平成 24 年 7 月 25 日 印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会 【報告】(仮称)出版物に係る権利について 弁護士 桶田 大介 平成 24 年 6 月 25 日付 印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会(本会)中間まとめ(案)(本案) において示された(仮称)出版物に係る権利(本権利)について、次のとおり報告します。 1. 勉強会発足の経緯と趣旨 H22 デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会1 H23 電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議(文化庁) 「デジタル・ネットワーク社会における知の拡大再生産を図りつつ、出版物に対する国民の広 汎なアクセスを容易にする環境の整備と我が国の豊かな出版文化の次世代への着実な継承を 可能にすることが重要であるとの認識」 検討事項 ① 図書館・公共サービス ② 権利処理の円滑化 ③ 出版者への権利付与 「出版者への権利付与の在り方について、制度的対応を含め、早急な検討を行うことが必要」 H24 本会 国会議員、出版関係者、作家、図書館関係者などによる、グローバル時代の印刷文化・電子 文化の在り方について大局的な視点から論議を深め、率直な意見交換と方向性を見出してい くための場(座長:中川正春衆議院議員、平成 24 年 2 月発足) テーマ ① 書籍・電子書籍を統合した読書振興策のあり方(知の地域づくり) ② 日本語出版物(電子書籍を含む)の国際展開(海賊版への対応) ③ 著作者と出版者の権利(出版社の役割) 2. 本権利の必要性と緊急性 (ア) 本権利が主な検討対象とされた理由 ① 我が国出版文化の豊富さと多様性を支える出版者(社)の多様性や編集機能の重要性 ② ネットワーク社会に対応した出版者(社)による主体的取組の必要性と困難な状況 ③ 出版慣行の見える化による、出版者(社)と著作者との関係の明確化 ④ ③による著作者の創作意欲促進と出版者(社)の新規参入勧奨による出版文化の活性化 (イ) 本権利の必要性 電子書籍等流通の円滑化と、読者・国民の選択の可能性・入手可能性を高める上で最善の方策 ← 著作権譲渡及び出版権拡大等、他の方策は、実務・慣行を鑑みると実効性を期待し難い H22、デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会(総務省、経産省、 文化庁の副大臣・大臣政務官の共同懇談会) 1 (ウ) 本権利創設の緊急性 3. 本権利の具体的内容 (ア) 立法目的 ①電子書籍を中心とした出版物等の利用・流通の促進 及び ②出版物に係る海賊版対策 (イ) 法的構成 著作隣接権 (ウ) 権利者 出版者:業務要件不要、発意と責任/自己の名において出版物/出版物原版を作成した者 (エ) 主な定義 ① 出版者 発意と責任/自己の名において出版物/出版物原版を作成した者、業務要件不要 ② 出版物原版 原稿その他の現品又はこれに相当する物若しくは電磁的記録を文書若しくは図画又はこれ らに相当する電磁的記録として出版するために必要な形態に編集したもの (オ) 権利内容 ① 複製権 出版物原版を複製する権利 ② 送信可能化権 出版物原版又はこれを複製した電磁的記録を送信可能化する権利 ③ 譲渡権 出版物原版又はその複製物の譲渡により出版物を公衆に提供する権利 ④ 貸与権 出版物原版又はその複製物の貸与により出版物を公衆に提供する権利 (カ) 始期及び保護期間 ① 始期 出版物原版の作成時 ② 保護期間 作成又は発行が行われた日の属する年の翌年から起算、期間は諸学国に倣って 25 年とする か、他の著作隣接権と平仄を合わせるか等、なお検討を要する 4. 本権利により想定される社会的便益 ① 電子書籍を中心とした出版物流通と利用の円滑化 ② 出版物に係る権利侵害への対応促進 ③ 出版慣行の是正と契約の普及 ④ 出版多元性の維持・発展による国民の知的向上への貢献 5. 本権利の創設と同時に求められる実務対応 ① 運用ガイドラインの作成とアクションプランの作成 ② 権利の公正な行使確保のための社会システムの確保 6. 今後の検討課題 ① 著作者・出版者に関する権利情報の集中管理の在り方 ② 電子書籍流通における公共図書館等の活用(公共部門における電子書籍流通ビジネスモデル確立) ③ 出版社、図書館等が保管・所蔵する既存書籍のデジタル化の促進と利用の仕組み 以上
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