第369号(2016年09月30日発行)

北里大学医学部ニューズ
CONTENTS
第12回医学部ニューズ写真コンテスト応募作品「奥志賀の朝-秋の気配-」
(野元けい子さん)
■教授就任挨拶……………………………………………………2
■講師就任挨拶………………………………………………………3~6
■医学部教員教育セミナー報告…………………………………7~9
医学部教員教育セミナーに参加して
■海外選択実習報告会報告…………………………………………10~12
ダヌンツィオ大学
マーブルク大学
■平成28年度北里大学医学部同窓会定期総会開催報告… ……13
■教育研究単位紹介 外科学……………………………………14
■大学院医療系研究科
大学院生の参加が必要な教員プロジェクト研究について……15
■部活紹介 釣り同好会…………………………………………16
2016.9
No.369
教授就任挨拶
-さらなる低侵襲・
根治的治療を目指して-
外科学 教授 石 井 良 幸
いしい・よしゆき
本年7月1日付けで、外科学教授を拝命いたしました石
定とそのメカニズムを解明し、さらなる有用なバイオマー
井良幸でございます。この場をお借りいたしまして教授就
カーの同定が今後の化学療法の進歩に必要不可欠です。ま
任のご挨拶を申し上げます。私は東京都出身で、1991年に
た、臨床研究として「進行大腸癌に対する新たな治療戦略
慶應義塾大学医学部を卒業し、母校の外科学教室に入局い
の開発や抗癌剤感受性試験とバイオマーカーを活用した個
たしました。母校の大学病院で1年間の研修の後、3年間
別化治療の確立」を目指します。これまで行ってきた研究
の関連病院への出向、2年間の国立がんセンター研究所へ
の成果を基に、新たな術前全身化学療法あるいは術前化学
の国内留学などを経て、2003年1月より母校の外科学助手、
放射線療法、バイオマーカーを活用した術後補助化学療法
2009年4月より専任講師として任用され、大腸外科学と腫
や個別化療法を計画し、さらなる治療成績の向上を図りた
瘍学の研究に従事してまいりました。2014年4月にご縁が
いと考えています。
あり、北里大学北里研究所病院の消化器外科部長に着任し、
診療については「大腸癌や炎症性腸疾患等に対する高い
2015年4月に臨床准教授、7月より病院長補佐、2016年4
手術レベルの追求」、すなわち、さらなる根治性、安全性、
月より外科部長を拝命いたしております。北里大学医学部
低侵襲性、整容性を追求した腹腔鏡手術の技術向上と定型
外科学の主任教授は渡邊昌彦教授が務められておりますが、
化、および普及を情熱と誠実をもって目指します。
「大腸
日本外科学会理事、日本癌治療学会理事、さらに日本内視
癌に対する集学的治療の充実」として、大腸癌治療におけ
鏡外科学会の理事長を務められ、世界の内視鏡外科手術の
る全国レベルの臨床研究に積極的に参加するとともに、腫
先導者として現在も精力的にご尽力されております。私も
瘍外科医として大腸癌に対する(放射線)化学療法につい
これまでの外科学の伝統と実績を受け継ぐとともに、さら
ても積極的に取り組みます。とくに、進行下部直腸癌に対
なる発展を築けるよう努力してまいりたいと存じます。
しては先進的治療である術前化学放射線療法を積極的に導
教育については、医療に携わる者は「豊かな人間性」
と
「深
入し、治療成績の向上を目指しています。
い知性」を有するべく、医師としての心構えを養うことが
以上、北里大学の発展に微力ながら貢献できるよう努め
最も重要と考えております。それゆえ、学生や研修医には
てまいりたいと存じます。ご指導・ご鞭撻の程、何卒よろ
実地の医療を通して医師としての心得を諭し、倫理観に基
しくお願い申し上げます。
づいた総合的判断力を養わせた上で、専門的知識や技術に
ついて指導したいと考えています。また、外科医師にとっ
て技術の向上は重要ですが、基本的知識に裏付けられた技
術を継承し、その上で専門的知識を身につけさせたいと考
えています。そして、生命の尊厳を理解し患者に対し誠意
を持って対応し、最先端の診療を提供でき、患者から信頼
される医師を、そして国際的にも活躍できる医師を1人で
も多く育てられるよう努力していく所存です。
研究については、
「研究だけをやっていたのではダメだ。
それをどうやって世の中に役立てるかを考えよ」という北
里柴三郎先生のお言葉を胸に刻み、日常診療に応用できる
研究を目指すとともに、先進的医療の開発を大きなテーマ
とし、未来を拓く研究に挑戦し社会に貢献できるよう努め
たいと考えています。基礎研究として「大腸癌の化学療法
における感受性・耐性因子の同定とそれらを用いた新しい
治療法の開発」、「大腸癌および炎症性腸疾患に関わる新し
い治療標的分子やバイオマーカーの確立」を目指したいと
考えています。大腸癌をはじめ消化器固形癌に対する根治
的治療は、手術以外の治療法では困難であるという現実が
あります。その理由の根幹をなすのが抗癌剤耐性と考えら
れます。従って、大腸癌化学療法の耐性・感受性因子の同
<略歴>
1991年6月 慶應義塾大学病院 研修医(外科学)
1995年5月 慶應義塾大学医学部 助手(外科学)
1996年5月 国立がんセンター研究所リサーチ・レジデント
2001年6月 米国コーネル大学ポストドクトラルフェロー
2009年4月 慶應義塾大学医学部 専任講師(外科学)
2014年4月 北里大学北里研究所病院 消化器外科部長
2015年4月 北里大学北里研究所病院 臨床准教授
2015年7月 北里大学北里研究所病院 病院長補佐
2016年4月 北里大学北里研究所病院 外科部長
2016年7月 北里大学医学部外科学 教授
<主な業績>
1.Shigeta K, Hasegawa H, Okabayashi K, Tsuruta M, Ishii Y, Endo
T, Ochiai H, Kondo T, Kitagawa Y: Randomized phase II trial of
TEGAFIRI(tegafur/uracil, oral leucovorin, irinotecan)compared
with FOLFIRI(folinic acid, 5-fluorouracil, irinotecan)in patients
with unresectable/recurrent colorectal cancer. Int J Cancer, 2016
Apr 7.[Epub ahead of print]
2.Shigeta K, Ishii Y(Corresponding author),Hasegawa H,
Okabayashi K, Kitagawa Y: Clinical usefulness of 5-FU metabolic
enzymes as predictive markers of response to chemotherapy in
colorectal cancer. World J Surg, 40(4): 1019-1020, 2016.
3.Matsunaga A, Ishii Y(Corresponding author),Tsuruta M,
Okabayashi K, Hasegawa H, Kitagawa Y: Inhibition of heat shock
protein 27 phosphorylation promotes sensitivity to 5-fluorouracil
in colorectal cancer cells. Oncol Lett, 8(6): 2496-2500, 2014.
