雪氷藻類 - 千葉大学理学部地球科学科

雪氷藻類:色づく雪と氷の不思議
竹内 望
千葉大学 大学院理学研究科 地球科学コース
Snow algae: Mysteries of colored snow and ice
TAKEUCHI, Nozomu
Graduate School of Sciecne, Chiba University
1. はじめに
春から初夏にかけての山は、青空と新緑と残雪の色のコントラストが美しい。そんな新緑の香りが
漂う山を登っていくと、まだ足元に残る雪面が赤いことに気がつくことがある。赤雪とよばれる現象
である。ただ目にみえるその色は微妙で、赤というよりは茶色く見えることもあるかもしれない。茶
色い雪は、遠く中国内陸部の砂漠から飛来する砂、いわゆる黄砂が雪の上に堆積したものである。春
先は黄砂の季節でもあるので、日本海側の残雪の表面はほぼ毎年黄砂に覆われて茶色く見える。しか
し、よく見ると雪が茶色ではない、赤またはピンクに近い色をしていることもたしかにある。この色
は、黄砂の色にしては不自然に赤い。この赤い色は、雪の中に含まれている微生物の色なのである。
赤い雪を持ち帰り顕微鏡を使うと、その微生物の姿を見ることができる。微生物一つの大きさは、約
20μm。形は、球形または楕円形である(図1)
。その細胞の中には、小さな赤く透き通った液胞や
緑色をした葉緑体をみることができる。この微生物は、雪氷藻類(または氷雪藻)と呼ばれる藻の仲
間(藻類)である。藻類は、一般に河川や湖沼、海洋などの水環境に普通にみられる微生物で、太陽
の光を浴びて光合成で繁殖する。雪氷藻類はその藻類の中で、雪や氷の上で繁殖する特殊な藻類のこ
とをいう。一般の藻類は、他の生物と同様、繁殖するのに適切な温度は、20-30℃である。その最適
温度以上または以下になると、細胞内の様々な機能に障害が生じて繁殖ができなくなる。しかしなが
図1 赤雪(左)と雪氷藻類の顕微鏡写真(右)
1
ら、雪氷藻類は、不思議なことに 0 度付近でも繁殖が可能な藻類なのである。赤雪現象とはこの赤い
色素をもった雪氷藻類が雪の表面で大繁殖することによっておこる、いわば雪の上の赤潮なのである。
このように低温環境で繁殖可能な生物を耐冷生物、また低温環境でないと繁殖できない生物を好冷生
物と呼ぶ。
雪氷藻類は決して珍しい生物ではなく、日本をはじめ世界各地で残雪期であればどこでも見られる。
それにもかかわらず、意外とその存在は知られていない。研究者の間では、近年このような雪や氷の
世界に生息する微生物に注目が集まり、北極や南極などの氷河で活発に研究が行われるようになって
きた。雪氷藻類はなぜ寒冷環境で生きているのか、その生理的能力や進化の過程を考えることは生物
学的に非常に興味深い問題である。さらに雪氷藻類は地球科学的にも重要な側面があることが分かっ
てきた。雪氷藻類の繁殖は、雪や氷の表面を着色し日射の吸収を増やすことによって、雪氷の融解を
早める効果をもつのである。また、このような氷河上の微生物は、地球環境の変化にも敏感に反応す
るようだ。さらに地球外の生命の可能性を考えるときにも、雪氷藻類がそのモデルとして注目されて
いる。本論文では、雪氷藻類とはいったどのような生物なのか、雪氷藻類の研究の軌跡と現状、そし
て今後の展望について紹介したい。
2.雪氷藻類の研究史
雪の上に繁殖する藻類の存在は、いつぐらいから知られていたのだろうか?雪が赤くなる現象は、
2千年以上も前にギリシャの哲学者アリストテレスが書き残している。その後もヨーロッパでは数々
の哲学者が赤雪という不思議な現象の記載を残しているそうである。しかし、赤雪が雪氷藻類という
微生物によることが、はっきりと理解されるようになったのは、19世紀になってからである。この
時代、多くの探検家が極域を訪れ、そこで頻繁にみられる赤雪は彼らの興味を引きつけたのである。
生物学的にはじめて分析された赤雪は、19世紀の初頭、北極探検家 John Ross(ジェームス・ロ
ス、1777-1856)が、1818 年の北極遠征中バフィン島で採取しイギリスへ持ち帰ったものである 1)。
植物学者 F. Bauer によってその赤雪が分析された結果、はじめは藻類ではなくカビの一種と分類さ
