企業において、E メールは必要不可欠なビジネスの中核システムになっている。また、ビジネスにおいて何らかの問題が発生 した場合において、E メールデータは、証拠となり得る電子データとなる。それゆえに、E メールデータの削除が、近年不可 能となってきており、この E メールデータの保存について何らかの手法を取り入れなければ、システムリソースへ大きな影響 を与える要因ともなっている。ベリタスソフトウェアはこうした状況を受けて、E メールのアーカイブ(格納)に効果的な 「VERITAS Enterprise Vault」を提供している。本稿では、E メールアーカイブの重要性とそれに対するベリタスソフトウェア の取組み、「VERITAS Enterprise Vault」の製品解説、同製品の事例を紹介する。 企業活動の証拠となる E メールデータ管理には データアーカイブ ソリューションが最適 に戻せるように待避させたデータで あり、常に最新の情報に保っておく ことが重要となる。一般的に世代管 る。メッセージング サーバーやフ 理をもとに運用されており、最新の ァイル サーバーでは、常時利用さ 世代は過去の世代データへの上書き れているデータは全体の 20%、利用 が可能となる。 情報ライフサイクル管理を基にし されていないデータが 80% を占め ・アーカイブデータ たデータアーカイブ ソリューショ るといわれている。利用されない データ自身変化することなく長期 ンが注目されている。その理由は、 データの保存は、単にストレージ の保存保管が必要。上書消去が不可 主に次の3つがある。 を専有するだけでなく、変更のな 能となる企業において重要となるデ 1つ目の理由として、米国で大手 いデータもバックアップしなけれ ータ。 企業による不正会計などを契機に、 ばならず、管理コストの増大を招 新しい法律や規制が制定されてい くことになる。 データアーカイブ ソリューションが 注目される 3 つの理由 日本ではこうしたアーカイブの手 法が浸透しておらず、大半がバック る。具体的なものとして、証券取引 3つ目の理由として、Serial に関する規制や企業改革法、医療保 ATA 技術の登場により、ディスク 険の責任に関する法律などがある。 ストレージの低価格が加速してい これを受けて我が国でも、個人情報 る。このため今までテープに限ら 保護法の施行が実施され、これらの れていた大容量のデータアーカイ 医療関連や決算情報など、重要度 規制では、データを保存するだけで ブ装置として、より管理が容易な が高く不変である要素を占めるのは なく、確実な廃棄や、一定期間デー ディスクを利用することが現実的 間違いなく E メールデータである。 タが検索可能であることや、改ざん になってきた。 客先からの反応などが変わらず、企 されていないことの証明を義務付け ている。個人情報保護法の施行によ アップ手法を採られている。 E メールアーカイブの重要性 業活動の証拠として残す必要があ バックアップとアーカイブの違い り、E メールを媒介としたデータの る。 しかし前述のように我が国のデー 流失を防ぐために、メールの送受信 バックアップとアーカイブの相 タ管理は、アーカイブとバックアッ に関する履歴データの保存などが必 違点について、いまだ IT 管理者は プのデータが混在しているのが現状 要となっている。 曖昧な取扱いをしている。 である。そこで、E メールのデータ ・バックアップデータ を一つの手法で取り出せること、ダ 2つ目の理由として、企業におけ る E メールのデータ量の急増であ 84 万が一の障害時にデータを現状 ウンタイムを少なくすることの 2 つ 2005 Vol.42 No.5 照)。また、アーカイブするデータ、 100.0% 90.0% アーカイブ先のメディア、時間、方 80.0% 法などの一定の基準を策定できる機 70.0% 能も必要となる。ポリシーベースの 50.0% 管理は、アーカイブ プロセスの自 30.0% 60.0% 40.0% 20.0% 動化を可能にし、業務効率の向上に 10.0% 0.0% つながる。また、アーカイブ ソリ 2001 データベース ューションには、E メール以外の構 2003 2004 エンジニアリング/開発 国内ストレージ利用実態調査、N=202 Source:IDC Japan. 2005 造化されていないデータにも、対応 承認:IDCJ-05-0381 図 1 アプリケーション別データ保有量の伸び率 できることが求められている。 ベリタスソフトウェア㈱ エンタープライズ営業本部 2002 Eメール 「重要なのは、いかなる企業でも 長期保存が的確に行えることとデー 管理するデータ毎に、適切なアーカ タが改ざんされないことが重要とな イブ ポリシーを策定し、システム ります。」(ベリタスソフトウェア㈱ に反映させることです。構造化され エンタープライズ営業本部 第二営 が、ビジネスにおける E メールデー ていないデータに対しては、ハード 業部 シニアアカウントマネージャ タの汎用性を考えることが重要とな ディスクのビット単価が数年前と比 ー 石田 喜明氏) ってくる。E メールをアーカイブす 較し、安価になったとは言え、不必 るメリットとして、次のようなもの 要なデータをディスク上に長期に渡 がある。 