石油・天然ガス開発促進型事業 (大型研究・特別研究) 平成 22 年度 事後評価報告書 (平成 20 年度採択:終了分) 平成 23 年 3 月 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 1 目次 第1章 提案公募事後評価、評価要領 第2章 平成 22 年度 事後評価実施テーマ及び評価結果 1. 特別研究「洋上プラントに適用可能な新規合成ガス製造システム(A-ATG プロセス)の 開発」 (平成 20 年度採択・研究期間 2 年) 2. 特別研究「大水深用フレキシブルパイプの開発調査研究」(平成 20 年度採択・研究期間 2 年) 3. 特別研究「接触部分酸化法による合成ガス製造プロセスの競争力強化に関する研究」(平 成 20 年度採択、研究期間 2 年) 4. 特別研究「船陸間高速大容量通信ネットワークを用いた物理探査船の安全・効率的運航を 目的とした協調運航支援システムの研究」(平成 20 年度採択、研究期間 2 年) 注) 上記は平成 23 年 1 月 31 日(月)に独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構で開催 された平成 22 年度第 3 回業務評価委員会 石油・天然ガス技術評価部会によって審議され た結果である。 2 第 1 章 提案公募事後評価、評価要領 1.計画と比較した最終目標の達成度 設定した研究計画及び目標と研究成果を比較した場合、技術的な達成度はどの程度か。 回答要領:コメント記入(評価における達成度の判断理由、重きを置いた要素、観点等を明 確にした上で達成度の度合いを記述。) 評点記入《判定基準》 ・目標をすべて達成、もしくは上回る成果を得た → A ・目標を概ね達成した(一部未達) → B ・目標を一部達成した → C ・目標は達成できなかった → D ・特筆すべき成果があり、極めて大きな意義がある → A ・重要な成果があり、大きな意義がある → B ・一定の成果があり、意義はある → C ・意義のある成果はほとんどない。 → D 2.研究成果の意義 事業目的(※)に照らし、達成した研究成果に技術的意義があるか。 回答要領:コメント記入(判断理由を記述。) 評点記入《判定基準》 ※事業目的: 【大型研究】 我が国企業による天然ガス田開発を促進するために、天然ガス供給チェーン全体からみた技術 課題又は石油・天然ガスの炭鉱開発に関する技術課題のうち、基礎~応用段階における独創 的・革新的な技術課題(実用化された場合に関連産業への波及効果が相当程度見込まれるもの) につき公募により研究開発を実施するもの。 【特別研究】 我が国企業による天然ガス田開発を促進するために、天然ガス供給チェーン全体からみた技術 課題又は石油・天然ガスの探鉱開発に関する技術課題のうち、応用~実証段階における即効性が 期待され短期間での実用化が見込まれる技術課題につき公募により研究開発を実施するもの。 3 3.実用化・活用の見通し 研究成果の実用化の可能性はあるか。 【大型研究】 回答要領:コメント記入(以下の評価結果を踏まえた上で総合的に評価) 研究開発の基礎となる技術開発の成果が確実なものとなっているか 実用化された場合の波及効果は依然相当程度見込まれるか。 評点記入《判定基準》 ・基礎技術が確立され、実用化のイメージが明確である → A ・基礎技術がほぼ確立され、実用化のイメージができる → B ・基礎技術の確立は期待できる → C ・実用化の可能性はほとんどない(または波及効果はない) → D 【特別研究】 回答要領:コメント記入(以下の評価結果を踏まえた上で総合的に評価) 技術としての見極め(適用可能性の明確化)ができているか。 実用化の見通し(実用化までの期間、事業化とそれに伴う経済効果等)は立って いるか。 評点記入《判定基準》 ・技術の見極めがつき、適用先が明確である → A ・技術の見極めがつき、短期間での具体的適用の可能性が高い → B ・具体的適用の可能性はある → C ・実用化の可能性はほとんどない → D 4.