臨床面から見た肺がんの放射線治療 - 東北大学病院 放射線診断科

平成27年度 物理セミナー
テーマ:肺癌の放射線治療における高精度化
臨床面から見た
肺癌の放射線治療
東北労災病院 放射線治療科 山本貴也
どの部位の癌に罹患する人が多い?
肺:121.3
/10万人
肺:55.5
/10万人
どの部位の癌で死亡する人が多い?
肺:85.1
/10万人
肺:32.3
/10万人
定位放射線治療
術前/術後照射
化学放射線治療
非小細胞
肺癌
根治照射
放射線単独治療
緩和照射
少数個転移への放
射線治療
臨床情報-ガイドライン
https://www.haigan.gr.jp/
肺癌学会ホームページに記載されており、誰でも閲覧可能.
肺癌領域は日進月歩であり、肺癌診療ガイドラインは毎年改定、書
籍化されるのは数年に一度.
例えば、
定位放射線治療
術前/術後照射
化学放射線治療
非小細胞
肺癌
根治照射
放射線単独治療
緩和照射
少数個転移への放
射線治療
NACRT:ガイドラインを見れば・・・
https://www.haigan.gr.jp/guideline/2014/2/140002040100.html#a2-4-5_02
NACRT:その解説では
(前略)
…また,KunitohらはSSTに対する術前CRT+手術治療の第Ⅱ
相試験を行い(JCOG9806),術前治療のRRは61%で完全切
除割合は68%,全例の5年OSが56%であったと報告した.放
射線治療についてはいずれの試験においても,原発巣および
同側の鎖骨上窩に限局した照射野で行われ総線量は
45Gy/25回であった.N1症例でも肺門リンパ節は照射野に含
めていない.
(中略)
…2つの第Ⅱ相試験の結果は従来の治療成績(5年OS:23〜
36%)をはるかに上回るものであり,切除可能な臨床病期T34N0-1症例に対しては術前化学放射線療法を施行後に外科
治療を行うよう勧められるとし,推奨グレードをBとした.
NACRT:その解説では
(前略)
…また,KunitohらはSSTに対する術前CRT+手術治療の第Ⅱ
相試験を行い(JCOG9806),術前治療のRRは61%で完全切
除割合は68%,全例の5年OSが56%であったと報告した.放
射線治療についてはいずれの試験においても,原発巣および
放射線治療+化学療法+外科
同側の鎖骨上窩に限局した照射野で行われ総線量は
45Gy/25回であった.N1症例でも肺門リンパ節は照射野に含
的切除の集学的治療によって、
めていない.
(中略) 治癒する可能性が高い場合もあ
る!
…2つの第Ⅱ相試験の結果は従来の治療成績(5年OS:23〜
36%)をはるかに上回るものであり,切除可能な臨床病期T34N0-1症例に対しては術前化学放射線療法を施行後に外科
治療を行うよう勧められるとし,推奨グレードをBとした.
定位放射線治療
術前/術後照射
化学放射線治療
非小細胞
肺癌
根治照射
放射線単独治療
緩和照射
少数個転移への放
射線治療
SRT-肺癌治療におけるニッチ
• 手術不能早期肺癌に対する根治的な治療
• 標準手術不能な早期肺癌に対する、縮小
手術と並ぶ根治治療の選択肢の一つ
→高齢者、合併症の存在、呼吸機能の低下
等のある患者が多いが、そのような状況下でも
有効性は着実に確立されてきた
SRT-代表的な成績
Trial
T分類 No
線量
3年原発制御
3年全生存率
JCOG0403
手術可能
T1
65
48Gy/4fr
@isocenter
86%
76%
JCOG0403
手術不可能
T1
104
48Gy/4fr
@isocenter
88%
60%
RTOG 0236
手術不可能
T1-2
59
54Gy/3fr
@D95
97.6%
55.8%
JCOG0403の解析結果もred journalに採択、もうすぐ掲載
されるようです
Timmerman R et al. JAMA. 2010 Mar 17;303(11):1070-6.
SRT-死亡に至る(=Grade5)有害事象は
どんなものが?
