新 製 品 車載用タッチパネル FID-554シリーズ カーナビゲーション,カーオーディオ等の車載用途の表示画面に使用 できるタッチパネルを開発しました。苛酷な車内環境に考慮し,高耐 環境特性を実現しています。 概 要 タッチパネルは,表示画面上に直接入力できるため,簡単で確 実に入力できる手段として幅広いアプリケーションに使用されていま す(図1)。 近年のカーナビゲーションやカーオーディオの普及と高機能化,ま たテレマティクス (各種車載用情報通信システム) に対応するカーエ レクトロニクス装置の必要性などから,車載向けタッチパネルの需 要も増大しています。当社では,このような市場ニーズに応え,厳 しい車載仕様に適したタッチパネルを系列化しました。 写真1 図1 外観 タッチパネルのアプリケーション カーナビゲーション 携帯電話 LCDモジュール /LCDモニタ POS/ECR カーオーディオ 市 場 規 模 2 DIN PDA ノートブック パソコン 1 DIN 複写機 5 10 15 タッチパネルサイズ(インチ) FIND Vol.21 No.4 2003 59 FID-554シリーズ 特 長 耐環境特性 高耐環境特性 表1に当社の車載用タッチパネルの環境試験結果を示します。 厳しい温湿度条件に対しても高い信頼性を実現しました。 低反射化技術 優れた光学特性 高透過率・低反射の実現により,表示画面の画質劣化が少な く,はっきり見えます。また,ぎらつき防止処理,アンチニュートン リング仕様により,さらに視認性が向上しました。 いろいろな角度から入る太陽光や,夜間走行における照明など, 車内特有の外光条件に対応するため,低反射化技術を取り入れ 防汚機能 て視認性の向上を図っています。 図2に車載用タッチパネルの低反射化を示します。 指紋の汚れがつきにくく,かつ付着した汚れは拭き取りやすいの 高透過仕様 で,常にきれいな表面状態を保てます。 高透過仕様のタッチパネルは,ガラス基板面に無機誘電膜を多 材料選定 層コーティングすることにより,ガラス面からの反射を低減し,透過 率を向上させています。 図3に高透過率・低反射の原理を示します。 車載用途製品は,幅広い温湿度条件に対応しなければなりませ ん。一般的なタッチパネルは,オフィスや家庭内など,普通の屋内 環境を考慮すれば十分です。しかし車載用途になると,温度範囲 は−40℃〜90℃,湿度範囲は10%RH〜90%RHと厳しい環境条 件に耐えられる材料を選定する必要があります。 表1 項 当社では,これらの厳しい条件に合う材料を検討し,車載用途 に適した構成のタッチパネルを開発しました。 車載向けタッチパネルの環境試験結果 目 試験条件 高温放置試験 低温放置試験 フィルム:広い温度範囲でもタワミが発生せず,透明導電膜も 高温高湿放置試験 安定した抵抗値特性を有するフィルム部材です。 熱衝撃試験 接続ケーブル:特に高温特性の優れたケーブル材料を採用し 高温動作試験 ました。 低温動作試験 ケーブル接着用材料:熱硬化タイプの接着剤を採用することに 高温高湿動作試験 結 果 95℃,1000h −40℃,1000h 85℃,85%RH,1000h −40℃〜85℃,1500サイクル 異常なし 65℃,5Vdc,192h −20℃,5Vdc,192h 65℃,85%RH,5Vdc,192h より,接続安定性を向上しました。 図2 車載用タッチパネルの低反射化 特殊コートされたガラスとフィルムの組合せにより,タッチパネルの反射を低減。 一般仕様 高透過仕様 視認性・透過率の向上 偏光板付仕様 ハードコード フィルム 偏光板 1/4 λ板 フィルム フィルム ITO 膜 光学等方性 フィルム 特殊コート ガラス ガラス 特殊コート ガラス 1/4 λ板 60 透過率 82 % 透過率 88 % 輝度透過率 78 % 反射率 17 % 反射率 11 % 反射率 4 % FIND Vol.21 No.4 2003 FID-554シリーズ 偏光板付き仕様 付着しても簡単に拭き取れることが分かります。 