その他 上記以外の指摘事項 回答要領:コメント記入(上記以外に指摘事項があれば記述。) 以 上 4 第 2 章 平成 22 年度 事後評価実施テーマ概要及び評価結果 1.大型研究「洋上プラントに適用可能な新規合成ガス製造システム(A-ATG プロセス)の開発」 (平成 20 年度採択・研究期間 2 年) (1)研究代表者:日揮株式会社 (2)研究概要: 天然ガスは地球環境に優しいエネルギーであるが、気体のため運搬や貯蔵が容易でなく、 中小ガス田の天然ガスや原油随伴ガスの多くは、有効に利用されていない。特に、原油随 伴ガスの多くはフレアリングされており、地球環境保全の観点から緊急課題である。 本研究では、これらの未利用ガスを洋上で GTL 化すべく、深冷分離装置よりシンプルな PSA 装置や膜分離装置で製造した低純度酸素や究極は空気等を酸化剤として、装置構成の シンプル化等が要求される洋上プラントに適用できる合成ガス製造システムの開発を目 指す。この合成ガスは窒素等を含むため、FT 合成反応への影響も評価し、低純度酸素あ るいは空気(以下、窒素含有酸素ガスという。)を使った合成ガス製造システムの GTL プ ラントへの適用の可能性を見極めると共に、実用化のための課題を抽出する。 本研究は、前年度までの提案公募事業において、ミゼット装置で実施した窒素含有酸素ガ スでの研究成果を受けて、商用プラント設計データを取得可能な規模のパイロット装置を 一部改造して実証確認するものであり、これまでの研究開発成果も有効活用できる。尚、 必要に応じてミゼット装置等を用いた支援研究も実施する。 (3)石油・天然ガス技術評価部会審議内容(概要) ・ AATG プロセスの実証を中心として、AATG プロセスの洋上 GTL プラント適用による 早期実用化のために必要な検討項目、目標をクリアする成果が得られている。 酸素濃度 21%~93%の運転試験の結果、いずれの条件においても、ほぼ理論値に近いガ ス組成、HC 転化率が得られており、すすの発生も見られない等、AATG プロセスの運 転を実証できたことは高く評価できる。 ・ 空気吹きによる AATG 実証に加えて、後段の FT 合成プロセスへの不純物の影響、船上 の振動の影響、排水処理方法、冷却水確保等、洋上プラント建設に伴う様々な課題につ いても調査・検討し問題ないことを確認している。 ・ フレアガスの処理という環境面でのメリットを打ち出せば早期商用化の可能性は高いと 思われる。適切な事業対象を見極めて実用化を目指し、その中で大型化のための技術開 発課題開発を進めていただきたい。 ・ 洋上 GTL プラントはこれから増加すると予想される海底油田の随伴ガス有効利用に大 いに重要である。したがって所期の目的通りのプロセスが完成できれば実用化の可能性 は高いと考えられる。ただ、競合技術もあるので、調査を徹底させて、それらと競争で きる技術の開発が望まれる。また、船上の揺動がプラントに与える影響は様々なものが 考えられる。固定床だから揺動の影響なしということにはならないのではないか。固定 床の触媒が揺動によるストレスで破壊する恐れはないのか。このあたり十分に検討して いただきたい。 ・ 研究課題の全項目において目標を達成しており、充分な内容である。その上で幾つかの 疑問点がある。 1点目だが、純酸素による反応プロセスに対し、窒素を含有する空気を使用する場合は 合成ガス生産効率が低くなっている。但し、合成ガス製造そのものに問題が無く、酸素 製造設備が不要であるならば、陸上設備にも同様のプロセスを導入すべきではないのか。 2 点目だが、この技術を実用化する場合、どの様な方法で既存海上プラントに設置する 5 のか、具体的な導入先の候補等が不明である。 ⇒(資源機構補足説明) 陸上では設備設置場所の制約が小さいため、リアクターの効率を考慮すればむしろ純酸 素を使用する方が望ましい。