• 2015年SRTの実態調査アンケートから、16232例
中、
–
–
–
–
–
放射線肺炎
42例
肺出血
3例
肝不全
3例
放射線食道炎
1例
その他(心外膜炎、胃潰瘍、動脈瘤)
4例
Grade5発症頻度は53/16232=0.3%.
2015年の高精度放射線外部照射部会と夏期セミナー時の広島大
学の先生方の発表より.
SRT-通常分割照射と比較
全生存率
疾患特異的生存率
肺癌による死亡のみを
カウントした生存率
CRT:conventional radiotherapy
Grutters JP, et al. Radiother Oncol. 2010 Apr;95(1):32-40.
SRT-通常分割照射と比較
全生存率
疾患特異的生存率
肺癌による死亡のみを
カウントした生存率
実際の前向き比較試験として、CHISEL試
験とSPACE試験が行われており、結果が
CRT:conventional radiotherapy
待たれるところです.
Grutters JP, et al. Radiother Oncol. 2010 Apr;95(1):32-40.
SRT-高齢者に対するインパクト
2005-7年にSRT普及に伴って
放射線治療成績向上
放射線治療を受ける
患者割合は増加
アムステルダムでの、75歳以上のI期非小細
胞肺癌に対する放射線治療成績の年次推移
Palma D, et al. J Clin Oncol. 2010 Dec 10;28(35):5153-9.
SRT-高齢者に対するインパクト
2007-9年にSRT普及に伴って
2005-7年にSRT普及に伴って
放射線治療成績向上
放射線治療成績向上
放射線治療を受ける
患者割合は増加
アムステルダムでの、75歳以上のI期非小細
胞肺癌に対する放射線治療成績の年次推移
Palma D, et al. J Clin Oncol. 2010 Dec 10;28(35):5153-9.
SRT-高齢者に対するインパクト
• もちろん本邦からも、
– 80歳以上の47例で、3年全生存率53.7%、3年原
病生存率70.8%との報告
– 90歳以上の21例で、3年全生存率78%、3年原病
生存率100%との報告
がされている.
Takeda A, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2013 Jun 1;86(2):257-63.
Shioyama Y, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2014 Sep 1;90(1) suppl. S647-S648.
SRT-定位照射vs手術
グレー:SRT
黒:手術
propensity score matching法を用いた比較.SRTと手術では年齢な
どの背景因子が異なるので、調節して比較.
Verstegen NE, et al. Ann Oncol. 2013 Jun;24(6):1543-8.
SRT-定位照射vs手術
青:SRT
全
生
存
率
赤:手術
無
再
発
生
存
率
・定位照射と手術の前向き比較試験が海外で3試験行
われていたが症例集積不良にていずれも中止.
・そのうち2試験のプール解析にて、症例数は限られる
ものの、SRTのエクセレントな成績が報告された.
Chang JY, et al. Lancet Oncol 2015; 16: 630-37
• ちなみに、このような代表的な論文はJASTROホームペー
ジのJournal clubにて、抄録の日本語訳とエキスパートの
コメント付で掲載されていたりします.
(今回の試験解説ではエビデンスレベル1bと書かれていますがclinical
practiceを変えるべきとほどではないかと思います)
例えば、Only photon (x-ray) beams with energies
6-10 MV will be allowed. (ROSEL study)
• SRT-特有の考え方、悩むところ.
• もちろん固定・呼吸移動対策は大切な
ものとして.でもそれ以外で.
SRT-HI(homogeneity index)ってどうすれば・・・
• HIはPTVに対する線量均一性の指標の1 つであり,
PTV内の線量比,すなわちHI=Dmax/Dminである.
• HIは 1 に近いほうがPTV内線量均一性は高くなる.
• JCOG0403のプロトコルではHIは160%以下である
ことを照射実施可能条件としている.
JASTRO公認ガイドライン-体幹部定位放射線治療ガイドラインより
現在はHI=(D2%-D98%)/D50%とする場合も多い
SRT-HI(homogeneity index)ってどうすれば・・・
• HIはPTVに対する線量均一性の指標の1 つであり,
PTV内の線量比,すなわちHI=Dmax/Dminである.
