平成 24 年 8 月 27 日 No.390 「姻族関係終了届」と取引相場のない株式等の相続税評価額 夫婦が離婚すると姻族関係は自動的に終了します。しかし、夫婦の一方が死亡しても、遺された配偶者と死亡者の親族 との姻族関係は終了しません。遺された配偶者が死別後「姻族関係終了届」を、届出人の本籍地または所在地のいずれか の市区町村役場に提出すれば、届けた日からその姻族関係を終了させることができます。 姻族関係を終わりにするかどうかは、遺された配偶者本人の意思で自由に決めることができ、死亡した配偶者の血族の 同意や、家庭裁判所への申立も不要で、届出を提出するだけで手続きは完了します。受理されると、死亡配偶者の親族と の姻族関係が終了した旨、戸籍に記載されます。夫婦に子どもがいて、その子が代襲相続人となることもあるかと思いま すが、この姻族関係終了届は、その相続権に影響しません。 なお、死亡した配偶者の遺産を相続した場合でも、返却する必要はなく、遺産を受取ることができます。姻族関係終了 届は、死亡した配偶者の血族との親族関係を終了させるもので、死亡した配偶者の父母や兄弟姉妹などの扶養義務もなく なります。姻族関係終了届に必要な書類は、①届出人の印鑑、②亡くなられた配偶者の死亡事項が記載されている戸籍(除 籍)謄本1通、③現在の届出人の戸籍謄本1通(提出する役場が本籍地の場合は不要)とされています。 しかし、姻族関係終了届を提出しただけでは、氏や戸籍の変動はありません。もし婚姻前の氏に戻したい場合は、復氏 届が必要になります。また、姻族関係終了後でも本籍を変更(転籍)する場合には、生存配偶者からの届出で行うことが 可能です。 そこで、姻族関係終了届の提出の有無による取引相場のない株式等の相続税評価額への影響について、設例で確認する こととします。 【設例】 (1)A 社株式(発行済み株式数 10,000 株)の株主等の状況 甲 6,000 株、甲の子 1,000 株、甲の妻の弟(乙)3,000 株。すべて普通株式で、1 株につき 1 個の議決権を有する ものとします。なお、甲は妻と死別している。 (2)A 社株式の相続税評価額 ① 原則的評価額 20,000 円 ② 特例的評価額 500 円 (3)姻族関係終了届の提出の有無による乙の相続税の課税関係 ① 乙の相続人 長女一人 ② 乙の財産 A 社株式 3,000 株、その他の財産 3億円 ③ 相続税 (単位:万円) 姻族関係終了届の提出・無 A 社株式 姻族関係終了届の提出・有 6,000 150 その他の財産 30,000 30,000 課税価格 36,000 30,150 相続税 10,300 7,960 (4)A 社株式の判定 姻族関係終了届の提出が甲によって行われていた場合には、乙と乙の長女は、A 社における同族株主以外の株主に該当 し、特例的評価方式によって評価することができます。 しかし、姻族関係終了届の提出が行われていなかった場合には、乙が死亡し乙の長女がすべて A 社株式を相続すること となると、乙の長女は甲の三親等内の姻族にあたることから、A 社の同族株主に該当し、かつ、取得後の保有議決権割合 が 5%以上となることから原則的評価方式によって評価することとなります。 (担当:山本 和義)
© Copyright 2024 Paperzz