ヘイからのお知らせ 第6回 人事マネジャー養成コース 開催のご案内 企業に求められる仕事の分野で、いま最も大きく変わっているのは人事部門かもしれません。グローバ ル 化 、ダイ バーシティ、ワークライフバランスなど、新しい課題が次々と現れ、かつての経験知だけでは対応できません。 そこでヘイグループでは、こうした変化に対応できる人事戦略、リーダーシップ、グローバル化対応 などに必要な スキル、さらにはノウハウを体系的に学んでいただけるコースをご用意しました。 テーマ Vol.12 No. 1 若手∼中堅部員の基礎力、実務力向上 のプラットフォームとして、また、人事担当者同士の情 報交換の場として、継続的にご利用いただいている企業様も多数ございます。ぜひこの機会に ご参加ご検討くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。 2011 Contents 開催期間 2011年 6月24日 (金) ∼9月30日 (金) 全8回 p.2 ・開 催 場 所: 弊社オフィス( 東京 表参道駅 徒歩3分) グローバル企業ソニーの リーダー像 必要な人材を いかに確保、 育成していくか ※参加人数によっては近辺の会場に変更いたします。 ・主な参加対象:各種企業において人事、または人材開発業務に従事されている方/各種企業の営業・事業部門で、 人事・人材開発業務に従事されている方/必ずしも人事部門におられなくても、本コースにご関 心を持っていただいた方 ― ※同業からの参加はご遠慮願います。 ・参 加 費 用:1社より1名様でご参加の場合 29万4000円(税別28万円) 1社より2名様でご参加の場合 54万6000円 (税別52万円) ※1回単位でのご参加はご遠慮ください。 いままでの修了生の方々の声もご覧いただけますので、 「人事マネジャー養成コース」で検索していただき、オンラインでお申し込みください。 シリーズ/経営イノベーション対談 8 エレクトロニクスやエンターテインメント分野で屈指のブランド力を持つソニー。 そのビジョン実現を担う次世代、次々世代人材はどのように育成されているか? 青木氏 「組織が大きくなると異部門の リーダー交流も重要に」 http://www.haygroup.com/jp/ 青木 昭明 p.8 ソニーユニバーシティ 学長 高野 研一 (株)ヘイ コンサルティング グループ 代表取締役社長 先端企業ケーススタディ30 大胆な事業再構築に成功した フィリップスの人材活用戦略 ヘイグループは1943年に米国フィラデルフィアで創設され、過去60年以上にわたり人事・組織に関わるコンサルティングを展開し てまいりました。 ヘイシステムはフォーチュン1000社の過半数以上でも採用され、 報酬制度の世界標準となっております。現在 は、 世界50ヵ国近くに86あまりのオフィスを構え、2600人以上のコンサルタントを抱える世界最大の人事経営コンサルティング 会社として広く認知されております。 フィリップスが進めるグローバルな戦略的経営改革を担ってきた人材育成、 組織活用の あり方とは?さらなる経営改革を支える人材マネジメント戦略とは? 日本支社は1979年に東京に開設され、各産業界を代表する数多くの日本企業や在日外資系企業に対して、 人事制度の改革、人材能 木本 正之 人事本部長 株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパン 力の開発、報酬制度の設計のみならず、企業変革のアーキテクトとして各種コンサルティング・サービスを提供してまいりました。 木本氏 21世紀に入り、ますます複雑化する人事・組織の課題解決に真正面から取り組んでおられるマネジメントの皆様に対して、最も頼 れるビジネス・パートナーとして、今後とも満足度の高いサービスを提供していきたいと考えております。 「人材マネジメントでビジネスを ドライブすることが、我々人事部 門の役目です」 p.12 HAYマネジメントセミナー 日本企業グローバル化の鍵 グローバル・タレントマネジメント ― グローバル人材を適切に配置・活用するための人材アセスメントやトレーニング、報酬政策など 企業のグローバル化に求められる施策を支援するヘイグループのサービスをご紹介します。 ヘイグループのニュースレターは、 そのとき どきに求められる変化や進歩について、 さま ヘイグループ 高野 研一 ざまな企業とご一緒に学び、分析し、提案し てまいります。 小さい媒体ですが、多くの企業の皆様とと ● Hay Group Newsletter Vol.12 No.1 2011 ● 2011年6月発行 ●編集協力(有)MGI ●撮影 大澤 誠 ●印刷(株) ティー・プラス ●発行人 浅川 港 Hay Group 2011( 本誌記事・写真の無断複写・転載はご遠慮ください) もに、 ビジネスの革新を通じて社会に貢献す る一助でありたいと考えております。 p.16 ヘイからのお知らせ + グローバル化担当チーム 2011 8 1 グローバル企業ソニーの リーダー像 ― 必要な人材を いかに確保、育成していくか ソニーユニバーシティ 学長 青木 昭明 (株)ヘイ コンサルティング グループ 代表取締役社長 高野 研一 行っています。 なぜ重要か。これは私の考えですが、ソニーの ユニバーシティの一番の目的は、世界中に17 万 最終的な目標は「世界中のお客様に最高のエンター 人近くいる社員のリーダーを育てることです。現 テインメントを提供する」ということに尽きます。 状を見ますと、役員クラスはそれぞれの領域で立 それを提供するためにはコンテンツも重要ですし、 派な業績を残してきた人間が上がってきています。 ハードウエアも必要です。そして、過去にはそれ 業績を上げた人間が上に行くのは当たり前のこと がスタンドアローン (それぞれ独立して存在する状 なのですが、そういった人たちはいろいろな意味 態) だったのに、いまでは有線や無線でネットワー で視野を広げる必要があります。 クされている。ソニーのようにエンターテインメ ントを一手に担っている会社というのは、世界に ありません。ですから次世代のトップになる人には、 ソニー全体のビジネスについて理解してもらわな ければ困ります。そこでユニバーシティではお互 いに知り合い、さまざまな分野について理解する 場の提供を行っています。 青木 昭明(あおき てるあき) 1964年東京大学工学部卒業。1970 年ノースウェスタン大 学 材 料 科 学 科 Ph.D.取得。同年、 ソニー株式会社入社。 1988年12月R&D戦略グループ本部長。 