ソニー

ソニー
処理 LSI などのキーデバイスの強化を図っている。
半導体分野でもこれらの製品の増強を進めている。
1. 事業動向
CCD と CMOS イメージセンサのバランスは、10 年
(1) 事業体制/事業戦略
度まではほぼ 50:50 であったと見られるが、11 年
同社では、エレクトロニクス事業において、デジ
度には CMOS イメージセンサの比率が高まってお
タルイメージング、ゲーム、モバイルの 3 つの重
り、10 年度以降、外部ファンドリを含めて生産能
点領域に投資・技術開発を集中、14 年度には 3 領
力増強を進めている。
域でエレクトロニクス事業における売上高の 70%、
さらに高精細の 4K レべルの表示と対応コンテン
営業利益の 85%の創出を目指している。
ツの作成に向けても、イメージセンサ、信号処理、
デジタルイメージングでは、カメラ(DSC、ビデ
ディスプレイデバイス、光伝送モジュールなどの開
オカメラ)
、レンズなどのシステム、逢関連製品に
発を進め、量産の確立、増強を進めていく方針であ
加えて、CCD / CMOS イメージセンサ (CIS)、信号
る。このため、半導体分野においても、イメージセ
ソニー[http://www.sony.co.jp/]
本社所在地
東京都港区港南 1-7-1
(億円) 09 年 3 月期
電話番号
03-6748-2111 (代表)
10 年 3 月期
11 年 3 月期
12 年 3 月期
全社売上高
71100
62930
63044
55266
半導体売上高
5800
4900
5000
4800
半導体設備投資
800
270
500
1500
主な製品
CCD イメージセンサ、 特定用途向け IC /ディスクリート (TV/ ディスプレイ用、 ビデオ用、 光ディスク用、 ア
ナログ・オーディオ用、 移動体通信 / 無線通信用、 光通信用、 モータ・ドライバ、 プリンタ用など)、 マイコン、
A/D ・ D/A コンバータ、 高周波デバイス、 光デバイスなど
製 品 別 構 成 比 (10
イメージセンサ 50%、 システム LSI ・ その他 50%
年度)
主な投資先
09 年 3 月期
熊本 TEC 第 2 工場、 ソニー白石セミコンダクタ
10 年 3 月期
熊本 TEC 2 号棟
11 年 3 月期
熊本 TEC
12 年 3 月期
熊本 TEC、 長崎 TEC : Fab3、 Fab4 (NP3)
10 年度 : 投資の中心は熊本 TEC ・ 2 号棟。 CCD、 CIS というイメージセンサ生産能力の強化。 11 年度 : 熊本 TEC ・
10、 11 年度の Fab2 の増強、 長崎セミコンダクタマニュファクチャリング (Fab3) の取得とイメージセンサラインへの転換、 Fab4 への装
主な投資内容 置導入
12 年度の
主な投資内容
前年度に引き続き、 Fab3 の CIS ラインへの転換、 Fab4 の増強、 化合物半導体の生産能力整備。
62
□主要前工程/一貫生産拠点所在地
工場名/会社名
ソニーセミコンダクタ ・ 鹿児島 TEC
ソニ-セミコンダクタ ・ 長崎 TEC
ソニーセミコンダクタ ・ 熊本 TEC
ソニーセミコンダクタ ・ 白石工場
□主要組立拠点所在地
工場名/会社名
ソニーセミコンダクタ ・ 大分 TEC
Sony Device Technology (Thailand)
所在地
鹿児島県霧島市国分野口北 5-1
長崎県諫早市津久葉町 1883-43
熊本県菊池郡菊陽町原水 4000-1
宮城県白石市白鳥 3-53-2
所在地
大分県国東市国東町小原 3319-2
140 Moo 5, Bangkadi Industrial Park, Tawanon Road, Tambol Bangkadi,
Amphur Muang, Pathum Thani, 12000 Thailand
ンサなど当該製品の強化を進めている。また、SiP
電話番号
0995-45-3111
0957-22-7179
096-292-6111
0224-22-1111
電話番号
0978-72-2511
66-2-501-1730
導入している。
や狭ピッチ BGA、パッケージ・オン・パッケージ、
超小型パッケージなどの先端技術開発に力を入れて
(2) 10 ~ 12 年度事業動向
いく。将来的にはパッケージ業務の受託事業まで視
① 10 年度の事業動向
