漁村・漁港地域における 自然エネルギーを利用した振興策の検討 - 平 成 25 年 度 報 告 書 - 平成 26 年3月 一般財団法人 東京水産振興会 まえがき 当会では、東日本大震災を受けて、漁港や漁村における再生可能エネルギーの利用に注 目してきましたが、平成 25 年度より「漁村・漁港地域における自然エネルギーを利用した 振興策の検討」事業に取り組むことといたしました。 そこでの基本は、エネルギーの小規模分散型、地産地消型の追求にあります。それに加 えて、本事業では、エネルギー種類の複合利用も念頭に置いています。漁港・漁村地域の 水際線をまたいで、 海側の海洋エネルギーと陸側の再生可能エネルギーを対象に取り上げ、 最適な組み合わせ、つまり小規模・複合型ベストミックスのシステムを追求しています。 こうした検討は、他ではまだそれほど本格的には取り組まれていない、非常に先進的かつ ユニークな、大変意義のあるものと言ってよいと思います。 本報告書は、こうした問題意識にもとづいて着手した事業の初年度である平成 25 年度 の報告書です。本事業の調査研究期間は 3 か年のものであり、平成 25 年度は、理念および 基本的考え方を確認しながら、 構築すべきシステム構成の予備的な検討までを行いました。 来年度には、モデル地域を設定したうえで、具体的な小規模・複合型システムの概念設計 的なまとめを行い、3 年目は本格的な FS(実現可能性調査)を行うことを想定しています。 本調査研究では、本テーマに関するわが国を代表するメンバーからなる委員会を設置し、 その取りまとめを一般社団法人海洋産業研究会にお願いしました。 報告書が関係方面のご理解をいただくとともに、大いにお役に立つことを期待していま す。 なお、本事業の実施に際しましては、座長の北海道大学大学院水産科学研究院長の嵯峨 直恆氏をはじめ、委員としてご尽力いただいた各位、並びに取りまとめを行っていただい た海洋産業研究会に厚くお礼申し上げます。 平成 26 年 3 月 一般財団法人東京水産振興会 会 長 井 上 恒 夫 漁村・漁港地域における自然エネルギーを利用した振興策の検討 -平成 25 年度報告書- 目 次 はじめに 第Ⅰ部 総論 第Ⅱ部 わが国における再生可能エネルギーの現況と政策動向 Ⅱ-1.海洋における利用可能な再生可能エネルギーの概要 Ⅱ-2.利用可能な再生可能エネルギーの概要(地熱、小水力、太陽光、その他) Ⅱ-3.国の政策動向 第Ⅲ部 漁村・漁港地域における複合型再生可能エネルギーの導入と振興方策の検討 Ⅲ-1.海洋再生可能エネルギー導入の可能性について Ⅲ-2.海洋エネルギーとスマートグリッド Ⅲ-3.漁村・漁港におけるエネルギー需給やエネルギー利用策 Ⅲ-4.地域振興と自然エネルギー利用 Ⅲ-5.関連団体の動きと各地の導入に関する取組の動向 巻末資料 ・ 委員名簿 ・ 活動概要 第 1 回委員会 第 2 回委員会・第 1 回視察会(函館) 第 2 回視察会(波崎) 第 3 回委員会・第 3 回視察会(大分) はじめに 本報告書は、東京水産振興会からの委託による平成 25 年度「漁村・漁港地域における 自然エネルギーを利用した振興策の検討」報告書である。 東日本大震災・大津波・原発事故の経験から、再生可能エネルギーの開発利用に拍車が かかってきているが、なかでも注目を集めているのが海洋エネルギーである。特に、先行 している洋上風力発電は大規模な Offshore Wind Farm を追求する動きが主流となっている。 しかしながら、大規模集中型から小規模分散型への転換、またエネルギー種類の複合利 用、 さらに地産地消型のシステムもまた、 その重要性が強く訴えられるようになってきた。 換言すれば、スマートコミュニティ、スマートビレッジが、沿岸の漁港・漁村地域におい ても次世代の社会像として必要となってきているのである。 もちろん、海洋エネルギー利用の大規模化の追求も必要であるが、それには少なくとも 10 年、20 年単位の時間が必要となってくるであろう。とすると、地域の漁業者、漁村住民 にとって、実際にそれを見、またその恩恵に浴するまでには相当の時間がかかることにな り、 再生可能エネルギー利用についての理解と関心、 協力姿勢が冷めていくとも限らない。 そこで、漁港・漁村にとってできるだけ早く、身近に再生可能エネルギー利用がもたら されることを目指して、本事業では 5 年単位の時間スケールで実現可能なシステムを追求 することとした。そして、その地域の海岸線を挟んで陸域/海域における利用可能な再生 可能エネルギーをまな板の上に載せ、その中から組み合わせ可能なものを複合的に利用す るベストミックスのシステム化を図るという考え方に立脚することとした。 対象となる利用可能な再生可能エネルギーの種類を並べると、次のようである。 地熱発電(温泉熱含む)/小水力発電(沿岸河川、上下水道、農業用水等)/ 風力発電(陸上、洋上)/波力発電(防波堤利用型、海面浮体型、その他)/ 潮流発電(自然界潮流利用型、流速増強型)/潮汐発電(水位差利用) (水力 発電との連携とも)/海洋温度差発電/その他 また、当然ながら、得られた電力の地域における消費方策、さらには漁港・漁村の水産 振興ひいては地域振興に貢献しうるものを目指すこととした。そこで、全国から数ヶ所、 モデル地域を選定して実際のプロジェクト化を図るためのフィージビリティスタディ(FS) までをも行うこととする。こうした基本的考え方にもとづく検討は、他にそう例がなく、 画期的かつ意義深い提案研究と言ってよいであろう。 さらに、本研究事業は単に研究と提言にとどまることなく、デモ・プロジェクトとして 実現を目指すという点も強調しておきたい。折しも、現行の漁港漁場整備計画が平成 28 年度で区切りとなるので、近々改定作業期に入る。水産庁を中心とする関係官庁の協力と 支援を仰ぎながら、本プロジェクトから新たな価値を生み出し、実現化へと結びつくよう 努めていきたいと考える。 本事業が、関係方面の有用な参考となり、かつ、大きな支持を得て、現実のものとなる よう力を尽くしていく所存で、 皆様方の積極的なご協力とご支援をお願いする次第である。 平成 26 年 3 月 一般社団法人海洋産業研究会 第Ⅰ部 総論 北海道大学大学院 水産科学研究院長 嵯峨 直恆 1. はじめに 1970 年代初め地球の未来に対する警鐘を鳴らす画期的な本『成長の限界』(ローマクラブ)が出版さ れてから、かれこれ 40 年という歳月が流れた。今でもこの本の教える社会や経済のあり方を含めた人類 の生き方の問題提起のインパクトはいささかも衰えていない。私たち団塊の世代が慣れ親しみ、そして 永続を願った「高度成長」 ・ 「強競争力」もバブルが弾けた 1990 年代には実現困難な時代となり、今日に 至る。 「無限の成長」 ・ 「無限の競争」 ・ 「無限の効率」には無限の惑星が前提であり、これが大いなる幻想・ 見果てぬ夢であることは今となっては自明の理であるが、当時、私達はいつまでも続くと思っていた。 「成長の限界」 ・「競争の限界」・ 「効率の限界」という問題意識は極めて今日的課題である。 私達がふだん使用しているエネルギーは、元来すべて約 138 億年前の宇宙の開闢に起源する。約 46 億年前に太陽や地球等の惑星を含む太陽系が誕生し、 約 40 億年前に地球上に原始的生命が誕生したとさ れている。爾来、地球上では地球環境の変遷と生命の進化が起こり、生物種が誕生・絶滅を繰り返し、 現在百数十万種が存在するといわれている。多くの種の絶滅には餌不足や酸素不足等いろいろな原因が あるが、その中でも地球環境の厳しい変化、例えば大氷河・寒冷化・超大陸分裂・乾燥化・巨大隕石の 衝突等の天変地異が大きな原因としてあげられよう。 ヒトの祖先である哺乳類は今から約 2.2 億年前の三畳紀後期には既に出現していたと思われる。霊長 目の仲間が、約 500 万年前に出現した。原人(ホモ・エレクトス)が約 180 万年前に出現し、そして、 今から 120 万年前に私たちの直接の祖先である新人類(ホモ・サピエンス)が出現した。 その後、人類は道具を使用し、狩猟採集生活を営むようになる。この頃に人類は火という最初のエネ ルギーを使うようになったといわれている。1 万年程前に、農耕文化が始まり、また文字が発明され、 本格的な文明というものが始まる。この頃(BC8000 年)の人口は 100 万人程度といわれている。文明 が進歩するとともに人口も 2 億人(BC0 年)、3 億人(1000 年)と徐々に増えた。17 世紀後半に起こる 産業革命前には 5 億人(1650 年)だったものが、産業革命後 10 億人(1800 年) 、20 億人(1900 年) 、30 、50 億人(1987 年)、60 億人(1998 年) 、70 億人(2011 年)と急激 億人(1960 年)、40 億人(1974 年) に増加してきており、2025 年には約 80 億人、そして 2050 年には 100 億人弱となると予想される。 このような人口の増加と文明のあり方(文明を特徴づけるキーとなる物質・エネルギー・道具等)は 密接に関連しており、例えば、採集、狩猟や漁労などによって生計を立てていた時代(狩猟・採集社会) では、物質として自然界の動植物が、エネルギーとして草木等の天然バイオマスが、道具として石器が 用いられていた。しかし、この時代の終わりに気候変動が起こり、氷河期(最終氷期)が訪れる。この 地球環境の変動(急激な温暖化と寒冷化)により、自然界の動植物が激減し、当時の人口を養う食料の 確保が困難になったことが、次の時代の農耕・牧畜社会への大きなモチベーションとなったことは想像 に難くない。 その後、物質として天然バイオマスや鉱物資源に加え、石炭・石油を原料とする化学製品へ、エネル ギーとして、天然のバイオマスに加え、水力、風力、太陽熱、地熱、石炭、石油、天然ガス、そして近 年では原子力へ、道具としては石器から、土器、青銅器、鉄器、そしていくつかの金属を混合した合金、 現代では化学製品や情報機器等多くの発達した道具(機器等)を用いるようになり、今日に至る。 上記のように、人口問題は文明のあり方と切り離しては考えられず、しかも、私達の文明を育むこの 地球という惑星は無限ではなく有限の星(宇宙船地球号)であることを明確に自覚した 1970 年以降は、 全ては有限であるという制限のかかった考え方で文明のあり方を模索することは必然であろう。 これからの文明のあり方を考える際、物質や道具の選択とともに、エネルギー選択は重要な課題とな る。近い将来、私達が摂取する食料品や身につける装飾品同様、毎日消費するエネルギーについても、 その価格だけではなく、エネルギーの原料種・起源・加工の質や販売・流通を司る団体のポリシーを含 めた多様な価値を総合的に判断して、人々はエネルギーの購入・使用を選択することになるであろう。 2. エネルギー問題の今日的課題 本年4月に資源エネルギー庁より我が国の近未来のエネルギー政策の基本的方向性を示す「エネルギ ー基本計画(第4次) 」が閣議決定された。この中で、 「あらゆる面(安定供給・コスト・環境負荷・安 全性)で優れたエネルギー源はなく、電源構成については、エネルギー源ごとの特性を踏まえ、現実的 かつバランスの取れた需給構造を構築する。そのためのベストミックスの目標を出来る限り早く決定す る。 」とされ、各種エネルギー源のあり方、特にベースロード電源・ミドル電源・ピーク電源に言及され ているが、具体的な数値を示したエネルギーのベストミックスについては明示されていない。 本プロジェクトでは、各種エネルギー源のあり方について総合的に調査し、ベストミックスのあり方 について検討することは直接の目的ではないので、このことについてはあえて触れないが、同計画の中 で、 「我が国は、海外からの資源に対する依存度が高いことから、資源調達における交渉力の限界等の課 題や、資源調達国やシーレーンにおける情勢変化の影響による、供給不安に直面するリスクを常に抱え ており、エネルギー安全保障の確保は、我が国が抱える大きな課題であり続けている。こうした課題を 克服し、国際情勢の変化に対する対応力を高めるためには、我が国が国産エネルギーとして活用してい くことができる再生可能エネルギー、準国産エネルギーに位置付けられる原子力、さらにメタンハイド レートなど我が国の排他的経済水域内に眠る資源などを戦略的に活用していくための中長期的な取組を 継続し、自給率の改善を実現する政策体系を整備していくことが重要である。」(p.18)、とされており、 再生可能エネルギーが国産エネルギー等の開発・導入の促進による自給率の改善という観点から重要な エネルギー源の選択肢の一つとされている。 また、同計画の中で、再生可能エネルギーは、 「現時点では安定供給面、コスト面で様々な課題が存在 するが、温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることから、エネルギー安全保障にも寄与できる有 望かつ多様で、重要な低炭素の国産エネルギー源である。」 (p.19)、と位置付けられ、「再生可能エネル ギーについては、2013 年から 3 年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していく。 そのため、系統強化、規制の合理化、低コスト化等の研究開発などを着実に進める。このため、再生可 能エネルギー等関係閣僚会議を創設し、政府の司令塔機能を強化するとともに、関係省庁間の連携を促 進する。こうした取組により、これまでのエネルギー基本計画を踏まえて示した水準を更に上回る水準 の導入を目指し、エネルギーミックスの検討に当たっては、これを踏まえることとする。これに加えて、 それぞれに異なる各エネルギー源の特徴を踏まえつつ、世界最先端の浮体式洋上風力や大型蓄電池など による新技術市場の創出など、新たなエネルギー関連の産業・雇用創出も視野に、経済性等とのバラン スのとれた開発を進めていくことが必要である。 」 (pp.19-20) 、というような政策の方向性が示されてい る。 以上のように、新しいエネルギー基本計画においても、再生可能エネルギーのエネルギー源としての 割合の具体的数値は明示されなかったが、今後のエネルギー源として益々その重要性が示されている。 3. 21 世紀を「再生資源・持続可能性の時代」へ 産業革命以降の 18~19 世紀を仮に「石炭・機械の時代」とし、20 世紀を「石油・武器の時代」とす るなら、100 年後の私達の末裔は 21 世紀を何という時代と呼ぶだろうか?太陽の表面放射エネルギーは 3.8×1023KWと巨大であり、そのうちのわずかの量(1.77×1014KW)が地球に達する。この地球に達す る太陽エネルギーの大半は地球への吸収、宇宙への反射、地表での熱転換、海中への吸収等である。私 達が再生可能エネルギーの対象とする風・波・海流等の運動エネルギーに転換されるのはその僅か 0.2% の 4×1011KWで、光合成に利用されるのはもっと少なく 0.02%の 4×1010KWである。私達がエネルギー 源としているもののうち、地球起源の原子力(ウラン)や地熱以外の、ほとんどのエネルギー源(石油・ 石炭・天然ガス等の化石燃料、太陽・風力・水力・海洋エネルギー)は太陽光起源といっても過言では ない。今世紀を「再生資源・持続可能性の時代」とするには、上記の地球に降り注ぐ太陽エネルギーを あと僅か有効利用する方策を打ち立てる英知を私達人類は持つべきではなかろうか。 高度経済成長が担保されていた頃、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれていた頃、石油やウ ラン等の地下資源が無尽蔵となんとなく思われていた頃、私達は第 1 次・第 2 次オイルショックの際に 一時的に危機感は覚えたものの、あとは概して楽観的であったような気がする。いろいろな危機はあっ ても、国家の豊かな経済力と円高の恩恵もあり、エネルギー資源を海外から何とか無事調達・輸入し、 地方の隅々まで供給できた。しかし、国家の財政が危機的な今日の状況下では、この仕組みも成立困難 な時代となってきている。2011 年 3 月 11 日の突然の出来事により「成長の限界」 ・「競争の限界」 ・ 「効 率の限界」という言葉の有する意味を身心の奥深いところで悟った私達には、今次世代の人々のために も「自立・分散型、かつ持続可能なエネルギー体系」を許容する地域社会建設への大志と勇気が必要で ある。 石油ピークは既に 2000 年初頭に過ぎ、これから徐々に生産が減少しよう。ウランピークは早くて 2020 年、遅くても 2050 年には訪れるといわれている。これらの地下資源は 2100 年にはおそらく枯渇寸前ま で行くであろう。今年生まれた人々の何%かは生きているそう遠くはない将来である。それでも、幸い なことに残された時間は数十年ある。天から与えられた貴重な時間とも言えよう。私達は英知・大志・ 勇気を持って、今、身の周りで出来ることから「自立・分散型、持続可能なエネルギー体系」に立脚し た活動、例えば家に太陽光パネルを載せる、小さな風車や水車を設置する、照明を LED に切り換える等 の「創エネ・省エネ」活動や、近年個人が求め易い価格帯になってきたクラウド蓄電池の住宅への設置 等の「蓄エネ」活動を実行しよう。これらの活動により、地域の自立・分散型エネルギー体系が発展す るだけではなく、新しい我が国の成長産業が産み出される可能性大である。 4. 漁業・水産業のエネルギー問題 一方、漁業・水産業を取りまく昨今の状況には厳しいものがあり、資源の変動・枯渇、後継者難、収 益性悪化等、漁業経営を圧迫している。とくに収益性の悪化の要因の一つとして、例えば、イカ漁業に おける漁船の動力源や集魚灯のエネルギー源としての重油の高騰による休漁の問題や、収穫後の水産物 の保存・保管の為の冷蔵・冷凍施設の維持・管理費の電力料金の高騰による負担増等々、エネルギー問 題は漁業・水産業においても極めて今日的課題である。 本プロジェクトでは、 「漁村・漁港地域における自然エネルギーを利用した振興策」について調査・ 検討しつつある。その結果の一部をここに中間報告として上梓する。 参考・引用文献 1. ドネラ・H.メドウズ(1972) 『成長の限界』 、ダイヤモンド社 2. 資源エネルギー庁(2014) 『エネルギー基本計画』 (http://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/140411.pdf) 第Ⅱ部 わが国における再生可能エネルギーの現況と政策動向 Ⅱ-1.海洋における利用可能な再生可能エネルギーの概要 東京大学先端科学技術研究センター 宮崎武晃 1. 再生可能エネルギーについて 太陽光・太陽熱、水力、風力、海洋、バイオマス、地熱などは、資源が有限で枯渇性の石炭・石油な どの化石燃料や原子力とは異なり、自然現象の中で更新されるエネルギーとして再生可能エネルギーと 位置付けられる。クリーンで地域分散型であるため、期待は大きく、自然の営みから半永久的に得られ、 継続して利用できるエネルギーである。 再生可能エネルギーは温室効果ガスを排出することなくエネルギーを得られるため、エネルギー変換 効率、コスト、需給バランスなどの問題点が残されているが、地球環境や地域の環境問題対策の一つと しても重要視されている。 ここでは、その中でも特に海洋再生可能エネルギーについて取り上げる。 2. 海洋エネルギー 海洋エネルギーとは海洋が持つエネルギー資源であり、波力、潮汐、潮流、海流、温度差、塩分濃度 差などがあげられるが、現在は実現可能性が高い洋上風力発電も海洋エネルギーの一部に含まれる場合 がある。 海洋エネルギーを利用した発電技術は、日本が世界の先導的な役割を果たしたが、現在は欧米を中心 として活発な技術開発が行われている。しかし地球環境や地域の環境対策としてその技術が再度見直さ れている段階であるとともに、今後の市場の拡大が期待されている。 2.1. 波力発電 波力発電技術は第一次石油危機が開発の動機で、初期は(1976 年)日本が中心となり世界をリードし てきた。日本は大型波力発電実験を IEA(国際エネルギー機関)の共同プロジェクトに提案し、日本を 中心に英国・米国・カナダ・アイルランドの 5 ヶ国で実施し、研究成果は IEA 参加国に提供した。ノル ウェーおよび英国は岸固定式波力発電実験を実施した。 日本でも各種方式の波力発電装置の海域実験が実施され、多くの経験を積み重ねたが、残念なことに 発電コストが高いため、石油危機が一段落した時期に、研究開発は下火となり、中断となった。 2000 年代に入り欧米ではエネルギー需要の拡大とともに、地球環境問題が叫ばれ、海洋エネルギー利 用技術が着目され、波力研究プロジェクトが急増し、一部では商業化の前段階へ駒を進めている。 JAMSTEC/MARITEC 2 図Ⅱ-1-1 JAMSTEC の取り組んだ波力発電装置 (上: 「海明」浮体式、左下: 「三瀬」沿岸固定式、右下:「マイティーホエール」浮体式) (出典:海洋研究開発機構) 2.1.1. 波エネルギー変換メカニズム 波エネルギーを利用するには、利用形態に合わせたエネルギー変換方式を取り入れる必要があるが、 電力としての利用形態の要望が高く、 発電を目的に開発している装置が多い。 波からの電力への変換は、 一般に波の運動エネルギーを一次変換装置で、利用しやすい形態のエネルギーに変換し、二次変換およ び三次変換過程で電力を作り出す。一次変換では流体メカニズムのプロセスであり、二次変換では発電 機を容易に運転するためのシステムを組み込む。 波力発電方式は現在約 100 件以上が提唱されているが、基本のメカニズムは 3 種類に大別される。一 次変換装置の分類は、①振動水柱型、②可動物体型、③越波型、が基本で、これらが沿岸固定や浮体、 さらに海面や海中設置などの状態により異なる。 (次ページの図Ⅱ-1-2 を参照) 振動装置の効率最大点は入力波浪と振動物体が共振する周期で得られ、この共振周期を効果的に利用 できる装置が優れた装置といえる。また装置によっては複数の共振周期を持つ装置が開発され、波エネ ルギーの吸収バンド幅を広げる努力が続けられている。これまでの波力発電装置の研究開発の主題はエ ネルギー変換効率向上が大きな目標であったが、実際の利用および普及を考えると、重要な要素は最終 的には発電コストである。 これまで提案された波力発電装置は多数あるが、実際に実験された装置や運転されている装置は少数 である。実用機の最初は航路標識用波力発電装置であるが、ブイ以外の電源利用には至らなかった。 波エネルギーの分布は、緯度の高い海域に多く存在し、このため欧州の国が積極的に開発に取り組む のは理解できる。しかし、最近の研究では発電コストが最も重要で、波エネルギー分布がそれほど高く なくても、発電コストが低ければ利用できる海域は広がり普及する可能性が高い。 図Ⅱ-1-2 一次変換メカニズム (上左右:①振動水柱型、左下:②可動物体型、右下:③越波型) (出典:IPCC 2011 Special Report、Chapter6 Ocean Energy) 2.1.2. 開発の現況 現在開発中の代表的な波力装置を抜き出すとともに、いくつか概要を示す。 ・国内 (1)振動水柱型 a.多重共振 OWC 型波力発電、 b.ブローホール波力発電システム、 c.後ろ曲げダクトブイ (2)可動物体型 a.日本型 Power Buoy、 b.ジャイロ式波力発電、 c.振り子式波力発電システム、 d.浮体型振り子式システム (3)越波型 a.越波型波力発電装置(固定式) ・海外 (1)振動水柱型 a.Limpet(UK)、b.OE BUOY(Ireland)、 c.Mutriku d.OWC Plant(Spain) (2)可動物体型 a.Pelamis P2(UK)、 b.Power Buoy(USA)、 c.Oyster(UK)、 d.Wave Stear(Denmark) (3)越波型 a.Wave Dragon(Denmark) 以下、主なものについて概説する。 <国内:振動水柱型、a 多重共振OWC型波力発電装置> 多重共振OWC型波力発電装置は、防波堤に組み込んだ空気室内で波エネルギーを空気エネルギーに 変換し、タービン・発電機により電力を得る発電システムである。波エネルギーは空気室の固有振動に 加え、前面に張り出したウォールでの振動周期が作用し、波エネルギーの幅広い周期から効率的にエネ ルギーを吸収できる装置である。 図Ⅱ-1-3 多重共振OWC型波力発電装置 (出典:三菱重工技報) <国内:振動水柱型、b ブローホール波力発電システム> ブローホールとは、一般に海岸で潮を噴き上げる場所を指し、自然の岩場海岸で海水中に開いた空洞 に波が押し寄せ、空洞の内部に海水が入り上部の穴から潮が吹き上げる。これを人工的に岩場海岸から 海中に向かって掘削装置で穴を掘り、海水中に開いた空洞を作り、振動水柱型波力装置の空気室を製作 する考えである。ブローホール波力発電システムは自然の岩盤を掘削して空気室を製作することで、耐 久性の高い波力発電装置は発電コストを引き下げる大きな効果があると期待される。 図Ⅱ-1-4 ブローホール波力発電システム(一次変換の空気室部分は断面図で示す) (出典:ブローホール波力装置、東京大学先端技術研究所) <国内:振動水柱型、沿岸固定式波力発電装置> 日本の「三瀬」沿岸固定式波力発電装置の成功の後に製作されている。「三瀬」沿岸固定式は岩場海 岸に鉄製の空気室をはめ込み、これをコンクリートで覆い空気室を製作した。 (山形県鶴岡市三瀬、図Ⅱ -1-1 左下参照) 三瀬方式の空気タービンを防波堤に組み込んだ実施例もある。酒田港の防波堤組込方式の波力発電装 置で、長期間の運転で多くのデータを取得したが、当初の計画から実験終了後タービンなどは取り外す 予定であったため、終了時に撤去された。 図Ⅱ-1-5 防波堤組込式波力発電装置(山形県酒田港) (出典:港湾空港技術研究所) 千葉県九十九里海岸の防波堤前面に 10 本の OWC 空気室を設置、プラスの圧力の空気を定圧化タンク に導き、この空気圧を利用してタービンを運転し、変動の小さい電気出力を得る方式の実験が長期間行 われた。発電出力は漁協の水槽用水中ポンプの電源に利用された。 図Ⅱ-1-6 定圧化タンク方式波力発電 (出典:竹中工務店 HP) <国内:可動物体型、a.日本型 Power Buoy> 稼働物体型のブイ式の波力発電装置として、米国OPT社のパワーブイをベースにして、発電効率 40%程度の日本型PBが開発されつつある。 (左:OPT 社の Power Buoy) (日本型 Power Buoy) (出典:三井造船㈱) <海外:振動水柱型、Limpet(UK)> スコットランドの沿岸固定式波力発電装置 Limpet は、自然の海岸を掘って空気室を製作した装置で ある。 図Ⅱ-1-7 スコットランド南部アイラ島の Limpet 波力発電装置(裏側から) (出典:Islay Limpet Wave Power Plant) <海外:可動物体型、a.Pelamis P2(UK)> 可動物体型波力装置の代表として英国の Pelamis Wavepower 社製 750kW がある。複数の浮体構造物を ジョイントと油圧装置で繋ぎ、浮体間の運動の差からエネルギーを取り出す。波力発電は依然として商 用前の段階であるが、これまで開発された波力装置のうち出力が大きい装置である。 図Ⅱ-1-8 Pelamis 可動物体型 (出典:Pelamis Wavepower 社 HP) <海外:可動物体型、c.Oyster(UK)> Aquamarine Power 社の Oyster は海面に装置の一部が出た装置で、波により前後に装置が動き、その動 きから油圧出力を導いて発電を行う。 図Ⅱ-1-9 Oyster 波力発電装置 (出典:Aquamarine Power 社 HP) <海外:越波式、TAPCHAN> 固定式は、日本が先行していたこともあり日本方式の模倣がほとんどであるが、海外の例としてノル ウェーの越波式 TAPCHAN がある。これは、入射する波を先方が狭められた水路に導き、波高を高め、 横の貯水池に海水を送り込み、溜まった海水で低落差水車を運転し発電する方式である。 図Ⅱ-1-10 越波式波力発電装置(TAPCHAN) (出典:Tapered Channel Wave Energy HP) 2.1.3. 実証実験場と大規模展開 発電コストは、一般に年間固定費と年間運転費の合計を年間発電量で割った値であり、これまでの研 究で、発電単価が低い装置の場合、仮定として量産化や、構造物の基盤となる防波堤の本体コストは抜 くなどの条件付きである。 海洋の再生可能エネルギー利用技術は開発過程に特徴があり、実証実験に膨大な経費が必要であり、 スコットランドでは European Marine Energy Centre(EMEC)を立ち上げ、波力発電および潮流発電の試験 センターの機能を備えた設備を完成させた。このため装置の開発者達は、この施設を活用し試験コスト の削減が可能であるため、歓迎されている。 図Ⅱ-1-11 EMEC 海域実験場(出典:EMEC HP) 波力発電を大規模に展開するためには、一台の装置で大出力を目指す場合と、複数の装置を一定の海 域に設置してトータルで大出力を得る Wave farm の考え方が必要である。一台の装置で大出力を目指す 場合、波の高い沖合で浮体式を最適化することが重要である。しかし、波エネルギー吸収率を設計波高 で高い性能を示すだけでなく、異常波浪時での装置の安全性が求められる。 一方、複数の装置を設置する Wave farm の場合は装置間の干渉による出力の低下を避ける、または配 置の工夫により出力の向上につなげることなどの検討が今後必要となる。特に、ブイ方式の波力発電装 置は単独で大出力を得ることは不可能であるため、複数の装置を同じ海域に設置し連携することにより 大出力を生み出す。 2.1.4 課題 これまでの研究から、波力発電出力を電力系統に流す場合、接続する電力系統の 1/10 までなら現状 で流すことができる。さらに供給出力を高めた場合は、系統の安定性を確実に確保するために蓄電技術 が鍵を握る。 社会的影響としては発電装置を設置する地域において、装置制作、輸送、設置、保守などが必要であ り関係産業が育つ。また、他の再生可能エネルギー装置との相乗効果も期待され、例えば洋上風力発電 と浮体装置の共有による波力や潮流装置の相乗効果が増し実現性が向上する。また波力発電装置ではす でに実証済みであるが、港湾の防波堤や離岸堤に波力装置を取り付ける防波堤組込み型波力装置も相乗 効果の一種として有効かつ効果的である。 波エネルギーは分散型エネルギーであるため、地域特性が顕著に表れる。よって、利用においては地 域振興と結びつく開発が求められる。このため、波力発電は地域エネルギーの位置づけを明確にして地 元と推進することが重要である。 2.2. 海流・潮流 海流は、地球規模でおきる海水の水平方向の流れで、ほぼ一定方向に長時間流れる。似た現象に潮汐 による潮流があるが、潮汐は時間の経過に伴って流れや方向が変化し、短い周期性を持つ。 海流発電および潮流発電は、海水の流れの運動エネルギーを水車、羽根の回転を介して電気エネルギ ーに変換させて発電させる方式である。 海流の代表は黒潮で、東シナ海を北上して九州と奄美大島の間のトカラ海峡から太平洋に入り、日本 の南岸に沿って流れ、房総半島沖を東に流れる海流である。流速は速いところでは毎秒 2m以上に達し、 その強い流れは幅 100km にも及び、輸送する水の量は毎秒 5,000 万トンにも達する。 ( http://www.data.kishou.go.jp/kaiyou/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html) 図Ⅱ-1- 12 黒潮の典型的な流路(1.2:非大蛇行、3:大蛇行) (出典:気象庁 HP) 黒潮は、ほぼ定常流と考えられてきた、このため、過去にいくつかの発電装置が考案されたが、実海 域での実験まで至ってない。しかし黒潮は数年から十数年規模の流路変動が観測されている。四国・本 州南方を流れる黒潮には、大きく分けて 2 種類の安定した流路のパターンがある。ひとつは紀伊半島・ 遠州灘沖で南へ大きく蛇行して流れる「大蛇行流路」 、他方は四国・本州南岸にほぼ沿って流れる「非大 蛇行流路」と呼ばれている。 「非大蛇行流路」は、遠州灘から関東近海で小さく蛇行する「非大蛇行離岸 流路」と、四国・本州の南岸近くを直進する「非大蛇行接岸流路」で代表される。 黒潮の典型的な流路を見ると、大蛇行発生時でも四国沖より西側では流路の大きな変化はないので海 流発電を実施する海域の選択により利用できる。 一方、潮流は太陽、地球、月などの天体運動による潮汐力によって発生する海の流れである。地球の 自転に伴って 1 日 2 回の干満、また、15 日周期の大潮、小潮によって変動する流れであるが、海岸地形 や水深などにも強く依存する。しかし、潮流の変動は規則正しく起こるので長期にわたって予測可能で あり、信頼性の高いエネルギー源とみなすことができる。 2.2.1. 海流発電機の種類 海流発電に利用される羽根、タービンは風力発電と同様に、回転軸の方向によって、 「水平軸型」 ・ 「垂 直軸型」の 2 種類、また回転ではなく振動によって発電する形式の「振動水中翼型」を用いる場合もあ る。 1)水平軸型タービン 海水の流れに対して水平方向に回転軸を取り付けた、通常は 2~3 枚の羽根(ブレード)が回転して 発電する。最も代表的な方式は風力発電と同様、プロペラ式である。 2)垂直軸型タービン 回転軸が海水の流れに対して垂直であるタービンで、ダリウス式、サボニウス式が代表的である。流 れの依存性が少なく、一般的にブレードの製造がプロペラ式に比べて容易であるなどの利点がある。 3)振動水中翼型 海水の流れによって水中翼の角度が変わり、揚力と抗力が生じて振動を引き起こす。この振動によっ て発電する方式である。 2.2.2. 日本の取り組み これまで、大学、団体、企業が独自あるいは協力して海流発電システムの実用化に向けて検討が行わ れている。かつて、青森県大間崎における潮流発電の構想などがあったが、現地での合意形成が不調に 終わり頓挫した。 現在では、NEDO の次世代海洋エネルギー発電技術研究開発では、海流発電方式として東大、IHI、東 芝、三井物産の提案が委託先に採択され、また海洋エネルギー発電システム実証研究では潮流・海流発 電方式で川崎重工が共同研究先として採択され、現在実証実験に向けた研究開発を実施中である。 2.2.3. 大規模海流発電 これまで大規模海流発電システムの事業化をめざし検討を進めるグループもあり、新開発したループ 型タービンを用いた海流発電システムの基本設計などのフィージビリティスタディや水槽試験が行われ ている。 大規模化した場合の問題点としては、黒潮流域は船舶往来の主要ルートであり航行への影響を懸念さ れ、海流の潮目などの海域には豊富な漁場も多数あり、船舶運航会社や漁業者とのコンセンサスを得る ことが重要となる。図Ⅱ-1-13 は、水中浮遊式海流発電システムである。この装置は、一対の直径 40m のプロペラ式タービンによってトルクバランスをとり、タービンを繋ぐ水中翼の浮力および揚力と海底 の支持物からワイヤーで係留索のつり合いによって深度制御が可能となって、海流に漂わせる方式を採 用している。 図Ⅱ-1-13 水中浮体式の海流発電システム(CG) (出典:東芝 HP) 海流および流れの向きが変動する潮流の海域で運転可能な図Ⅱ-1-14 に示す装置の実証実験が、川崎 重工業によって実施中で海流より潮流発電に力点があり、沖縄電力や沖縄新エネ開発と協力して沖縄海 域での実証実験の可能性を検討している。特に英スコットランドの実証フィールド欧州海洋エネルギー センターEMEC(European Marine Energy Center)での試験を予定しており、国内の実証実験フィールド の確保を模索中である。 図Ⅱ-1-14 川崎重工の潮流・海流発電装置 (出典:川崎重工 HP) 2.2.4. 潮流発電装置 潮流発電装置は、多くのタイプの装置が提案され、それらの有力なものは現在、実海域での実証実験 中であり、発電効率とともに、長期の安定性、メンテナンスの容易さなどによって淘汰される。また、 潮流は海域によって水深、流速、流向、乱れなども違うので、最適な水車の設計が重要となる。 1) 海外の潮流発電装置 ノルウェーの Hammerfest Strom 社はノルウェーの最北端ハンメルフェスト近くのクバルサンド海峡に おいて、海底設置型 3 翼プロペラ式の 300kW の潮流発電装置で実海域実験を 6 年間行ってきた。現在は 図Ⅱ-1-15 に示す直径 30m、1000kW の「HS1000」をスコットランドの EMEC で実験中である。 図Ⅱ-1-15 Hammerfest の HS1000 (出典:Hammerfest Strom AS HP) イギリスの「Marine Current Turbines」社は、図Ⅱ-1-16 のように海中に支柱を立てて、稼動中は水中 に、メンテナンス時には空中に出るような昇降機能を備えたプロペラ式潮流発電装置の開発を行ってき た。イギリス海峡の Plymouth において直径 11m の 2 翼プロペラ式発電機を設置し最大 300kW の実証実 験に成功した。その後、ツインローター方式で 2 機のプロペラ式水車により 1.2MW の発電に成功した。 図Ⅱ-1-16 Marine Current Turbines の SeaGen 潮流発電システム (出典:Marine Current Turbines HP) 図Ⅱ-1-17 は「OpenHydro」の潮流発電装置で、多翼ローターで構成され、その中央部が空いている。 ローター先端に取り付けられた永久磁石とそれを包むダクトに内蔵されたステーターによって発電する、 水車と発電機一体型の装置である。ローターの中心の穴は、周囲の流れが減速しないようにし、魚の逃 げ道となるように工夫している。 図Ⅱ-1-17 OpenHydro の海底設置状況 (出典:OpenHydro HP) 2) 国内の潮流発電装置 潮流発電は、潮流のスピードと流れる水量(海峡の断面積)によって、発電の可能性および発電量な どがわかる。