最近のクルーズの状況と課題について 国土交通省港湾局産業港湾課クルーズ振興室 石 原 洋 室長 建設技術講習会 平成28年9月7日 最近のクルーズの状況と課題について 港湾局 産業港湾課 クルーズ振興室長 石原 洋 Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism 成長著しい北東アジアに位置する日本~地理的に優位性のある日本~ ○我が国周辺の沿岸地域(韓国、中国主要沿海10省市、香港、台湾)の常住人口は約6億人であり、国・地域別 の訪日外国人旅行者数は、中国、韓国、台湾の順に多く、アジアからの旅行者が8割程度を占める。 ○中国をはじめとする近隣諸国・地域の経済成長とともに観光客の増加が期待される。 我が国周辺地域の人口 我が国周辺国・地域の1人あたりGDPとGDP成長率(2014年) 【凡 例】 常住人口 (万人) 遼寧省 4,391 河北省 北京市 7,384 2,152 天津 天津市 1,517 山東省 9,789 韓国 5,042 出典:日本貿易振興機構(JETRO) 国・地域別情報 日本 12,708 江蘇省 7,960 上海市 2,426 500km 浙江省 福建省 5,508 3,806 台湾 広東省 10,724 国・地域別訪日外国人旅行者数の割合(2015年推計値) 1,000km 2,343 1,500km 香港 727 2,000km 3,000km 2,500km (※ 2014年の人口) 出典:日本貿易振興機構(JETRO)「国・地域別情報」、中国国家統計局「China Statistical Yearbook」、「人口推計」(総務省統計局) などより港湾局作成 出典:日本政府観光局(JNTO)資料より港湾局作成 ※「その他アジア」にはタイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インドを含み、 「その他」には上記以外のアジアの国・地域を含む。 1 クルーズ船の寄港による経済効果 ○大型クルーズ船の寄港地における経済効果は、寄港地の特性等により違いがあるものの、少ない場合でも乗客 1人当たり1万円/回程度であり、多い場合では、乗客1人当たり14万円/回程度に及ぶ。 小樽港※1 経済波及効果 <2013.6.19 /7.19サン・プリンセス> (乗客1,603人/1994人) 約0.2億円/回 1.7万円/人 直接効果 クルーズ客により寄港地及びその周辺に観光 消費が発生(例:飲食、土産品購入、ツアー参加など) 1次間接効果 観光消費の発生により、原材料購入等を通じ、 関連産業の生産を誘発 韓国※10 512米ドル/人 ※直接効果(アンケートによる推計) ※日本発着クルーズの寄港地 <2013.9.11~12 ボイジャー・オブ・ザ・シーズ> 神戸港※5 ※クルーズ客の直接消費額のみ 2次間接効果 室蘭港※1 ポートターミナル内で買い物を 楽しむクルーズ客(神戸港) 青森港※2 <2012.8.7 ・8.20 ボイジャー・オブ・ザ・シーズ> 直接・第1次波及効果の発生による雇用者所得の 増加から、 消費支出が増加し、関連産業の生産を 誘発 ダイヤモンド・プリンセス> (乗客3,616人) 約1.4億円/回 3.8万円/人 博多港※6 ※直接効果(アンケートによる推計) <2015.9.1~10.31 スカイ・シー コスタ・ビクトリア、コスタ・セレーナ、 クァンタム・オブ・ザ・シーズ、> 家電量販店で買い物する クルーズ客(博多港) 10.7万円/人 細島港※8 <2015.8.10 スカイシー・ゴールデン・エラ> <2014年> 那覇港※9 <2012.7.24 ボイジャー・オブ・ザ・シーズ> (乗客3,609人) 約1.4億円/回 3.8万円/人 ※直接効果(アンケートによる推計) 油津港※8 <2015.8.16 クァンタム・オブ・ザ・シーズ> (乗客4,843人) 約0.6億円/回 1.2万円/人 <2015.8.1 クァンタム・オブ・ザ・シーズ> (乗客4,605人) 約6.4億円/回 13.8万円/人 (乗客1,479人) 約0.3億円/回 