れた。しかし、その後、藻類の専門家 C. Agardh によって藻類の一種であることがわかり、雪で繁殖
する新種の藻類として、Protococcus nivalis という学名がつけられた。この種名である nivalis(ニ
バリス)はラテン語で雪を意味する。この藻類は、現在は Chlamydomonas nivalis として分類され
ている。
赤雪の原因が雪で繁殖する藻類であることは、博物学者 Charles Darwin(チャールズ・ダーウィ
ン 1809-1882)のあまりにも有名な著書「ビーグル号航海記」2)でも記されている。1831 年 12 月、
世界一周をめざしイギリスを出航したビーグル号は、大西洋を横断し南米大陸を南下、マゼラン海峡
を通過した後、1835 年 3 月に南米チリのヴァルパライソに入港する。そこからダーウィンは陸路、
アンデス山脈の小旅行にでる。アンデスを登って高山の息苦しさを感じ始めたころ、残雪に残ったラ
バの足跡が赤いことに気がつく。初めは雪の上に降り積もった砂塵と思ったようだが、赤雪を紙の上
にとってすりつけると赤いシミになったことで、この赤雪が藻類によるものであることがわかった。
見過ごしがちな赤い雪に注目し、しかもそれを微生物の繁殖によるものということまで突き止めてし
2
まうところは、さすがダーウィンである。
19世紀後半になると極地探検は最盛期をむかえ、雪や氷の上の微生物も記録によく現われるよう
になる。当時、ヨーロッパ列強諸国は、アジアへ抜ける航路として北極海をぬけるルートを競い合っ
て探していた。その中でシベリア経由の北東航路の横断に初めて成功したのが、スウェーデンの探検
家 Adolf Nordenskiöld(アドルフ・ノルデンショルド、1832-1901)である。その北東航路の横断を
記録した航海記「ベガ号航海誌」3)に、雪氷藻類が登場する。彼は、もともと鉱物学を専門とする科
学者であったため、グリーンランドをはじめ北極圏の氷河の氷にあった黒い汚れ物質に興味をしめし
た。この汚れ物質はクリオコナイトと彼によって命名される 4)。分析の結果、その汚れ物質にはニッ
ケルなどの稀少金属が含まれていることから、これらは隕石であることがわかった。さらに顕微鏡で
見ると、このクリオコナイトには隕石だけでなく、様々な藻類細胞が含まれていることを明らかにな
った。
「ベガ号航海誌」には、極地の不毛な氷の表面を下等な植物が覆っていること、またその氷の
上の植物と鉱物が太陽の光の吸収を増やし氷の融解を助長すると述べられている。
20世紀に入ると、雪氷藻類を体系的に研究する藻類学者が登場した。ハンガリーの女性藻類学者、
Erzsébet Kol(エリザベート・コル、1897-1980)である。もともと高山の藻類の研究者であった彼
女は、東ヨーロッパの山を歩いているうちに雪氷藻類に出会い、その後おそらく史上初めての雪氷藻
類の専門家となった。彼女は、ハンガリー国立博物館の植物学部門に所属し、藻類の分類と収集を業
務としていた。彼女の仕事の驚くべきことは、世界各地の様々な氷河、積雪の雪氷藻類の記載を論文
に発表したことである。その範囲は、ヨーロッパからはじまり、北米、アラスカ、南極、北極、パタ
ゴニア、インドネシアまでも含む。20世紀半ばにこれほどの場所の雪氷藻類を集め調べたことは驚
図2 Erzsébet Kol によるアラスカの雪氷藻類 6)
3
異的である。知人の探検家などに採取してもらったものも多いようだが、本人自身も実際にヨーロッ
パ、北米、アラスカ、インドネシアを歩き、自分でサンプルを集めている。雪氷藻類の採集地のほと
んどは高山であることを考えれば、これだけの論文が残されていることは、いかに彼女が健脚だった
かを示している。彼女によって記載された雪氷藻類は、100種以上にもなる 5)。1つ1つの藻類は、
丁寧なスケッチで彼女の論文の中に記されている。そのスケッチの克明さと色の鮮やかさは見事であ
る(図2)6)。
Kol の研究の後、限られているが、現在に至るまで少しずつ雪氷藻類の分類以外のこともわかって
きた。藻類の生活史や分類に関しては、彼女とも親交があったアメリカ、コルゲイト大学の Ronald
Hoham によって数多くの論文が発表されている 7)。彼は、自分で採取した雪氷藻類の培養を成功さ
