EUにおける商業調整の現状と課題

〔平成19年度調査研究事業〕
EUにおける商業調整の現状と課題
∼EU主要国における大規模店舗出店規制を中心に∼
三
浦
敏
商工総合研究所
((財)
主 任 研 究 員)
目 次
はじめに
Ⅰ.欧州全般とEU主要国の状況(概況、概要)
Ⅳ.ドイツ
1.ドイツの流通の現状と商業構造
1.主要国の商業構造
2.ドイツにおける商業調整
2.EU加盟国の商業調整の概観
(1)現行商業調整の概要
3.商業調整の影響と課題
(2)現行商業調整制度
Ⅱ.フランス
1.フランス流通業の動向
3.現行商業調整制度の評価
Ⅴ.イタリア
2.商業調整・規制の推移
1.イタリアにおける商業調整策の推移
3.現行法制の効果と課題
2.現行の商業調整制度
(1)現在の法制
3.商業調整制度の成果と課題
(2)EC条約違反
Ⅵ.その他EU加盟国の商業調整制度
4.今後の課題と展望
Ⅶ.EU流通政策の現状・課題
Ⅲ.英国
1.英国流通業の現状と構造
∼商業調整を中心として∼
おわりに
2.現行の商業調整制度
(補遺)
∼Ⅱ.フランス 4.今後の課題と展望∼
3.商業立地と都市計画
【主要参照文献】
4.現行商業調整制度の評価
2008.9
1
ってきたのか、行っているのか?この答えは、
はじめに
対照的なフランスと英国の大型店規制の詳細を
大規模小売店の立地が中心市街地から市街地
検討することにより明らかになろう。中心市街
縁辺部へ、また幾つかの市街地を商圏に巻き込
地の衰退や街の荒廃に悩む我が国の進むべき方
む農村部の幹線道路沿いへと進んでゆく中で、
向についても示唆が得られるものと確信する。
地元商店が集積する街の中心部商店街が衰退し
極論すれば、恐らく、フランスと英国、この
ていく現象は、日本のみならず欧州主要国でも
2 カ国の相違は、理念の相違、アングロサクソ
見られる共通の問題である。言うまでもなく、
ンとラテン国との相違、市場重視と社会的経済
都市とりわけ地方都市にあっては、中心市街地
重視との対立に求められると思われる。フラン
は住民にとって生活に関する様々なサービスを
スと英国のほかに本稿で紹介するドイツ、イタ
提供する拠点である。単に商品を販売する商業
リアも、この2 つの思潮のいずれかに属する。
機能だけでなく、教育や文化、医療や福祉、行
これまでEU 主要国の商業調整については、多
政等のサービスを提供し、住民の生活の質を維
くは都市計画の視点から既に概括された報告が
持する重要な機能を担っている。
されているが、4 カ国まとめて比較検討してい
しかし、グローバルに展開し商業活動を営む
大規模小売事業者が郊外に進出・立地したこと
る論考は少ないように思われ、今回敢えてドイ
ツ、イタリアを含め報告するものである。
が、既存の近隣商業や街の賑わいに大きな影響
を及ぼし、結果として中心市街地の衰退を招い
たことは、記憶に新しい事実である。
Ⅰ.欧州全般とEU主要国の状況
(概況、概要)
1.主要国の商業構造
我が国では、2007 年11 月の「改正まちづく
2001年時点で、EU(加盟15か国)において
り三法」の全面施行によって大規模小売商業施
商業は、27 百万人の従業員と8,800 億ユーロ
設の新設が困難になるとの予測から、駆け込み
(約137 兆2,800 億円)の付加価値を有し、雇用
で出店を届け出た施設も多く、2007 年の新設
の20%、付加価値の16%を生み出す等の重要な
SC 1(ショッピングセンター )数は89で、2008
役割を果たしている。
年も100 前後が開業する見通しとなっている。
EU15 カ国合計では、小売業は流通企業の約
本稿では大型商業施設への対応について、EU
60%を占め、流通における雇用の半数以上を提
で対照的な様相を呈しているフランスと英国を
供し、売上高の1/3弱を占めている(Eurostat,
中心に比較検討し、この2 カ国の現状と政策の
2004)
。特にEU15 カ国における食料品の小売
相違の基底に流れている思想を探る。EU 主要
金額は、小売業売上高の重要な部分を占め、食
国は、いかなる理念で商業調整、立地規制を行
料品の80%以上はスーパーマーケット2のよう
1 SC とは、一つの単位として計画、開発、所有、管理運営される商業サービス施設の集合体で、駐車場を備えるもの(日本ショッピングセンター協会の
定義)
。同協会によると、新設SC89件の平均面積は、24,970m2 であったという。
2 欧州における定義 ①セルフサービスであること、②売場面積が400m2 ∼2,500m2 であること。なお、平均は約1,000m2 である。③大量消費の商品が全
品揃いの90%を占めること。
2
2008.9
な食料品中心の非専門店で販売されている。国
小売販売高の上位集中の状況については、欧
別で見ると、販売額に占める非専門店のシェア
州各国は様々であり、住民一千人当たりの流通
はスペインで最も低く(約60%)
、フィンラン
企業数は、アイルランド、英国、或いはドイツ
ドが最も高い(90%以上)
。
において少なく、ポルトガル、スペイン、イタ
フランスを例外として、スーパーマーケット
リアにおいて多い。このことは、小売企業の規
は欧州において支配的な業態であり(食料品市
模によって説明される。欧州南部においては、
場で50% )
、格安店3(hard-discounter、maxi-
小売業者は小規模(1 企業2 ∼3 人)であり、ハ
discompteur)は、近年欧州において最も活発
イパー4が支配的な販売業態である英国のよう
な業態となっている。
な国々においては、1 企業平均150 人である。
(図表1)EU小売業国別立地密度
住民1千人当りの小売企業数
14企業
7企業
4企業
全産業雇用に占める小売業雇用の割合
3∼7%
7∼8%
8∼11%
11%以上
不明
(出 所)フランス商業担当省資料 Le commerce dans l'économie
(原資料)Eurostat, 2003, traitement DEcas
(図表2)EU商業の国別規模別構成比(2001年)
従業員規模別構成比(%)
EU主要加盟国
中小企業
大企業
0∼9人
10∼19人
20∼49人
50∼249人
フランス
93.2
3.5
2.4
0.8
99.9
0.1
英 国
86.4
9.0
3.0
1.3
99.7
0.3
ドイツ
84.3
9.2
4.5
1.8
99.7
0.3
イタリア
97.6
1.7
0.5
0.2
100.0
0.0
(出 所)フランス中小企業担当省資料 Répartition des entreprises par taille et par paysを加工。
(原資料)Eurostat-Newcronos-SBS/DEcas-A1
3 ①セルフサービス方式をとり、②基本的な食料品を中心に、③極めて低い価格で、消費者に提供する、④売場面積が400m2 ∼800m2 の小売業態。
4 ①セルフサービス方式、②売上の1/3超が食料品、③売場面積が2,500m2 以上、の小売業態。
2008.9
3
こうしたEU 商業全般の中で、中小企業が商
売 場 面 積 2 , 5 0 0 m 2 以 上 の ハ イパ ー
業に占める割合は、どの国でもほぼ同一である
(Hypermarché)であり、日用的な商品を衣食
が、中小企業内部の規模階層を見ると、フラン
住の全分野にわたって扱う大型総合業態である
スやイタリアでは、従業員0 ∼9 人規模企業の
ことによる。ただ、全分野を扱うといっても、
割合が、それぞれ93.2%、97.6%とドイツ、英
食品を中核(食品比率1/3超)としており、
(図
国に比べ著しく高い。このことはフランスやイ
表 3 )に見るように、E U 売上高第一位の
タリアの商業は小規模零細色が強く、これらの
Carrefour(カルフール)のほか、Casino(カ
規模の商業でも存立できる社会的背景の存在が
ジノ)
、Auchan(オーシャン)
、Leclerc(ル
示唆されている。
クレール)などの企業が展開している。
すなわち、フランス、イタリアの両国では、
一方英国では、特定の商品分野に特化した専
伝統的に小規模商業を単なる経済単位として認
門特化型業態が成長し、T e s c o (テスコ)、
識するのではなく、地域住民の生活にとって不
Sainsbury’
s(セインズベリー)などが展開し
可欠な存在、生活インフラと考えるのが国民に
ている主力業態は、ハイパーの一種(Super
定着していると考えられ、この事実は、商業調
Storeの呼称がある)で売場面積3,000m2 近い大
整策のあり方が如実に反映しているとも言えよ
型店であり、日用的な食品と雑貨に特化した専
う。しかし一方では、EU の食品分野における
門特化型業態である。なお、Marks & Spencer
売上高上位企業には、フランスの流通企業が数
(マークス・アンド・スペンサー)は総合業態
多く含まれており、フランスにおける大規模小
に近いが、その大半は衣・食までの品揃えであ
売企業が占める地位の大きさを示している。
り、取扱い商品分野はハイパーに比べて格段に
この点は、フランスを代表する流通業態が、
狭い。このほか衣料品、ドラッグストア、自然
(図表3)EUにおける売上高上位食品流通企業グループ
国 名
①Carrefour
仏
64,802
69,486
68,729
70,486
②Royal Ahold
2000年
2001年
単位:百万ユーロ
グループ名
2002年
2003年
オランダ
51,542
54,398
62,886
56,068
③Metro
独
46,930