1989年6月取締役。1990年8月記録 メディア事業本部長。 1996年6月常務 取締役。 1997年6月執行役員上席常務。 1998年4月ソニー・エレクトロニクス・ インク (米国法人)社長兼COO。2003 年6月ソニー株式会社業務執行役員 専務。2005年4月ソニーユニバーシティ 学長、現在に至る。 広範な事業領域を横断する ヨコの“つながり” をつくる 高野 具体的なプログラムについて教えていただ けますか。 青木 本年の3月7∼9日に第2層に対するセッショ ンがありましたので、そのプログラムについてお 高野 研一 話ししましょう。 去年の10月に一週間、エレクトロニクスのみなら エレクトロニクスからエンターテインメントまで、幅広い事業分野を有するソニーグループ。その 現在、ソニーの会長で社長兼CEOを担っている ず、映画、音楽、ゲーム、 ソニーエリクソンなどの事 リーダー層の育成を支えているのがソニーユニバーシティだ。学長の青木昭明氏はソニーの ハワード・ストリンガーが日本人ではないように、 業分野から、 日本だと事業部長クラス、 グローバル R&D部門のトップを務めたほか、米国法人のトップという重責も果たした。こうした経験から、 必ずしもトップは日本人にこだわっているわけで だと小さな国のプレジデント、あるいは大きいとこ はありません。トップというのは、自分が歩んでき ろのバイスプレジデント25人をアメリカのUCLA(カ たエレクトロニクスやエンターテインメントといった専 リフォルニア大学ロスアンゼルス校) に集めました。 門領域に加えて、ソニー全体のビジネスの理解を このプログラムでは最初に参加者を5 つのグルー ンメント、さらに 90 年代の半ばにはゲームへと 深めなければなりません。また、ソニーのステーク プに分けて、それぞれをマイクロソフトやサムソン、 ビジネスが広がっています。ソニーユニバーシティ ホルダーに対してどういうメッセージを出すべきか、 アップルなどの競合会社に見立てます。そして、競 では、そんな多様化に対応できる次世代のマネ ソニーが将来どういう方向に向かうべきかなどと 合になったつもりで対ソニーの戦略を2日間ほどか 高 野 まず、ソニーユニバーシティで、これか ジメント人材を育てるという役割を担っています。 いうことに関して、非常に広範な知見が必要となり けて立てるのです。そういう視点で見ることで、 ソニー ら育てていこうとしている人材像をおうかがい ユニバーシティのプログラムはいくつかありま ます。そういうところに対して目を見開かせるとい の強み、弱みをはっきりさせようとするわけです。 したいと思います。 して、第1層は次世代の経営陣を支える人材の育成。 うのが、第1層に対するユニバーシティの役割です。 3 日目にはメンバーを入れ替え、一つのチームに 青木 私どもの若いころのソニーはエレクトロ 第 2 層は、日本でいう事業部長、海外でいうバイ 高野 第 2 層、第3層についてはいかがでしょうか。 5 つの競合各社を担当したメンバーが全員含まれる ニクスが中心でしたから、複数の製品ラインナッ スプレジデント、あるいは小さな地域だったらプ 青木 いろいろな地域の、いろいろなビジネス分 ように編成し直します。そこでいよいよ「ソニーに プがグローバルに広がっていたとはいえ、ある レジデントを担うくらいの次々世代の人材の育成。 野で活躍している人たちを集めて研修を行います。 はどのような課題があり、どのような戦略を立て 程度横の連携もわかるようなサイズでした。そ 第 3 層は、それより下のゼネラルマネジャークラ まだソニーが小さい規模だったころは仕事を通じ るべきか」を議論します。与えられるテーマは「イ れがいまは、地域的にもビジネスの多様化とい スが対象です。現在のところ第 1 層は日本人だけ ていろいろな地域や分野の人と知り合うチャンス ンターネットに関わるビジネスについて」など、チー う面でも非常に多岐にわたっています。もとも ですが、2 層目、3 層目は世界中で、しかもエレク が多かったのですが、いまは、意図的にいろいろ ムによって異なります。後半の3日間は、すべてこ とのエレクトロニクスのビジネスから、20 年ぐら トロニクスだけではなく、映画や音楽、ゲームな なところからメンバーを集め、同じ釜の飯を食わ の議論に費やしました。メンバーそれぞれが一つ い前にミュージック、映画といったエンターテイ どいろいろな分野から人材を集めてプログラムを せる機会を与えることも重要だと考えています。 の競合を知り尽くしているわけですから、競合各社 「世界中の人に最高のエンターテインメントを提供する」というソニーのビジョンを実現する にふさわしいリーダー育成を担う。井深、盛田両創業者と一緒に仕事をした多くの経験を持つ。 次世代から次々世代を担う マネジメント人材を育成 2011 8 1 グローバル企業ソニーの リーダー像 ― 必要な人材を いかに確保、育成していくか ソニーユニバーシティ 学長 青木 昭明 (株)ヘイ コンサルティング グループ 代表取締役社長 高野 研一 行っています。 なぜ重要か。これは私の考えですが、ソニーの ユニバーシティの一番の目的は、世界中に17 万 最終的な目標は「世界中のお客様に最高のエンター 人近くいる社員のリーダーを育てることです。現 テインメントを提供する」ということに尽きます。 状を見ますと、役員クラスはそれぞれの領域で立 それを提供するためにはコンテンツも重要ですし、 派な業績を残してきた人間が上がってきています。 ハードウエアも必要です。そして、過去にはそれ 業績を上げた人間が上に行くのは当たり前のこと がスタンドアローン (それぞれ独立して存在する状 なのですが、そういった人たちはいろいろな意味 態) だったのに、いまでは有線や無線でネットワー で視野を広げる必要があります。 クされている。ソニーのようにエンターテインメ ントを一手に担っている会社というのは、世界に ありません。ですから次世代のトップになる人には、 ソニー全体のビジネスについて理解してもらわな ければ困ります。そこでユニバーシティではお互 いに知り合い、さまざまな分野について理解する 場の提供を行っています。 青木 昭明(あおき てるあき) 1964年東京大学工学部卒業。1970 年ノースウェスタン大 学 材 料 科 学 科 Ph.D.取得。同年、 ソニー株式会社入社。 1988年12月R&D戦略グループ本部長。 1989年6月取締役。1990年8月記録 メディア事業本部長。 1996年6月常務 取締役。 1997年6月執行役員上席常務。 