− 2 −
講師就任挨拶
耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 講師
落 合 敦
おちあい・あつし
このたびの2016年熊本地震により被災された皆さまへ心
としては疲弊してしまいますが、医師になりたての頃の情
よりお見舞い申し上げます。学祖・北里柴三郎先生の生誕
熱をいつまでも失わないようにしたいと思います。
地である熊本県小国町へ医学部1年生の農村体験実習の引
教育は、医学部5年生のBSLにて、めまいのとても重要
率として訪れ、とても気に入り、小国町で開業を考えたこ
な検査であるカロリックテストを説明し、2人ぐらいに体
とがある者としてはとても気掛かりでなりません。一日も
験してもらっています。これは恩師の1人である加我君孝
早い復興をお祈り申し上げます。
先生の受け売りですが、加我先生はBSLで耳鼻科を選択し
さて、私事ですが、このたび耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
た学生全員に体験させていらっしゃいました。当時私は大
山下拓教授のご高配を賜り、講師に昇任致しました。山下
学院生で、教授の授業や実習のお手伝いをすると微々たる
教授、今まで無能な私を指導してくださった上司の先生方、
ものですがアルバイト料のようなものが出ましたので、呼
また私の至らぬ点をカバーしてくれた教室の若い先生方、 ばれると行かざるを得なかったのですが、先ずカロリック
そしていつも気持ち良く仕事をさせてくださっている看護
テストの実演を教授がされる際の被検者が毎回私で、耳に
師、検査技師、事務の方など多くの他職種の方々にこの場
冷水を入れられ、ぐるぐる回されたため、実習の前日にな
を借りて厚く御礼申し上げます。
るととても憂鬱になったものです。しかし、加我先生は
当教室は今年2月に山下教授が着任され、新たな門出を
「とても重要な検査であるが、患者さんにとても苦痛を与
迎えました。このたびの昇任は、山下教授が着任されてか
える検査であることを身を持って知っておかなければいけ
ら最初の人事ですので、着任早々の汚点とならないよう、
ない」と諭されていらっしゃいました。あの時の怨念で学
また今後19年間続くであろう山下教授の栄光の軌跡におい
生をぐるぐる回して悦に浸っている訳ではありませんので、
て最大の汚点とならないよう気を引き締めたいと思います。
これからBSLに来る学生には誤解のないようお願いします。
私は現在、北里大学東病院神経耳科にて診療を行ってお
研究は、このたびの昇任を機に新たな研究に着手し始め
りますので、北里大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科で外来
たところです。研究内容に関しては競争相手にアイデアを
や手術を行っておりません。したがいまして、耳鼻科の教
盗まれてしまうといけないので、ここには書けませんが、
室員のようでないような、教室員でないようであるような、
というのは嘘で、研究テーマがまだ煮詰まっていないだけ
微妙な立場におりますので、数限りあるポストを占めてし
なのですが、いずれ成果が出た暁には本誌面に報告の機会
まうのは申し訳ないような気がしないでもありません。し
をいただければと思います。
かし、多少は責任のあるポストを賜りましたので、その責
私の性格は、熱しやすく冷めやすく、直ぐに飽きて長続
めを果たしていこうと思っております。その責めが果たせ
きしませんので、学内や院内でぼ~としていたら、
「さぼ
ない、果たしていないと自覚した時は潔く辞し、後進に道
るな」と叱咤していただければと思います。
を譲るべきと考えております。もっとも、何をするにして
も空回りして何かをやらかし、お騒がせし、ご迷惑をおか
けし続けてきましたので、自覚する前に肩を叩かれるかと
思いますが。あまりマイナスなことばかりを書き連ねてお
りますと山下教授の任命責任が問われてはいけませんので、
これからは少し真面目なことを書きたいと思います。
大学に籍を置く臨床医の責務は、臨床、教育、研究であ
ることは論を俟たないと思います。自分自身はどうかと自
問すると、臨床は、外勤以外は北里大学東病院神経耳科に
て、めまい患者さんの診療を週7コマ行っております。め
まいは落ち着いていてもいつ再発するかわかりませんので、
完治ということはありません。したがって、「もう受診し
なくてもよいですよ」とは言えず、再診間隔を空けはする
ものの経過観察は続いていきますので、患者数は増える一
方です。病院経営としては良いことですので、診療する身
<略歴>
1998年5月 北里大学病院研修医
1999年4月 横須賀市立市民病院耳鼻咽喉科
2000年10月 藤沢市民病院耳鼻咽喉科
2002年4月 都立神経病院神経耳科
2007年10月 大和市立病院耳鼻咽喉科 医長
2010年4月 北里大学医学部耳鼻咽喉科 助教
2010年6月 北里大学医学部耳鼻咽喉科 診療講師
2012年4月 北里大学東病院神経耳科
2015年4月 北里大学東病院神経耳科 主任
2016年7月 北里大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 講師
<主な業績>
1.Ochiai A, Nakayama M, Okamoto M.: Ethanol injection therapy
for oral haemangiomas. KMJ, 44 : 174-177, 2014.
2.加我君孝,瀬藤光利,落合敦,都筑俊寛,石川文之進:前庭知覚
と傾斜知覚.認知神経科学,7 : 16-22,2005.
3.平成23年度北里大学医学部ベストティーチャー賞
− 3 −
講師就任挨拶
耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 講師
清 野 由 輩
せいの・ゆとも
この度、2016年7月1日付で耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
んを診る際に、嚥下障害が退院や転院の妨げになり、もち
の講師を拝命致しました清野由輩(せいのゆとも)と申し
ろん大変なのは患者さんご自身ですが、それと同時に医療
ます。就任のご挨拶を申し上げるとともに、この場をお借
スタッフ、家族や周りの支える方々などが対応に苦慮する
りして山下拓教授に心より感謝申し上げます。
場面を目にする機会が非常に多いと感じてきました。さら
生まれは愛知県で、1997年に北里大学に入学したのを機
に重度の嚥下障害だけでなく、軽度の嚥下障害からもたら
に相模原にやってまいりました。2003年に大学を卒業する
される喉の違和感や痰がらみなどに悩まれている外来患者
時に(スーパーローテーションをしなかった最後の世代で
さんも多くいますので、今後も耳鼻咽喉科医として言語聴
す)何科を選択したものか迷っていたため、内科的でもあ
覚士や看護師などのコメディカルの方々とも協力し、専門
り外科的でもある耳鼻咽喉科を選択いたしました。地元に
性を生かした評価や治療をしていきたいと考えています。
は愛知医科大学があり、そちらに戻ろうかとも思いました
研究も裾野を広げ、より多くの方々に貢献できるような
が、母校の北里大学に少しでも恩返しがしたいと思い、こ
テーマを設定して、日々の臨床の際に問題意識を持ちなが
の地に留まりました。これまで北里大学耳鼻咽喉科・神経
ら頑張っていこうと考えております。
耳科学(現在、神経耳科は東病院にあります。また、その
北里の耳鼻咽喉科・頭頸部外科学は2016年2月に山下拓
後に頭頸部外科が標榜名に付きました)の沢山の尊敬すべ
新教授を迎え、益々発展していこうとしているところです。
き先輩方から、多岐にわたる耳鼻咽喉科領域をバランスよ
そのような中、教室の運営や発展に果たして自分がどの程
く学ぶことができました。その中でも外科色の強い頭頸部
度お役に立てるのかという不安もありますが、自分が沢山
外科に携わるうちに、当科の特色である機能温存手術を通
の先輩方やスタッフの方達にお世話になったように、後輩
して、飲み込む、声を出す、呼吸するという口腔から咽
のスタッフの方々のため、耳鼻科教室のため、さらに北里
喉頭の機能面に強く興味を抱くようになりました。喉頭
大学病院のために貢献できればと考えております。若輩者
がん手術後喉頭機能の解析の研究をさせていただいて学
ではございますが、今後とも何卒ご指導ご鞭撻のほどよろ
位を取得した後、ある国際学会で知り合いになったJacqui
しくお願い申し上げます。
Allen 先生(Auckland Centre for Voice and Swallowing
and University of California, Davis Centre for Voice and
Swallowing)や言語聴覚士のAnna Miles先生(Swallowing
Research Laboratory in the Centre of Brain Research at
The University of Auckland)の研究に強い魅力を感じ、
先生方の母国であるニュージーランドのオークランド大学
に留学させて頂きました。口腔から食道までを含めた広範
な視点での臨床研究を活発にされており、そこで多くのこ
とを学びました。2014年の新北里大学病院開院前に復職し
てからは頭頸部腫瘍に加え、嚥下診療にも力を入れて参り
ました。
嚥下が正常に行われずにおこる誤嚥は、高齢社会の日本
においては珍しい現象ではありません。誤嚥は患者さんが
高齢であると、疾患や治療侵襲などで容易に起こりうるた
め、本人や周りが気づかないうちに回復の妨げやQOLの
低下を引き起こします。結果として家族や介護者、医療リ
ソースへの負担が増加する原因となるため、急性期医療は
もちろん介護福祉の現場など様々な領域で関心が高まって
<略歴>
2003年3月 北里大学医学部卒業
2003年5月 北里大学病院 耳鼻咽喉科入局(研修医)
2005年7月 大和市立病院 耳鼻咽喉科
2007年4月 北里大学病院 耳鼻咽喉科(病棟医)
2009年4月 北里大学医学部 耳鼻咽喉科学 助教
2012年4月 国外留学(ニュージーランド オークランド大学フェロー
シッププログラム)
2014年4月 北里大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 助教(診療講師)
2016年7月 北里大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 講師
<主な業績>
1.Seino Y, Allen JE:Treatment of aging vocal folds: surgical
approaches. Curr Opin Otolaryngol Head Neck Surg. 22:466471, 2014.