49,522
51,526
53,595
④Tesco
英 国
33,629
38,706
40,479
43,720
⑤Rewe
独
34,630
37,540
37,430
39,180
⑥Aldi
独
31,000
33,300
35,660
37,730
⑦Casino
仏
19,073
21,984
34,364
36,110
⑧LIDL & Schwartz
独
16,500
20,400
25,357
35,000
⑨Edeka
独
32,200
33,230
32,500
33,190
⑩Auchan
仏
23,496
26,186
27,562
28,706
⑪E.Leclerc
仏
23,696
25,000
26,000
27,200
⑫Tengelmann
独
27,300
26,650
28,480
26,630
⑬Sainsbury's
英 国
27,608
28,084
26,795
24,320
(出 所)フランス中小企業担当省資料 Chiffre d'affaires des principaux groupes de la distribution
(原資料)Euro Store Book
4
2008.9
化粧品など多くの商品分野で、さまざまなコン
ア(DS)の攻勢を受けており、他チェーンの
セプトの専門特化型業態が全国にわたるチェー
買収やDS 強化に積極的なEdeka(エデカ)と
ン展開を実現し、英国主要都市のハイストリー
Rewe の2 グループへの集約が進み、上位集中
トと呼ばれる中心街に軒を並べている。
率が高まるものと思われる。こうした最近の動
またドイツの流通構造は
向は、遅かれ早かれ、いずれ小規模小売店に影
①独立した比較的小規模な店が相当数を占め
響を及ぼすものと見られる。
ること、
(図表4) 流通経路別売上高構成比
②他のEU 主要国(フランス、英国、ベルギー)
流 通 経 路 に比べ、大規模小売店による上位集中率が
伝統的小売店
24.8
専門大型店
22.0
低い水準にとどまっていること、
非食料チェーン店
13.0
大型日曜大工店
11.7
格安店
11.0
③中心市街地および都市区域において、小売
業が重要な位置を占めていること、
④ハイパーの立地が少ないこと(英、仏のハ
イパーは食品中心小売業では、それぞれ
56%、53%を占めているのに対し、ドイツ
では27%にとどまる)
、
⑤格安店の業態が優勢であり(ちなみに、フ
売上高構成比(%)
スーパー
7.9
遠隔地 購 買
5.8
百貨店
3.8
(出 所)Ifo-Institut & destatis(2000年)
(図表5)EU主要国の食料品中心小売業態別売上高シェア(2005年データ)
業態名
ハイパー
大型スーパー 小型スーパー コンビニ,在来商店
(売場面積) (≦2,500m2) (1,000∼2,500m2) (400∼1,000m2) ∼400m2 未満
ドイツ
27%
18%
42%
13%
ランスの2000年9%に対してドイツは11%。
フランス
53%
23%
20%
4%
格安店の食品市場におけるシェアは30%、
英国
56%
21%
11%
12%
イタリア
22%
19%
28%
30%
この分野の代表的企業であるAldi は、EU
食品流通企業売上高で第6 位)、遠隔地購
買(通販、電子商取引、テレビショッピン
グ)も重要であること、
(出 所)Ministère du logement et de la ville: Un commerce pour
la ville(Fév 2008)
EU における現状の問題点として、商業調整
策が厳しいか否かを問わず、加盟各国の農村部
の5 点が特徴として指摘されている。
および中心市街地の伝統的な商業が、大規模流
ドイツ流通業は流通経路により(図表4)の
通業の発達と集中によって犠牲になっていると
ように分類されるという。
近時、流通最大手である Metro(メトロ)
指摘されている。
この現象は、食料品分野で非常に明瞭に観察
が、傘下の食品・日用品スーパーチェーン「エ
され、EU 内外の大規模流通業者のEU の特定
クストラ」を、流通2 位のRewe(レーヴェ)
市場、特に英国やドイツ市場への進出とともに
に売却し、ドイツ国内のスーパー事業を縮小す
加速化されると見られる。
る動きがあり、上位大規模小売店間における再
編が始まっている。またスーパー分野では、
Aldi(アルディ)など大手ディスカウントスト
2008.9
2.EU加盟国の商業調整の概観
大規模な商業施設の設置に関し、EU レベル
5
での整合性のある法制は存在しない。補完性の
制限)し、建設許可取得に先立って事前許可の
原則5によって、各加盟国は欧州連合条約によ
取得を求めるものである。
り保障されている設立の自由及びサービスの自
欧州南部諸国の規制に盛り込まれている基準
由な提供という共同体原則を尊重しながら、商
は数が多く、しかも制限的に見えるのに対して、
業施設の設置実現の方法を定める権限を有して
欧州北部諸国の規制に盛り込まれている基準
いる。これらの法制は国により、また同一国で
は、柔軟で自由であるように思われる。しかし、
あっても地域により、非常に異なっている。
この異なる2 つの規制は、求める優先目的、す
欧州北部諸国の大部分においては、商業施設
なわち立地場所が何処であれ、大規模店の増加
の設置審査は、建設許可手続きの際に行われ、
に直面している小規模商業の衰退にブレーキ
欧州南部の諸国においては、建設許可手続きの
(歯止め)をかけようとするのか、或いは国土
前に行われる(商業開発許可証の取得は、建設
整備政策の関連で、郊外又は中心市街地に商業
許可申請書提出の前提条件である)
。
立地を誘導することを目的にするのか、によっ
一般的に、商業施設に関する欧州の法制は、
て明確に区別される。しかし何れの目的であれ、
特に欧州北部の諸国においては、むしろ国土整
大規模店の立地に枠をはめることが国土整備の
備を目的としている。これに対して欧州南部の
目的に応えることになるとすれば、欧州北部と
諸国においては、流通活動をより規制しようと
南部諸国間の目的の相違が結局は、規制進展に
している。
伴い収斂(一致)することになろう。
具体的には、欧州北部諸国(ドイツ、オース
トリア、デンマーク、フィンランド、アイルラ
ンド、オランダ、英国、ノルウェー及びスウェ
3.商業調整の影響と課題
新たな商業施設に対処する前述の規制は、欧
ーデン)は、国土整備や環境目的を優先させ、
州北部、特にドイツ、デンマークの都市周辺に
新しい商業施設のプロジェクト(計画)は、中
おいては、超大規模店及び商業センター新設が
心市街地活性化へのインパクト、交通の流れ或
鈍化し、他方では、格安店に見られるように、
いは更に景観の保全との関連で審査される。す
特定の近隣商業形態が発達するという意外な影
なわち、中心市街地の活性化、交通手段の多様
響を流通構造に及ぼしている。
化の結果、景観の保全や近隣住民の購買活動に
これら諸国においては、大規模小売店の新設
与える潜在的な被害などの観点から審査され、
を禁じる地理上の区域を決定することは、競争
建設許可申請の枠内で検討される。
店の参入を制限する可能性がある。
欧州南部の諸国(フランス、イタリア、スペ
欧州における商業施設の新設規制は、緩和の
イン、ポルトガル及びギリシア)とベルギーに
方向に向かっているように思われる。建設許可
おける商業施設規制は、むしろ流通活動を調整
に先立つ許可の取得を義務付けている各国の
(多様な商業形態の維持および大規模店拡大の
種々の制度(これらの制度も後述のフランスを
5 EC条約第5条では、欧州委員会は加盟国より与えられた権限のみを行使し、具体的な政策の展開は加盟各国が独自に行うことができる旨を定めている。
6
2008.9
範としている)は、欧州委員会によって近年問
シェア(図表7)は、大型店規制の象徴である
題視されている。それがスペインとポルトガル
ハイパーが1980 年の14.3%からSRU 法(後述)
のケースであり、この2 カ国とも2004 年に欧州
制定直前の1999 年には35.2%を占め、2002 年
委員会から制度の改定を催促されている。
に至っても依然市場の1/3 を超える34.4%を維
持している。またスーパーは、同じ1980 年の
Ⅱ.フランス
16.8%から年々着実に上昇し、2002 年には過去
1.フランス流通業の動向
最高の30.6%に達している。
小規模の、特に中心市街地の独立商業者を、
これに対して小規模店が主体の専門食料品店
大規模流通業者の無秩序な増加から守るため、
は、同じ1980年の27.4%から逐年傾向的な低下
商業及び手工業の方針に関する1973 年12 月27
が見られ、2002 年には、かつての1/2 に近い
日付法律、所謂ロワイエ法(後述)制定以降後
16.0%にまで売上高シェアが大幅に低下した。
このように、この時期の特徴的な動向として、
も大規模流通業者の恒常的な増加が見られた。
すなわち、同法施行後の約20 年間(1974 年∼
小規模店が減少する一方で大規模小売店
1992 年)の認可申請動向を見ると、申請面積
(400m 2 以上の店舗)の増加、市場シェアの拡
は1975 年の1,313 千m 2 から年を追って増加し、
大と、1994年∼1998年に倍増(1,121店→2,171
1987年の2,409千m2 からサパン法(後述)制定
店)した格安店maxi-discompte の増加が挙げ
直前の1992年には4,187千m2 へと拡大した。ロ
。ラファラン法は300m 2 超規