1998年4月ソニー・エレクトロニクス・ インク (米国法人)社長兼COO。2003 年6月ソニー株式会社業務執行役員 専務。2005年4月ソニーユニバーシティ 学長、現在に至る。 広範な事業領域を横断する ヨコの“つながり” をつくる 高野 具体的なプログラムについて教えていただ けますか。 青木 本年の3月7∼9日に第2層に対するセッショ ンがありましたので、そのプログラムについてお 高野 研一 話ししましょう。 去年の10月に一週間、エレクトロニクスのみなら エレクトロニクスからエンターテインメントまで、幅広い事業分野を有するソニーグループ。その 現在、ソニーの会長で社長兼CEOを担っている ず、映画、音楽、ゲーム、 ソニーエリクソンなどの事 リーダー層の育成を支えているのがソニーユニバーシティだ。学長の青木昭明氏はソニーの ハワード・ストリンガーが日本人ではないように、 業分野から、 日本だと事業部長クラス、 グローバル R&D部門のトップを務めたほか、米国法人のトップという重責も果たした。こうした経験から、 必ずしもトップは日本人にこだわっているわけで だと小さな国のプレジデント、あるいは大きいとこ はありません。トップというのは、自分が歩んでき ろのバイスプレジデント25人をアメリカのUCLA(カ たエレクトロニクスやエンターテインメントといった専 リフォルニア大学ロスアンゼルス校) に集めました。 門領域に加えて、ソニー全体のビジネスの理解を このプログラムでは最初に参加者を5 つのグルー ンメント、さらに 90 年代の半ばにはゲームへと 深めなければなりません。また、ソニーのステーク プに分けて、それぞれをマイクロソフトやサムソン、 ビジネスが広がっています。ソニーユニバーシティ ホルダーに対してどういうメッセージを出すべきか、 アップルなどの競合会社に見立てます。そして、競 では、そんな多様化に対応できる次世代のマネ ソニーが将来どういう方向に向かうべきかなどと 合になったつもりで対ソニーの戦略を2日間ほどか 高 野 まず、ソニーユニバーシティで、これか ジメント人材を育てるという役割を担っています。 いうことに関して、非常に広範な知見が必要となり けて立てるのです。そういう視点で見ることで、 ソニー ら育てていこうとしている人材像をおうかがい ユニバーシティのプログラムはいくつかありま ます。そういうところに対して目を見開かせるとい の強み、弱みをはっきりさせようとするわけです。 したいと思います。 して、第1層は次世代の経営陣を支える人材の育成。 うのが、第1層に対するユニバーシティの役割です。 3 日目にはメンバーを入れ替え、一つのチームに 青木 私どもの若いころのソニーはエレクトロ 第 2 層は、日本でいう事業部長、海外でいうバイ 高野 第 2 層、第3層についてはいかがでしょうか。 5 つの競合各社を担当したメンバーが全員含まれる ニクスが中心でしたから、複数の製品ラインナッ スプレジデント、あるいは小さな地域だったらプ 青木 いろいろな地域の、いろいろなビジネス分 ように編成し直します。そこでいよいよ「ソニーに プがグローバルに広がっていたとはいえ、ある レジデントを担うくらいの次々世代の人材の育成。 野で活躍している人たちを集めて研修を行います。 はどのような課題があり、どのような戦略を立て 程度横の連携もわかるようなサイズでした。そ 第 3 層は、それより下のゼネラルマネジャークラ まだソニーが小さい規模だったころは仕事を通じ るべきか」を議論します。与えられるテーマは「イ れがいまは、地域的にもビジネスの多様化とい スが対象です。現在のところ第 1 層は日本人だけ ていろいろな地域や分野の人と知り合うチャンス ンターネットに関わるビジネスについて」など、チー う面でも非常に多岐にわたっています。もとも ですが、2 層目、3 層目は世界中で、しかもエレク が多かったのですが、いまは、意図的にいろいろ ムによって異なります。後半の3日間は、すべてこ とのエレクトロニクスのビジネスから、20 年ぐら トロニクスだけではなく、映画や音楽、ゲームな なところからメンバーを集め、同じ釜の飯を食わ の議論に費やしました。メンバーそれぞれが一つ い前にミュージック、映画といったエンターテイ どいろいろな分野から人材を集めてプログラムを せる機会を与えることも重要だと考えています。 の競合を知り尽くしているわけですから、競合各社 「世界中の人に最高のエンターテインメントを提供する」というソニーのビジョンを実現する にふさわしいリーダー育成を担う。井深、盛田両創業者と一緒に仕事をした多くの経験を持つ。 次世代から次々世代を担う マネジメント人材を育成 2011 1 の出方などを予測しながら、 ソニーの現状や将来に 中だけにいてはなかなかお会いできないような方 青木 ソニーの最初の大きなビジネスというのは、 ついて俯瞰することができるわけです。 に1 時間程度のお話をしていただき、あとは質疑 トランジスタラジオです。あれも、日本と並行し 高 野 普通は「わが社はコンペティターとどう戦 応答や懇親会という形を取っています。たとえば てアメリカのマーケットを開拓しました。盛田さ うべきか」というあたりから入りそうですが、まず 危機管理をテーマに佐々淳行氏にお話しいただく んは10万台のオーダーを取りつけたけれども、ディ は相手の側からソニーを見て研究し、そこから戦 など、ソニーの分野とは全然違う方をお招きする ストリビューターから「ソニーブランドなど聞い 略を立てるという設定がユニークですね。 こともあります。 たこともないので OEM で」と言われたのを断り、 青木 一週間かけてこのプログラムに取り組んだ 高野 青木さんご自身がお話しされることもある ソニーというブランドをゼロから認知させるのに あとは、全員それぞれの国や地域に戻り、それぞ のでしょうね。 大変苦労したという話があります。そしてアメリ れの仕事に戻ります。そのかたわら、 メールや電話 青木 私は創業者の井深大と盛田昭夫に直接指導 カで成功したのち、ヨーロッパでも同じようにやっ などでやり取りを続けて課題に取り組みます。約 を受けた最後の世代です。ですから、主に第 2 層 ていきました。やはりグローバルという意識がつ 半年後、今年の3月ですが、 メンバー全員に来日し や第 3 層のプログラムの一環として、ソニーの普遍 ねにあったのでしょう。 てもらい、チームごとに再び顔を合わせて細部を 的な価値観を伝える話をすることがあります。た 高野 ソニーの方々は、辞めて外に出てもいろいろ 詰め、最終日にハワード・ストリンガーらに対して とえば、トリニトロンという、当時の世界の主流と な方面で活躍されていますね。