2.Seino Y, Nakayama M, Okamoto M, Hayashi S:Three-dimensional
computed tomography analysis of neoglottis after supracricoid
laryngectomy with cricohyoidoepiglottopexy.J Laryngol Otol.
126:385-390,2012.
3.Seino Y, Nakayama M, Okamoto M, Hayashi S:Computer-based
analysis with three-dimensional imaging constructed from fineslice computed tomography scan of supracricoid laryngectomy
with cricohyoidoepiglottopexy: report of two cases.J Laryngol
Otol. 125:523-527,2011.
います。私自身、大学病院での診療において他科の患者さ
− 4 −
講師就任挨拶
耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 講師
牧 敦 子
まき・あつこ
平成28年7月1日より耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講師を
いただき、外科医として一番成長できた時期だったと思い
拝命しました牧敦子と申します。就任のご挨拶を申し上げ
ます。また、同じ時期に川瀬哲明教授のご指導のもと、聴
ますとともに、この場をお借りしまして山下拓教授、岡本
性定常反応検査を用いた聴覚の研究を始めました。それま
牧人名誉教授に心より感謝を申し上げます。
で知られていなかった「聴性定常反応における対側ノイズ
私は小児科医の父と看護師の母のもとに神奈川県で生
の効果」についてデータを出すことができ、博士号を取得
まれました。父の仕事の都合で数年ごとに転居しており、
させていただきました。本格的な研究は初めての経験でし
「我が家はやけに引っ越しが多いな」と思いながら、ひと
たが、新しい知見を得るごとに実験に夢中になり、必死で
つの土地に根を下ろすということを知らずに大学生にな
勉強しました。学会発表も数多く経験し、聴覚を自分の専
りました。
門とすることを意識するようになりました。
北里大学医学部に入学し、硬式テニス部に所属して、と
その後、岡本牧人前主任教授のご厚意で、北里大学に復
ても楽しい6年間を過ごしました。当時はとにかく部活中
職させていただきました。私は今でも仙台が大好きで、関
心の毎日を送っていました。学業の方は、試験前に詰め込
東に戻る時にはとても迷いましたが、東北大学で学んだこ
めるだけ詰め込んでは試験後にほとんど忘れてしまうとい
とを母校に少しでも還元したいという気持ちもあり、帰っ
う、その場しのぎの方法でなんとか進級していたように思
てくることにしました。北里大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科
います。実習で回ってくる学生さんが基本的な質問に答え
の強みのひとつは、医療衛生学部の先生方や言語聴覚士と
られない時や、少人数での講義中に目の前で居眠りをして
の密な関係があることで、聴覚を学ぶ人間としては最高の
しまっても、
「その気持ちわかるよ」と思ってしまいます。 環境です。現在、私の専門は「聴覚」と「小児耳鼻科」で
今となっては「勉強はできるだけ頑張った方がいいし、居
すが、どちらの分野でも言語聴覚士の先生方とのチーム
眠りはしないほうがいい」と言わなければならないのです
ワークが非常に重要であり、互いに切磋琢磨しながら高い
が・・・。長いようで短い学生時代、勉強も部活も遊びも
レベルの診療を目指したいと思っています。戻って5年弱
すべてにおいて充実した毎日を過ごしてもらいたいと思い
が経ちましたが、どうにか北里大学に根を下ろして日々を
ます。
過ごしています。この度、講師就任という新しいステップ
大学卒業後、北里大学病院耳鼻咽喉科に入局して、研修
を上らせていただき、わくわくしています。まだまだ未熟
医・病棟医時代を過ごしました。とても忙しい毎日でした
者ですが、精一杯努めさせていただきたいと思いますので、
が、
「習うより慣れろ」という教えのもと、どんどん臨床
よろしくお願いいたします。
経験を積ませていただきました。医師になって5年目に、
東北大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科に入局(無期限国内
留学)いたしました。縁もゆかりもない地へ無謀にも飛び
込んでいったのですが、とても素晴らしい教室で、どこの
馬の骨かもわからない私にもみなさんが親切にしてくださ
いました。東北大学はいつでもアカデミックな空気が漂っ
ていて、医局のすぐ隣の研究室で先輩たちが実験をする姿
が日常であることに驚きました。国立大学卒の優秀な先生
方の中に入って自分が働くことに、最初は不安を感じまし
たが、北里大学での修行のおかげで臨床医としては医師年
数相応の力が付いていたようで、臨床面では全く問題な
かったと思います。東北大学病院では頭頸部腫瘍チームに
所属する期間が一番長く、体育会系の部活のようなノリで
楽しく働くことができました。手術にもたくさん入らせて
<略歴>
2002年3月 北里大学医学部卒業
2002年5月 北里大学病院耳鼻咽喉科入局
2006年7月 東北大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科 医員
2006年10月 東北大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科 助教
2011年10月 北里大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科 助教
2014年4月 北里大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科 診療講師
2016年7月 北里大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科 講師
<主な業績>
1.牧 敦子,佐野 肇,岡本 牧人:北里大学病院NICU児における
ABR異常例の臨床的検討.北里医学,44-1,2014
2.Kawase, T., Maki, A., Kobayashi, T. : Bimodal audio-visual training
enhances auditory adaptation process. Neuroreport. 20(14):
1231-1234, 2009
3.Maki, A.,Kawase, T. , Kobayashi, T. : Effects of contralateral
noise on 40-Hz and 80-Hz auditory steady-state responses. Ear
Hear. 30(5): 584-589, 2009
− 5 −
講師就任挨拶
整形外科学 講師 宮 城 正 行
みやぎ・まさゆき
2016年7月1日付けで北里大学医学部整形外科学の講師
ていく所存でございます。
を拝命致しました宮城正行と申します。皆様にご挨拶申し
臨床においては、整形外科の中で脊椎外科と骨粗鬆症を
上げますとともに、本誌面をお借りして、ご指導を頂いて
担当しております。脊椎外科では特に、脊柱側弯症治療や
おります髙相晶士教授をはじめ、北里大学整形外科同門の
脊椎外傷治療に興味を持っております。髙相教授以下北里
先生方に厚く御礼申し上げます。
大学には “曲がったことが大嫌い” な整形外科医が揃って
私は愛知県岡崎市の出身で、1997年3月に鹿児島ラ・
おり、日々 “まっすぐにすること” を目標に、豊富な症例
サール学園高等学校を卒業後、2003年3月に千葉大学を
数と経験を誇る北里大学病院で診療にあたっております。
卒業致しました。その後、千葉大学整形外科に入局、千
また、新病院に移行し、お休みになっておりました骨粗鬆
葉大学医学部附属病院や関連病院にて一般整形外科の研
症外来を2016年1月より再開致しました。骨粗鬆症は超高
鑽を積みました。当時の私は、右も左もわからぬ “ひよっ
齢社会と言われる本邦において、整形外科医にとっての最
こ” 整形外科医で、朝から晩まで臨床に明け暮れておりま
