IMF 支援プログラムの下での最脆弱層の保護に向けて IMF 支援プログラムの下、IMF は社会扶助をはじめ、社会支出の保護や増額で各 国政府を支援しています。特に、社会の最脆弱層への改革`措置の影響を緩和する、 ソーシャル・セーフティ・ネット・プログラムへの支出の拡大と、対象の絞込み の向上に向けた施策を推進します。以下は、IMF 支援プログラムで、財政上の観 点から持続的であるのみならず高い費用効果をもたらす手法により、社会支出の 保護を試みている、世界の主な地域で実践しているプログラムの一例です。 アフリカ:ルワンダ 当局は、包摂的成長を継続的に重視してきました。これは、貧困及び不平等の大幅な是正 (過去 10 年で貧困は 57%から 39%、ジニ係数は 0.52 ポイントから 0.45 ポイントまで低 下)に寄与しました。当局は、農業の生産性の改善、金融包摂の促進、及び医療と教育へ のアクセスの改善といったプログラムで成功を収めてきました。たとえば、過去 10 年間 で、普通預金口座を持つ家計は 19%から 54%、識字率は 77%から 86%まで上昇しました。 ルワンダは、男女平等の促進で地域のリーダー的立場にあります。こうした取り組みを、 IMF との「シグナル発信」のプログラムが支援してきました。 当局と IMF は、ルワンダが貧困層のための支出を対 GDP10%超まで伸ばすことができる よう、財政の余力を作り出すため連携しています。より多くの国内資金の確保が、ドナー 資金の代わりとなり当局のドナーへの依存を減らすという目標の達成に寄与することにな ります。 当局と IMF スタッフは協力して、国際融資が困難で一次産品価格が値下がりしているなか で、当局の野心的な投資プログラム(貧困世帯の水と電気へのアクセスの改善など)の資 金手当てをどのように継続していくことができるかについて検討しています。 アジア太平洋:ソロモン諸島 「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成が、当局の開発課題の最優先事項です。今後発表 される「国家開発戦略(2016~2035)」で当局は、持続的かつ包摂的な経済成長、貧困緩和、 及び質の高い社会サービスへのアクセスなど、具体的な開発目標を掲げています。当局の 5 カ年中期開発計画(2016~2020)は、貧困削減を極めて重視しており、この目標のために合 計で対 GDP 比 2%の資金を振り分けています。また、医療、教育、人的資源の開発に対 GDP8%の資金を割り当てています。 2012 年 12 月に承認された 3 カ年の「拡大クレジット・ファシリティ (ECF)」取極の下での IMF 支援プログラムのなかで 、当局は、公的資金の説明責任と公的支出の質の強化を目指す 公共財政管理改革を加速化させました。また、基本的な社会サービスへのアクセスを確保す るため、予算配分を改善しました。社会支出の維持を支えるため、IMF 支援プログラムには、 政府資金による医療及び教育支出の定量的な目標が含まれています。 欧州:ギリシャ 2014 年に、最も困窮している人々に一度限りの社会配当金を配給しました。 ギリシャ当局は、世界銀行の支援のもと、全ての社会保障プログラムの包括的見 直しを行うことにコミットしています。これは、重複しているものを合理化しタ ーゲットの絞り込みを改善することを目的としています。見直しにより確保され る資金は、国レベルでの最低所得補助プログラムの実施に向けた資金の確保に有 益でしょう。試験的に実施されたミーンズテストを伴った支援プログラムは最近 終了しました。 ギリシャは、若年失業者や世帯の全構成員が失業状態にある世帯を対象とした雇 用プログラムを立ち上げるとともに、欧州連合(EU)の構造基金の支援を受けて、 失業の長期化対策として、公共社会雇用プログラムや研修プログラムの拡大に努 めています。 ギリシャは、医療に関する歳出削減では主に医薬品の価格を抑える事に焦点を当 てています。この面において 2008 年ギリシャは OECD の中で 1 人あたりの支出 が最も多い国の一つでした。同時に、医療券や貧困者向け小冊子の配布、保険未 加入者の皆保険制度の導入など、無料の医療サービスへのアクセスを確保するた めいくつかの計画が実施されています。 ラテンアメリカ及びカリブ諸国:ハイチ 2010 年初めにハイチを襲い、破壊的な被害をもたらした地震の後、IMF は大災害後の債務救 済で 2 億 6,800 万ドル(対 GDP 比 4%)を承認し、ハイチが財源を確保し特別な復興ニーズに 対応できるようにしました。また、IMF は 2010 年 7 月及び 2015 年 5 月に承認された ECF の 継続的支援プログラムの下で譲許的融資を続けています。 債務救済資金の一部で、手ごろな公営住宅を提供するとともに、公的支出の質の強化を狙 って制度面の能力の構築が行われています。 社会支出の増額を実施するため、IMF 支援プログラムには健康、教育、農業を含めた貧困 削減を促進する支出の定量的な目標を含めています。この対策により社会支出は 2009 年 から 2014 年の間に倍増し、貧困対策支出は対 GDP 比約 4%に達しています。 IMF は、同プログラムとの関連で取り組まれた他の措置も支援しています。例えば、 (i) 6 ~12 歳の子供全員を 4 年間学校に通わせるための、ハイチ政府出資による包括的な教育 プログラム(毎年約 25%)、 (ii) ポルトープランスの非常に貧しい地区で、女性を対象と した条件付き現金移転計画の実施、(iii) 旱魃の影響を軽減し農業開発推進する、貧困地区 での食糧生産・配給計画などを支援しています。 中東及び中央アジア:ヨルダン ヨルダンは、3 年間の SBA 支援プログラムの下、幾つかの措置を講じました。なお、2012 年 8 月に承認された同プログラムは、2015 年 8 月に終了しています。 社会的に許容される方法で電気料金の改革を実施しています。2013 年 8 月中旬に実施 された電気料金の値上げでは、全家庭が値上げを免除されました。また、2014 年 1 月 及び 2015 年 1 月の値上げの影響は富裕世帯に限られました。 中小企業や低所得者の融資へのアクセスが改善しています。信用調査機関が認可され業 務を開始しました。また、担保付融資に関する新法が議会に提出されています。世界銀 行及び欧州復興開発銀行は、中小企業の資金調達を促進するための融資を承認しました。 ヨルダン中央銀行が金融包摂のための戦略に着手しました。 2012 年 11 月に、一般燃料助成金の撤廃の社会的な影響を軽減するために、現金移転プ ログラムが導入されました。原油価格が 1 バレル 100 ドルを超えた場合に支給される現 金は、年間一人につき約 100 米ドルに達しています。支給対象は、1 家族最大 6 人まで に制限されています。当初は、年収が 1 万ヨルダンディナール(14,700 米ドル)未満 の全世帯(人口の 70%)に、この現金を受け取る資格がありましたが、現在は、その 中の貧困層により適切にターゲットを絞るため、受給の適格基準が拡大され資産(土地、 車や不動産の所有権)を含むようになりました。 この情報は、2016 年 3 月現在のものです。
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