せ、休眠胞子から栄養細胞、無性生殖による分裂、有性生殖による接合子の形成など、藻類が生活史
の中で変えていく多様な形態の記載を行った。それまで形態が異なるため別種の藻類として記載され
ていたものも、生活史のステージが異なるもので同種であることを指摘し、様々な種の分類が修正さ
れた 8)。さらに培養実験から、雪氷藻類の最適な生育温度や pH についても明らかにした 9)。一方、
20 世紀後半には、分類や生活史だけではなく、藻類の生態に関する研究も、数多く発表されるよう
になってきた。北米の季節積雪の藻類の研究 10)、チェコ、オーストリア、ドイツなどのグループによ
るヨーロッパの積雪の藻類の研究
11)、北極スピッツベルゲンの氷河の微生物群集 12)、アメリカのグ
ループによる南極ドライバレーの微生物群集 13)、日本のグループによる世界各地の氷河の雪氷藻類の
研究 14, 15, 16, 17)など、とくに近年研究者も増えてきており、発表される論文数も 2000 年以降、格段に
増えてきている。
3.日本の雪氷藻類
私がはじめて雪氷藻類による赤雪現象を見たのは、富山県の立山の残雪である。それ以来、今もほ
ぼ毎年春に立山を訪れて研究を続けている。富山湾に面した立山は、日本海を通った湿った季節風が
直接山にぶつかるため、日本有数の豪雪地帯として知られている。バスでアクセスできる立山の入り
口、室堂平は標高2400mの高原で、毎年8m以上の積雪に覆われる。室堂平では、3月を過ぎて
から雪がとけはじめ、8 月に入ってようやく雪が消えてなくなる。吹き溜まりとなる稜線の東側斜面
には、万年雪として越年性の雪渓も存在する。赤雪が現れるのは、融雪が始まってしばらくたった5
月から7月の間である。しかしこの時期に立山に行ったからといって誰もが必ずしも見られるわけで
はない。赤雪の出現は、室堂平の残雪の全面というわけではなく局所的で、また年によっても場所が
かわる。比較的毎年現れるのは、剣沢につながる登山口の雷鳥沢の下部斜面やリンドウ池周辺の残雪
である。残雪表面のほとんどは黄砂で茶色くなっていることが多いが、よく目を凝らすと茶色ではな
いピンク色に近い赤雪を見つけることができる。立山の赤雪は、おもに直径20µm の球形の藻類細
胞で構成される。
日本の雪氷藻類の研究はまだまだ限られているが、赤雪と緑雪の中の藻類についてはじめて論文と
して発表されたのは、小林・福島(1952)18)であろう。その後、Fukushima(1967)19)によって、
全国各地の高山の雪氷藻類の記載がまとめられた。この壮大な論文は、北は北海道大雪山の旭岳から、
4
南は四国石鎚山まで、残雪サンプルを採取し、観察された雪氷藻類を詳細に記載している。この論文
によれば雪氷藻類は、ほぼ全国の高山の残雪に現れることがわかる。記載された種の数は 10 種類以
上にもおよぶ。また、藻類が繁殖した雪は、赤雪だけではなく、緑雪、黄色雪、五色雪、彩雪、着色
雪など、さまざまな色のものが存在することを述べている。これは、藻類の種類や繁殖条件によるも
のと考えられている。この論文以降、日本の雪氷藻類の研究は、立山での季節変化に関するもの
20)、
尾瀬のアカシボ現象 21)、月山の残雪の藻類 22)等の論文が、少しずつ発表されている。しかしながら、
日本の雪氷藻類に関する情報はまだ断片的で、分類や生態を含め,赤雪のような藻類の繁殖がどのよ
うな条件でどんな場所でおこるのかなど、わかっていないことが多い。
日本の赤雪について興味深いことは、赤い雪という言葉が古くから残る日本の古典に複数回現れる
ことである。その中でももっとも古いものは続日本記である 23)。天平14年(西暦 742)の記録に赤
雪が登場し、
「陸奥黒川郡以北11郡に赤雪降る」と、記載されている。これは、瑞祥(吉兆)の記
録として、残されたらしい。赤い雪というと不吉なイメージもあるが、たしかに珍しい現象ではある
ので、良いことの兆しとして朝廷に報告されたのかもしれない。また、江戸時代の会津藩の記録、会
津年表には、宝暦元年(西暦 1751 年)に「怪星出現し赤雪降る」という記録がある。これらの記載
は、黄砂の可能性もあり、必ずしも雪氷藻類によるものとは限らないが、雪の着色現象は古くから日
本人の興味を引いていたことは間違いない。
4.雪氷藻類はどこからくるのか?
