1 フックス「風俗の歴史」 そうした「悪質で非道徳的行為」ことは、 社交界

フックス「風俗の歴史」
合には、情熱のままにほとばしることのな
そうした「悪質で非道徳的行為」ことは、
い心が、押さえに押さえ秘密のしるしなの
社交界で、腹、お乳、足という言葉を口に
だから
出すのは無作法であると決め付けられた
盗まれても、盗まれたものに気づかずば、
社会の中では、きわめてありふれた事柄で
知らさぬがいい、知らずば盗まれぬと同じ
ある。しかし、それは矛盾ではなく、二つ
事だ
とも同じ土台から生まれたのである
十九世紀後半の女性について、アルフォ
ンス・カルは、こう述べている。
イアーゴ妻に向かって
「男たちが全ての女がどう考えているか
エミーリアよ
を知ったらなら、かれらはこれまでよりも、
お前さん、外では絵に描いたようにおしと
十倍は勇敢になれるのに」
やかだが、居間では騒音ベルのごとく、台
むすびより
所では山猫
国民大衆が、すべての分野において「自
悪いことしようって時には聖人のように
分の幸福の可能性」を求めているか」で規
すましていて、怒り出すと悪魔だ
制される
家の仕事には怠け者で、床へはいりゃ大励
個人が消費できる精神力及び肉体力とエ
みだ
ネルギーは、全体として、何時の世でもお
お前さんは、起きれば遊ぶ、寝りゃ働く、
そらく同じ
ってんだ
雹 五ミリより大きいものをいい、それ以
イアーゴ
下をあられという
男でも女でも、人の名誉はその魂の大切な
時速五十キロもある速さ
宝物です
夏、入道雲とともに見られ、雷を伴うこと
私の財布を盗むものはつまらぬものを盗
が多い
むに過ぎません
オセロウ
それは何かだが、実はなんでもないもので
す
うむ、もう我慢がならぬ、
私のものだったものが今はそいつのもの
血が騒ぎ立って抑える心をしのぎ始める
になったというだけのこと、もともと数千
感情が判断をくらまして
人の間の回り物です。
先走ろうとす
る
だが、私から私の名誉を盗み取るものは、
取ったやつには何の得にならぬものを私
お前がこう口ごもるのがますます怖い
から奪って、わたしをほんとうの文無しに
のだ
してしまいます
そういう口ごもりは、腹黒い不誠実なや
つなら、よく使う手だが、正しい人間の場
嫉妬をする人はわけがあるから疑うんじ
1
ゃないのです。
1-17
疑い深いから疑うんです。嫉妬は自分で生
この婦人、すでに三十をすこし超え、意地
まれて自分で育つ怪物です
の悪い連中に言わせれば、老嬢の名がふさ
わしい年頃である。美貌よりも善良さの点
で推奨される種類の女で、同じ女性から、
実にいい人ですわ、ほんとうに奥さま、あ
トムジョーンズと共に
んないいかたってありませんわ、とたいが
1-13
いは言われる型の婦人であった。
およそ作家たるものおのれを、小数の客を
まことこの婦人は、美貌に恵まぬことを悔
呼んで無償のご馳走をふるまう紳士と考
やむ気持はさらさらなく、そのような長所
えてはならぬ。作家はさしずめ、金さえ出
(美貌も長所のうちとすればだが)を口に出
す者なら誰でも歓迎する飲食店の経営者
す時は必ず侮蔑の色を浮かべるのが常で、
である。前者の場合には周知のとおり何を
私は誰々さんのように綺麗でなくて本当
食わそうと主の勝手しだい、たといそれが
に幸せと思っている、あの人も美しくなけ
はなはだ不味で一座の口にまったく合わ
ればあんなことにならなかったかもしれ
ずとも、一度は苦情を申すわけにはまいり
ないのに、美しいばかりにあんな間違いを
ぬ。いや、それどころか出される限りのも
しでかしてしまった、などとよくいうのだ
のを表面は賞美し推奨するのが礼儀とい
った。
うもの。ところが飲食店の店主となるとこ
1-19
れがまったくの反対。金を払ってものを食
オールワージ氏はある特殊な用件でロン
う奴らは、自分がどんなに小うるさい気難
ドンに出て、丸三ヶ月不在だった。その用
しい味覚の持ち主であろうとも、その味覚
件が何だったか知らないが、長年の間長く
を満足させねば承知しない。すべてが口に
て一月とは留守にしたことの無い家から
合わぬ限り、めちゃくちゃに食事を非難し
こんなに長い間離れていたことで、その重
痛罵し罵倒する権利を主張する
要性が分かるというものだ。
そこで、客にそのような失望を与えて怒ら
1-20
せまいと、誠実な善意の亭主たるものは、
この婦人、歳は五十二歳ながらも、未だか
誰でも、まず店に入ったとたんに目につく
って服をちゃんと着ていない男の姿は見
ような場所に献立表を用意しておくのが
たことが無いと断言するのである
常法である。それを見てこの店では何がで
きるかを知り、その上で腰をおろして出さ
だんな様はご自分の潔白をご承知でも、世
れるものを食べるとも、もっと口に合いそ
間はうるさいものでございます。身持ちの
うなどこか他の店に出直すとも、それは客
いい人で、見に覚えもない子の親にされて
のご随意というわけである。
しまうような目にあった人もすくなくな
我らがここに調製した品はほかならぬ「人
いのです
間性」という料理である
1-25
2
大きな驚きはとかく声を発せぬのが世の
美の最高の輝きを見たとはいえない。
習い
1-28
2-168
彼女が兄の意向に従う行動を取る時には、
ある卓抜な作家の名言「人間いかに熱すれ
対外この種の評言が伴うのだ
ばとてとてもその本性と正反対の行為の
意向には従いながらも、同時にその意向が
できぬことは、ちょうど急流といえどもわ
愚かで不合理であることを知っていると
が流れに逆らって船を運ぶことのできぬ
いう宣言、これくらいその随従行為の価値
とおなじ」
を高めるものはない。
179
黙って追従することは何ら意志を拘束す
この理髪師すこぶる風変わりな諧謔家で、
ることにならない。
そのためにときどきちょっとした不都合
したがって容易に、何の苦痛もなく、永続
を招いている
できる。
顔を張られたり尻を蹴られたり骨を折ら
が我々の望む行動を、妻なり子なり親戚な
れたりの類である
り友人なりが、顔に嫌悪と不満の表情を浮
おもむろに急げ
かべ、ブツブツいいながらいやいややると
いえ、けちな学者でさ。人の力には限りあ
いう場合には、彼等の忍ぶ辛さが明らかな
り
だけ、いっそうの恩義を感ぜねばならん理
さようの名誉には値せず
屈である。
愚者も時に名言を吐く
1-40
まずお先へ、摂社も後より参る
見えぬは無きに等し。
すべてを食い尽くす時の流れ
女の赤面、人に見えねば赤面せず
技 術 は 万 人 に 共 通 Ars
omnibus
communis
2-22 相手の奸計をを見抜くには、自分の頭
の働きをいわば相手の頭の働きと同じ調
4-7
子になるように調節しなければならない。
この世では善は幸福への、悪は不幸への、
非常に頭の働く人間は、往々にして相手を
確実な道であると説く一派の宗教家、ある
実際以上に賢い言いかえれば実際衣装の
いはむしろ道徳家がいる。まことに健全な、
大悪党と、買いかぶって失敗する。
慰安ともなる説であるが、ただ一つの欠点
は真実でないという一事である。
2-100 ソファィアの心を襲った悩みは、彼
4-9
女の美を引き立てこそすれ害いはしなか
余のかって知っていた賢い老人が「小人閑
った
居して不善をなす」とよく言っていた。余
涙がその明眸をいっそう際立たせ、ため息
はこの奇矯の言を女性がた一般に押し広
に乳房はいっそう盛りあがってみえた。ま
げようとは思わぬが、これだけを言うこと
ことに、悩める美人を見たことのない者は
は許されようか。すなわち、女性の嫉妬が
3
正当な激怒の様相を帯びて公然と現れな
申し上げます」
い場合は、我ら葉、その善からぬ激情が密
33
かに働いており、相手を公然とは攻撃せず
「兄さま、ものの底まで見る深謀の政治家
ともこっそり陥れようと図っているのだ
は、時に表面に浮遊するのとはまるでちが
と考えても差し支えない
った事態を見るものです」
ベラストン夫人の行動がそのよい例で、顔
39
には微笑を称えながら、実はその下にソフ
ジョウンズが以上の弁舌を終始一心に傾
ァイアへの憤怒を隠していた。この令嬢が
聴していたのか、それとも話に切れ目がな
自分の欲望達成の邪魔をしているとはっ
かったからのことか、それは何ともいえな
きり分かっているだけに、なんとかこの女
い。とにかく一度も彼は答えようとせずに、
を取り除こうと彼女は決心した
女も一度も途切らさなかった
48
10
我は人間なり、およそ人間に関することに
恋は火と同じで、いったん十分に点火され
無関心たり得ず
ればたちまち炎となって燃え上がる
58
4-17
世の中には、自分の行動を
もう一人の共謀者の心中は、シェィクスピ
学校で教わった善悪の既成の尺度を超え
アがいみじくも帰した千々の悩みにさい
た、法律の字句を超えた、何物かで規定す
なまされた
る人々がある
恐ろしいことを初めて思い立つ時から
66
いよいよそれを実行するまでの間という
なかなかわしが思い出せなかった。なにし
ものは
ろわしはその後かわったからね。
まるで怪しい幻かものすごい悪夢だ
我や昔の我ならず
精神と肉体の諸器官とが謀議をこらすし
95
そうなれば人間というこの統一体が
あれだけ多勢のヴァイオリン弾きが、お互
さながら一つの小王国よろしくで
いに邪魔し合いもせずに一度に演奏でき
一種の内乱状態に陥ってしまう
るとはたいしたものだ
20
104
ベラストン夫人は若い貴族の躊躇を聞く
すぐれた知性が劣った知性に征服される
と、かニューゲイト弁護士と呼ばれる法律
ことを暴露した
の達人たちが若い証人の良心一笑に付す
事実、もっとも分別に富んだ頭脳が往々に
ときのように一笑に付した
してもっともやさしい愛情に打ち負かさ
4-28
れるのである
「あなたのお言葉ならばたいがいはがま
4-111 それにしても読者は、心中ソファィ
んしますが、今のようなお言葉を平気で聞
アを憎むべラストン夫人が、なぜこうもそ
き流すことにはなれていないことだけは、
の利益になりそうな縁組に乗り気になっ
4
ているのかを不審とされるかもしれない
ろしい事件の起こる前に、今までの生活の
余はそのような読者には人間性を丹念に
愚かさやけしからなさ加減を悟って、きっ
究められることを要望したい
ぱり足を洗う決心をしていたんだ。
人間の書のほとんど最後のページに、極め
151
て読みにくい文字で書いてある。
あなたがそうまでその人のためにご熱心
いわく、結婚と言うことになると母親とか
なのは本当に意外ですわ。私こんなことは
伯母とか言う連中はばかげた行動を見せ
考えたくありませんけれどもーー」「間違
るけれど、女性というものはわが恋を邪魔
ったことは考えていただきたくありませ
されることをこの上ない不幸と考え、恋の
ん」
かなわぬ恨みだけは何をおいても晴らさ
156
ではと思うものである、と。
笑えばオールワージ氏はいかにもやさし
またほぼ同じあたりにこうもある。一度あ
い慈愛深い人だが、渋面を作るとじつに恐
る男をわがものにする喜びを持った女は、
ろしかった
どんなむちゃくちゃな手段を取ってでも、
160 相手をいじめながら愛などと口にする
他の女がその男と楽しみにふけることを
のは一番侮辱的な見せ掛けです。
妨げようとするものである
163 このあわれな婦人はお人よしそのもの
1- 117
と言ってよい。人のいうことは一切信じよ
実を言うと男女を問わず完全な美と言う
うとする種類の人間で、偽りと言う武器を
ものは、普通考えられる以上に抵抗しが
攻撃用にも防御用にも天から授かってい
たいものである。世間には醜い相手で我
ない。したがって本のちょっとしたうそを
慢して、外観などはどうでもいい、もっ
用いてかかる者があれば簡単にだまされ
と内容のある美しさが大切だなどと(ち
るのである
ょうど子供が意味もわからぬことを暗記
「なんだって!昨日あいつから手紙を受
するように)鵜呑みにしている者もある
け取らないと言うのかい?」と伯母。――
けれど、しかし完璧の美が目の前に近づ
「手紙ですって!」とソファィアがすこし
けば、そういうもっと内容のある美しさ
驚く。――「人の言葉を鸚鵡返しに言うな
などが昼間の星のように光を失うのは、
んて、なんてお行儀の悪い!」
余の常に観察するところである。
138
お前の不幸な情熱を見るとわしはなんと
も言えず悲しい
139 嫌がる女も忍耐で征服できるなんてい
1-22
うのは、とんでもない世間の思い違いだ
―婦人の衣装の豪華さにすっかり気圧さ
149
れて、目をまるくしているのである。いや、
僕はこういう不幸な立場になった人間
衣装などよりも、この婦人、もっともっと
の決まり文句を言うんじゃないが、この恐
尊敬されて然るべき資格がある。まことに
5
絶世の美女なのだ。
やさしい忠節な鳩が美しい木の枝にとま
婦人はパートリッジにぜひ席にもどっ
って連れ添う雄鳩の上を思うように、その
てくれと勧めたがききめはない。それから
ように顔に百千の美をたたえ、息吹きに百
彼女は手袋を脱いで双の手を火にかざす。
千の香気を吐き、思いを愛するトムの上に
火にとけぬ点だけを除けばすべて雪その
定めつつ、顔の美しさにも似て善良無邪気
ままである。つれの婦人、これは実は侍女
な心にソフィアは可憐な頭を片手に支え
であるが、同じように手袋を脱ぐ。現われ
て横たわっていた(まことにこれぞソフィ
たものは冷たさも色も、冷凍の牛肉にそっ
アその人であった)。
くりである。
31
1-25
「いや、別の時なら喜ぶかもしれない
愛想のよい態度にはたいへんな魅力が
が 、」 と パ ー ト リ ッ ジ 、「 non omunia
あり、あらゆる人々の賞賛を博することが
possumus omnes(人の力には限りあり)
確実である。それは有名なハシー婦人に比
さ。ま、普通の人間なら女は一度に一人で
肩できる。両者とも、まちがいなく女性の
十分だからな。」「一度に一人とはこいつ
完全さを最高度に引き立たせ、またあらゆ
め、何を言うんだ、
」オナーが叫ぶ。
る欠点を緩和し隠すのである。愛想のよい
態度の美しさを読者のお目にかけた今、我
35
らはこれだけの寸評を加えずにいられな
―「私こんなに気が楽になったことはない
かった。
わ。あの人は悪い人である上に、卑しい軽
蔑していい人だわ。ほかのことはみなゆる
27
せるとしても、私の名前をそんな野蛮なあ
「さよう、なるほど私は紳士じゃが、つ
ばきかたをするなんて。もう私、軽蔑して
ま ら ん こ と は 苦 に し ま せ ん わ い 。 Non
やる。オナー、ほんとうに私、気が楽にな
semper
nominativus(偶然の声は必ずしも主語と
った。すっかりサバサバしたわ。」そう言
、、
ってよよと泣きくずれた。
はならず)ですからな。」パートリッジが
ソフィアが泣いたり、すっかりサバサバ
vox
casualis
est
verbo
叫ぶ。
したとくり返したりで、しばらくの時間が
すぎたが、やがてスーザンが馬の用意がで
29
きたと知らせてくる。
たとえば六月の月にたまたま百合にま
36
じって咲いた一本のダマスカス薔薇が周
囲の淡白な色に紅の一点を添えるように、
ジョウンズもわが寝台に帰って(どこか
あるいは快い五月の月に茶目な牝牛が花
ら帰ったかはご勘弁願いたい)、
咲く牧場にその香ぐわしい息吹きをまき
40
散らすように、あるいはまた花開く四月、
6
、、
ところでこの種の人間はへま な猟犬と
――諺によれば、老いた牝馬もこの霊薬に
同じことで、自分では決して獲物を嗅ぎつ
は立ち止まらずに走ると言う。現代はこの
けないくせに、りこうな犬が吠えはじめる
霊薬に、古人が完全な雄弁術に認めたと同
や否や、たちまちそれに和して、嗅跡など
じ無敵の力があるとしている!
はおかまいなし、まっしぐらに全速力で駆
いえば彼女は、いくらでも望みどおりの礼
け出すのである。
をすると約束したのである。
48
55
たいがいの場合、世にこの兄弟くらい反
一言で
どだいこの女、彼と自分の主人との仲に好
対なものもない。特に正反対なのは――兄
意はもっていないので、それというのも、
は絶対に遠いものを予見できないが、その
恋愛沙汰、とりわけ秘密の恋の場合には、
代りことが起こった瞬間にたちまち万事
習慣上当然侍女の役得となるべき心付け
を見ぬく点はすこぶる頭が早い、妹のほう
を彼が怠ったからのこと。我らはそれも彼
は恒に遠くを見通すが眼前のものにはそ
の無頓着な気質のせいでなにも彼がケチ
れほど目がきかない点である。
なためとは思わぬが、彼女はあるいは後の
動機に帰したかもしれない。とにかくその
51
ために彼女がひどく彼を憎み、機会あるご
婦人がたは、時に仔細なことに恐怖のさ
とに主人に対して彼を傷つけようと決心
まを示す幾多上品な技巧を心得ておられ
したことは事実である。
るが(その数は男子が彼らの恐怖を隠そう
62
とする技巧の数におさおさ劣らない)、同時
に女子にふさわしい、いや、その義務を果
世に中傷者ほどけしからぬ罪の奴隷は
たすにしばしば必要な、一種の勇気をもっ
なく、社会にこれくらい憎むべき害虫はな
ていることは疑いない。女子の徳をぶち壊
い。悪魔に招かれるにふさわしい客として、
すものは獰猛さであって勇敢さではない。
また悪魔に歓迎される客として、その右に
我々は、正しくも公明なアリアの物語を読
出る者はどこにもないと余は信ずる。思う
んで、彼女の意志の強さと同時にその貞淑
に世人はこの怪物に対して、当然抱いて然
と温順に感嘆しない者があろうか。同時に、
るべき憎悪の半分も抱いていない。
ねずみに悲鳴をあげる多くの女も、あるい
は犬に毒を盛ったり、さらに悪いのは夫を
62
自ら服毒する羽目に陥る能力をもってい
人を殺す方法のうちで、ただひとつ中傷の
るのかもしれない。
罪に酷似するのは、これぞもっとも卑劣も
っとも厭うべき方法、すなわち毒殺という
54
やつ。これこそは卑劣きわまる身の毛のよ
ソフィアは百の説得も効なしと知ると、
だつ復讐の方法で、かつてわが国法がこれ
その美しい声に絶対無敵の霊薬を添えた。
を他の殺人と区別して特に厳しい刑罰を
7
Offendar maculis, quas aut
加えたのはまことに賢明であった。
incuria fudit,
63
Aut humana parum cavit natura
シェイクスピアはこの罪悪にいみじく
――
も触れてこう言った――
一篇の詩、その大部分がすぐれたらん
私の財布を盗む者は、盗んでも盗ま
には、
ぬに等しい。
一、二の欠点を余は咎めじ。不注意の
私の物だったのがそいつの物にな
所産もあり。
る。前には何千人の物であった。
人間生来の弱点に由来するもあれば。
ところが私から名誉を奪う者は、
まことにマルティアリスも言うごとく、
Aliter non fit, Avite, liber.
奪ったからとてそいつの得にはな
らぬが、
つまり、いか
なる作もそうより書きようはないのだ。善
私のほうはたいへんな損になって
悪の品評も容貌の品評も、全て人間界の品
しまう。
評はこの精神でなすべきで、何千時間を費
して成ったこの物語のごとき作が、たまた
64
ま一、二の章が面白くなくてまさしく一理
作品を中傷することは実はその作品を中
ある非難に値するからとて、全体が世の指
傷することである。人を私生児と呼べば、
弾を受けるとするならば、まことに過酷と
必然その母親を淫婦と呼ぶことになるの
いうものであろう。
と同じく、作品を駄作とかひどい愚作とか
称してなおその作者を愚物と呼ばずにい
71
るわけにはゆかないのである。もっとも、
亭主が令嬢を両腕に受けとめたとたんに、
道徳的には愚物よばわりのほうが悪党と
近ごろ通風にひどく悩まされていた彼の
呼ばれるよりまだましだろうが、世間的利
足がガックリいって、彼はひっくりかえる。
益への害はこのほうがはなはだしいと思
ただ倒れざま女性への心づくしと腕の冴
われる。仮にまた作品中に正当に指摘でき
えで、その美しい荷物の下にわが身を投げ
る欠点があるとしても、それがもっとも本
る工夫をしたから、多少とも怪我をしたの
質的な個所に存するのでない場合、あるい
は彼ばかり、ソフィアが身に受けた大被害
はそれを償う、より大きな長所がある場合、
は、地面から起きあがったとき、居合わせ
ただそれらの欠点のゆえに全体に厳しい
た面々の面上に認めた不謹慎な会心のニ
判決を下すことは、真の批評家の判定とい
ヤニヤ笑いから、羞恥心に受けた手痛いシ
うよりも、やはりむしろ中傷者の悪意の匂
ョックだけであった。これでことの真相は
いがする。それは、つぎのホラティウスの
彼女にも見当がついたが、ここにそれを語
見解とまさしく正反対ではないか。
って、若い令嬢の羞恥心が傷つけられたの
Verum ubi plura nitent in carmine,
を喜んだりできるそういう読者におもね
non ego paucis
るようなことはさし控えておく。我らはい
8
まだかつてこの種の事故をおかしいと考
えたことはなく、若い美人の羞恥心を笑い
73
というつまらない満足の犠牲に供したい
結局いろいろなことを綜合してみて、わし
と思うような男は、そういう羞恥心の何た
があの連中の正体を何と見破ったと思
るかをよく解しない手合いだ、と断定する
う?」――「あなたの発見は私などにとて
のを我らははばからない。
も想像もつきませんわ、」と細君。――「可
愛いやつじゃ、」と夫は妻のあごの下をつ
72
ついて、「なるほどおまえはこういうこと
ところでこの亭主、界隈きっての賢い男
にかけては、いつもわしの頭に服している
と評判をとっている。村の誰よりも、牧師
な。・・・
にくらべてさえ、遠く深く物を見抜く男と
76
されている。おそらくはその顔つきが、こ
の名声を博するのにあずかって力があっ
フィッツパトリック婦人も同時に床を
たのだろうか。どこかいかにも賢そうなま
離れて、侍女を呼んですぐに着がえをする。
た偉そうなところがあり、ことにパイプを
婦人もまことに美しい人で、連れがソフィ
くわえた時は――めったにパイプを離さ
アでさえなかったら、美人と思われたでも
ないのだが――そう見えた。彼のものごし
あろう。が、オナー女史がみずから進んで
がまた、賢明との世評を助長する助けにな
伺候して(ソフィアは自分のほうから女史
った。挙動は無愛想とまではゆかぬがしか
を起こさせることを肯んじなかったのだ)
つめらしくて、たまに口をきくと必ずゆっ
主人に衣装をつけ終えたとき、太陽の前ぶ
くりとものを言う。文句は短いが、のべつ
れ役たる暁の明星の役目を演じたフィッ
フムとかハハアとかウムウムとかいろい
ツパトリック夫人の魅力は、その星と同じ
ろな合の手が入るのと、首を横にふったり
運命で、太陽の光が輝き出た瞬間に完全に
縦にふったり指でさしたり、説明的な見振
気圧されてしまった。
りが言葉に付随するのとで、たいがいの聞
おそらくこの時ほどソフィアが美しく
き手は彼の表明した以上のことを理解す
見えたことはなかった。されば、宿の下女
ることになる。いや、普通の場合、この男
が火をおこし終えて下におり、もし地上に
はいろいろと知っているのだがそれを言
天子がいるものならいま二階にいらっし
わずに控えているのだという印象を与え
ゃるのが天使にちがいないと口をきわめ
る。このことだけでも彼の英知の評判を説
て言い立てたとしても、その誇張を非難す
明するに足りる、というのは人間は不思議
るのは当らないのである。
なことに、自分にわからぬものを崇拝する
78
傾向があるからである。世のイカサマ師ど
ものなかにはこの大秘密のみを頼りにし
フィリッツパトリック夫人は数瞬の沈
て、まんまとインチキを成功させるものも
黙ののち深いため息をついてこう始めた
少なくない。
――
9
「不幸な境涯の者は、生涯のうちでいち
どと躊躇なく断言する貴婦人もある始末
ばん楽しかった時期のことを思い出すと、
なの。
」
ひそかな心の痛みを感ずるのが普通です。
82
過去の快楽の思い出は、去った友を思うの
にも似た一種痛切な悲しみをもたらしま
『ただ意外なことと思えるでしょうが、
す。ほんとうにその両方とも我々の脳裏を
我々二人の態度から誰の目にも明白なは
なかなか離れないものですからね。
ずのことが、叔母さまの目には見えない。
いえ妖しいとさえ気づかないらしいの。年
81
のいった女の目は恋には盲になるらしい
―あの人はすっかり叔母様のお気に入り
のね。自分への甘い言葉だけを貪るように
になって、叔母様の内密の宴会にもいつも
受け入れて、猛烈な食いしん坊と同じこと、
加わっていました。あの人のほうも負けず
同じ食卓の他の人たちの間に何が起こっ
に叔母様を特別扱いにし、特別な態度を見
ているかを観察する余裕がないのだわ。―
せるようになって、口さがない連中がまず
―
目をつけるようになり、気のいい人たちが
二人を結婚させました。私自身は正直なと
85
ころ、あの人の肚のなかは俗にいう『いさ
だって、叔母さまに言い寄るのにかこつけ
さかも疚しくない』という、あれだなと思
てでなかったら、フィッツパトリックは私
っていました。つまり、結婚によって夫人
の心を捕える十分の機会など絶対になか
の財産を自分のものにしようというあれ
ったんですもの。ああいう事情でなかった
です。叔母さまはもう、男に悪い心を起こ
ら私だって、はばかりながらあんな男に心
させるほど若くも美しくもなかったと思
をやすやすと征服されたりするものです
いますが、なお結婚相手としての魅力はた
か。私が自分の判断を頼りにさえしたら、
いしたものだったのです。
こんなひどい選択ちがいなどしなかった
と思うわ。が私は完全に人の意見を信頼し
82
て、女の人が誰も彼も歓迎する男ならと、
ソフィアはため息をついて、「男の人はみ
あの人の値打ちを愚かにも頭から信じて
んな、とても心づくしの見せかけが上手だ
しまったの。男性のもっとも賢いもっとも
から、その魅力に我々は負けてしまうの
偉い人にも負けない頭をもちながら、我々
ね。」――「ほんとうだわ。男の人はほか
がこうもしばしば一生の伴侶や愛人に愚
のことは何も知らなくても、恋の手管だけ
劣この上ない男を選んだりするのはいっ
はとんだマキャベリよ。私もそういう実例
たいなぜでしょう?
