Singapore Business News - Singapore Economic Development Board

Singapore
Business
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シンガポール EDB 経済・投資ニュース
October - December 2013
http://www.singaporeedb.jp
ケーススタディ
住友化学
シンガポールを拠点に最先端テクノロジーで
グローバルビジネスを拡大
住友化学グループのシンガポールでの輝かしい実績や、将来についての展望などを
住友化学アジアパシフィック社長川井美雄氏にお聞きしました。
アジア・太平洋地域の
中枢機能をシンガポールに設置
70年代後半に進出、
シンガポールの工業化とともに発展
住友化学は2013年4月に、
アジア圏での事業をさらに拡大する
「1977年に住友化学は「Petrochemical Corporation of
ため、
またアジア太平洋地域への進出を支援するため、
「住友化学ア
Singapore Pte. Ltd.(PCS)」をシンガポールに設立し、1984
ジアパシフィック
(SCAP)」
をシンガポールに設立しました。SCAP
年には「The Polyolefin Company(Singapore)Pte. Ltd.
は住友化学のアジア太平洋地区に於ける支援統括会社として、
(TPC)」
を設立。2013年7月現在、
シンガポールに於ける住友化学
人事・法務・経理・情報システムなどの事業支援サービスを提供する
グループの関係会社は10社におよんでいます。
とともに、近隣エリアのマーケティングも支援します。
また、新規ビジ
PCSを設立した当時から、
住友化学はアジア圏が重要な、
かつ長期
ネスを発掘するための事業開拓も進めており、
シンガポールを拠点
的な市場になることを見据えており、
アジアでの事業展開において、
地
とした、今までに無い新しいビジネスの開発をも目的としています。
勢学的にも世界の経済情勢からも主要拠点をシンガポール以外に置
くことなど考えられないことでした。
当時のシンガポール政府は、工業化を急ピッチで進めるため、
イン
フラ整備を重点的に進めていました。長期的な視野で、世界の市場
に進出することを計画し、
日本以外での拠点を築こうとしていた住友
化学にとって、
シンガポールの工業化の流れは、
まさに時流を得たも
のでした。その後も、
シンガポールの工業化の流れとともに、住友化
学は急速にシンガポールを拠点とした事業を拡大してきました。
写真提供:Sumitomo Chemical (Asia Pacific) Pte Ltd
01
October - December 2013
CASE STUDY
開発と製造、両拠点を置きアジアでの事業展開
をさらに加速することを目指す
1996年に住友化学はシンガポール現地での、
ポリオレフィンなど
拠点に加えて、
メチルメタクリン
(MMA)
の生産拠点も設立し、製造
と販売の事業を展開してきましたが、
あらたに研究開発の機能を加
えることで、
アジアでの事業展開をさらに発展させることもできると
考えています。
「シンガポールの人材のスキルの高さは定評があり、現地での研
究開発拠点を設ける最大の利点と思います。
また近隣の成長市場へ
のアクセスが容易であり、周辺諸国の顧客情報も入手し易いため、
地域別の顧客に合わせた製品グレードに、
カスタマイズするための
写真提供:Sumitomo Chemical (Asia Pacific) Pte Ltd
アプリケーション開発が可能になるであろうことも魅力です。地域別
現在、
同社はPMMA樹脂のパイロット・プラント設置と、
日本からの
の顧客にとって最適な製品を開発し、
すぐに製造に移すスピード感
最新の重合・製品技術を取り入れ、
アジア圏市場への最適化を図るた
を現実にでき、研究開発と製造の両方の拠点の実現は、事業の競争
めの研究センターの設立を検討しています。
また、
プラスチックを含む
力をさらに強め、住友化学のシンガポール拠点の大きな強みとする
石油化学事業の研究開発センター設立の実現可能性についての検
と考えられます。」
と川井美雄氏は述べています。
討も含め、
事業の発展に向けたあらゆる施策を検討し続けています。
シンガポールの魅力、
政府のサポートとネットワーク
このような住友化学のシンガポールにおける急速な事業展開や、
研究開発の計画には、
シンガポール政府が国を挙げて積極的に企業
の誘致を推進し、