関門海峡は、潮流のスピードが最大で毎秒 4.8 メートル程あり、国内でも有数の潮流が速 い海峡である。図Ⅱ-1-18 は、北九州市と九州工業大学が関門海峡において実施中の潮流発電装置であ る。 この装置は、直径およびスパン長が 1m のダリウス水車を 2 段に重ね、それと逆方向に回転する一対 のダリウス水車を用いて、1 台の相反転式発電機を回すものである。2012 年 3 月から実験を行っている が、現在は撤去されている。 図Ⅱ-1-18 関門海峡における潮流発電システム (出典:北九州市 HP) 2.2.5. 実用化に向けての課題 我が国の海流・潮流発電の研究開発は、欧米から約 10 年は遅れているが、 「海洋基本計画」において は主要な取り組みとして「海洋再生可能エネルギーの利用促進」が明記された。さらには、我が国固有 の海洋環境に適する発電システムとメンテナンス法の確立が、将来の持続的な運用には不可欠である。 また、風力と異なり、潮流・海流発電は空気よりも格段に密度が高い海水の流動をエネルギー源とし、 変動があまり大きくなく安定した流動であるため、一定の発電見込みを期待することができ、発電規模 も1基で一定の大きさを確保できる可能性が高いといったメリットが多くあるので、海洋再生可能エネ ルギーでは次の有力な選択肢とみなされつつある。 なお、海流・潮流発電については、現行の電力の固定価格買取制度(FIT)の対象にはなっていないが、 早期に FIT の対象に加えて、事業化を促進することが望まれる。 2.3. 洋上風力発電 風力発電の研究は、過去 30 年で陸上において数々の実証が行われ、実用化に貢献してきた。現在、陸 上風力発電の技術はタービン設計、新材料の適用、信頼性向上、エネルギー回収率の向上さらに保守運 用コストの低減で、技術は成熟し、複数の風力発電装置を大規模に配備した Wind farm が形成され発電 所としての利用が拡大している。 しかし、陸上の風況の良い土地選択の困難、さらに立地制約などの面で風力発電の適地が減少してき た。そこで風力発電の導入拡大を図るために、一般に風況が優れ、さらに膨大なポテンシャルを包含す る洋上に視点が向けられた。新たな技術として洋上での風力発電装置の展開が登場してきた。 そこで風力発電の分野のうち洋上風力発電に限定して、以下に示す。 洋上風力発電は大別すると、装置本体の一部を海底に固定する「着床式」と装置本体を海面に浮かせ た「浮体式」に分類され、歴史的には欧州を中心に着床式から始まり、現在は欧米および日本で一部浮 体式の洋上風力発電の開発研究が行われている。 洋上風力発電は陸上風力発電と比較し大きな利点が挙げられている。①風況が良く乱れが少ない、② 土地や道路の制約がなく大型風車の導入が比較的容易、③景観や騒音への影響が少ない。このため大型 風車の設置が可能で、安定した発電効率が達成される可能性が高い。 一方、コストが増加する主な項目をまとめると、①洋上風車の基礎地盤特性、②洋上風車の建設費お よび維持管理費、③洋上変電設備および海底ケーブル、が挙げられる。これらの課題を解決する技術開 発が必要となる。 2.3.1. 着床式の現況 洋上の利点は風の平均風速が陸上に比べ高く、安定、かつ乱れが少ないことである。特に広い海面が 利用可能で、大型風車や、複数の洋上風車により陸上より大型の Wind farm が形成しやすい。そのため、 欧州では出力が 5MW 級の洋上の専用風車の製作が進んでおり、7-10MW 級の技術開発が急ピッチで進 められている。陸上風車との違いは、環境条件が大きく異なるため、技術的対策が必要な項目がある。 特に洋上の湿度・塩分、さらにアクセスが常時できないため、補修・メンテナンスが少ない信頼性の高 い安全な装置が必要とされる。 洋上風力発電は欧州が先行し、2009 年までに稼働した Wind farm は水深 25m までの沿岸の浅い海域 にモノパイル式、重力式やジャケット式などの着床式である。パイルを用いた構造では、大口径化に進 み、さらに地盤の挙動にも注意が払われた。風車は地盤の特性により固有振動が発生し、風車本体との 共振を指摘され、安全性の検討が進んでいる。 <国外の着床式> 欧州の着床式は沿岸の浅い海域においてモノパイル式、重力式やジャケット式などが展開している。 初期は水深 2~6mの遠浅の海岸に設置され、風車の大型化に伴い水深は深くなり、出力 5~7MW 装置 の運転が行われ、多くの貴重な経験を積んできた。 欧州における着床式洋上風力発電の研究開発で注目を集めたのは、1991 年にデンマークで 11 基の洋 上風車が建設された装置で、水深は 2~6mの遠浅の海岸に設置された。その後、風車の大型化や発電効 率の向上、さらに水深は深くなり、出力 5~7MW 装置の運転が行われ、多くの貴重な経験を積んできた。 特に英国は洋上風力発電に積極的に取り組んでおり、2020 年までに 40GW の設備容量を目標にしている。 欧州では建設費当たりの発電量を増やす目的で風車の大型化が進み、主流は 30~50MW 級の商業運転 も始まっている。 英国政府は洋上風力発電の一層の促進を計画し、世界最大となる London Array で超巨大風力発電所の 計画が示されている。また欧州風力発電協会は、2020 年までに 4000 万 kW、2030 年までに 1 億 5000 万 kW の洋上風力を開発するという野心的な目標を掲げ、次々と大規模洋上風力発電所が建設されている。 図Ⅱ-1-19 Middelgrunden Wind farm デンマーク (出典:Power Technology Com. HP) <国内の着床式> 国内で稼働している洋上風力発電装置は、沿岸の浅い海域にパイルを打ち、その上部に風車を取り付 けたものが多い。2004 年護岸水路内に取り付けた、サミットウィンドパワー酒田(山形県酒田市) 、2004 年防波堤付近に取り付けた、せたな町洋上風力発電所「風海鳥」 (北海道瀬棚町) 、2010 年護岸付近に取 り付けた、ウィンド・パワーかすみ(茨城県神栖市)などがあるが、陸上から近いことから、基本的に は陸上風車技術の延長上に位置する着床式の洋上風力発電装置である。なお、せたな町のものは海底送 電ケーブルが敷設されている。 図Ⅱ-1-20 ウィンド・パワーかすみ(茨城県神栖市) (出典:Wind Power Group HP) 本格的な着床式洋上風力発電の実証研究は NEDO の実証事業として、千葉県銚子市および福岡県北九 州市の沖合で実施されている。太平洋側と日本海側に設置することで、洋上の風況特性を定量的に評価 することが可能になり、 風車に作用する風荷重の評価や、風況予測手法の検証が可能となる。特に我が 国周辺は台風の通過があり、大型の風車設置とメンテナンスの経験がないため、洋上風力発電が普及し ていく上で設備の安全性、信頼性、経済性に関する様々な課題がある。特に大きな課題は高コストで、 風車、基礎、海底ケーブルの設置工事のコストは、陸上の約 2 倍と言われ、さらに運転開始後の維持管 理についても多くの費用を要する。 千葉県銚子市の沖合約 3km の海域に設置した、2.4MW の洋上風力発電は風車の基礎部分を海底に固 定した着床式である。そこから発電電力を陸上に送電することで、風車の信頼性や継続的に発電を行う ために不可欠なメンテナンス技術など、 沖合洋上風力発電の導入や普及に必要な技術データが得られる。 福岡県北九州市沖約 1.4km の海域に設置した 2MW の洋上風力発電は銚子の設備と同様に発電電力を陸 上に送電することで、普及に必要な技術の確立を目指している。 図Ⅱ-1-21 銚子沖の洋上風車(左)と風況観測タワー(右) (出典:銚子市 HP) 2.3.2. 浮体式の現況 浮体式洋上風力発電は、水深が深くなるのに伴い着床式の設置コストが増加することから提案された 方式で、特に大型風車により水深 60m より深い海域での運転が求められている。この場合、浮体式は着 床式に比べコストの水深依存性が低くなるので、浮体式の開発が進んでいる。一般に水深が 50m よりも 深い海域では着床式よりもコスト的に有利であるとされ、浅海域が少ない地域に適した洋上風力発電と して推進されている。 既に風車部分、浮体部分の個々の技術はほぼ確立しており、現在は全体システムの最適化、揺動によ る発電損失の最小化、大水深での施工方法の確立が課題となっている。浮体式に関しては種々な方式が 検討されてきたが構造および係留方式からの分類は、緊張係留式、セミサブ式、スパー式の三方式に大 別される。浮体式は海上に浮かぶ構造物であるため、安定性や安全性を確保するために、構造物のメタ センターを高くする場合や、重心を下げ復元性を確保する方式も提案されている。 <国外の浮体式> Blue H はオランダの会社が、2007 年イタリアの南東で岸から約 21km、水深 113m に建設された出力 80kW の初の緊張係留方式の浮体式洋上風力発電施設で、一年間の洋上実験を実施し、各種のデータを 取得し 2008 年に終了した。 ノルウェーの Hywind はスパー型浮体式で 2.3MW の発電能力を持ち実用を目的として 2009 年、ノル ウェーの沖合 10km の水深 220m の北海で、海底に 3 本の鎖で係留された筒状の浮体の上に、高さ約 65m の風車を搭載した。この装置により、これまでの洋上風力発電の概念が大きく変わり、潜在的に巨大な 市場があることを示した。 2011 年ポルトガルの Wind Float プロジェクトは水深およそ 50m の場所に 20MW の発電能力の風車を 海底に 4 本の鎖で係留された三角形のセミサブ型浮体に搭載し実施された。いずれの実証研究でも浮体 式洋上風力発電設備 1 基のみの建設であり、将来大規模浮体式の Wind farm を実現するためにはいくつ かの技術的な課題が残されている。 <国内の浮体式> 日本の海岸線は急激に深くなる場所が多いので、海底に固定する着床式に比べ深い海域でも設置でき る浮体式の開発が期待されている。 このため政府は 2018 年を目処に浮体式洋上風力発電を実用化する目 標を掲げ、長崎県と福島県の沖合で実証研究を行うとともに、世界市場における競争力の高い風力発電 システムの開発を目指している。このため、まず、100kW 以下の試験装置を設置して各種の調査を行い、 2MW 級の実証機を目指して推進している。 長崎県・五島列島の椛島沖約1km 沖に 2MW の浮体式洋上風力発電機が完成している。これは環境省 の助成事業で、浮体部分は製作コストを低減するため、海中部分は工場で大量生産可能なプレキャスト コンクリートで上部は鋼製のハイブリッド構造の円筒形状のスパー型である。係留方式はカテナリーチ ェーンと重力式アンカーを採用し、風車はダウンウィンド型 2MW の出力である。本体は全長 170m、 直径 80m の風車部分は海上に浮かんでおり、風況・海象の影響で傾いても復元できるように設計されて いる。 図Ⅱ-1-22 長崎県・五島列島の浮体式風力発電機 (出典:戸田建設 HP) 福島県では沖合 20~30km の洋上に浮体式洋上風力発電の建設が進んでいる。これは資源エネルギー 庁直轄の実証実験で 2MW の風車 1 基から開始し、第 2 期の試験では 7MW の大型油圧式風力発電装置 など 2 基を建設する。現在、開発を進めている 7MW クラスの超大型風車は、風車が生み出す回転力を 歯車ではなく油圧で発電機に伝える動力伝達装置を持ち、メンテナンス性を改善した世界に類を見ない 新しい風車である。 図Ⅱ-1-23 発電設備の「ふくしま未来」 (出典:福島洋上風力コンソーシアム HP) 浮体式は海上に浮かぶ構造物であるため、他の再生可能エネルギー装置との複合利用が考えられる。 このためには装置の安定性や安全性を確保するために有利でなくてはならない。浮体式に適した発電機 の構造を根本的に見直し、重心が高い通常の風車は浮体設置には不向きとし、重心を下げる装置の開発 も提案され、実証実験を試みている。 そこで開発されたのが、プロペラ型の水平軸方式の風車ではなく、ダリウス風車を利用した垂直軸方 式の風車で、機構部を支柱の根本に取り付けることで、重心を低くし、浮体甲板上でのメンテナンス作 業などが可能となった。実証するダリウス風車は直径 28m、高さ 50m でコンパクトではあり、浮体下部 に取り付けた潮流水車と組み合わせ、900kW の出力である。佐賀県での実証実験が予定されている。 図Ⅱ-1-24 風車・潮流ハイブリッド洋上浮体式装置 (出典:三井海洋開発 HP) 2.4 海洋再生可能エネルギー利用の課題 現在、海からの再生可能エネルギーは全体的に、将来の発電コスト見通しの不確実性が大きいと指摘 されており、今後、再生エネルギーに厳しい条件が示される。このためにも検討項目を全てにわたり十 分に検討することが必要である。さらに、再生可能エネルギーの欠点を補うシステムの導入、エネルギ ーの蓄積・充電・平滑化などあらゆる有効なシステムの導入を考慮する必要がある。 一方、初期段階としては、実現性の高い構想として、スマートグリッドを活用し、小規模・分散型の 発電システムから入るのが一つの方法である。ここには蓄電設備が入るが、蓄電設備が多すぎると設備 利用率が下がり導入コストが過大になるので、バランスを十分取る必要がある。一般に海洋エネルギー 利用の発電装置は長寿命と言われ、25 年から 35 年で見積もられている。波力発電装置でも主要な機器 は 50 年から 100 年の耐久性を維持できる装置開発を目標のプロジェクトもある。 海洋再生可能エネルギーの実用化にはまだ課題があるが、研究開発を実施中の国々は、技術開発と同 時に普及に力を入れており、技術やプロジェクトの進展に合わせて政府の支援策の重要性を認識してい る。その一つは再生可能エネルギーの固定価格買取制度であり、海洋への適用は開発者のみならず投資 家にとって追い風となりうる。 欧州各国は再生可能エネルギーの導入を推進するため、固定価格買取制度はじめ支援制度を整備して おり、我が国においても太陽光、風力、中小水力、地熱の一部は新エネルギー利用等の促進に関する特 別処置法で支援対象であり、平成 26 年度から、洋上風力については対象に取り上げられることになって おり、買い取り価格は 30 円台後半/Kwh とされている。今後は海洋の再生エネルギー利用についても、 同様に財政的支援を含めたきめ細かい制度設計が必要となる。 <参考・引用文献> 1. 新エネルギー・産業技術総合開発機構:NEDO 再生可能エネルギー技術白書-新たなエネルギー社 会の実現に向けて、2010-07. 2. 高橋重雄、他:波力発電ケーソン防波堤の現地実証実験における観測データの解析結果、港湾技術 研究所報告、Vol31,No.2,1992. 3. 3)近藤淑郎他:海洋エネルギー利用技術,森北出版,1996. 4. The Queen’s University of Belfast :Islay Limpet Wave Power Plant, The European Commission, Publishable Report,2002. 5. 木下健他:海洋再生エネルギーの市場展開と会夏動向,サイエンス&テクノロジー,2011. 6. 大澤弘敬、他:波浪エネルギー利用技術の研究開発-沖合浮体式波力装置「マイティーホエール」 の開発―,海洋科学技術センター,2004. 7. IPCC 2011:IPCC Special Report on Renewable Energy and Climate Change Mitigation,2011. 8. 居駒知樹、他:人工ハーバー付 OWC 型波エネルギー吸収装置に関する研究、日本船舶海洋工学会 講演会論文集、第 8 号、2009. 9. 木原一禎、他:ユニット型多重共振波力発電装置の開発,三菱重工技報,Vol.49 No.4,3012. 10. 永田修一:波力発電,日本船舶海洋工学会誌,第 41 号,平成 24 年 3 月. 11. European Marine Energy Center HP 12. 13. 14. 15. 16. 17. 永田豊:わが国のエネルギー選択をめぐる視点,エネルギー・資源,Vol.33 No.2 ,2011. 宮崎武晃:波力発電大規模展開の可能性と課題,海洋理工学会春季大会,平成 24 年 5 月. NEDO:海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務、平成 22 年度報告書、平成 23 年 3 月 宮崎武晃、飯田誠:海からの再生可能エネルギーの利用課題,海洋理工学会誌,Vol.19,No.1,2013 塩野光弘:我が国における潮流発電の現状と課題、ターボ機械、37、4、2009. 千石 新、他:我が国の峡水道と瀬戸内海における潮流発電ポテンシャルマップ、海洋調査技術、 23 (2), September 2011. 18. Huihui SUN, Yusaku kyozuka:Experimental Validation and Numerical Simulation Evaluation of a Shrouded Tidal Current Turbine,日本船舶海洋工学会論文集,16,25-32,2012.12. 19. 新エネルギー・産業技術総合開発機構:海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務、平成 22 年 度成果報告書、2011. Ⅱ-2.利用可能な再生可能エネルギーの概要(地熱、小水力、太陽光、その他) 一般社団法人海洋産業研究会 大西学 ここでは、再生可能エネルギーの中でも海洋エネルギー以外の中小水力、地熱、太陽光、風力、燃料 電池について取り上げ、概要をまとめる。 1. 中小水力 1.1 中小水力エネルギーの概要 水力発電について、ここでは特に固定買取制度(FIT)において買取りの対象となる 30MW 未満の発 電容量のものを主な対象とする。 まず、水力エネルギーの電力エネルギーへの変換は、理論的には以下のとおりとなっている。 発電電力(kW)= 9.8(m/s2) × 水量(m3/s) × 有効落差(m) × 発電効率(η) 9.8(m/s2)は定数であり、発電効率は水車の効率と発電機の効率に依存している。そのため、大枠とし て水力発電では、 「水量」と「落差」によって発電電力量が決まる。 水力エネルギーによる発電は、水量次第ではあるものの、おおむね安定した出力が見込むことができ る。コスト等検証委員会(2011)では、小水力発電について安定した電力供給が可能と考えている。設 備利用率は 60%に設定し、比較的高い稼働率を想定している。ただし、灌漑期と非灌漑期で水量差が大 きい農業用水の利用や渇水の影響を受ける水源の利用などにおいては、別の水源を確保する必要があり、 稼働率も下がる可能性がある。 水力発電導入までの期間は、コスト等検証委員会(2011)によれば 2~3 年と見込まれている。主に、 水利権使用許可申請、環境影響評価・系統連系協議、電気事業法・建築基準法に係る手続き、建設工事、 使用前安全管理検査などの段階がある。 中小水力発電の漁村・漁港地域への導入は、当該地域で選択肢の一つになれば安定的な電力量の供給 が見込める。ただし、導入において許認可などの手続きや一定の時間が必要になると思われる。 1.2. 中小水力エネルギーの発電方式 水力発電の方式は、水の利用面からの分類と落差構造面からの分類の 2 つに分けられる。水の利用面 からの分類では、1)流込式、2)調整池式、3)貯水池式、4)揚水式の 4 方式がある。落差構造面からの分類 では、1)水路式、2)ダム式、3)ダム水路式の 3 方式がある。この他、利用する水資源として、1)渓流水、 2)農業用水、3)上下水道、4)工場内水・他のおおまかに 4 種類に分けられる。 また、水車形式では主に 8 種類に分けられ、1)横軸フランシス水車、2)クロスフロー水車、3)ベルト ン水車、4)ターゴインパルス水車、5)横軸プロペラ水車、6)ポンプ逆転水車、7)水中式発電機一体型水車、 8)上掛・下掛水車がある。このうち 1)~4)は、水量調整運転が可能とされているが、5)~8)は不可能であ る。そのため、5)~8)水車形式の場合、単独系統の運転の際には水車で発生させるエネルギーを消費さ せる装置が必要となる。 有効落差と使用水量に基づく、水車形式の選定図を示す(図Ⅱ-2-1)。有効落差と使用水量にしたがっ て様々な水車形式のタイプが存在することから、導入地域の地理的特性などを踏まえて適切なタイプの 水車形式を選択すれば良い。 図Ⅱ-2- 1 有効落差と水量に基づく水車形式の選択 (出典:NEDO(2013)) 1.3. 中小水力エネルギーのポテンシャルと導入実績 中小水力のエネルギーポテンシャル は、環境省(2011)によると、河川部の賦存量が 1655 万 kWh/ 年(16550MWh/年) 、導入ポテンシャルが 1398 万 kWh/年(13980Mh/年)としている。農業用水の賦存 量が 32 万 kWh/年(320MWh/年)、導入ポテンシャルが 30 万 kWh/年(300MWh/年) 、上下水道・工業用 水道の賦存量 18 万 kWh/年(180MWh/年) 、導入ポテンシャルが 16 万 kWh/年(160MWh/年)となって いる(表Ⅱ-2-1) 。 表Ⅱ-2- 1 中小水力エネルギーの賦存量と導入ポテンシャル量 賦存量 導入ポテンシャル量 (単位:万 kWh/年) (単位:万 kWh /年) 1655 1398 農業用水 32 30 上下水道・工業用水 18 16 1705 1444 河川部 合計 (出典:環境省(2011)より作成) 河川部における地域別・設備容量別の導入ポテンシャル量では、東北の 424 万 kW(4240MW) 、北海 道の 131 万 kW(1310MW) 、中部の 230 万 kW(2300MW)の順で多い(図Ⅱ-2-2)。 農業用水における地域別・設備容量別の導入ポテンシャル量では、中部の 10.1 万 kW(101MW) 、東 京の 6.1 万 kW(61MW) 、北陸の 4.9 万 kW(49MW) 、の順で多い(図Ⅱ-2-3) 。 なお、上下水道・工業用水の地域別・設備容量別の導入ポテンシャル量は示されていない。 図Ⅱ-2- 2 河川部における地域別・設備容量別の導入ポテンシャル量 (出典:環境省(2011)) 図Ⅱ-2- 3 農業用水における地域別・設備容量別の導入ポテンシャル量 (出典:環境省(2011)) また、わが国における近年 10 年間での水力発電の開発動向をみると、件数を伸ばしているのは主に設 備容量が 1000kW(1MW)以下の規模であることがわかる(図Ⅱ-2-4)。 図Ⅱ-2- 4 水力発電の導入量の推移 (出典:NEDO(2013)) 農業農村整備事業において整備された小水力発電に限ってみても、平成 25 年 8 月時点で、全国 31 地 区で展開されている(図Ⅱ-2-5) 。なお、これらの小水力発電施設のほとんどが、100kW 以上 1000kW(1MW) 未満の規模である。これらの施設越の平均建設費は kW あたりで約 130 万円、設備利用率は約 54%との ことである。 さらに計画中・建設中のものが 42 地区控えており、これらも 1000kW(1MW)未満の規模となって いる。そのため、今後も小水力発電については増加していくことが見込まれる。 図Ⅱ-2- 5 農業農村整備事業における小水力発電の整備状況 (出典:http://www.gtbh.jp/news/syousui/25/s-2.pdf) 以上の水力発電の導入ポテンシャル量や導入実績を踏まえると、特に設備容量が 1000kW(1MW)以 下の小規模な小水力発電において、漁村・漁港地域への導入も十分期待できると考える。 1.4. 中小水力エネルギーのコスト コスト等検証委員会(2011)によれば、小水力の発電コストについて、200kW の規模をモデルプラン トとし、約 19.1~22.0 円/kWh と算出している。一方、低炭素社会づくりのためのエネルギーの低炭素化 研究会(2012)によれば、わが国の小水力ポテンシャルに基いて試算した 100~1000kW 規模における小水 力の発電コストを、30 円/kWh 以上としている(図Ⅱ-2-6)。それ以下の規模の場合は、さらに発電単価 は高くなる。 図Ⅱ-2- 6 規模別小水力発電のコスト (出典:低炭素社会づくりのためのエネルギーの低炭素化研究会(2012)) FIT において、中小水力発電は 1~30MW 未満、200~1000kW、200kW 未満の 3 つの区分が設けられ ている。それぞれの買取価格は、平成 25 年度において 25.2 円/kWh(24 円+税) 、30.45 円/kWh(29 円+ 税) 、35.7 円/kWh(34 円+税)である。このため、FIT への全量販売を前提としても、小水力の中でも規 模が小さければ採算が取れない可能性もある。 2. 地熱 2.1 地熱エネルギーの概要 地熱発電は、地熱資源が存在する地層まで生産井を掘り、熱水エネルギーおよびその蒸気エネルギー を利用して、電気エネルギーに転換するものである。 地熱エネルギーによる発電は、安定した出力を見込む事ができる。コスト等検証委員会(2011)では 地熱発電について安定した電力供給が可能と考えており、設備利用率を 80%に設定し、高い稼働率を想 定している。 その他、発電のために取り出した熱水について、給湯利用や農業への熱供給などの二次的利用がなさ れているケースもある。一例として当委員会にて実施した視察会において、新函館農業協同組合森基幹 支店では、北海道電力の森地熱発電所の熱水を利用して、蒸気生産設備を備え、ハウス栽培の熱源とし ても利用している。 地熱発電の導入までの期間は、コスト等検証委員会(2011)によれば予備調査などを除いても 9~13 年と見込まれている。主に、資源量調査、許認可および地元との調整、そして建設に 3~4 年が見込まれ ている。 地熱発電の漁村・漁港地域への導入は、安定的な電力量の供給が見込めるものの、導入における許認 可や建設などで一定の期間を必要とするものと思われる。 2.2. 地熱エネルギーの発電方式 地熱による発電方式は、フラッシュ方式、バイナリー方式、高温岩体方式などがあげられる。 フラッシュ方式は、さらにシングルフラッシュ方式、ダブルフラッシュ方式、ドライスチーム方式の 3 つに分かれる。シングルフラッシュ方式は、生産井を通じて 200~350 度の蒸気と熱水を取り出し、気 水分離器を経て蒸気のみのエネルギーでタービンを回して発電しつつ、還元井で熱水を地下に戻す。ダ ブルフラッシュ方式は、蒸気のエネルギーに加え、熱水によって生じる蒸気も利用して発電を行う。ド ライスチーム方式は、地熱資源の熱水が少ない場合、生産井から蒸気だけを取り出して発電を行うもの である。そのため、気水分離器を必要としない。 バイナリー方式は、アンモニアなどの低沸点の媒体を熱水のエネルギーで蒸気とし、発電を行うもの である。生産井を通じて 80~150 度の蒸気・熱水を取り出し、低沸点の媒体の蒸気を通じてタービンを 回して発電しつつ、還元井で熱水を地下に戻す。低沸点の媒体としては、ペンタン、代替フロン、アン モニアなどが利用される。そのため、フラッシュ方式よりも低い温度の熱水を活用でき、小規模な発電 にも対応している。 高温岩体発電方式は、高温岩体を直接地熱発電に利用するものである。2 本の井を高温岩体まで掘削 し、一方から水を注入し、もう一方から高温岩体で熱せられた蒸気でタービンを回して発電する。 2.3. 地熱エネルギーのポテンシャルと導入実績 わが国において地熱発電に利用できる地熱資源のポテンシャルについて、環境省(2010)では 3 つの 区分に分けて示されている。なおこれらの結果は、社会的条件として、法規制等区分と土地利用区分に ついて考慮されている。 まず、150 度以上の地熱資源を有するポテンシャル分布から、主に北海道、東北北部、九州北西部と 限られた一部の地域のみに限定されることがわかる。沿岸からも遠く、漁港への利用は見込めない(図 Ⅱ-2-7) 。 次に、120~150 度の地熱資源を有するポテンシャル分布では、150 度以上のポテンシャル分布よりも 適地が拡大するものの、北海道、東北北部、九州北西部と限られた地域であることはあまり変わりなく、 漁港への利用も見込みにくい(図Ⅱ-2-8) 。 最後に、53~120 度の地熱資源を有するポテンシャル分布では、北海道、東北、北信越、関東、東海、 九州北部と、かなり広い地域に拡がっていることがわかる。さらに沿岸部近くまで分布している地域も 散見でき、漁港での利用を見込むことができる(図Ⅱ-2-9)。 図Ⅱ-2- 7 150 度以上の地熱資源を有するポテンシャル分布 (出典:環境省(2010) ) 図Ⅱ-2- 8 120~150 度の地熱資源を有するポテンシャル分布 (出典:環境省(2010) ) 図Ⅱ-2- 9 53~120 度の地熱資源を有するポテンシャル分布 (出典:環境省(2010) ) これら 150 度以上、120~150 度、53~120 度の地熱資源毎に、賦存量とポテンシャルがまとめられて いる。53~120 度の地熱資源においても導入ポテンシャルは 751 万 kW と見込まれている。漁村・漁港 地域においても利用できる可能性は高いと考えられる(表Ⅱ-2-2)。 表Ⅱ-2- 2 熱資源毎の賦存量とポテンシャル量 (出典:NEDO(2013)) わが国において、現在稼働している地熱発電所は、2013 年 6 月時点 17 カ所・20 基である(図Ⅱ-2-10) 図Ⅱ-2- 10 稼働中の地熱発電所 (出典:JOGMEC(2013) ) 民間部門で運転している霧島国際ホテルの地熱発電所を除き、ほぼ 1MW 以上の出力となっている(表 Ⅱ-2-3) 。発電方式はフラッシュ方式が主流であるが、近年導入された中には八丁原発電所ではバイナリ ー方式がある。 表Ⅱ-2- 3 各発電所の概要 (出典:JOGMEC(2013) ) 設備容量の推移をみると、電気事業用で利用される大規模な地熱発電所が導入されていないことがわ かる(図Ⅱ-2-11) 。2000 年以降では、先に述べた九州電力の八丁原バイナリー発電設備の 2000kW(2MW) 以外に、新たに大規模な発電所は設置されていない。 発電電力量は 1990 年代半ばに頭打ちとなり、1990 年代以降下降傾向にある。これは施設の老朽化や 生産井につながっている地熱資源の減衰などにより、出力が落ちているものと考えられる。 図Ⅱ-2- 11 地熱発電所の認可出力と発電電力量 (出典:NEDO(2013)) 以上の地熱発電の導入ポテンシャルや導入実績を踏まえると、53~120 度の地熱資源において、漁村・ 漁港地域への導入も十分期待できると考える。 2.4. 地熱エネルギーのコスト コスト等検証委員会(2013)によれば、地熱による発電コストは、出力 3 万 kW の規模をモデルプラ ントにおいて、約 9.2~11.6 円/kWh と算出している。一方、NEDO(2013)によれば、海外の例として、 フラッシュ方式において約 4~10 円/kWh、バイナリー方式について 4~12 円/kWh としている。 さらに、低炭素社会づくりのためのエネルギーの低炭素化研究会(2012)では、フラッシュ方式とバ イナリー方式における発電方式別・発電コスト別の導入量を示している(図Ⅱ-2-12) 。そこから、フラ ッシュ方式のほうがバイナリー方式に比べて安価なゾーンで導入されており、出力に基づく加重平均さ れた発電コストは、前者が 12.9 円/kWh、後者が 14.8 円/kWh と示されている。 図Ⅱ-2- 12 フラッシュ方式とバイナリー方式の発電コスト分布 (出典:低炭素社会づくりのためのエネルギーの低炭素化研究会(2012) ) FIT において、地熱発電は 15MW 以上とそれ未満の 2 つの区分が設けられている。それぞれの買取価 格は、平成 25 年度において 27.3 円/kWh(26 円+税) 、42 円/kWh(40 円+税)である。このため、FIT へ の全量販売を前提とすれば地熱発電はおおむね採算性があると考えられる。 3. 太陽光 3.1. 太陽光エネルギーの概要 太陽光発電は、半導体もしくは色素吸収を利用することで、太陽光エネルギーを電力エネルギーへと 変換する。 太陽光発電は、夜間のみならず曇天・雨天時には稼働しないため、日中においても安定した出力が確 保できるとは限らない。コスト等検証委員会(2011)では、太陽光発電について設備利用率を 12%に設 定している。 太陽光発電による発電電気量に影響をあたえる要因は、設備環境面と技術面の 2 つに分けられる。前 者の要因には、待機透過率、気候、設置方位・傾斜角といった日射条件に依存する。後者の要因は、機 器性能やシステム設計、さらにはモジュール表面の汚れなどがあげられる。 太陽光発電の導入までの期間は、コスト等検証委員会(2011)によれば、契約手続き、補助金の申請、 設置工事、系統接続まで含めても 2~3 カ月と短い。 太陽光発電の漁村・漁港地域への導入は、すぐに設置でき、また漁港での導入実績や他のエネルギー 源との組み合わせ事例もあるため、比較的容易だと考えられる。ただし、発電電力は日中の晴れ間に限 られるため、自家消費などでの利用には何らかの補完設備・機器が必要と考えられる。 3.2. 太陽光エネルギーの発電方式 太陽光発電のシステム構成として、まず、発電を行う電池セル、これら電池セルが接続されて所定の 出力と強度が確保された電池モジュール、この電池モジュールが複数直列に接続されて電圧を高めた電 池ストリング、この電池ストリングを複数並列に接続して所定の電力を構成および架台に固定した太陽 電池アレイといった発電部分がある。これに複数の太陽電池モジュールを繋ぐ接続箱、発電した直流電 力をパワーコンディショナーに送る集電盤、直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナーが 付属する。これに、必要に応じて電力を化学エネルギーとして保蔵する蓄電池が付けられる(図Ⅱ-2-13)。 図Ⅱ-2- 13 太陽光発電のシステム構成 (出典:NEDO(2013)) 次に、太陽光の発電方式は半導体を利用した方式と色素吸収を利用した方式とに分けられる(図Ⅱ -2-14、Ⅱ-2-15) 。 図Ⅱ-2- 14 半導体による太陽光発電の原理 (出典:NEDO(2013)) 図Ⅱ-2- 15 色素増感型太陽光発電の原理 (出典:NEDO(2013)) 素材面からみると、研究段階のものも含めて、おおまかにシリコン系、化合物系、有機系の 3 つの系 に、8 種類で分けられている(表Ⅱ-2-4) 。 表Ⅱ-2- 4 素材からみた太陽光発電の種類 種類 シリコン系 化合物系 実用化状況 単結晶 ~20% 実用化 多結晶 ~15% 実用化 薄膜系 ~9% 実用化 CIS 系 ~14% 実用化 CdTe 系 ~13% 実用化 結晶系 III-V 族系 有機系 変換効率 色素増感 有機薄膜 ~38% (セル効率) ~14% (セル効率) ~12% (セル効率) 研究段階 研究段階 研究段階 (出典:NEDO(2013)より、一部改変) また設置ケース毎の分類では、4 タイプに分けられる(表Ⅱ-2-5)。 表Ⅱ-2- 5 設置ケースからみた太陽光発電の区分 設置種類 屋根置き型 主に使用される太陽電池 結晶シリコン系 基盤 ガラス 化合物系 地上設置型 結晶シリコン系 ガラス 薄膜シリコン系 化合物系 建物一体型 集光型 薄膜シリコン系 ガラス 化合物系 フレキシブル III-V 族系 Ga、GaAs など(発電素子の基盤) (出典:NEDO(2013)より、一部改変) 太陽電池セルが柔軟な形にできるため、設置種類にあるように太陽光発電システムの設置場所は一定 の融通がきく。そのため、漁港・漁村地域の施設状況にあわせて、屋根置き型のみならず建物一体型な ども含めて導入の検討を行うことができる。 3.3. 太陽光エネルギーのポテンシャルと導入実績 わが国において太陽光発電が利用できるポテンシャルについて、NEDO(2013)に基づき年間最適傾 斜角の斜面日射量からみる。主に太平洋側において太陽光発電に適した日射量を持つ地域が広がってい る(図Ⅱ-2-16) 。 2.4.4 太陽光エネルギーのコスト 図Ⅱ-2- 16 年間最適傾斜角の斜面日射量 (出典:NEDO(2013)) わが国における太陽光発電の導入量は、累積でおよそ 7000MW に迫る(図Ⅱ-2-17) 。2000 年まで年間 40%を超える増加率を誇っていた。しかし、2000 年代に入って急激に低下し、2007 年とその翌年は増加 率が 10%程度まで低下した。これは 2005 年に国の「住宅用太陽光発電導入促進事業」が終了したこと に起因すると考えられる。その後、2009 年以降再び増加率は高まり 2010 年代に入って 30%を超える値 となっている。これには、2009 年 11 月からはじまった「太陽光発電による電気の新たな買取制度」 、2012 年 7 月から開始された「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」 (2011 年 8 月 26 日成立)に基づく影響と考えられる。 図Ⅱ-2- 17 太陽光発電の導入量の推移 (出典:NEDO(2013)) なお、低炭素社会づくりのためのエネルギーの低炭素化研究会(2012)では、港湾施設の太陽光発電 の導入ポテンシャルが示されている。これによれば、技術開発が産業界に任された状態で、港湾施設の 太陽光発電導入ポテンシャルは設備容量で 70.43 万 kW が見込まれている。 ちなみに、国交省管轄の港湾施設は、国際戦略港湾、国際拠点港湾、重要港湾、地方港湾、56 条港湾 を併せて 1064 港とある。また、水産庁管轄の漁港は、第 1 種から第 4 種まで併せて 2909 港ある。これ らを踏まえると、漁港に太陽光を導入する余地は一定存在するものと考えられる。 以上、太陽光発電の導入ポテンシャル量や導入実績を踏まえると、太平洋側地方における漁村・漁港 地域への導入が十分期待できると考える。 3.4. 太陽光エネルギーの発電コスト コスト等検証委員会(2011)によれば、太陽光発電による発電コストは、住宅用が 33.4~38.3 円/kWh、 メガソーラーが 30.1~45.8 円/kWh と算出している。 