Vol.5 No.4

environment Update
−海外環境関連情報誌−
第 28 号
Vol.5
No.4
(2003.11)
CONTENTS
WEEE
&
RoHS
指令の最新動向
WEEE & RoHS
指令実施を巡る最近の動き
<関連資料>
RoHS 指令禁止物質の検査方法に関する JBCE の意見書
2
7
ブリュッセル短信
欧州の新しい化学品規則
NEC Europe Ltd. Brussel Office 杉山 隆
17
IPP
包括的製品政策−
欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
20
講演録
EU の環境関連法規則の最新動向について−
JBCE 環境委員会 委員長 杉山 隆
41
モニタリング
欧州
米国
・連載 欧州環境規制動向
〜 在ブラッセル弁護士モニタリング情報[29]
・連載 米国における環境関連動向
〜 在ワ
シントンコンサルタントによるモニタリング情報
2[4]
50
68
中国〖10〗「廃電池汚染防止技術政策」の公布:
−『廃電池の回収・処理費管理弁法』に向けた第 2 段階
−リサイクルの役割、コスト負担問題は尚不明確
74
組合員のページ
オムロンの環境取り組み
オムロン株式会社 経営
総務室 品質
環境部 参事 島田 誠司
環境・安全グループニュース
環境・安全グループ担当委員会活動の状況
事務局便り
85
87
82
WEEE & RoHS 指令実施を巡る最近の動き
環境・安全グループ
WEEE & RoHS 指令に関しては、TAC(技術適用委員会)において検討が続いているが、去る 10
月 24 日に英国 DTI(貿易産業省)主催により TAC ワークショップ(非公式会議)が開催された。
その結果を DTI がまとめた非公式メモを入手したのでその概要を紹介します(原文は英国 DTI の
ホームページ http://www.dti.gov.uk/ で閲覧できます)。また、ドイツ及びフランスにおける国
内法制化状況および RoHS 指令検査方法に関する JBCE の提案についてブラッセル事務所から報
告があったので以下に紹介します。
1. TAC ワークショップ結果概要
この会議は、主として情報交換と加盟国の状況に関する意見交換を目的として開催された。議論
されたテーマとそれぞれの議論の概要は以下の通り。なお、このワークショップは、情報交換を
目的とした非公式会議とされていることから、ここで合意されたとされる事項がどの程度拘束力
を持つのかは必ずしも明らかでない。
(1) ファイナンス保証と生産者責任
費用負担の保証には、前払い制度、封鎖勘定または保険基金の選択肢がある。EU 内では多くの異
なるシステムが共存することが出来、またそれぞれ共用可能とすべきという点について合意され
た。
現加盟国の約 3 分の 1 は visible fee を使用する意向だが、国によってすべての製品に適用するか
リサイクルしにくい製品のみに適用するか対応は国によって異なる。フィーの計算において加盟
国により異なる基準が使われた場合、価格の差異が生じて市場歪曲効果をもたらす結果となろう
ということが指摘された。
(2) 「生産者」および「上市」の定義
「生産者」の定義については、特に特定の産業分野において問題があり、例えば異なるメーカー
品で構成される製品は特定の機能を満たすためにシステム統合者によって組み立てられるが(例
えばエアコン、スイッチ、サーモスタット等からなるエアコンシステム)、このような場合、シス
テム統合者を生産者責任下での生産者とすべきまたはシステムを構成するそれぞれ異なる機器の
メーカーを生産者とすべきという結論が導かれ得る。これについて、加盟国の中には、中小企業
である場合が多いシステム統合者に生産者責任を負わせることに消極的なところがある。
「上市」の定義については、指令の実施に関するガイダンスである欧州委員会の Blue Book で
使われている定義、すなわち製品が工場から出荷された時点または輸入により EU 市場に入った
時点が示唆された。
(3) 小売店の引き取り
各加盟国において現存するまたは計画されている小売店の引き取りに関する条項について情報交
換が行われたが、店内引き取りと新製品配達時の回収を組み合わせるという方法が多い。店内引
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WEEE & RoHS 指令実施を巡る最近の動き
き取りをする小さな小売店の場合、WEEE の自治体集積所に無料で返還することを許される。
(4) フリーライダー
すべての加盟国にとってフリーライダーの制御が重要であり、生産者の登録が重要な役割を果た
す。健全な登録および当局とステークホルダーの協力が重要であり、ステークホルダーが未登録
の生産者を報告するように奨励すべきである。このアプローチは、執行を広く知らしめることお
よび重い罰金を課すことと相俟って、フリーライダーの抑止に効果的であることが WEEE 法令の
ある加盟国において証明されている。
(5) RoHS の執行
指令を遵守しているかどうかの検査に関して EU ワイドの基準が必要であることが合意された。
加盟国の中には、CEN または国家の規格機関を通じた通常の規格作成プロセスは時間がかかりす
ぎ、少なくとも暫定的に加盟国間で合意することが望ましいと認識している国もある。
(6) 小売店の許可と WEEE の保管
大多数の加盟国は WEE を回収する小売店が許可を取ることを要求しないとしているが、ある加
盟国は一定の回収水準を越えた場合には許可を取らなければならないという考えである。
WEEE の保管に関連して、小売店は処理施設とみなされるかどうかについては、小売店は処理セ
ンターとみなされず、従って付属書 III の要件(WEEE の保管場所、処理場に関する要求事項)に
服する義務はないということを加盟国は一般的に合意した。
(7) 処理・プロセスの基準
加盟国は、特定の処理やリサイクル技術を指定することについては、新たな方法を発展させるう
えで障害となるとして、消極的なようである。処理基準を確立するためには、EU レベルまたは国
家レベルでの何らかのガイダンスが必要であることについて合意された。例えば、CRT からリン
光物質コーティングのすべてを除去する必要があるのか、あるいは 99%とか 95%なら受け入れ
可能なのかという問題がある(コーティングのすべてを除去するのはきわめて困難でありコスト
もかかるというコメントあり)。
(8) 再生・リサイクル率
大多数の加盟国は、個々の生産者に再生・リサイクル率を課すことには賛成していない。すべて
の品目に再生・リサイクル率を計算することは煩わしく、望ましいものでないと考えられており、
加盟国は、サンプリングまたはプロトコールをベースとしたアプローチを行うことを好んでいる。
(9) B2B 関連の費用負担
業務使用から一般家庭使用に移った製品の費用負担を誰が負うべきかについては、最終保有者が
費用負担すべきであるという意見と生産者のブランドがついているので生産者が費用負担するこ
とにした方が容易であるという意見に分かれている。
2. 加盟国法制化
WEEE & RoHS 指令の加盟国法制化に関して、10 月 7 日にデュッセルドルフで開催されたセミナ
ーにおけるドイツ産業省の説明、および 10 月 13 日にパリで開催されたフランス産業省と
JETRO・日系企業との会議におけるフランス側の説明があった。両国の法制化に対する現在にお
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WEEE & RoHS 指令実施を巡る最近の動き
ける考えや法制の概要は以下の通り。
A. ドイツ
(1) 法制化のスケジュール
・ 2004 年初頭 法案を産業界に配布
・ 公聴会を経て閣議に → 閣議法案を欧州委員会に伝達
・ 議会(連邦衆議院および邦議院)に提出
(2) 法案の形態、考え方
・ WEEE と RoHS は別の法律となろう。ただし、スコープ(対象製品の範囲)は一致させた
いとの考え。
・ 家庭から回収地点までは自治体の責任(生産者は回収地点以降に責任)
。
・ ギャランティー(保証)については、経済原理に任せ、法律で縛る予定はない。
・ 関係業界団体による WEEE National Clearing House の設立。ここでは処理やリサイクル
自体は行わず、データ管理、資金管理、処理・リサイクル・システム運営などのマネジ
メントが主体の模様。
B. フランス
(1) 法制化のスケジュール
・
・
・
・
2003 年 9 月 25 日: 政令案(第 4 版)作成
2003 年中:
政府としての見解を取りまとめ
2004 年上半期:
政令(Decree)案を国務院に送付(⇒議会での審議なし)
その後、修正、勧告等を経て正式法に
(2) 第 4 草案の内容および仏産業省の考え
・ WEEE と RoHS を一体とした法制とする。
・ 対象製品の範囲
TAC では、ポジティブリスト(対象製品を明示したリスト)、ネガティブリスト(対象外
製品を明示したリスト)、対象か対象外かを判断する基準の 3 つのアプローチについて議
論中だが、フランスは自国の考えを TAC に提出の予定。
消耗品は対象外の方向で議論中。
・ 生産者の定義
製造者と流通業者双方のブランドが付いている場合、現実には両者の営業的な話し合い
になることが多いのではないか。
それぞれのブランドをつけたコンポーネントをアセンブラーが組み立てる場合、コンポ
ーネントの製造者とアセンブラーのどちらが義務を負うか混乱が生じる可能性があるが、
監視機関によるチェックを行えば対応できるのではないか。
生産者と搬入者を区別する。EU 域外からフランスに輸入する者を輸入者、EU 域内の他
の加盟国から搬入(introduction)する者を搬入者という。
電子商取引による製品については、輸送した業者を生産者とする意見や消費者を生産者
とする意見などあるが、結論は出ていない。
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WEEE & RoHS 指令実施を巡る最近の動き
・ WEEE の回収
現在フランスには地方自治体のもとに WEEE 回収拠点はいくつかあるが、これは法的義
務で行っているものではなく、また地域によっては拠点が不足しているところもある。
そのため、地方自治体を含めた関係者で解決していかなければならない問題と考えてい
る。
家庭用以外の WEEE について、生産者は流通業者や自治体が引き取らなかった機器を回
収する。
・ ユーザーおよび処理業者への有害物質情報の提供
処理への情報提供は、RoHS で禁止された 6 物質に限定しているが、ユーザーへの情報提
供には特に 6 物質に限定していない。
・ 一般家庭以外からの WEEE における historical waste の費用負担
すべてユーザーが負担。
(WEEE 指令第 9 条修正案では、新製品により代替できる historical
waste がある場合、新製品の生産者が費用負担し、それ以外の場合には最終保有者が費用
負担することになっているが、加盟国は、代替策としてユーザーに負担させるよう規定
できる。)
・ リサイクル・システム/団体の許可要件
リサイクルは企業独自か団体かにかかわらず許可が必要。
・ 登録
生産者、流通業者は政府に登録し、No.をもらう。
・ 流通業者のチェック
流通業者は生産者が登録しているかどうかをチェックする。登録していない生産者の製
品を扱う場合は、流通業者が本法律でいう生産者になる。
・ 通達(Arretes)で出されるものは次のものとなる予定
①対象・非対象製品リスト、②ギャランティー要件およびリサイクル・システム団体、
③マーキング要件、④回収・再生ターゲット、⑤生産者からの情報と報告、⑥システム
許可手続き・要件、⑦登録の実施および要件
3. RoHS 指令禁止物質の検査方法に関する JBCE の提案
先般、JBCE(事務局:日本機械輸出組合ブラッセル事務所内)が RoHS 指令における閾値の意見
書を提出した際、使用禁止物質の検査手法を域内で統一すべきことを併せ述べたが、その後欧州
委員会から JBCE に対して検査方法について提案を出して欲しいとの要請があった。これを受け
て JBCE は環境委員会において検討を行ってきたが、去る 11 月 14 日、TAC メンバー(欧州委員
会および加盟 15 ヵ国)に対して検査方法に関する意見書を提出した(意見書コピーは、本誌 7
ページに掲載)
。
なお、本提案は政府の市場監視のための検査提案であり、企業の法令順守のための検査手法を提
案するものではない。そのため、検査方法には非破壊検査と破壊検査の二つの方法があるが、比
較的低コストで時間のかからない非破壊検査を基本とすることにしている。
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WEEE & RoHS 指令実施を巡る最近の動き
提案の基本的概念は次のとおり。
¾ 測定においては全般的にエネルギー分散型蛍光 X 線分析(EDXF)を使用することを提案。基
本的には以下の 2 段階で実施する。
① スクリーニング: ハンドヘルドの EDXF を使用して検査対象製品をスクリーニングにか
け、RoHS 不遵守、グレー、遵守の 3 つに仕分けする。
② 最終検査: デスクトップ型の EDXF で測定し、RoHS 不遵守、グレー、遵守の 3 つに仕
分けする。
¾ もし閾値が 1,000 ppm で決まったとした場合、ハンドヘルドの EDXF の誤差を例えば 20%と
仮定すれば、測定結果が 800 ppm を下回るなら明らかに遵守、1,200 ppm を上回るなら不遵
守とみなし得る。800〜1,200ppm のグレーに属する製品も遵守していると見なす考えも可能
であるが、当局が、グレー領域を狭めたい場合には、デスクトップ型の EDXF を使用できる。
同装置の測定誤差はハンドヘルド型よりは非常に小さく、例えば 5%とすれば、1,050 ppm 以
下を遵守領域と見なし得る。
¾ ただし、EDXF は PBB、PBDE および六価クロムについては、他の臭素も含めた全臭素および
他のクロムも含めた全クロムの測定結果しか出ないことから他の方法が必要となる。しかし
ながら EDXF もスクリーニングには適用可能であるのはいうまでもなく、グレーの臭素系難燃
剤については、非破壊検査の一種である FTIR(Fourier Transform Infra red Spectroscopy)に
より PBB、PBDE か規制されていない臭素系難燃剤かの区別が可能である。クロムについては
スクリーニングの後はもはや非破壊検査では六価クロムか三価クロムかの区別はできず、破
壊検査の中でも最も簡便な DIP テスト(Diphenyl – carbazide method)の利用を提案したい。
¾ なお、以上の検査は測定対象物の形状、厚さ等の種々の要素が測定値に影響を及ぼすことか
ら、この分野の専門家からなる standard committee を設置し、詳細について議論すべきであ
る。
☐
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14 November 2003
Dear members of TAC on WEEE & RoHS
We, Japan Business Council in Europe (JBCE) 1, are the organisation
representing Japanese companies with significant operations in Europe. Our members
are among leading multinational corporations in the world.
We strongly called for the Europe-wide uniform test method in the context of
RoHS maximum concentration values in our previous position paper dated 11, June
2003. This paper is mainly focused on our proposal of the harmonized test protocol for
the governmental market surveillance.
We would be more than happy if this paper could be of any assistance to your
discussion in the next TAC meeting .
If you have any questions, please feel free to contact our secretariat or myself.
Sincerely yours,
Takashi Sugiyama
Chairman, Environmental Committee
Japan Business Council in Europe
1
For details, including a list of its member companies, please refer to the following
website: http://www.jbce.org
Testing compliance with the RoHS substance ban
Japan Business Council in Europe (JBCE)
The Japan Business Council in Europe (JBCE) is convinced of the importance of carrying out
as much random testing as possible of electric and electronic products that enter or are made
available on the European market. Enforcement of the RoHS substance ban should not
remain just a statement of good intentions, but should be put in practice through systematic
testing of EEE which should be shared with all EU member states governments.
The RoHS directive prohibits lead, mercury, cadmium, hexavalent chromium (chrome VI),
and brominated flame retardants PBB and PBDEs from being used in EEE. Testing methods
to determine presence and levels of these banned substances differ from each other.
There are, however, a few concrete issues that need to be dealt with to enable testing to be
carried out in an efficient and meaningful way. In general, there are two types of testing
methods: non-destructive and destructive one. The former require much less cost and time
than the latter, and show enough accuracy for the concentration range higher than a few 10
ppm. Therefore, JBCE would like to encourage authorities to use the non-destructive methods
only, unless it is not possible to identify the banned substances such as the case of chrome VI.
A detailed explanation is given below.
1. Basic concept of inspection method for enforcement
For the inspection we propose to use the Energy Dispersive X-ray Fluorescence device
(EDXF) in general. The basic strategy is described below:
(1) Screening : Hand-held type EDXF inspection focuses on screening products into three
groups: non-compliant, gray area and compliant.
(2) Final test : desk-top type EDXF inspection is conducted to divide the products belonging
to the gray area into either non-compliant or compliant.
An example (see attachment 1):
If the measuring error of the hand-held EDXF is 20 % around the specified threshold
concentration range of 1000 ppm (0.1%), products with a banned substance with the
measured value below 800 ppm can be clearly considered as compliant, and those above
1200 ppm as non-compliant with the RoHS substance ban. Products in the gray area (800
ppm – 1200 ppm) should be considered as compliant. If authorities would like to narrow the
gray area, they can use the desk-top EDXF. If the desk-top EDXF has a margin of error, let
us say 5 %, then products with 1050 ppm or below can be considered as compliant.
Concerning two brominated flame retardants (PBB and PBDE) and chrome VI, the EDXF
detects different kinds of bromine as a total and different kinds of chromium as a total,
respectively. For distinguishing the banned substances from others, a further step is necessary
(see Chapters 3 and 4).
Please note that the various factors such as the shape, thickness and matrix of the target item
affect the measured values. Therefore, each detail should be discussed and standardized by a
standard committee that consists of specialists of this field.
2. Lead, mercury, and cadmium
For measuring these three substances the EDXF method is appropriate. There are the
hand-held type EDXF and the desk-top type EDXF. The hand-held EDXF can easily be used
on site to determine these substances in the concentration range around 100 ppm and/or 1000
ppm within a certain measuring error.
The desk-top EDXF is a little more expensive, but more accurate than the hand-held EDXF.
For measurements of small items it is more convenient. Furthermore, most of this type
equipment does not require any person authorized for using X-ray.
JBCE would like to propose that for the large items the first rough screening with the
hand-held EDXF should be followed by the more accurate measurements with the desk-top
EDXF. For small items the desk-top EDXF can be used from the beginning.
Attachments 2 and 3 show flow charts of inspection for lead in plastic and lead in metal,
respectively. These are typical examples which deviate from the general scheme shown in
attachment 1.
JBCE would like to encourage the authorities to consider the desk-top EDXF as the final
testing method in practice, allowing for a relatively low margin of error whilst still avoiding
destructive sample preparation using chemicals and much more expensive testing.
As mentioned in Chapter 1, any details should be discussed by specialists. We recommend
further to use a calibration curve with standard samples for determining the concentration.
This can compensate the individual differences of equipment.
3 PBB and PBDEs
The EDXF (both the hand-held and desk-top type) can only detect the presence of brominated
substances, and cannot distinguish between the banned PBB/PBDEs and other brominated
flame retardants such as TBBPA (Tetrabrombisphenol A). TBBPA is widely used, for
instance, in printed circuit boards that can be found in practically every electronic appliance.
Therefore, it would appear at first sight that only the expensive and time consuming
destructive method by chemicals with GCMS (Gas Chromatography/Mass Spectroscopy) is
applicable.
However, JBCE has come across an easy non-destructive testing method that can distinguish
between those flame retardants that are banned and those that are not: the Fourier Transform
Infrared Spectroscopy (FTIR). FTIR can identify the brominated flame retardant used, if it
is added to plastics with a concentration higher than 3 %.
In order to be effective and perform its function of actually preventing fire for a certain period,
at least 5 % (50 000 ppm) of a brominated flame retardant is needed in plastics. It does not
make any sense to use such flame retardants below this level, and EEE manufacturers indeed
never do so. Furthermore, two different flame retardants are usually not used together in one
plastic material, and PBB/PBDEs are hardly contained as an impurity in other brominated
flame retardants.
Therefore, if the brominated flame retardant is identified with FTIR as TBBPA(or other
not-banned brominated flame retardants), we can conclude that neither PBB nor PBDEs are
present in the measured plastics at more than the specified threshold concentration.
If the identification of different PBDE’s such as penta-, octa- or deca-BDE with the
concentration range of 1000 ppm are required, the GCMS method should be applied.
Attachment 4 visualizes the inspection strategy of brominated flame retardants.
Thus, to simplify the inspection JBCE would like to argue for generalised use and acceptance
of the FTIR test method in addition to the EDFX. Since FTIR is very sensitive to the
condition of the surface of the materials, any details should be discussed by specialists.
4 Hexavalent Chromium (Chrome VI)
Chrome VI is banned by the RoHS directive because of its hazardous properties. Chrome III,
on the other hand, has no toxic properties and is considered to be safe for use. Here, no
non-destructive methods seem to be available that can distinguish among chrome VI,
chrome III and metallic chrome.
For the screening, the EDXF can be used to know whether any chromium is present. If the
concentration of chromium is significantly low, the product will definitely comply with RoHS.
If the concentration of chromium detected is higher than the specified threshold, a further test
is necessary to distinguish whether chrome VI is involved.
For this purpose JBCE would like to propose the diphenyl-carbazide method (a kind of colour
test), which is one of the simplest methods among the destructive tests. The suspected part
should be dipped in water and one should wait long enough to dissolve chromium ions. If the
chrome VI is contained in the solution, it reacts with diphenyl-carbazide and shows red colour.
The concentration can be measured with a spectrophotometer.
Attachment 5 illustrates the inspection method for Chrome VI.
Since chrome III can be changed to chrome VI during elution, the condition of elution is very
critical. Details should be discussed by specialists.
5 Conclusion
As a summary we propose:
1. In principle, only non-destructive methods should be applied.
2. For lead, cadmium and mercury EDXF is sufficient.
3. For PBB/PBDE’s the combined use of EDXF and FTIR is practical.
4. For hexavalent chromium, the diphenyl-carbazide method (a colour test) is the simplest test
after screening with EDXF.
We would like to emphasize the importance for setting a standard committee to discuss any
details, because there are many factors which should be taken into account. Furthermore, it
should be discussed how to treat, during inspection, exempted applications in the Annex of
RoHS directive
.
JBCE would be happy to collaborate with you for establishing efficient inspection methods as
a member of the standard committee.
General flow chart
Attachment 1
hand-held type ( EDXF)
a = 0.2 x TC
(The factor 0.2 is an example only)
< TC – a
TC-a ~ TC+a
OK
> TC + a
desk-top type ( EDXF)
Failed
b = 0.05 x TC
< TC + b
OK
>/= TC + b
(example)
Failed
Abbreviations
EDXF: Energy Dispersive X-ray Fluorescence
TC: Threshold Concentration
(Remarks)
1. The factors which define the values a and b depend on the measuring errors of the
EDXF equipment. As examples factors of 0.2 and 0.05 for the simple measurements and
for the more accurate measurements, respectively, are used.
2. If the shape and/or matrix of the target item are not ideal, the detected value is
usually lower than the real concentration.
3. If the measurements with EDXF are not accurate enough, or not specific enough,
other methods should be applied.
4. The basic chart shows a very general strategy only. Each elements with different
environments require different scheme.
Example: Lead in plastics
Attachment 2
Hand-held type( EDXF)
< 1200 ppm
>/= 1200 ppm
Desk top type( EDXF)
Failed
Thickness adjustment
> 1mm PVC
> 2 mm ABS
> 2 mm Silicon Rubber
…….
< 1050 ppm
OK
>/= 1050 ppm
Failed
Example: Lead in metal (except soldering alloy)
Hand-held type( EDXF)
< 1200 ppm
OK
>/= 1200 ppm
Desk top type( EDXF)
Iron
c=3500+350
Aluminium c=4000+400
Cupper c=40000+4000
Other metal c=1000+100
< c ppm
OK
>/= c ppm
Failed
Attachment 3
Example: PBB, penta-BDE, octa-BDE in plastics
Attachment 4
EDXF
(Total Br meas.)
Total Br concentration
< 1200 ppm
1200 ~ 30,000 ppm
>/= 30,000 ppm
(Practically no such a case.)
Meas. with FTIR
*
OK
**
not PBB
not PBDE
deca-BDE
penta-BDE
octa-BDE
PBB
OK
Failed
Meas. with GC/MS
penta-BDE
octa-BDE
< 1100 ppm
OK
>/= 1100 ppm
Failed
Note*: If the plastic is acrylic, FTIR method cannot be applied. Go to GC/MS.
**: This is only the case when penta-/octa-BDEs are banned and deca-BDE is not banned.
Abbreviations:
FTIR: Fourier Transform Infra Red Spectroscopy
GC/MS: Gas Chromatography/Mass Spectroscopy
Example: Hexavalent Chromium
Attachment 5
Hand-held type (EDXF)
(Total Cr meas. on galvanized surface) *
Total Cr concentration
<1200 ppm
>/= 1200 ppm
Diphenyl-carbazide method
Cr6+ concentration
< 1100 ppm
OK
>= 1100 ppm
Failed
* Document check necessary: on which materials it is galvanized?
(For example, stainless steel contains Chromium metal.)
** During water elution some Cr3+ are converted to Cr6+
ブリュッセル短信
ブリュッセル短信
欧州の新しい化学品規則
JBCE 環境委員会委員長
NEC Europe Ltd. Brussels Office
杉山 隆
欧州の新しい化学品規則のプロポーザル、10 月 29 日に欧州委員が承認
欧州の新しい化学品規則は、登録(Registration)、評価(Evaluation)、認可(Authorization)、
化学品(CHemical)の頭文字をとって、REACH と呼ばれる。所謂、既存化学品といわれる 10
万種類の化学品がリスクアセスメントもされずに販売されつづけていることが問題視され、欧
州閣僚会議で新しい化学品規則を作るように指示を出したのは 1998 年のことである。2001 年
には白書が出て、遂に 5 年の年月を経て今年 5 月にインターネットに規則のドラフトが発表さ
れた。そして 8 週間のコンサルテーション受付の期間に 7000 通近くの意見が、化学品業界、
その他の産業界、消費者、環境 NGO 等から寄せられた。
7000 通もの意見が 7 月初旬までに寄せられたことで、REACH は修正などに手間取り、しばら
くの間は欧州議会に送られることもないだろうという観測が広まった。7 月の中旬に入ると欧
州委員会の役人はバカンスに入り、バカンス明けの 9 月からスタートしたとしても 7000 通も
の意見を読みこなすのは並大抵の期間では終了しないであろう。10 月にようやく寄せられた意
見のサマリーができ、それに基づいて修正が行われて、12 月末までに欧州委員のコンセンサス
が得られればいいところだと思われたからである。実際、欧州の化学工業会の CEFIC などは、
これだけの数の意見が出たことに大いに力を付けられたようである。意見書を提出したのは、
化学品メーカーだけではなく、数多くの川下ユーザー、欧州連合以外の各国政府などにも
REACH に対する懸念が広がっていたからである。CEFIC の最大の戦術は、できるだけ法案成立
を遅延させることであった。元々REACH はいろいろと問題は多いものの、完全に葬り去ること
ができるものではないと読んでいた。そのあたりは、何とかして押しつぶそうとしてきた米国
政府の動きなどとは違う。関係者がこれだけの懸念を表明してくれば、当然それを無視する形
で無理やり欧州議会にプロポーザルを出すことは難しいと踏んだ。欧州委員会の中の企業総局
と環境総局の間の立場の違いなどもあり、プロポーザルの修正、妥協などには時間がかかると
見たのである。環境を担当するワルストラム欧州委員が、環境総局の化学品担当の職員に「夏
休みを返上して意見書を読みこなしてレポートを作成しろ」と指示しているという噂が流れて
きたが、単なるポーズ以外の何者でもないだろうとみた。
一方欧州議会のほうでは、来年 6 月の欧州議会選挙を控え、新しく審議に入る法案に条件をつ
けてきた。来年 5 月には新たに 10 ヶ国が欧州連合に加盟し、6 月には 25 ヶ国に広がった欧州
連合での欧州議会選挙が行われる。審議途中の法案がある程度の段階に達していない限り、こ
れらの新たに選ばれた議員達が来年の 9 月からまた改めて審議を始めることになってしまうた
め、今年後半の議長国であるイタリア政府は、新しい規則、指令などのプロポーザルは今年 10
月末までに欧州議会に提出されない限り、議長国としては取り扱わないと宣言した。つまり
REACH は 10 月末までに欧州委員会が欧州議会にプロポーザルを提出できなければ、実質審議
に入るのは来年の 9 月になり、1 年近く遅延することになる。CEFIC としては、7,000 通の意見
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欧州の新しい化学品規則
書が寄せられた段階で、1 年間の遅延がほぼ確定したと楽観視した。
ところが、9 月になって事態が急転することになった。修正されたドラフトがリークされてき
たのである。修正されたドラフトでは、JBCE が強く求めていた成型品の登録問題が、ほぼ JBCE
の主張通りに変わっていた。即ち、最初のドラフトでは
「成型品(articles)に使われる化学品が年間 1 t 以上使われ、使用及び廃棄時にかなりの量の
放出が見られる場合、その化学品を登録しなければならない」
とあったが、JBCE は、廃棄時の放出については予見困難で、且つ廃棄を管理する法案(例えば
WEEE)などでコントロールすべき問題なので、使用段階だけにするべきと主張。さらに使用
時に意図的に放出される化学品に限定するべきであるとしていた。意図的な放出というのは、
例えばインクリボンカートリッジのように、成型品の中に収められたインク(化学品)が、使
用時に意図的に放出されるようなものをさす。
修正されたドラフトでは、この JBCE の主張がほぼ全面的に受け入れられた。もっとも、放出
されることが予見される場合には登録が必要というような新たな条文が入ったので、全面的な
勝利というわけではないが、少なくとも、他の項目などもかなり産業界寄りの修正がかかって
いた。
いろいろな話を総合してみると、どうも夏休みの間に 7,000 通近くの意見書は目を通され、大
体 200 通近くの主な意見書が重点的に検討されたようである。その上で企業総局と環境総局に
よって修正が行われ、9 月 10 日には、リーカネン委員とワルストラム委員の間で、修正案につ
いてほぼ合意が得られたようである。欧州閣僚理事会が規則制定を求めてから 5 年も経ち、企
業総局と環境総局の間には、これ以上自分の意見に固執して対立を続けて法案提出を延期する
ことは許されないような状況に追い詰められていたようである。9 月 17 日には遂に欧州委員会
の中の内部回覧が始まり、企業総局と環境総局以外の関連部門との調整に入った。そして、9
月 25 日に環境 NGO のサイトに、修正版がリークされた。彼らにリークさせたのは当然欧州委
員会であろう。修正版の完成間近を印象付け、既成事実を積み上げようという意図だったよう
である。
この動きとは別に、9 月 20 日に突然ブレア、シュレダー、シラクの英、独、仏 3 首脳の緊急メ
ッセージが発表された。REACH は非常に官僚的で、非常に多額の費用がかかる割りには環境保
護への効果が薄く、産業界へ残すインパクトが余りにも大きい為、欧州の化学品工業会の国際
的な競争力の大幅低下が懸念されるとし、国際競争力を視点に据えた検討のし直しを求めるも
のであった。欧州連合を代表する 3 首脳の緊急メッセージで、REACH は当分の間お蔵に入るの
ではないかという一部の観測はあったものの、数日後に欧州委員会から、既にこの 3 首脳が懸
念を表明した最初のドラフトは大幅に改正されており、改正されたドラフトを見ればこれらの
懸念はなくなっているはずだというコメントが出た。そして、25 日に環境 NGO から修正され
たドラフトがリークされたのである。
その後、10 月 29 日に欧州委員の会合があり、REACH はそこで全欧州委員の合意を取り付け、
11 月 1 日には欧州議会に送付される段取りになっているという情報が流れた。ことである。既
に欧州委員会の中での合意は得られ、更に慎重派の急先鋒であったドイツ政府とも欧州委員会
は握ったという情報も流れてきた。化学品会社からの強いロビーングを受けているドイツ政府
も合意をしたのであれば、29 日のプロポーザル採択は決定的になる。ドイツ政府に対して、あ
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欧州の新しい化学品規則
る程度の譲歩が示されたと推測された。
さて、このような状況の中で、川下ユーザーの一部に 29 日の決定を阻止するべく、レターを
プロディ委員長当てに出すべきだという動きが広まった。
「既に提出した川下ユーザーの意見は、修正版にある程度反映されてはいるものの、依然とし
て川下ユーザーを対象とした BIA(ビジネスに与える影響度調査)が行われておらず、川下ユ
ーザーの懸念は払拭できていない。欧州議会へのプロポーザルの提出は、川下ユーザーの BIA
が終了するまで延期するべきである」
という主旨のレターを出そうということになったのである。このレターに JBCE や EICTA(欧
州情報通信家電工業会)も名を連ねるようにという誘いがきた。言い出しっぺは小職と仲のい
いロビーストであり、面子を潰したくはなかったが、この期に及んでまだ延期を主張すること
が政治的に得策であるのかどうかは非常に疑問であった。米国の産業界は、依然として政府を
動かして、REACH の成立を阻止しようと試みていた。欧州化学品工業会(CEFIC)も何とかし
て法案成立の遅延を図りたい。このレターはそれらの動きと連動したものと取った。
一方、欧州議会のほうは、環境委員会でイタリア社民党のサコーニ議員をラポーターとするこ
とを既に決定。グリーン党もオランダのドゥルー議員を影のラポーターに指名。最大会派の人
民党はオーストリアの女性議員を影のラポーターとする予定であったが、突然オーストリアの
大臣に任命されてしまい欧州議員から抜けたので、現在適任者を探しているといった状態で、
既に欧州議会内に、REACH 規則案を受け入れる体制が出来上がっていた。サコーニ議員は非常
に乗り気で、来年の 4 月までにはラポートを作成し、欧州議会選挙前にある程度の方向性を出
すところまで漕ぎ着けたいとして、勉強会をスタートさせて、11 月には欧州議会にプロポーザ
ルを提出するように求めていた。今更川下ユーザーが「BIA が終了するまでは遅延するべきだ」
と訴えたら、単に CEFIC の小間使いか、駄だっ子としてしか見ないであろうと推測された。29
日の REACH の合意は、川下ユーザーの意見ぐらいではひっくり返らないことは目に見えてい
た。効果の全くないレターを出して、ネガティブな印象を与えるよりは、欧州議会に送られた
時点で適切なポジションを作成して、どんどんとラポーターなどにアプローチした方がよっぽ
ど実りがあると判断。
ということで、JBCE はこのレターをサポートしないことにした。議長として、かなり強引に反
対意見を通した。JBCE がサポートしないというメールを出した頃、EICTA でも同様の検討が行
われ、何と彼らもサポートしないという意思表示を川下ユーザーの団体にしていた。緊急に集
まった HP、ソニー、NEC など 5 名のメンバーの投票結果は、反対 3、棄権 2 で、賛成に回る企
業もいなかった。更に追い討ちをかけるように、ドイツの情報通信工業会の BITCOM から、や
はりサポートしないというメールが飛び込んできた。この期に及んで、ポーズだけのつまらな
い悪足掻きをするのは善しとせずという認識は、業界の中に広がっていた。
結局、10 月 29 日の欧州委員の会合で REACH のドラフトは正式に承認され、欧州議会に正式に
プロポーザルがまわされた。舞台は遂に欧州議会に移ることになった。
☐
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包括的製品政策
本通達は、2003 年 6 月 18 日に採択されたものです。詳細は必ず原文(http://europa.eu.int/eur-lex/
en/com/cnc/2003/com2003_0302en01.pdf)をご確認下さい。
日本機械輸出組合 仮訳
欧州共同体委員会
ブラッセル、2003 年 6 月 18 日
COM (2003) 302 最終
欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
包括的製品政策
環境ライフサイクル思考に基づく
1.