支援を充実させていることが大きく寄与しています。
法制度の整備や情報の集約などすべての手続きを、
シンガポール
経済開発庁
(EDB)
が、
いわゆるワンストップで提供していることが、
シ
ンガポールに進出する企業にとって大きな支援になっていることです。
シンガポールはアジア圏において、人材、物流、金融、情報が活発
に行き交う大きなハブとして大きく飛躍し発展を続けています。
シン
ガポールを拠点とすることで、企業はアジア圏への事業進出を容易
に行うことができ、
アジア圏の情報もシンガポールには集まりやすい
ため、人脈やマーケット情報を得るためのネットワークを構築しやす
いというメリットがあります。
また、政府が産業界のサポートに積極
的で、政府の運営の透明性も高く、
それがインセンティブとなり、
シン
ガポールを拠点化している企業は多数に上っています。
住友化学アジアパシフィック社長
川井美雄氏
写真提供:Sumitomo Chemical (Asia Pacific) Pte Ltd
シンガポールを拠点に新しい事業分野への進出
「住友化学は、
シンガポールを拠点に事業展開をしていくうえで、
川井氏からはさらに、
「シンガポールを、
拠点としての機能を今後ま
人や組織をはじめとする各種の情報を提供してもらうなど、
シンガ
すます強化していく住友化学は、
今まで築きあげたアセットを最大限
ポール政府から手厚い支援を受けています。EDBをはじめとする政
に活用し、
成長するアジア圏において、
さらに競争力を発揮できる新し
府関係機関のサポートが無ければ、今のシンガポールにおける住友
い分野の事業展開を考えています。
たとえば、
アジア圏では人口の増
化学の姿はないでしょう。政府のサポートに加え、35年以上にわた
加に伴う食料増産という農業の分野が考えられます。
また、
経済発展
る人脈やマーケット情報が蓄積されているシンガポールは、住友化
が見込まれるアジアでの環境、
医療などの分野でのビジネスチャンス
学にとって何にも増して変えることのできない重要拠点です。
シンガ
も増えると考えられ、
これらの分野でもシンガポールを拠点としてアジ
ポールの政府機関は言ってみれば敷居が低いですから、
シンガポー
アにおける事業展開の可能性を探っていきます」
とのことでした。
ルを拠点に事業展開を考えている企業がありましたら、関係各庁に
シンガポールは政府の強い後押しを通して、
アジアの拠点として、
積極的にアプローチすると良いと思います。必ず何らかのサポートが
これまで数々の企業の発展に貢献してきました。
また、
アジアにおい
得られるはずです。最近の例では、住友化学がサウジアラビアでの大
て人材と、情報と資金が集まるハブであり、
さらに高いレベルの人材
きなコンプレックスを合弁で行うプロジェクトを展開しましたが、そ
も豊富に集まっているため、製造販売、研究開発、人材開発をはじ
の際もシンガポールで築きあげた財産としての人脈や経験が多いに
め、企業の新たなステージへの発展拠点として、
さらなる強みを発揮
役立ちました」
と川井氏は語っています。
し続けることを確信しています。
02
October - December 2013
FEATURE ARTICLE
シンガポールにおける製造業の新動向
背景
製造業はシンガポール経済を支える大切な要素のひとつであり、
政府はそれをGDPの20∼25%に維持することに尽力しています。
2012年には製造業がシンガポールのGDPの21%を占めました。製
造業はその他の業界、建設、輸送、
コーポレートファイナンス、
ビジネ
スサービスなど多種多様な業界に決定的な影響を及ぼしています。
過去10年間でシンガポールは2回の景気の落ち込みを経験して
います。ITバブル崩壊による2001年の不況、
そしてリーマンショック
に起因する世界的金融危機である2008∼2009年の大不況です。
この景気後退期においてシンガポール経済の回復に大きく貢献した
のが製造業でした。
製造業をシンガポール経済における重要な要素と位置付けること
で、
常に最先端の技術力を保持することにつながります。
最先端技術の
維持は、
シンガポールが未来の革新的ソリューションを開発する上での
重要課題です。
製造業とその関連サービス分野の収支は、
研究開発に
おける特許権取得と総個人支出においてかなりの割合を占めています。
シンガポールは日本企業の高付加価値製造拠点
エレクトロニクス
日本とシンガポールは、長年にわたり強力なパートナーシップを築
日本企業が海外に先進的な製造工場を開設する主な理由は、
よ
いてきました。