ほぼ毎年現れる高山の残雪上の赤雪、この赤雪のもととなる藻類細胞はいったいどこから来たのだ
ろうか?まだ、完全に積雪上の藻類の起源が明らかになっているわけではないが、その一つとして考
えられているのは、積雪下の地面である(図3)
。春、雪解けが始まると表面で生じた融解水が積雪
中を下部に向かって浸透し、やがて地面に到達する。冬の間、地表面で胞子として休眠していた藻類
は、この融解水によって目をさまし活動を開始する。光合成をするには太陽光が必要であり、そのた
めには積雪の表面にでなくてはならない。藻類の生活史の中の一つに、遊走細胞と呼ばれる鞭毛をも
って自由に移動できるステージがある。融解水によって目覚めた藻類は、遊走細胞となり、積雪粒子
の表面の融解水の膜をたどりながら泳いで表面に達する。積雪表面に達した細胞は、そこで日の光を
浴びて大繁殖し、赤雪となるのである 24)。たしかに、季節積雪の赤雪は、融雪期に露出した地面の近
くの積雪面に現われることが多く、これの赤雪は地面から泳いで積雪表面に表れたようにも見える。
しかしながら、実際に積雪中を泳ぐ藻類細胞を確認されたわけではない。また、立山のような数メー
トルの積雪の表面にも赤雪が現われることがあり、果たして数メートルの積雪を地面から表面まで藻
類細胞が泳ぐことができるのか、という疑問が残る。
藻類の起源のもうひとつの可能性は、大気である。大気中を舞っていた藻類の胞子が、雪の上に降
下、沈着し、雪解けとともに繁殖をはじめるというものである。この考えであれば、前述の深い積雪
の表面での赤雪の出現に関しては説明しやすい。また、北極海の海氷の表面にも、赤雪は見つかって
おり、海氷の赤雪も大気を起源としないと説明がつかない。さらに、赤雪は北半球のかなり広範囲に
共通して見られる現象で、これは赤雪の胞子が、かなり大規模の大気循環によって北半球を循環し、
5
広範囲の雪氷表面に降下し赤雪を発生させるとすると説明がつく。ただし、そうであれば北半球の赤
雪はすべて同種であるはずである。今後 DNA 分析等で種を正確に比較することができれば、胞子が
大気中を広い範囲で分散しているのかどうかを確かめることができるだろう。
図3 季節積雪と土壌をめぐる雪氷藻類の生
活史.
(Jones199121)から加筆修正)
5.雪氷藻類の特殊な生理機構
雪氷藻類はなぜ低温でも繁殖ができるのだろうか?これは、普通の藻類にはない特殊な構造や生理
機構を雪氷藻類がもっているためである。一般の藻類は 10 度を下回るような環境ではほとんど繁殖
できない。低温環境では、細胞を構成する様々な分子の機能に障害がでるためである。その中でも致
命的な障害の一つは、細胞膜の流動性が失われることである 25)。細胞膜は、脂質分子が集合した非常
にやわらかい構造をもっている。この構造は、膜を構成する脂質またはタンパク質分子は常に活発に
膜上を動き回っているという、いわゆる流動モザイクモデルとよばれる構造である。細胞膜は、この
流動的な構造によって細胞外部と様々な物質のやり取り、細胞内の物質の合成や情報伝達など、細胞
が生きるために欠かせない機能を担っているが、低温によって流動性がなくなるとこれらの機能が失
われる。雪氷藻類は、低温でも細胞膜の流動性を保つために、細胞膜を構成する脂質に不飽和脂肪酸
が一般の藻類より多く含まれていることが明らかになっている。その他にも、低温での細胞の障害に
なるのは、酵素の活性や原形質の凍結、氷の結晶の形成である。さまざまな細胞内の代謝反応を担う
酵素も、普通最適温度は40度前後であり、10度以下でその機能を発揮するには、構造が一般のも
のと全く異なるものではならない。くわしくはまだわかっていないが、酵素をつくるタンパク質の分
子の立体構造が特殊であるらしい。細胞内の水分の凍結も、低温環境の大きな問題である。凍結を防
ぐために、雪氷藻類は細胞内の脂質を増やし、液体の水の占める割合を小さくしている。
一方、赤雪に代表される雪氷藻類の赤い色素は、低温というよりは雪氷上の強い光への適応である
と考えられている 26)。赤い色は細胞内に含まれるアスタキサンチンと呼ばれるカロチノイドの一種で
ある。アスタキサンチンは不飽和結合をもつ強力な抗酸化剤としてしられ、雪氷上での強い紫外線か
ら、細胞内の DNA など重要な分子を守る機能があると考えられている。
