脳梗塞の緊急治療 血管が閉塞すると脳細胞が死に、麻痺等の症状が出ます。太い血管が閉塞すればより 多くの脳細胞が死に、より強い症状が出ます。急性閉塞した太い脳血管を、脳細胞が 死滅する(脳梗塞に陥る)前に再開通させれば、症状が劇的に改善する可能性がありま す。点滴治療(t-PA)とカテーテル治療の二つの方法があります。 ●点滴治療(t-PA) t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター、一般名をアルテプラーゼ)という薬剤 を点滴し、血管につまっている血の固まりを溶かすことで血管を再開通させます。米 国では脳梗塞を起こしてこの薬を使った人の 39%がほとんど障害のない状態にまで 回復(使わなかった人では 26%)、日本でも 37%の人がほとんど障害のない状態まで回 復したというデータがあります。 必ず発症 3 時間以内に点滴開始しなければなりません。病院に着いてから、血液検査 や CT 等を終わらせなければならないので、発症したらすぐに病院受診しないと間に 合いません。ただし 3 時間以内でもすでに脳梗塞が完成している患者さんには使用で きません。 CT の早期脳梗塞巣 よく見ないとわかりにくいですが、 矢印の場所付近は反対側に比べて わずかに黒く、脳表のしわがなくな っています。この場所は脳細胞がす でに死んでいることを示します。 このような患者さんは t-PA が使え ません。 また強力に血液の固まりを溶かす薬なので、逆に出血を助長します。特に脳内に出血 (出血性脳梗塞)すると命に関わることもあります。米国では症状の悪化を伴った出 血性脳梗塞は 6.4%、うち死亡は 2.9% (アルテプラーゼを使わなかった人では 0.6%、 うち死亡は 0.3%)。日本では 5.8%、うち死亡は 0.9%というデータがあります。 t-PA は有効な薬ではありますが、使いどころを間違えると、副作用で症状悪化し死 亡するかもしれない恐い薬です。CT や診察所見等を専門の医師が速やかに検討した 後に使用しますので、どこの病院でもこの薬が使えるわけではありません。 ●カテーテル治療 通常右足の付け根から局所麻酔下に動脈内へカテーテルを入れます。このカテーテ ルを目的の血管へすすめて造影剤を注入し、閉塞血管を確認します。 そして閉塞血管を再開通させるために 1、閉塞部位へカテーテルをすすめ、詰まっている血の塊(血栓)を吸引します。 2、薬剤を閉塞血管へ直接注入し、血栓を溶かします。 3、風船(バルーン)を閉塞部位へ挿入し、閉塞部位をこじ開けます。 4、 風船等で再開通させた血管が、再閉塞しないように金属の筒(ステント)を挿入 し、血管壁を補強します。 閉塞部位の状況に応じて、上述のような方法等を組み合わせて再開通させることを試 みます。血管の状況によって必ず再開通させられる訳ではありませんし、合併症のた めに症状悪化する可能性もあります。 カテーテル治療は発症3時間以上経過した患者さんでも、まだ脳細胞が死んでいなけ れば行う事が可能です。脳細胞が生き残っているかどうか、済生会病院ではMRIで判 断します。しかし血管閉塞後脳細胞が生き残れる時間はわずかです。 t-PA点滴と違い、特別な脳血管造影装置、道具が必要です。さらに脳血管内治療を専 門にする医師がいる病院でしかできません。 ●注意点 t-PA、カテーテルともに重症脳梗塞を劇的に改善させる可能性のある有効な治療です。 しかし治療を行うには時間制限があります。脳梗塞を疑う患者さん はただちに病院を受診してください。ただしt-PA、カテーテルともに重篤 な合併症を起こすかもしれない治療のため、軽症の方には行いません。治療を行った がために合併症で逆に症状悪化したのでは意味がありません。
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