Women Matter: An Asian Perspective 女性が企業にもたらすインパクト

Women Matter: An Asian Perspective
女性が企業にもたらすインパクト:
女性が企業にもたらすインパクト アジア諸国の現状
マッキンゼーでは、2007 年より、「企業における女性の活用」というテーマで
欧米を中心に研究を進めてきました。今回は、本テーマにおけるアジア諸国の
現状や取り組みについての調査・分析内容をまとめたものをご紹介いたします。
「Women Matter: An Asian Perspective(女性が企業にもたらすインパクト: アジア
諸国の現状)」は、アジアの企業における女性の活用について、マッキンゼーが
初めて本格的に調査・分析した内容をまとめています。アジアでは、リーダー
シップを備えた女性が数多く存在するにもかかわらず、企業はこうした女性を
十分に活用できていないのが現状です。この問題に対し、本報告書では、「ア
ジアでの人材不足が深刻化しているにもかかわらず、多くの企業が自社の成長
に重要な影響を与えかねないこの問題を見落としている」と、指摘しています。
本調査は、アジア主要 10 ヵ国の上場企業 745 社を対象として行いました。取締
役および執行役員の性別構成比の分析を行うと同時に、1,500 人の上級管理職に
対してアンケートを実施しました。その結果、上級管理職に占める女性の比率
は低く、現時点で人材の多様性を重要な戦略的課題として位置づけている企業
はアジアではごく少数であること、そして近い将来この状況が変わる可能性は
低いと考えている管理職が大半を占めていることが判明しました。
現在、アジアの大卒者の約半数は女性が占めています。しかしながら、この地
域で管理職に就く女性はごくわずかであり、経営トップとなると更に少ないこ
とが明らかとなりました。企業の取締役、および執行役員に占める女性の割合
はそれぞれ平均 6%、8%であり、欧米に比べ極端に低い結果となっています。た
だし、欧米における女性役員の割合も決して高いわけではなく、それぞれ欧州
では 17%と 10%、米国は 15%と 14%となっています。(図 1 参照)
マッキンゼーでは、2007 年に「企業における女性の活用」というテーマに取り
組みはじめてから、経営層に占める女性比率を高めるため、女性活用の効果と
リスクを明らかにしてきました。その一つとして、女性の活用が経営に与える
インパクトを分析した結果、経営陣に占める女性比率と企業の業績には正の相
関関係があることを確認しています。つまり、企業の業績から見ても、女性活
用の重要性が浮き彫りとなっているのです。(図 2 参照)
マッキンゼー上海オフィスのディレクターで本報告書の共著者の一人である
Claudia Sussmuth-Dyckerhoff 博士は、「アジア全域で人材不足はますます深刻に
なってきており、優秀な人材を獲得するための競争が激しさを増しています。
そんな中、アジアの企業にとって、優秀な女性をいかに活用していくかが、今
後の成長に向けての必須条件となるでしょう。つまり、企業がいかに人材の多
様性を受け入れるかが重要な課題になりつつあるのです」と述べています。
「人材パイプライン」が女性起用の鍵
本報告書では、企業の経営層における女性比率を高めるためには、組織のあら
ゆる階層に女性がまんべんなく配置される必要があると指摘しています。つま
り、組織のあらゆる階層の中に女性を起用し、「女性の人材パイプライン」を
強化することが、経営層における女性比率を高めることにつながると考えてい
ます。ただし、もともと女性労働者の割合が少なく、パイプラインを構築でき
ない市場も存在します。例えば、インドの場合、働く女性の割合は 35%と世界
で最も低い水準となっています。また、台湾とマレーシアも 50%未満と、決し
て高い割合とは言えません。こうした国は、現状では女性を労働力として活用
できておらず、企業は成長する機会を逃している可能性が高いと考えられます。
しかしながら、見方を変えれば、これらの国では働く女性の比率を増やすこと
で長期的な成長がもたらされることも期待できます。(図 3 参照)
マッキンゼー上海オフィスのパートナーで本報告書の共著者の一人である Jin
