乗用車向けテレマティクスサービス市場に関する調査

2015 年 7 月 6 日
乗用車向けテレマティクスサービス市場に関する調査結果 2015
2019 年日米西欧中国における乗用車テレマティクス端末は新車の 8 割搭載を予測
【調査要綱】
矢野経済研究所では、次の調査要綱にて日本、米国、西欧主要 5 カ国(イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン)、
中国の乗用車向けテレマティクス市場の調査を実施した。
1.調査期間:2014 年 11 月~2015 年 5 月
2.調査対象:国内外の乗用車向けコネクテッドカー/テレマティクス端末ベンダー、サービスプロバイダー等
3.調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail 等によるヒアリング、及び文献調査併用
<テレマティクスサービスとは>
本調査におけるテレマティクスサービスとは、Telecommunication(通信)と Informatics(情報科学)を組み合わせた造語で、
自動車などの移動体に通信システムを組み合わせてリアルタイムに情報サービスを提供することができ、主に自動車メーカ
ーが自社車両に向けて提供するサービスをさす。
<ディスプレイオーディオ(DA)とは>
ディスプレイオーディオ(DA)とはナビゲーション機能をもたない「ディスプレイ+AV 機能(AM/FM ラジオ程度)」製品であ
る。オプションのリアビューカメラを装着すれば駐車支援システムにもなる。またスマートフォンと連携させれば、スマートフォ
ン上のアプリケーション(音楽配信、ナビゲーション、SNS など)を DA のモニター上で表示できる。
【調査結果サマリー】
◆ 乗用車向けテレマティクスサービスのうち、新ビジネス系には他業界からの参入も
乗用車向けテレマティクスは、エンターテインメント・利便系テレマティクスサービス、走行系テレマティ
クスサービス、自動車新ビジネス系テレマティクスサービスの 3 分野で進展していくものと考える。自動車
新ビジネス系テレマティクスサービスにおいては、自動車メーカーや、IT・スマートフォン業界の事業者
のみならず、これ以外のサービス事業者も参入するものと考える。
◆ 2019 年の日本、米国、西欧主要 5 カ国、中国における
乗用車向けテレマティクス端末は 5,080 万 9,000 台、新車の約 8 割の搭載を予測
日本、米国、西欧主要 5 カ国(イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン)、中国における乗用車向
けテレマティクスサービス用端末(カーナビ、PND、DA、バックミラーモニター)の搭載台数の合計値は
2019 年で 5,080 万 9,000 台を予測する。これは日本、米国、西欧主要 5 カ国、中国の乗用車新車販売
台数の約 8 割に搭載されることになる。
◆ 資料体裁
資料名:「2015 年度版 乗用車向けコネクテッドカー/テレマティクス市場予測
-ITS 調査 VOL.2 市場分析編-」
発刊日:2015 年 5 月 29 日
体 裁:A4 判 355 頁
定 価:165,000 円(税別)
◆ 株式会社 矢野経済研究所
所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝
設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/
本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/)
㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected]
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
本資料内容を転載引用等されるにあたっては、上記広報チーム迄お問合せ下さい。
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2015 年 7 月 6 日
【調査結果の概要】
1. 乗用車向けテレマティクスサービスの概況
乗用車向けテレマティクスは主に自動車メーカー(完成車メーカー)が独自のサービスを展開してき
た。Tier 1 といわれる1次請け自動車部品メーカーは自動車メーカーのテレマティクスサービス拡大に向
け、主に地図配信、IP ラジオ/音楽配信、SNS などのエンターテインメントや利便性の高いテレマティクス
サービスに協力体制をしいてきた。
昨今では、IT・スマートフォン事業者が参入し、これまで自動車メーカーを中心に行われてきたテレマ
ティクスサービスにオープンなネットワークを活用し、より幅広い情報を提供するサービスへと進化させて
きている。この背景にはスマートフォン連携機能を利用した情報サービス利用が本格化することに加え、
外部のサーバと車載機を連携させるためのクラウド環境が整備されてきたことがある。
こうした流れのなかで新たに、テレマティクス保険、カーシェアリングサービス、タクシー配車サービス、