られる(図表8 )
ワイエ法より一段と大型店規制を強めたラファ
(図表6)大規模小売店舗開設認可申請動向
単位:千m2
ラン法(後述)制定後申請面積は一旦減少した
1974
1985
1996
2001
1974
∼1984 ∼1995 ∼2000 ∼2005 ∼2005
ものの、再び拡大し2000年には3,963m2 と以前
の水準に戻っている。この間、申請面積に対す
許可面積
6,347
12,541
9,221
14,626
42,735
拒絶面積
9,947
14,425
3,937
4,724
33,033
る許可率は1974 ∼1984 年38.9%、1985 ∼1995
小計
16,294
26,966
13,158
19,350
75,768
年46.5%、1996 ∼2000 年70.1%、2001 ∼2005
許可率(%)
38.9
46.5
70.1
75.6
56.4
年平均許可面積
577
1,140
1,844
2,925
1,335
。
年が75.6%と漸次上昇している(図表6)
この結果、フランス食品市場に占める売上高
(出 所)Alain FOUCHE:l’
évaluation du dispositif legislative et
réglementaire garantissant l’
équilibre entre les différentes
formes de commerce(Oct 2004)
(図表7)業態別売上高シェア推移(食料品関連)
1970
1980
1995
1997
1998
1999
単位:%
2000
2001
2002
ハイパー
3.6
14.3
33.1
34.5
34.8
35.2
34.8
34.6
34.4
スーパー
9.0
16.8
29.1
28.5
28.8
29.1
29.7
30.1
30.6
大衆百貨店
5.1
3.6
1.0
1.0
0.9
1.1
1.5
1.6
1.5
専門食料品店
32.2
27.4
18.5
17.6
17.3
16.5
16.3
16.2
16.0
非専門食料品店
35.2
22.9
10.3
10.3
10.2
9.6
9.3
9.3
9.2
その他
14.9
15.0
8.0
8.1
8.0
8.5
8.4
8.2
8.3
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
計
(出 所)DCASPL
2008.9
7
(図表8)業態別小売店舗数の推移
1986
1987
1988
1989
1990
1991
1992
1993
1994
ハイパー
649
694
759
811
862
908
955
1,008
スーパー
5,720
5,912
6,100
6,400
6,550
6,700
7,100
7,400
6,317
6,278
na
na
na
na
na
277
415
750
1,121
1,470
格安店
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
1,048
1995
2004
1,087
2005
ハイパー
1,112
1,123
1,135
1,155
1,185
1,209
1,264
1,303
1,344
1,374
スーパー
6,233
6,185
6,077
5,938
5,863
5,809
5,787
na
na
na
格安店
1,613
1,796
2,171
2,362
2,539
2,695
2,918
na
na
na
(出 所)Rapport sur l’
exécution de la loi d’
orientation du commerce et de l’
artisanat の各年版
模の店舗を規制しようとしたことから、格安店
おける商業施設不足を改善し、最低限の売場を
が300m 2 を下回る299m 2 の店舗開設を増加さ
確保すべきとの通達(1961年8月24日付け商業
せ、また在来のスーパーが、店舗の一部を格安
施設に関する最初の一般的指針:いわゆるフォ
店へ転換する結果を招いた。
ンタネ通達)を発出するほどであった。その後
しかし1996 年以降は、大規模小売店の増加
の社会的変化の中で消費形態の変遷を経験し、
が鈍化していることが確認されている。1986
他方では商品流通形態が、セルフ・サービス及
年∼1996 年におけるハイパー及びスーパーの
び新業態等の開発、これらの段階的な普及によ
年平均増加率はそれぞれ6.5%、0.8%に対し、
って、大規模流通業が飛躍的発展を遂げた。
1997 年∼2002 年のスーパーの同じ値は2.3%と
しかし、この様な大規模流通業の飛躍的発展
マイナスであった。このような鈍化は、この業
が、都市や農村における中小小売店の経営を直
態が成熟したこと、すなわち、婦人就業者の増
撃し困難に陥れ、その結果多数の小規模商業が
加が買物に費やす時間を短縮していること、独
閉店を余儀なくされ、中心市街地の衰退と農村
居者や車を持たない人々、或いは高齢者の様に、
地域の過疎化が進行する危険が現実のものとな
都市近郊の商業地域に行くことが不要あるいは
ってきた。こうした事態を回避する必要から、
困難な人々が増加したことで説明される。また
1969 年7 月29 日付通達は1961 年の指針(前述)
E コマース(電子商取引)の進展が、消費者の
を改定した。その内容は、商業都市計画に関す
こうした要求に応え発展しつつある。
る一般的方向を明確にし、都市計画策定に当た
っては商業施設を重視し、専門家で構成される
2.商業調整・規制の推移
大型店を規制する先進国の代表としてのイメ
ージが強いフランスであるが、1960 年代当初
は現在とは逆に、商業施設の設置を強力に推進
していたことを忘れてはならないであろう。
都市化の急速な進展、人口および経済の伸張
という状況下にあった60 年代に、住宅団地に
8
県諮問委員会を設立すること、10,000m2 以上の
床面積を有する商業施設開発に対して調査・検
討し意見を述べること等であった。
これ以降、4 つの法令が次々と成立し、商業
調整が補完・補強され、商業施設の増加に枠を
はめる事を目的とする措置が採られてゆく。
まず、経済および財政秩序に関する特定の措
2008.9
置を付与する1969 年12 月31 日付法律69-1263
な措置を盛り込んだ1990年12月31日付法律90-
号においては、その第17 条において、3,000m 2
1260号、いわゆる「ドービン法loi Doubin」に
超の商業に対しては、建設許可証の交付前審査
より補完された。
手続きを済ませる旨を定めている。
また汚職の予防と経済生活および公共手続き
次に、商業および手工業の方針に関する1973
の透明性に関する1993年1月29日付法律93-122
年12 月27 日法(ロワイエ法)においては、特
号(サパン法)では、従来設けられていた制度
に、国土整備および環境保全の原則を尊重しな
を変更し、単なる諮問機関であったCNUC(国
がら、多様な商業形態の均衡ある発展を確保し、
内商業都市計画委員会)をCDUC の決定に対
新しい流通形態の無秩序な増加を回避し、中心
する上訴(異議申し立て、控訴)機関に性格を
市街地の発展によって市街地の均衡回復に寄与
変更するとともに、呼称をそれぞれCNEC、
することを目的に掲げているが、特に中心市街
CDECに変え県委員会の構成を変更し、委員数
地の地元小規模店舗を保護するため、大規模小
は20 名から7 名に削減した。そして同法は、ロ
売店舗の拡大を抑制する目的を有していた。そ
ワイエ法の4 つの基本的方針(方向)を再確認
の中で4 つの方針が定められ、①健全かつ公正
し、CDECが考慮しなければならない指標(基
な競争における企業の自由の確立、②商業固有
準)
、すなわち、①顧客圏 (商圏) 内の総体
の目的の再検討(社会的生活の活性化、国内競
(全体)的な需給、②大規模および中規模小売
争力および生活の質への貢献)
、③小企業破滅
施設の密度、③既存商業機構に及ぼすプロジェ
および無駄な商業施設建設の禁止(小企業を破
クトの潜在的影響、④各小売業態内における十
滅させる商業施設および必要性の乏しい商業施
分な競争の必要性の充足を求めている。
設建設の禁止)
、④中心市街地および農村地域
次いで1996 年7 月5 日付法律96-603 号(ラフ
における商業活動の保護、というものである。
ァラン法)は、認可手続きの範囲を拡大し、ホ
このため、商業施設の許可上限は、住民4 万人
テル事業や映画館施設を追加するとともに、許
以上の市町村において計画されるプロジェクト
可を既に得ている事業活動に対しても要認可の
に対しては1,500m 2 に定められ、人口4 万人未
売場面積の上限を引き下げ、事業転換(変更)
満の市町村においては、売場面積が1,000m 2 に
にも適用されることとした。主要な改正点は次
まで引き下げられる一方、200m2 を超える売場
の通りである。
面積の拡張は、店舗がこの上限に達し或いは超
・県商業施設委員会(CDEC)並びに全国商
えたら直ちに事前許可が同じく必要となる。ま
業施設委員会(CNEC)に提出される書類
たCDUC(県商業都市計画委員会)に決定権を
の審査要素・要件の中に、雇用および環境
与え、それまで諮問的委員会にすぎなかった
を導入 CDUC の役割を強化している。
・商業床面積の新設又は拡張の上限売場面積
以上のような法制は、同一の商業建築物群
を300m2 に引下げる、事業目的の変更にあ
(集積)に入居している商業店舗に対する特別