結果的に、非常に プレゼンテーションを行いました。その結果、いく は異なるブラウン管の方式を唯一採用して、世界 大きいスケールの人材輩出企業になっていますね。 つか今後のソニーの戦略の一部になりうるような 第1位のテレビメーカーになったという事例を取り 青木 ソニーOBの会で「SOBAの会」というのが 意見が出てきました。 上げ、私が知っている裏話や苦労話を交えながら あるんです。15 0 人ぐらいのメンバーがいるので このプログラムのメリットは、トップからすれば ソニーのチャレンジ精神について説くというよう 人材の発見につながります。次世代までは把握して なことを行っています。 いても、その下の世代となると見えなくなってしま 高野 ユニバーシティで受講される方々の選抜方 いがちですが、そういう層がトップにプレゼンテー 法、いままでどのくらいの数の方が受講されてい ションする中で、これはという人材を知ることがで るかを教えていただけますか? きます。そのあとの懇親会で個人的な話もできま 青木 いずれの研修も、役員や上長、人事部門な すし、ソニー全体の一体感をつくりだすこともユ どで選抜の上、参加を確定しております。参加者 ニバーシティという場でできることの一つです。 の総数としては、2006 年からの累計で見ますと 先ほど申し上げたように、ソニーの目指す方向 350名以上参加しております。階層によって増減し 高野 御社は 19 72 年にサンディエゴに工場をつ てくるというのは大変貴重な経験ですから。 というのは「ハイクオリティなエンターテインメン ますが、第一層ですと10 名程度、第二層以下はそ くっています。普通だったらベテランの日本人の 高野 ソニーのそういう風土が、アメリカで受け トを世界中のお客様に提供する」ということで、そ れぞれ100名規模の累計実績となります。 工場長が出向きそうなところですが、現地の人を 入れられた理由なのでしょうね。青木さんは、ソ のためにはいくつかの分野のビジネスが横に連携 高野 かなりの実績ですね。ところで御社のような 割と早い段階から採用していたようですね。 ニー全体のR&D 戦略のかじ取りをするポジショ しなければいけません。ただし、それぞれの事業に グローバル企業では、 英語で不自由なくコミュニケー 青木 当時は貿易摩擦が問題になっていたころで、 ンも務められたとうかがっておりますが。 は競合があり、日常的にはその戦いに100%集中す ションできるというのは、ある種の最低条件になる アメリカのテレビメーカーは「アメリカで つくって 青木 私はアメリカに行って、セールスを 3 年やり、 ることが求められています。ですから、コンペティ と思います。そのあたりについてはいかがですか。 いたのでは日本の会社に対抗できない」と、メキ その後半導体の方に戻りました。ソニーは、日本 ターに勝つべく努力する一方で、ソニーはほかに 青木 日本人にとっては英語のバリアというのは シコなどの国外に工場を移しているところでした。 で最初に半導体を始めたのですが、私が担当する もたくさん事業分野があるということを頭の片隅 やはり大きいと思います。私はソニーに入る前に 5年 それなのにソニーはアメリカに工場をつくったので、 ころは、もうNECとか日立、東芝といった会社が に置いてもらいたいのです。ことによると、他事業 ほどアメリカにいたので少しは有利でした。ただし 非難や批判もあったようです。しかし、 その後ソニー 圧倒的に進んでおりまして、ソニーは遅れていま との結びつきで面白いビジネスが生まれるかもし 英語はコミュニケーションの手段であるので、少々 を除いた日本の全部のメーカーがテレビのダンピ した。19 82 年にオランダのフィリップスとCDを れません。そんなときにユニバーシティを通じた 不自由でも使ってやろうという好奇心が大きい人、 ング問題で訴えられました。そのような世の中の 開発したことで救われたところがあるのですが、 インフォーマルなネットワークが、非常に役に立つ あるいは自分が持っているものを伝えたいと強く思っ 潮流が視野に入っていたからこそ、アメリカに工 一時は大きなロスを出したこともありました。 のではないかと期待しています。 ている人ならコミュニケーションできると思います。 場をつくり、マネジメントも現地の人に任せたの その後、86年から3年間、R&D戦略を担当する 高 野 第 2 層や第3層のプログラムについては理 まさに盛田会長の英語がそうでした。ネイティ でしょう。そういう動向は、日本の中だけにいた ために初めて本社に来ました。 そのあとはコンシュー 解しました。第1層に対するアプローチはいかがで ブの人たちが、 「盛田さんの話は、非常にメッセー ら絶対にわかりません。盛田さんが世界中を飛び マーの事業やコンポーネントの事業、2000年前後 しょうか。たとえば先ほどのお話にあった「目を ジが明快で大変印象深かった」などと言われて、 回っていたからできたことなのだと思います。 にはアメリカ全体のエレクトロニクスを見るとい 見開かせる」という部分に対しては、どのような 私も嬉しく思ったことがあります。盛田会長は原 高 野 盛田さんや井深さんの中には、 「日本から う仕事をしました。当時、アメリカは 2 万 3 千人の プログラムを用意しておられるのですか。 稿を十分準備しているにもかかわらず、絶対にそ 世界に出て行く」というよりも、 「最初から世界中 従業員がいて、R&D、生産、セールスを備えた110 青木 次世代のマネジメントを担う第 1 層の対象 れを読み上げることはしない人でした。自分の頭 を相手にする」というユニバーサルな見方が強かっ 億ドルの規模の会社でした。ある意味、110 億ドル 者は10名で、非常に少人数です。そこで、ソニーの の中にストーリーがあって、それを自分が覚えて たのかもしれませんね。 の会社のトップの経験をしたことになります。 「ソニーユニバーシティは人材 育成の場であると同時に、 人材発掘の場としても機能 しています」 すが、ソニーの現役の社長や会長、役員も「ソバ いる範囲の言葉で相手の目を見ながら話をするの の会」に呼ばれて、和気あいあいと過ごします。彼 で、大変説得力があったのです。 らも辞めた当時はいろいろと思うところがあった のでしょうが、OBになってからソニーファンになっ たという人が多いようですね。我々も、 「外でそれ 日本の中で閉じないグローバル発想 こそソニーの原動力 なりに業績を上げて、もしまた戻ってきたいと言 うのなら、それも結構」という立場を取っています。 