Wang 氏は、「女性が企業に入っても、キャリアの早い段階で行き詰ったり中間
管理職で離職してしまったりと、トップに上り詰めないままキャリアを終わら
せてしまう人は少なくありません。例えば、世界で最も働く女性の割合が高い
中国でさえも、取締役と執行役員に占める女性の割合はそれぞれ 8%と 9%と低
い水準なのです」という見解を示しています。
アジアの大卒者の約半数は女性が占めています。にもかかわらず、上級管理職
や経営層に占める女性の比率が低いということは、人的資源が無駄遣いされて
いると考えられます。マッキンゼー・グローバル・インスティテュート*が最近
実施した調査では、2020 年までに、中国では高度なスキルが求められる職種の
求人数に対して求職者数が 2,300 万人不足し、インドでは中程度のスキルが求め
られる職種の求人数に対して求職者数が 1,300 万人不足すると予測されていま
す。また、最近中国で実施した別の調査では、中国系企業 60 社の役員の 44%が、
「グローバル展開を目指す上で人材不足が大きな障壁となっている」と回答し
ています。すなわち、今後、優秀な人材を確保することはますます難しくなり、
企業がグローバル展開など成長を実現する上で人材不足が障壁となり得ること
が分かります。
Wang 氏は、「これはまさに企業内のあらゆる階層、特に上級管理職レベルで女
性の割合を増やす必要があることを示しています。世界市場で戦うアジア企業
で、より多くの女性を起用する努力をしていない企業は、『人材不足の時代に
優秀な人材を確保できないと同時に、女性リーダーがもたらす業績へのインパ
クトを取り逃がしている』と言えます」と指摘しています。
人材多様化の重要性に気づかない企業上層部
女性の登用・人材育成を実践しているケースも存在する一方で、今回の調査対
象となったアジア企業の役員のうち 70%は、人材多様化の推進を戦略的に重要
な課題として位置づけていないと回答しています。2011 年に欧州で行った調査
ではこの数字は 47%。また、今後 5 年間で人材多様化の推進に取り組むとした
役員は半数以下で 40%程度でした。(図 4 参照)
以上の結果から、短期間でアジアの女性を取り巻く状況が一変する可能性は低
いと考えられます。各企業の要職に就く人々のごく一部は変革の必要性を感じ
ていますが、大半の人は依然、従来の認識のままです。また、企業の上層部に
おける女性の数がごく少数なため、人材多様化の重要性を認識している市場や
企業でも、実際にどの程度の影響があるのか分かりにくいという問題もありま
す。
さらに本報告書では、アジアでは、女性の昇進を阻む要因として、女性のビジ
ネスリーダーの 40%が働きながら家族の面倒も見るという「二重の負担」を強
いられている事実を指摘しています。実際、インド、韓国、日本のビジネスリ
ーダーのほぼ半数が、女性が離職する大きな理由に「家庭問題」を挙げていま
した。(図 5 参照) そして、もう一つの要因とされているのが、公共政策やサポ
ートサービス(例: 保育サービス)の不足です。一方、欧州での調査では、こうい
ったことは大きな障壁としては挙がっていません。
女性起用の鍵を握るのは CEO
アジアの企業において女性の活用を推進し経営層への登用を進めるためには、
政府、ビジネスコミュニティ、そして個々の企業がそれぞれに取り組みを進め
ていかなくてはなりません。本報告書では、企業として取り組むべき内容につ
いて焦点を当てています。
Sussmuth-Dyckerhoff 博士は、「私たちが米国と欧州で行った調査では、女性の
活用を推進するためには、経営トップによるコミットメント-女性社員の育成
プログラム、そして人事やマネジメントなど、女性が社内でキャリアを構築す
るために必要な制度を含むサポート体制を整える必要性が明らかになった。こ
れはアジアにも言えることだと思う」と述べています。(図 6 参照)
しかし、アジアでの調査では、女性の活用を推進するために必要なプログラム
を実施している企業はわずか 12%にとどまっています。また、CEO やその他役
員など、企業のトップが「女性の活用」というテーマに明らかにコミットメン
トを示している企業は、ごく限られた一部となっていました。例えば、CEO や