なお、住宅用のモデルプラントにおいて出力を 4kW、 メガソーラーで出力を 1200kW に設定している。 また NEDO(2013)では、住宅用を対象としたわが国における太陽光発電システムの平均価格が示さ れている(図Ⅱ-2-18) 。1990 年代後半には合計 100 万円を超えていたが、それ以降、同平均価格はほぼ 一貫して右肩下がりとなっている。近年急激に価格がさがっており、2012 年には 50 万円を切っている。 この期間にほぼ半額になっている。価格低下の要因は、太陽電池本体および付属機器である。逆に設置 工事費用はあまり変化が見られない。 図Ⅱ-2- 18 日本の住宅用太陽光発電システム平均価格 (出典:NEDO(2013)) さらに太陽光発電のコストについて、2014 年の 4 月から 12 月の期間を対象として、10kW 未満、10kW ~1000kW 未満、1000kW の規模別で示されている(図Ⅱ-2-19)。 10kW 未満の場合、平均値は 42.7 万円/kW、中央値だと 43.7 万円/kW である。10kW~1000kW 未満の 場合、平均値は 43.4 万円/kW、中央値だと 41.3 万円/kW であり、10kW 未満と比べて平均値および中央 値ともに大きな差は見られず、規模による差はほとんど見受けられない。1000kW(1MW)以上の場合、 平均値が 28.0 万円/kW、中央値だと 26.8 万円/kW であり、1000kW(1MW)未満と比べてほぼ 6 割とな っている。メガソーラー級の規模になるとある程度の費用の低減が見られることがわかる。 図Ⅱ-2- 19 太陽光発電のシステム価格の分布 (出典:NEDO(2013)) FIT において、太陽光発電は 10kW 以上、10kW 未満、10kW 未満(ダブル発電)の 3 つの区分が設け られている。ダブル発電とは太陽光発電に、家庭用燃料電池やガスエンジン発電といった他の発電シス テムと組み合わせた場合に適用される。それぞれの買取価格は、平成 25 年度において 10kW 以上が 37.8 円/kWh(36 円+税) 、10kW 未満が 38 円/kWh、ダブル発電が 31 円/kWh である。このため、FIT への全 量販売を前提とすれば太陽光発電はおおむね採算性があると考えられる。 4. 風力 4.1. 風力エネルギーの概要 風力発電では、風の運動エネルギーによって風車が回転する運動エネルギーを利用し、電気エネルギ ーに変換する。この変換において、風速の 3 乗に比例し、風車が風を受ける面積の 2 乗に比例する。そ のため、より強い風、より大きい風車の羽根面積が発電量を大きくする。 風車発電は、風の強弱で発電量が変わるため、安定した出力が確保できるとは限らない。コスト等検 証委員会(2011)では、風力発電の設備利用率について、陸上の場合で 20%、洋上の場合で 30%に設定 している。 風力発電の導入までの期間は、コスト等検証委員会(2011)によれば、4~5 年程度である。主に、風 況調査、環境影響評価と系統連系協議、電気事業法・建築基準法に係る手続き、建設工事、使用前安全 管理検査などの段階がある。 風力発電の漁村・漁港地域への導入については、設置までに一定の時間が必要であること、電力供給 が安定しないことなどがデメリットとしてあげられる。しかし、漁港での導入実績もあるため、一定の 期待を持つことができる。 4.2. 風力エネルギーの発電方式 風力による発電方式は、NEDO のウェブサイトによると、風車形式からみて、大別して 2 つに分けら れ、そこから揚力型と抗力型の 2 つに分けられ、合計 11 種類が示されている(図Ⅱ-2-20) 。 NEDO(2013)によると、50kW 以上の中型・大型風車においては、水平軸風車の 3 枚翼プロペラ式が 主流とのことである。 またプロペラ型の場合、風上にブレードの回転面をうけるアップウィンドウ方式と、風下からブレー ドの回転面にうけるダウンウィンド方式とに分かれる。 図Ⅱ-2- 20 風車形式に基づく風力発電の主な種類 (出典:NEDOHP) パワー系数と周速比の関係に従い、風況に応じた適切な風車の形式がある(図Ⅱ-2-21)。パワー系数 は各風車形式における風の運動エネルギーを取り込む効率である。周速比は風車のブレードの先端の速 度である「周速」と「風速」との比である。 これから、風車の形式によってパワー系数は大きく異なるものの、地域の風況に応じてそれぞれカバ ーする風車形式があるため、導入地域の風況を踏まえて適切な風車形式を選択すれば良い。 図Ⅱ-2- 21 風車形式毎のパワー系数と周速比 (公益社団法人 日本電気技術者協会 HP) 4.3. 風力エネルギーのポテンシャルと導入実績 わが国において、風力発電に利用できる地域について、環境省(2010)で示されている。 まず、陸上風力における電力供給のエリア別導入ポテンシャルでは、主に北海道、東北、九州の 3 地 方で、特にポテンシャルが大きい(図Ⅱ-2-22)。 図Ⅱ-2- 22 陸上風力のエリア別の導入ポテンシャル分布 (出典:環境省(2011)) 次に、洋上風力における電力供給のエリア別導入ポテンシャルでは、同じく北海道、東北、九州の 3 地域でポテンシャルが大きい(図Ⅱ-2-23)。特に九州地方は、陸上風力のケースと比べても大幅に伸び ており、北海道を凌ぐポテンシャルを有していることがわかる。 図Ⅱ-2- 23 洋上風力のエリア別の導入ポテンシャル分布 (出典:環境省(2011)) わが国における風力発電の導入量は、累計でおよそ 2500MW 程度である(図Ⅱ-2-24) 。2001 年度まで は全体の導入量は少なくとも、年間の増加率が 100%を超える年度もあったことがわかる。2002 年度以 降増加率は低下し、2012 年度においては僅かな増加率となっている。単年度の導入も 2006 年度がピー クを示している。 図Ⅱ-2- 24 風力発電の導入量の推移 (出典:NEDO(2013)) 以上の風力発電の導入ポテンシャル量や導入実績を踏まえると、特に洋上の導入ポテンシャルは陸上 よりも大きいため、海に面する漁村・漁港地域への導入は相対的に高く期待できると考えられる。 4.4. 風力エネルギーのコスト コスト等検証委員会(2011)によれば、風力による発電コストは、陸上風力では 9.9~17.3 円/kWh、 洋上風力が 9.4~23.1 円/kWh としている。なお、陸上風力のモデルプラントとしては出力を 2 万 kW (20MW) 、洋上風力のモデルプランとしては出力を 15 万 kW(150MW)としている。 また NEDO(2013)では、風力発電のシステム価格の平均金額などが示されている(図Ⅱ-2-25)。こ れによると、システム価格の平均額は 2000 年度まで下落傾向に有り、一時は 15 万円/kW を下回った。 ただし、2000 年度と 2001 年度は最低価格が他の年度より大きく下回っており、おおむね 15~20 万円/kW 程度と言える。2000 年代半ば以降から、システム価格の平均額は上昇傾向に転じ、2008 年度には 30 万 円/kW まで上昇している。最小価格はほぼ横ばいながら、最大価格が上昇しており、これによってシス テム価格の平均額もつられていることがわかる。 図Ⅱ-2- 25 システム価格の平均額の推移(千円/kW) (出典:NEDO(2013)) FIT において風力発電は、平成 25 年度においては 20kW 以上と 20kW 未満に分けて設定されている。 同年度におけるそれぞれの買取価格は、23.1 円/kWh(22 円+税) 、57.75 円/kWh(55 円+税)である。こ のため、FIT への全量販売を前提とすれば風力発電はおおむね採算性があると考えられる。 5. 燃料電池 5.1 エネルギー貯蔵の必要性 自然エネルギーによる発電は、発電出力の変動を伴うケースが多い。このような出力変動によって、 電力系統に様々な問題が生じると考えられる。NEDO(2013)では、これらの問題として、電力の需給 ギャップの発生、周波数の変動、電圧の上昇、単独運転と不要解列、事故時における電力系統への影響、 の 5 つをあげている。このうち、燃料電池を含む蓄エネルギーは、電力の需給ギャップの発生、周波数 の変動への対応としている。 (表Ⅱ-2-6) 。 表Ⅱ-2- 6 自然エネルギー導入に対する系統課題の対策技術 (出典:NEDO(2013)) 電力の需給ギャップの発生について、元々電力システムは、需要と供給の一致が必要とされている。 自然エネルギーによる発電は、主に太陽光発電であれば太陽光、風力発電であれば風力、というように その時々の自然状況に応じた発電となり、需要状況にあわせた発電にはならない場合が多々ある。その ため、余剰電力の発生や、逆に電力不足の懸念が生じる。そこで、蓄エネルギーを利用することで余剰 電力の貯蔵や、貯蔵エネルギーからの供給による電力不足時の解消が目指される。 周波数の変動については、電力の需給にギャップが生じると、周波数の変動も生じる。周波数の変動 により、利用者の機器に影響を与えたり、発電機を保護するために系統から当該発電所が切り離された りする。わが国では、周波数の変動を±0.2~±0.32Hz の範囲に抑制するように電力会社によって制御さ れている。そのため、周波数の調整として、刻々と変化する需要に応じて、出力調整が容易な発電機や 蓄エネルギーが用いられる。 蓄エネルギーでも燃料電池の場合、導入までの期間は、コスト等検証委員会(2011)によれば、商品 説明・現場調査、見積書の作成・提出、受注・補助金申請書類の作成、受理通知書受領・系統連系協議 の依頼、施工・試運転・系統連系検査、引渡しを含め、約 2 週間と極めて短い。 蓄エネルギーの漁村・漁港地域への導入は、特に自然ネルギーで発電した電力の自家消費を念頭にお いた場合、需給ギャップが生じるため、余剰電力を蓄積し、電力不足時に活用するためにも欠かせない ものと考えられる。 5.2. 燃料電池の貯蔵形態 蓄エネルギー技術として、揚水発電の他、主に蓄電池、圧縮空気発電、水素貯蔵の 3 つがあげられる (表Ⅱ-2-7) 。蓄電池と水素貯蔵は、化学エネルギーを利用している。圧縮空気発電は、圧力エネルギー を利用している。 この他、漁港を念頭においた場合、製氷施設や冷蔵・冷凍施設における冷熱エネルギーを利用するこ とが考えられる。 表Ⅱ-2- 7 蓄エネルギー技術の種類 (出典:NEDO(2013) ) また、蓄エネルギー技術は、調整する出力に応じて小規模なものから大規模なものまであり、各技術 の特性に応じて利用される(図Ⅱ-2-26)。 図Ⅱ-2- 26 利用用途に沿った蓄エネルギー技術の位置付け (出典:NEDO(2013)) また、電気自動車の蓄電池を系統連系や住宅などと接続することも検討されている。これには 3 方向 の電気の流れがあり、V2G(Vehicle to Grid)は充電した車両の蓄電池から系統連系に電力を供給する方向 であり、V2H(Vehicle to Home)は同じく充電した車両から住宅に電力を供給する方向であり、G2V(Grid to Vehicle)が系統連系から車両の蓄電池に充電する方向である(図Ⅱ-2-27)。 漁港に念頭においた場合、e-漁船やフォークリフトといった車両の蓄電池を利用することが考えられ る。 図Ⅱ-2- 27 電気自動車と系統連系や住宅などとの接続と電気の流れ (出典:NEDO(2013)) 5.3. コスト コスト等検証委員会(2011)によれば、蓄エネルギーのコストとして燃料電池の事例があげられてい る。出力 1kW をモデルプラントとし、熱利用を考慮して、101.9~102.0 円/kWh としている。ただし、 これから技術革新が見込まれ 2030 年には熱利用も考慮して、 11.5~11.8 円/kWh になると想定している。 参考・引用文献 1. 環境省(2014 年 3 月) 『平成 21 年度 再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書』 (http://www.env.go.jp/earth/report/h22-02/full.pdf) 2. 環境省(2015 年 3 月) 『平成 22 年度 再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書』 (http://www.env.go.jp/earth/report/h23-03/full.pdf) 3. 公益社団法人 日本電気技術者協会(http://www.jeea.or.jp/course/contents/03402/) 4. 国土交通省北海道開発局農業水産部農業振興課(2013 年 10 月) 『農業水利施設を活用した小水力等 発電の導入促進について』 (www.gtbh.jp/news/syousui/25/s-2.pdf) 5. コスト等検証委員会(2001 年 12 月) 『コスト等検証委員会報告書』 (http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/archive02_hokoku.html) 6. 全国土地改良事業団体連合会(2013 年 8 月) 『農業水利施設を活用した小水力発電について』 (www.aric.or.jp/03_book/101_110/no108/topics/108-1.pdf) 7. 資源エネルギー庁(2009 年) 「地熱発電に関する研究会 中間報告(概要紙) 」 (総合資源エネルギー 調査会 35th 新エネルギー部会資料 6-1) (http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g90525c13j.pdf) 8. 低炭素社会づくりのためのエネルギーの低炭素化研究会(2012 年 3 月) 『低炭素社会づくりのための エネルギーの低炭素化に向けた提言』 (http://www.challenge25.go.jp/roadmap/report.html) 9. (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) (2011 年 3 月) 『平成 22 年度成果報告書海洋エ ネルギーポテンシャルの把握に係る業務』 (NEDO成果報告書データベース(https://app5.infoc.nedo.go.jp/disclosure/Login)より) 10. (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) (2012 年 3 月)『平成 23 年度成果報告書 風力 等自然ネルギー技術研究開発/海洋エネルギー技術研究開発/海洋エネルギー発電技術共通基盤研究/ 海洋エネルギー発電技術に関する情報収集・分析 報告書』 (NEDO成果報告書データベース(https://app5.infoc.nedo.go.jp/disclosure/Login)より) 11. (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) (2012 年 3 月)『再生可能エネルギー技術白書』 (http://www.nedo.go.jp/library/ne_hakusyo_index.html) 12. (独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC) (2013 年 2 月) 『小規模地熱発電及び地熱水の多 段階利用事業の導入課題調査』 (受託:一般財団法人 エンジニアリング協会) (http://geothermal.jogmec.go.jp/data/file/019.pdf) Ⅱ-3.国の政策動向 一般社団法人海洋産業研究会常務理事 中原裕幸 1. 国の政策 1.1. エネルギー基本計画 国のエネルギー政策の基本を定めるのは、 「エネルギー政策基本法」 にもとづく 「エネルギー基本計画」 で、閣議決定事項である。同法は、平成 14 年に制定されたもので、同基本計画は、他の閣議決定による 基本計画が(海洋基本法にもとづく海洋基本計画も含めて) 、一般に、5 年で改訂されるのに対して、エ ネルギー事情の変化に迅速に対応できるよう、3 年ごとに見直しとなっている。 その「エネルギー基本計画」の第 1 期基本計画は、期間が平成 16-18 年で、第 2 期は平成 19-21 年、 そして第 3 期が平成 22-24 年のものであった。民主党政権時代の第 3 期基本計画が、平成 22 年 6 月に 策定されたが、その段階でようやく再生可能エネルギーの開発に関する記載が盛り込まれた。それでも 原子力主体の計画内容だった。そこに平成 23 年 3 月 11 日に東日本大震災による大津波と福島原発事故 が発生して、本計画の大幅見直しを迫られた。 しかしながら、政権交代をはさみながら、原子力への依存度を何%にするのか、2020 年あるいは 2030 年におけるそれをどうするかなどの議論が沸騰した。そして、現自民党政権において平成 26 年春に改め てエネルギー基本計画を策定する運びであるが、その内容は、原子力再稼働を柱としており、再生可能 エネルギーについては数値目標の盛り込みについて激論が交わされたと伝えられるものの、結局、それ は盛り込まれない見通しである。 現「エネルギー基本計画」は平成 26 年 4 月 11 日に策定されることになるのだが、その最終案では、 政府は、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、再稼働の推進など原発の活用方針を明記し、 一方、再生可能エネルギーなど電源別の具体的な比率の明示は見送られた。具体的な記載内容は次の通 りである。 「再生可能エネルギーについては、2013 年から 3 年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極 的に推進していく。 」との基本的考え方が記され、そして、 「波力・潮力等の海洋エネルギー、その他の 再生可能エネルギー熱利用の低コスト化・高効率化や多様な用途の開拓に資する研究開発等を重点的に 推進するとともに、再生可能エネルギー発電の既存系統への接続量増加のための系統運用技術の高度化 や送配電機器の技術実証を行う。 」との記載をしているにとどまっている。 にもかかわらず、再生可能エネルギーについては、洋上風力発電を先頭に、積極的な取組が官民とも に進められるようになってきた。 1.2. 再生可能エネルギーに関する固定買取制度(FIT)の取組 固定価格買取制度(FIT:Feed In Tariff)とは、エネルギーの買取価格(タリフ)を法律で定める方式の 助成制度である。主に 再生可能エネルギーの普及拡大と価格低減の目的で用いられる。世界 50 カ国以 上で用いられているといわれ、再生可能エネルギーの助成政策として一般的なものである。固定価格買 取制度では、エネルギーの売渡価格(タリフ)を法律で決定するので、再生可能エネルギー源の事業者 は、タリフを決まった期間(20 年など)にわたって法律で保証されることになり、一般的に、対象技術 の普及の初期に導入した事業者ほど高いタリフが設定される。つまり、事業者にとって、リスクが大幅 に軽減され、取組の促進効果をもたらす。 なお、普及が拡大してエネルギーの生産コスト(設備価格や運転費)が低減していくと、後期に導入 した事業者ほど助成額は減額される。 現在導入されている我が国の固定価格買取制度は、太陽光、風力、地熱、水力、中小水力、バイオマ スなどであり、買取期間は 10 年から 20 年である。その概要は次図のとおりである。 なお、洋上風力は平成 26 年度より新たな枠として設定されたものである。陸上風力(20kW 以上)が 22 円/kWh であるのに対して、いくらで設定するか大きな議論をよんだが、結局、36 円となった。 図Ⅱ-3- 1 我が国の固定価格買取制度の概要 (出典:資源エネルギー庁 website) 我が国では太陽光発電を主たる対象として適用し、その普及を図ってきたが、上述のように、毎年そ の普及の度合いなどに応じて見直しが図られており、太陽光については下図のように、平成 24 年度導入 のものは 40 円であったが、平成 25 年度導入については 36 円、平成 26 年度導入のものについては 32 円となっている。 図Ⅱ-3- 2 太陽光に関する固定価格買取制度の推移 (出典:資源エネルギー庁 website) 1.3. 海洋基本計画 「海洋基本法」は平成 19(2007)年 4 月 20 日に成立し、同月 27 日に公布、同年 7 月 20 日に施行さ れ、全 4 章 38 条からなる。その基本法第 16 条で、海洋基本計画は政府が策定を義務付けられているも のである。この基本計画は、基本法第 16 条 2 項の次の規定にしたがって策定されている。 ○海洋基本法 第 16 条(海洋基本計画) 2 海洋基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。 一 海洋に関する施策についての基本的な方針 二 海洋に関する施策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策 三 前二号に掲げるもののほか、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な 事項 すなわち、基本計画の中身は、基本法の規定を忠実に反映させて、次のような目次構成になっている。 ○「海洋基本計画」の目次構成 総 論 第 1 部:海洋に関する施策についての基本的な方針 第 2 部:海洋に関する施策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策 第 3 部:海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項 最初の基本計画は、平成 20 年 3 月 28 日に閣議決定され、総論および全 3 部で構成され、本文 43 ペ ージである。新たな海洋基本計画は昨年の平成 25 年 4 月に閣議決定され、全 53 ページとなっている。 その新たな「海洋基本計画」では、 「海洋再生可能エネルギーを利用した発電技術の開発コスト低減、 安全性の確保、民間の参入意欲の向上、海洋産業の国際競争力強化及び関連産業の集積による地域経済 活性化を図るため、実証試験のための海域である実証フィールドの整備に取り組む」としている。 図Ⅱ-3-3 新旧海洋基本計画の対比(海洋再生可能エネルギー) (出典:総合海洋政策本部 website) 図Ⅱ-3-4 新たな海洋基本計画の概要 (出典:総合海洋政策本部 website) この新たな海洋基本計画が策定されたすぐ後の平成 25 年 5 月に、政府は「海洋再生可能エネルギー 利用促進に関する今後の取組方針」 (以下、取組方針)を発表し、その中で、 「海洋再生可能エネルギー を利用した発電事業を行うためには、他の海域利用者等との共存共栄を念頭に置きつつ、海域利用のた めの調整をいかに円滑に進められるかが重要な課題と考えられる。また、海底送電ケーブル敷設等のコ ストの問題や、安全の確保、環境の保全、海岸の保全等についても、海域で発電事業を進めていく上で 重要な課題である。 」としている。 そして、その 1 年後に、この取組方針で、開発コストの低減、民間の参入意欲の向上、産業の国際競 争力強化、関連産業集積による地域経済活性化を図るため、海洋再生可能エネルギーの実証実験のため の海域を提供する、いわゆる「実証フィールド」を、順次、整備することとしているので、これを実施 に移すこととなった。そして、平成 25 年 3 月に、海洋再生可能エネルギー実証フィールドの要件等につ いて発表し、公募を開始し、平成 26 年 2 月末を〆切とした。 総合海洋政策本部事務局では、この公募を広く広報し、理解を求め、多数の応募がなされるよう、平 成 25 年の春から夏にかけて、全国 5 カ所で説明会を開催していった。 図Ⅱ-3-5 海洋再生可能エネルギー利用促進に関する今後の取組方針 (出典:総合海洋政策本部 website) 図Ⅱ-3-6 実証フィールドの公募要領 (出典:総合海洋政策本部 website) この実証フィールドの公募に対して、平成 26 年 2 月末には、計7県(岩手県、新潟県、和歌山県、 佐賀県、長崎県、鹿児島県及び沖縄県) 、11 海域の提案が提出された。 図Ⅱ-3-7 実証フィールドの公募に応募した 7 県と再生可能エネルギーの種別 (出典:各種情報にもとづき、海洋産業研究会で作成) 2. 各省別の政策 2.1. 国土交通省 (1) 「港湾区域等において風力発電施設を設置するに当たって必要となる占用等の許可基準の参考指針」 (平成 23 年 6 月) 平成21年3月に交通政策審議会の答申を受けた「地球温暖化に起因する気候変動に対する港湾政策の あり方」において、太陽光発電その他の再生可能エネルギー(風力発電含む)の利活用促進を図ってい くことが重要とされたが、各港湾における風力発電施設の設置に伴う占用等の許可申請も増加するもの と予想されるため、その導入促進に向けた規制の見直しを図ることとなった。その際問題になるのが、 港湾区域における一時的占用許可の制度である。そこで、港湾における風力発電開発を推進するため、 国土交通省港湾局は「港湾区域等において風力発電施設を設置するに当たって必要となる占用等の許可 基準の参考指針」を作成した。 なお、本指針は、港湾区域等に他の再生可能エネルギー等に係る施設を設置する場合についても準用 できるものである。 (2)「港湾における風力発電について-港湾の管理運営との共生のためのマニュアル-ver.1」(平成 24 年6 月、国土交通省港湾局、環境省地球環境局) 平成23年3月の東日本大震災以降、再生可能エネルギーの利活用がますます求められているところで あるが、国土交通省と環境省の連携による取組もなされるようになった。 両省は、交通の結節点であり周辺での産業活動に起因して多くの温室効果ガスが排出されている港湾 においてはその削減対策のさらなる充実が求められているだけでなく、新たな再生可能エネルギーの供 給の場としても期待が寄せられているとの認識を共有するに至った。これは、港湾が洋上の風力発電施 設の適地としての期待が高まっていることによるものだが、港湾における洋上風力発電施設の設置事例 は現時点では少なく、新たな港湾の利用形態である風力発電、なかでも水域におけるウィンドファーム の導入は港湾への影響が大きいと考えられ、その円滑な導入プロセスの整理が求められているとした。 そこで、国土交通省港湾局と環境省地球環境局が連携し、関係省庁の協力を得て、洋上ウィンドファ ームを視野に『港湾の管理運営と風力発電の共生を図ること』を目的として、「港湾における風力発電 について - 港湾の管理運営との共生のためのマニュアル-ver.1」を作成したものである。 本マニュアルでは、主に港湾における洋上ウィンドファームの導入を検討するに当たり必要と考えら れる標準的な手順を提示しているものである。 2.2 農林水産省 (1)農林水産省全体:農山漁村再生可能エネルギー法(平成 25 年 11 月成立、公布、平成 26 年 5 月施行) 平成25年11月15日に「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に 関する法律(農山漁村再生可能エネルギー法)」が成立し、11月22日に公布され、平成26年5月1日に施 行の運びである。この法律は、農山漁村における再生可能エネルギー発電設備の整備について、農林漁 業上の土地利用等との調整を適正に行うとともに、地域の農林漁業の健全な発展に資する取組を併せて 行うこととすることにより、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー発電を促進し、 農山漁村の活性化を図るものとされる。 この法律は、主として再生可能エネルギー利用のために農地を転用することをメインとしてはいるも のの、漁業すなわち漁港区域における再生可能エネルギー利用の促進をも包含している。その概要は次 図に示すとおりである。その中の基本理念にも述べられているように、 「必要な農林地並びに漁港および その周辺の水域の確保を図るため、再生可能エネルギー電気の発電のための利用との調整が適正に行わ れなければならない。 」としている。そして、事業者と市町村、地域住民・有識者とともに農林漁業者・ 団体とともに協議会を設置し、調整を図っていくとともに、市町村としての基本計画に再生可能エネル ギー利用発電事業を位置付けることを求めているものである。逆にいえば、そのような仕組みと市町村 の基本計画に位置付けられれば、再生可能エネルギー利用発電事業を実施できるということになる。 図Ⅱ-3-8 農山漁村再生可能エネルギー法の概要 (出典:農林水産省 website) (2)水産庁 1)「水産基本計画」 、 「漁港漁場整備計画」 、 「漁港漁場整備事業に関する基本方針」 (平成 24 年 3 月) 水産庁で、水産基本法に基づく「水産基本計画」 (平成 24 年 3 月閣議決定)と並行して策定している 「漁港漁場整備計画」 (平成 24 年 3 月閣議決定)ならびに、同じ 3 月に策定された「漁港漁場整備事業 の推進に関する基本方針」でも、次のような記載がなされている。 ○水産基本計画(抄) 7 安全で活力ある漁村づくり 災害時の非常電源としても利用可能な風力発電、太陽光発電などの再生エネルギーの導入に向け た取組を推進する。 ○漁港漁場整備計画(抄) 2 水産物の安定的な提供・国際化に対応できる力強い水産業づくりの推進 また、水産業を核として漁村や漁港が有する伝統・文化・景観や再生可能エネルギーなどの魅 力的な地域資源等を活用して新たな付加価値を生み出す6次産業化の取組を推進する ととも に・・・ ○漁港漁場整備事業の推進に関する基本方針(抄) 2 水産物の安定的な提供・国際化に対応できる力強い水産業づくりの推進 一方、漁村においては、新鮮な魚介類、豊かな自然や景観、波力、風力などの再生可能エネル ギーなどの地域資源が豊富に存在しており、高齢者や女性をはじめとする地域住民や農林業など を含む地場産業との連携の下、これらの総合的な活用が、漁村の活性化を推進する上で重要な課 題となっている。 2)「漁港区域に風力発電施設を設置する場合の占用等の許可基準等の参考指針」(平成23年9月) 港湾区域における風力発電の立地増大を想定した指針と同様に、今後、漁港区域においても風力発電 施設を設置するための占用等の許可申請が増加するものと予想されるため、水産庁では、「漁港区域に 風力発電施設を設置するに場合の占用等の許可の基準についての参考指針」を作成した。本指針は漁港 区域に風力発電以外の再生可能エネルギーに係る施設を設置する場合についても準用できるものである としている。 これは前述した、「港湾区域等において風力発電施設を設置するに当たって必要となる占用等の許可 基準の参考指針」(平成23年6月)から3か月後に策定されたもので、漁港区域においても風車等の発電 施設を立地させる場合には、一時的占用許可制度が適用されるので、同様の趣旨によって定められたも のである。 3)「漁港のエコ化方針(中間とりまとめ)~ 漁港のエコ化推進のために ~」(平成24年4月) 地球温暖化防止・温室効果ガス排出量の削減は政府をあげての課題となっているわけだが、水産・漁 業関連施策もこれに無縁ではない。主として、太陽光、風力等の再生可能エネルギーの導入と省エネ社 会の実現が求められているところであり、他方で燃油等の漁業経費の高騰により漁業経営は厳しい状況 にあり、漁業生産コストの縮減による経営の効率化が求められている。 漁港は、水産物の流通・加工の拠点であり、多くの電気や燃油を消費する漁港施設が立地し、また漁 船への燃油供給が行われる等、エネルギー消費と温室効果ガスの排出が行われており、漁港におけるエ ネルギー消費の縮減、エネルギーコストの縮減、温室効果ガス排出量の縮減は緊要の課題である。この ため、漁港のエコ化を推進することが必要だ、との基本方針を水産庁が定めた。 ここで、「漁港のエコ化」の定義については、次のように記されている。 「漁港のエコ化とは、漁港において、使用されるエネルギー量の削減、化石燃料使用量の削減、再 生可能エネルギーの活用等により、エネルギーコストの削減にも配慮しつつ、漁港と関連して営 まれる活動に伴い排出される二酸化炭素量の削減を行うことです。」(アンダーラインは引用者) その漁港のエコ化の手法として、同中間とりまとめでは次のように記されている。 省エネルギー化 電化による化石燃料資料量の削減 漁港のエコ化の手法 再生可能エネルギーの活用 その他(廃棄物量の削減など) 図Ⅱ-3-9 漁港のエコ化の手法 (出典:漁港のエコ化方針(中間とりまとめ)) 4)再エネチームの編成と基本的考え方の整理(平成24年9月)および相談窓口の設定(平成25年12月) 水産庁では、洋上風力発電の構想や事業準備に関する様々な動きが出てくる中で、水産の立場からこ れにどのように対応するかを検討するため、庁内の関係各課を横断した「漁港・漁村における再生可能 エネルギー活用検討チーム」(略称:再エネチーム)を、平成24年5月に編成し、スタートさせた。事務 局は漁港漁場整備部計画課と企画課である。 このチームを中心に、水産業における再生可能エネルギーの利用促進に関する勉強会が連続的に開催 された。メンバー構成は、水産庁再エネチーム関係課、JF全漁連、大日本水産会、海洋産業研究会、海 洋生物環境研究所に東大の八木准教授を加えたものである。以降、連続的に開催し、同年秋に「洋上風 力発電設備と漁業との協調について」の基本的考え方をまとめた。 そこでは、漁業との協調にかかる主体的枠組みとして、 次のようにしている。 「風力発電施設の導入にあたっては、地域漁業との共存を図ることが重要である。このため、導入 計画検討のなるべく早い段階で、漁業者と発電事業者、地方自治体等の関係者が密接に意見交換 を行い、また、計画が具現化しつつある早い段階で地元協議会を設置することが望ましい。 そして、具体的には、次のようになっている。 (1)漁業者・漁業協同組合の発電事業との関わり 風力発電施設で発電された電力については、地元漁港関連施設等での活用(地産・地消)や売電 して地元水産業の振興経費等に充てるなどが考えられる。また、漁業者による洋上風力発電施設の 保守点検作業等への協力、漁協等の発電事業への参加が考えられる。 (2)地元協議会の設置 風力発電施設の導入にあたっては、事前に漁業関係者(漁協等)と発電事業者等の間で十分な意 見交換が必要である。このため、発電事業の適切な段階で漁業関係者等を含む協議会を設置し、風 力発電施設の導入にあたっての協調のあり方や漁業への影響等について検討を行うことが求められ る。 (3)漁業協調型風力発電設備の導入 風力発電施設等の導入にあたっては、漁業との共存共栄が重要であることから、風力発電施設の 駆体部分を魚礁や養殖施設の一部として利用するなどの漁業協調型とし、積極的に地元漁業と連 携・協調し、地元の水産業の振興を図るべきである。例えば、北海道瀬棚町の風力発電施設(2004 年 4 月風力発電施設設置)では、地元漁業者との連携により、風力発電施設とコンブ養殖(ウニ畜 養用餌料の供給用)が共存するという萌芽的事例がある。 (4)漁業協調に関する相談窓口の設置 漁業に関する風力発電にかかる相談窓口を設置し、円滑な風力発電施設等の導入を支援する。 (5)他の再生可能エネルギー施設の扱い 風力発電施設以外の海洋再生可能エネルギーの導入についても、上記と同様の考え方で取り組 む。 (出典:再生可能エネルギー(風力発電施設)の導入について、平成 24 年 9 月、水産庁) なお、水産庁では、系列の団体に呼び掛けて、漁業協調の事例について集めさせてとりまとめ、ホー ムページに掲載している。下に示すのがそれである。(独)水産総合研究センター、(一財)漁港漁場漁 村技術研究所、(一社)マリノォーラム21がそれに応じている。 漁業と協調する洋上風力発電施設(事例) 漁業協調型洋上風力発電施設(事例) 洋上風力発電施設の漁業協調型活用方策の提案 消波堤を活用した増養殖場などの操業協調型施設 の提案 漁業と協調する洋上風力発電施設の事例提案 提案機関 (独)水産総合研究センター (独)水産総合研究センター水産工学研究 水産工学研究所 所 ホームページ (一財)漁港漁場漁村技術研究所 資料(PDF:718KB) (一社)マリノフォーラム21 資料(PDF:3,394KB) ※ 提案のあった事例について、水産庁でその事業化の可能性等について検証したものではありません。 (出典:同上) その後、円滑な漁業協調の促進に向けて、全国の漁業協同組合や事業者側も含めて、相談を受け付け る窓口を設置することとした。平成25年12月、下図に示すようにこれを公表、広く周知・広報を図った。 図Ⅱ-3-10 洋上風力発電と漁業実態等に関する相談窓口設置のお知らせ (出典:水産庁資料) 参考・引用文献 1.エネルギー基本計画 http://www.meti.go.jp/press/2014/04/20140411001/20140411001.html 2.再生可能エネルギー買取価格制度 http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/ 3.海洋基本計画 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/kihonkeikaku/ 4.海洋再生可能エネルギー利用促進に関する今後の取組方針について http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/energy/renewableenergy.html 5.港湾区域等において風力発電施設を設置するに当たって必要となる占用等の許可基準の参考指針 http://www.mlit.go.jp/report/press/port04_hh_000029.html 6.