また、設置方法としては中古船舶上に建造して現場まで曳 航する方法が考えられる。適用場所の具体的候補地は無いのだが、東南アジアやブラジ ルが考えられる。 ・ この反応には、随伴ガス中のLPG等重質分が影響するのではないか。また、随伴ガス の生産レートは変動するため、装置側である程度の幅を持っておく必要があるだろう。 ⇒(資源機構補足説明) LPGも、ガス中の濃度が 10%以下程度であれば触媒で処理することは可能である。 随伴ガスの生産レート変動は重要な問題であり、最低生産レートの捕捉が重要である。 プラントの最低稼働レートを 70%とすれば、最低生産レート分を 1 トレインとして、2 トレインを持つ必要がある。 ・ 本研究の目標は設備を洋上生産現場に設置することであることから、具体的な洋上油田 における経済性指標が無ければ、経済性の判断は難しいのではないか。なお、本技術の 経済性についての説明では、原油価格$80/bbl のケースで IRR が 10 から 15 となり、4 ~5%程度の向上に繋がるとのことであったが、この 4~5%とは何との比較であるのか が不明瞭である。また本技術には、現在焼却処理している随伴ガスを削減する効果を有 するが、この部分を CDM 評価し、経済性向上分にカウントすることも検討可能ではな いか。 ⇒(資源機構補足説明) 「4~5%」とは、本技術導入無しケース(原油生産のみの場合)との比較となる。また 本技術の導入は CO2 排出削減効果を持つので CDM 評価は可能かもしれないが、参考と なる事例が無いためそのような評価検討は行っていない。 ・ 以下の点について説明をお願いする。 ① 本研究の今後の進捗について ② 過去の研究で取り組んでいた「純酸素を使用する陸上プラント」の研究の取り扱い について ③ 本技術を、新潟での実証研究に取り入れる考えがあるのかについて ⇒(資源機構補足説明) ①本研究については、セミコマーシャル段階へのステップアップが必要であり、機構と してその詳細設計について共同研究として協力することとしている。また、国内に本技 術への興味を持っている企業があり、そこへのプロモーションも行っている。 ②また純酸素を使うプロセスについてだが、今後も研究を継続する予定である。今回の 研究を通じて純酸素のプロセスにおける困難な点が明らかになっており、この部分の検 討を行いつつ、次のステップに進めることに取り組んでいる。 ③なお新潟の実証研究(JAPAN-GTL プロセス。合成ガス製造部は炭酸ガスも原料とする スチーム CO2 リフォーミング)との関連であるが、先ずは新潟の研究成果を商業規模に ステップアップさせることを優先している。その次の段階において、当該技術を一般的 性状の天然ガスに適用させる場合において、今回の研究成果の導入を検討することとな ろう。 (参考)技術評価者による評価(評点法) 技術評価者 1 達成度 意義 実用化 A B A 技術評価者 2 達成度 意義 実用化 B B 6 C 2.特別研究「大水深用フレキシブルパイプの開発調査研究」 (平成 20 年度採択・研究期間 2 年) (1)研究代表者:新日鉄エンジニアリング株式会社 (2)研究概要: 世界の石油需要は今後ますます増大する見込みであり、海底油田に関しては、従来より更 に大水深域での開発が進められようとしている。現在、ブラジル、西アフリカ等では水深 2 千m級を目標に海底油田開発が行われているが、これより更に大水深域で、多くの石油 埋蔵量が確認されており、今後は水深 3 千m級までの油田開発が急速に進むものと考えら れる。このような大水深域での原油輸送に、特に重要な役割を果たすフレキシブルパイプ に関しては、大水深化に対応して、管の耐外圧強度や引張り強度を大幅に向上させ、また、 新たに保温加熱機能等を有する構造とする必要があり、これらの革新的技術開発の可否が 今後の大水深油田開発の鍵を握るといっても過言ではない。