平櫛田中賞 第26回 Two Eggs #'04-1 2002-04 ※手前の赤色の作品 Two Eggs #'04-2 2002-04 平櫛田中賞について ベニヤ板、松材、ファイバーグラス樹脂、カーボン、 ベンガラ、ポリウレタンニス 27x122x114 cm ベニヤ板、松材、ファイバーグラス樹脂、カーボン、 ベンガラ、ポリウレタンニス 76x71x74 cm ● この賞は、107歳の天寿を全うするまで芸術の理想を 受賞者報告 ※奥の黄色の作品 大平實の彫刻の魅力 追求し続け、近代彫刻界に偉大な足跡を残した平櫛田中 大平實はロサンゼルス近郊、パサディナ在住の彫刻家です。その経歴が語っているよう (ひらくしでんちゅう 1872−1979)が、彫刻界の発展に に、日本−メキシコ−アメリカと移動し、さまざまな土地で仕事をしてきた経験をもっていま 役立てたいと百寿の記念に寄附した浄財をもって、1971年 す。近年、この人の作風に、ある種の宇宙的なひろがりを誘発する空間性と、無言劇にも似 に創設されました。 た物語性が加味されたのは、その経験の集約によるところが大きい。 彫刻とは何かを問い、その問いの持続のなかで手法や素材の選択など、さまざまな造形 現在、井原市が主管し、権威ある美術評論家、彫刻家など 的試みをくりかえしたはずです。また思索の時間をもつことによって、異民族の暮らしのな によって厳正に推薦・選考される日本を代表する彫刻賞と かに見出される建物、家具、道具などの形のおもしろさに気づき、それを純化する方向へと して、今年で26回目を迎えました。 みちびいたのでしょう。その骨太な作風には、人間がながいあいだ親しんできた「もの」の 温もりを感じさせるところがあります。 平櫛田中賞は、田中の偉業を後世に伝え、さらに優秀な 子供のような無垢な気持ちで、作品に接することが、この人の彫刻造形の根底にあるも 彫刻家の顕彰を行うとともに、文化の香り高い町づくりを のとの対話を可能にします。 市民憲章に掲げた井原市民のこの上ない大きな誇りであり 絵画は視覚の芸術ですが、彫刻は触角の芸術として展開してきた領域です。触角の反応 は、視覚のように眼でわかってしまうのとちがい、ゆっくりと体感=感応することを前提とし ます。 ます。 その意味で、この作家の作品は、徹底した手作業の過程を介して誕生したものですか ら、どんなふうにつくっているのか、というような関心をもってみるのも一興でしょう。また 廃材を使用した作品などには、学校現場の美術の授業などにも応用できそうに思います― 第26回平櫛田中賞 選考委員 などと勝手な想像にも駆られます。いずれにせよ、回を重ねてきた平櫛田中賞ですが、海外 五十音順 で活躍している人の受賞は、今回が初めてのことです。 市川 政憲 江口 週 鍵岡 正謹 岸 桂子 酒井 忠康 澄川 喜一 委 員 酒 峯田 敏郎 山縣 壽夫 いばら でんちゅう 井原市立田中美術館 〒715-8601 岡山県井原市井原町315 tel 0866-62-8787 fax 0866-62-9567 Eメール:[email protected] ※右から 砂漠の木 地上の雲 家 サンタ・アナの風 2008 2008 2007 2007 割って折った廃材、楓とブナ科コナラ属の木によるフレーム 割って折った廃材、楓とブナ科コナラ属の木によるフレーム 割って折った廃材、楓の木によるフレーム 割って折った廃材、楓の木によるフレーム 450x180x180 190x490x190 125x180x180 350x180x270 cm cm cm cm ホームページ http://www.city.ibara.okayama.jp/denchu_museum/index.html 〈表紙〉冒涜の町 #1 2012 アラスカンイエロウシダー H230 cm 資料・写真提供:アートシード 井 忠 康 井原市立田中美術館 第26回平櫛田中賞選考委員会 富山 秀男 長谷川三郎 深井 隆 第26回 平櫛田中賞受賞者 大 平 實 ŌHIRA Minoru 