農山漁村再生可能エネルギー法(平成25年11月成立、公布、平成26年5月施行) http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/houritu.html 7.水産基本計画 http://www.jfa.maff.go.jp/j/policy/kihon_keikaku/ 8.漁港漁場整備計画 http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/keikaku/120323.html 9.漁港漁場整備事業に関する基本方針 http://www.jfa.maff.go.jp/j/gyoko_gyozyo/sub71.html 10.漁港区域に風力発電施設を設置する場合の占用等の許可基準等の参考指針 http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/keikaku/110909.html 11.漁港のエコ化方針(中間とりまとめ) http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/keikaku/120427.html 12.再生可能エネルギー(風力発電施設)の導入について、平成24年9月、水産庁 http://www.jfa.maff.go.jp/test/kikaku/other/energy.html 第Ⅲ部 漁村・漁港地域における複合型再生可能エネルギーの導入と振興方策の検討 Ⅲ-1. 海洋再生可能エネルギー導入の可能性について 東京大学先端科学技術研究センター 宮崎武晃 1. 海洋再生可能エネルギー ここで検討する海洋再生可能エネルギーは波力、潮流、海流、洋上風力発電に限定する。潮汐、海洋 温度差は、本研究の上では必ずしもフィットしないものと考えるため、除外した。特に地域の発展や環 境対策としてどのような技術が役立つのか、その可能性について検討する。なお、将来の市場の拡大が 期待される技術についても取り上げる。 2. 波力:沿岸固定式が有力 漁村・漁港地域における複合型再生可能エネルギーの導入を前提に波力発電を検討すると、浮体式よ りも自然海岸を利用する沿岸固定式や港の防波堤に組み込む波力方式の可能性が高い。 これまでの波力発電の研究実績から、防波堤組込方式の日本海側での設備稼働率は 50%、太平洋側で は 60%のデータが示されている。海象、気象を検討し変動が小さい海域の選定で設備利用率を高められ、 さらに海底地形の影響で波が集まる海域や波高が一定の海域など、局地地形のデータを有効に利用する ことが重要となる。 また、海洋の再生可能エネルギー利用技術は実証実験に膨大な経費が必要であり、さらに海域の確保 のため漁業者との交渉・了解、送電ケーブルの敷設など、様々な項目をクリアして推進する必要がある。 日本でも欧州の European Marine Energy Centre(EMEC)と同様の実験フィールドを想定して総合海洋政策 本部は海域の公募を行っており、この実験フィールドも視野に置く必要がある。 波力発電技術の環境への影響は、まだ例が少ない事から評価が困難である。しかし、考えるべき項目 としては、先ず海洋空間の占有による競合、装置の騒音や振動、電磁波、生物環境への影響、水質の変 化、汚染などがあげられる。これまで少数であるが実施例から推測すると、潜在的に環境への影響は少 ない。景観へ与える影響についても、大規模に沿岸を占有する場合を除き、波力装置自身の多くの部分 は海中や海底にあり、景観への影響は少ないと想定できる。 3. 海流・潮流:潮流は利用可能な選択肢 海流発電は黒潮海域をターゲットに開発を行っている。特に黒潮の利点はほぼ定常流と考えても良い ので、安定した発電が行える。しかし、立地海域は沿岸からかなり離れた沖合が想定されるとともに、 装置の大型化や係留装置さらにメンテナンスなどを考えると発電コストは高価で、開発に時間が必要で ある。特に黒潮海域においては大型船舶の航行への障害や漁業者への配慮は必要である。 潮流は流れの方向の変化や周期性があり、海岸地形や水深などにも強く依存するため、事前の長期に わたる潮流観測により変動の規則性を求めることが必要であるが、沿岸部での利用可能性を秘めている と言えよう。波力に比べて発電規模の大きさを期待できる点はおおきな優位性がある。なお、早い流れ の海域の周辺は漁業者にとって重要な海域である場合があるほか、流れの早さゆえに海域での実測も実 施しにくいという点も考慮する必要がある。 また、海流発電装置や潮流発電装置が漁場に与える影響についての研究は進んでいるとは言えない。 しかし、貴重なエネルギー資源であり小規模な装置から実海域試験に取り組む必要がある。 すでに有力な装置は実海域で実証実験中であるが、実用化に向けてはまだ多くの課題をクリアする必 要がある。そのため「実証フィールドの整備」が必要であり、実用化するためには絶対必要な実海域実 験を行うための海域を確保することである。日本の企業では国内で潮流の試験ができないためスコット ランドの EMEC で海域実験を行う計画もある。これらを考えると、我が国の海域で海流・潮流の実証実 験により漁場環境に適した発電システムの確立が期待されるが、本研究では海流発電は不向きであり、 潮流発電は技術開発がこれからの部分もあるが選択肢の一つとなりえよう。 4. 洋上風力:沿岸風力も有力 洋上風力発電装置は陸上風力発電に比べ、風の平均風速が陸上に比べて高く、かつ乱れが少ないため 安定している。洋上風力発電は、他の海洋エネルギー利用の研究開発に比べて非常に進んでいることが 特徴であり、選択肢の点では、海域の条件にもよるが有力と言える。 洋上風力発電は着床式と浮体式に大別されるが、漁村・漁港地域における複合型再生可能エネルギー の導入と振興方策として考えると、現況では着床式が優れていると考えられる。 図Ⅲ-1- 1 風力発電装置の分類 (出典:Tokyo-np co HP) なお、今日の洋上風力発電が、かつての 1,000kw(1MW)未満の風車から、現在では 2MW は普通で 5MW さらには 7-10MW 規模の風車の実現が言われているほか、数 10 期以上の風車を、沖合の海域で建 設するウィンド・ファームの追求が主流となっている。これに対して、本研究では、小規模分散型・地 産地消型再生可能エネルギー利用の漁港・漁村におけるベストミックスを検討するという趣旨からする と、沿岸部での単機あるいは数基で、効率的な、しかも小型化も視野に入れた風車による洋上風力発電 が有力な選択肢になるものと考えられる。 5. 海洋再生可能エネルギーの課題と展望 現在、海からの再生可能エネルギーは全体的に、将来の発電コスト見通しの不確実性が大きいと指摘 されており、今後、再生可能エネルギーの利用が拡大すれば、厳しい条件が示される。さらに、再生可 能エネルギーの欠点を補うシステムの導入、エネルギーの蓄積・充電・平滑化などあらゆる有効なシス テムの導入を考慮する必要がある。 例えば、揚水発電との組み合わせや(5 円/kWh のコスト上昇) 、急激に進歩しているハイブリット化 や電気自動車など、これらのシステムを参考に地域にあったシステム作りを考えることがあげられる(現 状では、家庭に 4kWh のリチウムイオンバッテリを設置すると 9 円/kWh のコスト上昇)。 利用形態が電力網へ接続する場合は、発電コストが充電や平滑化などのコストアップを飲み込める装 置開発をすべきである。特に、電力側のコメントでは再生可能エネルギーは過度な国民負担が無く、か つ電力系統の安全化が担保されうる範囲で導入されるべきと主張しているので、このコメントを厳格に 受け止め、これを超える装置の開発が期待される。 再生可能エネルギーは基本的に分散型エネルギーであるため、地域特性が顕著に表れるため、利用に おいては地域振興と結びつく開発が求められる。このため、再生可能エネルギーと地域エネルギーの位 置づけを明確にして地元と推進することが重要である。 漁港地域での利用として、初期段階では離島での利用は実現性の高い構想であり、スマートグリッド を活用し、小規模・分散型の発電設備から入るのが一つの方法である。ここには蓄電設備が入るが、蓄 電設備が多すぎると設備利用率が下がり導入コストが過大になるので、バランスを十分取る必要がある。 また近年は天候や海象予報精度が高まっており、再生可能エネルギー装置の発電予想が可能になれば、 蓄電量、需給予測を行い、スマートグリッドや既存の電力系統との連携はますます有効になる。沖合で 発電して海底ケーブルで陸側の系統との連系はコスト面で問題が起きるが、日本の沿岸は電力網の整備 が進んでおり、洋上から陸までの安全な送電を確保できば可能性が高い。 参考・引用文献 1. 新エネルギー・産業技術総合開発機構:NEDO 再生可能エネルギー技術白書-新たなエネルギー社 会の実現に向けて、2010-07. 2. 堀田 平、他:沿岸固定式波力発電装置の開発、第 10 回海洋開発シンポジウム論文集、6 月、1985. 3. 高橋重雄、他:波力発電ケーソン防波堤の現地実証実験における観測データの解析結果、港湾技術 研究所報告、Vol31,No.2,1992. 4. 近藤淑郎他:海洋エネルギー利用技術,森北出版,1996. 5. 木下健他:海洋再生エネルギーの市場展開と会夏動向,サイエンス&テクノロジー,2011. 6. 永田修一:波力発電,日本船舶海洋工学会誌,第 41 号,平成 24 年 3 月. 7. 永田豊:わが国のエネルギー選択をめぐる視点,エネルギー・資源,Vol.33 No.2 ,2011. 8. 宮崎武晃:波力発電大規模展開の可能性と課題,海洋理工学会春季大会,平成 24 年 5 月. 9. NEDO:海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務、平成 22 年度報告書、平成 23 年 3 月 10. 塩野光弘:我が国における潮流発電の現状と課題、ターボ機械、37、4、2009. 11. 千石 新、他:我が国の峡水道と瀬戸内海における潮流発電ポテンシャルマップ、海洋調査技術、 23 (2), September 2011. Ⅲ-2.海洋エネルギーとスマートグリッド エネルギー戦略研究所 山家公雄 本章では、漁港地域の電力自立運転を念頭に、再可能エネルギーを主とした分散型設備を地 域で制御する所謂スマートグリッドについて、整理する。第1節では、スマートグリッドの彼 我の取り組み状況について、日本とドイツを比較する。ドイツのスマートグリッド実証事業で ある E-Energy を紹介する。それによりスマートグリッドの本質にアプローチする。第 2 節で は、日本のスマートグリッド、マイクログリッドの代表的な実証事業を紹介する。第 3 節では、 漁港でのスマートグリッド構築を想定した場合のイメージや留意点について解説する。 1. 日本とドイツのスマートグリッド比較 1.1. スマートグリッドの経緯と期待 日本でスマートグリッドという言葉が登場し、6~7 年が経過した。2009 年に米国にオバマ 政権が誕生し、スマートグリッドをグリーンニューディールの主役に据えたことから注目を集 めた。米国で電力インフラの容量不足をカバーする視点から、ピークシフトを進めて、インフ ラ投資を節約することに主眼があるとされた。欧州では、米国よりも前に研究されていたが、 それは再生可能エネルギーを多く設置することが目的であった。 【 「日本型」で実証事業に着手】 日本では、世界的な関心に押される形で検討が始まった。しかし、米国と異なりインフラを 含めて供給力は十分にあり、また欧州ほどには再生可能エネルギー推進の意欲はなかった。こ うしたなかで、スマートグリッド推進の目的をどこにおくかは、難しい課題であった(図Ⅱ-21) 。 当時、電気機械、半導体等の競争力低下が問題視されていたが、標準化に後れを取ることが 主な要因の一つとされた。スマートグリッドについても、これが世界的なトレンドになれば、 日本はシステムごとガラパゴスになり、メーカーやソフト産業の競争力はさらに落ちていくと の危機感があった。また、日本では太陽光発電は例外的に普及策がとられたが、家庭用ソーラ ーに蓄電池・省エネを絡めて民生部門の効率化を進めるとの前向きな視点もあった。 しかし、スマートグリッドの本質は、家庭を含めて低圧の需要家のニーズに合うエネルギー サービスを提供することであり、その前提として小売自由化、送電のみならず配電の中立化(分 離) 、消費者の行動のもととなるプライシングを提供する電力取引市場の整備、等が整ってい る必要がある。日本はどれも未整備であった。 肝心な消費者情報、インフラ、グリッドオペレート(系統運用) 、価格設定等ほぼすべて電 力会社(一般電気事業者)が握っている。そうした中で、スマートグリッドは電力会社が整備 することであり、そのためのシステム整備、電力会社の代行サービスという色合いが強くなる。 国際的に通用するハード・ソフトを構築し、海外展開を図るためには、彼我の環境が違いすぎ る。そこで国費を投じて海外で実証事業を行うことにもなった。 図Ⅱ-2- 1 日本のスマートグリッド (出典:経済産業省より) 【3・11 大震災を機に位置づけが定まる】 しかし、2011 年 3 月 11 日に起きた東日本大震災に伴う大規模停電や供給力不足を体験する ことで、状況は一変した。節電や創電(自家発電)に対する意識が強まり、個々の需要家の情 報・行動を把握できるスマートメーターの役割も認識された。再エネ・省エネの政策的な位置 付けが高まるとともに、地方もエネルギーを自身の問題として捉えるようになった。緊急時に 自立できるシステムが求められ、地産地消やそれに伴う地域再生への期待が高まった。固定価 格買取制度等の支援策やコスト低下により太陽光発電やエネファームも普及している。スマー トコミュニティ等の施策もこうした状況の中で居場所を見つけつつある。 【分散型システムの課題と日本】 一方、分散型システムの構築あるいは地産地消の推進は、その趣旨は素晴らしいが、課題 も小さくない。対象となるエリアが限られるなかでは、需給の変動幅は大きくなり、スケール デメリットが顕在化する。これを克服する必要がある。 系統から分離している離島では、燃料輸送費が嵩む等コストが高く、再生可能エネルギーの 設置による燃料の焚き減らしによる効果が期待できる。離島での実証事業が多いのも、単なる 実証を超えたリアリティがある。 しかし、離島以外では、系統とつながっており、ユニバーサルサービスが前提となっている なかでは、スケールデメリットが顕在化する。CO 2 削減、省エネ、再エネ普及、緊急時の自立 運転(防災対策)等が存在理由となるが、それらに加えて常時の価値が構築できないかという 声も高まってきている。費用対効果で正面から意義を主張できないか、との期待も出てきた。 この視点では、離島以外にも「陸の孤島」に対してユニバーサルサービスをどのように適用 するかについての議論が必要ではないだろうか。系統内での一律デザインによる補填システム を前提とすると、新たな工夫を考える誘因が弱くなり、全体のコストが上がることが懸念され る。 こうした課題は海外でも共通であり、各国で解決のための試みが始まっている。中でも参考 になるのが、ドイツのスマートグリッド実証事業である E-Energy である。 1.2. ドイツ E-Energy の概要と特徴 【エネルギーと ICT を融合】 ドイツにおける代表的なスマートグリッド実証事業である E-Energy 事業は多岐にわたるよ うに見えるが、地産地消型モデルとしてとらえると理解しやすい。E-Energy は、2008 年に実 証として 6 事業が採択され、2009 年から 2012 年までの 4 年にわたり実施されてきた(図Ⅱ-22) 。低圧グリッドが巡らす一定のローカルエリアにおいて、エネルギーと ICT を融合して、需 要と供給について、再生可能エネルギー等分散エネルギー資源を利用して、効率よく調整する システム構築を目指す。その結果が明らかになってきている。2013 年に入ってファイナルレ ポートが発表されている。 【E-Energy の魅力とは何か】 E-Energy の魅力は、それぞれの地域で、地域の特徴を利用して、地域の課題を解決するため の事業である。日本の場合は、地域に拘わらず、大手のメーカーやソフトウエア会社のための 実証になりがちで、地域サイドとしては場所を貸すだけとなりやすい。これはメーカーだけの 責任ではなく、関係者の期待や技術を束ねてデザインを作るだけの実力者、システム・インテ グレーターが少ない(存在しない)からである。また、地域に有力な事業者が少ないことも大 きな要因である。 【地域のパイロット事業】 これに対して、E-Energy は、メーカー等への技術開発支援ではなく、地域にあったシステ ムを関係者がコンソーシアムを組んで考える場である。コンソーシアムは、地域のエネルギー インフラ会社(配電会社)を主に、中立的な大学・公共の研究機関や設計会社がサポートし、 実際の事業を立ち上げる前提でデザインを作る。最初から地域のパイロット事業になっている。 一方、日本では多くの実証を積んでいくうちに、その成果を活かした事業化がそろそろ期待 される時期となっている。事業を真剣に考えると、実施主体はだれか、地域で会社を作るとす るとだれが主体となるか等が問われ始めてきている。 ドイツの E-Energy は、地域が主体的にエネルギー需給を監視・制御する際に生じる課題を 克服して、再生可能エネルギー(地域資源)を如何に多く利用していくか、それを事業化して いくかにフォーカスしている。 図Ⅱ-2- 2 ドイツのスマートグリッド (出典:ドイツ経済技術省) 【地域資源で変動を調整】 先にあげた課題解決策としては、変動吸収も地域資源に期待する。変動を吸収(調整)する 設備としては、蓄エネルギーと柔軟運転向けの 2 種がある。蓄エネルギーや柔軟運転に寄与す る地域資源を探して利用する。6 事業の特徴を決める要因の一つはこの地域資源の選択にある。 電力は貯められないエネルギーであるが、熱や燃料は貯めることができる。電力も使い方によ ってシフトできる。蓄電池(バッテリー)は、短期変動の調整や自ら負荷になる(充電する) ことができる便利なものであるが、現状はまだコストが高い。蓄電池の利用を抑えるためにも 地域資源をいかに利用するかが重要になる。 地域資源としては、山間部では、貯水式水力、バイオマス、温泉、海岸部では冷蔵倉庫や熱 電併給 CHP(Combined Heat & Power)、都市部ではヒートポンプ、都市ガス利用の CHP、EV バッテリー等を利用する。ドイツは、電力のほか都市ガス、熱供給のインフラが整備されてい る地域が多く、熱や燃料を蓄エネルギーインフラとして利用できる。 【電力市場を活用して地域で需給調整】 スケールデメリットに関しては、標準化や海外展開を視野に機器等の大量生産を図る。国立 研究所や大学が率先して原型モデルを開発・提示する。そして、地域の電力需給の過不足をま とめて、電力取引市場と売買を行う。ドイツや隣国を含めた電力市場が整備されており、翌日 や当日の価格をみながら地域で最適な需給調整を行う。即ち地域レベルでデマンドレスポンス を行うことで、スケールでメリットを克服するのである。 こうした E-Energy は、ドイツでも予想以上の注目を集めているようである。2008 年当時は、 再生可能エネルギーがここまで普及するとは考えていなかったが、特にルーフソーラーの爆発 的とも言える普及はいい意味での想定外であった。一方、再生可能エネルギーを増やすための 切り札として広域送電網の活用を考えていたが進んでいないという好ましくない点での想定 外もあった。EU の調査により、再生可能エネルギーが普及するためには広域グリッドオペレ ーションの効果があることが分かっていた。国内の送電網の整備は NIMBY(Not In My Back Yard)問題もあり、思うように進まない。国を超える連系線の整備も遅れている。ルーフソー ラーの急増や連系線整備の緩慢な進捗を背景に、ローカルで調整することの意義がさらに高ま っていると考えられ、E-Energy の重要性が再認識されたのである。 2. 日本のスマートグリッド実証事業 本節では、日本で実施されているスマートグリッドのなかで、特に興味深いと思われる、六 ヶ所村事業と宮古島事業を取り上げる。前者は、日本風力開発が中心となり日立製作所等大手 事業者が、自前で(政府の助成を受けずに)実施したスマートグリッド実証事業である。後者 は、NEDO の補助事業で、離島に再生可能エネルギーを多く設置した場合の制御システムを構 築するもので、系統運用者側に立った「マイクログリッド」事業である。どちらも、蓄電池を 利用して太陽光、風力を多く開発・設置するという点で、共通性がある。 2.1. 六ヶ所村のスマートグリッド実証事業 【100%再生可能エネルギーを蓄電池で制御】 日本風力開発(JWD)、トヨタ自動車、日立製作所、旧パナソニック電工の 4 社で行った実 証事業である。JWD が発案し、場所やインフラ整備・提供を行った。同社は六ヶ所村に「二 又発電所」と「六ヶ所発電所」の 2 つの風力発電所を有している。「二又」は大規模蓄電池を 併設しており、計画的に一定出力が可能であり、当実証事業をバックアップしうる系統的な役 割を担うことができる(図Ⅱ-2- 3)。 日立製作所は全体の制御システムを構築し、コントロールルームにて地域の監視・制御を行 う。スマートハウスは 6 棟で、システム構築は JWD、トヨタ、パナ電が2棟ずつ独自にシス テムを構築する。JWD はハウスを所有し社宅として使用する。 スマートハウスはオール電化住宅で、太陽光発電(6kW、10kW) 、リチウムイオン電池(5kWh) 、 エコキュート(460Ⅼ) 、エアコン等が配置され、HEMS コントローラー、スマートメーターが 設置されている。プラグインハイブリッド(PHV)用の充電器を備えている。実証事業として 8 台の PHEV も揃えた(図Ⅱ-2- 4) 。 図Ⅱ-2- 3 六ヶ所村のスマートグリッド実証事業(全体設備構成) (資料:日本風力開発㈱) 図Ⅱ-2- 4 日本のスマートハウス(六ヶ所村のスマートグリッド実証事業) (資料:日本風力開発㈱) 電源は家庭の太陽光発電とリチウムイオン電池、 100kW の地域太陽光発電と 250kWh の NAS 電池(ハブ電池)であり、バックアップ用として二又風力発電所(34 基、51MW)を利用する。 同発電所は世界で唯一の大規模蓄電池(NAS 電池:17 基、34MW)制御付きのウィンドファ ームである。 地域太陽光発電設備は、二又風力発電所の敷地内にあり、そこから 6 軒のスマートハウスが 位置する住宅団地までの 8 ㎞の自営線(配電線)を引いた。スマートグリッドの制御システム は、地域太陽光発電所の近くにある JWD グループの風力メンテナンス会社イオス・エナジー マネジメントシステムの研修センター内に設置した。 供給源はすべて再生可能エネルギー(太陽光と風力)で、蓄電池を供給力と調整力として利 用する 100%CO 2 フリーとなっている。これを家庭プロシューマー、地域発電所、系統(二又 風力発電所)の 3 段階に配置して、安定を保つ。 このスマートグリッドシステムは、見方を変えると、地域発電所(太陽光)に蓄電池を設置 して(併設して) 、自営線を通して住宅に電気を送るというシンプルなデザインになっている。 バックアップは系統に代わって大規模蓄電池併設付き風力発電所(二又発電所)である。この 実験中に 3.11 東日本大震災が発生し、長時間にわたり北東北 3 県が停電に見舞われた際に、 この 6 軒だけが通電し続けたのである。 2.2. 宮古島マイクログリッド事業 【離島に再生可能エネルギーを大規模導入】 離島は、本島(本土)のネットワークから孤立した自立分散型のシステムになっている。一 般にディーゼル発電で供給し、重油等の燃料は船で輸送する。輸送コストを含む燃料代が嵩み、 高コストを余儀なくされている。地域資源は太陽光、風力等になるが、本土では高コストにな る再生可能エネルギー資源であるが、もともと発電コストの高い離島では、燃料焚き減らしの 役割の担う貴重な資源となる。 まず、宮古島の需給状況をみてみる。他の離島と同様に、ディーゼル発電が主力である。内 燃発電機が計 7.3 万 kW である。ディーゼル発電が 1.8 万 kW および 4 万 kW(1万 kW×4)、 ガスタービンが 1.5 万 kW である。再生可能エネルギーは、風力が 4200 万 kW(エネルコン製 6 基) 、そして実験で導入したメガソーラー4000kW である。ルーフソーラーは、固定価格買取 制度(FIT)導入以降急増しており 9000kW に達しているが、さらに 6000~7000 kW が FIT 認 定をとっている。一方デマンドに関しては、夏はピークが 5.5 万 kW、冬はピークが 2.5 万 kW で最低は 2 万 kW 程度である(図Ⅱ-2-5)。 沖縄の宮古島は、人口 5 万 5 千人を抱え島としては大きい部類に入るが、沖縄本島より 200km 南に位置し、孤立したネットワークであることから、やはりディーゼル発電に頼る電力 構造となっていた。再生可能エネルギーを利用し石油燃料の焚き減らしを図るために、4000kW のメガソーラ―を設置する(図Ⅱ-2-6) 。出力が変動する再生可能エネルギーを大規模に導入 すると、需給調整が不安定になる懸念があり、これを蓄電池で調整する必要が出てくる。実験 では 4000kW の NAS 電池を太陽光発電所内に設置し、再生可能エネルギーの変動を吸収する いくつかの実験を行った。 図Ⅱ-2- 5 宮古島系統実証事業(マイクログログリッド)の概要 (出典:沖縄電力) 図Ⅱ-2- 6 宮古島の離島マイクログリッド (写真:沖縄電力) 【独立ネットワークを蓄電池と分散電源で制御】 まず、メガソーラーの短期変動を蓄電池で吸収し、出力を一定に制御する。次に、宮古島全 体の制御目標値域である 60Hz±0.3Hz に収めるシミュレーションを行う。同島には、4000kW のメガソーラーに加えて既存の風力発電 6 基 4200kWの風車があり、これらの変動について NAS 電池を利用して制御し、目標閾値内の周波数に収める。感度の高い NAS 電池を利用する ことで、ディーゼル発電の調整用としての出番を抑えることができ、ひいては容量を引き下げ ことも可能になる(図Ⅱ-2-7) 。さらには、天候と蓄電池残量を予想し、太陽光発電と蓄電池 で一定出力制御を実験する。 以上の実証事業は順調に推移、多くの成果が得られた。沖縄電力の制御、運転ノウハウも向 上し、大きな蓄積をみた。 この宮古島を舞台とする実証事業は、NEDO が「離島マイクログリッド」事業として沖縄、 九州電力の運転協力を前提に、募集したものである。宮古島については東芝が元請会社として 落札し、機器・ソフトを地元の沖縄電力に提供し、同電力が実証を行った。2009 年から 2013 年まで 5 年間にわたり行われ、多くの成果を残した。独立したネットワーク下において相当量 の太陽光・風力発電を蓄電池とディーゼル発電の組み合わせで制御できることを示した。この 設備および制御ノウハウは、今後とも宮古島の需要な電力システムとして活躍し続けることに なる。また、2014 年度以降も、NEDO や電事連の要請等を受け入れて、実験を続けていく予 定である。 図Ⅱ-2- 7 NAS 電池による出力、周波数調整効果 (資料:沖縄電力、出典:日経エコロジー) 【ルーフソーラー集中設置の制御】 なお、太陽光発電 4000kW のうち、メガソーラーとしては 3000kW が割り当てられ、残りの 1000kW は、 模擬負荷やリチウムイオン電池とともに、 民生用需要家のソーラーとみなされた。 100 軒の疑似家庭(×4kW で 400kW)および 4 つの業務用施設(オフィス、小売り、病院、 学校、150kW×4 で 600kW)で構成される。疑似家庭は、50 軒ずつ 4 つのブロックに分けら れ、それぞれ業務施設と組み合わせとなる。 施設の需要曲線(ロードカーブ)は、宮古島島内のデーターをもとに構築し、リアリティを 持たせる。模擬負荷は熱発生設備である。また、15kWのリチウムイオン電池(東芝製)が 25 基設置されるが、自在にブロックごとの数を切り替えられる。 この事業は、低圧ネットワークにルーフソーラーが集中的に設置された場合に生じるであろ う課題を解決することが主な目的である。特に、需要側からの逆潮流による電圧上昇を調整す る設備(SVC)を設置し、その作動状況を確認する。また、異なる需要曲線を組み合わせるこ との、平滑化を含めた需要側の効果が計測できる。 3. 漁港とスマートグリッド ここで、漁港のスマートグリッドの可能性について、ドイツ E-Energy、六ヶ所村や宮古島の 実証事業を参考に、検討してみる。漁港地域の分散型エネルギー資源としては、再生可能エネ ルギー太陽光、風力、潮流、波力、バイオマス、小水力、地熱(温泉熱)が存在し得る。場所 的に海洋エネルギーを利用できる可能性があることが特徴である。河口に近いところでは水力 も有力である。海産物の加工残渣や木質等を利用するバイオマスの可能性もある。 また、調整設備(フレキシブル・リソーシス)としては、バイオマス、貯湯、燃料、ヒート ポンプが可能であろう。また、電力使用を再生可能エネルギーの供給に合わせてシフトするこ ともありうるが、漁港地区には冷凍・冷蔵倉庫が立地しているケースがあり、これは有力な調 整手段になる(E-Energy クックスハーフェンの事例)。 これらの調整資源は、熱や燃料のインフラが整備されている場合や冷蔵倉庫事業者が存在し その理解が得られる場合は、低コストで整備できる可能性があるが、日本では一般にこの条件 を満たしているところは少なく、インフラ整備等は国全体の課題といえる。 一方、蓄電池(バッテリー)は、変動吸収のみならず一定の時間需要を供給が上回るような 場合にも充電により負荷を提供できるという機能がある。要するに短期および長期の調整が可 能な便利なシステムである。再生可能エネルギーとの組み合わせではCO 2 ゼロ電源ともなる。 課題は、まだコストが高いことと、充放電ロスが大きいことである。これらの課題は、太陽 電池や電気自動車や PHV 等の EV 類の普及に伴う大量生産により、今後大幅なコストダウン が期待できる。高コストといわれた太陽光発電システムも、大量生産により急激にコストダウ ンが進んでいる。 当面は、柔軟資源を組み合わせることにより蓄電池の容量を減らすことが現実的と考えられ る。離島を主に各地で実施されているスマートグリッド等の実証事業も、こうした考えに基づ いているものが多い。また、地産地消や自立的型システム構築に関しては、政策的な助成が複 数の省庁で用意されており、先行的な事業に関してはその対象となる可能性がある。地域の意 思とアイデアが重要になる。 こうした状況を勘案すると、再生可能エネルギー発電と蓄電池を活用する六ヶ所村モデルは、 比較的短期間に準備できるだろう。一方、地域の柔軟設備と蓄電池との組み合わせは、地域資 源の有効活用に資するとともにスマートグリッド事業として見栄えがよく政策支援の対象に 選ばれやすいが、実現するのに努力を要しよう。いずれにしても、バックアップとして系統へ の接続が必要となり、これとの調整を要する。 参考文献 1. 「迷走するスマートグリッド」山家公雄 2010 年 エネルギーフォーラム社 2. スマートグリッドの本質 -欧州モデルとスマートコミュニティ- 山家公雄 (http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/10111001.html) 3. E-Energy: Smart-Energy made in Germany、2012/6 BMWi 4. E-Energy: Paving the Way towards an Internet of Energy, 2009/3 BMWi 5. E-Energy: ICT-based Energy System of the Future, 2008/4 BMWi 6. 六ヶ所村スマートグリッド実証モデル実施計画に関するお知らせ(日本風力開発、2009 年 10 月) (http://www.jwd.co.jp/pdf/news/091030_release.pdf) 7. 宮古島メガソーラー実証研究設備(沖縄電力 HP) http://www.okiden.co.jp/corporate/r_and_d/solar.html 8. 「宮古島メガソーラー実証研究設備」の設置工事の完了について(沖縄電力:2010 年 10 月) (http://www.okiden.co.jp/shared/pdf/news_release/2010/101015.pdf) Ⅲ-3.漁村・漁港におけるエネルギー需給やエネルギー利用策 (独)水産総合研究センター 和田時夫 1. 漁村・漁港の機能と施設 水産業は、海洋空間で展開される漁業や養殖業と陸上で展開される水産加工業や水産物の輸送・保 管・流通業、これらに資材やサービスを提供する各種の製造業や金融業などから構成される総合的な海 洋産業である。水産業において、海洋空間における事業活動と陸上における事業活動の接点となるのが 漁港である。また、海洋空間および陸上の双方における事業活動の拠点であり、他産業や他地域(都市 圏や消費地など)との連携・交流の接点となるのが、漁港の後背に展開する漁村(水産業地域)である。 また、わが国においては、国土が長い海岸線で囲まれている一方、多くの地域で山地が海岸近くまで 迫っており、離島を含めて多数の集落が海岸線に沿って点在している。このため、東日本大震災の際に も明らかであったが、大規模災害が発生した場合には、船舶を利用した海からの被災者の救出や物資の 輸送が効果的である。したがって、今後の漁村・漁港の機能として、地域の防災拠点としての機能を含 めるべきであり、それを前提とした施設やエネルギー需給のあり方を考える必要があろう。 以上の考え方に基づき、表Ⅲ-3-1 に漁村と漁港の機能と施設の具体例を整理した。従来の漁村・漁港 の機能や施設に、漁業や養殖業の実施、観光や他地域との連携・交流、研究開発や情報提供、防災・災 害対応、エネルギーの供給・調整などの機能と関連施設を付加した。 表Ⅲ-3- 1 漁村・漁港の機能と施設 機 能 地域区分 施 設 漁獲物・養殖生産物の水揚げ、荷捌 岸壁、水揚げ・荷捌き装置(ベルトコンベアー、フォークリフト き・競り・出荷 等)荷捌き・競り施設、管理施設、駐車場 漁 港 漁 村 漁 港 漁 村 漁船への物資の補給 給水・給電施設、給油施設、製氷施設 漁具・資材の保管 漁具倉庫、資材置き場 漁船の避難・係留 岸壁、泊地、防波堤、航路標識 漁船の造修 造修施設(造船所)、鉄工所 水産物の加工・流通・保蔵 加工施設(加工場)、冷凍・冷蔵庫 漁業・養殖業の実行 魚礁、定置網、網生け簀、消波堤、種苗生産施設、漁船 水産業の資材の生産・供給 製網・製綱工場、製函工場 研究開発・情報提供 試験研究施設、通信施設 水産業関係者の居住・福利・厚生 居住施設(住宅)、宿泊・休憩施設、集会施設、医療施設 観光・交流・伝統文化の継承 展示・普及施設、販売・飲食施設、駐車場 環境保全 廃水処理施設、廃棄物処理施設 エネルギー供給・調節 自然エネルギーによる発電施設、受変電施設、給電施設 防災拠点 緊急避難施設、自家発電施設、防災資材保管庫 漁港と漁村の機能や施設には、それぞれに特有のものもあるが、本来は連続し一体となって機能を発 揮するものである。したがって、エネルギーの需給や利用策を検討する場合においても一体的に考察す ることが合理的である。 2. 漁村・漁港におけるエネルギー需要 2.1. エネルギーの用途 漁村・漁港におけるエネルギーの用途(利用目的)は多岐にわたるが、製氷・貯氷施設、冷凍・冷蔵 施設、水産加工施設、荷捌き施設などにおける、熱源や動力源としての消費が大きいことが特徴である。 図Ⅲ-3-1 は、水産庁の「漁港のエコ化推進のための技術検討会」において、規模の異なる 3 つの漁港に おける主要な施設別の電力使用量(平成 22 年度)を比較した例である1。別海漁港(北海道)は利用範 囲が地元漁船を主とする第一種漁港であり、平成 22 年度の水揚げ量はサケやホタテを中心に 2,026 トン である。田ノ浦漁港(高知県)は同じく第一種漁港であるが、中型まき網漁業の基地としてやや規模が 大きく、平成 22 年度の水揚げ量はサバ類、アジ類、イワシ類をはじめとして 12,931 トンである。枕崎 漁港(鹿児島県)は利用範囲が全国に及ぶ漁港のうちでも特に重要なものとして政令で指定されている 特定第三種漁港であり、近海および遠洋カツオ漁業や海外まき網漁業の基地であり、鰹節の生産をはじ めとする水産加工も盛んである。平成 22 年度の水揚げ量は 93,805 トンである。 図Ⅲ-3- 1 規模の異なる3つの漁港における施設別の電力使用量(平成 22 年度) (出典:漁港のエコ化推進のための技術検討会「漁港のエコ化方針(中間とりまとめ) 」 (2012) ) 図Ⅲ-3-1 からも明らかなように、漁港の規模によらず製氷施設や冷凍・冷蔵施設の電力使用量が卓越 しており、これに荷捌き施設や加工施設での消費が続いている。この背景には、生鮮状態にある水産物 を常温で保管・流通させることは不可能であるため、保存のための水産加工や冷凍・冷蔵、加工・流通 施設自体の冷房が不可欠であり、その過程で電力や石油をはじめとする各種の燃料を大量に消費するこ とがある。また、漁港における漁獲物や養殖生産物の水揚げや荷捌きの過程におけるベルトコンベアー やフォークリフト、魚体選別機などの装置の駆動、貨物自動車などによる漁獲物や養殖生産物、水産加 工品の漁港・漁村外への輸送、水産加工施設における各種装置の駆動にも、大量の電力や燃料が消費さ れている。さらに、養殖業においても、陸上の水槽で種苗生産や飼育を行う場合には、飼育水温の加温・ 冷却のために大量の熱エネルギーが消費される。加えて、漁業や養殖業に用いられる漁船による燃料の 使用量も大きい。 一方、図Ⅲ-3-1 によれば、漁港の管理施設(事務所)自体による電力の消費や道路や岸壁の照明によ る電力消費は少ない。