を知らずにすんだらよかったと思うわ。と
愚か者のために一生を誤った女の数を考
にかく前の叔母さまのうわさと同じくら
えると、私はこの上もなく腹が立ってくる
い今度は私のうわさが広がって、フィッツ
わ。」
パトリックが私たち両方と関係があるな
10
分別がありながら
86
と早く物になるほうと御結婚
なさるべく候。忠言無躾には
候えども、みな貴殿の為を衷
心思うが故に候。次便にてジ
ョン・ドラゲット商会宛、十
四日間期限、貴殿名義にて小
切手振出し申すべきにつき、
さよう御諒承相なりたく候。
敬具
「出発の前夜、我々は二人とも夢中にな
ってまだこの点を論議していたんですが、
あの人は突然椅子から立ちあがると、クラ
ブに行くと言ってやにわに出てゆきまし
た。出てゆくとすぐ私は床に紙が落ちてい
るの気づきました。あの人が不注意にハン
カチといっしょにポケットからひっぱり
出したのでしょう。拾いあげてみると手紙
です。私は躊躇なくあけて読んでみました。
ム・コスグレイブ
くり返しくり返し読んだのでほとんど一
語一語空で言えますが、それはこういう手
お手紙拝見、お言葉驚き入り
候。綿入羅紗外套一着分以外
一回のお支払いもなく、御勘
定は現在150ポンド余に達
「そういう手紙なの。ねえあなた、
私がどんなにびっくりしたか察して
ちょうだい。現金があるだけ姪のほう
がなおよしだなんて! 手紙の言葉
の一つ一つがそれぞれ短剣になった
としても、私はあの男の胸にそれを全
部、喜んで突き刺したいくらいだった
わ。
し居り候事お忘れなさるまじ
く、近々何がしの婦人くれが
しの婦人と結婚のはずなりと
て支払いを延引せられし事も、
既に数回に及び候。当方も希
望や約束で食って行く訳にも
参らず、また、さようの物は
羅紗屋の支払いにもあてかね
候。お言葉によれば叔母か姪
かどちらかは必ず物になる、
莫大な寡婦資産のある叔母の
87
しばらくして高飛車な調子で言うの
です、『君の荷物はすっかり召使たち
に荷造りさせたのだろうな。朝六時に
は馬車が来るんだからな。』この挑戦
に堪忍袋の緒も切れて、私は答えてや
ったの、『いいえ、まだ手紙が一つ荷
造りしてありませんの。』そう言って
手紙を卓上に投げ出し、思いつくかぎ
りのひどい言葉で詰問を始めました。
紙だったわ――
ブライアン・フィツパトリック
殿
ほうならとっくに結婚可能な
りしが、現金があるだけ姪の
方がなおよしとの事に候いし
も、たまには愚者の忠言もお
聞き入れありて、どちらなり
88
「うしろ暗さのためか恥ずかしさか、そ
れとも慎重さからか、それはなんとも言え
ないけれど、すぐ腹を立てる男なのにこの
11
時はあの人もすこしも怒らなかったわ。そ
ほんとうにどうして男は、よそや人前では
れどころか実におだやかに私をなだめよ
のべつ猫をかぶりつづけて、家でだけは平
うとするんです。手紙のなかの、私がいち
気でいやな真実を見せていられるのでし
ばん責めたあの文句は、言ったおぼえも書
ょう?
いたこともないと誓言し、なるほど結婚の
いるので、家に帰ると埋め合わせをするの
ことや私のほうを選んだことは奴に話し
だわ、きっと。だって、人前ではしゃいで
たが、現金があるからなどとことは言った
陽気でご機嫌だった時ほど、その後二人き
絶対にないとしきりに主張するのです。だ
りになると必ずそれに比例してひどい仏
いたいそういうことを奴に話したのもこ
頂面の不機嫌になるんですもの。ほんとう
のごろ非常な金詰りだったためだと弁解
になんとも言えない残酷な人。私が愛情を
して、それもアイルランドの邸を長いあい
みせても冷淡で無感覚だし、あなたやほか
だなおざりにしすぎたためだと言い、今ま
の人たちが喜んでくれたあの私のふざけ
で私に打ち明けるに忍びなかったが、実は
る癖も、あの人は冷笑するだけなのよ。私
帰国をあんなに主張したのもそれが唯一
が大まじめに持ちかければ鼻歌や口笛、私
の理由だったと言うんです。それからいろ
がすっかり意気消沈してみじめな気持ち
いろやさしいことを言って、最後に私を熱
でいるとあの人は怒って私をののしる。私
烈に抱擁し、激しい愛の言葉を重ねるので
の機嫌のよいのを見てもちっとも喜ばず、
した。
それは私があの人に満足しているからだ
そとでは腹の虫をむりに殺して
などとは決して言わないくせに、私の気の
88
ふさいでいるのには必ず腹を立てて、おま
とにかく、あの人があの二十倍の悪いこと
えはアイルランド人と結婚して公開して
をしていたとしても、あの半分のやさしい
いるのだろうなどと言う始末なのよ。
睦言で私はやはり陥落してゆるしてしま
90
ったでしょうよ。
女は好きな人の愚かさにはなんとかかん
89
とかこっちから弁解を考えつくものなの
「ねえあなた、境遇はどうでも、快活な
よ。それに、先輩ぶった言いようだけれど
機嫌のよい夫に扶養され慰められる女は
派手と育ちのよさで仮装されると、ばかを
幸福だわ。でも私、幸福な人のことなど考
見抜くにはよほど目がきかないとだめな
えたって自分のみじめさを増すだけだた
のだと私思うわ。
わね。私の夫は孤独の陰鬱さを晴らしてく
れるどころか、この人といっしょではどこ
97
に住もうがどんな身分だろうが悲惨にな
「知力を捨てるなんて!
るにちがいないと私に確信させました。
い! 私、あなたをそんなつまらない人だ
ばかばかし
とは思わないわ。私だって他のものは何で
90
も捨てる気にもなるかもしれないけれど、
12
これだけは捨てないわ。造化の神だって、
しに平然としていられるようなのんきな
もし我々をみな夫に屈服させようという
ものじゃないので、愛するという動作をぬ
おつもりなら、こんなに大勢の妻に知力の
きにして愛する心をもつなどというのは、
優越をお与えにはならなかったと思うわ。
見るという働きをぬきにして目をもつの
男だって頭のいいかたは妻が知力を捨て
と同じ無理な話しだと思うわ。だから、夫
ることを求めはしない。
が熱情の対象でなくなったらたいていの
場合だれかほかの人が――いえ、夫をどう
100
でもいいと思うようになれば――いった
結局、驚かないように、また人にはいうな
ん夫を軽蔑するようになれば――ねえ―
といろいろ前置きをして、夫に情婦がある
―つまり――こっちに愛の熱情があれば
という深刻な秘密を話したのです。
――あら!
なんだかわからなくなった
「あなたはきっと私がこの知らせを、い
わ――こういう抽象論は、ロック氏のいう
とも平然と聞き流したとお考えでしょう。
ように思想の連鎖を見失いがちなものね。
実は、もしそうならとんでもないまちがっ
要するにほんとうのところは――要する
た想像です。軽蔑はしていても夫への怒り
に、私にはわからないわ。でも要するに夫
は消えず、これを聞いて憎しみの心が湧き
が帰ってきて、最初その態度に私とても驚
あがりました。いったいこれはどういうわ
いたわ。でもまちがいなくその動機もわか
けでしょう。我々が鼻もちのならぬほど利
り、納得もいったのよ。簡単にいえば夫は、
己的だから、軽蔑している者でも人に取ら
私の持っていた現金を全部使い果たして、
れると気になるというのでしょうか。それ
自分の地所はこれ以上抵当にもできない
ともむしろ我々が鼻もちならぬほど虚栄
ので、私のちっぽけな地所を売って放蕩の
心が強くて、こういうことが虚栄心をいち
資金を得ようと思い、それには私の同意な
ばん傷つけるということでしょうか。ソフ
しにはだめなので、なんとかその同意を得
ィア、あなたならどう思う?」
たいというのが、こうも情愛を装う唯一無
二の動機だったのだわ。
101
104
「夫は私に対して、出発前のころとは打
ってかわって、結婚当初の一週間の行動に
簡単に申せば(詳しいことを申してあなた
きわめて近い態度を装うのよ。もし私のほ
を退屈させる気はありませんから)、宝の
うにすこしでも愛の火花が残っていたと
扉を開いて私を自由の身にしてくれたの
したら、あるいは焼けぼっくいに再び火が
は、あの黄金という、あらゆる錠前を開く
ついたかもしれないわ。しかし憎悪が軽蔑
万能の鍵だったのです。
にとって代ってこれを圧倒することはあ
109
っても、軽蔑から愛にかわるということは
ありえないと思うわ。ほんとうのところは、
愛の熱情は対象から満足を受けることな
この点に関連して、余は読者に一つの話
を伝えたいと思う。かの有名なネル・グウ
13
ィンがある日ちょっと立ち寄った某家を
121
出て馬車に乗ろうとすると、たいへんな人
しもべ
だかりがして 僕 が血にまみれ泥だらけに
疑惑には二つの段階があると余はかねて
なっている。どうしたことと主人に聞かれ
思っている。第一級の疑惑は心から発する、
て僕が答えた。「奥さまを淫売婦と呼んだ
と余は考えるが、それは、この種の疑惑の
無礼な男と喧嘩をしたのです。
」――「ばか
働く極端な速度が何かあらかじめ内的衝
だね、おまえは、」グウィン夫人が答えた、
動の存在することを思わせるからであり、
「それではおまえは生涯毎日喧嘩をしてい
その最上級のものは往々みずからその対
なければならない。世間がみんな知ってい
象を作り出す――ないものを見、また、必
ることじゃないか。」――「へえ、そうで
ず実際以上のものを見るからである。その
すかい?」僕は馬車の扉をしめてからつぶ
隼の目にかかってはどんな悪の徴候も逃
やくように叫んだ、「でもこのおれを淫売
れるに由ない、
・・・
婦の僕とは呼ばせないぞ。」
122
112
後半もおそらく我々が多少とも頭脳を持
この貴族、英雄物語に出てくる高名の騎士
つことの必然的結果であろう。要するに第
らに劣らず仁侠の精神に富み、すでに数多
一級の疑惑が罪なき者への大敵であるの
くの監禁の美女を救っている。世の夫や父
に対して、このほうは罪ある者への大敵で
親が若く美しい女性にむかってあまりに
あり、人間の過ちやすさによって時に見当
もしばしばふるう野蛮な権力をこの男が
ちがいはするにもせよ、余はこれを白眼を
憎むことは、古の遍歴の騎士が魔法使いの
もって見ることはできない。たとえば人妻
蛮力を憎むのに劣らない。いや実を言えば、
たらしの腕をほこる美貌の青年の膝に、あ
余はひそかに思うのだが、各国の伝奇物語
るいは腕に抱かれた妻をその夫が偶然発
にしきりに登場するかの魔法使いこそは、
見したという場合、彼が現実に見たなれな
実は当時の夫らを指すのであり、美女が監
れしさ、それが罪のない戯れならば我々も
禁されるという魔法の城は、あるいは結婚
少なくとも好意を持ちうる種類のなれな
生活そのものではあるまいか。
れしさ、を基にして、見た以上のものを推
論したとしても、余はその夫を非難する気
116
にはならないだろうと思う。
何であったにもせよ亭主は自分の怪我を
喜んだのだが、同時に彼は、令嬢がこれほ
122
ど金の価値を知らぬ人とあらかじめわか
余はここにもう一つだけ挙げておこうが、
らなかったことを悔やんだ。彼は言った。
人によってはこれをはなはだ非キリスト
「いや実際、何もかも馬醫にして請求もで
教徒的と思うかも知れぬが、余はまったく
きたんだ。勘定などにうるさいことを言う
正当な疑惑と考えざるを得ない。それと言
人じゃなかったて。」
うのは、人間はすでに一度やったことを再
14
びやることができる、一度悪党だった者は
っておいて、欲しい品を買うためにはなん
ふたたび同じ役を演じ得る、と考えること
の役にも立たぬものまでいっしょに買わ
で、実はこの種の疑惑をソフィアも抱いた
ねばならぬようにしむけるわけである。
らしい。この種の疑惑から彼女は従妹を、
実はただの弱い女にすぎぬと考えたので
126
ある。
古人はわれらの豊かな共有財産と見なし
てよく、いささかなりともパルナッソスに
122
借地権があるほどの者なら、これを利用し
世にある若い女の貞操はあわれな兎と同
て詩嚢を肥やす権利がある。もっとはっき
じ境遇で、そとに出れば必ず敵に会う、敵
り言えば、われら現代人と古人との関係は
以外の者に会うことはめったにない、と考
貧者と富者との関係に等しい。貧者とはこ
えた。
の場合、通常大衆と呼ばれるあの昔からあ
る大きな集団を意味する。この大衆と多少
124
とも親交を許される光栄をもった者なら、
「ウェスタン叔母さまが我々二人にしば
だれしも彼らの千古の金言の一つが、富め
しばおっしゃった教訓をおぼえているで
る隣人を躊躇なく略奪せよと言うのであ
しょう。結婚の契りが破れて夫婦のあいだ
ることを、また、彼らの間ではそれが罪と
に戦いが始まった時、どんな条件であろう
も恥とも考えられていないことを、知って
と和睦して妻に不利ということはあり得
いるにちがいない。
ない、ってでしたわ。このとおりのお言葉
だったし、ずいぶん世の中の経験も積んだ
127
おかたですからね。」夫人はあざけるよう
ホメロス、ウェルギリウス、ホラティウス、
な微笑とともに答えた、「私のことは心配
キケロ等々の古人は、我ら作家仲間では、
しないでちょうだい。それよりあなたのほ
それぞれ富裕な地主であり、我らパルナッ
うこそお気をつけなさい。あなたのほうが
ソスの貧者は古来の習慣によって彼らか
私より年下ですもの。二、三日したら一度
らなんなりと手あたり次第に奪う権利が
お伺いしますが、ひとつだけソフィー、忠
、、、、
告するわ。田舎でのあのおすましさんはお
あると考えられよよい。そういう自由を余
やめなさい。ロンドンではなんにも役に立
してやりたいと思う。
も要求し、また余の貧しい隣人らにもゆる
たないことよ。」
128
126
余は、古の作家の文中に余の目的にかなう
自分の著作におびただしいギリシャ・ラテ
文句を見いだした時は、原典の作者の名を
ンを突きまぜておく作家は、紳士淑女を競
記さずに躊躇なくそれを利用しよう。否、
売業者と同じペテンにかけようとする者
そのような古人の説が余の作中に写し取
で、競売屋は往々競売品の抱き合わせを作
られた瞬間に、余はそれを絶対に余の説な
15
りと要求し、読者にもまた今後そういう説
一場の活劇跡なく消えて
を、純粋に完全に余自身の説と見なされる
残るはただーー「かくありき」の記憶のみ
ことを期待する。
「神」
人間の大部分は俳優であって、自分の固有
の性格とはちがった役に扮しているのだ
第十四巻 3-265
と考えた人もある
近時、多くの紳士が驚くべき天才の力のみ
ちょうど俳優が、帝王に扮しても真面目に
によって、学問の助けをすこしも借らず、
帝王と考えられる権利がないように、この
時には読む能力さえなしに、文壇に盛名を
人も実はその扮している役柄になんの権
馳せたところから、なんでも当代の批評家
利もないと言うのだ
たちは最近、すべて学問というものは作家
にまったく無用の長物である、いや、想像
ただし、古来人生を劇場にたとえた句は多
力本来の溌剌たる活動に対する一種の足
いが、それらは常に人生を舞台の演技に似
枷にすぎない、想像力がこのために重荷を
たりとするのみで、余の記憶するかぎり、
負わされ、それさえなければ達し得る高さ
人生というこの大活劇の観衆を考慮に入
へ天翔けることができなくなるのだ、など
れた者あるを聞かない
と主張するようになったと聞く。
運転中は
鼻毛を抜くことを諦めるべき
である
7-七十六
段々と深みに嵌り
真剣になって
抜い
かくて不朽のシェイクスピア歌った
た鼻毛をハンドルなどに並べていく人を
――人生は所詮あわれな役者
見かけるが 危険である
自分の出る幕だけ舞台の上を威張って歩
クシャミはすべて注意力を
き、わめき散らし
しまう
あとはもう声も聞こえない
マドリッド空港を飛び立つ。西に機首を向
ゼロにして
ける。眼下には小さな町が散在するが、一
すべて人間の営みは汝神に発す
面荒れ果てた土地に覆われた景色となる
帝国の興るも王者の滅ぶるも!
太陽の陰のように見える
見よ、巨大なる人の世の劇場の上演を
色の森が所々に見られる
つぎつぎと舞台の上を英雄らは足踏み進
それに向かって走る 子羊の群れ
む
右手はるか奥にはピレーネ山脈が横たわ
赫々たる姿あいつぐ堂々の歩武
り、白い雪を抱いている
勝ち誇る将軍、傷つける国王!