シンガポールで工業化が始まった1970年代、
いち早
りよい事業の発展的継続性を実現するためです。海外の主要工場
く投資をしたのは日本企業でした。初期の製造業における多くの投
は、利益をもたらす高付加価値の製品を生産すると同時に、新たな
資はエレクトロニクス業界で、事例として1974年に製造拠点をシン
素材・設備・設計フローなどを用いて新製品や新工程を開発し、
その
ガポールに設置した日立化成が挙げられます。
ノウハウを同地域の関連工場に伝えていくといった役割を担います。
シンガポールに製造拠点が次々と作られていく中で、化学など
そして生産した商品を、競争力のあるデリバリーコストでタイムリー
その他多様な分野にも波及していき、日本企業の進出も加速して
に、国際市場に送り込むことを期待しているのです。
いきました。化学分野での一例としては、1980年代にメルバウ島
前述のとおり強力な物流ネットワークと、高い安全性・信頼性を誇
(Merbau Island)
でシンガポール初の石油化学コンビナートプロ
るシンガポールは、
これらのニーズを十分満たすことのできる絶好の
ジェクトの立ち上げに携わった住友化学が挙げられます。
場所と言えるでしょう。
シンガポールは製造拠点にふさわしい場所として、
日本企業から
例えば、昭和電工シンガポール工場は同社の全世界生産の50%
絶大な信頼を受け続けています。日本の総累積直接投資額は4兆
以上を担っており、今や世界最大のハードディスクメディア製造拠点
920億円(520億SGD)にも上り、
シンガポールにとってアジアで
となっています。
トップの投資国となっています。最近では、電気化学工業(Denka)
日本のエレクトロニクス企業が、
アジアに工場を開設するように
のシンガポール第4製造工場と、同社国外初となるポリ塩化ビニル
なるに従って、
この地域での複雑なサプライチェーンの資産や財務
工場が開設されました。
を管理する必要が生じます。
シンガポールは、運用(計画、サプライ
日本企業がシンガポールに製造工場を開設している理由として次
チェーン)
とファイナンス
(M&A、FTC)両方の効率を、
ともに最大化
の点が挙げられます。
できるアジアで唯一の場所と言っても過言ではないでしょう。
(i) 生産性の高いスキルを持った多国籍の労働力を擁していること
(ii)強力なネットワークと物流=定評のある物流インフラと主要市
場である自由貿易協定国(FTA)
(iii)高い信頼性=強力な知的財産保護、政府の支援システム、
自然
災害が少なく、品質の信頼性
EDBは上記2つの業界、
「エレクトロニクス」
と
「化学」
の分野に焦
点を当て、
過去数十年で、
「低コスト」
製造モデルから
「高付加価値」
製
開発、製造、販売活動をアジア中心に展開する製品分野におい
て、様々な日本企業がこれらの活動を統括するための地域本部や、
国際本部をシンガポールに設置しています。2012年7月にはコニカ
ミノルタがシンガポールに東南アジア地域統括本部を設置しまし
た。地域ビジネス開発チームおよびサービス運用チームが在籍し、
東南アジア市場への浸透を加速させています。
造モデルへと、
日本企業がどのように進化させたかをご紹介します。
03
October - December 2013
FEATURE ARTICLE
化学
エネルギー・化学企業にとってバリューチェーン全体を通して専
有の製造工程を持つことが競争力の鍵となります。強力な知的財
産権保護で定評のあるシンガポールは、専有技術や一流の製造
工程を開発・商業化しようとしている企業にとっては理想的な場
所です。
シンガポール本島の南西部に位置する人工島「ジュロン島
(Jurong Island)」は石油化学産業の振興を目的として作られた、
「安心・安全」
を重視するセキュアな製造拠点です。
「プラグアンドプ
レイ
(plug-and-play)」方式の専用インフラが完備されており、共
有のサードパーティユーティリティやサービスを活用したコスト削減
とともに、製品統合を通した相乗効果が期待できます。現在ジュロン
島には石油、石油化学、特殊化学関係のグローバル企業100社近く
が拠点を置いています。最近では旭化成が合成ゴム工場を開設しま
製造業界の今後の戦略
した。
日本ゼオン、住友化学、
ランクセスなどによる最近の投資とも
シンガポールは製造業界の成長を次のフェーズに推し進めるため
あわせ、
この工場の開設によりシンガポールがソリューション・スチレ
に、
さらなる優位性を高める改革と強化を進めています。製造技術の
ン・ブタジエンラバー(S-SBR)
