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女性の「食ビジネス」が地域経済を元気に 有馬 喜代史 1 はじめに 地場

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女性の「食ビジネス」が地域経済を元気に
有馬
1
喜代史
はじめに
地 場 産 業 の 発 展 、企 業 の 誘 致 、観 光 の 振 興 、商 流 の 改 善 等 、地 域 経 済 活 性 化 に
向 け こ れ ま で に 数 多 く の 事 業 や 施 策 が 実 施 さ れ て き た 。現 在 も 本 県 経 済 を さ ら に
元気あるものとするために効果的な施策が期待されている。
1990 年 代 に 青 森 県 の 県 民 所 得 は 鹿 児 島 県 を 大 幅 に 上 回 っ て い た 。 し か し 、 わ
ず か 10 年 余 り 後 の 2002 年 に は 逆 転 し て し ま っ た 。そ の 要 因 と し て 食 品 製 造 分 野
の伸び率に大きな差が出たことが明らかにされている。*1
両 県 と も 農 林 水 産 物 の 大 産 地 で あ る が 、そ の 経 済 構 造 に は 違 い が み ら れ る 。青
森 県 の 食 料 品 製 造 出 荷 額 は 3,040 億 円 程 度 で 、 県 全 体 の 製 造 業 出 荷 額 の 20.6%
で あ る の に 対 し て 、 鹿 児 島 県 の そ れ は 34.6% と な っ て い る こ と か ら も 分 か る 。
*2
そうした背景を念頭に置きながら、本論文では経済規模はまだ小さいものの、
着 実 に 拡 大 し 続 け て き た 農 村 女 性 起 業 に よ る「 食 ビ ジ ネ ス 」の 可 能 性 を 探 る こ と
とする。
農 村 女 性 は 農 産 物 の 生 産 は も と よ り 、直 売 所 運 営 や 加 工 食 品 開 発 販 売 な ど で こ
れ ま で 数 多 く の「 食 」に 係 る ビ ジ ネ ス モ デ ル を 作 り 上 げ て お り 、今 な お 相 当 な 潜
在力を秘めている。
こ れ ら の 力 を 顕 在 化 さ せ 、ス テ ッ プ ア ッ プ の 道 筋 を 明 ら か に し 、閉 塞 感 の 漂 う
地域経済に活力をもたらすのがこの提案のねらいとするところである。
筆 者 は 、 2014 年 度 に 「 農 村 女 性 起 業 」 の 視 点 か ら 「 次 世 代 に つ な ぐ 農 村 女 性
の 6 次産業化の成立要件」をテーマとして青森県内を対象に調査研究を行った。
これらの結果*3 を主たる論拠として、地域経済活性化へのアプローチとその
環境整備、事業の持続的発展シナリオについて提言する。
2
青森県における農村女性起業「食ビジネス」の現状と可能性
最初に調査研究の中で明らかにできた青森県内の農村女性起業の「食ビジネ
ス 」 の 現 状 と 可 能 性 に つ い て 述 べ る 。 本 調 査 は 起 業 活 動 を 展 開 し て い る 43 経 営
を対象に、アンケートもしくは面談により実施・分析を加えたものである。
表1
(1)起業の「動機は善なり」
最 も 注 目 し た い の は 、起 業 に 取 り 組
ん だ 理 由( 複 数 回 答 を 可 と し た )で あ
る 。経 済 面 と 社 会 面 の 2 つ に 大 別 さ れ
る 。経 済 的 理 由 で は 、農 産 物 の 高 付 加
価 値 化( 84% )、家 の 所 得 向 上( 30% )、
自 由 に な る お 金 が ほ し い( 26% )が 主
である。