たっては許可を求めること、及び販売面積
2008.9
9
6,000m 2 超の案件については公開調査を実
ロジェクト関連地域の手工業者に対する潜在的
施する義務
影響、雇用への影響、消費者にとっての利益な
・県商業施設委員会(CDEC)の構成の変
更。今後はメンバー6 人、許可の決定は、
ど)に基づいて行われる。
ロワイエ法により創設された同制度は、その
4 人(以上)のメンバーが賛成した時にし
後各種の法律によって補完され、とりわけ、い
か発せられない。
わゆるラファラン法は、商業施設の新設あるい
・現実的に抑止力を発揮するために、許可な
しで販売面積を増加させた場合の罰則を強
は既存小売事業目的変更の基準限度となる売場
面積を300m2 に引下げた。
また、いわゆる都市の連帯と再生に関する
化する。
また都市の連帯と再生に関する2000 年12 月
SRU 法は、新規商業施設プロジェクトの審査
13日付法律2000-1208号(SRU法)は、商業施
に当たって新たな指標、すなわち、自動車の流
設案件(建設)の審査に新たに3 つの基準を加
入、公共輸送手段の質、商品搬入の受容れ能力、
えた。すなわち、①交通量(顧客および配送車
広域統合計画(SCOT)による効果・影響を付
両の流入等)に及ぼす申請商業施設プロジェク
け加えた。
トの影響、②公共交通あるいは代替手段を伴っ
た交通手段の質、③商品の上げ下ろしに対する
(2)EC条約違反
フランスの現行規制は、欧州委員会から許可
。
受け容れ能力、である(図表9)
手続き、経済的影響調査の要求、売場面積の上
限を1,000m 2 から300m 2 への引下げについて問
3.現行法制の効果と課題
題視されている。すなわち、欧州委員会(EC)
(1)現在の法制
前述したように、商業都市計画は、建設許可
は、2005年7月5日、所謂ロワイエ法、
(その後
とは別の、許可証を交付する唯一の権限を有す
ラファラン法により修正されたが)による措置
る県商業施設委員会(CDEC)が事前先決許可
が、欧州共同体設立条約第43 条および49 条に
制度によって枠をはめ、委員会の決定は、一連
より尊重が義務付けられている事業所設立の自
の指標(商業施設の密度、商業組織および同プ
由およびサービス提供の自由原則と両立しない
(図表9)商業調整の主要法令の推移
西暦年
商業調整法令名
商業調整法令の主たる内容
1961年8月
フォンタネ通達
住宅団地の商業施設不足の解消
1969年7月
7月29日通達
商業施設検討の県諮問委員会設立
1969年12月 経済財政秩序に関する法律
3,000m2超商業施設に対し審査後に認可
1973年12月 ロワイエ法
1,000m2超の新設、200m2超の拡張を規制、県商業都市計画委員会に認可権限。
1990年12月 ドービン法
ショッピングセンター入居の小売店への特別措置。
1993年1月
サパン法
国内商業都市計画委員会が上訴機関に。
1996年7月
ラファラン法
要認可店舗は新設・拡張は300m2超、
6,000m2超には公開調査を義務付け。
2000年12月 SRU法
10
認可審査に3つの基準を追加
2008.9
(図表10)フランスにおける許認可手続き
4.今後の課題と展望
こうした欧州委員会(EC)からの指摘を受
大規模小売店開設者
けて、フランス政府は2006 年10 月に商業都市
県商業施設委員会
(CDEC)
許 可
計画の許可証を発給する手続き・基準の改革提
拒 絶
案する使命を与えた商業都市計画近代化委員会
を設立し、国会議員、地方議員および多数の関
係業界代表の参加を得て、2007 年2 月に次に示
異議申し立て
す提案を纏めた。
全国商業施設委員会
(CNEC)
許 可
−改定基準(支配的な地位を濫用した営業を
拒 絶
回避させるための競争基準、国土整備基準、
都市計画の審美・質および持続的発展の基
許可合計
拒絶合計
(出 所)DCASPL:Rapport d’
activité 2006を加工。
準、消費者ニーズ充足の基準)に基づき商
業施設に固有の法制を維持すること。
−一般都市計画法制へ商業都市計画法制を組
のではないかと疑問視していた。
み込むこと。
次いで2006 年12 月12 日、欧州委員会が公表
−商業施設委員会が検討するであろう4 つの
した見解によれば、域内市場のサービスに関す
基準に関する規則を統合することによっ
る欧州議会指令(2006/123/CE)の第14 条第
て、SDC(商業振興計画)により多くの内
5 節、及び同第14 条第6 節に反しているとし、
容を盛り込むこと。
商業施設に関するフランスの法制を問題にして
−SDC に法的効力を与えること。
いる。
−SDC の策定に当たっては、市町村間およ
さらに、欧州委員会は2006 年12 月13 日、フ
ランスの法制は、大部分において、既存商業に
対する進出の影響のような経済的な性質を理由
び県間の段階を優先すること。
−法律の効果的な適用を保障するため行政機
関により有効な手続きを与えること。
とし、十分には予測付かない基準に基づいてい
ること、又、既存の経済利益の代表者の決定へ
上記の提案に対して競争審議会Conseil de la
の関与を可能にするフランスの手続きは、一般
concurrenceは、経済財政大臣からこれらの改
の利益の目的とは釣り合わず正当化されない、
革提案の評価を行うよう求められている。まず
ことを記述した意見書(IP/06/1794)をフラ
第一に、異業態の商業間におけるバランス、流
ンス政府に送り、2005 年7 月以降改正されてい
通分野における集中の結果に関する現行規制の
ない規制を、EC 条約226 条に対する違反と見
総括、地元で支配的な状況の成立を防止するこ
做す決定を行っている。
とに関する妥当性の解明、第二に、政府は、地
方における競争(状況)の改善を可能にするた
2008.9
11
めの尊重すべき原則に関する可能な限りの(審
施行されたギャラン(Galland)法(1996 年)
、
議の)進展、特に事前許可制度や上下限の基準、
ロワイエ法(1973 年)、ラファラン法(1996
に関する望ましい改定、最後に、商業法典
年)を流通および商業の自由を妨げるとして採
L.752-10 条は、食料品中心の小売業に対し、県
り上げ、その廃止を提案している。
内で25%を超え、300m2 以上の売場面積を有す
前述の通り、欧州委員会は2006 年以来、フ
るブランドまたはグループには許可を与えない
ランス政府に対し小売店開設認可制度の終了を
とすることの是非である。
求めており、ロワイエ法およびラファラン法は、
いずれにせよ、商業施設の許可手続きが必然
結局廃止されるか、真剣に再検討されることに
的に一般都市計画手続き、言い換えれば、商業
なろう。しかしフランス国内においては、この
的部分を伴った建設許可によって交付される単
提案は、完全な「市場原理」主義に基づくもの
一の許可に再編されていく。また、今後全ての
であり、中小企業者のみならず閣内からも批判
申請プロジェクトが都市計画、すなわち商業開
が噴出し、これら提案の実施は極めて困難と見
発振興計画(SDC)と連携しての、広域統合計
られる。
画(SCOT)や都市計画ローカルプラン(PLU)
Ⅲ.英国※
の下で行われると見られている。
1.英国流通業の現状と構造 ところで、2007年5月に新しく大統領となった
Sarkozy氏は、フランス経済の成長と競争力を促
英国では、小売業売上の約半数を食品の売上
進するための委員会(アタリ委員会)を設置し、
で占め、食料品小売業界においては、専門店の
同委員会に、①購買力増大のために競争を促進
弱体化が急速に進んだことから、大手 4 社
すること、②成長に役立つ国土および住居政策
(Tesco、Asda、Sainsbury’
s、Morrisons
を構築すること、に関する方策を諮問した。
Group)の売上シェアが上昇し、売上高におい
これを受け同委員会は、2007 年10 月に第一
て市場の約61%を占め、上位集中率が高い(図
次提案を行ったが、①については、これまでに
表1
1)
。
(図表11)英国食品小売業売上高シェア推移
2001
2002
2003
2004
単位:%
2005
2006
Tesco
18.8
19.6
21.6
23.0
24.5
26.0
Asda*1
10.9
11.9
12.4
12.9
12.9
13.2
Sainsbury’
s
12.6
12.4
12.1
12.2
12.3
12.5
0.0
0.0
0.0
9.9
9.2
9.1
Morrisons Group*2
Safeway
上位5社 計
8.1
8.0
7.6
0.0
0.0
0.0
50.4
51.9
53.7
58.0
58.9
60.8
そ の 他
49.6
48.1
46.3
42.0
41.1
39.2
合 計
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
(出 所)OFT:Groceries market investigation(2007.10.31)
*1 米国ウオルマートの子会社。*2 2005年にSafewayを買収。
※ 商業調整制度及び都市計画内容の記述については、その多くを国土交通政策研究所の文献に負っている。
12
2008.9
しかも、これら大手スーパー4 社と商品を納
などが考えられるとしている。
入する農業生産者や食品メーカーなどとの力関
さらに、競争委員会はスーパーが商品調達で
係の差が大きく、①これら大手スーパー4 社が
契約を過去にさかのぼって変更するなどして、