ソニーの中だけでは限度があるので、外を経験し 2011 1 の出方などを予測しながら、 ソニーの現状や将来に 中だけにいてはなかなかお会いできないような方 青木 ソニーの最初の大きなビジネスというのは、 ついて俯瞰することができるわけです。 に1 時間程度のお話をしていただき、あとは質疑 トランジスタラジオです。あれも、日本と並行し 高 野 普通は「わが社はコンペティターとどう戦 応答や懇親会という形を取っています。たとえば てアメリカのマーケットを開拓しました。盛田さ うべきか」というあたりから入りそうですが、まず 危機管理をテーマに佐々淳行氏にお話しいただく んは10万台のオーダーを取りつけたけれども、ディ は相手の側からソニーを見て研究し、そこから戦 など、ソニーの分野とは全然違う方をお招きする ストリビューターから「ソニーブランドなど聞い 略を立てるという設定がユニークですね。 こともあります。 たこともないので OEM で」と言われたのを断り、 青木 一週間かけてこのプログラムに取り組んだ 高野 青木さんご自身がお話しされることもある ソニーというブランドをゼロから認知させるのに あとは、全員それぞれの国や地域に戻り、それぞ のでしょうね。 大変苦労したという話があります。そしてアメリ れの仕事に戻ります。そのかたわら、 メールや電話 青木 私は創業者の井深大と盛田昭夫に直接指導 カで成功したのち、ヨーロッパでも同じようにやっ などでやり取りを続けて課題に取り組みます。約 を受けた最後の世代です。ですから、主に第 2 層 ていきました。やはりグローバルという意識がつ 半年後、今年の3月ですが、 メンバー全員に来日し や第 3 層のプログラムの一環として、ソニーの普遍 ねにあったのでしょう。 てもらい、チームごとに再び顔を合わせて細部を 的な価値観を伝える話をすることがあります。た 高野 ソニーの方々は、辞めて外に出てもいろいろ 詰め、最終日にハワード・ストリンガーらに対して とえば、トリニトロンという、当時の世界の主流と な方面で活躍されていますね。結果的に、非常に プレゼンテーションを行いました。その結果、いく は異なるブラウン管の方式を唯一採用して、世界 大きいスケールの人材輩出企業になっていますね。 つか今後のソニーの戦略の一部になりうるような 第1位のテレビメーカーになったという事例を取り 青木 ソニーOBの会で「SOBAの会」というのが 意見が出てきました。 上げ、私が知っている裏話や苦労話を交えながら あるんです。15 0 人ぐらいのメンバーがいるので このプログラムのメリットは、トップからすれば ソニーのチャレンジ精神について説くというよう 人材の発見につながります。次世代までは把握して なことを行っています。 いても、その下の世代となると見えなくなってしま 高野 ユニバーシティで受講される方々の選抜方 いがちですが、そういう層がトップにプレゼンテー 法、いままでどのくらいの数の方が受講されてい ションする中で、これはという人材を知ることがで るかを教えていただけますか? きます。そのあとの懇親会で個人的な話もできま 青木 いずれの研修も、役員や上長、人事部門な すし、ソニー全体の一体感をつくりだすこともユ どで選抜の上、参加を確定しております。参加者 ニバーシティという場でできることの一つです。 の総数としては、2006 年からの累計で見ますと 先ほど申し上げたように、ソニーの目指す方向 350名以上参加しております。階層によって増減し 高野 御社は 19 72 年にサンディエゴに工場をつ てくるというのは大変貴重な経験ですから。 というのは「ハイクオリティなエンターテインメン ますが、第一層ですと10 名程度、第二層以下はそ くっています。普通だったらベテランの日本人の 高野 ソニーのそういう風土が、アメリカで受け トを世界中のお客様に提供する」ということで、そ れぞれ100名規模の累計実績となります。 工場長が出向きそうなところですが、現地の人を 入れられた理由なのでしょうね。青木さんは、ソ のためにはいくつかの分野のビジネスが横に連携 高野 かなりの実績ですね。ところで御社のような 割と早い段階から採用していたようですね。 ニー全体のR&D 戦略のかじ取りをするポジショ しなければいけません。ただし、それぞれの事業に グローバル企業では、 英語で不自由なくコミュニケー 青木 当時は貿易摩擦が問題になっていたころで、 ンも務められたとうかがっておりますが。 は競合があり、日常的にはその戦いに100%集中す ションできるというのは、ある種の最低条件になる アメリカのテレビメーカーは「アメリカで つくって 青木 私はアメリカに行って、セールスを 3 年やり、 ることが求められています。ですから、コンペティ と思います。そのあたりについてはいかがですか。 いたのでは日本の会社に対抗できない」と、メキ その後半導体の方に戻りました。ソニーは、日本 ターに勝つべく努力する一方で、ソニーはほかに 青木 日本人にとっては英語のバリアというのは シコなどの国外に工場を移しているところでした。 で最初に半導体を始めたのですが、私が担当する もたくさん事業分野があるということを頭の片隅 やはり大きいと思います。私はソニーに入る前に 5年 それなのにソニーはアメリカに工場をつくったので、 ころは、もうNECとか日立、東芝といった会社が に置いてもらいたいのです。ことによると、他事業 ほどアメリカにいたので少しは有利でした。ただし 非難や批判もあったようです。しかし、 その後ソニー 圧倒的に進んでおりまして、ソニーは遅れていま との結びつきで面白いビジネスが生まれるかもし 英語はコミュニケーションの手段であるので、少々 を除いた日本の全部のメーカーがテレビのダンピ した。19 82 年にオランダのフィリップスとCDを れません。そんなときにユニバーシティを通じた 不自由でも使ってやろうという好奇心が大きい人、 ング問題で訴えられました。そのような世の中の 開発したことで救われたところがあるのですが、 インフォーマルなネットワークが、非常に役に立つ あるいは自分が持っているものを伝えたいと強く思っ 潮流が視野に入っていたからこそ、アメリカに工 一時は大きなロスを出したこともありました。 のではないかと期待しています。 ている人ならコミュニケーションできると思います。 場をつくり、マネジメントも現地の人に任せたの その後、86年から3年間、R&D戦略を担当する 高 野 第 2 層や第3層のプログラムについては理 まさに盛田会長の英語がそうでした。ネイティ でしょう。そういう動向は、日本の中だけにいた ために初めて本社に来ました。 