一 方 、社 会 的 理 由 で は 安 全 安 心 な 食
起業の理由(複数回答)
理
由
割 合( % )
農産物に付加価値をつける
84
安全安心な食を提供したい
58
地域社会に貢献したい
33
家の所得を向上させたい
30
地域内に働く場を提供したい
28
自由になるお金を得たい
26
技術・ノウハウを生かしたい
21
の 提 供( 58% )、地 域 社 会 へ の 貢 献( 33% )、地 域 内 に 働 く 場 の 提 供( 28% )を 挙
げ て い る 。女 性 起 業 者 は 地 域 や 社 会 に 貢 献 す る 思 い を 強 く 持 っ て い る こ と が 極 め
て特徴的である。
( 株 )京 セ ラ 会 長 稲 盛 和 夫 氏 は 仕 事 を 進 め て い く 上 で「 動 機 は 善 な り や 、私 心
な か り し か と 繰 り 返 し 自 ら に 問 う 、自 分 の 利 益 や 都 合 、恰 好 な ど と い う も の で は
な く 、自 他 と も に そ の 動 機 が 受 け 入 れ ら れ る も の で な け れ ば な ら な い 」と 著 書 で
述べている。*4
女性起業者はまさに「動機は善なり」なのである。
(2)売上額はまだまだ伸ばせる
青 森 県 内 の 農 村 女 性 起 業 数 は 表 2 の と お り で 、2000 年 か ら 2010 年 ご ろ に か け
て 右 肩 上 が り で 伸 び て き た 。 2010 年 以 降 は 伸 び 率 が 鈍 化 し て い る も の の 、 わ ず
か な が ら 増 加 し て い る 。 2013
年 の 県 全 体 で の 売 上 金 額 は 57
億 円 程 度 に 達 し て い る 。 * 5,6
起業活動の 8 割は加工食品
の製造、直売所での販売を主
表2
区
青森県内の農村女性起業数
分
2000 年
2005 年
2010 年
2013 年
190
263
353
374
―
135
134
(106)
起業数
前 5 年 比( % )
たる活動としており、道の駅
出典:青森県農林水産政策課
等に設置された農産物直売所の整備と相まって飛躍的な伸びを見せてきたとも
いえる。
そ の 一 方 で イ ン シ ョ ッ プ( ス ー パ ー 等 で の 直 売 コ ー ナ ー )や 、通 販 や ネ ッ ト 販
売への取組みはそれぞれ2割程度にとど
表3
農村女性起業の活動内容
ま っ て い る 。( 表 3 )
販売方法の多様化にチャレンジすれば
「 食 ビ ジ ネ ス 」の 売 上 金 額 を 増 加 さ せ る こ
とが可能なのだ。
(3)小さく産んで大きく育てる
起 業 時 の 所 要 資 金 は 73% が 100 万 円 以
下 と 少 額 で 、自 分 の 小 遣 い や 家 人 か ら の
借 入 れ で 調 達 し て い る 。( 図 1)
(複数回答)
起業活動の内容
割合(%)
食品加工製造
81
直売所販売
81
農産物生産
44
農作業・製品加工体験
28
インショップでの販売
21
通販やネット販売
18
年 間 売 上 額 は 300 万 円 以 下 が 56% 、300
万 円 以 上 が 44% と な っ て い る 。
1,000 万 円 以 上 の 経 営 が 11% に 達 し て
い る こ と を 注 目 し て お き た い 。( 図 2)
図1
起業時の所要資金額
表 4 直 面 し て い る 課 題 (複 数 回 答 )
割
直面している課題
14%
19%
図2
11%
22%
34%
合
(%)
100万円以下
100~300万円
商品開発技術力が弱い
24
300~500万円
販路拡大が進まない
21
500~1000万円
資金調達が難しい