大の敵でございます。また、近年注目を集める筋力の低下
した。そんな臨床漬けの日々の転機は、医師となって3年
をきたすサルコペニアについても、力を入れて診療にあ
目にNew Yorkで開催された国際腰痛学会(International
たっておりますので、骨粗鬆症、サルコペニアでお困りの
Society for the Study of the Lumbar Spine: ISSLS)で
患者さんがおられましたら、ご紹介いただければ幸いです。
Special Posterの発表をしたことがきっかけでした。この
最後になりますが、私は今、北里柴三郎先生ゆかりのこ
発表は、研修医時代に指導医の先生の基礎実験のお手伝い
の北里大学で、活気あふれる皆様に囲まれ、臨床と基礎研
をした(当時はラットの傷を縫えることがただただ楽しく
究の両方を行える幸せをひしひしと感じております。まだ
てお手伝いをしていただけでした)研究で発表の機会を頂
まだ未熟者の私ですが、このような理想的な環境で整形外
いたものでした。臨床医として腕を磨くことだけを考えて
科学教室そして北里大学のために微力ながら尽力する所存
いた当時において、外国人の中で発表するという “非日常”
でございますので、今後ともご指導ご鞭撻の程どうぞよろ
はかけがえのない経験でした。その後、基礎研究にも興味
しくお願い申し上げます。
を持ち、2008年4月に大学院に進学、基礎研究に従事致し
ました。
私の基礎研究のテーマは「運動器疼痛の発症機序に関す
る研究」で、特に椎間板由来の腰痛に関する研究に長く携
わっております。私は椎間板局所で何がおこっているのか、
そして痛みを脳に伝えるまでの間の神経で何がおこってい
るのかということについて、ただひたすら研究をして参り
ました。当時から、痛みを感じる脳における変化などに注
目が集まっておりましたので、多くの人とは違う方を向い
ていた私の大学院時代の研究生活は、そのほとんどが苦し
い思い出ばかりでした。しかし、World Forum for Spine
Research 2010においてBest Oral Presentation Awardに
選出して頂くなど、大きな幸運にも恵まれました。そし
て一番の思い出は、大学院の研究の集大成として行った
研究が、前出の2012年のISSLSでPrizeを受賞したことで
す。その後、カナダ・モントリオールにあるマギル大学に
留学して行った研究に関しても、幸運にも2014年のISSLS
で再度Prizeを受賞することができ、大変嬉しい思い出で
す。2014年より北里大学にお世話になり、基礎研究も続け
させていただいております。“千葉でPrize、留学でPrize”
を頂きましたので、今度は “北里でPrize” を目指して頑張っ
<略歴>
1997年3月 ラ・サール学園高等学校卒業
2003年3月 千葉大学医学部卒業
2003年5月 千葉大学医学部附属病院整形外科研修医
2008年4月 千葉大学大学院医学研究院先進医療科学入学
2010年4月 千葉大学グローバルCOEプログラムリサーチアシスタント
2012年3月 千葉大学大学院医学研究院先進医療科学修了
2012年4月 カナダマギル大学アランエドワードペインセンター博士研究員
2013年4月 独立行政法人医薬品医療機器総合機構医療機器審査第二部臨床
担当
2014年11月 北里大学医学部整形外科学 助教(研究員)
2016年1月 北里大学医学部整形外科学 助教(診療講師)
2016年7月 北里大学医学部整形外科学 講師
<主な業績>
1.Miyagi M, Millecamps M, Danco AT, Ohtori S, Takahashi K, Stone
LS. ISSLS Prize Winner: Increased Innervation and Sensory Nervous
System Plasticity in a Mouse Model of Low Back Pain due to
Intervertebral Disc Degeneration. Spine. 2014 39(17): 1345-1354.
2.Miyagi M, Ishikawa T, Kamoda H, Suzuki M, Murakami K, Shibayama
M, Orita S, Eguchi Y, Arai G, Sakuma Y, Kubota G, Oikawa Y, Ozawa
T, Aoki Y, Toyone T, Takahashi K, Inoue G, Kawakami M, Ohtori S.
ISSLS Prize winner: Disk Dynamic Compression in Rats Produces
Long-Lasting Increases in Inflammatory Mediators in Disks and
Induces Long-Lasting Nerve Injury and Regeneration of the Afferent
Fibers Innervating Disks: A Pathomechanism for Chronic Diskogenic
Low Back Pain. Spine(Phila Pa 1976)
.2012 37(21): 1810-1818.
3.Miyagi M, Ishikawa T, Orita S, Eguchi Y, Kamoda H, Arai G, Suzuki M,
Inoue G, Aoki Y, Toyone T, Takahashi K, Ohtori S. Disk injury in rats
produces persistent increases in neuropeptides in dorsal root ganglia
and spinal cord glia but only transient increases in inflammatory
mediators: patho-mechanism of chronic diskogenic low back pain.
Spine(Phila Pa 1976)
.2011 15 ; 36(26): 2260-2266.
− 6 −
医学部教員教育セミナー報告
教育委員長 病理学 教授 三 枝 信
さえぐさ・まこと
突然、真夏が到来した8月5日(金)・6日(土)の2
プディスカッションを行った。評価に形成的評価(学習単
日間にわたり、夏の恒例行事である第27回医学部教員教育
位・研修の途中の評価)と総括的評価(過程終了時の評価)
セミナーをオンワード総合研究所人財開発センター(横浜
があることを初めて知った参加者は少なくないであろう。
市都筑区)で開催した。今年はメインテーマとして、「ア
1日目の最後のセクションとして、昨年度にベストティー
クティブ・ラーニングを考える」を掲げ、最終目標は、
「北
チャー賞を受賞した病理学講師の原敦子先生よりユニーク
里 大 学 医 学 部 の 教 育 を 理 解 し、OBE(Outcome based
な講演を頂いた。
education:アウトカム基盤型教育)の考え方に基づいて、
2日目は、昨日の続きで講義の評価法について全体討議
アクティブ・ラーニングを活用して自らの教育活動を行う
を行い、評価法に関する知識を深めると同時にその実践方
ことができる」とした。セミナーには、各教育単位からの
法を学んだ。引き続き、東京医科大学准教授のブルーヘ
選出された33名の参加者(8名の初期研修医を含む)が
ルマンス先生から「Moodle・Mahara・Xerteを活用した
参加し、6班に分かれて与えられたテーマに関して議論
e-Learning」と題した講演を頂き、東京医大で実際にアク
し、そのプロダクトを全体会議で討議するワークショップ
ティブ・ラーニングのツールとして利用しているMoodle・
(WS)形式で行った。
Mahara・Xerte について学んだ。講演後の質疑応答も活
開講式、オリエンテーション後に、他己紹介(ペアになっ
発で、参加者の関心の深さを物語っていた。最後に、約3
た相手を参加者全員に紹介する)で参加者同士のアイスブ
時間半をかけてマイクロティーチングで講義手法の検証を
レイクを図った。緊張感が解れたところで、開催者側より
行った。具体的には、まず、グループ内で選出された担当
北里大学医学部の教育の特徴をカリキュラム変遷の観点か
者がメンバーの前で日常行っている講義を8分間行い、そ
ら説明し、さらに、現在ホットな話題であるアウトカム基