納入業者に対して低価格での商品提供を課して
リスクやコストを中小企業が多い納入業者に押
いるのではないか、②地方で、大手スーパーが
しつけている例があるとして、過去7 年で3 回
小規模小売店を排除するために、集中的な低価
目となる大型スーパー調査を実施した。
格や割引販売を行っているのではないか、また、
この様に、英国の食品小売市場は過去5 年に
③大手スーパーがほかの競争相手を排除するた
わたり上位集中が続き、寡占状態にあり、新規
めに、出店可能な土地を買い占めているのでは
参入や拡張が極めて困難になっており、とりわ
ないか、④大手スーパーへの納入業者は、低価
け地方市場における競争の欠如が、消費者に不
格での商品提供の補填を小規模小売店などに対
利益を与えるばかりでなく、小売業者の供給力
する価格押し上げで行っているのではないか等
を弱めていると考えられている。
の問題点が指摘され、大手スーパーに対する規
制が不十分であり、公正な取引が困難であると
2.現行の商業調整制度
英国においては、商業施設に関する如何なる
の声が上がっていた。
そこでOFT(公正取引委員会)は、大手ス
規制措置も用意されていない。小売店舗の出店
ーパーが土地を購入したものの店舗を建設せず
を直接規制する法律はないのである。すべて、
に放置しているlandbank sitesと呼ばれる未使
都市計画のために土地利用を規制する都市・農
用管理用地を特に問題点として取り上げた。一
村計画法(Town and County Planning Act)
方CC(競争委員会)は、大規模小売業者の地
を根拠にしている。この分野で適用される規制
位乱用の対策として、土地の強制売却や、地方
は、現在では都市計画政策によるものであり、
自治体による店舗建設許可に関するルールの変
政策目的に合致するか否かで建設許可を出すか
更、小売業者と供給者間の関係を規制する
どうかが決定される。すなわち、中心市街地の
SCOP(スーパーマーケット事業規定)の変更
活性化に資するか、効率的で競争力ある流通分
(図表12)主要英国食品小売業売場面積推移
2001
Tesco
Asda
Sainsbury’
s
Morrisons Group
Safeway
2002
2003
単位:千m2(
、%)
2004
2005
2006
1,632( 20.7)
1,734
2,025( 23.6)
2,155
2,287
2,408( 26.4)
943( 12.0)
983
1,050( 12.2)
1,133
1,179
1,396( 15.3)
1,246( 15.8)
1,307
1,412( 16.4)
1,465
1,521
1,575( 17.2)
364( 4.6)
383
394( 4.6)
420
1,158
988( 10.8)
952( 12.1)
957
977( 11.4)
996
N/A
5,137( 65.2)
5,364
5,858( 68.2)
6,169
6,145
そ の 他
2,746( 34.8)
2,732
2,727( 31.8)
2,725
2,824
2,763( 30.3)
合 計
7,883( 100.0)
8,096
8,585( 100.0)
8,894
8,969
9,130( 100.0)
上位5社 計
N/A
6,367( 69.7)
(出 所)OFT:Groceries market investigation(2007.10.31)
2008.9
13
野が維持できるか、住民ニーズが充足されるか
と成長の促進」の考え方を反映した指針である
等である。
PPS6(Planning for Town Centre )は、大規
商業立地について計画当局は、都市スプロー
模小売店舗の進出計画に対して可否を決定する
ル化の抑制、農村地域の保護、均衡のとれた自
際の重要な判断基準の一つであるが、この様な
立した地域社会の創造、という伝統的考え方に
中心地重視は、EU の都市及び地域の持続的な
立脚しており、大型店の郊外立地は、都市機能
成長を推進する方針に沿ったものであると言え
を拡散させ、農村地域の緑地帯を侵食し、単一
よう。
機能(モノカルチャー)社会の形成をもたらす
したがって、大規模小売店舗の立地は、前述
との危機意識に基づいているといわれる。欧州
の考え方に基づいて規制・誘導されており、中
においては、かつて都市計画上で消費者の利便
心地以外での立地は厳しく制限されることにな
性を確保するために、中心市街地から近隣住区
り、その結果、各レベルの計画間及び開発と計
までの段階的な小売商業分布、いわゆる小売ヒ
画の間で整合することが求められる。
エラルキーが立てられており、英国においても、
ところで、大規模小売店舗の出店について許
計画当局によるこの様な理念を維持しようとす
可権限を有する地方自治体が、当該出店計画を
る観点が出店規制姿勢に表れ、地域をコーナ
許可したとしても、公益(広域)性の観点から
ー・ショップ、近隣センター、地区センター、
はその判断が正しいとはいえない出店計画に対
都市センター、の4 層に区分し、それぞれに商
しては、国が強制介入し地方自治体に代わって
圏、業種等の役割を担わせようとしていると考
許可又は不許可の決定を行うコールイン(Call
えられる。
in )制度が存在している。これは、大規模小
(注)コーナー・ショップ:消費者が歩いていける距離に
立地。
(注)近隣センター:商圏人口が500 ∼10,000 人、大きな
村や町の中心地から離れている住宅
地に立地。
(注)地区センター:人口10 万人以上の都市圏に立地し、
商圏人口は25,000 ∼4 万人で、スー
パーや百貨店を含む。
(注)都市センター:商業、行政、公共交通の中心地。
売店舗が開設される場合、その商圏は広く、立
地自治体のみならず、隣接及び周辺自治体にも
影響を及ぼす可能性があるため、広域的な調整
が必要であるケースが多いと考えられるからで
ある。
こうした広域的な観点から、大規模小売店舗
大規模小売店舗の出店に対する判断は、原則
立地の適否に関する判断尺度として、国の計画
的には、個々の出店計画に対して許可権限を有
方針であるPPS(計画方針文書)や地域レベル
する地方自治体が主体となって判断を下してい
の計画であるRSS(地域空間戦略)を活用し、
る。また、店舗用施設の建設、拡大(増設)、
広域的な影響をはじめ、地元経済や地元雇用に
修正あるいは用途の変更を可能にする建設許可
与える影響等についても検討・評価している。
の審査に関しても、地元当局は、広範な権限を
手にしている。
英国の重要政策の一つである「中心地の活力
14
3.商業立地と都市計画
英国では、我が国のような全国を網羅する国
2008.9
(図表13)英国における都市計画調整
国レベル………
計画指針文書(PPS)
Guidancesに従わなければならないことを意味
している。
整合性
4.現行商業調整制度の評価
地域レベル……
コールイン
地域空間戦略(RSS)
整合性
自治体レベル…… 地域開発フレームワーク(LDF)
英国における大手食品小売業者に対する調
査・検討は、競争確保の観点からなされ、その
分析結果に対する政策意思には、多種多様な商
業間(業種・業態)の調整を如何に行うかの産
(開発)
(出 所)国土交通政策研究所「地方分権社会における広域的
観点からの都市整備に関する研究」
業政策の視点は全くない。そこには産業経済活
動を自由に任せようとする市場重視の姿勢が色
濃く現れている。
前述のように、確かに英国においても、大規
土計画は存在せず、ロンドンを含む9 つの地域
模小売店舗に対する規制は可能であるが、それ
ごとに作成する広域地方計画が最上位の計画と
は公正な競争確保の観点から、或いは都市計画
されている。
の観点から規制されるものであって、既存小売
商業地域を指定する都市計画は、地元レベル
店を産業政策の観点から商業調整しようとする
で練り上げられ、各州は特に基本整備計画、中
ものではなく、結果として既存小売店が守られ
央当局により承認された計画を作成する。但し
ると言うものでしかない。OFTやCCが関与す
国は、各地域における広域地方計画や都市計画、
るのは、そのためである。
また様々な各分野における計画が整合性を保つ
但し、英国における大規模小売店舗の規制は、
よう個別内容ごとに指導書とも言うべき計画方
経済的条件を付さない都市計画の観点からのみ
針文書(PlanningPolicy Statements、
「PPS」
)
行われていると言われているが、実際には地域
を策定している。
活性化や雇用創出などの地元に対する経済的貢
州または地域レベルで大規模小売店舗の立地
献が許認可時の考慮事項となっている。
を含めた広域計画が策定され、自治体がそれと
また、英国における大規模小売店舗の立地規
整合をとって都市計画を策定している。商業地
制は、都市計画を有する地方自治体が中心市街
域に属するゾーンは地元計画当局 l o c a l
地の活性化に悪影響を及ぼすか否かで判断し、
planning authorityが策定する都市計画プラン
他方CC による規制は、
「消費者利益」の名の下
により決定されるが、local planning authority
に、大規模小売店による新規参入妨害を排除し、
は、前述したとおり都市計画との両立を検討す
結果として地元商店が守られることになるもの
るために、設置あるいは拡張の許可証の交付を
である。
も担っているのである。地元の都市計画プラン
したがってフランスのように、地元商店(大
自体が国の指針、すなわちPlanning Policy