SRTでも、本当にPTV内の線量は均
• HIは 1一な方が良い?
に近いほうがPTV内線量均一性は高くなる.
• JCOG0403のプロトコルではHIは160%以下である
ことを照射実施可能条件としている.
JASTRO公認ガイドライン-体幹部定位放射線治療ガイドラインより
現在はHI=(D2%-D98%)/D50%とする場合も多い
SRT-HI(homogeneity index)
緑色=20Gy
黄色=40Gy
桃色=50Gy
赤色=60Gy
橙色=80Gy
単純計算で
HI=1.25
HI=1.66
PTVの95%が処
方線量以上にな
るようにしている
ので、実際はもっ
とHIは大きい
A、Bはmax pointに62.5Gy/5fr、PTVに50Gy(80%isodose line).
C、Dはmax pointに100Gy/5fr、PTVに60Gy(60%isodose line).
Takeda A, et al. J Radiat Res. 2014 Sep;55(5):988-95.
SRT-HI(homogeneity index)
ITV
PTV
Lung(Lung-ITV)
Chest wall
HIは60% isodoseの
方が高くfalloffが良
好な為、正常組織
の線量を殆ど変え
ずにITVに高線量
を投与出来る.
60% isodose (60・
50・40Gy/5fr)にて2
年局所制御
98%(n=142)と報告
Takeda A, et al. J Radiat Res. 2014 Sep;55(5):988-95.、JASTRO27th
SRT(HI)-D95%処方で同じように行って良い?
small margin=リーフマージン3mmで作成
block margin=リーフとPTVが重なる
40Gy/4frをPTVの95%をカバーするように処方
(=D95処方、PTVのedgeに処方)
SRT(HI)-D95%処方で同じように行って良い?
PTV
肺
GTV
SRT(HI)-D95%処方で同じように行って良い?
• 先ほどのsmall marginプランとblock marginプラン
では、
GTV mean:45.3Gy vs 57.5Gy
D95%:40.0Gy vs 40.0Gy
D99%:38.4Gy vs 36.0Gy
D100:36.0Gy vs 30.4
HI:1.297 vs 1.984
どの施設でも同じ成績は得られる? ペナンブラで
撃っている辺縁は大丈夫? tongue and grooveは?
肺密度変化だけでも辺縁がどうなってるか心配…
SRT(HI)-D95%処方で同じように行って良い?
(= D100%)
Shirata Y, et al. Radiat Oncol. 2012 Oct 31;7:182.
SRT-D95%処方-RTOG試験を参考にしてみる
• RTOG 0813試験を参考にすれば
–
–
–
–
superposition/convolution dose calculation algorithm
PTVの95%をカバーするように線量を処方する
PTVの99%が処方線量の少なくとも90%線量を受ける
腫瘍中心でノーマライズし、処方線量はその60-90%とな
るようにする
85.7% vs 66.3%
• 先ほどのプランはいずれも要件を満たしていました.
• conformityは分布が急峻な方が有利? falloffは門数を増
やすのみより有効そう. 治療効果は?
SRT-conformity
肺(Lung-PTV)
V20Gy(%)で、
6.85%→5.54%
平均肺線量で、
3.55→3.11Gy
SRT-胸壁近く、conformity高めたい
・赤いラインに
50Gy/5fr
・感染→膿瘍
→膿瘍除去
Woody NM, et al. J Thorac Oncol. 2010 Nov;5(11)
SRT-胸壁近く、conformity高めたい
・赤いラインに60Gy/3fr.
左側はカウチと固定具の分を考慮
していなかったので、1cmボーラス
おて再計算したもの.
Hoppe BS, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2008 Dec 1;72(5):1283-6.
SRT-中枢型肺癌でもconformityを高めたい
の重
出篤
てな
無有
い害
割事
合象
60-66Gy/3frsのSRTに
て、70例中6例が有害
事象死、うち4例が中
枢型.
末梢型に比べて11倍
の重症有害事象のリ
スクを報告.
Timmerman R, et al. J Clin Oncol. 2006 Oct 20;24(30):4833-9.