14
1000万円以上
起業活動にもっと力を入れ
年間売上額
たいが、時間的・労力的余
裕がない
事業承継者が確保できてい
女 性 起 業 者 の 57% は 「 起 業 活 動 に も っ と
ない
力 を 入 れ た い が 、時 間 的 、労 力 的 余 裕 が な い 」 組 織 内 の 意 見 集 約 に 時 間 を
と い う 問 題 を 抱 え て い る 。( 表 4)
要する
女性の多くは農業経営主のパートナーと
57
組織運営の知識が不足
40
7
14
して農業生産に携わることが最優先になっ
ていることがその理由と思われる。
し か し 、農 業 経 営 は 農 業 生 産 に と ど ま ら ず 、 表 5
起業活動の将来の意向
加工や販売などを加えたいわゆる 6 次産業
化で活路を見出すことができる。
それらの主役として期待される女性起業
(複数回答)
将来の意向
割 合( % )
現状維持
45
者 は 、 そ の 74% が 現 在 の 起 業 活 動 を 現 状 維
現体制のままで規模拡大
24
持または規模拡大をめざそうとしているこ
法人化して規模拡大
とからも地域経済への波及効果をもたらす
規模縮小
12
こ と は 十 分 に 可 能 で あ る と 判 断 で き る 。( 表
次世代への継承
45
5)
廃業を希望
10
3
5
「食ビジネス」拡大による地域経済活性化へのアプローチ(提言)
農村女性のビジネスモデルをもとにして地域経済活性化に向けたアプローチ
の方向性を示す。
女 性 起 業 者 は 懐 が 深 い 。そ の 理 由 は 起 業 動 機 が 利 益 追 求 に と ど ま ら ず 、社 会 貢
献 的 意 義 を も 強 く 意 識 し て い る か ら で あ る 。こ の こ と が 起 業 活 動 を 持 続 で き る 大
き な 要 因 と な る 。利 益 至 上 主 義 だ け で は 、経 営 が 行 き 詰 っ た 時 の 事 業 中 止 の 決 断
も 早 い 。と こ ろ が 、起 業 活 動 を 通 じ て 地 域 社 会 と 共 に 伸 び て い こ う 、安 全 安 心 な
食 品 を 提 供 し 続 け よ う 、地 域 の 雇 用 の 場 を 増 や そ う と の 意 識 が 強 い こ と か ら 、事
業の持続性が期待できるのである。
こうした起業は社会的課題を解決するためのソーシャルビジネスに類似する
経 済 活 動 で あ る 。 2006 年 に ノ ー ベ ル 平 和 賞 を 受 賞 し た バ ン グ ラ デ シ ュ の ム ハ マ
ド・ユヌス氏が提唱した活動に通じるものがある。*7
あ き ら め ず 、へ こ た れ ず 、し な や か に 女 性 な ら で は の 経 営 力 を 発 揮 し て く れ る
ことが期待できる。経済活性化に向けたポイントを述べる。
(1)販売チャネルの多様化、需要に応えた商品開発で地域外からお金を稼ぐ
全 国 的 に 農 産 物 直 売 所 は ほ ぼ 飽 和 の 様 相 を 呈 し て い る 。道 の 駅 に 併 設 さ れ た 直
売 所 は 日 常 の 食 材 調 達 先 と し て 利 用 す る 消 費 者 が 増 え て い る 。し か も そ の 多 く は
できるだけ国産食材を購入したい意向を持っていることが明らかにされている。
*8
こうした動きを先取りしていくことが重要である。具体的に挙げると、
① 新鮮で安全安心な農産物やこれらを原料とした加工食品の品ぞろえを充実
し絶え間なく店頭に供給すること
② 地域社会で高齢化が進行していることに伴い、食事の配達を希望する世帯
への食事サービスを提供すること
さらには地域外への販売拡大を視野に入れて、