序文
EU の基本的目的の一つは持続可能な開発である。これは、未来世代のニーズを危うくすることなく現
世代のニーズを満たすことを意味する。この目的は 2001 年のイエーテボリでの欧州理事会で強化さ
れた。同理事会では、環境面が、持続可能な開発戦略の形でリスボン・サミットでの結果に加えられ
た 1。
この戦略は、第 6 次環境行動計画の優先テーマに従い、環境分野における多くの行動を明らかにした
2
。天然資源のより責任をもって管理を行うという分野で、欧州理事会は、「資源の使用および廃棄物
の環境影響の軽減を目指した EU 包括的製品政策は、ビジネスと協力して実施されるべきである」こ
とに同意した。
欧州委員会は、ステークホルダーと協力し、かつ調査 3 の助けを得て、EU 包括的製品政策(IPP:
Integrated Product Policy)を策定した。IPP は 1998 年の会議でステークホルダーと初めて討議され
た。翌年に、IPP はワイマールでの非公式環境相理事会で検討された。理事会からの議長総括では、
グリーン・ペーパーを採択しようという欧州委員会の意志を歓迎し、欧州市場に関するグリーンな製
品の市場条件の改善が欧州産業の競争力を高めることにも役立つことを強調した。欧州委員会は 2001
年 2 月にグリーン・ペーパーを採択し、その内容についてステークホルダーの協議の実践を立ち上げ
た(さらなる情報については付属書Ⅰを参照のこと)。
これら協議は、IPP が持続可能な開発に貢献する上で果たす役割があることを明確に示した。本通知
では、なぜ環境政策にとって製品特質(product dimension)が必要であるかを繰り返し述べる。セク
ション 2 では成立前の IPP アプローチを説明し、セクション 3 では EU の IPP 戦略の指針を説明する。
残りのセクションでは、IPP アプローチの取り込みを一層促進するために委員会は何をするかを概説
する。
2.
なぜ環境政策には製品特質が必要なのか?
過去数年間、欧州委員会は製品の環境影響に関連する政策を見直し始めた。すべての製品とサービス4
は、その生産、使用および処分のどの段階においても環境影響を及ぼす5。この影響の厳密な性質は複
1
2001 年 6 月 15 および 16 日にイエーテボリで開かれた欧州理事会の議長総括。
http://ue.eu.int/pressData/en/ec/00200-r1.en1.pdf のパラグラフ 19〜32 を参照のこと。
2
共同体第 6 次環境行動計画に定める欧州議会および理事会の決定 1600/2002/EC、EU 官報 L 242、2002 年 9 月 10 日、p. 1-15
(編者注:「environment Update」誌 Vol.4 No.5 に和訳を掲載)
3
例えば、http://europa.eu.int/comm/environment/ipp/ippsum.pdf
4
本通達の他の部分は、簡素化のために製品に対して言及しているだけが、サービスも一般的な対象範囲に含まれると理解さ
れるべきではある − セクション 4 参照。
5
環境影響は人間の健康に対する影響も含むものと理解すべきである。
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包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
雑かつ定量化が困難ではあるが、問題の潜在的な重大さは明らかになってきている6。同時に経済成長
と繁栄の継続は製品の生産と使用に大きく影響されている。挑戦すべき課題は、ライフスタイルと福
祉の改善(直接製品に影響されることが多い)を環境保護に結びつけることである。言い換えれば、
環境改善およびより良い製品性能が連動し、環境改善が長期的な産業の競争力を支援するような「双
方が利益を得る」状況が発見される必要がある。これこそ IPP が達成しようとしているものである。
今まで製品関連の環境政策は、産業排出や廃棄物管理問題のような大規模な汚染源に重点を置く傾向
があった。そしてこれらは成功することが多かったが、今や、これら政策が使用段階を含めた製品の
ライフサイクル全体に注目する政策によって補完される必要があることは明らかになりつつある。こ
れは、ライフサイクルを通じた環境影響が統合された方法で対応されるよう、かつライフサイクルの
一部分から別の部分へ単に移行されるだけということのないよう保証しなければならない。それはま
た、環境影響が全体的な環境影響と資源使用を最善かつ最もコスト効率を高く削減するようなライフ
サイクルの段階で対応されることを示さなくてはならない。成功のためには、政策もまた、汚染削減
対策に対象を拡散させてしまう製品特徴をいくつか考慮に入れなければならない。
第 1 に、製品の全体量が増えている。可処分所得の増大7は、より多くの製品を手に入れる余裕のある
ことを意味する。例えば、かつて家庭には 1 本の固定回線電話しかなかったが、今は家中に回線がい
くつもある。また、平均的世帯規模が小さくなり、特定の家庭用品の重複がより増加するという結果
に至る可能性が高くなる8。これは、同じ製品の台数が増え、さらに拡散するということを意味する。
従って、どんな製品政策も、増大する製品量の及ぼす環境影響の削減を目指さなければならない。
第 2 に、製品とサービスの多様性が増大している。基本製品は今や多種多様となってきている。例え
ば、テレビのスクリーンには異なるタイプ(ブラウン管、液晶、プラズマ)がある。従って、どんな
製品政策も、多種多様な製品の変化に同時に対応できるような柔軟さがなければならない。
第 3 に、技術革新は絶えず新しいタイプの製品を創り出す。例えば、過去 20 年間に、レコードプレー
ヤーから CD プレーヤーへと代わり、今や DVD プレーヤーの出現が CD プレーヤーに取って代わろう
としている。コンポーネントの技術革新サイクルはさらに短くすることが可能となる。より強力なコ
ンピュータ・プロセッサーの急速な開発はこの証しである。製品政策というものは、この創造性を環
境および経済のために使わなければならない。
第 4 に、製品は地球規模で取引される。単一市場および貿易/投資障壁の多角的な削減双方が、多く
の国々からの商品が国際的に取引されるよりグローバルな経済に貢献した。店舗で手に入る製品の原
産地が著しく多様化してきた。製品政策は、取引のグローバル化を考慮に入れ、かつ WTO 規則等の
国際協定を遵守しなければならない。
第 5 に、製品はより複雑になってきている。これは、製品の専門的技術がその設計責任者の管理下に
益々集中しているということである。どんな技術的変化が達成できるかという現実的な発想を持つこ
とは、一般市民のみならず規制者にとっても非常に困難である。この理由により、如何なる製品政策
も、生産者と設計者が、自らの製品が健康、安全および環境の同意した基準を確実に満たすよう、一
層責任を持つよう保証する必要がある。
6
1 製品を例に挙げると、自動車の場合、EU の運輸セクターの CO2 排出量の約 80%を占めている。排出量が最も急速に増加
しているセクターである。同時に住民 1 人あたりの保有車も増え続け――1990 年から 1999 年までの間に 14%――製造過
程ではより多くの資源を使い果たし、駐車場や道路ではより多くのスペースを占め、さらに益々多くの廃棄物処分問題を招
いている。これらすべては、2008 年までに 25%の CO2 排出削減をしようという自主協定などの関係業界の相当な努力や、
自動車 1 台あたりの大幅な排出削減にもかかわらずである。しかも、他の汚染物に関してはここ数十年にわたり極めて大幅
な削減があった。
7
消費支出は、1980 年から 1997 年の間に実質 46%増え、食品や住宅などの基礎的需要から、輸送、燃料、娯楽のような裁
量アイテムに移行しているのである。(欧州環境庁(EEA)ファクトシート 2001−YIR01HH04 より)
8
EU における平均的世帯規模は、1980 年から 1995 年の間に 2.82 人から 2.49 人に下がった。この傾向は続くと思われる。(EEA
ファクトシート 2001−YIR01HH03 より)
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包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
第 6 に、製品が完璧に設計できても、不適切な使用や処分は著しい環境影響をもたらす。製品はでき
る限り環境影響が少ないように設計することはできるが、消費者が環境に優しくない方法でそれを使
用するかもしれない。例えば、省エネ電球の使用は相当な環境便益をもたらすが、それは使用してい
ない時にスイッチを切って初めて実現するのである。同様に、製品が投げ捨てられたりして不適切に
処分されるとすれば、製品設計はその後の環境損害に対しての責任を負えない。
最後に、製品は今やそのライフサイクルを通じてより多くの関係者に影響を及ぼしている。その複雑
さの増大とグローバル化の進展は、多くの様々な関係者がそのライフサイクルを通じてかかわりを持
つことを意味している。製品政策は、多くの様々な関係者に対応できる必要がある。また、製品は異
なる社会的価値観を持つ何マイルも離れた所で組み立てられ、販売され、使用されるかもしれないと
いう事実を考慮に入れなければならない。従って、製品のライフサイクルにおけるある 1 つの段階に
いる 1 関係者が、他の段階においてどんな潜在的な問題があるかについて、明確な認識を持つことは
困難である。我々の製品がどんな条件の下で製造されたかは分からないであろう。従って、政策はサ
プライ・チェーンに沿った情報の流れの改善に貢献しなければならない。
かかるすべての要因は、製品特質を環境政策に導入する必要性を強調している。それは、製品を全体
論的な方法で考察し、できる限り多くの関係者を関与させ、彼らが行う選択に責任を取らせるべきで
ある。これには、既存の製品関連措置に対して強力な補完性を与えなくてはならない。IPP アプロー
チはこの難問に対処すると同時に、リスボン戦略に定めたような EU の広範な経済的社会的目的を支
援し、国際条約義務を遵守するものである。IPP アプローチは次のセクションで説明されている。
3.
IPP アプローチ
IPP アプローチは、過去 10 年間にわたり徐々に構築されたものであるが、今や製品の環境側面を扱う
潜在的に最も有効な方法として一般的に認識されている。本アプローチは次に挙げる 5 つの基本政策
に基づいている:
― ライフサイクル思考9−−これは、製品のライフサイクルを考慮し、「揺りかごから墓場まで」の
累積的環境影響の削減を目指す。それを行うにあたり、それはまた、ライフサイクルのそれぞれ
の段階が、単に環境負荷が他の段階に転嫁されるという結果に終わる方法で対処されるのを防ぐ
ことを目指している。製品のライフサイクル全体を包括的な方法で考察することにより、IPP は
政策の一貫性を推進することもできる。環境影響を削減し、企業と社会のコストを節減するのに
最も効果的と思われるライフサイクルの段階で環境影響を削減する措置を奨励する。
― 市場での運用−−よりグリーンな製品の需要と供給を促進することにより、市場が更に持続可能
な方向に動くよう、インセンティブを設定する。インセンティブは、革新的で前向きな考え方を
もち、持続可能な開発に専心している企業に与えられる。
― ステークホルダーの関与−−これは、製品と接するすべての人々(即ち、産業、消費者、政府)
が各自の活動範囲に基づき行動することを促進し、かつ様々なステークホルダー間の協力を奨励
することを目指す。業界は如何にして環境側面を製品設計にさらに統合すべきかを考察すると同
時に、消費者はどのようにしてよりグリーンな製品10を購入でき、製品をより一層使用し、かつ
処分できるかを評価できる。政府は、国民経済全体の経済的法的枠組み条件を設定することがで
きる。例えば、よりグリーンな製品を調達することによって直接市場に働きかけることもできる。
継続的改善−−改善は、市場が定めるパラメーターを考慮し、設計、製造、使用および処分であろう
と、ライフサイクルを通じた製品の環境影響を減少させるために何度も行うことができる。IPP は該
9
実際上の理由で狭義に定義された境界においてではないが、そのライフサイクルを通じた製品の環境影響の定量化とアセス
メントに関わるライフサイクル・アセスメント(LCA)とは異なる。
10
ここおよび本テキスト全般を通じて、よりグリーンな製品とは、同じ機能を果たす類似の製品と比べた場合、そのライフサ
イクルを通じて環境影響の少ない製品と定義される。
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包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
当段階における継続的な改善を目指すのであって、達成すべき明確な値を設定するのではない11。そ
の結果、企業は自らの規範を示すことができ、かつ最も費用効果の高い改善に専心することができる。
― 多様な政策手法−−IPP アプローチは、入手可能な製品があまりにも多数存在し、かつ様々なス
テークホルダーが関与しているため、多くの異なる手法を必要とする。かかる手法は、自主的イ
ニシアティブから規制まで、また地方規模から国際規模まで幅がある。IPP では、傾向としては
明らかに自主的アプローチと取り組むことであるが、強制的施策も必要かもしれない。決定要因
は、持続可能な開発に関して望ましい結果を達成するためのツールの有効性である。
4.
EU の IPP 戦略
セクション 1.で述べたように、EU の IPP は EU の持続可能な開発戦略の欠くことのできない部分であ
る。その一義的な目標は、可能な場合、競争力に関心が向けられる市場重視型のアプローチを利用し
て、ライフサイクルを通じて製品からの環境影響を削減することである。実際、ビジネスの競争力は、
ライフサイクル中と様々な政策手法の間の両方で IPP が容易にしてくれる政策の一貫性の強化によっ
て増強される。いくつかの環境管理ツールでの経験は、企業における環境意識の高まりがコスト削減
と連動して前進できることを示している。更に、益々競争的な世界で、環境パフォーマンスは、企業
とその製品に競争力の差を与えるファクターでもあり得る。実際、いくつかの企業はその環境パフォー
マンスをマーケティング手法として使っている。IPP はこれら企業にもっと大きな視野を少なからず
与えることによって援助する。
現在、ライフサイクル全体で製品の環境影響を評価するやり方は存在している。製品の環境側面に IPP
を初めて適用することによって得られた経験は、より広範な持続性影響に向けて構築すべき貴重な知
識基盤となる。
明らかに、IPP は他の政策をしっかりと考慮に入れ、更に発展していくであろう。例えば、域内市場
の枠組みや競争政策の中で、製品の特性およびその取引を規制するような実質的で重要な法体系が既
に存在している。IPP は、原則として、その特性が必ずしも法規を必要としないような製品の一層の
改善を自主ベースで触発することにより、現行法を補完する。
現在の通達を実施する時には、国際法の下、共同体の義務、特に貿易ならびに他の欧州共同体政策を
決定している原則に関して、全面的に検討される。加えて、委員会からの如何なる新法案も、影響評
価に関する委員会規則の対象となる12。これは、新法案が持続可能な開発の三本柱に向けて調和のと
れたアプローチを代表することを保証する。IPP の発展はまた、環境管理システムや環境ラベル等の
既存の環境ツールの経験を基に構築される。
IPP の目的を達成するため、この政策は以下に挙げる 3 つの重要な役割を果たす:
第 1 に、IPP は「持続可能な開発戦略」および「第 6 次環境行動計画」双方において明示された環境
問題の対処に貢献する。製品特質なしでは環境問題に対処する機会は少なくなっていく。IPP はまた、
資源の持続可能な利用および廃棄物の防止とリサイクルに関して間近に迫ったテーマ別戦略の施行措
置の主要部分である。また、来たるべき環境技術行動計画にも密接に関連している。国際的に IPP は、
2002 年 9 月にヨハネスブルグで開催された持続可能な開発に関するワールドサミットで合意された
持続可能な生産および消費に関する 10 年間にわたる枠組み計画への主要インプットにもなっている
13
。
11
これは、法的な閾値が継続的改善を活性化するのに有用でないと言っているのではない。柔軟性に劣るだけであって、場合
によっては望ましい。
12
2002 年 6 月 5 日付 COM (2002) 276 最終の「影響評価に関する欧州委員会からの通達」に定められた通り。
13
持続可能な開発に関するワールド・サミット(WSSD)−実施のヨハネスブルグ計画のパラグラフ 14 及び 2002 年 10 月 30
日付総務渉外理事会決議のパラグラフ 8
JMC environmental Update
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Vol.5 No.4 (2003.11)
包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
第 2 に、IPP は、他の如何なる環境問題への派生的影響もその中で考慮できる広範な、「ライフサイク
ル」にかかわる概念的な枠組みを提供することにより、製品関連の現行諸政策を補完する。そうする
ことで、製品関連の政策分野は、農業と食品安全分野における「農場から食卓まで(Farm to Fork)」
の概念のように、既にある程度ライフサイクル思考を組み入れており、全くの白紙状態からのスター
トではないという事実を考慮に入れている。
第 3 に、最も重要なことであるが、それは、現行および将来の環境関連の製品政策手法の間の調整と
一貫性(co-ordination and coherence)を強化している。これはかかる手法間の潜在的相乗効果を
活かすのに役立ち、かつその統合的な発展を促進するのに役立つ。加えて、ライフサイクル・アプロー
チの統合を通じて、それは、必要なトレードオフに光をあてることにより、またひとたび政治的決定
が下されれば、その実施を調整することにより、製品関連の環境政策手法をより効果的にする。この
強化された調整は、ビジネスの競争力と環境双方に利益をもたらす。
この目的達成には時間がかかる。欧州委員会はそれに向かって動くべく 2 つの相互に関連のある行動
に焦点を合わせている:
― ライフサイクルの生産・使用・廃棄段階を通じて全製品の継続的な環境改善のための枠組み条件
を確立する。
― 環境改善に最大の可能性をもつ製品に焦点を合わせる。
本通達はかかる行動を実施すべく欧州委員会が講じるステップを概説する。しかしながら、環境パ
フォーマンスの改善を目指すことにより、すべてのステークホルダーの積極的な協力が IPP 成功には
不可欠である。この理由により、本政策はステークホルダーとの協力で発展し続けるのである。欧州
委員会が加盟国14や他のステークホルダーの役割および責任と考えるものの例示的なリストは付属書
Ⅱに書かれている。
IPP を始めるのに、欧州委員会はサービスではなく、製品15に焦点を合わせることにより始まる。これ
は、サービスが IPP の範囲から除外されることを意味するのではない。それは、ライフサイクル思考
がサービスに対するよりも製品に対してより助長させるという事実、および共同体法令本文が完備し
ているという事実の反映に過ぎない。従って、欧州委員会にとってこの分野で本政策を生かす方が容
易である。
5.
継続的環境改善のための枠組み条件の確立
多種多様な政策ツールがすでに在り、少なくとも産業による製品のグリーン化に利用されたり、そう
することに再び焦点をあてられたりしている。その全てが全製品に適しているわけでないことは明ら
かである。次のセクションでかかるツールを検討する。
5.1 正しい経済的かつ法的枠組みを創造するためのツール
継続的環境改善は、ライフサイクル思考を基礎としかつ市場が設定したパラメーターを考慮に入れ、
以前よりもグリーンな新しい製品世代を作る上での生産者に対するインセンティブが必要である。そ
れはまた、当該製品を購入する消費者に対するインセンティブも必要である。効果的な IPP は、理想
を言えば、最低限の政府の介在で、よりグリーンな製品とその購買に資する経済的かつ法的な枠組み
を必要とする。ここでの欧州委員会の役割は、IPP の的確な手法がこの方向で運動を推進するよう保
証することである。この目的に適した政策ツールは、ボックス 1 で詳述する。
14
本文書で加盟国が言及される場合、それは加盟承認国と候補国にも適用されると理解すべきである。
15
本通達は、製品、生産者、製品タイプなどを構成するものの如何なる現行の法的定義も変更するつもりはない。
JMC environmental Update
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Vol.5 No.4 (2003.11)
包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
ボックス 1
a) 税金と補助金
正しい価格設定は16、環境影響が正確に価格に反映されるように環境的外部要素を製品価格に内部化
するために、欧州委員会の長期的な目標である。価格のシグナルは、ライフサイクルを通じた製品の
継続的環境改善のインセンティブとなる。それは、グリーンな設計と生産に対する経済的報酬を改善
することでグリーンな公共調達と製品設計義務等の施策を容易にし強化する。それはまた、消費者に
重要な情報を与え、彼らが環境影響の少ない製品を購入するよう奨励する。欧州委員会は既に欧州レ
ベルでエネルギー関連の税に関するいくつかの提案を行った17。エネルギー製品の課税に対する共同
体の枠組みを再構築する 1997 年の提案は、今や理事会で満場一致の政治的支持を獲得した。それは
EU の最低税率をすべてのエネルギー製品に拡張し、エネルギー課税を環境等の政策目的を追求する一
つの手法として利用するための一貫した枠組みを加盟国に与えるものである。欧州委員会は、適切な
地方、加盟国国家、共同体レベルで、環境関連税や優遇措置等の財務施策の利用を促進し奨励し続け
ることになろう18。
しかしながら、ステークホルダーから寄せられた意見、特に加盟国からのものに照らし、欧州委員会
は今のところ EU エコ・ラベルのついた製品に付加価値税(VAT)の減税を適用するイニシアティブを
策定しない19。加盟国は、別の種類の税に対しては、適宜、グリーンな製品を優遇する前述の財務施
策の活用を推進し奨励すべきである。
加えて、欧州委員会は第 6 次環境行動計画の枠組みの中で、記録すべき環境上相応しくない補助金を
認めている基準のリストの作成に取組んでいる20。これは、かかる補助金を排除するための信頼でき
る基準を与えてくれる。欧州委員会はまた、より環境に優しい製品とサービスのために技術的変更を
支援するような環境目的に対する国家援助についてのガイドラインを策定した21。
b) 自主協定と標準化
製品を効果的にグリーン化するには、環境協定や標準化プロセスのような非立法的解決が、法規に加
えて考慮される必要がある。共同体レベルでの環境協定の枠組みは、本件に関する欧州委員会の通達
に従い現在検討されている22。
欧州委員会は、標準化に関して、可能な限り国際標準化を使用し続ける。欧州委員会は、欧州レベル
で、2003 年の通達における欧州標準化と環境保護に関する核心的問題のいくつかと取り組む。欧州委
員会はまた、環境側面を欧州標準化プロセスに統合することに貢献するため、欧州の環境 NGO のコ
ンソーシアムである ECOS23にサービス契約を授与した。
c) 公共調達法規
公共調達は共同体の GDP の約 16%を構成している。これは、公的諸機関が製品のグリーン化を進め
るのに利用できる市場の巨大な部分である。域内市場の公共調達において従うべき手順を定めた詳細
16
これは、消費者が製品に払う価格が、環境影響が引き起こすすべてのコストを含むように試みることを意味する。
17
商業目的に使用されるディーゼル燃料に対する特別税の取り決めを導入し、ガソリンとディーゼル燃料に対する物品税と調
整するための指令 92/81/EEC および 92/82/EEC を修正する 2002 年の欧州委員会提案は理事会で引き続き交渉中である。
18
第 6 次共同体環境行動計画を定めた 2002 年 7 月 22 日付欧州議会と欧州理事会の決定 1600/2002/EC − EU 官報 L 242、
2002 年 9 月 10 日、p. 1-15 − の第 3 条(4)項の第 3 インデントに求められている通り。当然これは関連の域内市場法規に
従って行われなければならない。
19
この分析は、労働集約型サービスに対する VAT の減税を適用する実験の結果も考慮に入れている。
20
関連の仕事が OECD 国際エネルギー庁の枠組み内で始まっている。
21
環境保護に対する国家助成に関する共同体ガイドライン。EU 官報 C 37、2001 年 2 月 3 日、p.p. 3-15
22
欧州委員会から欧州議会、欧州理事会、経済社会評議会および地域評議委員会に対する通達、環境規制の簡素化および改善
に関する行動計画の枠組みの範囲内における共同体レベルの環境協定、COM (2002) 412 最終、2002 年 7 月 17 日。
23
European Environmental Citizens Organization for Standardization:標準化のための欧州環境市民機関
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25
Vol.5 No.4 (2003.11)
包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
な共同体規則がある。欧州委員会の「公共調達および環境に関する解説通達書24」は、その法的状況25
を説明し、当該規則が適用される契約の入札において環境配慮を考慮し十分な可能性があることを示
している。この状況は現在進行中の公共調達指令の改定では変えられない。グリーンな公共調達の本
当の課題は、既存の可能性が公的購買者によって利用されるようにすることである。
d) その他の法律
製品関連の施策全てに対する共同体法令は、特に共同体のアクションなしでは市場の失敗が是正され
なかったり、単一市場が悪影響を受ける可能性がある場合、環境問題を解決するのに必要である。こ
れは、例えば、電気電子機器の有害物質の制限指令26のようなケースであり、欧州委員会の化学品白
書27をフォローするものである。それはまた、エネルギー使用製品(EuP: energy using products)の
環境設計に対する枠組みを確立する近く発表される欧州委員会の指令案[編者注:本指令案は 2003
年 8 月に発表された。Environmental Update 誌 Vol.5 No.3 に和訳を掲載]のケースである。これに加
えて、ライフサイクル思考、ステークホルダーの関与、および継続的改善などの、IPP の原則を法的
枠組みに納める(enshrine)ものである。法律は、また、拡大生産者責任方針やデポジット制度がラ
イフサイクルの環境影響を削減するのに最も有効な方法であるとみなされる場合に必要となる。かか
るイニシアティブはまた、個々の加盟国がこの分野で独自のイニシアティブを策定したか、あるいは
策定中の場合に、共同体レベルで特別な価値を有する。欧州委員会は、「廃棄物の防止とリサイクルに
関するテーマ別戦略」の中でこれらの点を更に展開させていくことになる。
5.2. ライフサイクル思考の適用を推進
IPP が効果的であるためには、ライフサイクル思考が、製品と接触するすべての人々にとって第二の
天性(second-nature)になる必要がある。教育および意識向上対策が、国家と地域レベルで市民に密
着して講じられなければならない。共同体レベルでは 3 つの明確な行動が必要となる(ボックス 2)。
ボックス 2
a) ライフサイクル情報と解説的ツールを入手可能にする
アセスメントの基礎となるライフサイクル・データは、設計目的のためであれ、ラベリング目標のた
めであれ、体系的に収集される必要がある。加盟国や産業界ではこのためのデータベースを構築した
ところもある。欧州委員会はコミュニケーションと情報交換を容易にする場を提供することになる。
これには、欧州委員会がする定例会議や定期的に更新される LCA データベースのディレクトリが含ま
れる。
ライフサイクル・データはまた、アクセスし易いように作られる必要がある。このため、欧州委員会
は、EU における進行中のデータ収集取り組みと現行の整合イニシアティブの双方に関わる調整イニシ
アティブを立ち上げる。このイニシアティブは、現行の国連環境計画ライフサイクル・イニシアティ
ブへの欧州リンクとして機能することになる。欧州委員会は、現状および考えられる将来の方向性を
検討する調査に着手することから始まる。
LCA は現在入手できる製品の潜在的な環境影響を評価する最良の枠組みを提供する。従ってそれは、
IPP にとって重要な支援ツールである。しかしながら、LCA の利用と解釈における良好な慣行につい
ては協議が行われている最中である。欧州委員会は、一連の調査とワークショップにより、ステーク
24
公共調達に適用される共同体法および公共調達に環境配慮を統合する可能性に関する欧州共同体委員会(2001 年)の 2001
年 7 月 4 日付の解説通達書 COM (2001) 274 final[environmental Update 誌 Vol.3 No.4 に訳文を掲載]。同通達書は
http://simap.eu.int/EN/pub/src/welcome.htm のサイトで入手可能。
25
脚注 24 の web サイト参照。
26
電気電子機器に含まれ有害物質の使用制限に関する欧州議会および理事会指令 2002/95/EC、EU 官報 L 37、2003 年 2 月 13
日、p. 19-23
27
将来の化学品政策の戦略に関する白書 COM (2001) 88 最終
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包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
ホルダーの間で得ることのできる最善のコンセンサスに基づき、2 年以内にベストプラクティス(最
良実施例)に関するハンドブックの作成を目指してこの議論を深める。
欧州委員会は、また、IPP アプローチのこの部分の実施に向けた研究開発支援を継続中である。第 5
次28および第 6 次29の共同体研究枠組み計画は、環境プロセスの知識を強化することによりこのことに
貢献する。同計画は、基本データと測定システムを提供し、かつよりグリーンな製品の実行可能な解
決策を打ち立てるものである。IPP プロジェクトは既に、欧州委員会 LIFE プログラム30の対象範囲の
重要な一環である。
b) 環境管理システム
環境マネジメントシステム(EMS)は、ライフサイクル思考を組織の業務の中に統合し、継続的改善
を実現するための優れた枠組みを提供する。2001 年の EMAS(環境管理・監査スキーム)の改定は、
プロセス側面から製品側面への再方向づけを開始した。製品は、今や活動やサービスと同様に、EMAS
規側の中に明確に入っている。即ち、その著しい環境影響は環境上の見直し、管理・監査システムに
含まれなければならない。またその影響は EMAS の監査人によって検証され、それについての情報を
環境声明書に盛り込まれなければいけない。そして、その環境パフォーマンスは継続的に改善されな
ければならないということである。EMAS は今まで産業活動の方により主眼を置いていたので、欧州
委員会は 2004 年末までに EMAS の中で製品問題に対処する方法についてのガイドラインを策定する。
EMS は、あらゆる種類の組織――公共であれ、民間であれ――に関連があり、組織のグリーン調達か
らグリーン情報の有効化まで、あらゆる種類のツールに対する枠組を提供するのに使用できる。EMS
認証そのものは特定の環境製品性能を保証するのではなく、EMAS の場合は、EMAS 監査人によってか
かる性能に関する情報を有効にする枠組みを与えてくれるのである。
欧州委員会はまた、2006 年までに予定されている規制の次の改定に送り込むことができるよう、EMAS
における製品特質の実施を監視・評価する。欧州委員会は EMASⅡの登録を果たすかどうかを 2004
年に決定する。試験的演習が、3 つの総局の参加を得て既に始まっている。
c) 製品設計義務
上記に概説された 2 つの要素は、よりグリーンな製品を開発する上で、先行している者を刺激するは
ずである。加えて、欧州委員会は、2005 年に企業における IPP アプローチの実施を、適宜特定製品に
対する一般的な義務を含めて、推進する方法を考慮する討議文書を提出する。これは、IPP グリーン・
ペーパーの刊行に従い、環境分野における「ニュー・アプローチ」の適用に関する議論を踏まえてい
る31。最終使用機器の環境設計に関する指令案および電気電子機器(EEE)の環境設計に関する指令案
への反応も考慮に入れられる。今度のエネルギー使用製品(EuP)に対する環境設計要求事項設定の
ための枠組みを構築する指令案交渉から得た経験も考慮される。対処すべき問題は、とりわけ、適切
な法的根拠、域内市場への配慮、国際条約義務、かかる行動の範囲、適切な製品や製品グループ、設
計要求事項の要求基準の詳細、最低製品基準の役割、施行と報告の適切な手段、かかるアプローチの
費用便益、その起こりうる環境影響、そして IPP ツールを含む製品の環境側面に影響を及ぼす政策と
措置にどのように統合されるべきか、などでである。
エネルギー使用製品の場合は十分な経験が既にあり、欧州委員会が考慮すべき環境影響の増大も、当
該製品に対する EuP スタイルの枠組みも解決している。この枠組みは、製品固有の法的措置が講ぜら
28
研究、技術開発および宣伝活動のための欧州共同体の第 5 次枠組み計画(1998 年−2002 年)に関する 1998 年 12 月 22 日
付欧州議会と理事会の決定 182/1999/EC、EU 官報 L 26、1999 年 2 月 1 日、p. 1-31
29
欧州研究領域の創設と革新に寄与する研究、技術開発および宣伝活動のための欧州共同体の第 6 次枠組み計画(2002 年ー
2006 年)に関する 2002 年 6 月 27 日付欧州議会と理事会の決定 1513/2002/EC、EU 官報 L 232、p. 1-33
30
環境のための財務手段(LIFE)に関する欧州議会と理事会規制(EC)1655/2000、EU 官報 L 192、2000 年 7 月 27 日、p. 1-9
31
http://www.europa.eu.int/comm/environment/ipp/standard.pdf および Goldenman、G.、Hart、 J. W.、Sanz Levia、L. (2002)
を参照のこと。安全性、環境保護および人の健康のための製品企画設定におけるニュー・アプローチ:将来の方向、環境ニュー
ス No. 66、デンマーク環境保護庁を参照。