管理施設における電力消費には、施設内の照明、冷暖房、各種事務機器などの作 動、施設内および施設外との通信・連絡、施設内部および外部の装置などの稼働状況のモニタリングな どが含まれる。漁村・漁港全体でみれば、研究開発、福利厚生、環境保全、防災、エネルギー供給・調 節などの施設においても同様のエネルギー需要があると考えられる。道路や岸壁などの照明と並んで漁 村・漁港の機能を発揮させるためには重要なエネルギー需要であり、消費エネルギーは相対的に小さく ても、安定的な供給が必要である。 2.2. エネルギー需要の時間的変動性 漁獲物や養殖生産物の水揚げの季節性や時間依存性によるエネルギー需要の時間的な変動が大きい ことも、漁村・漁港におけるエネルギー需要の特徴である。図Ⅲ-3-2 に、平成 22 年度の田ノ浦漁港にお ける月別の水揚げ量と主要な漁港施設別の電力使用量の変化を示した2。水揚げ量は 6 月に最高値を示 し 12 月に最低となるが、 各施設の電力使用量も水揚げ量の季節的な変化に対応して変化している。 また、 電力使用が最も多い夏季における電力使用量が高い。冷凍・冷蔵や製氷の必要性の増大、外気温との差 による消費エネルギーの増加、施設の冷房のためであると考えられる。 図Ⅲ-3- 2 田ノ浦漁港における月別の水揚げ量と主要な漁港施設別の電力使用量(平成 22 年度) (出典:漁港のエコ化推進のための技術検討会「第3回検討会資料 3-2」 (2011) ) 図Ⅲ-3-3 には、水産庁漁港漁村漁場整備部が収集したデータに基づき、常磐・房総海域における大・ 中型まき網漁業および中型まき網漁業の根拠地である波崎漁港(茨城県、第三種漁港)における施設別 の1日の電力使用量の時間変化を示した。荷捌き施設や製氷、冷蔵施設の電力使用量は、漁獲物の水揚 げが行われ市場が活動している日中(午前 8 時頃から午後 4 時頃)が高い。特に冷蔵施設の使用量は午 前 9 時頃にピークを示すが、これは、この時間帯に漁獲物の出し入れが集中し、そのために上昇する冷 蔵庫の温度を維持するために電力使用量が増加することに対応したものと考えられる。一方、入港して いる漁船への陸上からの電力供給や岸壁および街路の照明のための電力使用は夜間が中心である。 図Ⅲ-3- 3 波崎漁港における施設別の1日の電力使用量の時間変化 (2012 年 7 月~2013 年 2 月の日別時間別(30 分単位)の電力使用量(kWh)の平均値を示す。) (水産庁漁港漁場漁村整備部のデータによる。) 3. 漁村・漁港におけるエネルギー供給 3.1. 自然エネルギーの特徴および利用の現状 自然エネルギーは、再生可能エネルギーのうち、地球上における様々な物理現象にともなうエネルギ ーであり、太陽光、太陽熱、風力、地熱、水力、海・潮流、波力、海洋温度差(海洋深層水) 、雪氷熱な どがある。その賦存量は地理的に偏るとともに季節的にも変動する。また、既に実際の利用が図られて いるものがある一方で、まだ利用技術やコストの面で課題が残されているものも多い。 全ての自然エネルギーが何らかの形で発電に利用可能であるが、わが国において、現時点で電力源と して実用可能な水準に達しているものとしては、一般水力および中小水力発電、地熱発電、太陽光発電、 陸上および洋上風力発電がある。表Ⅲ-3-2 に、内閣府のエネルギー・環境会議のコスト等検証委員会の 報告書3に基づき、主要な自然エネルギーや従来型のエネルギーによる発電コストを示した。自然エネ ルギーの利用にあたっては、太陽光のように利用が気象や時間によって制限を受けるため施設稼働率が 低いことや、新規に発電施設や送電線を整備する必要があり、現時点では、自然エネルギーによる発電 コストは従来型の発電に比べると割高である。しかしながら、今後、化石燃料による発電は、表Ⅲ-3-2 に掲げた石油を燃料とする火力発電が示すように、燃料価格の上昇やCO 2 排出対策経費の増大によりコ ストが増大することが予想されており、原子力発電についても、安全対策や廃炉・廃棄物対策経費の増 大などにより、発電コストが増大することが予想されている3。したがって、将来的にはコストの差は 相対的に小さくなると期待される。 表Ⅲ-3- 2 主な電源の発電コスト (割引率は3%を使用) 電 源 施設利用率 (%) 稼働年数 発電コスト (円/kWh) 原子力 70 40 8.9~ 石炭火力 80 40 9.5 LNG火力 80 40 10.7 石油火力 50 40 22.1 陸上風力 20 20 9.9~17.3 洋上風力 (着底式) 30 20 9.4~23.1 地 熱 80 40 9.2~11.6 小水力 60 40 19.1~22.0 太陽光 (住宅用) 12 20 33.4~38.3 バイオマス (木質専焼) 80 40 17.4~32.2 (出典:エネルギー・環境会議コスト等検証委員会 「コスト等検証委員会報告書」 (2011)より作成) わが国周辺は、海・潮流、波力、潮汐、海洋温度差などの海洋エネルギーの賦存量にも恵まれており、 特に離島をはじめとして、発電用のエネルギー源としての利用が期待されている。このうち波力につい ては、1965 年以来航路標識の電源として利用されているほか、実験プラントによる実海域での実験が行 われてきた4。また、海洋温度差発電については、技術的にはわが国が世界の先端にあると言われてお り4、2003 年から佐賀大学において 30kWの実験施設が稼働している5。また、沖縄県久米島において、 海洋深層水の複合利用の一環として平成 25 年から出力 50kWの実験プラントが稼働を始めた4。しかし ながら、これらを除けば、海洋エネルギーを用いた発電はその多くがまだ研究開発の段階にとどまって いる。太陽熱発電についても、わが国においては採算可能な日射量を得ることが困難であると言われて いる4。 また、2.1 で述べたように、漁村・漁港においては、冷凍・冷蔵施設や加工施設をはじめとして熱エ ネルギーの需要が大きい。したがって、自然エネルギーの利用にあたっては発電を目的とするだけでは なく、特に熱エネルギーについては、その直接的な利用や発電を含めた多段階利用を考慮する必要があ る。 3.2. 漁村・漁港における利用可能性 自然エネルギーの賦存量は地理的に偏るとともに季節的にも変動する。一方、漁村・漁港は全国の沿 海地域や離島に展開している。このため、漁村・漁港の立地や具体的な施設構成などにより、それぞれ の自然エネルギーの利用可能性は大きく異なる。 3.2.1 太陽光発電 太陽光発電は、自然エネルギーによる発電手法としては最も普及しているものの一つである。 (独) 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)6の日本の年間最適傾斜角の斜面日射量によれば、年間 の日射量の地域差も比較的小さく全国的に利用可能であるが、相対的に、北海道から九州に至る太平洋 沿岸や瀬戸内海沿岸での条件がよい。一方、発電が日中に限られ、天候にも左右されることから、施設 の稼働率が低いことや発電量の時間的な変動が大きいことや、大規模に発電するためにはソーラーパネ ルを展開するスペースが必要であることも課題である。 漁村・漁港において利用するには、各種の施設の屋根や屋上に設置し、照明をはじめとする各種の電 力需要に対して、単独で、あるいは風力発電などと組み合わせて、既往の系統電源の補助として利用す ることが考えられる。例えば、宮崎県門川漁港では 40kWの発電装置を荷捌き施設の屋上に設置し、荷 捌き施設に電力を供給している7。また、漁場環境モニタリングブイや養殖場の自動給餌などの電源と して、さらに、災害時の非常用電源として、系統電源とは独立した電源としても利用可能である。 3.2.2 風力発電 わが国における風力発電は、風況に恵まれている北海道や東北地方を中心に平成 24 年度には累積導 入量が 2,600MWを越えている4。従来は、陸上風力発電が主体であったが、わが国周辺では洋上の方が より強く安定した風が得られることから、近年は洋上風力の開発が進みつつある。これまでに、北海道 瀬棚町、山形県酒田市、茨城県神栖市において着底式の洋上風力発電が行われている。また、長崎県五 島列島と福島県において浮体式洋上風力発電の実証試験が行われている8。 風力発電は、一般に風車1基当たりの出力が 1~2MWと大型であり、太陽光発電に比べると施設稼働 率も高いため、漁村・漁港における利用にあたっても、冷凍・冷蔵施設や製氷施設など比較的大きな電 力を必要とする施設に用いることが考えられる。茨城県波崎漁港では、製氷施設、荷捌き施設、岸壁照 明などの漁港施設への電力供給を目的に、漁港敷地内に出力1MW、年間予想発電量 200 万kWhの風力 発電装置を設置し効果を上げている9,10。 3.2.3 中小水力発電 中小水力の定義は必ずしも明確ではないが、わが国においては、出力 1,000kWの水力発電が「新エネ ルギー利用との促進に関する特別措置法(新エネ法)により新エネルギーとして位置付けられている。 また、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の対象となっているのは 30,000kW未満の水力発電である。 環境省11の中小水力発電(河川部)の導入ポテンシャル分布図によれば、わが国において発電のために開発 可能な河川が残されているのは山間部が中心であり、海岸近くで利用が可能な地域は僅かである。した がって漁村・漁港において利用可能な水力発電は、農業用水や上下水道、廃水路などに設置可能な極め て小規模なものが主な対象となる。 水力発電は、太陽光発電や風力発電に比べると時間的な変動が小さく設備稼働率も高い。漁村・漁港 においては、太陽光発電などと組み合わせて全体の発電量の平滑化を図るとともに、既往の系統電源の 補助として多様な用途に利用することが考えられる。 3.2.4 地熱発電 地熱発電は、自然エネルギーによる発電のなかでは安定性に優れており設備利用率も高い。しかしな がら、村岡ら12の 53~120℃以上の熱水系地熱資源量密度分布図によれば、わが国において地熱発電のた めに高温の熱水が利用可能な地域は、北海道、東北、九州地方の山間部(火山周辺)に限られている。 したがって、漁村・漁港において地熱発電の利用可能性がある地域も、沿岸域で温泉が出るような場所 に限られると考えられる。 3.2.5 熱源としての利用 地熱、太陽熱、雪氷熱、海洋温度差(深層水)は、直接に、あるいはヒートポンプを介して熱源とし ても利用可能である。このうち雪氷熱については、北海道や東北、本州中部や北陸地方をはじめとして、 冬季の雪氷を断熱されたスペースに蓄積・格納し、夏季の施設冷房や農作物の保管に利用することが広 く行われている13。水産業分野においても、北海道苫前町の苫前漁港(第三種漁港)において、漁獲物 の鮮度保持を目的とした荷捌き施設の冷却への利用に関する実証試験が行われ効果が確認されている14 ほか、ホタテの出荷調整のための蓄養水槽の温度管理にも雪氷熱を利用している15。また、北海道礼文 町では、魚類の干物の製造に雪氷で冷却・乾燥させた空気を用いることで、省エネを達成している事例 も報告されている13。 地熱については、高温の熱水が利用可能な場合は、発電に加え、食品加工や陸上養殖における飼育水 の温度調節などの多段階利用が可能である。そうでない場合についても、地中と外気温の温度差を利用 したヒートポンプにより、漁村・漁港施設の冷暖房や給湯、陸上養殖における飼育水の温度調節などに 利用可能である。海洋深層水についても、表層水や外気との温度差を利用したヒートポンプにより、地 熱と同様の利用が可能である。また、海洋深層水を漁獲物や水揚げ物の冷却・保存、洗浄のためのシャ ーベット状の氷や清浄海水として使用することや、熱交換によって温度が上昇した深層水を陸上養殖の 飼育に使用することにより、本来の使用エネルギーの削減(省エネ化)を図ることが可能である。 4. 漁村・漁港における自然エネルギーの利用方策 4.1 水産業協調型・環境調和型利用の必要性 農林水産省は、農山漁村地域における再生可能エネルギーの導入の拡大を図るにあたり、①地域の合 意形成、②地域への利益還元、③土地などの利用調整を念頭に、平成 25 年 11 月に「農林漁業の健全な 発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律」 (農山漁村再生可能エネルギー 法)を制定した16。また、水産庁は、平成 23 年 9 月に「漁港区域に風力発電施設を設置する場合の占用 等の許可基準等の参考指針」を出している17。 この「参考指針」においては、①施設の設置が漁港の利用にとって合理性があること、②事業に公益 性があり事業実施の確実性が確保されていること、 ③施設が暴風や地震その他に対して安全であること、 ④施設が、漁港の利用や保全・整備、漁業や養殖業の操業、漁船の航行、水産加工や流通などの妨げに ならないこと、⑤施設の設置が、付近の景観や自然環境、漁業者などの労働環境や住民の生活環境に影 響を与えないこと、などが求められている。これらは、他の自然エネルギーの利用施設の設置において も共通する課題である。洋上風力発電については、米国東部のナンタケット湾における米国最初のウィ ンドファームを対象とした評価事例があり、施設の建設中および運用中の周辺の環境や生物への影響に ついて、概ね影響が認められない(negligible)か、小さい(minor)と報告されている18。しかしながら、 海上や海中に設置後の施設や装置からの騒音や振動が中・長期的に水産生物に及ぼす影響や、施設や装 置の設置が付近の海水の物理化学的な性状に及ぼす影響、さらにそれらが海洋生物の生態に及ぼす影響 については、 現時点では不明な点が多い。 内外の既存施設や類似施設での観測や実証プラントでの観測、 模型実験や数値実験などを通じて影響評価と対策技術の検討・確立を進める必要がある。この点に関し て、洋上風力発電施設などを積極的に漁場環境や海洋生物のモニタリングの拠点として活用するほか、 水産生物の増殖や保護の機能を持たせるなどの工夫19も必要であろう。また、これらに基づく影響評価 指針や、施設設置における工法や材料、影響緩和策などに関するガイドラインの策定も必要であろう。 4.2 分散・複合利用および多段階利用の必要性 これまで述べてきたように、漁村・漁港におけるエネルギー需要が多様性に富む一方、利用可能な自 然エネルギーは時間的、空間的に大きく変動する。また、地域の防災拠点としての漁村・漁港の役割を 果たすためには、系統電源が利用できないような緊急事態への対処能力も必要である。したがって、漁 村・漁港におけるエネルギー利用にあたっては、エネルギー源を、各種の自然エネルギーや他の再生可 能エネルギー、従来型エネルギー(化石燃料や系統電源)を含む多様なエネルギーの間で分散させて非 常時の対応性を確保する一方、各種のエネルギーの複合利用や複数の施設や目的の間での多段階利用を 通じて、漁村・漁港地域全体としてのエネルギー需給の安定化と効率化を図ることが必要である。山口・ 廣部7は、衛生管理型漁港の整備を念頭に、系統電源をベースに、太陽光発電や風力発電に、海水の冷 却やヒートポンプを用いた熱交換のための雪氷熱を、漁港の各施設において連携して活用するアイデア を示している。 エネルギーの複合利用にあたっては、漁村地域内の水産加工施設や、隣接する農業集落や工業地域と 連携したバイオマスエネルギーの利用や廃熱の利用なども視野に入れる必要がある。また、系統電源と の接続においては、電力需要あるいは電力余剰(生産)の時間変化を出来るだけ小さくすることが必要 である。このためには、漁村・漁港地域においても各施設や各種の電源を多重に連結した地域内のスマ ートグリッド(マイクログリッド)を構成し、各施設におけるエネルギーの使用状況とエネルギーの生 産状況を監視して需給の調整を図るとともに、グリッド内の電力やエネルギーのフローに見合った適切 な規模の蓄電装置やエネルギー貯蔵システムを組み込んで電力やエネルギーの需給の平滑化を図る必要 がある。 現時点では、蓄電装置としてはナトリウム硫黄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、バナ ジウムレドックスフロー電池などの各種の蓄電池が一般的であり、性能の向上や低コスト化へ向けた研 究開発が進められている4。さらに、現時点では、技術的な課題や経済性の問題があるが、自然エネル ギーで発電された電力を水素へ転換し、燃料電池や水素機関の燃料として利用する4ことも、自然エネ ルギーの利用範囲の拡大や時間的な変動性を平滑化する観点からは重要な取り組みであろう。 一方、熱エネルギーの需要が多い漁村・漁港における容易かつ安全なエネルギーの貯蔵方式として、 氷による蓄熱が考えられる。本来、氷や水は、石油や水素などの他の物質に比べてエネルギーの貯蔵密 度が小さい。しかしながら、漁村・漁港では、漁獲物や生産物の保管のために冷凍・冷蔵施設や製氷施 設が不可欠である。既存の冷凍・冷蔵施設に加えて、十分な容量の余剰電力により製造された氷や冬季 の雪氷の貯蔵施設を設けることにより、熱エネルギーを介したエネルギーや電力の需給の平滑化が期待 される。既にスイスにおいては、流通企業が保有する大規模な冷凍冷蔵庫をスマートグリッドのバッフ ァーとして利用する実証試験が行われている20。 防災拠点としての漁村・漁港を考えると、マイクログリッドの監視装置と蓄電装置は、津波をはじめ とする各種の自然災害や火災などに対して頑健な場所に設置する必要がある。また、あわせて、通信・ 連絡の確保など最低限の電力を独立して供給可能な発電装置を設置しておくことが必要であろう。さら に、漁港内に係留する漁船に対する陸上からの電力供給装置を利用して、緊急時には漁船が発電した電 力を吸収・利用するシステムの構築も必要であろう。 これまでに述べた漁村・漁港における自然エネルギーの分散・複合利用とマイクログリッドのイメー ジを図Ⅲ-3-4 に示した。今後は、漁村・漁港の立地にともなう各種の自然エネルギーの利用可能性や、 漁村・漁港の個別の機能に着目したエネルギー源の組み合わせや多段階利用などの利用形態の検討を進 め、その実現にあたっての自然的課題や社会・経済的課題について明らかにする必要がある。また、地 域における自然エネルギーを含む再生可能エネルギーの十分な開発・利用や効果的なスマートグリッド を構成する観点からは、漁村・漁港にとどまらず、周辺の農業地域や商工業地域を含めた、より広範な 地域におけるエネルギー利用のあり方を考える必要があろう。 図Ⅲ-3- 4 漁村・漁港における自然エネルギーの分散・複合利用とマイクログリッドのイメージ (出典:著者作成) 引用文献 1. 漁港のエコ化推進のための技術検討会(2012)漁港のエコ化方針(中間とりまとめ) (http://www.jfa.maff.go.jp/j/study/keikaku/pdf/ecotorimatome.pdf) 2. 漁港のエコ化推進のための技術検討会(2011)第3回検討会資料 3-2 (http://www.jfa.maff.go.jp/j/study/keikaku/pdf/shiryou1-5.pdf) 3. エネルギー・環境会議コスト等検証委員会(2011)コスト等検証委員会報告書 (http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/pdf/20111221/hokoku.pdf) 4. (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)編(2014)再生可能エネルギー白書第2版、 森北出版(*直接の引用以外にも、本報告の作成にあたり参考とした。) 5. 佐賀大学海洋エネルギー研究センターホームページ(http://www.ioes.saga-u.ac.jp/jp/) 6. (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) (2010)太陽光発電フィールドテスト事業に 関するガイドライン(設計施工・システム編) (http://www.nedo.go.jp/content/100110086.pdf) 7. 山口圭太、廣部俊夫(2009)漁港における自然エネルギーの活用について 国土交通省北海道開発 局第 53 回(平成 21 年度)北海道開発技術研究発表会 (http://www.hkd.mlit.go.jp/topics/gijyutu/giken/h21giken/JiyuRonbun/KK-15.pdf) 8. 資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部(2014)最近の再生可能エネルギー市場の動向に ついて(http://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/pdf/012_02_00.pdf) 9. 風力発電事業概要(波崎漁業協同組合ホームページ) (http://www.portland.ne.jp/~hasaki/umimaru/press/summary.pdf) 10. 農林水産省食料産業局再生可能エネルギーグループ(2014)農山漁村における再生可能エネルギー 発電をめぐる情勢(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/pdf/meguzi.pdf) 11. 環境省(2011)平成 22 年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書 (http://ioj-japan.sakura.ne.jp/xoops/energyplan/n0_1.pdf ) 12. 村岡洋文・佐々木宗建・柳澤教雄・大里和己(2008)カリーナサイクルによる温泉発電の市場規模 評価、日本地熱学会平成 20 年度学術講演会講演要旨集 13. 経済産業省北海道経済局(2012)COOL ENERGY 5(雪氷熱エネルギー活用事例集 5) (http://www.hkd.meti.go.jp/hokne/c_energy5/ce5.pdf) 14. 海津博行、平井栄治、高野末喜(2011)苫前漁港におけるエコエネルギーを活用した衛生管理対策 について-雪氷エネルギーを活用した漁獲物の鮮度保持- 国土交通省北海道開発局第 55 回(平 成 23 年度)北海道開発技術研究発表会 (http://www.hkd.mlit.go.jp/topics/gijyutu/giken/h23giken/JiyuRonbun/KK-23.pdf) 15. 後藤卓治、広島 基、浅川典敬(2010)漁港における雪氷熱利用に関する研究(財)漁港漁場漁村 技術研究所調査研究論文集 No.21(平成 21 年度調査) (http://www.jific.or.jp/report/pdf_h21/2114.pdf ) 16. 農林水産省ホームページ(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/houritu.html) 17. 水産庁ホームページ(http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/keikaku/pdf/110909-01.pdf) 18. U.S. Department of the Interior Minerals Management Service (2009)Cape wind energy project Final environmental impact statement (http://www.boem.gov/uploadedFiles/BOEM/Renewable_Energy_Program/Studies/Cape%20W ind%20Energy%20Project%20FEIS.pdf) 19. 洋上風力発電施設の漁業協調型活用方策の提案(2013)(独)水産総合研究センター水産工学研究所 (http://nrife.fra.affrc.go.jp/seika/youjyoufuuryokuhatuden/youjyoufuuryokuhatuden2.pdf) 20. IBM Research-Zurich (2012)Swiss energy utility and supermarket chain pilot smart grid using renewable energy FlexLast project for optimal power system integration (http://www.zurich.ibm.com/news/12/flexlast.html) Ⅲ-4.地域振興と自然エネルギー利用 函館マリンバイオクラスターと自然エネルギーの可能性 (公財)函館地域産業振興財団副理事長 兼 北海道立工業技術センター長 三浦汀介 1. はじめに 自然エネルギー利用は、単なる技術論で語られてはならない。今日の産業は、その大部分を化石エネ ルギーに依存しているのであり、この現実を看過するわけにはいかない。そして、いま、エネルギー・ シフトの時代であり、化石燃料は、充分有効に活用しながら、自然エネルギー利用の方向へと舵を切る べきである。また、エネルギー種を考える前に、そもそも、エネルギーが投入される産業システム自体 のイノベーションを考える必要があろう。これから先も安心・安全な社会で幸せに暮したい、このこと がゴールイメージであるならば、前提条件としての産業の持続性を、経済、社会、環境の面から真剣に 考えなければならない。それを、ただ、エネルギーを化石燃料から自然エネルギーに変換するという技 術的問題としてとらえるのであれば、問題の本質を見誤ることになる。本論では、持続可能な社会の前 提となる考え方として、 『ゼロエミッション』を、また、新しい産業経済の基盤として『ブルーエコノミ ー』を紹介する。そして、これらの考え方に基づいて、地域経済や地域の産業振興の実践事例として、 『函館マリンバイオクラスター』を紹介する。そして、このような前提から、具体的に、 『漁村・漁港地 域における自然エネルギーを利用した振興策の検討』の事業と関わりのある本章の具体的テーマとして、 函館マリンバイオクラスターにおける自然エネルギー活用研究の現状を紹介する。 2. これからの地域振興に必要な発想 2.1. ゼロエミッション ゼロエミッションの考え方は、1995 年の 4 月に開催された第 1 回ゼロエミッション世界会議で紹介さ れた。このアイデアは、当時、国連大学の学長顧問をしていたベルギー人の実業家グンタ・パウリの提 唱によるものである。これを国連大学は、同年、循環型社会構築のための有力な手段として位置付け、 会議で正式に推進することを決定した。ゼロエミッションは、河川問題に例えれば、上流の汚染原因ま で遡って根本的問題解決を図るものである。また、それ以前のクリーナープロダクションがひとつのプ ロセスを考えるのに対してゼロエミッションは異種の産業のネットワーク化によって、単一のプロセス ではなしえない資源利用の効率化、ならびに環境負荷の低減を図るものとなる。さらに、ゼロエミッシ ョンは廃棄物という考え方から脱して、総ての排出物を再原料化する技術と、それを利用する他の企業 が結びつくエコシステムに似た持続可能な産業クラスターの構築を目指すものである。 活動の中心となっている ZEF(Zeroemission Forum)ジャパンは、実現のための 6 つの行動原則を提案 している。それらは、 1) 再生可能な資源は、再生される資源量を上回って消費してはならない。 例えば水産資源のように再生可能な資源であっても、再生量を上回って漁獲(乱獲)し続ければ、やが て再生が間にあわず水産資源は消滅してしまう。 2) 再生不可能な資源は、資源の生産性を向上させるとともに、再生可能でクリーンな代替資源を開発 し、その生産量に見合う範囲でなら消費してもよい。 化石燃料のような再生不可能な資源というものは、一度使えば、その分無くなる。したがって一方的に 使い続ければ、いずれは無くなる資源である。しかし、それは絶対使用してはいけないと言うのではな く、それを使う場合には、できるだけ資源生産性を高め、効率的に使用することが重要である。 3) 自然界の許容範囲を超えて廃棄物を放出してはならない。 有害物質を自然界に放出し続ければ、やがて自然のもつ浄化能力を超え、地球環境を限りなく悪化させ てしまう。 4) 経済活動、日常生活の場で、できるだけ脱物質化を図らなければならない。 これまでの社会のような物質至上主義的な考え方を改め、最小の物質投入量で最大の満足が得られるよ うな新しい経済システムの構築が必要である。 5) 地上ストック資源の有効活用を図らなければならない。 20 世紀を支えた物質文明は地下資源に大きく依存してきた。主要な金属の地下資源は、あと数十年で枯 渇すると言われているが、資源が地球上から消えたわけではない。それらは都市のあらゆる建築物を初 めとする構造物に形を変えて存在している。 6) 環境コストを内部化させ、環境効率の高い市場経済をつくらなければならない。 21 世紀は環境コストを市場経済の中に取り込まなければならない時代になる。地球温暖化を放置すれば、 世界的気候変動を招き、海面が上昇し農地が水没し、島嶼国の場合は国そのものが消滅する可能性もあ る。 このように、環境負荷を限りなくゼロに近づけるコンセプトにもとづいて産業構造を最適化し、それ に持続可能性を付与していく考え方がゼロエミッション型産業クラスターである。 2.2. ブルーエコノミー スイスに本部を置く民間のシンクタンク、ローマクラブは、第一次石油危機に先立つ 1972 年に「成 長の限界」というレポートを発表した。そのレポートは、人口爆発や、特に石油をはじめとする資源の 枯渇が原因で、今後、現代社会は無制限に拡大を許されないことを世界に警告する内容であった。また、 国連大学ホームページトピックス、「グリーン経済と成長のゆくえ」によれば、現代の環境運動は、産業 革命以降、急速に発展した工業化社会による、大量生産、大量消費、その結果生じる大量廃棄に対する 反動として 1960 年代に誕生した経過があるので、 不安から誕生した当初の環境政策は多分に挑戦的なも のであった。政府は、廃棄物によって自然と人の健康を奪う 企業を規制しようとし、ビジネス行動を変 化させるため、一定の行動を義務づけ、汚染に罰則を科す規制を設けた。したがって、これに続く 1970 年代の環境施策は、 明らかに問題が多く非効率的で効果的ではなかった。そして、ホームページ・ブル ーエコノミーイノベーションズによれば、このような状況から生まれたグリーン・エコノミーと呼ばれ る経済概念も、また、消費を「削減」することや、 「環境を重視すること」に重きを置くあまり、利益を 得て技術を継続的に維持し、発展させるという観点が相対的に欠けるものであった。残念ながら今日に おいても補助金や助成金に頼っているものは多い。例えば、太陽光発電電池は発明後すでに 50 年が経っ ていても、いまだに補助金に大きく頼っている状況である。また、グリーンな商品が一般の商品に比べ て価格が高すぎれば、結局は余裕のある一部の人たちのための贅沢となり、 大衆には関係ないものにな る。現実の社会では、ある技術が排出削減や環境保護の面でいくら有効に機能するからといっても、そ の技術を使うことで、どのように新しいキャッシュフローが生み出されるのかという経済的な側面が考 慮されなければ、その技術は長い目では社会に貢献し続けることはできないのである。 ブルーエコノミーの創始者グンタ・パウリと筆者は 1995 年から交流があり、先日、彼から「ブルーエ コノミーに変えよう(ダイヤモンド社刊)」が送られてきた。本書の内容を簡単に紹介すると、この概念 にのっとって、より多くの技術革新を成し遂げることができれば、それらの技術革新によって新しいキ ャッシュフローが生みだされる。キャッシュフローが生まれれば雇用も創出され、社会資本も増強され ることになる。ここで一番重要なのは起業家精神を育成することであり、起業に伴うリスクを負っても いいと思う人たちを増やすことである。そして、そこに機会があることを信じる投資家の存在が必要と なる。さらに、彼は、母なる地球は青い惑星であり、少なくとも公害がない時、空は青い。 海も青い。 であるから真の意味でサステイナブルなこのプロセスとそれにより達成される社会システムを考えると き、必要な新しい経済概念は「ブルーエコノミー」であると言う。 3. 函館マリンバイオクラスターとは 本節では、 筆者が2012年に日本水産学会誌において掲載された内容について、 以下その概略を述べる。 この事業は、一次産業を基盤にした産業クラスターの形成を進めるもので、海の環境予測、持続的な資 源確保、機能性の創出、ブランド形成が有機的に結びつくことにより、発展的なクラスター形成を目指 す。また、この事業は、人、物、産業、文化については、可能な限り地域の内在性に根拠を置くととも に他地域との交流によって補完しながら、グローバルな展開を目指す。加えて、持続的な地域産業の育 成を図る骨組みとしては、海の多様性に配慮し、地域の海洋資源を持続的に生産・活用する仕組みの構 築に加え、地域住民の参加とつながりによるクラスター形成を図る。こうした理念に基づき、4つのグル ープに分かれた研究テーマを相互に関連付けながら進める函館マリンバイオクラスターは、地域産業へ の貢献を強く意図した、海を生産システムとする新しい産業モデルの構築である。 3.1. 函館マリンバイオクラスター構想(文部科学省地域イノベーション戦略支援プログラムによる) 函館地域は、縄文の昔より豊かな海の恵みを受けて特徴のある発展を続けてきており、水産・海洋に 関する高度な産業も育ち、高いポテンシャルを持つ関連学術・試験研究機関が集積している。この特性 を生かし、水産・海洋に関する国際的な学術研究拠点都市の形成を目指した「函館国際水産・海洋都市 構想」のもと、科学技術を産業振興に結び付ける産学官連携の多くの取り組みが活発に行われている(図 Ⅲ-4-1)。これまで、同構想のソフト面での中核的な事業として、平成15年から6年間、文部科学省の都 市エリア産学官連携促進事業、さらに、平成21年から5年間地域イノベーション戦略支援プログラムを実 施し、それまで未利用であったガゴメの高付加価値化に取り組み、現在までに200品目以上の商品化と 100億円以上の直接的な経済効果を生み出している。そして今なお新商品の開発は続いており、まさにブ ドウの房のように次々と実がなるガゴメクラスターが形成されつつあると言える(図Ⅲ-4-2)。 このガゴメクラスターの形成が示すように、第一次産業から第三次産業まで幅広い産業に波及する地 域資源を科学技術により磨きをかける取り組みは、非常に有効な手段であり、地域産業振興に果たして いる役割は非常に大きいものがある。 函館地域では、周辺の豊かな海を計測・予測可能な巨大な生産システムと捉え、未利用海洋資源の探 索や海洋生物由来有価物の持続的生産に必要なキーテクノロジーを総合的に研究開発すると共に、その 成果としての生産物の高品質、高付加価値を科学的に実証し「函館ブランド」としてグローバルに展開 するクラスター形成を目指している。 図Ⅲ-4- 1 函館マリンバイオクラスターと地域構想の関係 図Ⅲ-4- 2 ガゴメクラスターとそれから生まれた製品群 3.2. 事業の概要(実施期間は平成 21 年 9 月から平成 26 年 3 月) 3.2.1. 事業マネジメント 函館国際水産・海洋都市構想のもと、大学、自治体、経済界など、地域が一体となってクラスター本 部を構成し、本事業に取り組む。クラスター本部は、中核機関と中核研究機関を兼ねる公益財団法人函 館地域産業振興財団に設置し、研究開発から最終的な事業展開までの推進体制を構築する。 3.2.2. 研究開発プロジェクト 水産・海洋科学のグローバルなイノベーションの創出により、多様な産業に波及し国際競争に打ち勝 つ持続可能なマリンバイオクラスター形成を目指しており、4つの研究開発テーマを実施する(図3)。 研究テーマ1 海洋空間情報を活用した沿岸生物相・水圏環境の健全化と高次活用の両立 リーダー:齊藤 誠一 北海道大学大学院水産科学研究院教授 研究テーマ2 高機能性物質を含有する北方系メガベントスの自立型バイオファーミング リーダー:安井 肇 北海道大学大学院水産科学研究院教授 研究テーマ3 メガベントスの生物特性を活かした高機能資源創出のための研究開発 リーダー:宮下 和夫 北海道大学大学院水産科学研究院教授 研究テーマ4 食と健康のグローバル・スタンダード構築のための研究開発 リーダー:吉岡 武也 北海道立工業技術センター研究開発部主任研究員 図Ⅲ-4- 3 4 つの研究テーマとそれぞれの相互関係 3.2.3 研究成果展開、技術移転、人材育成 研究成果をグローバルに展開するために国際競争力の向上を図り、道内、国内、国際連携を積極的に 推進する。技術移転については産学官が一体化した共同研究方式にて行う。人材育成については、「新 水産・海洋都市はこだてを支える人材養成」事業と連携するとともに、若手研究者を積極的に参加させ ることにより、OJT(On the Job Training)による育成を図る。 3.2.4 クラスター本部体制 ○本部長…………………高橋 はるみ(北海道知事) ○副本部長………………工藤 壽樹(函館市長) ○事業総括………………三浦 汀介((公財)函館地域産業振興財団副理事長・北海道立工業技術セン ター長) ○事業化戦略推進室長…猪飼 秀一((公財)函館地域産業振興財団副理事長・北海道立工業技術センタ ー 副センター長) ○研究統括………………嵯峨 直恆(北海道大学大学院水産科学研究院研究院長) ○副研究統括……………宮下 和夫(北海道大学大学院水産科学研究院 教授) ○副研究統括……………三上 貞芳(公立はこだて未来大学 教授) ○副研究統括……………宮原 則行(北海道立工業技術センター研究開発部長) ○中核機関………………公益財団法人 函館地域産業振興財団 〒041-0801函館市桔梗町379番地 3-2-5 参加研究機関 産…(株)エスイーシー、(株)ゼニライトブイ、タケブチ撚糸(株)、(有)アイジャード、(株) カネカ、エア・ウォーター物流(株)、共和コンクリート工業(株)、(有)バイオクリエイト、 みぞぐち事業(株)、(株)ノース技研、(株)浅井ゲルマニウム研究所、(株)エルフィン、(株) 古清商店、(株)ニッコー、渡島冷蔵(株)、カネセン千葉水産(株)、上磯郡漁業協同組合、四 国化工(株)、他合計120社(平成26年3月末現在) 学…北海道大学、公立はこだて未来大学、函館工業高等専門学校、旭川医科大学、京都大学、北見工業 大学、東京工業大学、木更津工業高等専門学校、前橋工科大学、小樽商科大学、北海道医療大学 官…北海道立工業技術センター、(地独)北海道立総合研究機構 食品加工研究センター、(独)農林 水産消費安全技術センター、(独)農業食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 3.3. 