③ 急速に拡大しているネット市場で手づくり感あふれる「ふるさと食品」を
販売すること
④ 付加価値の高い機能性食品、女性起業者間でコラボレーションした食品を
開発販売すること
⑤ 県内外の直売所間で商品を相互に販売し合う物流を作り上げること
な ど に よ っ て 、販 売 チ ャ ネ ル を 広 げ 域 外 か ら の お 金 獲 得 の 動 き を 加 速 し て 売 上
額拡大をめざすことができる。
( 2 )「 食 ビ ジ ネ ス 」 で 地 域 内 雇 用 を 増 や す
女性起業の得意分野は、加工食品の製造販売である。女性たちは農業生産(1
次 産 業 ) に と ど ま ら ず 、 加 工 食 品 の 製 造 ( 2 次 産 業 )、 農 産 物 や 加 工 食 品 の 販 売
( 3 次 産 業 )を 相 互 に 組 み 合 わ せ た 6 次 産 業 化 の 先 駆 け と な る ビ ジ ネ ス モ デ ル を
作 り 上 げ 、 す で に 57 億 円 以 上 の 売 上 実 績 を 持 つ 。
女 性 起 業 が こ う し た 活 動 を 先 駆 的 に 行 っ て き た 背 景 に は 、筆 者 の 調 査 に よ っ て
市町村やJAが加工場や製造機器類を起業者に貸付
けたことが呼び水になっていることが明らかに
表6
女性起業者の土地と建物
なっている。今後、行政・農業団体サイドが施
の所有状況
策を工夫することで女性起業を促進させること
土地等の所有状況
割合(%)
が 可 能 で あ る こ と を 示 す も の で あ る 。( 表 6)
双方とも自己所有
48
双方とも借入れ
42
その他
10
県 に よ る と 食 品 製 造 出 荷 額 100 億 円 の 需 要 が
増 加 し た 時 の 雇 用 増 加 数 は 、1,258 人 で あ り 、生
産 誘 発 効 果 は 0.72 倍 で 、り ん ご 0.57 倍 、米 0.55
倍を上回ると試算されている。*9
こ の こ と か ら も 、食 ビ ジ ネ ス は 雇 用 の 吸 収 力 が 高 く 、経 済 へ の 波 及 効 果 が 大 き
い業態であることが分かる。
現 在「 食 ビ ジ ネ ス 」に 取 り 組 ん で い る 女 性 起 業 者 の 4 人 に 3 人 は ビ ジ ネ ス の 継
続 や 拡 大 を 望 み 、事 業 意 欲 に 満 ち 溢 れ て い る の で 、地 域 内 で の 雇 用 拡 大 効 果 が 期
待 で き る 。( 表 5)
( 3 )「 食 ビ ジ ネ ス 」 へ の 新 規 取 組 み を 加 速 す る
県 内 に は「 食 ビ ジ ネ ス 」の モ デ ル 的 な 事 例 が い く つ も あ る 。そ の ひ と つ に 、起
業 当 初 は 少 人 数 の グ ル ー プ( 任 意 組 合 )か ら ス タ ー ト し 、売 上 額 が 小 さ か っ た も
の の 、徐 々 に 売 上 げ が 伸 び た こ と か ら 企 業 組 合 に 移 行 し て さ ら に 経 営 発 展 さ せ て
いる取組みがある。
豆 腐 、み そ の 製 造 販 売 、惣 菜 と 食 事 の 提 供 、加 工 食 品 の 製 造 体 験 受 け 入 れ な ど
を 主 な 業 務 と し 、年 間 売 上 額 は 2,000 万 円 以 上 に 達 す る 。法 人 成 り 以 降 は 資 金 調
達 が ス ム ー ズ に な っ た ば か り で は な く 、利 益 拡 大 と 地 域 貢 献 へ の 意 識 が 一 段 と 高
まったと経営者は述懐している。
筆 者 の 調 査 で は 、女 性 起 業 開 始 時 に 自 ら の 小 遣 い を 資 金 と し て 起 業 し た 経 営 の