り放置する事は、万が一のシステム ・ハードウェアリソースの有効活用 障害時におけるシステムの復旧時間 ベリタスソフトウェアの製品群の ・ E メール運用管理作業軽減 に影響を与えるだけです。また、バ 大きな特徴は、図 2 に示すように、 ・ E メールデータのバックアップ作 ックアップに必要となるリソース データアーカイブだけでなく、スト (Tape、ハードディスクの容量等)、 レージリソース管理やデータの保護 運用管理コスト(バックアップ時間 まで企業における重要なデータすべ ンアップ時における作業軽減 の短縮,管理対象となるリソースの てをカバーできるヘテロジニアスな ・コンプライアンスに対応可能 極小化を実現)に対しても悪影響が 環境が実現できることにある。 第二営業部 シニアアカウントマネージャー 石田 喜明氏 業軽減 ・ E メールソフトウェアのバージョ ベリタスソフトウェアの製品で ヘテロジニアスな環境を実現 でてしまいます。これらの、デメリ E メールのアーカイブを 支援するソリューションの必要性 ットを解消 する上でも E メールアーカイブ ソリューシ 構造化され ョンにはリスク回避を行う管理ソフ ていないデ トウェアが必要である。企業の E メ ータに対し ール管理を担当している場合、保存 てもアーカ している E メールの増加や、古いデ イブが必要 ータのアーカイブにも対応しなけれ となります。 ばならない。IDC の調査によれば、 E メールデー 企業が保有する E メールのデータは タの管理に 年々増加しているという(図 1 参 おいては、 ヘテロジニアス環境におけるオープンなソリューションの提供 データアーカイブ Enterprise Vault べリタスソフトウェア NetBackup Backup Exec VxFS Volume Manager Volume Replicator 2005 Vol.42 No.5 データの保護 Cluster Server ストレージソース管理 CommandCentral Storage Exec 図 2 ベリタスソフトウェアのアーカイブ ソリューション 85 できる事に加えて、圧縮機能とシン 「VERITAS Enterprise VaultTM」の 優れた機能と特長 グルインスタンス ストレージ機能 によって、複数のサーバーで運用し ている場合に比べ、トータルのデー バックアップ/アーカイブ/ストレ ージ管理を統合して非構造化データ を効率的に活用 ーカルに存在するデータか、ボール タ量を削減することが可能である。 トのデータかをユーザーは意識せず 【シームレスな情報共有】: Enterprise Vaultは、Exchange サーバー に利用することができる。 【マイグレーション】:個人のデス のバージョン アップグレード時に導 クトップやファイルサーバー上に保 入すると非常に効果的である。 柔軟性の高いソフトウェアベースの 存しているPSTファイルを、ボール Enterprise Vaultは、Exchange サー アーカイブ フレームワークにより、 トに移動し、一元管理することで、 バー 5.5、2000 および 2003 をサポー Microsoft Exchange サ ー バ ー 、 管理コストを削減し、予期しないデ トしているので、旧バージョンを利 SharePoint Portal サーバー、IM、 ータの喪失・漏洩を防ぐことができ 用中のユーザーのメッセージを、ま ファイルサーバー環境内のデータの る。さらにシングル インスタンス ス ずボールトに移行することができる。 検出を可能にすると同時に、ストレ トレージ機能により、複数のPSTフ 後で Exchange サーバーを 2003 にア ージ コストの削減と管理の簡素化を ァイルに含まれる同一のデータのコ ップグレードしても、ユーザーはボ 実現している。これにより、コンプ ピーを 1 つだけ保存するので、トー ールトのメッセージにシームレスに ライアンスへの対応やデータ検出、 タルのストレージ容量を大幅に削減 アクセスすることができる。稼働中 ストレージの最適化、運用効率の向 することができる(図3参照)。 の Exchange サーバーへの負荷が最 VERITAS Enterprise Vault は、 上、知識開発、マイグレーションと 【効率的な運用】: Enterprise 小限に抑えられるため、移行の障壁 統合化といった様々な問題に付随す Vault を使うと、1台の Exchange を大幅に下げることが可能となる。 る、ビジネスと IT のリスクを軽減 サーバー が実際に保持するデータ この他、強力な検索エンジンを搭 することができる。以下、具体的な 量が大幅に削減できるので、複数の 載しているので、ユーザーはアクセ 機能とメリットについて紹介する。 Exchange サーバーを統合すること ス権があるすべてのデータに対し 【ストレージ機能の最適化】: が可能になる。統合によって運用管 て、詳細な条件検索をすることが可 理が容易になり、管理コストが削減 能である。 VERITAS Enterprise Vault は、 Microsoft Exchange サーバーをサ Enterprise Vault サーバー ポートしている。Inbox の古いメッ セージを、ボールトに移動し Inbox ボールト (例:S-ATAディスク) デスクトップクライアント のサイズを最適化できる。