「水力発電とスクリュー船」 元未来科学技術情報館技術相談員 むかし ひとびと 尾崎 哲 く 水力は、昔 から、動力として人々の暮らしに役立ってきました。川の流れを利用した水車、 や水力発電。逆に水の流れを作って、それを利用する道具や機械もあります。 水力のいろいろを学んでみましょう。 地球温暖化対策として、今、小規模の水力発電が新たな期待をされています。産業革命よ りも前、蒸気機関などの動力が発明されるまでは、水力や風力が動力として利用されてい ひ ました。水力で粉を挽いたりしていたのです。 蒸気機関やエンジンやモーターが発明されると、逆に水の流れを作ることができるように さまざま く せんたくき なり、様々な形で暮らしに役立っています。洗濯機は分かりやい例ですが、水道にも水を 送るポンプが利用されています。 水力を利用した交通機関もあります。動力で動く船は,スクリューなどで水の流れを作り、 その反作用で動いています。 水力発電模型や、水力を利用して動くスクリュー船の模型を作って、水力利用のあれこれ を体験してみましょう。 1 1.水力とは ① 水力とは、 水 が動いて起こす力(またはエネルギー)のことです。 ② 水力を作り出している元は太陽ですが、海や川の水を暖めて水蒸気に変え、水蒸気が もど 冷えて雨や雪として地上に戻り、川となって流れる 水 の動きができます。 ③ 水 には重さ(質量)があります。 ④ 水 の重さは、1立方メートルの大きさで、約1トンです。 ⑤ 深さ1.5メートルの 水 お が面積1平方メートルの底面を(垂直に)押す力は、約 1.5トン(正確には、約150ニュートン)にもなります。 ⑥ 流速1メートル(/毎秒)の 水 が持つエネルギーは、面積1平方メートルあたり、 約500ジュール/秒(=500ワット)です。 ⑦ じゃぐち 水力エネルギーは、流速の3乗と面積に比例します。水道の蛇口から出る水の流速と じゃぐち じゃぐち 蛇口の面積では、流量を毎分8リットル、蛇口の面積を約1.3平方センチメートルと じゃぐち すれば、蛇口での流速は約1メートル/秒となるので、水力エネルギーは、0.066 ワットとなります。 2.水力の利用 ① 水力の利用には、自然の水の動きを利用するものと、水の動きを作って利用するもの があります。 自然の水の動きを利用した水力の例をあげてください。 ( ② ) (人工の)水の動きを作ってその水力を利用する例をあげてください。 ( ③ 水力発電、水車小屋、潮力発電、波力発電、など 洗濯機、ポンプ、噴水、など ) なな お こうりょく 板(平板など)に斜めに水の流れが当たると、水の流れの下流に押される力(抗 力 ) お ようりょく ようりょく のほかに、水の流れに直角の方向に押される力(揚 力 )が生じます。揚 力 を利用した 例をあげてください。 ( ④ スクリュー、櫓、など ) 水力発電は、水力で水車を回し、水車につながった 2 発電機 を回して発電します。 3.水力を利用した模型(スクリュー船) 3.1.用意するもの はば ① 食品トレイ(幅10cm、長さ18cm、深さ2cm程度のもの) ② モーター(マブチFA−130相当) ③ スクリュー(小)・軸(直径2mm、長さ9cm、真ちゅう丸棒) ④ 軸受(外径3mm・内径2mm、長さ2cm、真ちゅうパイプ) ⑤ 電気二重層キャパシター(2.5V10F) ⑥ ピンソケット(6Pピンソケット改造) ⑦ 発泡スチロール・ブロック(幅2.5cm、長さ4.5cm、高さ2cm∼1cm) ⑧ 発泡スチロール・板(幅4.5cm、長さ5cm、高さ1cm) ⑨ ゴムジョイント(長さ1cm) じく じくうけ はっぽう はば はっぽう はば 3.2.使う道具など ① 千枚通し ② ハサミ ③ ハンダごて(および台) ④ ハンダ ⑤ アルミ(またはステンレス)トレイ ⑥ 両面テープ(スポンジタイプ) ⑦ 接着剤 ⑧ ものさし ⑨ 油性マーカー ⑩ 手回し発電機 ⑪ 水槽 ざい すいそう *電気二重層キャパシター、ピンソケットは事前加工(ラジオペンチが必要) はっぽう *発泡スチロール・ブロックと板は事前加工(ホットカッターが必要) ! △ ハンダごては熱くなるので、ヤケドをしないように注意すること. 3.3.作り方 ① たん 食品トレイの中心線に沿って、前端から5cmと9.5cmの位置に、マーカーで印 たん をつける。