の様子をビデオに撮影する。担当者は自分の講義を映した
盤型教育について解説した。その後、セミナー参加の証
ビデオを確認後自己評価する。一方、グループメンバーか
拠となる集合写真撮影を行い、いよいよWS開始となった。
ら講義手法(アイコンタクト、話し方、スライドの内容な
WS1として、
「講義の問題点」をテーマに、ワールドカフェ
ど)に関するフィードバックを頂くことによって、自分の
(カフェのようなリラックスした雰囲気で行う話し合いで、 講義法を検証し改善する手法である。この作業を通じて参
一人のホストを残して、参加者はラウンドごとにテーブル
加者の多くは、自身の講義法に関して何らかの有益なもの
を移動して話し合いをする)形式で討議した。休憩を挟ん
を得たはずである。最後に、2日間のセミナー全体の総括
で、一般教育部准教授の高橋勇先生よりMoodle(Modular
として、自由ディスカッションを行った。いくつかの斬新
Object-Oriented Dynamic Learning Environment)を
な意見もあり、開催者側にとっても今後の医学部教育を拡
利用したアクティブ・ラーニングについて講演を頂いた。
充する材料として非常に有益なものであった。WS終了後
Moodle活用の利点として、迅速性・共有性(複数の教員で、
に参加者全員で20秒スピーチを行い、本年度のセミナーは
実習状況を把握できる)、双方向性(学生への振り返り確
閉講となった。
認、教員のFD)
、統一性・全体性(連絡事項の周知や資料
毎年、本セミナーの開催にあたり、教務課や医学教育研
の一斉配布)があり、参加者は各自持参したPCでMoodle
究開発センターの職員の方々には、多大なるご支援を頂い
を実体験した。WS2は「アクティブ・ラーニングを活用
ている。前日の会場設営に始まり、当日の進行、そして終
した講義の組み立て」についてグループディスカッション
了後の後片付けなど、全面的に本セミナーを支えてもらっ
を行い、全体討議で学生が能動的に学習をするような講義
ている。この場をお借りして、心から感謝を申し上げたい。
の組み立てやMoodleなどの学習支援システムの活用を議
最後に、このセミナーが北里大学医学部教育の発展の一翼
論した。その後、組み立てた講義の評価法についてグルー
を担っていると信じているのは私だけでないことを祈る。
− 7 −
医学部教員教育セミナーに参加して
-医師が教育学を学ぶ大切さ-
循環器内科学 診療講師 小板橋 俊 美
こいたばし・としみ
昇任者に順番で回ってくる噂の教育セミナー。参加の指
しく取り組むことができた。様々な工夫を凝らした多岐に
令を受け、憂鬱な気分になった。漠然とした不安と忙しい
渡るプログラムであり、どれも新鮮で興味深かったが、最
臨床業務の中、2日間も拘束されることに対しての不満。
も感銘を受けたのは、マイクロティーチングでのベテラン
代診を立ててまで参加すべきだろうか、というのが正直な
の先生方の講義であった。自分の講義をビデオに撮って振
思いであった。
り返るためのプログラムであったが、自分の拙さを痛感し
しかし、セミナーを終えて思ったことは、教育学を知ら
た以上に、他の先生方の講義を拝聴できたことが大変勉強
ない医師こそ参加すべきで、多忙であるからこそ、時に強
になった。メッセージ性が強く、印象的かつ感動的であり、
制的に時間や機会を得ることも必要だということ。はじめ
こんな講義を学生時代に受けていたら、私の進路も変わっ
から教員を目指して医師になるわけではなく、学生時代を
たかもしれないとさえ思えた。良い講義は、教育対象者の
通しても “教育学” を学ぶ機会はなかった。また、医師の
人生をも左右するかもしれないと思うと、私自身も一人で
周りには、医学生の外にも様々な教育対象が存在する。研
も多くの教育対象者の心に残る講義をしたいと強く感じた。
修医、病棟医、コメディカルスタッフ、患者さん。今回の
一つのことに徹底的に取り組む合宿は嫌いではない方で
教育セミナーで得た知識や経験は、間違いなく私のあらゆ
ある。代診を心配しつつも、日常業務とは離れた別世界で
る業務にプラスとなる内容であった。
のこの2日間は、知識欲も満たし、充実感もあり、かつ新
参加者は、研修医から教授、基礎から臨床医まで様々で
たな人脈も広がって、
大満足なセミナーであった。
セミナー
あった。主に5~6人のグループに分かれて活動する。こ
を準備、運営していただいた先生方、スタッフの皆様、そ
のグループメンバーが最高だったおかげもあって、終始楽
して私に参加の機会を下さった教授に御礼申し上げます。
ワールドカフェ
高橋勇先生(一般教育部准教授)による「Moodle体験」
原敦子先生(病理学講師)によるベストティーチャー賞受賞者講演
ブルーヘルマンス先生(東京医科大学准教授)による講演
− 8 −
医学部教員教育セミナーに参加して
研修医2年次 永 田 貴 子
ながた・たかこ
8月5日から6日の2日間、医学部教員教育セミナーに
のように見られているのかについて自己評価とグループ内
参加させて頂きました。大学を卒業してから大学の講義と
でお互いの評価を行いました。先生方の講義を改めて拝聴
は疎遠になってしまっていたので、少し不安な気持ちでセ
し、わかりやすい講義、プレゼンテーションをするにはど
ミナー当日を迎えました。当日は医学部、大学病院での所
うしたら良いのかということを学ぶ良い機会になりました。
属や専門分野が違うたくさんの先生方とお話しし、意見交
今回のセミナーに参加させて頂いて、学生だった2年前
換をすることができました。グループに分かれてさまざま
まで聞いていた講義一つ一つには、先生方やたくさんの
なテーマについて話し合い、「より良い講義にするために
方々の思いと工夫が詰まっていたことに気づき、今更なが
はどうしたら良いのか」ということについて、講義を行う
らもっと積極的に講義に取り組めば良かったと反省しまし
教員側の意見と講義を受ける学生側の意見を出し合い、
「ど
た。また、今回初めて教育について考える機会を与えて頂
うすればより学生が興味を持って授業に臨めるか」という
き、良い教育とは奥が深く難しいものだと改めて実感させ
ことを考えることができました。また、2日目には教員と
られました。今回経験させて頂いたことは、今後講義やプ
学生をつなぐMoodleなどの最新システムについても知る
レゼンテーションをする機会があったときに生かしていき
ことができました。さらに、グループ内で1人8分ずつの
たいと思いました。ありがとうございました。
ミニ講義を行い、それをビデオで撮影して自分の講義がど
参加者の集合写真
− 9 −
海外選択実習報告会報告
国際交流委員長 免疫学 教授 岩 渕 和 也
いわぶち・かずや
平成28年6月21日、本年度の海外選択実習を終えたダヌ
由」ということであり、お仕着せでない「自由」を謳歌で
ンツィオ大学(イタリア)の進藤理沙君と石川怜奈君、
マー
きた模様です。原君は語学研修1か月を行ってからの実習
ブルク大学(ドイツ)の白取陽君と原勇輔君の報告会が開
で、採血の前にドイツ語で話しかけることで意思の疎通が
催されました。今回も将来、海外での臨床実習を選択希望
俄然良くなることを体験したそうです。白取君は1年時に
の後輩諸君が多数参加してくれました。まず、東原正明医
仏語を選択していながらのドイツでの実習でしたが、最後
学部長からの無事帰国できたことへの安堵や海外での慣れ
の方ではお店で注文出来るまでにドイツ語が話せるように
ない生活を労うお言葉で会が始まりました。
なったそうで、十分な成果です。
進藤・石川ペアは、4週間の臨床実習の様子やイタリア
本学では、この他にも医学教育振興財団による英国医学
で回った科で遭遇した日本ではあまり見かけない疾患、医
部への派遣やIFMSAによるさまざまな国への交換留学な
療や生活での日本との違いなどをきれいにまとめられたス
ど、海外における臨床実習・研究留学、さらには文科省
ライドで説明してくれました。消化器内科ではセリアック
によるトビタテ留学JAPANへの応募も勧奨しております。
病などを多数診て、日本の外来で出会う疾患との違いを実
これは、他言語・異文化環境での生活や勉学が若い時期な
際に感じられたようです。さらに休日には、積極的にいろ
らではの感受性・吸収力により、将来の国内外を問わない
いろな場所に出かけて、イタリアの文化・芸術に浸ること
活躍に大きく役立つものだと確信しているからであります。
が出来たのも有益な体験と思われました。臨床実習であっ
ただ、昨今の海外における(日本も決して例外ならず!)