主な事業成果 1) 研究テーマ1 海洋計測システムとして、ほぼメンテナンスのいらない量産型で低コストのワールドワイド版ブイ・ システムの開発に成功し、参画企業による販売を開始している。名称は、 「いつでも、どこでも」ほしい 情報が得られるということから、ユビキタスブイと呼ばれる。このシステムは導入・運用コストが低い ことから、津軽海峡を中心としたブイ観測網が既に構築されている。また、水産向けの海洋型地理情報 システムのプロトタイプの開発に成功しWEBに公開中である。現在、3日から1週間のデータ予測や海外 展開も始まっている。 2) 研究テーマ 2 新たな資源探索と持続的生産を目指すこの分野では、海を活用したバイオファーミング(未来型の生 物資源生産工場)による 藻体を活用した幾つかの新製品開発が実現した。複数のメガベントス(沿岸域 における底性生物資源)について、その高価値化の可能性を検討した結果、ひとつは、抗肥満効果があ る「フコキサンチン」を高濃度に含有するウガノモクが、いまひとつは、高い抗炎症作用がある「フィ コエリスリン」を含有するダルスが産業利用可能なことを見出しており、ガゴメと同様のクラスター形 成が始まっている。また、ウガノモク種苗生産においては、幼体着生率を飛躍的に向上させる技術開発 に成功し、噴火湾でハタハタ産卵藻場の造成事業に利用されている。また、既に、ダルスを利用した商 品も開発されており、産業利用の有効性が実証された。 3) 研究テーマ 3 高機能化を進めるこの分野では、フコキサンチンの作用を世界で初めて分子レベルで解明し、抗肥満 及び抗糖尿病効果を有することを科学的に証明している。また、機能性褐藻素材の低コストで汎用性に 富む製造法の開発に成功し、最初の商品として地域企業が販売を開始した。さらに、雑海藻から自然や 人体に優しいバイオポリマーを創出する技術を開発し、一部特許出願も行い、その応用製品として化粧 品の製品化が進み、現在、台湾、フランスなど海外での商談が始まった。また、ホタテ貝殻から蛍光体 を創出する技術に成功し、 得られた材料の食品添加可能な特長を活かし、食材や錠剤に添加することで、 どこから来て、どこへ 行ったか、いわゆるトレーサビリティ技術に利用するという新たなビジネス展開 につながった。 4) 研究テーマ 4 ブランド形成を進めるこの分野では、DNA 塩基配列の解読により、国内産、中国産、韓国産の昆布を 高確度で判別する技術を確立しており、 この技術はブランド認証の強力な武器になるものである。 また、 高鮮度保持技術や冷凍技術、品質評価技術等の、食品設計のための科学的評価技術を活用した製品とし て、生鮮や冷凍コンブ加工品の商品化等、新たな食品や新たな流通方法が生まれた。その結果、これま で無かった形態での海外展開が始まった。さらに、食の安心を支えるための消費者への情報提供におい てもシステム化が進み、水産流通向け可分割情報タグの開発や水産物生産地情報発信支援技術の開発が 行われ、これらの技術は、海洋汚染や資源管理の問題等で、安心を確保するためのトレーサビリティの 需要にも対応できるものと期待されている。 3.4. 持続的に発展する函館型産業モデル 今日の成熟した社会では、消費者は単に商品を消費する人ではなく、各個人の主体性に基づき、豊富 な市場の中で多様な価値観に基づく多様な消費形態が成立している。また、市民の最も関心が高く、重 要な課題でも「環境」や「安全」 、 「高齢化」や「健康」、 「福祉」や「医療・介護」 、「教育」や「文化」 などの社会のニーズに対象が移っているのである。3.11 以後は、その傾向がさらに強まっている。した がって、地域の新産業を考えるとき、これまでのようなサプライサイドからものを考えるのではなく、 デマンドサイドからの発想への転換が必要となる。 また、消費者の目の肥えたニーズに答えるためには、これまでの個々の企業に対するインキュベーシ ョンではなく、魅力的な地域の商品を担保する地域産業のトータルインキュベーションが必要となる。 そして、この仕組みとして、その活動を推進し機能を発揮する中核機能に加えて、中核機能を中心とし たシステムが発揮するインキュベーション活動の重要性をあげることができる。 最近、農業や水産業などの第一次産業が食品加工・流通販売にも業務展開している経営形態を六次産 業化と呼ぶようだが、形式的な六次産業化では、持続可能な地域産業の発展は望めない。ここに示した ような裾野の広い考え方にたってブランディングの実践にあたらねばならないし、地域創生におけるロ ーカルマーケティングやローカルマネージメントも進められるべきであろう。このような考え方から函 館地域では、地域構想に基づき、ハード面の整備をしつつ、地域資源を活かした研究プロジェクトを実 施してきた。特に、地域における産業クラスター成功の条件をあげれば、地域を照らす第 2 の太陽(枯 れることのない地域資源)を見つけることと言えそうである。たとえば、函館のガゴメコンブなどが、 その良い事例であろう。地域資源に付加価値を付けて、デマンドサイドのニーズに答えていく。そして 消費者に満足を与えつつ生産者に持続的な生産活動を担保する仕組みが発展していき、結果として、そ の輪が地域全体に拡がっていくのである。今後も、ハード・ソフト両面でさらなる研究開発の推進が行 われるであろう。事業化の推進については、産学官連携を基軸として、持続可能な事業化の展開を図っ ていく。また、広域連携については、国内外の有力クラスターとの連携を活用し、競争力の強化を図る。 このような取り組みを通して、世界レベルのマリンバイオクラスターの形成を目指していきたい。 これからは、これまで培ってきた産学官連携基盤をさらに発展させるとともに、幅広く新たな力を取 り入れ、次代を担う人材の育成を図っていくことで、国際競争力を持ち、かつ持続的に発展可能な函館 マリンバイオクラスターを実現する。持続的に発展する独自の函館型産業モデルにおいては、地域資源 を利用した製品をグローバルに展開することは必須の条件であるが、本事業は文部科学省事業であるか ら、我々の獲得した成果を他の地域に伝えていくことも重要な使命と考えている。我々の函館型産業モ デルをベンチマークすることで、国内外の地域資源活用可能なエリアが、順次、独自なクラスターを展 開していくことに繋がれば大きな意味がある。 4. 函館マリンバイオクラスターにおける自然エネルギー活用研究の現状 初めに、この節で紹介される内容は、2013/10/14-18 FFTC-NTOU Seminar で木村・その他が講演した内 容を筆者が許可をえて要点を簡略化して紹介するものであることをお断りしておく。 当事業の中で、特に、自然エネルギー利用との関係が深いのは、研究テーマ 2 の新たな資源探索と持 続的生産を目指す分野で、内容は、2 つのテーマに分かれていて、ひとつは、北方系メガベントスのラ イフサイクル操作と高機能種苗の生産であり、いまひとつは、海のグリーン工場の構築である。研究テ ーマ2では、化石燃料に依存しない自立型バイオファーミング構築を目指している。最近、環境にやさ しい養殖・漁業の持続可能な生産システムに対する強い社会的要請がある。ファーミングでは、水の温 度管理と循環に多くの電力を要するのが普通である。 これまでの化石燃料に依存したファーミングから、 再生可能エネルギーを利用する自立型バイオファーミングにシフトするために、風力発電、 太陽光発電、 揚水システム、地域特性等の可能性を検討してきたので、それらの重要な要素技術について事例紹介を 行う。 4.1. 風力や太陽エネルギーを利用した揚水システム 風力発電の利用による揚水システムにおいては、サボニウス型と複数ブレード型のローターに着目し てきた。サボニウス型揚水システムのイメージを図Ⅲ-4-4 に示す。風力発電ローターの種類は多いが、 このタイプのローターを選んだ理由は、シンプルな構造、メンテナンスの容易さ、弱い風速状態での大 きなトルク、加えて、ローターの破損時に修理が簡単なこと等である。しかし、このタイプは風が発す る抗力を利用することによる構造上の欠点もある。電力効率が、揚力を使用する他のローターよりも低 く風速比が制限されるからである。しかし、メガベントスの養殖システムとして動作安定性を考慮する と、自立型バイオファーミングの海水揚水システムには適している。ローター設計では、最大のトルク を発生する風車ローターの構造が、計算流体力学(CFD)解析シミュレーションによって決定された。 揚水システムのモデルは図Ⅲ-4-4 に示すように、現在、七重浜の北海道大学敷地内に設置されている。 同図に示すように海水を直接貯水タンクに、3.0 メートル未満の高低差のある海面から汲み上げ、それを 位置エネルギーの差を利用してファーミングタンクに移すことができる。 図Ⅲ-4- 4 揚水システムのモデル (出典:KIMURA(2013) ) 一般的に、風力発電によって発電される電気は、自然環境下では、発電量が不安定かつ制限されたも のとなる。このような条件では、ファーミングタンク内の水循環をより効率的なものにする必要がある。 貯水タンクに溜った海水が、ファーミングタンク内でスムーズな循環をするように、数値シミュレーシ ョンを用いて、注水、排水、エアレイション等の種々の条件の基でタンク内の流れを推定した。実験結 果から得られた知見をもとに作られたチョウザメのファーミングタンクの概略を図Ⅲ-4-5 に示す。 図Ⅲ-4- 5 ファーミングタンクの概略 (出典:KIMURA(2013) ) 4.2. 地中熱を利用した凍結防止システム 函館エリアは、北国に位置するので揚水システムの凍結防止対策を取らなければならない。そのため、 水温調節や冬期間の揚水システムの凍結防止には多くの電力が必要となる。 海水は、一般的に-1.8 ℃ で凍結することから、以前に、ポンプ室の吸水パイプやダイヤフラムポンプで凍結する深刻な揚水シス テムの損傷を経験した。このような問題を避けるためには、ポンプ室内で海水の凍結ポイントを上まわ る温度の維持が必要となる。そこで、地中熱の有効利用に着目し、ポンプ部屋に地中熱伝達パイプを使 用することによって、海水の凍結防止に必要な温度の確保を試みた。マルチブレードローター型に使用 される熱伝達パイプを装備した凍結防止システムを図Ⅲ-4-6 に示す。実証試験で使用される 熱伝達パイ プ は、函館の地元企業によって開発されたものである。 熱伝達パイプの効果を明確にするために、外気と地下温度の変化が 2012 年 2 月 28 日から 3 月 13 日 まで観測された。地下 2.0 メートルの温度は約 3℃程度でかなり安定していた。ヒートパイプの放熱部の 温度は、冷たい朝の外気温度よりも 4〜5 度高い。計測結果から、凍結防止システムが適切に動作してい たが、給湯用伝熱管の熱容量は、ポンプ室内で適切な温度を維持するには容量が不十分であった。しか し、この事実は、熱伝達パイプの数を増やすことで、北国におけるバイオファーミングに有益な凍結防 止システムが構築可能であることを示唆している。 図Ⅲ-4- 6 熱伝達パイプを利用した凍結防止システム (出典:KIMURA(2013) ) 4.3. 地下水を利用した調温システム メガベントスの生育を考えたバイオファーミングでは、適正水温範囲が狭いことから水温調節が非常 に重要となる。また、運用には大量の水が必要である。さらに、北海道では夏と冬の温度差が大きいの で水温制御には大量の電力を要する。これらの問題を改善する目的から、我々は、ファーミングタンク 内の水温調節に、地下水の自然エネルギーに着目して、その有効利用を考えた。 地下水の温度は、函館エリアで年間を通じて約 13〜14℃程度で安定しており、それは、北方メガベン トスの養殖に好都合である。地下水を用いて養殖タンクの水温調節するシステムの概要を図Ⅲ-4-7に示 す。 図Ⅲ-4- 7 地下水を用いた養殖タンクの水温調節システム (出典:KIMURA(2013) ) 4.4. 自然エネルギー利用によるオーダーメード型養殖システム ガゴメは、海藻由来のフコイダン含有量に関しては、他の海藻に比べて多く、特に、バイオファーミ ング(BF)のガゴメは、最適に制御された実験室の環境下で培養されると、天然ガゴメに比べてフコイ ダン量が 2 倍にもなる。 また、自然エネルギーによる高機能種苗の開発、ならびに効率的なファーミングを実現するために、 ファーミングタンク内の環境制御項目として、照明、水温、海水流量、栄養素の濃度について検討を行 ってきた。図Ⅲ-4-8 は「オーダーメード型養殖システム」のモデルである。そして、ファーミングシス テムにおけるコントロール ボックスとバッテリー機器の概観を図Ⅲ-4-9 に示す。 図Ⅲ-4- 8 オーダーメード型養殖システムのモデル (出典:KIMURA(2013) ) 図Ⅲ-4- 9 コントロールボックスとバッテリー機器の概観 (出典:KIMURA(2013) ) 4.5. 地理的条件に基づいたバイオファーミングのための総合的海洋エネルギー利用 最後に、北海道函館市で行われている潮流エネルギーに関する事業計画について紹介する。 このプロ ジェクトは、これまで述べてきたバイオファーミングの、次のステップに関連するものである。また、 社会的な背景としては、東日本で起こった壊滅的な震災 3.11 との関連が深い。震災後、日本政府は、海 洋エネルギーの開発と利用に力を入れ始めた。主な目的は、エネルギー源の多様化と、海洋エネルギー の商用発電への利用である。一般に、商業利用の場合では設備の大型化が避けられない。そこで、本事 業では、限定的な使い方として、潮流発電をメガベントスのバイオファーミングのエネルギー源として 利用することを構想している。コンセプトは、 「地理的条件のもとで行われる、漁業の持続可能性に資す る潮流発電」である。 北海道南部に位置する津軽海峡は国際海峡で強い暖流は西から東に流れる。この海域は収益性の高い 漁場であるが、小型漁船、商船も頻繁に航行する。従って、潮流発電の利用は、漁場や船舶の航行とい った制約条件下で行われることになる。 このような制限付きの漁場を利用するために、我々は人工漁礁の位置を考慮しなければならない。適 切な水深に、潮流の高速化及び整流効果を考えた位置に人工漁礁を設定することによって可能になるシ ステムを考えており、換言すれば、地域の特性を活かした総合的な自立型バイオファーミングと呼べる ものである(図Ⅲ-4-10)。 図Ⅲ-4- 10 地域の特性を活かした総合的な自立バイオファーミング (出典:KIMURA(2013) ) 5. 今後の課題 本章のテーマは、地域振興と自然エネルギー利用である。地理的には、沿岸部を中心に行われる産業 を想定したものであるから、その内訳を考えてみると、海域では、漁船漁業や養殖施設等、陸域では、 種苗生産施設や沖合漁業などに提供する製氷工場、製網工場、水揚げした水産物の処理・加工を行う水 産食品工場なども含まれることになる。また、この地域に暮らす人々の生活で消費されるエネルギーも 議論の範疇にあるものとする。 このような前提から、本章の函館マリンバイオクラスターに着目して、具体的に考えて行くと、これ まで紹介した事例は、比較的スムーズに現場に対応できそうな技術が多い。特に、チョウザメ養殖など では、採算性を考えた一定規模の養殖システムを設計する場合に、最初から、ここで紹介した自然エネ ルギー利用技術を入れ込むことが可能となる。 現在、函館マリンバイオクラスターの事業総括をしている筆者が、今、構想するチョウザメ・ビジネ スを例に、自然エネルギー利用を考えてみたい。起業には、ゴールイメージが重要である。それを、こ こでは、 『函館に世界的なトップブランドを創りだす』こととして、もう少し具体的に示すと、世界のキ ャビア業界において、我々が作り出すキャビアの商品価値が、トップブランド群のひとつとしての存在 が許される製品を目指すというマーケティングである。そのためには、いつ目的を達成するかが重要と ...... なるが、チョウザメは、成長が遅い魚種なので、魚種の設計・改良を含めて、20 年後に函館キャビアが 世界のトップブランドになることを設定する。実現に向けて、養殖技術面においても冒頭述べたブルー エコノミー技術を大胆に取り入れる必要がある。 ここで、なぜ、チョウザメでキャビアなのかについて触れると、現在、天然キャビアの生産地である カスピ海は環境悪化が深刻でありチョウザメが絶滅の危機に瀕している。棲息環境の保全ならびに稚魚 の放流などの対策も行われているが必ずしも充分ではない。 次に、函館でこの事業を行う産業・経済的なメリットであるが、まず、ロジスティックスでは新幹線 の開通によるメリットもある。そして、ゼロエミッションでは青函トンネルの現在廃棄されている湧水 の有効活用が図れる点が大きい。また、将来はこの事業を青函圏に拡大することができそうである。そ の理由は、構造上、トンネルの両端に湧水の活用可能な条件があるからである。経済的な面では、世界 的なキャビアの需給ギャップが、今後も拡大する予測から、このキャビア養殖ヘの期待はさらに大きく なる。加えて、科学技術の面では、世界的な知見が函館に立地する北海道大学大学院水産科学研究院に 集まっている。また、人材も豊富であるから、分子レベルの解析を可能にするオミックス解析技術によ って、トップブランドといわれる世界各地のキャビアの味覚を解明することも可能となる。この技術を 応用することで、我々が求める味覚のゴールを決定し、それを生産する親魚の設計(バックキャスティ ング思考)を行うことで、目標とするキャビアの品質が確保されるであろう。また、函館国際水産・海 洋総合研究センター開設(2014)も明るいニュースであり、ここがチョウザメ研究の拠点となり、チョ ウザメ・ジーンバンクの構築や鮮度保持・輸送技術などが進めば、グローバルな商品化への期待はさら に高まるものと思われる。 このような地域経済を明るくするビジネスモデルにおいて、エネルギー問題は大変重要な課題である。 すでに述べたように、自然エネルギーの利用は、それ自体が目的ではないが、持続性のある生産システ ム形成のための不可欠な条件である。起業の結果、確かなキャッシュフローが生まれ、持続性のある産 業として、地元を照らし続けるためには、具体的に、当地域産業において、どの段階で、どのような種 類の自然エネルギーを、どのように組み込むことができるか、それが適切に行われるのであれば、この 地の産業生態系は持続可能性の高い健全なものになるはずである。 参考・引用文献 1. グンター・パウリ(著)、黒川清(監訳):ブルーエコノミーに変えよう、ダイヤモンド社、360 頁(2012) 2. マヌ・ベルギース・マタイ:グリーン経済と成長のゆくえ (http://jp.unu.edu/publications/articles/green-economy-and-growth-fiddling-while-rome-burns.html) 3. 三浦汀介:ゼロエミッションと新しい水産科学(単著)、北海道大学出版会、182 頁(2009) 4. 三浦汀介:函館マリンバイオクラスターについて、日本水産学会誌 78:527-530(2012). 5. 三浦汀介:地域の持続的発展をめざすゼロエミッション型水産業、月刊公明 10:56-61(2012). 6. 三浦汀介:ブルーエコノミーと函館地域振興、ISM 1:10-14(2013). 7. Nobuo KIMURA, Yasuzumi FUJIMORI, Hajime YASUI, Hiroyuki MIZUTA, Tomoki ABE ,Shinji ADACHI and Yuki TAKAHASHI, Development of Self-reliant Bio-farming System by Employing Natural Energy,2013/10/14-18 FFTC-NTOU Seminar. Ⅲ-5.関連団体の動きと各地の導入に関する取組の動向 一般社団法人海洋産業研究会常務理事 中原裕幸 1.関連団体の動き 「Ⅱ-3.国の動向」において、関係各省とりわけ水産庁の施策の動向について述べてある が、ここでは、そうした行政の動きに対応して、水産関連団体等における取組状況につい て整理する。 1.1 JF 全漁連:海洋再生可能エネルギー利用促進のあり方にかかる有識者検討会(中間と りまとめ) (2013 年 11 月) JF 全国漁業協同組合連合会(以下、全漁連)では、東京電力福島第一原発の事故以降、 再生可能エネルギーについては、次世代のエネルギーとして実用化に向けた取り組みが本 格化しており、中でも海洋再生可能エネルギーは、狭い国土ながら四方を海に囲まれたわ が国にとって、今後重要な位置付けを占めていくものとの認識は共有しているところであ る、としている。他方、国の新たな「海洋基本計画」 (平成 25 年 4 月閣議決定)の中で、 海洋再生可能エネルギーの利用促進として、技術開発の加速、実用化・事業化の促進や普 及のための基盤・環境整備等を行う方向性が示されているわけである。 そこで、海洋を生業の場とする漁業関係者にあっては、水産物の貴重なタンパク源を供 給するというこれまでの社会的使命に加え、国民の一人として、新たなエネルギーを確保 していく政策に対し、協調的な立場から取り組んでいくことが求められており、沿岸域の 漁業権漁場をはじめとする漁場の利用にあたっては、これまで JF が調整機構として、関係 者の利害調整やコンセンサスづくりに重要な役割を果たしてきたので、海洋再生可能エネ ルギーの利用促進にあっても、JF グループは沿岸域利用・調整の欠かせないステークホル ダーとしてその役割が求められていくことは明らかである、としてその考え方の整理を行 った。 すなわち、JF 全漁連では、再生可能エネルギーについて今後 JF グループがどのように考 え、また関わっていくべきか基本的な方向性を示すため、水産業や再生エネルギー等の専 門家や関係機関による検討会を設置・検討し、中間とりまとめを行った。 同有識者検討会は、廣吉勝治・北海道大学名誉教授を座長とし、東大の八木准教授、横 浜国立大学統合的海洋教育・研究センターの中原客員教授ら 5 名をメンバーとしているが、 内閣官房総合海洋政策本部事務局、水産庁関係各課、大日本水産会、海洋産業研究会らが オブザーバーとして参加し、協議に加わった。 審議経過としては、第 1 回が、2012 年 11 月 1 日、第 2 回を同年 12 月 21 日、第 3 回を 2013 年 4 月 26 日に開催し、同年 11 月に正式に、その中間とりまとめを発表した。 その内容構成と要旨は次の通りである。 海洋再生可能エネルギー利用促進のあり方にかかる有識者検討会(中間とりまとめ) ―― 目 次 ―― はじめに Ⅰ 基本的な考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 Ⅱ 沿岸域への着床型風力発電施設導入にあたっての対応に関する判断基準・・ 2 Ⅲ 環境や漁業への影響評価について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 Ⅳ 地元での合意形成のあり方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 Ⅴ JF等の関わり方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 Ⅵ 今後の取り組みにかかるJFグループの役割分担 ・・・・・・・・・・・ 11 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 設置要領 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 検討会の開催概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 <参考資料> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 (出典:JF 全漁連、同資料) 〔要旨〕 Ⅰ 基本的な考え方 (基本的な姿勢 ~地産地消・地域貢献・協調~) JF・漁業者(以下、「JF等」という。)は、地元で生み出された再生エネルギーの “地 産地消”という観点から、自ら電力利用者として地元で利用し、その恩恵を享受しながら、 漁業活動と相まって地域経済に還元・貢献していくよう積極的に推進し、また、円滑な推 進のため関係者と協調する姿勢で取り組んでいく必要がある。 (漁業影響などを検証し適切な判断が必要) 一方、今後、海洋再生可能エネルギーは、実証事業段階の加速化が各地で図られ、かつ 事業化される段階において相当の規模をもって導入される場合、それが関係者のコンセン サスに基づく一定の考え方やルールのもとで推進されなければ、海洋を生業の場としてい る漁業関係者にとって、漁場利用・操業にあたって混乱や支障を生じかねない。 JF等は、沿岸域利用の当事者として、海洋再生可能エネルギーについて必要な知見や 情報を勘案しながら、一定の基本的な考え方のもとで、適切な判断や対応を行っていく必 要がある。 このため、JF全漁連では、漁業操業・漁場への影響の有無や環境影響評価、事業の継 続性の確保など漁業者・漁協にとっての懸念や関心の高い課題について整理と検証を行い、 地域で検討するための方向性を示す必要があることから、漁業者・漁協の視点から見た自 然再生エネルギーの導入・利用のあり方について、有識者検討会において基本的な考え方 をとりまとめ、参考情報を付して、JFグループ及び関係者に周知するものである。 (着床型の洋上風力発電を想定) なお、海洋再生エネルギーは、洋上風力(着床型・浮体型)をはじめ、波力や潮力など 様々な技術や特徴から、設置場所(沿岸域、沖合、海底など)が異なってくる。 このうち、本検討会では、 「着床型の洋上風力発電」を対象(モデル)として想定し、検討を行った。 Ⅱ 沿岸域への着床型風力発電施設導入にあたっての対応に関する判断基準 JF等は、環境や漁業影響評価、法令面等さまざまな条件や課題を検討した上で、事業 化にあたっての導入プロセスや採算性等の事業化リスクの評価等も鑑み、想定される全て の情報のもとに判断をしていく必要がある。 なお、事業の採算性は、JF等にとっても対応を考える上で重要な判断基準であるが、 現時点では洋上風力発電の買取価格が未定であり、採算性等事業化リスクについては現段 階で判断することが難しいことから、本報告書では触れていない。 今後、買取価格が示された場合にあっても、地域の条件等から採算性は変化するため、 地元で検討を進めるにあたっては、知見を有する有識者、専門家や試験研究機関等に相談 しながら進めていくことが望ましい。 <洋上風力発電事業に対するJFの判断項目> 1.事業内容の確認 (1)事業規模 ・発電の規模がどの程度となっているか。(現在建設中か、あるいは 計画中の洋上風力発電の規模は、大型風車(2~3mw)8~15基程度。) ・海面の占有規模がどの程度となっているか。 (2)環境影響評価 ・環境影響評価が適正に行われることとなっている。 (3)漁業協調等 ・漁業協調型の計画となっているか。 ・現在の漁業操業にどの程度の影響が見込まれるか。 (4)事業工程 ・事業工程が適正か。 ・風況などの調査計画の検証がしっかりなされているか。 2.事業参加の判断 (1)収益性の判断 ・洋上風力発電の買取価格が未定であり(1~2年後に決定される見 込み)、 現段階で判断するのは困難である。知見を有する専門家に相談するこ とが 望ましい。 (2)参加形態 次のような参加形態が想定される ・出資参加 : 収益性を見極めた上で、出資の可否を判断する。 ・事業の一部受託 *施設の見回り、メンテナンス、点検など Ⅲ 環境や漁業への影響評価について 基本的に、漁業・操業が活発に行われている海域における施設の設置は避けることが望 ましいが、設置場所が漁場と隣接した場合においても、操業や漁場環境等への予測出来な い影響が考えられることから、JF等は設置場所の選定段階から、意志決定に必要となる 判断材料のための情報の収集・検討を行う必要がある。 また、発電事業者等は、JF等との間で漁場の利用実態を把握した上で、原則として現 に利用されている漁場への導入を回避しながら、JF等と発電事業者等の間で十分に協議 の上、実証事業や事業化の適地を選定するべきである。 また、環境影響評価に加え、漁業・操業への影響についても評価を行い、情報を共有し ながら推進する必要がある。 1.環境影響評価 環境への評価は、環境影響評価法(法アセス)を基本として、その他発電事業者や行政 等が行う環境影響評価によって進めていくべきである。 2.漁業・操業への影響評価 環境影響評価では、水質や生態系など環境影響にかかる項目について調査が行われるが、 漁業者によって関心事項である漁業や養殖の対象水産資源にかかる漁業生産への影響や資 源保護の観点での調査は十分にカバーされていない。 発電事業者が発電施設の設置場所を検討・決定するにあたって、環境アセスに加え漁業 への影響調査と漁業者への情報提供は必須である。 発電事業者は、海上構築物の設置による漁業影響にかかる知見や情報のほか、地元漁業 関係者からの聞き取りや試験研究機関の知見を総合し、情報提供、意見交換を行うべきで ある。 Ⅳ 地域での合意形成のあり方について 1.地域協議会の設置 合意形成にあたって、地元JF等、漁連、漁業関係者は、発電事業者と構想段階から十 分なコミュニケーションを図りながら、地元の試験研究機関や学識経験者など科学的知見 や第三者の客観的な意見を踏まえながら、検討・判断を行っていく。 併せて、海洋再生可能エネルギーの導入にあたっては、地域振興や漁業調整などさまざ まな行政的期待や課題が想定されることから、地元行政の関係する部局の関与・参画が必 要である。 こうした合意形成を図っていくため、関係者による「地域協議会」を組織し協議を行う。 JF等は地域協議会に主体的に参加し、組合員に反映しながら合意形成を進める必要があ る。 2.地域協議会の役割と構成 地域協議会は、地域の実情や条件等によってその目的や役割が異なってくると思われる が、JFが発電事業の導入について検討することにつき組合員のコンセンサスが得られた ことを前提に、第1に、JFが導入の妥当性や影響等を検証することを目的とし、第2に、 発電事業者とJF等の直接的な当事者間で最終的に導入の意志決定が行われる場合にあっ ては、その導入から事業運営、検証等を行うにあたっての一連の意志決定や地域の理解が 円滑に進められるような情報の開示や交換、意見聴取の場とすることを主な役割とする。 地元協議会の構成は、直接的な当事者である発電事業者とJF等が中心となって、許認 可等や地域振興が円滑に進められるよう地方自治体の参画を求めるとともに、漁業影響・ 環境影響や技術的な側面や運営面で客観的な情報が得られるよう学識経験者や試験研究機 関からの参画を求める。 以上のように、JF 全漁連のこの中間とりまとめの内容は、おおむね、水産庁での取組と 軌道を一にした内容となっている。 2.全国各地における海洋再生可能エネルギー導入に関する取組の動向 全国の沿岸地方公共団体による取組状況については、 「Ⅱ-3.国の動向」の中で、 「実証フ ィールド」の設置に関する公募に対して応募した県の概要は既に示してあるが、ここでは 今少し内容を整理する。 なお、ここでのとりまとめは、各県の公表資料ならびに(一社)海洋産業研究会の蓄積 資料等をもとに取りまとめたものである。 2.1. 実証フィールド応募県の動向 2.1.1. 岩手県 岩手県は、東日本大震災・津波からの復興計画の一環として、そして、文部科学省が主 として進めている東北マリンサイエンス拠点形成事業との関連もあって、国の実証フィー ルド公募への準備、対応は、他の県に比べて比較的早い段階から取り組まれてきた。 同県では、県レベルで「三陸復興・海洋エネルギー実証フィールド検討委員会」を設置 し、地元の岩手県立大学総合政策学部長の豊島正幸氏を委員長として、地元関係機関およ び中央関係から計 10 人の委員を選任して活発な意見交換をして、国に対する実証フィール ド誘致の提案書作成にあたってきた。 他方、地元釜石市においては、独自に「三陸復興・海洋エネルギー実証フィールド誘致 推進協議会」を設置し、佐々木重雄・釜石商工会議所専務理事を座長に、地元としての誘 致、受け入れに積極的な活動を展開して、県に対して、国への提案書の提出を応援するこ とを公式に表明する文書を提出している。 2.1.2. 新潟県 同県では、日本海に浮かぶ粟島を対象海域として想定し、海流(潮流) 、波力、浮体式風 力を想定している。正式名称は不明であるが、県としての検討会を設置し、粟島浦の村長、 同漁協、東北電力などがメンバーになっている。東京海洋大学の中村宏教授が積極的に指 導、応援していたが、平成 24 年度内に急逝され、活動に若干の影響が出たように伝えられ ている。 ただ、もともと平成 23 年度には県内企業海洋エネルギー勉強会を開催し、平成 24 年度 に新潟県海洋エネルギー利活用モデル実証事業(村・漁協参加の検討会開催)に取り組み、 平成 25 度には「新潟県海洋エネルギー研究会」を設立したほか、ほぼ同時に、 「海洋再生 可能エネルギーの利活用に向けた取組に関する協定」を日本大学理工学部・県・村・漁協・ 研究会の間で締結するに至った。 こうして、粟島を対象に国の実証フィールドの公募に応募することとなったものである。 2.1.3. 和歌山県 同県では、本州最南端の串本沖が、黒潮の蛇行が少ない海域の一つということで、海流 発電を主たる対象として取り組んできた。 以前より、黒潮を対象とした海流発電を㈱IHIとともに研究してきた、東京大学の高 木健教授を委員長とし、地元および中央関係 8 名の委員で構成する「和歌山県海洋再生可 能エネルギー検討委員会」を設置し、串本およびバックアップ港湾の候補でもある新宮市 にも現地調査を行い、委員会にはIHIをはじめ、関係企業をオブザーバーとして招いて、 応募提案書の作成を行ってきた。 なお、同委員会では、海流発電を有力候補としながらも、波力等についても可能性を排 除しない方向で取り組むこととなった。 2.1.4. 佐賀県 同県では、漁協組合長を委員長とする「佐賀県海洋再生可能エネルギー協議会」を設置 し、8 名の委員で構成して、応募への準備を進めてきた。委員長には地元漁業協同組合長が 就任していることをもってして佐賀方式を標榜してきたが、他県と異なり、同組織の情報 開示に消極的であり、必ずしも十分に動向把握ができているわけではない。 しかしながら、三井海洋開発㈱が取り組んでいる、垂直軸型浮体風力に、構造物の海中 基礎部に潮流発電装置を組み合わせた、いわゆるハイブリット型発電方式を追求してきた ことで知られる。ただし、ハイブリット型といってもフィフティ・フィフティのハイブリ ット型ではなく、潮流発電機はあくまで起動時の電力供給も兼ねた錘(おもり)の役割を 果たすものであることに留意する必要がある。 なお、その設置にむけた実験機が、現地に向けて関門海峡付近を曳航中に、潮流発電機 部分が剥離して海中に落としたという事故が起こり、大きく報道されたことは記憶に新し い。 2.1.5. 長崎県 長崎県は、環境省の助成事業で戸田建設㈱を主体とする浮体式洋上風力発電の実証事業 が五島列島の椛島で実施されてきたほか、同列島の島と島の間の潮流エネルギーのポテン シャルにも注目して、国の実証フィールド公募に応募する体制を整えた。 地元の長崎総合科学技術大学の池上国広教授を委員長とする「長崎県海洋再生可能エネ ルギー構想策定に関する有識者会議」を設置するとともに、九州本土および壱岐・対馬な らびに五島列島の各市町村レベルの自治体に対して、自ら実証フィールドの適地として名 乗りを上げるかどうかの公的打診を行い、委員会においてプレゼンをさせるとともに、ユ ーザーの確保に積極的に乗り出し、先行する岩手県を追走、追い越しを図ってきた。 こうして、浮体式洋上風力と潮流発電の実証フィールドたることを狙いとして、応募の 提案書の提出に至った。 2.1.6. 鹿児島県 同県は、日本大学の木下健教授を委員長に迎える形で「鹿児島県海洋再生可能エネルギ ー促進研究会」を発足させ、国の実証フィールド公募への対応を準備した。もともと、平 成 24 年度に海洋再生可能エネルギー導入可能性検討事業を実施済みで、離島間の海流発電 と東シナ海側の熊本県との県境にある黒之瀬戸における潮流発電に着目して、まとめを行 って、応募提案書を提出した。 2.2 その他の沿岸自治体の動き 2.2.1. 北海道 北海道は、もともと広大な陸上空間に多くの風力発電施設が設置され稼働してきた実績 がある。洋上については、道北における洋上風力発電が有力視されていたほか、道南の函 館において津軽海峡における潮流発電構想が進められてきた。 ただ、国の実証フィールド公募への対応という点では、北海道を一つの申請単位として 応募するのがなかなか難しい面もあり、結局、応募は見送られた。しかしながら、そのポ テンシャルは大きく、依然として有望な海域を前面に有していると言えよう。 2.2.2. 青森県 同県では、国が選定場所を募集している実証実験場については、検討していた津軽半島 竜飛崎沖での潮流発電計画の応募を見送る方針を決めた。これまで学識経験者らによる委 員会(委員長=金子祥三・東大特任教授)が設置されて検討を続けてきたが、結局、見送 りとなったわけである。 