偏光板は,光の波動のうち特定方向のみを通過させます(直線 仕 偏光)。直線偏光の光は,さらにλ/4位相差板を通過させると円 様 偏光になり,円偏光の光はガラス面で反射すると回転方向が逆向 きになります。このような性質を利用して,タッチパネルでの外光反 本製品は,カーナビゲーション,カーオーディオ,カーPCなどの 射をほとんどなくし,高コントラストの表示画面を実現しています。 カーエレクトロニクス製品に最適であり,用途に合わせたカスタムデ 図4に偏光板付き仕様のタッチパネルの原理を示します。 ザインにも素早く対応できます。 表2に本製品の仕様を示します。 防汚機能 今後の課題 当社開発の防汚フィルムは,表面に低表面張力化処理を行うこ とにより,防汚機能を高めています。この防汚フィルムをタッチパネ 当社では,車載という特殊環境に適合するタッチパネルとして, ルに採用することで,指紋汚れが付着しにくく (=目立ちにくく), さらに低反射かつ高耐環境特性の実現に向けて検討を進めます。 かつ付着した汚れが拭き取りやすくなりました。 また高防汚フィルムの開発や,耐衝撃性を向上させるために,フィ 図5に,当社開発の防汚フィルムと一般市場で用いられている ルム/フィルム,フィルム/プラスチックといったガラスレス構造の開発 防汚フィルムとの比較を示します。当社の防汚フィルムは,汚れが 図3 にも取り組んでいきます。 ■ 高透過率・低反射パネルの原理 AR(Anti-Reflection)コーティング AR コート 無機誘電体(SiO2・TiO2)を多層コーティングすることで 光の干渉によって表面の反射を低減させる技術 AR コート AR コートの表面反射率 15 反 射 10 率 ︵ % 5 ︶ 0 400 500 フィルムまたはガラス 図4 600 波長(nm) 700 800 偏光板付きタッチパネルの原理 1/4 λ板 偏光板 外光:100 A パネル B 反射光:4 E A B C D E FIND Vol.21 No.4 D C 入射光(自然光)は偏光板を通過し直線偏光に変換される。 直線偏光は 1/4 λ板を通過すると円偏光に変換される。 反射光は入射光と逆回りの円偏光になる。 再び 1/4 λ板を通過すると入射時と直交方向の直線偏光に変換される。 反射光は偏光板に吸収される。 2003 61 FID-554シリーズ 図5 防汚フィルムの比較 市場 防汚フィルム 当社開発 防汚フィルム 0 10 20 30 指紋付着時 1 拭取り回数(回) 目立つ 見える 10 20 拭取り回数(回) ほとんど見えない 表2 車載用タッチパネルの仕様 一般仕様 偏光板付き仕様 一般仕様 高透過 ANR仕様 (アンチニュートンリング仕様) 直線偏光 円偏光 透過率 82% 88% 86% 80%* 78%* 反射率 17% 11% 11% 8% 項 目 ANR 入力荷重 リニアリティ 打点寿命 防汚機能 環境特性 4% ── ○ ── 0.05N〜0.5N 0.05N〜0.5N 0.05N〜1.0N 1.5%以下 1.5%以下 1.5%以下 100万回以上 100万回以上 100万回以上 ○ ○ ○ 動作温度 −30℃〜+60℃ −30℃〜+60℃ −30℃〜+60℃ 保存温度 −40℃〜+85℃ −40℃〜+85℃ −40℃〜+85℃ 動作湿度 20%〜90% 20%〜90% 20%〜90% 保存湿度 10%〜90% 10%〜90% 10%〜90% *輝度透過率を示します。 お問い合わせ先【技術】:富士通コンポーネント㈱ TEL(03)5449-7012 62 第二マーケティング部 FAX(03)5449-2628 【営業】:最寄りの富士通コンポーネント㈱ 販売部(裏表紙をご参照ください) FIND Vol.21 No.4 2003
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