2.3万円/人 約0.6億円/回 3.1万円/人 ※直接効果 (アンケートによる推計) 乗客平均1,950人 オプショナルツアーに 出かけるクルーズ客(那覇港) (乗客2,570人) 約0.3億円/回 1.3万円/人 ※直接効果(アンケートによる推計) ※日本における寄港地は、広島港 →油津港→長崎港 ※直接効果(アンケートによる推計) ※日本における寄港地は、伏木富山港 →室蘭港→東京港→長崎港 ※直接効果(アンケートによる推計) ※日本発着クルーズの寄港地 清水港※4 ※直接効果(アンケートによる推計) 長崎港※7 (乗客2,675人) 約0.3億円/回 1.2万円/人 <2015.8.26 <2014年度> 約0.4億円/回 ※直接効果(アンケートによる推計) 横浜港※3 約2.2億円/回 ※直接効果(ヒアリングによる推計) 日本発着クルーズの起点 5万トンクラスの想定 港費関係や給油・船用品など含む ※直接効果(アンケートによる推計) 【出典】 ※1 北海道開発局(2014):北海道港湾におけるクルーズ振興に伴う港湾施設整備等検討業務報告書 ※2 東北地方整備局調べ(2015) ※3 横浜市港湾局(2012):横浜港と地域経済~私たちの暮らしとつながる横浜港~ ※4 中部地方整備局、清水港客船誘致委員会(2015):清水港へのクルーズ船等寄港による経済効果 ※5 神戸市調べ(2012) ※6 福岡市調べ(2015) ※7 長崎県調べ(2015) ※8 宮崎県調べ(2015) ※9 沖縄総合事務局(2012、2015):外国クルーズ客船の那覇港寄港による経済効果について ※10 韓国政府資料(2013):海洋新産業育成と雇用創出のためのクルーズ産業活性化対策 2 クルーズ船の寄港動向 ○ 2015年中に我が国へクルーズ船により入国した外国人旅客数は前年比2.7倍の約111.6万人(概数)である。 ○中国からのクルーズによる訪日旅客数が最も多く、約88万人(約80%)となった。 ○外国船社が運航するクルーズ船の我が国港湾への寄港回数は前年比約5割増の965回、日本船社も含めると 1,452回となり、いずれも過去最高となった。 ○我が国は「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」に基づき、2020年にクルーズ船で入国する外国人 旅客数100万人(クルーズ100万人時代)を目指し取組を進めてきたが、これを5年前倒して実現した。 ※クルーズ:レジャーを目的とした船旅で宿泊を伴うもの クルーズ船による外国人入国者数(概数) 我が国港湾へのクルーズ船の寄港回数 観光立国実現に向けた アクション・プログラム(抜粋) ・2020年に「クルーズ100万人時代」を目指す (万人) 200 180 160 5年前倒しで実現 (目標) 111.6 100万人 140 120 100 80 60 40 41.6 26.9 20 17.4 0 2012 2013 2014 2015 (速報値) 2016 2020 (年) 注1) 法務省入国管理局の集計による外国人入国者数で概数(乗員除く)。 注2) 1回のクルーズで複数の港に寄港するクルーズ船の外国人旅客についても、 (各港で重複して計上するのではなく)1人の入国として計上している。 3 クルーズ船の寄港する港湾 ○2015年にクルーズ船が寄港した港湾の数は、全国で104港にのぼる。 ○大型クルーズ船(10万総トン数以上)が寄港した港湾は26港。 クルーズ船の寄港する港湾(2015年) 凡 例 香深(礼文島) 100回以上 2015年クルーズ船の寄港回数 沓形(利尻島) 50回以上 ~ 100回未満 30回以上 ~ 50回未満 10回以上 ~ 30回未満 5回以上 ~ 10回未満 5回未満 船浮 (西表島) 苫小牧 室蘭 函館 座間味 石垣 那覇 平良 (宮古島) 南大東 能代 船川 秋田 二見 (佐渡島) :大型クルーズ船(10万総トン以上)の寄港した港湾 輪島 北九州 厳原(対馬) 萩 浜田 境 七尾 金沢 宮津 舞鶴 釧路 大湊 徳仁 (久高島) 厳島 水島 内海 尾道糸崎 (小豆島) 網走 小樽 (喜界島) 本部 与那国 留萌 名瀬 (奄美大島) 古仁屋 (奄美大島) 湾 小木 (佐渡島) 酒田 青森 八戸 久慈 宮古 大船渡 新潟 仙台塩釜 広島 港名 寄港回数 1位 博多港 259回 2位 長崎港 131回 3位 横浜港 125回 4位 那覇港 115回 5位 神戸港 97回 6位 石垣港 84回 7位 鹿児島港 53回 8位 佐世保港 36回 9位 名古屋港 34回 10位 広島港 32回 新潟港 7回 伏木富山 … 敦賀 茨城 宇野 姫路 神戸 名古屋 郷ノ浦(壱岐) 下関 東京 大阪 佐世保 清水 今治 唐津 中津 岩国 松山 高松 四日市 青方(中通島) 横浜 別府 長崎 鳥羽 田子の浦 宇和島 館山 小浜 熊本 佐伯 高知 熱海 新宮 長浜 伊東 本渡 細島 牛深 八代 和歌山下津 徳島小松島 神津島 宮崎 二見 宿毛湾 鹿児島 油津 あしずり (父島) 八丈島 西之表 宮之浦 (種子島) (屋久島) 島間 (種子島) 出典:港湾管理者への聞き取りを基に国土交通省港湾局作成 博多 順位 35位 4 大型化が進むクルーズ船 船名 船型、同縮尺イメージ 総トン数 50,142トン 必要岸壁水深 9m程度 総トン数 Diamond Princess 115,875トン (’14年より日本発着クルーズに配船) 必要岸壁水深 初就航:2004年 10m程度 飛鳥Ⅱ (邦船最大のクルーズ船) 初就航:1990年 Voyager of the Seas (’13年より日本発クルーズに配船) 初就航:1999年 ※2014年改装 Queen Mary 2 (’09~12年に日本に寄港 ’17年に日本に寄港予定) 初就航:2004年 Quantum of the Seas (’15年より日本へ寄港) 初就航:2014年 Oasis of the Seas (世界最大のクルーズ船 ’18年より日本へ寄港予定) 初就航:2009年 マスト高 45m 満載喫水 7.8m マスト高 54m 満載喫水 8.5m 総トン数 マスト高 64m 138,194トン 必要岸壁水深 満載喫水 9.1m 10m程度 船幅 マスト高 65m 必要岸壁水深 満載喫水 9.3m 11m程度 29.6m 872人 37.5m 2,670人 (3,286) 全長241m 全長290m 38.6m 3,286人 (4,000) 41.0m 2,592人 (3,056) 41.0m 4,180人 (4,905) 64.0m 5,400人 (6,360) 全長311m 総トン数 マスト高 148,528トン 62m 必要岸壁水深 満載喫水 12m程度 10.3m 総トン数 マスト高 168,666トン 62.9m(58.2m) 必要岸壁水深 満載喫水 10m程度 8.8m 乗客定員 全長345m 全長348m 総トン数 225,282トン 全長362m ※日本の主な橋梁の桁下高 レインボーブリッジ:52m 横浜ベイブリッジ:55m 関門橋:61m 明石海峡大橋、女神大橋(長崎):65m ※ Quantumのマスト高の()内は煙突を低くした場合。 ※乗客定員は、1室2人使用時、( )書は全ベッド使用時 ※クイーン・エリザベス(Queen Elizabeth ) 総トン数 90,901トン 全長 294m 全幅 32.3m 喫水 7.9m マスト高 55m 5 ※にっぽん丸 総トン数 22,472トン 全長 167m 喫水 6.6m 乗客定員 398人 ※ぱしふぃっく びいなす 総トン数 26,594トン 全長 183m 喫水 6.5m 乗客定員 476人 出典:「クルーズシップコレクション(海事プレス社)」、船社代理店への聞き取り調査を基に国土交通省港湾局作成。 ※(参考) 国会議事堂 長さ(南北)206m 高さ(中央棟)65m 近隣諸国で進むクルーズターミナルの整備 ○クルーズ人口の増加を踏まえ、近隣諸国は新たにクルーズターミナルを整備している。 ○ターミナルビル、ボーディングブリッジ、多言語表示、十分なバスの駐車スペース等を備えた利便性の高い 施設を整備している。 ◆韓国 2020年までに、クルーズ専用埠 頭を新たに6バース整備予定 仁川港 ・22万トン級対応 クルーズターミナル を整備(2016予定) 束草 釜山港 ◆香港 香港港[カイタック・クルーズターミナル] ・10万トン級対応1バース (2015.8月供用) ・100%政府出資の釜山港湾公社 が整備 ・床面積: 9万4000㎡ ・22万トン級対応2バース ・香港政府が整備 ・床面積:14万3600 ㎡ ターミナルビル 3階建+屋上 木浦 済州島 ・15万トン級対応 ※このほか、束草、木浦、 2バース整備中 済州で、各1バース計画 (2020予定) (2017予定) 100m 釜山港新国際旅客ターミナル ・10万トン級対応1バース、 20万トン級対応1バース(2011供用) ・2バース増設整備中(2017予定) ・上海市宝山区政府と国有企業が 50%づつ出資した合弁会社が整備 ・床面積:2万4417㎡ 850m ◆台湾 ◆中国 上海港[ウーソンコウ国際クルーズターミナル] (2014全面供用) 天津港 ・2バース(-11.5m 延長625m) ・2バース(-11.5m 延長442m)(2014供用) ・全面供用時6バース 延長1,600m ・国100%出資の天津港(集団)有限公司が 整備 ・床面積:6万㎡ 高雄港 基隆港 ・22万トン級対応 (2017予定) ・100%政府出資の台湾港務 公司が整備予定 ・15万トン級対応 (2018予定) ・100%政府出資の台湾港務 公司が整備予定 6 各船社のクルーズ投入予定 ○今後も引き続き、欧米系の船社がアジア市場に進出する予定である。 2016年に日本へ初寄港する予定の主なクルーズ船 RCI社[米]は、中国市場へ新たに、 アジア最大の「オベーション・オブ・ザ・ シーズ」(定員4,180名)を配船し、 合計5隻で運航 プリンセス・クルーズ社[米]は、新たに 台湾市場へ、「ゴールデン・プリンセス」 (定員2,600名) を配船し、合計3隻※で 運航 コスタクルーズ社[伊]は、中国市場へ 新たに、「コスタ・フォーチュナ」(定員 2,716名)を配船し、合計4隻で運航 オベーション・オブ・ザ・シーズ (ロイヤル・カリビアン・インターナショナル[米]) 総トン数:168,666総トン、乗客定員:4,180人、全長:362m ※写真は同型船のクアンタム・オブ・ザ・シーズ ゴールデン・プリンセス(プリンセスクルーズ[米]) 総トン数:108,865総トン、乗客定員:2,600人、全長:290m コスタ・フォーチュナ(コスタクルーズ[伊]) 総トン数:102,587総トン、乗客定員:2,716人、全長:272m MSCクルーズ社[伊]は、新たに中国 市場へ進出 「MSCリリカ」(定員1,984名)を配船 MSCリリカ(MSCクルーズ[伊]) 総トン数: 65,591総トン、乗客定員:1,984人、全長:275m ※日本発着が中心のダイヤモンド・プリンセスを含む。 2017年以降の動き RCI社は、世界最大の オアシス・オブ・ザ・シーズ級 (定員5,400名)を2018年に は、アジアへ配船予定 プリンセス・クルーズ社は、 2017年にマジェスティック・ プリンセス(定員3,560名)を アジアへ配船予定 カーニバル社[米]、アイーダ 社[独]が、定員2,000名超の クルーズ船をアジアへ 配船予定 ノルウェージャン・クルーズ・ ライン社[米]が、2017年 から新造船(定員4,248名)を アジアへ配船予定 日本海事新聞、海事プレス等を元に、国土交通省港湾局作成(平成26年1月28日時点) 7 クルーズ船の寄港にあたっての受入体制、経済効果 (境港の事例) ○境港では、東アジアの諸外国から近いという地理的条件も活かしつつ、クルーズ船寄港回数が急増。 ○大型クルーズ船も既存の物流ターミナル(普段は原木、チップ等を輸入)を活用し受け入れている。 ○海外からの観光客による周辺観光地へのツアーや「爆買い」により、地域経済に大きな効果が波及。 