など高付加価値合成ゴム製品の世界
いっそうの進歩により、
シンガポールの国としても新たな可能性が開
有数の製造拠点の一つに数えられることとなりました。
かれることになるでしょう。最新技術により資源をより一層最適化す
成長するアジア経済における多種多様なニーズの中で、化学企業
ることができれば、将来的にシンガポール国内でより強力な製造基
にとっての大きな課題は製品の差別化です。
シンガポールのアジア
盤を構築できるようになるのです。
市場に対する精通の度合いをみてみると、専有技術や一流の製造工
「シンガポール製造業の未来像(構想)」
という新しい取り組み
程を開発・商業化するには、
シンガポールこそが絶好の場所だと言え
を通して、
シンガポールは製造バリューチェーン全体における実現
るでしょう。例えば、住友精化はジュロン島に10名が所在するR&D
技術の開発・採用を検討しています。新たな実現技術にはロボット
センターを構え、地域の顧客に向けて様々なグレードの高吸水性樹
工学や3Dプリンターなどが含まれます。同時に、将来の製造業を
脂(SAP:紙おむつの重要な素材)
の開発に注力しています。
日本の
支えるために必要な人材を育てる枠組みを強化するために、様々
顧客とアジアの顧客では好みに違いがあるため、R&Dセンターがシ
な関係者や教育機関と協力しています。多国籍企業とシンガポー
ンガポールにあるからこそアジアのニーズに対して迅速かつ効果的
ルの地場企業のWin-Win関係を推進するため、EDBは2011年に
に対応できることが実証されています。
またR&Dセンターを、年間
「Partnerships for Capability Transformation(PACT)」
(能
60キロトンを誇るSAP製造施設と同じ敷地に設けることで、相乗効
力変革のためのパートナーシップ)
プログラムを導入しました。
この
果の最大化と資源の最適活用を実現しています。同様に、電気化学
プログラムは、
グローバル企業のニーズを満たすために、
シンガポー
工業(Denka)
もアジア地域の顧客ニーズによりよい対応をするため
ルのサプライヤーの能力を調達や認定プロセスを通して向上させる
に、
シンガポールに製品開発センターを構えています。
ことを目指すものです。
まとめ
シンガポールは成長著しい活気あふれたアジアの中心に位置しま
す。
日本の製造企業は、信頼、知識、一体感、生活のしやすさ、製造業
に対するサポートといったシンガポールの基本的な特性を利用する
ことで、
シンガポールを高付加価値生産拠点として、
また司令塔の役
割を果たす戦略的ハブとして活用し続けることができるでしょう。
04
October - December 2013
SINGAPORE BUSINESS NEWS
Business News 01
デンカ、国外初の
「トヨカロン」工場をシンガポールで竣工
2
013年7月2日、総合化学品メーカーの電気化学工業株式会
同日行われたオープニングセレモニーには、DENKAの上級管理
社(DENKA)は同社国外初となるポリ塩化ビニルの新工場
職、
サプライヤー、顧客など親交の深い50名が出席し、
シンガポール
をシンガポールに開設しました。
経済開発庁(EDB)
のレオ・イップ
(Leo Yip)長官が主賓として招か
36億円(4600万SGD)を費やして建設されたチュアス
(Tuas)
れました。長官は「チュアス・サウスのトヨカロン工場は、DENKAと
の工場では、主にウィッグ、付け毛、編み込みヘアピースなどの人工
シンガポールの強固でますます発展しつつあるパートナーシップを
頭髪製品に使用される同社の専売製品「トヨカロン」の製造を行い
表すものです」
と述べました。
ます。新工場では40名のスタッフを雇用し、
シンガポールにおける
DENKAの全従業員数は250名となりました。同社はシンガポール
国内に、他に3つの化学施設を保有しています。
DENKAのシンガポール新工場では年10,000トンの「トヨカロ
ン」
を製造し、主にアフリカと北米に輸出する予定です。
DENKAによると、
アフリカにおける人工頭髪製品の需要は年率
5∼10%拡大しており、
ナイジェリア、
ケニア、
トーゴ、
コンゴなどの大
口顧客の国々がこの需要拡大を支えています。
DENKA代表取締役社長の吉髙紳介氏はシンガポールに新工場
を構えることにした理由として、投資家に優しいシンガポールの政
策、
シンガポール経済開発庁(EDB)
のサポート、政府の化学産業へ
の重視を挙げています。
写真提供: 電気化学工業株式会社
Business News 02
ニコン、