SRT-2011年放射線治療専門医試験
SRT-RTOGではconformityも記載
処方線量で囲まれ
るvolume(TV)/PTV
処方線量の
50%で囲まれる
volume /PTV
PTVから2cm以上離
れた領域での最大
点線量
SRT-HI、処方方法、 conformity
• 何がベストか分かりません.
• そもそもの処方線量にしてもです.
SRT-計画的リスク臓器体積(PRV= planning
organ at risk volume)
•
•
PTVと重なることもあり、判断に難しいこともある.
設定し忘れている場合、PRVマージンなしで厳しい制約の場合がある.
⇒不明な点や危ないと思ったら担当医に聞いた方が良い.
…表 1 に JCOG0403 で用いられたリスク臓器に対しての線量制約を示
す.…(中略)…1 回大線量で照射するために,各種正常(リスク)臓器の
PRV
線量制約を守る必要がある. (放射線治療計画ガイドライン2012)
SRT-計画的リスク臓器体積(PRV= planning
organ at risk volume)
•
•
JCOG0403のプロトコールや体幹部定位放射線治療ガイドラインを読めば、
例えば胃であればPRVは胃に0.5cmマージンと書いてあります.
もちろんこれを守れば必ず安全という訳でもありませんが.
SRT-計画的リスク臓器体積(PRV= planning
organ at risk volume)
•
•
4-D CTでは複雑な動きが見えることもある.
と言っても数分の4-Dでしかないので、全て捉えられている訳ではない
し、心臓近傍の腫瘍の心拍動による動きなどは透視の方がよく見える
こともある.
SRT-中枢型肺癌は日本でも第1相試験が行わ
れました
• JROSG10-1臨床試験.検索すればプロトコールも閲覧可
能.昨年のJASTROでも結果が報告され、推奨は60Gy/8
分割@isocenter (JASTRO27th RQ-01).
約10cc
SRT-照射毎の間隔は?
• 通常分割照射では一般的に総治療期間が延長し
ない方が望ましい(もちろん例外あり). 連続5日
以上休まないとか週に3回は照射する等々言わ
れていますが・・・
SRT-照射毎の間隔は?
局
所
制
御
率
腫瘍の再酸素化に関す
るマウス実験より、照射
は72時間以上の間隔が
あった方が良い
→3日以上の照射間隔/4
分割.
治療期間中央値は12日.
再酸素化:放射線抵抗性
の低酸素細胞を含む腫
瘍に照射→酸素化細胞
が殺されることによって
相対的に低酸素細胞の
割合が増えるが、時間が
経つとその割合がまた低
下する.
Shibamoto Y, et al. Cancer. 2012 Apr 15;118(8):2078-84.
SRT-照射毎の間隔は?
同じ施設からの報告(同じスケジュール)でday1とday8の腫瘍体
積の変化を報告している.
SRTではGTV=CTVとする場合も多いが、しなくても良い.
Tatekawa K, et al. Radiat Oncol. 2014 Jan 7;9:8.
SRT-照射は毎日じゃない方がいい?
• 海外ではRTOG SRTの早期に行われた0236試験にならっ
て照射間隔を最低40時間としている場合が多い.
• The inter-fraction interval should be between a minimum
of 40 hours and a maximum of 4 days.
(先程の既出のSRT vs 手術を行ったRosel trialより)
SRT-照射間隔関係なく良好な成績も
(RTOG0915試験より)
全
生
存
率
34Gy/1fr vs 48Gy/4fr
2年全生存率:61.3% vs 77.7%
2年無増悪生存率:56.4% vs 71.1%
1年腫瘍制御率:97.0% vs 92.7%
48Gy/4fr(D95%)は連日照射.
Videtic GMM, et al. IJROBP 2015, in press
SRT-そもそも局所制御とは
• RTOG0236で97.6%の3年制御と言っているのは原発腫瘍の
制御.
• involved lobe(=RTOG0236では局所制御)90.6%、さらに
involved lobeとPTV+1cm内の再発、肺門縦隔リンパ節再発
まで含めたlocal-regional制御は87.2%、全ての再発と死亡を
含めた無増悪生存は48.3%で、これはJCOG0403と余り変わ
らない(49.8%、54.5%).