同様に、後端から5cmの位置にも印を付ける。 ② はっぽう 発泡スチロール・ブロックの前面下部と後面下部の、それぞれ中央にマーカーで印を 付ける。 ③ たん 食品トレイの裏面で、中心線に沿って前端から3.5cmと8.5cmの位置に、マ ーカーで印を付ける。 はっぽう ④ 発泡スチロール・板の前面上部と後面上部の、それぞれ中央にマーカーで印を付ける。 ⑤ 発泡スチロール・ブロックを、食品トレイに、マークに合わせて、両面テープで貼り はっぽう は 付ける。 ⑥ たん はっぽう けいしゃ 食品トレイの後端から約5cmの位置で、発泡スチロール・ブロックの傾斜面の延長 3 線に沿って、千枚通しで穴を開ける。 ⑦ た んし た んし ピンソケットを、モーターの端子にハンダで止める。ピンソケットの端子がモーター ふ のケースに触れないように注意すること。 ⑧ はっぽう けいしゃ は モーターを、(後ろ向きに)発泡スチロール・ブロックの傾斜面に両面テープで貼り付 ける。 じく こ ⑨ スクリューを軸に差し込む。 ⑩ スクリューが取り付けられた軸を軸受に通してから、食品トレイの底に開けた穴に通 じく じくうけ じくうけ し、軸受が穴で止まるようにする。 じく じく ⑪ ゴムジョイントでスクリューの軸とをモーターの軸をつなぐ。 ⑫ 発泡スチロール・板を、食品トレイの裏面に、マークに合わせて接着剤で貼り付ける。 はっぽう ざい は 3.4.使い方 じゅうでん ① 手回し発電機で、電気二重層キャパシターに約2分間充 電 する。 ② 電気二重層キャパシターのプラス(+)とマイナス(−)を間違えないようにして、 ま ちが こ すいそう う ピンソケットに差し込むとモーターが回転し始めるので、そのまま、船を水槽に浮か べて、走らせる。 ③ ! △ 電気二重層キャパシターが放電しきると、自然に停止する。 モーターや電気二重層キャパシターを水でぬらさないようにすること。 《スクリュー船完成図》 4 4.水力発電模型 4.1.用意するもの ① プッシュバイアルびん(30ml) ② ステンレス丸棒(直径2mm、長さ15cm) ③ 太陽電池用モーター(マブチRF−500TB相当) ④ ターボファン(中) ⑤ 電気二重層キャパシター(2.5V3F) ⑥ ピンソケット(6Pピンソケット改造) ⑦ 熱収縮チューブ(直径3cm用、長さ4cm) ⑧ ゴムジョイント(長さ1cm) 4.2.使う道具など ① ハサミ ② ハンダごて(および台) ③ ハンダ ④ アルミ(またはステンレス)トレイ ⑤ 両面テープ(スポンジタイプ) ⑥ ドライヤー ⑦ 手押しポンプ ⑧ 水槽 ⑨ ミニカー ⑩ 周回路 お すいそう ふた は *プッシュバイアルびんと蓋の穴あけは事前加工(ドリル/ドリル刃が必要) ! △ ハンダごては熱くなるので、ヤケドをしないように注意すること. 4.3.作り方 た んし ① ピンソケットを、モーターの端子に、ハンダで止める。 ② 両面テープを約1cmの長さにハサミで2枚切って、モーターの前面に貼り付ける。 ③ モーターの軸をプッシュバイアルびんの底面に開けた穴に通してから、モーターを、 は じく ていめん は プッシュバイアルびんに、両面テープで貼り付ける。 こ ④ ターボファンを、ステンレス丸棒に差し込む。 ⑤ プッシュバイアルびんの蓋に開けた穴にステンレス丸棒を通してから、ゴムジョイン ふた じく ふた お こ トでモーターの軸につなぎ、そのまま、蓋を押し込む。 ⑥ か モーターとプッシュバイアルびんに掛かるように熱収縮チューブをかぶせ、ドライヤ ーで収縮させる。 5 4.4.使い方 ① ま ちが 電気二重層キャパシターのプラス(+)とマイナス(−)を間違えないようにして、 こ じゃぐち ピンソケットに差し込み、プッシュバイアルびんの部分を手で持って、水道の蛇口か じゅうでん ら水を流し、ターボファンが勢いよく回るように工夫して水を当て、約1分間充 電 す る。 ② 電気二重層キャパシターを、水力発電模型から外してミニカーに取り付け、周回路を 走らせる。 ③ お 手押しポンプでも発電できるか試してみる。 《水力発電模型完成図》 6
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