各種のビッグデータを活用したサービスなど、自動車新ビジネス系テレマティクスサービスも提供され始
めてきている。
乗用車向けテレマティクスは上述したように、エンターテインメント・利便系テレマティクスサービス、走
行系テレマティクスサービス、自動車新ビジネス系テレマティクスサービスの 3 分野に大別されるものと
考える。エンターテインメント・利便系テレマティクスサービスにおいてはこれまで自動車メーカー、及び
関連メーカーにより提供されてきたが今後はスマートフォン大手 OS ベンダー2 社をはじめとする、IT・ス
マートフォン業界の事業者が中心になるものと考える。走行系テレマティクスサービスにおいては、自動
車メーカー、及び関連メーカーに主導されるものと考えるが、電気自動車(EV)などにおいては一部、
IT・スマートフォン業界の事業者も参入することが想定される。
また自動車新ビジネス系テレマティクスサービスにおいては、自動車メーカーや、IT・スマートフォン
業界の事業者ばかりでなく、これ以外のサービス事業者も参入するものと考える。
表 1. 乗用車向けテレマティクスサービス
分野
サービス名
IPラジオ/音楽配信
地図配信
エンターテイン
メント・利便系 SNS/ライフログ
テレマティクス
ハンズフリー
エージェント
プローブサービス
遠隔故障診断・修理
走行系テレマ
eCALL
ティクス
エネルギーマネジメント
自動運転支援サービス
テレマティクス保険
カーシェアリングサービス
自動車新ビジ
タクシー配車サービス
ネス系テレマ
(相乗りサービス)
ティクス
車載NFCサービス
ビッグデータ活用サービス
(スマートシティサービス)
主なサービスの内容
楽曲アーティストごとの番組など、自動化された楽曲配信サービスなど
プローブサービスや各種解析から、リアルタイムで更新・変更した地図の配信サービス
車載センサ等を利用し、クルマの利用者、メーカ、ディーラーなどをSNSで結びサービス利
用
携帯電話の車内利用廃止のためのシステムサービス
あたかも人物が存在しているかのように、ドライバーと会話しながらアプリケーションを動か
すサービス
実際に自動車が走行した位置や車速などの情報を用いて生成された「渋滞・混雑情報」な
どの道路交通情報サービス
販売店とメーカーとが、インターネット経由で車の故障や不具合を遠隔操作で診断し、通
信利用でソフトウエア・アップデートによる故障修理を可能とするサービス
欧州では、重大事故発生時に自動で緊急通報をするシステム(eCALL)の搭載が、欧州委
員会(EC)によって2015年10月より義務化される予定
自動車の燃費向上にむけて、クルマの走行状態に応じたエネルギー効率の最適化を目
指すためのサービス
オートクルーズ機能からドライバー運転機能に移行する際などに用いられる安全走行支援
のためのサービス
テレマティクス機能を応用した自動車保険で、走行距離を保険料に反映させるもの、ドライ
バーの運転行動から事故リスクを分析するものなどがある。
カーシェアリングの予約や会員認証、ドアロック開閉などを遠隔管理するサービス
タクシー配車や乗合自動車の申し込み、到着時間・料金確認、決済などのサービス
NFC利用の車載での決済、キーロック、運転席シートやオーディオのカスタマイズ等を行う
サービスで、今後期待されるサービスである。
所有者の個人情報を活用した各種サービスで、ドライバーの趣味を考慮したガイド情報
や、個人のSNS情報を活用しての災害対策などが今後期待される。
矢野経済研究所作成
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2015 年 7 月 6 日
2.乗用車向けテレマティクス端末主要 4 品目別動向
乗用車向けテレマティクスサービスを利用可能とするのは、カーナビ、PND、DA(ディスプレイオーディ
オ)などの車載プラットフォーム上でのこととなる。
一方でスマートフォン連携機能を使った車載利用も想定されるが、これについては安全性の確保とい
う観点から DA との連携による可能性が高いと考える。スマートフォンの各種アプリケーションをテザリング
(スマートフォンを外付けモデムのように利用してインターネットアプリケーションを利用すること)技術を用
いて、DA のモニターに表示させることとなる。
日本、米国、西欧主要 5 カ国(イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン)、中国のカーナビの乗用車
向け搭載台数は 2019 年には 2,136 万 5,000 台、2013 年から 2019 年までの年平均成長率(CAGR)は
4.2%を予測する。カーナビの搭載台数のうち、なかにはスマートフォン連携機能をもつ可能性もある。
今後、カーナビは先進国向けの乗用車、なかでも高級車種用のハイエンドな統合インパネに、ひとつ
のアプリケーションとして組み込まれるようになるものと考える。
一方の PND の 2013 年から 2019 年までの年平均成長率(CAGR)はマイナス 8.4%と減少基調を予測
する。あくまでも低価格なナビゲーション機能を提供する PND の場合、テレマティクスサービスとしてはそ