• 前スライドRTOG0915での腫瘍制御率は原発とPTV+1cm以
内の再発(とプロトコールで定義).無増悪生存には全ての再
発と死亡+第ニ癌も含まれている(無病生存とする場合も).
SRT-代表的な成績
Trial
T分類 No
線量
3年原発制御
3年全生存率
JCOG0403
手術可能
T1
65
48Gy/4fr
@isocenter
86%
76%
JCOG0403
手術不可能
T1
104
48Gy/4fr
@isocenter
88%
60%
RTOG 0236
手術不可能
T1-2
59
54Gy/3fr
@D95
97.6%
55.8%
SRT-PRV, 照射間隔
• OAR,PRVのきちんとした評価を.
• 照射間隔は極端な総治療期間の延長でな
ければ何を選択しても良さそう.
(例:JCOG0403での許容総治療期間15日)
定位放射線治療
術前/術後照射
化学放射線治療
非小細胞
肺癌
根治照射
放射線単独治療
緩和照射
少数個転移への放
射線治療
進行肺がん-化学放射線療法
• 化学療法と根治的胸部放射線治療の併用療法が可能な
局所進行非小細胞肺癌患者にはプラチナを含む化学放射
線療法を行うよう勧められる.(グレードA)
• 化学療法併用時の通常分割照射法(1日1回1.8〜2Gy週5
回法)では,60Gyを最低合計線量とするよう勧められる.
(グレードA)
• 74Gyの高線量照射は行わないよう勧められる.(グレード
D)
• 化学放射線療法では,放射線治療の休止期間をおかない
よう勧められる.(グレードC1)
肺癌診療ガイドライン2014
進行肺がん-放射線単独療法
• 化学放射線療法の適応とならないⅢ期非小細胞肺癌には,
無症状であっても根治的放射線単独療法の適応があり,
行うよう勧められる.(グレードB)
• 放射線治療単独で治療する場合,Ⅲ期非小細胞肺癌には
通常線量分割で少なくとも60Gy/30回/6週を行うよう勧め
られる.(グレードA)
• 放射線治療単独で治療する場合,休止期間をおかないよ
う勧められる.(グレードB)
肺癌診療ガイドライン2014
手術非適応Ⅲ期肺癌に対する
化学放射線治療成績(東北大)
全生存率
• 1年 71.6%
• 2年 49.2%
• 3年 38.3%
MST 23.9 months
片桐ら JASTRO27th
進行肺がん-本題に入る前に
• 最低線量の60Gyというのは、RTOG73-01という臨床試験
以後、30年以上ずっと変わっていません.
化学放射線療法でも標準は60Gy/30分割/6週間.
• 化学療法の併用・進歩により治療成績は向上してきました
が、最近は伸び悩んでいるようです.
• 分子標的薬と言われる化学療法の併用でも、中々上乗せ
効果は得られません.
放射線治療の進歩はどう?
進行肺がん-放射線治療の進歩と高精度化
全
生
存
率
III期非小細胞肺癌の化学放射線治療
症例のアメリカNational Cancer Data
Baseより
青=3D-CRT 1330例+IMRT 237例
赤=従来法 11725例
2年生存率で33% vs 28%
5年生存率で14% vs 11%
Sher DJ, et al. Cancer. 2014 Jul 1;120(13):2060-8.
進行肺がん-放射線治療の進歩と高精度化
III期非小細胞肺癌の放射線
照射方法の変化.
IMRTは2002年の2%から
2009年には25%に.
アメリカのSEER-Medicare
databaseより.
Harris JP, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2014 Mar 15;88(4):872-84.
進行肺がん-放射線治療の進歩と高精度化
全
生
存
率
癌
特
異
的
生
存
率
各照射法による成績の比較.2D=822例、3D=5356例、IMRT=716例.
IMRTと3D-CRTでも有意差あり(P=0.02, 0.02).
Harris JP, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2014 Mar 15;88(4):872-84.
進行肺がん-放射線治療の進歩と高精度化
OS=全生存率、CSS=疾患特異的生存率、UGI toxicity=上部消化管毒性
しかしながら背景因子を調節すると、3D-CRTとIMRTに有意差のあ
るものはなかった.