アジア・オセアニア地域の財務統括会社を設立
株 統括会社「Nikon Asia Pacific Pte. Ltd.(ニコン・アジア・
式会社ニコンはこの6月3日、
アジア・オセアニア地域の財務
統括します。
ニコンは「今後、
アジア・オセアニア地域での成長が見込まれ、
ま
パシフィック)」
をニコンの完全子会社としてシンガポールに設立し、
た為替リスクの極小化を図るため、
この地域の財務を集中管理す
8月1日より業務を開始しました。
る。税務では日本から専門家を派遣しアドバイザーとしての役割を
社長はニコン本社常務の橋爪規夫氏が務め、シンガポール、マ
担い、法務面では各地の契約関係を統括管理して行く。
また各地の
レーシア、
インド、
オーストラリア、香港、中東、
インドネシア各地域拠
資金もシンガポールで一括管理する」
と述べました。
点とタイの販売会社、生産会社の計9社の財務、経理、法務、税務を
Business News 03
NEC、
シンガポールにグローバル・セーフティ事業部を発足
2
013年6月13日、NECはパブリックセーフティー事業を展開
するグローバル・セーフティー事業部をシンガポールで発足
させたことを発表しました。生体認証技術で知られるNECの主要任
務は、
セキュリティーおよびスマートエネルギーソリューション分野
での情報通信技術(ICT)
の活用です。
そのため、同新事業部は世界
各国の政府が大いに注目し,投資を行っているパブリックセーフ
ティー分野における専門技術の発展に、重点的に取り組みます。
グローバル・セーフティー事業部はグローバルビジネス戦略を立
案し、新技術・ソリューションの開発を進め、世界各地のグループ子
会社やパートナー会社への技術支援を行います。同事業部が参加
するプロジェクトの一つに、最近発表された
「シンガポール安全都市
実証実験(Singapore Safe City Test Bed)」
プロジェクトがあ
ります。
このプロジェクトはシンガポール経済開発庁(EDB)
と内務省
(MHA)が指揮を執り、
シンガポールの安全・セキュリティ産業を推
進するものです。
パブリックセーフティー事業の新たな国際拠点が設立されたこと
で、NECは重要市場への利便性が高まり、パブリックセーフティー
チームのビジネス経験と能力を十分に生かすことが可能になります。
またこれにより、NECは開発、営業、
マーケティングのグローバル展
開を最適化し、従来の能力をさらに高めることになります。
05
October - December 2013
SINGAPORE BUSINESS NEWS
Business News 04
エンプラス、半導体機器事業の本社機能をシンガポール新会社に移管
高 ンプラス半導体機器の本社機能を、新たにシンガポールに設
機能精密プラスチック加工会社のエンプラスは、子会社のエ
立する「Enplas Semiconductor Peripherals Pte.Ltd.
(シンガポール・セミコンダクター・ペリフェラルズ)」
に移管すると発
表しました。
エンプラスは「半導体機器事業において、
グローバル競争が激化
する中、顧客である半導体メーカーの量産拠点が集中する東南アジ
ア、中国、台湾が市場の中心になって来ており、顧客のニーズを的確
に掴み、素早く対応する体制を構築するため」
と説明しています。
9月に設立された新会社は、資本金13億円(1300万USD)
です。
また、半導体機器事業の更なる拡大を図るため、
フィリッピンに、
シ
ンガポール新会社100%出資の子会社を12月に設立します。
社長は、
シンガポール、
フィリッピンの両子会社とも、
エンプラス半
導体機器の社長丸山良次氏が務めます。
Business News 05
ハウス食品、
シンガポールにアセアン事業拠点を開設
総 ガポールに、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域での食品
ン市に、
自社工場「ハウスフーズベトナム」
を竣工、
ベトナム国内で、粉
事業拡大の拠点として、
「 House Foods Corporation Branch
末デザート、粉末機能性飲料を発売開始しています。
合食品メーカーのハウス食品株式会社は、
この8月1日シン
の「C-vitt」
をタイ国内で発売開始、今年5月にはベトナムホーチミ
Office Singapore(ハウス食品シンガポール事務所)」
を開設しま
同社は、
「 食を通じて、家庭の幸せに役立つ製品」
を標榜していま
した。
す。
このアセアン地域にも広く受け入れられる製品を市場展開し、今
