【大阪市海外事務所駐在員レポート】 現地日系企業訪問レポート 大阪市パリ事務所 TEL:+33-1-4015-9366 FAX:+33-1-4015-9172 E-mail:[email protected] URL:http://www.osaka.fr 社名:EURO JAPAN CROSSING (2003 年 3 月より EURO JAPAN COMIC として活動、業務拡大のため 2007 年 11 月に EURO JAPAN CROSSING を設立し、EURO JAPAN COMIC はその一部門として、引き続き日本ポップカルチャー 関連事業を行う) 住所:48 rue La Bruyere 75009 Paris, France 社長:西山 健二氏 資本金:6000 Euro 従業員数:5 名 設立年月:2007 年 11 月 業務内容:ジャパンエキスポ日本総代理店ほかイベント開催、日本ポップ カルチャー情報関連調査受託 ●貴社は、日本のマンガ、アニメ、ゲーム、Jポップ、ファッション、コスプレなどのいわゆるポップカルチ ャー情報を欧州各国で、発信されるという業務を行っておられますが、具体的にはどのようなことを 行っておられますか。 西山社長(以下、同じ)− マンガ、アニメ、出版社、DVD制作における翻訳、吹き替え、 映像学校などの業界、個人のファンクラブなどを通じて、生の情報を入手し、分析を行っていま す。 具体的には、マンガが何部、DVDが何枚売れているかを把握す るなど現地の実態を収集し、面白そうなものをサイトで取り上げた りして配信しています。 他にも JETRO や JNTO(国際観光振興機構) からマーケティング調査を受託しています。基本的には日々の活動 の中で、ネットワークを利用して、手作りで行っています。 ●フランスでは、テレビでも日本のアニメが吹き替えて放映されていま すし、カルフールなどでもマンガのコーナーがあります。最近日本語を 勉強する人たちは、マンガを原語で読みたいからという動機の人も多い と聞きます。なぜ日本のポップカルチャーが受けるのでしょうか。 イベント会場での西山社長 日本のポップカルチャーは、ストーリーの完成度が高いのが受 けています。特にマンガは、絵の運び方が映画的で、絵が多少省略されていても、ストーリーの 背景が分かりますし、主人公に接近した描き方をしています。これに対して、アメコミ(アメリ カン・コミック)などは、絵画に近いのです。絵が全て描かれていて、止まっていて、見れば分 かるというものです。 また、スーパーマンなどは、格好良い強いキャラクターですが、日本の そういったヒーロー系のキャラクターは、時に失敗したり、負けたり、異性に弱かったり、喜怒 哀楽があったり、親近感を感じるようです。日本ではマンガはたくさん書かれており、作者も選 別されており、読者も目が利くので、良い作品が出てきます。 J-POP なども受けていますが、アニメの主題歌から知り、演奏するグループを知って好きにな り、他の曲、グループへと拡がっていきます。そしてビジュアル系のバンドが格好良いとして、 そのファッションを真似たりします。KISS(1970 年代に流行したへヴィメタルバンドで、ビジュ アル系バンドの原点とも言われる)のリバイバルではないかとも思えます。 ●貴社は、欧州で最大の日本ポップカルチャーイベントであるジャパンエキスポの日本総代理店という ことですね。われわれ大阪市パリ事務所も昨年出展しましたが、あの若い人達の熱気やコスプレな ど驚きましたし、小さなお子さん達もお父さんお母さんに連れてきてもらい、皆嬉しそうにグッズなどを 抱えていたのが印象的でした。マンガ、アニメ、ゲームだけでなく武道や囲碁などのコーナーなどもあ っていろいろ楽しめる内容ですが、ジャパンエキスポについて、歴史や規模、内容、今後の方向性な どお聞かせ下さい。 ジャパンエキスポは、1999 年から始まり、2004 年まで現在とは別の会場で開催されていまし たが、2005 年にそれまでの会場では手狭ということで、会場を変更する必要があり、探しまし たものの見つからず中止になりました。そして翌年から現在の会場である Villepinte(パリ市か ら北西へ約 17 キロ、Charles de Gaulle 空港そば)へ移りました。2007 年は 3 日間で、83,000 人の入場者がありました。 今後は、もっと規模を大きくしていくと同時に質を 高めていきたいです。ファッションショーを昨年より 行いましたが、評判が良かったですし、アートも入れ ていってもいいかなと考えています。分野の拡がりと しては、ロボットの実演や女子プロレスなど日本の元 気のいいとろを見て欲しいし、それを掘り起こしてい く役割があります。フランス人主催なので、新しいも のの発見を補佐する必要があります。 2007 ジャパンエキスポ開場を待つ人達 今まではイベントやグッズの即売会的なものであったのを、昨年より業界関係者のビジネス機 会を提供する場、トレード・ゾーンを設けました。従来は、小売店が出展し、個人客が買うとい うパターンでしたが、これによりメーカーが来て、輸入会社や小売店と商談するという形もでき てきました。今は出展者から売り上げ数字の統計を調査するなどビジネス化もしています。 ●ジャパンエキスポでの集客に象徴されるように、現在急速に日本のポップカルチャー信奉者が欧州 において増加中ですが、それぞれの国で特色はありますか。またその特色を捉えて、国毎にどのよう な変化や工夫をされておられますか。 国によって国民性はありますし、テレビアニメの入り方によって温度差はあります。