雲の合間から見える大地は相変わらず
みな汝の書き与えし役を演じ、
延々と続く荒野である
彼等の誇りも喜怒もみな汝が意図に合す。
背の低い山も
しばしがほど彼らは輝き栄え
覆われている
やがて汝の合図あれば幻は消え去る
もういいの
16
背の低い
黒
その肌は濃い緑の樹木で
でも
いちど
あれがし
たかった
人の役だけは彼女らのすべてが見事に演
腸詰をいまさら食べなくなったとは言え
じてのける。性善なるも善ならぬものも、
どのくらい 効果があるのか
等しく完全無欠の演技を示し得るのであ
ハムもチーズも祈りながら
る。
19
3-9
この作は我らの大傑作となるか
「へぇぇ、じゃ現にこの目で見たこ
とを信じちゃいけないのですか、」とスー
もしれない。それを虫けらのごとき批評家
ザンーー
が、全体がいかに組み立てられかもしらず
「そりゃ信じちゃならない場合もある
に、最期の大団円までゆかないうちに生意
よ、」女主人
気にもその一部分にケチをつけるごとき
21
は、まことに笑止千万な烏滸の沙汰という
して生まれたにはちがいがなく、頭にも心
ものだ。
にもいくつかの欠陥があったが、コソコソ
13.5.1
隠れるとかケチん坊とかいうのはあたら
文明社会に永く確立された習慣として、そ
なかった。実際、まことに物惜しみをせぬ
れもはなはだ堅固なもっともな理由に基
男で、妻といっしょに莫大な財産をもらい
づいているが、夫たる者まず扉をノックせ
ながら、今では一文残らず使いはたして、
ずして妻の室に入るべからずというのが
残るは妻の身についたわずかなはした金
ある。
ばかり。これをわが手に収めようとさんざ
この習慣のもつすぐれた効用の数々は、そ
んに妻を虐待したから、痛烈きわまる彼の
ういう世界を多少とも知る人々には改め
嫉妬心といっしょになって、これがあわれ
て申すまでもあるまい。このおかげで婦人
な女を逃亡のやむなきに至らしめたとい
は、身を整える、言いかえれば何なりと面
う次第。
白からぬ物体を遠座蹴る余裕を得る。世に
は上品繊細な婦人たちがその夫に見られ
たがらぬ状況もあるのである。
15
良家の次男坊で、故国に財産は持たず、国
外に産を求めるほかなくて、そのため、こ
れからトランプと女に運ためしをすべく、
バースに出かけようというところなのだ
18
善を装うことは女性に生得のもの
である
名女優たり得る者は一万人に一人もある
まいが、また、名女優といわれるものの中
にも同じ役に扮してまったく同様の腕を
示す者は二人とあるまいが、しかも(?)善
17
このフィッツパトリック氏紳士と
0年を超えるビザンツ帝国の歴史の幕を
閉じる
1572
「聖バルテルミーの虐殺」パリのカ
ソリック教徒の民衆が新教徒を襲
って虐殺。死体の数は2000とも
ころんでもうれしやしれぬ夜のゆき
3000とも言われた。殺害するだ
男は五人組女のは二人組
けでなく、死体を切り刻んだとも言
女房のつのはへのこでたたきをり
われる
色男へのこ一本でまはりかね
1348
子ぼんのうおやぼんのうのしたじなり
黒死病(ペスト)の大流行
黒海、地中海、大西洋、北海の沿岸
部と内陸部は屍の山と化した。ヨー
月よりも冬の女郎のものすごさ
ロッパの人口の三分の一から二分
冬の月には凄涼の感があるが、年末をひか
の一をも奪った。この後も、ペスト
えた女郎の無心の激しさのほうが恐ろし
はおよそ二百年間、一〇年ごとに猛
い
威を振るう。
だんだんとそんならの出るおもしろさ
1337-1453
それまで言うなら、
1467
英仏百年戦争と大飢饉。
応仁の乱
はえば立てたてばあゆめの親心
里の母遣い残りを置いて行き
親の気になれとはむりなしかりよう
年代記タキトゥス
声色こわいろで我を叱って里で泣き
女房の留守内中がわんだらけ
アグッパ・ポストゥムは野蛮な
能い後家が出来ると噺す医者仲間
あれまでの寿命とごけのほぐれ口
やつだ。侮辱されると、すぐか
しかられた事も恋しき魂祭
気があれば目も口ほどにものをいひ
っとなる。年の上から経験の上
目のからむ時分にろじで母のこえ
目で咄する所(とこ)は目だらけ
でも、あのような重大な職務に
くどかれてあたりを見るはせうち也
は耐えられまい。
世界の悲劇の歴史
1453
百年戦争終結イングランドは
ティベリウス・ネロは、経験の
カレーを除く大陸領をすべて失い、ブリテ
ン島に引きこもる
点で成熟し、将軍としても保障
オスマン・トルコ軍により、帝都コン
スタンティノープルが陥落。100
されている。がどうもクラディ
18
ウスは、別にか空く必要のない場合にも、
ウス家に古くからの固有の、あ
生まれつきだろうか、習慣だろうか、いつ
も濁った曖昧な言葉を使う。実際このとき
のま高慢さを受け継いでいる。
でも、自己負担の深い底意を隠そうと努め
ているうちに、いよいよ彼の言葉は混濁と
それに表面は注意深く隠してい
模糊のうちに、巻き込まれて行った。議員
たちは彼の下心を見抜いていると思われ
るが、どうかすると冷酷無常の
ないように、ひたすら用心して、不平と涕
涙と懇望に没頭した。
徴候を現す。
ティベリウスは、相次ぐ諸兄で興奮し、セ
イヤヌスとの共謀罪で監禁されていた罪
ロドス島で隠退をよそおい、じ
人を、皆斬首するように命じた。数え切れ
ぬ虐殺体が累々と横たわる。
つは追放生活を送っていたとき
人間の運命をいたわり合う気持ちが、烈し
い恐怖で断ち切られていたのだ。残忍がの
でも、復讐心と猫かぶりとひそ
さばるにつれて、惻隠の情が押さえつけら
れていた。
かな放蕩よりほかに、なにも考
しかし、私は、占星術などで、いろいろな
えなかった。
話を聞くたびに
いったい、人間事象は、運命とか不変の必
彼には、おまけに女特有のあの
然性に従って展開するのか、それとも、全
くの偶然に従うのか」といつも悩む
制し切れぬ激情をもった母がつ
マカオ奇談北都奇談その二
ややしばらくたって、女たちが
いている。
出てきて手招きした。そこで武器を持って入ると、大き
な白い猿が、寝台に手足を縛られていた。人々を見て身
われわれは彼らがまもなく共和
を縮めてもがいたが、脱けられなかった。目の光は稲妻
のようであった。
国を圧迫し、ゆくゆく粉砕して
邯鄲夢の枕
廬なる書生、自分の服装がいたみ汚れ
ているのをつくづく見て、ほっと溜息
をもらした。「男子たる者が、この世
に生まれて機会に恵まれぬまま、この
ように困窮したか」
しまうだろう
ティベリウス・ネロの演説には、率直さよ
りむしろ気取りがうかがわれた。ティベリ
19
書生はあくびをして、腰をのばして眼
がさめた。その身は宿屋に臥したまま
であり、呂翁は、その傍に座っていた。
主人は、依然、黍を蒸していて、まだ
てきていなかった。手に触れたものは
一切が夢の前とかわりがなかった。書
生はときっとして起き上がった。「夢
を見ていたのか?」翁は書生に言った。
「人間の一生の出来事も、こういうも
のなのだ」書生はしばらく茫然として
男女のちぎり まだ慣れず 眉をひ
そめる 恥ずかしさ 君 あわれみ
をたれたまい 今宵をはじめ あす
をまた 日ごと夜ごとに 親しまん
いたが礼をのべた。
「寵愛と恥辱の道筋、窮乏と栄達の運
命、得失の道理、死と生の事情、なに
もかもすべてに知りました。先生が僕
の欲望を充足させた理由はそれでし
たか。つつしんで教えに従います」
書生は叩頭し、再廬拝してから、その
場を去った。
はれひとえによし」
山色空濛雨も亦奇なり「 くうもう
あめもまたきなり」
若し西湖をば西子に比すれば「もし」
淡粧濃抹また相宜し「よろし」
剪燈新話・余話せんとうしんわ」
ま、わめき散らすは
門の前。蛇まね犬まね猿のまね、ワン
ワンキャンキャン大騒ぎ
拍板チャカチャカ蓮花落、どら声ギャ
アギャア天にもとどく。
顔にべたべた煉瓦の粉、化け物はだし
の怖ろしさ。やんちゃ鬼ども集まれば
鍾馗さまでも手が出まい
棠陰比事
西湖佳話
蘇東披
美人西施にたとえて
湖光瀲晴偏に好し「ここう れんえん
よれよれ帽子、ボロひとえ。どろどろ
ムシロに破れモウセン
竹の杖には欠け茶碗。右や左の旦那さ
あなたが悪事を思い立たれると、獰猛
な鬼どもがあなたにつきまとい、あな
たが善事を思いつくと、福の神がご降
臨になりますこと、影の形にそい、声
の響きに応じるごとくです。
貧賎の交わりは忘するべからず
妾ショウ)は巫山の陽キタに在り、旦
アシタ)には行雲となり、暮には行雨
となる・・・」これより男女の情交を
結ぶことを
巫山の夢あるいは雲雨の情という
殢(疲れる)雨尤 (甚だしい)雲
剪麗しの都、プラハ。百年前の、その
高邁な精神を伝える気品のある石造
りの建物
それら巨大な建物を整然とさせてい
る広い道路そして、街路樹
20
その都は、紅く色付いた葉が包まれて、
迫り来る厳寒の季節前の一時の安ら
ぎ秋に包まれていた。
きしくも今日は、十月一日。街は努力
の結果である収穫、そしてそれに対す
る、心身へのご褒美で溢れていた
何百年もそのままの共和国広場では、
石畳の道路による自転車競走で人々
は浮かれていた。年齢別、性別でされ
るため一日中続いていた
く
博重、なんとかしなさい
というものであった
その喧騒を背に、道路に落ちたプラタ
ナスの葉を蹴りながら離れていく旅
人も秋の景色の中に溶け込んでいた
ロマン・ローランのベートーベンの生
涯を読んでいた。
そして、この街は、ベートーベンで溢
れていた。彼を私に引き合わせてくれ
たのである。奇跡であろうか
その夜、極く少量のワインを流し込ん
る
引き換え、わが世界我が日本はどうだ
物を作り出す、精神を高めるという心
をうしなつている
なるほど、なにかを作っている、音を
聞き、映像を見て、文字を送信してい
る」と反論があるであろう
しかし、ありとあらゆる物品と情報と
手段を持っているが、一つだけ持って
いない
だ
ちょっとあって、眠りについたわけで
あるが
朝、四時に覚醒した。浅い眠りの中で、
o さんの夢をみていた
喉から単語として発声できない、内容
をやり取りしている
悲しいかな、博重
この都で、たとえ夢の中に過ぎないに
しても三十年間心に抱える魂を開花
させることができたのはロマン・ロー
自己を高めようとする苦悩である
未来に向かっての努力とも言える
自己の生涯という有限でありながら
混沌としたもの、他人には到底理解さ
れ得ないもの、それが一つだけの自分
だけの生涯なのである
オリンピックの映像で無縁のヒトビ
トの映像を見続ける
他人の行為が自分人生形成の糧引き
金にはならない
何時の間にかヒトビトは「あなたたち
ランのお陰であり、ベートーベンによ
るものである
はおかねを払って
観客席ですわつて、我々を見ていれば
いいのです。」という声に服従されて
いるのである洗脳されている
脳の奥底で、無意識に、そうした洗脳
わたしが、夢の中で受けた啓示は
このままでは、ヒトは不幸になってい
21
ベートーベンは音楽を作ろうとして、
努力した
生を受けた自己を、高めようとがんば
った
ヒトは、この「自分を高めよう」とす
る能動的な行動で進んできたのであ
を拒否する、若者たちが存在する
しかし、ゲームで画面の前で、自己を
他の固体と鑑別する能力育成のため
の大切な時代を過ごしてしまった彼
らには、創造するために、現在を悩む
苦しむ」という事は、思いもかけない
事なのである
戸惑い、混乱し、方向なく暴走するか、
内に篭ってしまうかしか
ないのである
に古代ギリシャやローマの栄光は世
界中で笑いものにされた
われわが誤謬を犯す、つまり、下品な
物書きの精神レベルに落ちるのは
我々の不十分な知的道具のため
比較的異常な形態の色欲に関する無
知のため
我々の素直さのため
ティベリウス帝は種々様々な趣向を
こらしたいくつかの寝室を、このうえ
なくみだらな絵画や浅浮彫りで飾り、
またフェラエニスの作品を備え付け
たから、誰でも行為のさい、必要な態
位のモデルに困ることはなかった
譚
愛の奥義を究めた達人尾ヴィディウ
ス
ただちに、医者たちが到着し、家政婦
マカオ奇談北都奇談その二
白灼海蝦
鼓椒灼聖子
蒜茸粉絲蒸抜仔
せいよう
北都奇談
ある男が減量を性行為で完成させよ
うとしていた
「実は、前後で七百グラム減量したの
に気付いたのが、切っ掛けです」
しかし、時計を外したからでは
たちは帯状。やがて、宙に舞う妻の両
脚。おお!厳粛にして、苛烈な医薬!
近藤忠躬 九州大学
5
y00292
4
西洋古典好色文学入門」
色情的な感覚を呼びさますための手
段として、本書を読まれる読者はひど
く失望されるだろう。
病的な精神から生まれた珍奇な好色
譚などはみられない
ID:8356
p1989
悪魔との契約.るっつ・ミュラー
深層意識の操作
魔女・悪魔崇拝、黒ミサ
コンプレック領域は影の領域である
魔女・悪魔崇拝、黒ミサでは、影との
一体化がとりわけ過激な形で姿をと
る。
今日でも実用に供される「折り紙つ
き」性魔術儀式
かの稀代の名著ローゼンバウムの「古
代の秘儀的風俗慣習と信仰の歴史」
第六感の犯罪・愚行・倒錯などのため
22
何百年も前から「悪魔的」な放縦と乱
痴気騒ぎに関して人間の空想をつき
動かしてきたものの本質的要素が、暗
示する形で含まれている
事実それは、かつてそのようなサタン
のミサの折にまだ実際に行われてい
たさまざまなことがらの暗示に過ぎ
ないしかし、この暗示さえあれば、結
局そこでは何が問題となつているの
か、そして、どこからそういった行動
(ライデン)と彼の歓喜(フロイデ)と
によってまったく心を浸され、ひざま
ずいている心は、彼の強い手によって
再び立ち上がらされた。彼の強い手、
それは、生まれたばかりの幼な児、私
のジャン・クリストフを祝福し、この
子に洗礼を与えてくれた。それゆえ私
の心は鼓舞されて、生との新しい貸借
契約に私は署名し、癒されて再び立ち
上がる者の、神への感謝の歌
が実行する人たちに魅力を生み出す
のか、それを深層心理的に理解するこ
とが十分できるようになるのである
Dankgesang を歌いながらパリへの帰
路についたのである。
その「感謝の歌」がこの『Beethoven
ベートーヴェンの生涯』である。
今生きている人々は、昨日生きていた
あの人々から遠ざかっている。(しか
し、昨日のあの人々は、明日生きるで
あろう人々に、かえっていっそう近し
いのではあるまいか)
戦争が人々を消滅させていっていた
ことわざ
Omne
animali
post
coitum
trste すべての動物はまじわりのあと
で
悲しい
下男が理論を、女中が、高い技術のノ
ン・プルス・ウルトラ(極地)を
序
一九〇二年
マインツで、ヴァインガルトナーの指
揮する Beethoven ベートーヴェンシ
ンフォニー諸曲の音楽祭を聴いた。雨
二十世紀初頭、Beethoven ベートーヴ
ェンの弦楽四重奏曲を聞き入る聴衆
の悲痛な表情は、Beethoven ベートー
ヴェンの音楽が辿る悲しみの聖なる
道筋について行きながら、その道筋の
意味の啓示から来る反映に照り輝か
されていた。
空気は我らの周りに重い。旧い西欧は、
毒された重苦しい雰囲気の中で麻痺
する。偉大さのない物質主義が人々の
考えにのしかかり、諸政府と諸個人と
しげき四月の灰色の日々に、霧に包ま
れたライン川岸で、ただ Beethoven
ベートーヴェンとだけ、心の中で語り
合い、彼に自分の思いを告白し、彼の
悲しみと彼の雄々しさと、彼の悩みと
の行為を束縛する。
生活は厳しい。魂の凡庸さに自己を委
ねない人々にとっては、せいかつは
日ごとの苦闘である。そしてきわめて
しばしばそれは、偉大さも幸福も無く
あ
ベートーヴェンの生涯
ロマン
ローラン
23
孤独と沈黙との中に戦われている憂
鬱なたたかいである。
貧と、厳しい家事の心配と、精力がい
たずらに費える、ばかばしくてやりき
れない仕事に押し圧しつけられて、希
望も無く悦びの光線もない多数の
人々は互いに孤立して生き、自分の同
胞たちに手を差し伸べることの慰め
をさえ持っていない。
その同胞たちも彼らを識らず、彼らも
人じみた黄色身を
帯びて来た。額はがっしりと強く盛り
上がっていた。はなはだ黒い、異常に
厚い髪の毛―櫛の歯がとうてい梳け
なかったかのように見える髪の毛は、
思いのままにあらゆる方向へ逆立っ
て、まるで「メヂュースの頭の蛇ども」
のようであった。眼光が強い熱を持っ
ていて、彼に逢った人はその力を感銘
させられた。青みを帯びた灰色の瞳。
またその同胞たちを識らない。彼らは
ただ自分だけを当てにするのほかは
ない。そして尤も強い人々といえども、
その苦悩の下に挫折するような瞬間
があるのであ。彼らは一つの救いを一
人の友を呼んでいる。
鼻は短くて角張って大きかった。下唇
が上のよりもやや突き出て
あごは胡桃をも噛み砕きそうな強い
顎
右に片寄った頤の深いくぼみが顔全
体に一種の奇妙な不均衡さを与えて
いた。
彼らの生活が荒寥たる観を呈したに
もせよ、とにかく彼らは試練を日ごと
のパンとして食ったのである。かかわ
ユーリウス・ベネディクトはいった。
「リア王だと。
らず偉大だったとすれば、それは貸せ
らが不幸を通じて偉大だったからで
ある。だから、不幸な人々よ、あまり
に嘆くな。人類の最良の人々は不幸な
人々と共にいるのだから。
人は、自分と同じく不幸な一人の人間
が、自然のあらゆる障害にもかかわら
ず、人間という名に値する一個の人間
となるために全力尽くしたことを識
って慰めを感じて欲しい」ことを祈念
した
あわれな Beethoven ベートーヴ
ェンよ。
お前にはこの世の幸福はまったくな
い
一八一八年に彼は書いた。「ほとんど
乞食をしなければならないほどにな
っているが、困っていないかのような
ふうを装わねばならぬ」
自己の内部へ閉じこもり、一切の人々
から切り離された彼はただ自然の中
に浸ることだけを慰めとした。「自然
が Beethoven ベートーヴェンの唯一
の友」
彼は広い肩幅を持ち力士のような骨
組みであったが、背が低くてずんぐり
していた。顔は大きくて赭かった。た
だし、晩年に近づいからは顔の色が病
歓喜の主題が始めて現れようとする
24
瞬間に、オーケストラは突如中止する。
急な沈黙が来る。歓喜の歌の登場へ、
この沈黙がひとつの不思議な神々し
い性格を与える。超自然的な静けさを
もってひろがりながら歓喜は空から
降りて来る。その軽やかな息のそよぎ
で、歓喜は悩みを愛撫する。苦悩から
力を恢復して立ち上がる心の中へ喜
びがすべり入るとときに、与える第一
の感銘は情愛の深さである。
ヴォルテール
私が私の同時代者から
受けなければならなかった不当の損
失の代償を、この次の時代、またその
次の時代が二度か三度支払ってくれ
ることだろう ゲーテ
バーデンはウィーンより A‐2に乗
り、二十キロ過ぎての BADEN という標
一八二四年五月七日ウィーンにおい
て初演。第九は気狂いじみた感激を巻
き起こした。多数の聴衆が泣き出して
いた。Beethoven ベートーヴェンは感
動のあまり気絶し運ばれた。しかし、
金銭上の窮迫は、彼の生活の中でちっ
とも改まらなかった。依然として彼は
貧しくて病弱で孤独であった。
とはいう彼は今や勝利者であった。-
彼は人々の凡庸さを征服した勝利者
識に従うと容易である。その後は
CASINO とい標識がくどいほどに、案
内してくれる。
ベートーベンが難聴で悩み治療とし
て通った。駅の近くに、交響曲第九番
を完成する頃に住んでいた家がベー
トーベンハウスとなって公開されて
いる
であった。
自己自身の運命と悲哀に打ち克った
勝利者であった。
『悩みをつき抜けて歓喜に到れ』
Durch Leiden Freude
い靴が要求される。どんなにボロボロ
でも良いところが笑ってしまう。
後ろの車が、両手を上げたり、頭を抱
えるような態度で非難していても、見
なきゃいい。
モーツアルト、ヨハンシュトラウスを
連呼し金を稼いでいながら、ベートー
ベンを無視する。それでいて年末には、
ちゃっかりとベートーベンで稼ぎま
くるウィーン。
にウィーンを出て、ザルツルブグまで
Beethoven ベートーヴェンの言葉
「さらに美しい」ためならば、破り得
ぬ規則はない
「真に国民のため」ならば、破り得ぬ
規則はない
ぶよが刺したくらいでは疾駆してい
る馬をとめられはしない
ウィーンのカジノでは、
スーツとネクタイそして運動靴でな
三百さらにインスブルックまで百七
十五ブレンナー峠を越えてイタリア
には五十六キロである
今午後二時半インスまで百十
他人の不正は小さなことでも決して
25
見逃さないのに、自分のそれは発見さ
れなければ良い、という姿勢はメディ
アを始めとするおおくの所でみられ
るが、それはドライブによって培われ
たものに違いない。
後
二百二十キロという計測器をみて百
二十キロで走っていると、学校で「お
まえは持っている能力の半分しか使
っていないのだよ」という先生の言葉
表して「あまりにもきたならしくて、
気味が悪いので、あわれみの感情に激
しく揺り動かされるか、でなければ慈
善の手さえ引っ込んでしまうような
手合い」「不潔で体じゅうを蚤、虱に
食われた連中が、耳を引き裂くような
うめき声をあげ、思わず目を逸らした
くなるような傷を剥き出しにして、街
路を駆け回る」
乞食だけでなく「パリの民衆は地球上
を思い出した
しかし、百四十キロは眠気を振り払う
ためと、追い越しのためにある。百十
五キロでちんたらと追い越そうとし
ている車はパッシングされる
大衆車が高級車によってパッシング
されつづけているのは、「回転すしで、
大衆魚が高級魚にバカにされている
構図と同じだ」
中とろに、鯖が、のけのけと言われて
でもっとも多く働き、もっともひどい
物を食べ、そしてもっとも悲しそうに
見える民衆だ
」ている」
いる。
トラックはさしずめ納豆まきだ゛
瞬く間に、第六日目になってしまった。
人生が長すかぎる」と悩むヒトには旅
は最高である
ヒトを理解するためには、なんの解決
にはならないのである
短い時間に、様々なものが奪われる
共犯者が側にいて、掏り取られたもの
は、次々に手渡しされる。
作家はこれらの天才的な抜き取り術
は軽妙でしなゆかであり、彼らは「ぶ
らさげたマネキン人形で練習する。人
形を揺らさないで掏り取る練習を重
ねる」と記している
十八世紀末作家がのべている
そのころのパリのスリ
街路でスリのひとりが全力で走り出
し、旅人にぶつかる。腕の中に飛び込
んでいく。旅人はひっくり返らないよ
うにその男を受け止める。男は平謝り
に謝る。旅人が丁重に答えているその
天下周知の悪癖があれほど数多くあ
るからには、このいわゆる壮麗なる都
市(パリのこと)に乞食がかくも数多
十万円ちかくを黒が五回続いたルー
くはびこるのも、けだし当然ではない
か
古代には、貧乏人はいたが、極貧のヒ
トはいなかったようだ
十八世紀後半のパリに溢れた乞食を
レットで「赤」に掛けた
ヤッタ、赤だ」と金を受け取るために
覗き込んだら「黒」に掛けていた
がっかりするより、あきれ果てて、カ
ジノを飛び出してきた
ウィーンでひとに語れないほ
どのドジをした
26
笑ってしまったが、ポケットにチップ
を入れたままで
みなんこんなことを経験しているの
だろうか
「聖バルテルミーの虐殺」パリのカソ
リック教徒の民衆が新教徒を襲って
虐殺。死体の数は2000とも300
0とも言われた。殺害するだけでなく、
死体を切り刻んだとも言われる
部屋に引き上げて、ペイテレビを見た、 黒死病(ペスト)の大流行
この街はどうなっているのであろう
黒海、地中海、大西洋、北海の沿岸部
か。格式の高いインターコンチで、グ
と内陸部は屍の山と化した。ヨーロッ
ロテスクとしか形容の出来ないSM
パの人口の三分の一から二分の一を
領域の映像である。正視できないので
も奪った。この後も、ペストはおよそ
斜視した。
世紀末のウィーンと定評があるが、正
に性器末路である。チツモ身のうち」
と言わないか?
しかし、世紀末とはなんであろうか
西暦が00に近づいた頃に、世界は
「世の中が混乱し、人類滅亡の危機感
が蔓延し人々は」
しかし、地球上の悲劇は例暦下二桁が
90に入ったから出現した訳ではな
二百年間、一〇年ごとに猛威を振るう。
英仏百年戦争と大飢饉。
応仁の乱
い。
紀元前には世紀末有り得ない。また、
極く近年までわが国を含めてヒトは
「西暦OO年」とは言わなかったので
ある。
ノアの箱舟が地球上生物の存亡の最
大の危機であったわけであるが、この
時も世紀末はなかったのである
1453 百年戦争終結イングラン
ドはカレーを除く大陸領をすべて失
覆われた彫刻がある。ペスト記念柱で
ある。十七世紀のヨーロッパはチンギ
スハーンの伝染病版である、黒死病ペ
ストによつて席巻され、ウィーンだけ
でも十五万人も死亡したと言われる
ある日を境に(伝染病であるから、皆
罹患するか免疫を持ってしまったの
であり、当然であるが)突然姿を消し
たことを、神の加護と時のハプスブル
グ皇帝レオポルド一世が考え、記念し
て建立したのである。
い、ブリテン島に引きこもる
オスマン・トルコ軍により、帝都
コンスタンティノープルが陥落。10
0
0年を超えるビザンツ帝国
の歴史の幕を閉じる
これは一六七九年である。世紀末とは
言えない
他の世界を恐怖に落とし入れた不幸
も特に西暦年号の末尾90台にある
わけでない
世界の悲劇の歴史
27
第二には、実際
ウィーンの目抜き・懐中抜き取り
通り
であるグラーベン通りに、盗難不可能
な(尤も、価値が不明なので泥棒は手
を出さないだけであろう)天辺が金で
言うなれば、国同士の戦闘、国民同士
の戦闘などは人類が発祥した瞬間か
らいつもいつも起こっている
を横切って行く
灰色の上着とズボン靴尤も大体がこ
の色に落ち着くという変色する)顔も
伸びた髭もやはり灰色で、大男であっ
た
年齢は六十歳台半ば七十前か
さっそく、私は有り金を調べた。朝の
枕銭があれば、この都で必要のない金
である
以外に少なく九百クローネくらい。
このように西暦の上二桁が変わる時
になったからと言って、新しい時代が
やって来るのではない
もっとも、国民に二千万円くらい一律
に支給し、負債をチャラにし国民の人
権は同じである身分の上下は撤廃す
る政治家も国民である」などを施行し
て、再スタートをさせれば別であるが
困っていたとは知らなかった。私がい
たら、何は無くても私の生活費からで
も、救いの手を差し伸べたであろうに
愚かな発言であることに気付いてい
ない
金額の大きい紙幣を上にして束ねた。
すれ違いさまの厚意永遠に再会しな
いヒトまたは動物に対する厚意は、印
象を強くさせなければならない
特に、言葉が通じないのだから
犬に「待て」と言ってご馳走をやるの
に似ているか
寝ている彼らのリュックにそっと差
し込むのもひとつの方法であるが、そ
れでは「あっ、俺だってこんな所にか
彼が持てるだけの、現金をと同時代の
貧乏人に配りつづけているなら別だ
が
ホームレス、物貰いが好きでしている
わけがない
運命である
教会で四方を囲まれたヤン・フス像の
ある広場
夜十時を過ぎると、この季節ホームレ
スの諸氏もベンチで眠るという訳に
いかない
ねを仕舞っておいたのだ」で終わるの
だ
この額をコインにして、ジャラジャラ
と両手に注いでやれば、良いのである
が紳士としてはそうもいかない
と言うわけで、金額の大きい紙幣を上
にするくらいが、限度である
「グッドイブニング、ミスター」と声
を掛ける。習慣でかつ瞬間的に顔をあ
げる。困惑混乱の老人の顔は紙幣の束
が目に入るや柔和な喜びの顔に変わ
ごわごとした上着は何枚重ねても暖
を生じることはないのである
紙袋三つに分けた全財産を持って移
動し始めた
ベンチで教会を撮影していた私の前
っていった。苦悩から歓喜第四楽章合
唱隊が立ちあがる時である。日本では
始まる前からオーケストラの背景と
して使われ立ち続けている
フローム・フレンド」頑張ってね」と
ベートーベンがそんなに金に
28
言いたかったがチェコ語がわからな
い。小さく日本語でがんばってね」と
いった。
歩き出して、後ろをちらっと見た。握
り締めている彼の周囲に湯気が立っ
ているよう感じた
しかし、数日後には、歓喜から苦労に
変化していく
のであろうか
あれを元手に立ち直る」と言うわけに
ドイツの田舎に下りてしまった。
イタリアへ
を越えて、一気に
赤ワイン
澱み
高級な赤ワインの瓶には、澱みが底に
溜まっている
一週間は立てて置きたい
上澄みを移し替えることを
デカンタージュという
は行かないなあ
でも、故郷に帰れる!
