講義スライド

放射線影響の分類
対象
時期
早期影響
病態
防護
血球減少
皮膚障害
不妊など
身体的影響
確定的影響
晩発影響
白内障など
がん
確率的影響
遺伝的影響
早期影響の病期と経過
前駆期
潜伏期
発症期
回復期
重篤期
致死
前駆期症状の発現
100%
数分以内
意識障害
0%
1時間以内
100%
下痢
8時間以内
0%
1時間以内
発現時期
と頻度
100%
発熱
3時間以内
0%
2時間以内
24時間以内
頭痛
0%
10分以内
2
100%
嘔吐
2時間以降
0
100%
0%
4
6
8
Gy
全身被ばく線量
IAEA/WHO Safety Reports, 1998
全身被ばくによる急性放射線症候群
造血器障害
皮膚障害
感染症の多発
不安定な循環動態
呼吸・循環不全
消化管粘膜障害
肺障害
臓器障害症状への対応に加えて、全身管理が重要
急性放射線症候群に対する治療
造血幹細
胞移植
消化管除菌
消化管粘膜再生促進(L-グルタミン等)
抗生剤(+抗真菌剤、抗ウイルス剤)
造血因子 + 輸血
0
2
4
6
8
Gy
全身被ばく線量
IAEA/WHO Safety Reports, 1998
原爆被ばく者の固形がん発症リスク
過剰相対リスク(1 Gy)
被ばく時年齢
3
10
30
50
2
1
20
40
60
80
到達年齢
Preston et al. Radiat Res, 2007
心臓・血管への影響
原爆被ばく者を対象とした成人健康調査によって
明らかにされた被ばくと関連する疾患
高血圧
心筋梗塞
大動脈瘤
高血圧性心疾患
Yamada et al. Radiat Res, 2004
放射線の胎児への影響
影響
感受性が高い時期
しきい線量(mGy)
死亡
着床前期(受精~9日)
100
奇形
器官形成期(2~8週)
100
精神発達遅滞
胎児期(8~15あるいは25週)
300
がん
全期間
はっきりせず
ICRP Publ. 84, 90
確定的影響と確率的影響
発現頻度
発現頻度
100 %
100 %
0%
線量
0%
線量
しきい値
確定的影響
確率的影響
放射線の早期作用過程
物理的過程
10-18 ~10-15 秒
生体高分子による
エネルギー吸収
水分子による
エネルギー吸収
生体高分子の電離・励起
水分子の電離・励起
化学的過程
10-12 ~ 1 秒
フリーラジカル形成
生体高分子との反応
生化学的過程
数秒 ~ 数分
生化学的過程
数分 ~ 数時間
生物学的過程
数時間以降
生体高分子の損傷
代謝過程による拡大
細胞障害
DNA損傷の頻度
X線1Gy照射によるヒト細胞1個あたり
塩基損傷
約6,400個
一本鎖切断
600~1,000個
二本鎖切断
16~40個
DNA-蛋白質間架橋
約150個
Friedverg et al. DNA repair and mutagenesis, 1995
生体におけるDNA損傷の処理方法
DNA損傷
損傷応答系の活性化
修復失敗
細胞死
修復成功
異常な修復
回復
がん
放射線影響の修飾因子
放射線要因
分割被ばく
同じ線量でも分割により生物学的影響は低下
線量率
同じ線量でも単位時間当たりの線量が低下すると生物学的影響は低下
生体要因
酸素効果
低酸素組織では放射線抵抗性
DNA損傷応答
DNA損傷応答経路を制御する遺伝子の個人差が放射線感受性を規定
DNA損傷とDNA修復
DNA損傷
修復不可能
不完全な修復が出現
完全な修復が可能
線量
DNA損傷応答系の異常による病態
遺伝性放射線高感受性症候群
血管拡張性小脳失調症
ファンコニ貧血
(DNA架橋剤感受性 > 放射線感受性)
遺伝性腫瘍
リ・フラウメニ症候群
BRCA変異がん
血管拡張性小脳失調症
原因
ATM遺伝子のホモ接合性遺伝性変異
神経変性
免疫不全
病態
放射線高感受性
発がんリスク増加
毛細血管拡張
ATMのDNA損傷応答系における役割
放射線
ATM
自己リン酸化による活性化
DNA切断部位に集積
標的蛋白質をリン酸化
血管拡張性小脳失調症のキャリアー
ATM遺伝子のヘテロ接合性遺伝性変異を有する
正常人と血管拡張性小脳失調症の中間の放射線高感受性
乳がんのリスク増加
(相対リスク:2.2~3.9, 50歳以下 5程度)
Fernet et al. Br J Cancer, 2004
Thompson et al. J Natl Cancer Inst, 2005
リ・フラウメニ症候群
若年期にがん発症のリスクが高い家系
p53変異を有するため、放射線などのDNA損傷により、発症が促
進されたり予後不良となる可能性
臨床的にリ・フラウメニ症候群が予測できるか?
30歳までの乳癌症例において、2親等以内に肉腫、副腎皮質癌、脳腫瘍の
1症例がある場合
ほぼ100%遺伝性p53変異あり
Gonzalez et al. J Clin Oncol, 2009
被ばく災害医学の確立をめざして
学生教育
臨床医学の立場から放射線影響に
関する卒前教育
大規模災害に対する対策
診療体制
放射線影響に精通した
専門職協働チームの育成
研
究
被ばくによる病態の診断と治療に
資する先端的研究