第 20 回廃棄物資源循環学会に参加して

特集
学生の研究活動報告−国内学会大会・国際会議参加記 11
第 20 回廃棄物資源循環学会に参加して
横 塚 裕 也
Yuya YOKOTSUKA
環境ソリューション工学専攻修士課程
2年
本方法ではリン濃縮を凝集沈殿法で行い,石灰沈
1.はじめに
殿法でリン回収を行う.石灰沈殿法で回収を行うこ
私は,2009 年 9 月 17,18,19 日に名古屋大学で
とから回収物はヒドロキシアパタイト(以下 HAP)
開催された第 20 回廃棄物資源循環学会に参加しま
である.様々なリン濃度での適用,汚泥の減量化,
した.この学会で「凝集剤循環型リン回収プロセス
回収物の有効活用などの利点が考えられる.
の開発」という題目で参加しましたので報告させて
いただきます.
3.実験方法
①硫酸アルミニウム(以下硫酸バンド)を用いた凝
2.緒言
集沈殿法によって生成する汚泥の pH に対する溶
現在,日本では枯渇資源であるリンを輸入にたよ
解度の調査
っている.そのため,水系からリンを資源として回
リン酸イオンを 4 mg-P/L となるように添加した
収する方法が注目されている.回収方法に MAP
溶液に硫酸バンドを添加し撹拌を行って凝集フロッ
法,HAP 法などがある.しかし,どちらも適用で
クを生成した.生成した凝集フロックに硫酸と水酸
きるリン濃度が比較的高濃度1)2)である.これから
化ナトリウムを添加し pH を変化させた.上澄み中
のリン回収方法として様々なリン濃度での適用が可
のリン酸濃度と Al 濃度を測定し凝集沈殿の溶解度
能な技術が求められる.そこで,従来のリン除去方
を求めた.
法である凝集沈殿法と石灰沈殿法を併用したリン回
②人工廃水の繰り返し処理
収方法(凝集剤循環型リン回収プロセス(図 1))
を開発し,実験的検討を行った.
リン酸を添加した人工廃水(8 mg-P/L)を用い繰
り返し処理を行った.実験条件として初期硫酸バン
ド添加量 200 mg/L,処理ごとに加えた硫酸バンド 60
mg/L,添加 Ca 量 16 mg/L とした.繰り返し処理回
数は最大 12 回とした.処理水のリン酸濃度,Al 濃
度,Ca 濃度を測定した.
③実廃水の繰り返し処理
処理水として龍谷大学瀬田学舎生協の食堂排水の
被嫌気生生物処理水(1.42 mg-P/L)を用いた.初
期硫酸バンド添加量 150 mg/L,処理ごとに加えた
硫酸バンド 20 mg/L,添加 Ca 量 2.67 mg/L とし
た.繰り返し処理回数は 6 回とし実験を行った.リ
図1
凝集剤循環型リン回収プロセス
ン酸濃度,Al 濃度,Ca 濃度を測定した.各実験に
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おいてリン酸濃度はモリブデン青吸光光度法,Al
に適切な量の凝集剤を追加して添加することで,本
濃度および Ca 濃度は ICP 発光分析装置により測定
プロセスによるリンの回収は可能である.
を行った.
③実廃水の繰り返し処理
処理水中のリン濃度は図 3 のようになった.リン
4.結果および考察
濃度は平均 0.081±0.042 mg となり,除去率 94.3%
①硫酸バンドを用いた凝集沈殿法によって生成する
となった.実排水の処理においても本プロセスによ
汚泥の pH に対する溶解度の調査
る処理が可能であることが確認された.また,回収
凝集汚泥の pH に対する溶解度は図 2 のようにな
された汚泥に酸を加えて溶解し,その上澄み中のリ
った.pH の変化によりリンと Al の溶解は似た挙
ン濃度,Al 濃度,Ca 濃度を測定した.結果,汚泥
動を示すことがわかる.本プロセスにおいて,凝集
中に重量比としてリン 13%,Al 14%,Ca 31% が
汚泥をアルカリにより溶解する場合は pH 10 以上
含まれることが分かった.これから汚泥中の HAP
にする必要があると判断された.
は全体の約 65% を占めると推定された.
②人工廃水の繰り返し処理
処理水中のリン濃度は平均 1.25±1.0 mg-P/L とな
り,除去率の平均は 84% となった.また,凝集汚
泥のアルカリ処理後の上澄み中に含まれる Al 含有
量の減少は見られなかった.したがって,処理ごと
5.まとめ
本研究より次のことが分かった.
・硫酸バンドによる凝集沈殿法によるフロックは
pH 10 以上から溶解性が上昇する.
・本プロセスにより模擬排水と実排水を処理したと
ころ,リン回収率はそれぞれ 84%,94.3% とな
った.本プロセスによるリン回収の可能性が確認
された.
・回収物は HAP であると考えられ汚泥中の約 65%
を占めた.
6.おわりに
学会発表という貴重な発表をさせていただきまし
図2
凝集汚泥の pH に対する溶解度
た.初めての学会発表と学会独自の雰囲気から緊張
の中の発表となりました.そのため,普段ではしな
いような失敗などがあり自分の未熟さを感じる発表
となりました.しかし,今回の発表により今の自分
に必要なものや,足りないものを気づくことができ
ました.満足な発表とはいえませんでしたが,非常
に有意義な発表であったといえると思います.
最後に,研究のご指導やこのような機会を与えて
くださった岸本先生,また,発表の際にお世話にな
った先輩方の皆様に感謝の意を表したいと思いま
図3
人工廃水の繰り返し処理
す.
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