そうだ、これからは「両親に会える」
金額を目安にしよう
父や母の墓に、花を添えて子供に返っ
て泣きじゃくることができるように
白カビタイプ
カモンベール、ブリア・サヴァラン、
ブリー・ドゥ・モー、
ウォッシュ・タイプ
マンステール、リヴァロ、ポン・レヴ
ェック、エポワス
山羊乳製のチーズ シエブール
接触性皮膚炎はストレスによって悪
化する。旅先では一日中スニーカーを
私は君の言うことには反対だ。しかし、
君がそれを言う権利は死んでも守る。
履いているのにでない
秋
Voltaire
I disapprove of what you
but I will defend to
the death your right to
it
霧に包まれたウィーンを見てい
ると、
一度はと計画していたブレンナー峠
越えに好天が必要と考えてしまった。
アルプスを横切る訳であるから。
高速道路が無料ということで、気をつ
けなければならないこともある。Rast
station で、どちら側にでも出ること
が出来る
間違えると、もと来た道に入ったり、
高速道路から降りてしまう
ザルから少し行くと、ドイツ領土に入
る。ミュンヘン方向と出て、インスと
いう言葉が消える
29
say.
say
ゲーテ
愛人の欠点を美徳と思わないほどの
者は、愛しているとは言えない
人間は、なにを滑稽だと思うかという
ことによって、何よりもよくその性格
を示す。
私があやまつと、だれでも気付く。嘘
をつくと、誰も気付かない
才能は静けさの中で作られ、性格は世
の激流の中で作られる。
人間は自分のできると感じたことを
首尾一貫させることが大切
老人は人間の最大の人権のひとつを
失う。老人は対等なものからもはや批
判されない
感覚は欺かない。判断が欺くのだ
喫煙は頭を悪くさせます。考えたり、
創作したりすることを不可能にさせ
る
それは怠け者や退屈している人々だ
けのすることです
れがしばしば他の人に対して感ずる
嫉妬や憎悪はなくなるであろう。また
他の人を自分の立場においたら、高慢
や独り善がりは大いに少なくなるで
あろう
天才も不滅ではないということほど、
凡庸な者にとって慰めになることは
ない
よき人は常に初心者である マルテ
ィアリス
彼らは人生の三分の一を寝て過ごし、
三分の一を飲食その他、必要な、ある
いはむだなことで空しく過ごし、そう
しておいて、人生は短いと口癖に言い
ながら、残りの三分の一をどうすべき
か知らない。そうした怠け者にとって
は、パイプに親しむこと、空中に吐く
煙をながめることは、時間つぶしにな
るので、利口な楽しみです。喫煙には
ビールもつきものだ。それで、熱くな
支配したり服従したりしないで、それ
ていて何物かであり得る人だけが、ほ
んとうに幸福であり、偉大なのだ
医者をほんとうに信頼することがで
きないのに、しかも医者なしではやっ
ていけないところに人間の大きな悩
みがある
人生は色どられた影の上にある
人は努めている間は迷うものだ
目標に近づくほど、困難は増大する
った口腔が冷まされる
人は自分の肉体あるいは精神につい
てよく考えてみると、たいてい自分が
病気であることを発見する
前の時代に考えられなかったような、
どんな愚かなこと、賢い事を考える事
ができるか
困った時の神頼み」を実感したければ、
イタリアに行け。外国人はきっと困る
ことを見つける
夕方、私は千匹のハエを叩き殺した。
にもかかわらず、翌朝私は一匹のハエ
芸術は、見るに耐えないものを表
してはならない
喜びには悩みが、悩みには喜びがなけ
ればならない
だれひとり知る人もない人ごみの中
をかき分けて行く時ほど、痛切に孤独
を感ずることはない
無数の群集の間を抜けていく時に、私
は静かな孤独な気分を感じる往来が
騒がしければ騒がしいほど、私はます
ます平静になる
に起こされた
見識の代わりに知識を持ち出す人々
がいる
反対者たちは、彼らの意見を繰り返し
ておいて、われわれの意見を顧みなけ
「明瞭さとは明暗の適当な配置
である」ハーマン
自分を他の人の立場におけば、われわ
30
れば、われわれを否定できると思って
いる
私が愚かなことを言うと、彼らは私の
言い分を認める
私の言うことが正しいと、彼らは私を
非難しようとする
何かを非難するには、私は年をとり過
ぎている
だが、何かをなすだけの若さは、いつ
でも持っている
くなるとか、どんな善いことのためにも使
われないならば、結局最後になって否応な
しに気付かされることは、今まで消え去っ
ているとは思わなかった人生がもはやす
でに過ぎ去っていることである。
批評に対して自分を防衛することは
できない
これを物ともせずに行動すべきであ
る。そうすれば、次第に批評も気にな
らなくなる
正直であることを私は約束できる。し
かし不偏不党であことは約束できな
い
私は「お手製のばか者」
人は皆分かることだけ聞いている
セネカ
脳が快楽するとき
大島清 情報センター出版
男と女は、脳の構造自体に差異がある。
右脳と左脳をつなぐ脳梁は一億本も
の神経線維の塊であるが、この前部は
女性のほうが男性よりも太い。両者の
感性や行動の傾向などの性差を生む
か
モナコ
間脳はたくさんの核の集まりで、脳幹
の前端部、左右の大脳半球に挟まれた
位置にある。
貧賎の交わりは忘するべからず
人生は短い、と言われる。
新皮質のなかで高級な働きをしてい
るのが大脳連合野である。
これは大脳皮質のなかで、運動野、体
性感覚野、視覚野、聴覚野を四領域を
除いた新皮質の部分のことをいう。
大脳連合野は全部で五つあり、前のほ
しかし、われわれは短い時間をもっている
のではなく、実はその多くを浪費している
のである。人生は十分に長く、その全体が
うから「前頭連合野、運動連合野、頭
頂連合野、後頭連合野(視覚前野)さ
して側頭連合会」である。
前頭連合野は、注意・思考・意欲の場
である。ここに障害があると、注意を
有効に費やされるならば最も偉大なこと
をも完成できるほどに豊富に与えられて
いる。けれども放蕩や怠惰の中に消えてな
31
集中することて
動物は快い友達だ。彼らは質問もしな
ければ批判もしない(エリオット)
私の父は混血児だった。父の親父は黒
人だった。そしてその祖先は猿だった
(デュマ)
四十歳は専念老年期であり、五十歳は
老年の青年期である(ユゴー)
志ん朝
外が柔らかくって、中が硬い
売れ残りのパンみたい
そう、良い子孫を残すためだけに、産み
落とされたのである。産み落とされてい
るともいえる
とすれば、若者たちが大人たちみんな
にとって、困った性質を帯びるようになっ
金銭は紳士、淑女、貴婦人をつくる
ているとすれば、野
恋のない一生は夏のない一年(スウェ
ーデン)
ポケットのなかの
金を数えたくなる気持ちを抑えるの
は、久しぶりである。
この衝動の快感
そんなに負けるのが苦しいなーらば
二度と賭けなどしなけりゃーいいさ
忘れーられないあーの快感
獅子の分け前(身近に起った災難は分
別を教える)
過分な急速は苦痛である(ホメロス)
賢者は聞き、愚者は語る(ソロモン)
幸福になるために必要な第一の要素
は、有名な都市に生まれることだ(エ
ウリピデス)
世には卑しい職業はなく、ただ卑しい
人があるだけだ(リンカーン)
金持ちは、貧しい人が、そのはかない
女の一生は長い病気である(ヒッポク
ラテス)
雷のあとに大雨はつきものだ。妻が大
声で文句を言い、彼の頭に水をかけた
ときに
あなたが良妻を持てば幸福者になり、
悪妻を持てば哲学者になるであろう
一番やさしい事は、他人に忠言するこ
とだ
(ソクラテス)
詩人は生まれるものであり、雄弁家は
運命を訴える声を聞くのが大嫌いだ
(ドストエーフスキー)
善と悪、美と醜、正と邪、良心と情欲、
理性と狂気
人間の心の戦い
できるものである
記憶力は鍛錬しなければ衰える
あらゆる物事の初めは些細なことで
ある
手紙は顔を赤らめない(キケロ)
旅は私にとって、精神の若返りの
泉だ(アンデルセン)
旅は、小さな存在である自分が「完璧
に」主人公となって行動できる唯一の
行為である
32
賽は投げられた(カエサル)
…もう力が尽きた。俺は死ぬ(アント
ニウス)
汝の今日は永遠なり(アウグストゥ
ス)
恋人の財布はニラネギの葉でしばっ
てある(プルタルコス)
る
好奇心がすべてである(ゲーテ)
不幸は人を道徳的にする(リヴァロ
ル)
友よ、拍手を!喜劇は終わりぬ。遅過
ぎた、遅過ぎた、余りに遅過ぎた。(ベ
ートーヴェン)
人は笑いと涙の間を往復する時計の
振り子である(バイロン)
医者は人間を弱いもの、弁護士は人間
いかなる人間も己自身の犯罪を愉し
む(セネカ)
首尾よく幸運に運ばれし犯罪は美徳
と称される
惨めさの中にあって、幸福だった時を
憶い出すより大きな悲しみはない(ダ
ンテ)
酒と女と歌を愛さぬものは一生の間
ばかのまま
恋なき人生は死せるに等しい(マルチ
ン・ルター)
泣くことも一種の快楽である(モンテ
を悪いもの、牧師は愚かなものとみる
(ショーペンハウエル)
人間が不幸なのは自分が幸福である
ことを知らないからだ(ドストエーフ
スキィ)
ーニュ)
汝の必要のほうが大きい(フィリッ
プ・シドニー)
金はこやしのようなものだ。まかない
とクソほどの役にも立たない(フラン
シス・ベーコン)
あなたがたとえ氷のように清潔で、雪
のように潔白であろうとも、世の悪口
は免れまい
貞操を持たないなら、貞操を気取りな
さい(シェィクスピア)
その旅人を見ているレベルである。
気のよさそうな日本人と見れば、残
り物または残りそうな部屋から売っ
ていく。一見の客に当ホテル自慢の部
屋をサービスする訳がない。
最近、引っ掛けに近いが、良いセリフ
を考え付いた。
レセプションが「良いお部屋が取れ
ました」などと言いながら、書き込ん
でいる頭に近づき、「エレベーターに
近い?」と優しく声を掛ける。
泣いてパンを食べた者でなければ、人
生の本当の味はわからない
人は年を取ったら若いときよりもそ
れだけ多く仕事をするのが本当であ
はい、勿論、お近いですよ」とオオム
返しに言う。
ここで初めて、声を変えて「エレベー
ターからは遠い静かなところをリク
エストしていたはずだ」と凄む。
案内される部屋のレベルは、
そのホテルが私にする査定である。予
約という仮の段階としても、
33
今までは、「エレベーターからは遠
くて静かな部屋ですか」と聞いていた。
「はい、勿論、遠いところで、お静か
なお部屋ですよ」とオオム返しに言わ
れるのが常だった。
昨年の暮れ、
自分の持ち物を見渡して結論し
加工する時に良いと思うのは当然で
ある。行政の人びとにも医者たちにも
よく見るが、「わたしは知りません」
と言わない店員によって、操作不能の
商品を数多く売りつけられた。
一日五時間正月もなく作業し、三千
枚くらい入れて、かなり全貌が見えて
きた。
、実行に移したことがある。
わたしの小さい時の写真はそう多く
生後まもない首が据わったばかりの
ない。しかし、この十年間で撮った写
真く三千枚近くになるであろう。友人
夫婦と行ったヨーロッパ旅行では七
百枚近くも撮った。払い下げになった
大冷蔵庫にネガを入れたのも昨年で
あった。箱に入れてはみたが、未整理
のまま放置されているに等い。
一朝自身が病に臥せば、個人的な持ち
物はゴミとなるのは火を見るより明
らかである。
写真一葉から始まるわたし自身の記
録は、小さなCDに収まってしまった。
夥しい数量と思ったものも、数枚のC
Dとなってしまい掌に乗るあっけな
いものであった。
これらを、外出時にはポケットに忍ば
せ、秘密裏に覗き込むようになった。
数枚のわたしが、入れられた。普段は
眺めることもなかったが、小学一年生
のわたしをそして、
いわんや、それ以上のことが起れば箱
に入れてある分だけ縄を掛けられや
すいと推測しなければならない。動く
両手が抱え込んでいるからこそ、コレ
クションと言える。「その家族の生活
費を稼いでいる時間は」亭主のコレク
ションと黙認されている」と置き換え
てもよい。
で、パソコンにすべてを取り込み、
デスクに焼き、百枚セットを造り縁の
人びとに配ってしまう計画に着手し
友人の
た。
パソコンコーナーで、子供のような
店員に、慇懃にバカにされながら、少
しずつ覚えていった。
レベルの高いソフトを使えば、後々、
ほえ続ける
不審者だろうな、と納得しながら、わ
らに縋る気持で患家に至る。器械越し
に突然「すみません。メガネ忘れて行
きませんでしたか」というものだから、
34
後続の車に警笛を鳴らされながらの
撮影の後、カメラを収め、かなり走り
出した時に、
メガネが無いことに気付いた
それから小一時間、降りた所屈んだ
所を探し回った
あたりはすっかりと暗くなり、徘徊す
る私に、家々の犬たちは吠え掛かる。
隣の家の犬にバトンタッチするまで
家族は混乱して沈黙する。先に言えば
よい説明で納得したり、笑ったりのあ
と探してくれる
無いとの当然の返事。お互いに「すみ
ません」と応酬しまた、現場に戻る。
今度買うメガネには紐をつけよう」
などとブツブツ言う。
元旦、リーチ・マージャンに久しぶり
に行く
相変わらず、タバコの煙が充満してい
る
新年二回目のゲームで四暗刻ツモ。四
時間で35,000の勝ち。
さて、子供を作ってみたい」と強い気
持ちが湧いてきた
わが娘をうんぬんいうのではなく、も
う少し「私好み遺伝子具象化」が有っ
ても良いのではないかと
どうしたら我が子が生まれるか」につ
いても、以前とは比較にならないほど
イヴァン・セルゲーヴィチ・ツルゲー
ネフ
初恋を持参した。
思い起こせば、三十五年も昔、ある女
性にこれを絶賛したことがある。
ヴラヂーミル・ベトローヴィッチつま
りイヴァン・セルゲーヴィチ・ツルゲ
ーネフは、やや口ごもりながら答えた。
黒い髪に白いもののまじった四十男
である
父のわたしに対する態度は優しか
ったけれど、たいして気のない優しさ
だったし、母はほかに子供がなかった
にもかかわらず、わたしにはほとんど
の知識も持った。
オセロの悪魔ではないが、シーシー」
秘密の計略は闇に置け
ネコ・ウツ・カウ
ヨソに見えてるほどには その日々
が幸せ とはいかない
切れた夫に未練はないが やった(取
られた)道具が惜しくなる
俗謡姫かがみ
秋田ことば
いやだいやだ、女のくせだよ、うそだ
らひぱてみれ、五すん引ぱれば二尺も
よてきてそれでもやんだから
目もくれなかった。ほかの心配に心を
奪われていたからである。父はまだ若
くて、なかなかの美男子であったが、
勘定ずくで結婚したのである。
母は父よりも十も年上なのであった。
彼女は絶えず興奮したり、嫉妬したり、
腹を立てたりして、悲しい生活を送っ
ていた。
しかし父の前ではそうしたそぶりを
見せなかった
その貧しい老婆は、ぼろに包まれて、
堅い板の上に袋を枕とした、苦しみ悩
みながら息をひきとった。
彼女の一生はその日その日の営みに
対する、いたましい闘争のうちに過ぎ
35
去ったのである。彼女は喜びというも
のを知らず、幸福の密をも味わわなか
った。
いレベルに引き上げた女性でなけれ
ばならない》
二十二歳で何も知らない女の子を、到
底言えない
彼女は急にわたしの方へふり向いて、
両手を大きく広げ、わたしの頭を抱き
しめて、強く熱くわたしを接吻した。
この長い名残りの接吻がだれを求め
ていたのか、神ならぬ身の知る由もな
い。
けれど、わたしはむさぼるようにその
甘さを味わった。ただわたしは、もう
これが二度と繰り返されないのを知
っていた。さらば、さらば、とわたし
は繰り返した・…
わたしはそれがまたいつか、二度と繰
り返されるのを望みはしないけれど、
しかし一度もそれを経験しなかった
ら、自分を不幸者と感じただろう…
心なき人の口より、はからず聞きぬ死
のしらせ
しかしてわれも心なく、その声に耳か
たむけぬーー
女の愛を恐れよ。この幸福とこの毒を
恐れよ…
父は四十二歳で死んだ父は何よりも
先に、何よりも強く生きることを欲し
たーそして生きた…もしかしたら、自
分は長く人生の『妙味』を享楽するこ
とができないと租のときから予感し
ていたのかもしれない。
《しかし、コケティッシュとは、女と
しての性的快楽を知るだけでなく、高
36
し
のか、それを深層心理的に理解するこ
とが十分できるようになるのである
その一昭和55*11*17の
手帳より
ラインが引かれていると、人はつい走
りたくなる。
走っている人は、ゴールに見える。
エドヴァルダ夫人(ピエール・アンジ
ェリック)
快楽の強烈な感情に伴う恥辱と羞恥
悪癖の一つにゴミを自分の衣服で拭
き去る、がある。ひどい時は、櫛のゴ
ミを自分の髪を梳いて取った。
多忙なある男
心とはそれ自身愚鈍の証拠に過ぎな
い。
人間は快楽の器官に限られてはいな
い。
しかし、この忘れることのできない器
官は人間に一つの秘密を教える。
悪魔との契約.るっつ・ミュラー
深層意識の操作
上海蟹だけが今回の目玉である。
128ホンコン・ドル
コンプレック領域は影の領域である
手のひらサイズ
ハサミと爪楊枝
名物にうまいものなし」というが、「美形に
うまいものなし」が正しい
タイ宮廷式マッサージ
二時間430ホンコンドル
尻に敷く」というが、肘に敷く」ではない
かと思う。膝とか、足の裏にも敷かれてし
魔女・悪魔崇拝、黒ミサでは、影との
一体化がとりわけ過激な形で姿をと
る。
今日でも実用に供される「折り紙つ
き」性魔術儀式
何百年も前から「悪魔的」な放縦と乱
痴気騒ぎに関して人間の空想をつき
動かしてきたものの本質的要素が、暗
示する形で含まれている
事実それは、かつてそのようなサタン
のミサの折にまだ実際に行われてい
まった。
関節を二箇所押さえられて、逮捕する」
と言われたように感じた
指を少しずつ後ろに曲げていく。彼女の
顔に「くしゃみが出れば、この指折れる
だろうな」という考えがよぎったように見
えた。
健全な行動にも数パーセントの「結果的
には想像に終わる期待」が混在している
檜山君の子どもは、整骨師の免許をとる
新型肺炎SARSの前にもこのタイ式マッ
たさまざまなことがらの暗示に過ぎ
ないしかし、この暗示さえあれば、結
局そこでは何が問題となつているの
か、そして、どこからそういった行動
が実行する人たちに魅力を生み出す
サージを受けた。
腹ばいで驚いたギュッと曲げて押し付け
られると足の裏が背中に着いた。生まれ
てはじめての経験である
セネカが「哲学者ではなく、饒舌家・
魔女・悪魔崇拝、黒ミサ
37
弁論家」であること
そして、巨万の富の持ち主でもあるこ
とも知られている
自らの生徒であるネロにより死刑を
宣告され、有名な自殺過程が作家によ
って書き残されなかったならば現代
人は知る人もなかったであろうと言
われる。
多数の人々が「五十歳から暇な生活に
二十歳台は知らないことばかりだっ
た。三十歳台は知らないことが多すぎ
て悩んでしまった。しかし、知ってい
る風を装ってやって来た。だから、五
十歳台に軽くいなされた。
四十歳台後半になり、「今まで、の知
ったか振りにを思い出すごとに赤面
することが多くなった。五十歳台知っ
ていることばかりになったが、知識は
役に立たなくなった。
退こう。六十歳になれば公務から解放
されるだろう」と言う。しかし、君は
長生きするという保証でも得ている
のか
人生の残り物を自分自身に残してお
き、何事にも振り向けられない時間だ
けを良き魂のために当てることを、恥
ずかしいこととは思わないか。
生きることを止める土壇場になって、
生きることを始めるのは、時すでに遅
大晦日のウィーンの街中は不愉快で
ある。爆竹を他人の足元で破裂させる。
ビュー、ブーという笛を吹く。幸せを
味わおうとそぞろ歩きする人々が標
的にされる。絶えずバーン、バーンと
飛び散る火薬。陰湿さと、幸せは同居
できない。
賭け事は色んなものに似ている。「ち
ょっとでも、浮いてしかも、ゲームが
し、ではないか。
神皇アウグトゥスは、神々が誰よりも
沢山のものを授け給うたにもかかわ
らず、
自分のために絶えず休息を願い、国務
から自由になることを求めて止まな
かった。
皇帝は、同国民と、同僚と、果ては近
親者とまで武器をとり殺しあった
彼はマケドニア、エジプト、シケリア、
シリア、アジア、その他ほとんど全て
一段落した時、「勝ったまま、このま
ま引揚げよう。少しでも勝つというこ
とは素晴らしい」などという気持ちと
「このくらいで何を喜んでいるんだ。
ゲームを楽しむために来たのだろう。
まだ、始まったばかりではないか」と
いう気持ちが、果てしなく戦う。
禁煙をし始めた時にも、そうだった。
Sなんてものは、人生の一部に過ぎな
い。
Little,less,much,so much,not
の地域にわたって転戦したが、軍隊が
ローマ人を殺すことに疲れると、今度
は軍隊を外征へ向かわせた。アルプス
地方を鎮定したりライン川やドナウ
川を越えた先にまで国境を延ばした。
good,good
など他人や文献とのひかくもあろう
が、所詮個人的なことだ。
38
それをいちぶの女性は時間を限って
貸す事により、人類のありふれた形態
とか熱狂を演じることで、生活してい
る。
ほとんど、知識を実践を持たない若者
に、
他人のSがいかに素晴らしいかを空
想させて、少ししか持たない精力を文
字どおり、空を飛ばせることで、生活
している作家と呼ばれる人々もいる。
朝顔に
ふと立ち止まる
初老
かな
夏の雨
爪切り
立てひざ
腰ひねる
イレなし
おとこ独りの
むだな
おんな独りの
むだな
そこまで来てるに
ト
背中に聴診器を当てた時、「アツ」
と小さな声を発つして、反る患者はホ
モだ。
香港の味
ハシは、簡単な水洗の後、三十本くら
いナプキンにくるんで、ごしごしとも
んで終わり。
大きなゴミは取っておきましたよ。程
度
マルクス アウレ-リウス 自省録
神谷美恵子訳
西暦121年に生まれ、58歳で没
した。大ロ-マ帝国の皇帝という地位
にあって多端な公務を忠実に果たし
どちらかと言えば、伝染させる物を持
っている側の人々も丁寧に箸を洗う。
人は、隠す事を覚え、次第に見せつけ
るようになる。
心の発達と、身体機能の低下に従い、
再び隠すようになる。
ドリアンの
棘に楽しむ
ひと
り旅
猛獣使いというものは 獲物が目
に入るまで、眠っている。
山竹の
白き裸身に
ながら彼の心はつねに内に向かって
沈潜し、哲学的思索を生命として生き
ていた。
有益なるものの本性は必然的にか
く働かざるをえないのだ。
人生は一日一日と費やされて行
き、あますところ次第に少なくなって
行く。
それのみかつぎのことも考慮に入
れなくてはいけない。すなわちたとえ
或る人の寿命が延びても、その人の知
力が将来も変わりなく事物の理解に
適し、神的および人間的な事柄に関す
る知識を感照に適するかどうか不明
にわか雨
39
である
る。
したがって我々は急がなくてはな
らない。それは単に時々刻々死に近づ
くからだけでなく、物事にたいする洞
察力や注意力が死ぬ前にすでに働か
なくなって来るからである。
労苦に耐え、寡欲であること。自分
のことをやって、余計なおせっかいを
せぬこと。
この街香港を訪れた人のいつもの生
活は、知る人のみ知るである。
一見さえすれば、大体のところ分か
る人には分かるモノであるが、それま
での要がない
ことが多い。 精神及び人生におい
て 、貴賎、幸不幸、 長命短命
そういう人々に、違う世界を覗かせ
中傷に耳を貸さぬこと。
もっともよい復讐の方法は自分ま
で同じような行為をしないことだ。
他人の罪はその場に留めておくが
よい。
てくれるのが、この街である。
窓越しという形ではあるが。 でも、
私を誰もしらないのだから、すこーし
の時間、振りをして 、その極近くに
寄ることができる。遊園地で買った黒
い眼帯をして、海賊の子分に心から成
り切って、そうした酒場にも身を置く
ことができる。
92.3.22
事物はそれ自体いかなるものであ
るか。その素材、原因、目的に分析し
て見るべきである。
なんなりと人生に起こってくる事柄
に驚き怪しむ者はなんとおかしな、妙
な 人 間 で あ ろ う 。
ラ・ロシュフコ-の箴言しんげん/?