【受賞理由】広い視野に立つ彫刻造形と、これまでの経験豊富な仕事に対して 【略歴】 1950 新潟県に生まれる 1974 新制作展新人賞 1975 金沢美術工芸大学彫刻科卒業 1977 東京芸術大学大学院彫刻科修了 1979−81 メキシコ国立芸術院美術学校 1986 ローサ・フェイテルソン財団賞 1996 北海道立旭川美術館賞 1998 第9回国際現代造形コンクール エスラメルダ校在学 【作家スタジオ】 住所:842 Del Rio Ave, San Gabriel, CA 91776 U.S.A. t e l: 626-791-2377(自宅) 626-285-3440(スタジオ) Eメール:[email protected] ホームページ:www.minoruohira.com カリフォルニア州パサディナ在住(アメリカ) 金沢から芸大の大学院に入った頃、百歳を越えても、絶えず材料を買い込 み、彫刻に没頭する平櫛田中氏の話は有名だった。それに氏が書にしたため た言葉“60、70は、はなたれこぞう、男ざかりは百から百から”はその頃の自分 には、生まれたばかりの赤ん坊が彫刻をやろうとしているようなもので、全く 次元の異なるような言葉に思えた。しかしこの言葉は自分を高揚させる心地よ い響きがあり、諺のように自分の心に残っていた。いつしか自分も60を越え今 回、平櫛田中賞を受けるにあたりこの言葉の大きな意味が現実としてわかるよ うになった。大変いい時期に氏の賞に出会う事ができ、ようやく自分も出発点 あたりにきたのかと実感しています。 大阪トリエンナーレ1998 彫刻特別賞(羽曳野市賞) 2001 第10回国際現代造形コンクール 大阪トリエンナーレ2001 特別賞(そねちか賞) 2009 第36回中原悌二郎賞受賞 2012 ポロック・クラズナー財団より助成 【主な個展・グループ展】 木霊 #1 2011 木、黒鉛、 鉄とオークの木(ベース) 61x22x20 cm 1989 個展、村松画廊(東京) (92、01、09) 1991 個展、ノブギャラリー(愛知) (93、95、97、99、01) 1996−97 木の造形 旭川大賞展全国の作家25人による現代造形の競作、 1998 大阪トリエンナーレ(01) 2001 個展、INAXギャラリー2(東京) 2002 西海岸の風 ニイガタ─ロサンゼルス─ナゴヤ、新潟市美術館 2005 個展、伊勢現代美術館(三重) 2007−08 個展、ジャクソンビル現代美術館(フロリダ) 2009 アーティスト・ファイル 2009─現代の作家たち、国立新美術館(東京) 北海道立旭川美術館 東日本─彫刻:39の造形美、東京ステーションギャラリー INSIGHT/INSIDE LA、ホセ・ドラディス- ビアダ大学美術画廊、 マウント・セント・メアリー大学(ロサンゼルス) 2010 身にまとうオブジェ展 PART 1、スペース・S(東京) 2011 予期せぬ境界: 現代美術の幽玄、 2013 個展、スペース・S(東京) カービン・モリス・ギャラリー(ニューヨーク) 【主なパブリックコレクション】 中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館(北海道)、北海道立旭川美術館(北海道)、 新潟市美術館(新潟)、原美術館(東京)、大原美術館(岡山)、伊勢現代美術館(三重)、 金沢市大乗寺丘陵総合公園(石川)、ロサンゼルス・カウンティー美術館(アメリカ)、 シルバコーン大学(バンコク)、タイ国立美術館(バンコク)、 メキシコ国立美術館(メキシコシティ)、ビクトリアン美術大学(オーストラリア)、 台北美術館(台湾)、ホノルル美術アカデミー(ハワイ)、 弱虫ドラゴン 2012 割った廃材、楓の木によるフレーム、アメリカボダイ樹 67x120x33 cm ロングビーチ美術館(カリフォルニア) 伝言 2011 桑の木、様々な種類の木、黒鉛 86x45x17 cm
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