ハウス食品は、2012年からアセアン地域での事業展開を本格的
後アセアン地域の食文化の中で、
よろこばれ溶け込んでいくことを目
に開始しました。同地域は年率5∼10%の経済成長率が続いてお
指しています。
り、人口増加にともなう子供の割合が比較的に高い傾向を示してお
また、世界一の物流拠点であるシンガポールの利点を活かし、
ア
ります。
セアン地域をはじめとする海外への貿易事業を拡大し、
グローバル
昨年「ハウスオソサファフーズ(タイ・バンコク)」
は、
ビタミンC飲料
な観点での市場導入体制を構築していく予定です。
Business News 06
JBIC、MHCB、SPRINGと中小企業の事業提携を促進する覚書を締結
国 ンガポール規格生産性革新庁(SPRING)は、2013年5月
際協力銀行(JBIC)、
みずほコーポレート銀行(MHCB)、
シ
ガポールの中小企業支援で中心的役割を担うSPRINGの協力を仰
28日、
日本とシンガポールにおける中小企業の事業提携を促進する
ファンド規模は148億円(1億5000万USD)
で、MHCBの出資額
ぎ、事業機会の創出を下支えすることになります。
ための戦略的パートナーシップを確立する覚書を交わしました。
は123億円(1億2500万USD)、JBICが25億円(2500万USD)
これに先立ち、2013年3月、MHCBとJBICは中小企業を含む日
を出資、MHCBがシンガポールに設立した完全子会社「みずほアジ
系企業のASEAN諸国への事業展開を後押しする目的で、みずほ
ア・パートナーズ」
が運営します。
ASEANプライベート・エクイティ・ファンドを設立しました。
この設立
投 資 対 象 業 種 は金 融をのぞく幅 広い業 種を見 込んでおり、
に際し、
日本とシンガポールの中小企業のASEAN地域における事
SPRINGの担当者によると、
シンガポール側は高齢者向けサービス
業提携の促進に関してJBIC、MHCB、SPRINGが協議を行った結
を含む医療やエンジニアリング、
アニメーションなどのクリエイティ
果、今回の覚書が締結されました。
ブ産業などで、特に日系企業との協業を期待しているとのことです。
この覚書は、同ファンドを活用し、
日系とシンガポールの中小企業
「日本の経済成長を支えた中小企業は、世界最高レベルの技術を
がアセアン地域で合弁などの事業提携を後押しするのが目的です。
持つ反面、海外進出に際して現地でのネットワーク構築力が乏しい
具体的には、
日系企業と同ファンドが現地企業に出資し、共同出資
と指摘されてきました。一方シンガポール企業は、高品質商品の提
パートナーとして現地企業の運営を支援することや、同ファンドが投
供を追求しつつ域内で強固な事業基盤を築いているといわれていま
資した現地企業に日系企業を引き合わせ、関係構築を促進するなど
す。SPRINGが両国企業双方の強みを活かし、域内で新規事業の創
を想定しています。投資後の現地企業の付加価値が将来高まれば、
出・事業拡大を支援する」
と担当者は強調しています。
株式を日系企業に売却することも視野にいれています。
日系中小企
「日本とシンガポールの中小企業のASEAN諸国への事業展開を
業が海外で事業提携先を単独で見つけるのは困難なことから、
シン
後押しすることを目的に、本日、SPRINGおよびMHCBと覚書を締結
06
October - December 2013
SINGAPORE BUSINESS NEWS
できたことを大変嬉しく思います。JBICは昨年からこの覚書に関す
ることが可能になります。」
と述べました。
る協議を始めました。
この覚書の締結に向けて真剣に取り組んでく
SPRINGアシスタント・チーフ・エグゼクティブのチョイ・ソウ・クッ
ださった皆様に、
この場を借りて感謝申し上げます」
とJBIC常務執
ク
(Choy Sauw Kook)氏は、
「域内におけるシンガポール・日本の
行役員・産業ファイナンス部門長の柚原一夫氏は述べました。
中小企業間の提携をさらに促進・発展し、拡大させるため、JBICと
また、MHCBアジア・オセアニア地域ユニット長・常務執行役員の
MHCBと提携できたことを嬉しく思います。
シンガポールの確立され
末広博氏は、
「この覚書の目的はシンガポールにおける日系企業の
た事業基盤、優秀な労働力、優れた知的財産保護規則、そして日本
中小企業への出資を促進し、
シンガポールおよびその他のASEAN
の強固な技術革新力によって、
このJBICとMHCBとの戦略的提携
諸国での事業提携を推し進めることです。MHCBはASEAN地域
