平成17年3月号NO．205 伽曜住宅生産振興財団観難語価値が上がる住宅地人口や世帯が減少に向かう時代である。まだ観念上の産物でしかないが、捨て去られ、買い手のつかない物件や、荒れ果てた住宅地が目に浮かばないでもない。価値がある住宅地として作られたものが価値を減じていくプロセスは如何なるものなのであろうか。どのような原理が働いて見捨てられるのであろうか。このことの裏返しであるが、「これから価値が上がる住宅地」という本が出版された（学芸出版社、2005．2．25）。本欄で昨年も紹介した明海大学の齊藤広子教授の著作である。学者の著作としては少しセンセーショナルな題名であるが、一般向けの分かりやすさという意味では大変分かりやすい。私たち住宅関係者が常に考えている、よい住宅地とは何「かというテーマに、計画学からアプローチする（，というより、不動産として一般購入者向けに、生活するという視点から書かれたものである。そしてそこには、不動産を交換価値ではなく利用価値と考えたとき、これまでの常識が覆されるという側面があるこ．とを指摘していみ。著者自身がまえがきで「今までの常識と思われていたことを再考し、覆します。」と述べ、八つの発想の転換を提案している。紙数の関係ですべて．に言及はできないが、たとえば道路に関しては、広くて直線がいいとか、私道は価値が低いという一般的価値観に疑問を呈している。著者は、「道路」は「私たちの道」と考えるべきであるというのが基本的な視点なのである。たしかに「道路」と呼んだとたんに、公共の支配する車優先の空間のイメージが強いが「道」といえば、日常的に地域で清掃し、立ち話がなされ、車が遠慮して通るのが住宅地の道路の姿であろう。．「庭」という概念に絡んでも、広いほうが良い、頑丈な高い塀が必要だということに異議を唱えている。自分の庭と公共の公園の中間に、みんなで楽しむ庭という第三の庭を造ろう、そのほうが楽しく安全な町になるという意味合いを含んだ提案である。舌足らずな紹介であるが、ここまでで道路に対する2項目、庭に対する2項目の「常識」が「覆された」ことになる。ほかは項目だけを紹介するが、借地の効用、協定などのルールのよさ、管理組合の必要性と効用、古い住宅地のよさ、となっている。いずれも豊かな生活の要素にコミュニティ、あるいは地域社会における人間関係というものが介在することを前提にした話である。通常、住宅の価額は、土地の価額と建物の価額との和として決定されている。一見合理的のようであるが、環境の価値、コミュニティの価値はどのよ．うに算定されているであろうか。少なくとも不動産鑑定上は前面道路の大きさが大きな要素であるし、地区計画や建築協定が建築の自由の制限としてマイナスポイントとなるという例をよく聞く。片方で経済社会の変化もあって、人々の価値観も変化していく。大きな目で見れば価値観の変化についていけない町が減価ルートに陥っていくようにも感じる。町を育て価値を減じないようにできるのは住民の力であり、その、ことにやわらかく対応できる自治体の底力なのであろう。大川陸／住宅生産振興財団専務理事 1 レポート「50・60代の住宅意識に関するアンケート」調査からその1 財団が事務局をつとめている住宅展示場協議会では平成16年度の事業活動の一環として、「50・6 0代の住宅意識に関するアンケート」を展示場来訪者に行ない調査しました。以下が結果概要です。非持家12％。世帯年収…500万円未満26％、1千万円未満43％、1千万円以上27％、平均842万円。貯蓄と資産運用…貯蓄実践者89％、資産運 1．調査目的・実施概要用実践者39％。 20・30代が住宅市場の主役となりっっある生活意識…13項川中8項目「はい」のアク一方で、団魂世代を中心とする50・60代の住ティブ派5％、4∼7項目42％、3項目宅展示場来場者が増加傾向を示している。今以下33％。回、北海道、関東地区、中部地区及び近畿地家族重視度…13項目串9項目「はい」回答区に所在する総合住宅展示場へ来場した50代 13％、5∼9項目42％、4項目以下45％。 ○ と60代（一世帯1人対象）のライフスタイルも含めて、住宅需要の実態とニーズ、土地・資 2 総合住宅展示場について金、リフォームの検討などについて調査を実訪問経験…箇所数は1∼3ケ所を中心に平施した。調査は来場者に、予あ50代・60代で均2．6ケ所。回数は2∼6回を中心に平あることを確認のうえアンケートを依頼し、均5．4回。初訪問は3年以上前が39％と多帰宅後に直接記入、後日郵送にて回収。依頼い。 1，722票、回収511票（有効回収率29．