリーポッターを連想させる回廊など、その 美しいキャンパスも人々を魅了する一つの点です。4 分の 1 以上の学生が海外出身という メルボルンらしい多文化な環境の中学ぶことができます。 教育方法について日本の大学との大きな違いとして、意見のアウトプットとグループワ ークに重きが置かれていることが挙げられます。全ての授業に Tutorial と呼ばれるディス カッションのクラスがついており、講義で学んだことをもとに学生同士で議論を行います。 また多くの科目でグループ課題が課され、3 人~5 人程度のグループでフィールドワーク やエッセイを行います。メンバーとコミュニケーションを取りながら協調して課題を進め る能力は、社会に出てから大いに役立つという考えのもと、このような課題が取り入れら れているそうです。日本の大学でももっとグループ課題があっても良いのではないのかな と感じました。 私はというと、1 学期目の始めの頃は、これらの日本と異なる学習環境に慣れることに 力を割いていましたが、ある教授が「大学に来 て学ぶことの重要な点は、他人と意見交換をし、 刺激し合うことである」とおっしゃっていたよ うに、正しいか間違っているかということにと らわれ過ぎず、自分の考えや意見を伝えようと することは、常に歓迎される環境だと次第に感 じるようになりました。英語面でも知識面でも 思考力の面でもまだまだ向上が必要ですが、留 学初期に比べたら後期の方が気楽に発言できる ようになっていたと思います。 *学習面について 学習面について メルボルン大学にて”Faculty of Business & Economics” に所属した私は、マーケティング や経営学に関する授業を中心に、前後期合わせて 7 科目を受講しました。そのうちのいく つかの授業をご紹介します。1 学期に受講した”Business in the Global Economy”は、企業が 海外に進出しグローバルにビジネスを行う際に直面する困難やリスクについて、文化・政 治・経済・法規制など異なる側面から学びました。なかでも、文化の違いがビジネスに及 ぼす影響について、実際に様々な国から集まる学生と議論したことは、とても刺激的な経 験でした。 また、Music Psychology という授業では、音楽を聴いたり弾いたりすることが、人間の 心や体にどのような影響を及ぼすかを学びました。子供の発育や老人のケア、病気を持っ た人への治療など、様々な場面で音楽が人間にプラスの影響を与えていることを知り、今 までに増して音楽への興味が高まりました。 2 学期に履修した Entrepreneurial Marketing という授業は、どのように新しいビジネスを 立ち上げるのか、マーケティングの観点から扱ったものでした。グループ課題では、5 人 程度でグループ作り、新しいビジネスのアイディアを考え、授業で学んだことに沿ってビ ジネスプランを創り上げ、学期の最後に全学生の前で発表するというものでした。知識と して学んだことを、実際に自分以外の人と協同し、プレゼンテーションまで創り上げると いうプロセスを体験することができました。 最後に、私に新たな興味を与えた授業が、Organization, Ethics and Society というマネジ メントの授業でした。ビジネスを取り巻く社会問題について企業・政府・NGO・消費者な ど、異なる Stakeholders の視点から見つめ、企業が果たすべき社会的責任(CSR)につい て理解を深めました。富める先進国の消費者は知らない途上国に、厳しい労働条件のもと 働きしかしいまも貧困の負の連鎖から抜け出せず苦しむ農家や工場労働者が存在すること。 企業のマーケティング活動が極度の消費社会を創りだし、環境破壊を引き起こしているこ と。消費者が喜ぶ「安い」製品の裏にはそんな暗い背景が存在する、これは、ビジネスを 専攻しこれまで「いかに儲けるか」ということを学んできた私にとって、企業の行動を見 つめる新たな視点でした。 総じて、メルボルン大学は一橋大学よりもかなり大きな大学であり、幅の広い教科が存 在することから、一橋では学ぶことのできないような科目に出会えることができ、充実し た学びを得ることができたと感じています。 *課外活動について 課外活動について ボランティア活動や企業でのインターンシップ、 クラブ活動にも積極的に取り組み、素敵な経験を 得ることができました。ボランティア活動は、非 営利のレストランにてウエイトレスや事務作業を 行いました。メニューに値段を持たないそのレス トランには、社会人や学生のみならず、ホームレ スや難民の方も美味しいごはんを食べて集まって きます。国籍も生まれ育った背景も全く異なる 人々と交流しともに素敵な空間を創り上げること は、単純にとても楽しい経験でした。 大学の当期休業中には、メルボルンにある日本企業にてインターンシップを経験しまし た。これまで国際ビジネスを学んできたことから、海外にて日本企業がどのようにビジネ スを行っているのか実際に目で見て経験してみたいと思い、メルボルンにオフィスを持つ いくつかの日系企業に問い合わせたところ、運よく一社からインターンシップの機会を頂 きました。現地スタッフのもとでマーケティングや営業、経理の業務に携わらせて頂きま した。今後の学びにも将来にキャリアにも何か良い影響を与えるであろう経験となりまし た。 また、メルボルン大学には数多くの学生団体 が存在します。音楽が好きな私は合唱サークル に所属し、週に一回練習会を行い、学期末には コンサートを開催しました。曲はクラシックか らポップ、ロックまで様々。音楽を人とともに 創り上げるということを心から楽しみました。 渡豪当初は英語に自信のなかった私ですが、音 楽を通じて多くの友人を得ることができ、自然 と英語の環境に慣れることができました。 *生活面について メルボルンでの生活は、今から振り返るときらきらと輝く日々でした。友人と一緒に料 理をつくり、夕食を食べ、おしゃべりをし、たまに音楽を演奏し…常に様々な国の人々と 交流しお互いの文化を知り合えたことが、とても新鮮な経験であり、楽しかったことだと 思います。休日には山へハイキングに、海へドライブに出かけました。満天の星空のもと キャンプファイヤーをしながら人生について親友と語り合ったことは素晴らしい思い出で す。 メルボルンに到着して最初の 1,2 カ月は、友 人づくり・居場所探しに奮闘していましたが、 オーストラリアの人々のおおらかでフレンドリ ーな気質、多様性に寛容な文化のおかげで、う まく現地の生活に馴染むことができました。 *終わりに このように、約十ヵ月に渡る留学生活は、学び多く刺激に満ちた時間でした。ここで、 本留学制度を長年に渡りご支援して下さる如水会の皆様、及び明産株式会社、明治産業株 式会社の皆様へ、心よりお礼申し上げます。本制度が無ければ、私は留学を志すことはな かったかと思います。今後は、この留学を通して得た学びを成長させ、将来的に社会に還 元できるよう努めて参りたいと思います。温かいお力添え、誠にありがとうございました。 (2013/12/04)
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