野に入れて事業展開を行っていく計画である。
半導体事業の 10 年度売上高は前年度比 100 億円
一方、これらの主力製品以外に関しては、Asset
増(2.0%増)の 5000 億円、このうち外部顧客向
Light に事業戦略を大きく変更した。プロセス開発
け前年度比 19.6%増の 3584 億円となった。イメー
に関しても、最先端プロセスの自社開発、自社生産
ジセンサが増加した。
からは撤退することとした。それらのプロセスの開
発人員は CMOS イメージセンサ/ CCD、半導体レー
② 11 年度の事業動向
ザ、低温ポリシリコン LCD、有機 EL ディスプレイ
半導体事業の 10 年度売上高は前年度比 200 億円
などにシフトしている。
減(4.0%減)の 4800 億円、このうちの外部顧客
このような事業戦略により、ソニーセミコンダク
向け売上高は前年度比 4.9%増の 3758 億 9100 万
タ九州(当時)の長崎テクノロジーセンター(長崎
円となった。イメージセンサが売上高が増加、収益
TEC)の Fab2 の 300mm ウェーハ対応ラインの製
も改善した。
造設備を 08 年に東芝に売却、東芝と合弁会社「長
崎セミコンダクタマニュファクチャリング(NSM)
」
③ 12 年度以降の事業動向
として同設備を利用していた。しかし、
CMOS イメー
12 年 度 の 半 導 体 売 上 高 見 通 し は、 前 年 度 比
ジセンサの需要が増加したことにより、NSM を東
12.5%増の 5400 億円であった。このうち、50%程
芝から買い戻し、
11 年 4 月から自社工場として運用、
度をイメージセンサが占めている。
CIS 生産対応へとライン転換を進めている。
ソニーでは半導体製造事業は、シリコン系半導体
2. 投資動向
をソニーセミコンダクタ九州が、化合物半導体をソ
ニーセミコンダクタ白石が行っていた。しかし、11
① 10 年度の設備投資動向
年 11 月にソニーセミコンダクタ九州がソニーセミ
10 年度の設備投資額は前年度比 85%増の 500 億
コンダクタ白石を吸収合併、同時に社名をソニーセ
円となった。期初計画からは 350 億円からの拡大
ミコンダクタ株式会社に変更している。
となった。投資拡大は、熊本 TEC の大型強化に向
製造に関しては、45nm 以降の先端プロセスによ
けられる。熊本 TEC では、CMOS イメージセンサ
る生産は IBM などの他社に委託していく。なお、
「Exmor」
、
「Exmor R」の生産設備の増強を目的とす
65nm プロセスについては、熊本 TEC に生産設備を
るもので、10 年度下期の 100 億円と、11 年度実
63 ソニー
ソニーの半導体生産拠点の概要 (ED リサーチ社推定を含む)
工場名
主要
ライン名
厚 木 テ ク 全体
ノロジーセ
ンター
ソ ニ ー セ 全体
ミコンダク
タ ・ 鹿 児 1 号館
島 TEC
3 号館
生産品目
月産能力 (万枚)
12 年
3月
フル稼
働時
ウェー
ハ径
(mm)
プロセ
ス ・ レベ
ル (nm)
投資額 ( 億円 )
研究開発、 試作
半導体のプロセス技術などの製
製造技術開発の機能はソニーセミ
コンダクタ九州に移管。 このため、
同拠点では要素技術開発が中心
となっている。
1
100
1.5μm
リニア IC、 ロジッ 1.5
ク IC
1.5
100
3μm
4 号館
アナログ IC
3
1 2 5 / 2 μm
150
6 号館 4F
フ ァ ン ド リ、 ア 1.2
ナ ロ グ、 MixedSignal、 CCD、 高
温ポリ Si 液晶
1.5
200
350 ~
250
6 号館 2F
フ ァ ン ド リ、 ア 1.2
ナ ロ グ、 Mixed
Signal、 SRAM、
システム LSI
1.5
200
250
7 号棟
ロ ジ ッ ク、 CMOS 0.9
イ メ ー ジ セ ン サ、
LCD ドライバ IC
1.2
200
250 ~
150
Graphics Synthe- 1.4
sizer、MOS ロジッ
ク、 CMOS イメー
ジセンサ
1.4
200
150
1200
CMOS イメージセンサの比率を拡
大している。
Fab2 / 2F シ ス テ ム LSI、 0.9
CMOS イメージセ
ンサ
0.9
200
150 ~ 90
約 2200
Fab2 と Fab3 は 同 一 工 場 棟 に 置