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包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
れるようにし、正当な理由がある場合、それが法律よりも速くかつ/または優れたコスト効率を従え
て環境影響を削減する場合は、産業による自己規制の余地を認めるであろう。
加えて、欧州委員会は、製品の環境性能や設計に関する情報が公に伝えられるようにできる最善策を
考慮している。該当情報は、環境報告書などの企業の公文書を著しく強化することができる。
5.3. 消費者に決定のための情報提供
消費者は、指摘、公的、個別を問わず、よりグリーンな製品を購入するかどうか、またひとたび購入
したらどう使用するかを決定する。共同体のここでの役割は、消費者に製品情報を提供する汎欧州ツー
ルと枠組みを与えかつ奨励することである。消費者が製品をグリーン化する上で十分に役割を果たす
ため、必要な意識レベルに到達するには何が必要かを決定するのは加盟国である。多くの適切な政策
手段がボックス 3 で検討されている。しかしながら、製品購入時に関連する他の要因、例えば安全性
と健康の側面、コスト及び効果もその役割を明確に果たさなければならない。
ボックス 3
a) 公共調達のグリーン化
公共機関が既存の公共調達法における可能性を利用するのを推進するためには、積極的な行動が必要
である。この理由により、欧州委員会はいくつか行動を始める。
現在では、よりグリーンな公共調達がどの程度加盟国で実施されているかについて、限られた情報し
か入手できないため、欧州委員会はよりグリーンな公共調達の程度を判断しようとしている。欧州委
員会は、2003 年末までに、公共機関が実施しているよりグリーンな公共調達の程度に関して評価する
調査を行う。欧州委員会はまた、よりグリーンな公共調達が環境および市場に与える潜在的な影響を
評価する調査プロジェクトに共同で資金を提供している。
従って、欧州委員会は、加盟国が公に入手可能な公共調達グリーン化行動計画を策定するよう促す。
その中には、現状の評価と現状に対する 3 年以内の意欲的な目標を盛り込まなければならない。また、
これを達成するために講じる措置について明確に述べなくてはいけない。同計画は 2006 年末までに
作成起草し、それから 3 年毎に見直しをしなければならない。この行動計画は法的拘束力はないが、
よりグリーンな公共調達の実施および意識向上のプロセスに政治的なはずみを与えることになる。同
計画により、加盟国はその政治的な枠組みと到達したレベルに一番合った選択肢を選ぶことが可能と
なり、同時にグリーンな公共調達を容易にするベストプラクティスの交換も可能となる。欧州委員会
も、2006 年末までに自らの調達の目的と行動を一緒にする行動計画を策定する。欧州委員会は他の共
同体機関と事務所が同じように行動することを求め、それを容易にするべく彼らやその分野での専門
知識を共有する準備ができている。
加えて、欧州委員会はまた、購買政策をグリーン化する上で加盟国を援助すべく公共機関用情報対策
を推敲中である。かかる対策は:
― 明確で、簡単で、非法律的言語でグリーン調達の可能性を説明する公共機関用実用ハンドブック。
最初の草案は 2003 年半ばに出る予定である。それは、必要であればその使用の実地の経験とそ
の後の展開に照らして改定される。
― 製品グループのデータベース。これは、特定製品にどの基準が関連しているかについての背景情
報を企業や公的な購買者に提供するために、エコ・ラベルや環境製品宣言スキームによって使用
されている基準のような現存の製品基準に関する情報を一つのウェブサイトに集める。最初の原
型は 2003 年に予定されている。
― ハンドブック、製品データベースおよび関連の法規を集める「 公共調達のグリーン化 ウェブサ
イト」。これは 2004 年末までに用意できる予定である。
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包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
b) 企業のグリーン購入
民間セクターは、サプライヤーによりグリーンな製品とよりグリーンな生産工程を要求できる。彼ら
は、例えば、EMAS のような環境マネジメントシステムを要求することにより、そうすることを選択
するならば、よりグリーンな製品に影響を及ぼす大きな可能性を持っている。
グリーン公共調達のために開発されたツールと上記に列挙されたツールもまた、企業のグリーン購入
を容易にするはずである。加えて、以下に述べる様々な種類のラベル表示にも役に立つ。欧州委員会
はまた、報告によって企業の購入慣行がもっと透明になるよう押し進めて大企業の購入市場を刺激す
る作業を始めた32。
c) 環境ラベル
欧州委員会は、ラベルの分野では、消費者に製品選択の基となる信頼性が高く分かり易い情報を提供
するいくつかの重要なラベル制度を既に実施している。これらは IPP の枠組みに申し分なく適合する。
製品に関する EU エコラベル33の存在は、製品が、その全ライフサイクルを通じて大半の他の類似製
品より環境に優しいとして認証されていることを消費者に知らせている。今は全 EU 市場を対象とす
る類似ラベルがほかにないので、これが EU の IPP の観点から入手可能な最良のラベルである34。EU
エネルギーラベル35は現在多くの製品、特にエネルギー使用が通常製品のライフサイクルを通じて最
も著しい環境影響をもたらす白物セクターの製品に貼付されている。それは主として製品に対する性
格のおかげで、特に高い認識得ている。欧州自動車ラベル制度36もまた新車の CO2 排出に関する重要
な情報を消費者に提供している。
すべての該当ラベルの対象範囲は、消費者に一層選択の幅を与えるよう徐々に拡大される。同時に、
欧州委員会は、「不当宣伝に関する指令(Directive on Misleading Advertising)」37の加盟国による実施
を遂行し、グリーンな主張(green claims)38のガイドラインに関する作業に結論をもたらす。これは、
誤解を与えるグリーンな主張が環境製品情報の全体的な信頼性のレベルを下げないことを保証するよ
うな方向に進むべきである。欧州委員会はかかる主張が EMAS 制度によって独自に検証される可能性
を調査する。加えて、現行の「消費者政策戦略」39の枠組みの中で、民間のラベル対策の有効性や更
なる措置の必要性が評価される。
32
欧州委員会は、最低 500 人の社員がいるの株式上場会社すべてに対し、その業績を経済的・環境的・社会的基準に対して評
価する「トリプル・ボトムライン(triple bottom line)」をステークホルダー向けの年次報告書に発表するよう求めた(欧州
委員会からの通達:より良き世界のための持続可能な欧州:持続可能な開発のための欧州戦略、COM (2001) 264、2001 年
5 月 15 日)。欧州委員会は、このプロセスを援助するために、如何に環境問題を公表すべきかに関する勧告を策定した(企
業の年次会計および年次報告書における環境問題に関する認識、評価および好評に関する 2001 年 5 月 30 日付欧州委員会
勧告(2001/453/EC)、EU 官報 L 156、2001 年 6 月 13 日、p. 33)。トリプル・ボトムラインはまた、2004 年半ばまでに評
価、報告および保証の共通に同意されたガイドラインと基準の設定を求めた。(企業の社会的責任に関する委員会からの通
達:持続可能な開発へのビジネスの貢献、COM (2002) 347、2002 年 7 月 2 日、p. 15[編者注:「environment Update」誌
の Vol.4 No.4 に原文および和訳を掲載])
33
これは、EU 各国のラベルと同じく、ISO タイプⅠラベルとしても知られている。
34
しかしながら、これは、他のラベルが、将来、同等の取り決めや新開発により、かかる消費者情報を提供するのに重要な役
割を担う可能性を排除するものではない。
35
家庭用電気製品によるエネルギー等の資源消費をラベルや規格製品情報で説明することに関する 1992 年 9 月 22 日付理事
会指令 92/75/EEC、EU 官報 L 297、1992 年 10 月 13 日、p. 16
36
新乗用車の販売については燃料経済と CO2 排出に関する消費者情報の入手可能性に関連する 1999 年 12 月 13 日付欧州議会
と理事会の指令 1999/94/EC、EU 官報 L 12、2000 年 1 月 18 日、p. 16-19
37
不当宣伝に関する加盟国の法律、規則および行政規定の近似化に関連する 1984 年 9 月 10 日付理事会指令 84/450/EEC、 EU
官報 L 250、1984 年 9 月 19 日、p. 17-20。欧州委員会は 2003 年中に不当な商的慣行に関する枠組み指令案を採択する予
定である。欧州理事会と議会が同意すれば、これは現行指令の規定の一部を部分的に置き換えることになる。
38
グリーンな主張はまた、時として ISO タイプⅡと言われる。それは、一般的にどんな形態の第三者の検証にも左右されない
製品の環境特性についての表明である。
39
消費者政策戦略 2002 年−2006 年に関する、欧州委員会から欧州議会、理事会、経済社会評議会および地域委員会への通達、
2002 年 5 月 7 日付 COM (2002) 208 最終
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包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
環境製品宣言(EPDs)40の比較的新しいツールが欧州の枠組み内で策定される必要があるかもしれな
い。EPDs は、標準化された方法で製品に関して定量化されたライフサイクル主体の情報――CO2 や
NOx のような――を提示する手法の一つである。製品そのものがどのように「環境的」であるかにつ
いて何の判断もされるのではなく、定量化された情報が潜在的な購買者が自らの判断するのに使われ
たり、LCA に供給したりするのに利用される。欧州委員会は、現行の EPD タイプの制度(および類似
の性質を持つもの)を検討する調査41および展開のための可能な選択肢を考察するための調査に資金
提供した42。ステークホルダーはこれらの結果43にコメントするよう求められ、2005 年末までに、欧
州委員会はこの潜在的に重要な手段の構築を促すべく、共同体レベルで行動を講じる必要があるかど
うかに関して決定を行う。これは、現在進行中の EPD 制度に対する国際基準の策定を考慮に入れる。
6.
特定製品への重点を展開
6.1. 自主的パイロット・プロジェクト
ライフサイクル思考は、ここしばらくの間に多くの事業者には既に広く行われている慣行である。そ
れにもかかわらず、他の事業者にライフサイクル思考を機能させるにはすべきことがまだ多く残って
いる。製品政策を成功させるためライフサイクル思考の重要性を考えると、この挑戦は優先事項とし
て対処されなければならない。この概念の利点を示す一番良い方法は、その実用化を示すことである。
従って、欧州委員会は、この概念がパイロット・プロジェクトの実行において多くの製品に個別に適
用されることによって最善に生かされると考えている。この目的ため欧州委員会は、IPP の潜在的な
利益を示す多くのパイロット・プロジェクトを実践的な方法で実行する。次にステークホルダーは、
彼らの日常生活や彼らが接する製品にこの思考を適用できるようになる。
このようなパイロット・プロジェクトにおけるステークホルダーの参与はその成功にとって非常に重
要であり、特定製品の――ライフサイクルを通じて――関係者全員の自主ベースでの参加が望まれる。
自発的にパイオニアをなるステークホルダーは欧州全域で与えられる認識向上から利益を得る。欧州
委員会はすべてのステークホルダーが該当パイロット製品への提案を提出するよう求めている。提案
は 2003 年 10 月末までに届かなければならない。欧州委員会はそれからその実現可能性およびすべ
てのステークホルダーの参加意志などの実際的な要因に基づいてこれらの提案を分析する。当該プロ
ジェクトの実証的性格(demonstration character)を考えると、製品に高い環境影響があるかどうか、
改善の最大の可能性があるかどうかという問題は決定的な要因ではない。その結果として、製品ある
いは試験的演習用製品の選択はかかる属性のいずれの判断になるものでもない。
欧州委員会は、各プロジェクトが約 12 ヶ月続くとみている。それはすべてのステークホルダーが行
う作業の共通の理解に基づいて始まる。欧州委員会は各パイロット製品が解決への同じ基本的道筋を
たどることができるものとみている。即ち:
(1) ライフサイクルを通じた製品のすべての環境影響を文書化し、分析する。
(2) 環境影響を削減するために考えられるすべての選択肢について潜在的な環境的、社会的、経済的
効果を現行政策ツールの有効性の検討を含めて分析する。
(3) 改善の最も実現可能性のある選択肢をステークホルダーと共に明らかにする。
(4) 様々なステークホルダーグループの責任を明らかにしつつ、実施計画に同意する。
(5) 実施。
40
これらも ISO タイプⅢと言及されることが多い。
41
この調査の最終報告者は次のサイトで入手できる。http://europa.eu.int/comm/environment/ipp/epds.htm
42
平行した調査も、建設セクターでの LCA/EPD ツールに焦点を合わせ欧州委員会によって資金提供されている。これは次の
サイトで参照できる:http://europa.eu.int/comm/enterprise/costruction/internal/essreq/lcarep/lcafinrep.htm
43
これらも脚注 44 のサイトで参照できる。
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包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
作業例を以下のボックスに述べる。
車のタイヤの事例
(1) 現行のライフサイクル一覧表と LCA データが、理想的には産業界から提供され、最初に回収され、
それからタイヤの全ライフサイクルの状況を把握するべく分析される。どのアセスメントも関連
する規則、規格、規範に従う。
(2) タイヤに関しては、ライフサイクルの全段階において影響があることは明らかである。しかしこ
の事例において、影響は使用段階に集中していると想定される。ここでは、タイヤの転がり抵抗
が燃料消費による CO2 排出、磨耗したゴムの粒状物質とそれに付随する化学物質による土壌、水
質、大気の汚染に関与する。EU レベルでは、CO2 の排出は最大のものと思われるので、この事
例の他の部分はこのことに集中する。
(3) そこで CO2 を削減するのに必要な措置を明らかにしようと試みることが可能となる。ここで、現
行の共同体政策の下で既に適用されている手段や措置を含めて利用可能なすべてのツールを考
慮しなければならない。タイヤ設計における革新により転がり抵抗を減らすことは一つの選択肢
である。例えば、新しい材料は、シリカコンパウンドの場合が示すように、役に立つ。再生タイ
ヤ(re-treading)は対処すべきもう一つ別の問題である。これらはもちろん単なる事例に過ぎず、
別の可能性が見つかる可能性もある。特定の行動を決定する前に、悪影響が探し求めている改善
を上回ることのないよう全ライフサイクルに沿った潜在的な影響を評価する。明らかに、統合ア
プローチにおいては、如何なる選択肢も他の共同体政策に基づく措置との一貫性に関して評価さ
れなければならない。それらもまた、コストや機能性、そしてこの事例では運輸政策と道路の安
全性を考慮しなければいけない。
(4) 次の段階は、誰が様々な措置を講ずるか−そしてどのようにそれを実施するかについて合意する
ことである。例えば、もしタイヤの設計に取り組むべきであったら、産業界は新しいタイヤ設計
においてリーダーシップを取る必要がある。当局は、例えば、適合認証のような問題に対処しな
ければならない。
(5) 最終段階は、実施措置と監視および進捗報告である。
パイロット製品実行から学んだ教訓が、製品固有のものであろうことは明らかであるが、欧州委員会
はこのようなプロジェクトを欧州レベルで試みるのは事実上初めてなので、そのようなプロジェクト
の原動力と組織化について学べると信じている。もしこの実行が、パイロット・プロジェクトや十分
な追加証明に基づき、経済目的、社会目的および環境目的の均整の取れた統合を妨げるような重要な
政策の矛盾を明らかにしたら、欧州委員会は現行の法的等の手段の一貫性を強化するのにどのような
行動が必要かを検討することになる。
6.2. どの製品に環境改善の最大の可能性があるかを確認する
欧州委員会はまた、パイロット・プロジェクトにより IPP の一般的な意識向上と同時に、環境改善の
最大の可能性を持つ製品に対する行動を確認し、刺激しようとしている。この改善の可能性を評価す
るにあたっては、そのような変化が起こりうる社会経済学的効果が考慮に入れられる。しかしながら
今のところ、どの製品が最大の環境影響をもたらすのかについても、従ってまた最大の環境改善の可
能性がある製品についても分析を根拠とした合意は何もない。
それ故欧州委員会は、欧州レベルで該当製品を確認する方法論の開発を始める。これは、ベルギーに
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包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
おける方法論44のようなこれまでの経験を基に構築される。この方法論はその後広範なレベルの合意
達成を目指してステークホルダーと議論される。これに続いて、この方法論を適用して最大の環境影
響をもつ製品を確認する更なる調査が実施される。これが行われると、リストの上位に向かっている
製品に対しては、環境影響が削減できる可能な方法すべてを確認すべく更なる分析が始められる。そ
れぞれの可能な方法に対して、各措置の潜在的な社会経済的影響が評価されることになる。この全工
程は 3〜4 年かかると思われる。
欧州委員会は、この工程が完了するとすぐ、最大の環境改善の可能性をもつ製品の少なくとも社会経
済的コストを個々に取り扱おうとしている。パイロット・プロジェクトにおける経験はこの工程にとっ
て価値あるインプットである。
7.
調整と統合
IPP アプローチは、様々なツール間の相乗効果が活かされることを求められている。これを行うには、
「IPP 思考」がかかるツール管理に関するあらゆる側面で確実に普及する必要がある。同時に、IPP
思考を環境以外の政策分野に更に統合する必要がある。このために、欧州委員会は、個別のセクター
が、カーディフ・プロセス45に従い各自の報告書の中で IPP アプローチを仕事の中にどのように統合
する意向なのかについてより明確にするよう奨励する。
加えて、欧州委員会は調整を容易にし、進捗状況を監視する多くのプロセスを始める。
それは、加盟国や欧州環境庁と協力して、IPP アプローチが引き起こす環境改善を測定するための適
切な指標を開発する。
欧州委員会はまた、IPP 施行における進捗状況についての報告書を準備し、それを欧州議会と理事会
に提出する。これは、加盟国が 2006 年末に始まり 3 年ごとに欧州委員会に提出しなければならない
報告書に基づくもので、IPP アプローチを施行する上で講じる措置と進捗状況を詳述するものである。
産業セクターや消費者団体も同じような行動をとるよう求められている。
加えて、欧州委員会は、加盟国とステークホルダーの双方の代表が出席する定例会議の議長を務める。
定例会議は、欧州委員会が IPP の発展と実施、さらには加盟国における進捗状況の監視をする上で役
立つ。特定分野が、報告様式のようにより注目に値する場合、欧州委員会は作業グループを立ち上げ
たり、現行の構造を活用したりすることができる。欧州委員会は、加盟国が自らのイニシアティブで
立ち上げた46IPP 非公式のネットワーク(IPP Informal Network)が、理事会議長国の下で情報共有と
いう平行した課題を継続することを提言している。また、そのネットワークの会員が加盟承認国や候
補国にまで拡大するよう提言している。
それは、環境および持続可能な開発に対する IPP アプローチの潜在的な利益を説明することによって
IPP アプローチを国際基準で推進しようとしている。IPP アプローチの共通の理解としては、発展途
上国の特別なニーズを考慮し、IPP の発展を促進し、かつ地球規模で環境課題に対処するのに役立つ
こととなる。
欧州委員会は、web サイトの www.europa.eu.int/comm/environment/ipp およびそのメール配信サー
ビス経由で、協議実施を含むすべての展開をステークホルダーに知らせる。
44
Institut Wallon de Développement Économique et Social et d’Aménagement du Territoire etVlaamse Instelling voor
Technologisch Onderzoek (2002):
「連邦製品および環境政策にとってキーとなる製品を明らかにする」、最終報告書案、2002
年 11 月
45
1998 年のカーディフにおける欧州理事会会議で、他のセクターは気候変動問題の解決、アジェンダ 2000 のプロセスにおけ
る環境意識向上という観点から、指標(運輸、エネルギー、農業)などの統合戦略を策定するよう求められた。
46
そして委員会がオブザーバーの一人として関与している
JMC environmental Update
32
Vol.5 No.4 (2003.11)
包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
付属書Ⅰ: IPP グリーン・ペーパー採択に続くステークホルダーとの協議
グリーン・ペーパーは、IPP が総体的なアプローチおよび様々な手法の双方の見地から、どのように
展開すべきかについていくつかの問題を含んでいる。欧州委員会は、ステークホルダーに 2001 年 6
月末までに文書でコメントを提出するよう求めていた。133 のステークホルダー団体がコメントを提
出した。コメントの多くは欧州委員会の IPP ウェブページ47で閲覧できる。
かかる 133 のコメントの内 78 は産業界からであり、30 は政府機関(他の欧州諸機構を含む)から、
10 が個人、6 は消費者組織、4 は学会、3 は環境 NGO そして 2 が標準化機関からであった。
大半のステークホルダーはグリーン・ペーパーを歓迎し、IPP に定める新しい政策論理を支持した。
しかしながら、様々な手法の利点に関する意見は異なっていた。多くのステークホルダーは市場指向
のアプローチに好意的であったが、その熱意は課税の差別化にまで及ばないことが多かった。EU エ
コ・ラベルをつけた製品に VAT の減税を適用する考えは多くの産業界や政府のステークホルダーに反
対されたが、環境 NGO は歓迎であった。自主的なおよび強制的な手法の間のバランスについても異
なる意見の対象であった。産業界は概ね自主的なアプローチの方に好意的であるが、他のステークホ
ルダーは必要なツールとしての法規の重要性を強調した。
ライフサイクル・アセスメントに関しては、方法論の限界を指摘するステークホルダーがいる一方で、
他のステークホルダーはライフサイクル情報データベースの構築と良好な慣行を支援する意識向上対
策の支持を表明した。ニュー・アプローチ手法の使用に関する限り、すべてのステークホルダーが環
境目標に対しそれを使用することに相当な懸念を示した。グリーン公共調達に関しては、意識向上対
策には一般的な支援があった。環境ラベルは重要であるとされたが、様々なステークホルダーが異な
るタイプのラベルを支持した。環境管理・監査スキーム(EMAS、ISO 14001、あるいは製品指向の環
境管理システム(POEMS: Product-Oriented Environmental Management System)でさえ)が有用な
ツールであり得ることは一般に同意されている。製品パネル(小委員会)の考えは興味ありとされた
が、多くのステークホルダーは欧州レベルでの成功の可能性に疑問を呈した。
ステークホルダーからの文書によるコメントに加えて、欧州議会および閣僚理事会もグリーン・ペー
パーに関して意見を出した。閣僚理事会はこのアプローチを概ね支持しているが、欧州議会は IPP が
実際にはどのように適用されるかについて明確化を求めて、公然とは歓迎はしていない。パイロット・
プロジェクトの実施化の決定が部分的にこの要請に答えるべく下された。
欧州委員会はまた、文書によるコメントと意見に加え、同ペーパーを議論するために専門家会議やス
テークホルダー協議を計画した。それはまた関心のあるステークホルダーと様々な双方向の会議を開
催した。
本通達は、かかる協議中に表明された様々な意見の折り合いをつけるべく協議と試みを基に進めて行
く。
47
http://europa.eu.int/comm/environment/ipp/tablelisting.htm
JMC environmental Update
33
Vol.5 No.4 (2003.11)
包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
付属書Ⅱ:考えられるステークホルダーの役割と責任48
1.
加盟国
国内の自主協定の枠組みを確立する。
環境配慮の国家標準化機関への統合を推進する。
国内法でグリーン公共調達に対する障害を除去する。
よりグリーンな製品を推進するために、環境関連税制と優遇措置などの財務施策の利用を、適宜、推
進し促進する。
環境的にネガティブな補助金を排除する。
環境に優しい製品とサービスのために技術的変化を支援する公的資金を提供する。
ライフサイクル思考に関する教育、訓練および意識向上措置。
ライフサイクル・データベースに関する共同体の取り組みに貢献する。
環境設計および LCA についての理解を推進する。
国家研究計画を IPP 関連の研究に注ぐ。
EMS の理解を、国政内も含め、向上させる。
グリーン公共調達のための入手可能な公の計画を策定する。
公共調達のための当局に対する情報措置の理解を奨励する。
欧州エコ・ラベルの発展と使用を推進する。
「不当宣伝に関する指令」の実施を確実にする。
IPP 思考の非環境政策分野への統合を確実にする。
指標の構築を促進する。
IPP の実施に関して報告する。
IPP の実施に関する加盟国と情報を共有する。
国際レベルで IPP を推進する。
2.
産業界(EXTRACTORS、設計者、メーカー、ディストリビューター、小売業者およびリサイク
ル業者を含む)49
環境協定を提案する。
環境配慮の国家標準化機関への統合を推進する。
ライフサイクル思考と環境情報ツールに関する従業員教育、訓練、意識向上措置。
ライフサイクル・データベースに関する共同体の取り組みに貢献する。
環境設計と LCA の理解を向上させる。
ライフサイクル思考を企業の RTD プログラムに統合する。
製品特質を含めて、EMS を活用する。
企業のグリーン購入を実践する。
48
欧州委員会はこのリストに含まれていない。それは、本テキストの本体は欧州委員会自体がすべきと思うことを述べている
からである。
49
これは適宜 EU 域外の産業界にも適用される。
JMC environmental Update
34
Vol.5 No.4 (2003.11)
包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
欧州エコ・ラベルの発展に専心し、支援する。
グリーンな主張に関するガイドラインに従う。
ライフサイクル思考に関する顧客/サプライヤー教育および訓練/情報。
パイロット製品プロジェクトに参加する。
企業の環境報告書を含む IPP 実施に関して報告する。
IPP 実施に関して他の企業およびステークホルダーと情報の共有化。
3.
消費者組織
環境配慮の国家標準化機関への統合の推進。
ライフサイクル思考および環境情報源に関する教育と意識向上措置。
欧州エコ・ラベルの発展と使用の推進。
グリーン製品の購入。
IPP 実施に関する報告。
IPP 実施に関する加盟国との情報の共有化。
4.
環境保護団体
環境配慮の国家標準化機関への統合の推進。
ライフサイクル思考に関する教育および意識向上措置。
EMS の理解を、国政内も含め、推進する。
グリーン公共調達のため入手可能な公の計画にコメントする。
公的調達のための当局に対する情報措置の理解を奨励する。
企業のグリーン購入を推進する。
欧州エコ・ラベルの発展および使用の推進。
IPP 思考の非環境政策分野への統合を確実にする。
指標の構築を促進。
IPP 実施に関する報告。
5.
消費者
グリーン製品の購入。
環境影響を最小化するために製品を継続使用。
製品を正しく処分。
JMC environmental Update
35
Vol.5 No.4 (2003.11)
包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
法的財務諸表
政策分野:環境
活動:政策展開
行動のタイトル:通達「統括的製品政策」
1.
予算ライン+ヘッディング
B4 – 3040 A
2.
全体的な数字
2.1.
アクションへの総割当(パート B):コミットメントが 160.5 万ユーロ
2.2.
対応期間:2003−2007 年
2.3.
費用の全体的な多年度見積:
(a) コミットメント予算/支払予算のスケジュール(財政介入)(ポイント 6.1.1 参照)
百万ユーロ(小数点以下 3 位まで)
2003 年度
2004 年度 2005 年度 2006 年度 2007 年度
2008 年度
以降
合計
コミットメント
支払
(b) 技術的・行政的な補助およびサポート費用(ポイント 6.1.2 参照)
コミットメント
0.526
0.442
0.266
0.208
0.163
0.000
1.605
支払
0.200
0.400
0.350
0.350
0.200
0.105
1.605
小計 a+b
コミットメント
0.526
0.442
0.266
0.208
0.163
0.000
1.605
支払
0.200
0.400
0.350
0.350
0.200
0.105
1.605
(c) 全体的な人事に関わる財務影響およびその他の一般管理経費(ポイント 7.2 と 7.3 参照)
コミットメント
/支払
0.661
0.661
0.661
0.661
0.661
3.305
コミットメント
1.187
1.103
0.927
0.869
0.824
0.000
4. 9 1 0
支払
0.861
1.061
1.011
1.011
0.861
0.105
4. 9 1 0
合計 a+b+c
この計画に決められている見積クレジットは、年度予算手順の枠組の中で管理関連の諸総局
(環境総局等)に与えられた B4-3040A に関する予算の割当内でカバーされるものとする。
2.4.
財務的プログラミングと財務的視点との両立
[×] 提案では、既存の財務的プログラミングと両立する。
[.…] 提案では、財務的支店における関連ヘッディングの再プログラミングを必要とする。
[.…] 提案では、組織間協定の規定適用を必要とする可能性がある。
JMC environmental Update
36
Vol.5 No.4 (2003.11)
包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
2.5.
収入に対する財務影響
[X] 提案は経済的関わりは何もない(実施措置に関して技術的側面に関与している)。
または
[…] 提案は、財務影響を持っている。−歳入に対する影響は以下の通り:
(NB 歳入に対する影響の計算方法に関するすべての詳細と所見は別の付属書に示されてい
る。)
予算ライン
歳入
アクション
以前
[年 n-1]
アクションに続く状況
[年 n]
[n+1]
[n+2]
[n+3]
[n+4]
[n+5]
a) 絶対的な収入
b) 収入の変化
Δ
(関係のある各予算ラインを特定してください。2 つ以上の予算ラインに影響がある場合、表に適当な
列の数を加えてください。)
3.
予算の特性
支出形態
非遵守
4.
差別性
新
EFTA 貢献
申請国からの貢献
財政的展望にお
けるヘッディン
グ
NO
NO
NO
No [3]
法的根拠
欧州共同体設立条約(特に、第 95 条または適宜第 174 条)および第 6 次環境行動計画を定めた欧州
議会と理事会の決定 1600/2002/EC, EU 官報 L 242、 2002 年 9 月 10 日、 p. 1-15
5.
説明と背景
5.1.
共同体介在の必要性
5.1.1.
追求される目的
そのライフサイクルを通じて製品の全体的な環境影響を削減すること。
5.1.2.
事前評価に関連して講じる措置
包括的製品政策への共同体アプローチの必要性を評価するために、グリーン・ペーパーが 2001 年 2
月に採択された。このペーパーへのステークホルダーの回答の中で、欧州レベルでのこのようなアプ
ローチの策定が広く歓迎されていることが明らかになった。
5.1.3.
事後評価に続いて講じる措置
これは後述の 8.2 項に述べる定期報告書で説明する。
5.2.
想定されるアクションおよび予算調停合意
採択に続いて通達が討議のために欧州理事会と欧州議会に送られることになる。ステークホルダーも
意見の提出を歓迎している。IPP の特定な側面に関する法規が将来必要になるということである。か
かる財政的合意は、エネルギー使用製品の環境設計に関する指令案の採択および実施に関連する措置
は何も含まないことに留意ありたい。これは責任ある部門からの別の提案が対象とする。
そのライフサイクルを通じて製品とサービスに接するすべての人々(即ち、特に生産者、消費者およ
び政府)はこの政策に関わっている。彼らは皆ライフサイクル思考を自らの製品関連の活動に組み入
JMC environmental Update
37
Vol.5 No.4 (2003.11)
包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
れるよう求められる。環境 NGO も、よりグリーンな購入の選択肢を推進するのにその独立性を利用
し、かつ環境報告を推進するのに補助的な役割を担う。
5.3.
実施方法
戦略そのものの推進は主として情報主導の行為である。「IPP ツール・ボックス」の特定ツールの更な
る発展は、法規、励みとなるもの(名声と名誉)、協力および情報のコンビネーションを必要とする。
これら財務予想は、一度に一つの「パイロット・プロジェクト」だけが調査されるという想定に基づ
いている。もしいくつかの製品が平行して扱われ、あるいは IPP アプローチのパイロット製品への適
用に続いて特定措置が必要とされるなら、資源の意味するところは再評価されなければいけない。し
かしながら、どんな追加資源も現行の割当によってカバーされるのである。
6.
財務的影響
6.1.