大水深用フレキシブルパイプ については、水深 2 千 m 級までは補強部材の厚さ、強度等を改良した従来構造品が適用 可能と考えられるが、更に水深 3 千m以上の海域で適用するフレキシブルパイプについて 材料、構造等まで見直した革新的な新製品とする必要性に迫られると予想される。 本研究では水深 2 千mから 3 千 m 級の大水深用フレキシブルパイプの要求性能、機能等 の技術課題の調査と整理を行う。水深 2 千 m 級フレキシブルパイプについては補強部材 の試作と評価を行い、今後の管本体の試作に向けて検討を進める。フレキシブルライザー 管については、大水深での未知の管挙動や渦励振特性について解析と模型実験を行い、そ の安全対策を検討する。併せて 2 千 m 級、および 3 千 m 級の水深レベル毎に大水深用フ レキシブルパイプの実用化時期、必要とされる供給量、価格および事業採算性等に関する 調査を進め、採算性、事業性について検討評価し、大水深用フレキシブルパイプの新規製 造設備の仕様検討と基本設計を行い、今後の早期の生産供給体制の確立に役立てる。 (3)石油・天然ガス技術評価部会審議内容(概要) ・ 目標を概ね達成した。大水深石油開発の現状を適確に把握し、大水深用フレキシブルパ イプの技術動向ならびにベンチマークの調査が適確に行われていることは評価できる。 これらの調査に基づいて、既存の特許に抵触せずに、水深 2 千m級ならびに 3 千m級の フレキシブルライザーの開発が可能であることを明らかにしている。2 千m級フレキシ ブルライザーについては、耐腐食性材料を選定し、構造強度解析を行い、接合法に改良 を加え、工場設備仕様に検討を加え、経済性評価を行っており、いつでも実用化できる 段階に体制を整えた点は評価できる。3 千 m 級フレキシブルライザーの開発に関しては、 軸力補強条の自重の軽量化が重要課題となる点を明らかにしていることは評価できる。 ・ 本研究は、市場調査や技術調査に付いて系統立てた計画に基づき充分に実施されている ようである。但し、この研究成果について幾つかの懸念を持った。例えば技術調査につ いて、研究計画では公知技術と新規技術を明確にすることが課題であり、革新的技術検 討を行うとなっていた。しかしながら、本研究における新規技術とは具体的に何なのか が明確ではない。超高強度炭素鋼を軸力補強条に用いたフレキシブルライザーのコンセ プトが今回の研究で立案されたことは理解出来たのだが、全体の研究の中でどの様な研 究要素があり、それに対応する新規技術が何であるのかが不明瞭なので、その点につい て更に検討を加えるのが宜しいのではないか。 また、実施した市場調査に付いてだが、当該市場は現在大手3社が独占しており、その 中に新規技術を持って競合して行くとの説明であった。しかしながらそれについての見 通し、具体的には今回の研究成果に基づくパイプがこの市場で採用され得るのか、その 点についての検討はどうなっているのかが説明では良く分からない。また本研究を通じ て取得した特許が当該分野でどのポイントを占めており、どの様な競争力を持っている のかについての評価が良く分からない点が気になった。これらのことから、この技術を 実用化に結び付けることが出来るのかが懸念される。 7 ⇒(資源機構補足説明) 新規技術については、本研究開始当時耐食性の問題はまだ顕著に現れていなかったため、 これを課題に含めていなかったが、研究を進めるうちに耐食性の問題を克服しなければ 市場に入って行けないことが明らかになり、中心に取り組むようになった。現時点では 高耐食性鋼材を軸力補強条に適用した大水深用ライザー管は存在しておらず、これを適 用した今回の成果が新規技術であり、適用のために軸力の補強条の強度を上げる加工法 を検討している。今回の研究の基礎には過去の研究で開発されたライザー管があり、そ こから大きく踏み出す必要はないと判断しているが、詳しく調べると、鋼材の特許、特 に内部構造等について今回の開発の制約となるものが多くあることが判った。