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Title
教材としての日時計に関する一考察
Author(s)
柚木, 朋也
Citation
北海道教育大学紀要. 教育科学編, 62(2): 325-337
Issue Date
2012-02
URL
http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2850
Rights
Hokkaido University of Education
北海道教育大学紀要(教育科学編)第62巻 第2号
JournalofHokkaidoUniversityofEducadon(Educadon)Vol.62,No.2
平成別年2 月
February,2012
教材としての日時計に関する一考察
柚 木 朋 也
北海道教育大学札幌枚理科教育研究室
ConsiderationofSundialsasTeachingMaterials
YUNOKI Tomoya
DepartmentofScienceEducadon,SapporoCampus,HokkaidoUniversityofEducadon
概 要
本論は,太陽の運動に関する教材の一つとして,日時計の製作とその利用について考察したものである。
太陽の運動は身近なため,小・中学校の教育課程においても取り扱われており,天体の観察の一つとして重
要視されている。しかし,天体に関する学習は,教員自身が苦手意識をもっている場合が多く,必ずしも効
果的な学習が行われているとは限らない。そこで,効果的な教材の一つとして,簡易日時計について,その
可能性,効果などを検討した。さらに,教員研修において,その日時計を製作し,教材として使用すること
による教育的な効果について考察した。その結果,教員の日時計に対する意識が変化し,授業で活用しよう
という意欲が高くなることが明らかになった。
Ⅰ.はじめに
泉.じしやく.でんさ
士気と水、あたた手り布
北海道における理科に関する調査1)によれば,
小学校理科では,「天気,土地の変化」,「日なた
とHかげ,月と星」,「こん虫,草花,いきもの」
の学習内容を指導が難しいと感じる教員の割合が
高く,中学校では,「地球と宇宙」「電流と磁界」,
こん虫.暮】【.い■もの
ロケたとBかれ月と■
てこ.ふりこ.tじしやく
んののとけかた.t.のの癒えかた.水糟濃
R嘲.■1■、#のつくりとl事たらさ、かんさめ
「音,光,力」の学習内容を指導が難しいと感じ
る教員の割合が高い。特に,中学校では,指導が
図1 指導が難しいと感じる学習内容(小学校)
難しいと感じている内容が物理,地学領域に集中
している(図1,図2)。
この原因の一つは,高等学校時代における履修
地学の未履修率は78.8%と非常に高い割合となっ
ている。こうしたことから,物理,地学領域にお
と関係していると考えられる。調査2)によれば,
ける教育は特に重要であり,それとともに教材の
教員をめざす大学生の物理の未履修率は61.3%,
開発,利用法の開発も重要であると思われる。
325
柚 木 朋 也
場合もある9)。しかし,児童が製作できる実用的
暮.彙.カ
な日時計については必ずしも十分に論じられてい
ー義占l■■
るとはいえない。
▲○■V■l■■
今臥本稿で使用する日時計は,岡田10)によ
血■tt上■手・曾千
■●血量書棚
り考案された水平・垂直型日時計を北海道用に一
■■○量■と▲■
部修正したものである。これは平面型日時計の一
大■○■t
種であり,紙製の簡易なものである。しかし,学
天貴慮■畿
習者一人一人が作ることができるなど太陽の運動
…■
を学習するのに適しており,教材として優れた面
t肌▲・丁鵬吋・■
i■棚
が多いと思われる。
■■と事■
問●・エールギー○■■
■■と人■
Ⅱ.日時計の教育的意義
図2 指導が難しいと感じる学習内容(中学校)
平成20年に公示された学習指導要領11・12)によ
れば,天体に関する内容は,小学校3年生におけ
故雷撃案鶴における数■着生青(創柑名)
群書 ★い
I l
る「太陽と地面の様子」,小学校4年生における「月
象■靡 ■讐不嘱
l
と星」,小学校6年生における「月と太陽」,中学
l
校3年生における「地球と宇宙」で取り扱われて
租理
いる。
化学
まず,小学校3年生の「太陽と地面の様子」に
ついては,内容として次のように記されてい
生揚
る13)。
蝿攣
●◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆
日陰の位置の変化や,日なたと日陰の地面
03
(%)
図3 高等学校時代の教科の好き嫌い
本箱では,小,中学校における地学領域に関す
る教材として,日時計について論じる。日時計は,
人類の文明の発祥とほぼ同じ頃から利用されてき
たと考えられている3)。それは,太陽の動きから
時刻を知るものであり,人類最初の精密機械とで
もいえるものであった。現在では,日時計の実用
的な意義はほとんどなくなり,歴史的意義や芸術
作品などとしての意味が大きくなっている。
教材としての日時計は,野外活動のための日時
計について論じた横尾,山本(1985)4),「カード
日時計」の製作を論じた坪田(1997)5),小・中・
高等学校での実践を論じた渡遁(2001)6),渡遁
(2007)7),安養寺(1983)8)など多くの研究があ