半は小規模商店)commerce de proximité の社
2008.9
15
会的意義を認め、積極的に守ろうとするもので
ており、その数は257、売場面積は1,727,300m2
はない。
に達する。
また、近年その進出振りが注目されている格
Ⅳ.ドイツ
1.ドイツの流通の現状と商業構造
安店は大規模流通業売上高の32%を占め、1998
年時点で、総数50,000店、25万人を雇用し、小
東西ドイツの統一以降、大規模流通業の顕著
売業売上高で約3%のシェアを有している。特
な増加が見られ、過去25 年間に、小売店の売
に食料品における売上シェアは 2006 年に約
場面積は2 倍になり、総売場面積は2005 年に
41 %に達し、隣国フランスの約15 %と比べ、
118百万m2 に達している。住民10,000人当りの
著しく高い。
小売業密度は、フランスの1/2、英国とほぼ同
7参照)
。
水準である(後掲図表1
ここ数年来、200m 2 未満の小規模商業数は
業態で特に特徴的なのは、メトロ(Metro)
などが展開している会員制の大型現金問屋、
Cash & Carry 業態(C&C)の成長ぶりとVC
スーパーマーケットやドイツ統一以降商業構造
の存在である。C&C は、ハイパーと同様に、
において益々重要性を帯びているハイパーの影
衣食住の全分野をカバーする大型総合業態であ
響で、減少の一途を辿っている。
るが、会員制を取ることで卸売店としての認可
西ドイツにおいては、1968 年の法律が都市
を受けて営業している。そのために、閉店法の
圏にある中心地の商業活動を保全するために、
規制は小売店に比べて緩やかであり、ハイパー
ハイパーの建設を規制していたが、東西ドイツ
よりも競争上有利になり、C&C 業態成長の背
統一以降は、この規制が旧東独の新しい州のた
景となっている。
めに緩和され、その結果新しい州における大規
また、エデカ(EDEKA)
、レーベ(REWE)
模店は、高級生鮮品、駐車場の設置、ファース
に代表されるボランタリー・チェーン(VC)
トフード店の併設など付随的事業部門を伴って
の発達は、個人商店や小規模なチェーンを組織
いるため、売場面積や建設面積は広くゆったり
化し、これらへの商品供給や様々な支援を通じ
している。
て、個人商店の生き残りを一段と容易なものに
1990 年∼1998 年の間に、ドイツにおける
したと言われている。
10,000m2 以上の大規模商業施設は、97→266へ
とほぼ3 倍に増加した。売場面積は3 百万m 2 →
1千万m2 に拡大し、その1/3以上は郊外にある。
また、1998 年には、18 もの新設センターがオ
2.ドイツにおける商業調整
(1)現行商業調整の概要
大規模小売店を規制するのは都市計画の観点
ープンし、うち13 は、人口密集地域にある。
からの連邦法であり、直接規制する法制は採っ
加えて、20 近くが、2001 年までに開店した。
ていない。すなわち、商業施設の設置を規制す
他方、10,000m2 未満の小規模商業施設は、中
るのは、一つは国土整備に関する連邦法および
心市街地活性化への回帰に貢献したと評価され
建設に関する諸法令によってであり、他の一つ
16
2008.9
は、州の地域振興計画等によって明確な対応策
を示すことによるものである。その主たる目的
は、社会経済的要求と環境保全を両立させ、永
続的な国土開発に活用することにある。具体的
には、中心市街地衰退の危険予防(回避)
、近
(図表14)ドイツにおける都市計画調整
州レベル………
{
広域計画
地域レベル……
州計画
州開発プログラム
州開発計画
整合性
私人への
拘束力なし
地域計画
整合性
空間的対象範囲
=日本の県程度
隣商業およびサービスの維持、地元経済の安定
化、うち特に中小企業の事業活動、商業新設
自治体レベル……
{
(立地)の危険に対する環境保全であって、こ
建設誘導計画
(Bauleitplan)
れらは連邦建設法に示された「都市の秩序ある
地区レベル……
Fplan
整合性
Bplan
私人への
拘束力あり
発展および公共の利益に対応した、社会的に適
正な土地の利用を保障する」ためという理念に
沿ったものであると考えられる。
(開発)
(出 所)国土交通政策研究所「地方分権社会における広域的
観点からの都市整備に関する研究」
合には、一般的に大規模店と見なされ、新設、
(2)現行商業調整制度
大型店を規制するのは建設法典(BauGB)
拡張または事業分野の変更は、市町村により規
制される。ただし、建設面積が6,000m 2 を超え
や建築利用令(BauNVO)等の都市計画関連
る時は、建設場所(区域内)について権限を有
法であり、建設許可という単一の認可で小売店
する地域計画当局が介入する。
舗の新設・拡張が認められる。この認可の前提
また、大規模小売店舗の立地規制に関しては、
となっているのが、4 層構造といわれ州計画、
前述の通り広域計画の枠組みの中で調整を行っ
地域計画6、F プラン7、B プラン8で構成され
ている。大規模小売店舗は、原則として中心地
。すな
る都市・地域計画体系である(図表14)
区または地区計画(B プラン)に指定された大
わち、州計画は地域計画を拘束し、地域計画は
規模小売店舗特別地区においてのみ立地を認め
F プランを、F プランはB プランを拘束する関
られ、同特別地区の指定は、自治体レベルのマ
係にあり、F プラン、B プランを策定する市町
スタープランであるF プランにおいて「大規模
村が大型店を規制する権限を有している。
小売店舗特別地域」に指定されている地域に限
各州は国土発展計画の枠内において、それぞ
定されている(建築利用令第 11 条第 3 項第 1
れ独自の規制を制定しているが、規制上限面積
文)
。但し、この地域指定は、自治体の意見が
は州により異なり、小売業は建設面積が
広域的観点から調整されたり、州との協議を重
1,200m 2 を超え、売場面積が800m 2 を超える場
ねたりした上で決定されている。大型店の立地
6 地域計画 州計画と整合するように定められる地域開発計画。対象範囲は、州を5区分した州管区政府の管轄区域全域であり、概ね日本の県に相当する広さである。
7 Fプラン 自治体(市町村)全域について、住宅地、工業地、交通幹線、主要公共施設など、将来の土地利用の大要をを示す。
8 Bプラン 自治体の一部地区を対象に、道路建設や建築に対して拘束力のある指定を行う。詳細な敷地レベルの用途や建ぺい率や容積率、建築線等に関する規制
が示される。
2008.9
17
が可能となる特別地区決定に当たっては、開発
しなければならず、そのうちの幾つかは経済的
による地域の商圏構造への影響が重視されてお
性質を有している。すなわち、消費者ニーズ及
り、直接規制する権限を有する市町村は、これ
び地元経済利益の充足、輸送インフラの順調な
らに関し影響調査を実施しなければならない
作動、環境の尊重、既存商業活動への影響等で
(建築利用令第11 条第3 項第2 文)
。ここで言う
ある。
「影響」とは、公害等の環境への悪影響、イン
フラ整備や交通、自然景観への影響に加えて、
3.現行商業調整制度の評価
商圏内の住民への供給、自治体内または他の自
ドイツの大型店立地手続きは、建設許可とい
治体内の中心市街地や地区センター等への影響
う単一の認可取得のみで可能となるために緩い
についても含まれる。また、商業施設の設置に
ように思われるが、建設プロジェクトを連邦法
対する特別な地域を指定するための基準とし
制に合致させようとする事前行政手続きは、か
て、住民ニーズ及び地元経済の利益(特に中小
なり制約的である。特に、立地市町村の都市計
企業の利益)の充足、輸送及び交通インフラ、
画担当機関が申請を事前に審査し、建設許可証
新設(進出)による影響力圏内にある既存の商
の交付前に商工会議所の意見を求め協議しなけ
業立地にとって脅威(特に、近隣商業にとって)
ればならず、建設面積が6,000m 2 を超える全て
となるか、と言う点が挙げられる他、店舗延べ
の事案に対しては、建設許可証は、州Land レ
床面積が1,200m 2 以上の小売店舗については、
ベルの国土整備に関する権限を有する地域計画
「広域的影響がある」と見做す(建築利用令第
5)
。
11条第3項第3文)点が特徴的である(図表1
この様に、プロジェクトは多数の基準を充足
当局により交付される。地区計画で位置づけが
ない開発案件は許可されず、また地区計画は広
域計画と整合が図られていることから、広域的
(図表15)建築利用令第11条第3項の規定
(第1文)
1.ショッピングセンター
2.大規模小売店舗で、その種類、位置または規模から、国土整備および州計画の目標または都市建設の発展と整備
に対し、単に重要ではないとはいえない程度の影響を与える可能性のあるもの
3.その他の大規模小売施設で、最終消費者への販売および影響の観点から、第2 号に挙げた小売店に比肩するもの
は、中心地区以外では、そのために指定された特別地区においてのみ許可される。
(第2文)
第1 文第2 号および第3 号の意味における影響とは特に、連邦公害防止法第3 条の意味における有害な環境影響、イ
ンフラ施設、交通、第1 文で挙げた小売店の商圏における住民への供給、立地自治体内または他の自治体内におけ
る中心地構造をもった供給地域の発展、地区景観および自然景観、自然収支に対する影響をいう。
(第3文)
第2文の意味における影響は、第1文第2号及び第3号に定める小売店においては、床面積が1,200m2 を越える場合に
は原則として存在すると推定される。