人間にも事業にもそれを見るのに最
良の目の位置がある。正しく判断する
ために近くで見なければならないも
のもあるし、遠くへだたってでなけれ
ば正当に判断できない者もある。
自分をあざむく賛辞よりも自分のた
めになる非難を喜ぶほど賢明な人は、
めつたにいない。
日本では「どうしましたか?」と質問
する職業である。生まれて初めて会っ
た人にでも。何時の間にか、あの「無
口で、赤面症ででオドオドしていた」
あの私がこんなになってしまった。
その口を休ませてあげるのが一人旅
だ。
だから、外国では自分から日本人に声
を掛けない。
人は愛している限り赦す。
女の愛が冷めた時に気がつかないの
は、愛している男のほうがほとんどき
まって悪い。
我々の力が低下すると好みも低下す
る時はなんとか解るが、自分に向かっ
てくる時は難解である。」
人生において、多くの人々のなかにい
る時の賑やかさは、独りになった時の
静かさ、寂しさを対比させるためにあ
40
外国語は「他人が他人に話し掛けてい
る
冷静さを取り戻す、或いは、装うには、
まず、肩の力を抜く。少し遠くの物を
焦点を合わせないようにして眺める。
そして「そうかー」とともあれ呟く。
ジョンストン
女は常に発情している唯一の動物で
ある。
モーパッサン
女は防御限度が大切 男は攻撃程度
が大切
女は防御のために、男は攻撃のために
身構える
何のかんのと言ってもそのことがあ
れば一段落の状態
その一昭和55*11*17の手帳
顔はデザートに過ぎず、体が焼き肉で
ある。
女のどこを占領されようとかまわな
いわ女が女である事を証明しさえす
れば、女はそれでいいのよ
壁一面に星屑を散らして、小柄な真紅
のフイリッピーナは歌う。
細身の体を幾重にも折り曲げて、扇情
する周りの空気を
チャチャチャとタンバリンを腰に打
より
ラインが引かれていると、人はつい走
りたくなる。
走っている人は、ゴールに見える。
エドヴァルダ夫人(ピエール・アンジ
ェリック)
快楽の強烈な感情に伴う恥辱と羞恥
心とはそれ自身愚鈍の証拠に過ぎな
い。
人間は快楽の器官に限られてはいな
ち付けながら
私は取り残されていく自分自身を楽
しんでいた
溢れんばかりの微笑を投げかけてく
る。細く
弱い光線にくねらした胸や腰に影を
造りながら
一方でさりげなく時計を見ながら
一杯のトロピカル solid Gold に酔っ
て行く
クアラルンプールにて
い。
しかし、この忘れることのできない器
官は人間に一つの秘密を教える。
人間の悲しさ
ジンマシンは掻くもの
煙草は吸うもの 本を買えば掻くも
の 門をくぐれば買うもの
所詮昔から決まっている。
れることに余り抵抗が無くなってき
た。
なんせ、税金を払わなくっちゃ
やたら、恥ずかしい」という表現か゛
出て来るものだから「なんで恥ずかし
大下先生は「口に入れた親指と外の人
差し指で、頬っぺたの肉を挟んで、少
しグルグルとまわした
これがいいのかなー
バアさんも、「そんなのがいいんです
かねえ、と言った」とブツブツ言った
かれは、同業者の表現を盗んで取り入
41
いのか自分でも、よく分からなくなっ
てきた。
恥ずかしい格好をさせて、恥ずかしい
場所に恥ずかしいことをすれば「恥ず
かしいわ」と恥ずかしいそうに身をよ
じる。
一番恥ずかしい場所にもっと恥ずか
しいことをすることにした。もっと、
恥ずかしいことを言って」と言う。
恥ずかしいとは、「馬鹿馬鹿しい」と
男は一人の女を満足させるにも全力
を挙げなければならないが、女は(肉
体的に)骨を折らずとも幾人もの男に
耐え得るから
性交が目的でなくなったとしたら、何
を目標とすればよいのか
それは、容易でかつ廉価に得られなけ
ればならない
できれば合法的に
いうことか
過去に特に負い目が無い」ということ
は、取りたてて幸せなことではない
しかし、こういう表現は、犬の目の前
私の札幌時代
で、「さあ、こういうご馳走をやるよ」 付き合いは、未練を残すか、後悔する
ということを「手で色々形を作ってい
かの、どちらかに傾く
る」ようで、相手には伝わっていない
ゴンクール兄弟
ようだ
無鉄砲な男は、相手のおんなから、だ
犬や読者からすれば、「相手がなにか、 んだんに男に許してゆくという「長い
すごいことを言おうとしている」事は
苦しみや、私は相手にされないと感じ
なんとなくわかるのだが…
て、それを無益に嘆く恥辱を省いてや
バアさんは、「俺らしくない言葉だ
と」ゆっくり顔をあげて、チラっと顔
を見やがる
同業者の言葉と、すぐ分かってしまう。
流れている中の女をまあ、良しと感じ
る。
しかし、性能の良いカメラをカメラを
構えてアップしようとすると、本当に
シャッターを押したくなるオンナは
ほとんど居ない。
る。」
温かい石
遊蕩児ヴァルモン
女の偏見を破ってはならない。女の失
錯を取り入れる。
ワイキキのこの店の路面がわの二人
かけのテーブルに、男が一人で腰掛け
るのは、男を売ろうとする時のしぐさ
と教えられたのはかなり、後であった。
「求む、女性」とした顔で座っている
私と周辺に様々な食い違いが生じて
男はまず、自分に託された個体の保存
のことを配慮しなければならない。
グレーテ・マイセル・ヘッス
いたが、知る由もなかった。
私の作家としての道は険しい。この十
数年間
35歳過ぎの人生は延長に過ぎない。
20台の生き方を纏めるための
42
「やめて、好きになると、困るから・・」
よく聞くセリフではあるが、
さて、君はどう解釈し、対処するか
話を書く時は、売ろうと思うな、
仲間に、冷や汗を浮かべて送るのみだ
蜜汁叉焼
猫のように自然に振る舞う
棘の多い冗談の好きな男は女に逃げ
られる
人は、その瞬間瞬間に、何らかの方向
を持っている
女のプライドの値打ちは、その地その
盗み聞きには、目は邪魔で、耳と16
0度位の反対側に押しやられる
見つめられて、転びそうになる。幼児
と同じだ
旅は「あまり理由のない家出」に似て
いる
地における最高値において、自然の規
制を受ける。
化粧しながら帰る女、後退するままの
化粧のまま帰宅する女
少し信用して、少し疑う
世の中これに限るか手荷物検査
現地人というのは、父の台もいたのだ
から、すごい
金の少ししかない時は、オドオドして、
同じ所に二日いるとどうすれば良い
か迷ってくる。
フとした事が起こっても、まず何事も
起こりようがない外国人と目が合う。
勃起中の男性はあまり利口でない。
犬儒派の Diogenes「私は、これと同
じ方法で、食に飢えた時は摩擦によっ
て胃袋を満たすことができればと願
っています」
それでも思いきって高いものを買う。
多少の金ができると、程々の品を、ま
あまあの気持ちで買う。
女が性に関する冗談を口に出し始め
ると、進展せず、グルグル回りに成る
気づかない不利をしていると、いつま
でも、その周辺で話は飛びまわる
「飲んだ振りしてさ、いれれば良いけ
ど…」
性愛は勉強の中のひとつである。
言語学のひとつである。
冬があんなに横暴な街路。その中にも、
口達者で放埓な恋人たちを見る。春野
生温かさに包まれたこの喫茶店にも、
肩を寄せ合った恋人たちをみる。
詩のために、世界をみてはならない。
この平野原野に立つとき、目覚める時
が来る。その中の一条の水の流れ。私
は小川。静かに眠るように疾走する。
遠く思索する小川。
この石狩が声を挙げ目覚める時が来
る。
使い始めれば上手になる。
性愛に対して、お金を払わない。性愛
に払う。いずれも一つの姿勢であろう。
時と必要性による」まあ、これが凡人
か。
小川は鼓舞し、小石に、草に、
君も小川。未来を知らない。待ちはし
ない。でも思索する。
43
少しぬるいと思う湯の中に私はじー
っといた。
刺激の無い温度が私を思い出の連想
へと連れ出した。
もう五年前にもなろうか
狭い部屋に、多くの家族がまだ混み合
って暮らしていたことを。
静寂は独りで入る風呂の中のみであ
った。
生ぬるい湯の中に今、独りいる。
ドアを開けさえすれば、あの騒然とし
気に話していた。
た親、兄弟たちの会話が聞けるように
思った。声高の叱り声や、反抗する子
供たち。物を落とす音。
その中に居た時はまさに逃げ出した
くなる音や声が、今、こんなに懐かし
く耳に響くことに驚いた。
このことに対する尺度はなにか
ストレスの有無か。欲求は有るが、不
満足は無いこと。くやしさが軽いこと。
更に一歩、踏み出すことをしないこと。
色々考えて
とは言うものの、固くさせていく状態
はかなりの快感ではある
もっと若い時、デルプのまま、眠りに
入ることは不可能と考えていた。しか
し、出来るのだ。昼間の仕事の中で、
エネルギーを残したまま、中止するこ
とはよく有ることではないか
熱心に鳩に残ったご飯をやっていた
ら「フィニシュ?」と、取られちゃっ
乳腺が肩に片寄っていたに、ひじに近
いところに有ったりしたら
た。
プリア・サヴァラン
魚食が原因で起こる生殖行為は、ただ
子供を産ませるというだけでなく、し
げきてきなのだと、考えざるを得ない。
消耗的な事情に由来する
女子の出生を促す
どの国にも、いかにも、水商売に向い
ている女はいる。それしかないという
雰囲気。目は安上がりである。
蕎麦屋「なんにしましょう」「えーと、
ゴボウ、卵、そば、少々ね」「なるほ
ど」感心されてしまった。
太った者がジョギングをしていると
逃げている」としか映らない。
数時間の仮眠はもう忘却してしまっ
ている「グルグル回るゲームの夢で」
敗れた。目には充血が有り、油の切れ
た頭髪はのびのびとしていた。さすが
に小銭集めのトイレの老人は居なく
なっていた。
濃く、少量の尿のあと、水で髪を撫で
た。
私には、数百ドルしか残っていない。
地下の魚の群れの水槽のアル食堂で
カフェ。2月の中でも、今日は特に寒
いという。夜は未明。
中国人の若者は大きな目を開けて元
44
人生を狭く考えるか幅広いものと取
るか四十台半ばで立ち止まって考え
るべきだ
押したり引いたり或いは揺すぶった
りのメロディー
あるメロディーが自分にピッタリと
来る時はその調律のような人生を送
りつつあるのであろう。似て、途中で
非なる曲もあろう。
また、思いがけなく激しい曲が心を打
つかも知れない
身長は遺伝に過ぎない。体重は、特に
肥満は「努力だ」
マンゴスチン山竹
ドリアン DURIAN シンガポール、マ
レーシア、タイ
プリア・サヴァラン
トリュッフ詰め七面鳥
ローマ人はトリュッフを知っていた。
糧に長くかかっている髪 そして手
入れされている髪の女性は頻繁にか
みを撫でる
極かぎられた状況でしか煙草を吸わ
ない女
フランス特産の小さい円形の黒茸で
あるが、それが性的快楽を誘うという
相当広くゆきわたっている確信の中
にみいだされている。
悪人ツラまたは、人相が悪い」とはど
ういうものかここではよく分かる
海賊の一般従業員だけで、上級のもの
はいない。
まず、複数の歯を見せて笑う。煙草を
歯に挟む。付いたものを落とす時以外
南風が今日帰って来た。 北の国
吹雪に似た樹木のざわめきを聞きな
がら
遅い晩を独り 自分を開放している
風に揉まれ かつ雨に打たれている
葉葉、
そのたてる音は 過ぎた日の友達の
足音
窓にもたれて 時を忘れた若い時
は、頭に手をやらないように思え、髪
は自然の成り行きの方向を取ってい
る。衣服は多少の温度差で、取りかえ
られることはない。
パっと、出会うと、恐い目と、ヒゲと
歯だけのように見える。
係長クラスになると、指に宝石が飾ら
れる。金とヒスイが多い。ヒスイは身
を守ってくれると信じられている。
一見、治安が良いと見えるのは、大き
な闇の力がカジノの円滑な運営に全
子供じみて かなり打算でさりとて
愛欲もなく
君たちを追った 長い年月
春風をかくも新しく感じ
春一番と行きの上で呼んでいる
立ちつくした日々は
故郷が遠かった日々は
力を挙げているからである。
安全が確認されないところには、小銭
を持って確実に負けに来る旅中カモ
は来ないのである。
三月の下旬 春
確かに 温風であり葉々にそそぐ雨
の音も柔らかい
間断の無い
冬 あれほど憧れた恋焦がれた 春
サヤあてとサヤあての中を泳いで
45
の夜
気付けば 喜びもない
秋の夜
同じように 過ぎるのであろう
は胡椒科の植物で、その葉に濱椰
子の実と少量の石灰をまいて噛
む習慣がある。この習慣に
このベテレをわれわれはフォリオ・イ
ンディオと呼ぶ。それはおおばこほど
の大きさの葉を持っていて、その形と
同じである。
それは蔦のように樹木にまとわりつ
いて生え、また他の樹木に絡み付き、
急に激しい雨が降り出した
見えぬ夜の闇に 遠く強い春雷
秋雨と違い 急に強く短く と切れ
と切れに
春雨は
それをとりかこんでしまう。それは、
果実をつくらず、ただたいへん芳香の
ある葉をつけるだけである。
インディア全土では男子も婦人も昼
夜を問わずこれを噛むことを習慣に
している。日中は広場や道端で、夜は
寝床の中でこれを噛む。
その葉は、アレカと呼ぶ小さな種子と
一緒にされる。其れを噛むときにはま
ず、むらさきがいや、鳥貝の貝殻から
コリントスの婚約者
塩と水はなんのためにあるのかしら
いったいどこで、若さというものを燃
やしたらいいの?
はにかんでいる中は青春だ
何時から青春というのだろう?
すべての出発は高校三年生の十二月
頃かしらなにか三月までに想い出を
慕情に対する区切りを 何かなにか
って
焦りを感じたのが12月あの時から
激しい青春が始まったのだ
恥じらいは頬にある ふっくらとし
たピンク色の頬に
鏡に映るすっきりとした顔 男を知
り、と言って
何も残らず
魚も顎が大きいと賢くみえない
我が身が落とす小さな影を見よ
作られた湿した石灰でアレカを蔽う。
そしてこの二つをペテレと一緒にし
て噛む。
それからは汁だけが呑み下される。そ
れは口を赤くして、歯を黒くする。こ
の葉は胃と頭脳を乾かして健康に保
ち、鼓腸を防ぎ、渇きを去るというこ
とである。
したがってかれらはこれと一緒には
何も飲まない。
広げた手の小さいこと
セネカが「哲学者ではなく、饒舌
家・弁論家」であること
きんま betelle
Piper
そして、巨万の富の持ち主でもあるこ
とも知られている
自らの生徒であるネロにより死刑を
Betle
46
宣告され、有名な自殺過程が作家によ
って書き残されなかったならば現代
人は知る人もなかったであろうと言
われる。
マカオ奇談北都奇談その二
白灼海蝦
鼓椒灼聖子
蒜茸粉絲蒸抜仔
多数の人々が「五十歳から暇な生活に
退こう。六十歳になれば公務から解放
されるだろう」と言う。しかし、君は
長生きするという保証でも得ている
のか
せいよう
北都奇談
ある男が減量を性行為で完成させよ
うとしていた
「実は、前後で七百グラム減量したの
人生の残り物を自分自身に残してお
き、何事にも振り向けられない時間だ
けを良き魂のために当てることを、恥
ずかしいこととは思わないか。
生きることを止める土壇場になって、
生きることを始めるのは、時すでに遅
し、ではないか。
神皇アウグトゥスは、神々が誰よりも
沢山のものを授け給うたにもかかわ
らず、
に気付いたのが、切っ掛けです」
しかし、時計を外したからでは
自分のために絶えず休息を願い、国務
から自由になることを求めて止まな
かった。
皇帝は、同国民と、同僚と、果ては近
親者とまで武器をとり殺しあった
彼はマケドニア、エジプト、シケリア、
シリア、アジア、その他ほとんど全て
の地域にわたって転戦したが、軍隊が
ローマ人を殺すことに疲れると、今度
は軍隊を外征へ向かわせた。アルプス
地方を鎮定したりライン川やドナウ
川を越えた先にまで国境を延ばした。
西洋古典好色文学入門」
色情的な感覚を呼びさますための手
段として、本書を読まれる読者はひど
く失望されるだろう。
病的な精神から生まれた珍奇な好色
譚などはみられない
かの稀代の名著ローゼンバウムの「古
代の秘儀的風俗慣習と信仰の歴史」
第六感の犯罪・愚行・倒錯などのため
に古代ギリシャやローマの栄光は世
界中で笑いものにされた
われわが誤謬を犯す、つまり、下品な
物書きの精神レベルに落ちるのは
我々の不十分な知的道具のため
比較的異常な形態の色欲に関する無
知のため
我々の素直さのため
ティベリウス帝は種々様々な趣
47
が実行する人たちに魅力を生み出す
のか、それを深層心理的に理解するこ
とが十分できるようになるのである
向
をこらしたいくつかの寝室を、このう
えなくみだらな絵画や浅浮彫りで飾
り、またフェラエニスの作品を備え付
けたから、誰でも行為のさい、必要な
態位のモデルに困ることはなかった
譚
愛の奥義を究めた達人尾ヴィディウ
ス
ただちに、医者たちが到着し、家政婦
ことわざ
Omne
animali
post
coitum
trste
すべての動物はまじわりのあとで悲
しい
下男が理論を、女中が、高い技術のノン・
たちは帯状。やがて、宙に舞う妻の両
脚。おお!厳粛にして、苛烈な医薬!