て遊びに行っている訳ではありませんが、余暇では是非見
組織的あるいは単発・個人的なテロ事案に巻き込まれかね
聞を広めて欲しいものだと私は思っています(危険を伴う
ない状況から、勧奨の口舌も鈍りがちです。現在、大学と
ことは止めて欲しいですが)。また、現地の友人に聞いて、 しては国際部を中心にこのような事案に本学学生・教職員
観光ルートにはなかなか載らず、現地の人も容易に予約を
が遭遇した場合の危機管理マニュアルを作成中で、また実
取ることが出来ないレストランに行けたことも良かったで
務的な部分は専門会社への委託を検討しています。ただ、
す。危うく帰りの交通手段がなくなりかけたそうですが、
整備された場合にあっても、このような心配は杞憂なので
コミュニケーション力を最大限に使って帰路に着いたとい
はないかと思われるほど実際に事案が発生しないことを強
うことで、これもまた貴重な勉強でした。
く願うものであります。
白取・原ペアは、ヴィルヘルム・コンラート・レントゲ
今回の海外選択実習も守屋利佳副委員長をはじめ、国際
ンも出身者であるマーブルク大学での実習について「ただ
交流委員会委員各位(村雲芳樹、辻尚利、神應知道、佐藤
ただ自由である」という主旨のキーワードで、選択した循
威文、横山薫、岩本孝一)
、佐藤久美子行政書士、教務課・
環器科・小児科・産婦人科など各科での外来診療や検査・
学生課各位(古田土政彰、山上恭由、円谷賢一、堂野真楠、
手術などについて説明してくれました。すなわち、学びた
小林悟郎)にご尽力いただきました。また医学部同窓会、
いことや診たい患者さん、入りたい手術、トライしたい手
本学国際交流助成事業からの経済的ご援助に感謝致します。
技などはすべて自分で選ぶ、また働きかけて得るという
「自
− 10 −
海外選択実習報告
-ダヌンツィオ大学でのかけがえのない経験-
進 藤 理 沙、石 川 怜 奈
第6学年 しんどう・りさ いしかわ・れいな
今回、様々な方にご支援いただき、平成28年4月5日か
察をしました。小児科はイタリアでは女性に人気の科だそ
ら5月2日までの4週間、イタリアのダヌンツィオ大学に
うで、ダヌンツィオ大学でもとても女医が多く驚きました。
留学できることになりました。
回診や学会にも参加しました。イタリア語での学会でした
イタリアのローマ、フィウミチーノ空港からダヌンツィ
が、みんなが英語に訳してくれました。また、新生児科を
オ大学までは、バスか電車で北西に2時間半ほど移動した
見たいと希望するとすぐに手配をしてくれました。内視鏡
ところにあります。道中は見たこともないような壮大な荒
科では、上部・下部内視鏡検査を見学し、実際に少し触ら
野や渓谷を通ったため、ワクワクすると同時に果たして無
せていただくこともありました。Tinari教授は解剖や使う
事に着くのだろうか、行き先は合っているのだろうかとい
鎮静薬の種類や、内視鏡でチェックする場所などについて、
う不安に駆られることもありましたが、無事に現地の先生
現地の学生と一緒に英語で授業をしてくれました。内視鏡
と合流することができました。
科での2週間は、多くの症例数を見られたことや、実際に
4週間のうち、アレルギー科・腫瘍内科でそれぞれ1週
内視鏡に触ることができたという点で、充実した実習とな
間、内視鏡科で2週間実習を行いました。事前に興味のあ
りました。
る科を連絡していたのですが、現地に着いた際に留学生を
ダヌンツィオ大学があるキエティや病院、大学、普段の
担当してくださるDi Gioacchino先生が、改めてどこで実
生活については、主に実習で一緒になった学生に聞くことで
習したいかを聞いてくださり、変更も可能でした。
知ることができました。外来の合間に病院内にあるcafeに行
各科では、基本的に医学部5年生の学生と一緒に実習す
き、5分ほどで素早くエスプレッソを飲んで、また実習に戻
ることが多く、先生と生徒が英語で手技や説明の内容を解
るという切り替え上手な様子が印象的でした。また、19時ま
説してくれました。時には英語がうまく伝わらず、イタリ
で授業がある中、私たち2人をお勧めのレストランに連れて
ア語での専門用語なども分からないことが多く、Google翻
行ってくれたり、サッカー大会に誘ってくれたり、現地の学
訳を使って解説してくれることもありました。
生は本当に親切で、楽しい時間を過ごすことができました。
アレルギー科では外来にて問診、プリックテスト、呼吸
週末は2人でローマ、フィレンツェなどの主要都市へ足を
機能検査などを見学しました。アレルギー科は女医さんが
運びました。また、キエティ近辺では、ペスカーラやサン・
多く活躍する現場で、看護師さんとの連携がスムーズであ
ヴィート・ランチャーノなどの海辺の都市へ出かけた際は、
るため、多くの患者さんを迅速かつ丁寧に診察している様
学生のお勧めでトラボッコという桟橋にせり出る漁師小屋の
子が見られました。イタリアで有名なアレルギーは牛乳、 中でご飯を食べることができたのですが、これは地元の人も
イチゴ、ピーナッツだそうで、ヨーロッパは乳製品が豊富
滅多にできない体験とのことで、とても貴重な機会でした。
なので意外に思ったことを覚えています。また、イタリア
今回のダヌンツィオ大学への留学では、海外の医療現場
の食に欠かせない食材としてオリーブがあげられますが、 を見てみたいという思いが叶い、文化による医療の違いを
オリーブの花粉の検査キットが入っていたことも驚きまし
見たり、現地の先生との意見交換を学生のうちにできたり
た。腫瘍内科では乳癌、前立腺癌、肺癌、大腸癌など、様々
したことは、またとない大きな収穫だったと思います。多
な癌患者さんの診察を見学しました。実際に身体診察に参
大な支援をしていただいた、医学部同窓会の方々をはじめ、
加することができて、一から身体診察を勉強する貴重な機
国際交流委員会、教務課、北里大学の多くの先生方、本当
会となりました。小児科では一人の医師に付いて患者の診
にありがとうございました。
− 11 −
海外選択実習報告
-マーブルク大学での留学を終えて-
白 取 陽、原 勇 輔
第6学年 しらとり・よう はら・ゆうすけ
白取は平成28年3月31日から6月4日までの10週間、原
ある科で実習を行うことになり、救急科、内分泌内科、小
は同年2月28日から6月14日までの15週間、ドイツのマー
児科、産婦人科の先生方にお世話になりました。救急科で
ブルク大学へ留学させて頂きました。
は、ウォークインから重症患者まで幅広く対応していて、
原は白取よりも、ひと月早くドイツへ入国し、3月は語
特に重症患者の搬入の際には、各科のプロフェッショナル
学コースに参加しました。授業は平日の午前中にあり、最
が各自の専門性を生かして治療を行っていました。その迅
も初歩的なAクラスでは、自己紹介やあいさつなど日常生
速かつ的確な初期対応を見学することで、ドイツ医療のレ
活で使うドイツ語を習いました。マーブルクでは英語も通
ベルの高さや制度の違いを実感しました。また産婦人科で
じましたが、ドイツ語が話せるとコミュニケーションがよ
は現地の6年生が採血を任されており、彼らが朝7時半か
りスムーズにいき、生活が楽しくなりました。
ら仕事をこなし、患者から信頼されている様子に触発され
入国後には1週間のオリエンテーションがありました。 ました。学生でも一医療人として立派に働く彼らのたくま
そこでは学費の支払いなど手続きを済ませ、また大学の施
しさを見習い、組織に貢献できる医師になりたいと思うよ
設やマールブルクの町を巡るプログラムに参加して、勉強
うになりました。
面、生活面共に良いスタートを切ることが出来ました。さ
課外活動としては、大学の選択プログラムでサッカー観
らに夜には交流会があり、アメリカ、イタリア、韓国、ナ
戦をし、また寮の友達との持ち寄りパーティーや旅行をし
イジェリアなど、世界中から集まった留学仲間たちと触れ
ました。旅行で一番印象的だった場所はニュルンベルクで、
合いました。彼らの専門は医学だけではなく、ドイツ語や
神聖ローマ皇帝の居城を見学し、日本とは全く異なる生活
経済学、歯学など人それぞれなので、全く違う分野の学生
様式を肌で感じることが出来ました。とりわけ城の井戸や
たちと話をする体験はとても刺激的でした。
見張り塔は、第二次世界大戦を切り抜けて当時のまま残っ
4月18日から、本題のBSLがスタートしました。最初
ており、年季が入った石造りの様相に圧倒されました。
の2週間は、2人とも循環器内科に受け入れて頂きまし
マーブルクでのBSLを通してドイツの医師や医学生たち