43% は 年 間 売 上 額 が 300 万 円 以 下 で あ る 。少 額 で し か も 自 前 資 金 で 起 業 し た 場 合
に は 自 己 完 結 型 の 事 業 と な り や す く 、し か も 事 業 拡 大 へ の 意 欲 が 弱 く な る 傾 向 に
あ る 。( 表 7)
し た が っ て 手 元 資 金 は 運 転 資 金 と し 、設 備 資 金 は 借 入 れ で 調 達 す る こ と を 勧 め
たい。その方が経営自立の意識が高まる。
この点に関して、金融機関
には理解ある対応を求めたい。
行政などの指導機関は「資金
表 7
年間売上額と資金調達方法
年間売上額
自分の小遣いを資金
とした割合(%)
借入れはリスクが大きい」と
売 上 額 300 万 円 以 下
43
いった意識を変える必要があ
売 上 額 300 万 円 以 上
21
る。
緻 密 な 事 業 計 画 、 資 金 調 達 計 画 を 指 導 し 、「 食 ビ ジ ネ ス 」 へ の 新 規 参 入 を 促 進
してもらいたい。
4
女性による「食ビジネス」参入拡大への周辺環境の整備(提言)
「 食 ビ ジ ネ ス 」を 拡 大 す る 際 に 予 想 さ れ る 現 実 的 な 課 題 に 対 し て ど の よ う に 対
応 す べ き か を 整 理 し て お く 。県 内 の 成 功 事 例 と な っ て い る「 食 ビ ジ ネ ス 」起 業 者
に 面 談 調 査 し た 結 果 を も と に し て 、課 題 解 決 に 向 け た 周 辺 環 境 の 整 備 の 方 向 性 に
ついて提言する。
(1)女性起業活動や経営の多様性について周辺関係者の理解を深める
農 村 女 性 の 起 業 と 経 営 継 続 に は 家 族 の 理 解 が 欠 か せ な い 。先 に 述 べ た 企 業 組
合 の 代 表 者 は 次 の よ う に 述 懐 し て い る 。「 起 業 時 は 農 作 業 を 犠 牲 に し て 食 品 製
造 に 取 り 組 ん だ こ と も あ り 、家 族 か ら は 理 解 が 得 ら れ ず 、家 庭 内 が 険 悪 に な る
こ と も あ っ た 。経 営 が 軌 道 に 乗 っ て か ら は 、家 族 が 事 業 を 手 伝 い 、心 配 し て く
れ る よ う に な っ た 。 そ こ に 至 る ま で 長 か っ た 。」
農 業 の 6 次 産 業 化 は 、農 業 生 産 一 辺 倒 か ら 経 営 の 多 様 化 を 進 め る こ と に よ り 、
個 々 の 経 営 は も と よ り 、地 域 経 済 の 活 性 化 に も 寄 与 す る 取 組 み で あ る 。家 族 を
含 め た 関 係 者 の 理 解 な く し て 女 性 の「 食 ビ ジ ネ ス 」へ の 挑 戦 は 一 歩 前 に 踏 み 出
せ な い 実 情 に あ る の も 事 実 で あ る 。青 森 県 の 農 業 生 産 額 は 東 北 一 の 伸 び 率 で あ
る 。こ れ を ベ ー ス と し て 高 付 加 価 値 型 の「 食 ビ ジ ネ ス 」を 展 開 す る こ と で 更 に
優位性を発揮できる。
男女共同参画社会の実現を目指す上でも女性起業活動への理解不足が阻害
要因になることは避けなければならない。
( 2 )「 食 ビ ジ ネ ス 」 を 誘 発 で き る よ う 自 治 体 等 が 遊 休 施 設 を 提 供 す る
「 食 ビ ジ ネ ス 」を 起 業 す る に 当 た っ て は 食 品 加 工 施 設 や 製 造 機 器 の 装 備 が 欠
か せ な い 。こ れ を 誘 発 す る に は 、自 治 体 や J A な ど が 所 有 し て い る 土 地 や 建 物 、