臨床成績には、背景因子を調節しないとPETや脳MRIによる病期
診断の進歩による見かけの成績向上や化学療法の影響が含ま
れてしまう.
Harris JP, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2014 Mar 15;88(4):872-84.
進行肺がん-放射線治療の進歩と高精度化
• 2D→3Dの放射線治療によって、治療成績は確実
に進歩してきました.
• 更なる高精度化⇒初期のIMRTと3D-CRTの比較では
– 肺低線量域増加等による放射線肺炎の増加は認めず.
– 腫瘍の呼吸性移動とMLCの作るセグメントのタイミング
による線量投与の不確実性による成績低下も認めず.
– しかし食道炎症状などの副作用低減も認めなかった.
進行肺がん-放射線肺炎
本題に入る前に:肺のDVHを出す際、「肺-PTV」で良い?
DVHG=Lung-GTV, DVHC=Lung-CTV(=GTV+8mm), DVHP=Lung-PTV(=CTV+8mm),
DVHPc=Lung-PTVc(臨床医任せの一律でないマージン)
リンパ節転移がある場合は、それも含めている.
Wang W, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2013 Aug 1;86(5):956-63.
進行肺がん-放射線肺炎
本題に入る前に:肺のDVHを出す際、「肺-PTV」で良い?
• この論文ではDVHG=Lung-GTVでの平均肺線量が、
症状のある放射線肺炎(Grade2)との相関が有意で
最もp値が小さかったとされています.
• Lung-PTVでの解析、報告も多いです.
(個人的には呼吸移動対策の恩恵が余り得られない
ので好きではありませんが)
Wang W, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2013 Aug 1;86(5):956-63.
進行肺がん-放射線肺炎
本題に入る前に:肺のDVHを出す際、「肺-PTV」で良い?
• 非小細胞肺癌は腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌など包括し
た呼称で、腫瘍の持つbiologyは多様です.
• 手術標本を用いた顕微的進展範囲の検
討で下記マージンが報告されています
扁平上皮癌
腺癌
– 扁平上皮癌は平均1.09mm、95%含むには
6mm、
– 腺癌は平均2.49mm、95%含むには8mm
→こういった違いまで反映されているので、
「肺-CTV」も捨てがたいです.
Giraud P, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2000 Nov 1;48(4):1015-24.
進行肺がん-放射線肺炎
• よく肺のV20Gyが大事と言
われますが… どのDVHカ
ーブでも同じリスクとは限り
ません.
Kong FM, et al. Semin Radiat Oncol. 2007 Apr;17(2):108-20.
Palma DA, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2013 Feb 1;85(2):444-50.
進行肺がん-放射線肺炎
• 例えば、頸部食道癌IMRTの臨床試験(JROSG12-1)
ではこのような形で線量制約がついています.
• しかし肺癌の場合はこれでも不十分な可能性あり.
進行肺がん-放射線肺炎
• 胸膜中皮腫に対する胸膜肺全摘術後、術後胸腔へ
の化学放射線療法:IMRT54Gy/30frにて、13例中6例
に致死的放射線肺炎を発症.
• 使用した健常肺のパラメータは、V20Gy < 20%、平均
肺線量(MLD) < 15Gy.
全患者
肺炎の起き
た患者
肺炎の起きな
かった患者
Allen AM, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2006 Jul 1;65(3):640-5.
進行肺がん-放射線肺炎
Court LE, et al. J Appl Clin Med Phys. 2009 Apr 28;10(2):2850.
進行肺がん-放射線肺炎
• 兵庫がんセンターからはVS5Gy(cc) = 5Gy以上照射
されない肺の体積も重要と報告.
• よく使われるMLDはV20Gy(%)と相関してしまうことも
多く、VS5Gy(cc)は有用かもしれない.
(肺の線維化のスコア)
Grade3以上肺炎(高度の症状や酸素投与が必要な肺炎)に対
する多変量解析
Tsujino K, et al. J Thorac Oncol. 2014 Jul; 9(7):983-90.