がシンガポールと日本の中小企業による有意義な協力体制をより促
を対象とするプライベート・エクイティ・ファンドを設立しました。
進させるものとなると確信しております」
と述べました。
MHCBとJBICがファンドに資本参加するこの機会を活かし、
また、
この覚書の締結により、JBIC、MHCB、SPRINGは、ASEAN地域
SPRINGと密接な関係を維持することで、
シンガポールの中小企業
での各自のネットワークと知識を活かし、
日本とシンガポール両国の
と日系企業の有益な戦略的提携の機会を創出できます。提携によっ
中小企業の海外へのビジネス展開およびビジネス機会の創出に貢
て双方の競争力が高まり、近隣のASEAN諸国へ共同事業を拡大す
献します。
Business News 07
昭和電工高橋会長、
シンガポール政府より叙勲
2
013年7月9日、
シンガポールのハードディスクメディア産業
変革への多大なる貢献が称えられ、昭和電工株式会社代表
取締役会長の高橋恭平氏は、パブリック・サービス・スター賞「The
Public Service Star (Distinguished Friends of Singapore)
Award」
を大統領官邸において授与されました。
高橋氏が代表取締役社長・CEOを務めた2005年から2010年
上回り、
シンガポールでの昭和電工の事業活動における著しい成長
を支えてきた」
と語っています。
「高橋恭平氏の強固な支援と貢献によってシンガポールはデータ
ストレージ産業の世界的リーダーになることができた。
この産業の
成長はシンガポール国民への雇用創出をもたらした」
とEDB長官の
レオ・イップ
(Leo Yip)
は述べました。
の間、他の地域との激しい競争があったにもかかわらず、昭和電工
はシンガポールでのハードディスクメディア生産力を2倍に拡大しま
した。
また高橋氏の指導のもと、
シンガポールにおける研究開発機
能を強化し、熟練の技術を活かして高性能ハードディスクメディアの
材料分析全般を支援できるチームを築き上げました。昭和電工の出
資により、ハードディスクドライブの組み立てからハードディスクメ
ディアの製造まで、
シンガポールのデータストレージ産業は大きく変
革をとげました。
この変革はシンガポールのエレクトロニクス産業の
発展における重大な節目となり、今日、
シンガポールは世界のハード
ディスクメディア製造の約50%の市場シェアを占めています。
現在、同社の代表取締役会長である高橋氏は、
「 昭和電工とシン
ガポール経済開発庁(EDB)
の協力関係が、今や従業員1,300名を
Business News 08
日本銀行とシンガポール通貨庁、
シンガポール・ドル資金供給策合意
日 ル金融市場の安定性向上のためのクロスボーダー担保取極
本銀行(BOJ)
とシンガポール通貨庁(MAS)
は、
シンガポー
シンガポールに拠点を置き、邦銀を含めて同ファシリティを利用する
資格のある金融機関の流動性管理の柔軟性を高めるものです。
を締結することに合意したと、2013年7月26日にシンガポールにて
この発表は、7月の安倍晋三首相のシンガポール訪問と同日に行
発表しました。
われました。
この協定に基づき、シンガポールで活動している金融機関は、
共同声明において、
「 本措置は、BOJとMASによる、長年にわた
MASに対して日本国債を担保として差し入れることで、同庁よりシ
る日本とシンガポール両国の金融・経済関係のサポートに対するコ
ンガポール・ドルを調達することができるようになります。
ミットメントを強化するものである」
と述べられました。
これにより同庁の流動性供給ファシリティの適格担保を拡充し、
協定の詳細は近日中に発表される予定です。
07
October - December 2013
SINGAPORE BUSINESS NEWS
Business News 09
ユニリーバ、
「フォーエーカー(Four Acres)
グローバルリーダーシップ開発センター」
をシンガポールに開設
世 「フォーエーカー・シンガポール(Four Acres Singapore)」
されます。
ローバルリーダシップ開発センターです。
また63億円(8千万SGD)
ドンに最初に設立さ
ては世界最大となります。
カーズ」
と呼ばれまし
毎年、
同社の上級管理職3,000名以上のトレーニングが行われます。
目の施設も、
「4エーカーズ」
と呼ばれる巨大なグローバルリーダー
界有数の消費財メーカーのユニリーバは、2013年6月28日、
の開設を発表しました。同センターは、同社初の英国外で唯一のグ