る。また,小学校の教科書にその記述が見られる
326
の様子を調べ,太陽と地面の様子との関係に
ついての考えをもつことができるようにす
る。
ア 日陰は太陽の光を遮るとでき,日陰の位
置は太陽の動きによって変わること。
イ 地面は太陽によって暖められ,日なたと
日陰では地面の暖かさや湿り気に違いがあ
ること。
また,内容の取扱いとして次のように記されて
いる14)。
(3)内容の「B生命・地球」の(3)のアの「太
陽の動き」については,太陽が東から南を
通って西に動くことを取り扱うものとす
る。また,太陽の動きを調べるときの方位
は東,西,南,北を扱うものとする。
教材としての日時計に関する一考察
内容に関しては,「日陰の位置は太陽の動きに
よって変わること」が焦点になる。
この部分に関して,小学校学習指導要領解説理
科編では,「太陽の位置については影をつくって
いる物を目印にして継続的に調べ,地面にできる
影の位置の変化と太陽の位置の変化との関係をと
らえるようにする。このとき,太陽の位置を午前
から午後にわたって数回調べ,太陽が東の方から
南の空を通って西の方に動くことをとらえるよう
にする。」とあり,さらに,「ここでの指導に当たっ
いての考えをもつことができるようにする。
ア 月は日によって形が変わって見え,1日
のうちでも時刻によって位置が変わるこ
と。
イ 空には,明るさや色の違う星があること。
り 星の集まりは,1日のうちでも時刻に
よって,並び方は変わらないが,位置が変
わること。
主たる学習は月と星についてであり,太陽につ
ては,日陰の位置の変化や日なたと日陰の地面の
いては直接取り扱われていない。しかし,日周運
様子を資料や映像で調べるだけでなく,太陽の位
動については,1日のうちでも時刻によって位置
置を方位で記録したり,固定した物の影の位置を
が変わることとして取り扱われている。この部分
時間をおいて地面に描いたりする活動を通して,
に関して,小学校学習指導要領解説理科編では,
日陰の位置の変化と太陽の位置の変化との関係を
「ここでは,任意の時刻における月の位置を,木
とらえるようにする。また,太陽や影の位置の変
や建物など地上の物を目印にして調べたり,方位
化を調べる活動においては,方位磁針を用いて方
で表したりする活動を行い,月の位置が時間の経
位を調べ,東,西,南,北で空間をとらえるよう
過に伴って変わることをとらえるようにする。」
にする。さらに,方位については,生活との関連
とあり,星についても,「月の観察と同様に,星
を図り,日常において意識できるようにする。」(下
の集まりを観察し,木や建物など地上の物を目印
線部は筆者による)とある15)。つまり,太陽の
にして調べたり,方位で表したりする活動を行い,
位置を固定した物の影の位置を記録することに
時間の経過に伴って並び方は変わらないが位置が
よって,時間とともに変化する太陽の動きをとら
変化していることをとらえるようにする。」とあ
えるようにしている。これらの活動の目的は,太
る。また,「方位磁針による方位の確認や観察の
陽の日周運動の把握にあるが,太陽の位置が時間
時間の間隔など,定点観察の方法が身に付くよう
とともに変化することは,「太陽の動きを調べる
にする。」とも記されている18)。
ことにより時間を知ることができる。」という日
時計の原理を導くことになる。
例えば,児童が水平な紙の上に1本の棒を垂直
に立て,その影を記録することは,すなわち,柱
ここでは,太陽の日周運動と月や星の日周運動
を結び付けて考えさせることは,特に触れられて
いない。しかし,後に中学校で学習する内容を考
えると重要なポイントとなる。
型日時計16)を製作していることになる。そのよ
なお,6年生の「月と太陽」については,日時
うにして記録した結果を翌日の太陽の影と比較す
計と直接関係する内容は特に見当たらないのでこ
ることにより,時刻をかなり正確に知ることがで
こでは省略する。しかし,いずれにしても小学校
きる。こうしたことは,児童にとっては,大きな
では,地球を基準とした天体の見方が中心となっ
驚きであると思われる。
ている。
4年生の「月と星」については,内容として次
のように記されている17)。
次に,中学校3年生の「地球と宇宙」について
は,内容として次のように記されている19)。
月や星を観察し,月の位置と星の明るさや
身近な天体の観察を通して,地球の運動に
色及び位置を調べ,月や星の特徴や動きにつ
ついて考察させるとともに,太陽や惑星の特
327
柚 木 朋 也
徽及び月の運動と見え方を理解させ,太陽系
や恒星など宇宙についての認識を深める。
ア 天体の動きと地球の自転・公転
(ア)日周運動と自転
天体の日周運動の観察を行い,その観
察記録を地球の自転と関連付けてとらえ
ること。
け)年周運動と公転
星座の年周運動や太陽の南中高度の変
化などの観察を行い,その観察記録を地
球の公転や地軸の傾きと関連付けてとら
えること。
イ 太陽系と恒星
(ア)太陽の様子
太陽の観察を行い,その観察記録や資
料に基づいて,太陽の特徴を見いだすこ
を,地球が公転していることや地軸が傾いている
ことと関連付けて考察させ,天体の位置関係や運
動についての相対的な見方や考え方を養うことが
主なねらいである。」と記されている。
太陽の日周運動の観察については,透明半球を
用いた観察などにより,太陽が天球上を1時間に
150ずつ動くことを知ることができる。その軌跡