そこで、 その制約を回避するための方策検討といった、具体的成果に挙げるのが困難な開発に取 り組んでいる。 次に実用化に関してだが、現在当方では南米産油国との国際共同研究に今回の成果を導 入することを検討しており、それなりの需要が存在することは把握出来ている。 ・ 大水深開発において、通常のスチール管ではなくフレキシブルパイプが必要とされる理 由が何なのかが不明瞭である。また、一般的なライザーの耐用年数が 10~20 年であるの に対し、本研究の耐久性目標を 20~30 年においている理由も同様に不明瞭である。 現在の市場は大手 3 社がほぼ独占状態とのことだが、新規技術によってこの市場に参入 することが可能であるのかについても説明不足の感がある ⇒(資源機構補足説明) 大水深用ライザーについては、オペレーターにとって何も付いていないシンプルな構造 が一番望ましいとのことである。既存技術の場合、浮力材が付く構造は移送が面倒とな り、更に浮力材が取れてしまった際には全体が破損する懸念がある。オペレーターの意 見としては Free-hanging Steel Catenary 若しくはフレキシブルパイプが望ましいとの ことである。但し Free-hanging Steel Catenary には自重の制約があり、現時点では 2 千mを超えた程度までしか達成されていない。これを超えると自重で切れてしまう様だ。 従って 3 千m規模のライザーには浮力材を付けざるを得ず、これが望ましくないことか ら業界はフレキシブルパイプに向かっているのが現状である。 また、耐用年数についてだが、本研究で目指しているのは交換を不要とするために 30 年と設定している。ユーザーとしてはフレキシブルパイプによる、メンテナンスや交換 が不要で余分な装置が付かない Free-hanging Catenary が最も望ましいようである。 なお、現状の当該製品市場は需要に対して供給が不足しており、新規参入の機会は十分 に有ると判断している。 ・ 研究における市場調査では 2018 年頃に市場規模がピークアウトを迎えるためそのタイ ミングを目指して開発を進めるとの説明であったが、実際の開発においてはフィード、 つまり詳細設計や許認可取得、経済性確認を行うといったことが必要である。従って、 かなり前の段階から製品化を行い、市場での実績を積み上げなければ、大々的に扱って 貰えないという問題がある。 ⇒(資源機構補足説明) 研究の次の段階は、船級の取得といった、フィードに近いものとなるだろう。国内での 作業が一段落した時点で第三者機関に検査して貰うのではなく、最初から検査を取りこ みつつ、step-by-step でチェックを入れながら進める。デザインや報告も個別案件の完 了を待たず、次々と積み上げていく方法を取ることにより、多少なりとも開発速度を上 げられると考えている。 8 (参考)技術評価者による評価(評点法) 技術評価者 1 達成度 意義 実用化 B B A 技術評価者 2 達成度 意義 実用化 B C 9 C 3.特別研究「接触部分酸化法による合成ガス製造プロセスの競争力強化に関する研究」(平成 20 年度採択、研究期間 2 年) (1)研究代表者:千代田化工建設株式会社 (2)研究概要: GTL プラントやメタノールプラントの大型化志向に伴い、合成ガス製造装置もより大量の 原料ガスを処理できる高性能な方法が求められている。 本研究提案者らは、既存法に対し大幅な製造能力の向上、装置のコンパクト化を狙いとし た D-CPOX1 による新しい改質技術の開発を、H14~15 年度大型研究、H16~17 年度および H18 年度特別研究にて実施し、大量のガス処理に適したフォーム触媒の開発と反応機構の 検討を行った。また、高温・加圧下での酸化反応を取り扱う D-CPOX 反応器の安全性を確 保するために、爆発シミュレーターの開発、反応器安全性評価方法の構築も並行して実施 し、パイロット規模の反応器イメージを構築した。