パート B に対する全財務的影響(全プログラム期間にわたる)
(以下の表に記入される総額を計算する方法は、表 6.2.の内訳が説明する。)
6.1.1. 財政的介入
内
訳
コミットメント(百万ユーロ、小数点以下第 3 位まで)
2003 年
2004 年
2005 年
2006 年
2007 年
2008 年以降
合計
アクション 1
0
アクション 2
0
他
0
合計
0
0
0
0
0
0
0
2008 年
以降
合計
6.1.2. 技術的・行政的援助、サポート費及び IT 費用(コミットメント費)
2003
2004
2005
2006
2007
0.461
0.065
0.381
0.061
0.222
0.044
0.169
0.039
0.128
0.035
0.526
0.442
0.266
0.208
0.163
1) 技術的・行政的援助
a) 技術的援助事務局
b) 他の技術的・行政援助
‐内部:
‐外部:
その内、コンピュータ化した管理
システムの構築と維持のための
もの
小計 1
2) サポート費
a) 調査
b) 専門家会議
c) 情報と公開
小計 2
合計
JMC environmental Update
38
1.361
0.244
0.000
1.605
Vol.5 No.4 (2003.11)
包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
6.2.
パート B で推定されるアクションによるコスト計算(全プログラム期間にわたる)
コミットメント(百万ユーロ、小数点以下第 3 位まで)
アウトプットの
種類(プロジェ
クト、ファイル)
アウトプッ
ト数(1〜5
年の合計)
平均単価
[ユーロ]
総コスト
(1〜5 年の合計)
[百万ユーロ]
1
2
3
4 = (2×3)
IPP ツール・ボックスの開発
−専門家会議
−調査
会議報告
調査報告
20
11
4,000
80,000
0.080
0.880
IPP パイロット製品
−専門家会議
−調査
会議報告
調査報告
24
4
4,000
80,250
0.096
0.321
進捗状況のモニタリング
−専門家会議
−調査
会議報告
調査報告
17
2
4,000
80,000
0.068
0.160
内
訳
1.605
総コスト
3 つのアクションに対する調査の割当は例示的(indicative)である。第 2 のアクションで直面する複
雑性の異なる程度により、更なる調査がパイロット製品に向けられることになれば、残り 2 つのアク
ションに向けられる調査はもっと少なくて済む可能性がある。調査の正確な題目、あるいは初年度に
達成された結果により、いくつかの調査は最初の 2 つのアクションをカバーすべく一緒にされるかも
しれない。
7.
人件費および一般管理経費に対する影響
人的・行政資源の必要性は、年度予算手順きの枠組みの中で管理関係総局(環境総局等)に与えられ
る割当の中でカバーされる。
7.1.
人的資源への影響
現行および/または追加資源
を使うアクションの管理に従
事するスタッフ
職の種類
永久的職の数
正職員または臨
時スタッフ
合 計
アクションに由来する仕事
の詳細
臨時職の数
A
4
4
B
0.5
0.5
調査契約、支払、情報科学
C
1.5
1.5
秘書的サポート
6.0
6.0
事務職と経営者
他の人的資源
合計
7.2.
人的資源全体的な財務影響
人的資源の種類
正社員
臨時スタッフ
額(百万ユーロ)
計算方法*
0.648
6.0 × 108,000 ユーロ
その他の人材
(予算ラインを特定する)
合計
0.648
額は 12 ヶ月間の総経費である。
JMC environmental Update
39
Vol.5 No.4 (2003.11)
包括的製品 − 政策欧州委員会から欧州理事会および欧州議会への通達
7.3.
アクションから発生するその他の行政経費
予算ライン
(No.とヘッディング)
額(百万ユーロ)
計算方法
0.013
10 × 1300 ユーロ
(300 ユーロの保険+850 ユーロ
の交通費+150 ユーロの宿泊費を
含む 2 日間のミッションにもとづ
く)
0.013
上記参照
全体的割当(タイトル A7)
A0701 − ミッション
A07030 −集会
A07031 − 強制参加の委員会 1
A07032 − 非強制参加の委員会 1
A07040 − 特別会議
A0705 − 調査と協議
他の経費(特定する)
情報システム(A-5001/A-4300)
他の経費 − パート A(特定する)
合計
金額は 12 ヶ月間の総経費である。
1
委員会の種類とそれが属すグループを特定すること。
Ⅰ. 年間トータル(7.2+7.3)
0.661 百万ユーロ
Ⅱ. アクション期間
5年
Ⅲ. アクションの総費用(Ⅰ×Ⅱ)
3.305 百万ユーロ
8.
8.1.
フォローアップと評価
フォローアップの取り決め
欧州委員会は、通達の公表に従い 3 年毎に IPP アプローチの効果を見直すことを提案している。この
目的により、欧州委員会は報告書報告書を準備して刊行し、諸機構に提出する。
8.2.
評価計画の取り決めとスケジュール
実施のための正確な様式は取り決められなければならないが、それは加盟国やステークホルダーが欧
州委員会に提出した情報に基づくことになる。欧州委員会は、役に立つ報告書を容易にする報告書様
式を調整するべく加盟国とステークホルダーの会合を召集する。欧州委員会はまた、欧州環境庁との
協力の下、政策実施の進捗を評価することができる指標を策定しようとしている。
9.
不正対策措置
活動案は、人事、専門家会議および調査契約に関する経費から成り立っているにすぎない。後者は欧
州委員会の通常の制御メカニズムの対象であって、補助的な不正行為対策の必要は何もない。
JMC environmental Update
40
Vol.5 No.4 (2003.11)
講
演
EU 環境関連法規制の最新動向について
JBCE 環境委員会委員長
NEC ヨーロッパブラッセル事務所長
杉山 隆
当組合では、JBCE(在欧日系ビジネス協議会:事務局/日本機械輸出組合ブラッセル事務所内)
環境委員会委員長で NEC ブラッセル事務所長の杉山隆氏が一時帰国したのを機に、去る 9 月 16
日に開催した「貿易と環境専門委員会及び環境法規専門委員会合同委員会」において、同氏によ
る「EU 環境関連法規制の最新動向」についての講演を行いました。同氏の校閲を得て、その概要
を以下に紹介します。なお、当日は、「WEEE と RoHS の EU 加盟国国内法整備時の問題点」、「TAC
(技術適用委員会)と JBCE」、
「IPP(包括的製品政策)」、
「Energy-Using Products(EuP:エネル
ギー使用製品)」
、「EuP と IPP の関係」および「RoHS 及び有害物質規制の動き(含「新しい化学
品規制案(REACH)」といった最近の重要問題を網羅した講演が行われましたが、IPP および EuP
については本誌前号の「ブリュッセル短信」で、また REACH については本号の「ブリュッセル
短信」でそれぞれ掲載しておりますので、そちらをご参照いただくこととし、ここでは割愛しま
す。
1.
WEEE & RoHS の EU 加盟国
国内法整備時の問題点
分とバラバラなものになるの可能性が高いこ
とを意味します。各国での検討は進んでおり、
たとえばイギリスでは、この前ディスカッシ
ョン・ペーパーが出されました。それに対し、
我々は JBCE のペーパーを作ってロビーイン
グをしています。フランスはジェトロがフラ
ンス産業省との会議をアレンジしてくれたの
で、いろいろと問い合わせをしました。また
10 月頃ドイツの環境省、産業省とも打ち合わ
せの機会をもつ予定になっており、ドイツが
どういうことを考えているか聞いてみたいと
思っています。
(1) 国内法整備スケジュール
関係各位はご存知だと思いますが、WEEE
(廃電気電子機器のリサイクルを定める指
令)と RoHS(電気電子機器に含まれる特定
有害物質の使用制限を定める指令)は、既に
官報に公布されています。WEEE は 2004 年 8
月 13 日までに EU 各国の国内法が整備される
という状況、RoHS は、2006 年 7 月 1 日に発
効する形で、現在進んでいます。
そして、これも皆さんよくご存知だと思い
ますが、加盟国の自由裁量権は、アムステル
ダム条約第 95 条に則っているか、第 175 条
に則っているかで、かなり差があります。第
95 条に則っている RoHS の場合は、各国で基
本的にそれほど大きな違いは出ないと考えて
いますが、第 175 条の方は、環境の保護など
がその目的に入っているので、各国の国情に
合わせた形での国内法整備になります。この
ことは、WEEE の方の国内整備が、各国で随
JMC environmental Update
それぞれの国で国内法をどのように制定す
るかは国内問題のため、汎欧組織である JBCE
としては何処までロビーイングができるか判
らない状況ではありますが、現段階の状況を
ご報告していきたいと思います。
(2) 国内法整備時の課題
スコープ
WEEE のスコープ(対象範囲)が国によっ
てバラバラになってしまうと困ると JBCE が
41
Vol.5 No.4 (2003.11)
EU 環境関連法規制の最新動向について
主張して、実は TAC(Technical Adaptation
Committee:技術適用委員会)でいま、EU で
の調整を検討しているようです。直近の話し
では、いわゆるインディカティヴ(indicative)
ではなく、どうもエクゾースティヴ
(Exhaustive)リスト、いわゆる詳細なリス
トで、個々の製品の詳しいところまで出すよ
うなリストを作りたいというのが根底にある
ようです。しかも「こういうのを対象に含む」、
「これは対象に含まない」という詳しいリス
トを作る動きがあるようにも聞いています。
そして、それでも結局漏れがありますから、
漏れたものに関しては判定基準を設けるとい
うことです。ただしこれは EU 各国を束縛す
るものではありません。TAC で出される結論
は、EU の各国法で守らなければならない基準
として出されるものではなく、単にガイドラ
インみたいな形で出すようです。
つまりこれを守る国と守らない国が出てく
ることになります。たとえば、デンマークは
牧畜の国で、国内に他の産業があまりない国
ですけれども、ここは「電気製品はすべて対
象だ」と言っているそうです。これは欧州委
員会の人が言っていたのですが、デンマーク
はこういうガイドラインを作っても、それを
採用するかどうか判らないようです。ただ
TAC で、「ガイドラインとして一致させまし
ょう」ということに関しては、デンマークは
賛成していないという話です。ですから「い
ちばん最良の場合でも 14 ヵ国はこの対象範
囲で一致するけれども、デンマークだけは駄
目」という形になるかも知れません。
回収責任範囲
回収責任については、地方自治体の回収ポ
イントがあるかどうかが結構大きなポイント
になっています。既にベルギー、オランダな
どはありますが、それがないような国ではこ
れからどうするかという話で、ひょっとした
ら生産者の負担でこのような回収ポイントを
設置させることが義務化されるかもしれない。
また、小売店での回収はある程度義務付けら
れていますけれども、どういう形でやるか。
生産者による小売店からの回収機構を作るの
かどうか。バッテリー等はそれでやっている
ようですけれども、ここのところは国によっ
てどういう形で出てくるか、ちょっと判らな
いという状況になっています。ただ、いちば
ん心配していた、フランス、スペインでも回
収ポイント以降を生産者の責任とする、そう
いう動きもあるようですが、未だよく判りま
せん。
リサイクル処理費用保証、ラベリング
いま最大の問題になっているのが「リサイ
クル処理費用の保証、ラベリング」というと
ころです。リサイクル処理のファイナンス保
証が、最後の段階になって突然 WEEE の中に
規定されました。3 種類の方法でリサイクル
の処理費用の保証をしろということです。①
リサイクル団体に加盟する、②費用を銀行に
デポジットする、③リサイクル費用の保険に
入る、の 3 つのうちのどれかの方法を選べと
いう話になっていますが、そのファイナンス
保証の範囲をどのレベルでやるかという話で
す。要するに「EU 全域の話になるのか、各国
法での縛りになるか」が問題です。
繰り返すと TAC でやっていることに関して
は「強制力」はありません。ただ、これを皆
が使って、ある程度国内法に反映させていく
という話になっています。JBCE は、対象範囲
に対するロビーイングを継続して行っていま
す。
たとえば、当社がドイツのあるディストリ
ビュータにある製品を売り、そのディストリ
ビュータがオランダやフランスに売ります。
当社は、ディストリビュータに売った当該品
のリサイクル保証をドイツにしなくてはなり
ません。ところが、オランダに製品を転売し
たドイツのディストリビュータは、「各国法
ベースでファイナンス保証をしろ」という話
もう 1 点は、対象範囲を一致させて欲しい
ということを JBCE は要求しています。消耗
品、たとえばプリンターカートリッジは
WEEE の対象範囲からは外れているのですけ
れども、RoHS の方で外れているかどうか、
まだ微妙で判りません。我々としては、WEEE
から外れたものは、当然、全部 RoHS から外
JMC environmental Update
して欲しいという話をしています。もし、こ
れが通ると非常に助かることになります。し
たがって、これもロビーイングの 1 つの大き
な目玉になっています。
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Vol.5 No.4 (2003.11)
EU 環境関連法規制の最新動向について
IPR とオランダの失敗例
になると、オランダでもファイナンス保証を
しなくてはいけなくなるわけです。それが売
れ残ったので隣のベルギーで売ったら、また
またベルギーでファイナンス保証をするとい
う風に、何回も、何回も重複してファイナン
ス保証する可能性が非常に高い。
もう 1 点は、インターネットでの販売です。
国境を越えて個人の手に渡る製品を、どうい
うふうにファイナンシャル保証するのか。生
産者というのは一体何なのか。生産者という
のはブランドを付けて売る者とか、3 種類に
分かれて定義されていますが、生産者がこの
ファイナンスの保証をしなくてはいけないと
いうのが、どうも各国法のローカルなレベル
に落ち着きそうです。ドイツで保証された製
品がオランダで売られたとします。オランダ
政府がドイツ政府に「オランダで売られたの
だから、ドイツで積み立てられた保証金をよ
こせ」といっても、多分、ドイツの政府は金
をよこさないからオランダでもまた保証させ
るのだというのが、その主旨だそうです。「各
国でやれ」というこのままでいくと、
「重複保
証」というようなことにもなりかねません。
更に悪いことには、ラベリングして「この
ファイナンス保証をする生産者の特定をしな
さい」というのがあります。この場合には、
先ほどのようにドイツのディストリビュータ
に我々が売った時、我々としては、生産責任
者は「NEC ドイツ」とラベリングをします。
しかしドイツのディーラーがオランダの小売
店に卸した場合、オランダの小売店は、当然
オランダでの保証をしなければいけないです
から、ラベルを張り替えなければいけないわ
けです。いったい誰がそのラベルを供給する
か、これは全く判りません。
いま、この問題は随分指摘され、各国とも
問題点は大分理解しているのですけれども、
かといって、それでは「ファイナンス保証を
ヨーロッパ全域でやっていい」とは言ってい
ません。彼らはやはり「それは我が国に持っ
てきた時には、我が国でちゃんと保証しなさ
い」という話になっていて、これがどのよう
に決着するかが非常に大きな問題になってい
ます。
JMC environmental Update
IPR(individual producer responsibility)が
今回の WEEE と RoHS の、特に WEEE の基本
的な柱になっています。これは「生産者は自
社ブランド製品の処理費用のみ責任を取れば
よい。他社の費用の責任を取る必要はない」
ということです。このような形にして自社の
製品にのみ責任を持たせれば、環境設計など
で自社の製品の環境負荷あるいはリサイクル
費用を下げるようなインセンティブが働くの
ではないかということで、この IPR は設定さ
れました。しかしこの IPR が機能するために
は、廃棄処理場で生産者の識別が必要になる
のです。何故ならば、廃棄処理場で「X 社の
製品を何台廃棄した」ということが判らなけ
れば IPR はできません。識別が必要なのです。
更に、フリーライダーと我々が呼んでいる
「売り逃げ」を未然に防ぐ必要があります。
フリーライダーにもファイナンス保証をさせ
なければいけない。つまり「ファイナンス保
証の徹底化」が必要です。
かつてオランダで、ICT Milieu というパソ
コン等情報処理機器の IPR に基づく処理シス
テムを作りました。要するに、廃棄処理時に
ラベルを認知させて「お宅の製品を何個処理
した」という形を実施したのです。しかし、
結果は見事に失敗して、半数以上はいわゆる
オーファン・プロダクト(orphan product)、
つまり孤児製品になってしまったのです。結
局、オランダは、2003 年 1 月にマーケット・
シェアに基づく負担というシステムに変更し
ています。
この IPR がどうなるのか。各国で「IPR を
どうするのだ」ということが「頭痛の種」に
なっています。ドイツ、フランスの今回の国
内法法制化の動きを見ていると、IPR に基づ
いて 1 個 1 個、ブランド名を確かめて処理す
るような動きも見られ、そんなことになった
ら大変な費用負担になります。
いまベルギーには「RECUPEL」というシス
テムがあります。パソコン 1 台の処理費用は
9 ユーロ(≒1,200 円)です。今度、日本で
はたいへん高い処理費用を取るという話にな
ったみたいですけれども、ヨーロッパでは、
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Vol.5 No.4 (2003.11)
EU 環境関連法規制の最新動向について
現在のところテレビは 10 ユーロ(≒千数百
円)くらいです。これを IPR みたいな形で 1
個 1 個、ブランドを確認して処理するように
なったらたいへんな費用になるのではないか
ということで、各国の国内法を整備する担当
者は頭を抱えているという状況です。
国がそれぞれ悩んでいるようです。どういう
形になるか、未だよく見えません。
実態との乖離、データ報告義務その他
実際のシステム、Historical Waste
それでは実際のシステムどうなるのか。前
述したように、オランダ、ベルギーでは 1 国
1 システムになっています。パソコンであれ
ばパソコンは 1 システムに入っているので、
そのシステムに入ってしまえば解決済みです。
ただ、これをやると費用が全部一律になりま
す。当然、競争が起こりませんから、競争排
除になって独禁法の問題があるとして、ドイ
ツではこの方法は認められないと言っている
そうです。このシステムは中小の企業には非
常に簡便ですが「自社の製品にだけ責任を持
つ」という IPR の精神からは、まったく逆行
する形になるといって攻撃をするところもあ
ります。
逆に、複数のシステムがある程度林立する
形では、当然競争法上の問題はなくなるけれ
ども、コストが膨大になる可能性があります。
このシステムでは廃棄時にブランド別に分類
する必要があります。車でしたらブランド名
はせいぜい 20 社〜30 社ぐらいです。電気製
品の場合、特に家電製品、そして小物になれ
ば数千社のブランドがあります。それをどの
ように処理していくのかが大きな問題です。
また、企業間の提携も模索して行かなくて
はならない。どういう形で提携ができるか、
費用をどうするか、結構これも時間がかかり
そうな感じがします。
Historical waste の処理に関しては、マーケ
ット・シェアに応じた負担ということしか書
かれていませんで、ビジブルフィー(visible
fee)の導入も可能ですと書かれています。
「ビジブルフィーを導入したい」という国が
圧倒的ですけれども、ビジブルフィーという
のは、企業が 1 社でも反対すれば成功しない。
いまのところビジブルフィーは導入したいけ
れども、どうしたらいいかということで、各
JMC environmental Update
44
機器解体処理としては、プリント基板、難
燃剤、PCB(ポリ塩化ビフェニール)のコン
デンサなどは、全部、手で分離しなさいと言
っています。私は、最近、ベルギーの処理シ
ステムへ行ってみましたが、そこではプリン
ト基板を分離していませんでした。テレビの
解体工場へも行ったのですが、プリント基板
などは分離していませんでした。古いテレビ
等には当然 PCB 入りのコンデンサも入ってい
ますけれども、それも全く分離処理していま
せん。難燃剤が入ったカバー等も分離処理し
ていませんでした。それが実態でした。
ドイツのデュッセルドルフから少し北の処
理場へ行った時には「さすががドイツだ」思
いました。壁に大きなサンプルが提示され、
「こういうものは全部取り外せ、これは取り
外さなくていい」という図があり、きちんと
PCB 入りのコンデンサかどうかが判るように
してありました。作業は壁の図に則って進め
られているようで、「国によって対応が随分
違う」と思いました。そして「こんな真面目
にやるのはドイツとか、ごく一部の国ではな
いか」とも思いました。ただし、リサイクル
率、再生率をどういうふうにやっていくのか。
どういう定義になっているのかまでは、よく
見えませんでした。
製品の生産者は、リサイクル業者に対する
データ供出の義務があります。その中には、
リサイクル業者が、解体する時の「解体方法」
とか、「有害物質がどこに付いている」という
情報を尋ねてきたら、きちんと対応し、出さ
なくてはいけないことになっています。この
点をどうするか。リサイクル業者が要求する
時に必ず用意しておくというだけでいいのか、
それとも一般的に公共の Web を作って、そこ
に全部登録させるようにするのか。どれにし
ようかというディスカッション・ペーパーが
出ています。
JBCE としては、率直にいって、殆どリサイ
クル業者からの問い合わせはないので、一応、
書類の用意だけはしておいて「リサイクル業
Vol.5 No.4 (2003.11)
EU 環境関連法規制の最新動向について
者が言ってきたら出す」というのが一番楽な
対応ではないかと考えていますが、全部の情
報を一般公開のインターネットに載せるとい
う話になると、企業は膨大な量のデータを提
供しなくてはならなくなります。この決着が
どのようになるか、大いに注意深くして見守
る必要があると思います。
の実際の設計、生産活動に大きな影響を与え
る問題は TAC で検討されます。
これらに関しては、JBCE の活動が突出して
欧米の業界を主導して動いています。
閾値
また、消費者、当局に対する情報公開とい
うのが、どこまで義務付けられるかという問
題もあります。
環境設計に関しては、リサイクルし易い設
計を推進する義務が政府に課せられています。
これをどうするか。そして EuP といういわゆ
る環境設計指令との関係をどうするのかとい
うところが WEEE の国内法の整備に関する課
題です。
2. TAC(技術適用委員会)と JBCE
技 術 適 用 委 員 会 ( Technical Adaptation
Committee)は、WEEE と RoHS で未解決の部
分、技術的な詳細事項が決定していない部分
を討議するものであり、EU 加盟国代表と欧州
委員会から構成されています。しかし何か決
定する段階では、決定権は加盟国の代表しか
持っていません。たとえば、後述する閾値(有
害物質の最大許容含有量)は欧州決定
(decision)という形のもので出てくると思
うのですが、最終判断は EU 加盟国の代表が
投票して決めて、欧州委員会の方には決定権
はないというのがこの TAC の規則だそうです。
RoHS 指令で残されている課題というのが
幾つかあります。その 1 つ目は閾値です。2
つ目は有害物質含有の有無をどのようにして
決定するのかというテストメソッド(有害物
質検査方法の EU 加盟国間の調和)の問題。3
つ目に対象範囲(対象製品と対象外製品の明
確化)をどうするかです。これらは EU 内で
調和するのかどうか。前述したように RoHS
は各国で違いがあってはいけない、いわゆる
市場統一のための法律ですから、対象範囲は
各国でバラバラになっては困るわけですから、
調和されなければいけないわけです。
上市問題もあります。何時の時点で市場に
投入したものが RoHS 対象になるか。これら
JMC environmental Update
45
閾値(しきいち)はサプライチェーンの管
理に重要なのですけれども、既に、自動車廃
棄処理指令(ELV: End-of-Life Vehicles)では、
鉛、水銀、六価クロム:1,000 ppm、カドミ
ウム:100 ppm と決定しています(decision:
2002 年 6 月)。ELV では難燃剤の規制がされ
ていないため、難燃剤に関する閾値はありま
せん。但し、ELV の決定を読んで見ると判る
のですが、「intentionally use」という言葉が
入っていて、「意図的混在の場合を除いて、こ
ういう閾値にします」と書いてあります。こ
れは真面目に読むと「意図的に混ぜた場合は
閾値ゼロ」だから 1 ppm でも入っていたら、
それは法律違反という話になります。それで
は非現実的であり、当局による恣意的な運用
をされる危険性があるということで、RoHS
に関して JBCE は最終ポジションを次のよう
に作成しました。
① 基本的に閾値の値は ELV と同じ値にして
欲しい。難燃剤に関しては、ちょうどそ
の頃 PBDE のペンタとオクタの閾値が
1,000 ppm と決まったので、難燃剤も
1,000 ppm にして欲しい。
② 閾値をどういう形で定義するか。欧米の
企業からは均一物質あたりの値ではなく、
コンポーネントあたりの閾値にしろとい
う話が多く出ました。コンポーネントと
いう大きな単位で一括りにすれば、有害
物質をコンポーネントの一部にある程度
使うことができるわけです。JBCE は法の
精神から云って、やはり均一物質あたり
の重量比という形を主張しました。欧米
の一部の企業ではこれに抵抗するところ
もありました。又、鉛が 1,000 ppm とい
う の は 困 る 、 2,000,ppm に し ろ 、
5,000,ppm にしろという話が欧米の方か
ら随分ありましたが、JBCE としは、電子
部品のサプライヤーが自動車メーカーに
も納めることが多いため、ELV と調和を
Vol.5 No.4 (2003.11)
EU 環境関連法規制の最新動向について
取って 1,000,ppm にするべきであるとし
ました。
ムの扱いをどうするか。臭素系難燃剤は、非
破壊検査で臭素が入っているかどうかは判る
けれども、それが PBDE なのか、TBBPA なの
か判らない。しかし他の方法で分別すること
ができないか。
③ 「意図的混入」という表現を全部外し、
閾値も意図的も何も関係なく一本化にす
るということでポジションを作成しまし
た。
④ 検査方法については EU で統一した方式
でやって欲しいという要請をしています。
⑤ サプライチェーンへの発注を控えている
ので、ともかく早急に閾値を決定して欲
しいという話をポジションに入れました。
これに関しては欧米の EICTA(欧州情報通
信技術製造者協会)、AeA(米国電子協会)等
と共同提案の形を検討したのですが、彼らは
纏まらず、結局、我々のポジションが最終的
に欧州委員会からも支持され、ここに挙げた
我々のポジションで、多分、11 月頃決定する
と思います。11 月に TAC の大きなミーティ
ングがあって、その頃に閾値に関してはほぼ
前述の方針で進むと思います。これは欧州委
員会で確認が取れています。(最近分かった
ことですが、スウェーデンのエレクトララッ
クス(という白物家電のメーカーは、閾値に
「意図的混入」と言う表現を入れるべきだと
いうロビー活動をしているようです。私には
彼らの意図が理解できません。)
三番目は検査機器の誤差の問題。
テストメソッド
いま我々がやろうとしているのは、テスト
メソッド(検査方法の EU 域内調和)のポジ
ション・ペーパー作りです。通関とか、いろ
いろなところで有害物質が入っているか、入
っていないか、というテストが行われる筈で
す。テストメソッドが各国でバラバラだと困
るので、いま、EU 域内のテストメッソドを調
和させてくれるようお願いをしています。私
がヨーロッパを出る直前に欧州委員会へ行き、
我々の考えを示し、先方がどう思うかという
話をしてまいりました。
四番目は、検査手順です。多分、最初にス
クリーニングをやり、次に詳細検査をやる。
まず非破壊をやり、その次に破壊をやるとい
う話になってくると思うのです。そして検査
データの集積です。この辺りは、これから考
えなければいけないのですけれども、多分、
最初にスクリーニングをした時に、無鉛ハン
ダを使っていても、高温鉛ハンダを部品の一
部の接着に使ったり、あるいは鉛ガラスが一
部入っていたりすると当然鉛が検出されます。
そんなところまで詳細検査されると困ります。
これは本当に可能かどうか判らないのですが、
ある「パターン」があって、そういう「パタ
ーン」であれば高温鉛ハンダを使っていると
か、鉛ガラスを使っているという形で、我々
が除外項目にしてもらったものは、スクリー
ニングの段階できちんと除外してもらえるよ
うな検査手段はないのかどうか。これから話
をしようと思っています。
欧州の団体などは、「これは RoHS に準拠
した製品です」という宣言を書類で提出して、
検査されないで済むようなシステムを作ろう
という動きをしようとしています。しかし、
検査当局としてはそのような宣言をいくらし
簡単に触れると、最初に、検査方法として、
たとえば非破壊試験(X 線・スキャンなど)
と破壊試験(クロマトグラフィなど)をどう
いうふうに組み合わせてテストをやっていく
のか。テストメソッドで、非破壊試験とか、
簡単な形では検出できない三価 vs 六価クロ
JMC environmental Update
次に検査単位です。定義では、ホモジニア
ス・マテリアル(homogeneous materials)
という均質の物質に対するパーセンテージな
のか、またはいろいろと混ざっているヘテロ
構成材がベースとなるのか、それとも欧州の
一部の企業が強硬に主張している部品単位と
いう話になるのか。更に、アッセンブリ単位
と言っているところもあります。部品単位に
なると「1 つの大きな部品という塊があって、
それ全体が重量の 1,000 ppm を超えなければ
鉛は使っていいというふうにしてくれ」と一
部の企業は言っているのですけれども、その
辺りを本当にどうするのか。検査単位を早く
決めて欲しい。
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Vol.5 No.4 (2003.11)
EU 環境関連法規制の最新動向について
て貰っても何の意味もない。実際に検査機に
突っ込んで、鉛を使っているか使っていない
か、カドミウムが入っているか入っていない
かを知りたいだけの筈なのです。
しかし、検査に引っかかって、検査当局か
ら「お宅の製品から許容量を超える鉛が検出
された」と連絡を受けたとき、「それはこうい
うパターンではないですか。それならば、高
温鉛ハンダを使っているだけです。」と答え、
それを検査当局が了承してくれたら大いに助
かる。したがって「テストメッソドのパター
ン化」ができないかどうかどうか。この点を
欧州委員会に話しに行ったら、非常に興味を
持ち「是非、それは検討して欲しい」という
ことでした。これから JBCE としても、その
ような提案を行えるか否か、皆さんといろい
ろとご相談しながら提案書を作成中です。そ
してこれを次の 1 つの大きなターゲットにし
て行きたいと思っています。
対象範囲と上市問題
RoHS 対象範囲の EU 域内調和の問題提起は
JBCE が行いましたが、同様に、WEEE の対象
外製品の判断材料、定義も JBCE が提案し、
更に、それらの製品群を自動的に RoHS の対
象から外すことを要請しています。
産業用大型設置機器類は、専門家が取り外
しを行い、廃棄の時も専門家が関わるものと
いうことで、WEEE の対象から外してくれる
ように要請しています。その際、実は、当社
の製品を写真で示しました。郵便自動振り分
け装置(郵便のソーター)で、郵便番号では
がき、手紙類をソーティング(sorting)する
装置ですが、これは巨大なマシンなのです。
本日のこの会議室よりも大きい機器ですが、
そのような装置まで WEEE の対象にしないよ
うに要請をしています。これは理解してもら
えそうです。産業用大型設置型機器が WEEE
から外れたら当然 RoHS からも外して欲しい
というのが、我々の目玉になっています。
上市問題は、どの時点で市場に投入した製
品から有害物質制限が課せられるのかを扱う
ものです。工場出荷時、あるいは EU への通
関時が 2006 年 7 月 1 日以降の製品から対象
とするのか、それとも小売店でお客さんに渡
った時点とするのかによって、流通在庫が生
きるか死ぬかという重要な問題を抱えていま
す。小売店でお客さんに渡った時点だという
話になると、流通在庫が全部対象になって、
有害物質を含んでいる流通在庫は死んでしま
います。実は、ELV では小売店での販売時と
決められました。車の場合は、6 月 30 日まで
は有害物質を含んでいる製品をお客さんに渡
すことは許されるけれども、7 月 1 日以降、
お客さんに渡るものから駄目ということです。
その時点での流通在庫は、有害物質は一切含
んでいては駄目ということで、場合によって
は、流通在庫が全部売れなくなるケースもあ
り得ます。RoHS に関してはいま、欧州委員
会法務総局で検討中ですが、ヴァルストラム
委員が欧州議会の誰かに答えた回答がついこ
の間出ました。それによるとどうも工場出荷
時・EU 通関時に近い回答をしていました。ひ
ょっとしたらその方向になるかも知れないと
期待しています。
3. RoHS 及び有害物質規制の動き
(1) 有害物質使用規制指令(RoHS)
RoHS が、EU 統一市場内で同一の規制(ア
ムステルダム条約第 95 条)に準拠している
ことの重要性を幾つかの例を挙げて説明しま
す。
これが認められると大変助かります。とい
うのは、たとえばそういう装置は、リレーな
どをいろいろのところで使っているのですけ
れども、そういうリレー等に鉛がほんの少し
入っていたというのは気にしなくて済むわけ
JMC environmental Update
です。この対象範囲を外して貰うことをいま
強く働きかけます。たとえばダイキンが手掛
けておられるようなビルディング設置型のエ
アコンディショナー等は勿論 WEEE の対象範
囲から外して欲しい。何故なら、自分たちが
配管しなかったような塩化ビニールに鉛が入
っていたと言われても大変困るわけです。車
載、船舶用の通信機器等も当然外して欲しい。
それから先ほどお話した WEEE 対象外の消耗
品、たとえばインクカートリッジ等を RoHS
対象からも外して欲しいと、いま精力的に動
いています。
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Vol.5 No.4 (2003.11)
EU 環境関連法規制の最新動向について
1 つ目は、1 ヵ国でも異なる規制が行われ
ると、他国全てに波及して行くという話です。
オランダで 2002 年 3 月、突然、臭素系難燃
剤 FR−720 が使用禁止になりました。これに
は大いに関心が注がれました。その使用禁止
の理由が、有害性などの実データに基づいた
ものではなく、単に「有害性がないという調
査結果が乏しい」と、予防原則により禁止さ
れたためです。そして FR−720 の構造がプリ
ント基板等に使われている臭素系の難燃剤
(TBBPA)に似ている、だから危ないという
ものでした。TBBPA に関しては、現在、リス
クアセスメントの最中ですが、特別に有害だ
という証拠は未だ何も出ていません。TBBPA
が有害だということで禁止になったら大変で
す。現在使われているプリント基板の大部分
は TBBPA を使っています。
FR−720 は主にプラスティック製の配水管
に使われていて広く欧州域内で流通し、生産
まで認められている製品です。しかし、FR−
720 は、日本を含めたアジアで電気電子機器
の一部にも使用されていることが判りました
ので、これは私ども JBCE がオランダの在日
大使館などを通じて抗議し、またアメリカの
方からも抗議があって、最終的には今年 3 月
にオランダ政府に FR−720 の措置を撤回さ
せることに成功しました。
オランダ政府が何で直ぐに撤回せざるを得
ないような禁止措置をしたのかというと、あ
る国の企業が「オランダで FR−720 を生産す
る工場を作りたい」と申請をしそうだという
動きを察知したオランダ政府が、突然 FR−
720 に関する法律を作って「使用禁止」とし
たのです。申請した会社はオランダでの工場
立地許可が下りませんでした。オランダ政府
としては 1 年間でその目的が果たせたので
「禁止措置」を引っ込めたのですが、この法
律が出た時点で、一部の電気電子機器メーカ
ーでは FR−720 に関しては既に使用を自主
規制したところもあると聞いています。した
がってどんなにその法律が理不尽なものだと
しても、一旦一つの国で物質の使用規制が法
制化されてしまうと、その国にだけ特別な製
品を作るわけには行きませんので、メーカー
はその物質を他の国でも使えなくなってしま
います。たとえばデンマークで「TBBPA は一
JMC environmental Update
切禁止」という法律ができたとすると、これ
は他の国にもデンマークの動きが波及してし
まう。これを防ぐのが、域内の自由流通を確
保するアムステルダム条約第 95 条なのです。
2 つ目は、先行して物質規制を目論む加盟
国を牽制することです。先ほど例に挙げたデ
ンマークは、酪農王国であって産業界が非常
に弱く、比較的物質規制が容易に決定できま
す。彼らは、広範囲な鉛の使用禁止の法令を
準備しました。いろいろなペンキ等に含まれ
る鉛は全面的に禁止になりました。その時、
彼らは、電気電子機器の使用制限も目論んだ
のです。彼らのところで最終的に出てきたペ
ーパーでは、
「RoHS の制定までは延期させる」
といものでした。これは、欧州委員会がアム
ステルダム条約第 95 条に則った RoHS を制定
するので、先行した規制は控えるようにとい
う圧力を掛けて牽制したということです。こ
の牽制がなかったら、デンマークが勝手に電
気電子機器に関する鉛の使用禁止を実施して
いた可能性は大いにあって、2003 年ぐらいに
はスタートしていた可能性は十分あります。
その場合に、デンマークだけに「モノ」を売
らないということはできませんから、企業と
しては、泣く泣く無理をしてでも無鉛ハンダ
に走らざるを得なかったかもしれません。こ
のように、1 つの国が先行しそうなのを、あ
る程度阻止できるのです。ただし、一部臭素
系難燃剤の禁止は既に先行して実施していま
す。
有害物質の使用禁止に関しては、市場で各
国の動きを注意深くウオッチしていないと、
お話したように、突然 FR−720 のような動き
が起こるので、定期的な観測が必要です。
(2) ノルウェーの難燃剤規制活動計画
もう 1 例を申し上げます。これはノルウェ
ーの話ですが、ノルウェーは EU に加盟して
いません。EU 域外国です。つい先ほど「ノル
ウェーはどうして入っていないの?」と問わ
れた方がおられたのですが、ノルウェーには
石油資源があって国民が豊かな国なのです。
ですから「EU に入ると、失うものの方が大き
い」と、最終的に国民投票で加盟しない決断
をしたのです。
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EU 環境関連法規制の最新動向について
第 1 は、分類とラベル貼付による代替品へ
の移行促進です。分類をして、製品に必ずラ
ベルを付けるように強制し、いろいろな面倒
なことを法的に強制すると、企業側は面倒な
ことを避けようとして、代替品に移って行く
ことが促進されるということが書いてありま
した。これは、他の物質でも実際に効果のあ
ったものであるとしています。
域外国であるノルウェーは、独自の物質使
用規制が可能です。特に、彼らは、北海でタ
ラ等を捕って食用としているので、ダイオキ
シン、臭素系の難燃剤が魚介類に体内蓄積し
たり、食物連鎖で人に影響が出たりというこ
とで非常に問題視しています。実は、最大の
原因は油田から出てくるものらしいのですけ
れども、一部の漁場では魚の収穫が禁止され
ています。今年 1 月に、ノルウェーの汚染管
理局が臭素系難燃剤の使用規制に関するアク
ションプランを発表しました。これは、現在
EU 域内に流通している臭素系難燃剤約 70 種
類のうち PBDE(ペンタ、オクタ、デッカ)
のうちの、少なくともペンタ、オクタに関し
ては使用禁止、デッカも近々に使用禁止、そ
して HBCD(Hexabromo-cycle- dodecane)、
TBBPA(Tetrabromobisphenol-A)も将来的に
は禁止の方向です。繰り返しになりますが、
プ リ ン ト 基 板 の 難 燃 剤 と し て 90% 以 上 は
TBBPA を使っています。HBCD は繊維等に使
われていますし、一般的な家屋の難燃剤とし
ても使われているものと思います。これらが
禁止されると、企業としては対応が非常に厳
しくなるのですけれども、彼らは 2010 年ま
でに使用禁止を中心とした規制を行い、基本
的には使用禁止にすると言っています。
第 2 は、PBDE の全面的な使用禁止です。
ペンタ、オクタに関しては、現在、EU と同時
に(2004 年 7 月 1 日から)使用禁止として
いて、これは RoHS に先行しています。デッ
カは、2005 年 1 月 1 日までには EU が使用制
限の指令を出すと予想されるので、それに合
わせるのだ書いています。実は、デッカに関
して、現在のところ、EU が本当に使用禁止を
打ち出すかどうか判りません。しかし、EU
が決定しない場合にはノルウェーだけ独自で
実施するとしています。
ノルウェーは、EU 域外国ですが、ノルウェ
ーに製品を輸出している企業は、当然、臭素
系難燃剤は使えなくなります。たとえばエリ
クソン、ノキアが、ノルウェー向けのモバイ
ルフォンには臭素系難燃剤を使わず、他の地
域向けには臭素系難燃剤を使うのかといえば、
それはできないと思います。どちらかの会社
は、既に、臭素系難燃剤を使わないプリント
基板を作るべく、いま一所懸命やっています。
EU 域外国の動きであっても、その影響は、
EU 全体に出てくる可能性があります。そのよ
うな動きをする国が 1 ヵ国、2 ヵ国出てくれ
ば、最終的には EU 全体で使用制限しようと
いう話になってきます。
ノルウェーの難燃剤の規制アクションプラ
ンは、どのようなものか。
JMC environmental Update
第 3 は、HBCD、TBBPA に関しても、使用
制限の法律を施行することです。現在、EU
内で TBBPA に関しては実際にリスクアセス
メントを実施中です。HBCD もやっていたか
どうか確認できませんけれども、もし、2005
年 1 月までに EU が使用制限についての決定
を下さなかった場合は、第 2 の場合と同じく、
「ノルウェーは独自で法律を作って禁止す
る」と言っています。ただ、この禁止する時
期は、前述したように、2005 年になるか、2010
年になるか判りません。
第 4 は、臭素系難燃剤の代替品への移行の
指導です。ノルウェーの製造者には、代替品
使用に関する移行計画の提出を義務付けてい
ます。輸入品販売会社には、将来の使用量削
減計画の提出を義務付けています。いろいろ
な形で使用量をともかく制限するのだと言っ
ています。
このように有害物質の制限というのは、欧
州域外からも出てくるのです。
☐
49
Vol.5 No.4 (2003.11)
連載
欧州環境規制動向
〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
I.