た。循環器内科ではICUとカテーテル室の見学をさせて頂
と交流することで、来年医師として働き始める心構えが出
き、心房粗動に対するカルディオバージョン(電気ショッ
来たと感じました。言葉が通じずコミュニケーションに苦
ク)や心筋梗塞に対する経皮的冠動脈インターベンション
心したり、勝手がわからずに困ったりした場面もありまし
(PCI)を見ました。最も心に残ったのは、日本ではまだ
たが、そのような経験を乗り越えることで、全く新しい環
承認されていない新しい補助循環装置(Impella)を見る
境に適応する訓練ができたと考えています。最後になりま
ことができたことです。このような最先端のデバイスをい
したが、このような大変貴重な機会を与えて下さった国際
ち早く目にして、ドイツ医療が先進的であることを実感し
交流委員会の先生方をはじめ、教務課や医学部同窓会の
ました。
方々、そして現地の先生方に感謝いたします。ありがとう
循環器内科で実習を終えると、私たちはそれぞれ興味の
ございました。
− 12 −
平成28年度北里大学医学部同窓会
定期総会開催報告
医学部同窓会 会長 大 内 孝 文
おおうち・たかふみ
平成28年7月9日(土)午後5時30分より、新宿の京王
者の紹介・挨拶、黒川正治学術奨励賞受賞者の紹介、各支
プラザホテル本館44階「ハーモニー」にて、平成28年度北
部長の挨拶があり、閉会となりました。
里大学医学部同窓会定期総会を開催しました。これに先立
小雨降る蒸し暑い中、医学部同窓会の皆さんに多数ご出
ち、午後4時より第8回全国支部長会が開かれ、宮下俊之
席頂き、医学部と大学病院の更なる発展のため、多岐にわ
新医学部長のご臨席を頂き、医学部の現状等をお話いただ
たる議案を審議していただき、感謝申し上げます。
きました。その後、定期総会が開会し、会長挨拶、出席者
および委任状の確認を行い、定期総会の成立を宣言しまし
た。議長は2期生の加藤康行さん、議事録署名人として3
期生の大谷剛正さん、15期生の小島隆史さんを選出後、議
事が進行されました。第1号議案として平成27年度事業報
告、第2号議案として平成27年度会計報告を一括審議し、
会員の承認を得ました。引き続き、第3号議案として平成
28年度事業計画案(右記のとおり)、第4号議案として平
成28年度予算案について審議を行い、議案の一部修正後、
承認を得ました。第5号議案として役員選挙について(経
過報告)
、第6号議案はその他にて、審議は終了しました。
報告事項としては、教授・准教授昇任者13名、物故会員8
名の氏名を読み上げ、1分間の黙とうを捧げました。準会
員課外活動奨励賞の3団体・4個人賞の報告を行い、賞状
の授与と副賞の贈呈をしました。
その後、学校法人北里研究所理事長、医学部長、大学病
院長、北里研究所病院長、KMC病院長、名誉会員、特別
会員の先生方、準会員、そして会員等が集合し、写真撮影
を行いました(下記集合写真)。そして、午後7時より本
館44階「アンサンブル」にて懇親会を行いました。横田愼二、
山本豪明両同窓会理事の進行の下、会長挨拶、小林弘祐新
理事長(先生は医学部同窓会特別会員1号です)のご挨拶
(写真)、宮下俊之新医学部長のご挨拶、海野信也大学病院
長の乾杯のご発声(写真)、歓談、上石弘先生、東原正明
先生へ医学部同窓会名誉会員証の授与、課外活動奨励賞受
賞者の挨拶、キャタピラージャパン若手研究者助成金受賞
小林弘祐学校法人北里研究所
理事長
海野信也北里大学病院長
平成28年度事業計画
1.定期総会の開催(7月9日(土)京王プラザホテル)
2.全国支部長会の開催(7月9日(土)京王プラザホテル)
3.理事会(11回)の開催
4.医学部同窓会報の発行(3回)
5.会員への文献複写サービス業務
6.第15回市民公開講座の開催
7.北里大学医学部同窓会メールマガジン(MMKMA)の配信
8.支部活動・新規支部設立の支援、女医部会に支援、卒後10年・20年・
30年・40年同期会への支援
9.新規特別会員・賛助会員の勧誘
10.研修医ホームカミングデーを開催
11.医学部同窓会創立50周年記念事業への積み立て
12.全国私立医科大学同窓会連絡会、私立医科大学同窓会連絡会東部会、
神奈川医師会への参加
13.同窓会ホームページの管理・運営
14.黒川正治学術奨励賞の選考・運営
15.同窓生海外留学を支援
16.医学部同窓会教育支援
17.医学部困窮学生救済基金の運営・拠出(医学部・けやき会・同窓会)
18.同窓会会員および医学部関係者主催の学会への援助
19.医学図書館へ学生用図書の寄贈
20.記念品の贈呈(退任教授、会員の教授・准教授昇任者 他)
21.大学病院研修医オリエンテーションでの医賠保険の説明・勧誘
22.医学部長・大学病院長・医学部教授会との意見交換
23.医学部新入生歓迎会の開催
24.医学部ガイダンス・オリエンテーションでの学生生活の話(第3学
年、第6学年)
25.準会員(医学部学生)の海外実習に係る援助
26.準会員課外活動奨励賞の選考・授与
27.準会員(新第5学年)へ第9回「Sophia kai Ergon」(ギリシャ語
への変更)白衣授与式の開催
28.準会員(第2学年)の早期体験学習(地域医療実習)受入への協力
29.東京海上日動火災保険代理店業務の継続
30.全学同窓会との活動、会報「健康よもやま話」への投稿
31.会長選出方法についての検討
32.けやきサロンへの図書寄贈
33.東病院リニューアルに係る寄付
集合写真
− 13 −
教育研究単位紹介
外 科 学
外科学 教授 渡 邊 昌 彦
わたなべ・まさひこ
沿革
外科学は、医学部開設から阿曽弘一初代教授の卓越した
指導力・統率力のもと、多くの諸先輩方の尽力により、そ
の礎が築かれました。1986年の北里大学東病院開設時には、
一部の消化器外科、乳腺・甲状腺外科、血管外科を北里大
学病院に留め、消化器外科の大部分は東病院へ診療の拠点
を移しました。1989年から第2代教授である柿田章先生が就
任され、教室はさらなる拡大を遂げ、2003年12月に渡邊が第
3代教授に就任いたしました。
2014年5月の新北里大学病院開院に伴い、同年12月に東
病院の消化器外科が新病院に移設され、約28年ぶりに外科
が統合し、新たな第一歩を踏み出すことになりました。外科
学の担当領域は広く、現在は一般・消化器外科、乳腺・甲
状腺外科、小児外科の3部門からなり、各部門が連携し合い、
教育・研究・診療に従事しています。
術治療や抗癌剤治療に関する多施設共同研究に多数参加し
ています。また基礎研究では、消化器癌・乳癌に関するバイ
オマーカーの探索や治療効果予測因子・予後予測因子の検
討を主に行っています。現在、北里大学大学院医療系研究
科に4学年で13名が在籍し、日々研究に邁進しています。
診療
一般・消化器外科スタッフ18名(上部消化管外科6名、下
部消化管外科7名、肝胆膵外科5名)
、乳腺・甲状腺外科ス
タッフ6名、小児外科スタッフ3名の27名と初期・後期臨床
研修医15~20名を加えた総勢42~47名で随時診療にあたっ
ています。
「最先端の医療技術を最高のチームワークで」を
モットーに、チーム毎に専門的な医療を提供しています。ま
た看護師、薬剤師、栄養士、臨床検査技師等の他職種との
連携によりチーム医療を実践し、患者さん毎に最善の治療を
実施しています。
教育
消化器外科領域では、近年、低侵襲手術である内視鏡外
外科学は、手術的治療法を主な手段とする治療医学ない
科手術が急速に普及し、当科でも多くの消化器癌に対して
し応用医学です。近年の医学・医療の進歩により、各種疾
積極的に導入しています。安全性・教育性を重視した観点
患に対する手術療法は多岐にわたります。また高齢化に伴
より、術式を定型化し、手術成績の向上に努めています。現
い、患者さん側の要因も多種多様となっています。外科学
状(2015年度)では、胃切除の約60%(105/177例)
、食道
の基本的知識の上に、基礎・臨床各科の領域事項を含めた
切除の約50%(16/31例)
、大腸切除の約95%(216/226例)
、
系統的な知識を自分の中で再構築することが重要と考えて
肝切除の約70%(47/66例)
、
膵切除(体尾部)の約40%(8/20
います。
例)に内視鏡外科手術を導入しています。ロボット支援腹腔
第4学年の消化器系Ⅱでは、消化器疾患の病態、診断、 鏡下手術は胃切除に導入しており、今後は他の領域へ拡大
治療を網羅的に解説し、外科学総論では、続く臨床実習
していく方針です。また高度進行癌に対しては、消化器内科