さらに、FT 合成 2 と組み合わせた GTL プロセスの経済性について検討し、現段階の触媒性能にて、既存法と比較して原料ガス消 費量がほぼ同等、二酸化炭素排出量で約 5%減であることを確認した。また、原料ガス消費 量においても優位性(10%減)が現れるように改良目標(反応条件の高圧化と触媒性能の 向上)を設定した。 本提案では、上記改良目標を達成するため、(1)反応条件の高圧化、(2)触媒性能の向上、 (3)反応条件の高圧化に伴った反応器設計、(4)パイロットプラントの基本設計を行う。 (3)石油・天然ガス技術評価部会審議内容(概要) ・ JOGMEC の提案公募事業の中で育ててきた、革新的な合成ガス製造技術であり ATR と 比較して圧倒的に高い GHSV、反応器の大幅な小型化の可能性を持っている。接触部分 酸化という非平衡性が強く高い制御技術を必要とするプロセスであるが、本事業により 高圧条件での触媒安定性評価、安全性評価等の見通しが得られており、パイロットプラ ントが見通せる段階まで達している。 ・ 新規触媒の導入により安定性が向上し、2 千時間の連続運転が達成されたのは成果であ る。但しこの運転時間が実用上充分なものであるかについての説明がなされていない。 また、今回の触媒改良成果がそのまま実用化に繋がるかについての明示が無く、今後実 用化段階に移行するためには触媒のコストが制約となる懸念がある。従って、今後は実 用化に近い装置規模での実証実験が不可欠であり、実用化~商用化に辿り着くまでには 更に数段階の研究開発が必要となるのではないか。 ⇒(資源機構補足説明) 新規触媒については既存品と材料は同じであり、調製方法の改善で対応しているため、 コストアップには繋がっていない。但し工業触媒とするための大規模な製造方法につい ての課題は残されている。 今回の研究成果についてだが、爆燃シミュレーションは行ったが、実用化のためにはバ レル相当の径による確認が必要である。特に径を大型化した際には原料ガスをどの様に 混ぜるかが問題となる。実用化段階では原料ガスは大量かつ高速であるため、不均一な 場合は反応斑やホットスポットの形成による触媒劣化の懸念がある。シミュレーション 上はミキサーによる対応で良いとの結論を得ているが、これも実際にやってみなければ 判らない。 現在の 0.1 バレル程度の実証機で、触媒やプロセス、安全性についてなど、出来ること は全て行い、必要と思われるツールは全て揃える計画である。後はもう少し大型の装置 により想定の正しさを確認する必要がある。 ・ 既存技術であるチューブラーリフォーマーは、構造上の制約により大型化が困難である。 また、酸素は使わないが加熱するため必ずしも安全ではなく、事故も起きている。その ため、この D-CPOX 技術は大きなブレークスルーとなり得るのではないかと期待してい 10 る。高効率と低環境負荷は魅力であり、実用化までには爆燃シミュレーションだけでな く様々な実証試験が必要であろうが、今回のシミュレーション通りであれば安全性の確 保も出来ると期待され、是非次のステージに進んで頂きたい。 なお今回の成果では、この D-CPOX は、新潟の実証プラントにおいてどの様な位置付け となるのかが不明であり、説明が必要であろう。 ⇒(資源機構補足説明) 新潟の実証研究の場合、合成ガス製造リフォーマーはチュブラータイプであり、触媒は スチーム CO2 リフォーミング、つまりスチームと CO2 とメタンを原料とする場合の触 媒となっている。そのため CO2 を含む原料の場合は新潟方式の方が適切である。また新 潟の場合は合成ガスと、その後の FT 合成、アップグレーディングがワンセットとなっ ている。それに対し D-CPOX は合成ガスの部分である。従って、新潟において合成ガス の部分を将来的にこの技術に置き換えることが可能である、との位置付けとなっている。 