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平成元年長審第80号 貨物船第六旭丸機関損傷事件 言渡年月日 平成2

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平成元年長審第80号
貨物船第六旭丸機関損傷事件
言渡年月日
平成2年3月2日
審
判
庁 長崎地方海難審判庁(小竹勇、前田喜市、安部雅生)
理
事
官 岸良彬
損
害
1番シリンダのクランクピン軸受メタルが溶出
原
因
主機潤滑油系の点検不十分
主
文
本件機関損傷は、開放整備後の主機システム油用ノッチワイヤ切替式こし器に対する点検が不十分で
あったことに因って発生したものである。
受審人Aを戒告する。
理
由
(事実)
船種船名
貨物船第六旭丸
総トン数
199トン
機関の種類
過給機付4サイクル6シリンダ・ディーゼル機関1個
出
受
力 735キロワット
職
審
人 A
名 機関長
海技免状
五級海技士(機関)免状(機関限定)
事件発生の年月日時刻及び場所
昭和63年5月31日午後3時ごろ
三重県大王埼南方沖合
第六旭丸は、昭和54年9月進水の船尾機関型鋼製貨物船で、機関室が上、中、下の3段に分けられ、
同室後部中央にB社製のGNLH6275型と称する定格毎分回転数390の主機を備え、同機台板の
下方に容量約2.2立方メートルの潤滑油ドレンタンクを、同タンクの後方右舷側に容量約0.2立方
メートルのブロー油タンクを、機関室中段左舷側前部に潤滑油貯蔵タンク(容量不詳)をそれぞれ配置
し、潤滑油ドレンタンクの側深管が同タンクの後部左舷側に斜めに挿入され、検油棒で同タンク内の油
量を測るようになっており、主機システム油の圧力(以下「油圧」という。)が1.0キログラム毎平
方センチメートル以下になった場合などに作動する主機警報装置を船橋、機関室及び船員室通路の3箇
所に設置していた。
また、主機のシステム油系統は、潤滑油ドレンタンク、ポンプ吸入こし器、主機直結駆動の潤滑油ポ
ンプ(吐出容量毎時18.7立方メートル、以下「直結ポンプ」という。)、同油冷却器及びノッチワイ
ヤ切替式同油こし器(以下「ノッチワイヤ」という。)を順に経て主機各滑動部に至る主系統に、直結
ポンプと同一吐出容量で伝動機駆動の予備潤滑油ポンプ(以下「予備ポンプ」という。)と同ポンプ吸
入こし器からなる系統、側流清浄用ロットリングフィルタを通る系統などが加わっており、予備ポンプ
は、通常主機始動前の油通し時とか直結ポンプに支障を生じた場合に運転するものであった。
ところで、ノッチワイヤは、機関室上段、主機2番シリンダヘッドの右舷側方に設置され、150メ
ッシュ相当のろ過筒2組を有し、ブローオフ式と称する逆流洗浄方式の構造で、ブローされた油が直径
約20ミリメートルの鋼管、仕切弁及びビニールホースからなるブローラインを通って前示ブロー油タ
ンクに導かれており、そのブロー方法は、仕切弁を開けたのち、本体のテーパ穴にはまり込んだコック
栓が軽く回るよう、同栓のグランドパッキン押さえ蓋の締め付けナット2箇を十分に緩め、同蓋にねじ
こまれた2本のジャッキボルトを締め込み、コック栓をテーパ穴から浮かせてから同栓のハンドルを操
作するものであったので、ブロー操作後はもちろん、開放掃除を行なったあとは、仕切弁を閉めるとと
もに、ジャッキボルトを十分に戻してから押さえ蓋を締め付けておかないと、コック栓がテーパ穴に密
着せず、通油中、システム油がブローラインに流出するおそれがあった。
ところが、A受審人は、同63年5月1日本船に機関長として乗り組み、同月29日岡山県邑久郡巴
久町の尻海停泊中に、他の乗組員らとノッチワイヤの開放掃除を行い、これを復旧したが、予備ポンプ
を運転してノッチワイヤに油漏れなどの異状がないかどうかを確かめることも、翌30日出航に備えて
主機を始動したあとブローラインを十分に点検することもしなかったので、ジャッキボルトが十分に戻
されずにグランドパッキン押さえ蓋が締め付けられ、コック栓が本体のテーパ穴に密着しない状態で組
立られたうえ、ブローラインの仕切弁を閉め忘れていたことにより、システム油がブローラインに流出
し始めたのに気付かなかった。
こうして本船は、A受審人ほか2人が乗り組み、主機システム油系統に約1,500リットル、潤滑
油貯蔵タンクに約350リットルの潤滑油をそれぞれ保有し、積荷として塩627トンを載せ、同日午
後4時30分尻海を発し、茨城県鹿島港へ向け、主機の回転数を毎分330として航行の途、システム
油の流出が続いて潤滑油ドレンタンク内の油量か減少し、明けて31日午前4時30分ごろ直結ポンプ
が同タンクからエアを吸って油圧が低下し、船員室通路に設けた主機警報装置のベルが吹鳴した。
自室で休息していたA受審人は、警報を耳にして機関室に赴き、油圧が正常値の2.2キログラム毎
平方センチメートルから1.0キログラム毎平方センチメートル以下となり、潤滑油ドレンタンク内の
油量が減少していることを認め、予備ポンプを運転しながら、潤滑油貯蔵タンクから約200リットル
の潤滑油を同油ドレンタンクに補給し、その後断続的に油圧低下警報が発するなかで、主機の回転数を
変えたり、ロットリングフィルタやノッチワイヤからのエア抜きに努めたりして、潤滑油貯蔵タンクの
残油約150リットルをすべて補給し、主機の回転数を毎分300として運転中、同日午後3時ごろ三
重県大王埼灯台から真方位205度14海里ばかりの地点において、クランクピン軸受、主軸受等が潤
滑不足により焼き付き、主機が「ゴトン、ゴトン」という異音を発し、回転数の急激な低下をきたした。
当時、天候は曇で風がほとんどなく、海上にはうねりが少しあった。
A受審人は、異変を感じて直ちに主機を停止し、潤滑油ドレンタンクを測深したところ検油棒にほと
んど油が付かず、1番シリンダのクランクピン軸受メタルが溶出し、ターニング不能となったのを認め
て続航を断念し、本船は、関係先に救助を求め、来援した引き船により、鳥羽港に引きつけられたのち、
主機全体の開放修理がなされた。
(原因)
本件機関損傷は、開放整備がなされた主機システム油用ノッチワイヤ切替式こし器に対する点検不十
分で、同こし器の組み立て不良及びブローラインの仕切弁開弁のまま主機の運転が続けられ、システム
油が同こし器のブローラインから流出し、主機各滑動部に潤滑不足による焼き付きを生じたことに因っ
て発生したものである。
(受審人の所為)
受審人Aが、主機システム油用ノッチワイヤ切替式こし器の開放掃除を行い、これを復旧した場合、
予備ポンプを運転するなどして同こし器に油漏れなどの異状がないかどうか、十分に点検しておくべき
であったのに、これを怠り、同こし器の組み立て不良及びブローラインの仕切弁を閉め忘れていたこと
によるシステム油のブローラインへの流出に気付くことなく、主機の運転を続けたことは職務上の過失
であり、その所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用
して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。
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