6
6.雪氷上の食物連鎖
雪氷上に生息している生物には、雪氷藻類だけではなく、他にも様々な動物やバクテリアもいるこ
とが明らかになってきている。日本の積雪上には、ユキクロカワゲラ(セッケイカワゲラ)と呼ばれ
る昆虫が歩いているのを目にすることができる(図4)
。全国の渓流沿いの積雪表面で冬から春にか
けて活動する珍しい昆虫である。さらに雪面をよくみると、ちいさなトビムシの仲間もたくさん見つ
けられるだろう(図4)
。顕微鏡をつかって雪をみると、ワムシやクマムシなどの小さな動物が活動
していることもわかる。世界に目をむければ、アラスカの氷河にはコオリミミズという雪や氷にすむ
ミミズがいる(図4)
。ヒマラヤの氷河には、ヒョウガユスリカという昆虫やヒョウガソコミジンコ
というミジンコの仲間がやはり雪氷表面に生息している(図4)27)。このような動物は、おもに光合
成で繁殖した雪氷藻類をたべて生命を維持している。さらに雪氷上にははやり低温環境に適応した特
殊なバクテリア(細菌)の仲間もいることがあきらかになってきた。バクテリアは藻類や動物の遺体
などの有機物を分解して、雪氷上に繁殖している。このように雪氷上には、雪氷藻類の光合成生産か
らはじまる食物連鎖が存在するのである。これらの特殊な生物群集をふくめれば、雪氷は単に物理的
な系ではなく、生物を含む生態系とみなすことができる。雪氷藻類は、雪氷生態系という特殊なシス
テムの中で有機物生産を担う一次生産者の役割をもっているのである 28)。
a
b
c
d
図4 雪氷に生息する動物.
(a)セッケイカワゲラ(またはユキクロカワゲラ,日本)
,
(b)
コオリミミズ(アラスカ)
,
(c)トビムシ(アラスカ)
,
(d)ヒョウガユスリカ(ヒマラヤ)
7.氷河上の雪氷藻類
雪氷藻類は、季節積雪だけでなく世界各地の極地や高山に分布する氷河にも、ほぼ例外なく生息し
ていることがわかってきた。氷河は、年間降雪量が年間融解量を上回る場所、つまり年平均気温が低
いまたは降雪量が多いところに形成される雪と氷の塊である。季節積雪と違って一年を通じて維持さ
7
れる氷河は、雪氷藻類の安定な生息場所になっていると考えられる。
普通1つの氷河には、数種類の雪氷藻類が生息している。たとえば、ネパールヒマラヤのヤラ氷河
には、緑藻の仲間が6種、シアノバクテリアの仲間3種が報告されている 14)。これらの藻類は、氷河
の表面に同じように分布しているわけではなく、氷河の標高ごと、つまり下流部、中流部、上流部で
優占種が異なり、それぞれの種がすみわけていることが明らかになっている。たとえば、そのヒマラ
ヤの氷河では、下流部には Cylindrocystis (C.) brébissonii、中流部には Mesotaenium (M.) bregrenii、
上流部には Trochiscia sp.がそれぞれ優占している(図5)
。これは、雪氷藻類の種によって、それぞ
れ適した生息場所の条件が異なるためである。氷河表面の条件は、下流から上流部にかけて大きく変
化する。氷河の下流部は消耗域と呼ばれ、気温は比較的高く、表面は氷で融解が激しく、融解水が一
面に流れている。冬になると一時的に雪に覆われるが、次の夏には再び同じ氷表面が現れ融解が始ま
る。一方、氷河上流部は涵養域と呼ばれ、気温は比較的低く表面は雪で、融解は夏の限られた日数で
しか起こらない。上流部では、毎年雪が降り積もっていくため、その年の表面は、次の年には新しい
雪に埋もれ再び氷河表面に現われることはない。さらに氷河の中流部には、消耗域と涵養域の境界で
ある平衡線が存在する。平衡線は、年間涵養量と消耗量が等しい高度と定義されるが、毎年その標高
はその年の気象条件によって前後する。したがって、中流域では時によって表面が雪になったり氷に
なったり、上流部と下流部の特性を合わせ持った不安定な環境ということができる。以上のような氷
図5 ヒマラヤ,ヤラ氷河の雪氷藻類の高度分布(Yoshimura et al. 199714)から加筆修正)
河の表面条件の変化を考えると、ヒマラヤの氷河の下流部に優占する C. brébissonii は、融解水の多
い氷の環境、中流部の M. bregrenii は雪と氷で変化するような不安定環境、上流部の Trochiscia sp.