クァンタム・オブ・ザ・シーズ(世界第2位:16.7万トン) 境港初寄港(H27.7.2) 境港へのクルーズ船寄港回数と旅客数 30 30 旅客数 25 25 20 20 15 15 10 10 5 5 0 寄港回数(回) 旅客数(千人) 寄港回数 乗客数は約4,600人観光バスは約120台 原木 旅客対応スペース 0 H23 H24 H25 H26 H27 寄港地ツアーの行先 ひえづ 既存施設でのクルーズ船の受入状況 お見送りイベント(多くの一般市民も来訪) ゆうしえん イオンモール日吉津、イオン松江ショッピングセンター、由志園(日本庭園)、夢みなとタワー 等 寄港時の状況 <イオンモール日吉津> 医薬品、化粧品、食料品、水筒などが人気で目薬などは棚が空っぽに。一度にまとめ買 いして10万円以上購入する客も多数。売り上げが普段の2倍。 <おさかなセンター> 茹でたベニズワイガニ、岩ガキ、乾物などが ほぼ完売。 <由志園> 通常の5割増しで用意した土産物が ほぼ完売。 乗客で賑わうイオンモール(左)と境港おさかなセンター(右) 8 クルーズ船の寄港による文化交流 (油津港(宮崎県日南市)の事例) ○平成27年、油津港にはクァンタム・オブ・ザ・シーズ、セレブリティ・ミレニアム等の大型クルーズ船が寄港。 ○セレブリティ・ミレニアム寄港の際、地元の日南振徳高校の生徒が外国人観光客向けに観光案内を実施。 ○高校生は、案内のための地域資源の勉強を行うとともに、案内後、日南市の観光に関する課題を市長に提言。 ○外国人観光客の訪問を通じて、若い人材の地域の魅力の再発見につながるなど、クルーズ船の寄港は観光 消費をもたらすだけでなく、地域と外国の文化交流にもつながっている。 寄港時 通常時 油津港の着脱式係船柱の設置 セレブリティ・ミレニアム(9万トン級)が入港 英語を駆使して案内する高校生① 英語を駆使して案内する高校生② 飫肥城を人力車でまわる外国人観光客 人力車を操縦する観光ボランティアも 英語、中国語で説明 9 「明日の日本を支える観光ビジョン(2016年3月30日)」 新たな目標値 10 クルーズ船受入の更なる拡充(「明日の日本を支える観光ビジョン」平成28年3月30日) ○北東アジア海域をカリブ海のような世界的なクルーズ市場に成長させ、クルーズ船の寄港を活かした 地方の創生を図る。 現状・課題および今後の対応 目指すべき将来像 カリブ海クルーズの様子 訪日クルーズ旅客数 (目標) (万人) 500 400 500万人 300 200 現状・課題 ○ 増大するアジアのクルーズ需要を取り込み、クルーズ船 の寄港が地域経済に与える効果を拡大することが必要。 ○ クルーズ船が寄港するための港湾施設や、クルーズ船の 寄港に伴い発生する諸課題への対応が不足。 ○ 寄港地が西日本の一部の港に集中する傾向がある。 111.6 100 17.4 41.6 0 提供:Royal Caribbean International社 今後の対応 2013 2014 2015 (速報値) 2020 (年) 2020 日本の各地をカジュアルからラグジュアリーまで幅広く対応したクルーズディスティネーションに ~瀬戸内と南西諸島を日本のエーゲ海・カリブ海に~ ○ 北東アジア海域をカリブ海のような世界的なクルーズ市場に(訪日クルーズ旅客を2020年に500万人、日本の各地 をカジュアルからラグジュアリーまで幅広く対応したクルーズデスティネーションに)。 ・クルーズ船寄港の「お断りゼロ」の実現(クルーズ船の受入環境を緊急整備(2015年度・全国10港)、クルーズ船寄港地マッチングサー ビスの提供 等) ・世界に誇る国際クルーズの拠点形成(旅客ターミナル整備への無利子貸付制度の創設等) ・瀬戸内海や南西諸島など新たな国内クルーズ周遊ルートの開拓、ラグジュアリークルーズ船の就航 ・新たなクルーズビジネスの確立(官民の関係者からなる地域協議会や全国クルーズ活性化会議の活用、農水産物の販売環境の改善、「みな とオアシス」の活用、港湾協力団体制度の創設 等) ・全国クルーズ活性化会議と連携し、寄港地の全国展開に向けたプロモーション 11 貨物ふ頭におけるクルーズ船の受入状況 ○外国籍クルーズ船の寄港数965回(前年比約5割増)のうち、旅客施設がない貨物ふ頭等への寄港回数は、 359回(全体の約37%)。