EU
1.
家電メーカー、EuP 指令が技術革新を抑
圧する可能性ありと警告
しているように思われる。この点が CECED
を苛立たせる原因になっている。
エネルギー使用ルールを定める将来の製品別
規則は、環境に関する技術革新を阻害する可
能性があると、家電メーカーは警告している。
委員会は、9 月 9 日、指令案公表から 1 ヶ月
余り経過したところで、エネルギー使用製品
(EuP)に対する環境設計要求事項設定のた
めの枠組み構築に関する提案を正式に公表し
た 1。
さらに、「製品グループに関する実施措置を
公表するとすれば、あらゆる場合において、
メーカーもそのプロセスに全面的に関与させ
た上でその正当性を明確にしなければならな
い。」と述べている。
二 日 後 の 9 月 11 日 に 、 欧 州 家 電 工 業 会
(CECED)は、将来の指令に含まれる特定規
定が明確化されない限り、「家電製品の環境
パフォーマンス改善のために、安定した積極
的な取組みが取れなくなる危険性がある」と
して、同案を激しく批判した。
同声明文では、さらに「業界の意欲的かつ一
方的なコミットメントを通じ、家電製品業界
は、自主協定および環境設計向上によって製
品のエネルギー効率の改善を率先して実施し
ている、つまり市場を利用して変革を推進し
ている」としている。CECED は、かかる努力
により「目覚しい成果」がもたらされたと主
張し、つまり同業界は世界のリーダーである
としている。また、「このような実績を損なっ
てはならない」と付言している。
同枠組み指令は、エネルギー使用製品そのも
のに対する要求事項を定めるものではなく、
むしろ技術に関する実施指令に委ねられてい
る。しかし、かかる実施措置を必要とする製
品グループの選択方法について広範な基準を
定めており、また内容に関する指針を示して
いる。
同指令は、業界との自主協定が効果的に機能
している場合には、業界が規制を回避するこ
とを認めながらも、文言では実施措置を支持
1
また、このような自主的取組みに加えて、同
業界は、「現在、様々な EU および国内の規制
措置に巧みに対処している。」例えば、エネル
ギーラベル表示制度、WEEE 指令や RoHS 指
令など、いずれも製品の環境パフォーマンス
に関係するものである。
EuP 提案については、下記のサイトを参照のこと。
(編者注:本誌前号 Vol.5 No.3 に同提案の和訳
を掲載)
http://www.europa.eu.int/comm/enterprise/eco–
design/index.htm
JMC environment Update
CECED の EuP 指令案対策委員会の Henrick
Sundström 議長は、「規制措置あるいは非規
制措置がすでに存在し機能しているのであれ
ば、委員会は製品別環境設計措置を導入すべ
きではない。自主協定のような非規制的な措
置の成果は等しく重要であり、同様に考慮さ
れるべきである」と同委員会の声明文の中で
述べている。
50
Vol.5 No.4 (2003.11)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
い一連の実施措置に委ねられている2。その代
わりに、同指令案は、かかる実施措置に対す
る明確な青写真を定めている。例えば、エコ
ラベル表示製品にいわゆる「見做し適合」の
適用などである。言い換えると、当該製品は、
自動的に適合を証明する CE マークを表示す
る資格があるということである。
CECED は、「かかる規制および非規制のイニ
シアティブを業界が遵守することで、EuP 指
令に基づく実施措置の必要性がなくなること
を明らかにしなければならない」と主張して
いる。
CECED によると、8 月 1 日付提案は、実施措
置策定に関する委員会の命令の範囲が正確に
定義されていないため、業界には分かりにく
いものとなっており、環境行動を妨げる可能
性があるという。
実施措置の対象となる他の製品について、
一般的に、メーカーは CE マーク表示に先立
ち、適格を自己証明しなければならない。そ
して、かかる証明の根拠として技術文書の作
成および検査報告書の提出が義務づけられる。
「しかもなお悪いことに、関連性、比例性、
真の必要性あるいは法律や自主的取組みがす
でに存在するかどうかではなく、実施措置の
構築が容易であることを理由に特定の業界が
対象とされるのではないかと危惧している。
このようなことは回避可能であり、そうしな
ければならない」と主張は続く。
委員会は、一部の不特定製品については EU
認定試験機関であるノーティファイド・ボ
ディを用いて、第三者よる証明方法を認めて
いない。しかし、同案の説明書によると、実
施措置では「然るべき正当性と根拠となる文
書がある場合に限り」第三者認証に頼ること
ができると強調している。
また、要求事項が「不明確かつ予測不能」で
あり、規制当局は執行力を欠いていることか
ら、競争に歪みが生じると予想している。同
声明文では、「大小合わせた EU メーカーおよ
び対 EU 輸入業者という市場関係者のすべて
に対する要件は同じでなければならない」と
述べている。
環境製品宣言(EPD: Environmental Product
Declarations)は、EU が予定通り将来この分
野における法律を採択した場合、エコラベル
と同様に EuP 措置への見做し適合を適用させ
る可能性がある。他の見做し適合手段も検討
可能であると、同説明書には述べられている。
枠組み指令とは、製品の環境パフォーマンス
向上の推進および達成を促がすシナリオを定
めるべきものである。「実施措置は、市場動向
が潜在的な環境改善を明確にして取組めない
場合にはじめて実施すべきものである」と、
CECED は述べている。
2.
また、枠組み指令により、以下に示すような
実施措置の内容に関する共通基準を定められ
る。
・ 製品のライフサイクル全体を考慮するこ
と
・ ユーザーの立場から、製品性能が著しく影
響されないこと
エコラベル、EuP 指令への適合を証明
・ 健康および安全に悪影響がないこと
エネルギー使用製品に関する製品別設計規則
を定める将来措置への適合は、この夏に欧州
委員会が発表した枠組み指令案に基づくエコ
ラベル表示によって達成が可能である。同指
令案は、持続可能なエネルギー使用を確実な
ものとするための製品設計の方法については
具体的な規則も定めず、まだ採択されていな
JMC environment Update
・ 製品の値頃感およびライフサイクル・コス
トなど、特に消費者に著しく負の影響がな
いこと
2
51
同案は、以下のサイトを参照のこと。
http://europa.eu.int/eur-lex/en/com/pdf/2003/co
m2003_0453en01.pdf
Vol.5 No.4 (2003.11)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
・ EU 域外市場も含め、メーカーの競争力に
著しく負の影響がないこと
・ 電気モーターシステム:
同提案は以前の草案とほとんど変更がなく、
実施措置を策定する対象製品を挙げるのを避
けている。草案と同じく、同提案によると、
同指令は、いかなる形態であれ、目的どおり
機能するためにエネルギーを使用する製品を
対象とするとしている。但し、実際のところ、
実施措置が策定されるのは、おそらく電気あ
るいは固形・液体・気体燃料を使用する製品
を対象とする場合だけであろう。
・ 家電製品:
・ 家庭および第三次産業における照明:
24 メトリックトン
・ 消費者向け電気製品:
14 メトリックトン
・ 商業用暖房・換気・空調
(HVAC: heating ventilating
air conditioning)システム: 8 メトリックトン
委員会は、枠組み指令が採択され次第、実施
措置を上程すると誓約している。
議論を呼ぶところであるが、同指令および実
施措置は、単体で販売される EuP 用部品には
適用されるが、構成部品には適用されない。
委員会は、製品の環境影響は特定部品の機能
に左右される可能性があると推論している。
説明書には以前の草案と比べ強化されたセク
ションがあり、これは実施措置のために選択
された立法手段に対する議会の反対を回避す
るのが目的である。すなわち、各国代表が構
成する規制委員会の助言に基づき欧州委員会
の指令を採択するというものであり、これに
より MEP は発言権を失うことになる。
枠組み指令は、将来の実施措置に関する製品
選択にかかわる主要規則として、以下に挙げ
る 4 つの決まりを定める。
¾ EuP が、販売・取引量の相当部分を占める
こと
議会は、実施措置案に関して、なぜ共同決定
手続きに基づき加盟国と同等の発言権をもて
ないのか訝り、異議を申し立てることはほぼ
確実である。しかし、欧州委員会はすでに回
答を用意している。「これまでのように、個別
製品について高度な技術内容を伴う指令を共
同決定手続きに基づいて提案していくのは進
展の遅れにつながる」というのである。
¾ EuP が、著しい影響を環境に及ぼすこと
¾ EuP が、過剰なコストをかけずに、環境影
響を著しく改善させる可能性を有するこ
と
¾ 第 6 次環境行動計画に定める重点課題な
ど、共同体の環境優先事項を考慮に入れ
ること
3.
しかしながら、委員会がどの製品を重視する
可能性があるのか、説明書の中に手掛かりが
ある。そこには、節約の余地が最も大きい部
門が記されている。その部門と、エネルギー
効率化対策によって可能な、CO2 排出削減の
推定量は以下の通りである。
JMC environment Update
12 メトリックトン
・ 家庭および第三次産業における事務用機器:
34 メトリックトン
同提案は、さらに現行 3 指令を実施措置とす
るという点でも、草案と変わりない。3 指令
とは、給湯ボイラーに関する指令 92/42/EEC
(但し、提案では、効果のないことが証明さ
れたとして、同指令のスター評価制度を削除
することになる)、家庭用冷蔵庫、冷凍庫、冷
凍冷蔵庫に関する指令 96/57/EC および蛍光
照明用安定器に関する指令 2000/55/EC であ
る。
・ 暖房機器および給湯機器:
39 メトリックトン
加盟国、IPP に対する自主的アプローチ
を支持
包括的製品政策(IPP)は、自主的かつ戦略的
業界アプローチにとどめるべきであるという。
9 月 11 日の担当者会議(環境に関する作業部
会)に提出された理事会の結論案は業界に
とって心強いメッセージである。
12 メトリックトン
52
Vol.5 No.4 (2003.11)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
同結論案に先立ち、9 月 9 日には、欧州議会
の環境委員会で、マッテオーリ(A. Matteoli)
環境相理事会議長(イタリア環境相)が、IPP
は優先事項であり、10 月 27 日または 12 月
22 日の環境相理事会で採択すべきであると
の声明を発表している。
同案の中で、閣僚理事会は IPP に関して(法
律文書では不十分として)業界と協力する必
要性および最終影響評価において消費者のこ
とを考慮する必要性を認識しており、次のよ
うに述べている。「法的枠組みなど、従来の環
境保護手段では、持続可能な開発戦略を実行
するのに十分とは言えない。業界および消費
者双方に有利な選択肢とするためには企業の
関与が必要である。」
・ IPP 常設作業部会を設置すること
・ 新指令による環境に配慮した設計および
原材料の効率的使用の推進を保証するこ
と
・ IPP と、新化学物質政策 REACH の対象製
品に関する目的との関連性を明確にする
こと。特に、ライフサイクル・アセスメン
トにおいて化学物質使用の考慮を確実に
すること
4.
欧州委員会、2010 年までに F ガス排出
量の 25%削減を提案
欧州委員会は、8 月 12 日、京都議定書に定め
る EU 排出削減目標の達成に資するため、自
動車のエアコンに使用される冷媒など、フッ
素系温室効果ガス――F ガスと総称される―
―の排出削減を提案した。
結論案では、IPP は利害関係者を全員関与さ
せることにより、環境に関する意思決定を改
善すると述べている。閣僚理事会は、「命令と
管理」をツールとする従来の手法を変えたい
としている。また、各種の物質・製品の有害
性や環境影響に関する評価を改善するための
研究に一段と重点を置いている。
同新提案は、2010 年時点における EU の F ガ
ス排出量の 25%削減を意図している。
パイロット・プロジェクトの選択には、加盟
国を関与させ、重複を避けるべきである。パ
イロット・プロジェクトの提案および当該プ
ロジェクトの成果を IPP 手続きの構築にどの
ように活用していくのかについて、定義の明
確化を求める声が再び上がるだろう。しかし
ながら、どの製品が当該プロジェクトの対象
に選ばれるかについては一切言及されていな
い。
特に、委員会の計画が対象とする F ガスとは、
ハイドロフルオロカーボン(HFCs)、パーフ
ルオロカーボン(PFCs)−−いずれもオゾン
層枯渇物質に関するモントリオール議定書に
基づき廃止された他の物質の代替物質である
ために使用量が増加−−および六フッ化イオ
ウ(SF6)である。
同委員会案が EU 法として成立するには、理
事会と議会の承認が必要である。
また、同結論案では、欧州委員会に以下の要
求をしている
F ガス排出源としては、冷蔵庫、特に大型の
ものやエアコンなどがある。さらに、委員会
によると、このガスは、発泡剤、エアゾール
噴霧剤、半導体製造時のプロセスガスや電気
絶縁体など、消防機器や各種産業工程に使用
されているという。
・ まず実行すべき業界として特に観光業に
注目し、IPP の対象範囲をサービス業にま
で拡大すること。
・ グリーン公共調達(GPP)への取組みを強
化すること――環境基準の定義、現行の製
品基準に基づく製品グループのデータ
ベースの完成、GPP 作業部会の設置
JMC environment Update
・ 明確な日程と作業計画および環境製品宣
言 ( EPD: Environmental Product
Declaration)に関する共同体スキームを策
定すること
さらに、同計画は、自動車のエアコンに使用
53
Vol.5 No.4 (2003.11)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
1995 年、F ガスの排出量は、6,500 万 CO2 換
算トンであった。委員会は、かかる排出量を
削減するための追加的対策を講じなかった場
合、排出量は 2010 年までに約 50%増加し
9,800 万 CO2 換算トンに達すると推定してい
る。
されている HFC-134a の段階的廃止を 2009
年 1 月に開始し 2013 年末に完了させること
を提案している。
欧州化学業界は、F ガス規制に対する EU アプ
ローチを概ね歓迎しながらも、HFC-134a 廃
止については、適切な代替物質がないとして
盛んに反対している。
委 員 会 に よ る と 、「 F ガ ス の 推 定 排 出 量 は
2010 年までに約 2,300 万 CO2 換算トン削減さ
れ、その後はさらに大幅な削減が見込まれる」
という。
委員会は、今回の F ガスに関する提案は京都
議定書に定めた欧州の目標の達成に必要であ
ると主張している。同議定書により、先進国
は 2008 年から 2012 年までの期間に共同で
CO2 排出量を 1990 年比で 5.2%削減すること
が義務づけられている。同議定書が対象とす
る GHG は、CO2、メタン(CH4)、亜酸化窒素
(N2O)、HFCs、PFCs、SO6 である。また、EU
は、かかる GHG 排出量を 1990 年比で 8%削
減することが求められている。
委員会による F ガス削減提案の詳細の一部を
以下に示す。
・ 抑制対策。各種の排出源からの漏れを防止
するための年 1 回の検査など
・ 抑制対策が実現可能でない場合、あるいは
現在の F ガスの使用が適切でない場合に
は、販売および使用を規制
ヴァルストレム委員は、「今回の新提案は、
GHG 削減を目指しコスト効果の高い手段を
導入するなど、京都議定書の実施に対する EU
の強いコミットメントを実証するものであ
る」と声明の中で述べている。「この提案は、
EU 排出権取引制度など、その他共同体の多く
の排出削減策と共に、気候変動対策に関する
効果的な枠組みの基礎をなすものである。」
委員会によると、CO2 は GHG の中でも最も広
範囲に存在し、F ガスは EU の GHG 総排出量
の約 2%にすぎないという。しかしながら、
廃止予定のフッ素系物質は強力な GHG であ
り、その多くは大気中に存在する期間が長い
点を強調している。例えば、委員会によると、
SO6 の地球温暖化係数(GWP: Global Warming
Potential)は CO2 の 23,900 倍であるという。
・ 自動車その他の車両のエアコンに使用さ
れている HFC-134a の廃止
F ガス抑制を改善する規定には、大規模な固
定型冷蔵機器、エアコン、ヒートポンプ機器
や防火システムなどの年 1 回の検査が含まれ
る。
F ガスを使用する大規模機器に漏洩検出シス
テムの塔載を義務付け、また機器に追加また
は機器から回収した F ガスの量に関する記録
の保管も同様とする。
同提案に盛り込まれた別の抑制対策として、
検査・回収作業に携わる作業者に対する研
修・認定プログラムの確立を EU 加盟国に義
務づけている。
同提案によると、報告義務により、F ガスの
生産者、輸入業者および輸出業者は、毎年当
該ガスの生産、輸入および輸出を委員会に報
告しなければならなくなる。
委員会は、「この情報は、国連気候変動条約締
約国(UNFCCC)による排出量水準の精度の
JMC environment Update
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Vol.5 No.4 (2003.11)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
Fluorocarbon Technical Committee)が直ちに
不満を表明した。同委員会は、F ガスのユー
ザーおよび生産者を代表しており、欧州化学
工業連盟(CEFIC)の一部門を構成している。
確認に使用する」としている。
同提案には、委員会が抑制政策を不可能と見
なす場合に備え、様々な上市・使用規制策が
盛り込まれている。
キャンベル(N. Campbell)EFCTC 委員長は、
「現在、商業的に機能する実証された代替物
質が存在しないことから、車載の改良型
HFC-134a システムの廃止日程を設定するの
は不適切であると考える」と述べ、「改良型
HFC-134a への投資は、交通量の激しい地域
において他のシステムに比べ優れた環境パ
フォーマンスを示す結果が出ている」と付言
している。
かかる上市・使用規制策の影響を受けるガス
および用途を以下に示す。
・ マグネシウムダイカストに使用される
SF6
・ 車のタイヤに使用される SF6
・ 使い捨て容器に使用されるフロンガス
・ 自己冷却型飲料容器など非閉じ込め
(non-confined)タイプの蒸発冷却システ
ムに使用される PFC
・ 窓の製造に使用される SF6
・ 履物の製造に使用される F ガス
・ エアゾールに使用される HFC
委員会は、2010 年までに新車に搭載されるエ
アコンの HFC-134a の段階的廃止に関して、
対策を講じない場合には、1995 年に 140 万
CO2 換算トンであったガス排出量が 2010 年
には 2,000 万 CO2 換算トンに増加するという。
また、「この提案では、HFC-134a を徐々に廃
止できるように譲渡可能な割当量に基づく柔
軟な制度を導入している。企業は、希望によ
り企業間で割当量を譲渡することが可能であ
り、経済的に効率的な方法で全体目標の達成
を可能にする」と、声明の中で述べている。
同委員長はまた、「HFC-134a 廃止措置により
途上国において、GWP の高いクロロフルオロ
カーボン(CFCs)から HFCs への移行が阻害
される可能性がある」という。
それに加えて、同案は、2001 年 12 月の閣僚
理事会で是認された欧州気候変動プログラム
(ECCP)の内容に反すると述べている。
「このような結論は、F ガスの抑制や実際の
排出量のモニタリングを指向するものである
ことは明らかであり、それにより環境影響を
最小限に留めることができる現行制度におけ
る抑制強化と、(HFC-134a)エアコンシステ
ムの改良を優先すべきである」と述べ、同委
員長は、報告義務や特定の抑制策などの措置
に対する全体的アプローチには歓迎の意を表
した。
HFC-134a ガス削減のためのインセンティブ
は、同規制案の重要な部分でもある。委員会
は、「廃止措置期間が 2009 年 1 月 1 日に始ま
るが、それまでに HFC-134a を使用しないエ
アコン搭載車または(改良型といわれる)低
排出エアコン搭載車を上市するなど、早期に
対策を講じた企業には割当量を増やすことが
できる」としている。
HFC-134a 廃止案には、欧州フルオロカーボ
ン 技 術 委 員 会 ( EFCTC: European
JMC environment Update
さらに、「欧州で急速に廃止を進めれば、この
技術への投資が止まることになるが、この技
術は現在 GHG 排出削減に著しい改善をもた
らしている」と主張を続ける。「これは環境に
とって逆効果となる可能性があり、エネル
ギー効率の低い大型の移動型エアコンシステ
ムが採用されるようになり、皮肉にも、CO2
の排出量の増大を招く可能性がある。」
そして、「この規則案は、EU における製品寿
命問題を含め、F ガスの取引および使用に関
55
Vol.5 No.4 (2003.11)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
して明確な決まりを示すものである自動車業
界は例外として、同案により、エネルギー効
率の良い機器および技術への新規投資や技術
革新の妨げとなっている不確実要素がかなり
払拭されることになるだろう。しかも、その
多くは F ガスを使用するものである」と述べ
ている。
て、欧州議会が理事会の方針を実質的に変更
できる可能性はほとんどない。
5.
環境責任指令案に関する加盟国の共通の立場
の要点を以下に示す。特に、汚染の浄化責任
が当局から原因となる企業に移行している同
指令の環境被害の防止と修復に関する内容で
ある。
経緯に詳しい某業界筋によると、「この件は
実際のところ理事会の手に委ねられている」
として、さらに「多くの異なる意見」が議会
にあると述べている。
閣僚理事会、環境責任指令に関する共通
の立場を採択
EU 閣僚らは、企業に自らが原因となる環境被
害の防止および浄化の責任を問う EU 調和制
度に関する予備合意、すなわち「共通の立場」
をついに正式に採択した。これにより、議会
が本年度末までに同案件に関する最終採決を
実施することが可能となる。
理事会スポークスマンによると、2002 年の環
境責任指令案に関する 2003 年 6 月 20 日付事
前合意内容と比べ、共通の立場に実質的な変
更はないという。同スポークスマンによると、
その間、外交官や理事会職員らが、特に、同
案の付属書部分の定義および対象範囲さらに
一部の言語的問題をめぐる意見の相違を解決
したという。
9 月 18 日付理事会声明で正式な合意に達し
たことが公表された。すなわち、同環境責任
案件は最終的に議会に差戻されることになる
ので、MEP は第二読会の採決でこの共通の立
場に対する対応を決定しなければならない。
欧州議会法務委員会は 10 月にはその対応に
ついて審議を開始できると、議会スポークス
マンは某環境ニュースレターに話している。
同案件は、その後、2003 年 12 月あるいは 2004
年 1 月に議会の正式な会議、すなわち本会議
にかけられるであろう。
去る 4 月、議会は第一回目の検討を終了し、
責任規則案をさらに環境面で厳格なものにす
るための修正案を通過させたが、多数決の結
果は僅差であった。第二読会において修正案
を成立させるには強力な支持が必要であるが、
このことで議会の立場は弱まっている。従っ
JMC environment Update
56
・ 同案は主として「職業活動(occupational
activities)」を対象とすべきである。すな
わちエネルギー産業、金属の生産・加工、
鉱業と化学産業および廃棄物管理のこと
である。「その他の」職業活動は、過失ま
たは不注意により環境被害を与える場合
が対象となる。
・ 加盟国は、対象業界の事業者に保険への加
入や他の形態による金融的保証を用意す
ることを「奨励」すべきだが、強制すべき
ではない。しかしながら、本責任法施行か
ら 5 年経過後、委員会は同指令の効果につ
いて報告し、正当な理由がある場合には、
金融的保証要求事項に拘束力をもたせる
新提案を策定すべきである。
・ 被害の原因となる事柄が発生した時点で、
企業はそれが過失あるいは不注意による
ものではないこと、また特定の許可を有し
かつ必要な技術を用いていることを実証
できれば、当該企業は浄化コストを負担す
る必要はないと加盟国が判断する場合が
ある。しかしながら、その事柄の発生時に
おける科学的技術的知見の状況に照らし、
当該の排出、活動または活動過程における
特定製品の使用法によって環境被害を引
き起こす可能性があるとは考えられな
かったと事業者が実証できる場合に限り、
このような可能性は適用される。
・ 同案は、種および自然生息地――もはや
「生物多様性」とは定義されていない――
Vol.5 No.4 (2003.11)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
さらに水および土地に対する被害を対象
とする。長く争点となっているのは、種と
自然生息地の定義である。現在理事会は、
この定義は生息地および野鳥に関する 2
つの異なる EU 指令に基づき保護されてい
る生息地と種を意味するとしている。さら
に、この定義は、「加盟国がかかる 2 指令
の規定と同等の目的のために指定してい
るあらゆる生息地あるいは種」を意味する
ものとする。
理事会の共通の立場は同コンセプトを保持し
ているが、用語は残していない。用語の選択
において「かなり曖昧」になっていると、側
近は述べている。「我々は法的明確性を高め
るよう努力している。」
本案件は加盟国の手に委ねられているかもし
れないが、「ラポーター」として本案件の議会
における成立に責任を持つオランダのリベラ
ル派 MEP である Toine Manders 氏は−ブラッ
セルでの噂に反して−議会の第一読会を闘わ
ずして諦めるつもりはないようである。
同議員は、共通の立場について、その詳細は
今年 6 月から分っているが、加盟国に権限を
与え過ぎており、「競争の歪み」および当該規
定に合わせて適応しようとする業界にとって、
「法的不確実性」を招く可能性があると主張
している。しかし、同氏の側近は、「我々には
まだ何ら修正に関する具体的な考えはない」
と同氏の不在時に述べ、 資金支援者 がまだ変
更を求めてロビー活動をするチャンスがある
ことを示唆した。
しかしながら、同議員は「平等な競争条件に
寄与するとは思えない点がある」との意見を
持つと、側近は述べている。特に保護される
種と自然生息地の定義に関しては、「補完性
(EU レベルではなく国家あるいは地域レベ
ルで立法を行なうという原則)への言及が頻
繁」にあったということである。
さらに、複数の事業主が被害を生じさせた事
例における法的責任の割合に関する共通の立
場についての姿勢は、同様に「かなり曖昧」
であったと述べている。マンダース議員は、
「比例性による」賠償責任というコンセプト
を再度盛り込もうとする可能性がある。すな
わち、汚染者のうち主たる責任者がかかる「複
数関係者が引き起こした事例」に係わる他の
関係者から資金を集めるのではなく、責任有
りと判断された関係者が各自被害に占める割
合に相当する回復分を負担するという考え方
である。
また、同議員は、全体として、「理事会の文書
はどちらかというと保守的である。我々は、
この文書と議会の第一読会の結果との釣り合
いをとる必要がある。」しかし、「同案件は政
治的に極めて微妙なので、政治的プロファイ
リングを齎すかも…」と認めている。MEP は、
2004 年 の 議 会 選 挙 に 向 け て 自 ら の プ ロ
フィールを打ち出していこうとしている。
「これは歩み寄りには向かない状況である」
という。
同議員は、むしろ、将来の責任指令の規定に、
国内法による汚染浄化を規制対象とするよう
提案する可能性がある。「オランダでは、陸地
の 35%が EU 法の対象である。フランスでは
さらに少ない。同指令が EU 法にしか関係し
ないのであれば、競争の歪みである。」
JMC environment Update
同氏はまた、「軽減要因」というコンセプトを
再び盛り込むために、議会の政治団体の支持
を取り付けようとする可能性もある。このコ
ンセプトは前議長国ギリシャが提案したもの
であるが、委員会の原案−−特別操業許可を
有し、かつ最新技術を用いている場合には企
業の責任を免除−−と、かかる適用除外は、
あまりにも簡単に汚染者の責任逃れを許すこ
とになると考える議会さらには一部の加盟国
との折衷案を見つけ出す試みであった。
さらに、共通の立場の変更案を通過させるに
は本会議で MEP から 3 分の 2 の支持を獲得す
る必要があるので、「急進的な修正の採択は
57
Vol.5 No.4 (2003.11)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
難しい」と認めた3。
6.
