発注点方式と定期発注方式

第5回
発注点方式と定期発注方式
1. この回で学ぶこと
o ABC分析によって分析された品目グループ別の管理方法
o EOQ公式
o 発注点方式
o 定期発注方式
2. ABC分析によって分析された品目グループ別の管理方法
ABC分析は、取り扱う品目が多く、すべての品目の需要管理にコストのかかる
在庫管理をおこなうことができないとき、重点的に管理する品目を絞る方法である。
A品目は需要の予測を行い必要な発注量を決定する定期発注方式、Bは在庫が一定
量を下回ると経済発注量を発注する発注点方式、Cは2つの箱や棚を用意して一方
が空になったらもう一方を使い空になったほうを補充する二棚法(Tow Bin
System)を用いる。
3. EOQ公式
EOQ公式はどのようにして求められるのであろうか。この説明をするために、
いくつかの記号を用いる。
D :年間の需要量
Z :1単位当りの年間保管費用
H :1回当りの発注費用
Q :一回当りの発注量(これを決定する)
TC:年間の在庫総費用
TC = 年間発注総費用 + 年間保管総費用 であるので
TC = (発注回数 × 発注費用)+ (年間平均在庫量 × 保管費用)となる。この式を上の
D
Q
記号を使って表現すると、 TC = H + Z 。この式は最小値では接線の傾きが0
Q
2
になる。この接線の傾きが0となるような Q の値を導けばよいのである。そのた
− DH Z
+ = 0 。これを Q の式にまとめる
めに TC を Q で微分して0とおく。 TC ′ =
2
Q2
2⋅ D⋅ H
2⋅ D⋅ H
と、 Q 2 =
となる。したがって、最適発注量 Q は Q 2 =
とあらわさ
Z
Z
れる。
4. 発注点方式
発注点方式とは、あらかじめ発注点を決めておき、在庫水準がこの発注点まで下
がったとき EOQ 公式で計算された発注量の発注を行なう方式のことである。発注点
方式では、品切れを許容範囲におさめるために、どのレベルの発注点にするかが問
題である。発注して実際に物が届くまでの時間差であるリードタイムがあるものと
し、手持ちの在庫量がどれくらいの水準になった時に発注すればよいかを考える。
以下の状況を仮定する。
(1)年間の需要量は 1500 単位である。
(2)1単位を1年間在庫するための保管費用が 50 円かかる。
(3)1回発注すると発注費用が 6000 円かかる。
(4)発注して品物が入荷するまでの時間(リードタイム)は 20 日とする。
(5)需要はテキスト 155 ページの表 5.9 に従うものとする。
2 × 1500 × 6000
= 600 であるので、発注点における発注量は 600
50
である。また、発注点=調達期間中の平均需要+安全余裕とあらわされるので、求
めるものは「調達期間中の平均需要」と「安全余裕」である。安全余裕は以下の式
であらわすことができる。
最適発注量 =
安全余裕=安全係数 × 調達期間 × 単位期間の需要の標準偏差
発注点は以下の式で計算される。
発注点=調達期間中の平均需要+安全余裕
調達期間を L とあらわし、1日の需要が平均μ、分散σ2 の分布によるものとし、
調達期間中の需要は各日の合計で表されるとすると、各日の需要量は独立(互いに
無関係)であるので、中心極限定理より調達期間中の需要は平均μL、分散σ2L の
正規分布に従うことがわかる。したがって、発注点が µ L + β Lσ であるとき、
βは安全係数であり、正規分布の性質から「平均μから何倍分の標準偏差まで離れ
ると、それ以上離れた値が現れる確率は何%」ということが明確に定義される。
βはこの「何倍分」にあたる。
µ L + β Lσ
品切れ確率
正規分布表の上側確率の中に網掛けの確率を見出し、βを求めることができる。
下の表をもとに、品切れ確率と安全係数の表を作成することができる。
安全係数を 1.65(品切れ確率 5%)とする。表 5.9 を 10 日間の需要分布とする
と、平均は 29、標準偏差は約 11 である。したがって、10 日間を単位期間と解釈す
ると調達期間 20 日間の安全余裕は以下のように計算される。
1.65 × 2 × 11 = 25.67
調達期間中の平均需要は 29×2=58 であるので、58+25.67=83.67 が発注点となる。
発注点における需要のばらつきと安全余裕を図示すると以下のようになる。
在 庫量
発注
発注点
x
安全余裕
0
リードタイム
(調達期間)
品切れ確率
5.定期発注方式
定期発注方式は、発注点方式と異なり発注間隔を一定とし、その都度発注量を決
定するという方式である。
発注量=(発注間隔+リードタイム)の平均需要量−在庫残−発注残+安全在庫
安全在庫=安全係数×(発注間隔+リードタイム)中の需要の標準偏差
と計算される。
在庫 量
発注
発注
発注
x
安全余裕
←発注間隔→
←発注間隔→
0
リードタイム
(調達期間)
リードタイム
(調達期間)
リードタイム
(調達期間)
品切れ確率
安全余裕は、需要の標準偏差が1日を単位期間として求められている場合、以下
のようになる。
安全余裕 = 安全係数× 発注間隔 +リードタイム×単位期間の需要の標準偏差
定期発注方式の場合、需要予測は発注間隔+リードタイムの期間にわたって行わ
れなければならない。
問題 もっとも適した選択肢を選びなさい。
・ ABC 分析でAに分類される品目の在庫を管理する方法としては(①二棚法(ツー
ビンシステム) ②発注点方式 ③定期発注方式)がよい。
・ ABC 分析でBに分類される品目の在庫を管理する方法としては(①二棚法(ツー
ビンシステム) ②発注点方式 ③定期発注方式)がよい。
・ ABC 分析でCに分類される品目の在庫を管理する方法としては(①二棚法(ツー
ビンシステム) ②発注点方式 ③定期発注方式)がよい。
・ EOQ 公式で Q =
?⋅ D ⋅ H
の?の部分に入る数値は(①1/3 ②2 ③1/2 ④3)
Z
である。
・ 発注点方式の場合に検討の対象となる品切れ確率は(①調達期間 ②1 年間 ③
リードタイム ④発注間隔+リードタイム)の期間における品切れの確率である。
・ 定期発注方式の場合に検討の対象となる品切れ確率は(①調達期間 ②1 年間
③リードタイム ④発注間隔+リードタイム)の期間における品切れの確率であ
る。