→ 旅客の導線と貨物の動線が輻輳 ○旅客施設がない埠頭においては、クルーズ船接岸後、CIQ職員が乗船し、船内の食堂などに機材を設置し、 審査を行っているため、審査の準備に必要な1時間程度の待ち時間が発生する。 ○また、帰船時においては、埠頭上に長蛇の乗船待ちの列が生じる。 の状況 石垣港 境港 乗船(帰船)時の乗船待ちの状況 乗船(帰船)時の乗船待ちの状況 (2015.7 境港 クァンタムオブザシーズ) (2015.7月 仙台塩釜港 船内でのCIQ待ちの状況(下船時) 船内でのCIQ待ちの状況 (2015.3 横浜港 マリナーオブザシーズ) (2015.3月 乗船(帰船)時の (2015.7月12 「訪日クルーズ旅客500万人」の実現に向けた取組 北東アジア海域をカリブ海のような世界的なクルーズ市場に成長させ、クルーズ船の寄港を活かした地方の創生を図るた め、目標を「訪日クルーズ旅客を2020年に500万人」とし、以下の施策を推進。 「お断りゼロ」の実現 寄港地の全国展開 クルーズ船の受入環境の緊急整備 商談会の開催 桟橋 新しく設置した 係船柱 オアシス 新しく設置した 防舷材 ・「全国クルーズ活性化 会議」と連携して、クル ーズ船社、自治体等 が参加する商談会を クルーズ センター 既設の係船柱 カメリア (国際定期フェリー) 開催。 防舷材・係船柱の整備事例 桟橋の整備計画例 クルーズ船寄港地マッチングサービス 寄港地情報の一元的発信 国際定期 クルーズ船社 (代理店) 寄港可能な 港湾を照会 寄港可能な 港湾を紹介 国土交通省港湾局 クルーズ ワンストップ窓口 高速船 寄港可能な港湾を 抽出・調整 (あらかじめ) 情報を集約 国際クルーズの拠点形成 全国クルーズ 活性化会議 (全国116自治体) ・クルーズ船社が必要とする情報をウェブサイトで 一元的に発信 ①港湾施設の諸元 ②寄港地を起点とした観光情報 地場産品等の購入環境の整備 CIQエリア、商業機能等を備えた国際クルーズ 埠頭を形成 みなとオアシスの活用 クルーズ埠頭への臨時免税店の出店促進 地域住民 交流施設 観光客 トイレ 駐車場 カリブ海クルーズの拠点 マイアミ港 仮設テント 地域住民の交流 観光振興 緑 地 クルーズ旅客 旅客施設 (待合所) ふ 頭 みなと オアシスの 活用イメ ージ 13 クルーズ新時代に対応した港湾の生産性革命 既存岸壁の活用 ~少ない投資で多くのインバウンド~ 課題 クルーズ船は、同程度の喫水の貨物船に比べ、 <クルーズ船> ①風圧面積が広い →既存岸壁の防舷材や係船柱では、安全な着岸・係留は困難 ②船長が長い →延長不足によりクルーズ船を係留できない岸壁が存在 対策① 満載喫水 8.8m 全長157m 10m岸壁 3B 10m岸壁 3B 延長185m 延長185m 10m岸壁 2B 延長185m 10m岸壁 1B 延長185m 幅 50m 45° ※岸壁直近の幅約10m迄は 岸壁性能より水深11.4mとなる。 :新設 係船柱 ※泊地区域は緊急脱出用 :新設 防舷材 に 出港角度45°を付けた必 要 泊地(-14m) 寄港増に対応し、平成28年度末までに 〔平成28年度末までの実施予定〕 泊地(-12m) 泊地(-14m) 泊地(-10m) 最小限の面積を確保する。 防舷材等を整備し、大型クルーズ船の 寄港に対応(事業費:約3億円) 八代港のほか、清水港、長崎港等 国際定期 高速船 平成30年までに約22万トンの クルーズ船(世界最大)に対応 クァンタム カメリア (国際定期フェリー) オアシス 10m岸壁 10m岸壁 4B 4B 延長185m 延長185m 延長 クルーズ センター クルーズ センター カメリア (国際定期フェリー) 14m岸壁 14m岸壁 延長280m 延長280m 240m : 既設 係船柱 : 既設 防舷材 <貨物船> ■ドルフィン・桟橋等により岸壁延長不足に対応し、 世界最大級のクルーズ船の寄港に対応 <博多港> 平成26年 7月 船社からの要請 平成26年12月 現地着手(事業費:約2億円) 平成27年 6月 完了、ボイジャー・オブ・ザ・シーズ (最大定員4000人)寄港 12m岸壁 12m岸壁 延長200m 延長200m 全長348m 