オランダは、工業用機器および自動車に使用
するニッカド電池を除き、禁止すべきである
と主張している。ラトビアも、商業的に実行
可能な代替電池があれば禁止措置を受入れら
れるとしている。
EU ニッカド電池禁止措置に対する業界
の懸念、明らかに根拠なし
電池メーカーは、電池指令 91/157/EEC の改
訂に関する 2003 年 2 月 25 日付協議文書への
当初の反応を受けて、委員会の環境総局が
ニッカド電池禁止措置を強硬に推進する可能
性があることに懸念を抱いている。かかる禁
止措置を強く求めているのはスウェーデンだ
けであるが、デンマークおよびオランダもこ
れを支持している。
但し、すべての国がカドミウム禁止を必要ま
たは歓迎しているわけではなく、この問題を
避けようとしているにすぎないのかもしれな
い(また問題を望むとも思えない)。ギリシャ
およびフランスは、詳しい分析と、かかる措
置の費用対効果を評価する必要がある点を強
調している。
しかしながら、加盟国の多数および 6 月 4 日
に環境総局のウェブサイトにコメントが掲載
された加盟候補 3 ヵ国は、生産者責任を支持
している。また、大多数がすべての電池・蓄
電池に対する回収・リサイクル目標の設定を
望んでいる。
一部の加盟国は、カドミウム電池を埋め立処
分、焼却処分(または鉛電池から分離処分)
しても過度のリスクはないとするベルギーの
調査結果を引用している。
フランスは、カドミウムに変わる代替電池を
検討し、かかる代替電池をリサイクルする可
能性を評価する必要性があると指摘している。
これらは、2003 年 4 月 28 日まで続いたステー
クホルダーとの公開ネットワーク上の協議の
主な結論である。この協議の結果は 7 月 15
日の環境総局(生産・消費・廃棄物部門)主
催の会議で発表された。
禁止措置にもっとも強く反対している英国は、
カドミウム電池の処分は廃電気電子機器
(WEEE)指令および使用済み自動車(ELV)
指令でも管理されると述べている。禁止措置
を定めると、ニッケル水素電池のリサイクル
能力が損なわれるという。
スウェーデンは、早急に、遅くても 2010 年
までにカドミウムを禁止すべきであると主張
している。但し、唯一の適用除外として、
100%リサイクルが可能な非常用機器の長寿
命蓄電池が挙げられている。また、同政府は
さらに、水銀電池に関する見直しを求め、か
かる電池を段階的に全面禁止することを目指
している。
一般的に、フランスやオランダのように使用
済み電池の処理・処分に対する生産者責任を
実践している国は、委員会の生産者責任およ
び無償引取りに関する提案を支持している。
デンマークもカドミウム禁止に積極的である。
新しい技術と研究により、この種の電池を使
用する必要がないと主張している。蓄電池型
の工具を除き、代替電池が利用可能である。
さらに、カドミウム電池の回収率も低いとい
う実態がある。
3
環境責任に関する共通の立場は以下のサイトで入
手可能。
http://register.consilium.eu.int/pdf/en/03/st10/st
JMC environment Update
チェコは、すべての電池・蓄電池に対して生
産者責任を適用すべきであると主張している。
スロバキアは、生産者と同じく取引業者(販
売業者および輸入業者)にも責任を問うべき
であると述べている。
1093en03.pdf
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欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
を適用させるべきかが重要であるとしている。
スロバキアも、同指令の重要な用語および定
義の明確性と一貫性に問題があると指摘して
いる。
オランダは自主協定について可能であると述
べているが、スウェーデンは歓迎しながらも
やや慎重である。スウェーデンは、小型電池
については家庭・市町村ゴミ回収との共同制
度を設けているが、工業用電池およびカー
バッテリーについては、生産者責任あるいは
自主協定の方が適切であると述べている。
フランスやラトビアは、カドミウムの有無に
関係なくカーバッテリーの分別リサイクルを
希望しただけである。英国は、すべての電池
について回収目標を設けると環境や経済への
影響が著しいとしている−−例えば分別、回
収袋、保管および輸送によるコストである。
また、電池指令に関する現在の混乱をさらに
助長することになるという。さらに、委員会
が回収・リサイクル目標の範囲に関する正当
な理由を示していないと指摘している。
デンマークやラトビアなどの課税措置を採用
する国は、現在のところ生産者責任に関する
明確な姿勢はないとしている。デンマーク
EPA は、現在、この問題を調査中である。同
国には自主協定はなく、料金および報酬制度
しかない。
スペインは、最良の選択肢を判断するにはさ
らに調査研究が必要であると述べている。
同国は、カーバッテリーは回収リサイクル目
標を定めるのに最も適しており、その 90〜
95%が回収されているという。一般的に、目
標は電池の寿命を考慮して定めるべきである。
マーク表示はモニタリングを容易にさせるが、
さらに高度な分別施設が必要となる。
ギリシャの場合は、やや困惑させられるが、
使用済み電池・蓄電池回収およびリサイクル
に関する生産者との自主協定の中で、生産者
責任を導入することに同意するという。
オランダは、回収された使用済み電池に対し
て 90〜100%のリサイクル目標は「達成可能
かつ妥当」という。但し、使用済み電池およ
び使用済みカーバッテリーそれぞれにリサイ
クル目標を設けるのは、回収の不確実性から
良案とはいえない。むしろ、WEEE の場合と
同じく、目標は回収された使用済み電池に対
して定めるべきであるという。
英国は、いずれのアプローチも機能すると述
べている。生産者に電池回収責任を問う場合
には、回収・リサイクル用インフラ整備の商
機がある。一方、自主協定の場合はさらに迅
速な成立が可能であるという。業界関係者が
比較的少ないことから、このアプローチは関
係業界団体をさらに強化できるという便益も
ある。しかしながら、このアプローチには「た
だ乗り」の問題がある。
同国は、一般的回収目標を 70〜80%、カー
バッテリーは 90〜100%とするよう求めてい
る。カドミウム含有電池廃棄物に対する個別
回収目標を定める必要はないという。
英国は、いずれの場合にも、共同体に輸入さ
れる電池の取り扱いが重要であるという。電
気電子機器に備え付けの電池あるいは交換用
電池として輸入される電池のことである。た
だ乗り問題に対処できなければ、欧州企業の
競争力に著しく影響が及ぶという。
スウェーデンも、リサイクル能力を配慮する
必要があるとしながら、高い回収・リサイク
ル目標を求めている。同国は、小型の消費者
向け電池の回収は困難なため、別々の目標が
必要であるとしている。回収・リサイクル目
標は、目標を引き上げる方向で見直すべきで
あるという。鉛/カドミウム含有電池につい
ては、さらに高い目標を設定すべきであると
大半の国は、あらゆる種類の電池について目
標を設定するよう望んでおり、かかる目標に
対する代替計算法のより詳細な分析が必要で
あると述べている。英国は、例えば何に対し
て――かさ、セルまたは電池の重量――目標
JMC environment Update
59
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欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
の実施措置に相違点が多い。
いう。
スペインとギリシャは、前述の協議文書にあ
るように、具体的な回収・リサイク目標の範
囲を示している。スペインは、中間の選択肢
を選んでいる。すなわち、回収目標に関して
は使用済み携帯型電池/畜電池は 60〜70%、
カーバッテリー/蓄電池は 80〜90%、カドミ
ウム含有電池は 70〜80%としている。また、
使用済み携帯型電池/蓄電池のリサイクル目
標は 55〜65%、車用/カドミウム含有電池・
蓄電池は 60〜70%にするよう求めている。
ギリシャは、一部の事例について目標を下げ
るよう求めている。例えば、カーバッテリー
は 70〜80%、カドミウム含有電池は 60〜
70%と、それぞれ回収目標を設定するよう求
めている。また、同国が提案するリサイクル
目標はスペインと同じであるが、使用済み携
帯 型 電 池 / 畜 電 池 だ け は 45 〜 55% と 低 く
なっている。
また、カドミウム含有電池および蓄電池の回
収・リサイクル目標を別に定めること、ある
いは「商業的に実現可能な」代替電池が利用
できる場合にはかかる電池を廃止することの
恩恵についても意見が求められた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
II. 英国
1.
デンマークは、自国の問題であるにも拘らず、
すべての電池に回収・リサイクル目標を設定
することを望むのか、立場を明確にしていな
い。同国は、回収量と回収・分別コストとの
関係を否定する EPA の調査結果を引用してい
る。費用は回収方法に関係するという。また、
制度の成否は、技術的優秀性よりむしろ、情
報、利便性および視認性などの要素に影響さ
れるという。
英国、EU 排出権取引制度に関する初協
議を開始
政府は、2003 年 8 月 13 日、新たに誕生する
EUGHG の排出権取引制度に関する初の協議
文書を公表した。
また、新 EU 排出権取引指令に関する同協議
文書は、2003 年後半に英国における国家配分
計画案の起草作業に情報として生かされると、
環境・食品・地域問題省は述べている。
同国は、国内経済全体を対象とする世界初の
GHG 排出量取引を実施しているが、EU 排出
権取引制度参加者に配分される総割当量を分
配するための代替分配方法について意見を求
めている。EU 制度は 2005 年 1 月 1 日に実施
予定であるが、同協議への回答の送付期限は
2003 年 10 月 2 日である。
協議文書には、国、地方自治体、産業界、電
池業界団体、NGO、消費者団体および流通業
界団体などから、150 件以上のコメントが寄
せられた。概ね、電池指令を見直すべきだと
して、以下の理由を挙げている。
・ カドミウム、水銀あるいは鉛を含有する電
池および蓄電池しか対象としていない。
EU 排出権取引制度は、世界初の経済全体を対
象とする GHG 排出権取引制度となる。同制度
は、EU の CO2 排出量の 40〜45%をカバーす
ると推定されており、欧州気候変動プログラ
ムの主要部分をなすことになる。
・ 水銀の含有率が 0.0005%を超える電池し
か禁止していない。しかし、水銀、鉛およ
びカドミウム含有電池の使用に伴うリス
クにも配慮すべきである。
・ 回収・リサイクル制度に関する国家レベル
JMC environment Update
特に、各種の回収・リサイクル目標の範囲
(カーバッテリーおよび蓄電池は高め)が与
える正負の影響について意見が求められた。
環境総局は、かかる目標を製造者責任または
自主協定で達成可能かどうか、また代替的計
算法方が必要なのかを判断しようとした。
60
Vol.5 No.4 (2003.11)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
施設や企業に排出枠を配分する際に使用する
方法についても提言している。
同 EU 制度のもと、各加盟国は排出可能な総
CO2 量に制限を設けなければならない。
同国は、2004 年 3 月 31 日までに、英国政府
として英国の施設にどれだけ排出枠を配分す
るつもりなのか、かかる排出枠の配分をどの
ように提案するのかを定めた国家計画を欧州
委員会に提出し、承認を得なければならない。
同国家計画は、欧州委員会によって定められ
る国家支援ルールその他の基準にしたがって
評価される。
環境・食糧・農村地域省(DEFRA)は、同国
の総枠をどのように各施設に分配すべきか、
新規参入者および閉鎖系施設をどのように扱
うべきか、毎年配分すべき排出枠の割合はど
うすべきか等の方法を含め、多くの問題につ
いて意見を求めている。
DEFRA はまた、英国排出削減プロジェクトか
らこの国家計画にクレジットを売却できるよ
うな枠組みづくりを進めている。排出削減目
標またはプロジェクトを通じて国家計画に参
加することを望まない場合には、登録所に口
座を開設して、排出枠の売買だけ行なうこと
も可能である。
同省は、2003 年後半に実施規則案および国家
配分計画案等に関する詳細な協議文書を公表
するとしている。
2.
この EU 全域制度の対象となるのは、発電業
界、鉱油精製、その他に鉄鋼、紙・パルブ、
セメント、ガラスおよび煉瓦などの重工業部
門である。同制度は 2005 年 1 月 1 日よりス
タートし、第一段階は 2007 年 12 月 31 日ま
で続く。第二段階は 2008〜2012 年までで、
京都議定書に定めた第一コミットメントの時
期に一致する。その後は 5 年単位のフェーズ
が続く予定である。
環境団体、ELV 指令により英国の不法投
棄が増加すると警告
9 月 17 日、環境団体は、EU の使用済み自動
車(ELV)指令が英国で施行されると、数週
間のうちに数万台に及ぶ未登録車が国内の道
路脇に投棄される状態になりかねないと警告
した。
同国の制度には 34 の直接参加者が参加し、
1998〜2000 年の水準から排出量を削減し、
2006 年には CO2 等価量でさらに約 400 万メ
トリックトンの排出量削減を達成するという
法的拘束力をもつ義務を自主的に負っている。
同制度は、英国の長期環境エネルギー目標の
重要な要素となっている。
2003 年 2 月に公表されたエネルギー白書に
は、2050 年までに GHG を 60%削減するとい
う目標が定められている。同白書は、個々の
JMC environment Update
国内取引制度は、気候変動協定を締結する
8,000 社にも開放されている。これらの企業
は、政府との交渉に基づいて締結した協定に
より、エネルギー使用量の削減目標を定めて
いる。目標を達成した企業は、企業のエネル
ギー使用に課される気候変動税を 80%免除
される。これらの企業は同制度を利用するこ
とにより、排出枠を購入して目標を達成する
ことも、また目標を超過達成した分は売却も
可能である。
61
同国では、2003 年 10 月より、乗用車および
軽商用車の所有者に対して、法律に基づき認
可を受けたスクラップ業者へ車を持込むこと
が義務づけられる。ELV 指令 2000/53 は、リ
サイクル前の車両の「汚染除去」を義務づけ
ており、廃車を扱う施設はすべて許可を取得
しなければならない。
しかし、有害廃棄物およびリサイクルに関す
る規則が強化されたことで、ガソリン、ディー
ゼル、ブレーキオイル、エンジンオイル、不
凍液、バッテリー、エアバッグ、水銀含有コ
ンポーネントおよび触媒の抽出に関連するコ
ストが概ね上昇すると思われる。かかるコス
Vol.5 No.4 (2003.11)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
Better Regulation Task Force)も、自動車投
棄に関する「懸念および不確実性」がはびこ
ることを警告している。また、新規則の要求
事項は「投資および実用化」の点で不明瞭で
あると指摘している。「インフラもほとんど
整備されていない」と、同指令について調査
する対策委員会の Janet Russell 委員長は述べ
ている。
トは、その後、車の所有者に転嫁される可能
性があるため、その結果不法投棄が増えるこ
とが予想されると英国の環境団体ウェイス
ト・ウォッチ(WasteWatch)Barbara Herridge
代表は述べている。
同代表は、古車の処分費用は 1 台当たり 30
ポンド(43 ユーロ)から 70 ポンド(100 ユー
ロ)まで、2 倍以上に跳ね上がると推定され
るという。また、「最も費用負担できない人に
処分にかかる追加コストがかかってくる」と
述べている。通常、古車の所有者はあまり裕
福な人ではないからであるという。
同対策委員会は、DTI に対して、実施による
成果を早急に明確化すること、時期や実施に
関する透明性を保証するためにプロジェクト
立案のアプローチを採択すること、また定期
的な進捗報告書を公表すべきであると主張し
ている。トニー・ブレア首相は、60 日以内に
2003 年 7 月 28 日付対策委員会の報告書に回
答するよう DTI に要請している。
「我々は 2003 年 10 月初めに議会に規則を上
程する意向である」と、貿易産業省(DTI)
スポークスマンの Steve Norgrove 氏は述べ
ている。しかし、かかる規則が議会のルール
に従って施行されるまでに、少なくとも下院
および上院で 21 日間の審議が必要である。
同氏は、従って、同規則の施行は「2003 年
10 月下旬頃」になるという。
一方、欧州委員会は、実施の遅れは欧州リサ
イクル目標の達成を危うくする可能性がある
と加盟国に警告している。同指令では、2006
年 1 月までに、製品寿命を迎えた全車両を重
量比で 85%再生し、80%リサイクルすること
を目標としている。また、2015 年 1 月までに
重量比で 95%再生し、85%リサイクルするこ
とを目標として定めている。
一方、運転免許証交付局(DVLA: Driver and
Vehicle Licensing Agency)は、英国内で使用
されている約 2,700 万台の自動車のうち、200
万台も未登録車があることを確認している。
しかしながら、DTI によると、2004 年に施行
予定の別の規則により、車の処分は最終登録
した所有者の責任になるという。「これによ
り、同じアプローチを取っているフランスや
ドイツなど他の主要な EU 自動車生産国と、
概ね競争条件が等しくなる」と、Norgrve 氏
は述べている。
欧州委員会のマーゴット・ヴァルストレム環
境担当委員は、2002 年 4 月 21 日の実施期限
を遵守しなかったとして、英仏伊を含む欧州
8 ヵ国を批判している。同委員は、本来の期
限から 1 年が経過した 2003 年 4 月 8 日に、
厳しい警告を発した。そして、「この意欲的な
新ルールを実効性あるものにするために、英
国も国内法の整備を急がねばならない時期に
ある」と述べた。
Herridge 代表は、一方で「何万人もの未登録
車の所有者」が、捕まることも恐れず、廃棄
にかかる追加コストを支払うより道路脇に車
を投棄する可能性が高いとしている。同代表
は、不法投棄は、自動車メーカー自身にリサ
イクル費用の負担が義務づけられる 2007 年
まで減少する可能性はないという。
これに対して、DTI は次のような声明を出し
ている。「これは、様々な企業、組識およびド
ライバーに多くの影響を与える複雑な指令で
ある。我々は、他の加盟国の多くが予定通り
に法律の置換えができなかったことを理解し
ている。この事実は同指令がいかに複雑であ
るかを意味するものである。」
政府に規制政策について助言する独立系企業
団 体 で あ る 英 国 規 制 改 善 対 策 委 員 会 ( UK
JMC environment Update
62
Vol.5 No.4 (2003.11)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
DTI は同指令の全般的実施について指揮を
取って進めているが、DEFRA は第 6 条実施の
指揮を取っている。第 6 条により、ELV を処
理する施設はすべて許可を取得しなければな
らない。
この報告は、同国において財務以外の情報開
示の増加を強調するだけではなく、環境報告
が従来から環境問題に関心をもつセクター以
外においても現れはじめているという事実を
反映するものである。同氏は、「初期の頃から
環境について報告している企業が、現在、社
会問題についても報告している。それは、そ
こに需要があるからである。環境問題しか報
告しない企業は少なくなってきている」と述
べている。
DEFRA は、国内の処理施設は ELV を処理する
技術を十分備えているという。DEFRA スポー
クスマンは、「多くの解体・スクラップ処理場
は、同指令により要求されている多くの処理
強化基準をすでに満たしている。我々は、そ
の大半が必要な変更を行ない新基準を満たせ
るものと予測している」という。
同氏によると、調査の結果、環境情報を開示
するよう圧力をかける政府に抵抗するトップ
企業は減り、強制開示より自主的に報告する
傾向が示されたという。また、「自らイニシア
ティブを講じ、環境のために何をしているか
一般に周知させる方がメリットは多いと認識
する」企業が増えているという。
DEFRA によると、毎年同国では 200 万台強の
新車が登録され、200 万台弱が廃棄されてい
るという。
3.
英国トップ企業の半数以上が環境パ
フォーマンスを報告
さらに、社会的責任を重んじる投資機関の力
が増してきていることも、この傾向を促進し
ているという。「かかる機関が問いかける質
問には、このような問題に対する主流投資家
の関心が反映されている」
企業の社会的責任(CSR)に関するコンサル
ティング会社 Environmental Context の 2003
年 9 月 9 日付報告書によると、ロンドン株価
指数の優良企業トップ 250 社の半数以上が現
在、企業の環境パフォーマンスに関する報告
書を公表しているという。
一方、このフィナンシャルタイムズ株価指数
( FTSE: Financial Times Stock Exchange )
[FTSE 社の提供する株価インデックス名]の
大手優良企業 250 社の内、5 年前に環境行動
に関する報告書を作成していたのはわずか
30 社にすぎないと、同社のディレクターの
Peter Knight 氏はいう。同社は、英国通信企
業 SalterBaxter 社と共同で調査を実施した。
4.
英国、先例となる国家廃棄物取引制度を
提案
政府は、都市ゴミ埋立てに関する国家埋立て
枠取引制度の詳細提案を公表した4。同制度は、
イングランドで 2004 年に開始後、2020 年ま
でに徐々に縮小される予定である。
同氏によると、現在、250 社のうち 132 社が
環境パフォーマンスについて報告し、そのう
ち 98 社は社会問題についても報告している
という。また、現在、FTSE トップ 100 社の
うち 84 社が環境について報告し、2003 年初
めて報告した企業が 11 社あるという。また、
「CSR は連鎖反応を起こす臨界質量に達しつ
つある」と述べている。
JMC environment Update
ブレア首相の圧力を受けて、議会が環境問題
に関する報告の義務化を検討していることか
ら、環境責任に対する姿勢も変わるかもしれ
ない。大企業による環境問題の開示が義務化
されると、企業は汚染物質の排出等の問題に
関する情報開示を余儀なくされる可能性があ
る。
4
63
協議文書のコピーは以下のサイトで参照可能。
http://www.defra.gov.uk/corporate/consult/landfi
ll/index.htm
Vol.5 No.4 (2003.11)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
2015 年までに 33%)を達成するには、向こ
う 3〜4 年間にほぼ 3 倍増加させる必要があ
ると示唆している。CIPFA は、中央政府から
の特定財源や他の廃棄物処理財源の増額が必
要だと主張している。
同制度は、その種の制度としては欧州初の事
例であるが、ゴミ埋立て地に投棄される生物
分 解 性 都 市 ゴ ミ ( BMW: biodegradable
municipal waste)の EU 減量目標を達成する
には不可欠と思われる。別の類似制度が
ウェールズ、スコットランド、北アイルラン
ドでも導入されている。
また、同調査によると、政府が示す最近のリ
サイクル率の数字(12.4%)は高すぎると示
唆している。CIPFA の推定によると、2001 年
− 2002 年 に お け る イ ン グ ラ ン ド お よ び
ウェールズの家庭ゴミ平均リサイクル率は
11.3%と、政府発表の前年度の水準から僅か
0.1%の増加、2000 年−2001 年から 2.3%の
増加にすぎないことが示唆されている。
イングランドの目標達成を保証しつつ、でき
る限り柔軟性を高めるために、各地の廃棄物
処理当局(WDA: waste disposal authorities)
は他の処理局と自由に廃棄枠を取引できるよ
うになる。例えば、100 トンの廃棄枠を有す
る自治体が 50 トンしか埋め立てる必要がな
ければ、余分な廃棄枠を市場レートで、廃棄
枠を超える埋立てが必要な他の自治体に売却
できる。
前提条件としては、取引制度の利用により、
各 WDA は最もコスト効率の高い方法で、埋
立て地に廃棄される廃棄物を転用し、それぞ
れの地域事情を反映することが可能になると
いうことである。廃棄物の焼却処分、リサイ
クル利用やコンポスト化などへの転用コスト
(diversion costs)が低い WDA の場合、埋め
立て処分される BMW をできる限り転用して、
転用コストの高い自治体に余剰廃棄枠を売却
するインセンティブが得られる。
コスト効率の高い転用対策を計画する余地が
最大限に高められるように、WDA には将来の
廃棄枠の貸し借りも認められる。開始日、廃
棄枠の計算・配分方法、制度の見直し時期、
罰則制度およびモニタリングに関する諸側面
などすべて、同提案に関するオンライン協議
の場で討議される。規則案は 2003 年 10 月初
めに公表される。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
III. フランス
1.
仏、ELV 政令を公表
エコロジー・持続可能開発省は、8 月 5 日、
一連の新規則を公表し、同国で毎年使用され
なくなる 120 万台から 160 万台の車が排出す
る廃棄物の大幅削減を目的としている。
同規則、すなわち 2003 年 8 月 1 日付官報に
告示された行政令の内容により、 ELV 指令
2000/53 が国内法に置き換えられる。
関連した動きとして、公認公共財務会計協会
(CIPFA)が「CIPFA 廃棄物回収処分統計 2001
年 − 2002 年 ( CIPFA Waste Collection and
Disposal Statistics 2001 – 2002)」に基づき公
表した最新調査によると、地方自治体による
リサイクル需要への年間投資は、政府目標
(2005 年までに 25%、2010 年までに 30%、
JMC environment Update
CIPFA の推定では、現在、廃棄物の総処理費
用の 6%強がリサイクル、再生および廃棄物
減量に向けられているという。一方、廃棄物
回収や道路清掃には約 8 倍、ゴミ埋立てには
約 4 倍が支出されている。
64
同指令は、2000 年 10 月に欧州レベルで施行
されたが、古車がスクラップされることで、
毎年欧州で発生している 900 万トンの ELV の
廃棄物の削減を目標としている。同指令によ
り、加盟国は自動車の強制的「引取り」法を
発効させなければならない。また、リサイク
ル責任を自動車メーカーに課し、ELV のスク
ラップに関する最低リサイクル目標を新たに
Vol.5 No.4 (2003.11)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
を削減するための幅広い取組みの一環である
と述べている。
定め、さらにカドミウム、クロム、鉛、水銀
を含有する重金属を自動車に使用することに
対しても規制している。
2002 年 12 月 24 日に発表された以前の政令
では、同国初の使用済みタイヤのリサイクル、
再利用および処分に関する規制の枠組みが確
立された。
同国では、スクラップされた車両の廃棄物が
毎年 110〜140 万トン生じているが、この新
政令により、自動車リサイクル業者は 2006
年 1 月 1 日までに ELV の最低リサイクル率
80%達成、そして 2015 年までに最低リサイ
クル率 85%を保証することが義務づけられ
る。
2.
環境省筋によると、当該目標を達成するため
に、自動車リサイクル業者は、ELV の非金属
材料のリサイクルおよび再利用を改善してい
くことに力を入れなければならない。現在、
ELV の多くはリサイクルされていないという。
また、政令では、欧州第二の自動車・トラッ
ク生産者である仏自動車業界に新たな責任を
課している。仏自動車メーカーは、危険な重
金属の使用を減らし、スクラップ自動車廃棄
物のリサイクルおよびレメディエーション
(環境浄化)を促進するための手段を設計段
階から検討するよう強く求められている。
9 月 3 日に開催された国家廃棄物会議のワー
クショップ参加者によると、同国は 2004 年
に家電製品・電子機器廃棄物のリサイクルお
よび廃棄に関する一連の制度を導入するとい
う。また、かかる制度のコストは製品価格の
引上げという形で消費者に転嫁される可能性
が高い。
廃 棄 物 管 理 庁 の 廃 棄 物 防 止 局 の Alain
Geldron 氏によると、エコロジー・持続可能
開発省は、WEEE 指令 2002/96/EC を国内法
に置き換える計画を起草しているという。
同氏は、「共同責任が規定された目標である」
として、政府は生産者と流通業者を組織し、
引取り・保管業務の費用を負担させる一方で、
購入時点で消費者にリサイクル費用を負担さ
せ、経済的に継続できないリサイクル・廃棄
物除去事業を助成する考えを明らかにした。
EU 指令の精神に沿って、この仏政令は、リサ
イクルの主たる責任を自動車メーカーおよび
輸入業者に課している。従って、かかる業者
には、この ELV に関する新たな枠組みによっ
て生じる追加コストの負担が法律により義務
づけられる。
しかしながら、業界団体は、コストはすべて
消費者に転嫁されることになると述べている。
「生産者および流通業者は、使用済み製品を
引取る法的義務がある」と、仏電気電子通信
産業連盟(FIEEC: Fédération des Industries
Electriques,
Electroniques
et
de
Communication ) デ ィ レ ク タ ー の Bernard
Heger 氏は述べている。「しかし、最終的に指
令が要求するサービスの代価を払わなければ
ならないのは消費者である。」
同政令は、自動車の所有者が認可を受けたリ
サイクル業者に ELV を持込む際の追加コスト
を負担させてはならないことに、特に言及し
ている。
また、同政令は、新リサイクル目標とは別に、
認可リサイクル業者に対して、環境パフォー
マンスの改善、特に業者の活動が周辺地域に
及ぼす影響について改善を求めている。
FIEEC の推定では、冷蔵庫 1 台の回収、リサ
イクルおよび廃棄物除去に、20〜25 ユーロ、
テレビ 1 台に 15〜20 ユーロかかるという。
環境省は、8 月 5 日、EU の ELV 指令の国内法
への置換は、自動車業界が環境に及ぼす影響
JMC environment Update
仏団体、WEEE 指令の要求事項を満たす
手段を討議
65
Vol.5 No.4 (2003.11)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
小型製品にかかる費用はもっと安い。
政府に強く求めている。
WEEE 指令は、2004 年 8 月までに EU 全域で
の実施を明記しており、電子製品の回収・リ
サイクル・再生に関する基準を定め、かかる
活動の大半を生産者の責任としている。また、
2005 年 8 月までに制度を整備し、同制度によ
り消費者が使用済み家電製品や電子機器を無
料で返却できるようにすることを義務づけて
いる。但し、回収処理制度の財源確保のため
に購入価格に費用を上乗せすることを禁じて
はいない。
「地方自治体は、電子製品のリサイクルに関
連する新たな法的義務を設けることに反対し
ている」と、Nersac の市長であり廃棄物問題
の第一人者である Bernard Charrier 氏は述べ
ている。さらに、現在小売業者、生産者およ
び地方自治体との間で結ばれている自主的
パートナーシップを継続すべきであると述べ、
どこの市長も最終的に納税者に転嫁されるよ
うな「資金的負担の追加」は受入れないと主
張した。
Geldron 氏によると、政府は、現在、輸入業
者、生産者、小売業者の他に消費者や環境団
体とも、WEEE 指令をどのように国内法に置
き換えるかについて協議を進めているという。
同 協 議 プ ロ セ ス に は 、 FIEEC 、 FEDEREC
( French Recovery Federation for the
Industrial Management of the Environment
and Recycling)、仏市長連合(French Mayors
Association)も参加している。
3.