などから,日時計の原理について考えさせること
ができる。また,季節により,太陽の軌跡や高度
が変化することから,どの季節でも使用できる日
時計の原理について考えさせたり,南中時刻が正
午からずれることから,経度による時差について
学習させたりすることができる。このように,日
時計を作り観察することは,学んだ知識を確かめ
たり,太陽の運動について実感を伴う理解をした
りすることにより,地球の運動をより明確に把握
する上でも重要であると考える。
と。
け)月の運動と見え方
月の観察を行い,その観察記録や資料
に基づいて,月の公転と見え方を関連付
けてとらえること。
Ⅱ.日時計の製作と年寺色
今回,使用する日時計の設計図を図4に,完成
した様子を図5に示す。
(ウ)惑星と恒星
観測資料などを基に,惑星と恒星など
の特徴を理解するとともに,惑星の見え
方を太陽系の構造と関連付けてとらえる
こと。
また,内容の取扱いとして次のように記されて
いる20)。
ア アのけ)の「太陽の南中高度の変化」につ
いては,季節による昼夜の長さや気温の変
化にも触れること。
(以下略)
日時計と関係するアの部分に関して,中学校学
習指導要領解説理科編21)では,「ここでは,太陽
や星座の日周運動の観察を行い,天体の日周運動
が地球の自転による相対運動であることをとらえ
させる。さらに,季節ごとの星座の位置の変化や
太陽の南中高度の変化を調べ,それらの観察記録
328
図4 水平・垂直型日時計(北海道版)
教材としての日時計に関する一考察
時計の方が簡易であり,利点が大きいと思われる。
さて,特色のエであるが,これは設計の考え方
の問題である。この日時計は,北緯430,東経1350
を基準に設計してい
る22)。日本標準時は,東経
1350が基準であるので,札幌(東経14lO)では,
4分×6=24分早く太陽が動き,南中する時刻も
早くなる。そこで,このことを含めて14lO用に目
盛を描いておくと経度の補正をせずに時刻を知る
ことができる。
図5 組み立てた水平・垂直型日時計
では,なぜ14lO用ではなく,1350用で目盛を描
いたかというと,この日時計は,正確で実用的な
この日時計の主な特色は,次のとおりである。
道具である前に教材としての役割を担っているか
ア 1枚の紙で作ることができる。
らである。国際時代の現在においては,経度によ
イ 時刻を読み取る影の元となる線(設計図で
る時刻の差異は現実的な問題である。そのため,
はABに当たり,スタイルと呼ぶ)がかなり
このことを日時計で学習することは無意味ではな
正確に固定できる。
い。実際に,14lO用で目盛を描くと左右非対称で
り 水平と垂直のどちらでも読むことができ
複雑な目盛となるが,1350用で目盛を描くと左右
対称の簡明な目盛となり,原理を理解しやすくな
る。
エ 目盛が左右対称で,原理を学ぶのに適して
る。また,使用する地域や均時差の補正の問題も
ある。いずれにしても補正が必要になるのであれ
いる。
オ 持ち運びが簡単で,教室などでも日光さえ
当たれば使うことができる。
ば,基本原理を優先させるのが良いと考えたので
ある。
まず,1枚の紙で作ることができることは,一
最後のオについては,いつでもどこでも一人一
人一人が作成して観察するために大きな利点であ
人が簡単に扱うことができるということである。
る。紙は,必ずしも厚紙を必要とせず,普通の上
その実用性という点では,他の口時計の追随を許
質紙でも十分に使用に耐える。これは,組み立て
さない利点である。
るとそれぞれが補強し合って強くなるからであ
る。そして,このことは,特色のイとも関係する。
設計図の∠BAD(=∠BAC)はその地点の緯度
であり,スタイルを含む三角形の部分(ノーモン)
を水平面に対して垂直に立てればスタイルを大の
北極に向けることができる
。この日時計では,正
しく製作すれば,ノーモンは安定して垂直に立つ
構造になっている。はさみとのりだけで,簡単に
しかも正確に組み立てることができる点は優れて
いる。
次に,水平,垂直のどちらでも読むことができ
Ⅳ.日時計の使用方法
さて,実際に製作した日時計を使用するに当た
り,いくつかの注意が必要である。
(1)設置について
日時計は,正しく設置しなければ正確な時刻を
知ることはできない。
この型の日時計では,スタイルを天の北極に正
確に向けなければならない。水平面上に載せるの
は当然であるが,B点の方を真北に向けなければ
るという点については,垂直日時計(壁型日時計)
ならない。そこで,よく利用されるのが方位磁針
の原理を知るためには興味深い。しかし,低学年
である。しかし,ここで問題が生じる。というの
の児童にとっては,垂直部分の目盛がない水平R
は,方位磁針の指し示す北と真の北(地軸の北)
329
柚 木 朋 也
とは一致しないからである(磁気偏角)。これは,
できる。
透明半球を使った観察を行うと,太陽の軌跡から
求めた北と方位磁針の北がずれていることなどか
ら確かめることができる。
ここでは,理科年表などにより磁気偏角を調べ,
Ⅴ.日時計の原理を理解する工夫について
まず,最も簡単な日時計は,前述したように地
補正しておく必要がある。例えば,札幌での方位
面に棒を建て,その影を記録するようなものが考
磁針の北は真の北より西に約9.50ずれている。そ
えられる。しかし,こうした日時計(棒の頂点,
こで,日時計の一部に合わせるべき方位磁針の向
すなわち,点を記録する日時計)では,季節によっ