そのあとはコンシュー 解しました。第1層に対するアプローチはいかがで ブの人たちが、 「盛田さんの話は、非常にメッセー ら絶対にわかりません。盛田さんが世界中を飛び マーの事業やコンポーネントの事業、2000年前後 しょうか。たとえば先ほどのお話にあった「目を ジが明快で大変印象深かった」などと言われて、 回っていたからできたことなのだと思います。 にはアメリカ全体のエレクトロニクスを見るとい 見開かせる」という部分に対しては、どのような 私も嬉しく思ったことがあります。盛田会長は原 高 野 盛田さんや井深さんの中には、 「日本から う仕事をしました。当時、アメリカは 2 万 3 千人の プログラムを用意しておられるのですか。 稿を十分準備しているにもかかわらず、絶対にそ 世界に出て行く」というよりも、 「最初から世界中 従業員がいて、R&D、生産、セールスを備えた110 青木 次世代のマネジメントを担う第 1 層の対象 れを読み上げることはしない人でした。自分の頭 を相手にする」というユニバーサルな見方が強かっ 億ドルの規模の会社でした。ある意味、110 億ドル 者は10名で、非常に少人数です。そこで、ソニーの の中にストーリーがあって、それを自分が覚えて たのかもしれませんね。 の会社のトップの経験をしたことになります。 「ソニーユニバーシティは人材 育成の場であると同時に、 人材発掘の場としても機能 しています」 すが、ソニーの現役の社長や会長、役員も「ソバ いる範囲の言葉で相手の目を見ながら話をするの の会」に呼ばれて、和気あいあいと過ごします。彼 で、大変説得力があったのです。 らも辞めた当時はいろいろと思うところがあった のでしょうが、OBになってからソニーファンになっ たという人が多いようですね。我々も、 「外でそれ 日本の中で閉じないグローバル発想 こそソニーの原動力 なりに業績を上げて、もしまた戻ってきたいと言 うのなら、それも結構」という立場を取っています。 ソニーの中だけでは限度があるので、外を経験し 2011 1 持つと考えています。 エレクトロニクスも含めて全部アメリカ人、あるい 1 社で全部やれるというわけではなくなったと思 高野 大きくなったがゆえに経験しにくくなった はヨーロッパ人になっています。しかし新興国では、 うのです。ソニーはこれだけ大きくなっていますが、 ことを補完する役割を、ユニバーシティが果たし やはりまだ日本人が社長をしています。これはソニー 何でもできるかというと、そうではありません。 高野 御社は、様々な分野でパイオニアとしてやっ ていくということですね。以前御社の方とお話を も含めた日本の会社のある種の限界であって、本当 今後はオープンプラットフォームということをつ てこられたわけですが、企業ユニバーシティにつ していたときに、 「ソニーという会社はエンターテ にグローバルに戦っていくためにはトップマネジメ ねに頭に置きながら、新しいものを開発していかな いても、かなり早くからやってこられました。日々 インメントの民主化をしてきた会社なんだなあ」 ントの現地人化を進めなければなりません。 ければいけないということは、教育によってだいぶ の業務も当然大事ですが、中長期の視点での成長 と感じました。音楽にしろ、映画にしろ、エレクト ソニーはいま、新卒採用の中で海外の人の割合 浸透してきたと思います。ただ、逆に「自分にない を支えるという面で、コーポレートユニバーシティ ロニクスの技術を使うことによって一般の人が気 を増やす取り組みを始めました。かつて、将来の ものは他から買ったらいいじゃないか」というこ は大きな役割を果たしていくと思います。 軽に芸術を楽しめるようにしたという点が、ソニー マネジメントを育てるために、MBAの学生を海 とばかり先行し、自分たちの本当の強みというもの 青木 そうですね。ただ、人はそれなりのポジショ が世界で称賛されている一つの理由だと思います。 外で採用したことがあるんです。彼らを日本に連 をなくしてしまったら、オープンな世界ではリーダー ンを与えられることによって成長すると考えてい 今後新興国を含めたマーケットの拡大とともに、 れてきて、日本語もある程度わかるようにしまし シップをとれなくなります。やはりビジネスです ます。ポジションの与え方にはいろいろなレベル 御社はそういう役割を今まで以上に担っていくこ たが、結局10 年ぐらいするとほとんどが辞めてし から、ギ ブ・アンド・テークです。どんな会社も があります。 とになるでしょうし、新しい技術の役割も大きい まいました。 貢献をしなければ、新しいシステムや商品、あるい たとえばソニーでも、日本もヨーロッパもアメ でしょうね。 ですから、非常に時間がかかりますが、ソニー はビジネスをつくることはできないのです。 リカも、組織があまりにも大きくなってしまった 青木 たとえば、電話の敷設にはずいぶん時間が では新卒から採用して育てていくという取り組み ソニーは毎年5千億円近くの研究開発費を使っ ため、若い人たちにそれなりの責任のあるポジショ かかりましたが、携帯電話は中国でもインドでもあっ を始めているわけです。ただし、人材が育つまで ています。そこで私がつねに言っているのは、 「5 ンを与えることができません。過去には新興国の という間に普及して、お互いにコミュニケーショ には 20年ぐらいブランクが空くわけで、その間、国 千億なりのお金で何でもかんでもやろうとしたら ような小さな国のマネジメントを、製品からセー ンできるようになりました。もちろん、情報もす を超えたジョブ・ローテーションが大事になります。 足りない。 ソニーがやる以上は、将来のソニーにとっ ルスまですべて任せるということで成長してきた ぐにやりとりできます。人間本来の欲求に「本当 こうした取り組みのスピードは、サムソンなん て必要で、なおかつ世界でトップになれるような 人材がいました。これからもそのような取り組み のことを知りたい」という気持ちが当然あるわけで、 かはものすごく早いですね。企業内の公用語を全 ところに投資しましょう」ということです。そうい を考えていきたいところなのですが、ソニーの場 それを人工的に止めることはできません。 部英語にするなどの取り組みが非常に素早く、日 う点では、ソニーは最終的な商品やシステムにつ 合どこもかしこも大きな組織になっており、若い よく、ソニーの製品は生活に必要なものではな 本の企業はだいぶ遅れを取っているのではないか いてのイメージを持ってビジネスをやってきた会 人にすべてを任せられるようなポジションが少な いと言われます。ただ、衣食住が足りてくれば、 という感じはします。 