7％）。依頼9／18∼10／17、回収9／21∼10／29、集計11／10∼23、分析11／24∼12／27。訪問同行者…夫婦2人43％、自分1人22％、子供と一緒17％。訪問動機…広告を見た、イベントがあった、見たいモデルハウスがあった、などが中 lI．調査結果の特徴心。 1．魅力ある消費者としての資質は高い訪問目的…千差万別。 2．持家比率が極めて高く、建替えとりフォー絞り込み状況…42％が絞込みして来場。ム需要が多い内覧棟数…2∼3棟を中心に平均3．1棟。 3．ダイレクトな住宅需要者である観覧参考度…なった89％、ならなかった1 4．2回目の住宅取得挑戦者が約7割 5．アクティブな生活で家族重視度は低い％のみ。展示場への要望…現実的な規模のモデルハ 6．住宅指向は、安心・安全・ゆとり・くっウス（61％）、価格・価格内容の表示（42 ろぎ％）、躯体内部の公開（31％）。 7．資金計画は極あて健全住情報参考媒体…住宅展示場67％でトップ、折込チラシ、新聞が40％台 lll．調査結果の要約 1．回答者のプロフィール年齢…50代62％、60代38％。世帯主の職業…常勤有職者66％（会社員56 ％、会社員以外43％）。家族構成…夫婦のみ31％、核家族42％、二世代・三世代世帯19％。現住居…持家87％（うち78％が自己購入）、 2 住宅展示場協議会構成員（順不同）飼住宅生産振興財団㈱日本テレビサービス㈲プレハブ建築協会㈱日本建築センターエービーシー開発㈱㈱東日本ライムサービス㈱日経社ハビタ21㈱ライダース・パブリシティ㈱サンフジ企画㈹ナゴヤハウジングセンターアドバンス開発㈱㈱ファジー・アド・オフィス SBSマイホームセンター㈱（助大阪住宅センター㈱産経新聞社サンケイハウジングセンター本部すまい・まちづくり設計競技応募状況（社）再開発コーディネーター協会よりテーマを「鹿島神宮門前町の再生をめざし平成17年度「再開発プランナー試験」たまちづくり」とし、課題地を「茨城県鹿嶋市宮中地内（鹿島神宮の門前町としての大町、仲町、桜町、角内の一部約9．18ha）」としご案内市街地再開発事業に加え、マンションの建替えや密集市街地での共同建替え、不動産の信託・証券化など、既成市街地の再開発が多て行われている第22回すまい・まちづくり設様に拡がる21世紀のまちづくりを「再開発プ計競技は、3月7日（月）から応募作品の受ランナー」がリードします。再開発プランナー付けを開始し、11日（金）をもって締め切らは、当協会の認定資格です。（平成17年3月現在2，483名）れた。応募作品数は34件。ほぼ例年と変わりない ○ 数字であるが、応募登録件数126件に対する ●受験資格：受験年の4月1日現在満20歳以上 ●試験日・時間：平成17年8月21日（日）実際の作品提出の割合は27％であり、第1回学科9：00∼12：00実技13：30∼16：30 から通して最も高い提出率となった。（参照；草加市コンペ23．4％、沖縄市22．1％、昨年伊奈・谷和原23．7％）今年度は課題地が、まちの活性化のたあの再生計画の提案を求あたコンペとなっていることから、ここに集まった多くの作品に提案されている新しいアイデアに期待される。地：域別：北海道0、東北1、東京14、その他の関東12、うち課題地（茨城県）5、北陸 2、信越0、東海0、近畿3、中国0、四国1、九州。、沖縄1。 ○ 【筆記試験】年齢別：10代19、20代4、30代2、40代6、 ●受験生：東京・大阪 ●受験手数料：21，000円（消費税含む） ●筆記試験受験申込書の頒布及び受付頒布期間：平成17年5月9日∼6月10日頒布価格：1部1，260円（消費税含む）頒布方法：窓口頒布、郵送頒布（送料別途）受付方法：簡易書留による郵送受付 ●筆記試験合格者の発表：平成17年10月6日（木）頃筆記試験合格通知書に、実務経験審査・登録に必要な書類を同封します。【実務経験審査と登録】筆記試験合格者を対象とし、3年以上の都市再開発事業に関する実務経験を有することについて、書類審査及び面接審査により審査し、審査合格後、登録申請書の内容で資格登録されます。 50代2、60代1。職業別：公務員・団体職員5、建設会社5、設計事務所・コンサルタント6、学生16、教員2。今後は、4月13日に審査委員会を開催して受賞作品を選定し、特選作品については6月のまちづくり月間において国土交通大臣賞が授与される予定である。