例えばフ ィンランド‐日本間は、物流コストが高いことと、数の問題もありフィンランド語に翻訳せずに 英語でそのまま出版するため、マンガ本があまり売れずにアニメが伸びています。また言葉が分 からなくとも楽しめるので、J-POP が進んでいます。 イタリアでは、イベントやコスプレが盛り上がっています。ドイツには出版社が多いので、マ ンガが多く売れています。フランスでは、DVDやアニメに勢いがあります。早くからTVで日 本のアニメをやっていたというのもあり、フランスの市場が最大で、毎月 100 巻新作のマンガが フランス語になり出版されています。 ●以前に le Monde の記事に日本のアニメの記事が書かれており、そこには、「日本のアニメは、フラン スでは文化の高いものと扱われなかった。1976 年に初めてテレビの子供番組に現れたのは、恐ろし いロボットであった」とありました。これはゴウルドラック(日本名グレンダイザー)のことですが、その頃 の状況をフランス人に聞くと、親達は子供達にそのようなものを見せないようにしていたと言っていま した。日本ポップカルチャーの欧州におけるいわゆる黎明期で苦労されたこと、現在の流行期におい て苦労されていることなどお聞かせ下さい。 フランスのTV局は、25∼26 年前に業績の落ち込みや合併などで予算が厳しい時がありまし た。この時にTV局は、アメリカのアニメは放映権料が高くて買えない一方、日本のアニメが安 いのでたくさん買いました。これはフランス大手の AB プロダクションが日本のアニメ事情に詳 しかったので、TV局各社に売り込んだという背景があります。そして他方でクラブ・ドロテ(女 性歌手ドロテがパーソナリティの外国の子供番組を紹介するフランスのTV番組)が多くの日本 のアニメを紹介してブームとなり、イタリアやスペイン、ドイツも追いかけてきました。しかし 何でも売れるということで、小さい子供の見る時間帯に暴力的なものを放映したので、教育者や 政界から非難を受けてアニメでなくマンガ本に入りました。その後、衛星版(放送)に乗りTV アニメが復活しましたが、時間帯などはコントロールされています。一方イギリスは、アメリカ から英語版を買いつけるので、どうしても価格が高くなり、流行の拡がりとスピードに欠けます。 私は日本のポップカルチャーに関しては素人だったの で、日本の同人誌最大手からフランスに出店したいとの話 しがあり、マーケットリサーチのために、最初イベントへ 行き、コスプレを見て非常に驚きました。しかし、苦労は 無く、それまでフランス人だけでやっていたところに日本 人が入っていったので、容易に受け入れてもらえました。 それまでも関係する日本人は居ましたが、ポップカルチャ ー好きの人達でしたので、自分の嫌いなものは紹介しない 2007 ジャパンエキスポ会場内にて など偏っており、素人だったのが幸いしたと思います。 ●ファッションの分野では、次の流行はゴスロリのようですが、欧州での日本ポップカルチャーの流行の 流れや日本との違いなどあればお聞かせ下さい。 ジャパンエキスポには、刀もあれば柔道もあるように枠が広いです。日本より幅広く見ており、 ポップカルチャーから伝統的なものに興味が広がって日本ファンになるということが言えます。 欧州は色々なものを受け入れるので、日本で「欧州ではこのようなものはだめだ」などと考え ずに持ってくれば流行るかもしれません。 ●現在、パリを中心にポップカルチャーを取り扱うお店なども増えてきていますが、マンガの出版社など はやや過当競争になっているようです。この市場で、日本の会社がフランスで事業を行うには、今後 どのような分野が有望でしょうか。 マンガ、アニメに関連するグッズ、それをイメージするようなものや伝統的なものも良いと思 います。ジャパンエキスポで、羽織店が出展しましたが、50 着が即完売でした。 コスプレ衣装店もフランスに出店したいのですが、版権料が入っており単価が高いので、購買 層の購買力を価格が上回ります。しかし、数を絞って人気キャラクターのものだけにして、フラ ンスだけで考えず欧州をひとつのマーケットと見れば、市場は大きいです。例えばパリに出店し、 WEBで欧州主要言語に対応した販売をしつつ、ドイツやスペインのイベントに出展していけば 成功するのではないでしょうか。 本は言語の問題があり、動かしにくいのですが、服や小物、音楽などは各国共通ですし、上手 く欧州各国間の流行のずれを利用すれば、複数年同じ商品を売れるというメリットもあります。 ●経済産業省では、国際的に評価の高い日本のコンテンツ産業を新たなリーディングインダストリーと して国際的に推進していこうという政策がありますが、それと貴社の業務との連携はどのようにお考 えでしょうか。 JETROから 2005 年に海賊版からコンテンツを守るための実態調査を受託しました。これ はマンガだけでなく商標権も含むもので、各国税関で検査ができるようWTOの議題に入れるた めの準備調査でした。最近は権利関係もしっかりしてきましたし、DVDの海賊版はまだありま すが、減ってきています。FNACやVirginには、マンガやアニメのコーナーはあります が、J−POPは市場が無く権利者がいない状態で、かなり権利フリーになっています。日本の 大手は海賊版があるとジャパンエキスポなどに出展してくれないので、排除していかねばなりま せん。 最後に 1 社での進出は難しいかもしれませんが、何社か合同で 1 年から 1 年半くらい市場調査も 兼ねて進出する低リスクで負担の少ない方法が良いでしょう。市場がまだ未成熟なため、新しい 情報に飢えています。第 1 号になる可能性もある早いもの勝ちの市場と言えるでしょう。
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