きを図示しておき,それを方位磁針の北と合わせ
て目盛が大きく変化するという問題点がある。そ
るなどの方法が考えられる。
れは,太陽の赤緑が変化するためである。
(2)経度差の補正について
前述したように,この日時計は,東経1350用の
地軸に平行な線の影を利用すれば,太陽の赤緑
の変化にかかわらず,年間を通じて共通の目盛を
目盛を描いているので,使用する地域の経度に
使うことができる24)。この原理を利用した最も
よって補正が必要である。例えば,札幌では約24
簡単な日時計は,こま型日時計である(図6)。
分早く表示される。したがって,正しい時刻を求
8Ull
めるためには,表示された時刻より24分減じなけ
O
ればならない。
(3)均時差の補正について
日時計は,太陽が天球上を一様な速さで進む仮
想太陽を想定して設計している。しかし,実際の
太陽は,地球が楕円軌道で公転していることや地
球の公転面と赤道面が一致していないことなどに
より,天球上を一様な速さでは進まない。そのた
め,実際の時刻と日時計による時刻とでは差が生
じる。この均時差は,季節により,ほぼ決まって
いるので,補正することができる23)。次にその
図6 簡単なこま型日時計
こまの軸は,天の北極を向いている(地軸と平行
になっている)。
補正値を示す(表1)。
太陽は,地軸を中心として,どの季節でも天球
表1 均時差による日時計の補正値
上は5日,中は15日,下は25日前後を示している。
(補正値)
上を1時間に約150ずつ動くように見える。その
ため,こま型日時計の目盛は,1時間に150ずつ
等間隔に描けばよいことになる。したがって,日
時計で最も困難な目盛を簡単に描くことができ
+9 +12 +14 +14 +13 +11 +9 +5 +2 0 −2 −3 −3 −3 ロ 0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中
る。
以上のように,こま型日時計は,原理が簡単な
7月
8月
9月
10月
11月
12月
中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中
+6 +6 +6 +4 +2 0 −5 −8 −12 −14 −16 −16 −15 −13 −9 −4
日時計の一つであり,教材としても非常に有効で
ある。ただし,次のような欠点がある。
ア 春分や秋分の近くでは,影が見えにくくな
例えば,11月の中旬(11月15日)には,補正値
る。
は−15となるので,日時計から求めた時刻から15
イ 春分から秋分までの間(夏季)は,目盛板
分を減じることでより正確な時刻を求めることが
の北面(表面)に影が映り,秋分から春分ま
330
教材としての日時計に関する一考察
での間(冬季)は,南面(裏面)に影が映る。
り こまの軸(スタイル)と目盛板を垂直に取
り付けなければならないことなど製作上,設
置上の困難が伴う。
計用の目盛板(等間隔に目盛を描いたもの)をス
タイルに垂直に取り付けたところである。
図7(a),(b)から,スタイルを軸と考えるとこま
型日時計と全く同じ構造であることが見て取れ
水平,垂直日時計は,基本的には,こま型日時
る。このことから,こま型日時計の目盛を水平及
計と共通する点が多い。ただし,目盛が等間隔に
び垂直な面に延長することによってそれぞれの目
はならず,その描き方が若干複雑な点が問題とな
盛を決めることができることを理解することがで
る。そこで,今回の水平・垂直日時計の目盛の描
きる。例えば,図7(a)では,カメラの方から見る
き方を理解する方法を次に述べる25)。
と,スタイルが目盛板の16時を示しており,水平,
凶7(a),(b)は,水平・垂直型時計にこま型日時
垂直日時計の目盛も同様の数値を示している。ま
た,図7(b)は,カメラの角度を少し変えて撮影し
たものである。この図では,目盛板は15時を示し
ており,水平,垂直の目盛も同様の数値を示して
いる。目の位置(図の場合はカメラ)をいろいろ
変えて調べることは,目の位置の向きに太陽があ
る場合のスタイルの影の位置を示していることに
なる。
このように,こま型日時計との共通性を利用す
れば,垂直・水平の目盛が,こま型日時計の目盛
板を延長して作成したものであることが感覚的に
理解できる。
図7(a)目盛板を付けた水平・垂直型日時計
スタイルに垂直に目盛板(こま型日時計用)を取
り付けたところ。こま型の目盛板と垂直,水平部の
目盛が重なって見えている。
ここで,3種の日時計の教材としての意義につ
いて述べる。
まず,ここで論じた棒日時計は,自然の太陽の
動きを記録することによって製作する。それは,
忠実な自然の観察記録であり,毎日の太陽の運動
が一年中同じであるという前提で使用できるもの
である。
しかし,こま型日時計は棒日時計とは大きく異
なる。それは,太陽の運動(地球の運動)を観察
から理解し,そこから目盛を描いたものである。
それは,単なる観察記録ではなく,そのようにな
るはずであるという確たる予測から目盛を描いた
ものである。つまり,自然に対する積極的なアプ
ローチを行っているのである。1日で3600,1時
間で150という等間隔の目盛の意味は極めて重要
だと考えられる。
さらに,水平,垂直日時計になると,こま型日
図7(b)角度を変えて撮影したもの
こま型の目盛板の15時と垂直,水平部の目盛の15
時が重なって見えている。