プルス・ウルトラ(極地)を
不慮の事故
先天的な運命、後天的な運命などによ
って
人間の生命活動は終止符を打つ
近藤忠躬 九州大学
ID:83565
2
p19894
y0029
大河はひとつのもののように見える
が実は一滴一滴の水の集合体である。
真水の一滴が山や野で、次々と生まれ、
悪魔との契約.るっつ・ミュラー
深層意識の操作
魔女・悪魔崇拝、黒ミサ
コンプレック領域は影の領域である
魔女・悪魔崇拝、黒ミサでは、影との
一体化がとりわけ過激な形で姿をと
る。
今日でも実用に供される「折り紙つ
き」性魔術儀式
何百年も前から「悪魔的」な放縦と乱
痴気騒ぎに関して人間の空想をつき
動かしてきたものの本質的要素が、暗
示する形で含まれている
事実それは、かつてそのようなサタン
導かれるように集まり、大河となり、
次々と海の中に落ちて行くのである。
生きる物すべても、次々と生まれ、
次々と消えて行くのである。
人も極く短い時間、存在するに過ぎな
い。
一人前に成熟するに要する期間の倍
しか生きないのであるから。
長い間、つい最近旅した
リスボンの街の印象がほとんど
のミサの折にまだ実際に行われてい
たさまざまなことがらの暗示に過ぎ
ないしかし、この暗示さえあれば、結
局そこでは何が問題となつているの
か、そして、どこからそういった行動
無い
ことに疑問を抱いていた。
昨日、ハッと気付いた。
リスボンでは、丸二日間、ホテルの部
屋に、閉じこもって、本の仕上げをし
48
ていたのだ。パンと水だけで
物を作り出す、精神を高めるという心
をうしなつている
なるほど、なにかを作っている、音を
聞き、映像を見て、文字を送信してい
る」と反論があるであろう
しかし、ありとあらゆる物品と情報と
手段を持っているが、一つだけ持って
いない
自己を高めようとする苦悩である
未来に向かっての努力とも言える
ヘロドトス
彼らの言うには、
一年という単位を発明したのは
エジプト人
であり、一年を季節によって十二の部
分にわけたのも、エジプト人が史上最
初の民族である。彼らはそれを星の観
察によって発見したのだと言ってい
る。
ペルシャ人が路上でゆき遭った場合、
遭った同士が同じ身分であるかどう
かは、次のことで見分けがつく。対等
の場合には、話しかける代わりに、口
で接吻し合う。一方の身分がやや低い
ときは、頬に接吻し合うし、また一方
が遥かに卑せんの身である時には相
手の前に土下座し平伏するのだ。
自己の生涯という有限でありながら
混沌としたもの、他人には到底理解さ
れ得ないもの、それが一つだけの自分
だけの生涯なのである
オリンピックの映像で無縁のヒトビ
トの映像を見続ける
他人の行為が自分人生形成の糧引き
金にはならない
何時の間にかヒトビトは「あなたたち
はおかねを払って
観客席ですわつて、我々を見ていれば
いいのです。」という声に服従されて
いるのである洗脳されている
脳の奥底で、無意識に、そうした洗脳
を拒否する、若者たちが存在する
しかし、ゲームで画面の前で、自己を
他の固体と鑑別する能力育成のため
の大切な時代を過ごしてしまった彼
らには、創造するために、現在を悩む
苦しむ」という事は、思いもかけない
事なのである
わたしが、夢の中で受けた啓示は
このままでは、ヒトは不幸になってい
く
博重、なんとかしなさい
というものであった
ベートーベンは音楽を作ろうと
して
、努力した
生を受けた自己を、高めようとがんば
った
ヒトは、この「自分を高めよう」とす
る能動的な行動で進んできたのであ
る
引き換え、わが世界我が日本はどうだ
戸惑い、混乱し、方向なく暴走するか、
内に篭ってしまうかしか
ないのである
49
キケロ
「小生の現況に就きおたずねですか。
小生は今、トゥスクルムの別荘で浪々
の日々を過ごしています。半ば自由を
失ったものです」と過去の歳月を嘆き、
現在に不満を述べ、将来に絶望してい
る。
多忙なある男の子の物語
飛行機は秋の積乱雲をかすめた。青い
天空の中で、巨大な雲は四方に薄く広
がり、夕日を浴びて何十種類もの光の
色で光っていた。淡い雲を透き通って
きた光はさまざまに変化していた。
私だけの目から心に入りこむ瞬間の
光景に出会うために夕方便の時は太
陽側で窓際の席を指定する。父や母を
亡くした後、暫くは沈む太陽で真紅に
蒸し暑い香港からマカオに入った時
はホッとしたのに、香港のホテルに荷
を下ろした時に、さらに大きな安堵感
を感じた。
二三を除けば、一言で言えば「賭博と
その他の出発拠点」に過ぎないマカオ
のホテルでは
洗練された香港のホテルとは比較も
染まった雲界を見ては、父母が行った
西国の入り口と想っていた。しかし、
煉獄に落ちたのではないから、もう少
し上の方であると考えた。
ならない。
独りで寝るか、二人で寝るか
程度である
マカオへ
一日早く、香港に帰ってきた。
ある時、娘が聞こえる程度に呟い
公表しなかった理由の一つは
た。
「お父さんが、フランス美人と結婚し
てくれていたか、お母さんがスラーッ
とした美男子と結婚してくれていた
ら、私はこんなに苦労しなくても良か
ったのに…」なるほど、なんとなく納
心の中を曝すのを躊躇ったから
である。
はじめの時期には親がいた。次に兄弟
が多感な頃となり、最後には子供が思
春期を迎えた。それが、今回一段落し
たとも言える。
今、二十歳台からあらゆる種類の紙片
に書き付けてきた文字を今纏めて置
かなければ、一切がゴミとして燃やさ
れることは明白である。
得。
マカオの名物
不慮の事故
50
タマゴ・センベイ
先天的な運命、後天的な運命などによ
って
人間の生命活動は終止符を打つ
で接吻し合う。一方の身分がやや低い
ときは、頬に接吻し合うし、また一方
が遥かに卑せんの身である時には相
手の前に土下座し平伏するのだ。
大河はひとつのもののように見える
が実は一滴一滴の水の集合体である。
真水の一滴が山や野で、次々と生まれ、
導かれるように集まり、大河となり、 人生は短い、と言われる。しかし、わ
次々と海の中に落ちて行くのである。 れわれは短い時間をもっているので
生きる物すべても、次々と生まれ、
はなく、実はその多くを浪費している
次々と消えて行くのである。
人も極く短い時間、存在するに過ぎな
い。
一人前に成熟するに要する期間の倍
しか生きないのであるから。
のである。人生は十分に長く、その全
体が有効に費やされるならば最も偉
大なことをも完成できるほどに豊富
に与えられている。けれども放蕩や怠
惰の中に消えてなくなるとか、どんな
善いことのためにも使われないなら
ば、結局最後になって否応なしに気付
かされることは、今まで消え去ってい
るとは思わなかった人生がもはやす
でに過ぎ去っていることである。
長い間、つい最近旅したリスボンの街
の印象がほとんど無いことに疑問を
抱いていた。
昨日、ハッと気付いた。
リスボンでは、丸二日間、ホテルの部
屋に、閉じこもって、本の仕上げをし
ていたのだ。パンと水だけで
セネカ
ある時
ヘロドトス
彼らの言うには、一年という単位を発
明したのはエジプト人であり、一年を
季節によって十二の部分にわけたの
も、エジプト人が史上最初の民族であ
る。彼らはそれを星の観察によって発
見したのだと言っている。
その頃の香港は町全体がラードの匂
いに包まれていた。
カイタック空港に降り立った瞬間か
ら、
マカオ外伝
ホンコン、マカオのレストランで、よ
ペルシャ人が路上でゆき遭った場合、
遭った同士が同じ身分であるかどう
かは、次のことで見分けがつく。対等
の場合には、話しかける代わりに、口
51
く分からなかったら、店内を歩き回り、
客が食べているものを指さすのが、確
実な方法である。多くの客が注文して
いるものを取れば間違いがない。指さ
しされて、無念と思う客も少ない。
店主が、店の玄関に出てきて、不安な
目で、客を探している店でおいしいと
ころはない。
など他人や文献とのひかくもあろう
が、所詮個人的なことだ。
それをいちぶの女性は時間を限って
貸す事により、人類のありふれた形態
とか熱狂を演じることで、生活してい
る。
ほとんど、知識を実践を持たない若者
に、
他人のSがいかに素晴らしいかを空
二十歳台は知らないことばかりだっ
た。三十歳台は知らないことが多すぎ
て悩んでしまった。しかし、知ってい
る風を装ってやって来た。だから、五
十歳台に軽くいなされた。
四十歳台後半になり、「今まで、の知
ったか振りにを思い出すごとに赤面
することが多くなった。五十歳台知っ
ていることばかりになったが、知識は
役に立たなくなった。
想させて、少ししか持たない精力を文
字どおり、空を飛ばせることで、生活
している作家と呼ばれる人々もいる。
大晦日のウィーンの街中は不愉快で
ある。爆竹を他人の足元で破裂させる。
ビュー、ブーという笛を吹く。幸せを
味わおうとそぞろ歩きする人々が標
的にされる。絶えずバーン、バーンと
その一昭和55*11*17の手帳
より
ラインが引かれていると、人はつい走
りたくなる。
飛び散る火薬。陰湿さと、幸せは同居
できない。
賭け事は色んなものに似ている。「ち
ょっとでも、浮いてしかも、ゲームが
一段落した時、「勝ったまま、このま
ま引揚げよう。少しでも勝つというこ
とは素晴らしい」などという気持ちと
「このくらいで何を喜んでいるんだ。
ゲームを楽しむために来たのだろう。
まだ、始まったばかりではないか」と
いう気持ちが、果てしなく戦う。
走っている人は、ゴールに見える。
エドヴァルダ夫人(ピエール・アンジ
ェリック)
快楽の強烈な感情に伴う恥辱と羞恥
心とはそれ自身愚鈍の証拠に過ぎな
い。
人間は快楽の器官に限られてはいな
い。
しかし、この忘れることのできない器
官は人間に一つの秘密を教える。
禁煙をし始めた時にも、そうだった。
Sなんてものは、人生の一部に過ぎな
い。
Little,less,much,so much,
not good,good
大下先生は「口に入れた親指と外の人
差し指で、頬っぺたの肉を挟んで、少
しグルグルとまわした
これがいいのかなー
バアさんも、「そんなのがいいんです
52
かねえ、と言った」とブツブツ言った
かれは、同業者の表現を盗んで取り入
れることに余り抵抗が無くなってき
た。
なんせ、税金を払わなくっちゃ
やたら、恥ずかしい」という表現か゛
出て来るものだから「なんで恥ずかし
いのか自分でも、よく分からなくなっ
てきた。
恥ずかしい格好をさせて、恥ずかしい
シャッターを押したくなるオンナは
ほとんど居ない。
場所に恥ずかしいことをすれば「恥ず
かしいわ」と恥ずかしいそうに身をよ
じる。
一番恥ずかしい場所にもっと恥ずか
しいことをすることにした。もっと、
恥ずかしいことを言って」と言う。
恥ずかしいとは、「馬鹿馬鹿しい」と
いうことか
耐え得るから
性交が目的でなくなったとしたら、何
を目標とすればよいのか
男はまず、自分に託された個体の保存
のことを配慮しなければならない。
グレーテ・マイセル・ヘッス
男は一人の女を満足させるにも全力
を挙げなければならないが、女は(肉
体的に)骨を折らずとも幾人もの男に
しかし、こういう表現は、犬の目の前
それは、容易でかつ廉価に得られなけ
ればならない
できれば合法的に
過去に特に負い目が無い」ということ
は、取りたてて幸せなことではない
私の札幌時代
で、「さあ、こういうご馳走をやるよ」
ということを「手で色々形を作ってい
る」ようで、相手には伝わっていない
ようだ
犬や読者からすれば、「相手がなにか、
すごいことを言おうとしている」事は
なんとなくわかるのだが…
バアさんは、「俺らしくない言葉だ
と」ゆっくり顔をあげて、チラっと顔
を見やがる
同業者の言葉と、すぐ分かってしまう。
付き合いは、未練を残すか、後悔する
かの、どちらかに傾く
ゴンクール兄弟
無鉄砲な男は、相手のおんなから、だ
んだんに男に許してゆくという「長い
苦しみや、私は相手にされないと感じ
て、それを無益に嘆く恥辱を省いてや
る。」
温かい石
遊蕩児ヴァルモン
女の偏見を破ってはならない。女の失
流れている中の女をまあ、良しと感じ
る。
しかし、性能の良いカメラをカメラを
構えてアップしようとすると、本当に
錯を取り入れる。
ワイキキのこの店の路面がわの二人
かけのテーブルに、男が一人で腰掛け
るのは、男を売ろうとする時のしぐさ
と教えられたのはかなり、後であった。
53
「求む、女性」とした顔で座っている
私と周辺に様々な食い違いが生じて
いたが、知る由もなかった。
私の作家としての道は険しい。この十
数年間
35歳過ぎの人生は延長に過ぎない。
20台の生き方を纏めるための
話を書く時は、売ろうと思うな、
仲間に、冷や汗を浮かべて送るのみだ
「飲んだ振りしてさ、いれれば良いけ
ど…」
性愛は勉強の中のひとつである。
言語学のひとつである。
使い始めれば上手になる。
性愛に対して、お金を払わない。性愛
に払う。いずれも一つの姿勢であろう。
時と必要性による」まあ、これが凡人
か。
「やめて、好きになると、困るから・・」
蜜汁叉焼
猫のように自然に振る舞う
棘の多い冗談の好きな男は女に逃げ
られる
人は、その瞬間瞬間に、何らかの方向
を持っている
女のプライドの値打ちは、その地その
地における最高値において、自然の規
制を受ける。
化粧しながら帰る女、後退するままの
よく聞くセリフではあるが、
さて、君はどう解釈し、対処するか
化粧のまま帰宅する女
勃起中の男性はあまり利口でない。
犬儒派の Diogenes「私は、これと同
じ方法で、食に飢えた時は摩擦によっ
て胃袋を満たすことができればと願
っています」
盗み聞きには、目は邪魔で、耳と16
0度位の反対側に押しやられる
見つめられて、転びそうになる。幼児
と同じだ
フとした事が起こっても、まず何事も
起こりようがない外国人と目が合う。
少し信用して、少し疑う
世の中これに限るか手荷物検査
現地人というのは、父の台もいたのだ
から、すごい
金の少ししかない時は、オドオドし
て、それでも思いきって高いものを買
う。
多少の金ができると、程々の品を、ま
あまあの気持ちで買う。
冬があんなに横暴な街路。その中にも、
口達者で放埓な恋人たちを見る。春野
生温かさに包まれたこの喫茶店にも、
肩を寄せ合った恋人たちをみる。
詩のために、世界をみてはならない。
女が性に関する冗談を口に出し始
めると、進展せず、グルグル回りに成
る
気づかない不利をしていると、いつま
でも、その周辺で話は飛びまわる
この平野原野に立つとき、目覚める時
が来る。その中の一条の水の流れ。私
は小川。静かに眠るように疾走する。
遠く思索する小川。
この石狩が声を挙げ目覚める時が来
54
る。
小川は鼓舞し、小石に、草に、
君も小川。未来を知らない。待ちはし
ない。でも思索する
腰ひねる
イレなし
マルクス アウレ-リウス
神谷美恵子訳
んで終わり。
大きなゴミは取っておきましたよ。程
度
どちらかと言えば、伝染させる物を持
っている側の人々も丁寧に箸を洗う。
人は、隠す事を覚え、次第に見せつけ
るようになる。
心の発達と、身体機能の低下に従い、
再び隠すようになる。
棘に楽しむ
ひと
猛獣使いというものは 獲物が目
に入るまで、眠っている。
白き裸身に
朝顔に
ふと立ち止まる
自省録
西暦121年に生まれ、58歳で没
した。大ロ-マ帝国の皇帝という地位
にあって多端な公務を忠実に果たし
ながら彼の心はつねに内に向かって
沈潜し、哲学的思索を生命として生き
ていた。
有益なるものの本性は必然的にか
く働かざるをえないのだ。
人生は一日一日と費やされて行
き、あますところ次第に少なくなって
行く。
それのみかつぎのことも考慮に入
れなくてはいけない。すなわちたとえ
或る人の寿命が延びても、その人の知
力が将来も変わりなく事物の理解に
適し、神的および人間的な事柄に関す
る知識を感照に適するかどうか不明
である
り旅
山竹の
ト
背中に聴診器を当てた時、「アツ」
と小さな声を発つして、反る患者はホ
モだ。
香港の味
ハシは、簡単な水洗の後、三十本くら
いナプキンにくるんで、ごしごしとも
ドリアンの
そこまで来てるに
にわか雨
初老
かな
夏の雨
爪切り
おとこ独りの
むだな
おんな独りの
むだな
この街香港を訪れた人のいつもの生
活は、知る人のみ知るである。
一見さえすれば、大体のところ分か
る人には分かるモノであるが、それま
立てひざ
55
での要がない
ことが多い。 精神及び人生におい
て 、貴賎、幸不幸、 長命短命
そういう人々に、違う世界を覗かせ
てくれるのが、この街である。
窓越しという形ではあるが。 でも、
私を誰もしらないのだから、すこーし
の時間、振りをして 、その極近くに
寄ることができる。遊園地で買った黒
い眼帯をして、海賊の子分に心から成
り切って、そうした酒場にも身を置く
ことができる。
92.3.22
図星
新妻「結婚以来、夫は馬鹿なことばかり
考えているのよ」夫の友人「でもね、結
婚前のほうが、もっと馬鹿な事を考えて
いたように思われます」
診断の基準
ある医師に弟子が尋ねた
「先生は患者を診る時に、いつも何を食
べたかをお尋ねになりますが、何か…」
「しっ!」医師は慌てて弟子を制して言
った。「診察料を決める参考にしとるん
日本では「どうしましたか?」と質問
する職業である。生まれて初めて会っ
た人にでも。何時の間にか、あの「無
口で、赤面症ででオドオドしていた」
あの私がこんなになってしまった。
その口を休ませてあげるのが一人旅
だ。
じゃ」
だから、外国では自分から日本人に声
を掛けない。
は申し分ない美人で、頭がよくて、慎まし
系図
ある青年、美しい令嬢にぞっこん惚れ込ん
だが、さいわい先方も色よい返事、青年は
有頂天になり、思い切って父親に打ち明け
た。
「お父さん、ぼくは恋愛しています。相手
くて、そのうえ相当な金持ちです。…それ
はお父さんのよく知っていらしゃる x 嬢で
外国語は「他人が他人に話し掛けてい
る時はなんとか解るが、自分に向かっ
てくる時は難解である。」
人生において、多くの人々のなかにい
る時の賑やかさは、独りになった時の
静かさ、寂しさを対比させるためにあ
る
す」それを聞いた父親、顔色をかえ、「気
の毒だが x 嬢はいかん」
「ど、どうしてい
かんのですか」「いいにくいことだが、い
わねばならん。実は x 嬢はおまえの妹なの
だ!」絶望のあまり、青年は病の床に伏した。
母親、大いに心配してわけをきくと、かよ
うかくかくの次第。母親、息子の手を撫で
さすり、「安心して結婚おし。あれはおま
えの妹じゃない。うちの父さんはおまえの
父さんじゃないんだから」
写真屋じゃない
若い男が初めて夜の女を買った。なにしろ
初めてのことであるから、いっしょにホテ
56
ルへ行っても、顔を赤くして、もじもじす
あなたが先
るばかり。やっと女に着物をぬがせてもら
彼女は飛びっきりの美人であったが、多
って、ベッドの上にいっしょに横になった
少おつむが弱かった。
まではよかったが、最初の一撃を加えたま
ある日、彼女は医者にかかった。「すぐ診
ま男は身動きもしない。そこで女は下から
察しましょう」と医者は言った。「服を脱
男の顔を眺めて、やさしくいった。
「ねえ、
いでください」「いいわ、先生」と顔を赤
あんた、動いてもいいのよ。ここは写真屋
らめながら言った「でも、あなたが先よ」
じゃないんだから」
ソクラテス
彼は、娘の頭を自慢している
「うちの娘はなにかというと、ソクラテ
スはどうの、アリストテレスがどうの、
楽しみ
間違い電話
プラトンがどうのと言うだ」「へぇ、アメ
もしもし、何々ですが、昨日、電話する
リカの男は嫌いなのかね?」
ようにいわれたものです
現実主義者
はあ…何々さんって、誰か電話した?そ
いささか歳を取りすぎたしかし金持ちの
う、皆知らないの
恋人を持っている若い娘が、交際をやめ
シンサで 来てくれと言われたのですよ
るべきか続けるべきかを筋の通った母親
はあ 誰も知らないのね
と話していた
初めての人でも いいんですか
「お母さん、彼ったら、私の亭主にする
もちろんですよ
にはちょっと歳を取りすぎていると思わ
保険証を持って行けば良いんですね
ない?」すると母親答えて「お前。あの
はい よろしく
ひとは、亭主にしないでおくにはちょっ
運転免許証は必要ですか
とお金持ち過ぎるとは思わないかい?」
はあ??いりませんが???何番にお掛
任せる
けですか
彼は娘の婚約者に言った。「娘はきみの
oooooですが
妻になることを承知したんだね。それで、
合っていますが、なんと言うところにお
きみたちは結婚式の日取りをもう決めた
掛けですか
のかね」「お嬢さんにお任せします」「教
ooローンでしょう
会でするのかね。それとも内輪で済ませ
るつもりかね」「お母様にお任せします」
「どうやって生計をたてるのかね」「お
「タバコ吸う?」
男が尋ねた「いいえ」「酒は飲むの?」
「いいえ」
「じゃ男遊びは?」
「じゃ何が
父様にお任せします」
もう大丈夫
楽しみで生きているの?」「うそをつく
真夜中。けたたましい電話のベルで、医
のが楽しみなの…」
者はたたき起こされた。電話に出ると、
すっかり取り乱した男の声が聞こえた。
57
「もしもし、もしもし、息子…息子が、
見せて下さいませんか」係「持参金一万
コンドームを飲み込んでしまって」「よ
ポンド以上の女の人は写真不要となって
ろしい。心配ご無用だ。すぐ行きましょ
います」
う」電話を切り、医者がパジャマから服
一夜の宿
に着替え終わった時、再び電話が鳴った。
自動車の事故のために、二人の友人が暗
医者が大急ぎで電話に出ると、先ほどの
夜の野道で途方にくれ、ついに人里はな
男の声がした。
「もう、けっこうです。先
れた一軒屋の未亡人のところへ一夜の宿
生。ほかのが、もう一つ見つかりました
を乞う羽目となった。それから一年、二
から」
人の友人が、出会ったとき、一人がこう
言った。
それが不思議
思春期の娘が母親に尋ねた。
「お母さん、
「覚えているだろう、去年の秋ぼくらを
どあしてお父さんと結婚するようになっ
泊めてくれた未亡人の婆さんを。あの婆
たの」母親が感慨深げに答えた「そうか
さんのことで、最近弁護士から手紙が来
い、おまえもそれが不思議だと思うよう
たよ」「へええ…」と、相手は赤くなった。
になったんだね」
「きみはぼくに内緒であの婆さんを楽し
ませたんだろ。どうだい」「うん、実はそ
いちばん偉いのは…
父親が息子をしかりつけた
うなんだ」
「その上、恥ずしがって、ぼく
「どうしておまえは、お母さんの言うこ
の名前を名乗ったんじゃなかったかね」
とをきかんのだ。おい。おまえは、おれ
「実はそうなんだ。それを怒っているの
より偉いとでも思っているのか」
かい」「いや、起ってしないよ。むしろ感
謝しているのさ。あの婆さんが最近死ん
がらくた市
ある小さな町の新聞に次ぎのような「お
で、ぼくに遺産を全部よこしたんだから
知らせ」が出ていた。
ね」
「来週水曜日の夕べに当婦人会は、教会
知らぬが仏
において『がらくた市』を催します。置
「ママ、パパがね、もしパパが生まれて
いておく価値は無いけれど、放棄してし
なかったら、あたしも生まれなかったっ
まう訳にもいかないものを処分するチャ
て言うの」
「パパわね、ご自分がちっとも
ンスです。どうぞ、ご主人をお連れ下さ
わかっていないことを得意になってお話
い」
することが好きなの」
意志が強い
先見の明
「奥さん、わしゃ三日間何も食べておら
レストランで夕食を取っていた夫婦。食
んで・・・」と乞食が言うと「まあ、私
後、給仕がコーヒーをすすめると、亭主
もあなたみたいに意志が強ければ…」と
がことわって言うのには「」いや結構。
その太った婦人が言った。
妻がブラックでコーヒーを飲むと、わた
しは一晩中寝られないのでね」
結婚相談所
客「持参金五万ポンドの女の人の写真を
問「女性の盲腸はどこにある?」答「入
58
って左側」
妻を持つ意味
すべての男は妻を持つべきである。とき
わかっていない
医者が病人に言った。「魚と肉はたべて
には、政府のせいにできないものも必要
はいけませんよ」すると病人は言った「そ
だから。
れが手にはいるくらいなら、もともと私
デザート
は病気にはならなかったはずなんだ」
結婚とは、延々と続く宴のようなもので
ある。唯一の違いは、最初にデザートが
擬音
ある人、客と話をしていて、うっかりブ
出ることである。
ゥッと一発やらかして、ごまかそうと思
生きてるよ
い、指で椅子をこすって音を出した。す
男が炭鉱の事故で大怪我をして、病院に
ると客が言った。「やっぱり最初の音が
収容された。ベッドのそばで、心配そう
そっくりですなあ」
にのぞき込んでいた男の女房に、診察を
終えた医者が告げた。「お気の毒ですか、
お亡くなりになりました」寝ていた男は
それを聞いて驚いた「ちょっと待ってく
れ、おれはまだ生きているよ!」「お黙り
あんたに何がわかるっていうの!」男の
女房がしかりつけた。
男と女
「男の人に何か言っても片方の耳から入
プロポーズ
ってもう片方の耳に抜けてしまう」女が
「じゃ、何人もの男にプロポーズされた
言った。「女になにか言うと」すかさず男
と言うんだな」亭主は怒り狂って問いつ
が言い返した。「両方の耳から入って口
めた。「そうよ、何人もよ」と彼女は答え
に抜ける」
た。「それなら、最初にプロポーズしたう
女
すのろと結婚してほしかったよ」「した
聞いた話をすべて信じることはできない
わよ」
けれど、それを他人に話すことはできる。
それが心配
「うちの主人たら、株で全財産をなくし
心以外は…
「今まで、あなたの心に触れた異性はい
てしまったのよ」隣の奥さんに話し掛け
なかったのね」
「ええ。でも、心以外は全
た「まあひどい。ご主人、とてもお気の
部触れられたわよ」
毒ね」「そうなの。わたし、彼が私まで失
ってしまうんじゃないかと心配していま
哲学者
世辞にも長けているという評判の老哲学
すの」
者にある女がたずねた。
「先生、この世で
最も好奇心をそそる存在は何ですの」
「そりゃ、キミ」と女をジロリと見て答
えた。「好奇心のない女だヨ」
59
っている夫に
それならば
三人の男の子と遊んでいた八歳の子供が
「右にきって!気をつけて!ブレー
飛び込んできた
キ!」同乗の母親は「左へ曲がって!静
「ママ、ママ」息を切らしながら尋ねた
かに走って!よもうちょっとスピードを
「あたし、赤ちゃんを産める?」「いい
あげて!」かんしゃくを起した夫は妻に
え」ママは静かに言いきかせた。
「あと六、 「いい加減にきめてくれよ。だれが運転
七年経たなければ産めないのよ」「いい
するのか。お前か。それともお前のお袋
わ、みんな!」子供は庭に駆け出しなが
さんか」
ら叫んだ。
「」ママとパパの遊びをしまし
「先生は、超能力というものの存在を信
ょう!」
じないでしょうね」「いや、信じています
とも」「具体的なご経験があるわけです
結婚の翌日、
友達が尋ねた。
か?」「妻の勘のよさなどをみていると、
「あのことは、さしずめピカソみたいだ
信じないわけにはいきません」
コルヌート
わ。すきかすきでないか、どちらかよ」
フランス人
サッカー競技場で、観客席の女性が猛烈
噛みがフランスをつくった。気候が温暖、
な勢いでレフェリーに向かって叫んでい
畑が肥え、牧草地が広く、河が多く、ぶ
る。
どう酒がうまく、海の幸、地の幸に恵ま
「コルヌート(妻を寝取られた男)、コル
れ…申し分のない国であった。
ヌート」脇の男が腹立たしげにいった。
紙は天の上からこのフランスを眺めて、 「静かにしてくださいよ。お願いですか
「しまった!」と後悔のほぞをかんだ。
ら。だいたい、そんなひどいことを、根
「こんなに素晴らしい国では、ほかの
拠もなしにいってはいけませんよ」「根
国々からねたまれてしまう!」
拠なしにですって?あれは、わたしの夫
そこで、紙は性の悪いフランス人をつく
ですよ」
って、そこへ住まわせた。
母と父の違い
母となること、これは事実の問題である。
マストロヤンニ
私にいわせると、女性には二種類しかな
一方、父となることは常に公衆の世論の
い。お金がなくても、男がいたほうがい
問題なのである。リドバス
いというタイプか、男がなくてお金があ
友人の息子のジミーを預かった婦人が
ったほうがいいというタイプだ」
食事の用意をした。「あなた、自分で肉が
「書留を受け取ったでしょう」「うん」
切れますか?」と婦人は、ジミーが悪戦
「誰から?」
「なんで、そんなこと知りた
苦闘しているのを見て言った。「ええ、で
いんだ?」
「あらっ、あなたって、好奇心
きます」「ぼくんちでもこのくらい固い
が強いのね!」
肉はよく出ますから」
運転
映画館で。「よく見えるかい、お前」「え
自動車の中、助手席の妻がハンドルを握
え」「すきま風は来ないかね」「ええ、暖
60
かですよ」
「椅子の坐り心地はどうだね」
「ねぇ、トム、入ったり出たり入ったり、
「とても楽ですわ」
「そうか、それじゃ席
どっちにするのよ。私いらいらするわ!」
を替わろう」
ちっぽけな国のスイス
おしゃべり
なのに、そのうえ二十二州に分かれて郷土
おしゃべりはダメだ。――ただし、相手が
愛からいがみあう。
交通係りのお巡りでなければだが
ホームに到着した長距離列車に、駅長は声
免許証
を限りに叫ぶ。「ジュネーブ、ここはジョ
女性ドライバーが駐車場から車を出そう
ネーブ!」それから、最後部の車両まです
としていた。彼女の運転はひどいもので、
っとんでいって、
「ここも、ジュネーブ」
前の車にぶっつけ、あわてて後退してこん
レマン湖の白鳥が群れをつくりだしたの
どは後の車に衝突するという始末。やっと
はいつか?
