第5節 在庫管理

第5節
在庫管理
在庫管理
ABC分析
発注方式
定量発注方式
定期発注方式
その他の発注方式
範例 - 平成 20 年度第 20 問
購買管理に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア
経済的発注量(EOQ)は、一般に、発注費、在庫保管費および品切れ費の総計
を最小にする発注量である。
イ
定期発注方式における安全在庫量は、一般に、発注間隔が長くなると多くな
る。
ウ
定期補充点方式などで用いられる補充点は、発注間隔中の推定需要量として求
められる。
エ
定量発注方式などで用いられる発注点は、調達期間中の推定需要量として求め
られる。
【解答】イ
1.在庫管理と在庫管理の目的
在庫管理とは、生産計画に対応して、必要な資材を、その資材の調達期間、在庫に
伴う必要な資金、在庫場所等々を総合的に考慮して、最適費用で確保するための管理
活動をいう。
在庫は、適切な管理統制がなされなければ必要以上に増加し、経営に種々の悪影響
を及ぼしてしまう。そこで、販売計画ないし生産計画にもとづいて製品・商品・原材
料の所要数量を計算し、購買する物品の調達期間や生産する物品の生産期間等を考慮
したうえで、品切れがなくて、できるだけ少ない在庫量を計画しようとする。これが
在庫管理を必要とするゆえんである。
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(1) 在庫管理の目的
目
的
説
明
①製品・商品の円滑な供給
品切れ防止、製造に必要な部品の円滑な供給
②在庫投資の適正化
適正在庫量の設定による運転資金円滑化、経費削
減
③生産管理の適正化
調達効率化、製造リードタイム短縮、計画変動バ
ッファ
④死蔵品・過剰品・陳腐化防止
長期保有に伴う品質低下や陳腐化、死蔵品や過剰品
の防止
⑤保管場所の有効活用
所在を明確にし、保管場所を有効利用
H23-14 (2) 在庫関連用語
意
H22-2
安全在庫
見越し在庫
ロットサイズ在庫
味
「需要変動又は補充期間の不確実性を吸収するために必要とさ
れる在庫。」
(JIS Z 8141-7304)
「あらかじめ予測できる変動への備えとしての在庫。」(JIS Z
8141-7305)
「1回の補充で経済的理由から量をまとめることによって発生
する在庫。」(JIS Z 8141-7306)
2.資材在庫の必要性
資材の在庫は最終的に在庫ゼロ方式の方向が理想とされるが、具体的には適量の在
庫保有が必要とされる。資材の在庫を必要とする諸要因は、次のとおりである。
①
短納期に対処するため。
②
購買費用を節減するため。
③
補修や修繕用のため。
④
市場価格の変動が激しい場合に対処するため。
⑤
材料切れによる納期延滞を防ぐため。
⑥
操業度の安定化を図るため。
また、資材の過大在庫による損失としては、①運転資金とその利息の増大、②保管
料・倉庫の増大、③保険料の増大、④取扱費用の増大(積み降ろし、運搬)、⑤倉庫面
積の増加、⑥死蔵品の増加、⑦記録管理の事務費の増大などが考えられる。
138
そして、過少在庫による損失としては、①販売面と作業面での品切れの発生、②稼
働率の低下(手待ちの発生)、③納期延期の増加、④加工費の増加、⑤購入経費および
購入単価の増加などが考えられる。
3.ABC管理(ABC分析、重点管理)
ABC管理とは、「多くの在庫品目を取り扱うときそれを品目の取り扱い金額又は
量の大きい順に並べて、A、B、Cの3種類に区分し、管理の重点を決めるのに用いる
分析。」(JIS Z 8141-7302)をいう。A、B、Cとは、重要度のランクであり、
「A:最
重要」、「B:次に重要」
、「C:普通」となる。
タテ軸に使用金額(または金額の比率)を、ヨコ軸に金額の多い順に部品・原材料名
をならべてパレート図を作る。個々の部品・原材料の使用金額を棒グラフで記入する。
その累計をプロットし、折れ線で結ぶ。
通常、累計線は比例して直線的に上昇することなく、図表 3-27 のようにはじめ急
激に上昇し次第にその増加幅が小さくなる。
使用金額の多い順に(グラフのヨコ軸の原点から正の方向に)、5~10%をAランク、
次に 20~25%をBランク、残りの 70%前後をCランクとする。Aランクに使用金額
の 70%程度、A+Bランクに 80%程度の部品・材料が占めることになる。この点数
としては少ないA品目を最重視し丁寧に管理する。点数は圧倒的に多いが使用金額の
少ないC品目は簡便な管理を心掛ける。B品目は中間的管理となる。
(1) Aランクの品目
在庫の額の大部分を占め少数であるが重要であるため、厳重な管理を行い、在庫量
はできるだけ減少させ、出庫の統制を強める
(2) Bランクの品目
AランクとCランクの中間にあたるもので、重要度にウエイトづけすることにより
それぞれの品目に適した管理方法をとる。
(3) Cランクの品目
多数であるが安価で、在庫投資額のごく小部分しか占めないものは管理の手数を省
き、予備ストックを多めにする。
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図表3-27【ABC曲線】
100
使用金額の割合(%)
C
B
A
0
品目数(%)
100
4.発注方式
在庫を適正に管理し、コストを最小限に抑えるには、在庫を発生させる前工程であ
る発注を科学的にコントロールしなければならない。
発注方式の代表的なものに定量発注方式と定期発注方式がある。一部定量発注方式
に含まれるもの、あるいは、簡易発注方式についても概観していく。
H22-13 (1) 定量発注方式
定量発注方式とは、「発注時期になるとあらかじめ定められた一定量を発注する
在庫管理方式。」(JIS Z 8141-7312)である。特徴としては、1回の発注量は経済ロ
ットであること、発注時期は不定期であり、出庫量の変化に対応するために安全在
庫量をもたせることである。
図表3-28【定量発注方式】
在庫量
発注量
発注量
発注点
安全在庫量
期間
調達期間 調達期間
140
調達期間