時計の欠点を克服するために実用的な工夫がされ
ている。目盛の描き方は,多少難しくなるが,小
331
柚 木 朋 也
学校高学年,中学生にも十分に理解可能であると
思われる。
(方位や時刻)ともかかわっていることを学習さ
せることができる。さらに,児童に簡易日時計を
作らせることも考えられる(図8)。児童一人一
Ⅵ.学習活動での日時計の利用
人が自分の日時計を作って太陽の運動を調べるこ
とは,様々な意味で効果的であると思われる。
この日時計を用いた学習活動について考察す
る。
【小学校3年生における取組例】
日時計は,「太陽と地面の様子」の中の「日陰
の位置の変化」と関連させて取り扱うことになる。
小学校3年生は,時計の読み方を学習しており,
時間についての概念もある程度理解している。ま
た,太陽の運動についても生活経験からある程度
理解していると思われる。児童の中には,日時計
について見たり聞いたりしたものもいる。ここで
は,学習内容が時間と密接に関係していることか
らその重要性を認識させ,学習を効果的に進める
ために日時計の利用を試みることとする。
大きな流れは次のようになる。まず,機械時計
図8 簡易日時計(低学年用)
がなかった昔には,どのようにして時刻を知った
のかを考えさせる。一つの方法として日時計(太
陽の運動)が出てくる。そこで,本当に太陽の動
【中学校3年生における取組例】
中学校では,「地球と宇宙」の中での取扱いが
きで時間を知ることができるのかについて調べる
考えられる。そこでは,日周運動を地球の運動と
ことにする。
関連付けて考察させることが重要となる。中学校
① 簡易口時計を口光の当たる所に設置する。
(スタイルが正確に北を向くように設置す
る。)
② 太陽の位置と,日時計が正確に時間を示し
ていること(経度とその日の均時差の補正を
調べておくこと)を確認する。
③ その後,数回にわたり,太陽の位置と日時
計を確認する。
経度とその日の均時差の補正は,小学生低学年
では,小学校での学習を確認するとともに,透明
半休などの観察と対比させながら,太陽の運動に
ついて学習させることが効果的であると思われ
る。
大きな流れは次のようになる。まず,小学校で
学習した太陽の運動について想起させる。そして,
時間とのかかわりについて考えさせる。中学生で
は,日時計について知っているものも多いので,
一人一人に日時計を作成させ,調べさせる。
には難しいので,「場所などからズレが出てくる
① 作成した日時計を設置する。
ので,○分引きます。」程度で良いと思われる。
② 正しい時刻が表示されるかどうかを調べ
この日時計は,正しく作り,設置すれば,数分
る。
以内の精度で時刻を知ることが可能である。もし,
③ 結果について考える。
時計がなければ簡単に時刻を知ることができない
小学校などで日時計について学習していない場
ことを考えると驚くべきことである。このことか
合,日時計を正しく使うことは難しいと思われる。
ら,太陽の運動が規則的なことや自分たちの生活
特別な指示をしない限り,正確な時刻を読み取る
332
教材としての日時計に関する一考察
ことはできない。理由としては,次のようなこと
が考えられる。
○スタイルを正しい北に向けていない。
さらに,発展的な課題として,測定地の経度に
合わせた目盛や様々な形の日時計を製作すること
などが考えられる。
○経度の補正をしていない。
中学校では,磁気偏角については学習していな
いので,方位磁針の北と実際の北がずれているこ
とを知らない。したがって,設置の方法に大きな
Ⅶ.日時計についての授業実践について
以上の議論を経た上で,二つの実践を試みた。
問題がある。地図などによって設置する場合は問
一つは大学における中学校理科教育法においてで
題がないが,方位磁針によって設置する場合には,
あり,一つは小学校免許講習においてである。い
そのことが問題となる。
ずれの授業においても,天候などの関係から授業
一方,経度による時刻の違いについては,社会
時間内に日時計の実証を行うことができなかっ
科や経験(テレビや海外旅行)などにより既知の
た。また,約50分と短い時間の中での講義を中心
場合もある。以上のような議論を経て,正しく設
とする実践であり,必ずしも満足のいくものでは
置し,正しく補正をして,時刻を比較させる。
なかった。そのため,日時計の魅力を十分に理解
なお,季節によっては,均時差の補正も必要と
なる。ただし,補正について詳細を取り扱うと混
乱することも予想されるので,深入りは避けるこ
とが望ましい26)。一つの方法として,近時差の
させることができなかったと思われる。しかし,
いくつかの知見が得られたので紹介する。
【実践1中学校理科教育法】
本講座の受講生は,中学校の理科免許を修得す
影響の少ない時期に観察を行うことも考えられ
るために受講しており,ほとんどが大学学部の2
る。こうして,かなり正確に時刻を読み取ること
年生である。したがって,理科の専門教科(天体)
ができることを確認することで,時間と太陽の運
についてはまだ学習していない。また,高等学校
動とのかかわりについてより深く考えることがで
在学中には,理科系でなかった学生も多い(約
きると思われる。
50%)。
さて,日時計を作成し,観察することを通じて
どのような学習ができるのかについて次にまとめ
る。
大きな授業の流れは,次のとおりである。
Q もし,今機械時計がなかったなら,どのよ
うにして時間を知るか?