Inbox の Exchange サーバー サ イ ズ を 削 減 す る こ と で 、 インフォメーションストア Exchange サーバーの負荷を低減し PSTファイル パフォーマンスを向上させる。ボー ルトに移動したメッセージはショー トカットに置き換わり、ユーザーは PSTファイル PSTファイル ショーカットを使って、いつでもア クセスすることができる。リトリー ブはユーザーから透過的なので、ロ 86 ファイルサーバー PSTファイル 所有者を特定し、個人フォルダ ( PSTファイル)をボールトに移動 デスクトップやファイルサーバーに あるPSTファイルを統合管理 シングルインスタンス(同一メッセー ジは1つのみ保管)するので、 スト レージ容量が削減できる 図 3 Enterprise Vault の PST マイグレーション機能 2005 Vol.42 No.5 「VERITAS Enterprise Vault」の様々な事例 事例 1 : Libertel-Vodafone E メールのデータ管理のために Exchange と Enterprise Vault を並行して稼働 ボーダフォン グループの傘下にある、オランダの携 Libertel-Vodafone では現在、社内の主な業務に係わる 帯電話事業大手の「Libertel-Vodafone 」は、300 万人の 350 人のユーザーに Enterprise Vault を配備しており、 加入者と 2,000 ヵ所以上の送受信局を有し、現在オラン オランダ中の 4,000 人の担当者全員向けに某社のハード ダの国土の 99.4%を網羅している。同社は E メールが ウェアをロールアウトしている。Enterprise Vault とベ 日々の事業運営のバックボーンの一部となっていたが、 リタスソフトウェアの専門知識が結びつくことにより、 ユーザーの保存するメッセージの増加により、システム Microsoft Exchange の利用に対して、非常にスケーラブ 管理者がそのメッセージフォルダの消去に多くの時間を ルで信頼性の高いシステムとなっている。Libertel- 費やしていた。そこで同社は、社内の E メールをサポー Vodafone が年々成長を遂げるに従い、Enterprise Vault トするため、ベリタスソフトウェアの Enterprise Vault は、データ量を削減し、ユーザーの要件に応じてより適 に注目した。Libertel-Vodafone 社は 1 年間 Exchange と 切な計画を立てるために非常に役立っている。また、障 Enterprise Vault を並行して稼働し、その後前システム 害が発生したときの Exchange のバックアップおよびリ から 1 ヵ月で移行することができた。同社はこの機会に ストア時間が短縮されたのも Enterprise Vault が活用さ Exchange と Enterprise Vault の両方についてユーザー研 れたからこそである。 修を実施している。 事例 2 : Sony UK Ltd ソニー UK 社に Enterprise Vault をパイロット導入 Sony UK Ltd は 、 世 界 で 8 万 人 以 上 、 イ ギ リ ス で そこで 2001 年始めに、Sony UK Ltd の IT 部門は徹底 1,200 人の従業員を擁し、イギリス事業部門は、同社の 市場評価に乗り出し、ベリタスソフトウェア製 販売およびマーケティングを手がけ、同社のすべてのコ Enterprise Vault を含む、3つのメール管理ソリューシ ンシューマ商品の販売およびサポートのほか、IS サポー ョンを検討することにし、4ヵ月間という短期の試験導 トを行っている。 入を実施した。 このような大規模な会社では、E メールが全社的に社 Sony UK Ltd が Enterprise Vault を選んだ理由は、エン 内及び社外コミュニケーションの不可欠な手段となって タープライズレベルのデータをセキュアに処理し、総合 いる。しかし、E メールや添付文書のボリュームとサイ 的なストレージの要件を縮小できるという点にあった。 ズの両方が急速に拡大していたため、UK 社 IT 部門では、 試験導入後は配備がスムーズに進み、ユーザーから完全 E メールシステム内に保存されている顧客データと企業 にトランスペアレントで、サービスを中断させることが データを管理するより適切な方法を見出し、PST ストレ 全くなかったという。 ージに伴うリスクをなくして、Microsoft Exchange の総 現在では、Enterprise Vault がコンシューマ事業部の 合的な信頼性を向上させたいと考えていた。さらに、添 1,200 人に配備されており、PST 専用のサーバーを1台 付文書の有無にかかわらず、E メールそのものもサイズ 再配備し、ファイル サーバーとして社内全体での情報 が拡大しているという問題も発生していた。 共有が可能となった。 ●お問い合せ先 ベリタスソフトウェア㈱ ベリタスホットライン Tel : 0120-402-665 2005 Vol.42 No.5 URL : www.veritas.com/jp 87
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