(第4文)
第3 文の規定は、影響が1.200m 2 以下の床面積で存在する場合または1,200m 2 以上の床面積で存在しない場合には、
適用しない。その際には、第2 文で挙げた影響に関しては、特に自治体およびその地区の構造および規模、住民へ
の居住地近隣における供給の確保、店舗の提供品目に配慮しなければならない。
(出所)国土交通政策研究所「地方分権社会における広域的観点からの都市整備に関する研究」
18
2008.9
な観点から適切でない開発案件の実現は不可能
である。
間、小売店舗の新たな開設を規制してきた。
この法律は、小売業に適用される一般的な枠
このように、ドイツの規制はフランスとは異
組みを定めているが、全ての商業者は、商業会
なり、中小小売店の競争条件の保護を目指した
議所が保有する特別登録簿に登録し、幾つかの
ものではないが、1986 年の建設法典改定の際
義務を果さなければならないとする。他方、市
には、プラン策定の際の考慮すべき事項として
町村及び地域当局は、管轄権限内における流通
第1 条5 項8 号に「住民の居住地近くにおける供
網のために振興計画を立案しなければならな
給のための中小企業構造9」という言葉を追加
い。そして当局は、許可する可能性がある(許
(阿部成治著(2001)
)するなど、中小企業への
可し得る)小売の売場面積の大きさ(m 2 )を
配慮がにじみ出ている。
以上の考察から、ドイツの大型店規制策(商
業調整策)は、世上言われるような都市計画的
決定する。この対象となるのは、小売業を開業、
移転、或いは拡大しようとする商業者であり、
商業会議所の許可を得なければならない。
観点のみで行われるのではなく、既存の商業構
規制するのは、人口10,000人未満の市町村で
造、地域経済への影響を考慮すべきこと等の経
計画する400m2 以上の店舗であり、その売場面
済性基準を含んでいることに留意する必要があ
積は、流通業の無秩序な成長を回避し、多数の
ろう。
小規模小売業者を守るためとの観点から検討さ
れる。この法律は、売場面積が400m2 を超える
Ⅴ.イタリア
1.イタリアにおける商業調整策の推移
国内における最初の小売業規制は、1926 年
の“Regio decreto legge No.2174”と言われ、
店舗の開設を殆ど認めなかったことから、新し
い業態の発展を抑制したと言われている。なお、
この法律は、1988 年8 月4 日の政令によって修
正されたが、廃止はされなかった。
全ての商業施設開設に対し、それぞれ自由な判
断で承認または拒絶できる地方評議会から許認
2.現行の商業調整制度
可を得ることを求めた。そして承認手続きにお
現在の小売業はイタリア小売業の競争を推進
ける透明性を高めるため、1971 年新しい国内
し、近代化を促進するために1998 年3 月31 日
法(小売店舗立地法476/1971)を制定し、地
に施行されたベルサーニ(Bersani)法で規制
方評議会は都市計画に従い、新しい店舗の立地
されている。このベルサーニ法は規制措置の目
に対する明確な規制を定めなければならないと
的を、公平な分布と均衡ある(バランスのとれ
定めた。これらの都市計画は、1970年代、1980
た)国土整備を確保することと定め、次いで許
年代及び1990 年代の大半を通じて、すなわち
認可権を有する各地域(州)は、調和の取れた
ベルサーニ(Bersani)法(後述)成立までの
商業施設の発展、住民の利益の保障及び困難地
9 建設法典改定までの間、大規模小売店が非常に増加したものの、都市の縁辺部に立地するものが少なくなく、中心市街地住民への商業サービス等の提
供が十分に行われなかった。この供給の役割を中小企業にも担わせることを明記したものである。
2008.9
19
域や中心市街地と農村地域の活力の維持を目的
小売店舗の開業地の地域委員会が発行する許可
とする、各地域に相応しい基準を定めることが
が必要とされたが、本法施行後は、新設小規模
できるとしている。イタリアでは、州が商業規
店舗には要求されなくなった。ただ、1,500m 2
制措置の中心にあり、流通網発展計画(2 カ年
超の店舗については許可証の発給要求は維持さ
あるいは3 カ年の)を地元当局や業界組織の協
れている。大規模店舗開設者は地域委員会に申
力を得て策定している。自治体は地域の指針を
請する必要があり、地域当局が発出する商業区
尊重して都市計画を作成し、許可を与えるもの
域計画に従って申請が処理されるのである。
1998 年のベルサーニ法によって、かなり厳
である。
ベルサーニ法は3 種類の店舗を定義してい
しい量的規制が経済的および質的基準(商業需
る。①床面積150m2 以下の近隣商業店、②床面
要、現在の商業施設密度、環境への対応)に基
積150∼1,500m2 の中規模店、③床面積1,500m2
づいた規制に替わった。許可申請は、立地予定
超の大規模店、である。なお、住民1 万人超の
の市町村人口数に応じ、定められた中規模店、
都市においては、250m 2 及び2,500m 2 がそれぞ
大規模店の店舗面積が150m2 又は250m2 超の場
れの区分となる。
合に行われる。なお、2001年の改革以降は、決
認可は3 つの種類毎に行われる。すなわち、
定権限は地域当局に委ねられ、地方および市町
近隣商店、中規模店および大規模店毎にである。
村議員は等しく許可プロセスに参加するだけに
規制の上限は自治体の規模により異なる。すな
なった。ただ、地域間においては、大型店立地
わち、住民1万人未満の自治体では、150m2 が、
の許可姿勢に非常に大きな差異があること、お
住民1 万人以上の自治体では、上限が250m 2 と
よび審査基準の質的性質の判断結果に差異を生
6)
。
なる(図表1
じる面がある。
大規模商業組織に対しては、認可は消費者組
織、商業者組織との協議後に、関係自治体、市
3.商業調整制度の成果と課題
町村、地域圏の代表で構成される“Conferenza
イタリアでは特に大規模店舗参入に対する政
dei servizi”と呼ばれる地域委員会の検討を経
治的抵抗が強く、小売業界における集中率は他
て交付される。これらの組織は、市町村が認可
のEU 主要国に比べ非常に低い(2006 年に公表
権限を有する近隣商店に対してと同様に、中規
されたEurostat のデータによると、2002 年に
模店に対しても意見を述べることができる。
おける住民1 万人当たりの小売店舗数は、イタ
ベルサーニ法以前、店舗の開設に当たっては、
(図表16)店舗規模・人口別規制基準
リアでは124 店で、フランスでは62 店、ドイツ
および英国はそれぞれ30 店、34 店であった)
。
近年小売業界が多くの構造変化を被ってきた
人口10,000人未満の
市町村
人口10,000人以上の
市町村
0∼150m2
0∼250m2
中規模店
150∼ 1,500m2
250∼ 2,500m2
開)によるばかりでなく、新業態の小規模店が
大規模店
1,500m2超
2,500m2超
多数増加し続けているためであり、その多くは
近隣商業店
20
ことは広く認識されている。大型店の増加(展
2008.9
単一の卸売業者が主宰するボランタリーチェー
ンの小規模店、フランチャイジー、共同購買グ
Ⅵ.その他EU加盟国の商業調整制度
ループ、小売協同組合などである。これらの新
スペインにおいては、1996 年商業法が自治
業態の小売店は大規模店舗だけでなく、チェー
州に商業施設規制に関する全ての権限を委ねて
ン組織の小規模店を立ち上げており、大規模店
いる。国は商業施設の許可申請の下限
(2,500m2)
や伝統的な家族経営店(いわゆる、パパママス
を定め、許可時に考慮すべき重要な2つの基準、
トア)と共存し、競争している。
すなわち関係区域における相応しい商業施設の
この事実は、大型店規制は進出店舗面積で
存在および既存商業構造への新施設の影響を考
判断するのではなく、進出店舗経営事業者の資
慮しなければならないとした。自治州の大部分
本規模を基準にすべきことを示していると言え
は、国の規制措置を補完し、これに満たない面
よう。
積も許可の対象にしている。この上限は自治州
ベルサーニ法の重要性は、その目的とは逆に、
によって異なり、同時に立地自治体の人口数に
大型店に対する参入障壁を強化することであっ
依拠している。例えば、住民1 万人未満の自治
たと広く信じられている。第一に、地域当局は
体では、許可申請の下限は、Balearesの400m2
地方規制を制定公表するための最終期限を設け
からMadrid の1,500m 2 とばらつきが大きく、
なかったために、1998 年3 月から1999 年まで
市町村により非常に異なっている。
の間、イタリアでは新たな開店の許可は出され
なお、商業担当の各自治州の機関が大規模商
なかったと言われる。第二に、イタリアの20
業施設の商業許可証を、大抵の場合は、行政当
地域のうち17 地域は、当該地域に開店する店
局および関係業界の代表で構成される規制評議
舗の上限数または小売床面積の上限を厳格化す
会の意見を聞いた後に交付する。
ることにより、大型店の増加に対する重要な規
一方、ベルギーにおいては、極めて制限的な
制を導入した。残りの 3 地域、すなわち
1975 年の法律が2004 年に改正され、認可申請
Piemonte、Emilia Romagna、Marche の各
の基準が1,000m 2 から400m 2 に引き下げられた
州は、新店舗の比較的自由な参入を認める申請
ものの、決定手続きは簡単になった。すなわち、