役員陣が女性の活用に関するプログラムの進捗度合いを目に見える形で確認し
ていると回答した企業は、わずか 15%しかありません。
このような結果から、経営トップ自らが変革を推進しない限り、人材多様化イ
ニシアチブで大きな効果が見込めないことは明らかです。
より多くの女性を経営層に登用するために、経営トップが担う役割は甚大です。
すなわち、女性を活用することによる企業業績へのインパクトを周囲に説明し、
自ら女性を登用・サポートして周囲の見本となると同時に、女性を育成するた
めの組織作りを目標とし、この目標達成に向けて、自ら責任を持って管理する
ことが不可欠なのです。
「その他の大規模な変革プログラムと同様に、経営層への女性の登用を確実に
高めていくためには、経営トップによるコミットメント、そして会社全体が女
性活用の重要性を認識し、目標達成に向けて真剣に関与することが求められる」
と Sussmuth-Dyckerhoff 博士は言っています。
「アジアの企業そして経済は、人材としての女性の活用によって大きな恩恵を
受けることができるはずです。人材多様化の推進を最重要課題として掲げるこ
とは、非常に良いビジネスと言えるのです。」
図1
アジアでは、西欧に比べて経営層に占める女性の比率が低い
%; 2011
執行役員に占める女性の割合 取締役に占める女性の割合
スウェーデン
ノルウェー
英 国
フランス
ドイツ
欧州
シンガポール
オーストラリア
香 港
中 国
マレーシア
インド
韓 国
日 本
アジア
21
25
15
35
16
11
8
20
3
16
15
7
12
13
11
9
9
8
5
5
3
5
2
1
1
2
資 料: 各国の株式上場企業の年次報告書および記事検索に基づいた分析
McKinsey & Company
図2
執行役員に占める女性比率が高い企業のほうが、女性がいない企業に比べ利益率が
高い
%; 2007
~09
平均ROE
平均EBIT マージン
1
2
22
+41%
17
15
11
執行役員の
女性比率が
高い企業
(上位25%)
執行役員に
女性がいない
企業
+56%
執行役員の 執行役員に
女性比率が 女性がいない
高い企業 企業
(上位25%)
株主資本利益率
1 Return on Equity =
2 Earnings before Interests and Taxes =
資 料:
支払金利前税引前利益
企業ウェブサイト、Datastream、マッキンゼー分析
McKinsey & Company
図3
日本企業では、エントリーから管理職へ進むステップでボトルネックが存在する
% ; 女性の割合
1
エントリー 中間~
~上級 執行役員
レベルの 中間
管理職
職種
大卒
中国
インド
日本
韓国
シンガポール
マレーシア
インドネシア
オーストラリア
台湾
香港
CEO
取締役
50
55
21
9
1
8
42
29
9
3
<1
5
49
45
11
1
<1
2
48
40
6
2
<1
1
49
50
20
15
8
7
57
53
11
N/A
5
6
57
47
20
N/A
5
6
57
45
N/A
12
3
13
49
44
18
9
1
8
54
52
23
11
2
9
推計
資 料: マッキンゼーデータベース(2011年)、政府刊行物、文献検索
1
McKinsey & Company
図4
日本企業において、女性活用の推進は重要な戦略的課題と位置づけられていない
「女性活用の推進は、戦略的課題としてどの程度重要ですか?」
%; 全回答者の中で重要と答えた人の割合
トップ10
トップ10
圏外
30
45
39
37
36
52
55
61
63
64
韓
国
オー
スト
ラリ
ア
マレ
ー
シア
シン
ガポ
ー
ル
イン
ド
48
53
70
47
欧
州
平
均
アジ
ア平
均
資 料: 「Women Matter: An Asian Perspective 」(2012年)、「Women Matter」 (2012年)
27
25
23
23
21
73
75
77
77
79
中
国
日
本
イン
ドネ
シア
香
港
台
湾
McKinsey & Company
図5
日本企業において
日本企業において3割以上の女性は、「女性は家庭を守るべき」という価値観が離職の
原因になると感じている
