ラテックス法を用いたDダイマー測定における血栓症診断域での適応

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ラテックス法を用いたDダイマー測定における血栓症診断域での適応についての検討
◎磯村 美佐 1)、森保 由美子 1)、加藤 ゆかり 1)、野々山 真由 1)、岡田 元 1)
安城更生病院 1)
【目的】D ダイマー測定は播種性血管内凝固症候群(DIC)の
0.20、r=0.87、正常値域内検体での CV(%)は通常群 14.2、希
病態の把握に有用であると共に、血栓症診断のために重要
釈変更群 3.3、バイダス群 1.4 であった。希釈倍率を変え測
な検査である。測定原理としてはラテックス免疫比濁法が
定する事で低濃度域でも安定した結果を得られた。健常人
広く用いられているが、低濃度域での再現性に劣る。そこ
中バイダス群で陽性となった 2 検体を除く 48 検体の平均値
で今回、静脈血栓塞栓症(VTE)の診断域での適用について
(μg/mL)は通常群 0.24、希釈変更群 0.27、バイダス群
比較検討を行った。
0.40 であった。これらの値より求めた平均値+2SD(μg/ml)は、
【対象】健常人 50 名、比較対象として血栓症患者 25 名に
通常群 0.59、希釈変更群 0.62 であり、この値をカットオフ
ついて検討した。
値とすると 25 検体中 8 検体が VTE と診断された内、通常
【方法】リアスオート・ D ダイマーネオ試薬を使用し、全
群では 6 件、希釈変更群 7 件が陽性となった。バイダス群
自動血液凝固測定装置 CS-5100(共に Sysmex)を用い測定を
では 7 件が陽性であった。希釈変更群、バイダス群共に陰
行った群(通常群)と、分析条件の検体希釈倍率を変え測定
性となった 1 件は臨床症状より慢性期の血栓であった。
した群(希釈変更群)、対照として高感度 D ダイマー測定法
【考察】ラテックス法でも希釈倍率を変える事で低濃度域
であるバイダス D ダイマー試薬(蛍光酵素免疫測定法)を用
でも良好な結果が得られ、自施設の VTE に対するカットオ
い、ミニバイダス(共に Sysmex ・ビオメリュー)で測定した
フ値を設定することにより、除外診断の補助役割をなすこ
群(バイダス群)とで検討を行った。患者検体では、関連項
とが出来る。但し年齢による変化も考慮する必要があると
目である FMC、FDP についても測定を行った。
考える。また他項目との同時測定により他の血栓症の検出
【結果】通常群とバイダス群との回帰式:y=0.70x+0.23、
感度は高まる。 連絡先:0566-75-2111(内線 6151) r=0.83、希釈変更群とバイダス群との回帰式:y=0.73x+
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DダイマーとFDP測定値が逆転した例の精査
◎中武 志津香 1)、今駒 憲裕 1)
福岡市医師会 臨床検査センター 1)
【はじめに】
SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により検出。
線溶の指標であるDダイマーは安定化フィブリノゲンの
【結果】
みを捉え、FDPはフィブリン分解産物とフィブリノゲン
①希釈試験:Dダイマーの希釈直線性は良好であった。一
分解産物を捉えている。よって、両項目を比較すると、F
方、FDPでは希釈倍率 4 倍までは測定換算値が上昇し、8
DPの測定値の方が高値となるが、稀に逆転現象に遭遇す
倍以降で安定した。②吸収試験:Dダイマーでは抗FDP
る。その 1 例について精査する機会を得たので報告する。
-E抗体で高い吸収、FDPでは抗 Fbg 抗体で完全な吸収
【使用機器・試薬】
が認められなかった。他の抗体において吸収は認められな
株式会社 LSI メディエンス社 LPIA-NV7
かった。③ウェスタンブロッティング:FDPMAb では