施 設 等 を 提 供 す る こ と が 効 果 的 で あ る こ と は 先 に も 述 べ た と お り で あ る 。自 治
体 や J A の 合 併 、学 校 の 統 合 等 に よ っ て 生 じ た 遊 休 施 設 を「 食 ビ ジ ネ ス 」の 拠
点 と し て 希 望 者 に 貸 し 出 す こ と を 制 度 化 し て ほ し い 。初 期 投 資 の 軽 減 に つ な が
り、事業参入が促進されることが期待できる。
( 3 )「 食 ビ ジ ネ ス 」 が 自 立 ・ 持 続 的 発 展 で き る 資 金 を 用 意 す る
事 業 の 自 立 を 加 速 さ せ 、発 展 さ せ て い く た め に は 、借 入 資 金 を 円 滑 に 調 達 す
る こ と が 求 め ら れ る 。県 内 の 金 融 機 関 に は 、農 村 女 性 起 業 の よ う な ス モ ー ル ビ
ジ ネ ス に 対 す る こ れ ま で に な い 融 資 ス タ ン ス を 求 め た い 。そ の 際 の 参 考 例 と し
て ム ハ マ ド・ユ ヌ ス 氏 が 創 設 し た「 グ ラ ミ ン 銀 行 」が ソ ー シ ャ ル ビ ジ ネ ス へ の
支 援 の た め に 設 け た マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト 、イ ン ド が 女 性 に よ る 女 性 の た め の 銀
行 と し て 2013 年 11 月 に 発 足 さ せ た「 バ ラ テ ィ ヤ・マ ヒ ラ・バ ン ク 」の ス タ イ
ル を 学 び 、女 性 起 業 の 支 援 強 化 を 切 望 す る 。金 融 機 関 が 地 域 密 着 型 の 金 融( リ
レ ー シ ョ ン・バ ン キ ン グ )を 目 指 す こ と を 標 榜 し て 久 し い の で 、こ う し た 要 請
に応えることを期待したい。
す で に 、先 行 事 例 と し て 広 島 銀 行 と 日 本 政 策 金 融 公 庫 な ど が 、ソ ー シ ャ ル ビ
ジ ネ ス を 支 援 す る 目 的 で「 ソ ー シ ャ ル ビ ジ ネ ス 支 援 ネ ッ ト ワ ー ク ひ ろ し ま 」を
設立し、起業家を手助けする動きが出ていることを付しておく。
(4)指導機関・団体は「食ビジネス」への意識を変える
「 食 ビ ジ ネ ス 」で 安 定 的 な 収 益 を 得 る こ と は 、地 域 経 済 発 展 へ の 貢 献 に つ な
が る 。公 的 指 導 機 関 の 一 部 に は 私 企 業 が 利 益 を 得 る 活 動 に 対 し て 腰 の 引 け た 対
応 に な り 、営 利 活 動 へ の 指 導 の 関 与 は 最 小 限 に と ど め る べ き と の 風 潮 が み ら れ
る 場 合 が あ る 。今 日 の 地 域 経 済 を 考 え た 時 、指 導 者 層 が そ の よ う な 意 識 を 持 っ
て い て は 地 域 経 済 を 飛 躍 さ せ る こ と は 難 し い 。意 識 を 切 り 替 え 、地 域 貢 献 、ソ
ー シ ャ ル ビ ジ ネ ス の 推 進 と い う 観 点 に 立 っ て 、「 食 ビ ジ ネ ス 」 を 積 極 的 に 支 え
てほしい。
5
まとめ
農 村 女 性 起 業 に は 「 年 間 売 上 額 300 万 円 の 壁 」 が あ る 。「 年 間 売 上 額 300 万
円 」以 上 の 経 営 で は 事 業 承 継 者 を 確 保 し 、次 世 代 に 事 業 を 持 続 さ せ た い と の 意