○ 太陽の日周運動の空間的なイメージが把握
できる。
○ 地球の自転と日周運動を関連付けることが
できる。
J 太陽の南中についての知識を得ることがで
きる。
○ 地軸の傾きを太陽の動きと関連付けること
ができる。
○ 日時計に関する原理だけではなく,天体の
動きについての理解が深まる。
○ 日時計を一人一人が作ることにより,興味,
関心が喚起される。
1 天体と実生活とのかかわりについて関連付
けることができる。
○ 日時計の製作を行う。
Q どのようにして北を決めるか?
Q 方位磁針に沿って北を決め,日時計で計測
したが,正確な時刻とはズレがある。なぜか?
○ 磁気偏角について解説する。/トさい印が付
けてあり,正確に北向きに設置できることを
解説する。
Q まだ,ズレがある。なぜか?
○ 経度の補正が必要である。
Q まだ,ズレがある。なぜか?
○ 均時差について説明する。
Q これで,ほぼ,正確な日時計になるが,日
時計の目盛はどのようにして描けばよいか?
○ ここで,こま型日時計について紹介,説明
333
柚 木 朋 也
する。
○ 最後に均時差について説明する。
○ 水平,垂直日時計にこま型日時計の目盛を
取り付け説明,確認をさせる。
以上のように,質問を中心に授業を進めた。こ
「児童が使う時には,±○分の補正」
以上のように,こちらの方法では,質問を少な
くして,説明の流れを重視して授業を進めた。こ
の方法の特徴は,時間のズレの原因を一つ一つ解
の方法の特徴は,知識が整理されているので,理
決していく過程で,知識と思考の方法を学べるこ
解しやすいことである。
とである。
【実践2 小学校免許講習】
小学校の教員対象の研修会において,地学教育
【両実践の比較から】
表2に,授業直前と授業直後にとったアンケー
ト結果の一部(日時計のイメージを10項目から選
の一つとして行った。対象者は,2種免許保持者
択する。複数選択可)を示す。また,表3,表4
で1種免許に上進するために受講するものであ
に表2の検定結果を示す。
る。そのため,年齢構成などかなりの幅がある。
表2 日時計に対するイメージ調査
ここでの授業の流れは,次のとおりである。
Q もし,今機械時計がなかったなら,どのよ
うにして時間を知るか?
(授業直前と授業直後との比較)
学生数34,教員数32で,bは授業直前,aは授業
直後を示す。
0 1本の棒を立ててその影を調べる様子を説
明する。
○ 季節による違いを説明する。
○ 各季節に太陽が地軸の周りを回転する様子
を説明する。
○ この原理を利用した単純なこま型日時計に
ついて説明する。
○ 水平,垂直日時計を製作する(図9)。
○ ここで水平,垂直日時計にこま型日時計の
学生b
学生a
教員b
教員a
1便利
2
2 不便
6
13
9
3 正確
2
10
6
4 不正確
0
12
5 明るい
2
6 暗い
1
5
2
10
2
21
12
0
5
0
24
0
0
7 むずかしい
5
5
9
8 やさしい
3
1
3
5
9 美しい
2
4
4
5
7
9
6
10芸術的
13
目盛を取り付け説明,確認をさせる。
Q 日時計の設置の仕方は?