社なので、R&Dに関わるお金をどこに集中的に使 くなってきています。そのような部分を補うことが、 人の生活をより豊かなものにする製品やコンテン 高 野 多くの企業が、ここ 10 年ぐらいが勝負ど うかということは、割と明確に決められるのです。 ユニバーシティの一つの役割だと思っています。 ツが求められるのは当然です。我々はハードウエ ころと捉えています。そのためにはグローバル化 過去でいうと、たとえば先ほど言ったコンパク 私は、入社して最初の5年間ぐらいは開発的な アとエンターテインメントの両方をカバーできる のスピードが重要なのかなという印象を受けます。 トディスクなどの記録技術については世界一とな 仕事をしたのですが、5 年たったらいきなり「ア 会社として、将来に対する戦略を描いていきます。 青木 スピードを上げるには、 りました。一方、これからを考えると、エンターテ メリカでセールスをやれ」と言われ、3 年ほど販 それを描くのは現マネジメントであり、さらに次 トップマネジメントのリーダー インメントをあらゆる国でやるということになれば、 売を経験しました。そこで、 「最終的に “ 売ってな の世代が戦略を描いていくことになります。 シップや決断が非常に大きな役 ポータブル化が不可欠で、無線技術は外せないと んぼ ”がビジネスだ」ということを知り、その後 割を果たします。トップのリー 思います。それから、高品質なコンテンツがます いろいろな事業をやる上で大変いい勉強をしたと ダーシップというのは、企業の ます増えると、ビット数が上がっていきますので、 生き残り、勝つか負けるかとい 低ビットで送れてなおかつ品質の高い圧縮技術に うことに大きなインパクトを与 関しては、ソニーはいまでもナンバー1であるとの自 えていると思います。 負のもと、研究開発にお金をかけています。 ポジションが人材を育成し ユニバーシティが補完する 思います。 そういった実務を経験したあとに、コロンビア 大学のビジネススクールに行きました。そのとき これから必要なのは 大きな戦略を描ける人材 「組織が巨大化すると、 若い人 にすべてを任せられるポジショ ンは少なくなります。そこを 我々が補います」 にいろいろ教えてもらったことは、 「自分が経験 高 野 今後は新興国が豊かさを求める国として 高野 リーダーシップは、製品 やはり、R&D戦略の前にビジネス戦略がなけ したことはこういうふうにシステマティックに捉え 台頭してきます。そういう明らかな時代変化を見 開発、技術開発の領域で特に重 ればダメです。R&D は何をやっても面白いけれ られるのだな」と理解する意味では役に立ちまし 据えて、多くの日本の企業がグローバル化を進め 要になってくるでしょうね。 ども、企業として効率が良い、的を射た研究開発 た。ただ、実務を経験せずにいきなりMBAを取っ ています。そこで何か、アドバイスをお願いしたい 青木 ソニーは、創業以来2 0∼ は難しいのです。将来のビジネス戦略をバックアッ て、それを実務に当てはめるというのはあまり説 のですが。 3 0年はある領域において圧倒 プする技術は大切ですし、他社と一緒にやる上で 得力がないんじゃないかなと思います。 青木 ソニーもすべて上手くいっているわけでは 的に強い技術があり、仕様から も、ソニーとして絶対に譲れない技術に対する戦 ですから、これはという人材には若いうちからチャ ありません。グローバルなマネジメントの中で、確 部品から全部つくっていた時代 略は、権利化も含めて非常に重要になってくると レンジングな仕事を与えていき、そこをうまくこ かにソニーはかなり早い時期から現地化やトップの がありました。そういう時代には、 考えています。 なしてきた人間が最終的に上にいくという仕組み 現地人化を行ってきました。現在、ヨーロッパのほ その技術に的確に投資していけ 高野 だからこそ、事業領域を超えてものを考え が望ましいと思います。その仕組みの中での教育 とんどのマネジメントはヨーロッパ人がやってい ば、リターンは莫大でした。 られる人だとか、国を超えてものを考えられる人 というのは、補助的ですが、非常に重要な役割を ますし、アメリカのほうはエンターテインメントや しかし現代では、どの会社も 材の育成が急がれるというわけですね。 H 2011 1 持つと考えています。 エレクトロニクスも含めて全部アメリカ人、あるい 1 社で全部やれるというわけではなくなったと思 高野 大きくなったがゆえに経験しにくくなった はヨーロッパ人になっています。しかし新興国では、 うのです。ソニーはこれだけ大きくなっていますが、 ことを補完する役割を、ユニバーシティが果たし やはりまだ日本人が社長をしています。これはソニー 何でもできるかというと、そうではありません。 高野 御社は、様々な分野でパイオニアとしてやっ ていくということですね。以前御社の方とお話を も含めた日本の会社のある種の限界であって、本当 今後はオープンプラットフォームということをつ てこられたわけですが、企業ユニバーシティにつ していたときに、 「ソニーという会社はエンターテ にグローバルに戦っていくためにはトップマネジメ ねに頭に置きながら、新しいものを開発していかな いても、かなり早くからやってこられました。日々 インメントの民主化をしてきた会社なんだなあ」 ントの現地人化を進めなければなりません。 ければいけないということは、教育によってだいぶ の業務も当然大事ですが、中長期の視点での成長 と感じました。音楽にしろ、映画にしろ、エレクト ソニーはいま、新卒採用の中で海外の人の割合 浸透してきたと思います。ただ、逆に「自分にない を支えるという面で、コーポレートユニバーシティ ロニクスの技術を使うことによって一般の人が気 を増やす取り組みを始めました。かつて、将来の ものは他から買ったらいいじゃないか」というこ は大きな役割を果たしていくと思います。 軽に芸術を楽しめるようにしたという点が、ソニー マネジメントを育てるために、MBAの学生を海 とばかり先行し、自分たちの本当の強みというもの 青木 そうですね。ただ、人はそれなりのポジショ が世界で称賛されている一つの理由だと思います。 外で採用したことがあるんです。彼らを日本に連 をなくしてしまったら、オープンな世界ではリーダー ンを与えられることによって成長すると考えてい 今後新興国を含めたマーケットの拡大とともに、 れてきて、日本語もある程度わかるようにしまし シップをとれなくなります。やはりビジネスです ます。