もともと、下北半島の先端部の海域を想定した潮流発電構想があったが、いきなり現地 に持ち込まれ、十分な合意形成プロセスが確保できずに破綻した前例があると伝えられる。 県エネルギー開発振興課によると、発電は弘前大と企業数社が開発主体となった潮流発 電で、海域は竜飛崎沖を選定したが、発電施設のタービンなどから生じる音や振動、設置 による潮の流れの変化などによる漁への影響が懸念され、十分な地元理解と合意形成まで には至らなかったとされる。 2.2.3. 秋田県 「あきた沖合洋上風力発電研究会」を設置し、第 1 回は、平成 25 年 7 月 30 日に開催し、 東大の石原孟教授ならびに資源エネルギー庁新エネ対策課の村上課長からの講演を受けた。 第 2 回は、10 月 10 日開催で、国内先進事例調査について県から報告があったのち、秋田県 沖のポテンシャル、秋田市沖ウィンドファームの FS、電力系統、漁業協調の 4 つのトピッ クについての話題提供を受けた。 同研究会は、県の庁内関係課および出先機関である各地域振興局、7 沿岸市町に加えて、 海保、秋田港湾事務所、商工会議所、企業活性化センター、電子工業振興協議会、機械金 属工業会、電業協会、地元大学、県漁連、地元銀行 3 行など多数のメンバーがメインテー ブルに座り、加えて傍聴席には地元関係団体など多くの参加が見られ、非常な盛り上がり を見せていた。 基本的には洋上風力発電をテーマにしており、国の実証フィールドを頼ることなく、事 業化を目指した展開を想定しているものと見られる。 2.2.4. 山形県 同県では、酒田港の港湾区域内で多くの再生可能エネルギー利用に向けた取組を実施し ているほか、古くは南部の鶴岡沖で現 JAMSTEC の沖合浮体型波力発電装置「海明」の実験 が行われ、県としての実績がある。 県では、エネルギー政策アドバイザーの委嘱を順次進めており、スマートグリッド関係 で著名な山家公雄・エネルギー戦略研究所㈱研究所長を総合アドバイザーとし、ゲストと して他のアドバイザーを招聘して意見交換会をこれまで推進してきた。 ただ、国の実証フィールド公募に対しては、準備を整えている先行県に対して、周回遅 れの感が否めないので、エントリーは控えることとなった。 2.2.5. 千葉県 同県では海洋エネルギー利用では、銚子沖に NEDO 助成事業による東京電力の着底式洋 上風力発電実証事業が進められてきているが、県としては必ずしも十分な取組を実施する までには至っていなかった。ただ、平成 26 年度から「千葉県海洋再生可能エネルギー導入 可能性研究会」を設置の方向で動きがあると伝えられている。 洋上風力発電のほか、房総半島南部では波力エネルギーも大きいことから、これも選択 肢に加える方向で準備が進められている。 2.2.6. 静岡県 同県では、平成 24 年度に「南駿河湾地域海洋再生可能エネルギー勉強会」を設置して 3 回の会合を開催した。第一回が 9 月 12 日、第二回 10 月 23 日、第三回 12 月 7 日である。 初回は、牧之原市長が挨拶し、東大生産技術研究所の木下健教授から全般的な話題提供 を受け、東海大学海洋学部の田中博通教授による越波式波力発電の研究についても報告が なされた。第二回は、場所を清水の東海大学海洋学部に移して、NEDO の採択を受けた越 波式波力研究の進捗状況を把握するとともに、同キャンパス内での実験装置の見学も行わ れた。第三回は、県の新エネルギー政策の概要、駿河湾の漁業の現状と漁業権、そして漁 業協調についての講演を聞いて意見交換がなされた。 平成 25 年度には、 「越波式波力発電実証試験推進委員会」が設置された。委員長には静 岡県環境資源協会の平井専務理事が就任し、有識者、県の関係機関、国土交通省中部地方 整備局の各出先機関、関係漁協、中部電力などを委員とし、オブザーバーに NEDO、御前 崎市および牧之原市、両市の商工会、などが参加した。9 月 4 日に第一回会合を開催し、第 二回は翌年 1 月 23 日である。 同県でも国の実証フィールド公募には対応を検討したが、準備が必ずしも十分ではない として、応募は控えることとなった。また、NEDO 助成事業が一定の区切りの段階に至っ ている。 2.2.7. 愛媛県 同県では、宇和海における洋上風力発電で国の実証フィールド公募へ対応する動きを見 せていたが、結局は、有力県に比較して取組が十分ではないとして応募は控えることとな った。 しかしながら、平成 25 年度において、 「体式洋上風力発電に関する学習会」を 9 月に立 ち上げ、市および漁業協同組合が積極的な検討を進めることとなっていた。折しも、九州 大学において実施中の浮体式風レンズ風車の研究が、養殖王国愛媛においては十分共存可 能ではないかとの考えから、平成 26 年 3 月 28 日、うわうみ漁業協同組合・宇和島市・九 州大学応用力学研究所の三者で「漁業協調型浮島洋上エネルギーファーム実用化研究及び 事業化に向けた基本協定書」に調印したばかりである。 巻末資料 (一社)海洋産業研究会 平成 25 年度東京水産振興会調査研究事業 「漁村・漁港地域における自然エネルギーを利用した振興策の検討」 委員名簿 (敬称略・順不同) <座 長> 嵯峨 直恆 北海道大学大学院水産科学研究院長 <委 員> 三浦 汀介 北海道立工業技術センター長 宮崎 武晃 (一社)海洋エネルギー利用推進機構(OEAJ)理事 山家 公雄 エネルギー戦略研究所㈱取締役研究所長 和田 時夫 (独)水産総合研究センター理事 中原 裕幸 (一社)海洋産業研究会常務理事 <オブザーバー> 水産庁 <(一財)東京水産振興会事務局> 渥美 雅也 (一財)東京水産振興会専務理事 栗原 (一財)東京水産振興会次長 修 <事務局> 大西 学 (一社)海洋産業研究会研究員 以 上 (一社)海洋産業研究会 平成 25 年度東京水産振興会調査研究事業 「漁村・漁港地域における自然エネルギーを利用した振興策の検討」 第1回委員会議事要旨 1. 日時:平成 25 年 6 月 20 日(木)15:30-17:30 2. 場所:(一社)海洋産業研究会 会議室 3. 出席者:別紙参照 4. 配布資料 資 料1-1 : 委員名簿 〃 1-2 : 「太陽産業論」(座長・資料) 〃 1-3① : 本調査研究・企画計画書 〃 1-3② : 本調査研究・調査研究計画書 〃 1-4 : 関連資料一式 5. 議事(Q.質問、A.回答、C.コメント) まず、座長・嵯峨直恆先生よりご挨拶があり、引続き資料 1-2 を用いて本調査研究事 業の趣旨説明があった。その後、各出席者より自己紹介があった。 つぎに、事務局より資料 1-3 を用いて説明があり、大要として以下の議論があった。 (1) 電力ニーズについて C.発電方式の検討よりも、水産関係の電力ニーズを先にリストアップしたほうが良いか もしれない。 C.当会(海産研)では、漁港等における電気の使途・使用量の調査を実施する。製氷施 設や水槽の水温維持等が考えられる。ただ、漁港の施設状況によって電気の利用量は 変わる。 C.自然エネルギーは、季節変動・時間変動が大きい。これをコミュニティに直接接続す るならば、蓄電機能が必要になり、コストもかかる。 また、自然エネルギーと相性の良い漁港施設、使い方があるはず。特に冷凍・冷蔵 庫は相性が良いと思う。例えば、氷にしてしまえば、エネルギーをキープするのに都 合がいい。陸上のケースでは、貝の養殖において、衛生管理の過程で紫外線照射した 海水を利用したりする。 温度差発電はこれらの利用と相性が良い自然エネルギーではないか。また、自然エ ネルギーの中では変動の小さい電源として利用できると思う。 発電方式の整理よりも、エネルギーや電力の利用の仕方で組合せは変わる。そのた め、発電方式の組合せに拘る必要はない。 C.需要構造が明確になれば、発電方式の組合せも見えてくるのではないか。 C.漁港区域の陸上部分では、エネルギー利用は電気が圧倒的に多い。一方海域の鉛直交 流の促進やエネルギーの供給といった場合、漁港区域における海中空間だけではなく その外側も視野に入る。よって、陸上の漁港施設と異なる規模になり、エネルギーの 利用方法も変わる。 Q.水産庁より、再生可能エネルギーの調査・データ等はありますか。 A.参考資料で紹介「漁港のエコ化推進事業」では、既存の団体、風力発電施設を保有す る漁港に対し、売電を前提に各々のポテンシャルの測定と採算性の検証を行っている。 この中で、冷凍・冷蔵庫、荷捌き施設等の取得可能なデータは保有しており、これら は提供可能。データは 30 分単位で取得し、9 ヶ月分の蓄積がある。地産地消も検討し ているが、これらは赤字がほぼ確定している。 また、漁港は第 1 種から第 4 種まであり、大まかには第 1 種は当該市町村レベルで の利用、第 2 種は比較的広域での利用、第 3 種は全国的利用、第 4 種が避難港と漁場 開発に関わる基地となっている。第 1 種と第 2 種では大きな隔たりがあり、施設整備 状況も全く異なる。第 1 種では冷凍・冷蔵庫の施設がない漁港もある。さらに人口規 模も、後背地の存在によって大きく左右されるので、その整理も必要。 その他、消費電力量は時間・季節で漁港毎に異なるものの、それぞれのピークが分 かれば、あとは予測できるのではないか。 C.水産工学研究センターでは、太陽光発電を導入し、売電せずに直接利用している。年 間を通して、かなりの金額を節約でき、また安定した供給となっている。すぐに導入 するものとしては手堅い。漁港の照明利用程度であれば十分に使える。 C.最近のソーラーパネルは曲げることもでき、色々な場所に設置できる。 C.蓄電池も最近安くなってきた。50 万円くらい。近い将来 10~20 万円になるのではな いか。 Q.対象漁港としては、第 1 種、第 2 種の漁港でよいか。 A.第 1 種だと電力ニーズが無いおそれもあるので、第 2 種、第 3 種が対象となるのでは ないか。 C.漁港地域の近くの加工場や他の産業の工場との連携も視野に入れたほうが良い。例え ば、ある地域では、漁港の近くに製錬工場があるが、その排熱を利用できると有益。 そもそも、自然エネルギーだけで電気需要の全てを賄うのは難しい。ある程度化石燃 料は使わざるを得ない。排熱・排水も利用できるはず。 C.電力会社への接続も念頭におく。ただし、送電線や電力会社の負担といった問題も出 てくる。分散型、自然エネルギー、化石燃料の利用も排除せず、検討していきたい。 また、函館では、商工会議所の中に協力の意向を持つ企業もあり、蓄電池の利用も検 討できるかもしれない。 C.電力ニーズとして、漁業・養殖業の効率化に関わる部分、例えばモニタリングやセン シングが考えられる。そのエネルギー源に波力、潮力・潮流等が挙げられる。量とし ては少なくても、モニタリングが機能すれば、計画的操業、自動給餌等ができる。精 密農業というのがあるが、精密養殖業、精密漁業もできるはず。 C.イカ釣りだと、重油価格から大きな影響を受ける。漁村臨海部で発電した電気を電気 推進船等に供給できれば助かるのではないか。 C.船が個別に光を照らすのではなく、イカ釣り集魚灯プラットフォームのような形で洋 上の海洋エネルギー発電機から発光させて、そこを漁場とする方法もありえる。 (2) 調査研究の推進について Q.テーマの境界設定、3 年の研究期間でのゴール、そこに到達するまでのギャップの解 消、これらを明確にしたほうが良い。共通の目的を設定すれば、発散せずにやりやす いのではないか。 A.最終目標から何をすべきか、バックキャスティングをしていく必要はある。3 年後に は一部が動き出し、5 年後には漁港・漁村で実際にスタートさせたい。 C.ある時点でサブテーマを立ち上げ、大枠での議論と、サブテーマで構成していくのは どうか。 Q.対象とするのは第 2 種か第 3 種の漁港だが、その後背地の人口規模として、どの程度 を想定すれば良いか。 A.近郊に都市部があるかどうかで、全く異なる。一概に言えない。 C.今回欠席の山家委員は、一定の規模が無いと実現できないのではないか、と指摘して いる。小規模の場所で自然エネルギーで完全に代替するのは難しい。一定規模の場所 で 2~5 割程度の置換えを狙ったほうが良いとのこと。 Q.スマートグリッドの技術的到達点は現時点ではどうなっているのか。 C.システムとしてはまだ完成していない。八丈島等、個別に目指している事例 はあ る。 C.山家氏はスマートグリッドの著作もあるので、次回以降に話題提供してもらえれば良 い。また、宮崎委員からは海洋エネルギーの現状について紹介してもらえ れば 良い 。 C.離島はクローズしているので、小規模でもやりやすいのではないか。屋久島は既に、 水力発電によって需要を満たし、さらに電気を水素に代えて、ロケットの打ち上げに 使っている。水が豊かな離島だとできる。全体の 2~3 割でも自然エネルギーが利用 されるというのは極めて重要なこと。 Q.今後の検討として、電気需要と利用の仕方、バックキャスティング、地域のモデリン グ、自然エネルギーによる一定の供給と化石燃料との組合せ、電力会社への接続と蓄 電池の利用、といった点でよいか。 C.発電に拘らないならば、地下水・流水も資源として捉えていっても良いのではないか。 C.他に、液化天然ガスの冷熱も選択肢になりうる。ヒートポンプを使えば、無理に発電 に結びつける必要はない。陸上の水槽等をエネルギー源として使えば良い。長崎県・ 水産試験所では、実際に利用している。温度差が必要な温度差発電と違い、熱源とし てのヒートポンプの利用は、かなり幅が広くなる。 C.北海道立工業技術センターでは、風力によって水を汲み上げ、養殖等に利用している。 自然エネルギーは変動が激しいので、位置エネルギー等何か適当なエネルギーに代え て、使いたいときに使える状態にするのが重要。漁村の場合、漁港の地域毎で状態が 違う。多種多様な方法があると考えられるが、使えそうな資源を絞り込んでいったほ うが良いと思う。 C.地域の選定では、漁協の協力が欠かせない。これに地域の自治体、水産庁にも力を借 りたい。 C.漁港の荷捌き施設上にある太陽光発電だが、鳥害(糞害)が多く、表面の劣化が激し い。設置時 8 年目で、当初の 7 割の発電量となっている。 C.掃除ができるワイパー式もあるが、価格は高く。ガラスを特殊コーティングすること によって雨水で汚れが取れるのもあるようだが。 C.それも初期投資が高くなる。 (3) 函館視察の実施について Q.函館方面の地熱、戸井漁協の視察の日程調整はどうか。 A.8 月 19 日の週で検討したい。基本は 2 泊 3 日、委員の都合次第で 1 泊 2 日での参加 も可能としたい。委員の都合が揃えば、第 2 回委員会の開催も検討する。 C.函館で地熱発電所を視察できるならば、八丈島に拘らず、他の地域に視察しても良い のでは。 以 上 (一社)海洋産業研究会 平成 25 年度東京水産振興会調査研究事業 「漁村・漁港地域における自然エネルギーを利用した振興策の検討」 第 1 回委員会出席者名簿(敬称略・順不同) <委 員> 座 長 嵯峨 直恆 北海道大学大学院水産科学研究院 三浦 汀介 北海道立工業技術センター長 宮崎 武晃 (一社)海洋エネルギー利用推進機構(OEAJ)理事 和田 時夫 (独)水産総合研究センター理事 中原 裕幸 (一社)海洋産業研究会常務理事 和田 憲明 水産庁漁港漁場整備部計画課 後藤 朝子 水産庁漁港漁場整備部計画課 <オブザーバー> <(一財)東京水産振興会> 渥美 雅也 (一財)東京水産振興会専務理事 栗原 修 (一財)東京水産振興会次長 大西 学 (一社)海洋産業研究会研究員 (事務局) (一社)海洋産業研究会 平成 25 年度東京水産振興会調査研究事業 「漁村・漁港地域における自然エネルギーを利用した振興策の検討」 第 2 回委員会議事要旨 1. 日時:平成 25 年8月 23 日(金)14:30-16:00 2. 場所:北海道大学水産学部内 3. 出席者:別紙参照 4. 配布資料 資 料2-1 : 函館市「戸井地区実測調査結果の概要報告」資料 〃 2-2 : 前回議事メモ 〃 2-3 : 話題提供資料 参考資料1 : 「函館市の海洋エネルギー利用に係る取り組みについて」ほか (1) 紹介 開会の後、資料 2-1 を用いて函館工業高等専門学校の宮武先生、函館市企画部国際水産・ 海洋都市推進室の本吉氏より、「戸井地区実測調査結果の概要報告」と題して、戸井地区 における潮流実測調査の紹介があり、大要として以下の議論があった。 Q.調査地点の選定基準は何か。 A.北大工学部の猿渡亜由未先生による津軽海峡の海流シミュレーション結果では、最大 流速が汐首岬周辺、流速 2.6m/s という結果であった。加えて、周辺海域の漁業権の設 定を考慮しつつ、現地の漁協と年間貸与可能な未利用海域の場所を調整した。さらに、 国の実証フィールドの条件 20m 以深を満たしつつ、データの取れる海域、ということ でおおよそこの地点となった。 Q.海峡の様子から、もう少し港側のほうが潮流は強そうだが。 A.今後、取得データと細部の潮流シミュレーションから、面的な流れ分布を把握し、最 終的には海峡全体を推計する予定。なお、データの取り方は資料にある通り、サンプ リング間隔が 0.5 秒、測定時間が 20 分、測定間隔が 1 時間となっている。このデータ の合計を集約・平均を算出し、これに基づいて平均最大を出している。 Q.平均ではない、瞬間的な最大はもっと高い数値ということか。 A.瞬間的にはもっと高い数値になる。 Q.固定観測に、船による測定でカバーできるとさらによいのではないか。 A.流速の把握の第一歩として、固定観測から取りかかった。また、船による測定の場合、 相対的な流速を差し引く必要がある。 Q.水深 20 数 m の地点に観測機を設置するのは大変ではなかったか。 A.3 日目にようやく設置できた。流速が早過ぎるとダイバーが潜れない。 Q.データを無線で送ればリアルタイムで測定できるのではないか。 A.船の測定や無線によるデータ送信についてはノイズを考慮した。まずは基本的な流速 を押さえることを優先した。 Q.シミュレーションや観測結果に対する漁業者の反応はどうか。昨日の漁協への調査だ と、流向と逆だとイワシでも泳ぎきれないほど、という話であった。 A.結果よりも強いのではないかという声が多く、これもシミュレーションに反映させる。 Q.調査地点は資料 1 枚目には水深約 30m 、2 枚目には同約 25m とあるが。 A.1 枚目は調査依頼時点のもの。2 枚目が GIS に基づいて正確なポイントで、26.3mの地 点になる。 Q.夏・秋・冬それぞれ 31 昼夜の観測結果から、国の実証フィールド基準の 1.5m/s 以上 になりそうなのか。 A.そう見込んでいる。現時点でシミュレーションも試行し、2m/s 近い結果が出ている。 (2) 国の実証フィールドに関する周辺情報 Q.各地で実証フィールドに手を上げそうな自治体の様子はどうか。 A.基本的には、実証フィールドに採択されなかったとしても、当該地域の海洋エネルギ ーの利用、沿岸漁業との協働、スマートグリッドの導入等について、地域振興として 取組む、というのが自治体の姿勢。取れなければ止める、というわけではない。 Q.函館市と道とのスタンスの違いがあるが、どうか。 A.道は、都道府県としても大きい。総合海洋政策本部事務局としては、道が了解・支持 すれば、応募するのは問題ないはず。潮流で競合する可能性は高いのは長崎県かなと 思う。青森とはあまり競合しないと思う。今回の函館の事例は、共同漁業権区域の中 で、当該権利保有者と調整・合意だけで進めることができ、漁業上の紛争は生じない と思う。初期始動も可能ではないか。 当委員会では、この地域で利用可能な再生可能エネルギー、具体的には潮流、波力、 温泉(地熱)、太陽光、陸上の小水力等、メニューを並べて、各ポテンシャルを押さえ、 どのような組合せがあるのか、検討を進めていけばよいのではないか。 C.資料のイメージ図が海中プロペラだと、メンテナンスが難しいのではないか。 C.一つのアイディアとして、海面上に頭が出る杭式構造物ならどうか。メンテナンス時 は海面上に浮上させれば良い。ダイバーをなるべく使わないほうが良い。 C.送電ケーブルもそのほうがやりやすいのではないか。 C.潮流は、発電機をメーカーがあまり作っていない。 C.産業界との連携を睨んで、発電機メーカー、ソーラーメーカー等を適宜ゲストで招聘、 検討を進めればよい。 (3) 前回議事要旨 資料 2-2 を用いて前回議事要旨(案)を確認し、大要として以下の議論があった。 C.2 頁目の半ばの発言だが、 「蓄電池は最近で 100~150 万円、近い将来的(10~20 年) には 10~20 万円になるのではないか」 、に訂正する。 C.3 頁目の下部、北海道立工業技術センターの箇所は、函館マリンバイオクラスター事業 の中で、という旨について訂正する。 Q.風力によって水を汲み上げるというのはどういう仕組みか。 A.風力でポンプを回し、揚水している。かなり小規模だが、蓄電の一種。 Q.事業内容はどのようなものか。 A.函館マリンバイオクラスターの第 2 研究チームのプロジェクト。養殖の対象はチョウ ザメ。 C.揚水発電は原発とセットになることで経済的メリットがある。普通は揚水よりバッテ リーのほうが安くなると聞いている。 C.10 年程前の話だが、電源開発が沖縄県で海水揚水発電に取り組んでいた。 C.自然エネルギーを導入するには、蓄電池等の調整が必要になる。ドイツの事例だと、 需要調整が先に行われ、その次に将来的に安くなるであろう蓄電を利用する、という 順番になる。蓄電池がリーズナブルになれば、小規模でもいけるのではないか。 C.蓄電池の価格が数年内で 50 万円程度となれば、ゴールとして見やすい。住宅各戸に設 置できるようになれば、10~20 万円に下がるのではないか、と自動車会社から聞いて いる。 C.敷地に余裕があれば、リチウムでなはなく安価な鉛の選択肢もある。 C.自動車会社は、ハイブリッド車のバッテリーについて、蓄電・緊急時の利用というエ ネルギー源としても捉えている。 C 国の実証フィールドにおいて、発電電力は電力会社に全量売電することが前提だが、一 部分岐して蓄電と充電の R&D、住宅、車、漁船等への提供といった検討を行うのはど うか、という意見もある。 C.発電電力を売電するのが一番簡単だが、昨日の視察先では太陽光発電の容量を、240kW から 500kW まで増設する予定を持っているものの、北海道では既に自然エネルギーの 受入枠が上限に達しつつあるので、順調に行くかわからない。 (4) 話題提供 資料 2-3 を用いて、山家委員より「分散型エネルギーシステムとスマートグリッド」の話 題提供が有り、大要として以下の議論があった。 Q.蓄電池4MW はハイブリッド車何台分になるのか。 A.トヨタ・プリウスがニッケル水素電池で 1.3kWh、プリウス・プラグインハイブリッド の 2 次電池がリチウムイオン電池で 5.2kWh、日産・リーフはリチウムイオン電池で 24kWh、三菱・i-MiEV がリチウムイオン電池で 16kWh。ハイブリッド車だと約 3000 台、EV の日産・リーフだと約 150 台くらい。 (後日補足) Q.宮古島や六ケ所村におけるマイクログリッドの狙いはなにか。 A.電力会社側のプロジェクトで、再生可能エネルギーの導入と電力の安定的な供給対応 の両立を目指している。ヨーロッパのように需要側を動員するという発想はない。 (5)今後について C.ある程度コストがかかっても、まずは理想的なベストミックスを検討・具体化して行 きたい。実現化に向けては、補助金等を考慮していく。今年度の目標として、戸井漁 協及びその後背地 100 世帯程度の規模を想定して、ベストミックスについて検討でき るようにしておきたい。 (一社)海洋産業研究会 平成 25 年度東京水産振興会調査研究事業 「漁村・漁港地域における自然エネルギーを利用した振興策の検討」 第 2 回委員会出席者名簿(敬称略・順不同) <委 員> 座 長 嵯峨 直恆 北海道大学大学院水産科学研究院 三浦 汀介 北海道立工業技術センター長 宮崎 武晃 (一社)海洋エネルギー利用推進機構(OEAJ)理事 山家 公雄 エネルギー戦略研究所㈱取締役研究所長 中原 裕幸 (一社)海洋産業研究会常務理事 <(一財)東京水産振興会> 栗原 修 (一財)東京水産振興会次長 大西 学 (一社)海洋産業研究会研究員 (事務局) 第 1 回視察会(函館) 1. 概要 日時 平成 25 年8月 22 日(木)-24 日(土) 行程 8月 22 日(木) 12:00 函館空港集合・出発 13:20~14:30 JF 戸井漁業協同組合・汐首岬の視察 15:30~16:00 森町・再生可能エネルギー関連施設( (株)ハルキ)の視察 16:30~17:30 森町・蒸気生産設備及び農業利用の視察 8月 23 日(金) 9:30~10:30 函館商工会議所表敬訪問・太陽光パネルの視察 11:00~12:00 国際水産・海洋総合研究センターの建設現場等の視察 13:00~13:30 函館市役所表敬訪問 視察参加者(敬称略) 嵯峨直恆、三浦汀介、宮崎武晃、山家公雄、中原裕幸、栗原修、大西学 案内 函館市 企画部国際水産・海洋都市推進室 参事 本吉 勲 氏 函館市 企画部国際水産・海洋都市推進室 主事 溝江 隆紀 氏 2. 各視察・訪問の報告 2.1. 2.1.1 JF 戸井漁業協同組合 視察概要 ご対応者 JF 戸井漁業協同組合 2.1.2 代表理事組合長 森 祐 氏、他 1 名 意見交換 (漁 協)潮流発電と漁業との共存を望んでいる。潮流発電機器の導入によって漁業権が消滅する不 安はある。 (当 方)本委員会は、海洋再生エネルギーありきのプロジェクトではない。大規模なものではなく、 小規模で漁業と両立できるものを目指している。その立ち位置は漁業を発展させることにあ る。 (当 方)本周辺海域において潮の流れに対して、何の影響が一番強いのか。 (函館市)道の調査によると、主流は日本海側から太平洋側に流れる対馬暖流の分岐した津軽海流が 常に流れている。これに潮汐が加わる。詳細に調査したものはなかなか無いので、市のほう で漁協の協力を得て、実測調査を行っている最中である。道は春、その他年 3 回が市実施す る。 (当 方)潮流の何時・強弱の様子がわかれば、予想もできる。またその結果は漁業者にも有効。き っちり調査したほうが良い。 (漁 協)我々の経験では、日本海側から太平洋側に抜ける潮の流れの方が早い。時期的には、春に 反対側の太平洋側から日本海側に抜ける潮の流れになる。早いのは春の方の流れ。平均を通 しては、日本海側から太平洋側に抜けていく潮の流れとなっている。もちろん、時化・低気 圧といった様々な天候も関係してくる。 今はほとんど獲れないが、昔はイワシ漁が盛んであった。その当時、汐首岬の先に潮が来 ている時は、イワシの大群が流れに逆らっては泳げないほどであった。それくらい潮の流れ が早い。漁港の下側、陸から見ると左手の角の方だが、その周辺で潮の流れが変わり、沖合 の方に押し流し、陸側がだるみになる。イワシがそのだるみに溜まる。 (当 方)本プロジェクトは、現場に密着し、再生可能エネルギーを小規模なもので早期実現を目指 している。温泉熱、小水力、風車、ソーラー、波力諸々、その地域のポテンシャルをうまく 組み合わせ、利用を研究していく。その得られた電力を地産地消という形で、戸井の漁業協 同組合で利用してもらうことも検討したい。当漁協では、年間どれくらいの電気を利用して いるのか。 (漁 協)大まかに言うと、漁港で 200 万円、事務所で 200 万円、コンブの種苗センターの施設合計 で 100 万円余り、製氷庫は一つにつき約 180 万円、これが二つあるので 400 万円弱程度。合 計すると年間 1,000 万円くらいになる。 漁港の照明費用の負担については、道に強く訴えている。道の管理する施設で、組合が委 託を受け、組合が利用者から利用料を徴収、道に納めている。道がその徴収金の一部を行政 に還元し、その行政から各漁港に施設数に応じて配分されるが、実際の費用の 1/3 にも届か ない。漁港の利用料のだいたい 18%しか、還元されていない。4 つの漁港があっても、年間 30~40 万円くらいの金額にしかならない。 (当 方)本プロジェクトはまだ始まったばかりだが、理想としては漁業に悪影響を与えないように 工夫していきたい。現行の電気代の範囲で電力を供給しつつ、国・道・市町村等の補助金か ら、初期投資額に充当させていきたい。補助率を 5 割として、20 年で回収となるところを 10 年での回収を目指す。20 年目で更新し、その後持続的利用できる形になればと思う。 (漁 協)ここの漁港はまだ敷地に余裕がある。利用に応じた名目はあるが、実際は空き地なので設 置場所として考えられる。 (当 方)再生可能エネルギーは不安定な発電になり、電力会社が購入してくれないかもしれない。 そうすると自律分散型で、蓄電池やスマートグリッドでの制御となり、ある程度研究が必要 となる。電気代は期待ほど安くならないかもしれないが、試験研究レベルで国・道等の支援 があるならば、導入にこぎつけられる可能性もある。 (当 方)当漁協は、冷蔵倉庫の類について、所有をどうしているのか。 (漁 協)今はない。故障したので放棄した。現在、漁協としての水産物の保管場所はない。ただ、 必要がないから、使ってないということではない。あるにはあった方がいい。昭和 30 年代 後半は、組合が冷蔵庫・冷凍庫を設置し、組合員に必要分を提供していた。機械が古くなり、 故障も多くなったので、全て廃棄した。現在では、冷蔵庫の小型化もあり、組合員レベルで 保有している。組合があえて大きなものを設置よりも、そのほうが良いか、という流れ。 (当 方)漁獲物を保管することはないのか。 (漁 協)組織としては無い。定置網、コンブ養殖等、水揚げされたらすべてすぐに函館市場に出荷 する。函館の方には大きな冷蔵倉庫がある。漁業の 6 次産業の検討もしているが、組合で商 品の規格・規定数量の箱詰め等を行う必要があるが、なかなか難しい。また、組合の経営上 も厳しく、高齢化の問題や特定の魚種が大量に上がるという環境でもない。例えば、マグロ が急に水揚げされた時に備え、CAS 冷凍を国の補助金で設置しようという声もあり、検討し たが電気代が年間費用 1000 万円であり、設置補助初期費用 25%を考慮しても、電気代だけ でも維持できない。当組合の規模が小さく、手が出ない。 (当 方)この周辺のマグロはどういう状況か。 (漁 協)太平洋側はたまに 100kg を超えるマグロも獲れる。日本海側はおおむね小型。周辺を回遊 しており、太平洋側からも日本海側からも来る。天売島、アリューシャン、釧路の方にも行 くと聞いている。 (当 方)実は、北大でマグロについて調査している。日本海側と太平洋側と系群が一緒か否か。ま だ系群が一緒かどうかわからない。 2.2. 株式会社ハルキ 2.2.1 視察概要 ご対応者 株式会社ハルキ 企画・開発課長 鈴木 正樹 氏 2.2.2 意見交換 (当 方)木質バイオマスの燃料調達はどのようにしているのか。 (ハルキ)燃料調達は、当社事業の中で出るバルク、かんなくず、端材といった材木類や家屋の廃材 を利用している。1 時間あたり 4 トンほどの木材を燃やしている。それでも燃料となる材木 類は余っている。現在のところ、夜は稼働させていない。 (当 方)発電の際の留意点はあるか。 (ハルキ)燃焼は 200℃前後になるように調整している。 (当 方)設置費用はどれくらいか。 (ハルキ)費用は、バイラーと建屋をあわせて 1 億円ほどになる。そのうち半額が補助された。 (当 方)設置された太陽光パネルの発電容量はどれくらいか。 (ハルキ)現在のところ、容量は 250kW になる。最終的には、これを 500kW まで増設したいと考え ている。 (当 方)発電した電気はどのように利用しているのか。 (ハルキ)発電した電気は全量売電している。売電量は現状で限界。当初は、瞬間の発電が大きくな ることが原因で、不具合が多かった。メーカーと調整し、なんとか安定するようになってき た。 2.3. 森町・蒸気生産設備及び農業利用 2.3.1 視察概要 ご対応者: 森町役場 企画振興課計画係兼振興係 関 孝憲 氏 同 計画係長兼振興係長 河野 淳 氏 同 農林課課長補佐 併 農業委員会事務局次長 工藤 秀則 氏 新函館農業協同組合 森基幹支店 伊藤 博之 氏 2.3.2 意見交換 (1) 森町・蒸気生産設備 (当 方)熱水の利用は具体的にどのように提供されているのか。 (森 町)地熱発電所から提供される熱水を農業に利用している。澄川地区の 10 軒、濁川地区の 7 軒が利用している。温水の温度は 120℃、エネルギー量は水量で調整している。流水量は、 寒冷期には 80~90t/d、通常は 50~60t/d ほどになる。循環式を採用している。 (当 方)費用はどれくらいか。 (森 町)導入において、町で 1/2 を補助した。維持費としては、1 軒当たり年間 60 万円、合計 1000 万円以上が経費としてかかっている。その半分以上が電気代になる。組合としても負担して いる。メンテナンスとしては、管の中のゴミ取りがある。毎月取り外して掃除している。 (当 方)熱水栽培している品種は何か。 (森 町)キュウリ、トマトを生育している。特に森トマトがブランド化している。他の品種に手を 広げることは、今のところ無い。パブリカ、オリーブ等は冒険的と認識している。 (当 方)当該地の農業生産高はどれくらいか。 (森 町)農業収穫はおおよそ 6 億円。近年の生産高は減少傾向にある。 (当 方)事業の継続について具体的な課題はあるか。 (森 町)修繕・維持については補助金がでない。ただし、設備を新規に更新するならなら、1000 万 ~1500 万程度は出る。更新費用は、屋根の改修も含めると 5 千万円の見積であった。さらに 更新にあたっては、配管等の入換えも必要になり、大規模になる。その一方で、周辺機器の 故障等に対する修理等に費用がかかり、修繕積立が追い付いていないのが現状。また、熱交 換器は受注生産で、発注から 6 ヶ月かかると言われた。 (2) 熱水の農業利用 (当 方)熱水はどのように供給されているのか。 (農 協)熱水は配チューブで各ビニールハウスを通っている。地下に配チューブを入れると土いじ りの時に邪魔なので、地上で配管している。量としては、5mm の穴、3 本の配チューブで十 分の熱量になる。入ってくる時は 75℃、出るときは 40℃くらいになっていると思う。 (当 方)熱水の利用のメリットはどうか。 (農 協)-経済性としては、十分このままでよい。さらに、熱水の場合、不調になれば北電から連 絡があるので助かる。重油の場合だと、油漏れ等の故障が、現場に来るまでわからない。ま た停電時に酸欠になるリスクがある。 (当 方)栽培しているトマトについてさらに詳しく伺いたい。 (農 協)トマトのブランド化に成功した。そのために、品質が一定になるよう、一定のルールを決 めている。特に栽培方法で品質を管理している。また、研究班で 2 年間試験してから、地域 にあう品種を選んで栽培を実施している。 (当 方)経営の課題は何か。 (農 協)標準的な経営は、家族単位になり、3~4 人の規模で従事している。そのため、どうしても 拡大が難しい。 2.4. 函館商工会議所表敬訪問(ホンダカーズ南北海道本社) 2.4.1 視察概要 ご対応者 函館商工会議所会頭(ホンダカーズ南北海道本社 代表取締役会長) 松本 榮一 氏、他数名 株式会社ホンダソルテック 青山 裕志 氏 2.4.2 意見交換 (当 方)太陽光パネルパネル設置について、留意すべき点として何が挙げられるか。 (ホンダ)太陽光パネルの設置角度は、だいたい 35~45℃が理想的な角度になる。ただし、雪国では 雪対策のために 45℃にしている。また、雪対策のために高さを 1m 分嵩上げしている。 漁港に設置する場合、塩害対策や PID 現象の対策が必要になる。塩害対策としては、裏側 のボックス部分が一番弱い。PID 現象とは、パネル表面に朝露等の付着により、ガラスの絶 縁体からの漏電、さらに発電量の低下することで、場合によっては発電量が半分以下になる。 高温多湿下の環境で、シリコン系で発生する。したがって、傾斜や真水洗いの工夫が必要に なるのではないか。また、強度的なものとして、飛沫・海水程度な大丈夫だと思う。その他、 糞害、桜島の火山灰等の事例もある。また、ホットスポット現象で表面の汚れで高温化する こともある。釧路方面となると、雪対策が大きな課題となる。土台やフィールド情報を収集 する必要がある。 (当 方)太陽光パネルの重量はどの程度か。 (ホンダ)おおよそ、10~14kg/m2になる。主に表面ガラスが重量に占める割合が高い。軽くするに しても、風によって揺れる振動に耐えるようにしないといけない。 (当 方)太陽光パネルに充電池を組込むことについてはどうか。 (ホンダ)市場認識としては、ホーム型は 50 万円以下、システムとしては 300 万円以下にならない と普及しないという船井電機等の試算がある。経産省は 2015 年をスマート元年と定めて、 準備をしているが、リチウムの他、鉛でも可能性があると思う。価格面、メンテナンス(15 年)等の分野でもう少し時間が必要だと思う。 (当 方)パネルを変形させることは可能か。 (ホンダ)ロール状にすることも可能だが、熱膨張を考慮する必要がある。 (当 方)設置の際の問題点は他に何かあるか。 (ホンダ)配線の問題がある。信号線と異なり、窓ガラスが障害となり、配線ルートが難しい。新築 でなければ対応できない。 (当 方)御社で設置している太陽光パネルはどのようなものか。 (ホンダ)屋上に設置し、出力は 4kW、費用は 260 万円程度であった。パネルそのものの費用はあま り大きくない。施工時では、高さ 10m を超えると引抜きの問題で、土台に気を使う。 (当 方)御社で設置している太陽光パネルの利用を敷衍して、その他留意点はどうか。 (ホンダ)屋上に設置し、出力は 4kW、費用は 260 万円程度であった。パネルそのものの費用はあま り大きくない。施工時では、高さ 10m を超えると引抜きの問題で、土台に気を使う。経産省 の規制に従い、車の充電器と家の配電盤の 2 ヶ所に変換器が必要になる。経産省の規制の外 になるような自律型であれば、漁港から後背地でも利用できるのではないか。