○ ここで,磁気偏角について解説する。
表3 学生と教員との有意差
(フィッシャーの正確確率検定による両側検定)
授業直前 授業直後 授業直前 授業直後
のp値 のp値 の判定 の判定
○ 次に経度の補正について説明する。
図9 日時計を製作しているところ
334
1便利
0.9999
0.0003
n
**
2 不便
0.3843
0.0026
n
**
3 正確
0.1434
0.0062
n
**
4 不正確
0.9999
0.0536
n
+
5 明るい
0.2511
0.9999
n
n
6 暗い
0.9999
0.9999
n
n
7 むずかしい 0.9999 0.0011
n
8 やさしい
n
n
0.9999
0.1001
**
9 美しい
0.4201
0.7296
n
n
10芸術的
0.4406
0.9999
n
n
※ なお,判定基準は次のとおりである。
p>0.10
n 有意でない
0.05<p<0.10 + 有意傾向がある
p<0.05
* (5%水準で)有意である
p<0.01
** (1%水準で)有意である
教材としての日時計に関する一考察
表4 授業直前と授業直後の変化の有意差
学生は,「日時計から様々なことが学べる」や「奥
(フィッシャーの正確確率検定による片側検定)
の深さ」に引かれている。一方,「正確な時間を
学生の 教員の 学生の 教員の
p値
判定
p値
判定
1便利
0.2462
0.0110
n
2 不便
0.0517
0.0216
+
**
3 正確
0.0115
0.0001
*
**
4 不正確
0.M56
*
**
5 明るい
0.4999
0.0980
6 暗い
0.5000
0.9999
0.0000
7 むずかしい 0.0000 0.1824
8 やさしい
0.3067
0.3539
*
得るのが大変」や「難しい」と感じている学生も
多く,実用については否定的な感想が多い27)。
同様に,教員に関しても「補正などがむずかしい」
という感想は多かった。しかし,一方で,教員は
n
+
n
n
n
**
n
n
授業での実施を念頭に考えているようで,「子ど
もが興味をもつ」,「授業で作りたい」などが多く
なっている。その意味で,教員の日時計に対する
9 美しい
0.3364
0.5000
n
n
意識が大きく変化しており,実践への意欲が高
10芸術的
0.0913
0.2780
十
n
まっていることが読み取れる。以下,代表的な感
※ 判定基準は次のとおりである。
p>0.10
n 有意でない
0.05<p<0.10 + 有意傾向がある
p<0.05
* (5%水準で)有意である
p<0.01
** (1%水準で)有意である
想を列挙する。
【学生】
○ すごく簡単なものだと思っていた日時計が
補正などを考えると実はすごく難しい過程を
表3から,授業直前には,すべての項目で学生
経ているのだということがわかりました。
○ 奥が深くておもしろかったです。日時計ひ
と教員との差はほとんどないが,授業直後には,
とつで,様々な地球の性質を知ることができ
「1便利」,「2不便」,「3正確」,「7むずかしい」
の項目で明らかな差(p<0.01)が認められた。
ました。
授業直前と授業直後の変化については表4か
○ 時間を合わせるのってこんなにも様々な条
ら,学生については,「7むずかしい(p<0.01)」,
件が必要だということには正直驚かされた。
「3正確(p<0.05)」が授業直後に増加し,「4
○ 実践的ではないし,全然使えないと思う。
不正確(p<0.05)」が授業直後に減少している
しかし,本当の時刻がわかるのはすごいと思
ことが認められる。また,教員については,「3
う。
正確(p<0.01)」,「1便利(p<0.05)」が授業
直後に増加し,「2不便(p<0.01)」,「4不正確
○ 日時計は様々な要素によって誤差ができ,
その補正も難しいため,小,中学校の教材に
(p<0.01)」が大幅に減少していることが認め
は,少しむいていないかなと思った。しかし,
その修正の意味を少し理解できれば,普通に
られる。
同様の傾向は,授業直後のアンケート結果の感
想からもうかがえる(図10)。
勉強して理解するよりも頭に残りやすいと
思った。
【教員】
主な拙
■﹁ ’■ 0
匡慧
○ きちんと正確な準備をしないと日時計なん
て作れないと思っていましたが,こん引こ簡
1 1
単にできて,その上,ほぼ正確にはかれてと
一 轟‘ ○
ても驚きました。はかれたことがうれしかっ
署夕汐
図10 感想を主な内容により計数したもの
(計数したものは,学生,教員ともに42回答)
たです。
○ 作って,使ってみると楽しかったですが,
季節や位置による補正は大変でやや難しいで
す。でも,子どもたちと一度作ってみたいと
思いました。
335
ヰ由 木 朋 也
○ 子どもたちと太陽と月の学習をするのが苦
文献及び注
手でしたが,かんたんにつくれて試してみれ
そうなのでやってみたいと思います。
○ 時計というものは正確さだけが求められ,
その点では日時計は不正確だと考えていまし
た。しかし,地球,太陽のしくみを研究して
1)北海道立教育研究所附属理科教育センター,北海道
教育大学:北海道における理科教育の充実を図るため
の調査研究一第4回本道の理科教育に関する実態調査
−,pp.57−58.
http://exp.ricen.hokkaido−C.ed.jp/tobira/htdocs/?
正確なものになるというところがすばらしい
action=Cabinet action main download&blockid=1632
と思いました。
&roomid=1&cabinetid=14&fileid=504&upload_id=13
○ 日時計は正確な時間は計れないというイ
メージでしたが,こんなにも正確に計れると
97,2010.
2)株式会社ベネッセコーポレーション:平成17年度経
済産業省委託調査進路選択に関する振返り調査一大学
いうのが驚きでした。ただ,補正がちょっぴ
生を対象として−,p.61.
り難しかったです。
http://benesse.jp/berd/center/open/report/
その後,受講生に課した『地域教材,身近な教
材を活用することについて』のレポートから一つ
を紹介する。「天体の内容は自分自身が正直得意
でないという
ことと,教材にお金がかかるイメー
ジがあり,教科書通りにすすめるしかないと思っ
ていた。しかし,身近にあるものを使って,お金
をかけずに自分の目で確かめることができ,楽し
い授業をすすめられることを学んだ。子どもたち
にも,楽しみながら太陽や星座の素敵な世界を実
感させていきたいと思う。」
Shinroscntaku/2005/indcx.html,2005.