は融解の少ない雪の環境を好む(競争に強い)種であるということができる。このような氷河上の藻
類群集の高度分布は、ヒマラヤの他の氷河 29, 30,)やアラスカ 15)、パタゴニア 16)などでも確かめられて
いる。
さらに雪氷藻類のバイオマス(生物量)や多様性も、氷河の標高によって変化することも明らかに
なっている。ヒマラヤの氷河では、下流部ほど藻類のバイオマスは大きく、上流部に向かってだんだ
8
ん小さくなってくる 14)。これは、氷河は下流部ほど気温が高いので生育期間である融解期が長いとい
うことや、下流部は上流部に比べ雪の降る確率も低いので光条件も良いためである。一方、藻類の種
の多様性は中流部で最も大きい。これは、前述の通り、平衡線付近は雪と氷とが変化するような場所
であるため、両方の環境の藻類が共存できるためと考えられている。
氷河上に現われる雪氷藻類の種は、世界各地の氷河で比較すると共通な種が多い一方、各氷河の優
占種は、地域によって大きく異なることも明らかになってきた 17)。ヒマラヤの下流部では、緑藻であ
る C. brébissonii が優占しているが、ヒマラヤの北方、中国のチベットや天山山脈の氷河では、糸状
のシアノバクテリアが優占し、緑藻の姿はほとんど見られない。さらに北のロシアやモンゴルのアル
タイ山脈の氷河では、ヒマラヤの中流域でみられる Trochiscia sp.や Ancylonema (A.) nordenskioldii
が優占している。このようにアジアという範囲だけでも、地域によって氷河上の藻類群集は大きく異
なる。さらに、カナダやアラスカなど北極圏の氷河は、アルタイ山脈と同じく M. bregrenii や A.
nordenskioldii が優占し、南半球のパタゴニアでは、M. bregrenii や C. brébissonii が優占する。この
ような氷河の藻類群集の地理的な違いの原因は、まだはっきりとはわかっていないが、それぞれの氷
河の地域特性を反映していると考えられる。たとえば、ヒマラヤのような低緯度の氷河は、北極圏の
高緯度の氷河よりも、日射が強い。また、ヒマラヤはモンスーンという特有の気候下にあり、日射や
降水の季節変動も藻類群集に影響しているのかしれない。中国チベット周辺の氷河は、砂漠から飛来
する砂塵が大量に堆積しており、そのため氷河の融解水はアルカリ性である。シアノバクテリアの優
占はこのようなアルカリ性の環境のためかもしれない。
近年、世界各地で氷河の縮小が報告されている。地球規模の気温の上昇、いわゆる地球温暖化がそ
の原因と考えられている。氷河上の藻類の高度分布や優占種は、氷河の変化の影響をうける可能性は
十分考えられる。氷河上の藻類群集の毎年の観測が行われている例はまだまったくないが、近年の1
0年前後での変化については少しずつ明らかになってきつつある。実際に縮小しているヒマラヤやア
ラスカの氷河では、藻類のバイオマスには大きな変化はないが、藻類種の高度分布が全体に上流側へ
移動していることがわかってきた(竹内、未公表データ)
。これは、氷河の縮小に伴い平衡線高度が
上流側へ移動ため、それに合わせて氷河表面の藻類の生息環境の高度分布が上流にずれたためと考え
られる。このような氷河の縮小にともなう氷河表面の物理的変化はだけでなく、雪氷の化学条件の変
化も藻類群集に影響する可能性がある。砂塵やその他のエアロゾルが氷河上に沈着することによって、
雪氷中にはさまざまな溶存化学成分が含まれている。雪氷藻類は雪氷中の溶存化学成分から栄養塩を
とりこみ繁殖する。したがって、このような氷河積雪中の化学成分の変化も藻類群集に大きな影響を
与えるだろう。
8.雪氷藻類が雪と氷を解かす
雪氷藻類は、単に雪氷上の物理条件や化学条件の影響を受けるだけでなく、反対に藻類自身も雪氷
に対して意外にも大きな影響を与えていることが明らかになってきた。雪氷表面での藻類の繁殖は、
白い雪氷面の色を変える。たとえば、赤い藻類が繁殖すれば雪面は赤くなる。赤い雪面も時間ととも
に藻類細胞が死んで腐植した有機物がたまっていくと、黒い色に変化する。このような雪氷面の色の
9
変化は、単に見た目の変化だけでなく、表面の熱収支に大きな影響を与える。一般に白い色である雪
氷面は、太陽光の反射率(アルベド)が非常に高い。しかし、雪氷藻類の繁殖によって雪氷面が赤や
黒に着色すれば、その分アルベドが低下し、日射の雪面への吸収が増える。その日射の吸収が増えた