仏環境相、2004 年に排出量取引法を導
入する予定と発表
9 月 1 日、バシェロ=ナルカン(R. BachelotNarquin)エコロジー・持続可能開発相は、
2004 年初めに、気候変動対策の重要手段の一
つと考えられている国家排出量取引制度の詳
細を定めた新法を導入する予定であると発表
した。
同法は、現在、環境省スタッフが準備中であ
るが、主要な GHG の排出割当を国内大手産業
約 1,500 社に配分するための枠組みを策定す
るものであると、同相は述べている。
環境省は、かかる協議が終了した後、同指令
の適用に係わる諸側面を具体的に明記した行
政令を起草し、その後、首相がこれに署名す
る。同政令は署名の後、官報告示を経て発効
となる。
関係当事者との協議が難航すると思われるこ
とから、観測筋は同協議プロセスは 2004 年
に入っても続くと見ている。政府が 2004 年 8
月初めまでに電子機器廃棄物に関する政令を
公表することはないとの見通しを示している。
FIEEC の推定では、現在国内に存在する 4,000
万台のテレビの回収・処分だけでも 6 億ユー
ロ以上かかるという。Heger 氏「真の問題は
誰がこの金額を負担するかということであ
る」とは述べている。
同法は、最終的に排出量取引のルールを定め、
やがて加盟 15 ヵ国をまたぐ EU レベルの大規
模な排出権取引制度と統合される。
同相は、9 月 1 日の公表時に、今後数週間の
うちに導入予定のその他いくつかの気候変動
関連イニシアティブの概要を示した。例えば、
低公害車の研究開発に対する新たな政府援助
や、交通・住宅分野における GHG 排出削減に
関する当面の優先課題を定める 2003 年「気
候計画」などがある。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
フランスの大半の都市はすでに家電製品その
他の大型製品を対象とする廃棄物回収セン
ターを管理・運営しており、地方政府は引取
り・保管制度への参加を強制しないよう中央
JMC environment Update
66
Vol.5 No.4 (2003.11)
欧州環境規制動向 〜在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [29]
V.
スウェーデン
1.
スウェーデン、環境・健康へのリスク防
止に関する自主協定計画を検討
某環境ニュースレターによると、政府は、駆
除剤の使用に関連するリスク削減対策として、
政府と化学物質の製造業者・輸入業者との間
で自主協定を締結する行動計画を検討してい
る。
同計画は 1987 年以降 4 度目の駆除剤に関す
る政府行動計画となるが、2004 年 1 月 1 日
に早くも施行される可能性がある。同行動計
画が定める自主協定により、化学業界規制が
変わる可能性がある。
リスク軽減のための別の方法として、同検査
局が開発したリスク指標の適用強化がある。
同指標は、約 700 種類に及ぶ植物保護剤およ
び殺生物剤が環境および健康に及ぼすリスク
をランク付けしている。
ドイツ、オランダおよびデンマークに関して
は、2003 年 8 月〜9 月の間、関連する環境政
策の進展が見られなかった。
<本モニタリング情報は、競輪の補助金を
受けて実施したものです>
同計画は農業委員会、国家化学物質検査局、
EPA および国家食品庁によって策定され、農
業省により内閣に提出された。
政府は、議会の承認を得ることなく、多くの
提言を実施することができる。しかし、国家
財政に影響する提言が承認された場合には、
同計画の実施に議会の承認が必要となる。
同計画は、EU 化学物質戦略提案、いわゆる
REACH)制度との調和が図られると言われて
いる。REACH 戦略により、企業は、要求諸事
項の中でもとりわけ、2005 年には化学物質の
登録を開始しなければならない。欧州委員会
は、同制度の草案を 2003 年 5 月に明らかに
し、2003 年末までに正式な REACH 案を公表
すると思われる。
同計画の主要目標は、駆除剤が環境および健
康に及ぼすリスクを軽減することである。こ
の新計画では、駆除剤に関連するリスクを減
らす方法として駆除剤削減目標を強調する代
わりに、啓蒙情報運動を展開するなど、リス
ク軽減のための自主協定を化学企業と締結す
るよう提案している。
化学物質検査局の提案には、1987 年に開始さ
れた有害物質の廃止措置の継続や、駆除剤使
用承認制度の強化が含まれている。
JMC environment Update
67
Vol.5 No.4 (2003.11)
連載 米国における環境関連動向
〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報[24]
【今月号のまとめ】
2003 年 9 月、グレイ・ディビス前カリフォルニア州知事が上院法案(SB: Senate Bill)20
に署名を行い、同法案は法制化された。同法は、州知事リコール選挙の混乱にまぎれ十分な
審議が行われないまま成立に至ったとの批判もあるが、全米で最初の包括的エレクトロニク
ス・リサイクル法であることから話題を呼んでいる。
カリフォルニア州は米国内でも環境分野では急進的な州法を制定することで知られてい
る。また同州の動きはモデル法となって西海岸から東海岸へと広がる傾向があることから、
産業界は同州法規制の動きに注目している。今回も、「廃棄された電子機器製品のリサイク
ル」という全米州が頭を悩ませる問題に対し、いち早く法整備をすることで解決を試みるカ
リフォルニアの動きに全米から注目が集まっている。
すでに西海岸および東海岸の他州でも同様の法案が制定される可能性が高まっており、産
業界は警戒を強めている。しかし条件や規定の詳細な定義が欠けているなど SB 20 の有効性
を巡り懐疑的な見方をするメーカーもあり、今後も産業界と州との間で議論が展開される模
様となっている。
I.
はじめに
2003 年 9 月 25 日、グレイ・ディビス前カリ
フォルニア州知事が SB 20 に署名を行い、大
方 の 予 想 通 り 、 同 法 案 は 「 The Electronic
Waste recycling Act of 2003(2003 年エレク
トロニクス廃棄物リサイクル法)」として法制
化された。同法は、エレクトロニクス製品の
リサイクル料金を消費者から回収する米国で
最初の法律となり議論を呼んでいる。
ディビス前知事は 500 以上の法案を抱える一
方、政治活動に忙殺されたため法案の審査に
十分な時間を費やす暇もなく、選挙前に慌し
く署名を行い法制化した、との批判もある。
今回、同法の成立に当たっては、ディビス前
州知事が同時期にリコール選挙を戦うという
前例のない状況となり、混乱を極めた。2003
年 10 月 7 日に行われたリコール選挙によっ
て同氏は解任されたが、選挙を前後して、同
リサイクル法案を始めとした多くの法案を抱
え、連日 TV などで政治声明を発表するなど
政治活動に忙しく、片手間に法案署名を行う
という極めて不安定な業務態勢となっていた。
JMC environment Update
68
しかし今回のリサイクル法に関しては、2002
年にその土台となる法案 SB 1523 がカリフォ
ルニア州議会に一度提出されており、同様の
法律が制定されるのは時間の問題、との見方
が一般的となっていた。しかも通常、米国の
法律・規制成立の過程に関しては、このよう
にまずは法律を成立させ、具体的な内容は、
後日、規制監督を行う行政府が、一般・産業
への公聴会を通してインプットを行いながら
決定する。従って、今回のカリフォルニア州
リサイクル法も、依然として反対・懸念を表
明する産業側からの意見を組み入れながら、
今後、具体的な規制内容が固められる模様と
Vol.5 No.4 (2003.11)
米国における環境関連動向 〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [24]
なっている。
ロダクト・スチュワード型のアプローチがよ
り好ましい」と発言し、エレクトロニクス製
品を生産したメーカーが廃棄物のリサイクル
責任を持つべきだと指摘した。また「産業界
には、問題解決のリーダーとなり、資源削減
やリサイクル技術など革新的な解決策を生み
出す能力があると信じている」とし、エレク
トロニクス製品のリサイクル法の制定そのも
のについて反対しているのではなく、法案に
修正さえ加えれば署名をする準備ができてい
る点を明確にしていた。
II. カリフォルニア州リサイクル法成立ま
での動き
今回のカリフォルニア州リサイクル法成立ま
での動きを見てみると、同州は 2001 年 3 月
に CRT(ブラウン管)の埋め立てを禁止する
法を制定、水銀を含有するブラウン管を含む
エレクトロニクス製品の埋め立て禁止法を成
立。その後 2002 年に、消費者によるリサイ
ク ル 料 金 前 払 い で あ る ARF ( Advanced
Recovery Fee=リサイクル料金事前徴収)法
案が提出され議会を通るが、ディビス前州知
事が拒否権を発動して廃案、という流れを
辿っている。
バイロン・シャー上院議員プロフィール
SB 1523 として全米で最初に提案された ARF
法案は、産業界から激しい抵抗を受け、州政
府と産業界の対立の構図が明確になっていた。
し か し 同 ARF 法 案 を 起 草 し た バ イ ロ ン ・
シャー(Byron Sher)州上院議員は、産業界
からの提言を大幅に取り入れ、修正・加筆・
削除を根気強く繰り返し、今回の SB 20 の法
制化に漕ぎ着けている。以下に、SB 20 の土
台となり、また廃案になった SB 1523 の概要
をまとめた。
上院法案(SB)1523
2002 年、バイロン・シャー上院議員は、カリ
フォルニア州において販売されるすべての新
品の CRT(ブラウン管)に対して販売時に 10
ドルのリサイクル料金を消費者に課す、とし
た SB 1523 を提出。同法案は上下院両方を通
過、州議会で可決されたものの、ディビス前
州知事が拒否権を行使し廃案になった。
シャー上院議員は現在、上
院環境委員会長を務め、こ
れまでにも同州の環境保護
を目的とした数々の有名な
州法の作成に携わっている。
例えば、カリフォルニア大
気汚染対策法案、廃棄物統
合管理法案、飲料水安全法案、また米国で最
初の有害物質による土壌汚染防止法案など、
数々のランドマーク的環境保全法の生みの親
となっている。
III. 新リサイクル法の内容
特に同法案における、CRT の ARF 条項に関し、
極めて急進的な内容かつ非現実的として産業
界から反発を受けた。また対象範囲が広いな
どの批判もあり、メーカー側は州知事に直接
ロビー活動を展開、州知事が産業界の陳情を
受け入れた形で拒否権が行使された。
しかしながらディビス前州知事は、拒否権を
発動する際、「欧州連合に見られるようなプ
JMC environment Update
こ こ で SB 20 の 執 筆 者 で あ る バ イ ロ ン ・
シャー(Byron Sher)上院議員の簡単な経歴
を紹介する。
69
このような経緯を経て法制化された SB 20 は、
廃案となった SB 1523 の方向性を部分的に踏
襲しているが、賦課に関するルールがより明
確になるなど改善が加えられている。新法で
は、SB 1523 と同じく、リサイクル料金事前
徴収が行われることになっているが、一律 10
ドルではなく、CRT を含むエレクトロニクス
製品の画面サイズにより、6 ドルから 10 ドル
のリサイクル料金が販売時に消費者に対して
課すことになっている。その他、有害な重金
属の段階的な廃止、メーカーによる政府への
廃棄報告の義務、ラベル表示義務、市民教育
への貢献などの項目が盛り込まれている。以
下に SB 20 の概要をまとめた。
Vol.5 No.4 (2003.11)
米国における環境関連動向 〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [24]
( DTSC: Department of Toxic Substances
Control)が、執行当局として今後の取決め・
取締りを行う。以下に主なスケジュールを示
す。
リサイクル対象製品
CRT、CRT を含む機器、その他同様のビデオ・
ディスプレー機器で、対角線が 4 インチ以上
のもの。
例:
• コンピュータ・モニター
• テレビ
• フラットパネル・スクリーン
• ビデオ・ディスプレー機器
リサイクル料金徴収方法
消費者に対する ARF(事前徴収)
2004 年
1月1日
地方自治体における e-Waste(エレ
クロトニクス廃棄物)管理の状況把
握終了
2004 年
4月1日
メーカーは、新法の対象となる製品
に関する情報を提出
2004 年
7月1日
• 新法に準拠していない製品の販
売は違法と見なされる
• CIWMB/DTSC はリサイクル料金
支払に関するスケジュール設定
• 小売業者は、販売時におけるリ
サイクル料金の徴収を開始
2005 年
1月1日
ラベル表示を行っていない対象製
品の販売禁止
2005 年
7月1日
• 製造業者は、CIWMB に対し、①
カリフォルニア州において販売
される対象製品の数、②製品に
含有される対象物質の量、の報
告開始
• CIWMB/DTSC は、リサイクル料
金の調整を行う
リサイクル料金
• 4 インチ以上 15 インチ未満のスクリーン
を持つ製品:
6 ドル
• 15 インチ以上 35 インチ未満のスクリーン
を持つ製品:
8 ドル
• 35 インチ以上のスクリーンを持つ製品:
10 ドル
上記リサイクル料金が製品価格に上乗せされ、
消費者は製品購入時に料金を支払う。
リサイクル料金徴収・納入の責任者
• メーカーは、廃棄物管理に関す
る情報を消費者に開示する
カリフォルニア州において製品販売を行う小
売業者および、通信販売やインターネットに
よって州外からカリフォルニア州の消費者に
対して製品販売を行う業者。
2007 年
1月1日
出典: CIWMB サ イ ト ( http://www.ciwmb.ca.gov/
electronics/act2003/Timeline/)の情報を元に
ワシントンコアにて作成
また、当初シャー上院議員は、自社製品を自
ら回収・リサイクル処理するメーカーは同法
の義務から免除されるという条項を盛り込む
計画にしていたが、産業界の多数派が「リサ
イクル業務は一括して行政に担当してもら
う」という方針を推したため、同条項は削除
されている。
リサイクル料金の流れ
リサイクル料金の流れをここで確認すると、
まず①小売業者によって販売されている対象
製品を消費者が購入する際に、消費者からリ
サイクル料金が同時に徴収される。②小売業
者は、販売した対象製品の数に応じてリサイ
クル料金を州政府に支払う。その際小売業者
は、徴収した料金全体の 3%を処理費として
使用可。③州は、徴収した料金を「エレクト
ロニクス廃棄物[e-Waste]回復・リサイク
ル 口 座 ( Electronic Waste Recovery and
Recycling Account)に預金する。④州認定の
罰金
法律違反に対して 2,500 ドルから 25,000 ド
ルの罰金が課される。
今後のスケジュール
カリフォルニア州統合廃棄物管理委員会
( CIWMB: California Integrated Waste
Management Board ) と 有 害 物 質 取 締 局
JMC environment Update
EU の RoHS 指令で規制される範囲
を限度として規制制定権限を州に
付与して規制
70
Vol.5 No.4 (2003.11)
米国における環境関連動向 〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [24]
e-Waste 回収業者およびリサイクル業者に対
し、州が料金を支払う。⑤回収・リサイクル
業者は、消費者に無料でリサイクル・サービ
スを提供する。
①消費者 → ②小売業者 → ③州口座→ ④
リサイクル業者 → ⑤消費者に無料でリサ
イクル・サービス提供
以上のように、最終的には、リサイクル料金
を支払った消費者が製品のリサイクルを行う
際に無料でサービスを受けることになってい
る。カリフォルニア州ではこれまで消費者が
エレクトロニクス製品をリサイクルしようと
すると、地方自治体の回収業者やメーカー主
導のプログラムから、利用費として 30〜50
ドルほどの手数料を支払う必要があった。消
費者は料金を支払うのを躊躇する傾向にあり、
カリフォルニア州では一般家庭のガレージや
倉庫に何百万という使い古されたコンピュー
タが眠っていると言われていた。また 2003
年 5 月には、ロングビーチの空き地に 10 ト
ン分もの e-Waste が不法投棄されているのが
発見されるなど、廃棄物の不法投棄が深刻化
していた。このような背景から、エレクトロ
ニクス製品のリサイクルを活発化させること
が新法の狙いとなっている。しかし、現時点
ですでに使用済みとなっている製品に関する
対応など、今後明らかにしなければならない
項目は多々存在する。
IV.産業界および環境団体の反応
メーカー業界の反応
前述したように、前回の法案である SB 1523
と比べ、新法に関する産業界からの批判はそ
れほど激しいものではなかった。むしろでき
るだけ協力体制を築き、産業界からのイン
プットを行ってもらった方が得策との姿勢か
ら、多くのメーカーが新法に対する支持を表
明している。一方、新法に対しては明確な疑
問点を指摘するメーカー、団体もある。
新法では、メーカーが自社製品のリサイクル
処理を認める条項が削除されており、同社は、
企業が自らリサイクル処理を行うことを評価
するような条項の追加を求めている。また、
すべてのメーカーに対し、公平にリサイクル
料金を徴収するためのシステムを州が運営で
きる保証がないとして、懸念を表明している。
特に、州外メーカーによるオンラインおよび
通信販売に対しても同額の料金が課せられる
ことになっているが、その方法が現時点では
明確ではない。従って、カリフォルニア州で
事業を営むメーカーや小売業者は、州外の業
者と比較して不利な状況に置かれるとして、
同法の弊害を訴えている。
ま た エ レ ク ト ロ ニ ク ス 産 業 団 体 の EIA
( Electronics Industries Alliance ) や AeA
(American Electronics Association)は SB 20
に対して反対を表明している。理由としては、
1)カリフォルニア州内で事業活動する業者
が、州外業者に対して不利な立場に立たされ
る、2)CIWMB はリサイクル料金を増額する
自由が与えられているが、いつどのような理
由で増額されるか分からないため、産業界に
とって不公平である、3)製品に含まれる有
害化学物質を 2006 年 6 月末までに廃止する
とした EU の RoHS 指令を、米国ではカリフォ
ルニア州のみが準拠することは不公平である、
などが挙げられている。
以下に SB 20 の主な争点をまとめた。
主な争点
例えばカリフォルニア州に本社を構える HP
(Hewlet Packard)社は、当初はシャー上院
議員に対し、産業界をリードする形で同リサ
JMC environment Update
イクル法案への支援を提供するなど、法案草
稿の段階から支持する側に回っていた。しか
し、同社はリサイクルが簡単にできる製品の
設計を行ったり、またリサイクル済プラス
チックに関する研究を進めるなど、e-Waste
削減のための積極的な対策を独自に展開して
きた関係から、このようなメーカー独自の活
動が実を結ばないことになる事を懸念し、州
に対してロビー活動を展開している。
¾ 対象製品の定義が不明確
メーカーは 2004 年 4 月 1 日までに、新法の
71
Vol.5 No.4 (2003.11)
米国における環境関連動向 〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [24]
対象となる製品を明確にし、徴収するリサイ
クル料金を確定して、関連情報をすべて州に
対して提出する義務を負う。しかし現時点で
は、対角線 4 インチ以上の CRT 機器を搭載し
たすべての製品が規制の対象になるのかどう
かが明確でない。例えば、新法からは、車と
医療機器が対象機器から除外されている。し
かし、ナビゲーション・システムを車に搭載
した場合でも、業者は法律準拠義務から免除
されるのか、などが疑問点として残っている。
¾ メーカーの報告義務内容が不明確
メーカーは、2005 年 7 月 1 日より有害物質
の段階的削減に関する状況を報告することに
なっている。しかし条件や報告機構が明確で
ない。また報告単位は製品の数なのか重さな
のか分からない、などの疑問点も残っている。
¾ ラベル表示義務が不明確
メーカーは、2005 年 1 月 1 日までに、対象
製品にメーカーの名前を冠したラベル貼付を
行う義務を負う。しかし具体的な方法などは
一切決定されていない。
¾ 認可されるリサイクル業者が不明確
リサイクル業者は、州から認定を受け、リサ
イクル費用を得てリサイクル業務を行うが、
州が発行するリサイクル業者の認定が明確で
ない。現時点では、リサイクル業者と、例え
ば単なる回収業者との差別化が行われておら
ず、適切なリサイクル業務を行うことが不可
能な業者が認定を受け、リサイクル料金を州
から得ることが可能になる恐れがある。
カリフォルニア州以外で CRT 埋め立て禁止
法を導入した州は、マサチューセッツ州、メ
イン州、ミネソタ州と 3 州あり、また e-Waste
のリサイクルを目的とした同様の法案が、29
の州からすでに提出されているとも言われて
いる。カリフォルニア州における新リサイク
ル法の成立によって、他州もこれに追随する
ことはほぼ確実と見られていることから、産
業界は NEPSI(National Electronics Product
Stewardship Initiative)による活動が実を結
ばず、このまま全米統一テイクバック計画の
採用がなされないのであれば、州ごとのパッ
チワーク的対応になだれ込むことも必至であ
る、として警戒を強めている。と同時に、州
に協力し、産業界のインプットを法案にでき
るかぎり盛り込んでもらえるよう働きかける
方が実利が大きい、とする見方が大勢を占め
ている。
SB 20 の支持を表明している主なメーカー、
リサイクル業者は以下の通り。
<メーカー>
以上のような懸念事項が産業界より指摘され
ており、今後、州との間で公聴会など意見交
換の場が持たれ、双方の歩み寄りが行われる
と見られる。
全米で統一された連邦法の成立を待たずに、
カリフォルニア州におけるリサイクル法の見
切り発車された点に関しては、「各州がそれ
ぞれ内容の異なる法律を乱立させ、産業界に
かかるコスト負担の高騰を招く恐れもある」
として警告を発するメーカーもある。しかし
産業界では全体的に、「連邦政府による全米
JMC environment Update
統一 e-Waste リサイクル法の成立までには道
のりが遠く、当面は州レベルでの法整備で対
応する他に手はない」というあきらめムード
が漂っている。
<エレクトロニクス製品
リサイクル業者>
IBM
MBA Polymers
Apple Computer
HMR Los Angeles
Hitachi
HMR San Francisco
JVC
OSS-Spectrum
Mitsubishi
SoCal
Recyclers
Panasonic
United Computer
Recyclers
Philips Electronics
United Datatech
Fisher-Sanyo
VALCORE Recycling
Computer
Sharp Electronics
Sony Electronics
Thomson
Toshiba
出典: CIWMB サイトの情報を元にワシントンコア
にて作成
72
Vol.5 No.4 (2003.11)
米国における環境関連動向 〜在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [24]
Network)によると、SB 20 には以下の 3 つ
の問題点があるという。
環境・市民団体の反応
当初、州政府および環境団体は、SB 20 の対
象範囲を「すべてのエレクトロニクス製品」
とするなど広範囲に設定し、またカリフォル
ニ ア に 本 部 を 構 え る 環 境 団 体 の 「 Silicon
Valley Toxics Coalition」などは、各メーカー
が自社製品のリサイクル義務を持つような法
律を推してロビー活動を展開するなど、今回
のリサイクル法とは異なるアプローチを行っ
ていた。
1) 輸出に関する条項で、輸出業者がリサイ
クルされた廃棄物が新しいエレクトロニ
クス部品として再利用されると主張すれ
ば、廃棄物の国外輸出が可能。輸出業者
は、輸出先の施設における安全性などを
確認する義務を負うが、条件など明確に
されていない。
2) 消費者から徴収されたリサイクル料金は、
地方自治体に配分され、地方自治体は地
元リサイクル業者にリサイクル料金とし
て支払うことになっている。しかしなが
ら、海外に廃棄物を搬出するだけの業者
やブローカーなども自治体からの料金支
払いの対象となっており、不正が行われ
る可能性がある。
というのも、SB 20 により、州政府運営によ
るリサイクル・プログラムが活発化すること
は予想されるが、そのことでかえって「メー
カーによる、 リサイクルしやすい製品 の開
発が停滞するのではないか」との懸念が環境
団体より聞かれている。前述した HP 社を始
めとし、リサイクル・プラスチックやその他
リサイクル部品の積極使用、解体しやすい製
品デザインの導入などリサイクル促進に向け
たメーカーの意欲がそがれ、政府運営依存型
リサイクルへシフトすることが懸念されてい
る。
3) 製品の生産者が直接テイクバックおよび
リサイクルを行う必要はないため、廃棄
物を排出しない、有害物質を含まない製
品設計を行おうとするメーカーの自助努
力を促すインセンティブが働きにくくな
る。
また、産業界からのインプットを大幅に取り
入れた結果、SB 20 によって廃棄物の国外へ
の輸送が依然として可能であるとの指摘も行
われている。工業国から発展途上国への公害
輸出をなくすために活動を行う環境保護団体
で、2002 年 2 月に「公害輸出:アジアへのハ
イテク廃棄(Exporting Harm: The High-Tech
Trashing of Asia)」を出版、米国産業界に大
きな波紋を投げかけた BAN(Basel Action
1994 年のバーゼル条約によって、工業国から
発展途上国への廃棄物輸出が国際的に禁止さ
れたが、米国は同条約に批准していない。こ
のような状況で、カリフォルニア州は CRT 埋
め 立 て 禁 止 法 を 施 行 し て お り 、「 SB 20 に
よって、e-Waste 輸出が事実上可能となり、
これまで以上に e-Waste が国外に搬出される
危険性がある」と環境団体は主張している。
調査委託先:
Website:
ワシントンコア
http://www.wcore.com
<本モニタリング情報は、競輪の補助金を受けて実施したものです>
JMC environment Update
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Vol.5 No.4 (2003.11)
「廃電池汚染防止技術政策」の公布
―『廃電池の回収・処理管理弁法』に向けた第 2 段階
― リサイクルの役割、コスト負担問題はなお不明確
1. 概要
(1) 目的
(2) 管理の重点
(3) 回収責任
(4) 処理・リサイクル施設
2. 不透明な役割・コスト負担
この 10 月、「廃電池汚染防止技術政策」通知が公布された(文末に全文の仮訳を掲載)。
これは 2001 年 12 月、国家環境保護総局、経済貿易委員会および科学技術部が合同で発表
した「『危険廃棄物汚染防止技術政策』の公布に関する通知」で特定された「危険廃棄物」の
一つ、電池について、その生産・リサイクルに関して技術的な側面を提示したものである。
使用済み電池の処分については 1997 年、国家経済貿易委員会を含む 9 部・委員会が合同
で『電池の水銀含有量制限に関する規定の通知』 * を公布した時に遡る。
同通知によれば、第 1 段階では、2001 年 1 月から水銀含有量が電池重量の 0.025%を超え
る電池の国内生産を禁止。2002 年 1 月 1 日からは水銀含有量が電池重量の 0.025%を超える
電池の国内販売を禁止。
第 2 段階では、アルカリ・マンガン電池の無水銀化を求める。「2005 年 1 月 1 日から水銀
含有量が電池重量の 0.0001%を超えるアルカリ・マンガン電池の国内販売を禁止」するとし
た。
今日、一般的に入手可能なマンガン電池は、水銀含有量の基準を基本的に満たしている。
アルカリ・マンガン電池については 14 社の 29 ブランドが無水銀電池の基準を達成して ISO
9000 の認定を受けており、その市場シェアは 50%以上に達する。同『通知』の対象となる
のは残余の 50%以下の電池である。
これを踏まえ同年 12 月、上記「『危険廃棄物汚染防止技術政策』の公布に関する通知」が
発表された。今回の「廃電池汚染防止技術政策」を経て、最終的に『廃電池の回収・処理管
理弁法』が制定される。これにより廃電池の回収・処理、リサイクルに関する制定作業は終
了する。『弁法』の制定に向けて過去数年にわたり、北京の「物資節能中心」(物資省エネセ
ンター)を通じて、専門家、消費者、メーカー等からの意見徴収が行われている。
「廃電池汚染防止技術政策」は、2005 年までは販売され廃棄される可能性のある水銀含有
量が電池重量の 0.0001%を超えるアルカリ・マンガン電池、および水銀含有量が電池重量の
0.025%を超える電池など、その他の既流通、使用中、または廃棄・放置されている水銀含有
電池が対象となる。
*
編者注:全文を「environment Update」誌 Vol.4 No.2 に掲載
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「廃電池汚染防止技術政策」の公布
―『廃電池の回収・処理管理弁法』に向けた第 2 段階
― リサイクルの役割、コスト負担問題はなお不明確
1.
概要
本技術政策通知の概要は以下の通り。
(1) 目的
廃電池の分類、収集、輸送、総合利用、保管、処理・処置等全過程における汚染防止のた
めの技術的選択。
(2) 管理の重点
廃電池の収集の重点は、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・水素電池、リチウムイオ
ン電池、鉛酸電池など充電可能電池、および酸化銀電池など廃ボタン電池。水銀の使用を徐々
に減少させ、最終的に一次電池の生産で使用中止とし、ニッケル・カドミウム電池、鉛蓄電
池、その他の環境に有害な電池については安全かつ効率良く、そして低コストで収集、回収
するか安全に処置する。
(3) 回収責任
廃棄された一次電池の回収は、回収に責任がある機関が責任を持って実施する。有効に回
収する技術・経済条件が欠落している現状では、国が水銀の利用を抑制または停止をすでに
求めている一次電池の回収にについては、とくに熱心に取り組む必要はない。
廃充電式電池と廃ボタン電池の回収責任を負うのは以下の者である。
―
―
―
―
充電式電池とボタン電池の製造者
充電式電池とボタン電池の輸入者
充電式電池またはボタン電池を使用する電気製品の製造者
充電式電池とボタン電池を OEM 委託する企業
これら廃充電式電池と廃ボタン式電池の回収に責任を持つ者は、自社製品の販売チャネル
に対する指導の観点から、廃電池の回収システムを構築し、または関連の回収システムが有
効に機能するよう委託する。充電池、ボタン式電池とそれらを使用する家電品の販売者はそ
の販売地点に、廃電池の分類・回収施設を設け、併せて同所に設置基準に従い、分かりやす
いマークを設置する。
回収後の大量の廃電池は適宜分類し、相応の資格を有する工場(施設)に送り、リサイクル
または無害化処理を施す。
(4) 処理・リサイクル施設
廃電池のリサイクル工場は廃充電式電池と廃ボタン電池の回収処理を主とし、一次廃電池
のリサイクル工場の建設については急ぐ必要はない。
廃電池のリサイクル施設の建設は技術経済的側面からの十分な論証を踏まえるべきであり、
施設の運営が環境への二次汚染を引き起こさず、また経済的に有効な資源回収となるよう保
障すべきである。
廃充電式電池、廃ボタン電池のリサイクル工場は、危険廃棄物総合利用施設の要件に基づ
いて管理し、危険廃棄物経営許可証を取得した後に稼働しなければならない。一次廃電池と
混合廃電池のリサイクル工場は、危険廃棄物総合利用施設の要求に基づいて管理を実施し、
危険廃棄物経営許可証を取得した後に稼働しなければならない。
JMC environmental Update
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Vol.5 No.4 (2003.11)
「廃電池汚染防止技術政策」の公布
―『廃電池の回収・処理管理弁法』に向けた第 2 段階
― リサイクルの役割、コスト負担問題はなお不明確
収集後、経済的に有効な方法でリサイクル処理をなお実施しない一次廃電池または混合廃
電池は、危険物の安全処理規則に従い、安全に埋め立てまたは保管し、危険物を安全に埋め
立てる場所を建設していない地域については、危険廃棄物安全埋め立ての要求に従い、専用
の埋め立て地を建設するか、『危険廃棄物保管汚染管理基準』の要求に従い、専用の廃電池保
管施設を建設し、廃電池をプラスチック容器に入れ、専用の施設で埋め立て処理するか、保
管する。使用するプラスチック容器は腐食に耐え、耐圧で、密封性を有していなければなら
ず、破損しておらず、埋め立て処理に耐える必要な強度を備えていなければならない。
2.