3)時計に関する著述は多い。以下の文献を参考のこと。
関口直甫:「日時計百科」,恒星社厚生閣,1980.
山口隆二:「時計」,岩波新書,1956.
織田一朗:「時計と人間−そのウォンツと技術−」,昇
華房,ポピュラー・サイエンス207,1999.
4)横尾武夫,山本乃里子:野外活動のための日時計,
大阪教育大学理科教育年報,No.9,pp.25−29,1985.
5)坪田幸政:「カード日時計」の製作,理科の教育通
巻46号,東洋館出版,pp.420−424,1997.
6)渡追伸樹:赤道型日時計から地面水平型日時計への
拡張一小学校における活きた空間教育の実像を求めて
−,数学教育研究,第30号,大阪教育大学数学教
室,pp.109−121,2001.
7)渡追伸樹:中学校における日時計の教育実践(その
Ⅶ.結 論
一般に,天体に関する観察は,昼間に行うこと
1),数学教育学会発表論文集2007(1),数学教育学
会,pp.201−203,2007.
8)安養寺寿樹:日時計の原理とその製作一天体の座標
が難しい。その中で,日時計は学校生括の中で観
系の応用として−,地学教育と科学運動,12号,
察できる数少ない教材である。一人一人が日時計
pp.15−25,1983年.
を作り,太陽の観察をすることにより,興味,関
心が高まり,実感を伴って太陽の運動を理解する
ことができる。そして,地球の運動についての理
解を深め,時間とのかかわりについても考えるこ
とができる。この日時計の真価は,今後の実践を
待つことになる。しかし,教員に対する研修の中
9)複数の小学校3年生理科の教科書に紹介や簡単な作
り方が掲載されている。
10)貝塚市の善兵衛ランドの岡田宏初代館長が考案した
ものである。次のホームページでも紹介されている。
http://www.city.kaizuka.1g.jp/zenbe/
11)文部科学省:「/ト学校学習指導要領」,2008.
12)文部科学省:「中学校学習指導要領」,東山書房,2008.
13)前掲11)pp.66−63.
でこの日時計を取り扱った結果,教員の日時計に
14)前掲11)p.63.
対する意識が変化し,授業で活用しようという意
15)文部科学省:「/ト学校学習指導要領解説 理科編」,
欲が高くなることが明らかになった。近時差の取
扱いなど課題はあるものの実用的で効果的な教材
であると思われる。
大日本図書,p.31,2008.
16)柱型日時計は最も基本的な日時計であり,別名ベレ
キノン式日時計とも呼ばれる。棒の先端の影が一定の
時刻に対してアナレンマを描くので,アナレンマ式日
時計ともいわれる。(関口直甫:「日時計百科」,恒星
336
教材としての日時計に関する一考察
しての実践例が述べられている。
社厚生閣,p.128,1980.)
渡追伸樹:赤道型日時計から地面水平型日時計への
17)前掲11)p.65.
拡張一小学校における活きた空間教育の実像を求めて
18)前掲15)p.4.
19)前掲12)pp.68−69.
−,数学教育研究,第30号,大阪教育大学数学教室,
20)前掲12)p.71.
pp.109−121,2001.
21)文部科学省:「中学枚学習指導要領解説 理科編」,
人日本図書,pp.86−87.2008.
26)日時計の誤差には,その他にも,水平面の補正,大
気による屈折の影響などもあるが,簡易日時計では,
22)北海道は,緯度が高いので明石(北緯350)標準の日
時計を使うには,少し無理がある。そこで,北海道の
緯度(北緯41.30∼45.50)からほぼ真ん中の北緯430を
基準として選んだ。
設計,製作,設置の精度などから考えて無視できると
思われる。
27)学生に行った授業では,アンケート及び質問調査の
結果から,日時計はむずかしいという印象を与えたこ
23)同時刻に1年間,太陽の位置を調べると一直線に上
とが明らかになった。それは,必要な補正について次々
下に動くのではなく,8の字を描くことが知られてい
と質問したため,理解が十分でなく,そのために「複
る(アナレンマと呼ばれる)。北海道でも同様の影響が
雑でむずかしい」という印象を与えたためと思われる。
見られる。図11は,札幌における2011年の各月の21日
このイメージを軽減するため,教員に行った方法と同
における正午の太陽の位置をシミュレートしたもので
様の方法で補講を行ったところ改善が見られた。
ある。
ニノ Jl −
せ旬
1丁′∵h一郎 pっ テ
(札幌校准教授)
句
00
0 0
● ○
◎
図112011年各月21日の正午の太陽の位置(札幌)
天体ソフトSte11ariumを使用して作成
24)各地で比較的よく見られる日時計は,水平日時計が
多く,三角形の叔が日時計に使われていることに漠然
とした疑問を感じている児童,生徒もかなりいると思
われる。(安養寺寿樹:日時計の原理とその製作一天体
の座標系の応用として−,地学教育と科学運動,12号,
pp.別−25,1983年.)
25)目盛叔の描き方に関しては,多くの文献で述べられ
ている。また,次の文献では,小学生(中学生)に対
337