か れ て お り、 Fab2 が 2 階 部 分、
Fab3 が 1F 部分である。 フル稼働
状況となっている。 12 年度以降
に 300mm ウェーハ対応への転換
を計画
Fab3 / 1F シ ス テ ム LSI、 0.9
CELL、 CMOS イ
メージセンサ
1.2
300
65 ~
約 3500
08 年 3 月に東芝に売却。 11 年 4
月に買い戻して、 Fab3 として運営
し て い る。 12 年 度 中 に も CIS の
比率を 50%レベルに引き上げる。
Fab4
1.2
300
130
ソ ニ ー セ 全体
ミコンダク
タ ・ 長 崎 Fab1
TEC
MMIC
10 年~ 12 年トピックス
11 年 累積総額
度推定 /計画値
1
3
CMOS イメージセ 0.5
ンサ
40
-
4 2 0 ~ 第 1 期分、 クリーンルームの半分
450
のスペースで生産を行っている。
11 年度まで市場環境の悪化によ
り、 増強は進んでいない。
09 年 3 月に閉鎖した NP 棟に装
置を導入、 CIS 用ライン Fab4 とし
て、 12 年度中に稼動開始予定」
施分を合わせて約 400 億円の投資を行う計画でを
芝からの「長崎セミコンダクタマニュファクチャリ
提示していた。
ング」の買い戻し費用 530 億円が加わっているこ
とから大幅に投資規模が拡大することになった。長
② 11 年度の設備投資動向
崎セミコンダクタマニュファクチャリングは長崎
11 年度の設備投資は、前年度比 3 倍増の 1500
TEC の Fab3 として運用され、CMOS イメージセン
億 円 と な っ た。12 年 2 月 時 点 の 1600 億 円 か ら
サへの転換にも投資が行われている。
100 億円の減額となっている。10 年度から続く熊
さらに長崎 TEC の第 3 号棟 (NP3) への 300mm
本 TEC の増強向け投資(300 億円)に加えて、東
ウェーハ対応設備導入に 500 億円レベルの投資を
64 ソニー
ソニーの半導体生産拠点の概要 (EDR 推定を含む)
工場名
主要
ライン名
生産品目
月産能力 (万枚)
12 年
3月
ウェー
ハ径
(mm)
フル稼
働時
プロセ
ス ・ レベ
ル (nm)
ソ ニ ー セ 全体
ミコンダク
タ・ 熊 本
TEC
1 号棟
CCD、 CMOS イ 2.5
メージセンサ、 高
温ポリ Si 液晶
2.4
300
350 ~
250
CCD、 高 温 ポ リ 1.2
Si 液晶
1.2
300
350 ~
250
2 号棟
CMOS イメージセ 1.2
ンサ
1.3
300
350 ~
180
半 導 体 レ ー ザ、 0.6
化合物半導体
0.6
100
500
ソ ニ ー セ 全体
ミコンダク
タ・ 白 石
工場
行ったものと推定される。
投資額 ( 億円 )
10 年~ 12 年トピックス
11 年 累積総額
度推定 /計画値
2 号棟は 07 年 4 月から稼働を開
始、 07 年度後半から同棟のクリ
ーンルーム増床を開始している。
200
2600
07 年春から CMOS イメージセン
サの生産を開始している。 10 年
度後半から 400 億円をかけて能
力を強化、 11 年度には第 1 棟、
2 棟合計で、 工場全体で月産 2
万 5000 枚にまで拡大している。
シリコン LCD(HTPS-LCD)
、高精細画像デバイスの
SXRD の製造を行っている。
③ 12 年度以降の設備投資動向
第 1 棟は延床面積が約 9 万 1000m2。フル稼働時の
10 年度から 11 年度にかけて行われた大型投資が
生産能力は月産 1 万 2000 枚規模となっている。す
11 年度で一段落したことから、12 年度設備投資計
でに月産 1 万 2000 枚の規模で生産を行なっている。
画は 500 億円に抑える計画である。投資対象とし
第 2 棟は全体で 2 万 m2 のクリーンルーム(2 層
ては、Fab3 での CIS 生産能力の整備、NP 棟の強化、
構造)を持ち、フルキャパシティで月産 1 万 2000
熊本 TEC の整備などが投資の中心となる。さらに
~ 1 万 3000 枚を計画していた。第 2 棟に関しては、
オプトデバイスを中心に化合物半導体の生産能力の
半導体事業の停滞に伴い、08 年度半ばに投資を凍
整備も進める。
結していたが、10 年度下期から投資を再開した。