のことで道路に出たが、折から通りかかっ
日本の観光客が訪れだしてから。
た配送トラックに衝突してしまった。そこ
フランス料理
にその一部始終を見ていた警官が寄って
「フランス料理に、なぜデザートがつきも
きた。
「奥さん」警官が言った。
「免許証を
のなのか?」「不味い料理に、最後まで期
拝見します」「あなたってばかじゃない
待をもたせるためである」
の」女性ドライバーが答えた。「いまのみ
んな見てたんでしょ。あれで誰がわたし
ハダカになった人間の男を見て、象が言
に免許をくれると思って?」
った。「あんなもので、どうやって息がで
もう十分に
きるんだ?」
乞食
交通警官が違反切符をきろうとしたとき、
ひとりの婦人が乞食に向かって「だけど、
後部座席の女性がわめきだした。「ほら、
あんたの身の上話、機能あたしに話したの
みなさい。気をつけろってあれほど言っ
とまるで違うわね」「もちろんですとも奥
たでしょう。なのにあんたったら、あた
様。奥様はきのうの話などほんとうとは思
しの言うことを全然きかないんだから。
ってらっしゃらないでしょう」
車線はオーバーする、信号は無視する、
プロポーズ
スピードは出しすぎる。ほかにもいろい
それで、我々の結婚についてご両親の意見
ろやったじゃないの。だから言ったでし
はどう?
ょう、きっとつかまるって、あんた。え
「わかんないわ、父はなんにも言わないし、
え?言わなかったの?」「このご婦人は
母は、母は、反対するために、父が何か言
どなたですか」と警官はきいた。「家内で
い出すのを待っているのよ。
すよ」「なるほど、よろしい。行って結構
いらだち
です」と警官は言った。「これ以上さらに
結婚式の夜、マリーにとっては、始めてで
罰を受ける必要もないでしょう」
あった。彼女はやり切れなくなって、突然
お客さん
警官になってしあわせだという者も
叫んだ。
61
ときにいる。ある百貨店の売り場主任
が転職してお巡りになった。その理由
をきかれて彼は言った。「給料や勤務
時間はまあまあだけど、最高にいいの
は、いつもお客さんのほうが悪いって
ことですよ」
亭主の職場
これが最後の二十ドルなのよ」泥棒の
妻がぐちをこぼした。「あんた、早く
お金をなんとかしてくれなくちゃあ」
人が答えた。「おや、日雇い労務者で
すって」弁護士がばかにしたような口
調で言った。「それてあなたはどう考
えますかね。日雇い労務者というのは、
この社会でどういう階層に属するか
ということについて」「もちろん高い
階層にあるとは思ってませんや」証人
が言った。「でもね、私は、私のちち
よりはりっぱな階層だと思っていま
すよ」「あなたの父上の職業は何だっ
「わかってる、わかってるよ」泥棒が
答えた。「だけどお前、銀行が閉まる
まで待ってくれよ」
まだ早い
暴行罪で訴えられた男、法廷で有罪か
無罪か申し立てるように求められた。
「それはちょっとご猶予願いたい」そ
の男は答えた「証拠を聞いてからにし
たいと思いますので」
熱弁
たのですか」弁護士が尋ねた。「彼は
口先だけの男でした。弁護士だったん
です」
嫌味
「あなたは、あなたの立場にふさわし
い知性の持主だと思いますが」反対尋
問で、はっきり敵意をもっている証人
に手を焼いた弁護士が、皮肉たっぷり
に言った。「宣誓してなければ」証人
が言い返した。「私もあなたのそのお
若い新米の弁護士が、ある農民から訴
訟を依頼された。それは鉄道会社を相
手取ったもので二十四頭ものぶたが
輸送中に失われたというものだ。
若い弁護士は張り切った。陪審員たち
に深い印象を与えようと大見得を切
ったのだ。「」陪審員のみなさん、二
十四頭、二十四頭ものぶたですよ」彼
は十二人の陪審員席を思いをこめて
眺め渡した。「じつに、みなさんの二
倍のぶたなのです」
世辞をそっくりあなたにお返しでき
るのですがね」
最後の五セントまで
何年もかかって一向に埒のあく気配
がみえない訴訟にうんざりした実業
家が顧問弁護士に訴訟を取り下げる
相談をした。「なにをばかな」と弁護
士は一喝した。「あなたの持っている
最後の五セントを使い果たすまで、徹
底的に闘うべきですよ」
被告の弁護士は最後の弁論で陪審員
最低の職業
その証人は、原告側の弁護士に手荒い
尋問を受けていた。「それで、あなた
の職業は何だと言いましたかな」弁護
士が尋ねた。「日雇い労務者です」証
にこう訴えた「被告は白痴のような話
し方をし、白痴のように振舞っており
ます。しかし、陪審員の皆さん欺かれ
てはなりません。彼はほんとうに白痴
なのです」
62
無罪
途方にくれた様子でその男は法廷に
立っていた。彼はどうなっているのか
まったく理解できない様子だった。弁
護士が言った。「あなたは釈放された
んですよ」「えっ、そりゃ、どういう
ことなんで」「つまり、あなたはもう
自由だってことです。あなたは無罪に
なったんです」「おう、それはそれは」
男が言った。「それで、あっしが盗ん
動物のほうが人間よりも賢い。
だものはどうなるんでがしょう。あっ
しが持っててもいいんでしょうか」被
告が尋ねた。
正義は勝つ
それは極め付きの難しい裁判だった。
弁護士は秘術をつくして闘い、遂に勝
った。
弁護士はさっそく彼の依頼主に電報
を打った。「セイギ ハ カッタ」す
ぐに返電が届いた。「タダチニ コウ
ともないだろう。
ソ セヨ」
涙にぬれたパンでも、ただ冷たくて味気
ショウペンハウエル
猫はいろんな病気にかかりやすいが、不
眠症だけにはならない。 クラッチ
詩こそは、詩聖ミルトンの目が見えなく
なったきに、見たものだ。マーキス
夢のように作られて、短い人生は眠りで
おしまい。シェィクスピア
人生を夢見ていないのなら、絶望するこ
アーノルド
希望もなしにパンを食べるのは、ゆっく
り飢え死にすることだ。 バック
自然のすべては、「食べる」「食べられる
という動詞の活用にある」インジ
小心のためにしらふの男は酔っ払う。酔
っぱらって、勇ましい男は小心になる。
チェスタトン
ないのよりまし。
パーカー
人生の大目的は、知ることではなくて、
することにある。
ハクスレイ
昨日は取り返せないが、明日は勝っても
負けても我らのものだ。ジョンソン
分別のある魚は下流へ、ない魚は上流め
同じように、しかし別々に人は生まれる。
ざして泳ぐ
フロム
ナッシュ
薔薇はかいで眺めるだけにせよ。摘み取
太陽も月も、雲でかせげる
られなければ、棘に刺されることもない。
ィクスピア
ヘイ
夏の花は、秋に燃え立つ。
人に知られずひっそり咲いて、むなしく
ィヴンソン
すがれる美しい花がまことに多い。グレ
夜になる前に、昼をほめるな
イ
ー
現在を静かに楽しんでいるという点では、
63
シェ
ステ
フラ
暗闇の中で娘は兵士にささやいた。
どうしてですか?」「最近、ねらいが正確
「十五分以内にやめないと、ほっぺたを
になってきたのです」
ぶつわよ」
意志の強さ
画家が、当惑顔のモデル嬢にたずねた
ジェノバの病院で「驚きましたね。もう
「男性の前でヌードになるのは、はじめ
助からないと思ったのに。よくなったの
てなのかい」
「そうじゃないけど、男の人
は、あなたの意志の強さのおかげです
が脱がないのは初めてだわ」
よ。」「先生、治療費を計算する時も、そ
のことお忘れなく」
「ミーナ、愛しているよ。結婚してくれ
高名な外科医
るかい?」
「いいえ、でも、見直したわ」
に、患者がお追従まじりでいった。
「見直したって、なにを?」
「あなたは、
「先生ぐらい有名になると、この世に敵
あんがい趣味がいいってことをよ」
も多くなるでしょうね?」医者はまじめ
くさって答えた「いいえ、あの世にいる
ある夫人が、仲好しの友達にこぼした。
敵にくらべたら、物の数にもなりません
「うちの主人ときたら、ひどいのよ。も
よ」
う一年以上も前から耳が遠いんだって。
昨日初めて、そういうのよ」
七歳の息子が父親に尋ねた。「お父さん
リビエラ海岸で「昔は付けるものが無け
は、なぜ、お母さんと結婚したの?」
「お
れば、海水浴をしようとは考えなかった
前までそれをきくのか?」
ものだが、最近はミニつけるものがなく
ても堂々と出てくる」
同意
手術が失敗
「思い出すね、夫婦そろって『ハイ』と
して、巨万の富を持つ M 氏が死んだ。遺
同意したのは、結婚式の日が最後だった
産が配分された。その時、外科医かの高
よ」
額な請求書が届いた。あまりの高さに抗
議をした。
長所
「結婚したくらいなのだから、ご主人に
医者はいった。「もしも、手術が成功して
も長所があったのではないですか?」
いれば、貴方たちには遺産ははいらなか
「はい、ありました。でも、わたしがみ
ったのですよ」
んな使い果してしまったのです」
盲腸
真夜中に医者は叩き起こされた。「もし
狙い
「判事さん、もう、わたしは女房とはい
もし、家内が急性盲腸炎のようなので、
っしょに暮らせません。とにかく乱暴な
すぐ来てください」「でも、おかしいです
んです。十年前から、あたしの頭めがけ
ね。お宅の奥様は急性盲腸炎になるわけ
て、お皿をぶっつけるんですから」
「それ
がありません。きっと、単なる腸炎でし
でいまごろ、離婚申請をするというは、
ょう何か腸の薬があったら飲ませて様子
64
をみてください。
」
「いいえ、ほんとうに、
はすぐ戻ってくるから」と理髪師は子供
急性盲腸炎らしいのです。ひどく、苦し
をなぐさめた。すると、子供はこう答え
んでいるのです。すぐに、来てください」
た。「あれはぼくのパパじゃないよ。道ば
「でもね奥様は昨年その手術をしている
たでであったら、『髪を刈りにいこう』っ
のですよ。二個盲腸を持っている人なん
て、ここへ連れて来たのだ」
て、聞いたこともありません」
「そりゃ、
若い娘が産婦人科の診を察を受けにきた。
二個の盲腸を持っている人はいないかも
医者は明瞭に妊娠の兆候を認めた。「結
しれませんが、二人目の細君をもらう男
婚しているのですか」「いいえ」「では、
はいくらでもあるじゃありませんか」
恋人がありますか」「いいえ、恋人もあり
ません」医者はそう聞くと、すぐに立っ
幽霊
ある大外科医に誰かが聞いた。
「先生、あ
て窓をあけ、夜の空を眺めた。娘は変に
なたは幽霊をお信じになりますか」する
思って、そとになにかあるのですか」と
と外科医はこう答えた「幽霊か、もしも
聞いた。医者が声を潜めて答えた。「二千
わしが幽霊を信じていたら、もうずーと
年前にもこうしたことが一度ありまして
前に、商売を変えていたね」
ね。その時は東の空から星があがったの
です。今度も見逃しちゃいけないと思っ
妻が妊娠し
、産婦人科をおとずれた。診察の後、何
たのです。」
か極く小さな字を印刷してある紙を妊婦
視力低下
の下腹部に貼り付けた。夫はその紙の話
中年の女の患者が訴えている。「先生近
を聞くと、奇妙に思って読んでみようと
頃とても目が悪くなってしまいました。
したが、小さすぎて読めない。そこで、
トイレに行っても、自分のオシッコさえ
拡大鏡を使って読んだ。『この字が拡大
よく見えないのです。」医者は頷いた。
鏡を使わずに肉眼で読めるようになった
「では、この薬を毎日飲んでください」
ら、すぐ病院にきてください。そろそろ、
「これを飲むと目がよくなるのですか」
生まれます』
「いいえ、目のほうは良くなりませんが、
オシッコの色が濃くなります」
立派な身なりの紳士がかわいい男の子を
連れて、パリの大きな理髪店に入ってき
た。そして、大急ぎの用事があるので、
自分を先にやってほしいと言った。髪が
夜が過ぎて
できあがると、紳士は「じきにもどって
いった。娘は家に帰ってきた.時計は四
くるから」と言って。子供を置いて出て
時を指していた
行った。
彼女の目からは無邪気さが消えていた。
子供の髪がすんで、一時間たち二時間た
けれど、彼女の顔には微笑があった
ったが紳士はもどって来ない。子供はポ
知識を得た者の満足の微笑が
ツネンと待っている。
「大丈夫だよ。パパ
65
患者を、息子の僕が全快させたんだから」
主観的事故
医師は妊娠している娘に向って言った
「よく我慢してくれた患者だよ。あの人
「保険が利くのは、本当の病気とか事故
の払いでお前が勉強もできけば、医者に
だけなんですよ」
もなれたんだからな」と父親が言った。
娘は 不正請求扱いに抗議した。「だって
棒読み
わたしが妊娠したののも事故なんです」
報告者が長いこと、もそもそと文書を棒
読みしている。聴衆の後ろの席から
美しい見習い
「もう少し大きい声で願います」と声が
看護婦が医者のところへやって
かかった。
来た。「先生、あの患者はとても
「失礼。誰も聞いてはいないとおもった
脈が早いんですけど、どうしたん
もので…」
でしょう」
医者は首を竦めて答えた「今度脈をとる
ときは、胸のボタンをかけなさい」
費用
あればいい
の・のどに骨が刺さりました。幾ら掛か
オールドミのスのジエーンが、若いペギ
ってもいいですから、と・取って下さい
ーに言った。
大変難しい手術は成功した
「私は若いころを思い出すだけでも腹が
お・お幾らですか・・・
立つわ」
貴方が、苦しかった時に考えた金額の半
「何があったのですか」「何もなかった
分でよろしいですよ
のよ」
「私きのう、ひとりで本を読みながらそ
びっこ
外科の教授が講義する
れは静かな夜を過ごしたわ
「この患者の場合は左足の筋肉が萎縮し
「私にもいつかそんな夜がやってきそう
ている。だから左足は右足よりも短くな、
で心配だわ」
そのためにびっこを引く。君だったらこ
の場合どうするかね」
教授は一人の学生の顔を見る。学生「私
処女
もーーびっこを引きやしないかと思いま
神父が、声を張り上げ、熱のこもったお
す」
説教をしていた。
「セックスは醜い。私は、今日、純真な
乙女だけに話をしたい。今、ここに集ま
父親が有名な
医者。その息子も医者になった。ある日、
っている人の中で処女の人は全員立ちな
息子は父親に自慢した
さい」
「親父が十年 かかっても治せなかった
教会はしんと静まり返って誰一人建ちあ
66
がる者はいなかった。しばらくして、セ
上ってきた。それを見ていた近所の人が、
クシーな金髪の女が子供を抱いて立ちあ
猫の持ち主に電話をした。
がった。「私は処女と言ったのだ!」神父
「あんたの猫が、気が狂ったようにかけ
は怒って女に言った。
「神父さん、二ヶ月
ずりまわっているよ!」
の女の子に自分で立てっていうんです
「そうなんだ。去勢したもんだからね、
か?」
婚約の解消に走り回っているんだ。なに
しろ壮んな奴だったからな」
お次が問題
セリエがエドナに言った。
考えすぎ
「あなた秘密を守れる?」
「守れるわ。で
有名な医学者が、講義のとき、一人の女
も次の女ヒトが守れるかどうかはわから
子学生に向かって尋ねた
ないわ」
「刺激されると六倍の大きさになる人間
の器官は何だか言ってください」
女子学生は真っ赤な顔になった。
オールドミス
のキャロルがジーンに得意げに言った。
「先生、その質問は男子学生が答えるほ
「私は、もう何千回と結婚してくれって
うが適当でないでしょうか」
頼まれたわ」
教授は男子生徒のほうを向いた。しばら
「知っているわ、頼んだのはあなたのお
く躊躇した後で、彼は答えた
父さんとお母さんでしょ」
「人間の瞳孔です」
「けっこう」と教授は言い、冷笑を浮か
べて女子学生のほうに向き直った。
「あまり大きな期待を持って、結婚生活
古い事件
「ねえ、あなた。今日は私たちの四十回
に入ることのないようにおすすめしま
目の結婚記念日よ。なにかお祝いをしな
す」
くちゃ。にわとりでもしめしょうかね」
朝起きて、農家の妻が夫に言った。
日進月歩
「なんて事を言うのだ。
」と夫が答えた。
患者が夜眠れなくて困ると訴えた。医者
「四十年も昔のことで、どうしてにわと
は、寝る前になにか食べるようにしなさ
りが首をしめられなくちゃなんねえん
いと答えた。
「でも先生」患者が抗議した。
だ?」
「二ヶ月前私が診ていただいたときには、
寝る前にものを食べてはダメだとおっし
ゃったじゃないですか」
忙しい
オス猫が狂ったように路地を走り回って
「あなた、医学は絶えずめざましい進歩
いた。非常階段を駆け上り、またすごい
を遂げつづけているんですよ」医者は答
勢いで降りてくると、今度は、地下室に
えた。
すっ飛んでいき、すぐ、横っ飛びに駆け
67
秘訣
おお神様
健康を保つ唯一の道は、食べたくないも
医学生が夏休みの間アルバイトをした。
のを食べ、飲みたくないものを飲み、そ
昼は肉屋の助手として、牛、ブタなどの
して絶対にしたくないとおもっているこ
屠殺から解体を手伝い、夜間は近くの病
とをすること、ただそれだけのことであ
院で働いた。両方とも長い白衣を着てす
る。
る仕事で、若者はそれを好都合だと喜ん
でいた。
しょげる訳
「元気を出したまえ」と医者がすっかり
ある世、彼は病院で患者を手術室に運ん
しょげている患者に言った。「私も昔こ
だ。
の病気をしたことがあるんだ」患者は力
患者は神経質な女性だったが、ふと運び
なく顔をあげて言った。
手を見上げてびっくりして金切り声をあ
「でも、先生は、ほかの医者にかかって
げた。「おお、神様、この人、肉屋だわ」
たんでしょう?」
礼
見知らぬ男が医院に立ち寄って医者に言
そのかた
夜遅くまで働いて医者が帰ってきた。今
った。「あなたの治療にお礼を申し上げ
夜はもう何も起こらないでくれと願いな
たくて立ち寄りました」「でもきみはわ
がら。しかし、ベッドに入ったかはいら
たしの患者じゃないが…」
ないかのうちに電話が鳴った。
「そうです」と見知らぬ男は言った。
「わ
医者は妻に言った。「私はまだ帰ってい
たしの伯父が患者でした。あなたのおか
ないつて言いなさい、いいか」
げで、わたしは予想外に早く遺産にあり
「ドクターは居ません」妻が電話に答え
ついたわけでして…」
た。
「あっそう」電話の声が言った。
「私、お
GOK
宅の先生に診てもらっているんですけれ
ある医師がある病院を訪問した。病室を
ど、急に胸が痛んできたので、お帰りに
見学したが、患者のベッドに GOK と書か
なったらすぐいらしてほしいんですけれ
れた札があるのが目にとまった。どうい
ど」医者は妻に、そういった場合の処置
う意味かと尋ねると、案内の医師が答え
法をささやき、妻がそのまま電話に告げ
た「神のみぞ知るGod only knows の
た「そうすれば、まもなくきっとよくな
略ですよ」
りますよ」
「どうもありがとう」相手の婦人が言っ
大丈夫?