ポジションの与え方にはいろいろなレベル 御社はそういう役割を今まで以上に担っていくこ たが、結局10 年ぐらいするとほとんどが辞めてし から、ギ ブ・アンド・テークです。どんな会社も があります。 とになるでしょうし、新しい技術の役割も大きい まいました。 貢献をしなければ、新しいシステムや商品、あるい たとえばソニーでも、日本もヨーロッパもアメ でしょうね。 ですから、非常に時間がかかりますが、ソニー はビジネスをつくることはできないのです。 リカも、組織があまりにも大きくなってしまった 青木 たとえば、電話の敷設にはずいぶん時間が では新卒から採用して育てていくという取り組み ソニーは毎年5千億円近くの研究開発費を使っ ため、若い人たちにそれなりの責任のあるポジショ かかりましたが、携帯電話は中国でもインドでもあっ を始めているわけです。ただし、人材が育つまで ています。そこで私がつねに言っているのは、 「5 ンを与えることができません。過去には新興国の という間に普及して、お互いにコミュニケーショ には 20年ぐらいブランクが空くわけで、その間、国 千億なりのお金で何でもかんでもやろうとしたら ような小さな国のマネジメントを、製品からセー ンできるようになりました。もちろん、情報もす を超えたジョブ・ローテーションが大事になります。 足りない。 ソニーがやる以上は、将来のソニーにとっ ルスまですべて任せるということで成長してきた ぐにやりとりできます。人間本来の欲求に「本当 こうした取り組みのスピードは、サムソンなん て必要で、なおかつ世界でトップになれるような 人材がいました。これからもそのような取り組み のことを知りたい」という気持ちが当然あるわけで、 かはものすごく早いですね。企業内の公用語を全 ところに投資しましょう」ということです。そうい を考えていきたいところなのですが、ソニーの場 それを人工的に止めることはできません。 部英語にするなどの取り組みが非常に素早く、日 う点では、ソニーは最終的な商品やシステムにつ 合どこもかしこも大きな組織になっており、若い よく、ソニーの製品は生活に必要なものではな 本の企業はだいぶ遅れを取っているのではないか いてのイメージを持ってビジネスをやってきた会 人にすべてを任せられるようなポジションが少な いと言われます。ただ、衣食住が足りてくれば、 という感じはします。 社なので、R&Dに関わるお金をどこに集中的に使 くなってきています。そのような部分を補うことが、 人の生活をより豊かなものにする製品やコンテン 高 野 多くの企業が、ここ 10 年ぐらいが勝負ど うかということは、割と明確に決められるのです。 ユニバーシティの一つの役割だと思っています。 ツが求められるのは当然です。我々はハードウエ ころと捉えています。そのためにはグローバル化 過去でいうと、たとえば先ほど言ったコンパク 私は、入社して最初の5年間ぐらいは開発的な アとエンターテインメントの両方をカバーできる のスピードが重要なのかなという印象を受けます。 トディスクなどの記録技術については世界一とな 仕事をしたのですが、5 年たったらいきなり「ア 会社として、将来に対する戦略を描いていきます。 青木 スピードを上げるには、 りました。一方、これからを考えると、エンターテ メリカでセールスをやれ」と言われ、3 年ほど販 それを描くのは現マネジメントであり、さらに次 トップマネジメントのリーダー インメントをあらゆる国でやるということになれば、 売を経験しました。そこで、 「最終的に “ 売ってな の世代が戦略を描いていくことになります。 シップや決断が非常に大きな役 ポータブル化が不可欠で、無線技術は外せないと んぼ ”がビジネスだ」ということを知り、その後 割を果たします。トップのリー 思います。それから、高品質なコンテンツがます いろいろな事業をやる上で大変いい勉強をしたと ダーシップというのは、企業の ます増えると、ビット数が上がっていきますので、 生き残り、勝つか負けるかとい 低ビットで送れてなおかつ品質の高い圧縮技術に うことに大きなインパクトを与 関しては、ソニーはいまでもナンバー1であるとの自 えていると思います。 負のもと、研究開発にお金をかけています。 ポジションが人材を育成し ユニバーシティが補完する 思います。 そういった実務を経験したあとに、コロンビア 大学のビジネススクールに行きました。そのとき これから必要なのは 大きな戦略を描ける人材 「組織が巨大化すると、 若い人 にすべてを任せられるポジショ ンは少なくなります。そこを 我々が補います」 にいろいろ教えてもらったことは、 「自分が経験 高 野 今後は新興国が豊かさを求める国として 高野 リーダーシップは、製品 やはり、R&D戦略の前にビジネス戦略がなけ したことはこういうふうにシステマティックに捉え 台頭してきます。そういう明らかな時代変化を見 開発、技術開発の領域で特に重 ればダメです。R&D は何をやっても面白いけれ られるのだな」と理解する意味では役に立ちまし 据えて、多くの日本の企業がグローバル化を進め 要になってくるでしょうね。 ども、企業として効率が良い、的を射た研究開発 た。ただ、実務を経験せずにいきなりMBAを取っ ています。そこで何か、アドバイスをお願いしたい 青木 ソニーは、創業以来2 0∼ は難しいのです。将来のビジネス戦略をバックアッ て、それを実務に当てはめるというのはあまり説 のですが。 3 0年はある領域において圧倒 プする技術は大切ですし、他社と一緒にやる上で 得力がないんじゃないかなと思います。 青木 ソニーもすべて上手くいっているわけでは 的に強い技術があり、仕様から も、ソニーとして絶対に譲れない技術に対する戦 ですから、これはという人材には若いうちからチャ ありません。グローバルなマネジメントの中で、確 部品から全部つくっていた時代 略は、権利化も含めて非常に重要になってくると レンジングな仕事を与えていき、そこをうまくこ かにソニーはかなり早い時期から現地化やトップの がありました。そういう時代には、 考えています。 なしてきた人間が最終的に上にいくという仕組み 現地人化を行ってきました。現在、ヨーロッパのほ その技術に的確に投資していけ 高野 だからこそ、事業領域を超えてものを考え が望ましいと思います。その仕組みの中での教育 とんどのマネジメントはヨーロッパ人がやってい ば、リターンは莫大でした。 られる人だとか、国を超えてものを考えられる人 というのは、補助的ですが、非常に重要な役割を ますし、アメリカのほうはエンターテインメントや 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