の提供サービス範囲が限られることから、成長率は低下するものと考える。
日本、米国、西欧主要 5 カ国、中国の DA の乗用車向け搭載台数は 2019 年には 1,020 万 4,000 台、
2013 年から 2019 年までの年平均成長率(CAGR)は 28.9%と大幅の拡大基調を予測する。すべての DA
がスマートフォン連携機能をもつわけではないが、スマートフォンの車載利用が想定されるなかで、拡大
傾向を見込む。
またバックミラーモニターは、米国における KT 法対応のため確実に需要が見込める米国のみの搭載
台数を算出した。米国では駐車場などでクルマが後退する際の子供を含む歩行者の事故防止のため、
後退時の後方確認として、すべての新型車に 1 台以上のリアカメラとその映像を見るためのモニタ(DA
やバックミラーモニター)の搭載を義務付ける法、KT(Kids Transportation Safety Act)法があり、2018 年
に完全施行が予定されている。そのため、自動車関連メーカーを中心に 2011 年から DA や液晶画面の
バックミラーモニターが市場投入され、その多くはスマートフォン連携機能をもち、車内でスマートフォン・
アプリケーションの利用を可能としている。
米国におけるバックミラーモニターの乗用車向け搭載台数は 2019 年には 620 万台、2013 年から 2019
年までの年平均成長率(CAGR)は 35.5%と拡大基調を予測する。
日本、米国、西欧主要 5 カ国、中国における乗用車向けテレマティクスサービス用端末(カーナビ、
PND、DA、バックミラーモニター)の搭載台数の合計値は 2019 年で 5,080 万 9,000 台を予測する。これ
は日本、米国、西欧主要 5 カ国、中国の乗用車新車販売台数の約 8 割に搭載されることになる。
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2015 年 7 月 6 日
図表 2. 日本、米国、西欧主要 5 カ国、中国における
乗用車向けテレマティクス端末(カーナビ/PND/DA/バックミラーモニタ ー)搭載台数推移
単位:千台
(単位:千台)
2013年
2014年
2015年
(予測)
2016年
(予測)
2017年
(予測)
2018年
(予測)
2019年
(予測)
年平均成長率
(2013年~2019年)
日本・米国・西欧主要 搭載台数
5カ国・中国
前年比
カーナビ
搭載比率
16,692
17,777
18,921
19,712
20,365
20,893
21,365
4.2%
-
106.5%
106.4%
104.2%
103.3%
102.6%
102.3%
-
31.6%
31.1%
32.0%
32.8%
33.3%
33.6%
33.7%
-
日本・米国・西欧主要 搭載台数
5カ国・中国
前年比
PND
搭載比率
22,100
20,100
18,400
16,900
15,500
14,240
13,040
-8.4%
-
91.0%
91.5%
91.8%
91.7%
91.9%
91.6%
-
41.9%
35.1%
31.1%
28.1%
25.3%
22.9%
20.6%
-
日本・米国・西欧主要 搭載台数
5カ国・中国
前年比
DA
搭載比率
2,220
3,643
5,231
6,821
7,952
9,065
10,204
28.9%
-
164.1%
143.6%
130.4%
116.6%
114.0%
112.6%
-
4.2%
6.4%
8.9%
11.3%
13.0%
14.6%
16.1%
-
搭載台数
1,000
1,500
2,440
3,380
4,320
5,260
6,200
35.5%
-
米国
前年比
バックミラーモニター
搭載比率
日本・米国・西欧主要 搭載台数
5カ国・中国
前年比
テレマティクス端末搭
搭載比率
載台数(合計)
-
150.0%
162.7%
138.5%
127.8%
121.8%
117.9%
1.9%
2.6%
4.1%
5.6%
7.1%
8.4%
9.8%
-
42,012
43,020
44,992
46,813
48,137
49,458
50,809
3.2%
-
102.4%
104.6%
104.0%
102.8%
102.7%
102.7%
-
79.6%
75.2%
76.1%
77.8%
78.6%
79.4%
80.2%
-
矢野経済研究所推計
注 1. 日本、米国、西欧主要 5 カ国(イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン)、中国の乗用車向け搭載台数ベース
注 2. 日本、米国、西欧主要 5 カ国(イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン)、中国の乗用車新車販売台数をもとに
各テレマティクス端末(カーナビ、PND、DA(ディスプレイオーディオ)、バックミラーモニター)の搭載台数から搭載比率を
算出
注 3. 日本のみ年度ベース
注 4. (予測)は予測値
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