た。「ところで、あなたに指示なさった方、 医者は患者の方に身をかがめて彼の胸を
ちゃんと医師の資格を持っているんでし
トントンとたたき耳をすました。
ょうね」
患者が「」先生どうしてそんなことをな
さるのですか」と尋ねると医者は答えた。
68
よくはわからないんだがね、でもよく映
並んで比較して泣くのは自分のほうと、
画の中でこんなふうにやっているじゃな
確信しているが、と不審に思わざるを得
いか」
なかった。
さては!」と閃いたことがあった。
医者
15年も前だが、若いH君が、股白せん
健康がはびこることを恐れる唯一の人間
の自己診断遅延で長期放置があった。
は医者である
或るとき、完治目前で、口が軽くなって
「みんなに迷惑掛けたけど、、」とどこが
言った」とか。今でも、トイレで思い出
小猫ちゃん
す度に笑いが止まらないそうである。
家庭の平和である。暖炉の火はゆらぎ、
N君の場合、幸いそうではなく、オラン
妻は編み物にいそしみ、夫はコニャックを片手
ダの小便器が高すぎることに原因があっ
に夕刊に読みふける
た。
「ねえ、あなた。猫って、嘘吐きで、偽
スキポール空港も高かった。最初は嘔吐
善者で、不実で、泥棒で、それに、とっ
の場所かと思った。どこか踏めば、水が
ても残忍なんですって」
出るかと探した。でも、民芸館はひどか
「そうだよ、小猫ちゃん」古典とは
った。バンドのすぐ下に器がある。つま
みんなが読むべきだとは思っているが、
り、指で上に向けての放水となる。
誰も読まない本、それが古典だ
真剣な行動はスキが多い。隣の大きなオ
バラ
ランダ人にはゆっくりと完全観察されて
「失楽園」を著したイギリスの詩人、ミ
しまった。
ルトンは後に盲目になった。
日本語で「おー!手品ですね!」と言わ
彼は眼が見えなくなってから結婚したの
れてしまった。
だが、相手は、名だたる口うるさい女だ
指から水を出して見せていると思ったら
った。
しい。
ある時バッキンガム公が、彼女をバラに
たたえたことがある。
「私は、ごらんのとおり眼が悪いので、
『足が悪いんです
色や形はわかりません」
、先生』
詩人は答えた。
『どれ、みせてごらん』
「でもきっと閣下のおっしゃるとおりな
男がズボンをまくりあげると、言うに言
のでしょう。
われぬ汚れた足が現れた
私は毎日、彼女のトゲを感じていまから」
『いや、これは。足を洗っておくことはで
きなかったものかね。
N君がトイレに行くたびに、大の小部屋
懸けてもいいが、こんなきたない足は町
に入るのである。
中探してもみつからないね』
69
男はにゃりとした。
『あなたはだいじょうぶですがね、
『その懸けは負けですよ、先生。もう片方
われわれ医者はだめです』
の足をいまお見せします。』
『成功の可能性はどうでしょう、先生『
ある医者が、天国の門の前にきた。生きて
「ああ、わたしはこの手術がきょうでもう
いるときにはどういう職業だったか、と、
97 回目ですからね」
天国の門番をしている聖ペテロが尋ね
『それで安心しました』
た。
「うん、一度は成功させないとね」
『医者だったんです』
『ああ、それなら』と聖ペテロは答えた。
手術台に乗せられた患者は、準備を眺め
『ここはちがうよ。納入業者がはいるの
ているうちに段々不安になってきた
は裏口からだ。』
『興奮して申し訳ありません。なにしろ
はじめての手術なので』
医者は、なだめるようにその肩をたたい
校長室の電話
が鳴った
た。
『もしもし、生徒のライトナーは、今日学
『わしもだよ』
校を休みます。
風を引いたものですから』
医者の助手が机の上に一枚の書類を置い
「そちらはどなた?}
た
『ぼくの父です』
『この死亡診断書に署名をお願いしま
す』
『ちょっと待って。さっきもう署名した
有名な教授
が、金持ちの患者を治療した。
んじゃなかった?』
『先生、どうやってお礼の気持ちを表し
『ええ、でも先生は<死亡の原因>という
たらよいでしょう』
欄にご自分の名前をお書きになったんで
医者は答えた
す。
『フェニキァ人が貨幣を発明して以来、
その疑問は意味を失ったと思いますが
『きょうは三日前よりも具合が悪そうで
ね』
すね』と医者は不思議そうに言った。
『毎日タバコはせいぜい三本から四本吸
うことにしなさい、といったでしょう?
そのすすめを守らなかったのですか』
盲腸
『盲腸を取らなければいけませんな』
『守りましたよ』と患者は不平を言った。
『盲腸がなくても生きていけますか、先
『でも、わたしはタバコを吸わない人間
生』
なので、とてもつらかったのです』
とびっくりした患者が尋ねた
70
外科医は手術前になぜゴム手袋をはめる
効きめ
んだね?
老年の紳士が二人、茶飲話をしていた
『あとで指紋が見つからないようにする
「覚えているかね。戦争中のことだが、わ
ためさ』
しらが淫らな欲望に悩まされぬように
軍隊のコーヒーに何か薬が混ぜられてい
たのを
体位
先生、私たち夫婦は後背位しかできなく
「覚えているけど、どうしてだね?
なったのです。
「どうも、効き目が現れて来たようなん
不思議な症状ですね。例えば、こういう
だ
のはどうですか?
でも、それは、二人ともテレビを見るこ
挑戦
とができますか?
老人が若者と、どちらが男らしいか賭け
をした
老人は飲いぷりでも、食いぷりでも若者
妊婦
大変セクシーな女性が混んだバスに乗り
をしのいだ
込んで来た
最後に売春宿に行き、乳房や尻を見せつ
空いた席が無いと分かるとりっぱな紳士
ける女達の前で
に話かけた
老人はペニスを結んでみせ、
「席を譲っていただけません?私妊娠して
若者に同じようにやってみろ、と言った
おりますの
どうぞ」と譲った紳士は、みごとなそのプ
七十回
ロポーションをながめながら
ある老人が、一晩に七十回できると友人
「いや、まったく妊娠されているとは、分
に吹聴していた
かりませんなー」と褒めた
彼は、一回したあとシックティー・ナイ
ハイ、十五分前に妊娠しましたので
ンを一回するのである
イタリア女の一生
老年
ダヌンチオの弟子と自称する男が言った
老年とは、かって一晩じゅうやっていた
イタリア女は、生涯に四度頬を染める
ことを一晩じゅうかかってやる、という
まず初めてするとき。
ことである
次は、初めて夫以外の男とするとき。
その次は、初めて金をもらってするとき。
日記
四度目は?
ある男が二十歳になったとき、日記にこ
初めて自分が金を払って、してもらうと
う書いた
き、だ。
「今日、二十歳になった。両手でやって
もペニスを折り曲げられない
71
三十歳になって、またこう書いた「今日、
象はひと声うなって、飛び上がった。
三十歳になった。両手でやってもペニス
小男は一万ドルをせしめた
を
レジーはがっかりした
折り曲げられない」
しばらくして、また名案がひらめいた
四十歳、五十歳、五十五歳の時も同じよ
象は頭を上下に動かすことはできても左
うに書いた
右に振ることはできないと思いついた
六十歳になって「今日、曲げられた」と
また、広告を出した
書いた
「象の頭を上下、左右に動かすことがで
「私は強くなったに違いない」
きた人に一万ドルを払う」と
多くの人がやって来て、試みたが、うま
くいかない。
名案
彼は象を一頭持っていた。貧乏になって
すべてが、うまく行きはじめた頃
来た彼は名案を思いついた。
見覚えのある青いコンバーチブルが家の
サーカスで、三本の足を挙げて、一本で
前に止まり、あの小男が降りて来た
立つのを見たことがあった。
「象の首を上下左右に動かしたら、一万
そこで広告を出した。
ドルくれるというのはほんとうかね」
誰か彼の象に、脚を四本とも上げさせた
ほんとうだ」
「ただし、前もって百ドル払
者に一万ドル払う、正し、成否に拘わら
っていただく」
ず前もって、百ドル頂戴する」というも
小男はまた、ゴルフ・クラブを取り出し
のである
た
近くから、遠くから、大勢の人がやって
男は象の真ん前に歩み寄った。
きて、様々に試みたがうまく行かなかっ
「おれを覚えているかい?」と小男はた
た
ずねた。
そんなある日、青いコンバーチブルが家
象は頭を上下に振って、うなずいた
の前に止まり、小柄な男が降りて来てレ
「あれをもう一度やってほしいか?」
ジーに話しかけた。
象はいそいで頭を横に振った。
象の脚を四本とも上げたら一万ドルくれ
るというのはほんとうかね?」
地獄の門
「ほんとうさ。でも前もって百ドルいた
若くてハンサムな神父のいる教会の日曜
だくがね」
礼拝はいつも盛況だった。
小男は車のトランクを開けて、ゴルフの
婦人たちはその顔を見ただけでうっとり
クラブを一本取り出した。
としていた
小男は象の真ん前に歩み寄り、眼を覗き
「さて、お集まりのご婦人方、いすにす
込んだ
わったら、必ず脚を組んでください」
それから象の後ろに回り、クラブで思い
と神父は言った
切り、象の睾丸をひっぱたいた。
ややあって、厳かな口調で
72
「皆さん、地獄の門は閉ざされました」
え、なんとか」と医者
と言って、おもむろに説教を始めた
「きのうはじめて、患者さんに「あなた
は病気ではありません」と言うことが
集会
できました」
司祭が、信者たちに集会の知らせをした
徹底した夫
「みなさん、礼拝の後、
「はじめて母親に
離婚訴訟で細君が主張した
なった女性の会を開きます。
「判事様、私たちの長い結婚生活を通じ
どなたでも、初めての母親になりたい方
て、夫がわたしに声をかけたのはたった
は、私の部屋に来てください
四度でした。
」
判事は細君の主張を容れて、細君に四人
の子供の後見を認めた。
一生の中に何千回も蚊を叩くつもりで、
公園で
自分の顔を叩くのでしょうか
夜の公園でうっとりした声が漏れた。
同じように、慌てて入たお風呂が、熱す
「これが愛なのね」「いやー、これは性だ
ぎても、我慢してしまうものです。
よ」
そうしたある夜、ペニスの火傷をしそう
セルフサービス
になって、冷蔵庫を見ましたが冷えた牛
生活保護センターで、保護司が「結婚し
乳だけしかありません
たことがありますか」
しょうがないので、浸けてひやしていま
「二度ありますだ」保護司「子供さん
した
は?」「六人ですだー」
通りかかった妻が見つけて「そうなの、
「お父さんは同じですか?」「ちがいま
そうやって補充するの」
すだー。はじめの二人ははじめの亭主、
次の二人は二度目の亭主。そして後の二
人は自分でつくりましただー」
新しい体位
新婚旅行でナイアガラのホテルに泊まっ
た二人、一週間も部屋に閉じこもったき
新規開業
りで食堂へも出てこない。
たとえ医者でも、新規開業はものいりだ。
八日目の午後、はじめてテレビでも見よ
家賃は高いし、改造費、設備費は
うと思った夫、新聞のプログラムを開い
莫大だし、新聞の折り込み広告だってバ
て、新婦に相談した。
カにならない。そのうえ、客はなかなか
「ね、キミ、今日の午後は“北極潜行”
つかないし。
がいいか、それとも“月世界探検ロケッ
でも、やはり医者だから、一年もたてば、
トがいいかい?”」するとバス・ルームで
事業も安定する
シャワーを浴びていた新婦が、悲鳴にも
「どうですか?」と融資した銀行家「え
似た声で答えた。
73
「もう、これ以上、新しい方法でなさろ
すぎるって言ったからさ」
うとするなら、私は、母の所へ帰らせて
入れ知恵
いただきますわ」
娘「彼はとても親切よ。わたしが欲しい
こびと
っていうものは何でもくれるの」
アフリカへ狩猟にやって来たアメリカ人
母親「それはお前のねだり方が足りない
夫婦が、ある日ピグミー族の部落に泊ま
からだよ」
ることになった。しかし、小さいピグミ
カマトト
ー族の小屋に二人一緒に寝るこしができ
二十四時間の休暇で上陸した水兵が若い
ない。しかたなく、二人は別々の小屋に
娘と知り合った。彼は女に飢えていたの
おさまったが、夜もふけたころ、一つの
で、初心そうな娘を無理矢理ホテルに連
影が夫人のベッドへ忍びこんで行った。
れこんだ。「もし、九ヶ月たって何かが起
翌朝、夫が寝不足の顔で夫人にぼやいた。
こったら」と彼は別れに臨んで娘に云っ
「マリー、ゆうべは小屋が小さく寝苦し
た。「その結果にファニーっていう名前
かったろ?ピグミー族ってあれほど小さ
をつけないか?ぼくはその名前が好きな
いとは思わなかったね」すると夫人がこ
んだ」
れまた寝不足の顔で答えた。「ゆうべあ
「もし三週間たって何かが起こったら」
たし、ピグミー族が小人だとは、とても
と娘は答えた。「その結果を梅毒ってお
信じられなかったわ」正気の沙汰
呼びなさい」
ある精神病院の医者が患者に「大分よく
女はパリ
なったようですから、もう四、五日すれ
「どこへ行くんだ。旅行鞄なんか持って」
ば奥さんのもとに帰れますよ」と嬉しか
「一週間ばかり、パリへ行ってくるよ」
るべき知らせを告げた。
」
「ほう、しかし、折角パリへ行くのに、
「じ、じょうだんをおっしゃっちゃ困り
君は奥さんを連れて行かないのかい?」
ますよ。先生」
「不粋なことをいうなよ。ミュンヘンへ
とその患者がにがにがしく言い捨てた。
行くのに、ビールを持って行く馬鹿はい
「女房のところへ帰るなんてー先生、あ
ないだろ?」
なたはぼくがまだ気が狂っているとでも
愛情の現象
思っているですか?」
ある日のヌード・クラブで。木陰で二人
人生の教室
がささやき合っていた。
美徳を学ぶのは母の膝である。そして悪
「ぼくがどんなにあなたを愛しているか、
徳は他の女性の膝で教えられる。
あなたにはお分かりにならないでしょ
抱き合わせはごめん
う」「ううん、分かってますわ。ちゃんと
「君はどうして婚約を破棄したんだ
それが手にとるように見えますわよ」
い?」
女子学生
「ぼくらが住むアパートを探しに行った
日頃の遊びがたたって、卒業試験の答案
時、彼女のお袋が、これじゃ三人には狭
を白紙のまま出したマギー。ついに決心
74
して教授の部屋へ行った。
たしは、あの娘の母親ですよ!」
「先生、及第点を付けて下さい。先生の
女の脚
おしゃることは何でもしますから」
田舎からはじめてニューヨーク見物にで
白い豊かな胸元を出し、ありったけのコ
てた年寄り夫婦。亭主がよそ見して歩い
ビを見せて云った。
ているうちに街頭に衝突してしまつた。
「なんでもするって」教授は、鼻メガネ
「とっつぁん、変な目つきで娘っ子を見
を掛け直して、マギーの顔から胸を見な
るのはよせってば。こっちが恥ずかしい
がら云った。
「はい、卒業させてくださる
じゃねえか。女の脚を見たことがねえみ
なら、なんでもしますわ」こういって、
てえでよ」
マギーは目をつぶって、ぷっくりふくれ
「そういえば、そんな気がしてたよ。お
たクチビルを差し出した。
っかあ」
教授はおごそかな声で「それじゃ、勉強
成功の秘訣
しなさい」
さる富豪が自分の成功談をひとくさり。
まだ先が長い
「わたしがはじめてニューヨークへ来た
一人の青年が宝石店に入ってきた。真珠
時は、わずか一ドルしか持ってなかった
の指輪を出し、それに名前を彫ってくれ
のです。」
と頼んだ。
「どういう御名前を?」と店の
事業に失敗した男が、目を輝かして聞い
主人が聞く。
た。「ほう。その一ドルを何に等しなさつ
「トムよりベティーへと彫って下さい」
たんですか」事業家が得意そうに葉巻を
と青年は照れくさそうに云った。
くゆらした。
店の主人は指輪から顔を上げてしばし青
「それで電報を打ったのです。家へね。
年を見つめてから、諭すように云った。
金を送れと」
「悪いことは申しません。ただ、トムよ
とんだ親切
りと彫っておいた方が賢明です」
「失礼ですが、このバスはハイド・パー
ク・コーナで停まりますか」「ええ、停ま
この女にしてあの娘
ある劇場のロビーで。タバコの火を借り
りますよ。私から目を離さないでいて、
に来た男が、やがてしたり顔で長嘆息し
私が降りる一つまえで降りなさい」
た。「全く、いまどきの若いもんには、あ
追突の原因
きれてものがいえませんな。向こうにい
怠け者のタクシー運転手。煙草の灰を落
るあの革のジャンパーにブルージーンズ
とすために、いつも追突ばかりしていた。
をはいた断髪のあれは、いったい男です
六大陸と女性
か、女ですか!」
「失礼を!あれはわたし
14-18 歳まで。アフリカに似て、一部は
の娘ですがね」
「はっ…?いやどうも、こ
処女地であり、一部は探検ずみ。18 歳か
れは失礼申し上げました。あなたがまさ
ら-24 歳まで。オーストラリアに似て、
か、あのお嬢さんのお父さんだとは思い
開拓地は高度に発達している。
ませんでしたので」
「な、なんですと?わ
24 歳から 30 歳まで。アメリカに似て、
75
高度に技術的で、たえず新しい方法を求
ねた。「ブランコ街なら、男がほしいもの
めている。30 歳から 35 歳まで。アジア
をすべてもっている女性がどこの家にも
に似て、じっとりと濡れて暑く、神秘的
いるよ」男は一軒一軒たずねてまわった
である。35 歳から 45 歳まで。ヨーロッ
が、いけばいくほど、ますますひどいア
パに似て、荒廃してしまったが、場所に
バズレがでてくるのだった。もう望みが
よってはまだまだおもしろいところがあ
ないとあきらめかかったとき、男がほし
る。45 歳から 65 歳まで。南極大陸に似
いものをすべて具えた女が出て来た――
て、だれでもある場所は知っているのだ
立派なヒゲを生やし、筋骨たくましく…
が、だれもいきたがらない。
手動洗濯機
夫が妻に向かってささやいた。「さあ、合
墓碑銘
ある男が、まだピンピンしている妻に墓
いしおうよ」妻は答えた。「ジョージ、そ
石をつくって贈った。その表面に彼は記
ういういい方はやめて。子どもたちにき
した。「ここにわが妻眠る。いつものごと
こえるじゃありませんか。そういうとき
く冷たい身体で」妻は黙って外へでると、
には――ねえ、おまえの洗濯機を使いた
夫のために墓石を買って戻った。それに
いんだが――といってくださいな」それ
は次のような墓碑銘が記されていた。
から数日後、妻はロマンチックな気分に
「ここにわが夫眠る。やっと固い身体と
なって夫にささやいた。
「ジョージ、私の
なって」
洗濯機使いたくはなくって?」夫は答えた。
「実をいうとね。洗濯ものが少ししかな
ウブな男
固い母親に育てられて、世間知らずに育
かったので、手ですませてしまったよ」
った男が結婚した。
男か女か
ハネムーンのホテルで、花婿は家に電話
花婿が裸で鏡のまえに立ち自分の身体に
した。ベッドでなにかしなけりゃならな
ほれぼれしていった。「あと 2 インチ長
いことはわかっているのだが、それがな
けりゃ王さまだ」「そうね、もし 2 インチ
んだかわからないというのだ。
短かったら女王さまよ」と花嫁。
「まあ、それじゃね、あなたの…あなた
頭脳程度
のいちばん固いところを、お嫁さんのシ
ジョンソン博士と食事を共にした男が、
ーをするところへいれればいいのよ」
なんとか博士のごきげんをとろうとして、
真夜中になって、ホテルは救急車に出動
博士の一言一言に、見境もなくゲラゲラ
を求めた。
「備えつけのオマルに、頭をつ
笑った。博士は哲人らしくそ知らぬ顔で
っこんでとれなくなったお客さんがいる
しばらく我慢していたが、執拗なハッハ
んですが…」
ッハッという笑い声に、どうにも我慢が
ならなくなってしまった。「失礼じゃが、
男がほしいもの
ある男が、遠い町へ仕事で出かけた。妻
どうなさいました。あなたがおわかりに
を同伴していなかったので、仲間にどこ
なるようなことは、なに一つ申しあげて
かいいところを知っているかどうかたず
いませんがな」
76
自己防衛
まではよかったが、最初の一撃を加えたま
イギリスの詩人ウィリアム・モーリスが
ま男は身動きもしない。そこで女は下から
パリ滞在中、大部分の時間をこのエッフ
男の顔を眺めて、やさしくいった。「ねえ、
ェル塔のレストランで過ごし、食事をと
あんた、動いてもいいのよ。ここは写真屋
るだけでなく仕事もしていた。「だいぶ
じゃないんだから」
この塔がお気に召したようだね」と、友
人がいった。
「気に入ったって!」とモー
リスは叫んだ。「わたしがここにいるの
は、このいまいましいしろものを見ない
心からの叫び
ですむのは、パリじゅうでここしかない
文学者のパトロンとして知られたメルボ
からなんだ」
ーン卿は「作家が死ぬことはよいことだ。
系図
そのときでもうそれ以上作品がふえるこ
ある青年、美しい令嬢にぞっこん惚れ込ん
とはないし、パトロンは彼と縁を切るこ
だが、さいわい先方も色よい返事、青年は
とができるからだ」
有頂天になり、思い切って父親に打ち明け
イギリス人の賭け好きは相当なものであ
た。
る。賭けよりほかに楽しみがない人が多
「お父さん、ぼくは恋愛しています。相手
い。
は申し分ない美人で、頭がよくて、慎まし
くて、そのうえ相当な金持ちです。…それ
アルコールの罪
はお父さんのよく知っていらしゃる x 嬢で
裁判官が被告に向かいきびしくいった。
す」それを聞いた父親、顔色をかえ、「気
「いいかね、すべてはアルコールだ。き
の毒だが x 嬢はいかん」
「ど、どうしてい
みがこんなひどい姿になったのも、みな
かんのですか」「いいにくいことだが、い
アルコールのせいだ」「そうおっしゃっ
わねばならん。実は x 嬢はおまえの妹なの
てくださってありがとうございます。裁
だ!」絶望のあまり、青年は病の床に伏した。
判官殿」と、男はホッと一息つきながら
母親、大いに心配してわけをきくと、かよ
いった。「ほかの人は残らず、みなぼくが
うかくかくの次第。母親、息子の手を撫で
悪いんだというんです」
さすり、「安心して結婚おし。あれはおま
最初の考え
えの妹じゃない。うちの父さんはおまえの
「悪いけど、テッド」とシニーはいった。
父さんじゃないんだから」
「どうしてもあなたを愛するようにはな
写真屋じゃない
れそうもないの」「そいつは、残念だな」
若い男が初めて夜の女を買った。なにしろ
とテッドはいった。「不動産屋の伯父が
初めてのことであるから、いっしょにホテ
百万ドルの遺産を残してくれたっていう
ルへ行っても、顔を赤くして、もじもじす
通知をもらったばかりなのに」「あたし
るばかり。やっと女に着物をぬがせてもら
って最初の考えがいつもまちがってんの
って、ベッドの上にいっしょに横になった
よ、テッド」
77
物もらいの男がたずねた。
「でも、あなた
銀行員
「金がすべてではない。絶対に金がすべ
が来ているコート、新品同様じゃありま
てではない」とその銀行員はフィアンセ
せんか!」男はため息をついた。「こいつ
にいった。「ほかにも価値のある大切な
のおかげで、わしの職業がめちゃめちゃ
ものはいっぱいあるんだ。株とか国債と
なんでさあ」
か信用状とか手形とか…」
ジレンマ
もし愛のために結婚すれば、金のために
離婚することになる。もしも金のために
結婚すれば、愛のために離婚することに
なる。
御先祖運
シミったれは、一緒に暮らすには愉快な
相手ではないが、先祖に持つには素晴ら
しい人間である。
身のほろぼしかた
放蕩息子は、親を食いつぶし、吝嗇家は
自分自身を食いつぶす
助手
彼はおだやかな人物だったが、使ってい
るアルバイトがひどい怠け者だという事
実を心から消し去ることができなかった。
長い間、彼はなにもいわずにいたが、あ
る日とうとう我慢の限界が来た。「おい、
君、ポケットに両手を突っ込んで立って
いるだけは止めてくれないか。僕の神経
にさわるんだ。」
「頼むから、片手ぐらい
ポケットから出せ」
ご親切
「あなた、だれかに仕事をさせてもらっ
たことはありませんの?」と奥さんは物乞
いにきた若い男にたずねた。「一度あり
ます。奥様」と物乞いはいった。
「あとは
みなご親切な方ばかりで、ハイ」
身なり
「奥様、古いコートがございませんか?」
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