（溝端）参考図書（申込は再開発コーディネーター協会へ）図書名価格（税・送料込）逐条都市再開発法箪2，000 i平成17年3月第11版発行）再開発事業の計画ドリル @（平成15年5月発行）￥2，500 2005年版再開発関係法令集》3，780 @（平成17年3月発行予定）再開発マニュアル改訂版 @（平成13年5月発行）￥6，300 推薦図書（購入申込は直接出版社へ）図書名価格（税・送料込）平成17年版再開発プランナー知識大全新職員一試験問題解答と解説一 M3，290 出版社（株）霞ケ関出版社 1ao3−3294−7081 3月1日付けで鈴木泰紀さんが財団職員となった。総務部勤務。案内書請求（無料）・問い合わせ先 ’ （社）再開発コーディネーター協会再開発フ0ランナー資格室 TELO3−3435−1783、 FAXO3−3432−8908 ht ：／／www．urcaorjp／ 3 〈財団〉海外研修のご案内「欧州・最新住宅地・まちなみ調査視察団」本年2月16日に京都議定書が発効し、わが国視察期間：6／26（日）∼7／5（火）（10日間）も環境税の議論を含め、新たな地球環境対策を視察場所：ドイツ、イギリス同行コーディネーター：東京工業大学大学模索しているところですが、住宅業界の関係す院社会理工学研究科教授中井検裕氏る民生部門のエネルギー消費の削減が課題とさ費用：約49．8万円れております。（往復全日空予定、食事は朝食のみ含む、そのような状況を踏まえ、昨年好評を博した 15名以上の場合）ヨーロッパの環境対策を中心とした調査の第2 バージョンを企画いたしました。 ※お問合せは、財団伊代田まで（下記電話）。また、財団ホームページもご引下さい。ご承知のようにチェルノブイリの原発事故以来、ヨーロッパ諸国は環境対策に熱心で、京都＜調査の特徴と見どころ＞議定書についてもその推進役を果たしておりま 1．環境、持続性をキーワードにドイツにおける環境共生型コミュニティーを考察するカールスルーエ：ビオトープの結合による都市す。とりわけドイツは環境対策の先頭を走り、中でも今回の視察地であるフライブルクは「環境首都」と呼ばれるほど、さまざまな環境への取り組みが成果をあげております。計画、ランドスケープフライブルクとその近郊：ボウバン団地、リーすでに100年を越えて良好な環境が維持されてゼルフェルト団地（フライブルクを代表するエコ団地）、シュリアベルクのプラスエネルギー団地（ディッシュ建築事務所による新しおります。わが国では敷地の細分化など環境のいエコ住宅団地）維持が困難な場面が多くありますが、英国の環 2．田園都市とアーバンビレッジとの対比を通じてイギリスにおける戸建住宅を中心としたまた田園都市の母国英国ではレッチワースが境管理から学ぶことが多いのではないかと思います。さらに最近ではアーバンビレッジという言葉で呼ばれる英国流の新市街地開発が話題になっております。コミュニティ開発の変遷を見る田園都市：①カージィ村、ラベナム村（アンウィン原風景）、②レッチワース（評価され続けるハワードの田園都市）、③ハムステッド今回の視察団は、東京工業大学の中井検裕教（ロンドン近郊の田園郊外）授をコーディネーターにお願いして、上記のプアーバンビレッジ構想：パウンドペリー（構想ロジェクトを中心に、ドイツとイギリスを学ぶ唯一の戸建中心団地）日程を組みました。中井教授は英国の住宅地に愛され続けるコミュニティ：①ベットフォード・詳しい都市計画の専門家で、現在、本財団の機関誌「家とまちなみ」に下良い住宅地の条件」を連載中です。ヨーロッパの最新の住宅地の．計画、管理などを学ぶ絶好の機会かと存じ、ご案内申し上げます。ふるってご参加いただきますようお願い申し上げます。パーク（英国初の鉄道沿線型住宅地）、②ポートサンライト（19世紀の産業資本家による理想のまちなみ）、③ランコーン（車両進入速度制限を取り入れた最初の事例） 3．インタビュー予定：①フライブルク市役所（開発団地担当者）、②ディッシュ建築事務所、などおもにドイツでの環境共生型住宅地における行政、建築実施者、団地住民組合へのインタビューを予定本誌は再生紙を使用しております。ボンエルフ第205号発行日：平成17年3月20日編集発行人＝大川陸 4 c）発行所駅住宅生産振興財団〒105−0001東京都港区虎ノ門1丁目21番19号・秀和第二虎ノ門ビル7階 TEL：0〔∋一3580−8811㈹FAX：03−3580−9422 関西事務所：〒541−DO46大阪市中央区平野町3丁目3番8号・門出ビル5階TEL：06−6231−3655 FAX：06−6231−3656 ホームページ・http：〃www，machmaml，o「，jp E一メール・weIcome＠maohinaml．o「．lp （♪