自験例
自験例
水色=5Gy
青色=10Gy
自験例
自験例
自験例
進行肺がん-放射線肺炎
• 放射線治療効果と、放射線肺炎などの放射
線治療の副作用がせめぎ合う場合が多い
• しかもリスクはDVHだけではなく化学療法の
有無・内容や年齢等によっても変化します
→個々の患者での最適解を目指しましょう!
進行肺がん-最近の臨床試験結果(RTOG0617)
III期非小
細胞肺癌
N=544
R
A
N
D
O
M
I
Z
E
60Gy+TC
N=166
60Gy+TC+Cetuximab
N=147
74Gy+TC
N=121
更に追加
化学療法
±Cetuxim
ab
74Gy+TC+Cetuximab
N=110
TC=カルボプラチンとパクリタキセル=化学療法.2Gy/fx.
Bradley JD et al. Lancet Oncol. 2015 Feb; 16(2):187-199.
進行肺がん-最近の臨床試験結果(RTOG0617)
特徴:
• 肺原発巣と転移リンパ節に絞った照射野(=IFRT →
ENIと言われる予防的リンパ領域照射なし).
• 60Gyと言ってもD95処方.
• 3D-CRTもIMRTも許容.
• 肺はLung-CTV.
Bradley JD, et al. Lancet Oncol. 2015 Feb;16(2):187-99.
進行肺がん-IFRTと言ってもD95は大変
isocenterに60Gyを
処方.
10MVXの4門照射.
進行肺がん-IFRTと言ってもD95は大変
同じビーム配置で
PTVの95%に60Gy
処方.
isocenterには
79.5Gy処方されて
いる.
進行肺がん-最近の臨床試験結果(RTOG0617)
全
生
存
率
74Gy群の方が治療成績が悪かった!
生存期間中央値は60Gyで28.7か月、
74Gyで20.3か月.
Bradley JD, et al. Lancet Oncol. 2015 Feb;16(2):187-99.
進行肺がん-最近の臨床試験結果(RTOG0617)
全
生
存
率
Cetuximabという分子標的薬を加えても
成績は変わらない.
Bradley JD, et al. Lancet Oncol. 2015 Feb;16(2):187-99.
進行肺がん-最近の臨床試験結果(RTOG0617)
60Gy vs 74Gy
食道炎/嚥下障害
Bradley JD, et al. Lancet Oncol. 2015 Feb;16(2):187-99.
進行肺がん-最近の臨床試験結果(RTOG0617)
PTVと心臓のcontouring scoresは74Gyの方
が悪かった → 誤魔化しちゃダメ.
• 治療関連死は74Gyで8例、60Gyで3例.
• 心臓はV5、V30共に別々の多変量解析でいずれも有意
な因子.肺の線量を落とすために心臓に逃がした?
• 3D-CRTとIMRTほぼ半々:全生存治療成績に差なし.
• QOL評価:60Gyと74Gyでは3か月の時点で有意な相違
があるが、12か月の時点では差がなくなる.逆に3DCRTとIMRTでは12か月の時点で有意差がある.
• 他にも色々考察されています.
Bradley JD, et al. Lancet Oncol. 2015 Feb;16(2):187-99.
B. Movsas, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2013 Oct 1;87(2):S1-S2. suppl
進行肺がん-化学放射線療法
• 化学療法と根治的胸部放射線治療の併用療法が可能な
局所進行非小細胞肺癌患者にはプラチナを含む化学放射
線療法を行うよう勧められる.(グレードA)
• 化学療法併用時の通常分割照射法(1日1回1.8〜2Gy週5
回法)では,60Gyを最低合計線量とするよう勧められる.
(グレードA)
• 74Gyの高線量照射は行わないよう勧められる.(グレード
D)
• 化学放射線療法では,放射線治療の休止期間をおかない
よう勧められる.(グレードC1)
肺癌診療ガイドライン2014
進行肺がん-放射線療法
• 肺癌の放射線治療では,できる限り実測値に近い計算ア
ルゴリズムを用いた不均質肺補正を行い,3次元的な線量
分布を常に検討することを行うよう勧められる.(グレードB)
• 放射線療法では,照射野設定,線量計算などの品質管理
を適切に行うよう勧められる.(グレードA)
肺癌診療ガイドライン2014
肺癌リンパ節領域の標準化
小宮山ら 肺癌 55 (4):189─205,2015
臨床試験でもプロトコール違反は治療成績の
低下に繋がる
2002-2005年に行われた頭頚部
癌(non-IMRT)の臨床試験
(TROG02.02)より.