また、一つの パネルから劣化が波及する場合もあるので、使用しない時はカバーをかける工夫があればよ いかもしれない。 2.5. 国際水産・海洋総合研究センター 2.5.1 視察概要 2014 年 6 月に供用開始となる国際水産・海洋総合研究センターの建設現場を訪問し、同センターの 概略及び各施設に関する概要の解説を交え、視察した。 2.6. 函館市役所 2.6.1 視察概要 ご対応者 函館市役所 市長 工藤 壽樹 氏、他数名 2.6.2 意見交換 (当 方)当委員会の趣旨である漁港及びその周辺地域を念頭においた、複合型の自律型のエネルギ ー供給の実現に向けて、ご協力をお願いしたい。 (市役所)戸井では風力をしたい、という声があることは聞いている。メガソーラーの話も出ている が、場所の問題で難しい模様。エネルギーの選択自体は価格で決めればよいのではないか。 実証実験のフェーズになれば、市の経済部や農林水産部等も含めて、横断的な対応を検討 する。海洋再生可能エネルギー関係であれば企画課、エネルギー自体であれば経済部が主担 当となる。いずれにしろ、地元民がよく分かる形で、プロジェクトを進めてほしい。適当な 時期に広報も協力する。 写真 1- 1 漁協への訪問 写真 1- 2 バイオマス炉の全景 写真 1- 3 太陽光パネルの見学 写真 1- 4 太陽光パネル脇での集合 写真 1- 5 温水供給施設の見学 写真 1- 6 温水供給設備の見学 写真 1- 7 温水の農業利用の現場 写真 1- 8 ビニールハウス前の集合 写真 1- 9 函館商工会議所会頭への表敬訪問 写真 1- 10 屋上太陽光パネルの見学 写真 1- 11 函館商工会議所会頭との集合 写真 1- 12 国際水産・海洋総合研究センター での集合 写真 1- 13 函館市長への表敬訪問 写真 1- 14 函館市長との集合 第 2 回視察会(波崎) 1. 概要 日時 平成 25 年 11 月 26 日(火) 行程 11 月 26 日(火) 10:40 羽田空港集合・出発 14:00~16:00 はさき漁業協同組合の視察 16:00~17:30 水産工学研究所神栖庁舎の視察 視察参加者(敬称略) 嵯峨直恆、三浦汀介、宮崎武晃、中原裕幸、渥美雅也、大西学 2. 各視察・訪問の報告 2.1. はさき漁業協同組合 視察概要 2.1.1 ご対応者 はさき漁業協同組合 参事 本吉 信行 様 同 2.1.2 総務課長 小林 寛史 様 意見交換 (1) 風車施設の概要について (漁 協)風車は三菱重工業製で、定格出力は 1MW になる。風車は製氷施設の付帯設備として建設 し、みなし供給で発電電力は全て売却している。製氷施設に供給するには変電施設が必要に なる。 資料では、平成 17 年 4 月~平成 18 年 3 月の期間における運転実績の総発電量は、270 万 kWh と記載しているが、導入以降 8 年間の平均だと 250 万 kWh 程度。また、製氷施設電気 料に対する売電収入の割合も、資料では 47.7%だが、導入以降 8 年間だと 30~35%くらい になる。 単年でみると収支が良いように見られるが、風車の耐用年数が 25 年で、解体費用等も念 頭におくと、FIT 買取価格の 22 円(税込み 23.1 円)でもなかなか厳しい。 資料の売電収入実績 2968.7 万円は、以前の RPS(電気事業者による新エネルギー等の利 用に関する特別措置法)制度下での買取価格で、約 10~11 円/kWh の実績になる。今年度 は FIT(固定価格買取制度)の下で 5500 万円程度を見込んでいる。 資料の実績は、導入初年度で機械も新しく効率よく稼働した。8 年間の平均でみると数値 はやや落ちる。設備利用率としては 30%くらい。 (当 方)風車導入の動機は何か。 (漁 協)旧波崎町の風車 2 基設置の計画時に当方でも検討した。風況もよく、漁協の風車導入の調 査も良好だったので、導入することにした。現在でも、8 年間で稼働率は 30%弱、FIT 前で もマイナスにならない程度に稼働してきた。また、風力発電で魅力的だったのは、人件費が 必要なかったこと、さらに固定的な利益があれば漁協の運営としてもメリットだという判断 があった。また、補助金の存在も後押しした。 (当 方)風車を導入したくないという声はなかったのか。 (漁 協)あまりなかった。漁業者数も減少していることから、危機感もあり、経済的に可能であれ ばやろうという結論だった。また、近くに風力発電の先行例があったので、やりやすかった。 資料にもある通り、事業費は約 2 億 6683 万円、補助金として 1 億 2700 万円が入ったので、 コストは約 1 億 3 千万円だった。出資金も 4 億以上あった。 (2) 維持管理・解体・保険・メンテの種別について (漁 協)維持管理費は、昨年度まで年間 1200 万円程度であった。本年から、買取価格もあがった ので、予算を多めに割いている。導入当初において、メーカーは年間維持費を 600 万円ほど と言っていた。実際は、少なくともその倍はかかる。波崎では、単基操業のため、風車が止 まると収入も無くなる。よって、通常より高頻度での点検、早めの部品交換を実施しており、 周りの風車よりコストをかけている。 5 年・10 年のサイクルで、大量の部品交換が必要になる。メーカー見積だと、部品だけで も 2~3 千万円の額になる。よって、内部で精査しながらメンテナンスを実施している。一 昨年度、昨年度といずれも 2000 万円ほどの修繕費用をかけた。今年度も 2000 万以上を修繕 にかけるつもり。設置から約 10 年になり、2~3 千万円の事故が生じると単年度の収支に与 える影響が大きい。収支の良い時に修繕の実施や費用の引当をやるという意識。これは FIT でなければできなかった。 また、風車の解体について、業者の見積では 1 千万円以上かかる。想定以上の金額だった が、ある程度引き当てている。これも、FIT にならなければ難しかったと思う。 事故で保険を利用すると、翌年の保険料が 3 倍、という試算もあった。保険の利用が難し い側面もある。現在、年間の保険料は約 300 万円になる。一度、落雷によりブレードが破損 したが、その修理だけで 1200 万円の費用がかかった。内訳は、クレーンの利用や人件費等 だった。 平成 22 年度まではメンテナンスは外注していた。しかし、必要とする時にすぐに来てく れるわけではない。平成 23 年度から日常管理は漁協で行いつつ、電気関係の業者も雇って いる。 電気系統は全て業者に依頼している。以前では、メーカーのために風車を回しているので はないか、という時期もあった。最近は自分たちでも管理できるようになってきた。自分た ちでできる所は自分たちで管理する必要がある。全て業者任せではだめになる。また、業者 からは簡単に数百万円、数千万円の額を請求される。 メンテナンスの分担は以下のとおり。三菱重工業には、年 2 回の検査と、基本的なアドバ イザーのみをお願いしている。部品調達や重故障の時に連絡する。北拓には、年 4 回の検査 と修理をお願いしている。具体的には、軽故障修理、グリ-スアップ、年2回の作業全般を 依頼している。地元の電気屋には、日常管理として月1回の点検(組合職員補助)や電気部 品等の調達をお願いしている。また、組合職員は月1回の点検を行い、故障時初期対応、点 (本センテンス・追加聞き取り) 検時の管理業務、部品注文を行っている。 (当 方)部品交換は具体的にどのようなものをしているのか。 (漁 協)パッキンやモーター類の交換をしている。 (当 方)保険の種別は何か。 (漁 協)火災保険と地震保険を風車にかけている。これに、収入保障も設定している。風車専用の 保険はなく、一般の保険を当てはめている。風車を多数保有していれば、安くなるようだが、 当方のように単基保有だとかなり高額になる。また全国的には、日本海側の風車の事故率の ほうが高く、当周辺地域での事故率は低いほうだと思うが、保険料は全国一律で、割高にな る。保険会社自体の選択肢も少なく、現状では東京海上日動火災の保険に入っている。そも そも新規では受け付けないという会社もある。 (3) 風車導入に係わる諸制度について (漁 協)現在、場所が空いているので 2 基目として 2MW の風車設置を検討し、水産庁と相談して いる。この風車は港湾の別途施設への電気供給として利用する予定。水産庁からは 2MW は 多いと言われている。陸上でだめなら、洋上も検討する。 そもそも漁協が風力発電事業をやることに水協法上の壁がある。また、送電線の問題とし て、地下で系統連系に接続しており、その整備にも費用がかかる。一番近い電圧設備施設ま で 10km 離れており、一定の安定枠の範囲でしか買い取ってもらえない。2MW の風車を追 加設置しても送る先がない。 全国の漁港には風況が良い場所も多く、国も再生可能エネルギーの利用を促進していると いうが、実際は法の壁でできない。結局、水産庁の制度を利用して風車を建てたのは当漁協 だけ。補助金が設定されても、未だに追随者がでてこない。当漁協では、売電目的ではなく 当施設の電力供給施設、つまり自家消費ということで許可が出た。漁港は小さい所が多いの で、電力を大量消費する大きな施設を持つところは少ない。そうなると民間事業者しか参入 できなくなるが、漁業者には民間事業者が漁港・漁場を利用することに抵抗がある。特に洋 上風車の場合は漁場と重なるので、抵抗も強くなる。 (当 方)税金の優遇等はないのか。 (漁 協)固定資産税等の優遇はない。再生可能エネルギーで行政面からの優遇はない。逆に発電事 業税はかかる。また、東日本地震の被害で、茨城県の特区制度利用による 5 年間の免除はあ る。 (4) 風車導入に係わる諸制度について (漁 協)風力発電は大きな資本でなければできない。単基だと採算性が難しい。また、建設適地が 洋上しかない。民間が参入しやすい法改正はあるかもしれないが、漁業者自体が取り組める 雰囲気ではない。ただ、風況がよければ太陽光より良いと思う。九州方面から漁業関係者が 視察で訪問してきたが、大きなプロジェクトで民間が計画しているものだった。 風車で発電した電気を直接漁港施設に供給するには、蓄電池を含めた電圧安定化の装置は 費用がかかる。更新、維持費等のランニングコストもかかる。 (当 方)漁協とは別組織で風力発電事業を取り組んだりはしないのか。 (漁 協)漁港には民間が入って来ることができない。また、誰でも利用できるわけではない。公募 方式にすると、資金の大きい民間にはかなわない。漁協や農協が優先的に取り組める仕組み が必要。漁場を民間に開放するという考えは漁業者にはない。民間と共同というのはあるか もしれないが、現状ではできない。 (当 方)銚子に氷を販売しているとのことであったが、向こうは漁船漁業が多いのか。 (漁 協)A. 波崎は加工(冷凍) 、銚子は鮮魚が多い。波崎の船にも氷はのせている。製氷代金は銚 子漁協でも波崎漁協でも同一価格で販売している。最近では、波崎から銚子に氷を持って行 くことが多い。ただし、風が強いと出港できないので、風車は回っても氷は出ない。 (当 方)風力発電のように発電量が安定しないものを、製氷施設を利用して電気エネルギーを保全 し、さらに氷を販売してお金に変える仕組みになっている。余った電気を利用する揚水発電 と一緒で、氷でエネルギーを溜めることができている。マーケットを確保すれば有望な仕組 みではないか。 (5) その他 (漁 協)今のところ、風車と鳥の衝突事故は無い。水揚げ場所から離れてからかもしれない。また、 住宅街からも 500m 以上離れているので、苦情も今のところ無い。 (当 方)風車利用による業績やイメージの向上はあったか。 (漁 協)風車の写真をパッケージに使用している。認知度は上がり、宣伝効果はあったと思う。 (当 方)波崎では、養殖や近海漁業はあまり活発ではないのか。 (漁 協)巻き網船が主力で、水揚げの漁獲の 9 割以上を占める。利根川が近く、塩分濃度が大きく 変動すること、遠浅で水温の変化も大きいので、養殖には向いていない。三陸のような地域 が向いている。 (当 方)所得としての魚家収入はどうか。 (漁 協)小型船は 1~2 千万円くらいか、もう少し良い。巻き網船はもっと良い。乗組員は一箇所 につき 40 人くらい、年収平均は 800 万円くらいあるのではないか。 (当 方)底曳船は波崎にはないのか。 (漁 協)底曳船は減っており、現在は 2 隻しかない。 (当 方)風車による電力供給先として e 漁船といった選択肢があれば、水産庁も受け入れやすいの ではないか。 (漁 協)エネルギー密度が低いので、静穏海域でないと利用できない。 2.2. 水産工学研究所神栖庁舎 2.2.1 視察概要 話題提供: 「洋上風力発電施設の漁業協調型活用方策の提案」 水産工学研究所水産業システム研究センター長 明田 定満 様 2.2.2 意見交換 (当 方)洋上風力発電施設の漁業協調型活用方策はどの段階のものか。 (水工研)構想段階のもの。研究機関なので、5~10 年のスパンで、研究で使える視点でまとめた。 (補 足)水産庁による洋上風力発電における漁業協調の依頼に対して、水工研提案したもの。 (当 方)観測機器のデータ回収はどのように想定しているのか。 (水工研)電気があれば、無線なり電波なりでデータも飛ばせるので無人も可能と考えている。 (当 方)沿岸で海洋再生可能エネルギーをやる場合、自然公園法等が関わってくるが、法的制約は どうか。 (水工研)法律はたくさんかかっている。ただし、港湾区域であれば漁業権を放棄している。漁業権 が設定されていると、同意・合意が必要になる。交渉に時間や金銭的費用がかかる場合も多 い。港湾区域内にはそれがなく、公物管理主体が明確なのもメリット。 (当 方)漁業権がなくとも、活動実績がある漁業者がいれば一定の合意が必要なる。漁港区域や港 湾区域、公園区域には管理者がおり、一時的な占有許可の権限と占用料の徴収ができる。 (当 方)水工研による洋上風車における環境影響評価の調査実績はあるのか。 (水工研)水工研から、銚子沖の洋上風力発電には環境影響評価の委員を出している。パッシブソナ ーを利用し、魚の鳴き声から、どこにどれだけいるのか測っている。 (当 方)その取組は NEDO からの委託ではないのか。 (水工研)委託ではない。我々のほうから NEDO に観測を要求した。傭船・データ機器の設置作業 等は NEDO が負担している。 (当 方)イルカ型ソナーについてさらに詳しく教えて欲しい。 (水工研)A.高分解能の魚探で、識別能力が 8 センチになる。カツオとマグロの混獲や小型のマグロ の混獲等で、分別研究中。現在、種類分別はできるが、データ解析に数時間かかるのでリア ルタイムでの提供は無理。まだ、改善の余地がある。 (当 方)蝟集効果があると思うので、洋上風車等は設置したほうが自然と漁業協調になると思うの だが。 (水工研)よくわからないというのが正直な感想。米国の風力協会 HP では悪い話はだしていない。 欧州はよくわからない、という雰囲気。個別事実の羅列で、限定的な言い方をしている。決 めつけた言い方はしない。日本の場合、魚礁で寄ってくるという人もいるが、北海道の鮭の 定置業者だと、鮭の経路がかわるのではないか、と不安を口にしている。文献では、室内レ ベルの影響で、実海域だとそんなに影響がないのかなと思うが、確かめた人はいない。 (当 方)これまで海域に機器を入れてきた実績だと、蝟集効果によって漁場が生まれ、機器撤去し ないでくれ、というケースが多いが、どうか。 (水工研)漁業者は不安だから、海域への機器の投入はだめ、というのが多い。魚の経路への影響や 蝟集効果について、きちんと客観的データを端的に示すことができれば良いと思う。漁業者 は魚が獲れるならば、危険な場所でも底引きをするし、それが実績になるのではないか。 (当 方)ウィンドファームの場合、風車間で操業可能な漁法は限られるので、実質的に保護水域に なるのではないか。そこからスピルオーバーや漁場形成の効果を明らかにしていくことは大 事だと思う。また、着底式と浮体式では議論が異なる。 写真 2- 2 風車と製氷施設 写真 2- 1 風車前での集合 写真 2- 4 風車内部の様子 写真 2- 3 風車の見学 写真 2- 5 水産工学研究センターの見学 (一社)海洋産業研究会 平成 25 年度東京水産振興会調査研究事業 「漁村・漁港地域における自然エネルギーを利用した振興策の検討」 第 3 回委員会議事要旨 1. 日時:平成 26 年2月 25 日(火)17:00-18:30 2. 場所:ホルトホール大分・301会議室 3. 出席者:別紙参照 4. 配布資料 資 料3-1 : 前回議事要旨(案) 〃 3-2 : 話題提供資料 〃 3-3① : 漁港における電力消費量について 〃 3-3② 発電コストと電力供給について 〃 3-4 : 平成 25 年度報告書 目次と分担(案) 〃 3-5① : 第 1 回視察会(函館)の報告 〃 3-5② : 第 2 回視察会(波崎)の報告 〃 3-6 函館市海洋エネルギーポテンシャル基礎調査(夏期分) (1) 委員会開催にあたって C.本日の委員会では、オブザーバーからのご出席はいただけなかったが、佐賀関支店の 視察は水産庁からのご紹介、地熱発電については九州産業局からご示唆を受け、それ ぞれご協力を頂いていることをお伝えしておきたい。 C.関係者に事務局を通じてお礼を申し上げていただきたい。 (2) 前回議事要旨 資料 3-1 を用いて、前回議事要旨を確認した。 (3) 話題提供 資料 3-2 を用いて、山家委員より前回に引き続き「分散型エネルギーシステムとスマート グリッド」の話題提供が有り、大要として以下の議論があった。 Q.スマートグリッドは非常に大切だということがわかる。ドイツではインフラが整って おり、政策でも再生可能エネルギーの導入に焦点が当てられている。自然条件次第だ が、わが国でもやろうと思えばできるのか。 A.できると思う。その場合、インフラ整備の他、電力取引市場の存在が決定的に違う。 電力市場があれば、地域の電力需要を予想することができる。また、規模で再生可能 エネルギーのデメリットを一定吸収することができる。その意味では、欧州並みの電 力取引市場の創設とインフラ整備、この二つがキーポイントだと思う。 Q.日本国内だけでも、電力取引市場の整備ができていない。技術的な問題ではなく政治 的な問題か。 A.まさしく政治の問題になる。再生可能エネルギーの導入も電力価格の高い時にやって いる。離島や無電化の地域は電力価格が高いので、再生可能エネルギーは導入しやす いと思う。しかし、全体に拡大させようとするならば、システムやインフラをしっか り整備していく必要がある。また地域の資源も積極的に利用していけば良い。雪国で あれば融雪等の利用を、温泉やバイオマス等では熱量の利用を、それぞれ仕組みとし て考えていけば良い。インフラの整備ができれば、色々な発電方式が使えるようにな る。 C.株式投資がなかなか根付かない国で、電力取引市場を作るのは難しいかもしれない。 できれば、いろいろとメリットがあるのだが。 C.メリットは非常にある。最も大事なのは発電の指針ができることにある。これでコス ト削減の見える化も可能。これが見えない中で、スケールデメリットや費用対効果と なると、難しい。 C.電力取引市場の創設まで視野にいれると、2~3 年以内の実現は難しくなる。当プロジ ェクトの目的である小規模・自律分散型をどう作るのかを優先しつつ、電力取引市場 やスマートグリッドを念頭において進めていきたい。 C.風力と冷凍・冷蔵庫の関係は、漁港・漁村地域には使いやすい。冷蔵庫は電力を使う 一方で冷熱としてエネルギーを溜めておくこともできる。発電した電気を売電するか 冷蔵に使うか、その時々で判断すれば良い。冷凍・冷蔵庫のある漁港に自然エネルギ ーを導入するのは有効だと思う。 冷凍・冷蔵庫の蓄熱量は相当のもので、蓄電池のようなバッファになる。ただ現状 では、波崎のように風力発電をしていても、冷凍・冷蔵庫を利用する発想にはならな い。ドイツに先行されている。 また、水産業としてみた場合、漁獲物として規格化と数量を揃えることが必要にな る。それができず、買い叩かれている側面もある。積極的に大きな冷凍・冷蔵庫で、 水産物をストックし、安定的に品質提供、加工もセットにして考えていけばよい。水 産業は東京に集めても効率は上がらない。日本各地にある水産物資源や養殖の漁場を 利用していくことになるので、生産拠点を分散せざるを得ない。そのためにコミュニ ティの維持、トータルとしてのインフラの整備を検討していかなくてはいけない。 C.冷凍・冷蔵庫だけで全て調整できるわけではないが、系統への依存が減る。地域に蓄 電池併用すれば、冷凍・冷蔵庫の大きさもある程度調整できる。 C.六ヶ所村の事例のように、いざというときのライフラインとしての意味もある。 C.地域や地方都市の生き残りや国土保全、漁業の存続等は国の課題になる。国も電力取 引市場を積極的に取組むことになっている。これを踏まえつつ、当プロジェクトの推 進を行っていく。 (4) ベストミックス検討について 資料 3-3 を用いて、事務局より説明が有り、大要として以下の議論があった。 C.古仁屋漁港は、冷蔵・冷凍庫が事務所の荷捌き所に入っているのかもしれない。事務 所と冷蔵・冷凍倉庫が一体になっている漁港も多く、電力利用が分けられていないの かもしれない。当漁港の製氷所はあまり大きくないが、マグロも扱っており、養殖も ある。第 4 種の小さい漁港で、電力消費の絶対量からしてみると、大きいとは思う。 (5) 平成 25 年度報告書の検討 資料 3-4 及び各委員準備資料を用いて、各自より説明が有り、大要として以下の議論が あった。 C.座長の嵯峨先生には、本プロジェクトの趣旨・意義を書いていただき、各委員はそれ に沿って分担部分を書き進めていき、報告書をまとめていく。 Q.漁村・漁港地域に風力を導入する場合、在来の水平軸型の巨大化路線ではなく、鉛直 軸型もありえるか。 A.鉛直型にすればコンパクトに収まると思う。 Q.報告書で取り上げる再生可能エネルギーは海洋エネルギー以外も幅広く抑えて欲しい。 A.宮崎委員には海洋関係の再生可能エネルギーを担当していただき、事務局では地熱、 小水力、太陽光等の再生可能エネルギーを担当する。 Q.各分量はどれくらいか。 A.テンプレートをご用意し、それに沿ってそれぞれ 10 枚程度と考えている。 C.3 年目の FS、そして小規模・自律分散型の自然エネルギー導入実現に向けて進んでい きたい。モデル地域として、2 カ所、函館ともう一地域を取り上げたい。また、成果を 市民や漁業者にも知らせしめていきたい。適切な時期に、ワークショップやミニシン ポジウムをモデル地域でかいさいしていきたい。函館では、2014 年 6 月に国際水産・ 海洋総合研究センターが開所するので、これとも連携していきたい。 (一社)海洋産業研究会 平成 25 年度東京水産振興会調査研究事業 「漁村・漁港地域における自然エネルギーを利用した振興策の検討」 第 3 回委員会出席者名簿(敬称略・順不同) <委 員> 座 長 嵯峨 直恆 北海道大学大学院水産科学研究院 三浦 汀介 北海道立工業技術センター長 宮崎 武晃 (一社)海洋エネルギー利用推進機構(OEAJ)理事 山家 公雄 エネルギー戦略研究所㈱取締役研究所長 和田 時夫 (独)水産総合研究センター理事 中原 裕幸 (一社)海洋産業研究会常務理事 <(一財)東京水産振興会> 渥美 雅也 (一財)東京水産振興会専務理事 大西 (一社)海洋産業研究会研究員 (事務局) 学 第 3 回視察会(大分) 1. 概要 日時 平成 26 年 2 月 25 日(火) -26 日(水) 行程 2 月 25 日(火) 12:30 大分空港集合・出発 14:00~15:00 九重観光ホテルの地熱発電施設の視察 2 月 26 日(水) 10:00 大分県漁業協同組合・佐賀関支店の視察 14:00~16:00 エネフォレスト株式会社の視察 視察参加者(敬称略) 嵯峨直恆、三浦汀介、宮崎武晃、山家公雄、和田時夫、渥美雅也、中原裕幸、大西学 2. 各視察・訪問の報告 2.1. 九重観光ホテル 2.1.1 視察概要 ご対応者 九重観光ホテル 2.1.2 B/T 主任 蔵本 義煕 様 意見交換 (1) 地熱発電の概要について (当 方)当地熱発電について簡単に紹介願いたい。 (ホテル)平成 10 年に運転開始した。生産井は 2 本ある。1 本目は 150 度・350m の深さ、2 本目は 150 度・400m の深さとなっている。両方の生産井を合流させて発電している。これらの生 産井からの蒸気量は 1 時間あたり 13 トンになる。タービンは 8,000rpm、減速機で 1,800rpm まで落として発電している。出力は 990kW になる。蒸気の取込みは、上方から真空ポンプ で引き寄せて行っている。井戸によって、熱水のほうが多い場合もある。 (当 方)冷却はどうか。 (ホテル)冷却水として、600t/h が必要になる。温度的には 20 度前後だが、夏だと 28 度くらいにな る。蒸気も循環させて利用している。 (2) 導入経緯 (当 方)地熱発電を導入するきっかけは。 (ホテル)この地域は温泉が豊か。元々暖房熱等で利用していたのを地熱にも使えないか、となった。 (当 方)地熱発電に対して、周囲の反対はなかったのか。 (ホテル)周囲から反対はあったと聞いている。最終的には先代社長の度胸で事業化までこぎつけた。 (3) 地熱発電の操業実態について (当 方)稼働率はどれくらいになるのか。 (ホテル)2013 年末に長期間停止し、修理・交換を行った。ここ 2~3 年の平均でいうとだいたい 90~95%くらいの稼働率になっている。日単位では変化はないが、年単位でみると出力は長 期的に低下する。 (当 方)汽水分離や蓄電池はどうなっているのか。 (ホテル)汽水分離で、小石などの異物を排除している。蓄電池は非常用電源用として使っている。 この他、蒸気圧力は生産井の元で 12~13 気圧くらい。発電する場で 2 気圧くらいになる。 (当 方)メンテナンスはどのようになっているのか。 (ホテル)タービン前の入口にゴミが溜まる。これが原因で出力が落ちるので、3 年に一度は止めて 掃除している。また、冷却水にヘドロが溜まるので、これを落とすのにタービンを止めるこ ともある。また、電気関係の部品において、耐腐食性のものを選ぶ。 最近は、蒸気が減ってきている。次を考える必要があるものの、温泉法の兼合いで、簡単 に生産井の数を増やせない。 また、井戸に対する補助金はあるものの、設備関係についてはない。 (4) FIT 等について (当 方)これまでの売電状況についてお聞きしたい。 (ホテル)H24 年度から FIT の認定を受けている。それまでは余剰電力買取制度(RPS)であった。 RPS では、夜間が 4 円代/kW、昼が 6 円代/kW での買取価格だったので、とても苦労した。 FIT では収支均衡以上で運営できている。FIT 終了以降についてもいきなり半分以下の価格 になることはないと希望的に観測している。いずれにしても、FIT に適用しなければ更新で きなかった。 (当 方)FIT での売電状況はどうか。 (ホテル)発電量は 800kW ちょっとある。真空ポンプ等をつかっているので 200kW くらい消費して いる。ネットとしては 500kW 超を売却している。需要地点の場合、仕組み上、差分量しか 売れない。できるだけ売電できるよう目指している。柵等の明確な遮蔽物を設ければ全量売 電できるというが、人の往来、経営者等も考慮されるので簡単ではない。 (5) その他 (当 方)周辺の地熱発電の動きとして、中央電力が熊本県でバイナリーによる発電を計画しており、 進展が早そう。当方と同じように温泉井戸の活用になる。杉乃井ホテルではメーカーを富士 電機に変えるという話がある。大分県のターボフォレストによる湯煙発電は 30~50kW の規 模で何かに使えるかもしれない。 2.2. 大分県漁業協同組合・佐賀関支店 2.2.1 視察概要 ご対応者 大分県漁業協同組合・佐賀関支店 支店長 坂井 伊智郎 様、他数名 大分県農林水産部漁港漁村整備課 副主幹 末永 哲也 様 2.2.2 意見交換 漁協および大分県より、 「大分の漁港」 、 「佐賀関漁港 水産物流通機能高度化対策事業」 「大分県の農 林水産業」 (平成 25 年 7 月)を用いて、概要説明。大要として以下の意見交換があった。 (1) 佐賀関での漁業状況について (当 方)水揚げされた魚は、どのように価格決定しているのか。 (漁 協)生け簀の魚を目測し、仲買人か、漁協が買い受けている。伝票に単価を記載し、組合員と 取引する。これが組合員の収入になる。その後、仲買人ないしは漁協が都市の市場等に販売 する。 (当 方)魚の最終的な価格は都市の市場で決まるのか。 (漁 協)その通り。市場の販売価格が漁業者からの買取価格を下回ると、仲買人・漁協の損になる。 買取は仲買人と漁協が競争して買い取る。漁協は昭和 63 年に仲買人業務を開始したが、こ の仕組は大分県で佐賀関支店だけになる。 (当 方)漁協が仲買人業務を開始した以降の販売価格はどうか。 (漁 協)昭和 63 年当初、サバの価格は 700~800 円/kg 程度で地元の人しか食べなかった。福岡・ 北九州、大阪、東京でキャンペーンし、サバが生で食べられるという評価を得て、ピーク時 では 5,000 円/kg くらいまで価格が上がった。 (当 方)現在の経営状況はどうか。 (漁 協)視察に訪れる方からは豊かになったのではないか、と言われるが、そうでもない。一本釣 りのため、数量は伸びないので、高所得にはならない。総水揚と組合員数からみれば、一人 あたり 300 万円に届かない。 (当 方)一本釣りにこだわっているのは資源保全や価格等の観点か。 (漁 協)それが大きい。元々一本釣りは佐賀関で昔からやっている。稚魚が減るので、刺し網等の 大量漁獲につながる漁法は制限をしている。 (当 方)漁獲物の流通形態はどうか。 (漁 協)現在は、鮮魚のみとなっている。昔は活魚でも出していたが、価格がピークの 6 割になり、 コストに見合わなくなった。出荷当日の朝にしめて、シャーベット氷に漬け、飛行機で輸送 する。 (2)佐賀関における再生可能エネルギーの導入可能性について (当 方)佐賀関支店の漁港において、再生可能エネルギー導入の検討状況はどうか。 (漁 協)漁港のエコ化について、水産庁に相談したことはある。現況施設の屋根は、太陽光パネル 設置できる構造にしている。ただし、最も肝心な点は費用対効果を出せるかどうか。消費者 のニーズに加え、衛生やエコといった点で付加価値を出せるかどうかが問題。エコ化、ある いは売電による商業化が成立するのか、また漁協として水産物の漁獲・販売だけで継続でき るのか、漁協としては検討中。 (当 方)災害時の電源対策の一つとして、漁船の電化・蓄電構想についてはどうか。 (漁 協)発電機の機能を備えた漁船は有る。ただし、高齢化の進展もあり、夏季に発電機を漁船か ら外すことも多い。そのため、最悪の場合の代替電源としての機能はあり、漁船の電化・蓄 電化には積極的でない。そもそも組合員が気にするのは漁船コスト削減で、不必要な重量物 は積みたくないという意識も強い。 (当 方)この地域の自然エネルギーの特徴はどうか。 (漁 協)佐賀関でも風況調査を行った。対岸の四国の佐田岬は風況が強いが、こちらだと風力は向 いていないという結果であった。一方で、海流は早く潮流発電の可能性はある。ただし、佐 賀関では急流の場所が漁場となるので、発電機の規模にもよるが、設置場所と漁場の調整が 必要になる。場所が重複するなら導入はできない。 (当 方)潮流の測定結果等はあるか。 (漁 協)一昨年まで地元の水産関係者が浮桟橋に水車を付けて自家発電をやっていた。止めた原因 は海水ということもあり、メンテナンスの維持コストが掛かり過ぎるということであった。 (3) その他 (当 方)佐賀関支店の漁港施設における電力消費量をお教えいただきたい。 (漁 協)可能な範囲で対応する。 (当 方)当該漁港に浮体式係船岸を導入した経緯をお教えいただきたい。 (漁 協)一本釣りおよび活魚販売という現状を踏まえて、当時の荷捌き所では衛生管理上の観点か らあまりよくなく、新たな付加価値を加えるためにも浮体式係船岸を導入することにした。 特色ある漁業として、水産庁から承認を受けた。 (当 方)一本釣りの漁場はどのようなところになるのか。 (漁 協)潮の流れが早い日にあわせる。流向・流速も変わるので、あとは経験。 (当 方)一本釣りの漁船はどのようなものが使われているのか。 (漁 協)メーカー船で一般的なものになる。 2.3. エネフォレスト株式会社 2.3.1 視察概要 ご対応者 エネフォレスト株式会社 代表取締役 木原 倫文 様 2.3.2 意見交換 エネフォレスト社より製品資料等を用いて概要の説明があり、大要として以下の意見交換があった。 (1) 小水力導入における行政上の課題について (当 方)小水力発電で技術的問題はほぼ無いとのことだが、行政上の許認可・手続等の問題が大き いということか。 (エ 社)その通り。平成 25 年度から小水力も県の許可制から届出制に変わったが、届け出た後に 色々な障害が生じる。例えば、大分県では商工労働部がバックアップしてくれるが、河川管 理の土木建築部からはストップがかかる。静岡県では、再生可能エネルギーの導入マニュア ルがあるので、これをわが県でも作成して欲しいと知事に陳情している。技術があっても行 政でストップしてしまう。 (当 方)規制撤廃や緩和による危険やリスクや水利権的問題はないのか。 (エ 社)何ら問題は無い。問題がないような所で問題だと指摘される。河川課の解釈でどうとでも なるような感じを受ける。慣行水利権を持っていてもなかなか進まない。 (2) 小水力導入における各留意点について (当 方)中小水力発電におけるゴミの対応はどうか。 (エ 社)水力発電の形式にもよるが、スクリーンを置く場合、水路を二股に分ける場合等がある。 清流発電の場合だと、ブレードの回転で草を飛ばす。製品からいえば、大分県日田市女子畑 の上掛け水車では、ゴミ問題は気にしなくてすむ。その代わり効率性は 60%と多少落ちる。 熊本県阿蘇市山田のプロペラによる発電効率は 80%ほどになる。現在、上掛け水車で、水位 に関係なくプロペラが回るように工夫し、特許を申請している。 (当 方)清流発電の配置は単体のみか。 (エ 社)水路の幅次第では横に並べることもできる。縦に並べる場合、流速次第で配置する間隔が 決まる。工場排水でも利用することができる。一定の流水量があればどこでも設置は可能。 稼働率はほぼ 100%になる。 (当 方)発電が安定しているなら、ベース電源として利用可能かもしれない漁村・漁港地域のスマ ートグリッドに冷蔵庫を組合せれば売電しなくてもできるかもしれない。 (エ 社)電力会社の場合、効率が重要な課題となる。ゴミを分けた水で発電するので、メンテナン スもそれほどの頻度は必要ない。農業用水での発電の場合、稼働率をいかに上げるかが問題 になる。地元の企業なら、現場の問題をすぐに解決できるし、メンテナンスもすぐにできる。 (当 方)系統に接続する場合、一定の出力が必要になるので、自家消費でもよいかもしれない。 (エ 社)自家消費であれば 4~5kW あれば十分だと思う。福岡県の糸島で導入することになってい るが、水量の関係で 3~4kW の出力になる見通し。水力は 24 時間稼働するので、同じ定格 でも太陽光発電の 4 倍発電できる。 (当 方)小水力で利用するタービンはどのように選択するのか。 (エ 社)地形によって異なる。ある種のテーラーメイドになる。例えば人吉の場合、農業用水での 発電になるが、灌漑期と非灌漑期で水量が異なる。そのため、水量に変化に応じた工夫とし て、ロボシリンダー付きの流速調整機能を備えている。 (3) 経済効率性について (当 方)ビジネスとしての小水力はどうか。 (エ 社)清流発電はなかなかペイしない。小水力なら大手の半分のコストでできる。大手の場合、 どうしても経費がかかる。また、地元ならすぐにメンテナンス等にも対応ができる。地元に 繋がりがあれば、ネットワークで安く製造もできる。地域の有力な産業にもなる。 (当 方)FIT での買取価格単価を前提にした場合、投資回収期間はどれくらいか。 (エ 社)11~12 年で回収可能になる。山の沢水の流速でも利用できると思う。その場合、自家消費 で、安価にできる。FIT の場合、電力会社に売電するに当たり、電気の質を確保するために、 パワーコンディショナーの費用で少なくない額が必要になる。 (4) その他 (当 方)製品の製造も御社で全て製造しているのか。 (エ 社)タービン関係はターボブレイド社にお願いしている。タ社はタービン技術に相当強みを持 っており、マントル掘るタービンも作っている。地熱の湯煙発電でもその技術力が活かされ ている。協力企業で一緒にやらしていただいている。 (当 方)小水力に関係して現在取り組んでいる課題があれば教えていただきたい。 (エ 社)現在は、1 台の発電機に対して 1 台のパワーコンディショナーを付けている。これを、3 台に対して 1 台にしたい。各台で回転数が異なるが、それを 1 台でコントロールしたい。熊 本県阿蘇市山田は、小水力と太陽光の組合せでハイブリッドで発電しているが、それぞれの パワーコンディショナーを付けて、系統は別々で売電している。本当は一緒にしたい。 写真 3- 1 地熱施設の見学 写真 3- 2 地熱施設の管制 写真 3- 3 地熱施設の全景 写真 3- 4 冷却施設 写真 3- 5 佐賀関漁協での調査 写真 3- 6 佐賀関漁協の施設見学 写真 3- 7 浮桟橋の様子 写真 3- 8 エネフォレスト社での調査 《本書の無断転載、複写、複製を禁じます。》 平成 26 年3月 31 日発行 漁村・漁港地域における自然エネルギーを利用した振興策の検討 -平成 25 年度報告書- 発 行 :一般財団法人東京水産振興会 〒104-0055 東京都中央区豊海町 5-1 TEL:03-3533-8111、 編 FAX:03-3533-8116 集 :一般社団法人海洋産業研究会 〒105-0003 東京都港区西新橋 1-19-4 TEL:03-3581-8777、 難波ビル 7 階 FAX:03-3581-8787
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