「ご自身の国で、『女性は家庭を守るべき』という考え方は、どの程度女性の離職行動に影響している
ご自身の国で、『女性は家庭を守るべき』という考え方は、どの程度女性の離職行動に影響している
と思いますか?」
%1; 全回答者に占める割合
アジア全体
n = 1,623
そのような考えがほとんど
すべての女性の離職行動
に影響していると思う
そのような考えが多くの
女性の離職行動に影響
していると思う
そのような考えが一部の
女性の離職行動に影響
していると思う
そのような考えはごく一部
の女性の離職行動に影響
していると思う
そのような考えは強くない
8
中国
日本
n = 162
4
20
韓国
n = 154
28
23
27
15
24
17
13
2
13
20
18
10
「分からない・回答しない」と答えた回答者は示していない
資 料: 「Women Matter: An Asian Perspective」 (2012年)
n = 251
3
31
27
7
27
n = 229
16
11
13
シンガポール オーストラリア
n = 132
12
39
17
21
42
17
16
1
McKinsey & Company
図6
女性を活用するための仕組み作り
女性を活用するための仕組み作りを組織全体として推進することが必要
作りを組織全体として推進することが必要
女性活用に向けた仕組み(エコシステム)を構成する各要素
企業数 = 235
女性社員のネットワーキング
およびロールモデル育成の
推進
▪ 社内メンタープログラム
▪ 女性社員を対象としたスキル
育成プログラム
▪
▪
▪
▪
▪
▪
▪
▪
マネジメントの
コミットメント
女性の能力
開発プログ
開発プログ
ラム
40%
経営トップ(CEO)のコミットメント
執行役員のコミットメント
上級管理職への女性登用率に
対する目標設定
▪ 人材多様化の企業文化の醸成
▪
▪
▪
支援制度の
創設
仕事と家庭の両立を支援するサポートサービスと施設
労働条件と勤務場所についての柔軟性のあるオプション整備
女性人材の採用、維持、昇進、育成に関する企業パフォーマンスの評価指標の策定
出産・育児休暇など、柔軟な勤務形態の影響を緩和する評価体系の構築
出産・育児休暇の前・中・後の円滑な移行を支えるプログラムの策定
社内の女性管理職の定員数の確立
女性に焦点を当てた採用イベント
資 料: 「Women Matter」 (2012年)、マッキンゼー
McKinsey & Company
□
□
□
「Women Matter: An Asian Perspective(英語による原文) 」は www.mckinsey.com
からダウンロード可能です。
マッキンゼー・アンド・カンパニーについて
グローバルな経営コンサルティングファームとして、世界をリードする数多く
の企業や組織を対象に、様々な戦略課題解決の支援を行っています。世界 50 ヵ
国以上に拠点を展開し、戦略、運営、組織、技術的課題の解決に向けたコンサ
ルティングを提供。80 年以上にわたり、最も信頼のおける外部アドバイザーと
して、シニアマネジメントが直面する主要課題の解決をサポートしています。
(www.mckinsey.com)
* マッキンゼー・グローバル・インスティテュート
マッキンゼー・グローバル・インスティティート(MGI)は、1990 年、世界の重要
問題に関して独自の研究を行うことを目的に、独立したグループとしてマッキ
ンゼー・アンド・カンパニー・インクの内部に設立されました。マッキンゼー
の顧客企業とコンサルタントのために世界の経済や社会問題などについて洞察
し、より正確な理解を得ることを第一の目的としています。MGI は随時報告書
を一般に公表しており、MGI が国際的な視点に立ち、業界の経済状態について
のマッキンゼーの知識を利用して、政策論議に貴重な事実を提供し得ると判断
した場合に刊行しています。
本報告書に関するお問い合わせ・
本報告書に関するお問い合わせ・取材の申し込み
マッキンゼー・アンド・カンパニー
エクスターナル・リレーションズ
山崎静子 / 安藤恵子
E メール: shizuko [email protected] / keiko [email protected]
電話: 03-5562-2048