分だけ融解が速まることになる。つまりこれは雪氷藻類が雪や氷を解かしている、とみることができ
る。
このような雪氷藻類による融解の促進作用が顕著なのは、ヒマラヤやチベットなど、アジア山岳氷
河である。氷河の融解が最も激しくなる夏、アジアの氷河を訪れると、その見た目の色は白から青と
いう一般の氷河の色とはほどとおく、黒から茶色である(図6)
。実際に氷河表面でアルベドを測定
すると、0.1 前後になる。不純物のないきれいな氷河の裸氷面のアルベドは一般に 0.4 前後であるか
ら、いかに反射率が低いことかがわかる。このような氷河の表面は、泥の様な物質が堆積している(図
6)
。この物質はクリオコナイトと呼ばれ、よくみると直径1ミリほどの粒状の小さな物体(クリオ
コナイト粒)が集まったものであることがわかる(図6)
。さらに顕微鏡でこの粒をみると、粒には
鉱物粒子と有機物と微生物が含まれており、粒の表面は雪氷藻類である糸状のシアノバクテリアが密
図6 藻類由来の有機物(クリオコナイト)に覆われた天山山脈の氷河(ウルムチ NO.1 氷河,左)
と,氷河表面のクリオコナイト粒(右上)
,粒を形成する糸状のシアノバクテリア(右下)
に覆っていることがわかる(図6)31)。このクリオコナイト粒は、糸状のシアノバクテリアによって
形成された小さなマリモの様な微生物複合体なのである。粒の中にはさまざまなバクテリアも存在し、
シアノバクテリアによって生産された有機物はそのバクテリアに分解され、次第に暗色の腐植物質が
蓄積される。この腐植物質のために粒は黒く見えるのである。汚れたアジアの氷河をみると、風で運
ばれてきた周辺の土壌粒子や砂漠の砂が氷河上に蓄積したように思われるが、実はその氷河の汚れは
雪氷藻類によって氷河表面で生産された物質なのである。ヒマラヤの氷河で行われた実験によると、
この氷河表面のクリオコナイトの存在によって、氷河の融解は約3倍も早くなっていることがわかっ
ている 32)。近年縮小が顕著であると報告されているアジアの氷河であるが、それは単に地球温暖化の
ような気温の上昇だけではなく、このような生物的な要因も関わっている可能性がある。
10
この藻類によって生産される黒い物質クリオコナイトの氷河表面の量は、地域によって大きく異な
ることがわかってきた。前述のようにアジアの氷河では、比較的多いのに対し、アラスカやパタゴニ
アでは、それほど多くない 33)。アラスカやパタゴニアの氷河は、観光地になっていることもあってい
ろいろな所で写真を目にすることも多いが、その青白い氷の色が印象的である。この色は、クリオコ
ナイトの量が少ないためであり、したがってアルベドも高い。このアルベドの違いは、雪氷藻類の繁
殖条件の違いかもしれない。また前述のとおり、今後の環境の変化によって,氷河上の雪氷藻類群集
も時代とともに変化していく可能性がある。藻類群集の変化は、氷河のアルベドを変化させ、氷河の
変動にも影響を及ぼす可能性がある。はたして雪氷藻類は気候変動とともにどのように変化するの
か?氷河変動の理解のためにも、氷河上の雪氷藻類の理解が重要なのである。
9.氷河深くに保存された雪氷藻類:アイスコアの分析
氷河の涵養域では、毎年降り積もった雪は解けずに層を作りながら氷河に蓄積されていく。涵養域
で繁殖した藻類は、この氷河の年輪の中にとりこまれ、氷河の中に冷凍保存される。この藻類は、年
層が下流部の消耗域に運ばれて再び表面に現れるまで、数百年間氷河の中に閉じ込められることにな
る。現在の氷河の涵養域の表面の下には、過去に繁殖した藻類が保存されている。この深い氷河の氷
を掘り出すことができれば、過去どのような藻類がどれくらい氷河上で繁殖してきたのかを、明らか
にすることができるはずである。氷河の氷に特殊なドリルをつかって穴をあけ、取り出した円柱状の
氷をアイスコアという。アイスコアは、南極やグリーンランドなど、世界各地の氷河や氷床で掘削さ
れ、過去数百から数十万年の気候変動を復元する手段として研究が行われている。一般に気候変動を
明らかにするためには、掘り出したアイスコアの水の安定同位体比や化学成分、氷に閉じ込められた
大気成分などが分析される。しかしながら、氷の中に保存されている微生物の存在を考えることはな
かったため、アイスコアの生物の分析はいままでほとんど行われてこなかった。最近になって、その
存在が知られるようになり、世界各地の氷河で掘り出されたアイスコアに実際に藻類が含まれている
ことが明らかになってきた。