新潟の技術が将来的に実用化された際に、この技術と新潟の後段の技術とを組み合わせ ることは可能であろう。 ・ 既存技術との比較に関し、ガス転換率が ATR の 97%と比較すると、今回の成果は 80% 台であり低いようだ。また、D-CPOX はガス組成の違いにより強い影響を受けるようだ が、通常のガス田ではその生産ステージにより性状が変わるものであり、この点も懸念 材料である。 ⇒(資源機構補足説明) ATR の場合平衡反応であり、バーナーで発生させた熱を触媒層に与えて吸熱反応により 合成ガスを製造している。これが熱的な制約条件となっており、一定量以上にガス流量 を上げると、中間原料(CO2、H2O)のスリップが発生するなどの支障が生ずる。一方 D-CPOX の場合は一段の非平衡反応であるため、 多くのガスを流すことが出来る。 但し、 出口ガス組成が平衡組成である ATR の場合は過剰量の触媒を投入することで、圧力と入 口ガス組成で出口組成を調整できるのだが、D-CPOX の場合は反応そのもの(C/H/O の バランスで転化率を、Steam/C 比で H2/CO 比)を制御しなければならない。D-CPOX は非平衡反応であるため、内部の反応温度、圧力及びガス量を D-CPOX 触媒に対して最 適にコントロールすることで、高効率な反応を維持する。この点が最大の違いである。 なお、ガス性状の変化への対応だが、D-CPOX の場合も酸素およびスチームの添加量の 制御で対応出来ることが判ってきており、将来的に対応は可能であろう。 ・ 本研究の経済評価は他の GTL 技術との比較によってなされている。しかし本研究の目標 は FPSO での適用であるなら、小規模洋上 LNG/GTL との比較が必要となるであろう。 当面は技術課題の克服が最優先されるであろうが、今後はこの分野にも取り組んで頂き たい。 (参考)技術評価者による評価(評点法) 技術評価者 1 達成度 意義 実用化 B B B 技術評価者 2 達成度 意義 実用化 A B 11 B 4.特別研究「船陸間高速大容量通信ネットワークを用いた物理探査船の安全・効率的運航を目 的とした協調運航支援システムの研究」 (平成 20 年度採択、研究期間 2 年) (1)研究代表者:エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 (2)研究概要: 447 万平方キロを超える管轄海域を擁する我が国にとって、資源の安定供給に貢献し得る 海底資源の調査はエネルギー源の多様化、自主開発における最優先課題と言われている。 本研究では、我が国を取り巻く管轄海域に存在する海底資源の精査のため就役されたのが 物理探査船であると認識する。 物理探査船の使命を運航技術の立場から見ると、その運航は商船と次の点で大きく異なる。 Ⅰ.作業海域への移動中、又は作業中の物理探査船の運動は制約される。Ⅱ.海洋作業を 使命としており、曳航体を予め定められた測線上に航行させることが重要である。Ⅲ.探 査作業の中止が容易でない。Ⅳ.危険海域における昼夜作業が予想される。 物理探査船の運航では以上の点を考慮した運航方法を採用することが必要である。本研究 ではこれらの特徴をもつ物理探査船の安全・効率運航を実現するために必要な陸上と海上 の協調に基づく精度良い予測に基づく運航方法の確立を目指す。 (3)石油・天然ガス技術評価部会審議内容(概要) ・ 目標を概ね達成した。 「資源」でストリーマーケーブルの投入・曳航・揚収を安全かつ効 率的に実行するため、昼夜全天候において、海上漂流物およびストリーマーケーブルを 監視する複合海上監視システムならびに、海上漂流物進路予測システムの開発目標を達 成したことは評価できる。 ・ 海上ターゲットの検知幅(1km)に関する結果が必ずしも明確でないように思われる。 ・ 研究の目標及び成果は「前方 2kmの浮遊物監視」であるが、現場ヒアリングでは「9k mは必要」との要望となっており、実績として不充分であり、そもそもの計画の立て方 に問題があったと言わざるを得ない。