対策② ■防舷材、係船柱の整備を推進 <八代港> 現況 満載喫水 8.8m 国際定期 高速船 平成28年度末までに約16万トンの クルーズ船(アジア最大)のため部分供用 航路(-14m) 目標:平成29年に16万トン級(アジア最大:最大定員 4,905人)のクルーズ船が寄港する港湾数を、 平成27年比で倍増(平成27年は7港に寄港) 目標:平成30年に世界最大のクルーズ船 (約22万トン:最大定員6,360人)の 我が国港湾への寄港を実現 14 商談会等の開催 ○クルーズ船の寄港促進を図るため、国土交通省港湾局が、観光庁と連携し、海外クルーズ船社と「全国クルー ズ活性化会議」の会員との商談会を2014年から開催。 ○海外クルーズ船社キーパーソンとの商談会 観光庁の「海外クルーズ船社等招請事業」によるクルー ズ船社キーパーソンの来日に合わせ、クルーズ活性化 会議会員との商談会を開催 【2014年度】 ■ コスタクルーズ(場所:宮崎市内) ・参加者:港湾管理者・地方自治体 3港3団体 ■ セレブリティ・クルーズ(場所:新潟市内) ・参加者:港湾管理者・地方自治体 4港5団体 ■ プレステージ・クルーズ(場所:北九州市内) ・参加者:港湾管理者・地方自治体 9港9団体 宮崎県での商談会 【2015年度】 ■ MSCクルーズ ○全国クルーズ活性化会議の会員(会長:横浜市長) 全国119の港湾管理者や地方自治体の首長で構成 (2018年7月1日現在) 【北海道(13)】 函館市、小樽市、室蘭市、釧路市、網走市、留萌市、 苫小牧港管理組合、稚内市、根室市、礼文町、 利尻町、利尻富士町、広尾町 【東 北(16)】 青森県、青森市、むつ市、岩手県、宮古市、大船渡市、 久慈市、宮城県、石巻市、秋田県、秋田市、能代市、 男鹿市、山形県、酒田市、福島県 【関 東 (7)】 茨城県、大洗町、千葉県、館山市、木更津市、東京都、横浜市 【北 陸(11)】 新潟県、新潟市、佐渡市、富山県、高岡市、射水市、 石川県、金沢市、輪島市、福井県、敦賀市 【中 部 (9)】 岐阜県、静岡県、静岡市、御前崎市、愛知県、名古屋港管理組合、 蒲郡市、三重県、四日市港管理組合 【近 畿(13)】 【中 国(15)】 京都府、舞鶴市、大阪府、大阪市、堺市、兵庫県、神戸市、姫路市、 奈良県、和歌山県、和歌山市、新宮市、御坊市 鳥取県、鳥取市、境港管理組合、境港市、島根県、松江市、 浜田市、岡山県、玉野市、広島県、広島市、呉市、福山市、尾道市、 山口県、下関市 【四 国(11)】 徳島県、小松島市、香川県、坂出市、須崎市、愛媛県、松山市、 今治市、宇和島市、新居浜港務局、高知県、宿毛市 【九 州(17)】 福岡県、北九州市、福岡市、佐賀県、唐津市、伊万里市、 長崎県、佐世保市、熊本県、熊本市、八代市、大分県、中津市 宮崎県、宮崎市、日南市、日向市、鹿児島県 【沖 縄 (4)】 沖縄県、那覇港管理組合、石垣市、宮古島市 ・日程:2015年12月1日 ・場所:静岡市内 ・参加者:港湾管理者・地方自治体等 5港5団体 ■ ポナン ・日程:2015年12月3日 ・場所:青森市内 ・参加者:港湾管理者・地方自治体等 5港8団体 静岡県での商談会 ■ シルバーシー・クルーズ ・日程:2016年2月12日 ・場所:山口県下関市内 ・参加者:港湾管理者・地方自治体等 18港17団体 オブザーバー ■セレブリティ・クルーズ ・日程:2016年2月25日 ・場所:京都市内 ・参加者:港湾管理者・地方自治体 6港6団体 青森県での商談会 国土交通省港湾局、海事局、観光庁、国土政策局、 日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)、 日本外航客船協会(JOPA)、日本観光振興協会 日本政府観光局(JNTO) ※2012年11月設立時79団体 15 寄港地情報の一元的な発信 ○外国クルーズ船社等が寄港地を検討する際、港湾施設の諸元や港を起点とした観光情報の提供が必要となる。 ○これらの情報を一元的に発信するウェブサイトを開設。引き続き、同ウェブサイトの周知・充実を図り、外国クルー ズ船社等に必要な情報を積極的に発信。 