ヒマラヤの氷河で掘削されたアイスコアの分析からは、たしかに藻類の繁殖は年によって変動する
ことがわかってきた。1998 年に掘削された西ネパールのヒドゥンバレーのリカサンバ氷河の深さ約
15m のアイスコアからは、4種の雪氷藻類がみつかった 30)。この 15m アイスコアは 1962-1998 の
37 年間を含むことがわかっている。藻類バイオマスの年変動をみると、1990 年代はそれ以前にくら
べ非常にバイオマスが大きいことがわかった(図7)
。このことは近年この氷河では藻類の繁殖量が
増えてきていることを示唆している。また、藻類の群集構造の分析からは、掘削時には下流域にのみ
生息する藻類が、過去に掘削地付近の標高でも繁殖していたことが明らかになった。このことは、下
流域に匹敵するくらいの激しい融解が、以前掘削地付近でもあったことを示唆している。また、ヒマ
ラヤのヤラ氷河 34)、中国祁連山ドゥンデ氷帽(Takeuchi 未公表データ)
、アルタイ山脈のソフィスキ
ー氷河
35)、南米の氷河 33)など、様々な地域の山岳アイスコアで、雪氷藻類が確認されており、年層
決定の手段や融解の指標としての可能性が議論されている。長い年代をさかのぼることのできる南極
やグリーンランドの氷床のアイスコアには、雪氷藻類が含まれていることは残念ながらあまり期待で
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きない。これらの氷床の涵養域の気温は低すぎて夏でも融解は起こらないため、表面で雪氷藻類など
微生物が繁殖することはほとんどないためである。しかし山岳氷河でさらに深いアイスコアを掘削す
ることができれば、長期間の藻類の変動があきらかになるだろう。氷期間氷期サイクルといった数万
年から数十万年スケールの気候変動で、はたして氷河上の藻類はどのように変化し、またどのような
影響を雪氷圏に与えてきたのか。アイスコアによる雪氷藻類群集の変動の復元は、氷河と生物の関係
を明らかにすることもできるかもしれない。
図7 氷河から掘削されたアイスコア(左)と,ヒマラヤ,リカサンバ氷河の15m アイ
スコアに含まれていた雪氷藻類とその定量結果 30) (右)
10.雪氷藻類研究のこれから
雪氷藻類は、最近意外なところでも注目を浴びるようになってきた。ひとつは、地球外生命の探査
である。たとえば、近年火星に数多くの探査衛星が打ち上げられ、火星表面の様々な場所で水の氷の
存在が確かめられている。火星探査の昔からの課題は、生命の存在の可能性である。いるとすれば、
雪氷藻類のような氷の上でも繁殖できる光合成微生物かもしれない 37)。氷の天体は、さらに木星の衛
星エウロパがよく知られている。エウロパは全面氷でおおわれ、その下には数十から数百キロの液体
の海の存在が示唆されている。エウロパは生命の存在する可能性がもっとも大きい天体の1つとされ
ているが、このような氷の天体では雪氷藻類のような低温生物が生命の存在を検討するのに役に立つ
だろう。
また、過去の地球にもエウロパのように全表面が氷で覆われたことがあったことがわかってきた。
いわゆる全球凍結またはスノーボールアースと呼ばれる事件である。全球凍結は、過去少なくとも2
回、7 億年前と22億年前に起こったと考えられている。全球凍結中、生物はどのように生き残った
のか、そこにも雪氷藻類の可能性が考えられる 38)。また、全球凍結の終結には、雪氷がどのように解
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けたのか、藻類の繁殖によるアルベド低下は、考えられないだろうか。
以上述べてきたとおり、雪氷藻類は地球という惑星の知られざる一面を我々に教えてくれる微生物
である。しかしながら、雪氷藻類について、我々はまだほんのわずかなことを知っているにすぎない。
初夏の残雪についた自分の足跡を赤く染める小さな藻類は、かつての地球の生命の主役、または宇宙
の生命の主役だったのかもしれない。さらにその小さな細胞の中に、壮大な地球環境変動と生物進化
の歴史が秘められている可能性があるのである。
謝辞
雪氷藻類をはじめとする雪氷生物と出会い、そして日々こうして研究をつづけられているのは、幸
島司朗先生のおかげである。改めて感謝申し上げる。また、本論文を書く機会を与えていただいた力
石國男先生、関幸子先生に感謝する。
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