エルピアエース D-D ダイマー・エルピア FDP-P
XDP ・ XorYD ・ DD 分画が強く、D 分画が弱く検出され、
【方法】
a-FPA では X 分画が強く検出された。
①希釈試験:真値を確認するため、それぞれの項目におい
【まとめ】
て 16 倍までの倍々希釈による測定。②吸収試験:各種抗
ウェスタンブロッティングの結果より、逆転現象が起こ
体による非特異反応の確認。使用抗体として抗 IgG 抗体・
った原因はフィブリノゲン分解産物の一部である X 分画が
抗 IgA 抗体・抗 IgM 抗体・抗 FDP-E 抗体および抗 Fbg 抗
過剰に含まれ、それにより低希釈では真値を得られなかっ
体を用いて吸収し、遠心後上清のDダイマー・FDPを測
たと考えられる。尚、吸収試験において抗 Fbg 抗体で完全
定。③ウェスタンブロッティングによる各分画の反応性:
な吸収が認められなかったのは、Fbg 量に対し抗血清量が
抗FDPマウスモノクローナル抗体(以降、FDPMAb)と
少なく充分な吸収が得られなかった事によると思われる。
抗フィブリノペプチド A 抗体(以降、a-FPA)を用いて
連絡先 092-852-1506(内線 2679)
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血漿 FDP 測定試薬ヘキサメイト P-FDP の新旧試薬における乖離例の解析
◎新井 慎平 1)、荻野 結加 1)、竹澤 由夏 1)、宮﨑 あかり 1)、中越 りつこ 1)、井出 裕一郎 1)、川崎 健治 1)、菅野 光俊 1)
信州大学医学部附属病院 1)
【はじめに】フィブリノゲン/フィブリン分解産物(FDP)は、
(DTT)処理後の測定値の比較、5)マウス血清との反応性を
DIC 診断や血栓症の治療判定に利用される線溶マーカーで
ELISA により確認した。なお、本研究は信州大学医学部医
あり、近年、フィブリノゲンには反応しないモノクロナー
倫理委員会の承認を得て行った。
ル抗体を用いた血漿 FDP 測定試薬が開発されている。汎用
【結果】①基礎的検討:新試薬の性能は良好であり、旧試
測定試薬としてヘキサメイト P-FDP(ロシュ・ダイアグノス
薬との相関性は、回帰式 y = 0.935x-0.579、相関係数
ティックス:旧試薬)が販売されているが、非特異反応の抑
r=0.991 となり、良好な相関性を示した。相関性検討で
制と一次線溶産物との反応性を改善したヘキサメイト P-
6 検体に乖離を認めたが、いずれも同一患者の検体であっ
FDP N(新試薬)が新たに開発された。今回、新旧試薬の相関
た。②乖離例の解析:乖離例は旧試薬において希釈直線性
性検討において旧試薬で高値を示した検体を認め、それら
が得られなかった。RF は陰性であり、WB 解析では
の乖離検体について解析を行ったので報告する。
FDP に相当する明瞭なバンドを認めなかった。一方、
【対象および方法】①基礎的検討:対象は、2013 年 8 月か
DTT 処理によって乖離例の測定値は約 40%低下し、また
ら 2014 年 7 月の期間に提出された凝固検査用検体 720 例の
ELISA によりマウス血清に対して IgA 抗体が健常者と比較
残余検体を用いた。測定機器は 7180 型日立自動分析装置
して有意に反応していることが確認された。
(日立ハイテクノロジーズ)を使用し、同時・日差再現性、
【考察】新旧試薬の相関性検討において、旧試薬で高値を
最小検出感度、希釈直線性による試薬性能評価を行った上
示す乖離検体の解析を行った。解析結果より、マウス血清
で、旧試薬との相関性を検討した。②乖離例の解析:1)希
に反応性を有する IgA 抗体の存在が示唆された。
釈試験、2)リウマチ因子(RF)の定量、3)ウェスタンブロット
(WB)法による FDP 分画の確認、4)ジチオスレイトール
連絡先:検体検査室 0263-37-2800(内線 6400)