向 が 格 段 に 強 く な る こ と を 明 ら か に で き た 。( 表 8)
こ の よ う に 経 営 の 発 展 過 程 で 生 じ て く る 意 識 変 化 を 踏 ま え 、県 内 で 持 続 可 能
な「食ビジネス」の形成に向けて官民が協力した指導が必要になる。
経営段階に応じた大まかな発展シナリオを示すと次のようになる。
① 事業開始時または経営発展段階に応
じ て 年 間 売 上 額 目 標 300 万 円 に 達 す
るまでの事業計画・資金計画の立案
を官民関係者、特に公的指導機関、
金融機関が徹底指導する。
表8
年間売上額と事業承継者
がいる割合
年間売上額
割合(%)
売 上 額 300 万 円 以 下
26
売 上 額 300 万 円 以 上
68
② 事業者は商品開発力、販売力、経営
管理力を養い、事業計画の達成に向けた経営を展開する。
③ 年 間 売 上 額 300 万 円 達 成 後 、事 業 承 継 者 の 育 成( 職 場 内 研 修 等 の 開 始 )
に 着 手 、事 業 承 継 候 補 者 と 共 に 中 長 期 事 業 計 画( 5~ 10 年 先 )を 立 案 ・
実行する。
④ 計画に即して経営の法人成りを目指し、従業員等とも経営方向に関す
る意識を共有する。
⑤ 金融機関や専門家等の指導を得ながら、法人成りし、社会的信用力を
得て経営を拡大させる。併せて事業承継者が自らの経営管理力を向上
させ持続的発展をめざす。
と い っ た ス テ ッ プ を 踏 む こ と に よ っ て 着 実 に「 食 ビ ジ ネ ス 」を 発 展 さ せ 地 域 経 済
の活性化に結び付けることができる。
改 め て 、 今 な ぜ 女 性 な の か 。「 食 ビ ジ ネ ス 」 の ベ ー ス と な る 加 工 技 術 ( 調 理 技
術 )を 持 ち 、食 へ の こ だ わ り や 知 識 が 豊 富 で あ る こ と 、直 売 所 の 開 設 や ネ ッ ト 販
売 な ど に よ っ て「 食 ビ ジ ネ ス 」へ の チ ャ ン ス が 格 段 に 増 え て き た こ と 、経 営 は し
な や か で ね ば り 強 く 、そ し て 何 よ り も 地 域 社 会 貢 献 的 意 識 が 強 い こ と な ど 複 数 の
要因を挙げることができる。
県 内 女 性 起 業 者 の 活 動 を 活 発 化 さ せ る こ と に よ り 、地 域 経 済 は 一 段 と 元 気 を 取
り戻すことができるのである。
参考文献
1
青森県
( 2007)
「 平 成 18 年 度 版 青 森 県 社 会 経 済 白 書 」
2
経 済 産 業 省 ( 2015)
「 平 成 25 年 工 業 統 計 調 査 」
3
有 馬 喜 代 史 ( 2015)
「 平 成 26 年 度 農 業 経 営 研 究 等 支 援 事 業 研 究 報 告 書
-次世代につなぐ農村女性の6次産業化の成立要件-」
4
稲盛和夫
( 2014)
「京セラフィロソフィ」サンマーク出版
5
青 森 県 農 林 水 産 部 ( 2014)「 農 山 漁 村 女 性 起 業 の 実 態 調 査 」
6
青 森 県 農 林 水 産 部 ( 2014)「 平 成 25 年 度 版 農 林 水 産 業 の 動 向 」
7
ム ハ マ ド ・ ユ ヌ ス ( 2008)「 貧 困 の な い 世 界 を 創 る 」 早 川 書 房
8
「 日 経 消 費 イ ン サ イ ト 」 2015 年 5 月 号
9
青 森 県 農 林 部 ( 2000) 「 青 森 県 農 業 の 経 済 的 波 及 効 果 の 評 価 」
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