黄:最初からプロトコール遵守
(N=502)
青:QAセンターから指摘されて遵
守(N=86)
灰:腫瘍制御に大きな影響を及
ぼさないと想定した違反(N=105)
赤:大きな影響を及ぼすと想定し
た違反(N=87)
Peters LJ, et al. J Clin Oncol. 2010 Jun 20;28(18):2996-3001.
Z0011試験 乳癌領域では
• 臨床的にリンパ節転移陰性の早期乳癌で、センチネ
ルリンパ節(SN)陽性の部分切除術:
→腋窩郭清あり+全乳房照射 vs なし+全乳房照射
⇒結果:生存率やlocoregional再発に差なし
• 照射による腋窩領域への影響があったのでは?
– 照射を受けた791例中228例のみ解析可.
– うち43例は3フィールド以上使用した領域リンパ節照射(プ
ロトコール違反).
– 接線照射のみは185例で142例が高位の評価可能→どちら
の群でも差はないが73例がhigh-tangentで照射.
• 本当に郭清を省略しても良いのか、腋窩に照射を加える
と良いのか加えなくても良いのか、何も分からない結果.
Jagsi R et al. J Clin Oncol. 2014 Nov 10;32(32):3600-6.
Z0011試験 乳癌領域では
• 臨床的にリンパ節転移陰性の早期乳癌で、センチネ
ルリンパ節(SN)陽性の部分切除術:
→腋窩郭清あり+全乳房照射 vs なし+全乳房照射
⇒結果:生存率やlocoregional再発に差なし
• 照射による腋窩領域への影響があったのでは?
– 照射を受けた791例中228例のみ解析可.
– うち43例は3フィールド以上使用した領域リンパ節照射(プ
ロトコール違反).
– 接線照射のみは185例で142例が高位の評価可能→どちら
の群でも差はないが73例がhigh-tangentで照射.
• 本当に郭清を省略しても良いのか、腋窩に照射を加える
と良いのか加えなくても良いのか、何も分からない結果.
Jagsi R et al. J Clin Oncol. 2014 Nov 10;32(32):3600-6.
Special situtation
• 根治的(化学)放射線治療後、遺残・照射内再発に対
するsalvage(救済)治療としてSRTが行われる場合もあ
ります.
• 根治が得られる場合もあり
ますが、症状のある肺炎が
50%前後で発症するなど有
害事象のリスクも高い状況
です.
Kelly P, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2010 Dec 1;78(5):1387-93.
Parks J, et al. Am J Clin Oncol. 2014 Jan 22.
Special situtation 自験例
66Gy/33fr
18か月後
Salvage SRT 60Gy/10fr
Special situtation 自験例
66Gy/33fr
5年後
48Gy/4fr
定位放射線治療
術前/術後照射
化学放射線治療
非小細胞
肺癌
根治照射
放射線単独治療
緩和照射
少数個転移への放
射線治療
少数個転移への放射線治療
肺癌診療ガイドライン2014
副腎単発転移は有効な場合がある
Holy R,et al. Strahlenther Onkol. 2011 Apr;187(4):245-51.
副腎単発転移は有効な場合がある
全
生
存
率
無
増
悪
生
存
率
原発が制御かつ単発副腎転移に対してBED10=37.5~
72Gy10の照射で良好な成績.
Holy R,et al. Strahlenther Onkol. 2011 Apr;187(4):245-51.
副腎単発転移は有効な場合がある
Onishi H, et al. Acta Oncol. 2012 May;51(5):624-8.
少数個転移への放射線治療
• 原発巣が制御されている単発の副腎転移であれば局
所治療が有効な場合がある.
• 副腎は右も左もOARには要注意.
Bradley JD, et al. Lancet Oncol. 2015 Feb;16(2):187-99., ASTRO55th
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第30回は
仙台です!
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