港湾施設等の情報を提供するウェブサイト(2013年3月開設) 港を起点とした観光情報を発信するウェブサイト(2014年3月開設) (37項目を記載) 2015.6 掲載港・埠頭別情報拡充 (86港→91港) 2015.5 掲載港・観光情報拡充 (72港→81港) 2015.11 観光情報拡充 (イベントスケジュール) 【提供情報の内容】 ・港湾管理者の連絡先 ・クルーズ船の寄港実績 ・大使館または領事館連絡先・所在地 ・岸壁、ターミナル等の諸元及びサービス情報 ・ふ頭位置図、ターミナル配置図 など 【提供情報の内容】 ・寄港地周辺の観光情報 (グルメ、ショッピング、見どころ、トピックス) ・港周辺のイベントスケジュール ・港湾からの観光スポットまでの交通アクセス ・観光地のバス駐車可能台数 ・関連リンク、問い合わせ先 など アクセスURL:http://www.wave.or.jp/jcpa/ アクセスURL:http://www.mlit.go.jp/kankocho/cruise/ 16 旅客施設等への無利子貸付け ◯ 外航クルーズ需要の増大に対し、港湾の物流機能を維持しつつ、旅客の受入環境を改善するため、民 間事業者による旅客施設等の建設又は改良に対して資金の無利子貸付けによる支援を行う。 <制度の概要> 〔根拠規定〕港湾法第55条の7に定める無利子貸付対象である特定 用途港湾施設に旅客施設を追加。 〔対象施設〕旅客施設及びこれに附帯する駐車場等の港湾施設 道路・橋梁 ※ 附帯施設・・駐車場、道路、橋梁、広場、緑地 広場・緑地 駐車場 〔貸付割合〕国:港湾管理者:民間 = 3:3:4 旅客施設 ※ 貸付けの流れは下図参照。 〔償還期間〕20年(5年以内の据置期間を含む。)以内で国土交 通大臣が定める期間 ※ その他の貸付け条件は、港湾法施行令第5条から 第8条までに規定。 用途 基本施設 貸付対象となる施設 附帯施設 ① 外貿コンテナ船の係留 岸壁(桟橋) 泊地、荷さばき施設等 ② フェリーの係留 岸壁(桟橋) 泊地、荷さばき施設等 ③ マリーナ 岸壁(桟橋) 泊地、船揚場等 ④ 廃棄物の埋立処分 岸壁(桟橋) 泊地、廃棄物埋立護岸等 ⑤ 外貿コンテナの荷さばき・保管 上屋・倉庫 道路、緑地等 ⑥ 外航船の旅客の利用 旅客施設 駐車場、広場等 特定用途港湾施設(※政令の規定ぶりは現在調整中) 国 3 割 港湾管理者 (3割調達) 6 割 民間事業者 市中銀行 4 割 資金調達の流れ 17 2016年のクルーズ船寄港動向と見込み 2016年上半期の外国船社が運航するクルーズ船の寄港回数は704回(速報値)であり、前年同期比約1.7倍 の伸び。 外国船社が運航するクルーズ船の寄港動向 最近のトピック ○日本海側での定期クルーズの運航 2016年7月~10月に、コスタ・クルーズ社がコスタ・ビクトリア(総 トン数75,166t、乗客定員1,928人)による日本海側初の定期周遊 クルーズ(金沢港、博多港、境港、舞鶴港、釜山港に寄港)を10回 運航予定。 1800 (回) 1600 1400 1200 965 1000 800 653 上半期は 約1.7倍 発着港 7月26日舞鶴港に寄港したコスタ・ビクトリア ○大型クルーズ船が日本周遊クルーズを実施 600 476 373 400 200 704 上半期 (1~6月) 実績値 177 上半期 (1~6月) 速報値 2016年6月に、クァンタム・オブ・ザ・シーズ(総トン数168,666t、 乗客定員4,180人)が日本周遊クルーズを実施。 上海港を出港し、室蘭港(初)、横浜港(2回目)、名古屋港(初)、 大阪港(初)、高知港(初)に寄港。 420 0 2011 2012 2013 2014 2015 2016 ※ ※2016年の寄港回数は、上半期のみの数字 出典:港湾管理者への聞き取りを基に国土交通省港湾局作成 「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」高知港寄港の様子 18
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