の投資は、同社のこれまでのリーダーシップ開発のみの投資額とし
同 社の新たなグローバルリーダーシップ開 発センターでは、
同センターはシンガポールの主要な学術機関の強固なネットワー
クを活かし、
アジアの消費者と直接的にふれあう機会を通して、深い
理解がうまれ、将来のビジネスリーダーに相応しい人材の育成めざ
します。毎年90種類以上、同センターのレジデンスで4∼5泊する合
宿プログラムが実施
1950年代にロン
れ た 施 設 は「 4 エー
写真提供: Unilever Singapore Pte Ltd
た。今回の新しい2番
シップトレーニングセンターです。
トレーニングを受けたリーダーたちは、事業規模を2倍に拡大し、
環境負荷を半減するというユニリーバの掲げる
「目標2020」
をきっ
と達成することでしょう。
Business News 10
中国のHaite グループはシンガポールで、中国国外で初の
航空訓練センターを着工
2
013年6月28日、Haiteグループはシンガポールにて、
中国四
川省以外では初の、航空訓練センターの建設に着工しまし
シンガポール航空訓
7,000平方メートル以上の面積を誇る新施設はチャンギビジネス
高まっている航 空 会
た。
これは中国の航空会社でははじめての大規模投資ともなります。
パーク
(Changi Business Park)
内に位置します。Haiteは74億円
(9350万SGD)
を投資し、
フライトシミュレーター設備をそなえた、
新オフィスビルを建設します。
トレーニングセンターは中国および東
南アジア地域で広く使用されている様々な機種のボーイング機や、
エ
アバス機のパイロットおよび航空機要員を対象とします。
この投資はシンガポール航空産業にとって重要な意味を持つ出
来事であり、今後10年間で14,000名のパイロットが必要とされる
ことが予測されるアジア太平洋地域の航空トレーニング市場に、
明るい見通しをもたらしました。現在320億円(3億2500万USD)
程のフライトシミュレーショントレーニング市場は、2020年までに
590億円
(6億USD)
に拡大するものと見られています。
Haiteグループ会長のリ・ビャオ氏(Li Biao)
は、
「Haiteハイテク・
練センターは、
アジア
太平洋地域において
社のトレーニングニー
ズを満たし、世界の航
空機市場に進出することが目的である」
と述べています。
リ氏は、Haiteが国外初の事業の地としてシンガポールを選んだ
理由として、
シンガポールが東南アジアの中心に位置し、
ヨーロッ
パおよびアジア太平洋諸国へのハブとして機能していることを挙げ、
「アジア太平洋地域の航空機のメンテナンス、修理、整備センター
にもなる」
と語りました。
プロジェクトの着工式にて、
シンガポール経済開発庁
(EDB)
輸送
産業局長のリム・コック・キアン
(Lim Kok Kiang)
は、
これは中国航空
機会社からシンガポールへの
「初の画期的投資」
であると述べました。
1シンガポールドル=約78.69円
(9/24現在)
1USドル=約98.65円
(9/25日現在)
sedb.com
Singapore Business News
シンガポール経済開発庁(EDB)
とは
経済開発庁(Singapore Economic Development Board : EDB)
は1961年に設立された貿易産業省傘下の政府機関で、
シンガポール
の産業育成、投資誘致を担っています。
「外資系企業誘致のワンストップセンター」
として、海外20ヵ所以上に事務所を持ち、外国企業に投資
先としてのシンガポールの情報を提供するだけでなく、世界の経済、技術、市場動向を把握することで、
シンガポールで競争力を持ちえる産業
や分野を育成するための経済戦略を立案しています。
日本には、東京に事務所を構え、
日本企業のシンガポール投資をサポートしています。
発行:シンガポール経済開発庁(EDB)
シンガポール EDB 経済・投資ニュース
October - December 2013
▼本レターに関するお問合せは、以下にお願いいたします。
シンガポール共和国大使館参事官(産業)事務所
Tel. 03(3501)6041
http://www.singaporeedb.jp E-mail [email protected]
このニュースレターは、
シンガポールの今がわかるビジネス・投資情報をご案内していきます。
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