計画策定時に現場の声を充分取り入れるべきであ っただろう。また、実証実験では装置を本船ではなく前方の警戒船に搭載した上でモニ タ監視要員を乗船させている。これについては警戒船と本船との間の通信方法の説明が 無く、またモニタ監視の自動化/無人化がなされなければ実用化は困難であろう。 更に、本研究内容は既存の 3 技術を組み合わせることの様であるが、これでは新規性に 乏しいのではないか。 ⇒(資源機構補足説明) 「監視距離:2km」を決めた時点では、2km 先であれば回避は出来るのではないかと考 えていた。また、この研究は研究者が元々持っていた技術を土台としており、その上で 危険な強出力レーザーを搭載すれば監視可能距離は伸びることは判っていたが、そのよ うなことが可能かについて疑問があり、取り扱いの安全上、及び実証距離の観点からリ ーズナブルな線として「2km」としていた。又、船舶レーダーの他は目視が監視の基本 であることも把握していたが、現場の声をもっと聞くべきという御指摘は真摯に受け止 める。 また操作の自動化についてだがこれは可能である。調整方法の確認も含めての実船実験 であったことから現在は確かに手動であるが、実運用の際は自動化にすることを検討し ている。これについてはソフト的には難しい点は無く、システム開発そのものは難しく ないが、その観測精度を上げる点では自動・手動のハイブリッド型が現実的であると考 えている。 船間の通信手段についてだが、どの程度のデータを送る必要があるかによる。監視船か ら物探船にテキストデータだけ送ればいいのか、それとも画像も送るべきなのか、それ によりかなり違ってくる。テキスト程度であれば既存技術で充分である。画像を送る場 合には更なる検討が必要かもしれない。 12 なお、今回の研究開発要素としてはライダーの開発が大きい。基礎原理としては確立さ れており、陸上での実績もある。但し船に適用した場合、背景が海という状況での実績 が無いため、海上の物体を測定する際にどのようなフィルタリングや時間差の調整が必 要となるかについての検討に、かなりの時間を要している。 ・ 本船と浮遊物との距離が捕捉できる点は、今後の作業への貢献が大であると考える。出 来ればそれが何なのかを認証する技術が必要であろう。NTT は顔認証システムを持って おり、そのような技術をうまく組み合わせることが出来ればいいのではないか。 また、カメラが 360°動く利点を生かし、前方だけでなく周囲も監視すべきであろう。 技術評価者のコメントにもあったが、本研究成果により漂流物の進路予測に基づくモニ タリングも可能となるのであろう。前方で船に損傷を与える物と、後方でケーブルに損 傷を与える物があるため、360°監視出来るシステムが出来れば非常に有効となるであ ろう。この技術が実用化されれば他の船舶への適用や技術の販売も可能となるのではな いか。 ⇒(資源機構補足説明) この装置は横や後方を向けるので、360°の監視も可能であろう。漂流物進路予測シス テムについても、船と漂流物を上方から俯瞰したマッピングできるシステムとなってい るため、船に当たるかどうかについての判断がその場で出来るようになる。 従ってこの技術が実用化されれば、特許なり実用新案を取得し、一般の船や海外の物探 船に売ることも出来るのではないか。但し、船に搭載するには相当な小型化が求められ るため、どの程度まで小型化出来るかが課題となろう。価格を下げるには機器のグレー ドを下げれば良いし、精度を上げるにはグレードを上げれば対応出来る。その辺りを上 手く対応し、市場化まで持っていければと考えている。 (参考)技術評価者による評価(評点法) 技術評価者 1 達成度 意義 実用化 B B B 技術評価者 2 達成度 意義 実用化 B B A 以上 13
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