11 年度までに 400 億円を投資して、第 2 棟をフル
3. 工場動向
キャパシティとし、熊本 TEC 全体の生産能力を月
産 2 万 5000 枚としている。
ソニーセミコンダクタでは、シリコン半導体に関
長崎 TEC には 200mm ウェーハラインを導入し
しては九州地区(旧ソニーセミコンダクタ九州)に
ている Fab1(第 1 号棟)
、Fab2(第 2 号棟 2 階)
、
集約、半導体レーザなど白石工場(旧ソニー白石セ
さらに東芝に売却後に「長崎セミコンダクタマニュ
ミコンダクター)で展開している。
ファクチャリング(NSM)
」として稼動していた
九州地区のシリコン系半導体は前工程工場として
300mm ライン(第 2 号棟 1 階)を買い戻し、Fab3
熊本 TEC、長崎 TEC、鹿児島 TEC がある。このうち、
として稼動している。
熊本、長崎では CCD / CMOS イメージセンサの生
Fab1 では CMOS イメージセンサ、MOS ロジック
産拠点として、生産能力の強化を進めている。
IC の生産を 200mm ウェーハで行っている。生産能
熊本 TEC は前述のようにイメージセンサの生産拠
力は月産 1 万 4000 枚、Fab2 は同 9000 枚の生産
点として、300mm ウェーハにより第 1 棟では CCD
能力だが、今後、ロジック IC は整理、外部委託に
が中心、第 2 棟では CMOS イメージセンサの生産
移管を進め CMOS イメージセンサの比率を高める。
を行なっている。第 1 棟では、その他にも高温ポリ
Fab2 は 200mm ウェーハを採用したラインで、一
65 ソニー
部 CMOS イメージセンサの裏面処理を行っている
ンサ関連を中心とするロジック IC の製造を行って
ほか、システム LSI の生産を行っている。生産能力
いる。前工程処理向けクリーンルームは 2 階構造で、
は同 9000 枚だが、さらに 12 年度以降に 300mm
うち 1 階分約 6000 枚程度の生産能力が整備されて
ウェーハへのアップグレードも計画している。
いる。フルキャパシティで月産 1 万 2000 枚程度と
Fab3 の生産能力は 300mm ウェーハで月産 1 万
なる。
2000 枚となっている。同工場については、従来
白石工場は青紫色レーザの生産能力について業界
から製造している Cell Broadband Engine などのシ
最大クラスの月産 170 万個体制を確立している。
ステム LSI 製造を継続しているが、生産能力の約
50%の月産 5000 ~ 6000 枚を CMOS イメージセ
ンサの前工程処理に向ける。今後システム LSI の外
部への生産委託を進め、数年内に生産能力のすべて
を CIS に振り向ける。
さらに 09 年 3 月に閉鎖した第 3 号棟(NP 棟)
にも 300mm ウェーハ対応ラインを導入、Fab4 と
して裏面照射型イメージセンサ(BSI)の裏面処
理を担当している。同棟は 60 × 150m の建屋に
8300m2 のクリーンルームを備えている。2011 年
5 月から装置を搬入し、2012 年初めには装置の実
装を完了している。生産能力は月産 5000 枚レベル
と見込まれる。
この長崎 TEC の強化、CIS の生産能力拠点化によ
り、熊本 TEC と合わせて CMOS イメージセンサの
生産能力を 2010 年の月産 2 万 5000 枚から月産 5
万枚へと倍増した(300mm ウェーハ)
。さらに 12
年度以降も Fab3 の CIS への特化、Fab2 の 300mm
ウェーハ化、外部委託量の拡大を進める。同社全体
の CIS 生産能力を月産 7 万 5000 枚にまで拡大する
計画である。
鹿 児 島 TEC は ア ナ ロ グ IC、 ミ ク ス ト・ シグナ
ル IC、MMIC な ど の 生 産 拠 点。6 号 棟、7 号 棟 の
200mm ラインのほか、150mm 以下の小径ウェー
ハに対応した工場棟も整備している。200mm ライ
ンのうち、6 号棟は月産 2 万 5000 ~ 3 万枚の能力
を備えており、アナログ IC、ミクスト・シグナル
IC 、CCD、システム LSI などの生産を行なっている
ほか、ファンドリ業務にも対応している。
7 号棟はプロジェクション用反射型 LCD「SXRD」
、
LCD ドライバ、CMOS イメージセンサやイメージセ
66 ソニー