手続きを採用しているため、一般的なガイドラ
1,000m 2 未満のプロジェクトは、市長・助役会
インを設けるにとどまった。その結果、イタリ
(CBE)の意見だけに従うこととなり、1,000m2
ア小売業界は、大型店の増加を何処まで制限す
以上のプロジェクトは、流通業国内社会経済委
るかによって異なる地域法が存在し、それによ
員会(CSEND)の意見に従う。書類審査期間
って現在規制されている。なお、ベルサーニ法
は、70 日から50 日へ短縮され、認可はその期
は地域の区域計画を定めているのではなく、地
間を超えた場合には取得できたものと見なされ
元当局に参入を規制する機会を与えているとの
る。20%及び300m2 未満の拡張は、簡略審査で
指摘がある。
行う。総合的な認可基準は、フランス法制の基
準(指標)
、すなわち、消費者の利益、雇用へ
2008.9
21
の影響、既存商業への影響等、に近い。
ローバル化の下に国内産業構造としての効率性
を優先させるのかの相違によるとも言えるであ
Ⅶ.EU流通政策の現状・課題
ろう。
∼商業調整を中心として∼ 商業はそれぞれの国の歴史、文化、生活観念
現今のEU 流通政策の課題として、2 つが挙
等を反映する産業であるが、EU では大きく二
げられる。一つは、大規模小売店舗(大型店)
つの類型が可能である。商業調整について規制
の出店規制であり、他の一つは、日曜営業規制
色の強い大陸南部諸国と英国および大陸北部諸
である。この2 つの規制は、程度の差こそあれ
国である。この相違は、つまるところ小売業を、
EU 主要国のどこでも行われており、中小商業
社会のあり方をどの様に考えるか、如何なる社
に大きな影響を与えている。
会を目指すのかに帰着する。
本稿では、出店規制のみを採り上げているが、
例えば、出店(開店)の許認可権限について、
大型店の出店規制については、経済的社会的規
フランスは中央集権的であるのに対し、その他
制も伴うものと、都市計画上の規制だけのもの
の国では分権的であり、立地市町村あるいは関
があり、前者は経済法が主体となり、後者は建
係自治体に決定権限がある。しかし、イタリア
設関連法が主体を成す。フランスやイタリアが
は多くの関係する自治体で構成される地域圏会
前者に属し、英国とドイツが後者に分類される。
議が決めるものであり、他の英国やドイツほど
こうした諸法による規制・調整の理念は、つ
分権的ではなく、商業調整の理念や出店(開店)
まるところ、如何なる社会を目指すのかの相違
許可の取得手続きはフランスと同一である。し
に基づくものと言えよう。経済性と社会性の適
たがってフランスとイタリアは、地域商業につ
切な均衡の保持によってEU の基本理念である
いての存在意義、認識を共有していると考えら
域内市民の結束・連帯social and economic
れる。
cohesion に忠実であり続けるのか、経済のグ
明示的であれ、黙示的であれ、大規模小売店
(図表17)EU主要加盟国における出店規制の概要
国名
フランス
英国
ドイツ
イタリア
主たる根拠法令
ラファラン法
都市農村計画法
建設法典
建築利用令
ベルサーニ法
大型店出店規制
舗 は 新 設・拡 張 は
300m2超から要認可。
6,000m 2 超は公開調
査を義務付け。
地方自治体は出店計
画が当該地域計画に
適合しているか否か
で判定。
経済的規制
商業調整型
社会的規制
都市計画型
社会的規制
都市計画型
経済的規制
商業調整型
380,380
207,513
249,004
730,113
規制類型(中核)
小売店数
出店は、
中心地区およ 住民数により150m2超
びBプランで指定され (1万人未満)、
250m2
た特別地区に限定。 超( 1万人以上 )から
規制。
人口(万人)
6,090
6,040
8,250
5,880
小売店密度*
62.4店
34.3店
30.2店
124.1店
*住民1万人当りの小売店数
(数値データ出所) Eurostat( 2006/8)
:Retail trade in the European Union
22
2008.9
に対して厳しい姿勢をとっている国々は、商店
(図表19)出店(開店)許可の取得
英国
を買物するだけの場所、単なる商業機能と捉え
ずに、売買を通じての地域住民同士のコミュニ
ケーションを図る場、地域の一体感、連帯感が
フランス ドイツ
イタリア
①建設許可申請は事前に
出店許可取得が前提条件
×
○
×
○
②建設許可の取得は出店許可
との同時申請が可能
○
×
○
×
感じられる、醸成される、育まれる場として尊
(図表20)出店(開店)の許認可権限(機関)
重する。結果として、地域の顧客に安心感を与
英国
え、満足感を高め、その結果地域住民は固定客
フランス ドイツ
イタリア
①中央集権的(中央政府) ×
○
×
×
○
×
○
○
②分権的(関係自治体)
となることが多い。つまり、近隣商業と言われ
る地元の小規模小売店は、
「地域社会のインフ
ラ」としての役割を果たすのである。商業規制
おわりに
が厳しいと評価されるフランスでは、近隣商業
これまで見たように、EU における商業調整
が人間的な規模で営まれ、人々に近く、日常生
には異なる大きな立場があり、理念では英国を
活の一部を成し、消費者は、これら近隣商業者
典型とする市場重視主義VS フランスを典型と
と親密な関係を構築していることから、その存
する社会的経済重視主義が、規制類型では英国
在意義は高く評価されている。
およびドイツの社会的規制VS フランス及びイ
ただ他方では、大規模小売店に対して厳しい
タリアの経済的規制、及び双方を併用する立場
姿勢をとることが、消費者の利便性や流通の効
が存在する。そして手続き的には、大型店規制
率性を妨げることになるかも知れないが、大型
(商業調整)を当局による単一認可で行うのか、
店の出店と近隣商業の維持の、どちらを優先す
るのか、或いは大規模小売店と近隣商業をどう
複数の認可で行うのかの差異が生じている。
しかし大規模小売店の開設を認可する際に、
両立させるのかは、それぞれの国民が自国の商
地域経済に及ぼす影響等の経済要因や、多様な
業をどの様に考えるかにかかっている。
商業形態間の均衡、流通の多元性と地域の近隣
これまでの論述を整理すると、図表18∼20
のようになるだろう。
商業、中小企業への十分な配慮を求めるなど、
フランス、イタリアは勿論のこと、単一認可・
社会的規制で商業調整を行う国とされる、英国
ドイツにおいても同様の措置が採られている。
各国とも、大規模小売店すべてを否定し規制
(図表18)調整政策の理念(規制の視点)
英国
フランス ドイツ
イタリア
しようとしている訳ではない。中心市街地に立
①公正な競争を阻害
○
○
○
○
インフラの認識
②社会(的)
×
○
△
○
地し、そこに街とともに存在してきた在来小売
③独立小売業者の保護
×
○
△
○
店を駆逐しない大型店は認められる。特に、地
(注)○→当該の視点がある、×→当該の視点がない、
△→どちらとも言えない。
元の中小商店を主体とする近隣商業を「地域社
会のインフラ」と考え、その役割を評価する立
場から、多様な商業形態間の均衡(バランス)
、
2008.9
23
共存が尊重されるべきとする。そこには、国内
必要とされる当局の認可は、従来の300m2 に代
の何処に住んでも十分な生活条件が確保される
わり1,000m 2 からだけとなる。しかし、当初案
べきこと、EU 市民は域内の如何なる場所に居
のLMEが事前許可を廃止しようとしていた300
住しようとも、等しく利益を享受する権利があ
∼1,000m 2 の店舗開設についても、人口2 万人
るとする、EU の基本精神である社会的経済的
未満の市町村にとっては大規模小売店の立地の
結束を実現しようとする姿勢が窺われる。
影響が大きいことから、市町村長やEPCI(自
治体間協力公的組織)議長は、大規模小売店出
店計画が法律で規定されている持続的な発展や
(補遺)∼Ⅱ.フランス 4.今後の課題と展望∼
アタリ委員会は2008 年1 月23 日、Sarkozy
国土整備に関する新たな審査基準に照らし懸念
がある場合には、CDAC(商業整備県委員会)
大統領及びFillon 首相に提出した最終報告にお
を開催し、同委員会の意見を徴することが出来
いて、フランス経済改革のために316 の提案を
るとした。
行い、フランス政府は同提案に基づき同年5 月
また、当初案が廃止した義務を復活させる2
2 日、経済近代化法(LME)として国民議会に
つの修正を満場一致で可決した。すなわち、中
提出した。
心市街地における事業活動の振興によって人口
このうち、流通に関する主要内容は、①大規
密集地域の均衡回復を行うこと、及び農村地域
模小売店開設条件の緩和、②大規模小売店と納
および山岳地域において商業施設は事業活動を
入業者間における価格決定(交渉)の自由化、
維持すべきことである。
であったが、①については野党、中小企業団体
なお、SCOT(広域統合計画)を持っている
等のみならず、与党内部、特に上院議員の強い
自治体は、管轄地域の商業都市計画に関する規
反対に遭い、上院、国民議会それぞれ7 名の同
則を定めることができ、SCOT に適合しない場
数議員からなるCMP(合同調停委員会)の協
合は、大規模小売店の進出に歯止めをかける役
議を経て大幅な修正を迫られた。
割を果たすことが期待されている。
すなわち、①小売店舗を開設するのに今後も
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