不透明な役割・コスト負担
「廃電池汚染防止技術政策」の特徴は、電池メーカー・輸入者、電池を使用する家電・電
子機器製品等のメーカー、販売店、処理・リサイクル施設という 4 つの関係主体を明示し、
それぞれの役割を比較的明確に示したところにある。
しかし、回収、処理・リサイクルの役割分担はなお十分とは言い難く、そのコスト負担に
ついての言及は皆無である。ここが『廃電池の回収・処理管理弁法』の制定に際しての最大
問題の一つと考えられる。
-------------------------------仮訳
国家環境保護総局文書
『廃電池汚染防止技術政策』通知公布について
第 163 号 2003 年
(本文書は国家環境保護総局、国家発展改革委員会、建設部、科学技術部、商務部が連合で
公布する)
各省、自治区、直轄市環境保護局(庁)、計画委員会、経済貿易委員会、建設庁、科学技術庁、
対外経済貿易委員会(庁)
『中華人民共和国固形廃棄物汚染環境防止法』を貫徹し、環境を保護し、人体の健康を保障
し、廃電池汚染防止工作を指導するため、ここに『廃電池汚染防止技術政策』を承認、公布
し、忠実に実施する。
付録:廃電池汚染防止技術政策
2003 年 10 月 9 日
1. 総則
1.1
廃電池の環境管理と処理・処置、リサイクル技術の発展を導き、廃電池の処理と資源
再選行為を規範化し、環境汚染を防止し、社会・経済の持続的発展を促進するため、『中
華人民共和国固形廃棄物汚染環境防止法』 ** 等の関連の法律、法規、政策、基準等に
従い、本技術政策を制定する。本技術政策は社会経済、技術水準の発展に従い、適宜
改修する。
1.2
本技術政策がいう廃電池は以下の廃棄物を含む。
・ すでに使用価値を失い廃棄された各種の一次電池(ボタン電池を含む)、充電池等
・ すでに使用価値を失い廃棄された鉛酸蓄電池、およびその他の蓄電池
・ すでに使用価値を失い廃棄された各種の家電製品専用の組合わせ及び単体の電池
**
全文の和訳を「environmental Update」誌 Vol.4 No.2 に掲載
JMC environmental Update
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Vol.5 No.4 (2003.11)
「廃電池汚染防止技術政策」の公布
―『廃電池の回収・処理管理弁法』に向けた第 2 段階
― リサイクルの役割、コスト負担問題はなお不明確
・ 上記の各種電池の生産、輸送、販売過程で不合格となった製品、廃棄された製品、
使用期限が切れた製品等
上記の各種電池の生産過程で産出された混合再生原料等の廃棄材料。
その他の廃棄された化学的な電源。
1.3
本技術政策は廃電池の分類、収集、輸送、総合利用、保管、処理・処置等全過程にお
ける汚染防止の技術選択に関するもので、併せて相応の施設の計画、プロジェクト立
案、立地選択、設計、施工、運営・管理を指導し、関連産業の発展を導くことを目的
とする。
1.4
廃電池汚染の管理は電池の寿命周期の分析を従うべき基本原理とし、積極的に清潔生
産を実施し、全過程の管理と汚染物質の総量コントロールの原則を実行することとす
る。
1.5
廃電池汚染の管理の重点は、廃棄された水銀を含有する電池、廃棄されたニッケル・
カドミウム電池、廃棄された鉛蓄電池である。水銀の使用を徐々に減少させ、最終的
に第一次電池の生産で使用中止とし、ニッケル・カドミウム電池、鉛蓄電池、その他
の環境に有害な電池については安全かつ効率良く、そして低コストで収集、回収する
か安全に処置する。
1.6
危険物に属する水銀電池、ニッケル・カドミウム電池、廃棄鉛蓄電池等は、関連の危
険廃棄物の管理法規に従い、統一的な管理を実施する。
1.7
廃電池の汚染経路を追跡し、汚染規則と環境に対する影響が小さい小型電池を開発す
る科学研究を鼓舞するため、相応の汚染防止対策を確定する。
1.8
廃電池の汚染防止知識を宣伝、普及し、人々の環境意識を高め、廃電池の管理とそれ
が環境に及ぼす悪影響を正しく理解させること等を通じて、廃電池の科学的、合理的、
そして有効な管理を実現する。
1.9
各級の人民政府は、環境保護要求を満たす、電池の分類、収集、保管、リサイクル、
処理・処置システムと設備建設を奨励し、廃電池の汚染防止工作を推進する経済政策
等を策定する。
1.10 本技術政策は、『危険廃棄物汚染防止技術政策』の総体的原則に従ったものである。
2. 電池の生産と使用
2.1
関連の電池分類基準の技術標準を制定し、廃電池の分類収集、資源利用、処理・処置
の助けとする。電池の分類基準は以下の内容を含む。
・ 回収を必要とする電池の回収マーク
・ 回収を必要とする電池の種類に関するマーク
・ 電池が含有する有害物質の含有マーク
2.2
電池メーカーや OEM メーカーは、その電池の上に国家標準マークを貼付する。
内部装填専用電池のメーカーは、その最終製品の上に国家標準マークに基づく電池分
類マークを貼付する。
2.3
電池輸入者は海外のメーカー(または販売者)に対し、我が国への電池の輸出時に中
国の国家標準マークを貼付するよう求めるか、または輸入者が輸入する電池の上に中
国国家標準マークを貼付する。
JMC environmental Update
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Vol.5 No.4 (2003.11)
「廃電池汚染防止技術政策」の公布
―『廃電池の回収・処理管理弁法』に向けた第 2 段階
― リサイクルの役割、コスト負担問題はなお不明確
2.4
電池を使用する器具を設計する際、取り外しが容易な構造(または電池の組み合わせ)
を採用すべきであり、併せて使用説明書に電池の使用と装填、取り外しの手順を明記
し、電池使用後の処置方法について明示する。
2.5
国の関連規定は、酸化水銀電池を生産、販売することを禁止している。国の関連規定
は、水銀含有量が電池質量の 0.025%のマンガン電池、アルカリ・マンガン電池の 生
産と販売を禁止している。2005 年 1 月 1 日からは水銀含有量が 0.0001%以上のアルカ
リ・マンガン電池の生産を禁止する。水銀含有量が 0.0001%を下回るアルカリ・マン
ガン電池が一次電池中に占める比率を徐々に引き上げる。環境に優しい電池の生産、
販売を拡大する。
2.6
技術進歩に併せ、関連の電池に含有されるカドミウム、鉛の最高含有量の基準を定め、
カドミウム、鉛などの有害物質の電池への使用を制限する。リチウムイオン電池と金
属酸化物ニッケル電池(ニッケル水素電池と略称)等の充電式電池の生産を奨励し、
ニッケル・カドミウム電池の充電式電池に代え、ニッケル・カドミウム電池の生産と
使用を減少させ、最終的に民生用としてニッケル・カドミウム電池を淘汰する。
2.7
消耗度が低く、エネルギー効率が高く、低汚染の電池の生産技術、使用技術の開発を
奨励する。電池生産にリサイクル材料を使うことを奨励する。
2.8
宣伝教育を強化し、消費者が水銀含有量の少ない 0.0001%の高アルカリ・マンガン電
池の使用を促す。また消費者がニッケル水素・リチウムイオン電池等の充電式電池を
ニッケル・カドミウム電池に代えて使用することを支持し、促進する。消費者が低質
でブランドを侵害し、また正確に関連マークを付けていない電池を購入、使用するこ
とを拒絶することを支持し、また促す。
3. 収集
3.1
廃電池の収集の重点は、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイ
オン電池、鉛酸電池などの廃棄充電式電池、および酸化銀電池などのボタン電池であ
る。
3.2
廃棄された一次電池の回収は回収に責任がある機関が責任を持って実施する。有効に
回収する技術・経済条件が欠落している現状では、国が水銀の利用を抑制、または停
止をすでに求めている一次電池の回収については、とくに熱心に取り組む必要はない。
3.3
以下の機関は廃充電式電池と廃ボタン電池の回収責任を負う。
・
・
・
・
充電式電池とボタン電池の製造者
充電式電池とボタン電池の輸入者
充電式電池またはボタン電池を使用する電気製品の製造者
充電式電池とボタン電池を OEM 委託する企業
3.4
上述の廃充電式電池と廃ボタン電池の回収に責任を持つ機関は、自社製品の販売チャ
ネルに対する指導の観点から、廃電池の回収システムを構築し、または関連の回収シ
ステムが有効に機能するよう委託する。充電式電池、ボタン電池とそれらを使用する
家電品の販売者はその販売地点に、廃電池の分類回収施設を設け、併せて同所に設置
基準に従い、分かりやすいマークを設置する。
3.5
消費者が廃充電式電池と廃ボタン電池を電池販売店または電気製品販売店など相応の
回収施設に直接に持ち込み、販売店の回収に協力することを奨励する。
JMC environmental Update
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Vol.5 No.4 (2003.11)
「廃電池汚染防止技術政策」の公布
―『廃電池の回収・処理管理弁法』に向けた第 2 段階
― リサイクルの役割、コスト負担問題はなお不明確
3.6
回収後の大量の廃電池は適宜分類し、相応の資質を持つ工場(施設)に送り、リサイ
クルまたは無害化処理・処置を施す。
3.7
廃電池の収集・包装に当たっては、相応の分類マークを持つ専用の収集装置を使用す
る。
4. 輸送
4.1
廃電池はその種類に基づいて、国家標準に合致する専門容器に分類、収集し、輸送す
る。
4.2
保管、移送する電池の容器は電池の特性と設計に基づいて、破損や変形しにくく、そ
の使用材料は有効に漏洩、拡散を防止するものでなければならない。廃電池の容器は
国家標準が求める分類マークを貼付しなければならない。
4.3
廃電池の包装、輸送前と輸送途中では、廃電池の構造の完全性を保障、破損、粉砕を
回避し、内部の有害物質の漏洩、汚染を防止する。
4.4
危険廃棄物の廃電池の越境的な移転は、
『危険廃棄物の越境移転およびその処置のモン
トリオール条約』の要求に従い、廃電池の国内の大量の移転は、『危険廃棄物移転連単
管理弁法』、その他の関連規定に従う。
4.5
各級の環境保護行政の主管部門は、国と地方が制定した危険廃棄物移転管理弁法に従
い、大量の廃電池の移動に対して有効な管理を実施し、移転途中で廃電池が廃棄など
されて環境を汚染したり、条項 3.1 が規定する廃電池が生活ゴミに混入したりすること
を禁止する。
5. 保管
5.1
本政策が言う廃電池保管量とは、廃電池処理・処置方式が確定する前に収集・補完さ
れているものを含め、廃電池収集、運送、リサイクル過程中と処理・処置前の保管量
を指す。
5.2
廃電池の保管施設は、
『危険廃棄物保管汚染管理基準』(GB18597-2001)の関連要件に
基づいて建設、管理する。
5.3
廃電池が雨等で浸水することを回避するため、廃電池を屋外のオープンスペースに放
置することを禁止する。
6. 資源の再生
6.1
廃電池のリサイクル工場は廃充電式電池と廃ボタン電池の回収処理を主とし、一次廃
電池のリサイクル工場の建設については十分な検討を行なうべきである。
6.2
廃電池のリサイクル施設の建設は技術経済的側面からの十分な論証を踏まえるべきで
あり、施設の運営が環境への二次汚染を引き起こさず、また経済的に有効な資源回収
となるよう保障すべきである。
6.3
廃充電式電池、廃ボタン電池のリサイクル工場は、危険廃棄物総合利用施設の要件に
基づいて管理し、危険廃棄物経営許可証を取得した後に稼働しなければならない。一
次廃電池と混合廃電池のリサイクル工場は、危険廃棄物総合利用施設の要求に基づい
て管理を実施し、危険廃棄物経営許可証を取得した後に行われなければならない。
6.4
廃 電 池 リ サ イ ク ル 工 場 の 立 地 の 選 択 は 、『 危 険 廃 棄 物 燃 焼 汚 染 管 理 基 準 』
(GB18484-2001)に規定された立地要件を満たさなければならない。
JMC environmental Update
79
Vol.5 No.4 (2003.11)
「廃電池汚染防止技術政策」の公布
―『廃電池の回収・処理管理弁法』に向けた第 2 段階
― リサイクルの役割、コスト負担問題はなお不明確
6.5
廃電池リサイクル工場の生産プロセスにおいて、水銀、カドミウム、鉛、ニッケル等
の有害物質の回収量と安全に処理・処置した数量の合計は、廃電池中に含有される有
害物質総量の 95%を下回ってはならない。
6.6
リサイクル前の廃電池の分解、粉砕、選別等の工程はすべて密封された構築物のなか
で実施し、排出ガスは必ず浄化処理し、基準を満たした後に大気中に放出する。人力
や屋外での廃電池の破砕は行ってはならず、廃電池に含まれる有害物質が無秩序に放
出され二次汚染を引き起こすことを防止する。
6.7
火気式の冶金技術を用いて廃電池資源のリサイクルを行ない、その溶解工程を密閉さ
れたマイナス圧力の条件下で実施する場合、有害ガスと粉塵の放出を回避し、収集さ
れたガスは処理し、その後に放出しなければならない。
6.8
水気式の冶金技術を用いて廃電池をリサイクルし、その溶解工程を構築物の内部で実
施する場合、排出ガスは除湿、浄化を実施し、その後に放出しなければならない。
6.9
廃電池のリサイクル装置は末端ガス浄化システム、警報システム、緊急処理装置を備
えなければならない。
6.10 廃 電 池 の リ サ イ ク ル 工 場 の 排 気 ガ ス 放 出 レ ベ ル は 、『 危 険 廃 棄 物 燃 焼 管 理 基 準 』
(GB18484-2001)の大気汚染物排出基準値に従わなければならない。
6.11 廃電池のリサイクル工場は、汚水浄化施設を設置しなければならない。工場廃水は、
『汚
水総合排出基準』(GB8978-1996)その他の相応の要件基準を満たさなければならない。
6.12 廃電池のリサイクル工場が産出する固形廃棄物(溶解後の残滓、排気ガス浄化に伴う
灰、汚水処理汚泥、残余の汚物等)は、危険廃棄物の管理と処理の規則と諸手続きに
従わなければならない。
6.13 廃 電 池 の リ サ イ ク ル 工 場 の 作 業 員 は 環 境 に 関 す る 『 工 場 企 業 設 計 衛 生 基 準 』
(GBZ1-2002)、『職場での有害要素への職業上の接触制限値』(GBZ2-2002)等関連の
国の要求基準を満たさなければならない。
6.14 廃電池のリサイクルに関する科学的研究、経済開発を鼓舞し、高効率の廃電池リサイ
クル技術に関する研究を展開し、廃電池のリサイクル率を引き上げる。
7. 処理
7.1
生活ゴミを焼却、堆肥処理する都市等ではゴミの分別収集を実施し、各種の廃電池が
その他の生活ゴミに混在し、焼却、または堆肥発酵装置に混入することを回避する。
7.2
収集した廃電池を焼却処理することを禁止する。
7.3
収集後、経済的に有効な方法でリサイクル処理をなお実施しない一次廃電池または混
合廃電池は、危険物の安全処理規則に従い、安全に埋め立てまたは保管し、危険物を
安全に埋め立て場所を建設していない地域については、危険廃棄物安全埋め立ての要
求 に 従 い 、 専 用 の 埋 め 立 て 地 を 建 設 す る か 、『 危 険 廃 棄 物 保 管 汚 染 管 理 基 準 』
(GB18597-2001)の要求に従い、専用の廃電池保管施設を建設し、廃電池をプラスチ
ック容器に入れ、専用の施設で埋め立て処理するか、保管する。使用するプラスチッ
ク容器は腐食に耐え、耐圧で、密封性を有していなければならず、破損しておらず、
埋め立て処理に耐えるためまた必要な強度を備えていなければならない。
7.4
廃電池のリサイクルを簡便化するため、収集した廃電池を埋め立て処理用と保管用と
で分別する。
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80
Vol.5 No.4 (2003.11)
「廃電池汚染防止技術政策」の公布
―『廃電池の回収・処理管理弁法』に向けた第 2 段階
― リサイクルの役割、コスト負担問題はなお不明確
7.5
廃電池の埋め立て処理・処置過程で、または保管作業過程で、廃電池を分解、圧縮、
粉砕等してはならない。廃電池の外ケースの完全性を保障し、有害物質の漏洩を防ぐ。
8. 廃鉛蓄電池の汚染防止
8.1
廃鉛蓄電池の収集、輸送、分解、再生溶解等の活動は前述の各要求のほか、本章の事
項をも満たさなければならない。
8.2
廃鉛蓄電池は回収利用し、その他の方法での処置を禁止する。
8.3
廃鉛蓄電池は危険廃棄物として関連規則に従って管理する。廃鉛蓄電池の収集、運送、
分解、鉛をリサイクルする企業は危険廃棄物処理の経営許可証を取得して、後に経営、
運営に当たる。
8.4
廃鉛蓄電池を集中して回収、処理することを鼓舞する
8.5
廃鉛蓄電池の収集、運送過程ではケースの完全性を保持しなければならず、内部の酸
液の漏出を防止する適当な措置を講じる。
廃鉛蓄電池の収集、運送機関は事故の際の緊急措置を制定し、収集、運送過程で事故
が発生した時に環境汚染を軽度に抑え、または汚染を防止する有効な手段とする。
8.6
廃鉛蓄電池の回収分解は専門施設内部で行い、分解過程で出たプラスチック、鉛板、
鉛の含有物、酸性溶液等と分別回収し、処理する。
8.7
廃鉛蓄電池に含まれる廃酸性溶液は、下水道に垂れ流すなど環境中に散逸させてはな
らず、必ず収集処理しなければならない。蓄電池のままで外側のケースや酸性液を直
接に溶解してはならない。
8.8
廃鉛蓄電池の回収溶解企業は下の要件を満たさなければならない。
・ 鉛の回収率は 95%;
・ リサイクル鉛の生産規模は年間 5,000 トンである。本技術政策の公布後、新規創設
企業の生産規模は約年産 1 万トンである。
・ 鉛の再生過程では密封された溶解設備を採用するか、マイナス圧力の条件下で生産
し、ガスの散逸を防止する。
・ 廃水、廃ガス浄化施設を改善、完璧なものとし、廃水、廃ガスの国の排出基準を満
たす。
・ 鉛溶解処理リサイクルプロセスで産出される粉塵と汚泥は手抜かりなく安全に処置
する。
上述の基本条件を満たすことができない伝統的な溶解技術と鉛をリサイクルする小規
模企業は順次淘汰する。
8.9
廃鉛蓄電池の鉛の溶解リサイクル処理中に収集した粉塵と汚泥は、危険廃棄物管理の
管理要求に従って処理する。
☐
調査委託先:
New Asian Invesco Ltd.(新亞洲投咨詢信息有限公司)
担当 董事總經理 主任投資分析員 森一道氏
<本モニタリング情報は、競輪の補助金を受けて実施したものです>
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寄
稿
オムロンの環境取り組み
オムロン株式会社
経営総務室 品質環境部
参事
島田 誠司
お写真
はじめに
日本機械輸出組合環境問題関西委員会で専門家のご講演、事務局や会員各企業の皆様よりい
ただく各種情報、とくに規制化学物質に対する欧州をはじめとする各国の規制情報は社内へ展
開できる大変有効かつ貴重なものです。この誌上をお借りして皆様に感謝を申し上げます。
オムロンの環境取り組みで特に本委員会と関わりが深い規制化学物質対応の取り組みをご紹
介いたします。また、環境取り組みの全体につきましては環境報告書 2003(Web サイト
http://www.omron.co.jp/kankyo/)をご覧頂ければ幸いに思います。
1. オムロンの環境取り組み概要
オムロンでは環境問題への対応を大変重要な経営課題と捉えており、社憲と経営理念で環境
に対する取り組み理念を企業の公器性として謳い、その行動指針を特別宣言として環境宣言に
示しています。(図 1)
オムロンの理念体系と環境経営ビジョン
「われわれの働きで
われわれの生活を向上し
よりよい社会をつくりましょう」
社憲
◆顧客満足の最大化
経営理念
◆たえざるチャレンジ
◆株主からの信頼重視
企業市民宣言
環環境宣言
境宣言
企業倫理宣言
企業倫理宣言
◆良き企業市民の実践
特 別 宣 言
環 境 宣 言
◆個人の尊重
◆倫理性の高い企業活動
私たちは、
環境と人との調和を目指し、
公器性の高い企業活動を通して、
よりよい環境の実現に貢献します
経営理念と環境宣言実現のための環境経営ビジョン
GREEN OMRON 21
JMC environment Update
図1
82
この社憲、経営理念、環境
宣言を具体的に実践するため
に 21 世紀企業として取り組
むべき内容と目標を環境ビジ
ョン「グリーンオムロン 21」
として策定し、全社をあげて
取り組んでおります。
「グリー
ンオムロン 21」ではエコマイ
ンド、エコマネジメント、エ
コプロダクツ、エコファクト
リー/ラボラトリー/オフィ
ス、エコロジスティクス、エ
ココミュニケーションの 6 つ
の領域で取り組み項目と中長
期目標を定め 21 世紀企業と
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オムロンの環境取り組み
して持続可能な循環型社会に貢献できる「環境経営」を目指しています。
2. エコプロダクツ
現在、規制化学物質対応が命題となっているエコプロダクツ(環境配慮型商品/環境貢献商
品の創出)の取り組みについてご紹介をいたします。
エコプロダクツでは次の 3 つを取り組みの柱としています。
1) エコ商品(環境配慮型商品/環境貢献商品)の創出
オムロン独自で定めたエコラベル認定基準(ISO 14021 の自己宣言マーク「タイプⅡ」に準
拠)を達成した商品をエコラベル商品とするエコ商品認定制度を導入し、エコ商品創出に取
り組んでいます。
また、商品の企画から開発段階で商品ライフサイクル各ステージでの環境影響をアセスメン
トし可能な限り環境負荷の少ない商品を開発するための製品アセスメントを全開発商品で
実施しています。
2) 規制化学物質削減・全廃商品の創出
これは前述のエコラベル認定基準の一つでもありますが特にEUをはじめとする化学物質
の規制に対応し、使用禁止される物質を商品から全廃することに取り組んでいます。
3) グリーン調達
エコ商品(環境配慮/環境貢献商品)の創出を支える取り組みとしてグリーン調達を推進し
ています。
これまでのグリーン調達は「環境に配慮した商品をお客様に提供する」ことを目的に「環境
に与える影響を考慮した部材を購入する」、
「環境保全に積極的に取り組んでいる仕入先様か
ら部材を購入する」ことをグリーン調達方針として、部材への規制化学物質含有量調査と仕
入れ先様の環境マネジメントシステム(EMS)評価に取り組んできました。
3. 規制化学物質全廃の取り組み
海外、特に EU での化学物質規制の強化はお客様の要求に大きな変化をもたらし、使用禁止
物質を含有していないことを保証する、すなわち環境を保証した製品の提供を求めてきていま
す。従来の取り組みでは法規制の
これからのグリーン調達方針
遵守はもとよりお客様の要求に応
えることが出来なく取り引き停止、
お客様に
お客様に「環境を配慮した製品」
「環境を配慮した製品」を提供するために
を提供するために
打ち切りなど事業存続の危機とな
ることが想定されるため、グリー
ン調達の目的を「環境に配慮した
お客様に
環境を保証した製品」を提供するための
お客様に「環境を保証した製品
「環境を保証した製品」
を提供するための
製品の提供」から「環境を保証す
部材を調達する
部材を調達する
る製品の提供」とし、グリーン調
達方針も「環境を保証した部材し
環境を保証したものしか
原材料・部品・製品
か買わない使わない」、「環境を保
買わない使わない
証するマネジメントシステムを構
環境を保証をするマネジメント
仕入先様
築している仕入先様から部材を購
システム構築している
入する」に変更しました。(図 2)
グローバル、全品目でグリーン調達の対応
図2
JMC environment Update
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オムロンの環境取り組み
「環境を保証した部材しか買わない使わない」を実行するためのツールであるオムロンとし
ての規制化学物質管理基準を改定しました。改訂の結果、オムロンで使用を管理する化学物質
は次の 4 つのランクに分類され 212 物質群になりました。
1) 使用禁止物質(A ランク)········ 69 物質群
国内外の法規制により現在既に製品(部材)への含有が禁止されている物質、および環境負
荷が高くかつ代替物質が存在するためオムロンが独自に使用を禁止した物質。
2) 全廃物質(A1 ランク)············· 4 物質群
法規制化されることが明確でかつ使用禁止期限が定められているため、オムロンが前倒しの
全廃時期を定めて使用禁止する物質。
3) 代替促進物質(B ランク)········· 5 物質群
国内外の法規制が強化されて使用削減や使用禁止が想定される物質で代替促進に取り組む
物質。
4) 自主管理物質(C ランク)········ 134 物質群
国内外の法規制において使用は禁止されていないが使用実態を把握し自主的に削減や適正
な処理を行なう物質で使用量、製品への含有量把握や適切な管理を行なう物質。
この改訂した管理基準に基づき部材への規制物質調査を改めて実行するとともに、仕入先様
のご協力をいただきながらオムロンの製品から使用禁止物質を全廃し、環境を保証した製品を
提供する取り組みを進めています。(図 3)
規制化学物質全廃の取り組みステップ
Step1: 規制化学物質含有量調査 ( 〜 04/3/M )
仕入先様からの規制化学物質含有量データ入手
Step2: 入手データの登録と含有量の確認( 〜 04/3/E )
Step3: 購入部材からA、A1物質全廃( 〜 05/3/E )
Step4: オムロン製品への反映(〜06/3/E)
全世界のオムロン製品を「環境を保証した製品
環境を保証した製品」に
切替え完了 ⇒ 06年3月末
図3
また、仕入先様より購入する部材での使用禁止物質全廃に先立ち、オムロン社内の取り組み
として製造工程で使用するはんだの鉛フリー化、リレー・スイッチの接点や端子メッキの鉛フ
リー化、カドミフリー化接点材料開発などの技術開発と耐久性・耐境性など製品での信頼性検
証をすすめ実用化技術を確立し、使用禁止物質を全廃できる体制整備を完了しています。
[当組合 環境問題関西委員会 委員]
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環境・安全グループ担当委員会の活動状況
1.貿易関連環境問題対策委員会
<平成 15 年度 第 3 回 通算第 76 回委員会(10/10:組合会議室)>
Œ 「EU の環境政策の背景について」
―― 前駐日 EU 代表部参事官 モリス・ブレン氏より、EU の環境政策の背景について報告
があり、引き続き意見交換を行った。
Œ その他、EU(WEEE & RoHS 指令、EuP 指令、REACH 等)、米国(カリフォルニア廃電子
機器リサイクル法)、中国版 RoHS 法、等について情報交換を行った。
2.貿易と環境専門委員会
<平成 15 年度 第 5 回委員会(10/10:組合会議室)>
Œ WEEE & RoHS 指令関連、EU 新化学物質規制関連、EU 排出権取引指令、中国版 RoHS、
香港省エネラベル、米国カリフォルニア廃電子機器リサイクル法等について情報交換を
行った。
<平成 15 年度 第 6 回委員会(11/11:組合会議室)>
Œ 「REACH システムの概要と課題」について
―― (社)電子情報技術産業協会 環境・安全部部長 桑原 孝氏より、EU の REACH シス
テムの概要と課題について報告があり、引き続き質疑応答、意見交換を行った。
Œ WEEE & RoHS 指令関連動向(ドイツ、フランスの法制化状況、TAC の動き等)、ELV 実施
状況、バーゼル条約関連等について、情報交換・意見交換を行った。
3.環境法規専門委員会
<平成 15 年度 第 5 回委員会(9/26:組合会議室)>
Œ 「ECD(Environmentally Conscious Design)」について
―― ㈱リコー 社会環境本部次長 佐藤 孝夫氏より、ECD(Environmentally Conscious
Design)の国際規格化と日本の現状について報告があり、引き続き質疑応答、意見
交換を行った。
Œ 米国カリフォルニア廃電子機器リサイクル法、EU の WEEE & RoHS 指令関連動向、中国
版 RoHS 法等について、情報交換を行った。
<平成 15 年度 第 6 回委員会(10/24:組合会議室)>
Œ 米国の環境法規制動向(リサイクル法、水銀規制、エナジースター等)、欧州の環境法規
制動向(WEEE & RoHS 指令、ドイツ、フランスの法制化状況、等)、アジアの環境法規
制動向(中国の廃電気電子機器への対応状況、韓国の包装廃棄物規制 等)について情報
交換を行った。
JMC environment Update
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Vol.5 No.4 (2003.11)
事務局便り
◇
WEEE & RoHS 指令に関しては、TAC での非公式会議(ワークショップ)の結果をお伝えしましたが、
会議は情報交換が中心であり、明確な結論が出たというものではありません。たとえば「上市」の定
義など以前議論されていた問題を繰り返し議論しているところもあり、「小田原評定」ならぬ「ブラッセ
ル評定」の感を拭えません。もっとも今回は英国が自主的に主催したのでロンドンでの会議でした
が。
◇
同指令関連では、上記のほか現時点での独仏両国の法制化状況をブラッセル事務所からの報告
に基づき紹介しました。特にフランスについては大雑把ながらいくつかの項目別に概要が分かりま
すが、まだ不明確な点もあることや visible fee のように取扱いが未確定の問題もあることから、今後の
進展を注視していく必要があります。今後明確になれば再度、本誌にて報告したいと考えておりま
す。さらに JBCE が TAC メンバーに提出した RoHS 指令での禁止物質の検査方法に関する意見書
の内容を紹介しました。加盟国当局が対象製品を検査する際にどのような方法で行ったら良いか提
案しているものです。
◇
ブリュッセル短信では、EU で 1998 年以来の課題であった新しい化学品規則(いわゆる REACH)の
について、本年 5 月のドラフト発表とインターネット・コンサルテーションを経て、10 月 29 日に欧州委
員会により修正ドラフトが採択され新たな局面に入ったこと、および採択までの経緯と川下ユーザー
としての業界対応に関する議論などの現地の最新動向が紹介されております。
◇
欧州 IPP(包括的製品政策)通達の仮訳は、前号で掲載予定のところ紙面の都合により本号で掲載
しました。欧州委員会環境総局が製品のライフサイクル全体を通じて環境に与える影響を削減する
ことを目指すものであり、今後の方向を探る上での基礎資料となれば幸いです。
◇
杉山氏の講演録は、一時帰国の際行った講演のうち、WEEE & RoHS 指令の実施に関連した最近
の現地動向の部分を掲載しました。加盟国法制化における問題点、TAC の主要問題と日本業界の
主張、さらに RoHS と有害物質規制の状況を詳細に紹介しております。
◇
モニタリング情報としては、欧州については EuP 指令関連、フロンガス規制、ニッカド電池規制問題
等、米国についてはカリフォルニア州電子製品リサイクル法、中国については廃電池回収・処理規
制を報告しております。
◇
組合員のページは、関西からの登場です。環境問題関西委員会の委員としてご活躍されている「オ
ムロン」の島田様からご寄稿いただきました。「社憲」と「経営理念」で環境への取り組み理念を謳い、
その行動指針を「環境宣言」として示し、さらに具体的に実践するために環境ビジョン「グリーンオム
ロン 21」を策定するという体系的、全社的な取り組みを行っており、特に EU での化学物質規制強化
を契機に「環境を保証した製品」を目指すとして、規制化学物質全廃の取り組みに向けた強い意気
込みが感じられます。
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環境・安全グループ担当委員会の活動状況
4.「貿易と環境専門委員会」・「環境法規専門委員会」合同専門委員会
<平成 15 年度 合同専門委員会(9/16:組合会議室)>
Œ NEC ヨーロッパ ブラッセル事務所長 杉山 隆氏より「EU 環境関連法規制の最新動向」
について報告があり、引き続き質疑応答、意見交換を行った。
5.環境問題関西委員会
<平成 15 年度 第 4 回委員会(9/30:大阪支部会議室)>
Œ 渋谷 健三委員長(ダイキン工業㈱ 地球環境室室長)より「冷媒(フロン)の動向」に
ついて報告があった後、意見交換を行った。
Œ 米国の環境法規制動向(カリフォルニア州リサイクル法)、欧州の環境法規制動向(EuP
指令、IPP 等)について情報交換を行った。
<平成 15 年度 第 5 回委員会(11/7:アプローズタワー会議室)>
Œ EU での環境規制の最近の動きについて、当組合ブラッセル事務所次長 藤井 敏彦氏より
報告があり、引き続き質疑応答を行った。
<3 団体環境関連委員会の合同見学会(10/8:久居榊原風力発電施設(三重県)および三洋
電機㈱ 岐阜事業所内「ソーラーアーク」、「ソ−ラーラボ」)>
Œ 日本機械輸出組合大阪支部、(社)日本電機工業会大阪支部、(社)電子情報技術産業協会
関西支部の各団体環境関連委員会による合同見学会を行った。
6.基準認証委員会
<平成 15 年度 第 5 回委員会(10/16:組合会議室)>
Œ 沖電気工業㈱ 法務・知的財産部機器認定推進担当部長、中村 勝弘氏を講師として招き
「通信端末認証制度の最近の動向」について講演があり、引き続き意見交換を行った。
また、中国・韓国・台湾の製品安全基準認証制度現地調査(案)について、事務局より
スケジュール等の説明があった。
7.海外 PL 問題対策委員会
<平成 15 年度 第 3 回委員会(10/30:大阪支部会議室)>
Œ ㈱ インターリスク総研社会・法務リスク部 主任研究員 田渕 公朗氏より「米国製造物
責任(PL)訴訟における懲罰賠償の動向」について講演があり、引き続き質疑応答を行っ
た。
Œ 米国主要州の PL 制度実態調査のうち、ミシガン州の調査結果(中間報告)について調査
委託先より説明報告があり、内容を検討した。
□
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