が効果的に学べるよう配慮し、手術適応や術前・術後管理、 や放射線治療科等、他科との連携により抗癌剤治療や放射
術後合併症の管理、乳腺・甲状腺疾患(各論)
、小児外科疾
線治療を取り入れた集学的治療を推進しています。
患(各論)を中心に講義しています。第5学年の臨床実習
乳腺手術は年間に約300例、甲状腺手術は約110例、小児
(BSL)では、各グループが2週間毎に回り、担当患者さん
外科手術は約330例と県内有数の手術件数を誇ります。
との医療面接や手術実習に加え、手洗い・手術器械講習や
縫合結紮講習(内視鏡外科手術含む)
、OSCE講習、各部門
最後になりますが、今後、高齢化が進むにあたり、外科
の術前カンファレンス参加等、充実した内容にしております。 的治療の需要は増加の一途を免れません。これに反し外科
また第6学年の臨床実習(クリニカルクラークシップ)も同
医の数は年々減少しています。学生や臨床研修医の先生方、
様に担当患者さんを付けますが、加えて希望の手術実習を3
外科学に興味がある方は是非とも見学にいらして下さい。お
週間にわたり綿密に行ってもらいます。
待ちしています。
卒後教育では、初期臨床研修医に対し、基本的な
外科的手技として、切開や縫合・結紮の他、中心静
脈カテーテル挿入や胃管・イレウス管挿入等を習得
してもらい、内視鏡外科手術時にはスコピストとして、
より手術に積極的に参加してもらいます。また画像診
断や術前・術後の栄養管理、輸液管理、感染症の治
療に至るまで、外科的治療に関する事項を包括的に
習得することを目標としています。
研究
臨床研究では、消化器癌・乳癌領域を中心に、手
外科学スタッフ
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北里大学大学院医療系研究科
大学院生の参加が必要な教員プロジェクト研究について
北里大学大学院医療系研究科には、教員が医療系研究科
参考までに、平成28年~29年度に採択した学外共同研究
の大学院生を研究に積極的に参加させ、外部機関との共同
機関先は、①ニッピバイオマトリックス研究所、②慶應義
研究協定に基づいて実施する『教員プロジェクト研究』に
塾大学、③国立がん研究センター、④国立感染症研究所、
対して助成制度があります。
⑤千葉大学の5つの機関です。また、研究課題は、次のと
おりです。
『教員プロジェクト研究』は、大学院生の参加が必要な
□ 機能性コラーゲン材料を用いた運動器再生シーズ
研究であり、若手研究者の育成や更なる大型の学外競争的
の育成・実用化研究
資金の獲得を目的とした研究プロジェクトです。2か年に
□ iPS細胞を用いた遺伝性パーキンソン病のinvivo病
わたり助成し、原則として、初年度上限500万円、2年目
態モデルの作製および創薬研究
が初年度の半額を助成することにしています。
□ リンパ種および肺がんの融合型ALKキナーゼによ
金額的には、文部科学省科学研究費補助金基盤研究Bに
る腫瘍悪性化シグナルの解析
相当する助成といえます。
□ バクテリオファージを利用した新規ディフィシル
申請は、医療系研究科の教員が行います。審査は、書類
菌感染症の治療法の開発
審査によります。研究委員会および外部評価委員が採点の
□ 骨粗鬆症と痛み-骨粗鬆症由来疼痛機序の解明と
うえ、採択する研究及び助成額を決めています。
骨粗鬆症治療薬の効果
過年度等の採択状況
平成25年~平成26年度:応募15件 ⇒ 採択6件
昨今の科研費の取得における競争の激化を考えると極め
平成26年~平成27年度:応募7件 ⇒ 採択5件
て魅力的な制度です。ふるって多くの大学院教員・大学院
平成27年~平成28年度:応募8件 ⇒ 採択5件
生チームの申請を期待します。
平成28年~平成29年度:応募11件 ⇒ 採択5件
〔詳細は、医療系研究科ホームページをご覧ください〕
「第42回北里医学会総会」のご案内
日時:平成28年11月12日(土)14時30分~
内容:評議員会、総会、北里医学会賞贈呈・受賞講演、
会場:小田急ホテルセンチュリー相模大野
(8階・フェニックス)
黒川賞受賞講演
公開市民講座Ⅰ-教授就任講演-
公開市民講座Ⅱ-卒業生顕彰講演-
公開市民講座Ⅲ-招待講演-
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8 月下旬に 6 年生の総合試験の試験監督をしました。試験時間と出題形式は国家試験
に準じ、試験は 3 日間実施されました。私が国家試験を受けた頃は 2 日間でしたが、気
力体力ともに疲弊し、最後の方は精神力との闘いだったと記憶しています。今回、私は
3 日目最後の試験時間の担当でした。学生達はさすがに疲れ切った様子で、そんな学生
達を見ていると、ふと、この夏大いに活躍されたオリンピック選手の姿と重なりました。
オリンピック選手達は 4 年間、日々切磋琢磨し厳しい練習を乗り越え、身体だけでなく
心をも鍛えて試合当日本番に全てを最高潮の状態へ持っていきます。また学生達も、 6
年の間、学力はもちろんのこと気力精神力も鍛えて、 3 日間の国家試験に臨みます。オ
リンピックと異なり、医師の道は国家試験をパスしてからが本番ですが、学生の皆さんが、
これまでの成果を試験当日にいかんなく発揮できるように、皆が入賞(パス)できるよう
に、母校の一先輩としてエールを送ります。頑張れ!!(C・N)
部活紹介
釣り同好会
赤 澤 悠 希
第4学年 あかざわ・ゆうき
皆さんこんにちは、釣り同好会です。部員は30人程
度で、月に一度、海辺での釣りをメインに活動してい
ます。アウトドアの同好会が医学部には存在しなかっ
たため、釣りに興味がある人や同好会なら入りたいと
思っている人などで設立しました。設立1年目ですの
で失敗することもあるかと思いますが、その経験を活
かしてより良い同好会にできるように取り組んでい
ます。
春に釣ったメバル
釣りは一生を通してできるので、この同好会で一生
の趣味を見つけることができ、同学年、他学年との交
流によって、様々な観点や思考を学ぶことができます。
学んだことはチーム医療に活かすことができると思っ
ています。釣りの経験者もいますので、初心者でも一
から教わることができ、和気あいあいと楽しく釣りを
することができます。大物が釣れるよう、日々努力し
ていきたいと思います。
夏に釣ったアジの三枚おろし
編 集 後 記
選手たちの輝く笑顔が印象的だったリオオリンピック・パラリン
ピックが多くの感動を残して閉会し、季節は秋、キンモクセイの香り
が風に乗ってやってくるようになりました。秋といえば、
「○○の秋」
・
・
芸術の秋、読書の秋、スポーツの秋、食欲の秋、いろいろとありますが、
新しいことにチャレンジするにはぴったりの季節です。
さて、毎年恒例の「進学ブランド力調査2016」がリクルート進学
総研より発表されました。高校生の大学選びの動向を明らかにする
ため、年に1回、高校3年生を対象として行っている調査です。国公
私立大学に対する志願度、知名度、イメージを調べています。北里
大学は、理系女子の志願度ランキング(関東エリア)で第1位に選
ばれました。また、理系男子、理系女子の知名度ランキングはともに
20位以内の上位にランクイン、そして「資格取得に有利な大学」
「専
門分野を深く学べる大学」とのイメージが強いとの評価を受けまし
た。この調査は、北里大学全学部を反映したものですが、医学部も
もちろんその一翼を担っています。
今号では、教員がより良い講義をするためにどうしたら良いのかを
議論し、熱心に「教育」を学んでいる姿や、学生が海外の医療現場
で実習し、文化による医療の違いを感じる貴重な経験をしたことをお
伝えしました。
大学のイメージは、時間の経過とともに自然と形成されていくこと
もありますが、少子化が叫ばれる現在、多くの大学はアピール可能
なイメージ形成とそれを核とした学びの場づくりに力を注いでいます。
私たち医学部の独自の教育方針や先進的なプログラム、学生が成長
する機会を提供する取組みがより広く届くように、コミュニケーショ
ンツールとしての本誌も内容の充実に努めていきます。
(M・Y)
医学部ニューズ〔第369号〕
http://www.med.kitasato-u.ac.jp/
●発行責任者 宮 下 俊 之
●編集責任者 村 雲 芳 樹
〒252-0374 相模原市南区北里1-15-1
北里大学医学部内 医学部ニューズ編集委員会
TEL.042-778-8704
(直通)
FAX.042-778-9262
E-mail [email protected]
●発 行 日 平成28年9月30日発行